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エンパイアウォー㉖~呼んだからにはテメェの命を賭けろ!

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「この坂は、きついですなぁ……」
 やや小太りの男は、少し重たい葛籠を背負い、一生懸命走っていた。
 体感としてはかなりの距離を、走ってきたが、用心棒から見れば一分一厘。
 彼の速度では、怒涛の追ってが迫りくるのも仕方がないと思われている。
「ややぁ! あれは役人ですかね?!? 足を掴まれるのは困ります!」
 ニィと笑う鬼たちは舌舐めずりして、商人が怯えた標的を見据えた。
「先生お願いします! もう、追手は全て血の海に沈めちゃってください!」


「さて、どうにも悪巧みするやつの後ろには、悪巧みするやつが芋づる式で見つかるらしいぜ?」
 フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)はニィと凄みを効かせて笑みを零した。グリモア猟兵の方が悪者のような笑い方をしてるが、そんなことはないので安心して欲しい。
「大悪災『日野富子』が放ッたッつー『悪徳商人オブリビオン』の足取りを掴んだんだ」
 地図は恐らくここだ、と指差した先は建物による遮蔽物などは特に無い、峠だ。
 腰より高い草が生えているだけで、何の変哲もない、普通の道とも言える。
「だがよ、……こいつの逃走をみすみす逃がすというのは面白くない」
 素早く行われた徳川埋蔵金探索のおかげで、存在が炙り出された『悪徳商人オブリビオン』。これに徳川側も、幕府の役人達が討伐と資産の没収に迅速に動き、追跡しているという。
「……これが、オブリビオンなせいで引ッ捕えるのも一苦労なんだッてよ。んで、単刀直入にやるべき事をいい添えると、悪徳商人には既に役人共が見つかッてる」
 放っておくと血の海だ。誰も生きて戻れず、逃してしまう。
「だからこそ、猟兵にはこの場に助太刀する形で助力に向かって貰いたい。あちらに存在がバレてんだ、正々堂々打ち取りにいけばいい」
『悪徳商人オブリビオン』自体は、戦闘力が特にない。多少無視しても問題ないのだ。
 弱いからこそ、強力な手札を用意して、追撃者を撃退し続ける逃走劇に興じている。
「金で動く奴がやることは、そりャあ保身に決まッてらァ。用心棒が居るんだッてよ、強力なヤツな!」
 用心棒は意志疎通は出来ないが、会話を理解している利口な鬼だ。
 耳が相当良ければ聞こえるかも知れないが、……人語を理解し、正確に弱い物を見極めて襲う。
「……まァ、誰よりも弱いのは用心棒を雇った悪徳商人だろうけどな」
 その場を任せて、悪徳商人は逃げようとするが、悪鬼に囲まれれ捕まれ、わりと悲惨な目に合う。 弱かろうがオブリビオン、そう簡単には消えないが、なかなかおかしな光景に見えるかも知れない。
「気にするな、あれは金をケチッて雇ッた悪徳商人が悪いんだ」
 安価で雇い、潤っているだろう金を敵のもとに持ち帰られれば面倒だ。悪徳商人のオブリビオンは用心棒が討ち取られれば、潔く諦め消え去るノミの心臓持ちである。気になるなら打ち取るといい、捕まえた所でオブリビオン。躯の海に還って終わりだ。
「……これは、微量だろうが有り金全てを徴収してやる計画の一端である。蹴散らせ、そして持ち帰れ!」
 徳川の為に、というと媚を売るような気もするが。
 恩を売りつけておけば貸しにしてくれるかもしれない。
「一度しか言わねェぞ、徳川のために用心棒を打ち負かしてやれ。栄光は俺様たちの手の内にあるはずさ。…………恐らく、だが」


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 余所のサムライエンパイアより、ふぁんたじぃ寄り。
 自称、ふぁんたじぃえんぱいあとなっております。
 時代劇より、ふわっとしてるけれど、気にしたらまけです。

 集団戦、敵の名前は、禍鬼(まがつみ)、とよみます。
 役人は転送された猟兵を見つけると、危なくないよう少し離れますのでご安心を。
 決して、猟兵の邪魔をいたしません。金を取り立てるヤクザの気分で、乗り込んで貰えると……恐らく、雰囲気が出るのではないでしょうか。OPで示している通り、猟兵と役人は、敵に見つかっているところから始まっています。

 鬼退治と同時に、取り立てを行いましょう。
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦 『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』

POW   :    伽日良の鐵
【サソリのようにうねる尻尾(毒属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    欲欲欲
【血肉を求める渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    鳴神一閃
【全身から生じる紫色に光る霆(麻痺属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:ヤマモハンペン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

六代目・松座衛門
「やいっ! 神妙にお縄につきやがれ!」
役人達の後方から飛び越えるように登場しながら、人形「暁闇」を突撃させ、参戦する!

