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エンパイアウォー⑦~軍神の車輪を砕け

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●車輪の中の車輪
 美濃国・関ヶ原。かつて、神君徳川家康と石田三成が激突した天下分け目の地。
 今再び、この地は徳川の太平を阻む難所として幕府軍の前に立ちはだかった。
 関ヶ原に布陣せし信長の軍勢は2軍。未だ謎に包まれし『大帝剣』弥助アレキサンダーと、そしてもう一人……上杉謙信。かの武田信玄と並び龍虎と称された、越後の龍。

 そして、彼の軍神が築きあげし、車懸りの陣。その陣中の一箇所に、斧持つ天使が布陣する。
「やあ、兄弟。いよいよ決戦だね!」
「そうだね、兄弟。猟兵達がやってくるよ」
 空飛ぶ車輪に腰掛けて、戦場には似合わぬ明るい笑顔を浮かべた天使達。だがその笑顔と裏腹に、戦意と士気は一様に高い。
「ケンシン様を護るため、ここは引く訳にはいかないね」
「ああ。ボクら一人ひとりが、ケンシン様の操る車輪。その役目を果たしてこそのクルマガカリの陣さ」
 陣形全体が、風車の如くぐるりと回転する。それに合わせ、彼らは最前線へと躍り出て……笑みを浮かべ、斧を振り上げる。
「だから、ケンシン様のため、立ちはだかる者は全て叩き斬る!」
「ああ、それがボク等兄弟の務めさ!」

●グリモアベースにて
「やあやあ猟兵諸君。くるるちゃんの召集に集まってくれて感謝するねっ」
 グリモアベースに集まった猟兵達を前に腕を広げ、鏡繰・くるる(属性過積載型バーチャル男の娘・f00144)は愛らしい笑顔と共に元気よく切り出した。
「今回も戦争だよ、ガンガン行こうー! 相手は上杉謙信の軍勢だ!」
 軍神・上杉謙信――彼が得意とする陣形、『車懸かりの陣』。それは、『人軍一体』の理想を極地とも言える、恐るべき陣形である。
「謙信をぐるーっと円陣が取り囲んでね、この円陣が常にぐるぐる回り続けるんだ。そうすると、最前線の兵士はめまぐるしく交代する訳。新しく出てくる兵士は後方で回復と援護を受けて元気いっぱい、傷ついた兵士は斃れる前にすぐに後ろに引っ込んで回復しちゃうから戦力が減らない……って仕組みだね」
 言うは易く、行うは難し。超防御型攻撃陣形と言う相反する要素を兼ね備えたこの陣形は、少しでも車輪の動きが乱れれば崩壊してしまう。
 それを成立させているのは、謙信の卓絶した指揮力によるものだ。
「しかもこの車懸かりの陣が存在する限り、謙信は陣形の中でゆっくりと蘇生の時間を稼ぐ事ができる。陣形を崩壊させない限り、謙信本人を討ち取る事もできない……って訳さ」
 よって今回猟兵達は、この陣形の一角を担う軍勢を狙い、撃破を試みる事となる。
「今回戦う相手は『渡来の天使』……青年天使の姿を模したミレナリィドールだよ」
 彼らは車懸かりの陣から最大限の援護を得ているため、高い防御力を誇る。
 さらに受けた傷は常に回復し続けるため、多少の傷ではすぐに塞がれてしまう。
「だから、大ダメージを一気に与えて倒すか、回復する前に畳み掛けるか……とにかく、この陣形効果を打ち破る工夫が必要だね」

 謙信本人と刃を交える訳ではない。だが、謙信の強大な力の一端……その軍神の軍略との激突は、熾烈な戦いとなるだろう。
「でも、キミ達ならきっと勝てる。信じてるからね♪」
 言ってくるるはいつもどおり、わざとらしい可愛らしくポーズを取って猟兵達を見渡す。
「さあ、ばっちり解決してきてね。良い知らせを待ってるよ!」


一二三四五六
 天下分け目の関ヶ原、なのに戦争はまだまだ中盤戦!

