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エンパイアウォー㉓~一筆啓上、地獄が見えた

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #一人称リレー形式

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●サムライエンパイアにて
 谷間の街道の傍にある廃村。
 普段は野犬も寄りつかないその地に往事の活気が戻っていた。
 多くの人々が往来を歩き、祭りの爆竹を思わせる音が村の外から聞こえてくる。
 ただし、『人々』というのは普通の人間ではない。生者ですらない。奇妙な水晶を肩から生やした屍――水晶屍人だ。
 そして、外から聞こえてくる音も爆竹のそれではなかった。
 銃声である。

「えーい。埒が明かん……」
 谷の一角から廃村を見下ろして、甲冑姿の武士が苛立たしげに足踏みしていた。
 周囲では配下たちが隊列を組み、水晶屍人の群れめがけて火縄銃を何度も発砲している。敵の手が届かぬ遠距離からの攻撃。しかし、戦果はいまひとつだった。元は人が住んでいた場所なので、遮蔽物が多いのだ。いや、それ以前に標的が多すぎる。
「こんなところで時を無駄にするわけにいきません。谷を降りて、一気に攻め入りましょう!」
「ならん!」
 配下の一人が進言したが、武士はすぐさま却下した。
「忘れたか? あの亡者どもに噛まれてしまったら、我らも同族と化してしまうのだぞ。下手をすると、時どころか命までもを無駄にしてしまうわ」
「しかし……」
「いいから、撃て! 撃ち続けろ!」
 厳しい顔で怒鳴りつけた後、武士は空を見上げて呟いた。
 その声は銃声に紛れ、誰の耳にも届かなかったが。
「天下自在符を持つ猛者たちがここにいてくれたなら……」

●グリモアベースにて
「サムライエンパイア産のスイカで暑気払いだぁーっ! にゃはははははは!」
 伊達姿のケットシーが猟兵たちの前で半円形のスイカに顔を突っ込んでいた。
 グリモア猟兵のジャスパー・ジャンブルジョルトだ。
 瞬く間にスイカを皮だけ(『もう皮も食っちまえばいいじゃん』と言いたくなるほど薄い皮だった)にして、無数の種をマシンガンさながらに口から吐き出すと、JJは本題に入った。
「どでかい戦争がサムライエンパイアで進行中なのは知ってるよな? その戦争の序盤で『水晶屍人』とかいうゾンビみたいな連中が猛威を振るっていたんだが、指揮官に相当するオブリビオンが倒されたから、今では烏合の衆と化してんだよ。で、その烏合のゾンビどもを奥羽の諸藩の武士たちが掃討してるんだが……あんまり捗ってないんだ。まあ、しょうがねえよなぁ。水晶屍人に噛まれると、自分も水晶屍人になっちまうから、ちまちまと遠距離からかたづける非効率的なやりかたで対処するしかねーし。しかし、それは常人の武士の話!」
 スイカの皮を捨て、地図を広げるJJ。地図の一点には朱色の丸が記されている。
「猟兵たるおまえさんたちなら、水晶屍人に噛まれてもへっちゃら! つーことで、奥羽の武士たちに代わって、水晶屍人どもをやっつけちゃってくれ。水晶屍人の群れがいるのは……ほら、この丸印がついてるところ。街道の脇のゴーストタウンだ。昔は宿場町として利用されてたんだけど、数年前に流行り病のあおりを食らって放棄されたんだとさ」
 件のゴーストタウンは谷の麓にあり、その谷から流れる川によって分断されている。川に架けられた三つの橋はどれも老朽化しているが、まだ崩れ落ちてはいない。中央付近に立てられた火の見櫓も健在だ。櫓には半鐘が残っているので(錆ついているが)、景気よく鳴らせば、仲間や武士たちになにかの合図を送ることもできるだろう。
「もう誰も住んじゃいねえんだから、家だの橋だの櫓だのを壊しまくっても文句は出ないし、場合によっては火を放っても構わない。そう、好きなだけ――」
 JJはスイカの種を吐き捨て(まだ口中に残っていたらしい)、ニヤリと笑った。
「――暴れまくるがいいさ」


土師三良
 土師三良(はじ・さぶろう)です。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。このシナリオの結果が成功となった場合、1000名の奥羽武士が幕府軍に合流して戦力が増加します。

 シナリオの種別は「冒険」ではありますが、実際の内容は山中のゴーストタウンでの集団戦です。『十三人の刺客』(どちらかというと、オリジナル版のほうが好き)とか『将軍家光の乱心 激突』の後半部のようなノリ。ただし、こちらが攻め込む側ですが。
 敵の数は非常に多いですが、全員がザコな上に統率が取れていません。正面から突っ込み、バッタバッタと斬り伏せるもよし。建物の物陰にでも身を潜め、確実に仕留めていくもよし。大がかりなギミックを用いるもよし。谷の中腹に陣取っている武士たちに援護射撃を要請することもできます。

 それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。

 ※章の冒頭にあるPOW/SPD/WIZのプレイングはあくまでも一例です。それ以外の行動が禁止というわけではありません、念のため。

 ※基本的に一度のプレイングにつき一種のユーベルコードしか描写しません。あくまでも『基本的に』であり、例外はありますが。
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第1章 冒険 『水晶屍人掃討戦』

POW   :    多数の水晶屍人の群れに飛び込み、体力の続く限り暴れまくる

SPD   :    群れから逃げ出そうとする水晶屍人を発見し、逃がさないように掃討する

WIZ   :    策略を駆使して、多くの水晶屍人を逃がさずに殲滅できる状況を作り出す

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大豪傑・麗刃
日ごろわたしは皆から変態と呼ばれている。
まあ、確かに普段は多少ふざけているかなーという自覚がなくもない。が、曲がりなりにもサムライエンパイアの出。今回ばっかりはネタ抜きのシリアスで行くのだ。

さて今回だが、うん、なんとなくアレだ、敵の首を針で刺すとか、屋根の上に運んだ後で落とすとか、そんなことやりたくなる衝動にかられるのだ。でもまあ、敵は多数だし、普通に斬る事にするのだ。

ということで。

はあああああああああ(それっぽい気合)

(スーパー変態人発動!!)

ということで右手に刀と斧!左手には脇差2本(と呼ぶには大きすぎるバスタード・ヒーロー)!これで敵中に突撃して斬って斬って斬って斬って斬りまくるのだ!


鈴木・志乃
……大丈夫
ちゃんと皆、還してあげるからね

UC発動
祈り、破魔の全力魔法を籠めた歌唱の衝撃波で、安倍晴明の邪法を根こそぎなぎ払うよ
居るべき場所へ還らなきゃ
未練も、空虚も、後悔も、皆まとめて祓うよ
その為に私は在るから

人の幸福を助け、見守る為に生み出された神様の創作物
全てを照らす光そのもの
……本当はみんなみんな生きていられれば良かった
だけどもう、その願いは叶わない

せめてこれ以上誰かを呪わないよう
不幸に包まれたまま
意志を奪われたまま死なないよう
持てる限りの精一杯の力で思い切り、呪いを打ち破るよ

敵攻撃は第六感で見切り光の鎖で武器受けする

安倍晴明とかどうでもいい
今はただ、皆が安らかに眠ることだけを
祈る


菱川・彌三八
数日、どうにも腹の虫が収まらねェ
昔の熱でも取り戻したみてェに、いつまでも燻りやあがる
暑気払い上等、だが
こちとら笑い事でねェのサ

筆を挟んで手を合わせ
では

「一筆啓上仕り候」

素早く群れン中突っ込んで、独鈷で四方を牽制しながら目ん付く限りをぶち壊す
一人も逃す事のねェように、韋駄天で追い駆けて、追い付いて
独鈷はあくまで多勢用
一人々々壊すのは、阿字を書いた俺の拳サ

元ァ人なんだろ
手前ェの近しい人を襲って、そねェな事してェ奴がどこにいる
せめてもの弔いでェ
独り善がりぁ分かってら

俺ァ噛まれても何ともねェたァ、いよゝゝばけものじみてきやがる
それならとことん付き合っちやれる
波に千鳥も使って
久々に派手な喧嘩になりそうデ


草野・千秋
水晶屍人、下っ端ゾンビとは聞きますが
なんでも油断は禁物ですね
気を引き締めていきましょう
この世界、エンパイアにも
褌を締め直してって言い回しありましたっけ?
ともあれいきますよ!
(変身)
断罪戦士ダムナーティオー推参!

勇気をもってしてこの戦いに挑む
戦闘序盤は2回攻撃とスナイパーと範囲攻撃をメインに当てていく
UCを発動させて敵勢力を蹴散らしたりも
敵体力がある程度削れたら全線に出て接近戦に挑む
怪力パンチキックだ、正義の制裁!
敵の攻撃は第六感でかわせるものはかわして
避けられない場合は、武器受け、盾受け、激痛耐性で受ける
仲間の皆さんが攻撃されそうならかばう
痛みに耐えて笑ってこそヒーロー!
僕は怯まない!



