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エンパイアウォー⑳~嘗て正義であった者~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #日野富子

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『ぶっ殺す!!』
 と、女は言った。

「いやいやどんだけ恐ろしいやっちゃねん……えぇ……ぶちギレ過ぎとちゃう……?」
 妄執というのだろうか。夕月・恋(ゲーマードール・f00771)はそんな感想を抱きながら、グリモアを使って世界を繋いで見せる。
 その先に、都があった。
「さてと、ええかな皆。これから、説明を始めるで」
 振り返った恋は、辺りの猟兵へ視線を送って頷きを一つ。
「大悪災、日野富子。これが、今から戦う魔軍将の名前や」
 それは、日本の歴史に名を残す、天下の悪妻だ。
「細こぅ言うと長なるで、まあざっくり言うとやなぁ……守銭奴、ちゅうやつや。一説じゃあ60億の資産があったとされとるなぁ」
 まあここら辺、戦いに関しては重要ではない。
 大事なのは富子が、かつて政権の担い手側にあり、欲望のまま振る舞った挙げ句、サムライエンパイアを壊滅寸前まで追い込んだ奴ということだ。
 オブリビオンになったことで、その悪災ぶりは手に余る。
「今、富子は、花の御所と呼ばれる場所に拠を構えとる。そこはかつて、足利将軍家が邸宅に使てた場所やな」
 有り余る資材を使い、新花の御所として、富子は豪華絢爛な見た目の邸宅を作り上げた。
 そこに在って、今、彼女がしようとしているのは、征服だ。
「金があるから一番偉いなんて、子供の理屈よりひどいけど……実際それで上まで上ったもんやから、時代って怖いわ。とはいえ、それを見守るわけにもいかんやろ」
 人々を不幸にする様な、自分勝手な欲望は叩き潰す。
 そうするために、今回の戦はあるのだから。
「だから、みんな、頼んだで!」


ぴょんぴょん跳び鯉丸
 大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 魔軍将、日野富子との決戦になります。
 いつもどおり、対策を練って、十全に備えて戦いましょう。
101




第1章 ボス戦 『大悪災『日野富子』』

POW   :    アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:みそじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 花の御所は、邸宅だ。

 2m位の垣があり、その奥には、家が複数繋がった様な広い和風家屋がある。

 広い庭には、橋の渡った大きな池があって、その中を自由に鯉が泳ぐ。

 そういう場所に、富子はいる。
黒川・闇慈
「ふうむ、随分とお怒りの様子ですねえ。いくらお金を集めようと、あの世で使えるわけでもないでしょうに。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
まずは火矢への対策ですね。数は多いのでしょうが、一本一本は軽い矢です。風の影響などモロに受けそうですね?
というわけで、高速詠唱、属性攻撃、全力魔法、範囲攻撃の技能を活用し、迅速に風獄刃軍を使用します。竜巻で火矢を巻き込み、絡め取り無効化しつつ、日野富子に向けて進ませます。
竜巻の中は絡め取った火矢が渦巻いています。ミキサーのように、中に入ったものをズタズタにしてくれるでしょう。

「苦しければご自慢の財でどうにかなさってみては?クックック」

【アドリブ歓迎】



「これはこれは」
 憤りの感情が可視化されるのを見た闇慈は、クックッと引き笑いの音を鳴らした。
「ふぅむ、なんと、これは」
 一語ずつを区切り、確認するようにそれを観察して。
「随分とお怒りの様子ですねぇ。聞くところによると集めたお金を死した後奪われ使われたとか……ですがねぇいくら集めようと、あの世で使えるわけでもないのは、もう知っている事では?」
 思考は言葉となって漏れ出る。
 煽る訳ではなく事実としての言葉だ。
「お前ぇ……なんだ、ムカつくなぁおい、ムカつくわ。なぁ、ムカつくからよぉお前ぇ! 死ねよ!」
 瞬間、苛立ちを表した富子の背後に火矢が生まれる。
 それは固定された様にその場で静止し、矢じりを闇慈へと向けて大量に並ぶ。
「どれでもいい、さっさとあのニヤけたツラをぐちゃぐちゃにして来いよ!」
 射出される。
 一斉に、ただ一人へ向かって、燃え盛る一矢の大群が群れていく。
「矢ですか、随分と軽そうな……そう、吹いた矢に拐われそうなモノですね?」
 対抗できる。
 闇慈はそう判断して、最速、全力の魔法を発動させた。
 それは、地面に刻まれた魔方陣。そこから渦巻く様にして立ち上る竜巻だ。
 火矢を巻き込み、炎と混ぜ合って、それらは闇慈の手管となる。
「ほら、お返ししますよ。ご自慢の財で、どうにかなさればよろしいかと」
 クックッと、闇慈は笑う。
 笑って、火と矢が乱雑に入り乱れる竜巻を押し返し、
「あぁ……イライラすんだよ……」
 富子を見た。
 苛立ちの顔は変わっていない。
 眉による皺は深く、双眸が睨み付ける視線の強さに揺らぎも無く。
「そんな程度で、アタシを追い詰めた気になられるなんてよぉ! 甘く見られたもんだよ、なぁ! このアタシがよぉ!」
 掲げた手に、竜巻に飲まれた筈の火矢が固定されて矢じりを再度闇慈へ向ける。
「火矢? 火矢だと? ああそうさ、火矢だよ。怨霊の火矢だ。自然的現象なんかじゃ縛られない、縛られる事が出来なくなってしまった火矢だ!」
 そうして、風の奔流を抜け、
「嵐なんかで消えると思うなッ!」
 闇慈を刺し貫いた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ルルティア・サーゲイト
 ここは、妾の煽りテクを見せてやろうぞ。
「おお、醜い醜い。枯れ果てた婆の怨嗟の何と醜い事か。金、金、金、女として恥ずかしくないのか? 金で若さが買えるか? 金で美しさが買えるのか? 確かに、金をかければ良い化粧は出来よう。しかし、化粧は化粧。化粧の濃さは加齢の証! この天然美少女たる妾の美しさには勝てぬ!」
 さて、これだけ煽れば十分な数の怨霊が飛んでくるじゃろう。妾は元より射撃を見切るのは得意である。故に、飛んでくる怨霊を切り払って防御するなど造作もない。しかも、怒り狂った単調な攻撃ではのう!
「ついでにお主は実力でも勝てん!」
 滅牙絶障壁にてそっくりそのまま撃ち返してやろう。