 ごきげんよう。引き続きエンパイア・ウォーをお届けします、一二三四五六です。

 集団戦『万能従者型・渡来の天使』は推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)さんの宿敵です。ありがとうございます。

 補足。
 敵は陣形から『防御力アップ&自動回復(特大)』と言う強力な支援効果を得ています。その分、数は少なめで、だいたい猟兵1、2人につき1体ぐらいの割合となっています。あっちのほうが数少ないです。無論、『兄弟の危機を見過ごせない!』を使われた場合はその限りではありません。
 くるるも言っている通り、この支援を打ち破る工夫が求められます。

 謙信本人と戦うシナリオではありません。そちらは、他のMSさんが出している『エンパイアウォー⑱』依頼群の方でお願いします。

 返却は8/11を予定していますが、今回は私用の都合などもありまして、12日にずれ込む可能性も結構有ります。どっちになるかは不明。

 それでは、皆様のプレイングを、楽しみにお待ちしています。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
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第1章 集団戦 『万能従者型・渡来の天使』

POW   :    天使の一撃
単純で重い【天使の斧】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    くるくる回る天使の輪
自身が装備する【天使の車輪】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    兄弟の危機を見過ごせない!
自身が戦闘で瀕死になると【新たな別の渡来の天使】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:つばき

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オリヴィア・ローゼンタール
御使いの姿を模していながら、邪悪に加担するとは……

【転身・炎冠宰相】で白き翼の真の姿を解放
【属性攻撃】で聖槍に纏う炎の魔力を強化
悪しき偶像を砕きます

【怪力】を以って聖槍を振るい、リーチを活かして斬り打ち穿つ(ランスチャージ)
重心が偏っている戦斧は、威力は絶大な反面、軌道は単調になる
強化された【視力】でしっかり【見切り】、【聖槍で受け】流して地面を打たせず、地形破壊をさせない
体勢を崩したところへグリーブによる強烈な蹴り(カウンター・踏みつけ)を放って【吹き飛ばす】

距離が出来たら、炎を最大強化した聖槍(全力魔法)を全力で投げつけ(怪力・投擲・槍投げ)、【串刺し】にする
聖槍よ、邪悪を貫け――ッ!!


露木・鬼燈
車懸かりの陣、ね。
これはなかなか面倒なのです。
とゆーか、陣形の支援効果がウザい!
削りきるよりは一撃で仕留めるほうが楽かな?
この後には謙信を骸の海に沈めるお仕事があるしね。
時間も体力もムダにはできないっぽい。
仲間と連携すればイケルイケル!
一撃で仕留める機会をつくりだすですよ。
あの斧の一撃は不発にさせるべきっぽい。
魔剣を連結刃に変形、手足に巻き付けて引っ張る。
体幹を崩せばチャンス到来。
素早く急所を傷つけ、傷口から<血霧腕>を撃ち込む。
中身を引き摺り出すと同時に体内に残した呪詛を活性化。
ムカデに変化させて体内を喰い荒らす。
並みの敵ならこれで沈むんだけどね。
念のために頭部を踏み砕いておくっぽい!


七那原・望
中々面倒な布陣ですね。これが軍略ってやつなのですか。

さて、やれるだけはやりますよ。

【果実変性・ウィッシーズアリス】でねこさん達を呼ぶのです。

まずはねこさん達の幻覚で陣形を狂わせつつ、天使の車輪の操作を妨害し、【念動力】で遠隔【操縦】した機掌・プレストに銃奏・セプテットを持たせ、【援護射撃】で天使の車輪を撃ち落とします。

そしてねこさん達と共に全員で同時に【全力魔法】を発動、攻撃に使う全ての魔力を目の前の敵一人に対して集中させ、一撃で消滅させるつもりで放ちます。その時、可能であればプレストとセプテットによる【一斉射撃】も重ねます。

