エンパイアウォー㉔~夜明けまで耐えよ
「春日山城はかなりデカい城でね」
ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は城の見取り図の前で腕組みする。
山一つ使った巨大な山城『春日山城』。自然を盾とした上杉謙信の本拠地だ。
「デカい城を少人数で守ろうとすりゃ、無理がどっかに出るもんだ。ここを見てくれ」
本丸を取り捲くように郭(くるわ)がある。たとえるなら、砦と城壁で作った巨大な段々畑だ。その中の一つ。ジローが指さしたのは『柿崎和泉守屋敷』。
「俺の見た予知じゃ、郭の規模に対して兵が少ない。ここをまずは全員で奇襲し制圧する」
既に戦いが始まっているかのような、独特の静寂がグリモアベースの一室を満たす。
「無事に制圧できたとしよう。今度はここで耐えるんだ。最初に言った通り、この城はデカくて各所に敵が散っている。だが、もし本丸や天守への喉元であるここを押さえられたら、獲り返さないわけにはいかねえだろうな」
城の敷地内に散っていた敵は集まってくるだろう。
それこそが本作戦の目的だ。
「他にも春日山城を攻める仲間がいる。虎口の反対側にあるここが落ちりゃ、敵が流れて負担は格段に減るだろうさ。華々しいとは言えないかもしれない。だが、やれば城の占拠は早くなる」
おそらく厳しい戦いとなる。
サングラスの奥の緋色の瞳が鋭く細められる。
「作戦の決行は日の出前。衛兵の交代時間直前だ。屋敷の郭を制圧して1日耐える。間違っても、24時間ユーベルコードを使い続けようとするなよ? 死ぬぜ」
どういったポイントでユーベルコードを使用し、集中力や疲労感、休憩時間を確保するかも任務成功へのカギとなる。
「腹だって減る、休息だっている。実際に剣を振るう以外の技術も求められるぜ」
この逆境を愉しむようにジローは笑った。
「俺にも明日の太陽を拝ませてくれよな。んじゃ、急ごうぜ!」
氷水 晶
●注意事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●目的
『柿崎和泉守屋敷の郭』を奇襲し制圧後、24時間耐え抜け!
(目安時間 AM4:00~翌朝AM4:30)
●ヒント
奇襲から制圧、防衛戦を行う任務です。
敵も戦力不足のため、奇襲時にいるのは人間の衛兵です。無策でない限り何とかなるでしょう。
制圧後に耐えるのがこの任務の本番です。長時間耐えるためには、純粋な戦闘力以外の能力も重視されます。
ユーベルコードを任務時間中使い続けるのはほぼ不可能です。疲労や集中力も考慮して、使いどころを考えてみて下さい。
見張りや防衛のほか、味方の消耗をおさえたり、士気を上げたり、休める場所を整える行動も重要です。役割は戦いの実力に関わらず沢山あるでしょう。
時間をどう使い、どんな役割や物資が必要になるか考えて行動しましょう。
●オブリビオン
制圧後はいつ襲ってくるか分かりません。倒しても良いですが、万が一、外に釣りだされたりなどすれば苦戦は避けられないでしょう。退かせる選択肢も考えながら侵入を阻むよう工夫すると良いでしょう。
●春日山城『柿崎和泉守屋敷の郭』
塀が張り巡らされ、その外は急峻な斜面となっています。
中央には武家屋敷があります。主な出入り口は東門と北門の2ヵ所です。
※シナリオ設定の都合上、一部史実とは違う設定となっています。ご了承ください。
第1章 集団戦
『腐怪の蟲』
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POW : 腐敗の瘴気
【腐敗の瘴気 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 粘着糸
【尻尾から発射する粘着糸 】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 腐敗の溶解液