 ルルティアには自信があった。
 数百、いや千、たとえ万であったとしても、射撃を見切ることが出来ると。
 だから、コホンと咳払いをする。
 浅く息を吸って、目の前にいる日野富子の苛立ちを助長させる文句を言うために注意を引いて。
「おお醜い、醜いの。枯れ果てた婆の怨嗟、そのなんと醜い事か」
 小さな歩幅で歩み寄り、長柄を背に沿わせた鎌を持って行く。
「金、金、金と。女として恥ずかしくはないのか? 金で若さが買えるか? 美しさを手に入れられようか?」
 いやさ、確かに。
「確かに! 金を掛ければ良い化粧は出来ようとも。しかし、化粧は化粧。繕い、その濃さは加齢の証よな! その点この天然美少女たる妾の美しさには勝てぬものであろうよ!」
 で、あれば、その執着のなんと無意味な事か。
 琴線を刺激するべくして投げた言葉と想いは富子に届いて、引きつった表情の女はガリガリと爪を立てて頭を掻いた。
「良く言いやがったよ、ああ、言いやがったな。よくもそんな、"当たり前の事"、さも賢しらに長い口上で吐き捨てやがったな糞餓鬼が!」
 燃える。
 怒りが、感情が、富子の中で爆発する。
「醜いだと? 逆によぉ、醜くない人間なんてモンがこの世、世界にどれだけ入られると思うゼロだよ! 生まれたての赤子のつもりか、あぁ?」
 爆発はそのまま、火矢の召喚へ繋がって、富子を囲うようにそれらはごうごうと音を立て盛る。
「その醜い世で、醜いながらに生き、頭に上ったのがアタシだ、アタシの金だ! だからアタシの金は、アタシのもんなんだよぉ!」
 ……ぶちキレおったな!
 地団駄を踏んだ動きを合図に殺到するそれらに、ルルティアは構えを直して思う。
 想像よりちょっとばかしキレ方が倍だが、直線的な矢の誘導には成功した。
 速度とタイミングを掴むのは問題ない。思い切り引き、溜めた鎌の一閃で切り払う事は可能だ。
「見切った……お主の実力では、妾には勝てん!」
 だからルルティアは横薙ぎを叩き込み、前列に並んだ火矢の怨霊を払って、返す動きで残りを狙った。
「なに……?」
 だがその刃を、火矢は滑るように回避する。
 まるで意思を持っているように──いや、実際に意思を持って、掻い潜った怨霊はそのままルルティアの懐へと突撃して、
「──!?」
 燃え盛る一撃を、割り込む影に防がれた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ベリル・モルガナイト
まがりなりにも。上に。立つ者としては
あまり。認めたくは。ない。相手。だわ

上に。立つ者は。その下で。支えて。くれる。皆を。守る。者。なの。だから

【防具改造】で。付け焼き刃程度。でしょう。けれど。防具へ。爪に。よる。斬撃を。抑えるよう。手を。加えて。おきます

傍に。居る。味方を。【かばう】ように。動く。わね
【オーラ防御】を。使いながら。【盾受け】と。【武器受け】で。攻撃を。受ける。わ
【見切り】と。【戦闘知識】。動きを。予測
致命傷だけは。避けましょう

