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エンパイアウォー⑳~かつて天下を握った鬼女

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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「風魔小太郎に続いて二人目、大将格を捕捉したわ」
 グリモアベースに集まった猟兵たちを前に、田抜・ユウナはこう切り出した。
「大悪災、日野富子。サムライエンパイア三大悪女の一人で、室町時代に世界を滅ぼしかけたって言われてるわ。見てくれは単なるヒステリック女だけど、一度は世界すら牛耳った野心と才覚は健在。おまけにオブリビオン化した今では世界最強クラスの戦闘力まで持ち合わせてるわ」
 それは、能力値、技能、ユーベルコードのどれにおいても猟兵の最上位を軽く凌駕するほどだという。
「敵の攻撃手段は三種類。詳しくは後で配る資料を確認してもらうけど、これらのうちから、猟兵が使うユーベルコードの能力値に対応した技を選んで迎撃してくるわ。こちらが何人いて、何個のユーベルコードを使おうとも、ね」
 伝えられる情報はこれで全部、とユウナは締めくくる。
 判明しているのは、敵が使用する攻撃法と、ある程度の行動パターンだけ、というわけだ。
 戦闘におけるイニシアチブは、常に敵が握るものと思って挑まねばならない。そんな厳しい状況で、わずかな情報的優位をどんなふうに活かせるかが勝利の鍵となるだろう。
「今回の敵は圧倒的な格上よ。勝てるかどうか、正直なところ五分五分ってとこ。だけど、無茶を承知でお願いするわ。皆、勝ってちょうだい」
 隠しきれぬ不安と心配を覗かせながら、しかし躊躇いだけは見せることなく、ユウナはグリモアの転移門を展開した。


 サムライエンパイア、京都『花の御所』。
 室町幕府は足利将軍家の邸宅があった場所だが、そこには真新しい御所が建造されていた。
 金銀珊瑚に瑠璃玻璃真珠。おおよそ人が思い付く限りの装飾が施された、絵にも描けない美しさに囲まれて、顔色の悪い女がぽつんと一人で座っている。
『――――……!? 来やがったな!』
 突然、女は勢いよく顔を持ち上げると、三白眼をぎょろつかせて豪華絢爛な御所を睨めまわした。
 人の気配など微塵もない無音の空間で、しかし彼女は迫り来る敵意を敏感に感じ取っていた。
『聞こえてんだろ、猟兵ども! 人ん家に土足で踏み込んで来やがって。あたしがこの御所建てんのに、いくら注ぎ込んだか知ってんのか!? テメーらの命の百や二百、軽く買える額だぞ!!』
 無人の御所で、侵入者が目の前にいるかのように、女は喚き散らした。
 髪を振り乱し、口から唾を飛ばして、激しく地団駄を踏む姿は、狂気の沙汰そのものである。
『いいか、あたしはな! 足利将軍家8代目の妻にして9代目将軍の母親となり、天下を手にした日野富子さまだぞ!! ああ、ムカつく、ムカつく! あたしの幕府を終わらせた信長も、将軍の座に居座ってる徳川も、ウザってー猟兵どもも! 皆まとめてぶっ殺してやる!!!』


黒姫小旅
 どうも、黒姫小旅でございます。
 此度の敵は世界最強クラスですので、相応に厳しくジャッジさせて頂きます。ひどい目にあう可能性が高いので、ご注意ください。
 戦場となるのは、此度の戦闘のためだけに新築された、豪華絢爛なる『花の御所』。
 特殊なギミックはありませんので、存分に殴り合って下さいませ。

●特殊ルール
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 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

峰谷・恵
「ああ、大悪災とはよく言ったものだね。もうこれは他に言い表しようがない」

ダークミストシールドを構えて視線を盾で遮りながら飛び出し突撃。視線を受けて盾が燃えたら延焼する前に盾を消して炎を振り払う。
血統覚醒が使えるようになるまで盾で視線を防ぎながら突撃。盾だけで足りなければマント、MCフォート、アームドフォートで敵の視線を遮り発火と同時に切り離す。
血統覚醒を発動できたら一気に飛びかかり吸血鬼と神殺しの力を込めた遅すぎた収穫期で斬り掛かり(怪力)、飛び退きざまに熱線銃と残っている射撃武器で追撃して離脱。