【口から発射する腐敗の溶解液 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を腐らせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:烏鷺山
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
プラシオライト・エターナルバド
アドリブ・連携歓迎
事前に様々なアメグリーンの薬を用意
〇奇襲
念動力で浮遊、音無く衛兵に近づきトリックスターで素早く捕縛
これからが本番ですもの、ね
なるべく省エネで参りましょう
〇待機時
蟲の襲撃を警戒、交代で見張りを
東門と北門に分かれて、手があるならそれ以外も巡回出来ればと
回復薬・毒消し・栄養剤の小瓶を仲間へ配布
眠りも食事も必要としない種なもので、長めの見張りも請け負えます
薬が足りなければ、髪の毛からその場で作成
夜は月の光を浴びて、自分も回復を
〇蟲戦
溶解液はカラーチェンジで撃ち消し
腐った地形も無かった事に
エレノアの破魔弾で撃退
でも深追いはせず
念動力で浮かせたエレノアで威嚇はするも、拠点からは離れません
衛兵は篝火が照らす暗闇に向かってあくびを噛み殺した。
ようやく交代時間だ。戦闘が激しくなるにつれ、各所の警備もぎりぎりの人数で回さねばならなくなった。
とはいえ、突然ここに敵が現れることはほぼ無いと言っていい。周囲は春日山の急斜面に囲まれている上に、この郭の下には南三の丸がある。妖怪の類が来たとしても、『御実城様』がお雇いになった別の妖怪によって発見されるだろう。誰の目にも触れずにここまで来られる者など、衛兵には思いつかなかった。
そこに今日からは『猟兵』を加えなくてはならない。
東の空が色づく。篝火の炎に緑の影が揺れる。
「む……? そこにいるのは…………がッ!?」
プラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)は、ミントグリーンとアメジストの瞳に映る昏倒した衛兵の姿を聖痕に記録する。
足音ひとつ立てずに、プラシオライト――通称シオは『柿崎屋敷』の中を滑るように移動する。ミントグリーンの体は暗闇に透き通り、相手からの視認を遅らせた。衛兵を見つければ、透明なワイヤー『Trickster(トリックスター)』で縛り上げ、催眠術で眠らせ部屋に押し込めておく。
「これからが本番ですもの、ね。なるべく省エネで参りましょう」
手際よく屋敷内を制圧したシオは、淡々とした表情を崩さずに次の行動へ移る。
郭の構造を把握しながら、シオは用意してきた薬を仲間に配って回った。
クリスタリアンであるシオの髪は『薬』になる。普段はロングの髪がセミロングになっているのはそのせいだ。
「こちらが回復薬。銀色の蓋が毒消しで、こちらが栄養剤です」
種族の違いのせいだろうか。シオ自身は眠りや空腹の欲求を感じたことがない。必要とあらば長時間の見張りも請け負う心積もりでいる。
敵もそろそろ『柿崎和泉守屋敷』が猟兵の手に渡ったのに気づく頃合いだろう。
北門の方角から聞こえてきた怒号に、精霊銃『Eleanor(エレノア)』を念動力で従えて宙を駆けた。
近づきつつあったのは見あげるほどに巨大な蟲だった。丸々と肥えた体を蠢かせ這いずってくる。門の前まで来ると仰け反るように頭を持ちあげ、赤黒い液体を吐きかけた。
「いけない……」
閉ざされた厚い木の門が煙を上げて溶け、みるみる間に拳ほどの大きさの穴があく。狙いを外した溶解液は、地面に広がり赤黒い泡を生じさせる。
シオは精霊銃に薬を装填すると、再び降り注ぐ溶解液に向かって撃ち込んだ。
『Color Change(カラーチェンジ)』。
蟲の吐く溶解液が蒸発するようにかき消えた。
続いて地面にも一発。嫌な臭いと共に腐りつつあった地面が、元の土の色を取り戻す。
「配合番号09。効能は≪事象の停止≫です」
引き金が連続で引かれる。