「この程度か? 用心棒!?」
『禍鬼』の「欲欲欲」による巨大化にも怯まず、挑発することで、大振りな攻撃をするように誘導しよう! その大振りな攻撃に対しては、人形による【フェイント】で避けて、相手の体勢崩しを狙う!

「隙あり! ニノ型「手繰り討ち」からの…演目「疾風」!」
狙い通りに体勢を崩したら、UC「手繰り討ち」で『禍鬼』の頭部へ急接近し、その勢いのまま【破魔】を纏った人形のUC「疾風」による連続攻撃を喰らわせる!

SPD選択。アドリブ、連携歓迎


鈴木・志乃
※人格名『昨夜』で戦闘



遠からん者は音に聞け
近くば寄って目にも見よ
我こそは心願成就の神子、昨夜なり
同志徳川家光の命により、禍つ鬼を成敗致す!

参ります

志乃の力を借りましょう
物理、魔法、どちらも敵に適う技を私達は持たない
であれば、『精神を直接破壊するより他ありません』
UC発動

たとえ肥大した体であってもその本質は欲、禍、鬼
【祈り、破魔】を籠めた【全力魔法の歌唱の衝撃波】で体内も精神も【なぎ払います(精神攻撃)】
その増強した力に私達の力が通用しますようにっ……

敵攻撃は【第六感で見切り】光の鎖で【早業武器受けからのカウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動
【念動力】で周囲の器物を巻き上げ攻撃と防御に転用


黒鵺・瑞樹
アレンジ連携可

悪徳商人らしいと言えばらしいよな。
正面切って戦うのは少しばかり苦手ではあるが、まぁなんとかなるだろ。

右手に胡、左手に黒鵺の二刀流。
【存在感】を消し【目立たない】ように移動、【先制攻撃】【奇襲】【暗殺】のUC菊花で攻撃。代償は寿命。
さらに動きの制限を狙って【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でダメージ増を狙う。
基本攻撃はこれらの繰り返し。なるべく多くを倒せるように立ち回ろう。

相手の物理攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれなものは黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】を叩き込む。
喰らったら【気合い】と【激痛耐性】【電撃耐性】でこらえる。