「遅すぎた。お前に収穫する権利がある富はもうこの世にはない」




「言い得て妙とはこのことだね。他に言い表しようがない」
 峰谷・恵(神葬騎・f03180)は詠嘆の声をこぼした。
 日野富子、冠する字名は『大悪災』。まさしく、天変地異が擬人化したような狂乱の権化ではないか。
『小娘がぁ! アタシの前に立つんじゃねぇ!!』
 感慨に浸る暇こそあれ。会敵するや、富子は咆哮する。
 ギラと輝く憎悪の鬼眼が恵を捕らえるのと、恵の手袋に刻まれたひし形の紋様から黒い霧状のエネルギーシールドが展開するのはほとんど同時だった。
 BANG!
 紫炎と黒霧がぶつかり合い、混ざり合って上昇気流を生んで、雲竜の天井画を煤で塗り潰す。
「はっ! 大した火力だ!」
 煙を突き破って駆け出しながら、恵は驚嘆した。
 黒霧の盾で受けた爆炎は凄まじい速度で延焼。エネルギーの流れを伝って手袋へ燃え移りそうになったのを慌てて脱ぎ捨て、携行していたアームドフォート二基と纏っていたマントを身代わりに、身体まで炎が延びてくるのを防ぎきる。
 そして、時は満ちた。
 ――【血統覚醒】!
 黒い瞳が真紅に染まり、肉体が闇夜の支配者たるヴァンパイアのそれへと変貌を遂げる。
 瞬間、恵の体躯が掻き消えた。
 消えた、としか表現しようのない超加速。例えるなら紙飛行機からジェット機に変身したような異次元の速度差に、流石の高位オブリビオンも一拍反応が遅れて――
 SLASH!!
 兵装〈遅すぎた収穫期〉。神への殺意が込められた剣が、富子を袈裟懸けに斬り裂いた。
『ぎゃあああああっっ!? こっのクソガキぃぃぃぃぃっ!!』
 鬼女が絶叫した。
 紅の鮮血と、爆発性の紫炎がめちゃくちゃに撒き散らされるが、恵は冷静に熱線銃を抜いて牽制射撃を行いながら距離を取る。
「遅すぎた。お前に収穫する権利がある富はもうこの世にはない」
『ああン!? 分かったような口きいてんじゃねー! この世に流れてるカネは全部アタシの物。アタシのために使われるべきなんだよ!!』
 狂ったように喚き散らす富子を、恵は冷ややかに見据えて武器を構え直す。
 初手は上々。さあ、この勢いで押し切りたいところだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

露木・鬼燈
格上相手に真正面からは、ね。
ここは小細工の一つや二つは必要かな?
静かに気を練り上げて肉体を強化。
小回りの利かない魔剣での斬り合いは不利。
とゆーことで魔弾投擲法で魔剣を撃ち放つ。
牽制にしかならないだろうけど、それでいい。
投擲と同時に忍体術で一気に踏み込む。
そして刃と化した四肢で打ち合う。
防げない攻撃は硬化した肉体とその下の生体積層装甲で耐える。
チャンスが来るその時まで。
強敵相手なら死んでなければセーフ。
まだまだイケルイケル!
敵の注意が完全に僕に向いた時がチャンス。
最初に投擲した魔剣、その限定開放。
戦乙女の影が背後から襲い掛かる!
この一瞬だけが攻撃の機会。
練り上げた気を一撃に込めて撃ち込むっぽい!




 傾奇者の装いをした青年が、緩やかな足取りで戦場に踏み込んだ。
 静かに気を練り上げ、ナノマシン制御と身体操作でもって肉体を鋭く強靭な刃へと変えていきながら現れたのは、露木・鬼燈(竜喰・f01316)。
 女と見紛う綺麗な横顔に悪鬼羅刹の気迫を乗せて、鬼燈はオブリビオンをしかと睨み……
「――疾っ!」
 持っていた魔剣を、投げた。
 両手持ちの巨大剣は相性が悪いと判断するや、即決だった。特殊な投擲忍術によって魔弾と化した大剣が、空気をぶち破って飛翔する。
『しゃらくせー!』
 日野富子は苛立たしげに右腕を一閃、煌めく鬼爪が飛来する鉄塊と衝突した。耳をつんざく金属音が響き渡り、弾き飛ばされた魔剣が天井に突き刺さる。
 撃ち負けた……のは想定の範囲内。魔剣の影を追うようにして駆け込んできた鬼燈が、鋭刃と化した両手と両足で斬りかかる。
「隙あり!」
『ンなもん、ねえよ!』
 血走った三白眼と、目が合った。
 牽制に惑わされることもなく、富子は剣のように伸びた爪で迎撃する。鬼燈の剣は己の四肢、単純計算で手数は2倍だが、元からスピードで敵わない相手が9倍にも攻撃数を増やしているのだ。正面からの打ち合いでは到底勝ち目はなく、あっという間に鬼燈の体は血みどろになった。
『はっはー! あと何秒もつかな!?』
 哄笑する富子に言い返す余裕すらなく、鬼燈は変異改造した生体装甲を硬化させて必死に耐え凌ぐが、狂女の爪は熱したナイフがバターを切るみたいに易々と鬼燈の肉を引き裂いていく。
 このままでは、秒とて立っていられそうにないが……
『死ね死ね死ね死ネャバッ!?』
 グワン、と小気味よい音がして、富子の頭が真下に撃ち落された。
 危うく顔面から撃墜されるところで体勢を立て直し、富子は己の後頭部に蹴りを入れた不届き者のを探して、即座に理解する。
『ッ! 最初に投げた剣か!』
 天井に突き刺さったままの魔剣。そこから伸び出た影が、戦乙女の姿となって富子を見下していた。
 ユーベルコード【限定開放・戦乙女の影】。己よりも強大な者と相対した時のみシャドウ・ヴァルキュリアを召喚できる、鬼燈の奥の手である。
「……へ、へへ。だから、隙ありって言ったっぽい」
 失血で意識朦朧となりながら、鬼燈はほくそ笑んだ。
 ざまあみろ。