破魔の力を込めた銃弾が蟲の大顎を砕く。ぶよぶよした体表に穴を穿つ。青緑の体液を垂れ流し蟲は後退をはじめる。
目的は達した。
深追いはせず、シオは逃げていくオブリビオンを静かな表情のまま見送る。
大成功
🔵🔵🔵
ベルベナ・ラウンドディー
範囲攻撃で制圧後、
部屋を1つ借りて連戦に耐えうる環境調整を展開
●時間稼ぎ・情報収集・武器改造・防具改造・救助活動
消耗傾向と残り時間を対比、計算のうえで
屋敷の備えや各位の所持する調度品消耗品の配分、調整、武防具の修理改造を担います
例えば毒耐性の観点からの補強も可能かもですし…
…あの粘着糸は逆利用出来ませんか?回収して爆弾に仕込めば足止めの手段になります
専門家には及ばずとも料理から医術まで一通り出来るので役立ててやってください
計算上、接敵傾向の情報も必要なので
ユーベルコードを使用して周囲の索敵を併行ということに。
有事の際は戦闘も辞しませんが基本は屋敷に引っ込んでます。ご容赦を
柿崎屋敷の中心にある、庭に面した広い部屋。そこに机を運び込む。
見つけた郭の見取り図は机の中央に置き、仲間から寄せられる報告を纏めては電子データや紙に書き留めていく。
竜派のドラゴニアンの猟兵、ベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンのバイク乗り・f07708)が己に課したのは、この場所に居ながらにして郭全体を把握する役割だった。
情報を支配するものは戦場を支配する。
各自どんな装備を持っていて、どこにどれだけの戦力があるのか。確認された敵戦力はどの程度か。救援は必要か。その時に遊撃に使える戦力はどれほどか。
補給物資は足りているか。逆算してどの程度の時間なら持ちこたえられるか。
ベルベナはしばらくの間、記録と計算と状況確認に追われた。
「休憩室ができました。前線の猟兵にも周知をお願いします」
「ベルベナ様、毒消しの準備があります」
「ありがとうございます。数は――ありがたい、全員分ありますね」
「米と味噌と他の食材、あと水瓶を見つけたわ。水と食料の残量はこのメモ通りね。今のうちに、軽食を準備しておいてもいいかしら?」
「助かります。――兵糧は十分ですね。ではお願いします。」
その合間に武器や防具の修理を請負い、撒いておいたソナーや盗聴装置のデータを確認し、味方の手の足りない場所を周知し――猫の手も借りたい忙しさというのは、このことだろう。
だから仲間の猟兵が料理と医療分野を率先して担ってくれたのは、正直とても助かった。
「診療室完成したよ! ベルベナさん」
「早いですね。場所は流れ弾の心配がない屋敷の西側。戦場からの動線も悪くありません」
屋敷の見取り図に診療室の位置を書き込むと、ベルベナは瓶の詰まった大きな箱を持ち上げる。
「毒消しと回復薬の予備を預かっているんです。そちらに持っていきましょう」
「ああ、こっちだよ」
診療室に着くと、早速頭から糸まみれになった猟兵がいる。どうやら敵のユーベルコードをまともに受けてしまったようだ。大怪我ではないのにほっとして、糸を取り除くのに手を貸す。
触れてみると、ベタベタしている割には強靭で、容易に切れそうにない弾力と強度を兼ね備えた糸だ。
「……この粘着性。逆利用できるかもしれません。頂いていってもよろしいですか?」
糸を持ち帰り爆弾の中に仕込む。空中で破裂し広い範囲に撒き散らされるような仕掛けに改造する。敵の頭上に放って一網打尽にしてもいい。あらかじめ地面に撒き散らしておいて、敵の進路を妨害しても面白い結果になりそうだ。
束の間、ベルベナの顔に笑みが浮かぶ。
戦場は楽しい。敵の技も発想次第で利用できる。
生来の喧嘩好きを垣間見せてから、ベルベナはこの新兵器をどこの戦場に託そうかと考えながら情報収集に勤しんだ。
大成功
🔵🔵🔵
七那原・エクル
戦ってオブリビオンを倒すばっかりが猟兵じゃないよねっ
屋敷の一室を簡易的な診療室として使わせてもらうよ