攻撃が。止まった。瞬間に。ダメージの。反射を。お見舞い。するわ。ね

【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】



 危ないと、そう思ったのは一瞬で。
 思った時には既に、行動していた。
 そう在るべきと、常に抱く想いによって。
「っ」
 ベリルは、割り込ませた盾を全力で押した。
「!」
 押す。
 火矢を弾き、逃がさない内に叩き落とす為に前へ。
「邪魔したな、お前、アタシの邪魔を」
 そこへ、富子は一足跳びに近付いた。
 歯を剥き出して、広げた五指に光る爪を立てて、
「守るなんて無駄な事してくれたなぁ!」
 ベリルの広げた盾、そこに張られた魔導障壁に、さらに重ねた煌めきの強化シールドへぶちこんだ。
「っ。無駄?」
 それは、ベリルには納得の出来ない思考だった。
 曲がり形にも、かつては名実ともに上の地位に座した者。それが言うべき、思うべき事ではないと。
「上に。立つ者は。その下で。支えて。くれる。皆を。守る。者。なの。だから」
 だから。
「だから。貴女を。認めたくは。認められない」
 一歩を前に踏み込んで、押し返す様な弾きを入れた。
「あぁ?」
 軽い。
 感触にベリルは思考して、即座に体を左へ傾ける。
「眠たい事言うなよ……!」
 すると、盾の右側、回り込む様に富子が迫ってきた。
 掬い上げる爪撃が来る。
「くっ」
 盾の取り回しは間に合わない。だからベリルは即座にルーンソードを抜いて、爪と自分の間へ挟み込む。
「なぁおい!」
 凌いだ、瞬間、逆手の振り下ろしが武器を叩き落とす。
 一歩を下がり、身を捩りながら跳んで、富子へ盾を向け、
「引き込もってんじゃねぇよ!」
 掴む手の形が、盾を貫通して爪を食い込ませた。
「な」
 固定された。
 今、富子は盾の表面、突き立てた爪を支点にそこにいて、あと数秒もすればそれは、自身の体へ届くだろう。
 だからベリルは、その刹那の猶予で盾の内側を掌で押し、
「──!」
 今まで防いだダメージを、向こうにいる富子へとぶちこんだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイリ・ガングール
 女の情念と涙は夜の華。
 とか言ってみたりするけれどそれにしたって過ぎれば醜いものじゃ。さてと、苛立ちで火矢の怨霊を飛ばしてくるのなら、赤狼衆を使って防がせてもらおうかの。
 とはいえ先手は取られる。ならある程度のダメ―ジを覚悟して、第六感で避けつつ赤狼衆を召喚するよ。
 いやさ生きておったら部下を使っての肉盾戦法なんて出来る話じゃないが、幸い既に死したる者ども。こういう時にも役立ってもらわんとね。嘗ての配下共よ、悪いが道を拓いておくれ。
 火矢の怨霊を赤狼衆に庇わせつつ、日野富子へと接近して新谷守・宗光で切りつけようか。
 …奪われる屈辱と憎しみは知っておるけど、それで現在様に迷惑かけちゃいかんでな



 放たれる火矢は、狙った相手を追跡する動きを取る。
 それは主に富子が苛立ちを覚えた相手に発動するものではあるが、既に彼女の中で苛立ちを覚えないモノを見つける方が困難な状態だ。
「女の情念と涙は夜の華。……とか言ってみたりはするけれど、のう」
 だから狙われ、回避に転がったその後に、火矢が何本が地面に突き立つ。
 それを確認する間も惜しくアイリは受け身で立ち上がり、速度を落とさないままに攻撃の合間をすり抜け続けた。
 ……行き過ぎれば醜いもの。と言っても、当たり前と言われるんじゃったなぁ。
 やれやれと、心中で溜め息を吐きつつ、口論の為に来たわけではないと意識を切り替える。
 まずは、火矢の処理からだ。
 観た限り、あれらは直撃すると消え去るらしい。
 故に、戦法として取るのは単純な一手だ。
「此処に来やれ、嘗ての配下。未だ穢れぬ我が誇りよ」
 肉の盾だ。
 召喚したのは、自身の過去として現在、存在する肉体を与えた死者達だ。
「いやさ、生きておったらこんな手段はとれなんだがね」
 戦わせる、ではなく、防がせる。
 自分が富子へと辿り着ける為の道を、その身を捧げて拓かせる、そういう使い方だ。
「ほら行くぞ……!」
 愛用の刀を鞘から引き抜き、左右に並ぶ配下達が作る道を行く。
 その先に、狙うべき敵がいた。
「おい、おいおい、なんなんだお前……いやいい、ムカツクなぁお前!」
 富子だ。
「なにしてんだよ使えねぇ奴等が! なんでさっさとぶっ殺してねぇんだ役立たずどもがよぉ!」
 放った怨霊が望んだ機能を果たさない事にプッツンしていて、その間にも縮まるアイリとの距離に眉間の皺を深くする。
「やれやれじゃねぇ」
 間合いだ。
 刀が届く、その範囲に入った。
 右足で踏み込み重心を傾け、右へ鋭く斬り抜く一撃を放つ。
「クソ、クソ、クソ!」
 だが届かない。
 大きく下がった富子の体が紙一重分だけ遠くなった。
 だから踏み込んだ足で地を蹴り、前への加速として追撃。
 振り上げた一刀を下ろすより速く、前へ出た富子の、捩じ込む掌底が一瞬早くアイリの腹へ当たった。
「ぐっ……!」
「ちぃ!」
 瞬間、アイリは刀を逆手に握り直し、切っ先を下に向けて富子の肩へ突き立てる。
 ……浅い!
 思い、さらに奥へ刺し込む為に力を込めて、
「離せ!」
 振り払われる様に富子の蹴りで距離を開けられた。
「……いかんのじゃよ」
 着地し、ふらつく足を堪えて一息。
「奪われる屈辱と憎しみは知っておるけど、しかし、それで現在様に迷惑かけるのはな、いかんのじゃ」
「うるせぇ……うるせぇうるせぇ、さっさと死ねよ邪魔くせぇえ!」
 お互いに飛び込んで振るう一撃が衝撃となって響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る

