エンパイアウォー⑳~絢爛なりし大悪災
「エンパイアウォーへの参戦に感謝します。リムは現在の戦況を報告します」
グリモアベースに集った猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「皆様がエンパイア各地でオブリビオンの討伐を続けた結果、信長に仕える『魔将軍』の一人の所在が判明しました」
魔将軍は信長軍に属するオブリビオンの中でも最高クラスの幹部たち。その中にはエンパンパイアの歴史にその名を刻んだ偉人、名将たちも名を連ねている。
もし、この戦争に勝利したとしても彼らを討ち損ねることになれば、逃げ延びた魔将軍は戦争後もエンパイアの何処かで暗躍を続けるだろう。
「単なる強敵というだけではなく、戦後のエンパイアの未来を考えても、決して無視することのできない驚異です。リムはこの機に乗じた確実な撃破を要請します」
そう言ってリミティアは作戦の詳細について説明を開始した。
「今回、所在が判明した魔将軍の名は大悪災『日野富子』。室町時代に起こった将軍家の跡継ぎ争い、通称『応仁の乱』を引き起こし、室町幕府を事実上支配した女性です」
歴史の教科書でその名を目にした猟兵もいるかもしれない。他の世界では再評価される向きもある彼女だが、『エンパイアの"日野富子"』は莫大な資産を背景に権力を拡大し、欲望のままに人々を苦しめ、サムライエンパイアを壊滅寸前まで追い込んだ、まさに『大悪災』の名に相応しい鬼女であったという。
「その財力への執着と欲望はオブリビオンと化した今も健在――いえ、あるいは強まっているのでしょうか。この戦争でも莫大な資産を背景とした補給物資の買い占めを行い、江戸幕府軍の行軍を妨害しています」
徳川家秘蔵の埋蔵金が無事に発見されていなければ、幕府軍は戦わずして大きな戦力の減退を強いられていただろう。単純な武力とは異なる力を持った難敵である。
「日野富子の拠点は京都にあるかつての足利将軍家の邸宅『花の御所』です。江戸時代にはもう別の建物に代わっていましたが、富子によって新たな御所が新築されたようです」
彼女は室町幕府8代将軍足利義政の正室で9代将軍の母親でもあるため、足利将軍家の邸宅を自分の拠点にしても問題ない、と考えているようだ。
往時の室町幕府の権勢の象徴であった花の御所は、富子の有り余る財力によって、かつての姿よりも遥かに豪華絢爛かつ広大な御所として新築された。
戦場とする上では特に憂慮すべき仕掛けなどはない。何なら派手に破壊しながら戦っても、富子以外は誰も文句を言わないだろう。
「――余談ではありますが、室町時代にあったかつての花の御所は、他ならぬ富子が引き起こした『応仁の乱』の戦火によって焼失しています」
歴史は繰り返す、とも言うが。骸の海より蘇った富子がそれを再建するのは、何とも因果なものを感じなくもない。
「日野富子は徳川、猟兵、そして信長にも殺意を燃やし、魔軍将とはいえ必ずしも信長に忠誠を誓ってはいないようですが、それだけにこの戦争で彼女を逃した場合、その後の行動は予想がつきません」
彼女は莫大な資産と経済力という他のオブリビオンにはない強みを持つ。もしここで討ち損じれば、戦後のエンパイアにどのような悪災がもたらされるか知れたものではない。
「敵の拠点が判明したこの好機をものにして、確実に撃破してください」
真剣な眼差しで猟兵たちを見つめながら、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、花の御所への道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
織田信長に従いし魔将軍、第一に現れしは大悪災『日野富子』!
豪華絢爛な花の御所に住まう彼女の撃破が今回のシナリオの目標です。困難な闘いが予想されますので、以下の注意事項にも目を通したうえで、失敗も覚悟の上で挑戦してください。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
|
POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「金、金、アタシの金……!」
絢爛豪華に彩られた『花の御所』の中央で、鬱々と怨嗟の咆哮を上げる女がいた。
豪奢な着物姿に整った容貌。楚々としていれば恐らくは美女なのであろうが、憎悪に醜く歪んだ形相と全身から燃え上がる紫色の炎は、怨霊の類としか見えない。
「徳川の財の大半は、元々アタシの集めた金なんだ……! 何をあいつら、クソッ、素知らぬ顔をして……!」
彼女こそ『大悪災』日野富子。エンパイア史上屈指の大乱である『応仁の乱』を引き起こした元凶にして、一度はこの世界を壊滅寸前にまで追い込んだ鬼女。
オブリビオンと化した彼女の行動の原動力は、財への執着と憤怒であった。
「ああムカツク! ああああムカツク! どいつもコイツも、アタシが殺してやる!」
怒りの業火を燃え滾らせ、日野富子は吠え猛る。
大悪災の待ち受ける絢爛豪華なる戦場に、猟兵たちは足を踏み入れた。
ヴィヴィアン・ランナーウェイ
アドリブ・連携歓迎
ここまで己のことしか考えず、憎悪で塗れた女であれば、悪女と呼ばれることも理解できます。
私、貴女を見ているとどうしようもなく苛立ちますの。
全力で打ち倒してあげます。
こちらのUC発動前に、敵の火矢が召喚されるでしょう。
この豪華絢爛な御所、利用させていただきますわ。
●ダッシュで弓矢から逃れます!ええ、逃げる訳ではなく、これは作戦のうち!
多少の被弾は●覚悟の上!山中で鍛えたこの脚力と●野生の勘で最短ルートを辿ります!
その間にUCを発動!
さあ、一本道のこの迷宮なら、もはや私を捉えることはできなくてよ!
後は日野富子の場所へ辿り着き、この槍を突き立てるのみ!
我が覚悟の槍、受けなさい!
「ここまで己のことしか考えず、憎悪で塗れた女であれば、悪女と呼ばれることも理解できます」
「ああ?! 何だテメエ、猟兵か!!」
憤激する大悪災の前に最初に現れたのは、ヴィヴィアン・ランナーウェイ(走れ悪役令嬢・f19488)。招かれざる敵の出現に、日野富子の怒りの炎の勢いが増す。
欲深く、自分勝手で、他人を踏みつけることに躊躇いのない権力者の女――それはヴィヴィアンが特に嫌いとするタイプの人物像にぴったりと合致していた。
「私、貴女を見ているとどうしようもなく苛立ちますの。全力で打ち倒してあげます」
「ふざけんな! 勝手に来といて何様だ!!」
アリスランス・烈火を構え、凛とした振る舞いで堂々と宣言する令嬢に対し、日野富子は苛立ちをさらに募らせ。その激情はかつての応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊を顕現させた。
「この豪華絢爛な御所、利用させていただきますわ」
敵の攻撃が来るのを察知したヴィヴィアンは、即座にくるりと踵を返すと、襲来する火矢から逃れるべく全速力で駆け出した。
「ああ!? 逃げるのかよふざけんな!! せめて命くらい置いてけ貧乏人が!!」
叫び散らす富子の怒りに応えて、火矢の怨霊は逃げるヴィヴィアンを追撃する。
スピードではヴィヴィアンのほうが勝っているが、火矢の怨霊は主の性格を反映したかのように、どこまでも執拗に決して敵を逃すまいと追尾してくる。
「くっ……!」
逃れ来れなかった火矢の一本が肩に突き刺さり、激痛と灼熱がヴィヴィアンを襲う。だが彼女は顔をしかめながらも決して速度を緩めない。幼い頃より山中で鍛えた脚力と野生の勘を活かし、広大な御所の内部を最短ルートで駆け抜ける。
(ええ、逃げる訳ではなく、これは作戦のうち!)
多少の被弾も最初から覚悟の上。最高速度に至るためにはまず助走が必要なことを、彼女はよく知っている。
「ここからが反撃ですわよ!」
御所の中をほとんど一周する勢いで走り抜け、富子の先制攻撃を凌ぎきったヴィヴィアンが発動したのは【ガラスのラビリンス】。絢爛豪華な花の御所を上書きするように、透明なガラスで出来た迷路が戦場に広がっていく。
いや――それを正しくは迷路と言えたものかどうか。何しろそれは複雑に入り組んでなどおらず、入り口から出口まで一つの道で作られていたのだから。
「さあ、一本道のこの迷宮なら、もはや私を捉えることはできなくてよ!」
敵を迷わせるためではなく、自らが走りやすいコース作りのために迷路を出現させたヴィヴィアンは、風のように、鳥のように――どこまでも加速していく。
「何だこりゃ! アタシの御所が……ってテメェ、戻ってきやがったのか?!」
ガラスのラビリンスに囚われた富子は、火矢を振り切って猛然と突進してくるヴィヴィアンの姿を見て驚愕する。
一本道の迷宮の中では、攻撃を回避するスペースも限定される。ガラスの壁に左右を塞がれた富子に、正面から突っ込んでくるヴィヴィアンの槍を避ける術はない。
「我が覚悟の槍、受けなさい!」
「テメッ、この、待て――ギャァッッ?!」
突き立てられた烈火の槍が、富子の胸を深々と穿つ。同時にヴィヴィアンの全速力の突進を食らった彼女は、衝撃によって迷路の外まで吹っ飛んでいくのだった。
成功
🔵🔵🔴
ボアネル・ゼブダイ
アドリブ連携OK
己の悪行を顧みず、なおも罪咎を重ねる大悪災よ
無辜の民のためにもここで止めさせてもらうぞ
火矢の怨霊が召喚されたらこちらもUCを発動
炎の聖騎士団を召喚し迎え撃つ
飛び交う火矢がこちらを襲って来たら聖騎士達の炎で飲み込み
そのまま味方に被害が出ないように操作して花の御所を炎で燃やす
底知れぬ財力への執着と欲望があるならば見過ごさないはずだ
貴様の蓄えた財は此処で終わる
その愚かな欲望と共にな
富子が盛大に燃やされた花の御所に気を取られた隙に一気に接近し
生命力吸収を乗せた黒剣グルーラングでの斬撃と聖騎士達の炎を喰らわせる
行き過ぎた欲は己の身を腐らせる
貴様は、貴様自身を喰らう炎を自らの手で蓄えたのだ
駆爛・由貴
あのねーちゃん滅茶苦茶ブチ切れてるな…
金があるのに余裕が無いってのは悲惨だねー
爪が輝くと同時にエヴァー・トラッシュに魔力を通して動きを加速
爪の初撃を全力で見切って避けるぜ
それと同時にUCを発動
発煙手榴弾をばらまいて敵の視界を塞ぎ爪攻撃を更に避けやすくするぜ
こうすれば味方のアシストにもなるだろうしな
鬼さんこちら…ってな!
