エンパイアウォー③~山中にて軍勢を斬れ
世界中から猟兵が集まるグリモアベースに一人の女が現れた。
グリモア猟兵のグロリア・グルッグは空いたスペースに陣取ると猟兵たちに声をかける。
「サムライエンパイアで大規模な戦争が始まりました! どうか皆さんのお力を貸してください!」
集まってくれた猟兵に一礼すると、グロリアは周囲に電脳空間を展開した。
鳥が空から見下ろしたような映像には小さな山城が映し出されている。
「こちらは今回のミッションに関わる『信州上田城』と呼ばれるお城です。先日の事件で入手された『第六天魔軍将図』、そこに名を連ねる『上杉謙信』がこの一帯を制圧してしまいました」
グロリアは電脳空間を操作し山城周辺には複数の部隊のオブリビオンが集まっていることを伝える。
「御覧の通り、すでに周辺にはオブリビオンの部隊が配置されています。敵の狙いは、ここを通る幕府軍2万の撃滅でしょう。……かの軍神が率いる軍勢と幕府軍が交戦した場合、幕府軍は多大なる犠牲を払うことになると思います」
総勢10万の幕府軍のうち、この中山道方面を進む兵は2万。
最終目的地である『魔空安土城』までに最低でも1万を生き残らせなければならない。
冷徹な計算をすれば9万までは死んでも作戦に影響はないということだ。
江戸幕府将軍、徳川家光の命を受けたサムライたちは己の死を覚悟している。
この道行きでどれだけの命が喪われようと、戦いに勝てればそれで良し。
武士道とは死ぬことと見つけたり――そう嘯き笑う者もいるだろう。
「幕府軍の皆さんは決死の覚悟でここを乗り越えようとされます。ですが、そのためには邪魔な障害物があちこちに転がっていまして……」
「成程、此度はそれを斬れと」
「はい。皆さんには幕府軍より先行してもらい、山岳地帯にいる上杉謙信配下のオブリビオンを倒してもらいます。軍勢の中でも特に強力な、主力となりうる部隊を撃破できれば、上杉軍は不利を悟って撤退するでしょう」
本隊の損耗を防ぐための露払い。あるいは多くのサムライを生かすための戦いだ。
「戦闘エリアは山岳地帯となるため、起伏を利用したり山林をうまく使えば有利に戦えるかもしれません。逆にそうやって待ち伏せしようとしている敵がいるかもなので、それを逆手に取って奇襲するのも有効かもですね」
作戦の内容を伝え終え、グロリアは猟兵たちに頭を下げる。
「どう戦うかは皆さんにお任せします。どうかサムライエンパイアの人々を守るため、軍神の企みをぶっ壊してください。お願いします!」
そうしてグロリアは猟兵たちを送り出した。
宝野ありか
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
どうもお世話になっています、宝野ありかです。
今回はサムエンで起きた戦争シナリオとなります。
描写は基本的にソロでやっていくつもりです。
戦場は山の中なのでちょっと薄暗かったり足元が悪かったりします。
これといった対策がなくても判定に不利はつきません。普通です。
何か良さそうな対策があれば有利になるでしょう。
山の中にいる敵は「見回りをしている」か「潜伏ポイントで待伏せ」しています。
どちらをどうやって攻撃するか、が重要になるでしょう。
それではよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『異国のカンフーにゃんこ』
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POW : にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ひろしお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月凪・ハルマ