流石にこれだけやれば陣も乱れるでしょう。

後は上杉謙信を倒すだけです。


ヴィクティム・ウィンターミュート
───ハッ!
天使様とあろう者が、凶器振り回して戦の片棒を担ぐってか
しかも軍神の陣の力まで得てやがるとは……
つまんねえ腰抜けだな
所詮は助けてもらわなきゃまともに戦えもしねえ雑魚か
そら、自己紹介でもしたらどうだい?
僕は謙信の力が無きゃ戦場に立てない弱小天使です…ってな

そんな具合に挑発をかまして、敵のUCを誘う
怒りで頭に血が上った状態じゃ、攻撃の軌道は恐ろしく単調になる
だから──天使の車輪だって、馬鹿正直に殺到させてくるだろうさ

それがテメェの致命的なミスさ──UC起動
浮ついた心を凍てつかせて、覚悟を決めろ
完全脱力、受け止めて…
エネルギー奪取、増幅、増幅
52倍にして返すぜ?一撃で砕けろ、スクィッシー


白波・柾
回復を行われる前に倒さねばならない、か
可能ならば他の猟兵と連携を取りたいな

「殺気」で注目を集めつつできる限り多くの個体をユーベルコードの範囲内におさめたい
「気絶攻撃」「マヒ攻撃」をのせた己の大太刀の一刀で「怪力」でもって「なぎ払い」、
「衝撃波」を発生させ「目潰し」を行おう
これは攻撃した分は回復されてもいい、注目を集めてからが本番だ

「鎧無視攻撃」「鎧砕き」をのせた
【掃刃の剣舞】で高命中の高速連続攻撃を仕掛けよう
次々と飛来する刃を受け止めるならば―――回復しようとする暇もないだろう?

攻撃を受けそうになったならば「激痛耐性」「オーラ防御」で防御しつつ
「カウンター」「咄嗟の一撃」で反撃しよう


四季乃・瑠璃
緋瑪「確かに強力な陣形だねー。戦国時代なら」
瑠璃「強力な陣形でも、幾つか破る手段はあるんだよ。それを見せてあげる!」
翡翠「強力だけど、サイクルを崩せば意味ないしね」

【破壊の媛君】で分身&シスターズ使用

いきなり3人掛かりで【力溜め、範囲攻撃】ジェノサイドノヴァで奇襲。
敵陣広範囲を超広範囲攻撃で入れ替わり先の敵を含め、纏めて損害を与え、陣形とサイクルを乱し、後は猟兵側の方が数が多い事を利用し、敵の入れ替えを阻害しながら一体ずつ確実に落としていくよ。
私達の場合はK100による銃撃とボムによる広範囲攻撃で逃げ道を奪い、大鎌の機巧と魔導機巧翼による推力を利用した高速斬撃で一体ずつ連携して仕留めて行くかな


フランチェスカ・ヴァレンタイン
天使もどき… なるほど、ペ天使とかいうアレですか
…はい? わたしは天使などではなく単なる翼人ですので、ええ

空戦機動からの砲撃で牽制や援護などをしつつ、【虚空に踊り 繰り爆ぜるもの】の不可視のワイヤーでいつでも絡め取れるように準備を

選択UCで後背に展開した光焔の槍が羽ばたきと共に弧を描いて前方へ
それらが互いに衝突し、絡み合いながら集束していき――
顕れたのは、渦巻く光焔が象る極めて長大な三叉槍

それを見て慌てて後ろへ下がろうとする損害度高めな天使をワイヤーで縛り上げ
「…後ろへ戻られるのでしたら、お土産にどうぞ?」
空中に磔にした天使への直撃と同時に炸裂させ、周囲の個体ごと灼き尽くして差し上げましょうか


煌燥・瑠菜
がっつり守りを固めて来るとは、敵も中々やりますね……まあ、だからといって引く理由にはならないんですどね!