●The craving which grew

 禍鬼は役人たち目掛け、一気に坂を駆け下りてくるかと思いきや。
 指示を出した悪徳商人に一撃、二撃。
 鈍器のような棍棒を小太りの腹目掛けて振るうと、男はヒィイイと啼いた。
『(強者の気配は、嫌いじゃない。……が、酷い顔をコイツ以上に晒すヤツでもあるまい)』
 駄賃とばかりにおまけにもう一撃殴りつけ、痛がる様子を満足気に笑い飛ばして願いを叶えるように目標を切り替えた。うぉんうぉん、と重そうな棍棒を振り回し、同族を喚び集めながら敵対者を目指す。
「やいっ! 神妙にお縄につきやがれ!」
 役人たちの後方から迫った誰かは、軽々と飛び越えるようにして現れた。
六代目・松座衛門(とある人形操術の亡霊・f02931)は人形「暁闇」を突撃させながら、用心棒と対峙する。
「おぉ……上様の、援軍様であらせられますな。面倒をお掛け致しまするが、お頼み申し上げても宜しいか」
「悪徳商人らしいと言えばらしいよな」
 役人の問いに軽く頷きながら、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は少し遠くの峠の上で蹲った人影に呆れた感情を示す。
 雇い主が用心棒に殴られる光景。このままの契約状態であれば、遅かれ早かれ用心棒に命を持っていかれそうな関係だ。
「任された、って言っても……後始末はそっちでやってくれよ?」
「左様、そちらに関しては任されよ。届けは我々が、確実に遂行致しましょうぞ」
 右手に胡を、左手に黒鵺を携えて、松座衛門を追うように駆け出した。
 ――正面切って戦うのは少しばかり苦手ではあるが、まぁなんとかなるだろ。
 懸念こそあれど、瑞樹が地を蹴り走り出すより先に上空を飛んでいった影も在る。
「……遠からん者は音に聞け。近くば寄って目にも見よ」
 鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)は、普段と少し異なった姿でその場の空中で翼を広げ飛んでいた。
 そこにあったのは、白髪に赤い目をしたオラトリオ。
 度重なる戦場への介入で疲労が溜まり過ぎた志乃の意識は眠りに落ち途切れてしまっているようで、この場の志乃は別の人格が憑依し、見た目すら変わる程に誰かと入れ替わっているようだ。
「我こそは心願成就の神子、昨夜なり。同志徳川家光の命により、禍つ鬼を成敗致す!」
 大きく広げた翼で、滞空し、『昨夜』がそう言い放つと禍鬼との混戦の火蓋が切って落とされた。
『(血に染め放題の白き姿! 勇ましき姿を赤き沼へ沈める事が出来れば!)』
 吼えるように、感情を顕にして彼らは一様に笑った。
 引き裂き、悲鳴の果てに得られるものは彼らに取っては最大の報酬。
『(なんと、楽しい事だろう! 此処に地獄を成してみせよう!)』
 楽しき戦闘を夢見て、元の二倍以上の身の丈へと変じ、人丈の子鬼は大鬼へと変わる。体積の増した足で大地を踏む。
 ズシン、と小規模の地震が起きるが、猟兵達は特に何も脅威とは思わなかった。
「この程度か? 用心棒!?」
 巨大化に怯むことなく、松座衛門は強気の姿勢で挑発し、人形「暁闇」を繰りながら大げさに立ち回る。
『(デカいだけだと思ったか!)』
 サソリのような尾で激しく怒りを示し、地面を思い切り叩きながら棍棒を振り回すが松座衛門には当たらない。決して素手では触れず、「暁闇」で絡め取る様に操作板を操り、尾を捕らえて掴み倒す。
 体格の肥大を考慮しなかった事でバランスを崩し、禍鬼は呆気なく転倒した。
「隙あり! ニノ型「手繰り討ち」からの……演目「疾風」!」
 操作糸「領」は既にかの者と奏者との中継地点を繋ぎ、事前の準備は整っている。
 高速で糸を巻き上げて距離を詰め、無防備に晒された『禍鬼』の頭部に直接、破魔の力を纏った人形の演目を興じさせた。撫でるように舞わせたかと思えば、右から左から、まるで疾風のように殴りかかる。
『(グゥゥウ、連続で潰せば倒せるとの算段か! しかし……!)』
