3
エンパイアウォー④~禍津神と外天津神の儀

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0




●霊峰富士、鳴動す
 サムライエンパイアにて、太平の世に再び戦乱を引き起こさんとする存在、織田信長。そして、第六天魔王を名乗る彼に付き従う、異国の民や歴史の彼方に消えた偉人達。
 彼らは今や信長に仕える忠実な魔軍将として、各地で信長の野望を成就させるべく暗躍を続けていた。
「まあ、そういうわけで、あなた達にはこれから富士の樹海へ行って欲しいの。そこに隠された儀式場で行われる、血生臭い儀式を止めるためにね」
 そう言って、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)は猟兵達に、樹海で行われる儀式の概要について説明を始めた。
「儀式を行おうとしているのは、侵略渡来人『コルテス』配下のオブリビオンよ。コルテスは、太陽神ケツァルコアトルの力を使って、富士山を噴火させようとしているわ」
 なんとも壮大な、しかしとんでもない計画を思い付いてくれたものだと、鈴音は思わず溜息を吐いた。異国の神の力を使って富士山を噴火させるなど、UDCアースの邪神やダークセイヴァーの異界の神もびっくりの大惨事だ。
 仮に、富士山が噴火すれば、東海・甲信越・関東地域は壊滅的な混乱状態となり、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を、災害救助や復興支援の為に残さなければならなくなる。結果として戦力は大幅に減り、最悪の場合、信長の居城である『魔空安土城』の攻略が極めて難しくなってしまうかもしれない。
「幸い、儀式の発動までは、まだ時間があるわ。儀式場は樹海のあちこちにあるみたいだから、その内のひとつを見つけだして、中にいるオブリビオンを倒してちょうだい」
 申し訳ないが、具体的な場所までは特定できなかったので、現地に転移した後は、自力で儀式場を見つけ出すしかない。こちらの予知によれば、転移を予定している場所の近くでは、善神『禍津日神』と呼ばれるオブリビオンが、儀式の準備を進めているようだ。
「神社の神様のくせに、外国の神様の力を借りようとか、節操がないにも程があるわね。でも、腐っても神は神だし、おまけにどっちも太陽神……相性的には最高に最悪だわ」
 オブリビオンと化した善神『禍津日神』は、その名に反し、周囲のあらゆる存在に対して悪意を振りまくだけの神となっている。彼女は儀式のためにケツァルコアトルの子供と思しき小竜を残虐な方法で殺し、その血を聖杯に注いで生贄に捧げようとしているようだ。
「本当は、私が行ってブン殴りたいところだけど、仕方ないわね。富士山大噴火なんて起こされたら堪らないし、邪道に堕ちたアホ神に、しっかり鉄槌食らわせてやってちょうだい」
 敵は存在するだけで周囲に悪意を振りまく危険な存在。だが、それ故に、悪意の根源を辿ることができれば、発見することも容易だろう。
 くれぐれも、迂闊に樹海の中へ踏み込んで、行方不明にだけはならないように。最後に、その点だけ釘を刺し、鈴音は猟兵達をサムライエンパイアへと転送した。


雷紋寺音弥
 こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。

 これは1フラグメントで終了する戦争シナリオです。
 内容的にはボス級のオブリビオンとの純粋な戦闘になりますが、儀式場への到達が遅れると、苦戦も予想されます。
 反対に、オブリビオンのいる儀式場を早期に発見できるような工夫があれば、戦闘でも優位に立てるでしょう。
191




第1章 ボス戦 『善神『禍津日神』』

POW   :    禍津葬砲
【召喚した鳥居から人々の悪意、憎悪、怨恨】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    式神ノ舞
レベル×5体の、小型の戦闘用【式神】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
WIZ   :    これはアナタが辿る道
【連立する千本鳥居】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:天和

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠宮古・橙華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

草野・姫子
※アドリブ・連携歓迎
禍津日神じゃと?!
ヒトが悪事を自覚できるように諭すはずが、何をしておるのじゃあの者は!
戦闘は不得意じゃが、後から産まれた同族として一言言わんと気がすまぬ!

儀式の場は【動物会話】と【草花の化身】の力で樹海の鳥と動物達や草木から【情報収集】をして特定を試みる

WIZ
発見したならばUC【破邪清浄の磐境】で儀式の場一帯を注連縄で囲っておき、他の猟兵とのタイミングを見計らって浄化の神域を張る
太陽神の【流血】状態を癒しつつ、禍津日神の邪気を削ぐ目的じゃ
UCを使われたら【茅の輪】を巨大化して立て、後ろの仲間の壁となる
鳥居で災厄の場へ招くならば、茅の輪は通る者の厄を祓おう

いい加減に、せぬか!