敵とはいえ折角の美しい御所に人
そうも激情と執着に狂っていては魅力が台無しですよ。
徳川に組する物への怒りで聞く耳もたず
本心なのですけれど…ね

<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
攻撃は感情任せで見極め易い
数には数で対抗します。
《捕食兵装》武装圧縮成形:破邪<破魔の呪>乗せ威力増強
剣槍:主武装。呪込め続け力溜め
杭:<早業>多数成形射出【火矢の怨霊】迎撃。
 滅し喰らえれば最良だが、
 受け弾き逸らし、祓う事で一時的な弱化無力化する用意も

攻撃潜り抜け<早業>で接近戦挑む
実力は不明なれど一芸に秀でる者の才油断ならない
気を引き締め渾身の一刺しを狙う



 豪華絢爛の目映さの中にいる女を、ユイは美しいと思った。
 そして、勿体ないと。
「激情と執着に狂っていては、魅力が台無しですよ」
 本心からそう思っていた。
 だが今、彼女は自身の終わりから積み重ねられた歴史に怒り、徳川が作り上げた幕府へ怒り、それ以外の感情を手放している。
「聞く耳持たれないのは残念です」
 と、そんな雑念を抱けた余裕はそこまでだ。
 相対した敵、悪災である富子が放つ火矢は、決して優しいものではなかった。
「──ッ!」
 露にする感情の素直さとは違い、こと戦闘行為となると、戦乱の中に生きた人物としての面がある。
 要するに、"上手い"のだ。
 ユイが攻撃するための兵装を用意する間に、火矢は既に目の前にある。
 バラバラの軌道の全てを目で見切るのは諦め、一転突破が出来そうな隙間へと一か八かで飛び込んでいく。
「っあ……!」
 体が、肉が裂かれ、焼ける。
 飛び抜けた先で反転する受け身を取って、そこでようやく兵装の展開が完了した。
「ロック、オン」
 視界、そこに見える全ての火矢へマーカーを合わせ、形成した杭の形をしたそれらを直撃させる。
「ムカツクくらいに丁寧だなお前」
 それを、いつの間にか背後へ立った富子が評した。
 バカに真面目かよと、そう続けて、鋭い爪の手刀が振り下ろされる。
「そのまま死んじゃえよ」
「断ります……っ」
 それを、振り向き様に振り抜いた剣槍で対抗した。
 呪詛を込め続けた、渾身の一振りだ。
「見誤りました」
 本当なら、突き刺し、深く貫くつもりだった。
 油断をしていたつもりもない。
 ただ、シンプルな話だ。
「一枚上手でしたか……」
 浅い斬り付けの代償に食らった一撃に、ユイは意識を手放した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
絶対先制。そして発動条件が視線、避ける事は至難どころじゃないね。けれど一瞬だ。一瞬の隙が作れれば攻め込める。

刀一本で行く。
侵入後、相手がUCを発動しようとしたタイミングで
コインを高く、富子の方向に弾き挙げる。
歴戦の兵士でも無い限りそれに一瞬でもあれ視線が誘導されるはず。
その一瞬を逃さずダッシュで一息で接近し、刀を持っていない方の手を富子の顔へ向け、UCが命中する場所を片手だけに誘導。
爆発、炎、血、で視線が通りにくくなった所で両の目狙いで横一文字に剣刃一閃。

金を持ってるお前が最も偉いか。ならそれを殺す私がお前の上だ。
死んじまいな悪党。



「至難だね」
 右手に刀を一つ握る。
 呼吸は浅く、常と変わらない調子を維持できていて、程よく緊張した体は動くのに支障ない。
「難しいけれど、一瞬。一瞬さえ捕まえれば、攻められる」
 だからライアは、富子と対面した。
 手がある。
 対応策だ。
「なんだお前……いや、なんだその目は」
 そして、ライアと対面した富子は、一つの不愉快を得た。
 それは、自分を見る瞳に、迷いや疑いの一切ない、勝ちを見る意思が籠っていたからだ。
「気に食わねぇ」
 傲慢なわけではない。
 夢想しているわけでもない。
 だからこそ、腹が立つ。
「気に食わねぇな、お前」
「そうか。奇遇だな、わたしもだ」
 そして、その発言が、富子の怒りを爆発させた。
 見開いた瞳の、開ききった瞳孔が、ライアを見据えようとして、
「──ぁ?」
 キィン、と、金属の弾かれた音がした。
 それは、ライアが親指で弾いた金属のコイン。二人の中間から少し高い位置へと飛んだそれは、目的通りに視線を誘導して、
「なるほどな」
 ライアの接近する時間を稼いだ。
 視線がトリガーの富子に取って、敵を見ないと言う事は致命的な隙となりえる。
 なにせ攻撃を潰されたことと同義だからだ。
 ただ、今回で言えば、その効果は半分と言ったところだろう。
「ムカツク、イライラする、だが問題ねぇってことを教えてやる」
 富子は、視線をそのままにコインを攻撃したのだ。
 放つ炎は瞬間でコインに直撃し、大きく爆発して炎を散らす。
「──!?」
 それは、直進で行ったライアの、直上での出来事だ。
 咄嗟に体を倒し、手を前へ着いて引っ張り加速。それでも背中を焼き焦がす炎はあって、足のもつれからは逃れられない。
 だが、ライアは行った。
 致命的な隙はもう無い。視線は真っ直ぐに自分を見ている。だから二撃目の炎は避けられない。
 思い、決断して、左の掌を目一杯に広げて掲げた。
「くれてやる」
 爆発した。
 左腕、肘から先が発破した炎に焼かれ、筋肉から血管までをボロボロにされる感触がある。
「代価はもらうぞ……!」
 その成果が、間合いだ。
 右の刀を脇に構え、捻りを加えた姿勢から踏み込む。
「金を持ってるお前が最も偉いと言うなら、それを殺す私はそのさらに上だ」
 呼気を整え、握りを強くして、足から伝える動きの加速をただ、右の刃へと注ぎ込んで、
「死んじまいな、悪党」
 富子の両の眼を狙って、一文字に斬り抜いた。
「ぐぉおおお痛ぇ! 痛、いってぇ……!」
 痛みに咽ぶ女の体から鮮血が噴く。
 顔。その前に翳した、手首から先が吹き飛んだ断面からだ。
「クソ、クソが、クソがぁ!」
 ライアと同じだ。
 目か手か、どちらを生かすか。
 そういう決断の、痛み分けだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

