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エンパイアウォー④~雲煙飛動、隠れし賊

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 侵略渡来人、コルテス!
 それはエンパイア・ウォーに際して信長が従えし魔軍将の一にして、恐るべき太陽神ケツァルコアトルの力を操るもの!
 彼奴の配下は、霊峰富士にて邪悪極まりない『太陽神の儀式』を遂行し、かの山を噴火させようとしているのだ……!!

「言うまでもないけど、富士山が大噴火なんてしようもんならとんでもないことになるわ」
 グリモア猟兵、白鐘・耀は真剣な表情で眼鏡をかけ直す。
 UDCアースにも富士山はあり、その噴火活動がもたらす大災害は、しばしばオカルトめいた災害予知のネタになるからだ。
 だが現実となってしまえば、それは与太話ではなく未曾有の天災である!
「……儀式が企てられてることはわかってる。問題はその場所がわからないことなのよ」
 グリモアの予知で突き止められたことはふたつ。
 一つは、儀式の舞台が富士山麓にある樹海のどこかだということ。
 そして太陽神の儀式……ケツァルコアトルの仔を殺し、その生き血を煽るという血なまぐさいもの……を企てているのが、大泥棒『石川五右衛門』を名乗るオブリビオンである、ということ。
「こいつはキセルを使って大量の煙を生み出して、うまいこと姿を隠しちゃってるわけ。
 だから、まず敵がどこにいるのかを、樹海の中で探し出さないと話にならないわ……」
 裏を返せば、敵の居所さえつかめれば勝機は十分にある。
 相手は稀代の大泥棒を名乗る手合い、姿を探すとなれば一筋縄ではいかないだろうが……。
「そこはやっぱりオブリビオン、相手はとにかく派手好きで目立ちたがりなわけよ。
 しかも、召喚した貧民から応援されて強くなるユーベルコードまで持ってる。つーまーり」
 にやり。耀が良くない感じの笑みを浮かべた。
「ただ探すだけじゃなく、大見得切って向こうを引っ張り出すこともできる!!
 ……はずよ、多分。おそらく。きっと。メイビー」
 最後の方が不安だが大丈夫なんだろうか?

 さておき。
「とりまスパッと悪党退治して、大噴火を阻止してきなさい!
 あんたらならやれるわ、よっ! 千両役者〜!!」
 いつものように火打ち石を叩きつつ合いの手も打つ耀。それが転移の合図となった。


唐揚げ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 唐揚げです。さくっとまとめいってみましょう。

●目的
 太陽神の儀式を妨害し、富士山噴火を食い止める。

●敵戦力
『天下御免の大泥棒『石川五右衛門』1体(ボス戦)

●備考
 樹海一帯には石川五右衛門が展開した、煙の結界が広がっている。
 煙の中を捜索するだけでなく、『石川五右衛門の対抗心を煽るような大見得を切る』と、発見しやすくなる……かもしれない。

 こんな感じです。
 なお、戦争シナリオであること、当方の執筆環境的な都合により、採用数はある程度絞る予定です。
 その点、ご理解の上ご参加をお待ちしています。

 では前置きはこのあたりで。
 皆さん、あっ! よろしくお願い、いたぁしますぅ〜!!
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第1章 ボス戦 『天下御免の大泥棒『石川五右衛門』』

POW   :    煙管の一撃
【手にした煙管】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    煙遁の術
対象のユーベルコードを防御すると、それを【手にした煙管に煙として封入】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    天上天下の叛逆
戦闘力のない【貧しき民の霊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【彼らの応援と天下転覆の気運】によって武器や防具がパワーアップする。

イラスト:やまひつじ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠銀山・昭平です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●富士山麓・煙まみれの樹海某所
 紫煙たちこめる妖しの樹海、その何処かに男あり。
 飄々たる顔つきは義賊めいているが、されど侮るなかれ。
 この者、オブリビオンにふさわしき悪逆非道なり!
「へぇっへっへ、目立てねえのぁちいと業腹だが……お山が大噴火!
 ……てえのは派手で悪くないねぇ。きっひっひ」
 この者こそ大悪党・石川五右衛門! そして彼奴の前には、逆鱗を突かれて息絶えし神の仔の死骸、さらには……!
「それじゃあまあ、ぐいっと一献頂こうかい! きっひっひ!」
 聖杯を満たした神の血を、大悪党はいままさに呷る!
 急げ猟兵、このままでは霊峰大噴火間違いなし!
 煙を払い、悪漢誅伐仕れ!


 プレイングは適当なタイミングで締め切ります。ご参加はお早めに。
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

すごい馬鹿の間違いなんじゃないですかね
大物狙いばかりなんて自己顕示欲の塊じゃないですか

まぁ今のように煙に紛れて隠れるだけなんだとしたら、
お粗末に過ぎると思いますよ
大泥棒が聞いて呆れますね

俺達の方がよほどうまく盗め……いやまぁ何も盗むつもりもないですけど
うまくはやれるでしょうよ

【降り注ぐ黒闇】で彼女と連携し黒刃を操る
『焔喚紅』の黒炎も目くらましに併用し、
彼女がより動きやすいようサポートを
民の霊は<呪詛>で掻き消す、既に生きていないのなら問題ないでしょう
独りでは連携なども出来ないでしょうね
可哀想なことだ


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

石川五右衛門ってすごい人みたいだね
大物ばかりを狙って派手に盗んでるんでしょ?
偉い人がいない、警備の薄い時を見計らって
計画を立てたりしてるみたいだし……

でも詰めが甘いっていうの?
警備が薄くてもゼロじゃないんだし、楽観的に考えすぎでしょ
素早く動けて空だって飛べちゃう私と
闇を意のままに操れるヨハンの方ならカバーにも長けてるし
五右衛門なんかより上手くやれると思うんだ

と大きめの声で

発見できたら戦闘を仕掛ける

UCで攻撃力強化
【力溜め】も併用し火力を可能な限り高めておく
私達の武器は連携
攻撃のタイミングは自然と合い
互いの死角は互いにカバー

私達の連携技は盗めるものじゃない
まだまだいくよ!



●口火を切りゃあ煙はあがる
「……あぁん?」
 まさにいま、神の子の血を呷らんとしたその時。
 石川五右衛門は、何やら遠くから若い男女の声を聞きつけた。
 ははあ、さては猟兵どもが、この石川五右衛門を探しに来たってえわけか。
 だが無駄だ、この煙幕の中じゃあ、そう簡単にこの身を探し出すことなんてできやしない。
 石川五右衛門は心の中で静かに勝ち誇り、にやりと悪童めいて笑い……しかし。
 聞こえてくる会話の内容に耳をそばだてると、やがてその表情が険しいものに変わっていった。

「石川五右衛門ってすごい人みたいだね。大物ばかりを狙って派手に盗んでるんでしょ?」
 と、感心した様子で、オルハ・オランシュが言った。
 一見すると、敵である大悪党を賛美するような発言である。
「偉い人がいない、警備の薄い時を見計らって計画を立てたりしてるみたいだし……」
「それは逆に言うと、警備をかいくぐる度胸もない小心者だ、ということでしょう」
 すかさず、ヨハン・グレインが反論を展開する。
「そのくせ大物狙いばかりなんて、自己顕示欲の塊じゃないですか。
 大泥棒ではなく、大馬鹿者の間違いなんじゃないですかね」
 実にヨハンらしい、物怖じせずアイロニーにあふれた発言だ。
 もっともその発言は正しい。どれだけ派手好きを気取ろうが所詮は盗人、余人の富を掠めとる卑賤な犯罪者でしかないのだから。
「たしかにね。そう考えると、いまいち詰めが甘いのかも。
 もしかすると、私たちの方がよっぽど“うまくやれる”んじゃない?」
 オルハも納得したのか、ヨハンの意見に同調するばかりかとんでもないことを言い出した。
「素早く動けて、空だって飛べちゃう私と。
 闇と影を意のままに操るヨハンなら、石川五右衛門なんて目じゃないよね」
「……別に何かを盗むなんて、卑しくてくだらない犯罪に手を染めるつもりはないですが」
 冷静にメガネをかけ直しつつ、やけに大きな声でヨハンは言う。
「その意見には同意しますよ。そもそもこの煙だってお粗末なものです。
 こんなもので姿を隠しているつもりなら、大泥棒が聞いて呆れますよ」
 と、やがて二人は、石川五右衛門の手管をこけ下ろし始めたのだ。
 大泥棒をのたまう卑怯な小人物、何するものぞ。
 戦いも、盗みの技量も、自分たちのほうがよほど上手だと言ってのけるのである!