神羅・アマミ
樹海の中から儀式場を探せときたか。
ならばコード『操演』にて蜘蛛型ドローンのオクタビアスくんにお手伝い願うとしよう。
此奴が悪意の感知までできれば一番なんじゃが、そんな機能なさそうじゃし幾つかの仮説の下に動いてみようか。

「太陽神」や「日神」と言うからには、儀式は日の昇る方向…即ち東向きであると当てずっぽうで考える。
まず目指すべき方角はそこじゃな。
そして禍津日神自身は相当な鳥居マニアらしいのー。
樹海の中で建立を行おうものならそれなりの騒音になるはず。
不自然なノイズを感知できれば重要な手がかりになるのでは?

戦闘ではオクタビアスくんをバックパックとして背負い、式神を捌くことを念頭に置こう文字数ここまで!


梅ヶ枝・喜介
神サンがよ!こんなことしちゃいけねェよ!
止めるぜ!天変地異!

だが失せ物探しに役立つものなんざあったかね?

ごそごそと懐を探り、取り出したるは万克符!
艱難辛苦を祓う質のモンだが、コイツが逃げたがってる方の逆に行けば…
飛びきりの苦境が待ち受けてるって寸法だ!

見つけたゼ!禍津日神よ!

何せ相手は神サンだ!手加減はしねェ!
全霊で行かせて貰うッ!

木刀を天に掲げ!構えるは渾身の一太刀!大上段!

む!人々の後ろ暗い思いの塊か!
舐めんじゃねェ!
おれァずっと旅してきたんだ!
こういうもんだって沢山見てきたし!
人の思いは悪いものばかりじゃねぇ事も知っている!

覚悟して歯ァ食い縛って耐え抜く!
近付いて一太刀を食らわせるぜッ!


推葉・リア
罪のない竜が生贄になんて酷すぎるわ!いくら神様でも許されないわよ!オブリビオンだけど!

まずは儀式場探しね、事前に【世界知識】で樹海の…太陽に近い場所や広い場所を予め調べておくわ

『指定UC』で武装は解除されちゃうけど探索にはもってこい【情報収集】が得意な忍びや斥候或いは関係なしに得意な推しキャラ達を呼ぶわ
皆にはそれぞれ別行動で探索をお願いして、私も【目立たない】【情報収集】【聞き耳】あと樹海の動物にも【動物と話す】でいつもと違う場所を聞くわ

見つけたら【だまし討ち】【先制攻撃】で合体させた『フォックスファイア』を相手に叩き込んだ後【推しキャラ達の一斉攻撃】で一気に決めるわよ!

【アドリブ共闘歓迎】


ティエル・ティエリエル
SPDで判定

「富士山をどっかーんなんてさせるもんか!悪い神様なんてやっつけるぞー!」

「情報収集」や「第六感」も使って怪しい場所を調べていくよ
森の中の動物達に会ったら「動物と話す」「コミュ力」で事情を説明して怪しげな儀式場の場所に心当たりが無いか聞いてみるね!

儀式場に無事たどり着いたら、背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」「空中戦」で呼び出された式神をどんどんレイピアで刺し貫いていくよ!
式神の数が減って禍津日神への道が開いたら「捨て身の一撃」で【妖精の一刺し】を叩き込んじゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


フェルト・フィルファーデン
……また、戦争なのね。ふふっ、ええ、いいわ。世界を侵し壊すのなら、誰であろうと許さない!


まずはUCを使い兵士達を先行させるわ。5人1組で散開して儀式場を探しなさい。
1組はわたしの元に残って先行した兵士からの連絡をわたしに伝えて。お願いね?

敵を見つけたら兵士達と二手に分かれて一気に攻めるわ。
わたしが騎士達(絡繰人形)と先行して囮になるからその隙に背後から奇襲をかけて。
鳥居を素早い動きで掻い潜り、躱し、騎士の盾で護りつつ反撃を加え敵の攻撃を釘付けにするの。少しの痛みくらい問題ないわ。
(先制攻撃+早業+第六感+野生の勘+盾受け+カウンター+時間稼ぎ+激痛耐性)


誰一人、亡くしたりさせないんだから……!


