25
花色ナイトライト・タイド

#アックス&ウィザーズ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ


0




●花憶う洞窟
 その風穴は、少し変わった成分を持つ石壁で形成されていた。
 一見して特別なものには見えない灰白色の壁面は、光で照らすとごく微かに遊色を示す。けれどそれも大きく目立った特徴という訳でもなく、目を凝らして漸くそうと知れるほどのもの。
 洞内にも目立った見所はない。通り抜ける湿った風に連想するとおり、見えざる水の流れの音がさらさらと響く不思議はあるけれど。手許に灯りを用意して道行けば、子どもめいた冒険気分が味わえる程度のもの。
 ――けれど、風とともに長いトンネルを抜けて辿り着くのは、まさに別天地。
 岩の断崖にぐるりと囲まれた巨大な空間。もしかしたら遠い昔に、岩天井ががらがらと崩れ落ちることがあったのかもしれない。そう思わせるほど唐突に、ぽかりと空へ口を開けた、円筒情の大穴。
 断崖の地質は無論、洞窟と同じもの。そして、崖の含む成分と沁み出る水と、空のひかり。その三つが反応することで、不思議な鉱石をなすのだという。
 名を、フィオライト。花の記憶を宿す石、と呼ばれるそうだ。
 崖の壁面に瘤のように作られたガラス玉ほどの白い結晶で、ある程度まで育つと自重で剥がれ、その場所一帯を満たす清らかな地下水溜まりに落ちていく。
 その底で、光るのだ。
 黄色に桃色、橙色に藍色。あのささやかな遊色を絞り出すかのように淡く、優しく。
 それが、湧き出でて柔らかく流れる水のゆらぎに乱反射して、花のようなひかりを作り出すのだという。
 陽の高いうちは見えないから、人々は夜に訪れる。湧水溜まりを見下ろす空が、一面の星に染まる夏の夜。
 ゆるやかな流れに遊ぶ人々を、咲き乱れる美しい色が照らし出す。

 ――その洞窟の異変が噂になったのは、いつの頃からか。
 夏なおひんやりと涼しい洞窟から、零れ出る冷気の質が変わった。そればかりか、その奥からは雷鳴も聴こえるようだと。
 凍り付いた入り口を見れば、人々の足は恐れに自然と遠のいた。
 けれど本心は――もちろん。

●光の花畑に游ぐ
「――今年も、来年も。これからずっと、そこを訪ねて行きたいと思っていらっしゃるのです。ですから、洞窟に棲みついた災魔を退治しに行きましょう!」
 自分は見送ることしかできないけれどと、ジナ・ラクスパー(空色・f13458)が眉を下げたのは一瞬のこと。ひととき曇った金色の瞳は一転、きらりと輝いて、予知に視た光景を語り出す。
 洞窟を凍りつかせているものは、ブリザード――別名を氷トカゲと呼ばれる災魔たちの群れ。トカゲと少女のキマイラとでも言うべき姿をしているが、外敵と見做したものを氷の吐息で殺す、獰猛なオブリビオンだ。
 そして、彼女たちが人払いをした洞窟の奥を陣取って、共生するものがいる。青から白へと美しく移りゆく星のような、翼のようなひれを戦がせ空中を泳ぎ回るのは、青き竜、青き天使の異名を持つもの。――雷電を纏った、大きなアオミノウミウシだ。
「洞窟の中に散開しているブリザードたちを倒さない限り、先へ進むことはできないのです。共生するものたちの気配が消えれば、アオミノウミウシは洞窟の出口付近に現れるはずです」
 本来は人の指先ほどの、海に棲む小さな生きものだ。しかし淡水、陸上どころか空を泳ぐことにまで適応し、5メートルもの巨躯をくねらせ雷撃を放つオブリビオンを、野放しにはしておけない。
「骸の海にしっかり還して、光の花畑を楽しみにしている皆様に取り戻してあげて欲しいのです。もちろん、終わった後には皆様も楽しんできてくださいませね」
 討伐が済んだ頃には星空が見えるはずと、ジナはにっこり笑ってみせた。
 広々とした湧水溜まりは、冷たく澄んだ水に満たされた天然のプール。深さは子どもの足がつく程度から、大人の肩のあたりまでとまちまちだ。
 崖に残ったフィオライト鉱石に触れることは禁じられているが、水底に落ちたものに限っては持ち帰ることも許されているそうだ。水から上げれば光を失うが、淡水に浸ければまた光り出すので、夜灯りの代わりに瓶に籠めて持ち歩く人もあるらしい。
「皆様もきっと、涼しくて楽しい夜を過ごせるはずです! さあ、準備はよろしいですか? 皆様にご武運がありますように」
 伸ばされた手をとれば、グリモアの青い光に辺りが染まる。
 行き先は凍れる洞窟。冷ややかな戦いが、猟兵たちを待っている。


五月町
 五月町です。
 戦争で忙しい昨今ですが、他の世界にも事件は起きます。アックス&ウィザードの災魔を倒して、夜の水遊びを楽しみましょう。
 お目に留まりましたらよろしくお願いします。

●プレイング受付について
 各章に冒頭部の追加を予定しています。
 1章のプレイング受付は6日朝8:30からです。それ以前にプレイングを送信いただいても採用できませんので、ご注意ください。
 2章以降の受付開始と終了については、マスターページ及びTwitter(@satsuki_tw6)でお報せします。お手数ですが、プレイング送信前に締切のお報せがないかの確認をお願いします。

●第1章:集団戦『ブリザード』
 氷を操る敵群との戦いです。
 洞窟入り口までジナが皆様を転送します。洞窟内部は湧水溜まりまでほぼ一本道ですが、いくつか小さな横道があり、敵はあちこちに散開しています。
 さくさく進行予定。プレイング締切は早めとなる予定です、ご注意ください。

●第2章:ボス戦『浮遊するアトランティクス』
 雷を操るボスとの戦いです。
 洞窟出口付近に出現します。皆様が自由に動き回れる程度の広さはあります。
 さくさく進行予定。プレイング締切は早めとなる予定です、ご注意ください。

●第3章:日常『飛沫煌めく水面』
 フィオライト鉱石の沈む広大な湧水溜まりで水遊びができます。詳細は冒頭追加をお待ちください。
 3章からは水着でどうぞ。着替えの場所は確保できるので、プレイングで触れる必要はありません。
 この賞のみ、お呼びがあればジナがご一緒します。苦手の泳ぎを克服する気満々です。
 3章は最初に送信いただいたプレイングの失効直前までは受け付けたいと思っています。(※描写確約という意味ではありません!)

●その他注意
 お連れ様がいらっしゃる場合は、名前/ID、もしくはグループ名の記載をお願いします。グループ参加のおすすめは2〜3名様です。5名様くらいまではなんとか頑張りたい気持ちですが、全体の参加人数が増えた場合にはプレイング不採用となりやすいです。
 また、プレイングの送信日時(切り替わるタイミングは朝8:30です)を合わせて頂けるようご協力をお願いします。

 それでは、どなたにも好い道行きを。
180




第1章 集団戦 『ブリザード』

POW   :    ブリザードクロー
【周囲の気温】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【ダイヤモンドダストを放つ超硬質の氷爪】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブリザードブレス
【レベル×5本の氷柱を伴う吹雪のブレス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を氷漬けにして】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    人質策
【氷漬けにした被害者】と共に、同じ世界にいる任意の味方の元に出現(テレポート)する。

イラスト:sy

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夏に背くもの
 ――暑い、と。
 その娘たちが思ったかどうかはわからない。けれどあまりに容赦なく氷漬けにされた入り口を見れば、苛烈な意志を以てこの洞窟を氷に鎖したことは明らかだった。
 近づくだけで漂ってくる冷気が、夕暮れ時の陽射しに火照った体に心地好く感じられたのは一瞬のこと。いざ洞窟に入り込めば、垂れ下がるのは鍾乳石ではなく、青白い氷柱。辺り一面氷に染まり、時を半年遡ったかのようだ。
 この冷気の中、夏の装いで長居をすれば、いかに強靭な猟兵といえど風邪をひいてしまうだろう。普通の人間ならひとたまりもない。
 目障りな訪問者の気配に、暗闇に輝く眼が浮かび上がる。尾をぱたり、ぱたりと地に叩きつけるのは、彼女たちの不快の合図。
 氷トカゲ――ブリザード。見た目よりも獰猛な彼女たちを倒しきることができたなら、彼女たちの吐息が帯びる魔力で形成された氷は、すぐに解けて消えるはずだ。
 猟兵たちは頷き合い、素早く散開した。あちらこちらに散らばる気配に相対するために。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

ううっ、さむ……
ヨハンは大丈夫?
寒さに負けそうなら、抱き着いてみようか?
なんて冗談を交え
――!
ヨハン、お願い
凍えないように、私もあたためてくれる……?
ぎゅっと抱きしめ返す
なんてあたたかいんだろう
彼も同じだったらいいな

……早く氷を溶かさないとね
さ、行くよ!

集団戦に長けているのはヨハンの方
彼が魔術に集中できるように
私はサポートを中心に動こう

複数の敵をなるべく一箇所に集めることを意識して
追い込むように三叉槍で【なぎ払い】
ブレスの前兆が確認できたら口内を狙ってダガー【投擲】
うまく阻害できたらいいな

いつも背中を押してもらってばっかりだから
たまには逆の立場になるのも悪くないでしょ?


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497と

確かに寒いですね
眠ってしまったら耳を引っ張って起こしてあげますよ
安心してください

冗談の言葉に、いつもなら軽くあしらうところだが
それじゃああたためてくださいと引き寄せ
……手が冷たいですね
槍が握れなくなるんじゃないですか
少しの間だけあたためてから
ええ、行きましょうか

この後はきっと彼女に動いてもらう事になりますし
ここは任されましょう

『焔喚紅』から黒炎を<呪詛>と<全力魔法>で火力を高めて爆ぜさせる
彼女の追い込みと合わせるように炎で囲み焼き尽くす
阻害の効かなかったブレスは纏めて炎に呑ませよう
逃がす気もないので……怨嗟の中に沈ませる

たまにはね
頼もしい相方がいるのは悪くないですよ



●共に在る熱
 外は熱満ちる夕暮れ時――洞窟へ一歩踏み込めば、氷の世界。
「ヨハンは大丈夫? 寒さに負けそうなら、抱きついてみようか?」
 オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)が首傾げ笑ったのは、いつもどおりに軽くあしらわれると思っていたからだった。それなのに、
「それじゃあ、あたためてください」
「――!」
 戯れに伸ばした腕を引き寄せられて、オルハは目を丸くする。あまりの寒さに身に巻きつけていた尻尾が、驚きに膨らんだ。
 長い一瞬、オルハから熱を預かったヨハン・グレイン(闇揺・f05367)の耳に、おずおずと自分を呼ぶ少女の声が届く。
「ヨハン、お願い。凍えないように、私もあたためてくれる……?」
 腕を解きそっと手を取れば、手袋越しでも分かる指先の温度にゆっくり瞬いて、
「……手が冷たいですね。槍が握れなくなるんじゃないですか」
 貰った熱を触れた一点で分かつように握り返せば、温もりがじわりと戻ってくる。
 この寒さだから、少しでも長くこうしていたいのに――暗闇の中、暗く輝く視線を感じて、オルハはふるっと首を振った。
 もう大丈夫。彼の温もりが、オルハの心に優しく燈っている。
「……早く氷を溶かさないとね。さ、行くよ!」
「ええ、行きましょうか」
 不粋な敵意に三叉の槍を突きつけた彼女は溌剌として、いつも通りの明朗さを取り戻している。表情の変わらぬヨハンの口許に、安堵が白く煙った。
「――見切れるなんて、思わないでくれる?」
 身を寄せ合う二体、少し離れて一体。オルハは迷わず、威嚇する一体へ。身を刺す凍て風も味方につけ、速度を増して振り払う愛槍『ウェイカトリアイナ』は、離れた一体を二体のもとへ薙ぎ飛ばす。
「ヨハン!」
「ええ。ここは任されましょう」
 この先に待つものとの戦いでは、個を相手取るに優れた彼女の活躍が必要だろうから。知らず向けた信頼を、同じ形でオルハも返してくる。――蔓延る多くを一掃するには、ヨハンの力が不可欠だと。
 三体の群れとなったブリザードたちが口を開く。氷柱のように鋭く並ぶ牙の奥から、強かな冷気の束が溢れ出る前に、ヨハンは紅の結晶輝く指を向けた。鎖された炎が忌むべき力に導かれて黒に染まり、群れへと迫る。
「纏めて炎に呑ませましょう。……逃がしはしません」
 ――ドォン! ブリザードたちを巻き込み爆ぜた熱の塊から、反撃の氷柱が飛び出してくる。素早く跳び退いたオルハのダガーが、煙る黒炎の中に僅かに息繋ぎ、次のブレスを紡ごうとするものを指し示す。
「させない。掻き消してあげる!」
 その喉を貫き止める飛具。耐える呼吸によしっ、と力強く頷いて、少女はヨハンの視線に目を細めてみせた。
 いつもは背を押してもらうばかりだから、
「たまには逆の立場になるのも悪くないでしょ?」
「――たまにはね」
 感情に乏しい唇が僅かに綻んだ、ような気がした。護り助けるのは、できれば自分でありたいけれど、
「頼もしい相方がいるのは悪くないですよ」
 気のない言葉に宿る温度を、オルハはちゃんと知っている。満ち足りた笑顔が、洞窟の温度を僅かに上げたようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

これは凍えそうだな…
…セリオス、何で僕のマントを握ってるんだい…?

縄張りを脅かす者が現れたと気づいたら、向こうから出て来るのではないかな
周囲の氷を溶かすように『炎属性』の魔力で気温を上げて『おびき寄せ』てみよう
…って、熱!?
セリオス、ちょっと待て!と慌てて止める
はあ…加減なら僕に合わせてくれ
指示通りにできたら褒めるように軽く撫でる
うん、よく出来ました

ここからが本番だね
【天誓の暁星】で守護する意志を力に
僕へと引き付けるように炎の『衝撃波』で『先制攻撃』
敵が氷爪を作り出したら
盾に『氷結耐性』と炎を纏わせて炎の盾を作り出し、攻撃を受け止める
今だ、セリオス!

ああ。君を守ってみせよう


セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
うわっ寒っ!
アレスのマントを握って暖を取ろうとし
え、だって暖かいし

なるほど、炎なら任せろ
アレスと一緒に意気揚々と【青星の盟約】を歌い
攻撃力重視で『炎属性』の魔力を『全力』で巡らせて
…なんだよアレス?
せっかくいいとこなのに
合わせろと言われ渋々と
撫でられご機嫌なドヤ顔で
ふふんざっとこんなもんだ

おっ敵さんのお出ましだ
敵の攻撃を受けるアレスの後ろで靴に風の魔力を送り『力溜め』
合図と共にアレスも敵も飛び越えて
『ジャンプ』で一気に背後を取る
着地と同時に炎の魔力を纏わせた剣を跳ね上げ
今度は火力に文句言うなよアレス!
楽し気に吠えて『全力』で
さらにもう一度斬る

さあすぐ次が来るぞ、アレス構えろよ



「うわっ寒っ!」
「ああ、これは凍えそうだな……、? セリオス?」
 くん、とマントの引かれる気配に、幼馴染を護ろうと一歩先行くアレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)の足が止まる。どうして、と問いかける眼差しに、その端を握り締め身を寄せたセリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)は、当然のことを訊かれたかのようにきょとんと瞬いた。
「え、だって暖かいし」
 困ったように――けれどそれが決して嫌ではないのだと、伝わるように微笑んで。アレクシスはそっとセリオスのマントの左右を掻き合わせてやる。それと同時、不意にふわりと熱をもった空気に青い瞳が瞠られれば、含めるように説いてやる。
「この寒さを齎したのが敵だというのなら、縄張りを脅かす者が現れたと気づいたら、向こうから出て来るのではないかな」
 炎の属性を帯びた魔力は決して苛烈なものではないけれど、優しくて穏やかで――まるで騎士たる青年の眼差しのようだ。
「なるほど、炎なら任せろ」
 星々を天に抱かぬ舞台でも、セリオスの歌は揺らがない。そっと囀り始めた歌声は、光なき闇に星飾るように、きらきらと場の空気を塗り替えていく。次第に熱を帯び反響するそれが、壁面を鎖す氷を広く溶かしてゆくのを、アレクシスは眩しげに見守って――、
「……って、熱!? セリオス、ちょっと待て!」
「! なんだよ、せっかくいいとこなのに」
 ここからが盛り上がるんだぞ、と唇尖らせる青年の腕を掴み、はあ、と溜息をつく。――満ちる熱は氷を溶かすだけでは足りず、露わになった壁を焦がすかのところまで高まっていた。
「……加減なら僕に合わせてくれ」
「えー」
 しょーがねぇなあ、と興を削がれつつ、こほんと一息。今度は囁くようにゆるやかに、静かに広がっていく音の波。これでいいんだろ、と向けた不満げな視線に、騎士は柔らかな笑みを浮かべる。――よく出来ました。
 撫でる指先の心地好さに、歌声が喜色を帯びる。少し本気を出せば、ざっとこんなもんだ――と、誇らしく。
「ん? おっ、敵さんのお出ましだ」
「ああ」
 熱を厭う視線。暗闇に光る眼が示す明確な敵意に、アレクシスは『赤星』へ手を伸ばす。
 己の心に在る剣に、腰に佩いた白銀の剣に。騎士がかたく守護を誓えば、その思いを支えるべく暁星の加護がその身に下りる。
「さあ、ここからが本番だね。君達を脅かす熱は、僕のものだ」
 ブリザードたちに見せつけるよう、赤々と炎の気配を燃やして解き放つ衝撃波。駆け抜ける熱のいろが暗い洞窟を照らし出せば、灼かれたトカゲたちの眼が憎々しげに煌めいた。
 振り翳す爪に冷気が輝き、美しい氷の凶器をたちどころに育て上げる。速く、鋭い。肌まで届けば浅くは済まないだろうトカゲたちの一閃の前へ、アレクシスは臆せずに身を投げ出した。
「貫けるものなら、貫いてみるがいい! ――今だ、セリオス!」
 騎士の覚悟を映す盾に敵群を押し留め、護り手は叫ぶ。
 セリオスの足許で風が爆ぜた。高く跳んだ姿は頭上の闇に溶け、見失ったブリザードたちが視線を迷わせる。その背後に、風の助けを借りて音もなく降り立った青年は低く剣を構えた。一瞬に籠める、炎の熱。
「――今度は火力に文句言うなよ、アレス!」
 紅に染まる一閃が暗闇を染めた。冷たきものたちを斬り上げた剣が、流星のように翻り、もう一閃を地に向かい叩きつける。
 またひとつ熱を増した空間を冷気で正すべく、近づいてくる幾つもの気配。
「さあすぐ次が来るぞ、アレス構えろよ!」
「ああ、終わるまで耐えるよ。君を守ってみせよう」
 愉しげに咆える友を背に、騎士は盾持つ手に魔力を巡らせた。
 二度と目を離しはすまいと誓ったのだ。――セリオスに害をなすそれが、どんなささやかなものであるとしても。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
水中に揺れる瓶詰の灯。
最初に興味を惹いたのはそれで。
けれど何より。
少し戦場を共にしただけだけれど、直向きで真っ直ぐなあの子が
『取り戻してあげて欲しい』と言ったから、

んー。おじさん、俄然やる気かも?

散開との事ですし。
行く方が少ない道へと参りましょう。
散弾みたいに、一気にね。

トリニティ・エンハンスは炎の魔力、防御力へと換えて。
ブリザードへは外した外套を盾代わりに、一気に接近を。
一張羅、君の犠牲は無駄にはしない…!
振るう爪こそ超硬質なら、狙うはそれに連なる手、腕。
足技が来ないよう警戒だけはしつつ、巻いて引き斬る2回攻撃狙い。
力及ばぬなら、せめて誰かの為の隙作り。

お嬢さん。ここは寒くて、淋しいですよ?


連・希夜
(ブリザードを見て)あ、可愛い…とか言ってる場合じゃなくって
君らを此処に住みつかせておく訳にはいかないんだ
悪いけど(とは、オブリビオンだから思わないけど)さくさく骸の海へご帰還下サイ

ガジェットを模した【エレクトロギオン】召喚
横道という横道へ「いってこーい!」と放つ
倒せるとは思ってない、けど、敵を焙り出せたら良い
出て来たブリザードへは、黒羊ならぬガジェットに炎の属性を纏わせて攻撃
かわいいけど、今日のこの子は熱いよ?
(元がプログラムの身として涼しいのは大歓迎だけど、『人』として寒いのは困るという狭間でテンション高め)

周囲の猟兵さん達と連携重視
一人じゃ倒せないのも皆となら…というか助力をお願いします



●並び立つ在り方
「……クロトさん?」
 前方へ展開したモニターの光が照らし出したのは、見慣れた後ろ姿だった。なんで、と分かりやすくも直截的な連・希夜(いつかみたゆめ・f10190)の問いに、なんでってお仕事でしょう、とクロト・ラトキエ(TTX・f00472)は笑む。
「少しばかり興味を惹かれまして。水中に揺れる瓶詰の灯、というのにね。それと――直向きな若者の心情に触れたものですから」
 『取り戻してあげて欲しい』と。戦場を共にしたというささやかな縁を持つ、真っ直ぐな子が言ったのだ。
「おじさん、俄然やる気かも? という訳です」
「ふーん?」
 にこり笑った視線に、あ、それどういう意味でしょうなどと戯れかければ、あ、と希夜の眼差しが止まる。
「トカゲってあれ? ――あ、可愛い」
「わあ、希夜はああいうのがお好みでしたかぁ……」
 そこまでは言ってない、と一蹴し。消したモニターの光を指先ひとつで集め、解き放つ。
「クロトさんはあれ、よろしくね。いってこーい!」
 一度は粒子にまで分解されたそれが文字を紡ぎ、文字が形を紡いで、形作られたのはエレクトロレギオンたち。たった今刻み込まれたばかりのプログラムに従って横道へ飛び込んでいったそれらが、ブリザードの仲間たちを突つき出してくる――それまでに。
「なるほど、妙案です。ではあれは任されましたよ、と」
 理解したクロトは、飛び込んでくる『可愛い子』の前へ、炎の魔力纏ったその身で飛び込んでいく。
 氷の攻撃に護り高めるならば、炎。そして、向かい来る冷ややかな爪を受け止めるのは、美しい仕立てに流行もしっかり踏まえた自慢の外套。
 価値ある犠牲に凶器が絡め取られているうちに、氷爪よりは柔いと踏んだ両腕を鋼糸で伐り落とす。
「ええ、ええ、存じてます。ご自慢の爪は手だけではありませんよね!」
 気も強く、警戒通りに蹴り裂きに来る足を長い脚で掬い上げ、危ない蹴爪も黒の外套の内に。走る鋼の糸がもう二つ、引き斬りにした爪を辺りに転がしたとき、新手のブリザードたちが横道からまろび出た。
 ――その前にぼよんと飛び込んでいく、まんまるの黒羊。
「君らを此処に住みつかせておく訳にはいかないんだ。悪いけど」
 紡いだ言葉よりは思いは軽く。希夜の渾身のサーブが黒羊――こと羊型ガジェットに炎を纏わせ、どかん、ずがん、とトカゲ達を撃ち倒していく。
「……結構容赦ありませんねぇ希夜」
「その言葉、そのままお返しするよ。――ほらほら、かわいいけど、今日のこの子は熱いよ?」
 プログラムから生まれた『からだ』故、涼しさは大歓迎ではあるけれど。四季に目を細め心躍らせる『人』としては、この場所が冬に留まり続けては困るのだ。
 燃えるサーブが撃ちそこねた敵に小さく、けれど愉しげに舌打ちすれば、怒り狂って希夜に飛び掛かる敵の腕を、
「お嬢さん、ここは寒くて、淋しいですよ?」
 ボロ布――としか見えないものが抱き取り、自在にかたちを変える糸で引き斬っていく。
「わあ、上着ボロボロ」
「こうなったら自棄です。一張羅、君の犠牲は無駄にはしない……!」
 くっと涙を飲んだ分、切れ味を増してゆくクロトの斬撃に、希夜も笑う。
「あはは、上着の仇討ちだね」
 行ってらっしゃいと送り出した黒羊は、ぼむん、とひときわ力強く跳ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

この向こうに光の花畑があるらしいですよ
水遊びも出来るみたいですし、楽しみですね
…まあ、話に聞いた通りめっちゃ寒いし凍ってるけど
あれを倒したら本当に元に戻るのかな…?
お気遣いありがとうございます
でも俺はこの通り、色々もふもふしてるので大丈夫です
ラナさんこそ、風邪を引かないようにして下さいね
きっと、想像もつかないような綺麗な風景が待っていることですし
今回も頑張りましょう

攻撃は願い星の憧憬で、一体ずつ確実に
ラナさんに攻撃が向くようであれば庇いつつ
ラナさんの炎があれば、少しは寒くなくなるかな…?
何にせよ、ここはオブリビオンが塒にしていいような場所じゃないんで
返してもらいますよ


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

はあ…息が白いですね
寒いって聞いてはいたけど、ここまでだとは思っていなかったです
蒼汰さん、風邪を引かないように気をつけて下さいね?
ふふ、本当
いつでもふわふわで、夏は大変そうだけど今は心地良さそうですね
はい、風邪を引く前に終わらせましょうね
光るお花畑はどんな景色なんでしょう?
楽しみにしている人の為に、頑張りましょうね!