 さて、石川五右衛門当人、当然ながらこんな若造どもの話は面白くない。
 見る見るうちに顔を真っ赤にし、煙管を大きく膨れ上がらせると、やおらそいつで地面を叩いた!
「黙って聞いてりゃあ、好き放題言うじゃあねえか、ええっ?
 小便くせえガキどもが、この俺様を誰だと思ってやがらァ!!」
 樹海に響き渡る大音声、石川五右衛門はそこでようやく、はっと我に返った!
(まさかあのガキども、はじめからこのために!?)
「気づいたところでもう遅いよ、間抜けな泥棒さんっ!」
 ビュン! と鋭く風を切り、背後からオルハが仕掛けた!
 同時に、ヨハンの生み出した闇の刃が、地面すれすれを魚めいて走りぐんっと飛び上がる!
「けえっ!!」
 さりとて石川五右衛門もひとかどの戦士。
 大煙管をぐるんと如意棒めいて振り回し、前後同時からの不意打ちを見事に防ぎきる!
「そう簡単にはいきませんか。まあ、誘き出すのは簡単でしたけどね」
 しれっと企みを明らかにするヨハンを、大泥棒は血走った目で睨みつけた。
 しかし彼を狙い撃つ余裕はない。
 弾かれた勢いを、翼のはためきで相殺したオルハが、猛禽じみて急滑空し襲いかかるからだ!
「ヨハンを攻撃なんてさせないよ、そのぐらいわかるんだからっ!」
「手前こそ、狙いは俺様の影だなあっ? 甘い甘い!」
 ウェイカトリアイナの連撃を丁々発止で受け流す石川五右衛門。
 盗賊としてのカンが、オルハの狙い……ユーベルコードの一端を看破させたのだ。
「おうおう、街のみんなぁ! いっちょ俺様に熱い声援をくんなぁ!」
 呼びかける声に応じ、煙が貧民のシルエットを結ぼうとする……が、ここでヨハンが動く!
「自分を讃える民衆も、ユーベルコードで生みださなければ存在しないとは。
 やはり、大盗賊とは名ばかりのただの小者ですね」
 呪詛の黒炎が煙を嘗め尽くし、自己強化を許さない。
 石川五右衛門の額にいくつもの青筋が浮かび上がる。このガキども、隙がない!
「私たちの武器は連携」
「ひとりじゃそんなことはできないでしょう」
「このコンビネーションは盗めやしないよ。さあ、まだまだっ!」
「哀れで愚かなその存在、ここで終わりにしてあげますよ」
 死角なきふたりの技と魔術が、石川五右衛門を徐々に追い詰めていく!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

煙だらけでみえないね
口実にそっと傍に寄れるのは悪くないけど

エッ
えっ?!
歌うの?!
ここで?!

櫻宵とヨルにやんやとはやし立てられ恥かしながらこれも作戦と、歌声を張り上げ歌うのは「凱旋の歌」
歌唱に込める誘惑と鼓舞
パフォーマンスは身をくねらせ可憐に美しく!
君のための凱歌を歌おうか
そんな泥棒と僕の歌を一緒にされては困るから
最高に派手に大見得きってみせる!
僕の歌を聴くといい

あ、出てきた?じゃあ次の曲に移ろうか
甘く蕩ける「魅惑の歌」を歌うよ
そんな応援に負けない
僕の櫻が1番なんだから!
櫻を守れるように攻撃は水泡のオーラ防御で覆い防ぐ

そう、大人しく斬られるといい
もう何も盗ませない


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

煙だらけでよく見えないわね
リィ、はぐれないでね
あたしの故郷の平穏まで盗ませはしないわ!

さぁリィ!歌うのよ
第六感を働かせ居場所を探りつつ

リル オンステージ!in樹海!
貧相なこそ泥の応援歌なんかに負けない!
「凱旋の歌」は名曲よ
よ!世界一!天下一の歌姫様!
ヨルはタンバリン!あたしは屠桜と木花開耶打ち鳴らし
黄色い声あげアイドルステージ並にド派手にリルを応援して盛り上げてあげる

…?
リルの歌を邪魔する不届き者は斬り殺すわ!
生命力吸収の呪詛込めた衝撃波放ちなぎ払い
傷えぐり殴り斬り
隙見せた一瞬
踏み込み「穢華」咲かす
煙に紛れようと逃がさない

さっさとお縄について首を差し出しなさい



●目的を忘れていませんか?
 富士樹海には、一寸先も見えぬほどの深い煙霧が立ち込めている。
 幸い呼吸器に影響はないものの、代わりにこの視界はあまりにも危険だ。
 どうやら煙には、方向感覚すら麻痺させるなんらかの魔力がかかっているらしい。
「煙で何も見えないね……」
 そんな中を、人魚のリル・ルリはおっかなびっくりといった様子で進む。
 これでは目的のオブリビオンを探すどころか、そもそも樹海をまともに探索することすらおぼつかないだろう。
「ええ。リィ、離れないでね? はぐれたら大変よ」
 と、傍に寄り添う誘名・櫻宵が、リルの手をぎゅっと握りしめて微笑みかける。
 サムライエンパイアで生まれ育った者として──といっても、過去にあまりいい思い出はないが──此度の戦争は人一倍モチベーションにあふれている。
 故郷の平穏を奪わせはしない。魔軍将の野望、叩き潰すべし!!
(……それはそれとして、櫻のそばに寄れるのは悪くないかな)
(それはそれとして、リィとふたりきりで密着できるなんて最高ね!!)
 ふたりして考えていることはろくでもなかった。

 とはいえ、ここは敵陣だ。樹海デートなど黄泉路の旅路のようなもの。
 そもそも敵を見つけ出さなければ、倒すだの首を落とすだの以前の話である。
「ねえ櫻、どうするの? こんなに煙が濃いんじゃ探しようが……」
「歌よ」
「は?」
「歌うのよリィ! 大きな声で、派手派手しく!!」
 違う煙でも吸って頭がアレになったのか、テンション上がりすぎてやっぱり頭がアレになったのか。
 ややトんでる顔つきの櫻宵は、やおらリルの肩を掴むと歌を催促した。
「歌うのよ、リィ」
「エッ、ここで?」
「そうよ、リィのオンステージ in 樹海よ!!」
「ちょっ、ヨルまではやしてるし!?」
 てなわけで、やんややんやとひとりと一匹にあおられ、照れ臭そうにしつつも歌うことになったリル。
 さすがに特設ステージを作り出すようなユーベルコードはないものの、代わりにペンギンのヨルが、いつの間に用意したのか推しうちわやハッピなどを装着している。
 うちわには、リルの流し目にハートマークがあしらわれ、『尾びれでビンタして♡』だとか『泡に閉じ込めて♡』とか書いてあった。アイドルかな?
「じゃあ、いくよ。僕と櫻の、凱歌の歌──」
「キャーッ! リィ素敵よーっ! 世界一の歌姫様ーっ!」
「君の勝利を歌おうか。希望の鐘を打ち鳴らす絢爛の凱旋を──」
「あっそーれリール! リール! えるおーぶいいーマーメイド!!」
「集中できないからその変なコールやめてくれないかな櫻!?」
 ヨルが用意したペンライトでものすごく機敏なオタ芸とか打っている。どこで覚えたんだ。
 気を取り直してリルは歌う。タンバリンとかなんか伴奏までつき始めたが、気にしたら負けだ……!!

「いててて…ちくしょうめ!」
 一方、石川五右衛門は、先遣の猟兵との戦いをかろうじて逃れ、傷の痛みに顔をしかめていた。
 儀式の妨害をされたばかりか、事実上の敗走。このままでは大盗賊としてのプライドが許さぬ。
「ぜってぇに儀式を完遂して、富士山を……あぁ?」
 そこで石川五右衛門は、なにやら騒がしい歌と囃し立てる声に気づいた。
 よもや、またしても自分をおびき出そうと言う猟兵の作戦か? 猪口才な。
 だが自分はもう、その手にはかかるまい。無視して別のポイントを──。
「リィー! 最高よぉ〜、輝いてるわーっ!」
「この歌が聴こえたならば この歌が届いたならば さぁ──(ここでキメ顔)行っておいで」
「キャアアアアアアアアア!!」
 う、うるせえ! ムカつくとかでなくて純粋にうるせえ!!
「お前ら誘き出すなら誘き出すなりのことしろよぉ!?」
 たまらず石川五右衛門は、自分から一同の前に姿を現してしまった!
「リィー! こっちむいてぇー!」
「うん、じゃあ次の曲に行こうかっ!」
「話を聞けよ!?!?!??!!?!」
 櫻宵もリルも完全に酔いしれてて聞いちゃいねえ!(ヨルは気づいてふたりの肩をぺちぺち叩いている)

 はた、と、ようやくリルと櫻宵は石川五右衛門に気づいた。
 沈黙が流れる……一触即発の気配……!?
「ねえリィ、あれ誰かしら?」
「「ええっ!?!?」」
 櫻宵、リルの歌声に聞き惚れるあまり目的を忘れていた!
 石川五右衛門とリルは、思わず声を揃えて仰天してしまった!
「て、てめえ! 俺様を誰だと思って」
「よくわからないけどリィの歌を邪魔する奴は斬り殺すわ!!!!」
「グワーッ!?」
 コワイ! 血走った目の櫻宵が全力で斬りかかっている!
「……あ、悪党の応援なんかに、僕の歌も櫻も負けないぞっ!!」
 あっけにとられていたリルも、かろうじてシリアスに見得を切った。
 が、石川五右衛門はそれどころではない。櫻宵の剣筋の殺意が高すぎるからだ!
「リィのライブを邪魔する不届き者、許さない……!!」
「儀式ですらねぇのかよぉ!?」
「神妙にお縄について、首を差し出しなさい!!」
「お前ほんとは俺様のことわかってグワーッ!?」
 斬る! 退けばその分踏み込みさらに斬る!
 櫻宵を突き動かすように、リルの魅惑の歌が、貧民の霊たちを退けるのだ!
「僕の櫻は、誰より一番なんだから──」
「きゃー素敵よリィ! 愛してるわーっ!」
「そこだ、隙あ」
「邪魔よ!!!!!!!」
「グワーッ!?」
 どうすんだこれ。ヨルはただ、呆然と乱痴気騒ぎを見届けるほかなかった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