朧・紅
アドリブ歓迎
強敵好き殺人鬼《朧》で行動

「ぶっ殺す!!」ねェ
ッは!イイねェ
ソイウノ、俺の大好物だぜェ
なにせ金でこのスリルは買えねェからよ…
「ソンナモノ」より擦り切れるような殺し愛、しようゼ?
(嗤う


先制は【聞き耳・第六感・野生の勘】で察知回避
【スライディング・ダッシュ・武器受け】で凌ぎ必ず致命傷を避ける
動けりゃいい【血糸】で血を操り【医術】止血
痛みは狂気へのプレリュード
あァ…楽しい殺し愛の始まりダ…!

【紅朧月】のギロチン刃を回転刃にし四方八方から襲い掛からせ
つつ宙を舞い踊るギロチン刃の影にひっつき姿を暗ませるぜェ

富子の死角に入ッた瞬間が狙い時ッてナァ
その細ッこくて綺麗でオイシソウな首、イタダキマス



 嬉しかった。
 目の前にいる女は、感情のままに動いて、力のままに気に入らない奴を殺す。
 嬉しかった。
 朧は胸に沸き上がる感情のまま、口端を上げて行動に移す。
「ッは! イイ、イイなてめぇ、ソウイウの、大好物だぜェ……!」
 前へ行くのだ。
 初速から最速で、敵の懐に入り込む為に走る。
「はぁ? なにアンタ、イカれた系かよ」
「てめぇもソウだろーが!」
 相対する。
 片手の無くなった富子だが、残る手の爪は伸び、迫ってくる朧と激突する様に走った。
「速ェなぁ!」
 朧が一歩を進む間に、富子の姿は既に目の前へと近づいている。
 ……速ェ!
 構えも無い状態から、的確に額を抉る狙いの一撃が来る。
 回避は……無理だ。
 だから朧は、直撃の瞬間に、顔を横向きにするよう反らして致命傷だけは免れる。
 軽減して、崩れかける体勢を踏み堪え、その刹那に爪が朧の腹を横に裂いた。
「ッはは!」
 連撃が来る。
 続いては縦、肩から断つ様に鋭く振るわれ、そのまま袈裟に上げる。
「なあ、思うだろてめぇもさァ!」
 そのどれもかれもを、ギリギリ致命にならない様に朧はやり過ごす。
「金じゃあこんなスリル買えねェだろ、なぁ!」
 だが出血量はまずい。
 体から溢れ、鼓動の度に噴き出て失くなる血液は、意識を徐々に暗転させていく。
 だから、補うために操作できる血液を使おうとして、
「おいおい、スリル感じてんのお前だけだろうが。一人で勝手に楽しんでんじゃあねぇぞ糞餓鬼!」
 爆発する炎がぶちこまれた。
「う、あァ……はは」
 その通りだと、朧は思った。
「その通りだ……悪かったよ……だから、こっから、さぁ!」
 ギロチンの刃を辺りに出現させる。それは自分が扱える数、31個。
「楽しい殺し愛を始めようぜ!」
「嫌だよ気色悪いなお前!」
 踊らせる。
 富子を囲う様に配置した四方八方の刃を、ばらばらのタイミングで飛び交わせる。
「今バラしてやっからよぉ!」
「人の話を聞かねぇ餓鬼だなぁ、イライラするじゃないか全く……!」
 と、振りかかる刃を爪で弾いた富子は、目の前にいた朧が消失していることに気づいた。
「あ?」
 居ない。だが刃は変わらず飛んでいる。
「隠れやがったかあのチビ……!」
 器用な事だ。
 舌打ちをしながら刃を回避し、時に弾きながら富子は動く。屈み、跳び、蹴り、叩き落として、
「綺麗でオイシソウな首だナァ」
「!?」
 ゾクリとした感覚が背後にある。
 振り返り、目の前に迫った刃を上へ弾いて、
「イタダキマス」
 それに引っ付いていた朧が、ロープで振り回したギロチンの刃を振り下ろした。
「なめんな」
 富子は、横に逸れて回避する。
 通りすぎるロープを掴み、朧を引き寄せて、
「馳走するほど、安くねぇんだよ!」
 思い切りの蹴りを叩き込んだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宮入・マイ
【芋煮艇】っス!

マイちゃん炎は苦手っス~!
だからリスキーっスけど本体といくらかの寄生虫で身体から抜け出して隠れるっス!
身体の方は遠隔操作で囮にしながら味方を【かばう】っス~爆発しちゃってもバラバラのまま動かして【恐怖を与える】っス!

