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エンパイアウォー⑤～名乗りあう夫婦達

作者：ささかまかまだ

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「皆には徳川埋蔵金を取ってきてもらうよ」
　グリモア猟兵のユェン・ウェイ（M.Y.W・f00349）は猟兵達にいきなり謎の提案をし始めた。
「あ、えっとね。信長率いる魔軍将の一人、大悪災『日野富子』のせいで補給物資の買い占めと物価の高騰が起こっちゃってるんだ。だからそれに対抗するために、皆には神君家康公が遺した『徳川埋蔵金』を取ってきて貰いたいんだよ」
　そう言いつつユェンが配るのは『徳川埋蔵金の地図』を書き写した資料。
　ここに記された場所に埋蔵金が眠っているのだろう。
「でも、現場に行くだけじゃ埋蔵金は手に入らない。家康公は盗掘を防ぐためにこの場所に魔術的な防御を施していて……皆にはそれの解除もお願いしたいんだ」
　現場に行けば何かしらの謎が提示される。
　それに対して正しい答えを示せば魔術は解けて中にある埋蔵金も手に入るという仕組みらしい。
　ただしあまりにも間違った答えが提示され続ければ魔術を解く事は不可能になるので注意して欲しいとのことだ。
「この埋蔵金を使って物資を補給出来なければ、予定される規模の幕府軍を動かせなくなっちゃう。そうすると信長との決戦も大変になるから……それを防ぐためにも、頑張ってきてね！」
　そう言ってユェンは猟兵達を送り出す。

　ゲートを抜けた先に待っているのは隠された洞窟だった。
　そして入り口には早速謎が示されている。

●謎の内容
　『三郎』と『あき』は夫婦だ。
　この夫婦は自分達以外に四組の夫婦を呼んで花見をしに行った。
　いずれの人も初対面の人とだけ自分の名前を名乗りあった。

　その後『三郎』は自分以外の参加者九人に「何人に名を名乗ったか」と聞いた。
　すると九人全員が違った答えを言った。

　嘘をついている人はいない。
　自分自身には名乗れない。
　自分の伴侶と初対面という人もいない。

　では『あき』は何人に名を名乗っただろうか？

第1章 冒険 『神君家康公の謎かけ』

POW   :    総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。 SPD   :    素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。 WIZ   :    明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。 👑3 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

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　洞窟の前に集った猟兵達は、それぞれの方法で謎に挑み始めていた。
「ふむ……全部で１０人、名乗る相手は初対面。この条件だと最大８人、最低０人に名乗れる訳だな」
　亜儀流野・珠（狐の恩返し・f01686）は与えられた条件から情報を整理していた。
　しかし問題文の状況もついつい気になる。
　参加者が挨拶したりしなかったりする花見だ。想像するとちょっとおかしい。
　そんな花見が実在するのならば、どんな空気か少し見てみたい気もしていた。
「そうそう。ええっと、三郎さんをＡとして、残りの参加者にもアルファベットを振って……」
　同じく情報を整理しながら回答を導き出しているのは富波・壱子（夢見る未如孵・f01342）。
　今回は戦う必要がないため、日常生活を送る方の人格が問題に対処している。
　その親しみやすい雰囲気は仲間と意見を交換し合う際にも効果的だ。
　壱子は疑問点を上手く仲間と整理し合いながら謎に挑む。
「まず、８と答えた者がいる。そして８と答えた者と０と答えた者は夫婦となるわけだな」
　雷楽寺・六郎兵衛（天下一の三味線・f20906）は派手な見た目とは裏腹に、じっくりと着実に答えを出そうとしていた。
　時に立派にたくわえた髭を撫でながら、六郎兵衛は答えに迫る。
　今回の謎もボケ防止の頭の体操のようなものと言いながら、その様子はとても真剣だ。
「そうじゃな。同様に、１の者と７の者が夫婦と云う事に為ろうて」
　ヤクモ・カンナビ（スペースノイドのサイキッカー・f00100）は電脳サイキック回路を展開しながら謎に挑む。
　忙しなく回路を動かし、様々なパターンを計算する。このように電脳空間を利用するのは彼女の特技だ。
　そして破るべくは家康公が作り上げた魔術防御。それに挑むのはハッキングのようで、ヤクモはどこか心が躍るのを感じていた。
「こうやってつながっていけば、最後には４の夫婦が出来上がるというわけね」
　リダン・ムグルエギ（宇宙山羊のデザイナー・f03694）も答えにもうすぐ辿り着きそうであったが、別の事も考えていたりした。
　まずこの依頼は戦場で走らなくても戦に貢献できる。楽でいい。
　そして埋蔵金を幕府に渡す時には自分の作った服を売り込みにも行けるだろう。今回の依頼は彼女向きのものであった。