非在・究子
あ、相手が、対抗したく、なるくらいの、お、大見得を、切る、か?
……うぇーっ(心底嫌そうに呟き)
……せ、背に腹は、変えられないし、な。し、仕方なし、だ。
あ、アタシは、ゆ、UCで、魔砲少、モードに、変身、出来る。ぽ、ポーズと、口上が、キャンセル、出来ない、仕様なんだが……実は、変身バンクは、キャンセル、してるんだ……こ、今回は、エフェクトMAXで、全力で、やる。
(深呼吸し)
『ラジカルエクステンション!!』
(煌びやかでフリフリな魔砲少女姿への変身バンク)
『魔砲少女!ラジカルQ子!!ただ今惨状!!!』
(ぐ、ぐぇーと精神的にうめきつ)

……お、お前なんか、全力魔砲の、一撃で、根こそぎに、してやる……



●無残な状況と書いて惨状って誰がうまいこと言えと
 非在・究子には悩みがある。
 ”魔砲少女ラジカルQ子“という、なんかもう名前からしてちょっとアレなユーベルコードについての悩みだ。
 この術式、バーチャルキャラクターでありゲームの世界の存在だった究子だからこそ使えるもの……と、言っていい。
 なにせゲーム内の装備をそのまま現実世界に適用し、超つよつよな期間限定SSR衣装のパワーをふんだんに発揮する、というものだからだ。
 それはいい。SSRだけあってめっちゃ強いし。割と重宝している。コラボ武器ってそういうのよくあるよね。

 問題は、このユーベルコードの”仕様“だ。
 魔砲少女と銘打たれているだけあって(さすがSSR衣装というべきか)ご丁寧に魔女っ子風の変身ムービーが存在している。
 あくまで元のゲームの話だ。が……究子のユーベルコードは、”それすらも“再現してしまうのである!
 しかもキャンセルできない! 地獄かな!?
 どもりぐせのひどい隠キャオタクには酷すぎる仕様である!
 ……その割にだいぶファンキーなコスチュームをお持ちですね、とか言ってはいけない! ゲームのキャラ(元)にそれはタブー中のタブーなのだから!!

 ……ともあれ、おかげで究子はもう何べんも恥ずかしい目に遭っているのだが、今回は大見得を切れと来た。
「……うえーっ」
 でも実は煙とか割と薄めで、目視で発見できたりするんじゃない? ていうか、させて?
 という究子の期待は、転移した瞬間、五里霧中に陥ったことであっさりと打ち砕かれた。
 すでに猟兵が遭遇・開戦しているようだが、さすがは大悪党……もう二度も姿を眩ませているらしい。
「……や、やるしかない……か。せ、背に腹は変えられないもん……な」
 やっぱやだな、でもな、いやでもさすがにちょっと……を5回ぐらい繰り返して、ようやく究子は覚悟を決めた……!!

『ラジカルエクステンション!!』
「は???」
 いきなり轟いてきた大きな少女の声と、やけにファンシーでどこかサイケなBGMに、煙の中で傷を癒そうとしていた石川五右衛門は耳を疑った。
 これ絶対近づかんほうがいいやつだ、五右衛門わかる。
 わかる、が抗えない……なんか光ってるってことはお宝かもだし!!
 よせばいいのにふらふら出て行った先で、石川五右衛門は見た。
 なぜか星とかハートとかが一杯のバックグラウンドの中、手先とかつま先とか、あと背中がアップになってフリフリの魔砲少女衣装をメイクアップする光景を!
 こう、わかるでしょう? カメラがズームするとピカリン☆とか言って光のフリルがついて、それが服に変わるやつ。あれです。
 あのアニメとかでよくやるやつが、このクソ暑い樹海のど真ん中で繰り広げられていた。
 飛び散るよくわからん☆とかハートとかなんかガーリーな感じのファンシーマーク。ビカビカ光る派手派手しいエフェクト!
 全身を煌びやかでフリフリな衣装に変えた少女が、ぱちんとウィンクしつつポーズをとる!
『魔砲少女! ラジカルQ子!!(ここで媚び媚びのポーズ。カメラ目線)ただ今惨状!!!』

 ………………静寂。

 ポーズを取ったまま動けない究子。ぽかんとしている石川五右衛門。

 .……い、痛い! この静けさが物理的にも精神的にもめっちゃ痛い!!
「………………な、なんか、い、言えよ。いやい、言ってくださいお、お願いします」
「そういう趣味の変質者かなんかか!?」
「お、お前なんか全力魔砲の一撃で根こそぎにしてやる……!!!!!!!!!!!」

 カッ──!!

 霊峰富士を、恐るべき魔法少女の怒りの全力砲撃の余波が照らし出した……!!

成功 🔵​🔵​🔴​

神元・眞白
【WIZ/割と自由に】
転移のトンネルを抜けると、煙国でした。
視界の端が白くなり、樹海の中に私たちが止まりました。
向かいから貧しいサムライエンパイアのゴーストが現れて
「五右衛門さーん、五右衛門さーん」と遠くへ叫ぶように。

符雨?ちょっと、あらすじを説明している途中なのだけれど。
尺が無いからまき?……時々符雨は難しいこと言う。
目立ちたがりってことだし……符雨、ちょっとあのゴーストを突っついてみて。
きっと面白くやれば出てくると思うし。私も観客は増やしておくから。
という事で皆はあのゴーストさん達みたいに変装しておいて。
私も中に紛れて準備しておくから。あとは流れでやってみよう


三咲・織愛
富士山の大噴火だなんて、想像も出来ないほど被害が甚大となってしまいそうですね……
せっかくのフジヤマ! ゲイシャ! スシ!
大噴火なんてカートゥーンの中でしか許されないんですからね!

樹海へと足を踏み入れます
煙で視界か聞きませんね……やはり釣りだすしかないのでしょうか

大泥棒、石川五右衛門さん!!
私はあなたには決して盗めないものを持ってきました
それでも盗めると思うのなら、盗んでみせるというのなら、
姿を現し挑戦してみてくださいな!
ぜーーーったいに盗めませんけどね!(えっへん)

ちなみに私の心です!えへへ

こほん
ちょっとでもそれらしい気配を感じたら
手当たり次第に【打ち砕く拳】で命中率重視で行きます



●これまでのあらすじ
「転移のトンネルを抜けると、そこは煙国でした」
 白く染まる視界、薄まればそこは樹海。なんて不思議な景色なんでしょう。
 向かいから現れた貧しそうなサムライエンパイアのゴーストは、
「五右衛門さーん、五右衛門さーん」
 と、遠くに叫びながらどこかへと消えていきます。
 私、これから一体どうなってしまうんでしょうか。
 もしかすると名前を奪われて、なんかこう神様の湯屋とかで下働きしたり、あとなんかどんぐりとか転がす大きなクリーチャーと空を飛んだり、猫でバスな乗り物に乗ったりするんでしょうか。
 あるいはもしかして、動く城がなんかしたり、火の七日間とかそんなのを起こした古代兵器を巡ってあれやこれや……。

●この茶番いつまで続くんでしょうかね
「……白さん、眞白さんっ!」
「はっ」
 三咲・織愛の声に、ものすごくようやく、神元・眞白は我に返った。
 我に返ったというか、あらすじに見せかけた与太話ごっこをしてる場合ではないといまさら気づいた。
「もうここは敵地なんですよ、敵地! ダメですよぼーっとしてたら、もうっ」
「……尺はまだ、余っているかと思って」
「え? 尺? 何の話です?」
「なんでもない」
「???」
 かなり会話のドッジボールになっている感があるが、このふたりではいまさらである。

 そんなわけでポンコツ人形とポンコツエルフ娘……もとい、かしまし二人組は富士山の樹海に降り立った。
 あたりには煙が立ち込め、明らかに尋常ならざる気配を放っている。
「こんな大きなお山が噴火したら、想像もできないほど甚大な被害が訪れるんでしょうね……」
「符雨、あのゴーストをちょっと突っついてみて。できない? そもそもゴーストじゃなくて幽霊?」
「あの眞白さん? もう少し事態の深刻さを重々しく考えたほうがいいんじゃないでしょうかっ!?」
「わかってる、三咲さん。私、この通り真面目だから」
「ですよね! よかったぁ、頑張りましょうねっ」
 そこで安心してはいけないのだが、織愛も織愛でちょっと抜けているのであった。
 戦術器(眞白が操るからくり人形たちのことだ)の符雨は、主のいつものふるまいに呆れ顔である。
「煙で視界が利きませんし、やはりおびき出すしかないんでしょうか」
「派手好きっていうなら、面白おかしく騒いでれば出てくるかも」
「派手と面白いにはだいぶ差があるような……けどだいたい同じですよね!」
「そう、だいたい同じ。それに観客なら、私のほうで増やせるし」
 ずらり。眞白の背後に並ぶ、戦術器の皆さん数十体!
 みんなして、だいぶうんざりした顔をしているのは気のせいではないだろう。
「うーん、けどこれだけの数がいたら、オブリビオンも警戒して出てこないかもですよ?」
「なるほど、三咲さんの言うことにも一理ある」
 無表情のままうなずいて、眞白はくるりと人形たちを振り返った。
「じゃあみんな、変装しましょう」
 何度目だ、神元・眞白の変装大作戦!!