うーん、見た目は可愛いんだけどな……
(ただし、それで手を抜く訳でもない)
◆SPD
敵に気付かれない様、移動は基本【忍び足】で行う
まずは発見されない様、適当な樹の上に移動し潜伏
そこから【錬成カミヤドリ】で宝珠を複製して
それらを周囲に適当に飛ばす
一応それなりにキラキラだし、そもそもこんな物が飛んで来たら
見回り中だろうが待ち伏せしてようが反応せざるを得ないだろう
発見されたかどうか判定する為に耳を澄ませておく
それっぽい声や音が聞こえたら、飛ばしていた複製宝珠を操り
敵を自分の隠れている位置まで誘導して、手裏剣で急所を狙い撃つ
(【暗殺】+【投擲】+【早業】)
あと可能なら、増援を呼ばれる前に確実に仕留めたいね
山岳地帯に生い茂る木々の中から身を隠しやすそうな樹を選び、その上で息を潜める月凪・ハルマ。
ハルマは撒き餌としてばら撒くための宝珠を複製しながらターゲットについて思いを馳せた。
敵の名は何と言ったか。たしか異国のカンフーにゃんこだった気がする。
愛くるしい猫が二本足で立ちながら棒めいた武具を持っていた。
(うーん、見た目は可愛いんだけどな……)
ハルマを悩ませたのはカンフーにゃんこが思いのほか可愛いことだった。
だがハルマは猟兵である。
敵であるオブリビオンが可愛かろうとそこはそれ。
私情を挟んで手を抜く訳でもなく、きっちりと仕事はこなすのがハルマであった。
ハルマはユーベルコード、錬成カミヤドリで複製した宝珠を方々に放つ。
これといって狙いは付けず、その辺の周囲に投げるような感覚だ。
(一応それなりにキラキラだし、そもそもこんな物が飛んで来たら見回り中だろうが待ち伏せしてようが反応せざるを得ないだろう)
撒き餌は十分。あとは敵が釣れるのを待つのみである。
樹の上に登るまでの隠密行動は完璧だったので、気配を殺しておけば敵に見つかる心配はないだろう。
ハルマは軽く目を伏せながら集中し、聞こえてくる音の取捨選別にかかる。
風に揺れる葉の音。遠くで鳴く鳥の音。山の中にあふれる様々な音。
自然の音の中に紛れ、チリン、と小さな鈴の音が聞こえてきた。
ハルマは意識をそちらの方へと向け、さらなる情報を集める。
「うにゃ? うにゃにゃ?」
どうやら敵が食いついたようだ。
ハルマは宝珠を地面に転がすように操りながら、敵を自分のいる場所まで誘導した。
「キラキラしてるにゃ、待つにゃー!」
好奇心いっぱいの目で宝珠を追いかけてきた数体のカンフーにゃんこ。
にゃんこたちの目はきっとビー玉か何かが転がっているように見えているのだろう。
夢中で宝珠を追ってくるにゃんこたちがハルマの下まで来た。
敵の数は複数。これを同時に仕留めるべく、ハルマは複数枚の忍者手裏剣を構えた。
刹那、ハルマの手より手裏剣が放たれる。
音もなく放たれた手裏剣は弧を描き、にゃんこたちの急所を同時に突いた。
「ぎにゃー!!」
即死を免れたにゃんこが断末魔の悲鳴を上げようとしたところへ、飛び降りたハルマの影が落ちる。
「ごめんな」
ハルマは落下の勢いをトンファーに乗せてにゃんこの頭部を打撃した。
驚くほど静かに複数のにゃんこを消滅させたハルマは、増援が現れる前に山中へと姿を消すのだった。
成功
🔵🔵🔴
化野・風音
猫の怪異ですか。
お互い、化生の身の上ではありますが、化かし合いで破れるようでは妖狐の名が廃りますね?
……それにしても。お武家様方を救援するために力を奮うというのも不思議な心地ですね?
見回りで徘徊するをしているオブリビオンを発見したら、逃亡する……ように見せかけて【挑発】しながら【時間稼ぎ】して、敵の仲間の救援が難しい位置までつり出して
≪外法・化野転写≫で隔離します。
無機物の操作、ですか? ……ああ。ああ、ああ。ごめんなさいね? そこに在るものはすべて幻です。
ここは化野。無常の荒野。現世とはまこと、儚いものですね?