●菱川・彌三八(彌栄・f12195)
 街道の脇道に入り、急拵えの木の柵(奥州のさむれいたちが作ったのかな?)を乗り越えて、えっちらおっちらと坂をのぼりゃあ……ほおら、見えてきた。今回の戦場がよぉ。
 名も知れねえ川が横切る、これまた名も知れねえ村。
 普通、こういう場所に来りゃあ、優しいせせらぎが聞こえてきて、涼しい風が吹いてきたりするもんだ。だけども、聞こえてくるのは『あ゛あ゛あ゛』だの『う゛う゛う゛』だのといった苦しそうな呻き声だし、吹いてくる風には腐臭が混じってやがる。
 それというのも、数えきれねえほどの水晶屍人が村の往来を埋め尽くしているからだ。
 水晶屍人ってのは、その名の通り、両肩からでっかい水晶を生やした死人。UDCアースなら『ぞんびぃ』とか呼ばれる類の化け物だが……奴らだって、好きこのんで化け物になったわけじゃねえ。
 そう、好きこのんでなったわけじゃねえんだ。
 くそっ! どうにも腹の虫がおさまらねえ。昔の熱でも取り戻したみてえに、いつまでも燻りやがる。
「……大丈夫」
 と、俺の横で女が呟いた。今回の戦いに加わった猟兵の一人。オラトリオの志乃だ。
「皆、ちゃんと還してあげるからね」
 もちろん、それは俺の腹ん中の燻りを消すための呟きじゃない。志乃はじっと村のほうを見つめている。水晶屍人たちに語りかけてるんだ。
「未練も、空虚も、後悔も……まとめて祓うよ。そのために私はあるから」
「うーむ」
 と、志乃に続いて声を出したのは麗刃。なんともコセイ的なご面相(絵師としての創作意欲ってやつが刺激されるぜ)をしたさむれえだ。
「なんとなく、アレだ。敵の首を簪で刺すとか、三味線の撥で喉笛を切るとか、屋根の上に運んだ後で落とすとか、そんなことやりたくなる衝動にかられるのだ」
「……なんだ、そりゃ?」
「でも、まあ、敵は多数だし、普通に斬ることにするのだ」
 俺の言葉なんざ聞こえねえような顔をして、麗刃は自分の腰に目をやった。たぶん、そこに差している得物を確認したんだろうが……その数は一本や二本じゃねえ。武蔵坊弁慶とタメを張れるんじゃねえか。

●鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)
「水晶屍人というのは下っ端のゾンビと聞いていますが、油断は禁物ですね」
 眼鏡をかけた長身の男性――サイボーグの千秋さんがゆっくりと歩き始めました。
 水晶屍人たちがいる村に向かって。
「気を引き締めていきましょう。そういえば、『褌を締め直す』って言い回しがサムライエンパイアにもありましたっけ?」
「あるのだ」
 足を止めずに問いかける千秋さんに麗刃さんが答えました。
「しかし、れでぃーの前で『褌』などという言葉を出すのはいかがなものかと思うのだ」
「それもそうですね。ごめんなさい」
 こちらに振り返り、無邪気な笑顔で謝る千秋さん。どうやら、私のことを『れでぃー』と見做してくれたようです。
『いえ、お気遣いなく』と返す間もあらばこそ、千秋さんはまた正面に向き直りました。
 そして、ベルトに手をやり――
「断罪戦士ダムナーティオー、推参!」
 ――大声を張り上げました。
 ベルトが光を放ち、彼の後ろ姿は一瞬にして変化しました。より戦闘的なものに。それにもう歩いてはいませんでした。走っています。土煙をあげて。
「はああああああーっ!」
 麗刃さんが負けじと叫びました。なにかのユーベルコードを使用したらしく、メッシュの入った髪が逆立ち、独特の衣装(着流しとジャージという取り合わせです)に包まれた体が金色に輝いています。
 その金色の輝きを鈍色の刃が照り返しました。麗刃さんが腰から武器を抜いたのです。信じられないことに四つも。右手にサムライブレイドと斧、左手に大振りの剣を二本。こうやって直に目にしているにもかかわらず、どのように保持しているのか判りません。
「あああああぁぁぁぁぁぁーっ!」
 叫び続けながら、麗刃は千秋さん(『ダムナーティオーさん』と呼ぶべきなのでしょうか?)を追いかけ、すぐに並び、同時に村に突入しました。
 そして、他の猟兵――絵師の彌三八さん、髪が発光しているミレナリィドール、青い竜派ドラゴニアン、黒髪の女の子、妖狐の女性、オッドアイのメイドさんたちも。
 もちろん、私も。