まずは敵を陣から釣り出します。多対1だと勝ち目なさそうですし……謙信の悪口言ったら一人ぐらい釣れませんかね?
上手いこと一対一に持ち込めたらダッシュ、逃げ足でちょこまかと動き回り敵の攻撃を誘います!
あの手の攻撃は一撃が強い代わりに隙も大きい……そこを突きますよ!
敵が攻撃したら地形破壊を逃れるため見切り躱しつつ即ジャンプ!からの手に持った砂で目潰し!卑怯とか言わないでくださいね?
その一瞬の隙を突き頭を踏みつけ体制を整え、全体重に怪力、力溜めを乗せた一撃を喰らわせます!ぶっ飛、べやぁー!!



「現れたね、ケンシン様に歯向かう猟兵達!」
「ボクら兄弟の力、思い知ってもらうよ!」
 斧を振り上げ、猟兵達へと襲い掛かって来る天使たち。その斧が大地に振り下ろされ、地を砕く……その寸前。
「おっと、それは不発にさせるべきっぽい!」
「んぐっ!?」
 鬼燈の魔剣の刃が分かたれ、連結刃となってその腕に巻き付いていく。拮抗する力を上手く制して、斧を振り下ろさせない。
「この後には謙信を骸の海に沈めるお仕事があるしね。時間も体力も無駄には出来ないっぽい」
「くっ、離して……!」
 地形を破壊されれば重い一撃を与える好機は減少する、それを許す訳にはいかない。無論天使はもがくが、鬼燈も巧みに刃を操って、よりしっかりと拘束していく。
 その一方で、刃が食い込んだ腕からは血の一滴も流れず、ついた掠り傷もすぐに塞がっていく。
「やっぱり陣形の支援効果がウザい!」
 思わず吐き捨てながら、隙を探る鬼燈。
 そして天使の斧を阻むのは彼だけではない。オリヴィアも、その聖槍を巧みに操り、相手の斧を受け流す。
「御使いの姿を模していながら、邪悪に加担するとは……」
 敬虔なシスターである彼女にとって、その怒りは抑え難い。怒りは黄金の炎となって燃え上がり、彼女の身体を包み込む。
「悪しき偶像、砕かせてもらうっ!」
 シスター服が燃え上がり、変わってその身を包むのは、豊満な肢体を引き立て、それでいて厳かな雰囲気を兼ね備えた聖なる白鎧。
 目の前の模造天使とは違う、真なる守護天使をその身に下ろして白翼を広げたオリヴィアの瞳は、相手の一挙一動を見逃さず、巧みに斧の力を受け流して破壊の力を発揮させない。
「悪は、ケンシン様に逆らうキミ達の方だろう?」
「戯言を……侵略者は貴様達だ、オブリビオン!」
 怒りに呼応するように、聖槍が纏う破邪の炎はより力を増していく。
「天使もどき……なるほど、ペ天使とかいうアレですか」
「随分な物言いだね、キミ!」
 そんなやり取りを見ながら、空から砲撃を放つフランチェスカ。
「自分こそが真の天使、とでも言うつもりかい?」
「わたしは天使などではなく単なる翼人ですの……でっ!」
 あちらも飛翔して間合いを詰めてくるが、巧みな空戦機動で引き離し、捕らえさせはしない。急加速、からの急制動。砲撃は弾かれ回復はされるものの、その動きを巧みに牽制する。
「……どうも天使の肩身が狭いような気がします」
 この場唯一のオラトリオである望は、そんな上下の会話に、目隠しされた眉を寄せる。「それにしても、やはり、面倒な布陣ですね。これが軍略ってやつなのですか」
 視覚以外の五感で戦場を把握すると、黄金の王笏を掲げた。その身を覆う礼装が、愛らしいエプロンドレスに変わると、現れるは4匹の仔猫。
「さて、やれるだけはやりますよ。おねがいしますね、ねこさん達」
 うにゃあ、と応えて一鳴きした仔猫の姿が、ぼんやりとぼやける。瞬きする度にそれは8匹に、16匹に、32匹に……ほんの数秒で戦場を埋め尽くした。