ユーベルコードで召喚したドラゴンさんたちには防衛で疲弊、負傷した味方の救助と治療をしてもらおうかな。もちろんボクも手伝います
救助活動を行う場合はデフレクターシールドで負傷者を守りつつドラゴンさんと一緒に回収作業するよ
ボクが手伝わなくても問題ないようなら防衛にまわろうかな
人数の少ない防衛ポイントに行ってデフレクターシールドの装甲を左右に展開、バリケードを形成するよ。とにかく守れる面を拡げないと。シールドに搭載された描きでけん制射撃を行いつつ【拠点防御】をします
七那原・エクル(ダブルキャスト・f07720)は戦場から遠い西の部屋に診療室を作りはじめた。
エクルは機械工作や発明を得意とする上に、拠点防御にも詳しい。
医療については専門外だが、そこはユーベルコードで召喚した白銀のドラゴンたちがしっかりとフォローしてくれる。
「まずは制圧戦で怪我した味方の治療をしてもらおうかな。手の空いてるドラゴンさんは、診療室の設営のアドバイスをお願い」
エクルはドラゴンや猟兵仲間の助言に従って布団を出してきては並べ、棚を持ってきて設置し、衝立(ついたて)で部屋の仕切りを作っていく。
屋敷にある物資を最大限利用した、診療室兼病室ができあがった。
診療室の完成情報を仲間に流してから、手のあいたエクルはドラゴンたちを連れて屋敷の外へ出る。北門のほうがなにやら騒がしい。門は破られていない様子だが、戦闘によって負傷者が出ているようだ。
塀の上で、頭から敵のユーベルコードの糸をかぶった仲間を見つける。外へ引っ張り出されてしまいそうな寸前で、エクルは槍を振るって糸を断ち切った。
「ドラゴンさん……!」
ドラゴンたちが怪我人の服をくわえて飛ぶ。エクルはデフレクターシールドを構えて前に出ると、ドラゴンと怪我人をかばうように間に入った。
「あの門……穴が空いてる」
射線を塞ぐように盾を構え敵方の動きに注意を払っていると、閉まった門の向こう側が見えるのにエクルは気づいた。厚みのある立派な木の門の真ん中に穴が開いている。通常の武器や火器ではあのようにならない。何かの液体によって溶かされたように見える。
「ドラゴンさんはその人を診療室へ。ボクはあそこを塞いでこないと!」
そう言い残し、エクルは北門へ走り寄る。
シールドを左右に展開して仮のバリケードを築く。全体的に強度不足になった門をその場に転がっている物を使って修復していく。木材に石、鉄の板、壊れて折れた武具。エクルの手にかかれば、どれも立派な補強材に変わった。元あった門よりも更に強く進化させていく。
穴を塞ぐ前に外を覗いてみると、新手の蟲がのそりと姿を現した所だった。大顎を『かちりかちり』と鳴らしながら、体の筋肉を前に送るようにして這い寄ってくる。
エクルはデフレクターシールドを穴に合わせて展開した。こんなこともあろうかと搭載しておいたものがある。
蟲の目の前の地面を横切るように土煙が走った。穿たれた地面に跳ねた銃弾が、蟲の体をかすめ、一部は破片になって体に深々と食い込む。牽制射撃が蟲の進路を妨害した。
誰かを守りながら援護射撃ができる盾。メカニックとしての想像力を遺憾なく発揮したガジェットのひとつだ。
慌てて退いていく巨大な蟲を見送ってから、エクルは更なる門の強化に着手する
大成功
🔵🔵🔵
花園・スピカ
可能なら医療器具とストレージタグ持参
後方に救護拠点を設け仲間の支援と救護に徹する
救護は私の得意分野ですので…!
治療順は
1:怪我の度合いが深刻・瀕死→UC使用優先
2:疲労や負傷の大きいヒーラー→休憩&UC併用
3:医療キッドで対応可能→医療器具使用優先
他の方々が救護の把握や情報共有をしやすいようストレージタグ等で情報を見やすくまとめておきたいところ
万一救護拠点に攻撃が及んだらオーラ防御で負傷者を守りつつ属性攻撃等で応戦しますがあくまで救護が優先
二兎追う者は一兎も得ず、ですからね
UCで疲労したら休憩したり他の方に回復を頼み万全な状態を保つよう心掛けます
…あれ?どこかで同じような戦法、聞いたような…?
