エンパイアウォー④~霊峰の烽火
「大変よー!!」
グリモアベースのど真ん中を突っ切り、片隅の小さな図書スペースまで走ってきた少女は、ぜーはーと息を切らしながら集まった猟兵たちに向けて叫んだ。
「た、大変、なの、よ……ぜーはー……霊峰富士が噴火しちゃう!」
桃色の少女――メルティス・ローゼ(ローゼン・シーカー・f16999)は、急いで息を整えると、抱えていた分厚い本を開いた。
「みんなも知っての通り、サムライエンパイアで織田信長に動きがあったわ」
予知を記した頁に目を走らせながら、猟兵たちに語りかける。
「わたしが予知したのは、魔将軍の『コルテス』が、太陽神ケツァルカトルの力を使って霊峰富士を噴火させようとしている、ということ。霊峰噴火なんて、一体どれ程の被害が出ることか……」
メルティスがぶるっと身を震わせた。
「せっかくの徳川幕府軍を、災害復興になんて充ててる場合じゃないのよ。だから、みんなには噴火を止めてほしいの」
メルティスはそう言って、頁を捲る。
「噴火を止めるには、霊峰各所で儀式をしているコルテス配下のオブリビオンを倒す必要があるわ。ただ――儀式の場所が予知出来なかったのよね……」
悔し気に呟くが、『でも』と顔を上げて猟兵たちを見渡した。
「安心して! 近くまでは送ってあげることが出来るから。みんなの力があれば、奴らの居場所なんてすぐに突き止められるわよ! んで、そのままざくーっと倒しちゃってよね?」
にこにこと無責任なことを言い放つメルティスに、猟兵たちが不審の目を向ける。
「だ、だいじょうぶだって。ほら、オブリビオンの情報は――」
引き攣った笑みを顔に貼り付け、更に頁を捲るメルティス。
「うん、ほら、宗教家って――え? 宗教家……?」
猟兵たちに伝えるどころか、自問自答してしまうメルティスに、猟兵たちは『だめだこりゃ』という表情でエンパイアへ向かう準備をはじめる。
「あうー、ごめんってばー。だから、ね。宗教家のオブリビオンなんて、パワーじゃなくて精神攻撃だろうから、意思を強く持ってねってことよ!」
ヤケクソ気味にそう叫ぶと、本をぱたんと閉じた。
そのまま高く掲げる。
「さあ、世界を救うのは貴方たちなんだから! 行ってらっしゃい!」
メルティスの声に本が輝き、猟兵たちを光が包む。
樹海のミッションが始まるのだ。
霧雨りあ
※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
サムライエンパイアからこんにちは。霧雨です。
戦争ですねー熱い。外も暑い。
水分補給をしながら、存分に戦ってくださいね。
さて、今回みなさまが転送される先は『霊峰富士の樹海』となります。
オブリビオンを探し出すところからのスタートとなるため、プレイングには『オブリビオンを探し出す』『オブリビオンと戦う』の二点を記載ください。
尚、宗教家のオブリビオンは洗脳スキルを持っています。
猟兵にも効果があるもののため、洗脳されて儀式に参加……なんてことがないよう、お気を付けくださいませ。
それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
第1章 ボス戦
『宗教家・ニェポス』
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POW : ニューレリジョンメーカー
技能名「【洗脳式勧誘・調略術】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : ゴートリック・パースエイジョン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【対象の脳内に教義を語り意識を混濁させる声】が出現してそれを180秒封じる。
WIZ : アフターライフガチャコンダクター 37
【サムライエンパイアの民草の現世への未練】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【洗脳を強化し、信者を自決すら厭わぬ殉教者】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:いぬひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「リダン・ムグルエギ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シーザー・ゴールドマン
【POW】
オブリビオン探索
儀式の形態からそれに適した場所を推理。後は第六感の導くまま。