あとは迷路を彷徨う猫さんたちを「辰狐王」の【破魔】の力で各個撃破といたしましょう
マヤ・ウェストウッド
「世にも不思議な自ら走り回る歯車。えげれす生まれの輪入道、ぱんじゃんどらむでござ〜……ごめん、スニーキング中だったわ」
・AI搭載式パンジャンドラム型ドローンを山中に散開させて木陰やら岩陰やら、マヤの周囲に忍ばせる
・本人は堂々だ山道を歩き、敵を惹きつける。集中攻撃を受けても構わないという[勇気]がマヤをそうさせる
・アンブッシュには[野生の勘]で対応。犬耳は落葉を踏みしめる音も聞き洩らさない。たぶん
・接敵次第、魔導バイクのエマニュエルを呼び付けて逃げる……と見せかけて忍ばせたパンジャンドラムを始動。マヤを囲むであろう敵群に対して包囲爆撃を試みる
「お館様に伝えておけ。アンタの傷口に塩を送るとね!」
「――つまりはそう! それこそがパンジャンドラムだったのさ!」
がばっと両手を広げたマヤ・ウェストウッド(犬耳のマヤ・f03710)が全ての答えを導き出したかのように力説した。
マヤが真顔で両手をぐるぐる回しているのを、若干引き気味に見ているのは化野・風音(あだしのの怪・f11615)だ。
風音はマヤと二人で山道を行きながら平静を保とうと努力していた。
そう、努力しているのである。
本来、風音は飄々とした、いい性格をしている妖狐だ。たいていのことは笑って流せる。
風の吹くまま気の向くままに巷を渡り歩き、多くの人々と交わってはお祭り騒ぎに興じるのが風音のライフワーク。
だから偶然同じタイミングで戦場に出たマヤとも上手くやれるはず……だった。少なくとも自信はあった。
だが。
「わかる? かざちゃん分かる? こう、こうしてさ! ぐるぐるって回りながら荒野を駆けて、駆け抜けて、パンジャンドラムは進むのさ!」
「あ、はい。聞いてます、聞いてますから、マヤさん、ちょっと声が大きいかなって……」
「その身に爆薬を積んで、パンジャンは回るんだ……! 回って回って、たどり着いた先で爆発するために……くぅぅ!!」
「どうどう、静まりたまえ~、鎮まりたまえ~」
自分の言葉にエモさを極めたのかマヤが涙目になったのを、風音は鎮まり給えとこい願う。
(……ぱんじゃんって……何?)
先ほどからずっとマヤが力説してくれている武器らしき物がよく分からない風音。
しかしをそれを口にしたら怒涛の説明が入ったので、風音は黙ることを学習していた。
マヤいわく、えげれすという異国で生まれた輪入道をぱんじゃんどらむと呼ぶらしい。
輪入道なら風音にも分かる。わりとよく見る類の妖怪だ。
が、マヤの話を聞くに、そのえげれす生まれの輪入道は爆弾を積んで爆発するらしい。
その光景をイメージするだけなら出来る。爆弾を積んだ輪入道が爆発するだけなのだから。
(……だから、何なんでしょうね……)
風音にはマヤが一体どこにエモさを感じているのかさっぱりだった。
「はぁぁ……やっぱり、パンジャンドラム、なんだよなぁ……。……あ、ごめん。いまスニーキング中だったわ」
「えっ、今更!?」
散々大声でパンジャンドラムを語っていたマヤがすうっと素面に戻る。
あまりに急なことで、ついうっかり風音も大声を出してしまった。
そこへ。
「にゃにゃ! にゃに奴にゃ! ものども、であえーであえー、にゃ!」
二人の声を聞きつけてやってきた異国のカンフーにゃんこが仲間を呼んだ。
にゃにゃにゃと集まってくるにゃんこたち。
「あっ、ほら! マヤさんが大声でしゃべるから!」
「えっ、アタシかい? ……いやまてよ? もしかしてこいつら、パンジャンの話を聞きにきたんじゃ」
「ちーがーいーまーすー!」
風音はうっすらと目じりに涙を浮かべながら、どうしてこうなったと切実に思う。
当初の予定ではもっとこう、クールに……エレガントに……。
情報にあった敵は猫の怪異。妖狐である風音は、互いに化生の身として化かし合いを想定していた。
相手を手のひらで転がし、妖狐の名が伊達ではないことを見せつけてやるつもりだったのだ。
それが、こんな形で敵に見つかるだなんて。
「ううっ、妖狐の名が廃りますぅ……」
銀色の美しい耳をぺたんとした風音に対し、マヤは焦げ茶色の耳をピンっと突き立てた。
「なぁに、これしきのこと、アタシの耳にはまるっとお見通しだったのさ! ……たぶん」
「たぶん?」
ばしっと威勢のいい台詞を決めたマヤが、ぼそっと呟くのを風音は聞き逃さない。
ジト目で見てくる風音から目をそらし、マヤは魔導バイクを呼びつけた。
「アタシはここだよ、エマニュエル!」
マヤの呼び声に応じた魔導バイクのエマニュエルが、山道を駆け上がり姿を現した。
「さぁ乗りな、かざちゃん! 一緒に征くよ!」
「ど、どこへですか!?」
「とびっきり楽しいところへさ!」
二人は魔導バイクに騎乗し、にゃんこの群れを突っ切った。
●
二人を乗せた魔導バイクは山の中を右往左往しながら爆走していた。
「どこへ行くんですかー!?」
「あっはっは! たまには山を走るのも悪くないねぇ!」
質問への答えになっていないマヤの返事に、風音は諦めたようにため息をついた。
(……まぁでもこれ、わざと集めてますよねぇ)
風音は冷気を宿した目でにゃんこたちの追走を眺める。
マヤは先ほどから無軌道にバイクを走らせているようで、その実にゃんこたちを釣り出していた。
まるで本当に敵がどこにいるか分かっているかのような走りぶりだ。
それに山の中という悪路を走っているにも関わらず、風音に伝わる衝撃は皆無といってもいい。
魔導バイクの性能か、はたまたマヤの操縦技術がずば抜けているのか……。
(……それにしても。お武家様方を救援するために力を奮うというのも不思議な心地ですね?)