一斉に叩き込め!
敵がこちらを見失ったら距離を取ってオンモラキとバサンを展開
俺もミストルティンの誘導弾を使って一斉射撃だ
敵の場所はホムラⅣでスキャンして追跡
正確に叩き込むぜ
一緒に戦う味方がいたらそいつらにも場所を伝えて連携して攻撃するぜ
射線の先を狙え!ってな
アドリブ連携歓迎
「ああ畜生! やってくれたな猟兵! ぶっ殺す!!」
花の御所の離れにまで吹っ飛ばされてきた日野富子は、怒りの炎をメラメラと燃え上がらせながら立ち上がる。人の屋敷に土足で乗り込んでくる輩など、全て焼き尽くしてやると言わんばかり。
「あのねーちゃん滅茶苦茶ブチ切れてるな……金があるのに余裕が無いってのは悲惨だねー」
「聞こえてるぞてめぇ!!!」
ギロリと眼光鋭く振り返った先にいた呟きの主は駆爛・由貴(ストリート系エルフ・f14107)。「げ、こっち見た」と若干引き気味ながらも、漆黒の化合弓「ミストルティン」に矢を番える彼は、既に臨戦態勢。
そこに並び立つのはボアネル・ゼブダイ(Livin' On A Prayer・f07146)。黒剣グルーラングを手に、堂々たる騎士の振る舞いで、エンパイアを乱す巨悪に宣告する。
「己の悪行を顧みず、なおも罪咎を重ねる大悪災よ。無辜の民のためにもここで止めさせてもらうぞ」
「悪行? そんなの知るか! この世は金を持ってるやつが正義なんだよ! つまりアタシこそ正義だ!」
苛立ちと共に再び火矢の怨霊を召喚する富子。その指先の爪は長く伸び、ギラリと鋭く輝いている。彼女もいよいよ本気で猟兵を排除するつもりのようだ。
「バラバラに切り刻んで、骨まで灰にしてやるよ!!」
言うや否や、大悪災は降り注ぐ火矢と同時に襲い掛かってくる。重たそうな着物姿にも関わらず、その身のこなしは見た目以上に機敏。輝く爪による斬撃が、二人の猟兵を同時に襲う。
由貴は着用している「エヴァー・トラッシュ」に魔力を通して動きを加速し、敵の初撃を全力で避ける。一方のボアネルは黒剣を盾として爪の斬撃を受け流し、寸でのところで負傷を抑えていた。
「ちっ、抵抗するなよ! どうせ無駄なんだから、アタシのジャマをするな!」
初撃を凌いでも、富子は間髪入れずにさらなる連撃を仕掛けてくる。加えて上空からは降り注ぐ火矢の雨。これを同時に凌ぐことはいかに猟兵であっても至難だろう。
――だが、それは対処する猟兵が一人であればの話だ。
「パーティーはこれからだぜ?」
由貴は懐に隠し持った発煙手榴弾をばらまいて、富子の視界を煙幕で覆い尽くす。
標的を見失った富子の爪攻撃は虚しく空を切り、ただ苛立ちだけが募ることに。
「ちぃ……っ! けどこんな目眩ましじゃ、アタシの火矢は止まらないからな!」
「それを迎え撃つのは私の役目だ」
煙の中で黒剣を掲げ、ボアネルが【業火の信念】で召喚したのは炎の聖騎士団。
炎の魔法の使い手たる彼らは怨霊の火矢を自らの炎で飲み込むと、味方に被害の出ない範囲へと炎を誘導する。
「あああああああっ!?!?」
それは周囲の花の御所へと炎の被害が拡散するということでもあり。
ごうごうと燃え上がる建物を見た富子の、耳をつんざくような絶叫が響き渡った。
「貴様の蓄えた財は此処で終わる。その愚かな欲望と共にな」
「ふざ、っけんな! てめぇら絶対にぶっ殺してやるからな!!」
敵が炎上する御所に気を取られた隙を突いて、一気に接近していくボアネル。
怒り心頭の富子は闇雲に爪を振り回すが、煙幕の中では空を切るばかり。一方でそれは、ボアネルからも敵の正確な位置を視認できないということでもあったが――。
「鬼さんこちら……ってな! 一斉に叩き込め!」
煙に紛れて距離を取っていた由貴は電脳ゴーグル「ホムラⅣ・サイバーシステム」で目標の位置をスキャンすると、展開した自律ポッド「オンモラキ」「バサン」そして自らの弓による一斉射撃を放つ。
「射線の先を狙え! ボアネル!」
「ああ、わかった由貴」
誘導弾の矢とガトリング砲の弾幕、そしてビームランチャーの閃光が煙の中を貫いていく。その軌跡と上がった悲鳴を道標にして、迷いなくボアネルは駆けていく。
「ぐあああっ!? ち、くしょ……!!」
由貴とポッドの一斉射撃を叩き込まれてよろめいた富子が次に見たものは、黒剣グルーラングを振りかざすボアネルと、その後方より炎を放つ聖騎士団の姿。
「行き過ぎた欲は己の身を腐らせる。貴様は、貴様自身を喰らう炎を自らの手で蓄えたのだ」
生命力を喰らう断罪の斬撃と、罪咎を焼く業火が大悪災を襲う。
紅蓮に包まれた花の御所に真紅の鮮血が散り、傷ついた富子は「やってくれたな……!」と恨み節を吐きながら後退していった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御劔・姫子
花の御所って、うちの家の近くやないのっ!?
それに、都には宮様もおられる…これ以上の狼藉は許さへんよっ!
見たものを燃やす力…厄介やなぁ…
近づかなあかんから…【地形の利用】で隠れながら機会を探るしかあらへん
もし、火がこっちに来たんやったら<狐のお守り>のご利益である【火炎耐性】に頼るしか…いつもありがとうな。
っ!? 誰か分からんけど、煙幕が…これは好機やっ!
煙幕の中を【第六感】を活用して進み…【表奥義・蛟卸し】で【なぎ払い】っ!
さらに【2回攻撃】で二乃太刀もとっときっ!
煙が晴れたんやったらまた炎が来るかもしれへんから、すぐに退くっ!
「それにしても…あの煙幕、誰がやってくれたんやろ…?」
羽月・姫香
都、かぁ…よく夢には見たんやけど、実際に来るのは初めてやね。なんやろ、懐かしいような気も…
っと、感傷に浸ってる暇はあらへん。さ、大悪女討伐やっ!
見たものを燃やす力なぁ…それやったら、
【地形の利用】【目立たない】ように物陰に隠れつつ、物を【投擲】して視線を【おびき寄せ】て…
注意力散漫になった所で<忍七つ道具>にある煙幕で【目潰し】やっ、その間に仕込みさせてもらおかなっ?
…へ? なんかいつの間にか傷が増えてる? 煙幕の中に味方がいたんやろか?
まぁえぇか…本命はコレ、【忍法・火炎陣】っ!
アンタ自身が火に強かったとしても【毒使い】であるウチの火遁は一味違うでっ!