●大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)
「あ゛あ゛あ゛……」
「う゛う゛う゛……」
「お゛お゛お゛……」
 当然のことながら、水晶屍人たちは麗ちゃんたちを放っておかなかったのだ。金属が軋む音にも似た苦鳴を漏らしつつ、よたよたよした足取りで襲いかかってきた。
 そして、これも当然のことながら、麗ちゃんたちは怯んだりしなかったのだ。そう、誰一人として! いや、皆に確認したわけではないけれど。
「たたみかけます!」
 ダムナーティオーこと千秋くんが全身の飛び道具を周囲の水晶屍人めがけて一斉発射。すごい迫力なのだ。
 何体かの敵が倒れ、その向こう側にいた彌三八くんの姿が視界に入ってきた。商売道具らしき筆を挟んで手を合わせているのだ。
「一筆啓上仕り候」
 彌三八くんは筆を素早く走らせて拳に梵字を書き記したかと思うと、水晶屍人の群れに飛び込んだ。
 腕を突き出し、歯を剥き出して、迎撃しようとする水晶屍人たち。しかし、彌三八くんは目にも止まらぬ速さで蛇行しながら、柄が独鈷杵のようになっている剣(ユーベルコードで生み出されたものか?)を矢継ぎ早に放ち、並み居る敵を倒していく。見ている分には爽快かつ痛快。でも、本人はきっと楽しんではいないのだ。
 なぜなら――
「元ぁ、おまえらもヒトなんだろ?」
 ――悲しい声が聞こえてきたから。
 敵の数が少なくなってくると、彌三八くんは独鈷杵型の剣だけでなく、梵字を書いた拳を振るい始めた。水晶屍人たちの頭を砕き、あるいは首を叩き折り、あるいは左胸を貫いて、とどめを刺していく。
「これがせめてもの弔いでぇ……ああ、独り善がりってのは判ってらぁ」
 彌三八くんの呟きはあいかわらず悲しげだが、激しい怒りも感じられる。とはいっても、水晶屍人たちへの怒りではないのだ。水晶屍人を生み出した者への怒りなのだ。それとも、倒すことでしか水晶屍人を救えない自分自分への怒り?
 なんであれ、彼の気持ちはよく判る。
 この麗ちゃんも――
「――ものすごく怒っているのだからぁーっ!」
 両手の四刀(この特殊な持ち方を投球に応用すれば、『変態ボール』とでも呼ぶべき技を生み出せるかもしれない)を振り回し、哀れな水晶屍人たちを斬って、斬って、斬りまくーる。
 麗ちゃんは常日頃から皆に変人扱いされているし、自分でもちょっとふざけたキャラだと思わなくもない。
 しかし、曲がりなりにもサムライエンパイアの出。今回ばっかりはシリアスに戦うのだ!

●草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)
 常識外れの四刀流(どうやって持ってるのでしょう?)で水晶屍人たちを斬り伏せていく麗刃さん。
 ダイナミックな攻撃ですが、少しばかり単調なので、すぐに動きを見破られてしまうかもしれません……が、それは知性を有した敵を相手にした場合の話。ゾンビに麗刃さんの攻撃パターンが読めるわけもありません。仲間の死骸を乗り越えて襲いかかっては四刀流に返り討ちにされ、自分も死骸に変わって、別の仲間に乗り越えられていきます。
 彌三八さんの戦いぶりもすごい。粋に着こなした格子柄の着物が返り血や肉片で汚れることを気にかける様子も見せず、水晶屍人を殴り倒しています。
 それに倣って……というわけでもありませんが、僕も接近戦に切り替えましょう。ダッシュで敵に迫り、パンチ! そして、キック! 食らえ、正義の制裁!
 あ!? 彌三八さんの横手から数体の水晶屍人が近付いていますよ。ヒーローたるもの、攻撃ばかりではいけません。余計なお世話かもしれませんが、私は敵たちと彌三八さんの間に割り込み、自分の体を盾にしました。
 しかし、すべての攻撃を防ぐことはできませんでした。彌三八さんの手首にガブリと噛みついた奴がいます。
「大丈夫ですか?」
「ああ」
 襲いかかってきた敵を殴りつけながら尋ねると、彌三八さんもまた敵を殴りつけながら答えました。
「生ける死人に噛まれてもなんともねえたぁ、俺もいよいよ化け物じみてきたな。しかし、だからこそ――」
 手首の傷を見ながら、彌三八さんは唇を曲げるようにして笑いました。
「――とことん、つきあってやれるってもんだ」
 そして、また先程のユーベルコードを発動させて、新たな敵へと向かっていきました。
 僕も別の敵を攻撃しようとしましたが――
「~~~~~♪」
 ――不思議な歌声が流れてきたかと思うと、その敵の体が無数の砂に変わり、崩れ去りました。
 歌声を目で追うと、そこにいたのはオラトリオの志乃さん。破魔の力を歌に乗せて、水晶屍人たちに浴びせているようです。
「本当は……みんな、みんな、生きていられればよかった。だけど、もう、その願いは叶わない」
 志乃さんは歌を中断し、先程まで水晶屍人だった幾つもの砂山を見回しました。
 悲しげな瞳で。
 その間も別の水晶屍人たちが志乃さんに近付いていきます。
 僕はそれを止めるべく動こうとしましたが、彼女は手をあげて制止して――
「せめて、これ以上、誰かを呪わないように……」
 ――自分に言い聞かせるようにそう言った後、また歌い始めました。
 先程と同じように砂と化していく水晶屍人たち。
 はたして、彼らや彼女らは誰かを呪わずに逝けたのでしょうか? 志乃さんが望んだとおりに……。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る