成功 🔵​🔵​🔴​

宇冠・龍
由(f01211)と参加

お金のやりくりの仕方を聞きたかったですが、それ以前の問題ですね
「確かにここは豪華絢爛、想像もつかないほど価値ある建物なんでしょう。しかし、それと命を値踏みすることとは別問題ですよ?」
挑発し視線を私に向けさせます

火矢の怨霊は私に来るでしょうが狙いが私なら好都合
【画竜点睛】で火矢を捉え、その炎を極端に弱体化させます
「そんなにお金が欲しいのでしたら、どうぞこれを」
金貨を一枚、床に放ります
此方に注意が向けられている間、視線は他の所へは向かいません
私は囮、時間を稼げればいいのです
(由、後は頼みますよ……!)

もしも娘に気づかれた場合は、画竜点睛の残った腕で相手を拘束します


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

私は空飛ぶヒーローマスク
音なく飛ぶことは大の得意です

(本来なら、盾の役目は私がしたいこと。けれどお母様の想いを無駄にはできません……!)
お母様が相手を引き付けてくれている間、背後から無音で忍び寄り火炎剣で背中を攻撃

勿論それだけで相手を制することができるとは思っていません
振り返られ視線を向けられれば私は爆発するでしょう
「それがどうしたというのですか」
攻撃でマスクが壊れたその時、真の姿となったもう一つの姿で意表を突きます