 ……というわけで、カメラは切り替わって石川五右衛門の現在の様子。
 究子の大火力砲撃で周辺地形もろともふっとばされた五右衛門は、ほうぼうの体であった。
「ち、畜生、猟兵どもめ! どいつもこいつもふざけてやがる!!」
 稀代の大泥棒を自称する石川五右衛門をして、猟兵どものやり口には度肝を抜かされていた。
 というか、正直に言ってだいぶついていけなくなりつつある。恐るべし天敵ども!
「もう俺様は何が聞こえても反応しねえぞ、絶対反応しねえぞぅ!」
 だがフラグを立ててしまうあたり、こいつも大概である。
「大泥棒、石川五右衛門さんっ!!」
「…………」
 そんな矢先にさっそく少女(つまり織愛だ)の声が響き渡り、石川五右衛門は押し黙った。
 どうせ罠だ、罠に決まってる。それが癪だがさすがの石川五右衛門だってもう学習している。
 じっと黙り息を潜め、相手が諦めるのを待つ構えだ。
「私は、あなたには決して盗めないものを持ってきました!」
「なぁにぃ?」
 ぴくり。挑戦的な織愛の言葉に、石川五右衛門はぴくりと眉根をひそめる。
 いやいやいけない。これも相手の策に決まっているのだ、無視せねば!
「それでも盗めると思うなら、盗んでみせるというのなら、姿を表し挑戦してみてくださいな!」
「…………」
 そらみろ。姿を表したら元の木阿弥に決まっている。ここはなんとしてでも無反応を……。
「ぜーーーーったいに、盗めませんけど、ねっ!!(えっへん)」
「…………」
「あれあれ、出てきませんね。どう思いますか、戦術器のみなさん!」
「「「なさけなーい」」」
「眞白さんはどう思いますか!?」
「なさけなーい(抑揚ゼロ)」
「ですよねー!」
「できらぁ!!!!!!!!!」
 観客作戦、大成功の瞬間であった。

 そして煙をかきわけ、カンカンに怒りながら現れた石川五右衛門!
「おうおうおうおう! 俺様に盗めねえもんってえのは一体」
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
 強烈! 石川五右衛門の顔面に、織愛の狙いすましたストレートが叩き込まれt!
 本当にかわいいエルフの攻撃方法なんだろうか! これだから猟兵は怖いのだ!
「みんな、今。行って」
 眞白の号令に応じ、サムライエンパイアっぽい衣装になった戦術器が飛びかかる!
 というか、倒れた石川五右衛門を囲んで棒で叩く! 棒で叩く!
「……ところで三咲さん。盗めないものって、一体なんなの?」
 リンチの現場から目をそらしつつ、眞白が問うた。
 織愛はちょっと照れくさそうにしてから、胸を張り、
「私の心ですっ!」
 と、答えたのである。
 ……哀れ、大泥棒。前例に学ばないからこうなるのだ……!!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テイク・ミハイヤー
ひとつ、人の世の生き血を啜り。ふたつ、不埒な悪行三昧。みっつ、醜い……醜い浮き……あー、何だっけ?まぁいいや。

UC即席爆弾。エンパイアのヒーローに倣って名乗り口上で大見得切ろうと思ったけどそっちは本業に任せてっと。奴が煙に紛れてる間に即席爆弾を仕込んでおくぜ。
爆風で煙を吹っ飛ばすってのも一つだけど……。ほら、ヒーローの名乗りって言ったら、背後の爆発だもんな!
俺、参上!通りすがりの猟兵だ!さぁ、お前の罪を数えろ!


六六六・たかし
【アドリブ歓迎】

ふん、天下の大泥棒石川五エ門か…俺の住むUDCアースでも聞いたことがある。
だがしかし!そんな天下の大泥棒ともあろうものがこんな薄暗い樹海の中でコソコソ隠れてるとはなんとも情けない話だ!!
俺ならばそんな小狡い真似はしない!堂々とその姿を現し戦うぞ!

その証拠を見せてやる!!大…!!変…!!身…!!!
(たかしが叫ぶとその身体が蒼き鎧に包まれる。デビルズナンバーたかしざしきわらしフォームであった)

【POW】
ここまで挑発したから出てくると信じたいものだが…
万が一出てこなかったら「視力」「第六感」で奴を探す。
見つけたら俺の愛刀「たかしブレード」のサビにする。
デビル!たかし!ストラッシュ!!


火守・かこ
森の中から目当てを探すのはめんどい。引っ張り出すほうを試す!

まずは【侵掠せよ赤狐隊!】で狐霊の軍勢を召喚!
いくつかの狐霊を合体させ、五右衛門に見えるくらいデカイ火柱をぶち上げる!……ああ、木に燃え移って火災にならねぇように気をつけて操るのも忘れねぇようにっと
そしたら残りの狐霊たちと一緒にお祭り騒ぎだ!石川五エ門何するものぞ、煙中に隠れる臆病者如き遅るるにたらず!火守かこの敵じゃ無い!ってな感じで大声で煽りまくるぜ!
せっかくだし木札とかもばら撒くか!「五右衛門討伐の将・火守かこ」って書いときゃ目立つだろ

これでおびき出せたら、狐霊たちと一緒に袋叩きだ!
釜茹でじゃすまねぇ、丸焦げにしてやるよ!


狭筵・桜人
大噴火?
その見せ場、先にやらせて貰いますね!

サイバーアイを起動。索敵開始。
アナログでも血の匂いを辿れるかな。
生体反応を捉え次第、大噴火やりまーす。
まあただのロケット花火です。一袋まとめて火点けちゃおう。

大噴火のあとに大噴火なんて二番煎じもいいとこですね。
煙に隠れたまま見せ場なし!大悪党を名乗っておいて?
魔軍将の中でも最弱とか言われちゃいますねえ。ンッフフ!
やーいやーいモブ川雑魚衛門!

あいやそんなつもりは
私?私は名もなきモブなのでこの辺で……

なあんて。
逃げるフリしてUDCを回り込ませて奇襲を仕掛けます。
こっちは丸腰なので【見切り】で回避行動に専念。
紫煙が残ってたら姿隠しに利用してもいいですね。



●祝え! 新たなヒーローの誕生を!
 天下御免の大泥棒、石川五右衛門。
 その名はサムライエンパイアはおろか、UDCアースにおいても名高い。
 一説によれば石川五右衛門は忍者であり、様々な妖しの術を用いたという。
 言わずもがなこの世界でも、庶民の間ではヒーローとして愛されている。
 此度のオブリビオンが、はたして石川五右衛門そのものなのか、それを僭称する似ても似つかぬモノなのかは、もはや定かならぬ。
 なぜならば、フィクションに引用されたことで、かの大泥棒の姿はあまりにも脚色されているからだ――。

「だがしかし!!」
 くわわっ! フードを被った四白眼の鋭い少年が、腕組しながら目を見開く!
 彼の名は? それを明らかにする必要はない。なぜならじきに明らかになるので!
「歴史に名高き天下の大泥棒、義賊の中の義賊と言われた男ともあろうものが、こんな薄暗い樹海の中でコソコソ隠れているだと?
 あまつさえ神の力にすがり、富士山を噴火させようなどと……なんとも、なんとも情けない話だッ!!」
 フードの少年は高らかに叫ぶ。周囲には誰もいない。だが彼がそんなことを気にするはずはない。
 なぜなら彼は――いや、今はさておこう。とにかく少年は、ここにいない敵に呼びかけるように云う!
「俺ならば、そんな小狡い真似はしない。堂々と姿を現し、正面からどんな敵とも戦うぞ!!
 さあ石川五右衛門、ここまで言われてまだ姿を見せないつもりか? お前はそこまでの輩か!!」
 輩か、からか、らか、か、か……(残響音含む)
 応じる声はない。あちらもさすがに、学習しつつあるらしい。
 少年はしかし、めげない。なぜなら彼は――いや、それはまだ語るべきときではない。
「……いいだろう」
 たっぷり間をおいたあと、少年は重々しくうなずいた。
「ならば、俺の言葉が嘘ではないというその証拠を見せてやる。見るがいい!!」
 ビシィイ! 少年は(夜の自室で3日ほどかけて考えた)変身ポーズを取った!
「大! 変……!! ……身ッ!!!」
 スゥー、ザッ! シャキーン!!(何度も練習した変身ポーズをキレよくキメる)
「俺は決して怯まない。めげない。媚びない。なぜなら俺は――たかしだから!!!」
 彼の名は六六六・たかし。遅めの中二病に罹患した可哀想なヤドリガミ……ではなく!
 UDCアースを本拠地に戦う正義(?)の戦士! そして見よ、彼の姿が蒼き鎧に包まれる!
 KA-BOOOOOOM!! そして背後で大爆発!
「大爆発!?!?!?」
 たかしも二度見した!
「爆発したぁ!?」
 驚いて石川五右衛門も出てきた!
 KA-BOOOOOOM!! さらに爆発! 爆炎がふたりを照らし出す!
「な、なんてぇ派手さだ……まさか、こいつも手前が!?」
 石川五右衛門はたかしを見た。たかしは不敵に睨み返し、言った。
「――知らんッッッ!!!!!」
 だが結果的には功を奏した……その爆発の正体は、一体!?