エメラ・アーヴェスピア
山の噴火まで仕掛けてくるの?…さすがに実行されたら拙いわね
手早く解決しましょう、戦争はまだ始まったばかりよ

先に居場所を見つけないといけない訳よね?
まぁ、それを聞いてこの仕事を受けた訳だけど…
それじゃあ、始めましょうか。『ここに始まるは我が戦場』
様々な観測方法を用いたドローン達で【情報収集】、場所の特定に全力を挙げるわよ
見つけたのならこの作戦に参加している同僚さん達に連絡、ナビゲートよ
まぁ、完全に探索寄りの行動ね。分散するより私一人がこちらに集中した方が良いと判断したわ
その後余裕があるなら『我が砲火は未来の為に』辺りで遠距離から支援砲撃をしておこうかしら?

※アドリブ・絡み歓迎



●日出ずる儀式場
 霊峰富士。古来より人々の信仰対象ともされてきた、日本の国の最高峰。
 ここ、サムライエンパイアにおいても、それは同じ。そして、そんな場所であるからこそ、様々な霊気が集まるというもの。
 富士の裾野、青木ヶ原に広がる鬱蒼とした森は、人々を惑わせる死の樹海。不用意に足を踏み入れたが最後、二度と出られぬ危険な魔境。
「……また、戦争なのね。ふふっ、ええ、いいわ。世界を侵し壊すのなら、誰であろうと許さない!」
 力強く意気込みを叫ぶフェルト・フィルファーデン(糸遣いの妖精姫・f01031)だったが、問題なのは、敵がどこに儀式場を構えているかだ。適当に探し回ったところで、樹海で迷ってミイラ取りがミイラになるのがオチである。
「ふむ……樹海の中から儀式場を探せときたか。ならば、コード『操演』にて、蜘蛛型ドローンのオクタビアスくんにお手伝い願うとしよう」
 こういう時に大事なのは手数だと、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)が蜘蛛型ドローンを召喚した。もっとも、ドローンが1体増えた程度では、さすがに探索の効率を劇的に向上させるのは難しかったが。
「後は、勘で考えるしかなさそうじゃな。『太陽神』や『日神』と言うからには、儀式は日の昇る方向……即ち、東向きであるかもしれぬ」
 ケツァルコアトルと同様に、禍津日神も太陽神。それならば、儀式に太陽が関わって来るというのは必然にも思われたが、しかしアマミはここに来て、大事なことを忘れていたのに気が付いた。
「……して、東はどっちじゃ?」
 ここは樹海。方位磁針も役に立たぬ、人の手の届かぬ原生林。
「迂闊でしたね。せめて、太陽の方角くらいは調べておくべきでした」
 事前に樹海の知識を調べていた推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)が、自分の甘さに俯いた。
 樹海の中で『太陽に近い方向』を探そうにも、そもそも太陽は時刻によって天球上の位置を変えてしまうため、これでは特定の場所を探るのには使えない。日時計のように、時計の長身と短針に影を映して方角を知る方法もあるが、鬱蒼とした樹海の木々は太陽の光を遮ってしまい、これでは影から時刻や方位を探ることもできない。
「せめて、此奴が悪意の感知までできれば一番なんじゃが、そんな機能なさそうじゃし……」
 自分の呼び出したドローンを眺めつつ、何気なくアマミが呟いた。
 それは、ほんの些細な独り言。しかし、その中に隠された現状打破の光明を、梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)は見逃さなかった。
「悪意か……だったら、ちょうどあつらえ向きのもんがあるゼ!」
 そう言って、懐より取り出したるは万克符。本来であれば艱難辛苦を祓うためのものだが、そんな符が拒絶する方向に向かって行けば、それは即ち苦境が待ち受けているという証拠に他ならない。
「確かに、闇雲に探すよりはいいでしょうね。後は手数。場所の特定に全力を挙げるわ」
 偵察用のドローンを多数呼び出し、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)は、喜介の示した方角へと向かわせる。同じく、フェルトもまた兵士の姿をした妖精人形を呼び出すと、エメラが放ったドローンの後を追わせた。
「後は、待ちの一手じゃな。細かい場所は、草木や動物に尋ねてみればよいじゃろうて……」
 こんな場所でも、情報を収集できる相手は存在する。森の動植物相手に草野・姫子(自然を愛するモノ~野槌~・f16541)が儀式場の行方を尋ねれば、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)もまた森の生き物達へ妙な場所がないか聞いて回った。
「ふむふむ……この近くの洞窟に、変な人が入って行った? いかにも怪しいね」
 兎や小鳥からティエルが聞いた話によれば、どうやら敵は樹海の地底に続く、風穴の中にいる模様。
「後は、洞窟の場所さえ特定できればいいんですよね? 私も、できる限りお手伝いします」
 自分の推しキャラの中でも、特に探索が得意な者達を呼び出して、リアは洞窟を探すべく樹海へと放った。これだけ手があれば、儀式場を見つけるのも難しくはない。後は、その現場へと押し入って、忌むべき儀式を続けるオブリビオンを討伐するだけだ。