　こうしてそれぞれが考え、意見を交換しあい……結論を出す時がやって来た。
「よし、あきが名乗った相手は『４人』だ！　さあどうだ、開け道よ！」
「ええ、あきさんが名乗ったのは４人！　どう？　合ってる？」
「そうだな。４と答えた者は余る。残った４が『あき』の答えだぜ」
「うむ、あき殿は４人に名乗った……此れが答えじゃ」
「そうね、というわけで正解は４人だわ」
　猟兵達が出した結論は同じであった。
　この条件ならば『三郎』以外の花見参加者、『あき』を含めた９人の回答は「０～８人」の９通り。
　最大の人数である「８人」と回答した者は自分の伴侶以外の全員と挨拶している事になる。
　そうするとその人物の伴侶は誰とも挨拶していない「０人」の者となる。
　同様に「７人」の者の伴侶は「１人」の者、「６人」の者の伴侶は「２人」の者……という風になっていくのだ。
　すると「４人」と答えた者は余る。
　その者の伴侶は質問に回答していないが花見には参加していた者、つまり『三郎』になる。
　つまり『あき』の回答は「４人」になるという仕組みだ。

　猟兵達が答えを示した瞬間、洞窟の奥から眩い光が溢れ出した。
　魔術で隠されていた大量の大判小判が姿を現したのだ。
　これを使えば日野富子による買い占めにも対抗出来るだろう。
「おお！　これが埋蔵金……答えも合っていたようで嬉しいな！」
「これだけ財宝があれば幕府の人達もひとまず安心だね。本当によかった」
　年の近い珠と壱子は結果を共に喜び合う。
　実際に目にした財宝の迫力も新鮮で、良い思い出になりそうだ。
「わらわの電脳サイキック回路を以ってすれば、造作も無い魔術防御じゃ」
　ヤクモも自分の組んだ回路の働きに大満足。
　どんな謎が来ても彼女なら変わらず立ち向かっていけるだろう。
「カハハ、ざっとこんなものよ。しかし、埋蔵金ねえ。儂には不要な物だが、しかし流石に壮観だぜ」
　六郎兵衛はしっかりと埋蔵金の姿を目に焼き付けていた。
　銭をいくら積んだところで三味線の腕があがるものでもない。けれどいずれ弾き語るネタにはなるだろう。
「……徳川家には御三家とかいうのもあるんだっけ。家康本人と後に残る４つの家、その家族、それを守るための問題だったとか？」
　考えすぎかしらね、とリダンはぽつり呟いていた。
　こんな問題を作る以上は家康公も夫婦仲や家族仲を大切に考えていたのだろう。
　ならば幕府に子供服を売り込むのはありかも。新しいアイデアに、彼女の顔は少し綻んだ。

　こうして猟兵達は無事に埋蔵金を入手出来た。
　埋蔵金はしっかりと幕府軍に届けられ、彼らからも多大な感謝が告げられた。
　直接敵を倒さずとも、決戦に向けた着実な準備を進める事となったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月05日