「うわっ……このっ、邪魔だよっ!」
 斧で猫達を振り払う天使だが、斬られた猫はそのまま空へと消えていく――それはあくまでただの幻。されどその幻で力の流れが撹乱され、隊列が崩れる。
「邪魔なのは、それですね」
「わあっ……や、やめてっ!?」
 その傍らの機掌が超大型の砲を握り、天使の車輪へ砲撃を叩きつける。簡単には破壊出来ないものの、乗騎を揺さぶられ体勢を崩す天使。
「だが……やはり硬い、な」
 敵の陣を乱し、その攻撃を封じても、完全にそれを崩すには至らない。付けた傷は端から塞がり、すぐに体勢を立て直していく……そんな光景に眉を寄せる柾。
「やはり、連携を取って事に当たりたい所だな……!」
 星砕く大太刀の柄に手をかけ、迸らせる殺気。戦場を満たし、天使たちの視線をほんの一瞬縛り付け。
「まずはこれで……どうだっ!」
「わっ……!」
 抜刀から放たれる衝撃波が、天使たちを薙ぎ払う。生じた剣風が草を舞い上げて、彼らの目を覆い隠した。
「くっ、でもこの程度……」
「では、この程度でなければどうだ!」
 その衝撃はあくまで前兆。放たれた大太刀はそのまま、目にも留まらぬ速さでさらなる剣舞を解き放っていく。
「なるほど、回復するらしいな、だが、これでは……その暇すらないだろう?」
「くっ……も、もうっ、こんなっ……」
 刃に次ぐ刃。柾自身の制御も離れた、飛翔する斬撃の飽和攻撃が、天使たちを次々と斬り裂いていく。斬った端から回復されるなら、回復された端から斬り刻むまでの事だ。
「ふむ、こちらの妨害も効いていますね」
「くぅぅぅっ……」
 先に望が行った妨害のせいで天使の車輪の制御が乱れており、容易な防御も許さない。
 防御力も増しているせいでトドメを刺すには足りないが、鮮烈な痛みが常に襲えば、天使達の動きは鈍る。
「さて、いつまで耐えていられる?」
「くぅっ、こんなので……ぐ、がっ!」
 そうして動きを鈍った隙を逃さず、オリヴィアは強烈な蹴りを天使の腹に叩き込んだ。眩き白銀のグリーブが、天使の腹に深々とめり込み、蹴り飛ばす。
「ぐ、ふぅ……こ、この……くらいじゃ……」
「いいや、ここまでだ」
 腹を抑えつつもすぐにその痛みを消して立ち上がろうとする天使。だがその時にはすでにオリヴィアは聖槍を全力で振りかぶっており……その槍身の黄金に輝く炎は、直視出来ぬほどの光量で燃え盛る。
「聖槍よ、邪悪を貫け――ッ!!」
「っ――――!!」
 投げ放たれた聖槍は、防ごうとした天使の車輪を粉々に打ち砕いて土手っ腹に突き刺さり、地面に串刺しにした。抜けない刃が、傷の塞がりを阻害する。
「御使いを騙る悪しき者よ……還りなさい」
「つ、ぁ……」
 そのまま、炎は全身に広がり……回復を許さぬまま、天使の肉体を消滅させた。
「チャンス到来っ!」
「っ……!?」
 鬼燈も、同じタイミングで仕掛け、一気に連結刃を引っ張った。拮抗が崩れつんのめった所へ、懐に潜り込む。
「これなら、防がせないっ!」
「ごふっ!?」
 塞がりかけの斬撃の傷を、素手で貫き、抉じ開ける。ずぶずぶと右腕がめり込み、その臓腑を握りしめ……一気に引きずり出した。
「貰ったっぽいっ!」
「ご、は……!?」
 臓腑を引きずり出されてなお回復を始める天使だが、その再生する臓腑が呪詛により食い千切られる。
「ぅぁ、あ……あああっ……!」
「これでもまだ沈まないとか、往生際悪い……っぽい!」
 常に腸を百足に喰い荒らされる苦痛は、いかに強化された天使ですら耐えきれない。地にのたうつ天使の頭部に脚を乗せ、全体重をかけ、踏み砕いた。流石に頭が砕ければ、回復せずに消滅する。