動く屍にされた者達がまだこれ程いましたか
敵を自軍の戦力に組み替える…効率的ではあるのでしょうね
もはや救えぬのなら、せめて速やかに眠らせましょう

<念動:オーラに破魔の呪>込め纏い行動補助と耐性強化
[ステラ+ケイオス]剣槍形態:伸縮自在、変則二刀流や投擲も。
《不死鳥》召喚<破魔の呪>込め術砕き、水晶への特攻性持たせる
半数の炎で武装を包み強化、
残り半数を<誘導・呪殺弾>射撃や一斉発射で面制圧に使用

堂々と村に近づく
炎を振るえば目立ち、指揮官がいない現状生者に寄ってくるはず
<地形の利用・拠点防御・知識>場所によっては援護も期待できる。
せめて安らかな眠りを…


コルチェ・ウーパニャン
よしよしおさむらいさん達! コルチェにも任せてね!
コルチェ、ナントカだから高いところだーいすき!

ピカリブラスターに特売シールをペッターン!
火の見櫓へよじ登って、上からお空に向けてピカブラをキュルルルーン!
光の雨を降らせるよ!
ゾンビは怖いけど、遠くからなら怖くありませーん!
おさむらいさんの方へも降らせて、光のシャワーで壁を……

……あっ、よじ登ってきたらめちゃ怖くない!? ホラー映画のお約束!?
コルチェ見たことないもん!!
えーとえーと(頭がピカピカ読み込み中)
慌てないで、慌てないで、近距離射撃を……
……わーん!やっぱり近いのはムリ!
火の見櫓から飛び降りて、下からもっかい、光の噴水!大売り出しだよ!


セゲル・スヴェアボルグ
屍人にはならんが、体から水晶が生えたりはするのか?
まぁいずれにしても、奴らは群がってくるなら話は早い。
ど真ん中に突っ込んでまずは俺に群がらせるとしよう。
なに、多少の痛みなど問題ない。多少は盾でいなせばいいしな。
後は大きく振りかぶって斧を叩き付けてやればいい。
これだけでも相当な数は削れるはずだ。
繰り返せば流石に疲れるが、武士たちが弓で狙うにしても、纏まっていた方がやり易かろう。
無論、武士たちの方に行かぬようコントロールする目的もある。
逃げるやつや武士の方へ抜けていきそうなやつは適当に槍を投げて追撃するとしようか。


王・笑鷹
エルザ(f17139)と

さて、お立ち会いネ。
いざ尋常にといいたいケド、こういうトコロに出る狐は、化かすのがお約束ヨ。
エルザは使用人というか、用心棒?

大丈夫って聴いても噛まれるのはぞっとするネ。
だから、ワタシは遠くから狐火を飛ばすヨ。
囲まれても大丈夫、ワタシの逃げ足は早いからネ。
ワイヤー投げて木の枝に逃げたりして、ある地点に誘き寄せるヨ。

大立ち回りはエルザにお任せ、ネ!
大体この辺り、地面の下には親分から戴いた火薬がたっぷり仕込んであるヨ。
ワタシの炎と、エルザの雷を合わせて。
映画でのお約束、大爆発ネ!!

水晶屍人サンも可哀想ネ。
ケチなワタシでも、三文銭くらいは置いていってあげるヨ。

オヤスミナサイ。


エルザ・ヴェンジェンス
笑鷹様(f17130)と

えぇお任せください。
この手の場所に出てくる使用人というのは往往にして強いもの。

サイキックエナジーを込めた拳にて近接と参りましょう
傷は気にしません。噛み付いてくれば其処におりましょう?

家財を器用に使いましょうか。桶では倒れずとも足にはひっかかりましょう?

笑鷹様がゾンビを連れて来られれば、出迎えます

笑鷹様、お任せください。
サイキックブラストにて水晶屍人達の足を止めましょう
最大威力にてお相手します。
ご存知かと。全て炎の中にて終わるのですよ?