西の部屋に出来上がった診療室に、花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は持ってきた医療器具を運び込んだ。
必要なものを全て持ち込むことは叶わなかったが、最低限の物資だけは背負ってきた。屋敷にあるもので使えるものは使わせてもらい、仲間の猟兵の手を借りて備品を整えていく。
スピカは得意とする救護の分野で仲間を支援しようと、この戦場へと足を運んだ。
最前線の治療室もまた戦場だ。
軽傷から縫合の必要がある傷まで様々な仲間が運ばれてくる。怪我人が増えてくるに従って、段々と手が回らなくなってくる。
そんな中でもスピカは冷静に、搬送してきた怪我人の重症度をまず確認して情報を書き込んだタグをつけていった。
災害時などに用いられるトリアージ。少ない物資と医療従事者でより多くを救うため、治療できる重症度の者、どんなに手を尽くしてもここでは治療できない者、しばらく時間を置いて治療しても問題ない者を先に識別していく技術だ。
当然、医療従事者としての冷静な選択を迫られる。
今回スピカが行っているのは、それに猟兵の力を考慮して組み合わせた変則版といったところだろうか。
「腫れがおさまるまでしばらくこの氷嚢を当てていて下さいね。あなたはこの回復薬を飲んで下さい。そちらの方は私が診ます!」
スピカは特にユーベルコードを使った方がいい怪我と、医療キットで対応できる怪我を見極めて行動していく。
使った分だけスピカ自身が疲労してしまう『生まれながらの光』は、重症の仲間が運ばれてきた時のために極力温存しておかなくてはならない。
仲間と共に休む間もなく働き回っていると、いつの間にか外が薄暗くなっていた。
ユーベルコードを使い過ぎてしまった時には休憩を挟むつもりでいたスピカだったが、その心配はなんとか杞憂で終わったようだ。
夜が訪れると同時に、敵の攻勢もいったん落ち着いたようだ。
このまま何事もなく朝を迎えさせてくれるとはまず思わないが、診療室に余裕ができたのを見計らってスピカは屋敷の外に出た。
満月になりきらない、楕円に似た月が昇る。振り向けば、地面に薄青い自分の影が落ちていた。
どんなに篝火を焚いていても、戦国の夜は暗い。
肉眼でも数えきれない星が空を埋め、夜空に壮大な星の河を作る。戦場であることを一瞬忘れさせてしまうような、荘厳な星空だった。
涼やかな風がスピカの頑張りを労るように吹いた。
夜がやってきたのだ。
成功
🔵🔵🔴
ユウ・シャーロッド
「戦うのは苦手なので【救助活動】や【目立たない】見張り役を
がんばります!みんなで乗り切っちゃいましょうっ」
(おー!と場にそぐわぬほんわかした雰囲気でこぶしをつきあげる)
疲労しないよう、最初に一度だけ「再演」のユーベルコードで
「忘れられた動物」の姿の忘却の精霊を召喚します。
(召喚後に再度姿を変えなければ消耗しない)
8羽の梟は見張りと負傷者の位置の【情報収集】。
12匹の猫や狼は梟の情報を基に【救助活動】。
【怪力】【念動力】で負傷者をユウの元へ運ぶ。
これらを時間ごとに交代して担当する。
人の姿になった1体の忘却の精霊とユウはその場で待機して、
緊張を解せるように笑顔で話しかけ、負傷者は聖なる光等で癒す。
満月まではあと3~4日だろうか。楕円の月が昇ってくる。空はオレンジに染まったのち、段々と深く暗く色を変えていく。
ユウ・シャーロッド(白練の杖・f06924)は夕暮れのころ仲間と見張りを交代した。
戦国の夜は暗い。空が暗い分、より多くの星が煌めいているように見える。
ユウはその光を見あげた。
輝く星は途方も無い年月をかけて宇宙を渡ってようやく、地上の人の目に届くという。ユウが今見あげている星は、もうそこには存在しない可能性だってあるのだ。
両手で握った『結術の杖』を目の前に掲げた。
「誰かに忘れられたモノ達、その姿と性質を結びます。力を貸してくださいっ」
ユーベルコード『再演(リアクト)』。忘却の精霊が過去に触れて、今は忘れ去られてしまった存在たち。その運命はどこか自分に似ているような気がして。
ユウの呼びかけに応じたのは、8羽の梟(フクロウ)と6匹の猫、6匹の狼、1匹の人型の精霊だ。
動物の仲間は夜行性。夜目が利き、暗がりでの行動を得意とする。ユウがこの時間の警戒を任された理由だ。