●悪意の社
 闇の奥から、冷気を含んだ風が吹き抜ける。情報収集の果てに猟兵達が辿り着いたのは、樹海の地下にアリの巣の如く広がる、巨大な風穴の内のひとつだった。
「寒くて、暗くて、嫌なところね。でも、仕方ないわ……」
 地下へと続く道を歩くフェルトは、どこか顔色が悪い。元より、暗い場所や狭い場所は嫌いなのだ。しかし、この先でオブリビオンが悪意の牙を研いでいるというのであれば、我儘を言っている場合ではない。
「しかし、これはまた面倒な場所に儀式場を設けてくれたものよ。外の広い場所であれば、先に場の浄化を試みることができたかもしれぬが……」
 風穴の奥に近づくにつれて強まる嫌な気を感じつつ、姫子は歯噛みしながら歩を進める。ここは既に敵の領域。地の利が相手にある以上、こちらから先手で仕掛けることもまた難しい。
 後は、現場に着いた時点での出たとこ勝負だ。誰ともなしに、そんなことを考えたところで、やがて猟兵達は唐突に開けた場所に出た。
「あれ? アナタ達、こんな場所に何か用?」
 見れば、広間の奥には巨大な鳥居を背にした巫女が一人。いや、巫女ではなく、彼女こそが禁断の儀式を執り行わんとしている、禍津日神に他ならなかった。
「まあ、いいわ。この子の血が搾り取れるまで時間かかりそうだし、この場所を知られたからには、生かして帰すつもりもないしね」
 翼に釘を打ち込まれ、岩壁に貼り付けられている小竜を横目に、禍津日神が屈託のない笑みを浮かべる。だが、そんな笑顔の奥から溢れ出すのは、どこまでも底の知れない、邪悪なる深淵の力だった。

●堕ちたる太陽
 ケツァルコアトルの子どもを生贄に、富士山の噴火を目論む禍津日神。以前は人々の悪事を諭し、正しき道へと進ませる神であったのだろうが、今となっては目的を見失った邪神に過ぎない。
 だが、邪神とはいえ、腐っても神だ。オブリビオンと化した今も、その力は伊達ではない。
「ほらほら、どうしたの? そんなことじゃ、私に近づくこともできないわよ?」
 謎の神様パワーによって、禍津日神はそこら中に鳥居を生やし攻撃して来る。神出鬼没のトラップを、自分の意志で好き勝手な場所に発動できるようなものだ。
「まったく……面倒な技を使ってくれるのう」
 敵の放った式神を捌きつつ、アマミが呟いた。相手は鳥居を呼び出すだけでなく、他にも自らの手駒を放つことで、自分では動かずとも敵対者を攻撃することができる。本当であれば、一気に距離を詰めて決めたいところだったが、こうも式神どもが煩いと、それもままならぬところである。
「ボクも手伝うよ! 早く止めないと、儀式が完成しちゃうしね!」
 アマミの手が回らない場所をティエルがフォローしているが、それにしても敵は無駄に数が多い。一撃で消えてくれるのは幸いだが、この式神を倒したところで、本体にダメージが入るわけではないのが歯痒いところ。
「……支援砲撃程度じゃ、大したダメージを与えられそうにないわね」
 縦横無尽に乱立する鳥居を前に、エメラもまた苦々しい表情で口にした。魔導蒸気砲で相手を狙おうにも、鳥居が邪魔で効果的に相手を狙うことができない。それはリアも同様で、鳥居を避けて狐火を叩き込もうとするが、なかなか思うように狙えない。
「わたし達が囮になるわ! その間に、鳥居の隙間から敵を狙って!」
 このまま戦っても不利は覆せないと知り、ついにフェルトが危険な賭けに出た。小柄な体躯を生かし、林立する鳥居を掻い潜りながら、妖精兵士の人形と共に禍津日神へと近づいて行く。そちらに気を取られた隙を狙い、リアは自らの操る狐火を合体させて。
「こうなったら、特大の狐火で……」
 狐火を合体させ、鳥居を薙ぎ倒させることで、リアは強引に攻撃を当てようとした。もっとも、それはあくまで見せ技に過ぎず、本来の狙いは別のところにあったのだが。
「私の大好きなみんな! よろし……っ!?」
「甘いわね。大技を連続で使ったら、隙だらけになるのは当然でしょう?」
 推しキャラを召喚しようとした瞬間、鳥居から放たれた凄まじい悪意の奔流が、その場にいた全ての者達を飲み込んだ。
「きゃぁぁぁっ!!」
「うぅっ……こ、これは……」
 憎悪、嫉妬、怨恨、呪詛。あらゆる種類の悪意が物理的な力となり、幾重にも重なる波の如く猟兵達を打ち据える。その勢いは、もはや悪意を発動させた、禍津日神にも止められない。
 鳥居も、式神も、およそ自分が放った者を全て巻き込む形で、禍津日神は無差別攻撃を発動させたのだ。それは、ともすれば自らを丸腰にし兼ねない諸刃の剣であったが、今の状況で放たれることは、猟兵達にとっても最悪だった。
「うぅ……そ、そんな……」
 攻撃に巻き込まれたフェルトが、力なく床に落ちていた。彼女の呼び出した人形達は、既に先程の一撃で、悉くその姿を消していた。
「あぁ……わ、私の、推しキャラ達が……」
 同じくリアもまた、推しキャラを呼ぶことさえできずに悪意の直撃を食らって倒れていた。
 複数のユーベルコードを立て続けに使うことは、それだけ大きな隙を生む。先手で仕掛けるにしても、相手の反撃を全く考慮しないで、何発もユーベルコードを発動するのは難しい。
 ましてや、相手は個々の力では猟兵達を上回る強さを持った邪悪なる神だ。一度でも、その呪詛に囚われてしまったが最後、心身に深いダメージを負うことは避けられなかった。
「ここまでね。残念だけど、そろそろ儀式を次の段階へ進めなければいけないの。アナタ達との戯れも、これで終わりよ」
 再び、呪詛を放たんと手をかざす禍津日神。次に、あれの直撃を食らったら、問答無用で全滅だ。が、しかし、周囲の鳥居や式神までもが破壊された今の状況は、猟兵達にとっても反撃する絶好のチャンスだった。
「さすがは、神サンだな。だが、こちとらにも、負けられねェ理由ってぇのがあるんだよ!」
 木刀を杖代わりにして立ち上がり、喜介が叫んだ。既に肉体は限界に近かったが、それでも彼の魂は死んでいなかった。
「手加減はしねェ! 全霊で行かせて貰うッ!」
 繰り出すは、大上段からの振り下ろし。自分にはこれしかできないが、だからこそ、この技で負けるつもりもない。
「自分から突っ込んで来る? そんなに死にたいのかな?」
 再び繰り出される禍津日神の呪詛。それを真正面から食らう喜介だったが、それでも彼は倒れない。
「舐めんじゃねェ! おれァずっと旅してきたんだ! こういうもんだって沢山見てきたし! 人の思いは悪いものばかりじゃねぇ事も知っている!」
 人々の後ろ暗い想いなど、今までの旅路で幾度となく見て来た。が、それと同時に、心温まる生き様も、それ以上に見て来たつもりだ。
「な、なんなの、アナタ……。だったら、もっと強力な呪詛で……」
 並の人間ならば心が壊れてもおかしくない程の呪詛を浴びても倒れない喜介の姿に、さすがの禍津日神も、驚愕せざるを得なかった。そして、そんな彼女に生じた心の隙を、姫子は決して見逃さなかった。
「いい加減に、せぬか! ヒトが悪事を自覚できるように諭すはずの神が、何をしておるのじゃ!」
 同じ神として、一言物申さねば気が済まない。その上で、神の力の正しい使い方は何なのか、このアホ神にも最後に教えてやろう。
「此処で休め。瘴気災厄など、来させぬ」
 注連縄と鎮守の帯を神力で操り、姫子は禍津日神に解き放った。それを軽々と避ける禍津日神だったが、それも最初から姫子の狙いの内だ。
「……身体が動く! よし、行けるぜッ!」
 身体が軽くなったことで、喜介が力を取り戻し、駆ける。姫子の放った注連縄や帯。それが場を清める神域を作ることで、禍津日神の呪詛を中和したのだ。
「この技に二の太刀はねェ! チェストォォォッ!!」
「えぇっ! ちょ、ちょっと待っ……痛ぁぁぁぁっ!!」
 大上段からの脳天に木刀を振り下ろされ、禍津日神が頭を押さえて蹲った。いくら神でも、これは痛い! 普通の人間が相手であれば、頭蓋骨を砕かれて、鼻と耳から脳髄をブチ撒ける程の衝撃を食らったのだから、無理もない。
「まだ、立てるよね? ボクが攻めるから、その後に続いて!」
「ええ、大丈夫よ。もう……誰一人、亡くしたりさせないんだから……!」
 神域の加護で力を取り戻したフェルトに、ティエルが尋ねた。その言葉に頷き、フェルトも改めて妖精兵士の人形を召喚する。
「いっくぞーーー!! これがボクの全力全開だよ☆」
 まずは一撃。未だ頭を押さえて動けない敵の胸元目掛け、ティエルがレイピアの鋭い突きを繰り出した。慌てて式神を召喚する禍津日神だが、もう遅い!
「さあ、兵士達よ。行ってちょうだい! ……お願いね?」
 フェルトの呼び出した妖精兵士の人形達が、次々と式神を叩き落して行く。その上で、盾を使って相手の身体を抑え込み、強引に動きを封じ込めた。
「みんな、今だよ!」
「このまま一気に決めて!」
 残る仲間達に、ティエルとフェルトが同時に叫ぶ。妖精軍団によって二重、三重に攻め込まれ、禍津日神は動けない。鳥居や式神もなくなった今、一斉攻撃を仕掛けるのは今しかない。
「射線が開いたわ。……今ね!」
「今度こそ、逃がさないわ! 私の大好きなみんな! 一斉攻撃よ!」
 妖精達が散開したところへ、エメラの蒸気砲とリアの推しキャラ達による一斉射撃が炸裂する。銃が、魔法が、砲弾が、次々と禍津日神の上に降り注ぎ、背後の鳥居さえも破壊して。
「天網恢々疎にして漏らさず! 世に蔓延るあらゆる悪事をこの妾が余さず絡め取り、尽く駆逐してくれようぞ! 死ねーッッ!!」
 最後は、アマミの背から離れた蜘蛛型ドローンが、禍津日神の顔面に貼り付き、噛み付いた。
「な、なによ、これ! ちょっと、止めなさい! 痴れ者が! 私は神よ! さっさと離れ……むげぇぇぇぇっ!!」
 全身を痙攣させながら、その場に崩れ落ちる禍津日神。なにやら、危険な宇宙生物の幼体に襲われたような死に様だったが、細かいことは気にしたら負けだ。
「これで終わりか……。まったく、手間を掛けさせてくれたものよ」
 周囲から邪気が消えたことで、姫子が最後に溜息をひとつ。己の役割さえ忘れ、邪道に堕ちたる太陽神。同じ神としては、なんとも複雑な気持ちにさせられる相手だった。

●日はまた昇る
 風穴を出ると、周囲の明るさと温かさに、猟兵達は思わず目元を片手で覆った。
 あの後、儀式場から助け出したケツァルコアトルの幼体。蛇の頭と鳥の翼を持った小竜は、洞窟の外に連れ出されるや否や、力強く翼を広げて羽ばたいた。
「さすがは神様の竜ね。こんなに早く、傷が塞がるなんて……」
 感心した様子で見上げるリアの頭上を、小竜は感謝の意を述べるようにして、円を描くように舞っている。幼い竜の姿であっても、太陽神としての潜在的な力は持ち合わせているということか。
「異国の神……外(そと)天津神、とでも呼べば良いのかのう?」
「あるいは、異(こと)天津神か? まあ、どちらでも構わぬじゃろ」
 木々の梢の間を抜け、だんだんと遠くなってゆく小竜を見送りながら、姫子とアマミが互いに呟く。あの小竜が、外なる国の神だというのであれば、在るべき場所に戻った方が幸せだろう。
「もう、悪い人に捕まったらダメだよ!」
「この国は、俺達が守るからな! 安心して、自分の国に帰りな!」
 見送るティエルや喜介の言葉が聞こえたのだろうか。快い羽ばたきの音と共に、小竜は新たな日が昇るであろう東の方角へと、瞬く間に飛び去り見えなくなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月04日


挿絵イラスト