「それにしても…誰やったんやろ?」
「花の御所って、うちの家の近くやないのっ!?」
エンパイアの古都出身の御劔・姫子(はんなり剣客乙女・f06748)は、そんなすぐ近くにオブリビオンの拠点が在ったことに驚きを隠せない。京は彼女の家の他にも多くの人々が暮らす歴史ある都。そこに敵の魔の手が迫っていたと思うとゾッとする。
「それに、都には宮様もおられる……これ以上の狼藉は許さへんよっ!」
愛刀『巌太刀』に手をかける彼女の瞳には、普段以上の決意が煌めいていた。
「ちぃっ、次から次へと! アタシの前に立つんじゃねぇ!」
自慢の御所を焼かれたうえに自らも深傷を負い、怒りの留まるところを知らない日野富子は、憎悪の籠った視線で周囲を睨めつける。咄嗟に姫子がその場を飛び退いた直後、紫炎の爆発が彼女のいた場所で炸裂する。
「見たものを燃やす力……厄介やなぁ……」
幸いにも反応が速かったこと、そして身につけていた「狐のお守り」のご利益が火難を退けてくれたことで、大したダメージはない。「……いつもありがとうな」とお守りの送り主への感謝を呟きながら、姫子は近くの建物の物陰に飛び込んだ。
御所の内部は隠れられる場所は多いが、このまま敵の視線を避けるだけでは埒が明かない。なんとかあの攻撃を凌ぎながら、接近する機会を探らなければならない。
「都、かぁ……よく夢には見たんやけど、実際に来るのは初めてやね。なんやろ、懐かしいような気も……」
時を同じくして、物陰に隠れながら攻撃の機を窺っていた猟兵はもう一人。
花の御所に潜入した羽月・姫香(災禍呼ぶ忍・f18571)は、奇妙な既視感を覚えていた。記憶にはない筈なのに、初めての都の空気はなぜか彼女の胸を締め付ける。
「っと、感傷に浸ってる暇はあらへん。さ、大悪女討伐やっ!」
気にならないと言えば嘘になるが、今は戦いが優先。忍びとしての技量を活かして相手の死角から死角へと物陰を飛び移り、音もなく標的との距離を詰めていく。
「見たものを燃やす力なぁ……それやったら」
姫香は足元に転がっていた石ころを投げて、離れた場所でコツンと物音を立てる。
「ッ!! 誰だッ!!」
気の立っていた富子はその音に過敏に反応し、誰もいない場所で爆発を起こす。
あらぬ方向へとうまく視線をおびき寄せてから、姫香は注意力散漫になった敵目掛けて今度は「忍七つ道具」の一つ、煙幕玉を破裂させた。
「これは……くそっ! また煙かよ!」
濛々と立ち込める白煙が、富子の視界を遮っていく。相手に視線が通らなければ、彼女の憎悪の視線は効果を発揮しない。それをよく知っている本人は苦い顔。
「この間に仕込みさせてもらおかなっ?」
煙幕の中で敵が動揺している隙に、姫香はとっておきの忍法の準備を整えていく。
そして姫香の行動は、機を窺っていた他の猟兵にも有利に働いた。
「っ!? 誰か分からんけど、煙幕が……これは好機やっ!」
視線による驚異が失われた瞬間、物陰から飛び出して煙幕に突入するのは姫子。
たとえ視えなくとも、彼女には研ぎ澄まされた剣士の第六感がある。禍々しき大悪災の気配を捉え、抜き放った巌太刀を大上段に構え――。
「これが御劔の技……奥義・蛟卸しっ!」
振り下ろされた渾身の一太刀。深々と肉を断つ手応えと共に、煙幕の中で血飛沫が上がる。間髪入れずに刃を返し、二乃太刀を浴びせる姫子。
「があぁぁぁッ?! てめぇ、よくも……ッ!!!」
一瞬のうちに二筋の刀傷を刻まれた富子が、悲鳴を上げながら膝を突く。
煙幕も次第に晴れてきている。視界が開けてまたあの炎が襲ってくる前に、姫子はそれ以上の追撃はせずにその場を離脱する。
「それにしても……あの煙幕、誰がやってくれたんやろ……?」
礼を言う暇もなかったが、またどこかで会えるだろうかと首を傾げながら。
「……へ? なんかいつの間にか傷が増えてる?」
一方、忍法の仕込みを完了させた姫香は、晴れた煙幕の中から現れた富子が、なぜか血塗れで膝を突いているのを見て首を傾げる。煙幕の中に味方がいたのだろうか――しかし今は思案を巡らせている暇はない。
「まぁえぇか……本命はコレ、【忍法・火炎陣】っ!」
富子が立ち直る前に投げ放たれたのは、姫香特製の焼夷爆弾。
それは着弾と同時に勢いよく燃え上がると、標的の全身を紅蓮の炎で包み込んだ。
「あ、っちぃッ! けど、こんな炎なんてアタシには……ゲホッ、ゴホッ!?」
「アンタ自身が火に強かったとしても、毒使いであるウチの火遁は一味違うでっ!」
燃焼により発生する有毒性のガスが、忍法・火炎陣に仕込まれたもう一つの効果。いかに炎を操るオブリビオンといえど、炎と毒を同時に受けるのは堪えるだろう。
案の定、毒の煙に巻かれた富子は激しく咳き込みながら悶え苦しんでいた。
「ゴホッ、ゴホッ……覚えてろよ、この……!!」
これ以上この場に留まるのは不味いと、毒の煙から逃げるように後退する大悪災。
ここで迂闊に深追いすれば、あの憎悪の視線で反撃を食らう恐れもあるだろう。敵の撤退を見届けながら姫香が考えるのは、先程の煙幕で戦っていた"誰か"のこと。
「それにしても……誰やったんやろ?」
その疑問に答えられる本人は、残念ながらもうここには居なかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ネムネ・ロムネ
敵さんも一枚岩ではないとゆー事でしょーか
ん
なんでもいーですけど
仕事ですね
ネムが交渉に当るのです
戦闘に入る前に出来るだけ屋敷の構造を把握したいです
広い間での戦闘は今回に限って言えばネムに不利
事前に調べた情報だと大きな屋敷には銅像?木像?そんなのを祀った部屋があると知ってるのです(持仏堂)
そんな専用部屋がある程大切な像ならきっと敵も長い爪で暴れ難い筈です
大切な像を盾に敵の攻撃を凌いだらUCを発動して反撃開始です
交渉の基本は
相手の弱みを握る事なのですよ
日野さん
長い火器は狭い部屋には適さねーですね
拳銃とナイフをメインに
ガトリングの使用は物影からの奇襲程度に留めて
※UCの負荷による強い頭痛と鼻から出血有
「クソッ、あいつら、よくも……! 絶対に許さないからな! 猟兵も、徳川も、それに信長の野郎も、全員ぶっ殺してやる!!」
猟兵の襲撃から後退していく日野富子は、まさに手負いの獣らしい形相で、敵のみならず総大将のはずの信長にまで無差別な怒りを撒き散らす鬼女と化していた。
(敵さんも一枚岩ではないとゆー事でしょーか。ん。なんでもいーですけど)
その様子を物陰から窺うのはネムネ・ロムネ(ホワイトワンダラー・f04456)。
戦闘に入る前に出来るだけこの御所の構造を把握しておこうと、ここまで隠密裏に動いてきた彼女だったが、敵は都合よくこちらに有利な場所に向かって来ている。
「っ! そこに居るのは誰だッ!!」
(見つかっちゃいましたか)
ギロリ、とネムネの隠れている柱を睨め付けながら、富子が爪を鋭く伸ばす。
こちらも仕掛ける頃合いとしては悪くない。拳銃とナイフを引き抜いて、ネムネは大悪災の前に飛び出した。
「仕事ですね。ネムが交渉に当るのです」
絢爛豪華な花の御所に響く銃声。そして斬撃音。
「どうした! 逃げるんじゃねぇ!!」
長い爪を振りかざす日野富子の猛攻を避けるため、ネムネは牽制射撃を繰り返しながら近くにあった部屋の中に飛び込む。勿論、富子もすぐさま襖を蹴り飛ばさんばかりの勢いで追ってくるが、その部屋は――。
「ッ!! ここは――!!」
「事前に調べた情報だと大きな屋敷には銅像? 木像? そんなのを祀った部屋があると知ってるのです」
この部屋がまさにそう。持仏堂と呼ばれる日常の礼拝を行うための間である。
とは言え強欲で自己中心的な富子に、仏に祈るような殊勝な心掛けがあるかどうかは怪しい――この持仏堂に安置されていたのは、どれも彼女の虚栄心を満たすような、銅でも木でもない、キンキラな黄金の仏像の群れであった。
(そんな専用部屋がある程大切な像なら、きっと敵も長い爪で暴れ難い筈です)
そう考えてこの部屋をあえて戦場に選び、仏像を盾にして隠れたネムネの判断は正しかった。さっきまでメチャクチャに暴れ回っていた富子の攻撃がピタリと止まる。
「こ、このガキ……! ここの像が一体幾らすると思ってんだ!!」
「交渉の基本は、相手の弱みを握る事なのですよ、日野さん」
無表情な顔にどことなく「してやったり」な感情を滲ませながら、ネムネは体内の【ディファレンスエンジン】を稼働させ、反撃を開始する。
物理法則の限界を超えて加速する人形の身体。目にも留まらぬ速さで持仏堂を駆け抜けたネムネのナイフが、すれ違いざまに富子の脇腹を切り裂く。
「こいつ――ッ!!」
鋭い痛みに顔をしかめながら、反撃にと爪を振りかざす富子だったが、周りにある仏像を攻撃に巻き込んでしまうことを恐れて動きが止まってしまう。
今回の戦いに限って言えば、広い間での戦闘はネムネにとって不利だった。敵は周囲への被害を気にせず好きなように暴れられるからだ。しかしこの持仏堂でなら、狭い部屋での戦いに合わせてメインの武装を選択していたネムネの方が有利。
「ここでなら、そしてこれを使えば、貴方にも勝てるのですよ」
ディファレンスエンジンのもたらす圧倒的な力は、使用者の脳に強い負荷を与える。激しい頭痛に襲われながらも、ネムネは躊躇わず加速を続ける。
そしてリボルバー拳銃による十連射。四方八方から放たれる弾丸が、大悪災を撃ち抜いていく。
「ええい、仕方ない……!!」
窮地に陥った富子はようやく躊躇いを振り切り、がむしゃらに爪を振り回す。
辺り構わぬ乱れ斬りによって、切り刻まれていく黄金の仏像。だが、その中に殺したかったはずの標的の姿はない。
「あのガキ、どこに――」
「こっちですよ」
一瞬早く物陰に退避していたネムネは、そこに隠しておいたガトリングガンのトリガーを引く。ルーンによって威力を強化された銃弾の嵐が、此方を見失った富子の背後から襲い掛かる。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
豪奢な着物は穴だらけになり、血飛沫を上げる富子の絶叫が持仏堂に響く。
たまらず堂内から撤退していく敵を見届けて、ネムネは鼻から垂れた血をぐいっと拭いながら呟いた。
「交渉成功です」
大成功
🔵🔵🔵
ヘクター・ラファーガ
魔軍将のくせにボスにまでキレてるのかよ……
それはいいとして、問題はアイツの攻撃だな。"咄嗟の一撃"で一撃ずつ防いで、なんとか隙を見つけるしかないな。
『刹那の取捨選択』を利用する。
最初の一撃は浮浪者の剣で防いで捨てる。次の攻撃は小銃を盾に、三回目は大剣、四回目はダブルバレル、五回目に短杖、六回目に騎士槍、七回目にクロスボウ、八回目に俺のジャンパーを脱いで投げ付けて、九回目は俺のブーツを犠牲にする。
捨てれば捨てるほど速くなるんだ。相手が徐々に加速しても対処できるはず。
攻撃をしのぎ切ったら、最後に持っていたエストックで心臓を突く。距離が空いて届かないようなら"投擲"だ!