サバティエルちゃんのUCが上手くいったら本体でこっそり忍び寄って…【友情の混合】っス!
いつもはおちゃらけてるマイちゃんっスけど友達の為っスからね、マジもマジっス。
壁の幻覚を見せて視界をっス、バルディートちゃんと協力して寄生虫での拘束を狙うっス!
すぐに燃やされるだろうっスけど一瞬でも時間が稼げたらいいっス!
後は姫子ちゃんが決めてくれるはずっス!

きゃっきゃ。


リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
【芋煮艇】で参加です

◆心情
自分の身体を燃やしてまで……あんなに苦しそうなのに……欲って、怖いです……

◆対先制
先制攻撃に対しては~防御アイテム「スケープシープちゃん」と~
防具の「ホワイトローブ(耐火仕様)」で凌ぎます~。

今回、アイテム「リネット・博子の特製まじかるポーション」の中身は消火剤にしてます~。
味方or自身に炎の被害があったらぶっかけて鎮火に努めます~。

◆戦闘
マジカルガジェット・ブーストギア/ウィークギアを使って援護ですね~。
強化効果の赤い歯車型魔法弾を御劔・姫子さんへ攻撃力UP重視で撃ち込んで~
同時に劣化効果の青い歯車弾を敵の日野富子へ防御DOWN重視で撃ち込みます~。


バルディート・ラーガ
【芋煮艇】にて。
皆様堂々と動かれる中、あっしは初手で「迷彩」。
金ピカの内装に紛れるよに入り込み、コソコソと位置取りに努めやす。
囮組が上手く回りゃア、目線はあちらへ集中する事でしょう。

さて、目線を取られッちまえば他への攻撃はできない……
コレは、アンタのUCの明確な弱点じゃアねエですかい。
回りこんだ死角からの【咎めの一手】でもって
ダメ押しでやっこさんの目を封じにかかりやす。

隙をこさえたら腕を蛇鞭へ変形、 「グラップル」で脚をとる!
……万一脚が無けりゃ腕なり胴なり、とにかく移動を封じやす。
「火炎耐性」での耐久にゃ、自信がある方にございやす。
デカイ一発叩き込んで頂くため、お膳立てと行きやしょうぜ。


甘甘・ききん
【芋煮艇】
はい立ちません!すみません邪魔しません!少ないですがわたくしめの全財産と、見つけ出した埋蔵金の一部、そしてこちらは金の卵を生む雌鳥、日の本一の芸妓のさばてぃえるにございます!どうかお納め下さい!

開幕即土下座でおさいふと金貨(【葉っぱ】が化けた物)と仲間を差し出して【騙し討ち】の下地を整える!とりあえずお宝が近くに在ってサバティの影に隠れてるわたしは爆炎で狙われまいっ!

後は土下座スタイルのままUC発動(無敵で動けない)。あからさまにコソコソするラーガさんの幻や、隙だらけで突っ込む姫子さんの幻を囮にして、土下座のまま援護するよ

しかし富子さんはちょっと理想的!わたしもこんな大人になる!


錬金天使・サバティエル
「私はかわいい!何なら惚れてくれたって構わないよ?」
そして私にお金貢いで欲しい。他所に迷惑かけてもいいから。でも責任追及されたらばっくれる。
【芋煮艇】で出撃だよ。
方針としては私は敵の攻撃を引きつける囮役を担当する。
耐熱性に優れた泥の霊で初撃を防御。
ききんさんに差し出されたらUCを使い存在感と誘惑を高めて敵の視線を私に釘付けにするよ。
銭ゲバなら私の持つ純金の羽や宝石には余計に弱いんじゃないかな。なんなら憎悪の篭った視線で見れずに弱体化するまであるんじゃないか。
牽制射撃をしつつ、なるべく味方に被害が行かないよう上手いこと誘導したい。


御劔・姫子
【芋煮艇】で参加

花の御所って、うちの家の近くやないのっ!?
そないなところに根城を作るやなんて…絶対に見逃せへんよっ!

見たものを燃やすかぁ…なかなか難儀な技やなぁ…
まずは、サバティエはんとききんはんに陽動を任せて…うちは【力溜め】やっ!
今から出す技は隙が大きいから、少しでも準備しとかんとなっ
もし、火がこっちに来るんやったら<狐のお守り>の【火炎耐性】で凌ぐっ!

さらにマイはんとバルディートはんが作ってくれはった隙に、ヒロコはんの援護を受けて…うちの全力の一撃【終乃太刀・都牟刈】での【なぎ払い】を叩き込むっ!
都をかつてのように火の海にはさせへんっ!
うちの【覚悟】の一撃…届いてっ!