 ……時間は、たかしがひとりでぶつくさ言い出した瞬間からやや遡る!
「名乗り口上で大見得かぁ……いや、こいつはエンパイアのヒーローの仕事だな!」
 せっせと自作の即席爆弾をこしらえながら、赤いマフラーを巻いた少年がひとりごちた。
 彼の名はテイク・ミハイヤー。ヒーローを救うヒーローを自称する、ヴィジランテの人間だ。
 いっそ自分でかっこよくキメるというのは、考えた。が、それは本業のヒーローに任せるべきだろう。
 自分はあくまで、ヒーローと共に戦い、それを支えることを決めた常人(ヴィジランテ)なのだから……。
「でも派手さは大事だし、派手さといえば爆発だよな! よーし、爆弾はこんなもん」
「あーわかりますわかります、やっぱり爆薬が決め手ですよね」
「うおっ!? 誰だよあんた!?」
 いつのまにそこにいたのか、横に立ちながらうんうんとしたり顔でうなずく青年に驚くテイク。
 桜色の髪を持つ少年は、ものすごく胡散臭い笑顔を浮かべながら、はてなと首を傾げた。
「え、なんです? いやいや、私のことは気にせずどうぞ準備を進めてくださいよ」
「あきらかに怪しいだろ!? っつーかいま! 俺の爆弾ひとつくすねただろ!!」
「……チッ」
「舌打ち!!」
 なんのことやら、という顔をしながら、少年――狭筵・桜人が懐から即席爆弾をポイする。
 このやりとりを見てテイクが確信したとおり、この少年、かなりいい性格をしたダメ人……曲者だ。
 テイクに目をつけたのも、おおかたうまいこと隠れ蓑にするつもりに違いあるまい。
「いやでもね、私嘘は言ってないですよ? だって私も爆発で誘い出すつもりでしたからね」
 などと言いつつ、桜人が取り出したのは……ロケット花火、であった。
「これをね、一袋まとめて火を点けて大噴火! みたいな」
「しょ、ショボすぎる……」
「悪いです!? だって引火して私が火だるまになったら大変じゃないですか! 人類の損失ですよ!!」
 このイケメンフェイスが失われたら大変でしょ、とかしれっとした顔で言い放つ桜人。
 なんだこいつ、関わりたくないぞ。って感じの顔をするテイクだが、もはや時既に遅しである。
「まあまあ、そんな顔しないで! ね! 肝心の大泥棒さんの痕跡は私が索敵しますし!」
『そりゃあいいことを聞いたな! 俺も一口噛ましてくれよ!』
「「んん!?」」
 どこからか聞こえてきた聞き慣れぬ少女の声に、あたりを見渡すふたり。
『こっちだよ、こっち! 足元だ足元!』
 言われて視線を向ければ、なるほどそこには一匹の小狐の霊がいた。
『狐霊越しに失礼するぜ。俺は火守・かこ。お前ら、盛大な花火あげようってんだろう?』
「そうですよ、このコンビニで買ったロケット花火でですね」
「俺を一緒にすんなって! 即席だけど威力はそこそこなんだぞ、この爆弾!」
『まあまあ、なんでもいいって。とにかく、俺も似たようなことを考えてたのさ!』
 ふんすと胸を張る、甲冑装備の狐霊……のやや背後から、ひょっこり現れる妖狐の少女。
 にかっと明るく微笑む黒髪の相貌はあどけないが、妖狐の例に漏れず(?)実は長命の猟兵である。
「ここはひとつ、俺らでどでかい花火をあげてみようじゃないか、ええ?」
 桜人とテイクは顔を見合わせる。なんだか妙な話になってきたぞ……と思いながら。

 ……時間軸は現在に戻る!
(なんだあの妙ちくりんなガキは)
(明らかに関わりたくないタイプの方ですよ)
(バカ! どう見てもヒーローじゃん! 変身してるし!)
(ははあん、テイク、さてはお前さんミーハーだな?)
(いやでも石川五右衛門、近いですよ? これはいけるのでは?)
(変身ヒーローには爆発が必要だ! やるしかないぜ!)
 ……という具合にこそこそ作戦会議していた一同は、たかしの変身ポーズに合わせて火薬に起爆。
 かこの率いる狐霊軍勢『赤狐隊』がどでかい火柱をあげ、桜人の花火とテイクの爆弾が燃えたのだ!
「おうおう石川五右衛門、やっぱり大したことねえな! こんぐらいでビビるとは!
 添加の大泥棒、何するものぞ! てめぇみてえな臆病者ごとき、遅るるに足らずだぜ!」
 いの一番に姿を見せたかこが、腕まくりしつつこれみよがしに挑発してみせる。
 さらに赤狐隊が、桜吹雪めいてばらまく木札! 『五右衛門討伐の将、火守・かこ』のふてぶてしい文字!
「なんだとぅ!?」
「ひとつ、人の世の生き血を啜り……ふたつ……ふたつ、あー、まあいいか!
 とにかくだ、かこの言う通りだぜ! 思ったより大したことねえな!」
 勢い込んだテイクも立ち上がり、マフラーをなびかせつつ敵を嘲笑う。
「俺、参上! あいにくだが名乗りはしないぜ、ただの通りすがりの猟兵だ!
 さぁ、お前の罪を数えな、石川五右衛門! ここがお前の墓場になるんだからよ!」
「おお~、さすが皆さん勇ましい。じゃ、私はこれで」
「「ええっ!?」」
 トリを務めるはずの桜人は、あっさり背中を向けて帰ろうとしていた!
 慌てて引き止めるかことテイクに引っ張られ、舌打ちしつつ戻ってくる桜人。
「あー……うん、いや、私は名もなきモブなので、はい」
「手前もさりげなく俺様のことバカにしてただろぅ!? 聞こえてたんだぞ!
 やれ"信長軍の中でも最弱"だの"モブ川雑魚衛門"だの! この野郎!!」
「チッ、聞こえてたのかよ……あーはいはい、けどすいませんねえ陽動なんですよ!」
 然り! 煙の中から、石川五右衛門に襲いかかる恐るべきUDC! 全てはブラフだ!
 やや締まらないがここがチャンス! かこもテイクも武器を構えるが、その時!
「待てお前ら!! ここは俺の見せ場だぞ!!!!!」
 くわわっ! 黙っていたたかしが、いまさらアピールを始めた!
「最初に名乗りを上げたのは俺! 爆発をかっこよく背負ったのも俺!!
 ならば、石川五右衛門をかっこよく倒すのも――この俺だッ!!」
「そんなとこ気にする必要あんのかよ!? 変身出来たんだからいいじゃんか!」
「というか細かい奴だな! 器が小さいぞ!」
「なんとでも言わば言え。だが俺は気にしない! なぜならば! 俺は!!」
 奇襲にたじろぐ石川五右衛門めがけ、必殺のたかしブレードを振り下ろすたかし!
「グワーッ!?」
「――俺は、たかしだから」
「私がいうのもなんですけどみみっちいプライドですねえ……!」
「黙れ! 喰らえ、デビルたかしストラッシュ、バージョンツー!!」
「しかも必殺技まで叫ぶとか、ずるいぞ!」
「テイク、お前が気にするところいちいち妙だな!?」
 俺が私がと我先に盗賊を討ち取ろうと競う猟兵たち。チームワークが取れているのだか取れていないのだか、さっぱりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

化野・風音
世を覆し盗みとるという気概は嫌いではありませんよ、ええ
それを為そうとするのが「過去」でなければ、の話ですが

では一つ口上など述べてみましょうか

「大泥棒を名乗る石川の何某! 他人の術を当てにしてこそこそと隠れ潜むコソ泥ごときが天下転覆などとは片腹痛い。ましてや、人が目を付けた遊び場をかすめ取ろうなどという魂胆も度し難い。
いえ、いえ。泥棒など所詮はネズミのようなもの。ことが為されるまで隠れているのがお似合いですね?」

【挑発】に釣られて出てくるのであれば受けて立ちます
撃ち合えば不利は目に見えていますが、この手合いは必ず優勢であれば隙を生むでしょう
そこを≪悪喰≫

なかなか悪くない味です
ですが、ここまでです



●あだしの、という女について
「……逃げるか」
 幾度目かの猟兵の攻撃を逃れた石川五右衛門は、そう呟いた。
 たしかに己には役目がある。果たさねばならぬ大命である。
 神の仔の血は彼奴に普段よりも大きな力を与え、これがかろうじて命を繋ぐ糧になっている。
 だが。だがだ。こうまで追い込まれて、儀式など完遂できるのか?
 ……大悪党らしからぬ、こじんまりとした不安である。
 しかし無理もない。なにせもう何度も引きずり出されているのだから。
「とはいえ、それが叶うと思っているならば、それこそ夢見がちというもの――」
「誰だッ!?」
 いつのまにそこにいたのか。妖狐の女が、石川五右衛門の前にいた。
 意外や意外、その装いは洋風の給仕服だが、ただならぬ気配がある。
「世を覆し盗み取るという気概。それそのものは嫌いではありませんよ、ええ。
 ですがそれを為すのが"過去(あなたたち)"ならば、話は別ですが」
 それすらも捨て去るならばいっそ興ざめ、とばかりに女は頭を振る。
 ……業腹である。石川五右衛門は唸った。
「申し遅れました。私、化野・風音と申します」
 慇懃にカーテシーする様も鼻につく。だが女の怜悧な風貌な平穏だ。
 刺すような殺気も、柳に風とばかりに受け流している。底知れぬ。
 とっとと襲いかかり、叩きのめすべき……だろう。
 相手はひとり。そして女。向こうに回すには易い敵だ。
 ……敵であるはず、なのだ。だが、なぜ攻められない?
 石川五右衛門は己を訝しんだ。女もまた、攻めてこないことをも。