(世界知識×第六感)
対オブリビオン戦
『ウルクの黎明』を発動。
オド(オーラ防御)を活性化して戦闘態勢へ。
開幕先制の衝撃波。(先制攻撃×衝撃波×範囲攻撃)
放つと同時に間合いを詰めて、戦闘開始。
オーラセイバーを剛柔自在の剣術で振るいます。
(先制攻撃×怪力×鎧砕き)(フェイント×2回攻撃×鎧無視攻撃)など
敵の攻撃は回避からのカウンター
(第六感×見切り×カウンター)
敵POWUC対策
ふむ、洗脳術か。奴隷であれ王であれ心は自由であるべきだ。
UCによるものでない説得なら聞く耳も持ったがね。
と静かなる怒りで打破。
霊峰の樹海は静まり返っていた。
噴火の予兆など微塵も感じられないような、そんな不気味な静けさの中に灯る紅――シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は、自身の感覚でオブリビオンの存在を探っていた。
「ふむ……魔力の吹き溜まりが散見されるね」
儀式を行うには、それなりの条件があるものだ。
どういった類の儀式かはわからないが、力のあるオブリビオンが儀式を行っているのは間違いないだろう。
シーザーは感知した魔力の中でも、ひときわ特徴が強いものを辿った。
「霊峰、とは言ったものだ……力のない者が足を踏み入れれば、生きては出られまい」
『土地自体の魔力』によって、方向感覚が狂わされそうになる――が、シーザー程の魔力の持ち主であれば影響は受けない。
ひとしきり獣道を歩けば、突然視界が開けた。
まるでその場を避けるかのように、木々が生えていない。
「あれか……」
シーザーの目に映るものは、巨大な祭壇。
その中心には、僧侶のような風貌の男が、厭らしい笑みを浮かべて立っている。
彼から発せられる気配は、オブリビオンのもの。
シーザーはそのまま祭壇へと歩みを進めた。
「おや? おやおやおや? これはこれは、猟兵の方ではありませんか」
気配も消さずに近付くシーザーに気付いたオブリビオンは、祭壇の上から笑顔を彼に向ける。
「私は二ェポス。ここの祭壇を任された僧侶です。あなたの目的はわかっている――が、まずは私の話を聞きませんか?」
無害とでも言いたげに腕を広げながらニェポスはそう言うと、ゆっくりと祭壇から降りて来た。
ニェポスがシーザの前に立つ――しかし、彼から発せられる邪悪な気配に、シーザーは目を細めた。
シーザーの魔力が活性化し、彼を包む空気が変わる。
「ふむ……洗脳術か」
静かに呟いた。
その言葉にニェポスの目が見開かれ――直後、後方へと吹き飛んだ。
シーザーから放たれた衝撃波が直撃したのだ。
「奴隷であれ王であれ、心は自由であるべきだ――が、君のそれは心ではない」
衝撃波に追従するように地を蹴ったシーザーは、一瞬でニェポスに肉薄する。
地面に叩きつけられ咳込みながら、ニェポスが呪文を唱えて障壁を張る。
しかし、シーザーの右手に出現したオーラセイバーによって、あっさりと砕かれ、残滓を散らした。
「ユーベルコードによるものでない説得なら、聞く耳も持ったがね」
静かな声音――それは小さな怒り。
彼の人となりを知らない者には、わからない程の感情。
その言葉がニェポスの耳に届くころには、オーラーセイバーによる剣戟が彼の身を裂いていた。
血の華を咲かせるニェポス。
しかし、彼の顔からは笑みが消えていない――首から下げた巨大な数珠が突然輝いたかと思うと、数瞬後には祭壇の上へと転移していた。
荒い息をついてシーザーを見やる――その顔には厭らしい笑みを浮かべたままで。
「なるほど、貴方はなかなかに賢い。しかし、この素晴らしい儀式の邪魔はさせませんよ」
ニェポスはそう言うと、腰から取り出した巻物を広げ呪文を高速で唱える。
彼の裂傷がゆっくりと塞がっていった。
「私も手加減などしない。早々に散るが良い」
シーザーは再び戦闘態勢を取る。
戦いは始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵
フィーナ・ステラガーデン
森ね!!まごうことなき森だわ!
んー。儀式って一人でやってるのかしら?
なんか信者とか引き連れてそうな感じがするし
多くの人数で歩いていれば森にそれっぽい痕跡が残っているはずよ!
つまり!んー・・・こっちよ!(結局【第六感】)
この胡散臭いのをぶっ飛ばせばいいのね!
燃えそうなものいっぱい持ってるじゃない!
【属性攻撃】でがんがん焼くわよ!
操られている人がいても問題ないわ!一緒に焼いてやるわ!
むふーっ!運が悪かったわね!って、ええ?やっぱりだめ?
仕方ないわね!じゃあ洗脳強化とかされたら
UCを使ってまとめて洗脳を上書きしてやるわ!