【アドリブ・絡み歓迎】
「どいつもこいつもアタシのジャマをして……信長の野郎、よくもこんなクソ仕事押し付けやがったな! 後でぶっ殺す!!」
「魔軍将のくせにボスにまでキレてるのかよ……」
怨嗟の呪詛を吐き散らしながら、猟兵の追撃を逃れて花の御所を駆けまわる大悪災・日野富子。そこを発見したヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)は若干引き気味ながらも即座に戦闘態勢を取り、「浮浪者の剣」と名付けた得物を構える。
これでも相手は魔軍将。財力のみならず戦闘力も、決して侮れる相手ではない。
「次から次へと湧いてきやがって! ぶっ殺す!!」
ギロリと憎悪に満ちた目で睨め付けながら、富子は長い爪を振りかざして襲い掛かる。下手な刃物よりも鋭利なそれを、ヘクターは咄嗟に浮浪者の剣で受け止める。
「おらおらおら!!!」
一撃では止まらない悪女の猛攻。少年は【刹那の取捨選択】を行い、初撃を防いだ剣を手放すと、今度は小銃を引き抜いて盾にする。二撃目を防いだ次は大剣、その次はダブルバレル、短杖、騎士槍、クロスボウ――所持していた装備を次々と使い捨てながら爪の斬撃を防ぎ続ける。
「武器庫かてめぇは!!」
苛立ちを募らせながら富子の攻撃は一撃ごとに加速する。しかしそれを受けるヘクターの身のこなしもまた、装備を一つ捨てるたびに身軽になっていく。
武器を使い切ったあとはジャンパーを脱いで投げ付けて身代わりに。ざっくりと斬り裂かれた衣服の向こうから襲ってきた更なる追撃は、ブーツを脱いで犠牲にする。
これで九撃目。息吐く間もない瞬速の攻防が、ここに至ってついに途切れた。
「はぁっ、はぁっ……くそっ、仕留め損なった……!」
「なら、次は俺の番だ!」
富子の放つ渾身の九連撃を凌ぎきったヘクター。彼が抜き放ったのはこの時のために最後まで残しておいたエストック。どのような達人であろうとも、攻撃の直後には必ず僅かな隙が生じる――彼はその一瞬を見逃さなかった。
「最高速で突き抜ける!」
余計なものを全て捨てて、身軽になったヘクターの放つ渾身の刺突は、一条の閃光のように大悪災の胸を貫いた。
「がは……ッ!!!」
僅かに心臓は外れたようだが、それでも深手には違いない。喀血した富子の表情は青ざめ、生気を失いつつある。
ここまでの猟兵たちの猛攻が、徐々に彼女の命を削ってきている証だった。
「ちくしょう……ちくしょうちくしょう……ッ!!」
エストックの刃を力任せに引き抜き、鮮血と憎悪を撒き散らしながらぶんぶんと爪を振り回す富子。怒りに我を忘れているようだが、迂闊に手を出すのは危険過ぎる。
ヘクターは投げ捨てた装備をフック付きワイヤーで回収すると、仲間たちに追撃を任せて前線から後退していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
レイ・キャスケット
うわぁすごいね、恨みと憤怒と金の亡者が綺麗な女性の皮被って過去から染み出てきたみたいだね
視線を向けるだけで発動する先制攻撃って反則じゃない?
まぁでもこの手の攻撃の対処にもセオリーがあってね
【高速詠唱】で氷の盾を構え爆発したらすぐに再生成する使い捨ての透過盾戦法で距離を詰め氷の【属性攻撃】魔法弾で牽制しつつ氷の刃で殴打を浴びせる
と、ここまで氷一辺倒で攻めてそれしかないと思わせておいてからのUC≪付与の羽衣≫で紫の爆炎を再現
敵の目の前で大爆発させて目晦ましからお望み通り「前」じゃなくて「背後」からの強襲を仕掛けるよ
「うわぁすごいね、恨みと憤怒と金の亡者が綺麗な女性の皮被って過去から染み出てきたみたいだね」
それが、日野富子と遭遇したレイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)による率直な感想だった。これまで富子と対峙しその荒ぶりようを目の当たりにした猟兵たちであれば、その評価に異を唱える者はいなかっただろう。
「バカにしてんのかてめぇ!!!」
が、当の富子にとってそれは単なる罵倒や挑発でしかない。キッと憎悪に満ちた視線を向けた瞬間、レイの周囲に紫色の怨嗟の炎が現れ、凄まじい爆発炎上を起こす。
「視線を向けるだけで発動する先制攻撃って反則じゃない?」
咄嗟に魔法による氷の盾を構えて爆発を防いだレイは、ぼやきながらも脚のホルダーから「ブランクソード」を引き抜き、魔力を込めて氷の刃を形成する。
「まぁでもこの手の攻撃の対処にもセオリーがあってね」
一度の爆発でほぼ融解してしまう氷盾をすぐに再生成。爆炎が襲ってくるたびに使い捨てにする透過盾戦法で、じりじりと相手との距離を詰めていく。
富子からすれば面白いはずもなく、接近してくる相手から距離を取るように後退しながら、より強力な爆発を喰らわせてやろうとレイを睨みつける。
「さっさと焼け死ねよ! アタシの前に立つんじゃねぇ!」
激しさを増す紫炎の中、レイは額に汗を滲ませながら氷盾を維持し、氷の魔法弾で富子を牽制する。そして僅かでも相手の動きが鈍れば強引に急接近。剣の間合いに踏み込んで、氷の刃による殴打を浴びせる。
「さあ、次はどうするの?」
「ナメんな! そんな氷なんてアタシの炎で溶かしてやるよ!」
ギロリと富子が視線を浴びせると、今度は氷の魔法弾や刃が紫の炎に包まれ、ジュワッと音を立てて蒸発していく。
いかに再生成の連続で対抗しようとも、炎と氷では根本的に力の相性が悪い。このままではレイの魔力の方が先に尽きるのは明白であった。
――だが、実際にはレイが使える魔法は氷のみに限らない。
あえて氷一辺倒で攻めたのは、「それしかない」という印象を植え付けるブラフ。
十分に敵を引きつけたところで、彼女は身に纏う【付与の羽衣】の力を解放した。
「集めて集めてその身に纏え」
自らが体験した自然現象で魔力で再現するのがその力。半透明だった羽衣は鮮やかな紫色に染まり、富子が発動したのと同じ紫の炎でレイの身を包んだ。
「何だとッ?!」
驚愕する富子の前でレイはにっこり笑うと、羽衣の魔力を全放出し、自分が受けてきたのと同等、いやそれ以上の大爆発を巻き起こす。
富子は咄嗟に爆炎を起こすことで爆発の勢いを相殺するが、二つの爆発がぶつかりあった結果、彼女の視界は完全に紫の炎に覆い尽くされた。
レイが爆発を起こした狙いは富子にダメージを与えることではなく、目眩まし。
富子の視界から逃れ、本命の一撃を叩き込むための布石。
「お望み通り『前』じゃなくて『背後』からね」
巻き起こる紫炎の中をくぐり抜けたレイは、ブランクソードに新たな魔力を――紫炎の魔力を込めて、此方を見失っている富子の無防備な背中に振り下ろす。
「ぐがぁぁ……ッ!!!!」
"斬る"と"焼く"、二重のダメージを同時に叩き込まれた富子の苦悶の叫びが、花の御所に響き渡った。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
高貴な方だったようですが、その言動はもはや悪霊でしかありませんね
財力に対する異常な執着……
ならば黄金の穂先と白銀の柄からなる聖槍を翳せば、その輝きで一瞬の視線誘導はできそうですね(存在感・誘き寄せ・威厳)
無造作に投げ捨てることで「勿体無い」と思わせればより効果的でしょうか
その隙に【トリニティ・エンハンス】で炎の魔力を纏い防御力を強化
投げ捨てた聖槍は【念動力】で日野富子へ向かって飛ばす
自身も同時に【ダッシュ】で吶喊
【火炎耐性】【呪詛耐性】【破魔】【オーラ防御】を纏ったガントレットで炎を防ぎ、【怪力】で顔面を殴りつける
申し訳ありませんが、その視線は危険なので……滅多打ちにします
西堂・空蝉
【POW】で攻撃
ふむん……京の都の土を踏むのはあたし、初めてですね。これが上洛てぇやつですか。まさかこんな用事で来ることになるなんて。
……なんだか様子がおかしいみたいですけど。(『花の御所』を見上げ)
さて、敵さんの首魁はなかなか厄介な術を使うとのこと。熱いのはあたしも勘弁願いたいです。
御所の金箔が貼られた飾りを拝借しておいて、炎が放たれる瞬間に放り投げて光の反射で注意を逸らしましょう。【残像】も使って先制攻撃をかいくぐります。逸れた炎の爆風も使ってあたしの得物の間合いまで一気に距離を縮めたいですね。
【なぎ払い】で斬り込み、隙があれば【血衾】で出血を狙い、確実に体力を削ります。
アドリブ・連携歓迎
「ふむん……京の都の土を踏むのはあたし、初めてですね。これが上洛てぇやつですか」
まさかこんな用事で来ることになるなんて、と呟きながら、西堂・空蝉(血錆お空・f03740)は花の御所を見上げ。
「……なんだか様子がおかしいみたいですけど」
「あぁ!? アタシの作ったこの御所にケチつけようってのか!!」
古より続く都の美観ともそぐわない、雅も侘び寂びもあったものではない、絢爛豪華に過ぎる佇まい。そんな"おかしな様子"を作り上げた元凶は、紫の炎を燃え上がらせて激怒している。
「高貴な方だったようですが、その言動はもはや悪霊でしかありませんね」
オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は憐れむような眼差しを向けながら破邪の聖槍を構える。元がどうあれ世界を蝕む邪悪であるなら、討ち果たすのが彼女の使命だ。
(さて、敵さんの首魁はなかなか厄介な術を使うとのこと。熱いのはあたしも勘弁願いたいです)
視線を向けた対象を爆破するという敵のユーベルコードに対抗すべく、空蝉はポケットの中からあるものを取り出す。それを見た富子の表情が変わった。
「おいそれ、アタシの御所の飾りじゃねーか!!!」
「ご明察で。さっき少し拝借しておきました」
金箔が貼られたキラキラの飾りは、広大な御所に施されたほんの一部だが、それでも相当な価値になるだろう。それを勝手に奪われたと知った富子の怒りは凄まじいものだった。
(財力に対する異常な執着……)
それが敵の弱点だと見抜いたオリヴィアは、ならばと手にした破邪の聖槍を富子の目によく見えるように翳す。黄金の穂先と白銀の柄からなる聖槍は、秘められた力を抜きにしても、宝物として計り知れない価値を持つだろうと。
「はっ……?! なんだよ、そのお宝は! アタシも初めて見るぞ!!」
案の定、富子は直前までの怒りすら忘れ、黄金と白銀に輝く聖槍に目が釘付けとなる。その瞳は憎悪ではなく物欲に爛々と輝いていた。
「予想以上の効果ですね」
「まったく正直なお人のようで」
あまりにも露骨すぎる富子の反応を見るや、オリヴィアは聖槍を無造作にぽいと投げ捨て、同時に空蝉も拝借した御所の飾りを槍とは違う方向に放り投げる。
「あぁっ?! 勿体ない!!」
思わず槍と飾りの間で目移りしてしまう富子。その注意は散漫となり、視線の方向も定まらない。猟兵たちにとってはこれ以上ないほどの好機。
この隙に【トリニティ・エンハンス】を発動し、全身に炎の魔力を鎧のように纏うオリヴィア。そして空蝉は高枝鋸の「土瓶落とし」を薙刀のように構え、自らの間合いまで富子との距離を縮めていく。
「っ、やっちまった!?」
そこでようやく我に返った富子は、憎悪の視線によって紫の爆炎を巻き起こすが、慌てていたためか攻撃の焦点が定まっていない。空蝉は残像を描きながら爆炎の中をくぐり抜けると、逆に逸れた爆風を追い風にして一気に斬り込む。
「さあて、覚悟してもらいましょうか」
ぶん、と無造作に薙ぎ払われる土瓶落としの切っ先が、富子の肌と着物を裂く。
ギザギザの鋸刃に切りつけられた彼女の表情は苦痛に歪み、瞳に宿る憎悪はいっそう強くなる。
「やりやがったな……!!」
初撃は避けられたが、この距離ならば外しようがない。至近距離の空蝉を爆殺せんと、富子の瞳が輝く――その時、彼女の横合いから飛来したのは、破邪の聖槍。
「なにぃッ……ぐ、がぁっ?!」
一度は投げ捨てられた聖槍は、オリヴィアの念動力によってコントロールされ、まるで矢のように富子の胴体に突き刺さった。
「こちらが武器を手放したからといって、油断しましたね」
「がはっ……こ、のや、ろ……!!」
串刺しにされてよろめく富子に向かい、拳を握りしめながら吶喊するオリヴィア。
富子は喀血しながらも憎悪の視線を向けるが、紫炎の爆発はオリヴィアの装着するガントレットの破邪のオーラと炎の鎧に阻まれ、僅かなダメージを与えるに留まる。
そして敵がオリヴィアに視線を向けたということは、今度は空蝉の方がフリーになる、ということだ。
「すきあり……手前の色を見ながら逝きなさいな」
初撃に続いて放たれる、本命の【血衾】。容易には斬れぬなまくらな鋸刃が富子の傷を抉り広げ、凄まじい苦痛と同時に大量の出血を強いる。
「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいっ?!?!」
拷問めいた激痛に、たまらず悲鳴を上げる大悪災。そこに爆炎を突っ切って肉迫してきたオリヴィアが、白銀のガントレットに包まれた拳を振り上げる。
「申し訳ありませんが、その視線は危険なので……滅多打ちにします」
力の限り顔面に叩きつけられる拳。ぐしゃり、と鼻っ柱の折れる鈍い音がして、富子の身体がぐらりと揺れた。
「ごぁ……っ、ぐ、がは、ごぉっ?!」
何度も何度も殴りつけられ、ざりざりと傷口を抉られて。血塗れになった富子は鼻血をぼたぼたと垂らしながら、ほうほうの体で後退していく。
「お、おぼえでろよ……!!!」
負け惜しみでしか無い怨嗟の声と、紫炎の爆発を置き土産に残して。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴェル・ラルフ
罪のない人から搾取なんて、吸血鬼みたいだな。
SPD
花の御所、か。
建物に罪はないけど…破壊しながら進んだら、いい挑発になるかな。ということで、庭やら豪華な飾りやら、如意棒「残紅」や自身の脚で破壊しながら進もうかな。
ふふ、民草を虐げて得た屋敷なんて、くそくらえだよ?
相手のUCには【日輪葬送】を使用
48手までなら迎撃できるけど、足りないかな
受けられなかった分の攻撃をまともに受ける…という僕の姿を錯視で引き起こす
実際はその隙を狙って早業をいかしてジャンプ
相手の懐に踏み込んで如意棒「残紅」でなぎ払って吹き飛ばしを狙う
やだな、お金に目が眩んで、マトモに見えなくなってるんじゃない?
★アドリブ・連携歓迎
「花の御所、か。建物に罪はないけど……破壊しながら進んだら、いい挑発になるかな」
そう考えたヴェル・ラルフ(茜に染まる・f05027)は、深緋の如意棒「残紅」を手に、御所の庭やら豪華な飾りやら、目についたものを片っ端から荒らし回っていた。
「何やってんだてめぇ!! ぶっ殺すぞ!!」
案の定すぐに、破壊音を聞きつけた日野富子が血相を変えて姿を現す。
猟兵たちとの戦いでかなりの傷を負っているが、この分だとまだ体力は残っているようだ。
「アタシがこの御所を作るのに、いったいどれだけ金がかかったと思ってんだ!」
「ふふ、民草を虐げて得た屋敷なんて、くそくらえだよ?」
烈火の如き怒りを露わにする富子に対して、ヴェルは涼しい笑みを浮かべながら近くにあった置物を蹴り砕く。恐らく高価な品だろうが、彼には興味がない。
「罪のない人から搾取なんて、吸血鬼みたいだな」
搾り取るものを血から金に置き換えれば、丁度富子のような怪物が出来上がるのだろう。彼女はその中でも最凶最悪の部類の怪物だが。
「ぐだぐだうるせぇ! この世は金を持ってるやつが一番偉いんだよ!」
民草の嘆きなど知ったことかと、大悪災は鋭く伸びた爪を輝かせながら吠えた。
「これ以上アタシのジャマをするな! バラバラになりやがれ!!」
嵐のようなスピードで爪を振りかざし、狼藉者を細切れにせんと襲い掛かる富子。その猛撃を防ぐためにヴェルが発動したのは【日輪葬送】。
「48手までなら迎撃できるけど、足りないかな」
漆黒の炎が彼の周囲で渦を巻き、放たれる緑色の炎の光芒が富子の爪撃を受け止める。しかし怒りのままに休みなき乱撃を繰り出す富子に対し、有限の炎ではいずれ手が足りなくなるのは明白。
「ちょっと寿命が削れようが構うかよ! てめぇはここでぶっ殺す!」
自慢の御所を破壊したヴェルへの怒りと憎悪は、それほどに深かったようだ。
やがて、四十八の光芒は全て失われ。無防備となった少年に、残虐な笑みを浮かべた大悪災が長く伸びた爪を振るう。
「死ねぇッ!!!」
輝きと共に鋭さを増した一閃が、ヴェルの身体を引き裂いた――少なくとも富子はそれを確信し、ズタズタになって倒れ伏すヴェルの姿を目の当たりにしていた。
だが、それはヴェルの纏う漆黒の炎が引き起こした錯視。敵が幻に捕らわれた一瞬の隙を狙って、現実の彼は素早く跳躍して必殺の爪撃を回避する。
紙一重の差で生じた錯視と現実の違い。富子が我に返るまでに要した時間は僅かなものだったが、その僅かな間にヴェルはもう彼女の懐に踏み込んでいた。
「何だと……?! てめぇ、いつの間に!!」
「やだな、お金に目が眩んで、マトモに見えなくなってるんじゃない?」
皮肉げな返答と共に繰り出すのは、如意棒「残紅」による渾身の一撃。
接近時のスピードも上乗せされた薙ぎ払いが、富子の胴体にめり込む。
「ごはぁ……ッ!!!?」
くの字に折れ曲がった富子の身体はそのまま宙を舞い、御所の彼方へと吹き飛んでいった。
成功
🔵🔵🔴
フェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ
アドリブ連携歓迎
うわ。
なんというかその……キレイだし可愛いけど醜いお人なのだわ。
お金は平民に増やさせて収穫するのが上策って本に書いてあったのだわ?
だから吐き出してもらうのだわ。げーって。
火矢の怨霊。怨霊だから物じゃ防げないとか言うのかしら?
じゃあ霊で守るのだわ。
カザッチェ・コーニッチャ!
総員下馬し、千騎は三人一組になり一人を盾として持ちドームを形成、私を守れ!
千騎は屋敷内の金目の物を差し押さえ!金子確保と同時に敵将の苛立ちを引きつけて護衛隊の援護!
残る二千騎は塀・屋根含め屋敷各所に配置、敵将を見つけ次第斉射!敵将を仕留めるのだわ!
お金を持つものが正義なら、兵数を持つものもまた正義、なのだわ?