ふふ、笑鷹様らしいですね
死者にコインを送る風習は私の方にもございました
(ポケットから取り出したコインを置いて)

どうぞ、次こそは良き眠りを。



●王・笑鷹(きんぎつね・f17130)
『あ゛あ゛あ゛……』と呻きながら、目についた獲物に群がる水晶屍人たち。ゾンビ映画なら、スプラッターな捕食シーンが始まるところだけど、この現実世界ではそうはいかないネ。
 だって、水晶屍人たちが群がった『獲物』は猟兵だから。
 数で勝っているとはいえ、力の差は歴然。猟兵に殴られたり、斬られたり、撃たれたりして、水晶屍人たちは次々と倒れていくヨ。オラトリオの歌を聴いて、ボロボロと崩れちゃうのもいるネ。それにしても、綺麗な歌声ネ。お金を取れるレベルよ。優秀なマネージャーが必要なら、いつでも声をかけてネ。
「ふん!」
 おー!? 水晶屍人が群がってる場所の一つから気合いの声が聞こえてきたかとも思ったら、水晶屍人たちが吹き飛ばされたネ。
 で、吹き飛ばしたセゲルの姿が見えたヨ。青い色したゴツい竜派のドラゴニアン。体に負けないくらいゴツい武器(斧だか錨だかハンマーだかよく判らない代物。高く売れそうヨ)をブンブン振り回して、残った水晶屍人も始末してるネ。迫力満点。これを見せ物にしたら、確実に儲かるヨ。優秀なプロモーターが必要なら、いつでも声をかけてネ。
「どうした、これで終わりか? ……などと挑発しても、理解できるほどの知能は残っていないか。煽り甲斐のない連中だ」
 別の水晶屍人の群れに向かって、のっしのっしと歩いていくセゲル。積極的に敵を引き寄せたり、自分から近付いたりして、ドッカンドッカンやっつけていく方針なのかな。
 すごいネー。でも、ワタシには無理ネー。いくら大丈夫といっても、得体の知れないゾンビに噛まれるのはゾッとするからネー。こうやって、遠くから狐火を飛ばして戦うのが性に合ってるネー。
 あら? 距離を置いて戦ってるのはワタシだけじゃなかったみたいヨ。誰かが火の見櫓にのぼってる。あれは……ミレナリィドールのコルチェ?
「コルチェはナントカだから、高いところ、だーいすき!」
 陽気な声が火の見櫓から落ちてきたヨ。
 いや、声だけじゃないネ。光がいっぱい降ってきたヨ。そう、光の雨! 櫓の周囲の水晶屍人たちに降り注いで、体を穴だらけにしていくネ。コルチェのユーベルコードなのかな? とても綺麗ネ。これも見せ物にしたら、絶対に儲かるヨ。優秀なエージェントが必要なら、声をかけてネ。
 さて、この光のショーをずっと見ていたいところだけど、ワタシは暫く戦線離脱させてもらうヨ。
『お約束』の仕込みをするためにネ。

●コルチェ・ウーパニャン(マネキンドールのピカリガンナー・f00698)
 ナントカとぉ~♪ ナントカはぁ~♪ 高いところが好きぃ~♪ ……あれ? どっちもナントカじゃ判んないか。
 今、コルチェがいるのは、たかーい火の見櫓の上。スーパーガンの『ピカリブラスター』にユーベルコードな特売シールをペッターンと貼って、お空に向けてキュルルルーンと撃てば……ほーら、光の雨が降るぅ!
 ゾンビは怖いけど、こうやって遠くから攻撃するなら、怖くありませーん! はっはっはっ!
 それにね。高いところにいれば、村全体を見渡すこともできるんだよ。うん、ゼッケーかな、ゼッケーかなー。
 皆が戦っている様子もよく見える。四つの武器を振り回してるおさむらいさんとか、メガネをかけたサイボーグさんとか、走り回ってる絵師さんとか……おや? メイドさんの格好をしたエルザちゃんもはっけーん! 
 エルザちゃん、かっこいー。何体ものゾンビを相手にして、すずしげな顔で大立ち回り。パンチ、パンチ、パーンチ! 足下にあった桶を蹴って、ソンビの足にひっかけたりもしてるよ。で、動きが鈍ったゾンビにまたパーンチ!
 桶みたいな普通の道具をたくみに利用するなんて……こういうの『ナントカとナントカは使いよう』って言うんだっけ? 言わない? てゆーか、どっちもナントカじゃ判んないかー。
 ん? 遠くばっかりに気を取られてたけど、櫓のすぐ下でもユイちゃんが戦ってる。ユイちゃんはね、普通の女の子に見えるけど、ホントはなにかのツクモガミなんだって。
「もはや、救えぬのなら……せめて、速やかに眠らせましょう」
 そう言って、ゾンビ軍団を斬り倒していくユイちゃん。穂先が長い槍のような、柄の長い剣のような、不思議な武器を使ってる。
 その武器がもっと不思議になった。
「舞え」
 と、ユイちゃんが腕を横に振ったら、どこからともなく炎が湧き出てきて、刃を包み込んだから。
 でも、武器にくっついた炎は半分だけ。残りの半分は分裂して、たくさんの火の玉になって飛んでいった。もちろん、行き先はゾンビ軍団。
 火の玉の連射を浴びて、ゾンビ軍団は燃えちゃった。運良く命中しなかったのもいるけど、そいつらはユイちゃんが燃える武器で素早くしとめたよ。ユイちゃんもかっこいー。