 後に、その様は語り継がれるかもしれない。
 花の御所に乗り込み、怪我と返り血で凄惨さを増した富子の足元。
 這いつくばる様ではなく、しかし、あらゆる尊厳をかなぐり捨てた、相手を立てる気持ちの体現をこなす者の事を。
 膝を折り曲げ両手を着いて、額を地面に擦り付けるその様。
 それは、まさしく、土下座であったと。

「おま」
「はい立ちません! すみません邪魔しません! 少ないですがわたくしめの全財産と、見つけ出した埋蔵金の一部、そしてこちらは金の卵を生む雌鳥、日の本一の芸妓のさばてぃえるにございます! どうかお納め下さい!」
 片手で引っ張ったサバティエルを正面へ放りながら、ききんは面を上げる事なく言い切った。
 ……どうです!
 二つ折りの財布は広げて差し出したし、ちょっとズルをして適当な葉っぱを金貨に変えた献上品も添えてある。
 これでキレ散らかされたらどうしよう。それくらいのモノは出せたと思うが。
「日の本一とはむず痒いじゃないか、ふふ、だが肯定しよう!」
 サバティエルがノれたので多分、いいと思うことにした。
「なぜって私はかわいいからね! 何なら惚れてくれたって──」
 と、言うところで、
「うぜぇ」
 即座に爆撃された。
 土下座をかましたききんもろとも、サバティエルを、だ。
「ふ、せっかちさんめ……!」
 とは言えメインはサバティエルだった。
 爆発して広がる炎の巻き添え、と、ききんの立ち位置はそんな感じだろう。
 向けられた炎は泥の霊による盾の防御で軽減し、少女は改めて富子の前へ立つ。
 背中の純金製一対羽を広げ、わざとらしい腕の広げを見せて、しめやかに笑みを浮かべる。
「どうかな、この羽や宝石。我ながら高価な物だと思うのだけれど──」
「だからうぜぇよ」
 再度の爆撃があった。
「いいか?」
 盾に隠れる姿を見ながら富子は言う。
「敵が差し出すもんを信じるバカがいるか? 謀り事なんて見飽きてるんだよ」
 だから、と、そう続けて一度嗤った富子は、青筋を浮かべてキレた。
「だからお前はぶち殺し確定だ!」


「ハマっちまいましたなぁ」
 御所の屋敷、きらびやかな屋根を這いながらバルディートは思う。
 敵方、日野富子は、芋煮艇が仕掛けた術中に入ったと。
 始めは二人を視界に納めて認識していたが、今はサバティエル一人に意識を集中している。
 お前達、ではなく、お前、と言ったのがその証拠だ。
 事実前に出た二人の側には、普段マイがガワとしている身体が控えているのに、最初の炎で巻き込んで以降富子は気にしていない。
「そして、その本体は……」
 居た。
 大きく迂回して富子の後方に、小さな姿で存在している。
「じゃあ、あっしから行くとしやしょうか……!」
 屋根から地面へ、五体を投げ出す様に落ち、富子の斜め後ろから接近する。
 そうして、行うべき事は一つ。
「お膳立てといきやしょう」
「あ?」
 気配に、富子はバルディートの方へ振り返る。
 だがそれに合わせて彼も位置をずらして、背中へ張り付くように視線を避けた。
「その視線、確かに恐ろしい。だがねぇアンタ、コレってのは逆に、見られなきゃ攻撃出来ないってのは、明確な弱点じゃアねエですかい?」
 バルディートには確信がある。
 富子の攻撃は強力で発動条件も達成しやすいものだが、そのシンプルさ故に付け入りやすいと。
 故にその実証を行うために背後にいて、それは富子も気付いた事だ。
「は」
 だから。
「あっはっはっは!」
 富子は天を仰ぐように笑う。
 なるほど、なるほどと、肯定するように呟き、そして。
「──ならこうすればいいだろ」
 仰いだ天を爆発させた。
 散らばる紫の炎はバラバラに飛び散り、燃え盛りは広がって。
「ほら、全部燃やせばいいんだ。それで全員焼き殺す。焼けなくても空気を焦がし尽くしてやる。それでさぁ、全員死ねば、万事解決だろうがよ」


「めちゃくちゃっスね……!」
 理屈じゃなさ過ぎる。傍若無人な力の在り方だ。
 しかし実際に広げられた炎は無視できない程に強力で、特にマイからしては苦手な部類の障害だった。
 だが一つ、その無茶苦茶にはこちら側のメリットがある。
「無差別にした分、個別対応は疎かっス!」
 このタイミングであれば、ユーベルコードの発動が容易に施行出来るはずだ。
 変わらずにききんは土下座だし、サバティエルは盾の裏から口数を減らさないし、バルディートは炎から逃げ惑っているが、問題は無い。
 そう思って、だからマイは実行した。
「どっちつかずはよろしくないっスからね……ね!」
 引き連れた寄生虫達を奮い立たせる為のユーベルコードだ。
「ガーちゃんアーちゃんロイコちゃんにサナダちゃん……頼むっス!」
 側にある意思へ言う。
 目の前に燃え盛り立ちはだかる炎を突破して、その芯に佇む敵を穿てと。
 恐れがあって、怯えもあって、それでも進めと。
「無理はいけませんよぉ~?」
 決意の心に待ったが掛かった。
「安心、安全に。実験も戦闘も大事な事です~」
 ヒロコだ。
 ホワイトローブを頭から被って炎の脅威から体を守りながら、分厚い眼鏡を一度指で押し上げる。
 そのガラスに写るのは、紫の炎の中に立つ富子の姿。
「無理して自分の身体すら燃やして……あんなに苦しそうなのに笑って、怒って……怖いですね……」
 人の欲望は、ここまで狂気に堕ちられるものか。
 一度没して、それが最後のタガを外してしまったのか。
 そんな詮無い思考は頭を振って、ローブの裏側に仕込んだ瓶詰めの薬品を両手指一杯に挟んで持つ。
「道を作ります~」
 事前の作戦をこなすため、マイを通すのは必要な事だ。
 そういう万が一を想定し、ヒロコはポーションの代わりに消火剤を詰めて、今、真っ直ぐに連なる軌道でそれらを投擲した。
「あン……?」
 砕け、割れ、広がる白濁の薬品は炎に被さり抑えて、
「一瞬っスよバルディートちゃん!」
「わかってまさぁ……!」
 ロープ状に伸びた寄生虫が左足を、鞭の様なしなやかさへ変えた腕で右足を、それぞれに絡み付かせて自由を奪う。
 その、刹那。
「──!」
 一撃が起きた。