梟は屋敷の上空から郭全体を見張ってもらう。聴覚に優れ、音もなく暗闇を飛べる梟はこの時間の見張りにはうってつけだ。
猫と狼は梟が負傷者を見つけた時、協力して搬送を行ってもらう。
動物たちの力を借りながら、戦闘の気配と負傷者の発生に気を配る。
「(肉弾戦は怖いけど……魔力だけは自信があります!)」
聖なる光で味方の怪我を癒すたびに、精霊たちが救助に動くたびに、少しずつユウの疲労は溜まっていく。その疲れすらどこか心地いい。
つい忘れてしまいがちだが、戦場に補給と支援は欠かせない。途切れてしまえば、戦える状態の人自体がいなくなってしまうからだ。
その一角をユウはしっかりと担っていた。
怪我人がいない時を見計らい、ユウは人形の精霊と共に休憩室を訪れた。
それぞれの体調を気にかけながら、つとめて笑顔で話しかける。
敵の只中で戦い続ける彼らが少しでも安らげるように。緊張を今だけでも解くことができるように。
戦いが苦手なユウが考えた、今できることだ。
「私も今できることを頑張ります! みんなでこの大変な戦いを乗り切っちゃいましょうっ!」
おー! とどこかほんわかした様子で拳を突き上げると、皆もつられたように笑みを浮かべた。
厳しい状況の中にあっても、希望を感じさせる聖者の本質。
怪我人を治療し、仲間を励まし続けたユウがようやく一息ついたのは真夜中をすぎる頃だった。
成功
🔵🔵🔴
伊美砂・アクアノート
【SPD オルタナティブ・ダブル】
…1日、か。短いようで長いね
奇襲に手間をかけたくないので、派手にショットガン連射し制圧
最初に【罠使い11、毒使い10、物を隠す5、破壊工作8、地形の利用5】で、斜面に毒香水と焼夷手榴弾を罠として設置。他の猟兵と相談しつつ、【料理10】で、屋敷内にあった兵糧を探して調理しておこう…一応、酒場の店主なのよ、私。
周囲を警戒する時は、分身して見張りの人員削減。敵発見時は【スナイパー20】でアサルトライフルによる狙撃。夕方までに仮眠を相談の上確保し、夜は夜襲に備えて【第六感8、暗視5、聞き耳5】で警戒。敵襲時は即座に銃で応戦し、音で有事を伝える。接近されたら暗器で戦う。
伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)はショットガンを手に屋敷の外を駆けた。時間をかけてしまっては、奇襲は奇襲でなくなってしまう。猟兵仲間と手分けして躊躇なくショットガンで行動不能にし、抵抗らしい抵抗も受けぬ間に制圧を完了する。
捕虜を部屋に押し込めてから外の斜面を確認した後、伊美砂は屋敷の中で台所を見つけた。
土間にかまどに調理台、沢山の水瓶(みずがめ)が置いてある。食糧庫も近くに見つけて中を確かめ、食料と水の残量をメモに書き留めた。たしか、物資の把握を行っている味方がいたはずだ。連絡がてら相談に行く。
台所に戻ってくると、伊美砂はシャツの腕をまくった。
こう見えて、酒場の店主をしている。
「(料理の腕が、こんな所で役に立つなんてね)」
米と味噌、梅干しの壺。それと蒸し器の中には笹団子。
伊美砂は手際よくかまどで米を炊き、出来上がった白米でおむすびを握る。
ひとつは塩と握って塩むすびに。
ひとつは大きな梅干を中に入れて。
ひとつは味噌を塗って直火で炙る。
それを余っていた笹で笹団子と一緒に包み、いつでも食べられるようにする。
出来上がった軽食は台所からほど近い休憩所にお茶と一緒に置いておくことにした。
全ての準備を明るいうちに終え、伊美砂は無理せず仮眠を取る。
●
景色がオレンジに染まる夕方。
起こしてもらう前に自然と目が覚めた。軽く体を動かした後、支度を整え喉をうるおし屋敷の外に出ると、夜空に月が光っている。
残り8時間。
あとはこの夜を乗り切ればいい。
「……1日、か。短いようで長いね」
楕円の月が空を渡って沈むまで。
温存しておいた体力で、ユーベルコードを発動する。
同じ背丈に同じ服。同じ顔つき。鏡合わせのようにもうひとりの伊美砂が現れる。
夜目が利き耳が良く鋭い勘を備えた2人がそれぞれ違う方向を警戒すれば、接近される前に敵に気付ける。狙撃を得意とする伊美砂は、距離こそが武器だと知っていた。
屋敷の西側で爆発音がした。
「……かかったわね」
郭に面した急斜面。昼間のうちにワイヤーを巡らせて作った罠に、かかった3匹の蟲。焼夷手榴弾に体表を焼かれ、毒香水が傷口に染みわたる。彼らの命は時間の問題だが、残りの時間で暴れられてもいけない。