より剣速を上げた火炎剣の太刀筋。相手が反応するよりも早く刃を届かせます
着物はさぞ燃えやすいでしょうね




 喪に服すかのような黒衣を纏ったドラゴニアン、宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は贅の限りを尽くした御所を見渡した。
「確かにここは豪華絢爛、想像もつかないほど価値ある建物なんでしょう」
 戦闘の余波で天井が崩れかけ、畳がボロボロになっているものの、いまだ『花の御所』の美しさは健在。至る所に施された細工飾りや高価な調度品の数々は、うっとりため息が出るほどだ。
「……しかし、だからといって命を値踏みし比較するのは感心しませんね?」
 一区切りつけて御所の主たる日野富子に向き直ると、龍はたしなめるように言った。
 説教臭い物言いは、意図してのことだ。狙い通り、富子は赤布ちらつかされた猛牛のごとくいきり立つ。
『ハッ、ヒトの命に値段なんか付けられないってか? くだらねえ。そんな綺麗ごとを口にするヤツに限ってな、特に安値が付くんだよ!!』
 苛立ちと軽蔑を込めて龍を睨みつけるオブリビオンの背後に、数えきれないほどの火矢が召喚される。その一本一本が、『応仁の乱』において戦場を飛び交った怨念の塊だ。
 雨あられと降り注ぐ灼熱と妖気の弾幕に、龍が選択したのは迎撃。
「咲けよ徒花、一つ二つと首垂らせ」
 呼び出したるは、こちらも怨霊。数えて250本にもなる『腕』が火矢を鷲掴み、呪詛でもって矢に付与された属性力を弱体化させ……
 ――捕らえきれなかった矢が、次々と体に突き刺さる。
「くっ!?」
 驚愕と激痛に、龍は目を剥いた。
 矢の数も威力も、桁違いだ。こちらの腕たちも数に限れば負けていないだが、正面から対抗するにはあまりに力不足。
 全身から矢を生やしてハリネズミのようになりながら、なおも倒れじと耐える龍を見下して、富子は冷笑した。
『属性を消したところで、純然たる物量はいかんともしがたい。むしろ、下手に威力を弱めたせいで、死ぬに死ねずに苦しむだけじゃねえか』
 呆れたように、ぐるりと視線を巡らし……、
『その程度で、このアタシを陽動しようなんざ百年早ぇよ!』
 唐突に、身を翻した。
 背後を見返ると、小さな影がビクリと震える。
 ヒーローマスクの本体だけになって浮遊し、音もなく忍び寄っていた宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)である。
『被り物の分際でぇ! アタシの後ろに立つな!!』
 激昂する富子の鬼眼と、由のつぶらな瞳が交錯し、そして爆発。マスクは内側から四散して爆炎に呑み込まれる……が、
「それがどうしたというのですか!」
 紫炎の中から、一人の少女が飛び出してきた。
 ヒーローマスクの体を破り、ブレイズキャリバーとしての『地獄』の肉体を捨て、黒の巻き角と竜尾を持つドラゴニアンの少女へと変身した由は、その潜在能力を存分に開放して一気に敵の懐まで飛び込もうとする。
『チィッ、たった一つの変わり身だけで……』
「させません!」
 もう一睨みしようとした富子の艶やかな黒髪がぐんっと引っ張られて、視線が上方へとズレた。由を射抜くはずだった憎悪の眼光が天井に命中し、大爆発。紫色の業火が立派な梁をへし折って大屋根を吹き飛ばした。
 間一髪、後ろ髪を掴んで由を救ったのは、五本の『腕』であった。火矢に対峙した龍が虎の子として残しておいた呪詛の腕。最後の五本を使い切った龍は、ついに膝をついた。
「由、後は頼みますよ……!」
「はい、お母様!」
 本来ならば自分が身を挺して守るべき母の惨状に唇を噛みしめながら、由は質量を持つ炎で生成した剣を構える。
 彼女が実現しうる最大速度、最短軌道による刺突がオブリビオンの胸を刺し貫く。
『ぐ、ぎゃあああああっっ!!?』
 ガラスを引っ掻くような耳障りな悲鳴を上げて、富子は七転八倒した。暴れた拍子に掴まれた長髪が音を立てて千切れ、『地獄』の炎が辺りに飛び散る。
「お母様の想いを背負った一太刀、よく効きますでしょう?」
『ふ、ふざけやがって! 母だ娘だ? 親子の情なんか、ビタ銭ほどの価値もねえ。……それは、アタシの馬鹿息子が証明してる!』
 胸に大穴開けて、火の粉を燻ぶらせながら、富子の激情は治まることを知らず更に燃え上がる。
 どちらに転ぶにせよ、決着の時は近い。猟兵たちは各々の得物を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シル・ウィンディア
同行:テラ(f04499)

お金は、頑張ったみんなのものっ!
あなたのだけのものじゃないからっ!!

お金に執着して…
おばさん、可愛そうな人なんだね…

対Wiz
テラを巻き込まないように
【第六感】で敵意を感じて
【見切り】で回避を基本にして
二刀流の光刃剣を回転させて【武器受け】
テラに当たりそうなものは
【盾受け】や【オーラ防御】で防ぎます

可愛い妹に何するのよっ!

回避運動は
【空中戦】【残像】【フェイント】を駆使して
撹乱して動きます

攻撃は、光刃剣を二本束ねて大剣化させてからのUC発動
【全力魔法】で威力を底上げだね
UC発動後はそのまま【ダッシュ】で接敵して
斬撃をお見舞いするね

…ね、どんな気持ち、かな?


テラ・ウィンディア
同行
シル(f03964

ええと
元々のあんたの遺産で幕府は回ってたんだよな

そして上様からのお小遣いも其処から来てるという事はあんたの金だったのか

おばさん…ありがとう!

対POW
基本シルを庇いつつ
【戦闘知識】で冷徹に動きと特に視線を観察

【見切り・第六感】にて憎悪の視線を察知し【残像】をその場に残す回避を試みる!

当たっても【属性攻撃】で武装含めた全身に炎を付与し可能な限りダメージの軽減に努め

【空中戦】で舞いながらも槍で【串刺し】等猛攻

そして…メテオブラストぉ!!

【踏み付け】も付与して更に破壊力を強化するぞ!!