「ちっくしょう……猟兵ごときが、どこまでこのアタシに逆らいやがる!! 貧乏人は金持ちのアタシに黙ってへいこら従ってりゃいいんだよ!!」
何度猟兵に打ちのめされようとも、不滅の憎悪を支えに立ち上がる日野富子。
確実にダメージは蓄積している筈なのだが、その身を覆う怨念の炎は今だ収まる気配を見せず、口からは怨嗟の言葉を吐き散らしている。
「うわ。なんというかその……キレイだし可愛いけど醜いお人なのだわ」
その妄執ぶりを目にしたフェドーシヤ・ロゼストベンスカヤ(光の娘・f19067)は、幼い顔立ちで眉をひそめ。そして高貴なる振る舞いでさらりと告げる。
「お金は平民に増やさせて収穫するのが上策って本に書いてあったのだわ? だから吐き出してもらうのだわ。げーって」
「このアタシを平民扱いか? 癪に障るガキだな……!!」
苛立ちの表情を富子が浮かべた瞬間、火矢の怨霊が召喚され、フェドーシヤの周囲を取り囲んだ。
「火矢の怨霊。怨霊だから物じゃ防げないとか言うのかしら? じゃあ霊で守るのだわ」
無数の火矢を見回しながら、かくんと首を傾げるフェドーシヤ。物理的な手段でどこまで対抗できるか分からない以上、霊には霊で対抗するのが最も確実だろう。
「カザッチェ・コーニッチャ!」
凛とした声で高らかに呼びかければ、召喚されるのは朧な姿をした【コサック騎兵隊】の大軍。霊体の騎兵たちは王族たるフェドーシヤの指揮の元、一糸乱れぬ行動を開始する。
「総員下馬し、千騎は三人一組になり一人を盾として持ちドームを形成、私を守れ!」
「そいつらを壁にするつもりか? 甘く見るなよ!!」
フェドーシヤの周囲に構築された防壁に、富子の操る火矢の怨霊が降り注ぐ。かつての大乱の怨念を宿した業火の矢は、朧な兵士たちを次々と焼き払っていく。
「応仁の乱の時に比べたら、この程度! 一人残らず焼き尽くしてやるよ!!」
鬼女の形相で吠える富子だったが、勝ち誇るのはまだ些か早すぎた。
フェドーシヤはドームの護衛隊の兵力を増員しながら、新たな命を騎兵に発する。
「千騎は屋敷内の金目の物を差し押さえ!」
「ん何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!?」
狼狽する富子の絶叫が戦場に轟く。そんな彼女をよそに、千のコサック騎兵は主君の命にあくまで忠実に、花の御所の各地に散って値打ちのありそうなものを根こそぎ奪っていく。
古今東西、敵地での略奪は戦場の常。ましてやそこがオブリビオンが悪どく稼いだ金で築いた屋敷だと言うならば、躊躇う理由も雲散霧消するというものだ。
「ふ、ふ、ふ、ふっざけんなああああああああッ!!!!」
無論、そんなことを富子が見過ごすはずもなく。フェドーシヤを護るドームを襲っていた火矢の怨霊は、その大半が差し押さえ部隊へと標的を変えた。
敵が狙いどおりに動いてくれたのを見て、フェドーシヤの口元が微かに綻ぶ。金子確保と同時に敵の苛立ちを引きつけ、護衛隊を援護するのが彼らの役目だったのだから。
そして富子の意識がフェドーシヤと略奪を行う部隊へと向けられている隙に、残る騎兵隊は反撃のための配置を完了させていた。
護衛隊に予想以上の兵数を割くことになったとはいえ、それでも二千騎近い兵士たちは、塀や屋根を含めた御所の各地から敵将を射撃できるポイントについていた。
「攻撃部隊、一斉射! 敵将を仕留めるのだわ!」
フェド―シヤが号令を発すると、コサック騎兵のライフルが一斉に火を噴いた。雷のように轟く銃声と共に、銃弾の嵐が四方八方から富子に襲い掛かる。
「まだ、こんなに兵力を残していやがったのか……!?」
自らが敵の計略に嵌められていたことを悟り、愕然とする富子。だが驚いている暇もなく、降り注ぐ銃弾は容赦なく彼女を撃ち抜いていく。
「お金を持つものが正義なら、兵数を持つものもまた正義、なのだわ?」
「くそっ! 信長の野郎が、アタシにもっと兵を寄越してさえいれば……!」
得意げなフェドーシヤの言葉に負け惜しみを返しながら、富子にできたことは蜂の巣にされる前に騎兵の包囲を脱出する、ただそれだけであった。
大成功
🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ◎
*身に<誘惑の呪詛>宿し呪詛/呪操る
拠点は豪華絢爛で日野富子本人も美しい方ですが
そうも怒りと執着に狂っていては魅力も減ってしまいますよ
敵の言葉では挑発となってしまうかしら
<第六感>併用全知覚強化<情報収集・学習・見切り>
攻撃は感情任せな部分も多く見極め易い。
《捕食形態》武装圧縮成形
<生命力吸収の呪>宿し撃ち合う度力喰らい速度上昇。
主武装:剣槍
呪詛込め続け力溜め
副:先端部分剣状の鞭
<早業>攻撃に対し体各部から生やす。使い捨て考慮し威力増強
<衝撃の呪>乗せ連撃分受け弾き逸らす
<念動:オーラ>に重ね纏い行動補助と耐性・防御力強化。
爪削り部位破壊狙い、折れた隙に剣槍で渾身最速の一撃を
「アタシの御所が……アタシの金が……! 絶対、絶対に許さないからな……!!」
猟兵たちの猛攻によって後退に次ぐ後退を強いられる日野富子。自慢の財を注ぎ込んで築いた絢爛豪華な花の御所も、戦闘によってあちこちで破壊され、その怒りは心頭に達していた。
そんな彼女の前に立ちはだかったのは、月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)。
「拠点は豪華絢爛で日野富子本人も美しい方ですが、そうも怒りと執着に狂っていては魅力も減ってしまいますよ」
「うるせぇ!! 誰のせいで怒ってると思ってんだよ!!」
それは本心からの忠告だったのだが、敵の言葉ではやはり挑発としか受け取られず。長く伸びる爪を輝かせながら襲ってくる鬼女を迎撃すべく、ユイは戦闘モードへと意識を切り替えた。
「アタシの邪魔をするっていうなら、誰であろうとぶっ殺す!!」
憎悪と殺意で爛々と瞳を輝かせながら、富子は目にも留まらぬ早業で爪を振るう。
その攻撃速度は驚異だが、冷静に見れば感情任せな部分も多く見極めやすい。蓄積されたダメージと頭に上った血が、彼女の動きをより単調なものにしていた。
(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。無限連環強化術式起動。捕食吸収能力制御、圧縮成形)
ユイは第六感を含めた全感覚を強化しながら、剣と槍、そして先端部分が剣状になった鞭の【捕食形態】武装を形成する。
強化された知覚力で相手の攻撃の軌道を見切り、身体の各部から生やした鞭で受ける。接触の瞬間に発生する呪詛のオーラによる衝撃波が、富子の爪撃を弾き逸らす。
「ちっ、奇妙な武器を使いやがって!」
舌打ちしながら尚も連撃へと繋いでくる富子の猛攻を、ユイは新たに形成した鞭を次々と使い捨てにして凌ぎ続ける。両手に握った剣槍に呪詛の力を込め続け、反撃の機をじっと窺いながら。
何十合にも渡って繰り返された爪と刃の激突の最中、富子はふと自らの異変に気付く。
「なんだ……身体が、やけに重い……?!」
それは知らぬがままにユイの武装と何度も撃ち合った代償。全てを喰らい取り込む"捕食"の力を形成した武器は、触れたものの力を自らの力に変える。一度では気付かないほど僅かではあるが、それが何十回ともなれば大きな影響となる。
よく見れば、何度も捕食武装と斬り結んだ富子の爪はもうボロボロになっていた。
「気が付くのが遅かったですね」
すかさずユイが鞭を振るえば、限界を迎えた爪は根本からぽきりと折れた。
武器を失った富子の顔色に焦りが浮かぶ。その隙にユイは呪詛を充填させた剣槍を手に踏み込むと、敵から奪った力も利用した、渾身最速の一撃を放つ。
「喰らえ……!」
獣の牙のごとく唸りを上げて突き刺さった捕食形態の刃は、獲物の肉と血を啜り、その存在の根源・力に至るまで喰らい尽くしていく。
「ぐ、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!?」
存在ごと喰らわれる激痛と恐怖に絶叫する富子。
がむしゃらに暴れて辛うじて刃から脱するも、奪われた力はもう戻っては来ない。
花の御所の大悪災は、いよいよ追い詰められつつあった。
成功
🔵🔵🔴
シノギ・リンダリンダリンダ
集められた豪華絢爛な内装を見ながら歩いていきましょう
金に踊らされている憐れな奴ですがこれは良い趣味です
日野富子と出会ったら、まずはその先制攻撃を耐えきります
激痛耐性、戦闘知識による攻撃を受けても支障がない部位への被弾、そして確実な反撃への覚悟
耐えきったら、大きなダメージですがそれがキーです
【赤い華火】は炎のように真っ赤な日本刀を持って召喚されるでしょう
あ。終わったらここに飾られているお宝、全て頂いていきますね
大丈夫です、死んだら無意味ですから。私がちゃんと有効利用します
金を持っている者が正義なのでしょう?
日野富子。貴方の最後に残る正義は六文程度ですよ?
挑発して動きを見切りながら戦います
「金に踊らされている憐れな奴ですがこれは良い趣味です」
花の御所に集められた豪華絢爛な内装を見ながら、シノギ・リンダリンダリンダ(ロイヤルドレッドノート船長・f03214)は歩いていく。
見渡せば海賊船の船長としては興味を引かれるような名物宝物がそこかしこに。一体どれほどの財を注ぎ込めばこれほどの贅を凝らせるのか、想像もつかない。
「また来やがったか……いい加減しつこいんだよ、てめぇら……!!」
そんな豪華絢爛な宝物たちに囲まれるように、傷ついた大悪災は待ち受けていた。
「ここはアタシの城だ! てめぇらにくれてやる物なんざ何もないぞ!!」
苛立った叫びと共に、憎悪の籠もった視線がシノギに突き刺さる。その瞬間に巻き起こる紫色の炎の爆発を、シノギはあえてその身で受け止めた。
どれだけ強烈な爆発でも、人形の身体は苦痛に強い。蓄積された戦闘経験からダメージを負っても支障のない部位で爆炎を受け止め、致命傷となり得る頭部や胸部を直接相手の視線に晒すことだけは避ける。
それでも想定以上の火力と衝撃が、じりじりとシノギの身体を焼き焦がす。
「はははははは! いいザマだ! アタシに逆らうヤツに相応しい末路だ!」
日野富子は哄笑する。だが、爆炎を浴びたシノギの目はまだ死んでいない。
どれほど苛烈な攻撃だろうと必ず耐えて反撃に繋ぐ。その覚悟が機械人形を衝き動かしていた。
やがて爆炎が収まった時、そこには半身が焼け焦げながらも今だ健在のシノギがいた。
「ちっ、耐えやがったか。だがもう相当キツいだろう?」
富子の言う通り、彼女の受けたダメージは重大。しかし適切な被弾制御の甲斐あって、焼け焦げた表面ほどには重要な内部機構への損傷は大きくない。
まだ動ける。まだ戦える。そしてこのダメージこそが、彼女のユーベルコード発動のキーとなる。
「痛かったんです。そちらだってそれ以上の代償を受けるべきでは?」
召喚されたのは【赤い華火】。赤い手袋をした女の死霊が、炎のように真っ赤な日本刀を振りかざして猛然と富子に襲い掛かる。
「ちっ、まだやる気か!?」
勝ったと思って油断しきっていた富子は、突如出現した死霊の踏み込みに対応が一瞬遅れる。振り下ろされた赤い刃が、真っ赤な血潮を戦場に散らす。
「このヤロウ……っ!」
刀傷をかばいながら目の前に飛び込んできた死霊を睨みつけ、再びあの爆発を起こそうとする富子。そこに注意を逸らすように、シノギが言葉の矢を放つ。
「あ。終わったらここに飾られているお宝、全て頂いていきますね」
「あぁッ!?」
ぐりんっ。ものすごい勢いで富子の視線がそっちを向く。分かりやすく予想しやすい反応に、シノギはさっと視線から外れるように身を翻しながら、さらなる挑発を。
「大丈夫です、死んだら無意味ですから。私がちゃんと有効利用します」
「ふざっけん……なぁッ!?」
シノギの言葉に気を取られれば、その隙を突いて赤い華火が斬り掛かる。
死霊の戦闘力は術者の受けたダメージに比例する。その太刀筋は熟練の剣豪のように鋭く、刀の切れ味も妖刀の如し。迂闊に目をそらせば、再び血飛沫が上がる。
「ぐ、ぁ……てめぇら、よくも……っ」
「金を持っている者が正義なのでしょう?」
死霊の刃に切り刻まれる富子の懐へと、シノギは一気に距離を詰め。
その憎悪の視線を見切りながら、死角より握りしめた拳を叩き込む。
「日野富子。貴方の最後に残る正義は六文程度ですよ?」
鈍い拳骨の音が鳴り響き、悪霊女は三途の河へ直行――とまではいかなかったが。
顔面ど真ん中に拳を食らった富子は、もんどり打って吹っ飛んでいった。
成功
🔵🔵🔴
オウカ・キサラギ
お金がないと生きていけないのはわかるんだけど、行き過ぎなんだよね!