ほら!地べたに這い蹲りなさいよ!!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
霊峰の樹海は静まり返っていた。
しかし、ここはそうでもなかった。
小鳥や小動物が迷惑そうな視線を向ける先にいるのは、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)――紅い瞳に金髪の小さな女性だ。
「森ね! まごうことなき森だわ!」
霊力が充満した樹海を物ともしない彼女は、うーんと考える。
目的は儀式を潰すことだ。それは忘れてはいない。
「儀式って一人でやってるのかしら……何か、信者とか引き連れてそうな感じがするし」
個人の感想です、と記載が付く様なことを呟きながら、辺りを見渡し――。
「んー……こっちよ!」
ずびし、と西の方角を指さす彼女のソレは、ただの第六感というやつだった。
いや、野生の勘か……。
「ほら、多くの人数で歩いていれば、森にそれっぽい痕跡が残るでしょ!?」
誰に言っているのか、そんなことを吐き捨てると、ずんずんと獣道を進んで行く。
確かに――何やら轍のようなものは残っていた。
突如として開ける視界。
中央の祭壇には、大きな角を生やした僧侶っぽい男が立っている。
彼の手には、縛られた竜の子供。
「何あのうさん臭いの……」
いかにも『儀式してます』といった風景に、フィーナの目が半眼になる。
「まあいいわ。オブリビオンには間違いないみたいだし、さっさと燃やしちゃいましょ!」
そう言ったフィーナは、杖にルビーをはめ込んだ。
「ふっふっふ……燃えそうなものいっぱい持ってるじゃないの」
不敵な笑みを浮かべて杖に跨る。
行くわよ、という掛け声と共に、ふわりと宙に舞った。
そのままびゅーんと飛んで行き、あっという間に祭壇の上空に辿り着く。
「そんな儀式、さっさと潰してやるわ!」
先手必勝とばかりに火炎球を放ったフィーナに、多分最初から気付いていたであろうオブリビオンが障壁を張って防ぐ。
「おやおや、またお客さんですか……」
どうやら既に猟兵と戦闘をした後だったようだ――よく見ると衣服があちこち避けた彼は、厭らしい笑みをフィーナへと向けた。
「空から火の玉とは、何という物騒な。しかし、その力があれば私たちと共に来ることができましょう。この儀式を、共に成功させようじゃありませんか。さすれば、貴女もあの方に近付くことが出来るのです」
距離がある割りに、フィーナの耳にはっきりと届く声。
耳に纏わりつき、脳へと流れ込む言葉は、洗脳――。
「ちょっと、気持ち悪いじゃないの! 洗脳!? そんなもの私に効――っ」
身を乗り出して叫ぶフィーナ。
勢い余って杖から落ちる。どすん。
「ふげっ」
あまりのことに、目が丸くしたオブリビオンは何も言えない。
フィーナはよろよろと身を起こすと、もう慣れっこと言わんばかりの形相で、彼の前に仁王立ちした。
「とにかく、そんなもの効かないわ! 燃やす、燃やしてやるんだから!!」
杖を振ると魔法陣が出現し、炎の渦がオブリビオンへと殺到する。
「仕方がないですね……」
オブリビオンは首から下げた数珠をこすると、障壁を張ってやり過ごした。
「お前たち、彼女の相手をしてさしあげなさい」
彼がそう言うと、祭壇の後方からぞろぞろと人が出て来た。
信者、と言うよりは洗脳された者といったところか。
「ふん、運が悪かったわね! まとめて燃やしてあげるわ!」
しかしフィーナには関係のないことだ。火力マシマシで火の玉を撃ち出す。
どうせオブリビオンにどうこうされた者は、助からないのだから。
一瞬で消し炭となった信者たちにちらりと視線を送ってから、オブリビオンは再度フィーナを見た。
ゆっくりと近付きながら、口を開き――。
「止まれって言ってんでしょ!」
フィーナの一言で動きを止めるオブリビオン。
彼女の瞳が赤く輝いている――ユーベルコードを発動させ、オブリビオンを制したのだ。
「さ、燃えなさいよ」
珍しく抑揚のない言葉に乗って、火柱がオブリビオンの足元から立ち上る。
「ぐああああああ!!!」
オブリビオンの絶叫が、樹海にこだました。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
WIZ
珍しいタイプの敵ですね。これは気を付けないと。
信者を引き連れて儀式をしているなら、人が動いた痕跡がかなりあるはずです。それを探して追跡します。
儀式場を見つけたら体の小ささを利用してこっそり近づき、不意打ちを仕掛けます。
両手の指10本を全てニェポスに向け、10本の光を全て叩きつけます。
それでも倒せなければ敵の攻撃は見切りで読み、盾受けとオーラで弾きます。
敵が視界が通らないよう信者で壁を作った場合は、信者を気絶攻撃付きの範囲攻撃で薙ぎ倒し、穴を開けてニェポスにUCを撃ちます。
「あなたを倒す為なら、非情にもなれますよ。儀式が成功したら多くの人が死にますから」
アドリブ歓迎です。
マクベス・メインクーン
富士が噴火とかやべぇな…
さっさと儀式の場所を突き止めに行くか
……しっかし宗教家が敵って…なんだそれ…
近くに生き物が居たら【動物と話す】で【情報収集】して
変な奴らがいる方向を聞く
居なければ【野生の勘】で人が通った痕跡を探して向かうぜ
敵を見つけたら【先制攻撃】
小刀2本に炎の精霊を宿して炎【属性攻撃】で斬りかかる
敵の攻撃には【フェイント】で回避
UCも使用して【2回攻撃】で敵が口開く前にぶっ飛ばす
敵のUCが発動したら【演技】で声に惑わされたフリして
油断したら【だまし討ち】して斬り裂くぜ
悪いがオレにはもう最愛の神様がついてるんでね
んな戯言聞く気はねぇよっ!