徳川をはじめとする武家方のために自分が戦っているという状況に、風音は奇妙な因縁を感じていた。
普段であれば市井の拝み屋でしかないと嘯く風音だが、いまは国を揺るがす一大事の真っ最中である。
その上、サムライたちが決死の覚悟で戦に赴くというのであれば、多少は風向きも変わろうというもの。
風音はそんな風に思う自分をふふっと笑いながらユーベルコードを展開した。
「……どうぞ、ご覧になってくださいませ。現世と幽世に、果たしてどれほど違いがありましょうか?」
外法・化野転写。
風音を中心とした広大な範囲に無常の荒野が拡がっていく。
それは現実ではありえぬ光景、常世のものではない化野。
戦場全体に、無限に広がる人骨が転がる荒野の幻影が入り組みながら展開された。
「うにゃ! なんにゃこれは! ええい、にゃんにとってはこの世の万物が武器となる……のにゃ? あにゃ?」
風音の結界に対応しようとしたにゃんこたちだが、思うように術が使えずおろおろしている。
この機をチャンスと見たマヤがバイクを止めた。
「へぇ……こいつはなかなかのもんだ。やるねぇ、風音」
異界と化した戦場を眺め、マヤはいたく感心したように呟いた。
その反応が存外に心地よかった風音はにこりと微笑みを返す。
「うにゃー! にゃんか変にゃ! どうなっているにゃー!」
「あら、無機物の操作、ですか? ……ああ。ああ、ああ。ごめんなさいね? そこに在るものはすべて幻です」
右往左往するにゃんこたちに笑いかけながら風音は告げる。
「ここは化野。無常の荒野。現世とはまこと、儚いものですね?」
風音によって作り出された幻影の迷路に誘い込まれたにゃんこたち。
切り札でもあった無機物の武器変換を封じられ、多くの個体が浮足立っているようだ。
中には果敢に迷路を走るものもいたが、仲間とはぐれるだけの結果となった。
風音は迷路によりにゃんこたちの分断に成功した。
あとは各個撃破をするだけで十分そうだが……風音はちらりと流し目でマヤを見る。
「どうします? あとは迷路を彷徨う猫さんたちを、この辰狐王の破魔の力によって滅しようと思いますけれど?」
「どうするか、だって……?」
対するマヤはにやりと不敵な笑みを返した。
「決まっているだろう! こうするのさ!」
マヤは随所に潜伏させていた小型の戦闘用AI搭載型パンジャンドラムの群れを起動させる。
にゃんこたちにとっては迷路の中に、急に謎の回転兵器群が現れたように思えただろう。
「さあさあとくとご覧あれ! 世にも不思議な自ら走り回る歯車。えげれす生まれの輪入道、ぱんじゃんどらむでござ~い!」
「う、うにゃー! なんか回ってくるにゃー!」
自走するパンジャンドラムの群れは回転しながら迷路を進み、逃げ惑うにゃんこたちにぶつかっては爆砕していく。
あちこちで悲鳴と爆発が上がる地獄絵図。
「あっはっは! これがぱんじゃんの威力さ! お館様に伝えておけ。アンタの傷口に塩を送るとね!」
高笑いするマヤを横目に、いいのかなぁこれで……という顔で結界を維持する風音であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
甚五郎・クヌギ
山岳地帯を行くのだな!
ならば我輩の身体能力が輝く時だ!