 ……そんな石川五右衛門をよそに、風音はふむ、と思案した様子を見せてから、
「そういえば、あなたは派手好きということでしたね。ならば――」
 すう、と息をひとつ。
「大泥棒を名乗る、石川の何某!!」
 たおやかな身体のどこから出しているのか、という大音声である。
「他人の術をアテにして、こそこそと隠れ潜む泥棒ごときが天下転覆などとは片腹痛し」
「…………」
「ましてや」
 風音が目を細める。口元には――嘲りの笑み。
「"人が目をつけた遊び場"を掠め取ろうなどという魂胆も度し難い」
「………………女、手前ェ」
 ことここに至って、ようやっと石川五右衛門も理解してきた。
 己を前にして挑みかかってこない理由。
 あえて己を誘い出すような文言をぶちあげる理由。
 女の笑みの理由。そして。
「いえ、いいえ――泥棒など、所詮はネズミのようなもの。
 ならば、ことが為されるまで隠れているのがお似合いですね?」
 風音はそう口上を終えると、頭を振り……おお、おお!
 あろうことか、石川五右衛門からふいと目線を外し……手を、振ったのだ。

 まるで、わんぱくな子供を台所から追い返す母親のように。
 あるいは泣きわめく稚児をあっちへお行きと諭す父のように。
 歯牙にもかけず。見下して。"見逃してやる"と示したのだ!
「……女ァ……」
「どうなさいました? 逃げないので?」
 石川五右衛門は理解……いいや、確信した。
 この女は――己を、敵とすら見ていないということを。

「女ァッ!!」
 怒号とともに、大地が爆ぜた。
 石川五右衛門による、痛烈な踏み込みである。一瞬の裡に間合いは縮まる!
「嘗ァめるなよォッッ!!」
「あら、あら」
 疾い! 煙管と侮るなかれ、鞭めいてしなる打擲が瞬きのうちに五つ!
 だが見よ! 風音はそれを、鋼のように霊力で固めた符で受けている!
「挑発すら受け流せませんか。お可哀想な方」
 石川五右衛門は吠えた。おそらく、それは罵詈雑言なのだろう。
 獣じみた咆哮を淑やかに聞き流し、風音は激甚たる猛攻を受け、止める。
 だがその余裕とよそに、憤懣が両者の趨勢を縮め逆転させていく。
 すなわち。石川五右衛門の攻め数は増し、霊符は減っていく。
「死ぃいいねぇええええ!!」
 生まれた貧民の霊すら、ありきたりな言葉を挟むことが出来ぬ。
 それほどまでの怒りである。矜持を傷つけられた悪鬼がそこにいた。
 かくて燃え上がる怒りが、迂闊な女を打ち据えると見えた――その時!
「本当にお可哀想な方」
 ぴたり。あっけなくも煙管は止まり、石川五右衛門もまた同様に。
「勝つと思いましたか。私を、倒せると思いましたか?」
 女は何もしていない――否。その周囲に、こんこんと遊ぶ子狐の群れ。
「名乗りましたでしょう。私は"化野"。そしてここは"あだしの"にございます」
「……女」
 呆然とした様子で、石川五右衛門は呟いた。
「お前は、なんだ」
「――なに」
 髪をかきあげて、妖狐は笑う。
 それは人の相貌であるが、まるで人の形をしていない。
「ただの、市井の拝み屋でございますよ」
 狐たちが、燃えた。それは命を食み、心を啜るあやしの炎である。
「現世の事象は、まこと変わりやすいものでございます――」
「う、おおおおお……!?」
 外法・悪食。人の欲望を、蜜として啜る外道の業。
「では一つ、賞味のほどを、お互いに」
 ちろりと、女の形をした化け物の口元を、艶やかな舌がなめずった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
火のない所に煙は立たぬ。
邪魔な煙は可能な限り大波で流してしまうとしよう。
槍を何本も使えば樹海ぐらいは覆えるだろう。
水が煙管にかかれば僥倖。
そうでなくともある程度は視界確保ができるな。
あとはそうだな……大声で天下一の大泥棒とでも啖呵を切ってみるか。
まぁ、盗みなどしたことはないんだがな。はっはっは。
そういえば、煙管に水がかると煙として借用できるんだったか。
だが、俺の槍は一本ではない。
はたして、そのサイズの器で俺の水をどこまで受け止められるか見ものだな。
最終的には煙管に直接槍を叩きこんでやろう。
水がない場所でも相応の水は出る。
そのうえで、大量の水を溜め込んだ煙管が水源となればどうなるか見ものだな。


安河内・誓吾
傾き者の真似はしたことが無いが、探すのもだるい
見栄を切ってご足労願おうか

遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!
俺は安河内!名を誓吾
疾いばかりの棒切れ剣術に飽いて鉄塊剣を持ちて戦場に立つ者!
天下御免を掲げる盗人を一目見ようと立ち寄れば漂うのはシケモクばかり!嘆かわしいな!天下御免とはお天道様に土下座してついた二つ名か!かび臭そうな盗人だ!」

さて、こんなところか
敵と対面出来たなら幾許かの打ち合いの後に鉄塊剣を思い切り振らせてもらおう、そう確か剣刃一閃
煙管で受け切れるか、試してみるんだな

人外だか過去だか知らねえが、他所から世界にイチャモン付けようってのは随分と気に食わねえ輩も居るもんだ


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

派手好きなのは別にいい…いや、この場合良くないけど。
他人の術式で、ってのがちょっとねぇ。
「自分一人じゃできません」ってことでしょ?
「他人の褌で相撲を取る」っていうんだっけ?こーゆーの。

んー…探すにしろ戦うにしろ、邪魔ねぇ、この煙。
…んじゃ、〇吹っ飛ばしましょうか。
グレネードその辺にぽんぽん〇投擲すれば、ちょっとは見通し良くなるでしょ。
民の霊とやらもまとめて祓えてお得かしらねぇ?
見つけ次第●封殺ぶっ放すわぁ。
刻むルーンはイサ(凍結)・ソーン(障害)にニイド(束縛)、どれも遅延に関わる〇属性。
やってみるだけはタダだし、多少逃げ足封じられれば御の字ねぇ。



●暗中模索を無理で押し通す
 ずしん! ……ずしん!!
「あらぁ、いったい何をしているのかしらぁ?」
 やけに甘ったるい女の声に、ドラゴニアンの巨漢がぐるりと振り返った。
 青い鱗を持つ龍の名を、セゲル・スヴェアボルグという。
 一方、そんな彼を誰何した女の名は、ティオレンシア・シーディア。
「見てわからんか。槍を突き刺しておる」
「それはわかるわよぉ。あたしが聞きたいのは、"どうして"ってことよ」
 これはしたり。セゲルは顎をぴしゃりと叩き、にっと笑った。
「"この煙をまるごと押し流そうと思って"な」
「……へぇ」
 セゲルはあえて説明を省いたが、これは彼のユーベルコードが根拠である。
 "溟海ヲ征ク水師(トルカ・ホーブストローム)"。
『槍の穂先が突き刺さった地面から水を湧き出させ』大波を作る、というものだ。
 そしていま、セゲルは、自慢の愛槍の数々を惜しまずあちこちに突き立てていた。
 ともすればそれは、樹海の全長でも図ろうという時代錯誤な測量にも思える。
 彼は船乗りである。だがここは大海原ではなく、山の麓。大地の孤島だ。
 そこに海を生み出そうというのだから、まさにその見た目に相応しい大言壮語と言えた。
 だが、それを聞いたティオレンシアは、こう言ったのだ。
「ちょうどいいわねぇ。"あたしも同じことを考えていた"のよぉ」
「ほほお! これは良き風向きだな! どれ、少し聞かせてみろ」
 ちょいちょいと指で招くセゲルに応じ、ティオレンシアは企みを明かす……。

「……それで」
 うんざりした様子で、鉄塊剣を背負う羅刹の男――安河内・誓吾が言った。
「いったいなぜ、俺に白羽の矢が立ったんだ」
「俺たちが作戦会議をしたところに、ちょうどお前さんが転移されてきたからよ」
「まあ、ようは偶然そこにいたから、って感じよねぇ」
 あっけらかんとした様子で、セゲルとティオレンシアは言ってみせる。
「そういうことじゃない。どうしたって俺が、石川五右衛門を挑発しなきゃならんのか、という話だ!」
 はた、と我に返った様子で、セゲルとティオレンシアが顔を見合わせる。
「むしろお前さん、挑発のひとつもなしにどうやってあれを探すと?」
「まさか、その剣振り回して煙を吹き飛ばそうってわけじゃないんでしょお?」
 話が通じぬ。誓吾は呵々大笑するセゲルと、甘い声の女の前で嘆息した。
 ……とはいえ、なにも誓吾は、無策で樹海を歩き回ろうとしていたわけではない。
 無論、石川五右衛門を誘い出すために、それらしい挑発も考えてはいた。
 が、自分ひとりでやるのと、誰かの企みに手を貸す一環になるのは話が別だ。
「確証はあるんだろうな」
 つまり、この煙を――敵の貼った結界を払えるのか。誓吾はそう問いかける。
「さてな。いかに風を読み天候を読もうと、海の機嫌は女心より複雑だ」
「そう言われると女としては色々言いたいことがあるけどぉ、まあいいわぁ」
 自信があるのやらないのやら、セゲルとティオレンシアの言葉はどうも腑に落ちぬ。
「だがな。どうせあれに挑むのだ、ならば奇縁で結ばれた者同士、助け合うのも知恵だぞ」
「ここは別に海の上でも、船の上でもないがな……」
 まあいい。いまさら怖気づくなど、誓吾の性分ではない。
 この男、けして頭が悪いわけではないのだが、やや豪放磊落に過ぎるきらいがある。
 有り体に言うと、細かいことをあまり考えないタチなのだ。
 良く言えば大胆、悪く言えば大雑把。
 そんな羅刹をして戸惑わせたのだから、ふたりの策はまさに奇想天外と言えよう。
「決めた! 俺は俺のやりたいようにやる。あんたらも同じようにする」
「応。それぐらいがちょうどいいというものよ」
 龍と羅刹は挑むように睨み合い、互いにしかめ面のまま首肯して背を向けあった。
 それを見ていたティオレンシアは、呆れた様子で肩をすくめる。
「どうしてこう、汗臭い男っていうのはぁ、みんな同じような性格してるのかしらねぇ」
 女だてらにバーの主人とフィクサーの二足わらじを吐く、裏社会の人間らしい台詞である。