 大きく息を吸い込んで、禍鬼は感情を更に爆発させて、体格の肥大を試みた。
 食い込む糸を気にせず膨らむ鬼は、まさしく血を見るまで止まらぬ悪食。
 自身の怪我など考慮に入れない。膨らむ体に耐えきれず、糸がギシギシと嫌な音を立てた。
「これ以上は……まずいか!」
 瞬時の判断で、操作糸を解き、拘束を解けば禍鬼は一気に暴れだした。
「いいや、そうでもない」
 存在感を消し、目立たないように動いていた瑞樹の声。
 暴れだした体に、瞳を光らせて飛び上がり、二刀流で攻め立てる。
 刃が黒い大振りなナイフで的確に心の臓を狙い、打刀で障害を打ち払い、切り捨てる。鬼の分厚い皮膚を貫き、反撃を受ける。
『(攻撃を重ねるか! しかしそうはいかない、テメェの命を賭け……)』
 攻撃回数の代償を無視し、九回の連撃を繰り出す瑞樹は命を掛けている。
 思わず禍鬼は生唾を飲んだ。
 瞳の輝きが消えると同時に、生傷へと通常の状態で十字に斬り裂く。
『(痺れを齎しつつ、抉る……なんと、器用な剣戟を……!)』
「鬼の考える事は分からん。……が」
 痺れる手元では上手く棍棒を扱える気がせず、無造作に投げ捨て拳で瑞樹を狙うが、瑞樹は相手をよく見ていた。ひらりと交わし、更には増援として増えた他の禍鬼にも被害を増やしながら切り払い突き進んでいく。
「それが『痛い』という顔なのはよく分かる」
 正面から斬り結ぶのは苦手、というわりに鬼が周囲に浮かべた霞をも切り捨てて、感電に耐えながら身軽に飛び跳ねた。
 だんだんと遠くに向かう瑞樹の背中に、禍鬼は雄叫びを上げた。
 煩い小癪な、戻ってこいと喧嘩越しのような声色で。
 ――志乃の力を借りましょう。
 記憶をほぼ共有している『昨夜』はそう思う。
 ――物理、魔法。どちらも的に適う技を私達は持たない。で、あれば。
「『精神を直接破壊する』より他ありませんね」
 ――願いを、護るために。願いましょう。
 両手を広げて、神子は祈る。集まる力は神秘に満ち溢れ、体に宿った。
 祈願成就を達するためのエネルギーへと変換させて、禍鬼を睨んだ。
「たとえ肥大した体であってもその本質は『欲』、『禍』、『鬼』……」
 変えることのできない、存在としての属性。
 邪悪であるための要素は、純白の翼が纏う聖なる力との相性が極めて悪かった。
「歌声に乗せて、震撼させてみせましょう――」
 光のエネルギーで歌唱の声を増幅し、響かせ、どこまでも届かせる。
 歌は衝撃となり、凶悪にも元の四倍近く大きくなった禍鬼もろとも突き刺さり、多くの鬼の膝を折らせた。
 ――私達の力が通用しますようにっ……。
 精神に直接注がれた歌声は、澄んだ心には共感等を齎した事だろう。
 しかし、それを鬼が受け止めた場合は……。
 あまりの綺麗さに、膝を折った者達は一様に吐血し、怪しく煌めく瞳から血の涙を流し、昏倒した。
 聖者の歌声を受け止めるには、彼らは――邪悪に過ぎたのだ。
 血の涙を流し、体から血を流す満身創痍な状態であってもオブリビオン。
 消え去るまでは戦意が消えることはない。
『(白銀にも親しいその姿を、せめて血に!!)』
 霞を纏った腕を伸ばし、無残に切り裂こうとするが……。
「その手はどこにも届くことはありません」
 素早く見切られ、光の鎖で巻き取られ。
 間近で澄んだ綺麗な聖者の歌声を聞かされる事となり、攻撃に走った禍鬼は耐えきれず浄化されて消え去った。
「あと、この武器の放置はご遠慮願います」
 念動力で落ちていた棍棒を巻き上げて、吐血した一行に容赦なく叩き込んだ。
 聖者の念動力に染まった棍棒を握ると、その手は焼けるように痛んだ。
『(この、女ァアア!!!!)』
 鬼の声は、猟兵たちに届かない。
 そうして少しでも負傷した禍鬼を見過ごす者もなく。
 人形「暁闇」と破魔を叩き込み着実に一体ずつ消滅させていく松座衛門と奇襲を繰り返し、絶望の叫びを吼える鬼の首を瞳が輝く限り優先し撥ね続けた瑞樹の活躍でその峠の禍々しさは極端に減った。
 