夜目と月明かりを頼りに紫の頭に照準し、アサルトライフルで撃ち抜く。巨大な芋虫たちは、元来た急斜面を転がり落ちて行った。
「大丈夫、もう対処し終わったわ」
駆け付けた仲間にそう言って、伊美砂は小瓶を取り出して振った。
「念のため、もう一度罠を仕掛けておくわ。今度はちょっとずらした位置に、別の趣向の罠でね」
大成功
🔵🔵🔵
薄荷・千夜子
基本は防衛戦ですか
制圧はお任せして防衛に力を入れましょう
我々は機動力を活かして動き回ります
制圧次第、一番見晴らしの良いところから全体を見回し【地形の利用】【拠点防御】【罠使い】で防御の薄そうなところに侵入者対策の罠を仕掛けましょう
私は夜の活動の方が得意ですから、昼間は体力温存で、皆さんの休む場所の準備等進めておきます
日が暮れ始めたら基本一番見晴らしの良い場所にて見張りを務めつつ、動きがあればUC【彗翔一閃】で攻め込まれ場所に急行して【援護射撃】や【鼓舞】による士気の上昇を
負傷者が出た場合は、彗に乗せて後方へ下がりましょう
夜の活動も【暗視】で問題はありません
狩人の力、存分に発揮しましょう
柿崎和泉守屋敷は春日山城の中でも比較的高所にある為、見晴らしがいい。
薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)が屋敷の屋根の上にあがると、今日の終わりの太陽がゆっくりと山の稜線に沈んでいく。
制圧が終わってすぐに、千夜子は地形を把握しながら郭の弱い部分を見定めた。
門から続く塀には罠を設置して、外から無理に侵入しようとすれば杭に体を貫かれるようにしておく。
狩人としての千夜子が一番動き易いのは夜。
自分も体を休められるようにまずは休憩所を整備する。
布団を敷き机を並べていると、台所からおにぎりと笹団子が届いた。
「笹団子ですか。そういえば越後の名物でしたね。兵糧としても優秀とは聞いていましたが」
サムライエンパイア出身の千夜子にとっては、どこかほっとするメニューだ。
お茶をいれてから笹の葉を開く。笹のすっとした香りに、張り詰めていた心がほんの少し和らいだ。甘さ控えめの団子と餡を楽しんでから、千夜子は出来上がったばかりの休憩室で仮眠を取る。
●
山の稜線に太陽が沈めば、あとは夜を乗り切るだけだ。
昼間のあいだ、この郭は落ちなかった。敵は日暮れとともに攻撃を中断して引き上げていく。
もし夜襲をするのなら、まず気付かれぬように接近してから混乱のうちに突破を図ってくる筈だ。
見晴らしの良い屋根の上に立ち上がり、束ねた鳶色の髪を夜風に流す。森からは虫の声が聞こえ、涼しい空気が流れてくる。
千夜子は降るような星空に向かって竹笛の音を響かせた。左腕の餌掛け(ゆがけ)を掲げると、鷹の『彗 』が戻ってくる。夜闇に慣れた相棒には、上空から郭の周囲を見回ってもらっていた。
夜もだいぶ更け、月は天頂を過ぎて傾きはじめる。千夜子もまた月明かりに浮かぶ影を探す。
日の出まであと2刻もないだろうか。
東門の外。城壁の影にあたる暗闇の中、何かが動いたのに千夜子と彗は気付いた。時を同じくして、郭の西斜面から爆音が響く。タイミング合わせて2方向からの襲撃だ。
「確か西側は、別の猟兵が罠を準備していると聞きました」
仲間が取りまとめた情報を思い出し、千夜子はユーベルコードを使う。
彗の体が淡く光ると、人間の千夜子の倍にまでみるみるうちに大きくなる。その背に飛び乗ると、屋根から一直線に滑空して東門を目指す。
仲間の上を飛びながら千夜子は声を張り上げた。
「ここを凌げば夜明けです! 跳ね返してやりましょう!」
周囲を鼓舞する千夜子の目に蠢く蟲の群れが映る。
仲間から預かってきた足止め用の爆弾を、彗は蟲の頭上で炸裂させる。自分たちの吐く糸に絡め取られた蟲たちに、郭から矢の雨が降る。
休んでいた者も起き出して総攻撃がはじまった。郭にとりつこうとする蟲たちは、要塞化した門に歩みを止められては、杭や飛び道具に体を貫かれていく。
東の空から紅が染み出すと、金色の陽光が春日山城を照らす。
優しい水色の朝の空が、耐え凌いだ猟兵たちの頭上へと広がった。
成功
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