「ボクらの兄弟達が……おのれ猟兵!」
 ついに一角が崩れた事に動揺する天使達。その動揺ぶりを、ヴィクティムは鼻で笑い飛ばす。
「──ハッ! 天使様とあろう者が、凶器振り回して戦の片棒を担いで……挙げ句、一人二人消えたからってその様かい」
「キミに、ボク達兄弟の何がわかる……!」
 怒りと苛立ちをもって睨みつけて来れば、さらなる嘲りの視線を返す。
「軍神の陣の力がなきゃ戦えない、つまんねえ腰抜けだな。所詮は助けてもらわなきゃまともに戦えもしねえ雑魚か」 
「それの何が悪い? ボクらは……いや、この場の軍勢全ては、謙信様の車輪を作り上げる部品の一つ。不満などある訳がない」
 元より一騎当千を誇る戦士ではない。挑発に動じず睨みつけてくる天使に、ヴィクティムは肩を竦めて言葉を重ねる。
「なら、自己紹介でもしたらどうだい? 僕は謙信の力が無きゃ戦場に立てない弱小天使です……ってな」
「っ、この、安い挑発を……!」
 内容が何であれ、罵倒を受けて苛立たぬ筈もない。天使達の顔が赤く染まるのを見て、瑠菜がぽつりと言葉を漏らす。
「つまり、謙信はそんな弱小天使に守られないと勝てないと」
「っ……この……ケンシン様に対して、そんなっ!」
 元より頭に血が昇りつつある状況での主君への罵倒は、煮え滾る油に火種を投げ込むようなもの。怒りに炎上した天使は、斧を構えて瑠菜に斬りかかる。
「うわっ、と!」
 その殺気に押されるように、慌てて後ろに下がる瑠菜。ムキになった天使はそれを追いかけ、一気に斬撃を振り下ろす。
「取り消せぇっ!」
「っ、甘いですよっ!」
 それをギリギリで回避……掠めるだけでも体勢を崩しそうになる威力に冷や汗を漏らしながら、勢いよく地面を蹴った。足元で大地が砕けるのを見下ろしながら、その破壊から逃れて空中へと跳躍する。
「逃がさないっ!」
「……逃げませんよっ!」
 無論、天使はすぐさま、翼をはためかせてそれを追いかけて来る。避けようのない空中に迫って来た天使へと、瑠菜は握りしめた左手を思い切り広げた。
「っ、うわぁっ!?」
「卑怯とか言わないでくださいね?」
 握りしめた砂が、こちらを真っ直ぐに見据える天使の両目へ上から降り注ぐ。思わぬ目潰しに狼狽する天使の頭をグッと踏みつけると、右手を大きく振りかぶる瑠菜。握りしめた拳が、ミチミチと軋むような音すら立てて。
「ぶっ飛、べやぁー!!」
 清楚で愛らしい姿にはそぐわない、腹の底から振り絞るような叫びと共に繰り出された右拳。全体重と全膂力を乗せた一撃が、天使を地面に叩きつけ、叩き落とした。
「あ……あら失礼しました。ふふ」
「ぐ、ぅぅぅ……」
 誤魔化し笑いと共に着地する瑠菜と、地面にできたクレーターに倒れる天使。骨が砕け苦悶しつつも、陣の力によって回復を始める。
「む……ここまで殴っても消えませんか。中々やりますね」
「つっても回復しかしない雑魚だろ」
 感心する瑠菜だが、ヴィクティムはむしろ肩を竦め見下す。その姿を天使はキッと睨みつけ、傍らに落ちた車輪を握りしめた。
「なら……これでも雑魚だって言えるか、試してみろっ!」
 天使の力を注がれた車輪は、一瞬で無数に分裂した。空を埋め尽くすほどの大量の車輪が、一斉に回転し、殺到する。
「はっ……」
 その光景を前にヴィクティムは薄く笑みを浮かべて棒立ちになる。まともに喰らえば命すら危うい車輪の雨、それを恐れず、心を凍てつかせ、覚悟を決めて。
「返すぜ? 一撃で砕けろ、スクィッシー」
「なっ……」