 ……樹海中央部!
「おうおう! 遠からんものは音にも聞け、近くば寄って目にも見よ!」
 鉄塊剣を肩に担ぎ、誓吾が大音声で吠え立てた。
「俺は安河内! 名を誓吾!
 疾いばかりの棒切れ剣術に飽いて、鉄塊剣を持ちて戦場に立つ者!」
 答える声はない。
「天下御免を掲げる盗人を、一目見ようと立ち寄れば、漂うのはシケモクばかり!
 嘆かわしいな! 天下御免とは、お天道様に土下座してついた二つ名か!」
 ……答える声は、ない。
「……かび臭そうな盗人だ! 稀代の大泥棒が聞いて呆れる!!
 聞き捨てならぬと憤るならば、いますぐ姿を見せてかかってこい!!」
 しん、とした静寂。さしもの敵も、いい加減に姿を晦ませたか?
 ……いや、見よ。煙の中にぼんやりと浮かぶ何者かの影!
「来たか。さあどうした、姿を見せろ大悪党!」
 答える声はない。だが……刺すような殺気がある!
「片腹痛し! 煙のなかから隠れて挑もうてか! やはり黴臭い小悪党だな!」
 誓吾はあざ笑う。これが彼一人ならば、あるいは窮地に陥っただろう。
 だが今は違う。そう、ここに来て企みはまさしく明朗たる妙手と変じたのだ!
「てめぇのその小狡い企みを、まとめて押し流して吹き飛ばしちまう連中がいるぞ!」
「応!!」
 大音声! 大気を震わせるほどに答えるは、海原に生きた龍の戦士!
 最後の一振りをずしん!! と地面に突き立てれば、上がるわ上がる、季節外れの間欠泉!
「どら、お前さんが頼りにするこの煙、ひとつ盗んでやるとしようか!
 まるで天下の大泥棒、てか? はっはっは、我ながら柄にもないなあ!」
 呵々大笑するセゲルの背後、ざぱん! と逆巻く大波、意気揚々!
 水飛沫は炎天に清涼をもたらし、たちまち煙を呑んで樹海を湿らせた!
『…………!!』
「よぉく冷えたでしょお? じゃあもう少し派手にいきましょうかぁ」
 そしてもうひとつ。ティオレンシアは、現れるなりひょいと何かを投擲。
 ……おお、あれは。グレネードだ! 投げたそれを神業的射撃で――BLAM!!

 KBAM! KBAM! KRA-TOOOOOOOOOOM!!

「はぁっはっは! こいつぁ暑気払いには最適な花火だな!」
「ぺっぺ! ええい、どっちもどっち、塩辛い上に耳が破れそうだぞ!」
「そらそうでしょお、波起こして爆弾放り投げてるんだからぁ」
 誓吾の愚痴など柳に風、だがそれよりも渺々たるは煙払うふたつの波だ。
 爆風と大波が、たちまち隠れていたこそ泥の姿を……明らかにした!
『ちぃい、猟兵どもがぁ!!」
「はい、見ぃつけた」
 BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!! 目ざといティオレンシアのファニング!
 石川五エ門とてひとかどの大悪党、とっさにこれを躱すが……全弾回避などできようはずもなし。
『何っ!?』
 動けぬ。弾丸に込められたルーンの加護だ!
「ふん、情けない大泥棒とやらだ。さあどうしたぁ!!」
 セゲルとて見物はせぬ。豪槍を抜き放ち、大気を薙ぎ払う強烈な一撃!
 応龍槍と巨大化した煙管がかち合う……そして、石川五右衛門がたたらを踏んだ!
『がっ!?』
「羅刹の!」
「応さ!」
 そして誓吾が踏み出す。まるで山が動くかのような、重々しく泰然自若たる踏み込み。
「人外だか過去だか知らねぇが、おさらばした世界にイチャモンたぁ気に食わねえ。
 その御大層な煙管とやらで、この一撃! 俺の刃、受けきれるか試してみるんだな!」
 びょう――鉄塊剣の剣刃一閃、晴れ晴れたる空もろとも、大泥棒の胴をばっさり切り裂いた!
 それはまさしく、霊峰の怒りが乗ったかの如き剛剣である……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

馮・志廉
『馮家身法』で煙中を行きつつ、大声を響かせる。
「石川五右衛門!……ハハハ!惜しい!残念だ!天下御免の名が泣くぞ!」
何が、とは言わずに頻りに残念と言い立てて嘲弄し、五右衛門の反論を誘う。

誘いに乗って出てくれば、抜刀。
「天下転覆の気概は見事。俺も徳川の世など知らん。しかし、この凶行は見過ごせん」
大体が、結局は権力者に使われて動こうと言うのが気に入らぬ。
小細工無用。『馮家断魂斬魄刀』で、キセルごと断ち切る。

貧民の応援に対しては、苦衷の念を抱きつつも反論。
「この山が噴火すれば、一体どれ程の人々が路頭に迷う事になるか!」


アイラ・アイネ
天下の大泥棒も地に落ちたものです。民の敵になったお前はもはや義賊では無い

私は、敵の痕跡…足跡や血の跡を探してみようと思います。探しながら相手を挑発しておびき寄せます。
「天下の大泥棒ともあろうものがこそこそと…お前に比べればドブネズミの方がまだ勇猛果敢といえるだろう。…まあ、怖いならそれでもかまいません。ネズミを狩るのにも全力を出すのが狩人ですから…」
発見出来ましたらテムル・オルダで相手を閉じ込めます。設置する罠は地雷。わざとこれ見よがし設置してあるものと完全に隠したものを混ぜ相手を混乱させることを狙います。私は地雷の音が聞こえた場所に向かい、「誘導弾」「スナイパー」で相手の眉間を銃で撃ちます。


リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎

「大見得切るんだね、了解!」
イルダーナの上に立って、樹海の上で大上段!

知り合いに似せて悪っぽく決めながら続ける

「貧しき民に明日への希望を、活力を。
ジンの雨たあチルだろ? ……ジューブに奢ってやんな! なんてね!」

UC【我は満たす、ダグザの大釜】でボクの資金から
エンパイア用の大判小判をざらっとバラ撒く!
霊にも効果するように、「破魔」付与しておこう

「なにが、天下御免の大泥棒『石川五右衛門』さ、
姿も形も見えないじゃないか!
尻尾巻いて縮こまってるなら、骸の海で寝てると良いさ!」

出てきたら、『ヌァザ』でキセルを「部位破壊」の「鎧無視攻撃」!

「今のキミに義があるとは思えない。天誅!」



●煙の中で起きた一幕
 セゲルやティオレンシアらの行動で、煙が晴れるその少し前。
 石川五右衛門は、なぜ煙に紛れて猟兵を殺すなどという姑息な手段に出たのか……。
 その答えは、ある三人の猟兵たちによる痛烈な行動が理由であった。

「ハハハ! 惜しい、実に惜しい! 敵ながら残念なことこの上なし!」
 煙のなかを、布のように軽やかに飛びゆき、呵々大笑する硬骨漢あり。
 唐風の装いを纏う男の名は、馮・志廉。見ての通りの武侠であり、義に篤き男である。
 その志廉は、すでに何分も、たっぷりと大音声で笑っていた。
 何を? 言わずもがな、石川五右衛門を……である。
「天下御免の名が泣くぞ、石川五右衛門よ! ああ、ああ、まったく残念だ!」
 この男、腕っ節に秀でているだけなのかといえば、まったくそんなことはない。
 悪を憎み卑劣を唾棄する好漢だからこそ、悪党の"くすぐりどころ"はよく心得ている。
 残念だ、と嘲笑いはする。だが、『何を』とは、決して言わないのである。
 理由を言い当てるならば、言われる側にとってはまだよい。
 何を戯言をと一笑に付して、聞き流すという選択肢を取れるからだ。
 だが志廉は、決して、己が相手の何を嘲笑っているのかを言葉にはしない。
『言わずともわかるだろう』とばかりに、風に笑声を乗せるのだ。
 これが手強い。聞く側としては腹立たしいのに、そもそも腹立たしいと思うこと自体が、『言わずともわかっている』ということになってしまう。
 つまりこれに激昂して飛び出せば、おそらく志廉はこのように言うだろう。
『どうした。俺は何ひとつお前のことを指し示してはいないのに、怒髪天を衝くとは。
 さてはお前は、自分でも己の何かについて、天下御免の名にそぐわぬと思っているな?』
 ……とまあ、こうした具合に、である。
 ともすれば子供の口喧嘩じみた屁理屈だが、舌鋒とは本来そういうものだ。
 かといって聞き流そうとすれば、相手はこれをひたすらに繰り返す。
 出て来ぬのならば、やはりお前はそう思っているのだな……と、できるのである。
 武術のみならず、悪漢の堪忍袋をいじくる術にも長けてこその武侠ということか。