・【地形の利用】
小柄な体格をいかして普通の人が通りにくい場所を進むぞ
多少歩くには困難であってもクライミング、ジャンプ、身軽に動き悪所には充分対応できると思うのである
野生の勘を頼りに敵の待ち伏せしていそうな怪しい場所を探り
敵の死角を取れるならば勇気をもって飛び込むぞ!
戦闘には【妖剣解放】
高速移動で接近し、敵に反応される前に攻撃しよう
吊り上げられてしまわぬよう、棒の動きには気をつけるとしよう
こちらとて薙刀使いなのだ、長物のリーチなら、よくよく承知している!
・アドリブ、連携歓迎
山のどこかで大きな音が鳴った。
甚五郎・クヌギは耳をぴくぴくと動かしながら聞こえてきた音の出所を探る。
山の天気は変わりやすいという。どこぞから雷雲でも流れてきたのかもしれない。
隠密行動中である今、天気が変わるのは都合がいい反面、濡れるのはちょっとなぁと思う甚五郎。
ケットシーの甚五郎はその小柄な体躯を活かして獣道を進んでいた。
獣道とはいうが道などなく、人間や大型の種族では立往生しかねないような悪路である。
(その点、吾輩の身体能力の光らせ時であるな!)
甚五郎は自信満々に山岳地帯を駆け巡る。
冴え渡る野生の勘が告げてくるのは伏兵がいそうな場所だ。
敵の手に落ちた山など伏兵だらけの魔境になっていてもおかしくはない。
事実、甚五郎の見立てでも、そこかしこに敵が伏せている。
その全てを撃滅しようと思えば丸一日ほどは戦う必要がありそうだ。
しかし今回の仕事は敵軍の主力となりそうな強い個体の排除である。
(要するに暗殺であるな! 正々堂々と参ろうぞ!)
暗殺と呼べば聞こえは悪いが、本隊を無事に通すための露払いと思えば誇らしい。
それもサムライエンパイアというお国の一大事に立ち上がった人々を通すための戦いだ。
これこそまさに正道を貫く絶好の機会だろう。
甚五郎は武者震いを抑えながら野辺送りを持つ手に力を込めた。
(むっ! 強きものの気配である!)
山道を背後から奇襲できる位置に隠れているオブリビオンを発見。
その名は異国のカンフーにゃんこ。
見た目は功夫を積んだ猫人であり、これは負けられぬなと闘志を燃やす甚五郎。
にゃんこの死角にすっとコースを変更した甚五郎がさらに速度を増した。
ユーベルコード・妖剣解放。
妖刀の怨念をまとい、風のような速さで甚五郎がにゃんこに襲い掛かった。
「吾輩は甚五郎というものである! いざ尋常に覚悟ー!」
不意の大声にびっくりしたにゃんこが隙を見せた。
そこへ叩き込まれる甚五郎の一撃。
薙刀使いたる甚五郎は長物のリーチをよく理解していた。
絶妙な間合いで放たれた甚五郎の攻撃がにゃんこを捉え、返す刀でもう一太刀お見舞いする。
「ぎにゃにゃー! 不意打ちとは卑怯だにゃー!」
「なにおう! 吾輩はしっかりと名乗ったではないか! しかるに貴殿が遅い、ということであるな!」
「ぐぬぬ! こうなったら奥の手にゃ!」
防戦一方となったにゃんこが奥の手を使い、首からかけた鈴が光り始める!
「隙あり! 吾輩の勝利である!」
追い詰められたにゃんこが反撃へと転じる一瞬の硬直を見逃さず、甚五郎が薙刀を素早く振り抜いた。
ずばんっ! と一閃され、鈴の光も消えたにゃんこが力なく倒れる。
「うにゃ、み、見事なり……にゃ」
最期に良い技を見たと満足し、にゃんこは消滅した。
勝負はほんの一瞬のことであった。しかし、刃を交わした相手を甚五郎は忘れない。
「さらばである。貴殿もまた、吾輩の強敵であった」
薙刀をくるりと回し、倒した敵へと別れを告げる。
その言葉に偽りはなく、たしかに敵は敵軍の主力となりうる実力者であった。
勝負とは時の運に大きく左右されるもの。
戦の理を知る甚五郎は敗れ去った敵を侮ることなく、再び戦場へと舞い戻る。
それからほどなくし、山道に伏せていた脅威は取り除かれることとなった。
山岳地帯を駆け巡り、奮闘した猟兵たちの勝利である。
大成功
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