ウィザード・ミサイルで攻撃を
蒼汰さんと協力をして、敵を狙います
辺りの氷も一緒に、溶かせるかな
そうしたら、少しは寒いのも和らぐかも

皆さんの大切な場所です
居心地が良いのかもしれませんけど…返して下さいね
水の中で煌く石…
どんな景色なのか、私も楽しみですから



「この向こうに光の花畑があるらしいですよ」
 耳を澄ませば洞内に響き渡る、ささやかな流れの音。地下を通り過ぎる間に濾過され、澄み渡る水の辿り着く場所。その漣の下に花開くという光を思って、月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)は目を細め――細め、
「……まあ、話に聞いた通りめっちゃ寒いし凍ってるけど」
 心許なさそうにぐるり、進路に視線を渡す。
 洞窟を満たす冷気と氷。コンコン、と無造作にノックした氷の壁の分厚さに、思わず首を傾げたくなる。本当にすぐ元に戻せるのだろうか。
 はあっ、とふと吐息が煙った。傍らには、合わせた指先が冷たいのか、幾度となく――けれどどこか楽しげに息を吹きかけるラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)。視線に気づき、花のように綻んだ。
「息が白いですね。寒いって聞いてはいたけど、ここまでだとは思っていなかったです。……蒼汰さん、風邪を引かないように気をつけて下さいね?」
「お気遣いありがとうございます。でも俺はこの通り、色々もふもふしてるので」
 蒼汰は頼もしく笑ってみせる。ひと振り揺れた尻尾と翼と、片腕で示されたガッツポーズに、ラナはまたくすりと笑う。
「ふふ、本当。いつでもふわふわで、今は心地良さそうですね」
 寧ろ大変なのは洞窟の外の方――元気な夏の陽射しの下なのかもしれない。向かった先に満ちる涼やかな水が、少し楽にしてくれるだろうかと想い馳せるラナに、労りが返る。
「ラナさんこそ、風邪を引かないようにして下さいね。体を冷やさないようにしないと」
 纏い重ねた彩りこそ暖かではあるけれど、華奢な体が凍えてはいないかと気遣う声。大丈夫ときゅっと拳を握ってみせ、ラナは風邪を引く前に終わらせましょうと頷いて。
「光るお花畑を楽しみにしている人の為に、頑張りましょうね!」
「ええ、今回も」
 幾度となく共に戦ってきた経験が、二人に迫るものの気配を教える。現れたブリザードたちの攻撃を待たず、ラナは掲げた杖の先、蕾のような籠の中の宿り星に光を喚んだ。
 零れおつ光のかけらが虚空に燃える。ぽ、ぽ、と浮かんだ小さな炎は直線を描き、矢羽を描き、百を上回る火矢となってトカゲたちを射抜いていく。――大きく壁に添わせて曲げた軌道は、この場所を冷気に鎖す氷を溶かすため。
「これで少しは寒いのも和らぐでしょうか」
「ええ、寒さが和らいだ気がします。やっぱりラナさんの魔法は凄いですね」
 あの分厚い氷の壁が、汗をかく。その威力に目を細め、遅れを取るまいと蒼汰の指し示した指先に、星は躍り来る。
 ひかりに乏しい洞窟の空に、きらりと瞬いたひとつの輝き。力となれと喚び寄せたそれで、蒼汰は矢の雨を逃れ飛び込んできた敵意をひといきに穿った。
「何にせよ、ここはオブリビオンが塒にしていいような場所じゃないんで」
 返してもらいます、と突き放す願い星の煌めきが敵を射るたび、まるでふたりに味方するように、冷気を放つ氷の壁が失せていく。
「そうですね。皆さんの大切な場所です、返して下さいね」
 燃える夏の空気の下、冷涼な洞窟に心地好さを感じていたのは、古くからこの場所を愛した人々も同じこと。過去より訪れた新参者が、身勝手に作り替え、奪っていい場所ではない。
 降る星と炎が道を拓く。いきましょう、とどちらからともなく告げて、ふたりは先へ駆けていく。その先に待つ、未知なる光景に思いを馳せながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァルダ・イシルドゥア
髪の先まで凍りついてしまいそう
まるで、ここだけに冬が集まっているような

てのひらに伝わる確かな熱
アナリオンがちからを与えてくれている
けれど、この子に無理はさせられないから

急ぎましょう
……太陽の輝きを、取り戻すために!

前衛にて他の猟兵たちが戦いやすいように
ドラゴニック・エンドを使用し
氷蜥蜴たちよりももっとおおきな『竜』を用いて
出来るだけ多くの注意を引きましょう

洞窟の中、乗ることこそ叶いませんが
アナリオン、アイナノア
どうかヴァルダに、ちからを貸してください

射程内に傷ついた猟兵がいる場合生まれながらの光で支援を
至近距離の敵に対しては流星槍で応戦

これ以上、誰も傷付けさせはしません
――さあ、おいでなさい!


ファルシェ・ユヴェール
花の記憶を宿す石――
是非手元にひとつ、天然ものをコレクションしておきたいところです
水底からひと粒、私の宝石箱に納められるのならば
報酬は充分と言えましょう

猟兵とは言え、私の本業は旅商人ですから、
先陣切って斬り込むのは向きません
勇敢な方の後に続き、なるべく少数を相手取るように致しましょう

一本道で仲間が戦っている状況下なら、
小さな横道は背を守られているが如く
囲まれ難いかもしれませんね

黒い宝石を翳し触媒にUC使用
仕込み杖型のアリスランスの切っ先にてフェイント
誘った氷爪にタイミングを合わせカウンターを仕掛ける
氷結耐性でも多少は動き易くなるでしょうか
…まあ
真夏であれど、私は何時もの厚着のままではありますが


有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

光の花畑……。
綺麗なのでしょうね。一目見てみたいものです。
そのためにも、目の前の災魔を骸の海に還しましょう。
「お茶会セット」から針を取り出して構える。

下手に動くと氷で滑って転倒したりしないでしょうか。
敵とは常に一定の距離を保ち、回避のために体をそらす程度、動きは最小限に抑えます。
敵の急所を狙って針を【投擲】
【何でもない今日に】も使用して敵を追い詰める。

もしも距離を詰められるなど不測の事態が起きたら「懐の匕首」で【咄嗟の一撃】をお見舞いしましょうか。
「残念ですが、さよならの時間です」



●行く手に結ぶ願いは
 外はあんなにも燦々と熱が溢れていたのに――金色の髪の先まで凍り付いて、あたたかな色を翳らせていくような心地すらして。
(「……まるで、ここだけに冬が集まっているような」)
 ぎゅっと槍を握りしめたヴァルダ・イシルドゥア(燈花・f00048)は、震える手を温めるように白い息を吐く。そこにふわりと、言葉でなきもので応えるぬくもり。伝ってくる力は大切な家族、アナリオンのもの。
「……ありがとう。でも、あなたにも無理はさせられないから」
 頑張ってくれるこの子が寒さに凍えてしまう前に、一緒に取り戻すのだ。太陽の輝き帯びる季節に人々に涼を齎す、本来のこの場所の在り方を。
「急ぎましょう。――アナリオン、アイナノア!」
 どうか、ヴァルダに力を貸して。熱抱く祈りに応え躍る竜槍、アナリオンが、きらきらと零下の輝き放つブリザードの爪を弾き返す。くるりと巡らせた穂の閃きが氷を斬るような感触を伝えた瞬間、大いなる翼が洞窟に広がった。
 喚ばれた竜こそアイナノア。その存在だけで暗がりの洞窟に灯火を掲げるようなヴァルダの家族は、より鋭く、より大きな爪のひと掻きでブリザードたちを鷲掴み、巨躯のもとに下していく。
「! 痛……っ」
 不意に背後に感じた気配に飛び退けば、間一髪。頸を狙い来た敵の爪は逸れ、ヴァルダの肩を切り裂いた。傷に感じる熱よりも熱く、掌の中のアナリオンが燃えている。
「大丈夫だから――落ち着いて、アナリオン。一緒に星を編んでくれますか?」
 答えなど分かり切ってはいるけれど。明滅する熱に微笑んで、ヴァルダは自身を傷つけたものへ槍を翻す。
 猟兵の仲間たちが傷つけられるより、ずっといい。傷は癒し、塞ぐことができるのだから。
「――さあ、おいでなさい!」
 心優しい少女の声が、今ばかりは凛と洞窟に響き渡る。貫く槍に従い流れる白光が、ブリザードを射ち倒した。その様に讃嘆の拍手を惜しみなく送り、ファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)はおっと、と傍らを掠める爪に身を竦める。
「容赦のないことだ。猟兵とは言え、私の本業は旅商人ですから――少し加減をお願いしたいところです」
 聞き入れられる筈もない軽口は、ただの言葉遊び。勇敢なる若き竜騎士の少女に続き、本業の目利きを発揮する。少女の放ったひかりを受け、艶やかに輝く頭上の一粒は、深窓の乙女の髪が如き黒い宝石。
 大儀そうに捧げ持つ白手袋の先、触媒がぱりん、と砕け散った。ファルシェに流れるダンピールの血が、躍る杖に力与える代わり、命の燃焼を開始する。
「長引かせたくはないのです。手短に――参りましょうか」
 紫から紅へ。鮮やかな変化を遂げた瞳に惹かれるように、飛び掛かるブリザード。軽い足取りで誘い込む先は、目星をつけておいた横道だ。
 壁に背預けてみせれば、追い詰めたと思ったものか、トカゲが笑う。高まる冷気を纏った爪をがちり、受け止めた杖から秘密が覗いた。
「その爪の生む輝きも美しい。宝石であれば、素晴らしい蒐集になり得たでしょうが」
 言葉よりも速く引き出された秘密の刃が、爪を斬り落とす。武器のひとつを失い激昂するものへ、翻る刃は容赦を知らない。躍るダイアモンドダストに細めた瞳は、その細やかな輝きの中に命を切り刻んでいく。反撃の纏う冷気も、耐性の加護で備えたその身になら耐えられる。
 すべては自身のコレクションに、花の記憶を宿す石――最高のひとつを加えるために。
「是非手元にひとつ。水底からひと粒、私の宝石箱に収められるのならば……」
 報酬ならばそれで充分。夏なお厚い装いを正し、涼しげに微笑んだ青年に、有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)は鷹揚に頷く。
「ええ。光の花畑……綺麗なのでしょうね。一目見てみたいものです」
 それなのに――と、肩を竦めた夏介の口許が白く煙る。
 光煌めく夜へ至る道には、凍気を纏う数多の邪魔者たち。敵意も露わに距離を詰めてくるそれらへ、近づき過ぎないようにじりじりと退がりながら、する、とブーツが滑った気配に夏介は気づく。
(「これは……下手に動けませんね」)
 ――ならば。後退する足を止め、『お茶会セット』から取り出し構えたのは、その朗らかな響きは名ばかりの辛辣な暗器。
「お茶会を始めましょうか」
 静かな表情の下に膨れ上がった戦意に気づいたのか。爪に氷を纏い飛び掛かってくるブリザードたちの、露わな喉笛目掛けて飛針を放つ。
 人よりは強靭は皮膚を易々と貫かれ、落ちる数体。しかし躱し来る数体の爪が喉元を狙い来る。
 すっかり冷やされた地面を踏みしめる足に、力を込めて。身を逸らす程度の回避では、そのすべてを避け切ることは叶わない。しかし、掠めた痛みに眉寄せることなく、夏介は唇を和らげた。紅い瞳が血の色へ、暗く翳る。
「邪魔するのなら……いいえ、しなくても。災魔は骸の海へ帰しましょう」
 それを成す刃の在り処は目を瞑っていても分かる。懐から氷トカゲの無防備な胸へと、一線に――匕首が引き裂いた。汚れた鞘からは思いもつかぬほど美しく磨かれた刃は、動きを止め倒れゆく敵をきらりと映す。
「おめでとう――には早いでしょうか」
 何でもない今日に至るには、まだもう少し。行く手にぎらりと輝くトカゲの眼を見出して、夏介は白い吐息をもう一つ残し、駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深海・揺瑚
ある意味贅沢よね
真夏は一家に一匹、氷トカゲ、とか
ちょっといい商売ができそう
何匹か捕まえて帰ろうかしら
でもちょっと、この寒さはいただけないし
せめて適温までは減らしたいところ

前で狩ってくれる猟兵がいればそっちはお任せ
協力はするけど、少しばかり後ろからいかせてもらうわ
名乗りが必要ならばミミとだけ
討ち漏らしをどんどん片付けていこうかしら
ほらちょっと、また抜けてきてるわよ

真っ赤なルビーでまとめて溶かし尽くしてあげる
氷柱が出てきそうならそれにぶつけるように
これ以上の寒さはいらないわ


ユキ・スノーバー
冷気も度を過ぎるとやばいんだよー?
ぼくは断然得意な環境では有るんだけど…困らせちゃうのは良くないっ!
楽しみは共有してこそ、より楽しくなると思うんだーっ♪

よーし!同属性対決いってみよーっ!
寧ろ利用させてもらいつつ、ガンガン攻めちゃうんだからねっ!
周囲に他の猟兵さんが居ないのを確認してから、華吹雪で冷え冷え空気をくーるくるっと纏って…
氷柱にロープを引っかけて、高速移動用の準備もバッチリ!
ブリザードに向かって、てーいっ!って攻撃したら
当たっても外れてもロープをぴん!と張った状態で足をツルっとしゅー!で距離をつけたり
見えていないなら、クライミングで上によじ登って再度急接近でアタックしちゃうもんねっ!



●分け合えぬ冬ならば
「ある意味贅沢よね」
 かつん、と凍れる地面を深海・揺瑚(深海ルビー・f14910)のヒールが叩いた。腕組みで値踏みするように前へ投げられた眼差しも、艶やかな唇も、寒さに震えることもなく笑みを零した。
「真夏は一家に一匹、氷トカゲ――とか、ちょっといい商売ができそうだけど。何匹か捕まえて帰ろうかしら」
 言葉の意味は分かるまい。が、立ち塞がるブリザードたちも何かうすら寒いものを女から感じ取ったらしい。寒さに身を置く彼らすら震え上がらせるような、強かなものを。――それを、
「冷気も度を過ぎるとやばいんだよー? ぼくは断然得意な環境では有るんだけど」
 身に沁みる寒さは寧ろ大歓迎。水を得た魚、冬を得たユキ・スノーバー(しろくま・f06201)、そういうことだ。ぶんぶんと嬉しげにアイスピックを振るテレビウムに毒気を抜かれつつ、揺瑚はふ、と唇を撓ませる。
「そうね、ちょっとこの寒さはいただけないし。適温まで減らしてしまいましょうか。前、任せて良いのよね?」
「うん! よーし、同属性対決いってみよーっ!」
 あれっ! と見定めたのは、ブリザードたちによって生み出された巨大な氷柱。ひゅんと投げ飛ばしたロープの輪の先がそれを捉えたら――高速移動の準備は万端だ。
「……? 何をするつもりなの」
「見てて見ててーっ! 雪に巻かれないように気をつけてねっ!」
 元気よく告げたユキの姿が、生み出された雪嵐の中に消える。
 いつもは広く降らせる真白の華吹雪、今日はくーるくるっと華麗なターンで身に纏い、凝縮させて――ひとたびロープをぐんと引けば、凍れる地面を猛スピードで駆け抜けるユキはまさに雪の弾丸。
「寒さも利用させてもらうんだよっ。てーいっ!」
 アイスピックの一薙ぎに吹き飛ばされたトカゲたちも、氷爪で反撃にかかる。――ものの、それが届く前に、ぴんと張られたロープがユキを引き戻す。空振って壁に突き刺さった爪を引き抜こうとするトカゲたちに瞬いて、揺瑚は喉を鳴らして笑う。
「面白い子。――そうね、それじゃ、私は少しばかり後ろからいかせてもらうわ」
 あの冷ややかな娘たちを溶かし尽くすなら、真っ赤なルビーがいい。指先でするりとなぞった大気に、潮が薫る。漂う海のかけらが凍り付く前に投げ込んだ紅い石は、潮の雫のひとつひとつを一瞬で珠玉の剣に創り変えた。
「まとめて溶かし尽くしてあげる」
 駆け抜ける剣が、鋭き爪持つ四肢を氷の壁に縫い留めていく。しゃしゃっと駆けては敵を殴り飛ばしにいくユキの、一撃が思わず空を切ると、
「あれーっ!?」
「ほらちょっと、抜けてきてるわよ」
「ごめんねーっ、もう一回がんばるーっ!」
 熱と冷気がぶつかって目覚める風に、波のような裾と豊かな髪を躍らせながら――自身もまた踊るように次々と剣を擲つ揺瑚。その戯れめいたお小言にもめげずにこにこと、テレビウムの少年は雪の中から笑い、確かな一撃を繰り出した。
 目減りしていくトカゲたちを、揺瑚の艶麗な微笑みが見下ろす。
「これ以上の寒さはいらないわ。大人しくする気がないのなら、ここで終わりなさい」
「楽しみは共有してこそ、より楽しくなると思うんだーっ♪」
 それができずに人々を困らせる寒さなら、ここでさよなら――また冬に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と

ユーゴさま、ユーゴさま。
ふゆです。ここだけ、ふゆなのです。
わたくしは、暑くても寒くてもげんきです。
レディはどんなときでもしゃんとして、……――へぷちっ。
……げんきなのですよ。だいじょうぶですもの。

寒暖差にぷちぷちとくしゃみをしながら、洞窟の奥へ。
不意を衝かれないように、横道にも気をつけましょう。

突然氷トカゲが現れても、慌てず、よく見て。
鐘を鳴らし、蔦のつむじ風で壁をつくり下がるのです。
ユーゴさまのお邪魔にはならないように、氷の冷気を防ぐように。
囚われている方がいらっしゃるなら、お助けするためにも、はやく氷を溶かしましょう。

油断せずまいりましょう。
えいえい、おー。


ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

……かなり寒いな。
思いの外、寒い。

俺は暑いのも寒いのもダメだ。
リリヤ、お前もこのぐらいの年になると分かる……おい、くしゃみ凄いぞ、大丈夫か?

なるほど、あちらさんは俺達を快く思ってないようだ。
ならば、やる事はひとつだな。

リリヤの作る壁を利用し、背面や側面を守りながら一体ずつ確実に斬っていこう。
倒す事で氷漬けの被害者が助かるのなら、確実にトドメを刺す事を心掛ける。

この次は巨大ウミウシが相手だったか?
バカンス気分だったのだが、思っていたよりもハードなスケジュールのようだな。



 美しく苛烈な海の貴婦人。年上の知人の鮮やかな戦いぶりを遠目に、小さな手を振って。リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)は傍らの男の袖を引いた。
「ユーゴさま、ユーゴさま。ふゆです。ここだけ、ふゆなのです」
 しんとくすんだ色のフードの下から、鮮やかな瞳を輝かせてこの世の幸せを探す少女の好奇心に満ちたまなざしを、同じ色のマントの前を掻き合わせながら、ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)はほんのり憂鬱そうに受け止める。
「そうだな……かなり寒いな」
 ここまでとは思っていなかった。自分は暑いのも寒いのもダメだと素直に釈明するユーゴに、リリヤは首を傾げた。
「わたくしは、暑くても寒くてもげんきです。レディはどんなときでもしゃんとして――」
 ……へぷちっ。
 可愛らしいくしゃみにそれみたことかと小さく笑い、ユーゴは外套の前をしっかり合わせてやる。
「リリヤ、お前もこのぐらいの歳になると分かるよ」
「リリヤはだいじょうぶですもの」
 ふるふると首を振る少女の肩を、男は不意に引き寄せた。その向こうにぎらりと輝いた眼に、映るものは――敵意。
「なるほど、おまえたちか。……確かにあちらさんは俺達を快く思ってないようだ」
 ならばやることは一つ。
 ラルルルラ、ラルララ、ラル――手にした真鍮の鐘、風鈴草を象るベルの美しい歌声は、しかし警鐘。喚ばれ創り出される防壁は、蔦の緑薫るつむじ風。『わるいこと』からふたりを守るそれは、先刻までの刺すような空気とは明らかに異なり、春めいた温もりでユーゴを守る。
「油断せずまいりましょう。えいえい、おー」
「おう」
 無邪気に突き上げた小さな拳、ラル、とまた歌う鐘に少し笑って、背や傍らを少女のなす壁に守られながら、ユーゴもまた異質の風を生む。
「――大抵のことは、これでなんとかなるもんさ」
 飛び掛かるブリザードの氷爪を、灰の色の内にルーンの煌めき帯びる剣が食い止める。咬み合った、と思わせただろう一瞬に、野風のような無骨な一閃がその爪を斬り払う。手が阻まれるなら脚で、と蹴り来る蹴爪に纏いつく凍気を、
「だいじょうぶ。ぬかりありません」
「はは、頼もしいことで」
 リリヤの蔦風が押し流す。体勢を崩した氷トカゲを両断し、淡い青に沈む瞳もまた油断なく、続いて現れる氷の災魔たちの気配を暗闇の中に攫う。――次々と斬り伏せていく。
「! おっと」
 切り結ぼうとした相手の姿が不意に消えた。気配を探れば、その弱った気配はいつの間にか、横道より現れた無傷の仲間のもとへ。その体の前に盾にしたものは、巨大な氷塊だった。――目を凝らせば、その中には命が鎖されている。それはヒトではなく、小さな蝙蝠たち。
「……なんであれ不快だな」
 命を盾に、攻撃できまいと笑うのが。男は瞬時に間隙を詰め、氷塊を跳ぶように乗り越える。慄く敵に荒れる刃で終わりを呼ぶと、凍気を優しく解くリリヤの風に、解き放たれた小さな獣が舞い上がった。
「囚われている方がいらっしゃるなら、お助けしなければ、……
 ――へぷちっ」
「おい、またくしゃみしたろ? 大丈夫か」
「だいじょうぶです。レディはどんなときでもしゃんとして、げんきなのですよ。……それに、ちょっとあたたかくなってきたのです」
 氷トカゲたちの姿が少しずつ消えていく洞窟に、夏なのに涼しいね、と人々が喜んで笑えるほどの本来の涼しさが戻りつつあった。それにしてもと、ユーゴは頭を掻く。
「この次は巨大ウミウシが相手だったか?」
 これもまた、想定外のハードスケジュール。バカンス気分に浸れるのは、もう少しだけ先になりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒金・鈊
スティ(f19491)と

花の記憶を宿す……。
今はただの石なのに、な。
まあ、見てみたくはある。付き合うか。

……涼しくて結構だが、度が過ぎているな。
俺は大丈夫だが、あんたが風邪ひいたら笑えないんだが。

相性が良いのか、悪いのか。
こちらは炎の身。容赦なくいく。

スティを守るように、正面から斬りかかる。
氷爪による攻撃は傷から炎を放出して反撃。
傷ができた分だけ熱が高まるということだ、トカゲのお嬢さん
スティの狼の動きを見、懐まで飛び込んで炎を纏わせた剣で斬る。

傷は構わんが……。
それよりもスティ、一体何が誰の権利だと?
――今更だが悪趣味だな。

次はウミウシだったか。
まったく、毎度困ったところに発生してくれる。


スティレット・クロワール
鈊君(f19001)と

花の記憶を宿す石、か。へぇ、面白そうだね鈊君
さ、冒険に遊びに行こうね?

流石は氷の世界
涼しいのもまぁ良いけれど。鈊くんどう?
えー私、結構丈夫なんだよ?風邪を引いてもちゃんと引籠るしね

氷漬けにされるのも好きじゃないし
お相手願おうか、お嬢さん。

おや私の騎士は紳士だねぇ
私は鈊君の援護をしつつ狼達に頑張ってもらおうか
氷の柱は狼達を受け止めて貰おう。その爪で砕きなさい

さぁ行きなさい。あ、鈊君のこと噛んじゃダメだからね
私の騎士に傷をつけるお前達ではないだろう?

えー、半分くらいは私の権利でしょ?
鈊。
ふふ、私が悪趣味だなんてことよく知っているでしょ?

さぁ、洞窟の先にいる者に出会いに行こうか



●冬拓く先に
 ――流石は氷の世界、と歌う声は遊ぶよう。
「流石は氷の世界。涼しいのもまぁ良いけれど、鈊くんどう?」
 観光にでも来たかのような気軽さで、のらくらと笑う神父・スティレット・クロワール(ディミオス・f19491)に、護衛たる青年は鋭い視線に遊びは後にしてくれ、と釘を刺す。――恐らく痛くもない釘を。
 外の暑さの下にもきっちりとした着こなしを崩さない黒金・鈊(crepuscolo・f19001)には、涼しいのは結構なこと。それにしても、この場所のそれは度が過ぎている
「俺は大丈夫だが、あんたが風邪ひいたら笑えないんだが」
「えー私、結構丈夫なんだよ? 風邪を引いてもちゃんと引籠るしね」
「それが笑えないと言っている」
 会話の内にも掴み取った気配は三つ。横道から束になって躍り出てきたブリザードの群れに、おやと目を瞠るスティレット。ダイアモンドダストの輝きを帯び、鋭利さを増す爪が届く前に、鈊はかつて竜を飼ったその背から黒曜の太刀へ、流れる炎を伝わせ斬りかかる。
「こちらは炎の身。灼きつくされたければ、来るがいい」
「ふふ、頼もしいねぇ。それじゃ私も、氷漬けにされるのも好きじゃないし。――お相手願おうか、お嬢さん」
 藍色の眸に浮かぶ笑みが、不意に暗い輝きに揺れる。氷の床に打ち付けた踵、その音が目覚めの合図。青白い獣の眼差しに同志を望んでか、現れた死霊の獣たちの青い影が、白く煙るブレスに紛れて鈊を穿ちにくる氷柱を噛み砕き、叩き壊す。
「そうだよ、その爪で砕きなさい。あ、鈊君のこと噛んじゃダメだからね」
 亡者の身に余す獰猛さが、思わぬ形で振るわれる前に。私の騎士に傷をつけるお前達ではないだろう――と宥め歌う神父に、身を刃に、一切の油断を棄て、躍るような斬撃を振う青年が片眉を上げる。
 生まれた傷の分だけ、そこから噴き出す炎が敵を溶かしゆく。だから傷のひとつやふたつ、間違いで増えようと気にはしないが、
「誰の所有になった気もないが。スティ、一体何が誰の権利だと?」
「君が、私の。えー、半分くらいは私の権利でしょ? ――鈊」
 くすくすと笑って獣たちを指揮する男。名を呼ぶ声が唐突に捉えるような響きを帯びたのは、一瞬のこと。悪趣味だと逸れる視線すら愉しく、可愛くて、
「ふふ、私が悪趣味だなんてこと、よく知っているでしょ?」
「そうだな。今更だった」
 応酬の裏に、戦場に於ける信頼は確かに糸を繋いでいる。剣戟に昂る炎が災いを斬り伏せると、随分と静かになった洞窟に青年の吐息が響いた。
「まったく、毎度困ったところに発生してくれる」
「ふふ、でもひと夏の冒険としては上々だよね。報酬は花の記憶を宿す石――ね、面白そうだよ鈊君」
「今はただの石なのに、な。……まあ、見てみたくはある」
 此処まで来て付き合わないもないだろう、と肩に触れる手を払い、鈊は先を見る。
 光へ至るまでのもうひとつの障壁、その気配を探るように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライオット・シヴァルレガリア
白雪さん(f09233)と

確かに今の季節は涼みたくなるけれど
それにしてもこれは寒すぎるかな
今回も頼りにしてるよ、白雪さん

奇襲を警戒しながら洞窟内の横道を進もう
僕が先行するから、白雪さんは後に続いて
『オーラ防御』で予め身を守り、すぐに『盾受け』で対応できるように盾を構えておくよ

白雪さんが炎の弾丸を命中させやすいように、前に出て敵を抑えよう
盾で敵の攻撃に対応しながら、隙を見てレイピアで突き『カウンター』を
この小さな横道で立ち塞がれば、敵も僕の横をすり抜けて進めない筈だ
強力な攻撃が来れば【無敵城塞】で鉄壁の守りを展開する

さぁ白雪さん、今だ
大丈夫、僕は君の狙撃の腕を信じているから


鶴澤・白雪
ライオットと(f16281)

涼めるとか一瞬考えたけどそんな比じゃないわね
まぁ鉱石の為と思えば安いものだわ
お互い、氷の相手は慣れてるでしょうし?
あたしも頼りにしてるわ、ライオット

まずはテレポートでの奇襲を警戒してオーラ防御を張っておく

あたしは炎属性をつけてスナイパーで狙撃するわ
洞窟に弾丸打ち込みたくないから注意しつつ周囲の氷も溶かしていくわ

個人的なことで申し訳ないんだけどダイヤモンドダスト振り撒かれると腹立つのよ
その爪、絶対ライオットに届かせてあげないから
狙撃で邪魔してやるわ

ありがと、任せておいて
少なくともライオットには掠りもさせないわ

ライフルで標的に狙いを定めて
全力でUCを撃ち込むわ



「――だいぶ寒さも和らいできたかな。それでもまだまだ、寒すぎるけれど」
 仲間たちの奮戦の成果に青い瞳を和らげて、ライオット・シヴァルレガリア(ファランクス・f16281)は冷気を辿り、油断なく横道を進んでいく。
 湧水溜まりへ続く大本の通りは、討伐が進むにつれ少しずつ気温を取り戻しつつある。残るは枝となる横道に身を潜め、隠しきれぬ冷気を漂わせているものたちだけだ。
「今回も頼りにしてるよ、白雪さん」
 それでも先行はどうか自分に任せてと先行く騎士に、鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)はレッドスピネルの眸を和らげ微笑んだ。
「あたしも頼りにしてるわ、ライオット。お互い、氷の相手は慣れてるでしょうし――まぁ鉱石の為と思えば安いものだわ」
 護りにと纏うオーラは瞳と同じ熱の色を帯びる。その微かな温もりを介してなお、冷ややかに肌を貫く凍気を感じて――二人は素早く身構えた。
 撃ち出すは炎の熱秘めた尖晶石。暗闇の中に浮かび上がったトカゲの眼、それを見出した瞬間放たれた銃弾は、駆け抜ける軌道にある氷塊を溶かしながら敵に突き刺さっていく。
「やりにくいわね、洞窟に弾丸撃ち込みたくないんだけど――」
「ご謙遜だね。君は充分、そうする力を携えているのに」
 ライオットは己の本体とは異なる盾を構え、衝くレイピアで敵を凌ぎにかかる。盾たる本性を存分に発揮し、一体として頼もしい彼女のもとへは至らせまいと抑え込む青年は、苛烈でありながら洞窟の維持に努める白雪の技量も、優しさも知っている。
「! この小さな横道で……!」
 傍らを抜けられはすまいと思ったのに、壁を足場として頭上を跳びゆくトカゲたちの身体能力は高い。周囲の空気を輝かせる氷爪が、頭上から迫る――盾を構えた瞬間、
「個人的なことで申し訳ないんだけど、それ――腹立つのよ」
 きらきらと瞬くダイアモンドダストをひと睨み、駆け抜けた白雪の輝石の弾丸が爪を撃ち砕く。
「その爪、絶対ライオットに届かせてあげないから」
「――ああ、本当に」
 なんて頼もしいひとだろう。目を細め、ライオットは不意を撃たれたブリザードの体にレイピアを迫らせる。これほどに動き回る敵なれば、無敵の護りに動きを止めるのは得策ではない。ガラスケースの友の分け身、氷雪を纏うそれで一息にその喉を狙い突く。
「さぁ白雪さん、今だ」
 その腕を信じているからと、言葉よりも素直に伝え来る視線。受け止めた白雪は艶やかな唇の端を上げた。
「ありがと、任せておいて」
 狙い澄ました射撃、奔る紅がブリザードの胸を貫く。その瞬間、波が引くように、凍れる気配は遠退いて。
 静まった洞窟に満ちるのは、仲間の猟兵たちの気配。それに紛れ、彼方に潜む静かな、しかし獰猛な敵意がひしりと身を打った。
「そうね、まだ居るんだものね。でもこれで、涼めると思えるくらいになったかしらね」
「そうだね、随分と。――行こうか」
 向かう二人の足取りは次第に急ぐ。並べた吐息はもう、白く煙りはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『浮遊するアトランティクス』

POW   :    奔る蒼雷
【迸る電撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【落雷に匹敵するほどの雷撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    暴れ蒼雷
【莫大量の電撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    穿ち蒼雷
【雷撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に帯電させることで】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:たますけ。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は死之宮・謡です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●游ぐ蒼雷
 ――より深き海の色に、鰭の先をとぽんと浸して吸い上げたよう。
 幾条にも枝分かれした青い花か星か、そんな鰭を持つ生きものだった。ウミウシと聞いて人が思い浮かべるそれとは少し様相の異なる、美しい、けれど小さくも獰猛な毒持ついのち。――本来ならば。
 氷の気配がすっかり遠のき、常の涼しさを取り戻した洞窟の中。出口に差し込む熱っぽい日暮れのひかりが恋しくなって、思わず駆け出す猟兵たちの頭上に、敵意は唐突に泳ぎ来た。
 思いがけず高い天井の闇の中、岩の隙間を潜るように。巨躯に慎ましく躍る蒼のひかりをくねらせて、悠々と至るもの。
 その体表が、唐突に爆ぜる。
 ばちばちと青い火花を散らし、細く強かな雷を纏う。猟兵たちの足許に突き刺さったその一条は、言葉を語り得ぬ生きものなりの感情の発露だ。――縄張りを侵すならば、容赦はしないと。
 けれどそれは、この洞窟を追われた人々も同じこと。そして猟兵たちは、骸の海から這い上がってきた災いの魔物を倒すために在る。
 空泳ぐアオミノウミウシ――浮遊するアトランティクス。蒼き脅威を退けた先に、美しい夏の夜は拓かれるだろう。
 ひとときの涼と休息と、あわい光を水底に求める、猟兵たちの手によって。
ライオット・シヴァルレガリア
白雪さん(f09233)と

白雪さんから黒剣を受け取れば、一瞬きょとんとするけれど、すぐに彼女の意図を察するよ
「有難う、なら君の剣を借りようか」
無茶はしないって約束したからね

でも、怪我をして欲しくないのは僕も同じ
そのために盾としての役目を果たそう

敵は雷を扱うのか
なら直接触れない方がいいね
あとは念のため自分の体や武器を『オーラ防御』で保護しておこう

攻撃を惹きつけて、白雪さんの攻撃の隙を作るのが僕の役目
敵の攻撃を受けるのではなく避けるようにして、感電しないように気を付けるよ
攻撃を避けたら『カウンター』で斬りつける

あとは白雪さんのUCに合わせて【光の鉄槌】をお見舞いしよう

◆アドリブ歓迎


鶴澤・白雪
ライオット(f16281)と

雷ウミウシが相手なのね
アイスレイピアから生じる氷は大丈夫かしら

ライオット、黒剣を預かっててくれない?
レイピアを使って違和感を感じたらこっちを使ってほしいの

2人には余計な怪我も痛い思いもしてほしくないから
この黒剣が貴方の事も守ってくれますように

さ、いきましょ
2回攻撃やスナイパーを使ってライオットに向けられた雷撃をライフルの弾丸に当たるよう試みるわ

電相手なら尖晶石でお相手するわ
雷撃を防いだ分きっとライオットなら隙を作ってくれる
高速詠唱でUCを発動して串刺しにしてやるわ

UCは危ない時にライオットを守る盾にも使えるかしら
盾が本分だからって大事な騎士を傷つけさせる気はないわよ



●隔つもの、分かつもの
「今度は雷ウミウシが相手なのね」
 威嚇めいた雷撃を天井に閃かせる姿に、白雪はふと、傍らの青年の手に視線を寄せた。
 蒼銀のアイスレイピア、『Espalda』。纏う氷と雪花の装飾に白雪が透かし見るものは――同じ名を持つ、その剣を本体とする友。
「……ライオット、黒剣を預かっててくれない?」
 その言葉に一瞬きょとんとして。けれど敏くその意図に気づいたライオットの微笑みに、少しきまり悪そうに、けれど素直に白雪は告げる。――二人には、余計な怪我も痛みも受けて欲しくない。
「有難う、なら……」
 その気持ちを受けようと伸ばした手が、差し出された剣を掴むより早く。
『!!』
 二人の間を裂いた雷撃に、左右に跳び退く。受け渡す暇を得られぬまま拓かれた戦端に唇を噛む白雪を、ライオットは大丈夫、と微笑みで宥めた。
「心配しないで白雪さん。そんなに柔じゃないから――僕も、彼も」
 ふわり浮かんだ護りのオーラが、レイピアまでも包み込む。さあこちらだ、と勇ましく前へ踏み出し、雷撃を誘導するライオット。躱せば地が帯びる雷の気を避けるように駆けては、頭上に迫るウミウシへ突きを翻す。その鮮やかさに、白雪の艶めく唇が笑みを作った。
「……そうね、あなたたちはそうだったわ」
 まるで降り落ちる雨の滴を撃つように。友を狙い落下する雷撃の片端を、白雪はライフルで狙い撃つ。全弾が命中せずとも構わない、軽やかに躱しゆく友に幾度か、張った気を緩める猶予を作ってやれたなら。
 一方で、
(「! ――誘導された、か」
 敵も冴えたもの。ただ悪戯に落とすと見えた雷撃に、ライオットはいつの間にか壁際に追い込まれていた。――だが、
「……虚無を贄とし処断の槍を具現せよ。慚悔と共に棘の泥濘へと沈みなさい」
 その眼前に突如屹立する尖晶石の林。白雪の諳んじる詠唱の句は低く速く、騎士の盾となった輝石の剣は、虚空のウミウシまでも切っ先に捉えた。
「――ええ、大事な騎士を傷つけさせる気はないわよ」
 たとえ本性を盾とするものであろうとも、だからと傷を重ねさせては女がすたる。紅く、鋭く狙い突く輝石にウミウシの狙いが逸れた瞬間、態勢を立て直したライオットがそれを引き戻す。
「余所見は禁物だよ。さあ、これが君への天罰だ」
 凍れる刃で指し示せば、ウミウシの頭上に光が降る。雷撃とは違う――ただ強かに澄んで、敵を断罪する光の帯。
 照らされた白雪の顔が不敵に綻んだ。悠々と逃れゆく青を追い立てる尖晶石は、彼女そのもの。美しく鮮やかな、戦いの華。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

連・希夜
クロト(f00472)さんと

蒼い雷の主をゴーグル越しに眺め
ウミウシ?
可愛いの次は、綺麗かァ
呑気に構えた刹那、ウミウシは毒を持つものも多いという情報を引っ張り出して、ニヤリ
毒といえば、自然毒最強とも名高いTTX
毒勝負じゃん、クロトさん。本気見せてよ?
彼の毒の名を冠する大人を煽って【夜の福音】発動

電脳世界からのデータと思考演算、そして高速移動で雷撃の合間を縫い、敵の気を惹き時間稼ぎしながら、味方の強化
これは貸しじゃない
誰かの本気の戦いぶりを見たい、というオレの我儘
襲い来る落雷は銀属性魔法で敵に誘導、或いは水晶属性魔法で防御を試みる
当たった所で退く気はないけど
オーバーヒートする前に片はつけてよね?


クロト・ラトキエ
希夜(f10190)と同道。

綺麗…とはいえ。
アレは毒というより雷でしょう?
誰が付けたかも知らぬ名に、仄かに苦い笑みも浮かぶ。
…そっちの意味はあまり無いんですけどね。心中で零して…
気を取り直し。
本気?それ、オーダーです?
軽口一つ。

貸し借りって対等な立場故に発する物ですが。
対価は寿命、と…
えぇ。承りましょう。

強化を受けて駆け、電撃を“視”る。
壁ではない…ならば己と彼、向かい来る点へとナイフ投擲、
此方へ届くより先に落雷させ。
手持ちは十…
否、十分です。

トリニティ・エンハンスで纏うは風の魔力、
加速からの攻撃力強化。
傍を抜けざま、触覚、鰭、胴に尾に、
鋼糸を絡げ、勢い乗せて引き斬る2回攻撃。

以上、ご感想は?



「可愛いの次は、綺麗かァ」
 一見して普通の眼鏡。されどその硝子には、透かし見る世界の深度を増すあらゆる情報が、電脳世界から飛び込んでくる。
「アオミノウミウシ、別名青き竜、青き天使。……有毒、へえ、キレイな花には毒ってやつ? アレの情報には毒はなかったみたいだけど。ウミウシは毒を持つものも多く……ふうん、なるほど」
 にや、と意味深に笑った青年に、なんとなく道連れとなった男がなんです、と笑みで応えれば、
「毒といえば、自然毒最強とも名高いやつがあるじゃない。毒勝負じゃん、クロトさん?」
 指先で虚空に開くモニターに開示された文字列は、『TTX』――クロトが二つ名に冠するそれ。
「――ね、本気見せてよ?」
 『毒』としてのあらゆる実績を並べ立てる文字列と、朗らかに煽る笑み。瞬いた男が返した微笑は、彼にしては珍しく仄かに苦い。
(「誰が付けたかも知らない名じゃありますが。……そもそも、そっちの意味はあまり――」)
 無い、と言ったところで、少年のような青年の好奇心を突つくだけのことだろう。ならばと苦みを消した笑みは飄々と、いつもを纏って悪戯っぽく輝いた。
「本気? それ、オーダーです?」
 その言葉に、ゴーグルとモニターの上に明滅した文字列がざっと光の粒子と化し零れ落ちる。不敵な笑みの輪郭が、その光に淡く照らされた――次の瞬間、そのざらりとしたテクスチャが澄んだ光に書き換わり、クロトのもとへ放たれる。
 電子の海より拾い上げ、強化の電子に変換するのはノイズ――百害あって一利なしと打ち棄てられた力のカケラ。それを力技で変換する行為が、希夜の身に負荷を生まない訳がない。けれど、
「言っとくけど、これは貸しじゃないよ。オレの我儘だから」
 誰かの本気の戦いぶりを見たい。電子の海より零れ落ちた熱なきこころに、誰かの『本気』の戦いぶりを、その熱を感じたい――識りたい。その為なら高い対価を払おうと、構わない。
 その望みがどんな色をしたものか、クロトは察する。ゴーグルの下に、この青年がどれほど貪欲な輝きを飼っているものか。
 貸し借りとは対等な立場にこそ発するもの。寿命と力、ふたつを己の裡に完結させるというのなら――その覚悟は、
「えぇ。承りましょう」
 男としては買うに足るものだ。ひっそりと笑い、強化の光未だ止まぬ体を前線へ躍り込ませるクロト。忍ばせるナイフをするり撫で、十を数える。これを心許ないと取るか、それとも、
「否、十分です」
 尽きる前に片をつけてみせる。地に擲ったそれが雷を誘う、その隙に風を纏えば、さらなる力の高まりが身を軽くする。低空へ泳ぎ来るウミウシの青白い身体に、音もなく絡みついた鋼糸を電撃が伝い来る前に。
「――存分にご覧あれ」
 ぎん、と指先に籠める力で引き斬れば、弾ける雷は悲鳴。手痛い反撃も命あっての痛みと笑って、クロトは懲りずもう一度、細き刃を絡げにいく。
 消耗に輪郭をざらつかせつつ、揺らぐ敵の鼻先を希夜は駆け抜ける。目論見通りにクロトから逸れた一撃を、電子の魔法、堅固なる水晶の盾に和らげ受け止めて、獰猛に笑う。
「当たった所で退く気はないけど……オーバーヒートする前に、片はつけてよね?」
「えぇ、言われなくとも。――果てる場所はもう少し選ぶべきですよ、希夜」
 それに応えて切り落とされる鰭はひらひらと、地に落ちる前に色と光を失って――暗がりに狩り駆ける獣たちの瞳は対照的に、いのちの燃焼にただきらきらと輝いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
個人的な好みで云えば
ウミウシは色とりどりで鮮やかな方が愛らしく好きですが
成る程、水の濃い場所には似合う色です

とは言え、人々の憩う場を譲る訳には参りません
この地は、訪れる人々が
何年も、何代にも渡り
共有し合える思い出の場所
そんな地がある幸いを、失われる悲哀を、私は知っている

何方かと戦線を共に出来るならば幸甚
引き続き仕込み杖の刃で応戦します

莫大量の電撃が膨れ上がる気配あらば
…この隔たれた空間で、その雷は脅威
杖を避雷針の如く掲げ
仲間と周囲への被害を抑えられるよう試みる
そして掲げ持つ手を、UCにて透明な結晶に変質
雷撃の範囲を抑え
かつ自身の感電を防いでダメージを減らせるよう

――この地を伝える幸いを、どうか


ユキ・スノーバー
宝石が泳いでるみたいだね…って、見とれてる場合じゃなかったっ
その色合いでパチパチしても良いのは、炭酸水までにしておかなきゃ!
雷とか感電して酷い事になっちゃうし、骸の海に放流頑張るぞーっ!

…でも、何もしないと直撃だよね。うーん
あっ、そうだ!雷の原理この間調べたんだけど…敵の雷の位置を多少誘導出来れば役に立てるかなっ?
華吹雪の吹雪を、他猟兵さん達から離れた所でくるくるして静電気作る感じ!
その上で、ちょっとその辺の岩のてっぺんを避雷針代わりに(アイスピックでカンカンカンっ)尖らせて…っと
おまじない程度だけど、上手く逃がせたらその隙に敵に吹雪でコーティングしてからアイスピックで覚悟ーっ!って攻撃するね



●雷撃を導け
「わあーっ、宝石が泳いでるみたいだね!」
「成る程、水の濃い場所には似合う色です」
 きらきらと瞳を輝かせるユキに目を細め、ファルシェは敵意を纏浮遊する敵の様子をじっくりと窺った。
 ファルシェ自身の好みで言うならば、ウミウシは色とりどりで鮮やかな方が愛らしいと思うけれど、その色調が美しいことには変わりない。
「とは言え、人々の憩う場を譲る訳には参りませんね」
「……はっ、そうだねっ、見とれてる場合じゃなかったっ」
 傍らにぱりりと弾け飛んだ火花をきゃーっと避けながら、ユキはじっと高みを見上げる。
「……でも、何もしないと直撃だよね。うーん……あっ、そうだ!」
 ぴかっ、と稲妻のように閃いた、先日調べたばかりの雷の原理。
「ちょっと待っててねーっ! えっと、まずはこうして……!」
 仲間たちから少し離れ、ぐるんぐるんぐるん! アイスピックの重みに反動を貰い素早く回転するユキの周囲に、華吹雪の雪がもくもくと雲を作り出す。内側にぱりっ、と小さく静電気が走ったら準備完了、抜け出して。
 つるつるの岩をよいしょよいしょとよじ登り、辿り着いたのはちょうど竜巻のような雪雲の真上。見つけた細長い岩をカンカンカンっ、アイスピックで整えたなら――避雷針のできあがり。
「さあ、来ーいっ! って、わあっ!?」
 落雷は見事、足跡の避雷針へ――隣に落ちた雷をぴょんと跳び躱し、ユキはやあーっ、とアイスピックを振り翳す。
「その色合いでパチパチしても良いのは、炭酸水までにしておかなきゃ! 覚悟ーっ!」
 視界を覆うほど高く伸びた雲と雪の目眩まし。その中から飛び出したユキのピックは落下の衝撃を乗せ、がつんと一撃を叩きつける。
「おっと――はは、勇敢な子ですね」
「わわ、ありがとうなんだよ!」
 落下してくるテレビウムをキャッチして、ファルシェはくすくすと笑う。
「――さて、では私も参りましょう。良いアイディアを頂きました」
 この戦場に作り出す避雷針で、すべての敵の雷撃を受け止めることは困難だ。けれど一度、二度でもいい。仲間へ向かうはずのそれを逸らすことができたなら、頼もしい仲間はその隙を逃すことなく踏み込んでくれるだろう。
 ファルシェは駆けた。上空から地表へ、ゆらりと降下してくるウミウシの視界で、高く掲げる仕込み杖。一帯に落ちかかろうとする莫大な電撃を、自身を避雷針に受け止める――、
「ファルシェさんーっ!」
「……っ、ご心配なく」
 負荷は大きい。けれどなんとか立っていられるのは、その手に集めたエネルギーを結晶化させ、電撃の全てが体に伝うのを防いだためだ。
 この地は既に、何年、何代にも渡り人々が共有してきた場所。嵩み積もった思い出が、至る度に人々の心を温める場所。
 そんな地がある幸いを、失われる悲哀を、自分は知っているから。
「好機です。――逃されませぬように」
 微笑めば、傍らを仲間の力が駆け抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深海・揺瑚
随分とまぁ、大きな図体ね
ここが過ごしやすいのには同意、だけど
独り占めは無いんじゃない?
まだ奥も覗きに行きたいのよ

前は他に任せて少しばかり後ろから
名乗りは必要ならばミミとだけ
傷付くのも力仕事をするのも向いてないの
援護ぐらいはしてあげる
鉄の礫を投げ込んで出したのは避雷針代わり
うまく雷を誘導できたらラッキーということで
これで気にせず前へいけるでしょ

あら、ただの避雷針だけだと思った?
攻撃ができないなんて、思わないでね
目や尾鰭なんかで行動阻害ができればいいわね


ヴァルダ・イシルドゥア
深きもの
水底へ至るもの
あおい、あおい
それはまるで、嵐のようだった

そらを揺蕩うその姿へ、翠の戒めを
その稲妻に焼き切られようとも、幾度でも
帯電する地面、けれど
動けなければその恩恵を受けることも叶わぬはず
自身の射程内に近付くことが出来たなら流星槍で応戦
倒れそうな仲間がいる場合生まれながらの光で支援を優先

うつくしくもおそろしい蒼雷に息を飲む
いのちを賭すことへの恐怖
けれど、立ち向かう勇気を持つことを
私はもう、躊躇わないと決めたから

芽吹く翠に、握り締めた竜槍から伝わる鼓動に
ほんの一瞬目を伏せる
私は一人じゃない
それを――もう、知っている!

過去より出でしもの
災厄をもたらすものよ
さあ、骸の海へと、おかえりなさい



「――ふふ、男たちはやんちゃなものね」
 嫌いではないわとひとたび和らいだ揺瑚の紅の眸は、泳ぎ来るものには険ある微笑みへ翻る。
「随分とまぁ、大きな図体ね。ここが過ごしやすいのには同意、だけど」
 さて今度はどうしてあげようかしら――選んだ欠片は、揺瑚の周囲にショールの如く纏いつく潮の雫を一転、鈍色に染め変えた。針のように鋭く長い剣をなし、指先で標的を定める。
「……独り占めは無いんじゃない? まだ奥も覗きに行きたいのよ」
 援護ぐらいはしてあげる。綻ぶ唇に従って駆け抜けた鉄の剣が、突き刺さる。ウミウシへ、そして躱されたものは大地へと。その全てが狙いの通り。
 傷つくのも力仕事をするのもこの身には向かない。艶やかな人の膚と鱗とに彩られたからだに、甘んじて傷を負うべき瞬間もありはするだろう。だが今、この敵にではないと微笑んで、代わりに道を拓くのだ。――地に突き刺さった鉄の剣に、電撃を誘って。
「これで気にせず前へいけるでしょ」
「は、はい……! あ、あの、貴女は――」
「ミミ、よ。名が要るのならね」
「ミミ様――わ、私はヴァルダと申します……! ありがとうございます!」
 行きなさい、と微笑んだ女の強かさに一瞬、焦がれるような眼差しを向けてヴァルダが馳せる。
 頭上に在るものは、かつては深き水底へ至っただろういのち。あおい、あおい、身ひとつで体現する嵐のような。
 地に流れ込んだ電流はヴァルダの足許でぱりりと歌い、その上に在るウミウシの力を高めていることが知れる。けれど、
「動けなければ、その恩恵を受けることも叶わぬはず……! ――木々よ、慈しみ深きものたちよ。光のもとより影の中へ手を伸ばし、彼の者を捕らえ給え!」
 凛と反響した声に、現れた樹木の精が心を添わす。壁面をなぞるように駆け抜ける風、その指先が撫でたところから緑が芽吹き、空へと伸びる。光なき場所に懸命に蔓を伸ばし、主に敵意向けるものを戒める。
 美しくも荒れ狂う蒼雷に、ひとときの拘束が振り解かれようとしている。その懐へ命を賭して飛び込むことに、恐れは胸に蠢いている。
(「――怖い……いいえ、でも」)
 地を蹴ることを一瞬躊躇った足を励ますように、傍らを黒剣が駆け抜けた。
「ほら、お嬢さん――攻撃ができないなんて思わないでね」
 全て貰ってしまうわよ、と笑う揺瑚の声が耳を打つ。猛く美しい眼差し、心の強いひと。そして緑の気配を抱いた風が、掌の中に届く竜槍アナリオンの脈動が、ヴァルダの背中を押す。
「はい、参ります……! 私は、一人じゃないと――もう、知っている!」
 過去より出でしもの、災厄を齎すものを還すために、立ち向かう勇気を躊躇わないと決めたから。
「我が身、ひかりの導となりて――さあ、骸の海へと、おかえりなさい!」
 躍るアナリオン。暖かな炎のひかりと翼を頂くその槍は、澄んだ光を道連れに、蒼き嵐を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

敵の意識を僕に引きつけよう
剣ではなく、魔法で
地『属性』の魔力を乱射するように放ち『先制 』し『おびき寄せ』
敵がセリオスへ意識が向く前にすぐさま『地形を利用』して『ジャンプ』、近距離から剣に込めた地属性の魔力をぶつける

雷撃は僕に任せて、セリオス!
…勿論、怪我をするつもりはないさ
セリオスを『かばう』ように前に出ると盾を構え
【聖護の盾】を展開
帯電させないように、受けとめてみせる!

いつでも準備は出来ているよ
いこう、僕達の力で!
セリオスの攻撃と同時に光属性の『全力魔法』を剣に収束、『衝撃波』に込めて一気に放つ
セリオスの風に光が合わさるように

譲れないのは此方も同じ
…此の地は返してもらうよ


セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎

『歌』で身体強化
アレスが目立ってくなら裏をとる
先ずは『2回攻撃』
剣で直接よりは『衝撃波』を放って
アレスへの攻撃を邪魔するタイミングを狙う
雷は『見切り』避け…ても面倒そうだ
下手な対処をするより
お前に任せるぜアレス!
…ただし怪我すんなよ
防御を任せる分
お前の攻撃する隙も作ってやるよ!
風の『属性』を剣に纏わせ
【蒼牙の刃】を
下から上に
地面を削りながら
石の礫を巻き込んでぶつけ怯ませる

準備はいいかアレス
思いっきりいくぞ
相手に隙ができたなら
『全力』の魔力を込めた【蒼牙の刃】をアレスと同時に
さっきよりもっと強く
アレスの攻撃への追い風のように

悪いが、お前の棲みかはここじゃねぇよ
骸の海に帰るんだな



●重ね射る光
「セリオス――ここは、僕に」
 前に出るを厭わない勇気は常に目映く、その胸にありながら。常は穏やかに見守るように、真っ先に駆け出しがちなセリオスの影に添う、双星の騎士。
 自分が一歩を踏み出す前に、それを制したアレクシス。それを、セリオスはいいぜと素直に受け入れた。ありがとうと笑った瞳は一瞬、険しい視線を彼方に手向けた騎士の体には、既に魔力が巡っている。
(「――力を、貸してくれ」)
 踏みしめる地から流れ込む魔力を、雷の気を封じ込めるように解き放つ。身に馴染んだ剣術よりは慣れぬ魔法であるけれど、迷いは見えない。敵意を一身に引き受け、岩場から岩場へと飛ぶアレクシスを、雷撃が追う。敵の視界にまだ、友の姿は映らない。
「ふん、たまにはアレスも楽しませてやらねーとな。あいつが目立ってくなら――」
 自分の立ち位置も、いつもとは逆。ふと笑みを作った唇に上る歌声は、彼の騎士のため洞窟に響き渡る。
 燃えるような夕暮れを彼方に、洞窟へ入ってからどれほど時が経っただろう。雷の刃と地の刃、アレクシスと魔力の剣を交わすウミウシが頑なに守る出口の先で、星はもう瞬いているのかもしれない。そこにある一つ星――赤い輝きよりもより近く、眩い傍らの星を胸に想ってセリオスは歌う。
「赤星よ、この声に響き合え。その輝きをなぞる騎士の力となれ――俺がいる限り、ただ怪我なんてさせねぇからな!」
 笑う声が存分にやれと告げている。
 星々の加護宿す地上の鳥の囀りに、地の魔力閃くアレクシスの魔法の剣戟が力を増したことに気づいたのか。青冴える鰭を震わせて解き放った電撃は、セリオスのもとへ。
 見切り躱すべきかと迷う刹那も与えない。
「星を護りし夜明けの聖光、彼の者を守護せし盾となれ!」
 任せてと青い瞳が笑う。目の前に築かれた清らなる光の守護障壁が、駆け来る雷撃を弾き飛ばす。
「――ははっ、やるじゃん」
「ああ、僕だってセリオスに怪我をさせるつもりはないからね!」
「ふん、そんなこと分かってる!」
 来るという予感があった。だからこそ守りを布かず、集い来る風の魔力を次なる剣の一撃の為に束ねたのだ。
「準備はいいかアレス、思いっきりいくぞ!」
「いつでも準備は出来ているよ。――いこう!」
 雷撃を弾いた盾が光に解け、アレクシスの手に輝く剣へ収束する。風と光、並び立つふたつの星が重ねて放つ衝撃の波は、眼前に輝く蒼の雷光を打ち消さんばかりに駆け抜けた。
「悪いが、お前の棲みかはここじゃねぇよ」
「ああ、譲れないのは此方も同じ」
 ――この地は返してもらう。決意を映した笑みがふたつ、魔法の輝きに浮かび上がる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

ウミウシという名前は、いつ聞いても不思議に感じるものだな。
俺も生き物に詳しい訳では無いから分からないが……あれは食べられないと思うぞ。

悠々と空を泳ぐ様子は美しいものがある。
さりとて、あちら側に敵意がある以上、眺め続ける訳にもいかない。

さて、始めるとするか。
しかし、ただの剣では無いとはいえ、流石に空中で雷を扱う相手に使うのは悪手だ。
ならば、風の精霊の弓を使おう。
的の大きさと移動速度を考えれば、まぁ……一発や二発は当たるだろう。

リリヤの作った金属の波を利用し安全を確保したら、よく狙い澄まして撃ち抜く。
タイミングは、そうだな……放電の瞬間を狙おうか。


リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と

ふしぎないきもの。ひらひら、ぴかぴかしています。
うみうし、……うし……?
ユーゴさま。あれは、ほんとうに海にもいるのでしょうか。
たべられますか?

空を泳ぐ様子を見上げて。
うつくしいとは思うけれど、ここにいてはいけないもの。
なわばりあらそいには、まけません。
はい、ゆきましょう。

毒ではなくとも、びりびりするのです。
触れないように気をつけて、……あわわ。
びりびりが地面に溜まってしまうのは困ります。

鐘を鳴らして、金属の波を立てましょう。
落ちる蒼雷を集めるように。
安全な道を、つくるのです。
暴走させないよう慎重に、高く跳ねた波は檻のよう。
ユーゴさま、ようく狙ってくださいましね。



 ひらひら、ぴかぴか――空にあれば、まるで知られざる宇宙に棲む空想の生きもののようだ。帯びる深い青のグラデーションを、自らの放つ青白い火花のひかりで染め上げる、大きないのち。
「うみうし、……うし……?」
 見慣れた生きものを思い浮かべたのだろう。首を傾げるリリヤの頭にユーゴがぽんと掌を置けば、輝く瞳が見上げてくる。
「ユーゴさま。あれは、ほんとうに海にもいるのでしょうか」
「らしい。それにしてもウミウシという名前は、いつ聞いても不思議に感じるものだな」
「たべられますか?」
 俺も生き物に詳しい訳ではないから――と暫し言葉に詰まり、思案に留めた呼吸をそっと吐き出す。
「……あれは食べられないと思うぞ」
 慰めるようにもう一度頭をぽんと叩き、ユーゴは既に仲間たちと交戦するその生きものを見上げる。悠々と空を揺蕩いゆく様子は観賞魚の如く美しく、光帯びる姿もいっそう彩りを引き立てている。
 しかし、いつまでも眺めていていい相手ではない。仲間への攻撃が嵩む前にと喚び出したのは――気難し屋の風の精霊。
「出番だ。機嫌よく射ってくれよ?」
 宥めすかす声に身を震わせ、ユーゴの指が触れた風の髪が弦を結ぶ。だいじょうぶですかと窺うリリヤにああ、と応え、男は力強く弓を引く。
 慣れたる剣は雷相手に向くまいと、選び取った二番手なれど――馴れ合い、戦預けられるほどに時を重ねた今はもう、勝手知ったる仲。
「――当たるように射ってるからな」
 ひゅん! 駆け抜けた風の矢が、こちらへ頭部を擡げたウミウシの額に突き刺さる。途端、反撃の紫電がばちばちと荒れ狂い、洞窟を跳ね回った。
「おっと、くわばらくわばら……!」
「毒ではなくとも、びりびりするのです」
 猟兵たちの打ち立てた数多の避雷針が、戦場に僅かな安全地帯を作り出す。きゃっ、と声を上げるリリヤを小脇に抱え上げ、すたこらと安全地帯に逃げ込んだ男はふと、後ろに鐘の音を聴く。
「リリヤ?」
「わたくしの戦いがまだなのです。なわばりあらそいには、まけません」
 ラルルルラ――響く鐘音に波立つ風が、地質に含まれる金気を纏め上げていく。きらきらと地に結ぶ金属の輝きが、紡がれ、織られ、創り上げるのは大波小波。深く刻まれた金属の谷は、抗うように放たれる蒼雷を引き寄せて、とめどなく雷が落ちる戦場に安全な道を拓いていく。
「びりびりが地面に溜まってしまうのは困ります、……あわわ」
 ぱちんと跳ねた火花にびくりとしつつ、下ろしてくださいとリリヤは乞う。
「ユーゴさま、いまなのです。ようく狙ってくださいましね」
「……ああ、リリヤの作った機会を無駄にはしない」
 男は笑い、下ろしたリリヤの代わりに弓をとる。また当たる、と過信はしない。しないことが、次の一手をより正確に――外れ難いものにする。
 狙うは放電の瞬間。戦場を照らす蒼き光が、リリヤの波に呑み込まれたその一瞬。
 逆巻く風を纏った一射は、逸れることなくウミウシの胴へ突き立った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

スティレット・クロワール
鈊君(f19001)と

また随分と美しいものに出会ったね。
うーん確かに、和解はできそうもないよねぇ。握手したら感電しちゃいそうだしね
えーヒレっぽい所とか?

感電ビリビリは私も困るな
私も少し働こうかな
冥府の衣を発動。
雷光には成れずとも、空を行く君と遊ぶには、足りそうでしょ?
近接でサーベル戦を

加護の全ては我が騎士へ
道を拓こう。さぁ、叶えておくれ?
だって、たまには主っぽい所も見せておくべきだろう?
見惚れちゃってもいーんだよ?(冗談っぽく

盛大な雷だね。速度をあげて回避を頑張るよ
鈊君に怒られないよう怪我なく行こうか

騎士が火傷を受ければむ、として
全部終わったらほっぺぐにぐにしようかな
しーん君、あとでお説教ね?


黒金・鈊
スティ(f19491)と

光って、浮いている……。
外見は多少、愛嬌があるか?
まあ和解は無理そうだが。
握手。仮にできるとして、どこを掴むんだ……?

直接触れるのは危険だろうが、他にやりようもない。
傷口より炎を放ち、剣にも炎を纏わせ、灼くように斬りつける。
雷撃を躱す手段が見当たらないのが、問題か。

援護、感謝する。
あいつが君と握手したいと言い出す前に、悪いが還ってくれ。

前に出たがるスティに舌打ちをひとつ。
仕方ない、道は拓いてやる――その代わり。
スティ、怪我をするなよ。
……面倒だからな。

見惚れ……って。
奴に反撃が来そうなら、炎を伸ばしながら庇う。
火傷なら俺が引き受ける。今更ひとつ増えても気にならんさ。



●護り手の矜持
 織り重なる仲間たちの攻撃に鰭を裂かれ、怒りに蒼白い火花を彼方此方へ散らしてもなお、空をゆく巨躯は幻想の生きものの如く美しかった。――けれど、
「また随分と美しいものに出会ったね」
 スティレットの眸は綻びながら、呟きはあまりに軽く。言葉程ではないのだろうと思わせる飄然とした語り口に、確かに本心を携えているのだから困ったものだ。
 恐らくそれを最も近くで知る身であろう。鈊は湿った洞窟の気に、小さな吐息を溶かす。
「外見は多少、愛嬌があるか? まあ和解は無理そうだが」
「うーん確かに。握手したら感電しちゃいそうだしね」
「握手」
 あの体のどこでするというのか。とぼけた答えに問い返せば、えーヒレっぽい所とか? と酷く緩い答え。溜息をもう一つ、次の問いは返さなかった。
 触れる危険を承知の上で、他になしようもない。傷口より噴き出す炎は【剣】に流れ、虚空を照らす燈火の如き剣戟は、刻みつける傷以上に苛烈な炎を以てウミウシを灼き焦がす。
 仲間が作り出した避雷針が、どこを狙うでもない放電を吸い上げてくれるのは幸いだった。そして落下した電撃が生み出す足許の帯電も、金属の波が抱き込んでくれるお陰で足場には困らない。だが、
「……、流石に至近では躱す手も見当たらないか」
 降りる暇も許さず翻る反撃を避けることばかりは、容易ではない。やむを得まいと受ける覚悟を定めた男のこめかみを、一陣の風が吹き抜けた。
「感電ビリビリは困るしね。私も少し働こうかな」
 安穏と後ろに在るばかりではない。青白き魔法陣に照らし出された司祭の顔ににっと浮かんだ笑みは、あまりに不謹慎な色を帯びている。
 紡ぐ祈りは天空の神に向かうにあらず、冥界のそれへ。敬虔に、されど薄暗い響きを帯びて、敗北の目より鈊を押し上げる。
「冥府の棺に告げよ、凄惨にして蒼古なる青。――さぁ、我が声を聞く者」
 軽く、しかし纏うものは重く。その風を他人がどう思うかは知れない。ただ、強烈な反撃を和らげるそれは、鈊には心地好く添った。
「雷光には成れずとも、空を行く君と遊ぶには足りそうでしょ?」
 サーベルを手に前線へ躍り出る男の眼が、鈍く輝いた。絶え間なく斬り連ねる見えざる斬撃に、援護への感謝を告げはしたものの――自身よりも前に出られるのは些か、
「……出過ぎだ」
「えー、だって、たまには主っぽい所も見せておくべきだろう?」
 見惚れちゃってもいーんだよ? とにこり、笑う頭上に爆ぜる雷光。絶句する暇もない、男の腕を引き寄せて翻す一閃で叩き返せば、ふふ、と悪びれない笑みが返る。
「大丈夫、道を拓くのは君だからね。さぁ、叶えておくれ?」
「……ち、怪我をするなよ、スティ。……面倒だからな」
「あれ、もう怒ってる? それじゃ、これ以上鈊君に怒られないよう怪我なく――」
 行こうか、と告げた傍から駆け降りる雷撃に、身を挺して穿たれた鈊は素知らぬ顔。火傷のひとつ増えたところで気にならん、と断りもなく戦い続ける鈊を、今度はスティレットがぐいと引き寄せた。
「……な」
「しーん君、あとでお説教ね? ほっぺぐにぐにの刑」
 張り付いた笑みを浮かべる男の眼に宿った光が、雷撃にすら怯まぬ鈊の背を冷やした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

だいぶ寒さも和らぎましたね、ラナさん
あと少しです、頑張りましょう

それにしても大きいな…何食ったらあんなにでかくなれるんだろ
怖いですか?大丈夫です、俺がついてます
俺も雷は得意なのでオブリビオンには負けません
雷属性の魔力に破魔と麻痺の力を乗せた願い星の憧憬で攻撃を
動きを封じられれば攻撃する隙も出来るはず
敵の雷は守りのオーラを展開させて弾きつつ
ラナさんを狙うなら庇える位置取りを心がけての立ち回りを

オブリビオンにそういう情緒が理解できるとも思えないけど
きっと独り占めしたいくらいに綺麗なんだろうな
けどここはオブリビオンがいていい場所じゃないから
大人しく骸の海に帰ってもらいますよ


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

はい、過ごしやすくなってきましたね
でもちょっと、冷えた身体に外の空気が恋しいです
早くお仕事を終わらせましょうね

突然現れた敵の姿に少し驚いて
大きい、ですね
あと、ちょっと不気味です…色は綺麗なんですけど
ふふ、はい
蒼汰さんが傍に居るから大丈夫です
この場所を返して貰う為に、一緒に頑張りましょう!

雷は綺麗だけれど、攻撃には注意をして
ウィザード・ミサイルで、全てを焼き尽くす想いを込めて
蒼汰さんと協力をして、相手の動きを見ながら狙います
必要なら回復を

何が気に入ったのか、私達には分からないですけど
でも、オブリビオンをこのままには出来ないですから
綺麗な場所は、独り占めしてはダメですよ



「もう寒くはないですか? あと少しです」
 ばちばちと火花が躍る戦いの佳境にも、蒼汰は自分を顧みる暇もなくラナを気遣ってくれる。その優しさにおっとりと綻ぶ笑みで大丈夫と返し、山彦のように蒼汰さんはと訊き返す。
 やはり返るのは頼もしい笑みで、ラナはまたひとつ嬉しくなる。
「それにしても大きいな……本来は指先くらいって言ってましたよね。何食ったらあんなにでかくなれるんだろ」
 岩陰に身を置き、狭い空をうねりながら輝くものに吐息を零す。小さきものから大きなものへ、海に棲むものから空を泳ぐものへ。戻ること叶わない変性を遂げ、世界と相容れることができないものは、還るしかないのだろう。
「本当に、大きい、ですね。あと、ちょっと不気味です」
 纏う色は綺麗なのにと惜しむように呟けば、蒼汰は瞬いて、
「怖いですか? 大丈夫です、俺がついてます」
 見たくなければ俺の後ろにと、大きな背に隠してくれる。
 頼れるようにと殊更に意識して振舞う訳ではなくも、ラナの目には確かに頼れるものと、好もしく映る。ふふ、と柔い笑みが零れた。
「はい、蒼汰さんが傍に居るから大丈夫です」
 その言葉に息を呑んだ青年に、護ってみせると確たる想いが膨らんだのを、少女は知らない。
「この場所を還して貰う為に、一緒に頑張りましょう!」
「はい、一緒に」
 金色の星のような瞳が、降る星よりも速く敵を射抜いた。
 骸の海より這い上った魔を破る力、苛む痺れで戒める力。指先に集める祈りが、星の瞬きを知らぬ天井にそれらを抱くかそけき光を喚びたてる。
「あれだけ大きい的を外す訳にはいきませんね。――得意の雷で、オブリビオンには負けません」
 来る星は雷の気を帯びて、堂々たる胴体に降り落ちる。自分の上から齎される攻撃があろうとは思ってもみなかったのかもしれない。地に叩きつけられたウミウシは、呆然と身を震わせている。麻痺がその身を捉えているのだ。
 けれど、それも僅かの間のこと。ラナさん、と背後に促せば、神妙に杖を掲げた少女がこくりと頷く。
 星と華とを頂く杖に祈るのは、終わらせること。数多の人が愛する場所、これからもっと多くの人が愛するだろう場所。それを独り占めして近づくものを苛むのなら――この炎に全てを還す。
「あなたがオブリビオンなら、このままには出来ないですから」
 身を擡げたウミウシに、炎の矢が突き刺さる。めろめろと燃え上がる深紅の花の内から、怒りに燃える電撃がこちらへ走った。はっと息を呑んだ瞬間、蒼汰の腕がラナを後方へ引き戻す。
「! 蒼汰さん――」
「大丈夫です。ほら、雷は得意だって言ったでしょう?」
 それでもと慌てて注がれる瓶の中身は、痛みを還す雨雫。高まる力と想いを発条に、青年はもう一度星を喚ぶ。
 空なき洞窟に零れる流星が、災魔との戦いの終わりを告げようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

ふう……ちょどいい涼しさになってきたね
外じゃ避暑地が恋しかったのに
今では逆に太陽が恋しいかも
ヨハンのおかげで寒さもしのげたけど、ね
ふふ。私にできることも、いつだってするよ

アオいウミウシ!
こいつを倒せば、光の花畑にまた人が戻ってこられるんだね
ヨハンも興味あるでしょ?
早く終わらせよう!

UCで攻撃力を強化
天井や岩間に紛れても、雷の光と音で居場所はすぐ掴めちゃう
そもそも――『闇』はヨハンの領域
君のサポートに頼らせてもらうよ

電撃は初撃さえ【見切り】に成功すればこっちのもの
戦闘序盤は【鎧砕き】で防御力を削ぎ
ヨハンがフォローしてくれてるうちに【力溜め】
【2回攻撃】で深い傷を負わせたい


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

さっさと終わらせましょうか
涼しいくらいになったとはいえ、
長くいるとまた身体が冷えそうですよ
……まぁ、俺で出来る事があればいつでも

光の花畑は正直そこまで……ですがまぁ、
悪いものでもなさそうですし
なによりあなたが見たがりそうだ
興味ある、ということにしておきましょう

『蠢闇黒』から闇を喚び、地を這わせる
敵位置を把握、断続的な攻撃を繰り出し誘導、彼女が影を捉えやすい場へと追い込む
<呪詛>と<全力魔法>で強化し、障壁も作り出す
雷撃が彼女に向かう場合は闇を当て軌道を逸らす
支援に全力を注ごうか

オルハさんの攻撃と合わせ【蠢く混沌】を
止まれよそこに、そのまま沈め



●蒼の終焉
「ふう……ちょうどいい涼しさになってきたね」
 灼熱の太陽の下ではあんなにも恋しかった涼も、洞窟内の温度に慣れてみれば寒いほど。もう彼方に沈んでしまっただろう太陽が恋しいと、無邪気に笑ったオルハはふと、身を震わせる。
「ヨハンのおかげで寒さもしのげたけど、ね」
「……さっさと終わらせましょうか。長くいるとまた体が冷えそうですよ」
 脱いだ外套をオルハに掛け、ぽつり、
「……まぁ、俺で出来る事があればいつでも」
 ふいと目線を逸らしても、肩に降った温もりも言葉も、いつだって優しい――そんな人だと、オルハの頬もふわり熱が咲いたよう。
「ふふ。私にできることも、いつだってするよ」
 差し当たっては頭上にゆらめく、意地の悪い通せんぼを倒さなければ。戦場をばちばちと賑やかに飾り立てて空泳ぐもの、
「アオいウミウシ! こいつを倒せば、光の花畑にまた人が戻ってこられるんだね」
 彩りにひとときは歓声あげた少女は、しかし倒すべき相手を見失ったりはしない。ヨハンも興味あるでしょ、と強引に青年を駆り立てて、オルハは仲間の放つ攻撃の光に抜き出された敵影を、三叉槍に捉えた。
「君の力、分けてもらうね!」
 洞窟内の輝きが一瞬、弱まったかのように見えた。輝く槍に吸い取られていく輝きは、先刻までウミウシが纏っていたもの。そして当のウミウシの身はまるで褪せたように、美しい蒼を照らす電撃を弱めている。
 俺は正直そこまで、と紡ごうとした青年は、眩しい背中にふと言葉と吐息に変える。害もないなら、興味あるということにしておこう――なにより楽しげに耳を揺らし、きらきら輝く瞳で槍を振う彼女の興味を、自分の言葉で翳らせるのは憚られたのだ。
 ならばそこに至る道は、最短を。ゆらり揺らした指先に輝く銀環に、宿るものを解き放つ。それは全てを喰らう闇黒――今や仲間たちの戦いのひかりが照らすこの場にあって、真なる闇を齎すもの。
 帯電しウミウシの力を高める大地を、流れ出す闇が覆いゆく。声すら発さないヨハンの視線を読み、地に潜り消えたそれは、虚空を揺蕩うウミウシの影から突如湧き上がり――身を捩る敵を逃す暇もなく闇の中に捉えていく。
「その体じゃ隠れようもないよね。そもそも――『闇』はヨハンの領域だもの」
 ここ暫く居ついただけの君には負けない。宣言するオルハの信に応え、ヨハンは無言のうちに立ち上がる影の障壁を作り出す。
 呪詛を含む魔法の才は、決して無意識に受け容れられるものではない筈だ。これまでの経験が、在り方が、ヨハンにそれを知らしめる。けれど、少なくともその闇を舞台に戦い躍る少女は――恐れてなどいない。その力に身を委ね、共に戦うに足るものと信じてくれる。
「そろそろ守る余裕もないんじゃない?」
 初手を損なった電撃は、次を射留めることはない。読み切ったと軽快に跳び躱しながら、オルハはくるると槍を頭上に躍らせる。
 一度では足りず二度重ね穿った槍に、闇色の刃に変じた混沌が降り注ぐ。連携に翻った少女の笑みを油断なく、と視線で窘めながら、ヨハンの口の端にもごく微かな笑みの気配が覗いていた。
 ――かくして、声にならない光の悲鳴が戦場を染め上げる。
 澄明たる水に沈む光まではあと僅かと、猟兵たちに知らしめるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
黒羽(f10471)

不規則に移動する青の光、それに続く耳障りな音
美しいね、実に美しい
そうは思わないかい、黒羽くん

どうせ見惚れるならば
ちょいと大人しくなって貰う方が好都合
煙管に火を入れぷかっと煙を浮かべ、そいつをふーっと
白い靄と青が混ざってそれはそれは綺麗な色に変わるだろう
それをウミウシの鼻先に
……ウミウシの鼻先ってここで合ってるかね?

さあ黒羽くんも思う存分にやっちゃっておくれよ
君の猛る姿にはうっとりするんだから
ほらね、舞い散る氷があんなにも

一服終わって、体が物足りなさを感じたら
…おや、いいのかい?へへ、悪いね、そしたら
僕も一発、いや二発、
鼻っ面に入れてやろうじゃないか


華折・黒羽
ロカジさん(f04128)

海の生物の美しさは余りぴんとこない
ああ、でも

雷電する青は、綺麗だと思います

力の迸る様は
戦好む内の本能を惹き付ける
自身の鼻も掠めたにおい纏う煙が放たれれば
敵の鼻…あれに鼻なんてあるのか…?
とにかくその煙で隙が出来たなら狙うのみ

氷は雷を通さないとは聞くが警戒は怠らず
柄握り締めた屠を構え地を蹴り跳ぶ
氷属性纏わせた刀身で迫る雷を斬りながら本体目指し
多少の傷は耐性にてやり過ごす

間合いにその身を捉えたならば刃先を突き立て
氷点下の氷の花で動きを封じようと
氷に捉えた敵を背に待つあの人の元へ飛ばす

行きましたよ、ロカジさん

後は任せましたと言外に
「物足りないのだ」とその顔に書いてあったから



 不規則に移動する青の光、それに続いて空気を裂く、耳障りな火花の調べ。相対する仲間たちの、鮮やかな手並み。
「美しいね、実に美しい。そうは思わないかい、黒羽くん」
 綺麗に髭を剃った顎をつるりと撫でて、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)はからり笑った。
 怒りに捉われ、落ち着きなく空を泳ぐもの。誰とは知れず、何とは知れず、雷霆を振り撒いてはぼろぼろの鰭を躍らせる。それすら戦いの齎すものなれば、美しいと男は言うのだ。
「……僕にはよく分かりません」
 海の生物の美しさはぴんとこないと、華折・黒羽(掬折・f10471)は正直に告げる。それではあまりと思ったか、それともただの気紛れか、同じように見上げた眸を眩しげに細めて、呟く。
「雷電する青は、綺麗だと思います」
 裡に飼う、戦いに駆り立てる獣の本能を今はまだ見えざるままにしていることが、対照的なふたりに通ずる数少ない共通項。
 そうだねぇとロカジが笑う。こんな目映い光景ならば、長々見惚れていたいもの――けれど、と煙管に火を入れて、
「あれじゃ少しばかり落ち着きがなさすぎる。ちょいと大人しくなって貰おうか」
 まるで戦めいたところなく、ウミウシの真下に彷徨い出るロカジの振舞いは、その癖一片の油断もない。
 薬屋たる男には調合はお手の物。えもいわれぬ薫香を細く細く吹き出せば、白くゆらりと立ち上るそれがウミウシの鼻先を擽った。――鼻先を?
「ねえウミウシの鼻先ってのはここで合ってるかね?」
 獣の嗅覚を持つ少年は、漂う香に微かに眉を寄せる。見上げた巨躯の前後は分かる、けれどあれに鼻があるものか。
「知りませんよ……、――あ」
 合っていたのか、どうか。蒼雷と混ざり合い淡く色づいた白煙に、ぐらり不自然に巨体が傾ぐ。
「あはは、墜落は止めておくれよ? 頭上注意ってね」
 鰭が、尾が、身が、空に泳ぐを止めた。慌てて退避する仲間たちにごめんごめんと詫びた男は、さあ、と手を叩く。
「黒羽くんも思う存分やっちゃっておくれよ」
 君の猛る姿にはうっとりするんだから――期待に満ちた眼差しに気を入れ直すでもなく、黒剣を構えて黒羽は馳せた。
 火花舞う地面を蹴り跳べば、『屠』に集う凍れる気配。冷ややかな氷霜の白を纏った斬撃は、酔いどれたように無造作に飛ばされる雷撃を右へ、左へと弾いていく。体表の全てを覆う大気を伝い来る以上、その道を完全に潰すには至らないけれど。
「……この程度の傷であれば」
 白い頬を、毛皮纏う手足を引き裂く紫電をものともせずに。緩慢に身を起こしたウミウシの体に、
「……遅い。花が枯れ堕ちるまで、――動くな」
 黒剣に貼り付けた『縹』の符がから噴出する冷気が、昂る戦意に熱孕む洞窟を、白に塗り潰したのだ。
 煙る視界にも標的を見失いはしない。剣戟は氷の華を咲かせ、足りぬとぶつかり散り急いだ花弁が躍る。
「……ほらね、舞い散る氷があんなにも」
 秘めたる戦意が放たれる瞬間は、こうも美しいとロカジは目を細める。このまま終わりまで見届けようかと過った胸で、何かがちりりと鳴いた。
「――ロカジさん」
 傍らに戻り来た少年を追う災魔の呼吸は荒い。けれど矜持はなおも鰭を前へ前へと躍らせて、黒羽のもとへ迫ろうとする。何故と問う顔に、
「……物足りないのだと、その顔に書いてあります」
 それなら何故、貴方が結ばないのか。口よりもはっきり物を言う眼差しに、ロカジは笑う。
「いいのかい? へへ、悪いね――そしたら」
 磊落の気が温度を変えた。心の枷を外し、湧くに任せた血のままに、ロカジは拳を握り固め飛び出していく。
 最後の反撃がばちり、と頬を叩く。走った痛みなど、男を猛り逸らせるだけ。
「一発、いや二発。耐えておくれよ、それで」
 ――終わらせてみせるから。
 叩きつけた拳に火花が駆け抜けた。けれど、それがお終いの合図。

 光が沈んでいく。蒼が沈んでいく。
 辺りに漂う紫煙と氷気はもう、随分薄まっていたけれど――その中に静かに溶けゆくように、爆ぜる光と鮮やかな蒼は、跡形もなく消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『飛沫煌めく水面』

POW   :    元気に賑やかにはしゃぐ

SPD   :    遠泳や潜水にチャレンジ

WIZ   :    優雅にゆったりくつろぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●光の花畑
 入り口の夕晴れから氷雪のち雷を経て、辿り着いた出口の先には、快晴の星空がまるく、大きく頭上に切り取られていた。
 はるか昔、天井が大きく崩落し陥没したのだろうその場所は、洞窟とは本来ひと続きのものだ。底に澄んだ湧水を抱く巨大な天然の井戸、その壁面はこれまで見てきた洞窟の壁とほぼ同じ。陽光によって少し乾いた灰白色に、上方から枝垂れる蔦が緑を添えている。
 人の手の入った形跡はほぼ、ない。訪れる人々はこの場所の在るままを愛し、楽しんできたのだろう。
 きらきらと瞬く星たちからゆっくりと視線を落とせば、天上のかそけき輝きを遮らぬほど、やわらかに。
 滾々と、豊かに――けれど静かに湧き出でる水の波紋の下に、求める花色の灯りはゆらめいていた。

 ――フィオライト。花の記憶を宿す石。
 地上ではただ、様々な大きさの球形の結晶を結んだ灰白色の石に過ぎない。けれど水に馴染めば、それはえも言われぬ光を咲かせる。
 ひと色には留まらない。桜色に菫色、蒲公英色に菖蒲色。名のついた色に留まらず、花のようだと謳われるのは、すべてが淡く優しく色づいた光を抱くからだ。
 ひと色と思えたものを湧く水の流れが撫でゆけば、別の色が遊ぶ。まるで洞窟に根付くことがなかった花の夢を、幻を宿しているように。
 冷たく澄んだ水底は、幾千幾万のそんな輝きで満たされている。

 蔦のカーテンが入り口を塞ぐ横穴で着替えを済ませたなら、湧水溜まりの周囲を巡り、好きな場所から水に入ることができる。
 洞窟の出口から遠く離れるほど、水はなだらかに深くなっていく。浅瀬で水に慣れてから奥へ泳ぎ進んでも良いし、望むなら初めから深みへの潜水を試みてもいい。
 この湧水溜まりの構造は単純で、地上から見える以上に進める場所はない。だが、水の中から望むひかりは、地上に見るそれとは異なる色合いを示してくれることだろう。
 周囲には洞窟内部とよく似た、角のとれた岩が水面に突き出た場所も多くある。のんびりと過ごしたいのなら、そこに座って冷ややかな流れに足を浸すのもいい。
 気に入った鉱石を見つけたら、ひとつは持ち帰ることが許されている。水に浸せば淡く発光するそれを水とともに瓶に籠めれば、やさしい灯りになるはずだ。
――ただし一つだけ、それはこの場所を維持するための、大切な決まりごと。
 この他に、決まりごとは二つだけ。
 この清冽な水を保つために、汚れとなるものを持ち込まないこと。
 この美しい光景が永久に続くように、壁面に生まれようとしている新たなフィオライト鉱石には、手を触れないこと。
 見咎めるものはなくとも、この場所に真に愛する人々によって、守られてきたことだ。

 見上げれば星の彩、見下ろせば花の彩。水底の光の花畑は、久し振りの客人を優しく迎え入れるだろう。
 真昼の熱をじっとりと抱えたままの夜気の下で、きりりと冷えた水に身を浸し、光を泳ぐ。
 ゆるやかに巡る流れに遊べば、熱に疲れきった体も、ひとときの安らぎを得られるのかもしれない。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
水着着用

すごい……!本当に、花畑が光ってるみたい!
ねぇヨハン、近くで見てみようよ

彼の手を引いて、腰が浸かる程度の深さまでゆっくり進んで
手は水中でも繋いだまま
心地好い水の音が優しく耳に響く

水の冷たさにも慣れてきちゃった
気持ちいいね

フィオライトはひとつなら持ち帰ってもいいんだっけ
ヨハン、お揃いの色を持って帰らない?
水に浸して部屋に飾っておくの
そしたらこの景色をいつだって思い出せるよね
会えない時でも、君がすぐ隣にいるように思えるかな

あ、あっち!
やっぱりあった。ほら、同じ色
今度は浅瀬に手を引いて、水底で隣り合う露草色の前へ
目配せしてから一緒に拾い上げる
……大切にしなきゃ


ヨハン・グレイン
オルハさん/00497 と
水着着用

なかなか美しい光景ですね
オルハさんが好きそうだ
それだけでも見れてよかったと思いますよ

行ってみましょうか
素直に手を引かれるままついて行く
少し前なら濡れるのは嫌だと文句でも言っていたところだが
……今は違う
心地よさそうな姿を見れば自然と頬も緩むもの

ええ、たしか。一つならいいという話でしたね
揃いの色か。好い物があれば持って帰ってみましょうか
この景色を思い出すための石
そうやっていつか思い出の物で溢れる部屋を想像してみれば
それはきっと……そう悪くないものなのだろうと、思えるから

良い色ですね
この水の景色を映したようだ
若草色の瞳を見てから、拾い上げる
ああ、そうだな
大切にしよう



●露草
「すごい……! 本当に、花畑が光ってるみたい!」
 水際へ飛び出すオルハの背に、チョコミントカラーのフリルが揺れる。
「ねぇヨハン、見てる?」
 くるりと身を躍らせて、広げた両手でオルハが示した水場の景色。先刻、自分はそこまで――という言葉を先刻呑み込んでいたヨハンではあるけれど、水面に閃いては消え、また点く色は、頷くに足るものだ。
「――なかなか美しい光景ですね。オルハさんが好きそうだ」
 それだけでも見れてよかった。真正直な言葉に赤く染まったのはオルハの方。えへへっと笑って伸ばした手は、もっと近くでと彼の手を引く。
 つまさきから膝へ、腰へと澄んだつめたさに浸してゆけば、水着の上からヨハンが纏う薄衣がゆらりと浮かび、光を抱いた。裾の闇を透かすひかりに、オルハは綺麗、と目を細める。繋いだままの掌のぬくもりは、冷えた水の中にあってより鮮明だ。
「どこから湧いてるのかな……この音も綺麗。水の冷たさにも慣れてきちゃった。気持ちいいね」
 水音に獣の耳を揺らし、世界の全てが心地好いとでもいうように、オルハは笑う。その笑顔は、少し前なら濡れるのは嫌だと憚らず音にしただろうヨハンの口を塞いで――それどころか、微笑みらしきものを浮かべさせすらする。
「ねえ、ヨハン、お揃いの色を持って帰らない?」
「……そうですね、好いものがあれば」
 ひとつならいいという話だったと、水底を示す手に視線を向けた。ふたごの色を探しながら声に零れるオルハの想像が、ヨハンの脳裏に浮かぶ部屋に、柔らかく鮮やかな色をひとつ、燈していく。
 ――水に浸して部屋に飾っておくの。そしたらこの景色をいつだって思い出せるよね。
 ――会えない時でも、君がすぐ隣にいるように思えるかな?
 言葉はまるで沁みるようだ。水底に見出すひかりは、この景色を思い出すためのもの。
 けれど、こうして共に過ごしてゆく日々の中、思い出の品をひとつ、ふたつと部屋に飾るたびに、心にもひとつ、ふたつと暖かなひかりが燈しゆかれるのだろう。それを思い描けば、
(「それはきっと……そう悪くないものなのだろう」)
 そう思えて、微かに唇を緩めたヨハンを、あっ、と弾む声が呼ぶ。
「あっち! ――やっぱりあった。ほら、同じ色」
 浅瀬に膝つくふたりを、仲良く並んだ露草の彩がここだよと呼んでいた。若草と藍のふたつの瞳が重なって、頷き合う。
「良い色ですね。この水の景色を映したようだ」
「うん! ね、これにしよう。……大切にしなきゃ」
「ああ、そうだな」
 拾い上げた掌の中、先刻までの輝きが幻だったかのように沈黙する小さなふたごの石。それは水満ちる瓶のなか、日々を過ごすふたりの傍らに、揃いの光を取り戻すのだろう。
「……大切にしよう」
 水音の中に落ちた小さな囁きを、オルハは聴き留める。水底の石よりも眩い笑みが、ふわりと咲いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
なんて美しいの
私達フェアリーは確かに冒険者の導き手だけれど…こんな所をいつまでも守って暮らせたら
「それはそれで幸せでしょうね…」
此処を守って生きるのならパートナーは人ではなく場所
種族柄抱いた夢を捨てられない私にそれは選べないけれど

古きと新しきを繋ぐのは命
水、光、そして緑…
ああよかった、此処が荒らされずに済んで
今尚、このまま残すことを選んでくれる人に恵まれて

水に入ることは望まないわ
私は泳げないし、水中の世界も見たいけれど…折角水面の上を飛べるから
ああでも、水底で紫陽花の色を灯す一粒だけはそっと念力の手で頂いていきましょう
此処を永遠に覚えていたい
願わくばまた来たいわね



●紫陽花
「――なんて美しいの」
 藍色の星の夜。その足許に広がる水面を、水底から浮かび上がる七色のひかりがゆらゆらと揺らしている。
 氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は息を呑み、なだらやな波を立てる水の上をゆっくりと翔けてみた。連れる風がさざなみを立て、光がまた変化して、解いた息は感嘆に染まる。
「……こんな所をいつまでも守って暮らせたら、それはそれで幸せでしょうね……」
 フェアリーは、冒険を助ける『旅の導き手』と呼ばれるもの。レインもまた、その一人に相違ない。
 この場所を守って生きるなら、パートナーは『人』ではなく『場所』。それは望む夢とは道を違えるから、選べない。けれど、
「ああよかった、此処が荒らされずに済んで」
 心からそう思う。水と光、そして緑。自然の抱く宝物のような場所を、人々が繋ぎ、猟兵が取り戻して今、ありのままがここに輝いているのだ。あまのじゃくな瞳は、このひとときばかりは光を映し、優しく綻んでいた。
 水の上を滑るように翔けるひとときを楽しんで、ふと、レインは水底に目を留める。鏡の中の自分の瞳によく似たひかり。紫陽花の色。
 細やかに羽搏かせる翅はそのままに、水面に向けた小さな両手からふわり、水底の揺らぎに似た淡い光の手が放たれて、見出した色をレインのもとへ持ち帰る。
 その小さな一粒も、レインには抱えるほど。風に触れ、光を眠らせたそれを落とさぬように抱き締めて、夜の底の光を見渡した。
「願わくは、また来たいわね」
 ――此処を永遠に覚えていたい。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァルダ・イシルドゥア
わ、わた、私、こういった装いは、はじめてで
……じ、ジナさま……!

夏の楽しみを自分に教えてくれないかと
背を押して欲しくて、縋るように名を呼んだ
纏った水着
宵色のワンピースは、見上げるそらのいろに似て

おまつりのときは、お外に出られなかったのです
その……、……川遊びをすることは、あったのですけれど

浮いてしまうのではないか
背伸びしすぎてはいないか――、
そんなことばかり考えてしまって
でも……ふふ
勇気を出してよかった

泡がひかりを抱いているよう
とても、……とても、きれい

ね、ジナさま
もうすこし深くに進んでみませんか?
大丈夫、手を繋いでいきましょう
顔をつけられるようになったら
連れて帰る泡の花を、探してみましょうね



●金木犀
「……じ、ジナさま……!」
 呼ぶ声に、浅瀬で振り返った少女は笑って手を振った。
 ぱしゃぱしゃと水を掻き近づくヴァルダの纏う水着は、ぽっかりと切り取られた空に似る宵色のワンピース。お似合いなのです、と目を輝かせるジナに、思わず頬を染める。
「おまつりのときは、お外に出られなかったのです。……川遊びをすることは、あったのですけれど」
「わあ、今年初めての水着なのですね! 大丈夫です、とっても素敵ですよ」
 浮いてしまうのでは――それとも、ああ、背伸びのしすぎかもしれない――不安にくるくる巻かれるヴァルダを、慌てて励ます少女。その様子にくすっと笑みが零れた途端、とくとく歌う胸の音が、少しずつ落ち着いていく。
「ふふ、勇気を出してよかった」
 そうしてようやく、自分の中から外へ、心も視界も広がってゆく。腰まで浸かったその場所の輝きに目を瞠って、
「泡がひかりを抱いているよう。とても、……とても、きれい」
「きれいですね。ヴァルダ様や皆様に守っていただいた光なのです」
 感謝に目を細めるジナへ、ね、と誘いかける。
「……ジナさま、もうすこし深くに進んでみませんか?」
「えっ」
 もう少し練習を、とそわそわするジナの手を、今度はヴァルダが励ますように握る番。
「大丈夫、手を繋いでいきましょう。その、顔はつけられますか……?」
「そ、それはできます! ……行きたいです!」
 水の中で思うように動けないだけであるらしい。ヴァルダはにっこり綻んで、繋いだ手をそっと深みへ誘っていく。
 こぽこぽと泡の音が耳を埋める。どこからか湧く水とともに現れる細やかな泡を辿れば、ひときわ目を惹く色がそこに咲いていた。
 揺らめく熱の色。――金木犀の花のような、ヴァルダの瞳に似るひかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロリーナ・シャティ
静かで、綺麗な所…
イ、イーナ、泳ぎ方って分からない…はず
水見てても何も思い出さないから、多分
それに、もし泳いでる時に何か怖いって思っちゃったらこんなに綺麗なのにきっと壊しちゃう
来てる人にも、迷惑かけちゃう
すごく浅い所なら、服の裾を持ち上げて入ってもいい、かな…
靴と靴下はちゃんと脱ぐから
水の底でぽわぁ~ってしてる石、1つでいいから欲しい、な
もし水着の人しか入っちゃだめだったら……あきらめ、る
人とお話するのも苦手なのに、お願いするなんてイーナには…できないよ
折角怖くないところに来れたんだから、それだけでも十分、きっと
でももし一粒もらえたらとっても嬉しい(色お任せ
大事にするね



●蒲公英
「静かで、綺麗な所……」
 少女と見紛いそうな大きな緑色の瞳に、光を抱く豊かな湧水を映して、ロリーナ・シャティ(偽りのエルシー・f21339)は立ち尽くしていた。
「イ、イーナ、泳ぎ方って分からない……はず。水見てても何も思い出さないから、多分」
 冷たく、ひたひたと満ちて、きらきらと輝くもの。あやふやな記憶のどこかにその感覚が残っていまいかと手繰り寄せるも、甲斐はなく。浅瀬にしゃがみ、指先でちゃぷちゃぷと戯れながら、自らを『イーナ』と呼ぶ少年は不安そうに眉を寄せた。
(「もし泳いでる時に何か、怖いって思っちゃったら……こんなに綺麗なのに、きっと壊しちゃう。来てる人にも、迷惑かけちゃう」)
 それだけは駄目だ、と頷く。――だって、この素敵な場所はずっと大事にされてきたのだから。この景色がずっと続くように、戦った仲間たちがいるのだから。
 ロリーナはおずおずと靴を脱ぎ、裸足になった。服の裾を濡れないようにそっと持ち上げ、浅瀬に足を浸す。つまさきが触れるたびに、光がころりと転がって、違う色をロリーナに見せた。
 そっと掬い上げたのは、春に咲く太陽の花。厳しい環境にも負けず上を向く蒲公英のような、黄色のひかり。
 誰かの手を借りることなく手に入れた石に、ほっと息を吐く。他人に声を掛けるなんて、ロリーナにはひどく難しいことなのだ。
(「怖くないところに来れたんだから、それだけでも十分って……思ってたけど、でも」)
 掌の中のひかりに、少年は微笑んだ。――大事にしよう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬酔木・炎
気持ちの良い所だねェ、ガウナ
さ、行くよ!

相棒の豹と水面へダイブ!…のつもりが
顔を出してみれば岸に行儀よく座る相棒の姿
何だい、すました顔して。
こんな綺麗な水を見て泳がないなんて勿体無いじゃないか
手で作った水鉄砲でピシャリと水を飛ばせば、どこか迷惑そうな表情で思わず吹き出す
ふはっ、悪かったって

泳ぎを頑張るグリモア猟兵のあの子に声をかけようか
初めましてだし自己紹介からだね
私は炎、こっちはガウナだ。宜しく

アンタに泳ぎを教えてくれる奴は多そうだ、
私は水の中を見せてやりたいな
潜れそうなら行ってみないかい?
私が手を引いて、溺れる様な事にはしないからさ
怖いなら…そうだなァ、顔を浸ける練習からだ。付き合うよ



「気持ちの良い所だねェ、ガウナ。さ、行くよ!」
 ――ばしゃん! 上がる飛沫が、水面に浮かび上がった光を華やかに散らした。
「……何だい、すました顔して」
 水面に顔を出し、頬や額に張り付いた髪を拭いながら、馬酔木・炎(燎原・f20417)は怪訝な顔を岸に向ける。見上げる岩の上、行儀よく座った相棒こと豹のガウナは素知らぬ顔。
「入らないっていうのかい? こんな綺麗な水を見て、泳がないなんて勿体無いじゃないか。そらっ」
 合わせた手からピシャリと水鉄砲を飛ばせば、背けた顔がいかにも迷惑そうで――思わず笑ってしまう。
「ふはっ、悪かったって。そこで大人しく涼んでなよ。……おや」
 練習は捗ってるかい、と声を掛ければ、水に浮かんでじたばたしていた少女が顔を上げた。
「私は炎、こっちはガウナだ。宜しく、グリモア猟兵さん」
「私はジナと申します!」
 ご丁寧にありがとうございます――じたばた。なるほど、と炎は目を細める。水が怖い訳でも全く泳げない訳でもないようだが、舵取りにはまだまだ練習が必要そうだ。
「ねえ、潜れそうなら行ってみないかい? 溺れる様な事にはしないからさ」
 飛び込んだ一瞬、目にした深い水底の輝きを、アンタにも見せてやりたいからと。誘う手にいいのですかと目を輝かせ、伸ばすジナの手を取って、炎はからりと笑ってみせた。
「それじゃあ……そうだね、あの光までだ。行くよ――」
 水を強く蹴り、より深く深くへと。姓に戴く馬酔木の花のような、淡く滲んだ薄紅色を目指して、ふたつの影が泳いでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
【梟】

白の水干袴
被衣を肩に羽織る

傍らから零れる溜息へ
微笑み湛えて

本当に…綺麗ですねぇ

真に感動した時には
却って実直な言葉が出るものだから

浸す足を揺らして楽しむ波紋
ゆったり漣立つ水面が眠りへ誘うよう
清かで優しいひと時に
ほんのり夢心地になりかけたところで
ぱしゃり、
飛んで来たのは――猫掻き、の?

きょとんと見渡せば
更なる水鉄砲の涼に眼を瞬いて

涼しくなれましたとも

ふくふく笑って
水表を撫でるよう手を游がせ
皆へ仕返しの水飛沫

仄かな灯りに煌く雫は
まるで
一つ一つが宝石みたい

水に還りいく其れらを目で追った先
睛に映りし彩りをそっと掬い取る

若葉が如き翡翠の輝きは
いのちの芽吹きの
季節の廻りの物語を聞かせてくれるに違いない


境・花世
【梟】

水底に咲いたひかりはまるで、
夢か幻かと見まごうほど

なんてきれいなんだろう、

見惚れるままに踏みいれば
清らかな感触にようやく目覚めた心地
かかる水飛沫に思わず笑って、
お返しにと掌合わせ――う、むずかしい

見様見真似で水を掬い続ければ
徐にぴゃっと大成功する水鉄砲
涼しくなれた? なんて澄まし顔してたら
気付けばきらきらの滴に濡れて
それさえも楽しくて笑ってしまう

みんなの笑い声響く今が夢じゃないなら、
あのひかりにもさわれるの
伸ばす指の先には帰路に灯る窓のような、
やさしい明るさの梔子色

とぷんともぐって掌に掴めたら
みんなにも見せに戻るんだ
それぞれに選んだ花の彩が集ったら、
ほら、きっと、花束みたい


華折・黒羽
【梟】

猟兵のみの場であれば頑なに隠す事も無し
場に相応しい装い
然し上はやはりフード付きを羽織り

ひたり冷えた水に足を浸し
心地良さに夜空を見上げ一人呆けるひと時
そんな折に足を小突いた何か
視界にははっきりと映らぬそれを拾い上げれば
手に転がったのは露草色の小石ひとつ

…つき草、か

儚さの象りと謳われる事の多い青い花
耳に聴こえる賑わいの音
眸に映る咲く笑顔
どうかこれは、儚いものでない様にと

不意に顔にかかった水飛沫
撃ち合いに巻き込まれたのだと知れば腰を上げ
す、と構える獣の手

─秘技、猫掻き

二射目の飛沫を弾き返した
毛に覆われ水を吸う獣の手では水鉄砲は難しい
ならばと守りに転じて

背伸びは忘れ
束の間の憩いくらいは子供の様に


ロカジ・ミナイ
はぁ…
ハハッ、ついため息が出ちまう様な
美しい?綺麗?神秘的?…んー、どれも陳腐に思えるほど
僕が立った空間はそういう場所だ

見知った仲の4人で揃って足を浸して
大人気なく、ちまっとした水遊びに興じたりなんかして
手のひらを合わせて飛ばす水鉄砲、知ってる?得意なんだよね
おやおや、猫かきとはお見それした!

こっから見える中で一番いい石を持って帰ろう
そう思い立ったら目を皿にしていい色のお花ちゃんを探す
皆はどうかね
僕はね、白いのがいいね
小さい白い花がひとところに集まってる様なやつがいい

欲しいのが手の届かない場所にあるなら
泳いで取りに行けばいい
こう見えて泳ぎは得意よ、スイスイと



●四花
 この場に遊ぶものがすべて猟兵であるのなら、歪と感じるこの姿も、頑なに隠すまでには及ぶまい。普段よりは獣の手足をしっかりと見せる水着姿に、――僅かばかりの抵抗からか、フードのついた羽織りを被り、黒羽はひたり、水際に足を進めた。
 冷たく濡れた感触は心地好く、空を見上げて呼吸をひとつ。瞳を夜天と星に染め、ひとりぼうっと立ち竦んだ踵にこつり、何かが触れた。
(「……?」)
 水の上に拾い上げればすぐに光を失うそれに、ぱしゃ、と水を掛けてやれば、ぼんやりと瞬く。その小石はまるで、藍の星空をひと滴、光に薄めたような美しい輝きを放っていた。
(「……つき草、か」)
 空が零したものだろうかと見上げる黒羽の傍らに、並ぶこころ。
 ――なんてきれいなんだろう。水底に咲いたひかりは幻想に満ちて、夢見る心地で踏み入れた素足を清らかに澄んだ水が攫って。その冷たさにようやく現と理解して、花咲くように笑う境・花世(*葬・f11024)。その傍ら、揺らす足先に生まれる波紋に相好を崩すのは、都槻・綾(夜宵の森・f01786)。
 夢から覚めた娘の傍らで、波の描く光の絵を眺める男はむしろこれから夢に誘われゆくところ。ゆったりとさざなみ立つ水面と淡く揺れ動く彩りは、まるで眠りに誘われているようだと思う。
「ね、黒羽」
「……? はい」
 視線を合わせた花世と黒羽。その頬を、唐突に、不意に――ぱしゃんと撃った水の流れ。先を見れば、にやりと笑うロカジ。
「――水鉄砲、知ってる? 得意なんだよね」
「!」
「あっ、やったな」
 潔くも黒のビキニひとつの珠の肌に零れる雫にまた笑い、花世は合わせた掌でつくった銃口を狙撃者に向ける――けれど。ぷしゅっ、と頼りなく溢れ零れる水弾に、う、と思わず情けない声。
「むずかしい」
「……俺もです」
 黒羽が掬ったはずの水は甲斐なく、ふかふかの毛並みに沁みて流れてしまう。けれど、
 両手を前に構えた黒羽の、静かな眼がきらり、光る。
「――秘技、猫掻き」
 攻撃が難しければ、守りに転じればいい。飛び込んできた二射目をぱしゃっ! と弾き返した黒羽は、
「……あ」
 その水を強かに浴びた綾の瞬きに、ばつの悪い顔。でも、それも一瞬のこと。
「――ええ、気になさらずに」
 にっこりと返る笑み。すかさずなぞった水面から弾き飛ばした飛沫は、黒羽を、花世を、ロカジまでも巻き込んでいく。
 盾となる黒羽の頬に、普段は仕舞いがちな子供心と負けん気が覗くのを見れば、ロカジは呵々と愉快げに肩を揺らした。
「ははっ、おやおや、猫かきとはお見それした! それじゃあもう一射、とびきりのを受けてみるかい?」
 合わされた大きな掌が水を含む、その前に。黒羽の青い視線の意味を知り、花世はきらりと瞳を輝かせる。下手な鉄砲も数打てばなんとやら、攻撃あるのみだ――、
「! 飛んだ! どう、涼しくなれ――ひゃあっ!?」
「ええ、涼しくなれましたとも。でも」
「ああ、そうだねぇ。油断は禁物よ、お嬢さん」
 大人げない顔とて互いに許される仲だ。こんなときさえどこか澄ました綾の柔い笑み、白い歯とともに見せたロカジの人の悪い笑み。ばしゃりと返すお返しも、またまた翻る反撃も、男たちは心から愉しんでいる。
 大当たりに歓喜する笑顔を左右から狙い撃たれて、もう、と花世が眇めた瞳は一瞬のこと。胸の奥から湧き上がる楽しさに、不満はあっさり撃ち崩されてしまった。
 この楽しいひとときが夢じゃないなら、振り返り見る水底の光にも触れられるはず。追撃から逃れるように翻した身をとぷんと水に沈め、花世は色を攫いにいく。
 伸ばした指先が捉えたものは、帰り道にやさしく灯る窓のような、明るい黄色。
「私達も探しに行きましょうか」
「そうだねぇ、僕もどうしようか。こっから見える中で一番いい石は、と」
 滴り落ちる雫に映る光を、宝石みたいと惜しむように見送って、身を屈め探しはじめる綾。傍らをざぶざぶと水を掻いていく背をにこやかに見送った先、おや、と目を細める。
 淡い翡翠の輝きは、いのちの芽吹きの色に似る。それはきっと、季節の廻りの物語に魅せてくれるに違いない。そんな夢想に伸ばした指は、願い通りの色をひとつ掬い取る。一方で、
「さてさて……いい色のお花ちゃん、お花ちゃん」
 鮮やかにして鯔背な彫りを覆う水着に、流れる雫をついと払って、ロカジは青い目を皿にする。
 辺りを埋める彩りは揺れ溶けて、色の群れの中に個を隠してしまうけれど――その中からふと、語り掛けてくるひと色があった。
 彼方に煌めくまっさらな、白。
 おっと遠いかとすいすい泳ぎ出す。光はあっという間に近づいて――伸ばしたロカジの掌の中に、誂えたようにぴたりと収まった。
「……うん、これだ」
 成分が偏ってでもいるものか、球体の全ては光らずに、花の群れめいた白光を表面に揺らす石。満足げに口の端上げて、おおいと仲間を呼ばわった。
「皆はどうかね。見つかったかい?」
 夜を照らす仲間の声にフードの中の耳を揺らして、黒羽はポケットの石を獣の掌に載せた。
 月草色――露草の方が通りはいいだろうか。儚さの象徴と謳われもする花の色ではあるけれど、どうか、と少年は目を伏せる。
(「あの笑顔も、この声も――儚いものでない様に」)
 それを言の葉に変えるのは、とても難しいことだけれど。
「おや、皆よき色を見つけたよう」
 その掌に自分のそれを並べ、綾が笑う。気づけば水の中に集った四つの手の上に、咲く色は白菊、御衣黄、梔子、そして月草。
 四つ色揃えばまるで、
「ほら、ね、花束みたい」
 花世の声に集う色を刻み付け、眼差しは水面へ分かれていく。花束に水底の色、はぁ、と思わず零れる溜息にロカジは笑った。
「ハハッ、ついため息が出ちまう様な」
 美しい? 綺麗? それとも神秘的――どれも胸に躍る思いを内包するようで、思いそのものではないけれど。
「ええ、本当に……綺麗ですねぇ」
 持つ言葉では語り得ぬ場所に立っているのだと、傍らの綾の吐息に知って、男は満ち足りたふうに双眸を和らげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・凛是
ちょっと涼しい…
お節介が見つけてくる場所は、好き
だからか、なんとなく足を運んでしまう
今回も良い場所
水がいっぱい、きらきらしてる(尻尾ふり)

泳ぐのは嫌いじゃない
そう言えば、お節介……泳ぎ下手だった
この前も手伝ったし……こういうとこ潜れるのか?
うっかり滑って溺れたりしないか、ちょっと心配

お節介見かけたら、なぁと声をかけ泳げてるか様子見
まだ泳ぎが不安ならちょっとくらいは練習つきあってやるけど

水の中は気持ちいい
あ、あそこの石きらきらして気になる(そわ)
……お節介も潜る?

ここを守ってきた人たちは、すごく優しいと思う
ころりと、落ちてるひとかけらを拾って帰ろう
…でも瓶とかない。お節介、なんかいい瓶持ってる?



●福寿草
 見開いた夕陽の瞳が、きらきらと染まっていた。
 その顔に笑みはなくても、茜色した終夜・凛是(無二・f10319)の尻尾は正直者。ありふれはしない光景に、躍る心を語ってしまう。
(「水がいっぱい、きらきらしてる」)
 空の光の照り返しではなく、内側から乱反射して広がる光は眩しくも、優しい。泳ぐのは嫌いじゃないし、うだるような夜にはこの涼しさもいい。
 お節介焼きはともかく、ジナが見つけてくる場所は好きで、つい足を運んでしまうと水を蹴って――そういえば、と。
「……あ、いた。なぁ、お節介」
 視線の先、頭の先までびっしょり濡らした少女が笑う。凛是様、と水掻き分けて来る相手にざぶざぶと近づいて、訊く。
「ちゃんと泳げてる? ……こういうとこ潜れるのか?」
 瞬いた瞳に一瞬、にやり。
「この前も手伝ったし。そそっかしいから、うっかり滑って溺れたりしそう」
「し、しません!」
 少しは上達したのです、と胸を張るのをふうんと流した眼差しは、あ、と深みに輝くひと色を見留める。
「あそこの石きらきらして気になる」
「え、どれですか?」
「あれ。……お節介も潜る?」
「えっ」
 できるのなら多分、ついてくるだろう。そわりと振れた尻尾だけを連れ、凛是は水底へ。
 頬を撫でる冷たさが気持ち良くて目を細めながら、ころりと拾ったひかりの色は――季節を目覚めさせるようなきららかな黄色。
 水底から見上げれば、上手とまではいかないものの。凛是を真似て掻いた手も、鰭のように揺らす足も、前よりは様になっているようだ。あと少しと伸びる腕を掴んで、光のひとつに届かせてやる。
「少しはましになったんじゃない。……まだまだだけど」
「はい!」
 浮上したジナは満足げ。その手の中の色に、あ、似てる、とつい零れる。
 この場所を思う人たちの優しさが守ってきたひとかけらだから、自分も大切にする。水から上げれば消える光にそうだった、と瞬いて、凛是は思案した。
「……お節介、なんかいい瓶持ってる?」
 意味を理解したジナは、あとでお裾分けしますね、とにっこり笑ってみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシェ・ユヴェール
先に行かれた方々を見送り、常の笑みには僅かに混ざる困惑

――実は、戦いよりも此方が難関かもしれません
寒さの厳しい山岳の故郷では
薄着で水に浸る機会など無かったものですから

然し郷には従うもの
まして此処まで来て、己の望む素晴らしい石が目の前にある
戸惑っている場合ではありません

足先が水に触れれば、その意外な程に冷やりとした温度に驚き
それでいて
恐る恐る踏み入れる足元を撫でる水の流れは優しい
表には常を装いつつも
その胸裡は好奇心に弾む子供
……其れでも、流石に深みへ泳ぐ事はいたしませんが

浅い流れに揺れる光の中から
今の心に一番響くいろをひとつ、探して掬い上げましょう

――宝石箱に眠らせるのも、勿体無いかもしれません



●桔梗
 常に穏やかにファルシェの頬を彩る笑みが、ほんの少しの困惑を滲ませていた。
 戦いもまだまだと感じてはいるけれど、眼前の水に身を浸す方がより難関であるかもしれない。故郷の集落――寒さ厳しい山岳地帯では、薄着で水に浸ることなど考えもしなかった。
「然し郷には従うもの、ですね。まして此処まで来て、己の望む素晴らしい石が目の前にあるのですから――」
 蒐集欲に駆り立てられるまま、いざ。着慣れぬ水着を身に纏い、淡い光奏でる水際につまさきを触れさせてみれば、熱孕む空気とは裏腹の冷たさに驚く。
 けれどもう一度、と恐る恐る、今度はしっかり足を踏み入れると、寄り添ってくる水の流れはとても優しい。
 ひとときは怖じ気づいた心はどこへやら。静かな笑みを湛えた大人の仮面の裏側で、こころはもう、好奇心に弾んでいる。子供心に急かされて、嬉々として深みへ泳ぎゆく――なんて無謀は、大人の理性でなんとか防ぎ止めたけれど。
 御し得る流れを楽しみながら、浅瀬を逍遥する。紫色の瞳に映っては揺らぎ、揺らいでは移る光の色。花の記憶、とはひとの冠した言葉であろうが、十色の彩を放つ不思議への興味に心は揺れ動く。
 ――ああ、この感情はどんな結晶を結ぶことだろう。
 その心にひときわ眩く響くひと色を、ファルシェはそっと水底から掬い上げた。ちょうど今の時期、野辺に優しく咲く夏花の淡い紫。
 水を離れればたちまち消える光に、おやおや、と眉を下げて笑った。
「困りましたね。……宝石箱に眠らせるのも、勿体無いかもしれません」

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
希夜(f10190)と。

まーた我関せずとか、大人ってつまんなそうとか言われそうですが…
良いじゃあないですか。

送り出してくれた少女が楽しそうにしてたら和みもしますし。
底を目指して泳いでく若人は笑って見送りたくなる。
見ていたい、性分という事で。
…水着の手持ちが無いのも事実でしたが!

せめてと足を浸し波紋に遊ぶ。
警戒は無用と解りつつもこれまた性分で。
僕に合いそうな色を、何て無茶振りした彼の行く方から、空へと向き直る。
天に地に、煌めき。
境界すら薄れる世界に、染み一つ。
故に、己は、今は――

音に浮かぶは意識と彼。

えぇと…右?
色、密かに期待して。
瓶と聞いて悪戯に笑う。
ありますよ?保証の出来ない中身入りですが♪


連・希夜
クロト(f00472)さんと

着替えて、湧水溜まりの中へ
奥へと潜り泳ぐ
近づく花の光に心躍らせ乍も、途中で転身。星空を仰ぐ
綺麗すぎて、呑まれそう
冷たい水と相俟って、何故か電子の海を思い出す
兆すのは、感傷? 畏れ? 不可解

考えるのは放棄し水底へ
見定めることなく、二粒拾う
直感なんて、知らないけど
右手に希望、左手に夢…なんて、元は1と0の自分には不似合いな事を唱えて

後は一気に浮上
クロトさん、右と左、どっちがいい?
説明もなしに拳を突き出し、択んでもらった方を放って渡し、意味なんてないよと笑いながら、残った掌をゆっくり開く
咲く花色は、きっと運命(お任せ)
惚けたように見つめて
ねぇクロトさん。瓶とか持ってない?



●朝顔
 澄んだ水の奥の奥へと、希夜の輪郭が揺れながら馴染んでいく。
 自分から来たくせに、まーた我関せず? ――と、ひらひらと見送る手に向けられた笑顔が言っていたのは気のせいか、それとも。良いじゃあないですか、とクロトは笑う。
 見渡す彼方には、きっかけをくれた少女が友人と光掲げて笑っていて、見下ろす此方には、好奇心に身を任せた若人が力強く水底を目指して。その眩さを、色を、――自分には随分と遠いその熱を、
(「見ていたい、性分なんですよ」)
 水着の手持ちがない――というのも理由ではあったけれどと。内心にすら茶化して、クロトは微笑む。
 そうして濃く青く沈む瞳が、光の水面から空へと動いたころ。水底にて身を翻した希夜もまた、同じ空を仰いでいた。
 掻くほどに近づき溢れる花の光から一転、青い夜に瞬くひかりは水底からはずいぶんと遠くて。美しく、けれどいつもより遠い煌めきと膚の温度を奪う水に、心が騒ぐ。
 自分の生まれた世界にどこか似た、ひややかさ。
(「――綺麗すぎて、呑まれそう。……それに」)
 これが感傷? これが畏れ?
 ひとの世界は――ひとのこころは、こんなにも曖昧なもので一杯だ。
 桔梗泳ぐ裾を揺らして、ひらひらと水を蹴る足。とん、と背になにか触れた感触に振り返れば、光の畑は思いの外近くにある。思考を手放し直感に任せ、無造作にふたつ両の手に掴めば、体と一緒に浮かび上がる言葉がある。
(「右手に希望、左手に夢……なんて」)
 1と0から生まれた自分に、なんて不似合い。零れた笑みを銀色の泡と一緒に連れて、一気に浮上すれば。
「クロトさん、右と左、どっちがいい?」
 珍しく呆けたように宙を見ていた男の視線が、自分に戻る。瞬く。
「ええと……右? 僕に合いそうな色、ありましたか」
「うーん、見てない! ――意味なんてないよ」
 裏腹に『希望』か、と胸に含みながら笑って、右手のひとつを投げて。左手のひとつをそっと、水の中に開いたら。
「……何だろ。見たことある、この色」
「ありますねえ。……あれじゃないですか、朝に咲く」
 赤みを帯びた淡い紫と、澄んだ青と。内に白の星を抱く、
 ――朝顔?
 暁に咲く栄光。ああ、これは、
(「夢と、希望の色――かも」)
 見入る希夜のかたわら、掌から遠のく色とひかりに目を細め、クロトは思い出す。浮上してくる希夜を待つかたわら、思っていたことを。
 落ちてきそうな天の煌めき、浮かび上がりそうな地の輝き。境界すら薄れた世界にこころ掬われて、漂う自分の異質さは――小さく、けれど不自然に目立つ染みのようだと。
 けれど、名を呼んだ声が、手渡されたひかりが、自分を難なく世界に溶け込ませる。
「ねぇクロトさん。瓶とか持ってない?」
 この胸の裡など知らないだろう希夜の問いに、クロトは少年のように笑う。
「ありますよ? 保障の出来ない中身入りですが♪」
「そういう時だけ子どもみたいだよねクロトさんって。それよりその中身、どうにかしてさ……」
 他愛ない算段の中に、きらきらと。世界はふたりを組み込んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

水着に着替え、濡れると重くなる翼と尻尾も収納
ところでラナさん、泳ぎはどうですか?とふと
じゃあ、浅めの所で堪能しましょうか

さっきの寒さが嘘みたいな夏の夜風を受けた身に澄んだ水の冷たさは心地よく
試しに軽く潜ってみれば途端に色を変える水底の景色に思わず見入り
ラナさん、すごいですよ!色んな色がきらきらしてます
少し潜るだけなら大丈夫そうかな…?
不安そうだったら手を差し伸べ、二人で光の花畑を楽しめたら
握る手に力が籠もるのを感じたらそっと握り返して

フィオライト、折角だから貰っていきますか?
ラナさんの分も取ってくるので待ってて下さい
寄り添うように水底に咲く花を二人分、今日の想い出にと


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

水着は白のツーピースを
泳げるけど…あんまり得意では無いです
だから、深い所はちょっと怖いかもです
浅い所なら大丈夫です!

夜だから少し穏やかだけれど
熱帯びた夏の空気に、冷たい水が気持ち良いですね
岩に座って様子を伺っていたけれど
蒼汰さんの言葉を聞いたら、やっぱり私も輝くお花畑が見たいです!

蒼汰さんの手を取って、勇気を出して水の世界へ
水中で煌く光の花
移り変わる色が綺麗で、まるで魔法みたい
喜びを伝えるように、思わず握る手に力を込めて

すごい、綺麗でしたね!
はい、今日の思い出に1つ欲しいです
フィオライトを貰えたら微笑んで
ありがとうございます、大切にしますね
どんな瓶に入れようかな



●撫子
 水を含めば重みを増す翼と尻尾をひと撫で、身に溶かすように仕舞って、蒼汰はラナへ手を差し伸べた。
「ラナさん、泳ぎはどうですか?」
 ふわふわと白のフリルとリボンが彩るツーピースを纏った少女は、迷うことなくその手を取って、そうですね、と微かに首を傾げた。
「泳げるけど……あんまり得意では無いです。だから、深い所は」
 ちょっと怖いかも。ちらりと深みに向けた苺色の瞳に、それならと蒼汰は笑う。
「大丈夫、じゃあ、浅めの所で堪能しましょうか」
「はい!」
 焼くような光はなくとも、真昼の熱を抱いたままの夏の夜風に、身を凍えさせた先の戦いがもう嘘のようだ。引いて進む体に、寄り添ってくる水の冷たさが心地好い。
「夜だから少し穏やかですけど……それでも暑い、ですね。冷たい水が気持ち良いです」
 浅瀬の岩に腰掛け、浸すつまさきで水と戯れながら、ラナはほっと緩めた息に笑みを溶かす。苛烈な季節のさなかのひと休み。
 ふと、見守っていた蒼汰の姿が水の中に消えて――すぐにまた現れる。
「蒼汰さん?」
「――、ラナさん、すごいですよ!」
 ふるり頭を振り、雫を弾いた蒼汰が水を掻いて近づく。長く眺めてなんていられなかったのだ――ひとりではあまりに惜しくて。
「色んな色がきらきらしてます。……どうですか? 少し潜るだけなら大丈夫そうかな……?」
 一緒に見たいのだと。伝え来るように伸ばされる手に、ラナは迷わずその手を預けた。
「蒼汰さんと一緒なら。そう聞いたら、やっぱり私も輝くお花畑が見たいです!」
 急に胸まで迫った冷たさに、身を震わせたのは一瞬。心を決めて水の世界へ泳ぎ出せば――そこには数多の色に煌めく、光の花が揺れている。
 光源は丸い石。大小さまざまのそれらが燈すいろが、ゆらゆらと流れに揺れて、歪んで、やわらかな花を思わせる光を纏う。揺蕩う水と互いの光に移り替わる色が綺麗で、
(「――まるで魔法みたい」)
 動く心を伝えるようにきゅっと、繋いだ手に力を籠めれば、そっと力籠め返す手に微笑まずにはいられない。ラナの息が尽きる前にそっと、足の届く場所まで連れ帰ってくれる、優しい手。
「すごい、綺麗でしたね!」
「折角だから貰っていきますか? ラナさんの分も取ってくるので」
 瞳輝かす少女に笑って、水中へ身を翻した蒼汰の目を奪った花色は――水底にふたつ寄り添い並ぶ、淡い色。彼女の髪によく似た彩り。
「ありがとうございます、大切にしますね」
 どんな瓶に入れようかなと、綻ぶ瞳、咲く笑顔。浅瀬に浸して光を招く無邪気な姿から、蒼汰は濡れた髪を掻き上げるふりで頭を掻いた。ゆっくりと褪せていく掌の中のひかりにそっと目を落とす。
 きらきらと水に乱反射する、光のせいかもしれない。なんだか眩しくて、真直ぐ見つめられなかった――なんて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

柊・雄鷹
ハレちゃん(f00145)

水の中でだけでキラキラ咲く、かぁ
綺麗なもんやな
え!?持って帰って良ぇん!?やった!
ほな早速、これぞと言う1つを見つけてこな!
ってことで、ワイはちょっと潜ってくるで!
ハレちゃんはどうする?あっ、行かん感じな知ってた
ほなどっちが、よりキラッキラな石を探すか、勝負や!!
負けたら焼肉、忘れんなよっ!!


おーい!ハーレーちゃーん!どこに居んねん…うわっ、おった!!
どや?一押しの奴は見っけたか?
ワイは見つけて来たでー…これや!
赤色…ハイビスカスっぽくてなぁ、夏の太陽っぽいし、ワイはこれ持って帰るで!
ほんで?ハレちゃんはどんなん?
確かにラムネっぽい…さすがハレちゃん、食いしん坊やなっ


夏目・晴夜
ユタカさん(f00985)

明るい夜とか最高ですね
しかも照明の元は美しい鉱石だなんて絶景です
記念にガッツリ、いやひとつ持って帰りますか

え、このハレルヤがオッサンと一緒に潜りたがっているように見えますか?
随分と察しが早くて素晴らしいです。年の功というやつですね
私は潜らず浅瀬でパシャパシャ探します
負けた方は帰りに焼肉を奢る罰ゲームでいきましょう

(後ろから思い切り水をぶっ掛け)はいはいはいはい、お呼びですかー
あ、その鉱石めっちゃ綺麗ですね…!
確かに夏らしくて素敵ですがユタカさんに似合っているのがムカつきます

私も夏っぽいのを求めた結果、この夏空のような色のを持って帰ろうかと
ラムネみたいで美味しそうですし



●扶桑花と瑠璃唐綿
「明るい夜とか最高ですね。しかも照明の元は美しい鉱石、だなんて」
 水の深浅で染め抜いたような水着に、風に閃く羽織り。浅瀬に転がる光をつまさきでころころと転がしながら、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)はふ、と剣呑な笑みを浮かべる。
「記念にガッツリ……は駄目なんでしたね。ひとつ持って帰りますか」
「え!? 持って帰って良ぇん!? やった!」
 水の中でだけキラキラ咲くなんて綺麗だ――と、柊・雄鷹(sky jumper・f00985)が静かに目を細めていたのはもう過去のこと。
「ほな早速、これぞと言う一つを見つけてこな! ってことで、ワイはちょっと潜ってくるで! ハレちゃんはどうする?」
 賑やかなノンブレス。晴夜はにこりと美しくも歪な笑みを浮かべ、
「え、このハレルヤがオッサンと一緒に潜りたがっているように見えますか?」
「あっ、行かん感じな知ってた」
「随分と察しが早くて素晴らしいです。年の功というやつですね」
 次々と繰り出される言葉の刃にも、雄鷹はめげない。
「ほなどっちが、よりキラッキラな石を探すか、勝負や!!」
「負けた方は帰りに焼肉を奢る罰ゲームでいきましょう」
 言うたな、忘れんなよっ――と大声を残し水の中に去る雄鷹から、あっさりと視線を引き上げて浅瀬を探す。ぱしゃぱしゃと水を掻き分ける指先に、ころり、転がり込んだひと色を握り込むと、
「おーい!ハーレーちゃーん!どこに居んねん…」
「はいはいはいはい、お呼びですかー本当に所構わず賑やかな人ですね」
「うわっ、おった!!」
 後ろから思いきり浴びせられた水にもからからと笑って、雄鷹はほら、と自慢げに掌を差し出す。
「ワイはこれや! ハイビスカスっぽくてなぁ、夏の太陽っぽいし」
 淡き光満ちる水底に現れるのは、鮮烈なその花の色そのものではなくとも。和らいだ光の持つたちは、確かに陽の光を思わせるよう。
「あ、めっちゃ綺麗ですね……! 確かに夏らしくて素敵ですが、ユタカさんに似合っているのがムカつきます」
「あはは、それ褒め言葉やな? ほんで? ハレちゃんはどんなん?」
「私も夏っぽいのを求めた結果、この夏空のような色のを持って帰ろうかと」
 ひと滴の青を水に溶いたようなその色は、ラムネみたいで美味しそうに見えたのだと呟けば、
「さすがハレちゃん、食いしん坊やなっ」
「一言多いんですよオッサンは」
 再びびしゃっと浴びせた水にも怒らないし黙らない男に、さて、と晴夜の目がきらり。
「……それで、どちらの勝ちですか?」
 ――譲りようもない戦いの火蓋が切って落とされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

有栖川・夏介
※アドリブ、他PC様との絡み歓迎

戦闘が終わったので着替えておく。
黒色ハーフパンツにグレーのシャツ
薄着になってはみたものの、全身黒基調のコーディネイトなので涼しそうには見えない。

----

水辺となると釣りをしたくなってしまうのですが、ここはそういう場所ではなさそうですし……。
たまには特に何もせず、この場を楽しむのもいいかもしれません。

岩の突き出ている場所を探して腰かけ足を浸す。
涼みつつ水底に輝く光の花畑を鑑賞。
美しいです……。この景色を守ることができてよかった。

鉱石はひとつだけなら持ち帰っていい、という話でしたが…。
どの色がいいだろうか。
他の方が選ぶものを参考にしてみよう。
(持ち帰る石はおまかせ)



●緋扇
 戦いの気配が夢のような空だ。
 水辺の装いに夏介が選んだのは、黒のハーフパンツにグレーのシャツ。モノトーンのコーディネートは暑苦しかっただろうか、と頭を過ったものの、涼やかな水の反射が溢れるこの水場には、さほど気にすることもなかったと安堵する。
「水辺となると釣りをしたくなってしまうのですが……たまには何もせず、この場を楽しむのもいいかもしれませんね」
 水面に突き出た岩のひとつに腰掛ければ、ちょうど踝までが冷ややかな水に浸かる。糸垂れる代わりに眼差しを向けて、静かに湧水溜まりを眺めてみる。
「美しいです……この景色を守ることができて、よかった」
 足先でさざなみを立てるだけで、光は容易く揺らぎ、違う色を作り出す。水底に光を咲かせるこの鉱石を、そういえばひとつだけなら持ち帰ってよかったのだと気が付いて、夏介は浅瀬に歩みを向ける。
 どの色がいいだろうか。見渡す仲間が手にとる光は、白にピンク、黄に青と、実にさまざまで――倣うにもただひとつには絞りきれない。
「……それなら」
 目を閉じて、浅瀬の底を掌でなぞる。触れる感触、大きさ、これと思ったものをそっと掴み取り、瞼を上げてみた。
 ――そこに満ちるのは、暖かな橙色。
 心の動きをあまり映さない夏介の瞳に、ふと、やわらかな色が宿った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

深海・揺瑚
お目当てはフィオライト
このためにわざわざ荒天を越えてきたのよ
しっかりといいものを持って帰らなきゃね

きれいなものって、世界に無限に溢れてるわね
ここもまた、いっとう素敵
静かに賑やかに、過ごす他人の間を気にせずに歩き回って
持ち帰るのも、自分のものにもできないのが残念
せめてしっかりと思い返せるように

存分に空間を堪能してからすいと音を立てずに水へと潜って
泳ぎは多少得意な程度、水中呼吸ができるわけでもなく
それでも奥へ長くと滑らかに、今度は水中を思い切り楽しんで
あれも、これも、どれも全部持ち帰りたいけど
より青く、淡く光った石をひとつ拾い上げ
さて、あなたが今日からうちの子ね
とっておきにキスをひとつ



●竜胆
「きれいなものって、世界に無限に溢れてるわね。――ここもまた、いっとう素敵」
 水際を巡るたびに千変万化、水面から揺瑚を照らす光も魅せる色を変える。あるものは静かに、あるものたちは賑やかに――そこに過ごすひとの姿もまた、十色で。
 揺瑚はその中を悠々と歩む。これは持ち帰ることも、自分のものにすることもできない光景だ。手に入らないのが残念と唇ばかりは嘯いて、心ではそう在るべきと微笑む。
 せめてしっかり思い返せるように、網膜にも心にも、膚にも灼きつけるべく、音もなくするりと水に身を躍らせる。
 仲間以上に水に強いという訳ではない。泳ぎは確かに得意だが、魚のように長く息を続かせることも叶わない。
 だから――それでも。掻くゆびさき、波を捉えて揺れる脚は、奥へ奥へと揺瑚を連れていく。少しでも長く続いてと願うほどに胸は騒いで、呼吸を求めてしまう。まるでひとを恋うように。
 あれも、これも、目に留まるすべての色が『わたしを』と、揺瑚を魅了しにかかるけれど――何気なく、無造作に拾い上げたかに見えたひとつこそ、女の見初めた運命だった。
「――、……ふふ、このためにわざわざ荒天を越えてきたのよ」
 浮上して、星空に石を掲げる。水に染まり、深い青をもっと深くする髪を掻き上げ見上げれば、つまんだ指先に水底の灯りに照らされ冴える青い石。
 纏う雫を失えばたちまち光褪せる、その前にそっと掴み取る。
「さて、あなたが今日からうちの子ね」
 そっと押し当てた唇に雫を受けて、選ばれたひとつは応えるように輝いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
慣らすなんざまどろっこしい
準備運動なら散々こなしただろ
なぁアレス?
ニヤリと笑い
いきなり深いとこに潜っていく

ハッ―すっげぇな
思わず口を開きそうになるくらい
広がる色に目を奪われる
水面の光も湖底の花も
ああ、でもまだ足りない
一番綺麗な色がここにない

アレスを手で招いて
寄ってきたその両頬を両手で挟み込む
朝空の瞳、世界で一番綺麗なその色を覗けば
思わず笑みがこぼれた
ああ、これだ
綺麗な景色に溶けるこの色だ
こちらに触れた指先に目を細めすり寄って
息が続く限り、綺麗な色を堪能する

―ぷは!
浮かび上がり呟くアレスに同意する
ああ、綺麗だった
けど…俺の見た最高の眺めをアレスは見れねぇんだよなぁ
もったいねえな


アレクシス・ミラ
【双星】
アドリブ◎

星空に、水中の光…美しい光景だね
いや、あれは準備運動では…あっ、セリオス!?
ため息を吐きつつ後を追って潜る

水底に光が…花畑のようで、凄いな…!
…セリオス?
不思議に思いながら彼の元へ泳ぎ…
両手で挟まれた
驚いていると覗き込んできた青を…僕の一番好きな、綺麗な夜空の青を見上げる形になっていて
フィオライトの光もあるからか
水中からでは見れないはずの…星空に見えた
思わず手を伸ばし星空に…セリオスの目元に触れる
息が続く限り…見ていたくて

流石に長くは見れなかったな…
水中では言えなかった事を改めて口にする
とても…綺麗だったね
指先で彼の髪を片耳に掛けさせる
ーー僕が見た景色も、君に見せてあげたいよ



●花霞む君色
「あっ――こら、セリオス!? 準備運動もなしに……!」
「慣らすなんざまどろっこしい、準備運動なら散々こなしただろ! なぁアレス?」
 引き留める手をすり抜け、一つに括った長い髪がふわりと戦いだその向こう、悪戯めいた笑みが覗いた。
 ……バシャ――ンッ!!
 水柱が立つ。思いきり浴びせかけられた銀の飛沫を、金彩る青のサーフパンツからぱたぱたと零しながら、アレクシスははぁ、と溜息を吐いた。
「あれは準備運動じゃ……まったく」
 張り付く前髪を撫でつけ、なんだなんだと目を丸くする周囲の仲間に視線で詫びながら、するりとその身を水中に躍らせる。 
 そんな相棒のことなど知らず、
(「ハッ――すっげぇな」)
 水中のセリオスは、思わず開きそうになる口を覆った。幸いにもこぽ、と小さな泡が零れるだけで済んだ。水底に広がり揺れる花の色も、水面に不揃いに照り返すその反射も、なんて綺麗なのだろう。
 けれど視界を埋める数多の色に、足りない、と思ってしまう。
 ひとつ、足りない。いちばん綺麗な色がここにない。
 それが何故なのかわからずに、瞳に浮かんだ惑いを、今は自分が作り出した泡が彼の騎士から隠している。
(「水底に、光が……花畑のようで、凄いな……!」)
 優美な顔立ちを笑みに染め、泳ぎ出すアレクシス。水を絡めてふわりと細い体を包む、影のようなシャツを頼りにさざなみを掻くと――生まれた流れに抱かれ、泡が消え去った。
(「……セリオス?」)
 一瞬前には全身に満ち溢れていた元気は、何処へ行ったのだろう。何故か心細いその顔に、手招かれるまま近づけば、
(「ああ……そこにあった」)
 細やかな銀泡が立ち上りゆくその向こう、金の髪をゆらり揺らして泳ぎくるアレクシスの両頬を、セリオスの手がとらまえる。
 覗き込んだ瞳の中、映り込んだ水泡が泳ぎ去って。透きとおる水を介すればいっそう鮮明になる、その色。
 思わず笑みが零れた。朝空のいろ。セリオスが世界で一番綺麗だと思ってやまない、青。
(「これだ……綺麗な景色に溶ける、この色だ」)
 覗き込まれ驚いた瞳もまた、青をみる。フィオライトの乱反射満ちる水中からはあまりに遠くて、望みようもない星空のいろ。
(「僕の一番好きな……綺麗な」)
 指先でそっと触れてみれば、笑う瞳に星が溢れた。温もりを分けるようにそっと、押し当ててくる頬。
 この光の氾濫の中で、時を止めて見ていたい互いのいろ。けれどそれは、鼓動あってのものだから。
「――ぷは!」
 限界を知る前に水面から顔を出して。光の中とはまた違う色彩に、笑い合う。
「とても……綺麗だったね」
「ああ、綺麗だった。……けど、もったいねえな」
 自分の見た最高の眺めを映し見ることはあれど、アレクシスが真に自分で見ることはない。
 注がれたままの視線、正直なまなざしを、言外の思いとともに受け止めて。アレクシスは頬に張り付いた髪を耳に掛けてやりながら、微笑んだ。
「流石に長くは見れなかったな……。でも、セリオス。僕も」
 僕が見た景色も、君に見せてあげたいとはにかめば、虚を衝かれたセリオスはついと顔を背けて、――そしてひっそりと笑ってみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
水に馴染むフィオライトを、水辺に腰かけて眺めて
…万華鏡みたいだ
留まらぬ彩を飽きずにずっと

その水に、沈んでみたくなった
大切なローブを脱いで丁寧に畳み
靴を脱いで
あとは服の侭、とぷりとそっと頭から水の中へ

沈むままに任せて水中から光を望み
呼吸は魔力供給補助ようなものだから、望むだけ水中に居られる
水底で、鉱石と光、揺れる水面を眺め続けよう

不思議だな
この水の中は穏やかな気持ちでいられる
頭がしんと静かになって、余計なことを考えなくなって
これが心地いい、ということなのかな
いつまでも沈んでいたくなるけれど

帰らなくてはねって、あの人の声が聞こえた気がして

目の前で煌いた光を一つ拾ったら
知らぬことで溢れる世界へ帰ろう



●待雪草
 ささめく小波が、光が、人の声が、足浸した水にも空気にも一杯に反響するようだ。
 ここはまるで万華鏡の底のようだと、ディフ・クライン(灰色の雪・f05200)は思う。このままずっと、飽かず眺め続けられそうだと思ったけれど――、ふと、
(「……この水に、沈んでみたい」)
 唐突に胸に躍った衝動に膝を立てる。雪と月の共存する夜を紡いだ、大切なローブは丁寧に畳んで。とぷり――と静かに水に溶ける。
 沈むままに任せたからだが、光の上をゆらりと漂う。七色はひとの心のようだ。灯っては消え、消えては灯る揺り返し。なにかを語り掛けてくる光の揺らぎに目を細め、くるりと身を翻せば、水面の乱反射はいっそう眩しく降り注いで、隅々まで自分を、そのこころを照らし出した。
 地上の音も遠くぼやけて、人の姿も今は彼方で、水音だけが耳を打つ。
(「――不思議だな」)
 頭がしんと静かになって、余計なことを考えなくなって。そんな『ひとり』を心地好いと感じるこころの寂しさを、ディフは知らない。だから、ただ。いつまでもこのまま沈んでいたいと願ってしまうけれど。
 ――帰らなくてはね。
 目を瞠る。水の中からではない、心の奥から波紋を広げる声が、ディフを現に呼び戻す。
 閃く光は待雪草。しらじらと、まだ何にも染まらない雪の色。けれど、
「――そうだね。オレは……帰らないと」
 浮かび上がった水面にぽつり、声を零した。
 この水底の色よりもっと、知らぬことで溢れる世界。――あの人のいない世界へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

わぁ……すごい!櫻、みて
ふぃおらいと、っていうんだって
泳げない君の為
浅瀬に揺蕩う清らな水に尾鰭をつけて、隣に座る櫻宵へ笑う
どうして?深くに潜れなくてもいいし十分だ
僕は君と一緒、というのが大事なんだから

水の中で咲く石の花、柔らかな光
きっとこの石達は花の夢をみたのかな
優しく包み込むよう掬いあげるのは、もうわかるだろ?
君の花石――淡い桜
撫でればほら、白になる
それから、淡い墨色に
……櫻宵と同じ色彩なんだ
お気に入りを大事に瓶にしまう
ふふ
花あかり、だね

櫻は僕の色を捕まえてくれたの?
嬉しいな
少し照れくさい

水は冷たいのに、顔が熱いな
想う気持ちが色づき咲くよう
きっと幸せの色なんだ


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

外は暑いけどここは涼しくて過ごしやすいし、花の石なんてロマンチックだわ
白桜飾りのワンピース水着纏い、浅瀬に2人
愛しい人魚の笑顔に微笑む
ごめんね、あたしが泳げたら水中の花畑をみれたかしら?
リルの優しさが嬉しくて、髪を撫でてから決意をひとつ
来年はもっと泳げるようになるわ!

花咲くように光るなんて不思議ね
リルは、桜にしたの?
淡墨桜……!あたしの桜ね!なんていじらしくて可愛いのかしら
あたしは淡い秘色がいいわ
水に揺蕩うまろやかな白に、瑠璃の色
可愛い人魚の花の石!
リルを瓶につめるかわりに、石をつめ
星の彩にかざせばキラキラ夢のよう

つかまえちゃったわ!
あたしの幸せの花……色彩を



●瑠璃茉莉に淡墨櫻
「ごめんね」
 長い睫毛の影を瞳に落として、唐突の言葉。瞬くリルに申し訳なさそうに、櫻宵は微笑み、両のゆびさきを合わせた。
 ささやかな波紋が届くたび、フィオライトの光が優しく明滅する浅瀬にふたり、腰を下ろして。どうしたのと問うまなざしに、櫻宵は唇を開いた。
「あたしが泳げたら、水中の花畑をみれたかしら?」
 冷たさを攫って水面を吹き抜ける風に、鰭のような優美な曲線を描く大人びた白の水着の上、白桜飾りがひらひら踊る。水に戦ぐそれがきれいで、リルは尾鰭でひらひらと波を送っては、笑う。
「どうして? 深くに潜れなくてもいいし、十分だ。僕は――」
 ――君と一緒、というのが大事なんだから。
 櫻宵は目を細めた。愛おしむ側でありたいのに、水の上の彼はなんて自信に満ちて、なんて頼もしいのだろう。
 頼ってばかりねと肩にこつりと額を預け、さらりとなだれるやわらかな髪をせめてと梳いた。
「見ていてね、来年はもっと泳げるようになるわ!」
「うん、ずっとみているよ」
 たとえそれが叶わなくても、ずっとと。こたえる声に想いが伝う。
 ふたりの約束を聞き留めたようにふわりと光った足許の石を、リルはそっと掌に掬い上げた。
「きっとこの石達は、花の夢をみたのかな」
 淡い桜色のひかりをそっと撫でる。ゆびさきで雫拭われたひとかけらは、光を弱めながら白くなり、光失って淡い墨色へ。
「もうわかるだろ? 淡い桜のいろだ」
 ――淡墨桜……!
「あたしの桜ね! なんていじらしくて可愛いのかしら」
 ぎゅっと抱きしめる腕に笑って、櫻は、と問う声に、問われたものは勿論こう答えるのだ。
「あたしは淡い秘色がいいわ。可愛い人魚の花の石!」
 水に揺蕩うまろやかな白に、瑠璃ひと雫煙らせたような。優しく冴えた、瑠璃茉莉の花の色。
 可愛いひとを瓶に詰めてはおけないから。柔らかく美しく輝く石を身代わりに傍へおこう。硝子の中に水とともに躍るひかりを空に翳すと、優しい闇の中にふわり、きらり、夢のように輝いた。
「見て、つかまえちゃったわ! あたしの幸せの花……色彩を」
「僕の色を捕まえてくれたの? 嬉しいな」
 少し照れくさい、とはにかむ頬に、櫻宵が光とらえた瓶がそっと押し当てられる。同じように自分のそれを押し当てて――花あかりだと、リルは笑った。
 想う気持ちが色づき咲くよう。見えない自分の頬も、目の前に並んだ櫻宵の頬と彼色の石も、よく似た熱の色をしているはず。
 ――きっと、幸せの色なんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ライオット・シヴァルレガリア
白雪さん(f09233)と
ロイヤルブルーのトランクスタイプの水着を着用

花のようだとは聞いていたけれど、本当に綺麗だ
水の中かい?…そうだね
実を言うと泳ぎは得意ではないんだ
でも浅瀬ならきっと大丈夫
…もしもの時はよろしく頼むよ、白雪さん

白雪さんは僕の瞳の色を?
奇遇だね
実は僕も決めていたんだ
無事に討伐が済んだら、白雪さんの瞳に似たフィオライトを探そうって

懸命に探せば、ようやく見つけたお目当ての色
水と一緒に瓶に詰めて持って帰ろうか

ねぇ、白雪さん
君の見つけた色と僕の見つけた色、同じ瓶に入れてみてもいいかな
淡い赤1つと青1つ、どちらも綺麗な色だけれど
2つ一緒になればもっと綺麗な光を見せてくれると思うんだ


鶴澤・白雪
ライオット(f16281)と
黒のビキニの水着を着用

見て、水底でフィオライトがキラキラしてる

たまには水の中に入ってみない?
涼も取れるし浅瀬で鉱石を探してみましょ
水慣れてないなら手は貸すわよ?

近くの鉱石を水から出すと不思議そうに掲げて
本当に地上では普通の石なのね

不思議だけど綺麗だわ
淡く優しい色合いがライオットの瞳みたい

折角一緒に来たんだしそういう石を探そうかしら
エメラルドグリーンを含んだ青色

ライオットはどんな石を探すか決めた?
ふふ。持って帰るんだから頑張って探さないとね

あら、いいアイディアね
一緒に入れておいたら住処を離れてもこの石たちも寂しくないだろうし
きっと2つの輝きが重なって綺麗な色になるわ



●菫
 それ自体が飾りのようにひらひらと跳ねる、長く艶やかな黒い髪。纏ったビキニと熱帯魚のようにたなびくパレオの黒は、白雪の肌の白さをいっそう引き立てた。
 きりりとした出で立ちながら、ライオットを振り返り綻ぶ表情は柔らかい。
「見て、水底でフィオライトがキラキラしてる。たまには水の中に入ってみない?」
 涼も取れるし、と伸ばす手が上向いて誘いかける。
 ロイヤルブルーの水着姿に、金色の髪がよく映えて、水辺のライオットは貴公子然と佇んでいる。――けれど、困ったように眉を下げて言うことには、
「実を言うと、泳ぎは得意ではないんだ。でも浅瀬ならきっと大丈夫だから」
「ええ、浅瀬で探してみましょ。慣れてないなら手は貸すわよ、ふふ。任せて」
「……もしもの時はよろしく頼むよ、白雪さん」
 頼もしい青年のささやかな弱気、伸ばされた手。普段見られない顔を見たようで、手を取った白雪は紅玉のような瞳を綻ばせた。
「それにしても――本当に地上では普通の石なのね」
 水を失えばたちまち光を眠らせるそれを、不思議そうに空に掲げ、もう一度水中へ。再び灯った光の淡さにライオットの瞳を思って、折角一緒に来たんだし、と笑う。
「あなたの石を探そうかしら。エメラルドグリーンを含んだ、青色」
「僕の瞳の色を? 奇遇だね、実は僕も決めていたんだ」
 きみの瞳に似た石を――と。告げれば擽ったそうな笑みが返る。
 予め聞いたとおり、満ちるひかりはどれも淡く、優しいいろ。白雪の瞳のように鮮烈に澄んだ、美しく強い赤そのものは見当たらなかったけれど。
 そのひと滴を白に溶かしたと思わせるやわらかな輝きを見出して、これにしようとライオットは微笑んだ。
「ねぇ、白雪さん。君の見つけた色と僕の見つけた色、同じ瓶に入れてみてもいいかな」
 薄紅紅の揺らぐひかりを閉じ込めた瓶をからりと振って、誘う。どちらも綺麗な色だけれど、二つ一緒になればきっと、もっと綺麗な光を兆すはず。
「あら、いいアイディアね」
 これだけたくさんの光と共に在ったひかりが、引き離されて寂しく翳ってしまわないように。
「本当ね――二つの輝きが重なって、綺麗な色になるわ」
 誰もが等しく、ひと色だけを許された場に。ふたりで奏でるもうひと色を手に入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒金・鈊
スティ(f19491)と

素肌を晒さぬよう最低限の薄着。
清潔なもので水を汚さぬように。

まさに水中の花。生きたくともいけぬ園か。
水の底、守られているわけだな。

とってくるのは吝かでもない。
ところでスティ。
あんた泳ぎの経験が殆ど無かったな。そこで待っていろ。

……人は普通は浮くんだ。
沈むってことは相当、引っ張る『何か』がいるってか。
そんなものと沈むのは御免だな。安心しろ、俺は沈まん。
戻ってくるから、ちゃんと待っていろ。

適当に石をふたつ拾い、スティに寄越す。
ほら、一等光って見えたのを拾ってきた。

水底とは思えないくらい、眩しかった。
眩しすぎて、此処は俺の居場所では無いな。
……ああ(肯いて、手を取る)


スティレット・クロワール
鈊君(f19001)と

膝丈のパンツに、薄紗を羽織って。

美しいねぇ。
この石は、水と出会うことでこれ程の光を見せてくれるのか

どんな石だろうね鈊君
えー、大丈夫だよ?ほら、沈むのは簡単でしょう?
私と一緒に沈んでみない?しーん君

沈まない、だって蛇君。
流石鈊君だよねぇ、私を振り切って行っちゃうんだからな

水には汚れを持ち込まない、だっけ
毒に浸したこの身は、清冽な貴方にはどう映るのだろう。フィオライト
でも私の騎士はその美しさで捕らえないでおくれ

どうだった?鈊君
藍色に…青…、いやもう少し金に近いかな?
ふふ、綺麗な色だねぇ。

ふ、ははは。成る程、我が騎士には眩しすぎたか
お帰り、鈊。私の願いを叶える者(手を差し出して



●集真藍
「まさに水中の花。――生きたくともいけぬ園か」
 水の気が風にも音にも満ちる場所で、乾いた声がぽつりと零れ落ちる。
 清らかに保たれてきたのだという湧水をその身で汚さぬよう――けれど数多の傷を刻んだ肌もまた、晒さぬよう。清潔なにおいのする薄着を纏った鈊は、波紋の下に沈むひかりに目を細めた。
 これを記憶と呼んだ妙。命を抱くことはなきその『花』は、正しく水底の夢だ。満ちる水、人の心に守られながら揺蕩うまぼろし。
「美しいねぇ」
 水と出逢うことで光放つもの。ひとつでは耀けぬもの。その在り方に思うところあったかのように、スティレットが笑う。――実際は、その美しさに素直に零れた言葉であったかもしれない。だが、
「……あんたの言葉はいちいち意味深に過ぎる」
「素直に受け取ってくれていいんだよ? ねえ、どんな石だろうね鈊君」
 吐息で咎め、鈊は主を振り返る。
「とってくるのは吝かでもない。――ところでスティ。あんた泳ぎの経験が殆どなかったな」
 そこで待っていろと告げた相手は、膝で切り揃えたパンツに薄紗を羽織り、水辺の装いで立っている。そして、告げるまでもなく決して深みへ踏み入ろうとはしない。その癖戯言を口にするのだ。――立ち入らぬことの真意がどこにあるのかも、わからぬ笑みを浮かべて。
「えー大丈夫だよ? ほら、沈むのは簡単でしょう?」
 私と一緒に沈んでみない、などと戯ける声に片眉を上げる。
「……人は普通は浮くんだ」
 交わした眼差しがすべてを語る。それが沈むからには、引っ張る『何か』が――この美しき水ではない、主の身に絡みつく数多の手が在るのだと。
「そんなものと沈むのは御免だな。安心しろ、俺は沈まん。戻ってくるから、ちゃんと待っていろ」
 言い放てば迷いなく波紋の下へ姿を消す鈊を、一瞬虚を突かれた瞳をすぐにくすりと和らげて、スティレットはぽつり、袖の下に棲むものへ語り掛ける。
「沈まない、だって蛇君。流石鈊君だよねぇ、私を振り切って行っちゃうんだからな」
 ――汚れを持ち込まないこと。先に聞いた決まり事は、毒に浸したこの身に如何な審判を下すだろう。
(「清冽な貴方にはどう映るのだろう。フィオライト」)
 でも、と司祭は祈る。
「……私の騎士はその美しさで捕らえないでおくれ」
 ほどなく水から上がった彼の騎士を迎える顔には、その切なる気配など覗かせぬまま。どうだった、などと微笑んで。
 一等光って見えたと、投げ渡されたふたつの光。あわい藍、金色を僅かに含む美しい青。そして、
「水底とは思えないくらい、眩しかった。眩し過ぎて、此処は俺の居場所では無いな」
 素気無く言い放つ彼もまた、光。
「……ふ、ははは。成る程、我が騎士には眩し過ぎたか」
 スティレットは手を伸ばす。この身が毒孕む花であろうとも、取られることが分かっている手を。
「お帰り、鈊。私の願いを叶える者」
「……ああ」
 見つめ返す琥珀の光。――触れるゆびさきに、見えざる気配の蔦がはらりと退いていく心地がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユキ・スノーバー
じぃじ(f05393)と一緒っ

きらきら、綺麗な水の中に咲く石の花々。守れた事にホッとするんだーっ。
夏の暑さも、涼しい所で静かに楽しむのだったらじぃじも大丈夫かな?と思って
(足を水に浸けつつ)最近戦争でバタバタしてるから、ちょっと小休止つける時間…
ええと、じぃじと夏の思い出が戦争一色なのが気になっちゃって(えへへ)
…じぃじ、調子大丈夫?
ぼくの夏の思い出はねー、ぷかぷか海に浮きつつウォッチングとか、滑り台シューって楽しかったのとか!

あっ、水底にあるフィオライトは一つだけならお持ち帰り大丈夫なんだって!
(じゃーん!と瓶を取り出し)瓶に入れて夜灯り代わりに持ち歩くの、手元にきらきら見れるの、良いなって


カーニンヒェン・ボーゲン
ユキどの(f06201)と。
水着を持たないので、半袖Yシャツと薄手ジャケット。
八分丈スラックスにサンダルでご容赦下さい。
(濡れてOKなスタイル)

そうですね、夏の浜辺はこのジジイには些か眩しくて。
確かにこの夏は随分と騒がしいですが…昨年の夏はどこで、何をしていたのだったか…。

何でもありません。
(ユキどのの水着姿を見て)
ユキどのは他に良い思い出ができましたか?
ジジイとの時間が退屈でなければ、ぜひお話ししてください。
(水中に仄淡く咲き誇る花畑の側で、畔に並んで座りたい。
元気100%のお話を頷きながら嬉しそうに聴く)

(お土産の提案に)
それは素敵な夜灯りになりますね。
お取りしますよ、どれにしましょう?



●勿忘草
「ねぇじぃじ、きらきら、すずしいねっ」
 繋いだ手をぶんぶん振って、明るく元気なアロハ姿のユキは浅瀬をぱちゃぱちゃ、つまさきで叩く。
 小さな波を起こすたび、その底で咲いては揺れる色鮮やかな丸いひかり。守れてよかった、とホッと顔を綻ばせ、ユキはカーニンヒェン・ボーゲン(或いは一介のジジイ・f05393)の高い背を、仰ぐように見上げてみる。
 爽やかな半袖のシャツにジャケット、踝の出るスラックスと、夏の水辺のカーニンヒェンも小粋な装い。サンダル履きの足に寄せるさざなみに、涼しいですなと小さく笑った。
 あのね、とユキはおずおずと、
「ええと、じぃじとの夏の思い出が戦争一色なのが気になっちゃって。夏の暑さも、涼しい所で静かに楽しむのだったら、じぃじも大丈夫かな? と思ったんだーっ」
 えへへ、と笑う。こうしている間にも、他の世界では戦いの日々に休みなどないと知っている。けれど――少し休んで、笑っても欲しかったのだ。
「そうですね、確かにこの夏は随分と騒がしいですが……」
 去年の夏はどこで何をしていただろう。溢れる光にどこか遠くを見るような眼差しをするカーニンヒェンの手を、ちょんと引いた。
「……じぃじ、調子大丈夫?」
「ええ、ええ。元気ですとも。お気遣い感謝いたしますよ、ユキどの」
 にっこり返る笑顔で、夏の浜辺はこのジジイには些か眩しくて――と笑う。
「ユキどのは他に良い思い出ができましたか? ジジイとの時間が退屈でなければ、ぜひお話ししてください」
 それだけで、その輝きを共に得た気になるからと。ひたひたと寄せる浅瀬の水のもと、光の畔に腰を下ろして話を乞えば、ユキはぱっと顔を輝かせた。ええとね、と指折り(?)数える。
「ぼくの夏の思い出はねー、ぷかぷか夏に浮きつつウォッチングとか、滑り台シューって楽しかったのとか!」
 孫の話を聞くように、にこにこと頷きながら訊くひとに、それからもちろんこの夜も――とひとつ付け足して、思い出す。
「みてみてじぃじ、じゃーん! 水底にあるフィオライトは、一つだけならお持ち帰り大丈夫なんだって!」
 浮き輪と一緒に言葉通り、ぷかぷかと浅瀬に浮かんで取り出したのは――両手に包めるほどの硝子瓶、ふたつ。
「ね、夜灯り代わりに持ち歩こう! 家に帰っても手許にきらきら見れるの、きっと素敵だよー!」
「おや、それは素敵な夜灯りになりますね。お取りしますよ、どれにしましょう? もう少し深いところがいいですかな」
「うんっ、あっちのあれがいいーっ!」
 指さした先に浮き輪を押してそっと進んで、拾い上げたひかりは、灰みがかったきれいな空色がふたつ。
 柔らかな灯りをふたつ燈したらもう、きっとこのひとときを『忘れない』。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
水着に着替えて、髪を纏めて。
隠れていない耳と尻尾がぱたぱたぱたぱたいそがしい。

聞こえておりますよ、ユーゴさま。
わたくしはレディなのですよ。わんこではないのです。

すごいです。水のそこに、おはながあります。
はやく、はやくゆきましょう。
しっかり準備運動をしてくださいましね。
戦いとはちがいますもの。ちゃんとしないとだめなのです。

浅いところからそうっとはいって、ひかる方へ。
ちゃんとおよげるのですよ。
手を振って、今度は深くまで。
ひかりの花畑の中を、飛び回るようにふわふわと。
青色を映すまるい花を掬い上げて、もどりましょう。

見てください、ユーゴさま。
ユーゴさまのいろなのですよ。


ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と

……子犬だな(せわしなく動く耳と尻尾を眺めて小声で呟く)
おっと、これは失礼。

もう十分に準備運動をした気もするが、念の為やっておくか。
それと、気持ちは分かるが少し落ち着け、転ぶぞ。

角のとれた岩に腰掛け、リリヤの様子を見守ろう。
ほう、上手く泳げているじゃないか。
……泳ぎ方は犬かきじゃないんだな。
この距離なら聞こえていないよな。

水中にゆらめく石花の光を眺めつつ、少しばかり気を抜く。
眠りそうになっていた所に、自分を呼ぶ聞きなれた声。

そうだな、綺麗な青色だ。
この石は、1人ひとつまでだったか?
よし、俺も緑色の石を探してみるとするか。



●山鶯と眩草
 水着に着替えて、ふんわり柔らかな髪をくるくると編んで。いつもの長い外套を外してしまえば、弾む心のままに耳も尻尾もぱたぱた躍る。
「すごいです。水のそこに、おはながあります」
 覗き込んだリリヤの瞳が、水面の光を呼び込んで輝いた。準備運動を急かす少女を子犬だな、と小さく評して、ユーゴはふ、と目を細める。
「聞こえておりますよ、ユーゴさま。わたくしはレディなのですよ。わんこではないのです」
「おっと、これは失礼。もう十分に準備運動をした気もするが、念の為やっておくか」
 ぴょんぴょんと跳ねて抗議するレディの頭に、転ぶぞと掌を置いて。求められるままいくつかの屈伸をして、いざ――水へ。
「はやく、はやくゆきましょう」
「ああ、そう急かすな。準備運動が大事と言うなら、ゆっくり慣らすのも大事だぞ」
 はた、と少女の動きが止まる。素直にこくりと頷いて、浅いところからそうっと歩みを進めるリリヤ。
 躊躇いも恐れもなく、つめたさに肩まで浸ればすいすいと、より深い方へ泳ぎ出す姿。ほう、と感嘆の声を零し、ユーゴは手近な岩の上に身を預ける。これなら安心だろう。
「上手く泳げているじゃないか」
 泳ぎ方は犬かきじゃないんだな――と続けた言葉は、ぱしゃぱしゃと燥ぐ飛沫が上手に隠してくれた。ちゃんとおよげるのですよ、と自慢げな瞳はちらり、ひと目振り返って灼きつけたユーゴの瞳の色を連れて、きららかな水底へと潜っていく。
 手を振って、大きくやわらかに水を掻いて。進むリリヤは、ふわふわ、ひらひら、水着のリボンやフリルを躍らせて――まるでひかりの花畑の中を飛び回る妖精のよう。
 光とともにゆらめくその輪郭を暫し見守って、ユーゴは大きく呼吸をする。
 夏の狭間の夜の、ほんのひとときのバカンス。水が澄ませた空気を体に染み込ませ、下がった肩に籠った力が解けると、――少しばかりの眠気がおりてくるのも仕方がないというものだ。
 ――……ま。……ーゴさま、おきてください……――、
 ぱちり目を開けばいつの間にか、水に浸した足許には雫を纏ったリリヤがいて、
「見てください、ユーゴさま。ユーゴさまのいろなのですよ」
 示されたかけらに宿る色の意味を悟って、はは、と笑う。――胸に上る温もり、父の心境とはこんなものだろうか。
「そうだな、綺麗な青色だ。……よし、それなら」
 岩の上を滑るように水に降り、少女の瞳を確かめるようにじっと見つめる。敢えてせずとも違えはしない色ではあるけれど。
「俺も緑色の石を探してみるとするか」
 そうひとこと告げたなら、水底のどんな石より嬉しそうに、目の前の瞳はみずみずしく輝くのだ。苦さを抱えて咲く花のように、誰よりも無垢に、やさしげに。

 水底の花を泳いで、浚って――淡く柔らかな煌めきの中に、夏の夜が更けていく。
 見守るのは頭上の星空ばかり。洞窟の奥、この地が抱える秘密のように花色に華やぐ湧水は、夜の底に滾々と閑やかに生まれ出ては、ひとびとの笑みを咲かせ続けるのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月22日


挿絵イラスト