言ってもわかんないだろうけど、お金で曇った眼じゃ見えないものがあるのを教えてあげるよ!
あんなに騒いでるんだし、見つかった瞬間に攻撃が来るだろうね。
ボクはその攻撃を【オーラ防御】【激痛耐性】であえて受けるよ!
その後に【演技】で「ひぃ!強すぎる!こんなに強いなんて聞いてないよ!そうだ、これあげるから許して!」って感じで宝石弾用のダイヤを渡すよ
自分を倒しに来た猟兵の無様な姿に奴も呆れざるを得ないはず!
そうしたら【桜花驚乱・狂裂】とありったけの宝石弾で【属性攻撃】【クイックドロウ】で攻撃だ!
ほら、お金への執着が裏目に出たでしょ?
「いってぇ……畜生……なんでアタシがこんな目に……」
ボロボロの着物の裾を引きずりながら、血塗れの日野富子は呻くように呟く。
花の御所に攻め込んだ猟兵たちによって彼女が負わされた傷の数は、もはや数え切れない。いかに強大なる魔軍将と言えども、終焉の時は着実に迫りつつあった。
「お金がないと生きていけないのはわかるんだけど、行き過ぎなんだよね!」
そこに現れたのはオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)。
まさしく金の亡者である富子を相手に、彼女はびしりと指を突きつけ、宣言する。
「言ってもわかんないだろうけど、お金で曇った眼じゃ見えないものがあるのを教えてあげるよ!」
「アタシの眼に見えないものだと……? それはつまり、見る価値も無いものってことだろうが!」
カッと見開かれた富子の瞳は、底知れぬ欲望と殺意、そして憎悪に濁り切っていて。曇った眼にオウカの姿が映り込んだ瞬間、紫色の爆炎が彼女を呑み込んだ。
「っきゃぁぁぁぁっ!?」
至近距離で起こった凄まじい爆炎に吹き飛ばされ、甲高い悲鳴を上げながら宙を舞うオウカ。咄嗟に魔力のオーラで身を守ったとはいえ、その威力は想像以上だった。
ぷすぷすと煙を上げながら無様に地を転がった彼女を、怒り狂った富子が憎悪の眼差しで見下す。
「どうした! 大口叩いておいてその程度か!」
「ひぃ! 強すぎる!」
恫喝を食らったオウカは怯えきった表情で縮こまると、「こんなに強いなんて聞いてないよ!」と喚きながらポーチの中をまさぐる。その姿はまるで猛獣の前で萎縮する小動物のようで、これまで猟兵に辛酸を舐めさせられてきた富子からすれば、思わず拍子抜けしてしまう。
「なんだてめぇ……本当に口先だけのザコか……?」
「ぼ、ボクはただ、ここにお宝があるって聞いて……そうだ、これあげるから許して!」
震える声と手で差し出されたのは、キラキラと輝く高純度のダイヤモンド。オウカの武器のひとつ、宝石弾に使われる宝石である。
金目のものに目のない富子にとって、その輝きは非常に目を惹くものだった。
「ちっ、ただのこそ泥かよ……けど、アタシへの貢ぎ物のセンスは悪くないな」
オウカのことを驚異ではないと判断した富子は、無造作にダイヤへと手を伸ばす。
――ここまでの全てが、己を油断させるためのオウカの演技だとも気付かずに。
「なーんてね!」
呆れと共にのこのこと距離を詰めてきた富子に向かってオウカが放つは【桜花驚乱・狂裂】。召喚された桜の花弁が、強烈な魔力の斬撃を放つ。
完全に相手を舐めきっていた富子は、無防備なままにほぼゼロ距離から直撃を受けてしまう。
「うぎゃぁっ!?!?」
舞い散る血飛沫と富子の絶叫。してやったりと会心の笑みを浮かべたオウカは、手に持ったダイヤに魔力を込めると、素早くスリングショットに装填して射出。
放たれた宝石弾は着弾と同時に炸裂し、富子の傷をより深いものとする。
「ほら、お金への執着が裏目に出たでしょ?」
「ちっくしょう、覚えてやがれ……!!」
その強欲さをまんまと利用され、悔しげな表情を浮かべながら後退していく富子。
すかさずオウカは手持ちのありったけの宝石弾を使って追撃を浴びせ、さらなるダメージを与えていくのだった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
経済戦争が可能な財力は後方の一般市民への被害を考えると、単純な武力よりも脅威
ここで討ち果たしておきたいところですが…
自身を●かばう為、遮るように大盾を投げ、視線を●盾受け
爆発に乗じ、屋敷の部屋に●破壊工作の知識で作った大量の煙を出すよう調整した焼夷剤をばら撒き着火
放った炎と煙で●目潰し、視線から逃れます
こちらは日野富子の声をセンサーによる●情報収集で拾い、位置を●見切り
UCでの無力化を敢行
『視線に依存している以上、位置が把握できなければ使えない、それが貴女の弱点です』
指摘の声を頼りに視線を放ってくるでしょうし、上記の台詞は囮のSSW市販のボイスレコーダーに言わせ
●怪力の剣での一閃で斬り捨てます
「経済戦争が可能な財力は後方の一般市民への被害を考えると、単純な武力よりも驚異。ここで討ち果たしておきたいところですが……」
油断なく大盾を構えながら、花の御所の奥地へと進んでいくトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
徳川幕府の総資産を超える個人資産を持つとも言われる、大悪災・日野富子。その恐るべき財力が社会に与える影響を鑑みれば、彼の危惧も当然と言えるだろう。
――ふいに、周辺の索敵を行っていた各種センサーが、接近する異常な熱源と生体反応を感知する。
「ちっ……! こんな所にまで来てたのかよ、猟兵!」
トリテレイアの前に姿を現した日野富子は既に満身創痍で、仮にも貴人らしい面影はほとんど無い。
戦闘でボロボロになった着物と、怒りに歪んだ悪鬼の形相、そして全身から燃え上がる紫色の炎は、どう見ても悪霊のそれにしか見えない――事実、その通りだが。
「いい加減にしろよ! アタシの前に立つんじゃねぇ!」
憎悪の籠もった瞳が、ギロリとトリテレイアを睨め付ける。危機を察知した機械騎士は咄嗟に構えていた大盾を放り投げ、富子の視線を遮る。
その直後、遮蔽物となった盾を起点として起こったのは紫炎の大爆発。もし直撃を受けていれば、いかに防御力に優れた彼と言えど無傷では済まなかっただろう。
(危ないところでしたが、これは好機です)
花火のように戦場に吹き荒れた爆炎に乗じて、トリテレイアは予め調整しておいた焼夷剤をばら撒き着火する。その目的は部屋を燃やすことではなく、敵の目眩まし。
部屋のあちこちに散らばった焼夷剤から放たれる炎と大量の煙は、瞬く間に周囲を覆い尽くしていく。
「えぇい、また目眩ましかよ! てめぇらアタシの目に恨みでもあるのかよ!」
同様の手口をもう何度か食らっている富子は、苛立ちを抑えきれぬ様子で喚き立てる。裏を返せば彼女のユーベルコードがそれだけ猟兵たちにとって厄介な脅威であったということでもあるが。
『視線に依存している以上、位置が把握できなければ使えない、それが貴女の弱点です』
煙幕の中から、富子の能力の欠点を指摘するトリテレイアの声が響く。
確かに、それは事実。だが富子とて、同じ手に何度も為す術もなくやられる愚者ではない。
「確かにアタシのユーベルコードは目眩ましに弱い……だけど煙の中でも近寄れば相手の影くらいは見える。声がすれば、そいつがどっちの方向にいるかもなぁ!」
富子は指摘の声を頼りにおおまかな目標の位置を探り当てると、ありったけの憎悪を込めて、煙の中に浮かび上がる影を睨み付ける。
轟く爆音と、燃え上がる爆炎。確かな手応えを感じて、ぐっと拳を握りながら爆心地に駆け寄る。
だが、そこにあったのは彼女が期待した、炎上する機械騎士の残骸などではなく。囮として仕掛けられていた、スペースシップワールド製のボイスレコーダーだった。
「何だこりゃ……!!」
サムライエンパイアの人間である富子に、レコーダーのような高度な機械の知識はない。分かるのはただ、自分がまた騙されたという事実のみ。
次の瞬間、背後から伸びてきたワイヤー仕掛けの腕が、彼女に掴みかかった。
「ぐぁっ!? ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
腕を掴まれた直後、流し込まれる強烈な電流。それはトリテレイアに搭載された特殊装備のひとつ、普段は腰装甲に格納された対UC拘束モードの隠し腕だった。
「その行動パターン、封じさせてもらいましょう」
富子がトリテレイアの居所を音で捉えようとしたのと同様。トリテレイアもまた、煙の中で喚き立てる富子の声をセンサーで拾い、その位置を把握していた。
そして相手が囮に引っ掛かった最適なタイミングでの奇襲を仕掛け、富子の視線によるユーベルコードの発動を封じたのだ。
焼夷剤の効果が切れ、部屋を覆っていた煙幕が晴れていく。
だが、姿を現したトリテレイアをどれだけ富子が睨み付けても、もう紫炎の爆発は発生しない。
「くそっ、小狡い手を使いやがって……!」
「確かに騎士らしからぬ戦法ではありますが……今は任務が最優先です」
エンパイアの人々を脅かす大悪災を今、この場で断つために――渾身の力でトリテレイアが振るった儀礼剣の一閃は、眼前の目標を袈裟懸けに斬り捨てる。
「がは……っ!」
噴水のように勢いよく迸る鮮血が、御所を真紅に染めていく。
騎士の一撃を受けた日野富子は、がくり、とその場に膝を突いた。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
随分と品の無い女ね…口も悪いし、そのお金への執念とも言える程の執着…見るに堪えないわ…。
・先制対策
【念動力】と氷の魔力【属性攻撃】で自身に防御膜を張り、更に自身の【怪力、早業】で床や壁を破壊し、【念動力】で空中に固定する事で遮蔽物を作り出して直接の視線を遮る事でUCを封じるわ。爆炎で障害物を問答無用に排除してきたら逆に爆炎を利用して身を隠し、そのまま【吸血姫の覚醒】を発動。
発動後はそのまま爆炎で実を隠す様に突っ切り、覚醒で得た速度で視界から消える様に翻弄しながら、敵を氷の魔力を纏った魔槍で攻撃。凍結で動きも封じつつ追い詰め、最後は覚醒で得た魔力を注ぎ込んだ渾身の魔槍の一撃を叩きつけてやるわ!