 その衝撃を全て吸収し、増幅して解き放つ。自身の力を全身に浴びた天使は、声もなく消滅した。
「くっ、また、兄弟が……!」
 3人目の消失でさらに天使達に広がる動揺。視線を行き交わせた彼らは、決断を下す。
「一端退こう……車輪を回すよ!」
 劣勢に陥れば即座に後退し、後方で回復と援護を受ける。その退いた穴は、別の部隊が即座に埋める。その連携こそ車懸かりの陣の真髄だ。ここまで追い詰めた天使達も、逃せば回復されてしまう。
「なるほど、確かに強力な陣形だねー」
 だがそんな姿を見ながら、緋瑪は呑気に感心した声を上げる。瑠璃と手を握りあい……その手の間に、巨大な力を集めていく。
「まあ、戦国時代なら、だけど」
「強力な陣形でも、幾つか破る手段はあるんだよ。それを見せてあげる!」
 投じられるは、殲滅の大爆弾。巨大な爆発が、逃げようとする天使達をその退路ごと、そして後続の進路ごと、呑み込んだ。
「な、ぁっ……!?」
「ほら、陣形なんて壊しちゃえば関係ないよね」
 破壊の姫のもたらす豪快な戦術に目を剥きながら、爆風で焼かれた全身を陣効果で回復する天使。そこに緋瑪が、機巧の翼を広げて急接近する。
「いくら逃げようとしたって無駄だよ。何度だって壊してあげる」
「だから……安心して殺されちゃいなよっ♪」
 右手の銃で援護を加えながら、左手で幾度となく爆弾を投じる瑠璃。爆風が吹き荒れ、地を砕き、退路を断つ。逃げられぬ天使に繰り出される大鎌。機巧が爆ぜる度に斬撃は加速し、天使達の身体を傷つける。
「何度回復したって、逃さないよ」
「く……くぅぅぅ……!?」
 傷つく度にその傷を塞ぐ天使、そしてその度に斬り裂く緋瑪。逃げる事もできず、釘付けとなった天使――焦る彼の周囲を、いつのまにか取り囲む猫。
「っ!?」
「頑張っているようですが、そろそろ消滅してもらいましょう」
 四方の猫がにゃあと鳴き、高まる魔力が重なり合って増幅する。そこに、自身の魔力も投じていく望。
「よし……じゃあやっちゃえっ♪」
「ええ、では……消えて、しまいなさい!」
 緋瑪が飛び退くと同時、瑠璃が爆弾を連続投下して逃げ場を封じる。そして次の瞬間、望は振り上げた王笏を振り下ろし……地上から立ち昇る光の柱と、空より降り注ぐ巨大な砲撃の二重奏が、天使を消滅させた。
「きょ、兄弟たちが……く、くそっ!」
 残された最後の天使が、慌てて後ろに飛翔する。爆風すらも突っ切って、陣へと下がる……その寸前。
「っ!?」
 いつの間にか張り巡らされていた細いワイヤーが、その身体を絡め取った。動きを封じられた天使へと、にこやかに微笑みかけるフランチェスカ。
「あら、後ろへ戻られるのですか?」
「こ、この……」
 背負う無数の光焔が、白翼の羽ばたきと共に天使へ迫る。身構え耐えようとする天使の前で、その光はぶつかりあい、混ざり合う。
「でしたら、お土産にどうぞ?」
「な……!」
 渦巻く光焔が、巨大な三叉槍を象る。収束した熱量の塊が、天使へと迫り――避けようにも、翼にワイヤーが絡まっては身動きも取れない。
「け……ケンシン、様、申しわ……」
 最後の断末魔すら許さず――天使の骨まで灼き尽くされて消滅した。

 全ての天使が消滅し、この一体の陣は壊滅した。だが、陣の外でも、中でも、未だ戦いは続いている。
「上杉謙信を倒すためにも……もうひと頑張り、ですかね」
 穴の空いた陣の奥を見やり、望がそう一言呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


挿絵イラスト