…家ぶっ壊れてるけど…おれ達数百人の命より高いなら別に壊れても価値は変わらないよな!(超理論炸裂




 日野富子いわく、徳川将軍家の財の大半はもともと彼女の資産であったのだとか。ということは、当代将軍である徳川・家光が以前に猟兵たちへ配布したというポケットマネーだって元をたどれば富子の金だったのだろう。
「そうだったのか。……おばさん、ありがとう!」
 論理的結論へと至り、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)は富子に向かって頭を下げた。
 挑発のつもりだったなら、大成功である。
『徳川の小倅がぁぁぁぁ!! 「ふぉろわー数」だか何だか知らねーが、くっだらねー理由でアタシの金をバラ撒きやがって! 絶ッッ対に後悔させてやる!!』
 富子は地団駄踏みながら、睨んだ対象を爆破する邪視を乱れ撃った。一見すると計画性のないヒステリーだが、その実狙いは正確無比。的確にテラを視界の中心に納め、焼き殺しにかかる。
『手始めにテメーだ! 無様に死に晒せ小娘!!』
「くっ、さすがにキツいか……!?」
 紫の爆炎にあおられて、テラは顔をしかめた。
 冷静沈着な観察眼で敵の視線を読み、残像を目くらましにして直撃を避けてはいるが、技能レベルにおいては比べ物にならない格上だ。自慢のスピードや体術を駆使してもなお、完全回避など望むべくもない。
 全身を包む火炎の加護でも防ぎきれないダメージが、徐々に蓄積されていく。
「――あ、まずい!?」
『捕らえたぞカトンボ!』
 火傷の痛みでわずかに動きが鈍った、一瞬の隙を突かれた。
 憎悪に濁った鬼女の瞳がヒョウと音を立てて収縮し、視線の先にある少女を射抜いて……
「可愛い妹に何するのよっ!」
 直前、シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)が割り込んだ。
 構えたビームシールドは爆風でかき消される代わりに、二人の少女は無傷で着地する。
「シル、助かった!」
「まだ行けるよね、テラ!」
 双子のエルフは視線を交わし、うなずき合うと一気に駆け出した。テラは炎竜牙の槍を、シルは光刃剣の二刀流を手に、決死の突撃を敢行する。
『クソッタレがぁぁぁぁ!!』
 絶叫と共に放たれるは、火矢の怨霊。視界を埋め尽くさんばかりの矢の雨が、二人に襲い掛かる。
「……あっ!?」
 回避行動をとったシルが、悲鳴を漏らした。
 確実に見切ってかわしたはずの矢が、寸前で軌道を曲げて左足に命中したのだ。
「ぅ……追尾機能までついてるなんて、厄介すぎる」
 シルは歯噛みし、光剣を風車のように回転させて四方から殺到する火矢を弾くが、あまりにも数が多すぎて到底防ぎきれるものではない。このままではジリ貧、射殺されるのを待つばかりだ。
 …… 一人きりだったなら、の話だが。
「やらせて、たまるかぁ!」
 屋根が吹き飛んだばかりの上空から、テラが飛来した。
 必殺の【メテオ・ブラスト】。
 超重力を纏った流星のごとき急降下から放たれる踵落としが、無数の火矢を蹴り砕き、余波で周囲の美術品を粉々に吹っ飛ばして、御所全体が地震のごとく揺動する。
「シル、決めろ!」
「うん!」
 テラの一蹴りでもって、火矢の怨霊は消えた。もはや行く手を阻むものは何もない。
「世界を司る精霊たちよ――」
 詠唱しながら、シルは両手の光刃剣を束ねて巨大なる一刀へと合体させると、痛む足を押して振りかぶる。
『ンの……あ!?』
 富子は跳んで逃れようとするが、傷だらけになっていた畳がボスリと抜けて足を取られて、
「――集いて光の剣となり、すべてを斬り裂けっ!!」
 凝縮した魔力の一斬が、富子を捕らえた。
 斜めに一閃、袈裟懸けの太刀に込められた地水火風の四代元素が、オブリビオンの体をズタズタに引き裂いていく。
『あ、アアアアアアアアアアッッ!? そんな、馬鹿な。このアタシが……天下の日野富子さまが!? どチクショー、猟兵どもが。呪われろ呪われろ呪われろぉぉぉぉぉ!!!』
 度重なるダメージに肉体が限界を迎えて崩壊していく中、最後の最後まで罵詈雑言を撒き散らす富子をシルとテラは並んで見守り、その気配が完全に消滅したのを確認してようやく胸をなでおろした。
「何とか、勝てたみたいだな」
「うん。……なんだか、かわいそうな人だったね」
 恨み蔑み執着、業にまみれた狂女の姿を思い出し、シルは軽く瞑目してから戦場を立ち去る。
 その後を追いかけるテラが、ふと振り返ってボロボロになってしまった『花の御所』を見上げた。
「家ぶっ壊れてるけど、おれ達の命の数百倍もするんだから、この程度で価値は変わらないよな!」
「……それは、ちょっと暴論じゃないかな?」

【END】

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト