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エンパイアウォー⑯~ニンジャはウィザードに似て異なる

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #風魔小太郎

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 ついに『風魔小太郎』の位置を突き止めた。
 街路や施設を破壊する陰険な隕石は止まりつつあり、剛腕の阿修羅はその姿を現した。後は彼を倒せば隕石は完全に消滅し、徳川の援軍は安全に移動を開始できるだろう。
 しかし猶予はあまりない。彼を撃破してもなお問題は存在する。これは問題解決の第一歩、最初の試練に過ぎない。
「サムライエンパイア史上最強と謳われた化身忍者、だそうだ。まあ、当然の如く幹部クラスのオブリビオンだから、生半可なやり方じゃ突破できない」
 ヘクター・ラファーガ(風切りの剣・f10966)は冷静に、かつここに集まった猟兵たちを煽るように語る。
 風魔小太郎のユーベルコードは、一言で言えば『卑屈』だ。
「大半が自分の手を汚さない技ばかりだ。力押しをしようとすれば仲間の忍者を呼んで戦わせるし、間接的に攻めようとすれば歴代の小太郎らの霊に戦わせる。
 唯一、速攻で攻めようとするとカラクリの腕を使うみたいだが、これが一切隙がない。腕六本を使った54連撃を浴びせてくる」
 つまるところ、彼は忍者らしく搦め手で攻めてくる。正面突破、速攻攻撃、間接攻撃、どれも彼を攻める手段としては難易度が高く、単純なやり方では反撃の出汁にされるだろう。
 さらに厄介なことに、風魔小太郎は"ある場所"に陣取っており、そこから動かない。
「風魔忍軍の忍者屋敷にヤツはいる。ま、罠まみれの屋敷だな」
 場所は森の中。そこにひっそりと佇む屋敷があり、窓や煙突といったものが一切ない。出入口だけが用意された、のっぺりとした屋敷がある。風魔小太郎はその中らしい。
 まきびし、吹き矢罠(麻痺毒)、通路を流れる大岩!とにかく厭らしい罠ばかり。
 中でも一番多いのが、"感圧式の捕縛縄トラップ"。踏むと周囲から縄が発射され、全身を縛られ動けなくなるというもの。罠には風魔の忍術が仕込まれており、たとえ霊体や概念体でも感圧版を踏むことができ、瞬く間に捕縛されるという。恐ろしい罠だ。
 だが、この罠が風魔小太郎攻略の鍵になる。
「実はこれ、すごい回避しやすい罠なんだ。屋敷の至るところに設置してあるからな、たまに風魔忍軍や小太郎本人も引っかかる。ただ、引っかかってから捕縛縄が出るまで少しタイムラグがある」
 つまるところ、つまり風魔小太郎がいるであろうポイントにも大量に設置されてある罠だという。回避しやすいとはいえ"大量にあり敵も引っかかる"のであれば、利用する他にないだろう。
「じゃ、屋敷の前にまで送るぜ。罠は屋敷の中だけにあるから、じっくり考えてから入ってくれよな」
 ──グリモアが開かれる。

 屋敷の中は、意外にも明るい。
 針山のように立つ大量の蝋燭。篝火が並べられた廊下。
 そして最奥。辺りに忍術の狐火を浮かばせ、静かに待つ魔軍将。
 その一人、風魔小太郎は武士のように座り構えていた。
「来るか、猟兵共め。我が忍法『隕石落とし』を振り払ったその力、果たしてこの忍者屋敷で容易く振れるか」
 ──否。ここは風魔の領域。簡単に攻略させられるなどあり得ない。
 たとえ幾億の罠を突破されたとしても、我が力を前に勝る者無し。
 阿修羅の前に跪け。そして、第六天魔王織田信長に天下を。


天味
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 天味です。サムライウォー最初の幹部クラスオブリビオン、風魔小太郎とのバトルとなります。
 戦闘場所はラストで出た最奥大広間。設置されている罠は"感圧式捕縛罠"のみ、そこで風魔小太郎との戦闘が始まります。

●以下ルール
 百鬼面・風魔小太郎は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

 それでは、風魔の阿修羅に挑む猛者をお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『百面鬼『風魔小太郎』』

POW   :    風魔忍法『風魔頭領面』
自身の【身に着けた『面』】を代償に、【召喚した風魔忍者の軍勢】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【忍者刀と手裏剣】で戦う。
SPD   :    風魔忍法『六道阿修羅面』
自身の【髑髏の面の瞳】が輝く間、【六本の腕で繰り出す忍具や格闘】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    風魔忍法『死鬼封神面』
【歴代風魔小太郎たち】の霊を召喚する。これは【極めて優れた身体能力を持ち、手裏剣】や【鎖鎌】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:カス

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

流観・小夜
事前情報より罠多数仕掛けあり、行動開始します。

義眼とゴーグルの【視力】【暗視】により仕掛けられた罠を確認、【忍び足】にて罠を発動しないよう行動。

対象との戦闘時では、近接戦闘困難と判断。距離を取りながら対象の忍具や徒手格闘を目視確認し回避行動に努めます。

目視している中、対象の面の瞳が輝いていることを察知できたのならば、そこに【スナイパー】での一撃を加え、仕掛けを解除できるか試みましょう。
また、対象の腕部は三対であるが、下肢は一対。体を支えている部分が足に集中する以上、要を崩せば隙が生まれるはずです。
義体を高速戦闘モードに変形させ、対象の膝関節部に向けての【傷口をえぐる】連撃を試みます。



 一歩歩けばワイヤー、二歩歩けば感圧版、三歩進んで扉に仕掛け。
 多いとは聞いた。が、あまりにも多すぎる。辺り一面蜘蛛の巣を張り巡らされたように、大量の罠が仕掛けられていた。
 普通に歩くことができないな、と流観・小夜(駆動体α・f15851)は思った。ただし、それは普通の人間の場合だ。全身の殆どを機械化した彼女には、見えないほど細い糸も、廊下にある僅か1ミリほどのでっぱりも、扉のレールにある些細な溝の中も、機械の瞳とゴーグルでばっちりと見えている。
 不思議なことに、逆なのだ。ここは普通に歩くことで、罠を回避できる。警戒し忍び足になることで、逆に引っかかる。事前情報が罠となる屋敷──。
「これは……後で皆さんにも伝えなければいけませんね」
 そうして歩いてゆく内に、恐らく最奥の大広間に繋がる襖の前へたどり着く。やはりこれにも罠は仕掛けられており、一定の速度で開けなければ作動するタイプだ。ほんのちょっと開けて攻撃……というのはできない。
 しかし普通に開けたところで、先にいる武士は待ってくれるだろうか?開けた瞬間先制攻撃など卑怯な手を好むのが忍者だ。それを許していいのだろうか。
「…………」
 襖に仕掛けられた罠の解析が終わった。例の捕縛縄の罠。それならば、まだ対処しようはある。
 思い切り、彼女は襖を蹴破って入った。
「──来たか」
「!?」
 部屋に飛び込んでからすぐ、感圧版の位置を掌握。前転と共に安全な足場を見つけそこに着地する。背後で縄が飛び交う音がしたが、こちらには届いていない。
 意外なことに、風魔小太郎は篝火が置かれた座布団の上で座って待っていた。
「なるほど、"さいぼおぐ"か。伴天連の商で一度見たことがあるぞ」
 油断はしない。背負っていたスナイパーライフルを降ろし、素早くリロードを行い腰に構える。
「その眼鏡、目、手がそうだ。……いや、全身がそうだな?我には見えるぞ。この腕と同じ、高みを求めて入れ替えたものだろう」
「黙ってください」
 集中が途切れそうになるが、準備はまだ続けられる。見たところ一切動きはしない。目の前ではあるが、着実に作戦の準備はできつつある。
 望んでサイボーグになったわけではない。生きる途中でサイボーグになるしかなかった。たった一つの不幸で失われたものを補填しただけであって、彼のように高みなどという破滅を求めて機械の体になったわけではない。
「あなたたちが仕掛けた罠は全て見えています。小夜にとってないも同然です」
「ではその啖呵、いつまで吐き捨てられるか試してみよう──散華!」
 風魔小太郎の顔、黒炭を思わせる五つの骸骨頭の瞳が光った。
 恐らくこれが54連撃の合図。これに対処するには、
(解析完了。接近まであと0.2秒)
 スナイパーライフルの引き金を、引かない。素早く、カルタをめくるように。彼女は手前にある捕縛罠のスイッチを押した。
 捕縛罠には、感圧版が押されてから作動するまでタイムラグがある。0.2秒、事前に察知し感圧版の上から離れていれば回避できる罠だ。
 そして、風魔小太郎が六本ある腕に忍刀を持ち接近するまでの時間が0.2秒。
 完璧な計算だった。
「ぬぅっ!?」
「──高みを望んだのなら、足も増やすべきだったのでは?」
 風魔小太郎が小夜に肉薄した瞬間、辺りに隠された噴出口から出た縄が、彼の巨体を縛り上げた。霊さえも拘束する罠。そしてこれを仕掛けたのは風魔忍軍、彼らである。そう簡単に解けるものではない。
 小夜はそのチャンスを逃さない。前のめりになった体をあえてそのまま前転させ、彼の懐に潜り込む。
 立派、そして大樹のように太い脚だ。四本の義腕を積み上げてもなお潰れない、ズボン越しでもわかる強い筋肉が目の前にある。
 転がりながら足先が上を向いた瞬間に、彼女は自身の体の一部のロックを外す。右足、その芯となる部分にあらかじめ換装しておいたパーツを展開する。現れたのはコンパウンドボウ。展開と同時に引かれた弦に込められたボルトには、傷をえぐる棘がある。
 『機構変化・弓撃(メカニズムチェンジ・アローアタック)』。コンパウンドボウの一撃は拳銃の如く。
「対象確認」
「己、先手を取られるなど!!」
 小太郎の義肢が反転し、あり得ない方向へ腕が曲がり足元の小夜を斬り裂こうとするが、もう遅い。
 矢は放たれ、彼の右足に深く毒牙は突き刺さった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイト・スイート
さぁさ、異世界の危機にウサギも一肌脱ぎますよっ!
成程これが感圧式捕縛罠ですね。踏まないよう気を付けるのは勿論ですが、巻き込まれたら洒落になりません。
“聞き耳”と“野生の勘”で罠の起動にも気を配っておきましょう。

『死鬼封神面』の発動後、攻撃を受けそうになったら“ジャンプ”“オーラ防御”で回避。即座にUC『DeA*∞RestrizionE』を発動します。
時間を一時的に止め、敵の死角から金色の鎖を放ちぐるぐると敵の武器と身体を拘束・捕縛。
よしんば避けたとしても辺りには捕縛罠があります。逃げられない筈……!

動きを封じることができたら、罠に気を付けつつ“ダッシュ”で近づいて剣で一刺しです。

アドリブ歓迎!



 猟兵の活躍により、グリモアの入り口が屋敷外と最奥入り口に分けられた。これによりショートカットが通じた。
「入り口、繋がっちゃいましたね」
 その姿は、一目見て魔術師ともとれるだろう。大広間に直に繋がったグリモアを経由し、ナイト・スイート(*∞*月夜のお茶会*∞*・f19480)は右足を抑え苦しむ風魔小太郎と対面した。
 情報通りできるだけ普通に歩く。ナイトはうさぎの耳をぴこぴこと動かしながら辺りを見渡した。
「荒れてない、むしろ綺麗ですね。なのにそんな痛そうに……大丈夫ですか?」
「ほざけ。一度死角を射られたところで我は倒れん。隕鉄の如し我が肉体が滅びることなどあり得ぬ」
 ようやく抑えていた手を離し、小太郎は立ち上がる。
 本番はここからだ。
「行け──曼殊沙華」
 ボゥと火を灯すように彼が呟いた瞬間、閑散としていた大広間の中にむせかえるような死の臭いが立ち込める。二人を囲むようにして煙と共に現れたのは、小太郎と同じ金の装飾が施された羽織を着た少年。その隣には似たような大男、女性、老父──全員が同じ羽織を着て、黒い骸骨の面を被っている。
 "風魔小太郎"は全員で五代。彼らは風魔小太郎を名乗ることができた、元風魔忍軍の頭目たち。いわば"歴代風魔小太郎"だ。
「「「「仰せのままに」」」」
 四人の風魔小太郎がその場に跪いた瞬間、姿がブレた。
 ここだ。
「ちょっと慌ただしいですね──!」
 時はうさぎの懐の中。
 世界が藍色のコントラストに染まり、時間は停止する。今この空間で動けるのはただ一人、ナイトだけだ。
 時間操作系ユーベルコード『DeA*∞RestrizionE(デア・レストリツィオーネ)』の前では、たとえ忍者であろうと無力。時の歪みに気づくこともできない。
「……さてと」
 移動する先は当然敵の死角。本物の風魔小太郎の背後だ。しかし四人の風魔小太郎は本物を囲むように出現しているため、少し離れて本物の後ろにいる二人からも見えないようにしなければならない。
 本体前方の二人からは見えてしまうが、距離的に問題はないだろう。
 ナイトは手のひらから磁場を放ち、辺りから金色の光の群れをかき集める。
「当たらないように、当たらないように」
 生み出されるのは金色の鎖。相手が捕縛罠を使い戦いを有利に運ぼうとするのなら、こちらも捕縛の戦術を使うまで。五人の風魔小太郎の体をスレスレに、蛇のように鎖は動き捕縛の準備を進める。触れてはならない。その瞬間、彼らの時が同期し動いてしまうからだ。
 あくまで仕掛けるのは時止めを解除してから。その瞬間にはもう捕縛されている状態に変える。
 四人の風魔小太郎は立ち上がりクナイを構えていた。そのため、動いた瞬間締まるように鎖を施す。
 最後、本物の風魔小太郎には問答無用。動かずとも四肢をギチギチに締め上げる、強めの拘束を施した。
 時よ動け。パチンと指を切った時には、もう勝っている。
「のんびりすることも大事、なッ!?」
 ──はずだった。
 ナイトの周りに飛来したのは大量の縄。それも四方から、驚愕した時には既に遅かった。急に体が浮き上がり、視界が反転する。腕と足が動かず、そのまま宙づりにされたのだ。
「──時を超越したな?だが無意味だ」
 宙づりにされてようやく気づく。ナイトが先ほどまで立っていた場所に、何本ものクナイが転がっている。そしてクナイは回避していた罠のスイッチを押していた。
 時を解除してから捕縛されるまでの瞬間に、クナイを投げたというのか。
「止めたところで我に勝ることなどあり得ん」
 パキン、と金属が折れる音がいくつも聞こえた。
 その瞬間、意識がブラックアウトする──。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ハロ・シエラ
霊すら捕縛する罠とは恐ろしい。
ですが、召喚される霊も引っかかると言う事でしょうか。
試してみる価値はあるかも知れませんね。

まずは【第六感】で急いで自分の立つ位置を確保します。
罠に引っかかってしまったら【早業】で回避しないといけませんが。
敵が霊を召喚してもその場を動かず【見切り】や【武器受け】で手裏剣などを防ぎましょう。
接近戦になったら【破魔】の力を宿したレイピアで【カウンター】しながら応戦します。
霊の誰かが罠に引っかかればそこに隙が出来るはず。
それを待ってユーベルコードを発動し、高速で飛び、霊は無視して風魔小太郎本人に接近して【空中戦】を挑みます。
【鎧無視攻撃】が一撃でも通れば……!



 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は冷静に、かつ分析しながら戦っていた。
 今相手にしているのは、召喚された四人の風魔小太郎。四方から襲い掛かる彼らはクナイや鎖鎌、忍刀や手裏剣を使い多種多様な攻撃を浴びせてくる。コンマ一秒でも見逃せば死に至る攻撃ばかりだ。
 それでも対処できるのは、ダークセイヴァーで吸血鬼と戦うべく剣を磨いてきたおかげか、それとも持前の才か。
「──その細い剣でよく受け止める」
「なんの、これしきッ!」
 彼女はその場から動かず、彼らと剣を交えていた。動けば罠に引っかかる。普通に歩けば引っかからないと聞いたものの、この状況でそんなことはできない。不可能とも言えるだろう。
 上から振り下ろされた鎖鎌に、ハロはレイピアを振るい器用に先端を刀身に直撃させ弾いた。レイピアはよく"しなる"。弾力があり、刺突に関してはクナイよりも強い。
「破ぁッ!」
 鎖鎌を弾かれ滞空した、女性の風魔小太郎。その胸にレイピアの一撃を放った。
 疑似パリングアタック。攻防一体のレイピアだからこそできる芸当だ。
 本来吸血鬼を焼き払う破魔の力は、冥界から引きずり出された歴代風魔小太郎の霊を砕き、青い炎で燃やし冥界へ送り返した。これで残り三体、本体はまだ攻撃できていない。
 否。本体は距離を取り、動かずこちらの様子を見ているだけ。
「わたしをただ見ているだけなんて、よほど余裕があるのですね」
 相手が忍者なら、仲間四人が攻撃をしている間にいくらでも何かを仕掛けることができたはずだ。仲間の歴代風魔小太郎が三人になってもなお、戦いに参加する気配はない。
 一体何を企んでいる?
「余裕か。当然だ、我が入る必要もない」
 ──単純に舐め腐っているだけ。
 カチンと来た瞬間に、背後から忍刀の一撃が来た。残った歴代風魔小太郎の少年だ。彼は両手を使い力でレイピアを抑え込む。
「そうですか、なら──!!」
 忍刀を滑らせ、火花を散らしながらレイピアを引き抜き床を強く蹴る。
 三人を相手にしているどころではない。その上舐められたままも気分がよくない。そもそも彼を叩くために訪れたのに、このままではただ歴代風魔小太郎を相手にしただけで終わってしまう。
 隙を見てから動こうとしたが、そんな悠長には待っていられない。
「この剣は、痛いですよ!」
 宙で纏っていた衣装が変化し、軍服に宿らせていた呪いを物質化、軽鎧へと変える。12歳でありながらどこか妖艶な大人の姿に代わり、短剣"サーペントベイン"に同じ呪いの力を与え鎌へと形状変化させる。
 自己強化系ユーベルコード『ドラゴノート』。
 鎧から生えた翼が羽ばたくと、下から投げられたクナイや手裏剣を吹き飛ばしながら緊急降下する。
 目標は本物の風魔小太郎。堂々と背を向け台座へと歩く忍者に、鎧を砕く一撃を放つ──!
「して、我のどこに傷を入れた?」
「……!?」
 キィン!と耳に響く音がし、気づく。
 鎌は風魔小太郎の背中を斬っていない。六本ある腕のうち義肢の四本が関節があり得ない方向へ曲がり、持っていた忍刀で迫りくる鎌の刃を止めていた。
 罠だった。痺れを切らし目標に突っ込ませることで、自ら動くことなく間合いを詰めさせてきた。心理的トラップ。風魔小太郎の卑屈さは"罠"だけでは収まらない。
「旧き我らを倒した後に挑むと思っていたが、やはり若いな」
 ──残り二つの腕が、横から振るわれたのを最後に意識が飛んだ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アンノット・リアルハート
隕石を落とす忍者か……星にはちょっと思うところがあるし、思い切りやらせてもらいます
敵の瞳が輝いたらバイクの【メタルハート】を自動操縦、全速力で突っ込ませ【時間稼ぎ】
さすがの忍者でも金属の塊が特攻してきたら防御せざるをえないでしょう
その隙に【戦闘知識】で罠が仕掛けられてそうな場所を探して、【シュヴェールト】投擲して起動させます
不可視の剣による作動だから相手の不意も付けるはず
捕縛罠が起動して小太郎の動きが鈍ったら【ダッシュ】で接近して、槍で敵を地面ごと【串刺し】にして固定、動けなくなったところをユーベルコードを掃射します
最初は敵から距離を取って、罠で捕らえたら一気に積める。これを基本に動きましょう



「……む?」
 ショートカットを経由してこない。
 その気配に気づいた風魔小太郎は、呼び出した歴代風魔小太郎の霊を祓い構える。
 大広間に繋がる扉の奥は、篝火が並ぶ廊下だ。そこから、聞いたことのない輝きの音が聞こえてくる。まるで隕石が降って来る時のような、近づくにつれ爆発しているのを理解する音が来る。
 もうすぐ来る。それと同時に、連撃を放つ。小太郎は面を光らせ、全ての手に忍刀を持ち待った。
 ──それが仇となるとは、彼は思いもしなかった。
「突っ込めぇェッ!!」
「な──!?」
 扉を蹴破り飛び出してきたのは、鉄の塊。否、それは箒のようにも、鎧を着せた馬のようにも見える。
 その名を"メタルハート・ベーゼン"。そして、その"バイク"に騎乗し屋敷を走ってきたのは、アンノット・リアルハート(忘国虚肯のお姫さま・f00851)。彼女は大広間にメタルハートを突っ込ませた瞬間、手早く自動操縦に切り替えハンドルから手を離す。
 初めて見るものだ。バイクというものを目の当たりにし、風魔小太郎は驚愕する。しかし防御を怠ることはなかった。
「なんだこれはァッ!」
 忍刀を手放しメタルハートの頭部フレームを掴み、さらに四本ある義手を使いエンジン部も掴んで動きを止める。だが勢いを殺すことはできず、正面からあらん限りの力で風魔小太郎を押し倒そうと動く。
「バイクよ!そしてこれはおまけ!」
 スタイリッシュに着地したアンノットは、自身を取り囲む不可視の剣"シュヴェールト・ガードナー"を操作し小太郎の周囲へ飛来させる。
「おのれ、我に"ばいく"などという鉄の馬をぶつけるか!だがこの程度ッ!」
 迫りくる見えない何か。姿はわからずとも風を切る音で何かが接近しているのが理解できる。そしてこの状況はメタルハートを利用した奇襲。完璧に一手は取られたが、それでもまだ回避しようはある。
 小太郎は思い切り床を蹴り、腕力だけでメタルハートの頭部フレームを掴んだまま逆立ちした。
 さらに迫りくるは捕縛罠。見えない何か、シュヴェールト・ガードナーが彼の足元にあった感圧版を押したのだ。罠は小太郎を捕縛しようと魔の手を伸ばすが、届かない。小太郎は義肢の一本からワイヤーを射出させ、天井に貼りつけていた。
 逆さのまま急上昇する。無数にある腕と、そこから伸びる糸。捕縛罠という地獄への誘いは小太郎に届かず、虚しく床に落ちてゆく。
 ──その光景は、『蜘蛛の糸』のようだった。
「やはりそう簡単には行きませんね……ッ!」
 糸一本で巨体を吊るしている今が好機。アンノットは即座に竜槍"ノイギーア・シャッテン"を携え、彼がいる高さまで飛びあがり構える。
 作戦変更。捕縛し確実にダメージを与える算段だったが、小太郎の実力はそれ以上。流石忍者というべきか。
 しかし、いいところまで行っている。
 逆さづりになった彼は今、一瞬だけだが無防備。そこを突く。
「させぬッ!」
 何も持たない小太郎の五本の腕が動く。手のひらを見せつけるように、指もせわしなく動かし、さもパントマイムの如く何かを操っている。
 ──見えない何か。彼もまたそれを持っているというのか。
「──っくぅううぅぅぅぅ!!」
 ワイヤーだ。小太郎は逆さづりになりアンノットに接近を許した時、気づかれぬようワイヤーを射出していた。細く、彼のような巨体さえもしっかりと吊るす糸だ。かなり強力で、当たれば捕縛罠で拘束されるよりも痛いかもしれない。
 見えはしない。だが今自身が直線状に包囲されていることは理解できる。小太郎はこのままワイヤーを動かし、絞るように拘束してくるはず。
 否。まさか、ワイヤーを使った54連撃をするというのか。
 サイコロステーキのように自身の体がバラバラになる光景が思い浮かんだ時には、敵に串刺しにするはずだった力を、今ここで発動した。
 小太郎の目先まで突き出していたノイギーア・シャッテンを引き、先端を思い切り下方向へと振り回す。
 悪しき夢を美しく優しい夢に塗り替える。その力を自身に。『流れる夢よ、正しき願いを守りたまえ(デイドリーム・メテオシャワー)』は、自身を絡めとり斬り裂こうとするワイヤーに放たれた。
「もう少し、だったのにっ!」
 敵を目前にして放たれた流星の光。それは槍をワイヤーに引っかけ回転し、五本あるワイヤーを絡めとり引きちぎったアンノットを掠めるように降り落ちた。
 ──小太郎には届かず。そして空中から床へと堕ちる。一面罠だらけの大広間へ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

雷田・龍子
アドリブ・連携歓迎
【POW】
「わざわざ相手の得意とする場所に乗り込む必要はないんですよ」
人派ドラゴニアンの龍子は忍者屋敷の外、相手のユーベルコードの射程外である上空から狙いを定める。

「猟兵の皆さんは避けてくださいね。……これが私の全力だ!」
ユーベルコード「雷龍拳(ドラゴンストライク)」を発動。
被ダメージはアイテム【ドラゴンコイル】で攻撃力に変換するとして、お供の【ドラゴネット】の【援護射撃】を受けつつ上空から風魔小太郎が居るであろう凡そのポイントへ向けて建物諸共の撃破を試み突進する。



 雷田・龍子(人派ドラゴニアンの剣豪・f14251)はふと思った。なぜ屋敷の前は安全なのだろうか、と。
 屋敷の内部には幾多の罠が張り巡らされており、最奥に至ってはどこを踏んでも感圧版まみれ。風魔小太郎にとって最良の戦場だ。ただ、それは"内部"に限っての話。
 "外部"には全く罠がないのである。
 監視塔が無ければ、外側から侵入できそうな窓も、弓での狙撃や投石を行う穴すらない。出入口は正面か、内部に設置されたショートカットのグリモアだけだ。
 つまるところ、
「わざわざ相手の得意とする場所に乗り込む必要はないんですよ」
 忍者屋敷の外。場所はその真上、数十メートル離れた上空に龍子はいた。
 臀部に白い毛を塗布したコイルを巻きつけ、彼女は右腕を高く上げ拳を下へと向ける。
 武器は要らない。お供である"ドラゴネット"を隣に、龍子は『雷龍拳(ドラゴンストライク)』の構えを取る。
「猟兵は今のところ私だけ。ショートカットは一時削除済み……よし。ドラゴネット、私を撃ちなさい」
「クェッ!」
 指示を受けたドラゴネットは、すぐさま口を大きく開き躊躇なく雷のブレスを吐いた。
 この場で自傷する意味は巻き付けたコイル、"ドラゴンコイル"にある。雷龍の毛を巻き付けた電磁力制御装置(コイル)は、受けたダメージを攻撃力に変換する。いわゆる変圧器に近いものだ。
 最も、この場合コイル内部で行われるのは調律ではなく増幅。『雷龍拳』の威力を上昇させる電力を強化するための自傷ダメージだ。
「クァァァッ!!」
「もっとよこしなさい。そうです、その雷!そのパワー!」
 ドラゴネットの吐く息は青白い。吐息の中に微量の金属と電気が混ざっているからだ。
 それが徐々に紫色へと変化し、コイルと拳に帯びる電気もまた青色から紫色へと変わる。当然、その分体に傷が増える。火傷、裂傷、ミミズ痕……だが今は構わない。眼鏡にヒビが入ろうとも気にすることはない。
 気が付けば空は曇天に代わり、龍子を中心に放電が始まっていた。
 世界の終わりか。はたまたオブリビオンの到来か。空からも降り落ちた雷さえも吸収し、むしろ雲の中のイオンさえも取り込んで、増幅、倍加してゆく。
 ──忍者屋敷はもう終わりだ。
「く ら え」
 紫から赤色へ。鉄さえも歪み溶かすほどの電力と熱量を以て、今振り下ろされた。
「これがわたしの全力だァァァァァァアアアアアアああッッッ!!!!!!!」

 ジャイアントインパクト。
 惑星同士の衝突と呼べるほどの威力。そして爆発。雷速で放たれた一撃は一瞬よりも速く忍者屋敷というものを無に還した。
 三河からは「例の隕石よりも大きな隕石が落ちてきた」と徳川幕府軍に報告が入り、一時混乱を招いたという。
 ──それでもなお、風魔小太郎は健在。しかし忍者屋敷は焼滅した。もはや彼に勝ち目はない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・タツガミ
【狐の宿】で参戦、アドリブ・連携歓迎さね

【WIZ】

また面妖な敵さね

基本的にはシロミと一緒に行動するよ。【宝珠:簡易聖域】と【オーラ防御】で防御障壁を貼りつつ、ミズチを小盾に変じさせ【盾受け】をすることで、【指定UC】を使うまでの【時間稼ぎ】をするかね

シロミ大丈夫かい?こっちかい……ま、少々の傷は想定の範囲内さね

【指定UC】の発動とともに召喚した神々の分霊による回復で猟兵たちを癒やしつつ、炎の矢による【属性攻撃】で、屋敷ごと焼き払うとするかね

とは言ってもね、やられっぱなしは性じゃないさね

【宝珠:神の矢】による炎の矢による【範囲攻撃・誘導弾・2回攻撃】で仕掛け罠ごと敵を追い詰めるとするかね


クロウ・タツガミ
【狐の宿】で参加、アドリブ、連携は任意

【POW】

前衛の仕事は後ろに敵を回さぬ事か

【戦闘知識】を元に、サカホコ(ハルバート)を構え、召喚された軍勢と対峙するとするか。【怪力】による【2回攻撃】で忍者刀を払い、他の猟兵への手裏剣をガントレットで【盾受け】して【かばい】、後衛へと向かう者がいればレプリカの【投擲】で足を止め【時間稼ぎ】をさせて貰う。多少の傷は【激痛耐性】で耐えきってみせよう

少々数が多くとも、雑兵に負けるほど軟なつもりはない

軍勢の攻撃を凌ぎきり、コノハの回復も受ければ今度はこちらの番か

仕掛けなど知らぬ。罠ごと踏み潰せ、三位龍来

黒と白の蛇を解き放ち、暴れるに任せるとしようか


護堂・結城
【狐の宿】で参戦

戦争だから仕方ないとはいえ、それはそれ
…外道殺すべし、慈悲はない

【POW】

【挑発・おびき寄せ】しつつ【誘導弾】で屋敷の罠を作動させ【罠使い】
UCを使うまでの【時間稼ぎ】だ
引っかからなきゃ咆哮と共に【衝撃波・範囲攻撃】

「『リロード』その命、いただくぜ」

UC九尾散命で射撃・弾丸系技能を強化
UC雪見九尾の獣皇咆哮で紫電を纏わせた銃を複製

「隕石の返礼だ、まとめて受け取れ」

【属性攻撃】と【呪詛】を込めた【誘導弾・呪殺弾】をばらまく【一斉発射・範囲攻撃】で雑魚ごとボスも弾幕に巻き込み
紫電の弾幕に紛れて氷牙のランスで【怪力・ランスチャージ】

「まぁ、オブリビオンに命があるのかは知らんがな」


鏡磨・シロミ
【狐の宿】で参加。アドリブ・連携OK。

★WIZ
コノハ姉さんと一緒に行動。
敵からの先制攻撃には、武装【秘術書】から引用した防御用の呪法を用いて『オーラ防御』を展開し『全力魔法』で強度を確保する事で防ぎに掛かるよ。

無事に防ぎきれたら『見切り』や『第六感』で戦況を見ながらクロウ兄さんやコノハ姉さんに守ってもらいつつも、自衛最優先で以下の行動をループするよ。

①『力溜め』で魔力チャージ
②コノハ姉さんの反撃に出るタイミングに合わせて『全力魔法』を行使しつつ【指定UC】を発動
③放つ弾丸全てに『部位破壊』と『鎧無視攻撃』を付与し、撃破を狙う
④展開中の光弾の残数が5割を切ったら再び①の行動へ


シン・ドレッドノート
【狐の宿】で参加
アドリブOK
【SPD】

館の罠を逆手に利用。怪盗の単眼鏡で強化した視力で、罠の位置を探索。自分が引っかからないよう注意しつつ、タイミングをずらしてソードビットを飛ばし、敵が回避する先で罠が発動するように誘導します。

UCを使っての攻撃は、他の方の攻撃に対抗して軍勢が召喚されてから。
閃光の魔盾のビームをライフルビットのエネルギーも使って増強、攻撃を受け流したら【乱舞する弾丸の嵐】で複製した銃から、クイックドロウでカウンターの一斉射撃を撃ち込みます。

その後は複製した銃を制御し、フェイントを織り交ぜて、味方の援護射撃をしつつ、攻撃阻害を兼ねて敵の髑髏の面を狙った攻撃を行いますね。



「──おの、れ……おのれおのれおのれおのれェッ!!」
 風魔小太郎はまだ生きていた。
 黒く焦げ円形に陥没した地面の中心で、彼はよろめきながらも立ち上がった。
「あの龍もどきめ!我が屋敷を木端微塵にするとはァ!!」
 拳が降り落ちる寸前、彼は咄嗟に風魔忍軍を召喚しそれらを肉盾にした。面を全て用い、忍術もフル活用して最強の盾を作った。
 にもかかわらず、このあり様。力の殆どを失い、小太郎は激情にまみれ地団駄を踏んだ。
「許さん……許さんぞ……ッ!?」
 ──当然、猟兵がそのチャンスを逃すはずがない。
 爆心地の外、そこに五人の影。
 瀕死になった彼を迎えにきた者の一人、護堂・結城(雪見九尾・f00944)は辺りを見て感嘆の声を漏らした。
「おいおい、隕石の返礼もうされてやがる……誰だよ先にやったの」
「おかげで罠の危険はもうなさそうですね。逆に、利用できないのが惜しいところですが」
 その隣で、シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)はモノクルを片手に小太郎を観察する。
「それでも面妖な敵には変わりないさね」
「当然です。彼は幹部クラス、瀕死になった時こそがアレは本気を出す」
 コノハ・タツガミ(放蕩亜神・f17939)、その兄であるクロウ・タツガミ(双龍の担い手・f06194)は各々の武器を構える。
「油断しないで。──ここからが本番だから」
 一冊の本を抱えた鏡磨・シロミ(神出鬼没のガラテイア・f00224)が警告した後、彼らは動き出した。
 結城、シン、クロウの三人が斜面を滑り降りてくる。
「少数精鋭のつもりか。だが我には軍がある!」
 忍者屋敷はなくなった。それがどうした。
 まだ風魔忍軍は残っており、それは服部忍軍と戦っていた風魔忍軍から引き出される。数はまだあるのだ。
 忍者は忍者の元から出で、数を増やしてゆく。五つある面全てを消費し、素顔を晒してまででも食い止めようとする殺意。だが、それは逆に焦りの象徴でもある。
「彼らの注視を取ります」
「では、私は援護を」
「俺はちとばかり準備させてもらう」
 小太郎が覚悟を決めた時、彼らもまた方針を決める。
 数十、否数百とも言えるであろう忍者の軍勢。そこへたった二人、クロウとシンは各々の得物を構え飛び込んだ。
「サカホコ、マガホコ──好きにしろ」
 走りながら頭部から角を、背中からは翼を生やしクロウはドラゴニアンとしての真の姿を晒す。持っていた霊酒を一杯、煽りながら彼はサカホコの名を持つハルバードを片手に持った。
 ──全長45メートル。敵を、軍を片手で薙ぎ払う『三位龍来(サンイリュウライ)』の武器を持って。
 圧倒されるほど巨大。一つ薙ぎ払えば、一瞬で壊滅するほどの圧(すご)みがある。だがそれで怯むほど彼らは"風魔"を名乗っていない。一斉集中、一気に重くなったサカホコを持ち上げ薙ぎ払おうとするクロウに、風魔忍軍は忍刀を抜いた。
「そうは、させませんよッ!!」
 抜刀する彼らに銃口を向ける。一人一丁、ビーム銃にマスケット銃、ライフルオービット、他多種多様な銃が火を噴いた。
 『乱舞する弾丸の嵐(ハンドレット・ガンズ)』。シンは持っている銃の全てをコピー、複製し、念力を用い引き金を引く。
 驚くことに、彼らは冷静に銃弾を弾いていた。忍刀の鏡面刀身を利用しビームを彼方へ反射させ、銃弾は弾き、ライフルオービットは殺意を以て破壊しようと刀を振るう。
 足止めはできている。しかし撃破には至らない。
「流石、風魔と言われただけは──!?」
「貴様ら、だけはァァァッ!!」
 想像以上の対抗を見せる風魔忍軍に驚くシンに、影が迫る。
 風魔小太郎もまた、忍刀を六本抜き彼の背後に立っていた。明確な殺意がありながら気づけなかったのは、彼が"風魔小太郎"だからか。
 刹那さえも斬り裂く54連撃。六本の腕が振り下ろされる──寸前で動きが止まった。
「小賢しいッ!!」
 シンではなく背後へ。放たれた一筋の炎の矢を、小太郎は斬り裂く。
「兄よまだか!!」
 矢が放たれた場所は爆心地の外側。弓を番えた神霊たちが並ぶその中心、光のドームの中。コノハは手に浮かせた"宝珠:神の矢"で小太郎に牽制を放ったのだ。
 切羽詰まった彼女の叫びが響く。シロミを隣に前衛三人の司令塔を担った彼女は、援護として『Ab ovo usque ad mala』を発動していた。立ち並ぶ古代の神霊は皆弓を持ち、クロウやシンに迫りくる風魔忍軍に援護射撃を行っていた。
 それでもなお、弾かれている。風魔忍軍の勢いは止まらず、風魔小太郎に関しては一瞬動きを止めただけに過ぎない。
「風魔は潰えぬ!この命は信長様に捧げるためのもの!のうのうと神秘など使いおって、恥を知れェッ!!──空駕曼珠沙華!!雲霞散華ッッ!!!」
 ついに小太郎は忍刀を捨て、喉から血が出るほど強く詠唱する。
 風魔忍軍増加、強化増幅。歴代風魔小太郎召喚、強化覚醒。彼もまたヤケになり叫ぶが、そこから生み出された力は猟兵を大きく凌駕する。
 銃弾を弾き鍔迫り合いを行っていた風魔忍軍はついに弾丸を斬り裂くようになり、光のドームには復活した歴代風魔小太郎の四人が襲い掛かった。
「申し訳ない、遅れた」
 しかし猟兵には、それを覆す光と鉄がある。
 この瞬間、風魔忍軍が一斉強化を施され手が止まった一瞬。そこへクロウはようやくサカホコを振り下ろす。
 水を切るように。しかし流れは変えることなく、流れに身を任せるように。たった数秒。クロウにとって数時間とも言えるであろう集中の果てに放たれた一撃は、前衛を取り囲む風魔忍軍を時計回りに薙ぎ払いつつ、ぶん投げた。
 飛来するのはシンと小太郎がいる方向。そして歴代風魔小太郎が今襲いかかろうとしている光のドームへ。
「──今だね。反撃の時!」
 同タイミングで、コノハの隣で膝をつき"秘術書"の頁をめくりながら祈りを捧げていたシロミも動く。
 コノハが牽制の攻撃を放った今、彼女も動くべきだと判断したのだ。
 光のドーム、魔力とオーラでできたそれを一時的に解除し、平行して行っていた魔力のチャージを今、解放する。
「舞い、踊れ……流れ煌めく──光の使徒よ!」
 ゆっくりと印を切り、シロミは唱えた。あらゆる光をかき集め、"鏡"という自分自身を利用した、鏡面反射のユーベルコード。
 『集光術弐式・清流絢爛(シュウコウジュツニシキ・セイリュウケンラン)』。彼女を中心に、二度目のビックバンが起こった。
 眩い光と共に放たれたのは、矢よりも速く、雷よりも熱量を持った槍。250本以上の追尾光弾が、サカホコに混じり味方以外の全てに襲い掛かる。
 風魔忍軍は、何が起きたのか理解できなかった。様々な方向から飛び交う銃弾に光線。それらに隙はなく、正直に言えば防ぐので手一杯だった。しかし突如強化を施され、弾丸や神の矢を削り、光線を斬ることができるようになった。その瞬間に、横から重いものに肉体を分断された。鍛えられた肉体は枯れ枝のように折れたのだ。
 歴代風魔小太郎たちは、二度目の死を見た。それは眩い光。あの隕石とはまた違う、まるで包み込まれるような、温かく、優しく、そしてそれは何もかもを呑み込み無垢へと変える光だと理解した。
 それに板挟みになった小太郎は、叫んだ。
「斃れぬ、風魔はまだ斃れぬッッッ!!!!」
 捨てた忍刀を全て拾い、迫りくるサカホコには背中で、光は剣をシャッターのように横並びに構え防いだ。ヒビが入り赤く発光するほどに忍刀は光を吸収し、クロウの怪力から放たれた渾身の投擲は小太郎の背中の筋肉繊維ないし背骨全てを粉砕したが、それでも倒すまでに至らず。彼は立ち上がり続けた。
 風魔の長としての風格。魔軍将という肩書(プライド)。そこから生まれた"根性"は、骸の海よりも深く、巨大。
 彼は今だオブリビオン『風魔小太郎』として存在し続ける。
 それでもなお、斃さんと牙を向ける猟兵が一人。まだ残っている。
「──じゃあ、俺が終わらせてやるよ」
 スキル強化系ユーベルコード『九尾散命(ディアボロスバレットカーテン)』の詠唱回数、合計十数。本来弾幕攻撃を行うユーベルコード『雪見九尾の獣皇咆哮(ナインテイル・ソニックシャウト)』を重ねがけした回数、同数。
 誘導弾、呪殺弾、一斉射撃されるはずだった武器を最大圧縮。ありとあらゆる攻撃手段の全てを氷牙のランスへ溜め込んだ。
 ──今、護堂・結城が手に持っている"氷牙"という名のランスには、『死』が宿っていた。
「隕石の返礼ができていても、俺が満足できてない」
 誰もが見て理解できる形の『死』があった。当たれば全てが終わり、魂という概念すら破壊する異形が。赤い髪をたなびかせ悠々と歩いてやってくる。
 小太郎は人生で初めて、戦いの中で"逃げる"という選択を真っ先に選んだ。
「おっと、逃がすわけないだろう?」
「やられっぱなしは性じゃないさね」
 足先が反対へ向いた瞬間、両足に何かが貫かれた。膝が崩れバランスを失い、小太郎はそのまま転げ落ちる。
 右に赤い光線、左に炎の矢──シンとコノハが繋ぎ止めた足枷。動かせるのは腕のみになり、さらに絶望した。
「ま、まだだッ!終わらぬ、終わらぬ終わらぬ終わらぬ終わらぬ終わらぬ!!」
「うるせぇよ」
 ついに、『死』は背中の上にまで近づいた。
 痛みに耐えながらうつぶせから振り返る。彼の表情は、無だった。
「命があるかもわからんオブリビオンが終わる終わらないを語るな」
 槍が、『死』を纏った先端が頭上へ。
「ま、貴様は終わりだ」
 ──躊躇なく、何か言い残すこともなく、結城は思い切り槍を彼の頭蓋へ振り下ろした。

 三河で二度目の大爆発が観測されたその日を境に、『風魔小太郎』は消滅した。
 魔軍将の一人、『百面鬼』は斃れ、徳川幕府軍は勝利への一歩を歩み出した。
 ──道筋が未だ見えぬ中。一筋の希望が差し込み、そして無数の絶望にヒビが入る。それは夜空に映る流星のようであり、厄災を招く凶星のようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月13日


挿絵イラスト