 姫子は、始まりの時。初めの位置から動かずにそこに居た。
 土下座の時も。
 空が爆発した時も。
 呼吸を乱さずに立ち続けていた。
 ……成さんとアカン。
 その間、心にあったのは、ただ一つの想いだ。
 今あるこの場所、花の御所は、自分の家から離れていない位置にある。
 戦禍の発端がご近所だなんて、笑えない上に見逃す訳にはいかない。
 だから、並々ならぬ理由と感情を糧に、少女は待った。
 ……一瞬や。
 敵は強い。
 それは能力であり、状況への対応力であり、絶対的な自信とあらゆるものへの怒りから来る力だ。
 それでも、完璧ではない。
 仲間がそうさせない。
 故に。
「一瞬っスよ!」
「わかってまさぁ……!」
 二人の行動の結果を待たない内から、姫子は駆けた。
 必ず隙を作る。
 そう信じたから、ただ自分は自分の全力を出しきる為に行く。
「うちの覚悟や……!」
 無手を上下に重ね、柄を握る形を取る。
 地を蹴って、富子を見下ろす様に上空へ。
「だめ押し、ですよ~!」
 そこへ、ヒロコから強化の魔法弾が届いた。
 身体へ充足するパワーの全てを両手に注ぎ、
「これがうちの……うちらの全てっ!」
 薙ぎ払う。
「終乃太刀、都牟刈っ!!」
 そういう軌道で切り裂いた次元の断層が、富子の身体へ吸い込まれた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

心禰・白雨
「戦争と貸し付けと関所で財を築いた女、日野富子。
 今日は強欲なお前が燃やす事を躊躇う物を用意してきた――なんだと思う? 言っておくが金じゃあねえぜ」
「おまえが死んで有耶無耶になった貸付金台帳だ!」


(たとえ精神的に効果が見込めずとも、一瞬でも視線を遮るために古びた紙の束を放り投げ、まき散らします)

「金稼ぎは悪かねえが。結局7万貫の金があっても命は買えなかったわけだ。三途の川を渡るにゃ三文ありゃ十分なんだよ」

台帳撒きや爆発に乗じ忍ばせたユ―ベルコードの赤糸で富子の首を括ろう。
こういうのUDCアースじゃあ仕事って言うらしいな。
いやはや。金を稼ぐってのも楽じゃねえぜ。なあ。



「戦争と貸し付けと、関所で財を築いた女。日野富子、ね」
 すげーな、まだ生きてるよ。
 とは、心中で言って、白雨は淡々と足を運ぶ。
「知った風な口だな糞餓鬼……いや、どいつとこいつも糞餓鬼ばかりだったけどよぉ」
 当初より覇気が無いのは、その身に負ったダメージのせいだ。
 しかしそれでも油断ならない、隙のない気配を纏っているのは、魔軍将の一人と数えられるだけの理由だろう。
「だが今日は、強欲なお前が燃やす事を躊躇いそうな物を用意してきた。なんだと思う?」
 懐に手を突っ込み、がさりと紙を掴む音を鳴らして白雨はそれを取り出した。
 期待したって紙幣じゃあねぇぜ、と、一拍の前置きを挟んで。
「おまえが死んで、その後有耶無耶になった貸付金台帳だよ!」
 思い切り空へばらまいた。
「なんだと……っ」
 それを見た富子が思ったのは、後悔だ。
 別に、過去にどれだけの負債があろうと返せばいいし、気にくわなければそれ事踏み倒し飲み込みチャラにすればいいだけだが、今の瞬間はそうは行かない。
「金稼ぎは悪かねえが、結局おまえ、七万貫の金があっても命は買えなかったんだなぁ」
 首が絞まった。
 誘導された視線の隙、まんまとしてやられた瞬間に、なにか見えないモノが自分の気道を潰すように絞めてくる。
「三途の川を渡るにゃ三文ありゃ十分だろうが、今持ってるかい?」
「く、そ、がき……ッ」
 絞まる。
 意識が遠退いていく。
 纏まらない思考の中、白雨の言葉が反響するように聞こえて、
「いやはや、仕事で金を稼ぐってのも楽じゃあねえぜ。なぁ、そう思うだろ、おまえも」
 糞餓鬼どもがと、そう思った。
 認めてやる。
 腹立たしい事に、今、この場だけは、追い詰められたと。
 だから。
「──はっ」
 笑って。
「ぜんぶ、もえちまえ」
 自分も、周りも、その全てを焼失させる為の炎を放った。
 屋敷も、庭も、自分が保有するその全てを焼き付くし、もう二度と死後、誰にも渡すことなど無いように。
「ぜんぶ、ぜんぶ……死ね」
 爆炎が噴き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:失敗

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト