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エンパイアウォー⑤～陰陽師の占い～

作者：ナイン高橋

●戦するなら先立つものが必要だがね
　徳川幕府は全国の商人から兵糧などの補給物資を購入しようとしたらしい。
　しかし、兵糧を初めとした補給物資の値段が天井知らずに高騰しており、満足な量をそろえる事が出来なかったそうだ。
　これは、個人資産が徳川幕府の全資産を凌駕する魔軍将の一人、大悪災『日野富子』の買い占めによるものだというのが分かっている。

●グリモアベース
「残念ながら、悪党を斬って終わらせられる類のものではないようで……」
　そう言って君達を迎えたのはシェーン・キララ（"伝説の勇者の剣"のヤドリガミ・f18023）だった。
　残念ながら今その悪党は何処にいるかもまだ分からない。
　それにそもそもお金の問題はお金で解決するしかないようだ。
「なので、皆さんには『徳川埋蔵金』を回収してきていただきたいのです！」
　有事の際にと神君家康公が遺した埋蔵金。それを使えばこの兵糧不足もきっと解決できるだろうと言うのだ。
　元気よく言うとバン、とシェーンは古びた巻物を広げる。
　かなり古いものだが、これこそが徳川家に伝えられた『徳川埋蔵金の地図』の一つである。
　ただし、地図があるからと言って単純にこの場所に向かえば埋蔵金が手に入る訳ではないらしい。
　神君家康公は埋蔵金の盗掘を防ぐために呪術的な仕掛けを施しており、残された『謎かけ』を解かなくてはならないのだ。

「私達が受け持った地図の謎かけは、占いに関する問いの問題のようです」
　シェーンは巻物の隅に記された謎かけの文章を読み上げる。

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・とある大名が以下の四つの物事について悩みを巡らせていた。
　『今年の農作物の吉凶』『世間を騒がす泥棒』『嫁の腹の中の赤子が男かどうか』『自らの寿命について』。

　そこに公明なる陰陽師が訪れた。
　この陰陽師の占いは百発百中。そして決して仕事に関して嘘を言わず、誤魔化さないと評判である。
　ただしこの陰陽師からは『八百両』につき一回だけしか質問する事は出来ない。
　大名は陰陽師の滞在中に使える金は『二千両』であり、どうあがいてもこれ以上は出せそうになかった。
　大名はこの占い料は高すぎると思い、陰陽師に「どれだけ短い質問でも一問とするのか？」と聞くと、「勿論」と返ってきた。
　ならばと大名は「どれだけ長い質問であっても一問とするのか？」と聞けば、「左様でございます」と返ってきた。

・はて？この大名は色々と考えを巡らせたのだが、元々悩んでいた四つの事柄の内、幾つを聞き出す事が出来たであろうか？
・答えの『数字』を記せ。

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「八百両って高すぎませんか……う、うーん？分かるような？分からないような？」
　どうやらシェーンではこの問題、力になれそうにない。
「武士は食わねど高楊枝……とは言いますが、やっぱりお腹が空いた状態では満足に戦えませんよね。皆さんが頼りです。頑張ってください」
　そうしてヤドリガミの少女は猟兵を送り出すのだった。

第1章 冒険 『神君家康公の謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●回答
　埋蔵金の地図を頼りにテレポートしてきた猟兵少女4名は難なく神君家康公の遺した金庫を発見するに至っていた。
「戦をするのには色々と物入りだよね。まあ、お手軽に戦をされてもこまるし」
　青葉・まどか（玄鳥・f06729）が金庫を検分すると、魔術的に封印の施された鍵穴を見つける事が出来た。
「どうやら、ここに謎かけの『答え』を入力するみたいだね」
　そこで改めて猟兵少女4名は謎かけを確認する。
「一休さんとやらが得意そうな問いじゃのう」
　スターリィ・ゲイジー（ほしをみあげるスターリィ・f06804）は問い読み上げるとそう感想を漏らした。
　物語調になっている辺りがそういった感想を持つ要因かもしれない。
「私の頭じゃひねりは効かぬが、知識でもって考えてみるか」
　両手の指を頭に当ててくるくるとひねるひねる……ポクポク、チーン。
「そうじゃ……吉凶、男女、寿命のように答えのパターンが決まっているなら、数字にしてその組み合わせでなんとかできんかの？」
　スターリィの案は、返ってくる答えが決まっているのであれば、それを記号にしてみるという事である。
　特に『寿命』『豊作/凶作』『男児/女児』は答えが分かっているので数字に置き換えてしまい、桁数や足し算引き算などで分解できるような数字に置き換えて、後でその解答を分解する事で解凍を得ようというのである。
　まぁつまり。
「大泥棒の本名に！私の寿命と今年の農作物の吉凶を付け足して！生まれるうちの子に性別が分かる名前を付けるとしたら何が良いでしょうか？例えば六十六吉五右衛門花子みたいな感じでお願いしまーす！」
　甘甘・ききん（可哀想な　人の振りをする狐・f17353）が凄くまっすぐにスターリィの案で一問で全部聞ける質問内容を元気よく叫んだ。
　後で全部分解する手法ならば、数字に置き換える必要もない。全部の答えを繋げた回答を聞けばいいのだ。あったまいー！
「これで一問で全部聞ける！IQ高い！千二百両手元に残る大名には相談料を六百両ほど払ってほしい。この場にわたしが居なかったことが悔やまれるー」
「うむ。子細が違っても4つというのは変わらなさそうな気がするが、どうじゃ？」
　ききんとスターリィの聖者15歳組の二人がテンション高く両手を合わせる。
「いやーそれにしても1回につき八百両、まあ高いわな……値切り出来たら良かったんやけど、それも質問に含まれるんやろうし。何とか質問の回数をケチって……ん？待てよ？」
　しかしそこで話を聞いていたメルノ・ネッケル（火器狐・f09332）が何かに気付いた様子だった。
「あ……」
　と同時にその呟きを耳ざとく聞いていたききんも気付いた様子だった。
「……うーん、間違っとったら笑ってくれな？」
「うん。答えは『０』だね」
　冷静にまどかが最後を引き継ぐ。
「……しかも四百両しか残ってない、もしくはこの陰陽師が切り捨てられている……。なんだろこの悲しくなる感じ……」
　ききんは己で導き出した答えに上がっていたテンションを急降下させてしまっていた。
「え、何故じゃろうか？」
　まだピンと来ていないスターリィにまどかとメルノは解説を行う。
「大名は本来の聞きたい事の前に『二つ』質問をしちゃったよね」
「……だって、大名様、既に『どれだけ短い質問でも一問とするのか？』『どれだけ長い質問であっても一問とするのか？』で2回質問して、それに答えてもらっちゃっとるもんな」
　そう実はこの問いは問題文の中で質問出来る上限に既に達してしまってたのだ。
　再度質問するには八百両が必要なのだが……二千両から千六百両差っ引いて、残りは四百両。もう質問は出来ない。
「……おお。成程のぅ」
「値切りしていい？とか聞こうにも、既に質問できるだけのお金無いもんな」
「はぁー、閃きだと思ったのになー」
「うーん、世知辛い世の中だね」
　はぁーあ。とため息を溢すメルノとききんに、それをなだめながらまどかは鍵穴に『零』と入力する。

　ガコン。

　どうやら正解だったらしく、埋蔵金の入った金庫は開いた。
「開くんか。やられたで、良く前提を確かめんと分からへん奴や」
「曲者じゃったが……これを狙う輩が出ないうちに、荷車組んでさっさと運ばぬといけないのう」
「この悲しみを癒やすには埋蔵金しかないんです。この手が勝手に一部を懐に入れるのは深い悲しみのせいなんです……」
「スターリィさん。ここに一人埋蔵金を狙ってる狐がいます」
「ひーっ誤解ですぅ！ちょっと乙女の期待が裏切られて傷つけられた心を癒すために懐に潤いを求めてしまっただけなんですぅー」
「ほれ、飴ちゃん上げたるさかい、心の傷は甘味で癒し」
「あ、クッキーもありますよ」
「わーい頂きまーす」
「皆さん、お茶は運び終えてからにしましょうね」
　こうして賑やかにこの場の埋蔵金は回収ができたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月04日