●月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)
 周りにいた水晶屍人を焼き殺し、あるいは斬り殺した後も私は『不死鳥(フェニックス)』という名のこの炎(に見える概念兵装)を消さなかった。
 いくつもの炎弾に分かたれていたそれらを再び集結させ(でも、ドラゴンランス『ケイオス』の刃を包む炎はそのままにしておいた)、より激しく燃え上がらせる。こうやって目立っていれば、敵が近寄ってくるはず。炎に誘われる蛾のように。
 数秒も経たないうちに往来の向こうから新手の水晶屍人たちがやってきた。
 そして、別の者も。
 水晶屍人たちに『不死鳥』を放とうとした時、横手の小路から黒い影が飛び出したの。
 メイドの衣装に身を包んだエルザさんよ。
「あ? お邪魔をしてしまいましたか。申し訳ありません」
 視界に入ったであろう私に謝りながらも、エルザさんは動きを止めることなく、水晶屍人を攻撃した。サイキックエナジーを込めたと思わしき拳で顔面を粉砕し、勢いを殺さずに反転して、別の水晶屍人の顔面に裏拳を叩き込む。
 ここに来るまでの間も彼女は激しい戦闘を繰り広げていたらしく、身体のあちこちに返り血がついてる。いえ、本人の血も混じってるのかしら?
「怪我してるみたいだけど……大丈夫?」
 炎を纏った『ケイオス』を構えて水晶屍人たちに斬り込みながら、私はエルザさんに訊いた。
「問題ありません。噛みついてくれれば――」
 そう言ってる間にも水晶屍人が左腕に噛みついたけど、エルザさんは眉一つ動かさずに右の拳でそいつの頭を叩き潰した。
「――狙いがつけやすいというものです」
「猟兵が噛まれても屍人にはならんらしいが、体から水晶が生えたりしないだろうな」
 軽口を叩きながら、セゲルさんも戦いに加わった。鎚のような斧を豪快に振り回して、複数の水晶屍人をまとめて倒していく。
「いや、水晶が生えるのも悪くないかな? 意外と見栄えがいいかもしれん」
 エルザさんと同じようにセゲルさんも血を流している。それをまったく気にしていないという点もエルザさんと同じ。
「しかし、さすがに疲れてきたなぁ。数が多すぎるぞ」
 ぼやきながら(言葉に反して、ちっとも疲れているようには見えないけど)、セゲルさんは斧を槍に持ち替え、無造作に放り投げた。
 それは重い唸りをあげて飛び、離脱しようとしていた一体の水晶屍人の体を背中から刺し貫いて、地面に縫い止めた。

●セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)
 俺が自分の身をさらして水晶屍人を一所に集めているのは、谷にいる武士たちの銃撃を手助けするためでもある。敵がまとまっていたほうが撃ちやすかろう?
 こちらの意図は武士たちにも伝わっているらしく、谷のほうから銃声が断続的に聞こえ、その度に水晶屍人が倒れたり(おみごと)、倒れなかったり(外すなよ)。
 倒れるのは集団の縁にいる水晶屍人ばかりだが、それは中心にいる俺や他の猟兵に流れ弾が当たらないようにという配慮だろう。もっと派手に撃ってくれてもいいんだが……などと言ってはいられない。近くの水晶屍人は自分の力で排除するしかない。戦斧(いや、戦斧に見えないのは重々承知しているさ)の『イースヴァーグ』を上下左右にブン回し、肉片と水晶の破片に変えていく。
 ちなみに援護射撃をしているのは武士だけじゃない。いや、『だけじゃなかった』と言うべきか。笑鷹という妖狐の娘も狐火を撃っていたんだが、先程から姿が見えなくなっている。どこに行ったのやら……と、思っていたら、近くの家の屋根の上にひょっこり現れ、火の見櫓のほうを指さした。
「あらら? コルチェがピンチみたいヨー」
「ピンチ?」
『イースヴァーグ』で敵をミンチにする作業を続けながら、顔だけを動かして櫓のほうを見てみると……おいおい。水晶屍人たちが櫓をのぼってるじゃないか。俺やユイは櫓の傍で戦っていたんだが、直立不動ってわけじゃないんで、いつの間にか離れていた。その『いつの間にか』のうちに一部の水晶屍人たちが頭上のコルチェを攻撃対象と見做したらしい。
「あー! これ、怖くない!? めちゃ怖くない!?」
 櫓の上で悲鳴らしきものをあげるコルチェ。
「コルチェ、油断してたー! ゾンビは単調な行動しかできないと思ってたから! ほら、ナントカのナントカってやつ!」
 いや、ナントカばかりでは判らん。
「それを言うなら、『バカの一つ覚え』ネ」
 なぜ判るんだ、笑鷹?
「ゾンビをなめちゃダメね。そういう風に高い場所に追いつめられるのはホラー映画のお約束ヨ」
「コルチェ、ホラー映画なんて見たことないもん!」
 コルチェの頭髪がピカピカと点滅している。この窮地(と言うほどのものか?)を切り抜ける策を考えてるらしい。
「えーっと、えーと……わーん! やっぱ、無理!」
 策など思いつかなかったのか、コルチェは櫓から飛び降りた。最初からそうすればよかったような気がするが……まあ、いいか。櫓をのぼる水晶屍人たちと空中ですれ違い、足をめり込ませるようにして着地。そして、その足をすぐに引き抜き、走り出した。珍妙な光線銃を空に向けながら。
「光の噴水! 大売り出しだよー!」
 光線銃に貼られた特売シールから何本もの光線が迸り、櫓の水晶屍人たちを次々と撃ち落とした。
 それにしても……何故に特売シール?