 鬼の首は黒い煙を上げて消え、消えた数だけ悪徳商人の顔色は悪くなった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アウル・トールフォレスト
(※好きにお任せします)

正直に言うとね、とくがわ?とか、のぶなが?とかよく分かっていなんだけど…
兎に角、悪い人たちを懲らしめればいいんだよね?
それなら、わたし頑張るよ!

【深緑、底知れぬ恐怖を育め】を使用
誰もが見上げるほどの『高き森の怪物』に変身して、蹴散らしていく
爪を振るって引き裂いたり、直接掴んで握りつぶしたり、思いっきり踏みつけたり…戦い方は幾らでもあるよ

尻尾も雷も気にしない…毒が回るのにも、痺れるにも、『怪物』の巨体にはきっと時間がかかる…それまで生きていられるかな?
大きくなるなら歓迎だよ!その方が攻撃も当てやすいもの

運がなかったね
そういうものだと諦めて
だってわたし、『怪物』だもの



●Advancement

「あの、ね。正直に言うとね、とくがわ? とか、のぶなが? とかよくわかっていないんだけど……」
 見上げる程に大きな少女、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は、サムライエンパイアの地に訪れて少しばかり戸惑った。戦争らしいが、誰がどうしたという話は少し分からない。
 説明しようと役人が言葉を掛ける前に、ぶんぶんと両手を振って言葉を遮る。
 彼女は彼らからすればとても大きな姿をしていたが、とても優しい光を宿した深い緑色をしていた。その瞳は説明はいらないと、強い意志も写して。
「兎に角、悪い人たちを懲らしめればいいんだよね?」
 簡単で単純な問いかけに、役人たちが頷いて応えると、アウルは安心したようにふんわりと笑った。
 そんな姿を見ていた禍鬼たちはあれは徳川側の援軍だ、と認識し警戒を強めて行く手を遮るように動く。先程、体の大きさを倍に倍にと膨れ上がらせていた個体は殆ど消え去ってしまっている。……戦いに、少なからずの支障があるのだ。消え去った個体と同程度に大きい者が居ない為に、警戒レベルは格段に上がっている。
「それなら簡単だね、わたし頑張るよ!」
 ぽん、と手を叩いて目を静かに閉じる。
 再び開いた瞳は黄金の炎として灯っており、誰もが見上げるほどの大きな大きな『高き森の怪物』に変身していく。禍鬼から見れば変身というよりは、変貌というのが正しいかも知れない。
『(怒りの感情、血肉を求める渇望を越えて更に大きくなり続ける、のか……!?)』
 見上げ続ければ、後ろへ転倒しかねない程に巨大になったアウルを見上げ、殺戮の計画を考えているある個体は、……突如消失した。アウルの姿を視認し続け、攻略方法を考えていた禍鬼には見えていなかったが、鋭い爪で単純に引き裂かれたのだ。
「ほぉら、見上げてばかりいたらどんどん減ってく一方だよー?」
 身近な禍鬼を直接掴んで持ち上げ、大きさと相応の握力で握り潰す。
 断末魔すらあげるタイミングがないままに、玩具で遊ぶような気軽さで少しずつ鬼は物理的に砕かれていく。
『(同族の無念の分まで戦い続けろ! アイツを血祭りにあげればそれでチャラだ!)』
 体格差に圧倒的な振りを感じた禍鬼は、鬼らしからぬ作戦でアウルを攻め立てる。
 必ず血の海に沈める決意を感情に乗せて、決死の覚悟での戦闘力増加は……既に負っていた手傷と合わせてそこまで大きさを見込む事はできなかった。
 具体的には二倍の大きさの大鬼と、二倍に至らない程の中鬼が量産されのだ。
『(統率を取り、更に大きいものは確実な一撃を狙え!)』
 中鬼サイズの禍鬼は、全身から滲み出だす紫電の霞を体に纏って走る。
 道半ばで滅ぼされたとしても、微量な手傷でも、負わせられるように。
「わーい。大きくなっていっぱい一気にきたんだね。でもでもー……」
 高き森の角冠を揺らして、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「こうしちゃうと、みんな一緒に、一気にぺしゃんこさんだね!」
 洗濯物を踏み洗いするように、足元を覗き込んで、何度も、何度も。殆どの姿は踏み潰されて、滲みと消え去っているが、彼らに諦めるという言葉はなかった。
『(足元を確認させるな! そのまま続け!)』
 アウラの飛び跳ねで大きく巻き起こった砂埃に紛れ込み、大鬼はサソリのようにうねる自由の尾を足を狙い振るいまくる。ひゅんひゅんと振り回される音が、ぱしっ、ぱしっ、と誰かに被弾する音があがった。
「尻尾は確かに当たっているね、でも雷も気にしないんだ」
 毒攻撃にも、麻痺攻撃にも動じずにアウラは笑う。
 声の洪水は、禍鬼の用心棒という仕事すら洗い流すように、紡がれていく。
「『怪物』の巨体にはどちらも回るには時間が掛かるでしょう?」
 スッ、と無邪気で陽気な表情を潜めて。冷酷さを顕にして、土埃を見据えた。
 人ではない感性は、更に人成らざるものへ贈る言葉を詠む。
「『運』がなかったね。そういうものだと、もう諦めて?」
 踏み荒らし、踏み散らし。そこに慈悲などない。最期の抵抗と足に掴みかかりよじ登ろうとする個体を掴み上げて、峠に力いっぱい叩きつけながら。
「だってわたし――『怪物』だもの」
 邪悪なる用心棒は、目標に掲げた事を同族で染めたものでしか成し遂げられなかった。決死の覚悟で挑んだ『怪物』殲滅は果たせず、一体、また一体と数を減らし、……自らが死ぬほど好む絶望顔や、断末魔を見せながら最期の禍鬼も消える。
「それで……あなたは、どうする?」
 両手をぱん、と叩くと禍鬼に殴られた時よりも大きな声で狼狽えた悪徳商人。
 用心棒に散々やったように、両手に挟まれ消滅させられる、と思い描いてしまったようだ。逃げ出そうにも足は動かず、もつれて倒れる。怯えながら見上げたアウラの顔が彼の目には凶悪に見えたようで、溢れ出す涙で言葉を零すのにも精一杯になる。
「え、えぇと……」
「答えはね、聞いてないんだぁ」
 返答を最後まで待たず、えーい、と掌底が彼の頭に降り注ぎ、ぷち、という音を立てて悪徳商人は成敗された。彼に成す術はなく、それはもう残念なほど簡単に、やや潰れた葛籠だけを残して消えている。
「これはあなたたちが持ち帰るんだよね、途中まで運ぼうか」
「そ、そうですね……出来ればお願いたしましょう。お強い用心棒殿がいらっしゃればこちらも安心にございます」
 何事もなかったようにアウラと役人と共に、幕府の資産を持ち帰る事となった。
 残忍な行動をしていた『化物』の一端の優しさに触れながら峠を越える、道中。

 その峠には同族を喚び集めた命の咆哮の数だけ――涼やかな風が吹き抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月08日


挿絵イラスト