「くそが……なんでアタシが……畜生……」
血溜まりの中で膝を突き、うわ言のように怨嗟の言葉を漏らす大悪災・日野富子。
猟兵たちによって重ねられた肉体的なダメージは、既に限界に達していた。
「許さねえぞ……ここはアタシの御所だ……この世の金は全てアタシのものだ……! それを奪おうってやつは……アタシに逆らうやつは全員、ぶっ殺す……!!」
それでも彼女を衝き動かしているものは、妄執に等しき衝動と怨念。
憎悪の瞳を輝かせながら、大悪災は幽鬼の如くゆらりと立ち上がる。
「随分と品の無い女ね……口も悪いし、そのお金への執念とも言える程の執着……見るに堪えないわ……」
醜態を晒す富子を冷たく一瞥しながら、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を構える。
もはや問答は必要ない。一刻も速くその妄執を断ち切ってやろうと歩を進める彼女に対し、富子は怒りに満ちた視線を向ける。
「何だよそのツラ……アタシを見下すな……!!!」
敵の先制攻撃が来る。そう察知したフレミアはさっと魔槍を一閃して、周囲の床や壁を力任せに破壊する。切り刻まれた御所の残骸は彼女の念動力によって空中に固定され、敵の視線を防ぐ遮蔽物となる。
「また、アタシの御所を壊しやがったな……!! 絶対に許さねえぞ!!!」
それでも富子は問答無用にユーベルコードを発動する。両者の中間辺りで燃え上がった紫色の炎は、瞬時に凄まじい爆発を起こし、空中の遮蔽物を強引に吹き飛ばす。
溜まりに溜まった憎悪の業火はそれだけに留まらず、爆炎の余波はフレミアの元にまで届く。即座に念動力と氷の魔力で耐火の防御膜を張り、押し寄せる炎熱から身を守る。
(流石に大した火力ね。でも我を失っている)
この激しい爆炎の中では、敵もこちらの姿を見失ってしまうだろう。
フレミアはこの状況を利用して炎に身を隠したまま【吸血姫の覚醒】を発動する。
「我が血に眠る全ての力……今こそ目覚めよ!」
爆発的に解き放たれる真祖の吸血鬼の魔力。真の力を解放し、17,8歳程の外見へ変化したフレミアは、真紅の翼を広げて紫炎の中を翔ける。
「何ッ!?」
爆炎を突っ切ってきたフレミアに驚愕した富子は、次の瞬間には真紅の魔槍に肩を抉られていた。魔槍の穂先に纏わされた氷の魔力が、標的の肉体を凍らせていく。
「こい、つ……ッ!!」
苦痛に顔をしかめながら反撃の爆炎を放つが、フレミアは瞬間移動と見紛う程の速度で富子の視界から消え失せ、すぐにまた死角からの魔槍の刺突を放つ。
驚異的なスピードで翻弄するフレミアに対し、富子の反応はまったく追い付かない。一撃を受けるたびに広がる凍結はまるで氷の鎖のように、彼女の身動きを封じていく。
「さあ、これで最後よ!」
追い詰められた富子にフレミアが叩き付けるのは、覚醒により得た魔力を注ぎ込んだ魔槍による渾身の一撃。真祖の速度と力の全てを重ねられた魔槍の穂先は、まるで流星のように赫々と輝きながら、大悪災を貫いた。
「ぐがあぁあぁぁぁぁぁぁっ?!!?」
吹き飛ばされた富子は獣のような絶叫を上げながら、花の御所の最奥に転がっていく。その胸には魔槍の穿った傷跡が、ぽっかりと大きな風穴となって刻まれている。
ここまで猟兵たちを手こずらせた大悪災の命も、いよいよ風前の灯火だった。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
醜いね…そのお金への執着…。貴女にこれ以上、この世界を荒らさせはしないよ…。
・先制対策
【呪詛、オーラ防御、高速詠唱】による防御呪術で攻撃を防ぎ、【回避、第六感】で回避もしつつ、黒桜による呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で敵の怨霊や火矢を纏めて吹き飛ばして迎撃…。
【九尾化・魔剣の媛神】で封印解除…。
怨霊を無限の魔剣による一斉掃射で排除しつつ、神速と凶太刀の高速化による二重加速で一気に接近…。
【呪詛】を纏った凶太刀と神太刀による斬撃で一気に斬り捨てつつ、更に零距離で再度魔剣の一斉斉射を放ち、一気に仕留めに掛かるよ…。
「あ、あぁぁ……奪われる……アタシの命が……アタシの金が……!!」
花の御所の最奥にまで追い詰められた日野富子。そこは彼女が吸い集めてきた財貨が、豪華絢爛な内装や調度品となって溜め込まれた場所であった。
「醜いね……そのお金への執着……」
この期に及んでも金に縋りつこうとするその醜態。そして彼女の精神性がそのまま反映されたこの部屋を見渡しながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は告げる。
「貴女にこれ以上、この世界を荒らさせはしないよ……」
故郷であるエンパイアの未来を脅かす大悪災。その悪行に引導を渡すべく、魔剣の巫女は踏み込んだ。
「ち、畜生、来るな……誰か、誰かアイツをぶっ殺せよ!」
もはや満足に立ち上がることもできない富子は、怒りと苛立ちを周囲に吐き散らす。その感情に応えて現れるのは、応仁の乱の時代より喚ばれし火矢。かつての大乱で散った怨霊たちの業火が、一斉に璃奈目掛けて降り注ぐ。
「悪あがきだね……」
璃奈は呪槍・黒桜を手に、自らの身を守る防御呪術を詠唱。飛来する火矢の軌道を察知して躱し、あるいは呪詛のオーラで防ぎながら戦場を駆け巡る。
的を外した火矢は御所の建物内に突き刺さり、怨念の炎はたちまち燃え広がっていく。富子が蓄えた財物や調度品も、同時に焼けて朽ちていく。
その光景はまるで、かつての応仁の乱の再現のようでもあった。
「ここで一気に仕留める……呪力解放……」
呪槍から放たれる黒桜の花弁のような呪詛が、衝撃波となって炎と怨霊を薙ぎ払う。そこに生じた間隙に璃奈が発動するのは【九尾化・魔剣の媛神】。
「我が眼前に立ち塞がる全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
九尾の妖狐へと変化し、虚空より無数の魔剣を召喚し従える。さらにその身に纏う莫大な呪力のオーラは、ただそこに立っているだけで周囲を崩壊させていく。
「あ、あぁぁぁぁ……やめろぉぉっ!!!」
塵のように崩れ去っていく建物を見回して、富子は悲鳴に近い絶叫を上げ、残された火矢の怨霊が璃奈に殺到する。
だが、九尾の妖狐は静かな眼差しで二振りの妖刀――九尾乃凶太刀と九尾乃神太刀を構え、展開した無数の魔剣を一斉掃射。
一本一本が『終焉』の力を宿した魔剣たちが火矢を一つ残らず排除するのと同時、正面に捉えた富子に向かって全速力で駆け出した。
「ひ――!!」
封印解放によって得た神速と、凶太刀に宿る呪力による二重加速。音を遥か彼方に置き去りにした璃奈の接近に、富子は息を呑む暇すらない。
繰り出されるのは双刀による斬撃の嵐。呪詛を纏った刃が富子を斬り捨て、鮮血が真紅の華のように散る。
「ぎ、いぃぃ……っ! まだだ、まだアタシは……!!」
ボロボロの着物を真っ赤に染め上げ、それでもなお悪鬼の形相で吠える富子。
その妄執を断ち切るべく、璃奈は再び終焉の魔剣を顕現させ。
「これで、終わり……!」
零距離から放たれた魔剣の一斉射撃が、富子の全身を貫いた。
「が、ぎ、ぉ……覚えてろよ、てめえらぁぁぁァァァァァァァッッ!!!!!」
地獄の釜の蓋が開いたかのような、凄まじい怨嗟の断末魔を残して。
大悪災・日野富子は、炎上する花の御所の中でその生命を散らしたのだった。
成功
🔵🔵🔴