●エルザ・ヴェンジェンス(ライカンスロープ・f17139)
 拳の一撃で倒せるような敵であるとはいえ、数が多いのは厄介ですね。一網打尽とまではいきませんが、ある程度の数を一気に減らすために私は行動を開始しました。
 戦闘を続けると同時に移動し、セゲル様やユイ様から徐々に距離をあけつつ、水晶屍人の一団をある場所へと誘い込み……いえ、『一団』と呼べるほどの数は誘えませんでしたが、問題はありません。
「やっほー、エルザ! 準備はいいかナ?」
 笑鷹様が御自分を囮になさって、数十体の敵を連れてきてくれたのですから。
「はい」
 と、答えた私の視線がやや上向きになっているのは、笑鷹様が宙を舞っているからです。といっても、特殊な能力を使っているわけではありません。木の枝や家屋の庇に投じたワイヤーに掴まって、振り子のように移動し、また別の場所にワイヤーを投じて、振り子になって……ということを繰り返しておられるのです(その素早さや器用さは『特殊な能力』の範疇に入るのかもしれませんが)。
 水晶屍人は私と同様に視線をやや上向きにして、届きもしないのに笑鷹様へと手を伸ばし、こちらに近付いています。
 その先頭にいる者を足止めすべく、私はサイキックブラストを放ちました。ほぼ同時に笑鷹様が傍に着地。
「ホラー映画に限らず、いろんな映画でのお約束――それが大爆発ネ!」
 笑鷹様は振り返り、御自分を追ってきた水晶屍人たちに目を向けられました。数秒前までワイヤーを掴んでいた手の上で狐火が揺らめいています。
「はい。すべて炎の中にて終わるのですよ」
 もう一度、私はサイキックブラストを放ちました。
 笑鷹様も狐火を放ちました。
 水晶屍人たちの足下めがけて。
 笑鷹様が大量の火薬を仕込んだ地面めがけて。
 次の瞬間、『お約束』であるところの大爆発が起き、生ける屍の群れは粉微塵に吹き飛びました。

「願わくば、安らかな眠りを……」
 ユイ様が首を垂れて呟いています。祈りを捧げるかのように。あるいは本当に祈っているのかもしれません。
 周囲には水晶屍人の死体(いえ、最初から死体だったのですが)が散乱しています。『お約束』の後も私たちは十数分ほど戦い続け、ようやくにして殲滅することができたのです。
 谷のほうからお侍たちの勝ち鬨が聞こえてきますが、私はこの勝利を素直に喜ぶことができません。おそらく、他の方々もそうでしょう。
「水晶屍人サンも可哀想ネ。ケチなワタシでも――」
 ユイ様の横で笑鷹様が屈み込み、小さな硬貨を地面に置きました。
「――三文銭くらいは置いていってあげるヨ。オヤスミナサイ」
 サンズの川とやらの渡し賃はロクモンだと聞いたことがありますが、それを半分に値切るなんて……ふふっ、笑鷹様らしいですね。
 死者にコインを送る風習は私の世界にもございます。
「ユイ様の仰るとおり、次こそは良き眠りを……」
 私はポケットからコインを出し、笑鷹様のサンモンセンの傍に置きました。
 死者たちに捧げられた二枚のコイン。冥福を得るには安すぎるかもしれませんが、足りない分は元凶たる安倍晴明に支払っていただきましょう。
 その穢れた命を以て。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト