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エンパイアウォー④~喧嘩稼業は富士の華

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 霊峰富士の麓には人を寄せ付けぬ魔の森『樹海』が広がっている。
 これは人の世とあの世との境界に位置する魔の領域。
 普通であれば人の近付かぬ場所なのだが……。

「おうおう、ちんたらしてらんねえな」
 邪悪な瘴気が渦巻く丸太を積み重ねただけの粗末な祭壇を前に一人の男が陽気に材木を積み上げていた。
 小さな滝を前に設置されたゴミの山……もとい無骨な祭壇の頂上には『聖杯』が無造作に置かれており、その傍には荒縄で縛られた小さな竜が転がされている。
「ちっとばかし遅れてるが、まっ!どうとでもならあな!」
 拳を振るい近くの樹木を叩き折りそれを材木にする、そのような作業を一人でこなしているのだからこれが常人の訳がない。
 木々を叩き折る音が大きく樹海に響き隠れてコソコソとしている気など毛頭ないだろう。

「さーて、コルテスの旦那ァ……何て言ってたかな。ええと祭壇作って聖杯置いて竜を殺して血を注げ……だっけか?」
 2本角を生えた男が首を傾げつつ言われた事をどうにか思い出す。
「まあいいや、それさえ終れば富士山ドッカン。やっぱ大きな喧嘩にはでっけえ花火が無いと締まんねえよな!」
 男のガハハハという大きな笑い声をあげその場へとドカっと座る。
「まっ、まずは飯だ。腹が減っては戦は出来ぬってな」
 懐から取り出した大きなオニギリに美味そうに齧り付き男は余裕の表情で腹を満たし始めるのだった。

●グリモアベース
「魔軍将の一人である侵略渡来人『コルテス』とう名をお知りですか?」
 グリモアベースに集まった者達は声を方を向く。
「コルテス配下のオブリビオンが富士山を噴火させる為の邪悪な儀式を行おうと富士樹海に隠されたを行っているようなのです」
 人が集まってきた事を確認したのか物静かに本を読んでいたグリモア猟兵の文車・妖が本を閉じ集まった猟兵達に説明を始めた。
「もしも富士山が噴火すれば、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態なのです」
 大きく手を広げ被害がどれだけ大きいかを説明しようとしているようだ。

「いかにエンパイアウォーの最中とはいえ、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を災害救助や復興支援の為に残さないといけなくなってしまうのです」
 そうなれば目的地である『魔空安土城』に辿り着ける軍勢の数にも大きく影響する事になるだろう。
 だが猟兵には出来る事がここにはある。
 富士山を噴火させる儀式を行っているオブリビオンを倒し、儀式を阻止すればいいのだ。

「皆さんには、『富士の樹海を探索して、儀式場を発見し、太陽神の儀式を行っているオブリビオン』を撃破していただく必要があるのです」
 なるほどと聞いていた者達が頷き同意を示す。
 さらに説明が続けられ儀式は『築かれた儀式場の中心で小さな竜(ケツァルコアトルの子供)を殺し、その血を聖杯に注ぎ、祈る』といった血生臭い感じのものなのだという。
「敵は一人で羅刹の荒っぽい男性が一人、木々を叩き折る音と滝の傍にいるという事から比較的探しやすいのではと思うのです」
 儀式だというのに全く隠れる様子がないのだからそうなのだろう。
「これは急を要する事案になりますので、早急に現地へ赴き儀式を阻止してほしいのです」
 そう言葉を結ぶと文車・妖は深々とお辞儀し猟兵達を現地へ転送し始めるのだった。


轟天
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 今回は樹海で儀式の準備をしているオブビリオンを探し出し倒すという話になります。
 探索は要所を抑えてもらえれば最低限で構いません。
 8/10までに倒す事で儀式を阻止する事が出来ますので皆様のご参加お待ちしています。
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第1章 ボス戦 『傍迷惑な喧嘩屋』

POW   :    喧嘩魂
【怒涛の拳打を繰り出し、喧嘩魂が籠った拳】が命中した対象を爆破し、更に互いを【爆破する度に強くなる喧嘩衝動】で繋ぐ。
SPD   :    殴り続けろ!
【ユーベルコード喧嘩魂を発動し拳による会話】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
WIZ   :    立ち続けろ!
【戦闘中は常時発動。戦場効果の敵味方識別】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【真の姿を強制解放し常に高速治療する戦場】に変化させ、殺傷力を増す。

イラスト:影都カズヤ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガイ・レックウ
【SPD】で判定
たたきおられた木などの痕跡をたどり【忍び足】で気配を消しながら、【追跡】【情報収集】のスキルで探し出すぜ。探し出したら、生贄の小さな竜
を助け出し逃がすぜ
戦闘では【オーラ防御】で防御を固めつつ、相手の攻撃を【見切り】で最小のダメージで受ける
【怪力】による【なぎ払い】と【鎧砕き】の【2回攻撃】で攻め続けるぜ!!
ここぞのタイミングでユーベルコード【炎竜闘技・改『紅蓮爆炎拳』】を叩き込んでやるぜ!!


シル・ウィンディア
喧嘩屋さんかぁ
派手好きな人が多いって聞くけど
ほんとだったんだね
でも、噴火なんてはた迷惑なことはさせないっ!

小さいからって油断していると足元すくわれるよ?

今回は、少し相手に付き合ってあげるね
【ダッシュ】【残像】【フェイント】【地形の利用】で機動戦!
真正面から言っても力負けするから
撹乱して攻撃だね
攻撃時は、光刃剣や杖を使わず
【グラップル】で殴ったり蹴ったりして攻撃!
【スライディング】で足元を攻撃したり
【衝撃波】で遠距離からの足止めもするよ

派手なのがいいんだよね?
それじゃ…
【高速詠唱】【全力魔法】でエレメンタル・ファランクスっ!
精霊電磁砲も展開しての魔力+【一斉射撃】【誘導弾】のオマケつきだよっ!!


ネリネ・リード
えーっと、日本が戦争でピンチ…?
あァ?日本じゃねぇ?サムライてーこく?
ハン。ショーグンバンザイハラキリ上等なイカレポンチ共の世界かよ(個人の見解)

わーった、わーったよ、博士。行きゃあイイんだろ、行きゃあ?
ンじゃ、ちょっと行ってくるわ。


……で、だ。
さっきからウルセエったらねーぞ。
木こりがトチ狂ってドミノ倒しでも始めたって、か……。
うーわマジかよ…。マジだよ…。あー、アレだ。
探す手間が省けたってのは確かだよな。

んじゃ、ヤろうぜ。喧嘩。
アンタがどーかは知らねーけどさ。
ブン殴るくらいしか能がねーからよ、アタシは。


アドリブとか絡み?とか、まあ、好きにヤってくれよ。
気にしねーからさ。


劉・涼鈴
山登りは得意だよ!(クライミング)
【野生の勘】で探し出そう!
あっちも野生的な感じ出し、感性も似てるんじゃないかな!

そこのお前! ノッブ軍のヤツだなっ! 勝負だ!
それはそれとしておにぎり美味しそうだね
具はなに? 私は昆布が好きー

【神獣変化】でパワーアップだ!
殴り合いが好きなタイプでしょ?(拳による会話に共感)
テンションも闘争心もアゲアゲだ!
いっくぞぉおおおお!

武器は使わない! 空も飛ばない! 拳と蹴りで勝負だ!
踊るような(ダンス)軽やかなステップからの【怪力】でぶん殴る!(グラップル)
【ジャンプ】からの踵落とし!(踏みつけ)
突き出してきた拳に向かって頭突きっ!(捨て身の一撃)
どりゃああ!


ニコル・ピアース
ああ、うん、わかりやすいのはいいことですね。
というわけで、適当にうろつき回って川を探して上流へ、
木を砕く音が聞こえてくるようなら当たり、
駄目っぽかったら別の場所で同じ感じに探し回りましょうか。

というわけで発見。
さあ、発見したからにはもう儀式は終わりです。
さっさと殴り倒させてもらいますよ。
とまあ、さっくりと宣戦布告したらそのまま正面から攻撃開始です。

まずは羅刹旋風で攻撃力の底上げをしながら近づいていって、
そのまま斧で相手を殴り倒していきます。
以上。
うん、正面からの力押し。

アドリブ、他の参加者との絡み歓迎です。



●樹海行
 富士山麓で進む暴挙を阻止すべく猟兵達の行動は迅速だった。
 深くとてもではないが常人では方向感覚も狂い迷ってしまうであろう樹海を物ともせず進む姿はとても頼り甲斐があるというものだ。
「ふっふーん♪ 山登りは得意だから平気平気♪」
 牛の角と耳を持つ劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)がトランジスタグラマーな肉体を駆使し一歩一歩先を急いでいた。
 体力的な心配は全くない、なぜならこの程度の高低差など気にするほどのことはないレベルだと感じているのだから。

「でもさすがにこの森でちゃんと見つけれるかな?」
 後ろを着いてきているエルフの少女は少しお疲れ気味だ。
 ……だが自然の中にいること自体は悪くない、そう思いながらシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)は精霊達の様子を確かめながら涼鈴の通った後をついていく。
 この地では迷うこと=遭難という死と隣り合わせの地なのである。

「どうやら目的地は近いようだぜ、見てみな」
 足音すらさせず二人の横を歩いているガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)が手でクイっと森の奥を見るように促した。
 二人が視線を送るとそこに見えるのは明らかに人の手(?)でへし折られた樹海の木々。
 ノコギリや斧などといった丁寧な倒し方ではない、これは予知で説明されたオブリビオンによる破壊の跡ではないかとガイは二人に伝えているのだ。

 正確には後ろにもう一人少女が着いてきているのだがあまりにマイペースなので好きにしてもらっているのだ。
「あーっ、何だよこの世界は! 日本じゃねぇ? なんつったかサムライてーこくだっけ?」
 ここで露骨に溜息をつき吐き捨てるように言葉を続ける。
「ハッ、ショーグンバンザイ……ハラキリ上等なイカレポンチ共の世界かよ!」
 中指を立てんばかりの勢いに先を行く3人が苦笑している気がするがそんなことはどうでもよい。
 サムライエンパイアとは別の近未来の科学が発展した世界から来たネリネ・リード(赤・f20899)にとってこの地は知っているようで知らない別世界、しかも自分の知りうる常識とは全く違う歴史を辿っているとなれば愚痴の一つも出てくるというものだ。  

 目的地は滝の傍と言うことで樹海を流れる川をいくつか見つけ上流へと遡っていくとそこで赤毛の少女と出会う事ができた。
「あぁ、やはりここを昇ってきたのは正解でしたか、わかりやすいのはいいことですね」
 露出の高い衣装を纏うニコル・ピアース(蛮鬼・f06009)がニッと屈託の無い笑顔を向け川の上流へと耳を傾けるとまだ遥か遠くではあるが木を砕く音が聞こえてきた。
 ここで全員が確信する、目的のオブリビオンはこの先にいるのだと。


●喧嘩屋はどこまでも脳筋で
 木々に囲まれた樹海は唐突に途切れそこは一段高い岩山から滝が降り注ぐ開けた場所だった。
 正確にはどう見ても瓦礫の山にしか見えない儀式の為の祭壇を作る為に木をへし折り続け地形が変わってしまったというのが正確なのだが。
 だがそれでもこの場所で儀式をすることに意味があるのだろう。おそらくはこの地下を龍脈が通っておりそれらを儀式により刺激することで霊峰富士を噴火させるなどという巫山戯た真似が可能なのだろうが。

「ああん? 何だ手前らァ」
 小高い山のように積み上げられたゴミ……ではなく材木の頂上近くに腰掛けた羅刹の男が現れた猟兵達を見下ろし値踏みするように一人一人に視線を送る。
「さあ、発見したからにはもう儀式は終わりです!」
 正面から相手を指差し声高々に宣言したニコルに"喧嘩屋”は退屈そうだった表情を一気に楽しげに変化させ立ち上がった。
「応!、なんでえ同族かお前も喧嘩好きそうな身体してるじゃねえか。儀式を止めてぇのか?」
「喧嘩屋さんかぁ、派手好きなのはわかるけど噴火なんてはた迷惑なことはさせないっ!」
 喧嘩屋の挑発に対しニコルが口を開く前にシルが横から割り込み啖呵を切っていた。
「そーだそーだ! そこのお前! ノッブ軍のヤツだなっ! 勝負だ!」
 矢継ぎ早にシルと共に捲くし立てる涼鈴の言葉を聞き心底嬉しそうに喧嘩屋は足元の材木を一つ蹴り飛ばした。
 転がり落ちてきた材木は猟兵達の元へと転がり落ちてくるがそれはネリネの赤熱化した義肢から繰り出される一撃、いや二撃で宙を舞い遥か後方へと吹き飛ばされた。
 圧縮空気で打ち出されたシリンダーが再び収納されいく。
「……とんだ挨拶だな。さっきからウルセエと思ったら今度は木こりがトチ狂ってドミノ倒しでも始めたって、か……」
 心底嫌そうな表情を浮かべながらネリネはファイティングポーズをとった。

「ハッ、この程度で死んじまう奴相手に喧嘩なんて出来るかよ! 俺が戦いたいのはよぉ、もっと熱い戦いだってんだ!」
 喧嘩屋が歓喜に震えつつ一歩一歩ノシノシと瓦礫の山を降りてくる。
 久しぶりに骨のある奴と”拳”で喧嘩できるという喜びもあるのかもしれない。
 普段は光刃剣を使うシルも今回はあえて相手に付き合うため素手でカ構えをとっているのもその一因を担っている。
(斧と槍を構えているニコルは喧嘩屋基準で薄いビキニアーマーしているのでプラマイゼロ扱いらしい)

 だがここで忘れてはならないのが、二刀を持って戦うが常のガイの姿が無い事。
 それは何故なのか、それは後ほど判明するのだが……。

「んじゃ、ヤろうぜ。喧嘩。アンタがどーかは知らねーけどさ」
 ネリネが構えた拳の片方の指を動かし早くかかってこいと挑発を加える。
(ブン殴るくらいしか能がねーからよ、アタシは!)

「上等っ!!」
 喧嘩屋が一気に跳び4人の中央へと飛び降りオブリビオンとの戦いの口火が切られた。

「おりゃああ!」
「なんのっ!!」
 喧嘩屋の怒涛の拳打が打ち込まれそれを腕でガードしたネリネが10m以上後ろへと拳圧だけで押されてしまった。
 喧嘩魂の乗った拳にニヤリと笑い返しノーダメージだとアピールして見せる。
 それを嬉しそうに口元を歪めた喧嘩屋に脇からわざわざ正面に横入りしドラゴンランスを思い切り振り回したニコルが猛攻を仕掛けた。
「これ、でも、くらえ!」
「ちっ、今度は赤毛の姉ちゃんかよ!!」
 『羅刹旋風』により威力を増した槍による連続突きを拳でいなし捌ききる喧嘩屋。
 激しい攻防は集中をせねば全てを捌くなど不可能だろう。
 だがそこにシルが死角よりスライディングで足元に滑り込み足首を絡め引っ掛ける。
「小さいからって油断してると……足元すくわれるよ?」
 思わずステップが乱れ正面からの槍の連打をいくつも貰ってしまい喧嘩屋の上半身から血飛沫が飛んだ。
 シルの体格では正面から行っても力負けすると霍乱と援護に徹している、これにはさすがの喧嘩屋も一本取られたというところだ。
「ちっこい嬢ちゃんもなかなかやるようだな、だが俺は負けねえ!!」
 強烈な震脚で地面を踏み締めるとその衝撃と瓦礫と共にシルの小柄な身体は少し離れた場所まで吹き飛ばされてしまった。
 さらに喧嘩屋の肉体に変化が現れる。
 全身の筋肉に血管が浮き肥大化した身体がより強力な殺気を放つ。
 先ほど血飛沫が飛んだ切り傷からの出血が止まり拳を構え直した。
 これこそがこの男の真の姿なのだろう、三人の連携に思わずこの形態へとなるしかなかったのかもしれない。
 だがそんな事は関係なく真横から軽やかなステップで踏み込みしゃがんだ姿勢からバネのように涼鈴の小柄な身体が懐へと潜り込む。
(武器は使わない! 空も飛ばない! 拳と蹴りで……)
「勝負だ!」
「うおっ、どこから来やがった!?」
 『神獣変化』による真っ赤なオーラを身に纏い身体能力そのものが増強された涼鈴のアッパーカットは外見からは想像が出来ない威力を誇り……ズンッと重い音を立て喧嘩屋の巨体が宙に浮いた。
「いっけぇぇぇぇぇぇっ!!」
 勢い余り上側まで飛び出した涼鈴のチャイナドレスから覗く白い美脚が振り上げられ踵落しとなり喧嘩屋の脳天を襲う。
 咄嗟に両腕で頭をガードするが怪力を誇る可憐な踵落しの前には今度は地面へと叩きつけられるしかない。
 中腰で踏ん張った所へ開幕で吹き飛ばされた所から勢いをつけストレートを打ち込んでくるネリネの拳が腹筋へと突き刺さる。
 ……だがそれでもこの喧嘩屋は倒れない、急速な治癒能力がそれを許さないのだ。

 その時だ、瓦礫の山という名の祭壇の上で物音がしたのは。
 剣閃の音と共に鳴き声をあげたのは縛られ生贄にされるのを待つのみだった小さな竜のもので。
「ちょいとばかりこっちがお留守だったもんでな?」
 妖刀ヴァジュラと炎刀『鬼刃丸』を構えなく自然体で持ったガイが飛び去っていく小さな竜を見上げニヤリと笑う。
「おいおいおいおい、めんどくせぇ……後で探しに行かなきゃなんねじゃねえか!」
 喧嘩屋が吼えるがそれを無視しガイが愛刀を眼下の敵へと向ける。
「気にするな、どうせすぐに死ぬんだからよ」
「なっ、手前ェ」
 材木を蹴り飛ばすとそれは雪崩のように崩れ喧嘩屋へと転がっていく。
 砂煙が上がり瓦礫に埋まったかに見えたが、それはすぐに内側から弾き飛ばされ喧嘩屋が怒りに燃えて姿を現す。
 さすがい無傷というわけにいかず消耗しているのは目にとれるが未だに戦闘力は健在らしい。
 そして怒りに任せガイの下へと駆け始め拳を思い切り繰り出した。
 折れてしまうのでは?と思えるほどの一撃を二刀で受け切りその勢いを殺す。
 オーラで刀自身をガードしていなければ今頃は折れていたかもしれないほどの威力だったのだが、それは杞憂に過ぎなかったらしい。
「クソッ、手間増やしやがって!」
 右左右右、次々と撃ちこまれるストレートを状態を逸らし避け続けるガイ。
 冷静な時はともかく今の単調になりがちな喧嘩屋の拳は見切るのもたやすいようだった。
 そしてそれは隙だらけの身体を狙ってくれと言っているようなもの、二刀で薙ぎ払い喧嘩屋の巨体を弾き飛ばし間合いを刀のものにするとさらに猛攻は続けられた。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ…」
 精霊へと祈る詠唱が背後から聞こえる、そしてそれを止める手段は今の喧嘩屋にはない。
「……我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!! 
 とっておきの精霊電磁砲までも展開したエレメンタル・ファランクスの四大元素の魔力が喧嘩屋の背中へと突き刺さる。
「くっそ、まだまだァ!!」
 それすらも耐えてみせた喧嘩屋の視界の隅に奇妙な物が映る。
 3m近くもあるような空中に浮く巨大な腕がその中央にいるネリネと同じ動きをトレースするかのように振りかぶられそして……。
「立ち塞がるなら打ち砕く…っ!!」
 ……破砕の剛腕が振り下ろされた!
「何なんだこりゃあ……」
 あまりの重みに片膝をついた喧嘩屋。
 だがそこに助走をつけ追い討ちをかけるべく涼鈴が駆ける。
「それはそれとしておにぎり美味しそうだね具はなに? 私は昆布が好きー♪」
「銀・シャ・リに・きま・てるだろうがーっ!!」
 このタイミングで聞くのかよと思わずヤケになり無造作に繰り出した拳、だがそこは涼鈴にとっては一か八かの賭けをする所。
 拳に対して放ったのは特攻ともいえる頭突き……。
 グシャリ……鈍い音がして喧嘩屋の拳が砕けた。
 さらに瓦礫から一度距離を取っていたニコルが再び間合いへと飛び込んだ。
「あはは、やっぱこっちじゃないとダメですね」
 槍を投げ捨てると天高く振り上げた斧を存分に振り回し力任せの一閃が喧嘩屋に真上から襲い掛かり……羅刹の豪腕が一本、宙を舞うのだった。
 利き腕の拳は砕かれもう片方の腕は切り飛ばされ出血も激しい、だがそれでも羅刹の目には負けを認める光などありはしない。
 砕けた拳を構え今正面で刀を逆手に構えたガイへの闘気に衰えなどは感じられない。
 一方のガイも愛刀での攻撃ではらちが明かないと勝負に出るつもりのようだった。
 互いの呼吸がシンクロし高まる集中力、瓦礫が一つ崩れた音が沈黙を破った。
 喧嘩屋の砕けた拳が逆手で持つ刃を捕らえ弾き飛ばすが折れるには至らない、それもそのはず刀はただ手を添えていただけ。
 衝撃を受ければただ後ろへ弾き飛ばされるのみ。
 
「吠えろ紅蓮の竜よ!!これが!俺の、魂の一撃だぁぁ!!」
 灼熱の炎に包まれた拳こそがガイの本命、腰を入れたその一撃は喧嘩屋の胸板を貫きそして背中へと貫通していた。

「へっ……何でぇ……いい拳持ってんじゃねえか……」
 血を吐きながら喧嘩屋は前に倒れこみ地面へと音を立て伏しる。
 それがこの地で儀式を(本人的には真面目に)行おうとしていた男の最期だった。



 侵略渡来人『コルテス』の労した策の一つはここで阻止することができた。
 他の場所でも恐らくは死闘が繰り広げられているだろう、だが猟兵達が力を結集し戦う限り未来は決して暗いままではないのだ。

 霊峰富士を巡る一つの戦いは終りを告げた。
 エンパイアウォーにおける次の戦場はどこになるだろうか?
 ……平和への行程はまだ道半ばという所だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日


挿絵イラスト