白峰・慎矢
霊峰を無理やり噴火させるなんて、随分罰当たりなことを考えるものだね。噴火すれば街への被害も甚大だろうし、もちろんそんなことは決して許さないよ。
まずは儀式場所を探すんだよね。「ダッシュ」で走り回って、開けた場所を探してみようか。後は、信者とかいたり、もう戦闘が始まってるようだから、物音にも気を付けようかな。
あれが敵か……胡散臭い、耳障りな声だ。「念動力」で敵の動きを制限しながら、とりあえず刀で斬りかかろう。逃げるようなら、【依代の霊力】で追撃するよ。これが、神様の力の一端さ。神様の依代である俺に教義を説くとは、嘗めた真似をしてくれるじゃないか……!
静寂に包まれた森の中に、パキパキッと小枝を踏む音が響く。
茂みに潜んでいた小鳥たちが、その音に驚いたのか、ぴぃと鳴きながら飛び立った。
翡翠色のテレビウムの少年、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)は、去りゆく小鳥たちの群れをふと見上げ、すぐに地面へと視線を落とす。
信者を引き連れて儀式をしているならば、痕跡があるはずだ――そう考え、足跡や轍などが残っていないか探しているのだが――。
「おや、これは……」
ぽつりと呟いてしゃがみ込んだ先には、たくさんの足跡――本人は呟いたつもりだったが、意外に声量があったらしい。再び小鳥たちが鳴き交わし、飛び去って行った。
そんな彼らの小さな声を聞きながら、零は足跡を辿って獣道を進んで行くのだった。
別の場所にて――。
樹海の低木が続く獣道を、走る人影がひとつ。
(霊峰を無理やり噴火させるなんて、随分罰当たりなことを考えるものだね)
銀髪の青年、白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)は、左右に目を走らせながら、器用に音も立てずに樹海を駆けて行く。
(噴火すれば街への被害も甚大だろうし……もちろん、そんなことは決して許さないよ)
ここは霊峰の中腹辺りだろうか――時折見える麓を目の端に捉えながら、意識は儀式――オブリビオンへと向ける。
ふと、前方に開けた場所を発見し、スピードを落とした。人の声も聞こえて来る――もしかしたら、他の猟兵が既に戦っているかも知れない。
慎矢はそう考えると、脇道へと逸れていった。
更に別の場所にて――。
「富士が噴火とかやべぇな……」
深い樹海を見回したマクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は、この場所が吹き飛ぶところを想像して、ぶるりと身震いした。
「さっさと儀式の場所を突き止めに行くか」
猫のような青い瞳を更に細めると、儀式の場所を探して足を歩み出そう――の前に。
「しっかし……宗教家が敵って、なんだソレ……」
突っ込まずにはいられない。
あまり聞いたことがないタイプのオブリビオンだが、果たして――。
「ま、考えても仕方ねぇか」
マクベスは、気を取り直して獣道を進む。
途中、慌てて飛んで行く小鳥の群れを呼び止めると、怪しい儀式をしていそうな場所がないかを尋ねてみた。こんな時は、動物と話せるのは非常に便利である。
小鳥の情報から大凡の場所がわかったマクベスは、スピードを上げて獣道を走り抜けるのだった。
「さあ、みなさん。儀式の時間が近付いています」
ニェポスが、信者たち――そして猟兵たちへと向け、大きな声で語り掛ける。
「この竜を捧げ、唱えるのです」
掲げた手の中には、一匹の小さな竜。それは、太陽神ケツァルコアトルの子供。
突如開けた視界に、そんな光景を目にした零は、森から飛び出さずに身を潜めたまま機会を伺った。
(後方から行けそうですね……)
祭壇に近付く算段を立て、静かに移動する。そして祭壇へ辿り着いた、その時――。
「はあああ!!!」
声は上から降って来た。
巨木の太い枝から飛び降りたマクベスが、ニェポス目掛けて斬り掛かる――右手には金色の小刀『ゴルトリンクス』、左手には銀の小刀『シルバーリンクス』を携え、その燃え上がる刀身で素早く斬り付けた。
しかし、ニェポスの不可視のバリアーに弾かれ、マクベスは彼から距離を取って着地する。
「これは驚きました。予想外の場所からの来訪者ですね、歓迎しましょう」
「チッ、口開く前にぶっ飛ばしてやるつもりだったのにな」
「物騒な少年ですねぇ。猟兵とは皆、こうなんでしょうか?」
ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべたニェポスは、ゆったりと――否、ねちっこい喋り方で、身振り手振りを加えて大袈裟に話す。
マクベスが、あからさまに厭そうな表情をしながら、再び小刀を構えた。
ニェポスは腰から巻物を取り出すと、何やら呪文を唱え始める。
信者たちもそれに続いた。
「あれが敵か……胡散臭い、耳障りな声だ」
そんな彼らの行動を、木陰からそっと観察していた慎矢は、端正な顔をしかめて呟く。
腰の鞘へと手を伸ばし――そのまま下ろした。
「信者が多い……まずは彼らを何とかしようか」
刀で斬り掛かることも考えたが、まずは他の猟兵たちも動きやすい状況をつくることを優先させる。
慎矢は、祭壇に群れる信者たちへと掌を向けた。その信者の後方に、翡翠色のテレビウム――零の存在を確認し、アイコンタクトを送る。
慎矢に頷き返す零。
二人は同時にユーベルコードを発動させた。
突如、動きを止める信者たち。
驚愕に目を見開くニェポス。
「あなたを倒す為なら、非情にもなれますよ。儀式が成功したら、多くの人が死にますから」
そんな呟きと共に、間髪入れずに放たれた零の衝撃波が、ニェポスを守るように立つ信者たちを薙ぎ払い、吹き飛ばしていく。
これで祭壇に立つのは、ニェポスのみ――零の十の指がニェポスに向けられ、瞬時に光が降り注いだ。
彼を覆っていたバリアーがあっさりと破壊され、数本の光はニェポス自身に吸い込まれていく。
「ぐああああああ!!!」
穿たれた穴からは、血が噴き出すこともなく焼け固まり、その苦痛にニェポスが吠えた。
首から下げた数珠に手を添えると、血走った眼をぎょろつかせながら叫ぶ。
「そんなもので、私の信念を曲げることは出来ないのです! 私の教えは、必ずや貴方たちに届く!」
「神様の依代である俺に教義を説くとは、嘗めた真似をしてくれるじゃないか……!」
ニェポスから放たれる洗脳の渦を、鞘から抜き放った白銀の刀『霊刀・空狐』で切り捨てながら、そのまま斬り掛かる慎矢。
彼の放った一撃は、銀の弧を描いてニェポスの腹へと直撃する。
宙にぱっと紅い華が咲いた。
ぐらりとニェポスの体が傾き――ズダンッと脚を踏み込むと、無理やり態勢を立て直し、静かな声音で囁いた。
「いいえ、貴方たちは負ける。私の信念の前に」
「そうだな……オレたちの負けかも知れない……」
ニェポスに歩み寄ったマクベスが、頭を垂れてそんなことを呟いた。
虚ろに開かれた青い瞳には、何も映っていない。
「マクベス!?」
「いけません、洗脳されている!?」
慎矢と零の叫びに反応することもなく、俯いたままで。
マクベスがゆっくりと差し出した左手を、ニェポスが握る。
「貴方は賢いですね。さあ、私と一緒に儀式を――」
「儀式を潰すさ」
ニェポスの声に重なるマクベスの声は、鋭い刃物そのものだった。
死角から右手に握られた愛刀の一撃――ユーベルコードによって精霊の加護を受けた一撃は、容易くニェポスを上下に両断した。
「――!!!」
声にならない声をあげて崩れ落ちたニェポスは、そのまま黒い塵となって風に散る――その瞬間、あの耳障りな声が聞こえた気がした。
「悪いがオレにはもう最愛の神様がついてるんでね。んな戯言、聞く気はねぇよ」
マクベルの声が風に乗り、厭な声を掻き消す。
三人は、顔を見合わせて頷いた――霊峰噴火の原因をひとつ潰すことに成功したのだ。
ミッションを達成した猟兵たちは、別の戦場へと赴くのだった。
エンパイアの戦争は、まだまだ続くのだから――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月07日
宿敵
『宗教家・ニェポス』
を撃破!
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