 そして実際、煙に潜む石川五右衛門は、顔を蛸のように赤らめて震えていた。
 志廉の企みも何もかもわかっているからこそ、腹立たしいのだ。
 そも、"己がそうして操られている"、"操ることのできる弱敵"と見做されてることが、腹立たしい。
 怒りというのは、悪いことに、それ自体が新たな怒りの火種となる。
(畜生め。俺をコケにしやがって)
 黙らせねばならぬ。だが、それができぬ。できぬことが、また腹立たしい。
 先ごろ、恐るべき拝み屋の女に恐れをなしたことも、彼奴の心を乱していた。
「どうした石川五右衛門よ、出て来ぬか! ああ、まったくなんとも、お前は残念な男だ!」
 ぎりぎりと奥歯を噛み締め、石川五右衛門は煮え湯じみた己の怒りに震える。
 はらわたが煮えくり返る……とは、こういうことを言うのだろう。

 ……そして怒りというものは、えてして注意を鈍らせるものだ。
「……見つけました」
 普段の石川五右衛門ならば、己を遠くから狙う、スコープ越しの視線に気づいたはずだ。
 だが、いまは違う。ゆえにアイラ・アイネ――北方の少数民族に生まれた羅刹の少女――は、悟られることなく、父の形見である猟銃を構えた。
(天下の大泥棒も地に落ちたもの。民の敵になったお前は、もはや――)
 トリガーに指をかける。ここまでの執拗な追跡が実を結んだ形である。
 しかし、引き金は引かない。なにせ彼女も、志廉の挑発を耳にしているからだ。
 であれば、協力すべきだ。つまり、彼奴を仕留めるための好機が必ず……来る!
「……あぁあああ!! 黙って聞いていりゃあ、いい気になりやがってぇ!!」
 そしてそれは、まもなく来た。怒り狂った石川五右衛門が声を上げる!
「出たな、石川五右衛門よ! 天下転覆の気概、それ自体は見事と言っておこう!」
 対する志廉もまた、軽功を以て地に降り、家宝である劈空刀を抜き放つ。
「俺も徳川の世など知らぬ。しかし、この凶行は見過ごせん!」
「ほざきやがれ猟兵がァ、ぶっ殺してやるッ!!」
(――今なら、閉じ込められる。"テムル・オルダ"で!)
 アイラの用いるユーベルコードは、大量の罠を内蔵した氷の迷宮を作り出すというもの。
 取り込めば最後、もはや相手に逃げ場はない。そのためには必中が前提となる!
 志廉に注意を逸らされているいまならば、それを満たせる。アイラは術式を……起動した!

「むっ!」
「何ぃ!?」
 志廉、そして石川五右衛門はそれぞれに当惑した。
 周囲は凍てつく氷の迷路に覆われ、あたりに不穏な罠の気配が感じられたからだ。
 だが動いたのは志廉が早い。彼は姿知らぬ猟兵の意を即座に汲んだのである!
「そもそもが、権力者に使われて動こうというのが気に入らぬッ!」
 迅雷の速度で踏み込み、一閃。なんたる澄み渡る朝風の如き一太刀か!
 されど石川五右衛門も見事。これを煙管で受け、両者打ち合いの姿勢に入る!
「黙れ黙れだぁまれぇ! やい野郎ども、この気取り屋に言ってやれぇ!」
(……これは!?)
 最適な狙撃場所へ移動していたアイラは、周囲の変質に瞠目した。
 見よ。氷の冷気に紛れ現れる貧民の霊たち。これもまた石川五右衛門の技!
 彼奴らは口々に石川五右衛門を大泥棒と褒め称え、猟兵たちをなじるのだ。
「……数が多すぎる、罠や猟銃じゃ消しきれない……!」
 アイラは歯噛みする。貧民の霊は数が多く、それ自体に戦闘能力はない。
 だがやんややんやという喝采は、悪党を調子づかせその力となるのだ。
『やっちまえ、五右衛門さん!』
『あんたが正しいぜ、天下なんざくそくらえだ!』
『正義ぶった連中なんぞ、俺たちを助けてくれるものかよ!』
 BLAMN! アイラはこれを銃弾で撃ち抜くが、言葉通り物量が足りない。
「おうおう、そうともそうとも! 俺様は何者だぁ?」
『『『天下御免の大悪党、石川五右衛門だぁ!』』』
「戯言を! お前に比べれば、ドブネズミのほうがまだ勇猛果敢というもの!」
 咄嗟に反論してしまったあとに、アイラは我に返った。まずい、位置が!
「そこだなぁ、この迷宮を作りやがったふてえ野郎はぁ!」
「させんッ!」
 アイラに狙いを変えようとする石川五右衛門に、志廉が風のごとくに斬りかかる。
「お前たちもお前たちだ! いかに超常の霊といえど、分をわきまえよ!
 霊峰が噴火すればどれほどの人々が路頭に迷うことになるか、わからんのか!」
『へっ、御大層なことをいいよるぜ!』
『お前らはそう言って、結局俺たちを助けてくれないじゃあねえか!』
 貧民霊どもは嘲るばかり。志廉はぎりり、と奥歯を噛み締めた。
 アイラはその姿を見て、思った。なんと不器用な男なのだろうと。
 ……たとえ相手が霊であろうと、彼奴らの空言を通してはならぬのだ。
「はぁっはっは、手前らにゃあなあんもできねえよぉ!」
 石川五右衛門は、瓦礫の山の大将とばかりに呵々大笑する。趨勢逆転か――!?

 ……その時!
「なぁるほど、大見得っていうのはそうやって切ればいいんだね!」
 突然、聞き慣れぬ少女の声が、氷の迷宮にわんわんと轟いた。
「そして、なんだって? "俺たちを助けてくれない"? ふふん、なるほど。
 じゃあキミたちを満足させてあげれば、つまりは文句はないってわけだ!」
『『『誰だっ!?』』』
 貧民霊、そして石川五右衛門もまた、姿なき声の主を探す。
 すると――見よ! どこからともなく降り注ぐ、光り輝くいくつもの雨!
「これは……!」
「……小判、ですか……?」
 志廉、そしてアイラは、降り注ぐもの――輝く大判小判を見て、困惑した。
 そう。この迷宮には今や、雪のように大量の金貨が、財貨を問わず降り注いでいるのだ!
『おお、なんだこりゃあ! 天のお恵みか!?』
『どけっ、こいつは俺のだ!』
『馬鹿野郎、俺のだぁ!』
 貧民霊どもは、降り注ぐ銭を餓鬼めいて奪い合う。
 こうなるともはや、石川五右衛門を称えて応援するどころではない!
「貧しき民に明日への希望を、活力を――」
 そして、あそこだ。声の主、なにやら宇宙めいた航空機にまたがる若き少女!
「ジンの雨たあチルだろ? ……ジューブに奢ってやんな! なんてね!」
 スラングらしき言葉を言いながら、悪童めいてニヒルに笑う電影少女。
 その名をリア・ファル。電脳の海から生まれし、宇宙を駆ける猟兵である!
「て、手前! なんてことをしやがる!」
「それはこっちのセリフだよ? 天下御免の大泥棒が、聞いて呆れるね!」
 リアは腰に手を当てて胸をそらし、小悪党を見下ろしてみせる。
「尻尾巻いて縮こまるばかりか、空言を並べて悦に入るなら、いっそ、骸の海で寝てるといいさ!」
 そしてアイラたちをみやり、得意げに笑うのだ。
「というわけで、ちょっと失礼したよ。こう見えて商品の配達は得意分野でね。
 氷の迷路だろうと宇宙の彼方だろうと、どこでもお届けがDag's@Cauldronのウリなのさ!」
「は、はあ……?」
「仔細は知らぬが、その豪気さ、派手さ、気に入った!」
 困惑するアイラをよそに、志廉は軽やかに笑い、うなずいた。
「六文銭と謳うにはいささか多すぎるが、それもまたよし! ならば俺の馮家刀法も持っていくがいいッ!」
 疾い! 内力こもりし馮家断魂斬魄刀、悪党を袈裟懸けに叩き斬った!
 そして鏢師の力強い眼差しが、少女を見据えて首肯する。
 アイラは言葉なく理解した。目的を思い出すべし、今こそ好機なのだから!
「――お前はもうすでに、アイラたちの狩場に入っている。それを思い知れ……!」
 オブリビオンへの憎悪を込めた弾丸が、傷口を穿ち、悪党にたたらを踏ませる。
「が、はぁああ……がっ!?」
 よろめいた先に巧妙な罠。かくして石川五右衛門、袋の鼠と己を理解したというわけだ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

寧宮・澪
噴火させられても、困りますのでー……頑張ってみます、かー。

【Call:ElectroLegion】、使用。
レギオン、いっぱい呼びましてー……虱潰しに探してみましょー……。人海戦術で、情報収集ー……。

「絶景かな、絶景かな、とは言えねどもー……富士のお山は雄大かなー。けれども煙に隠れて煙にまこうなんざ、天下御免の大泥棒の名前が泣いてるぜぇ。天下にごめんなさいの小盗人さー」
と、声を謳函で、拡大して、挑発、大見得切りましょー……。

出てきたら、レギオン達で囲みまして、叩きましょ、ねー……。
戦術知識で、動かしましょー……。
私は、毒使いでー……動き、鈍らせますかねー……。

アドリブ、連携、歓迎ですよー。


白寂・魅蓮
富士の山を噴火、か。
確かにこの上なく派手なイベントになることは間違いないだろうけど…そんなことは許すわけにはいかないな
天下の大泥棒、石川五右衛門。僕の舞台にも付き合ってもらおうか

流石にこれだけの煙の中を探すのは時間がかかりそうだね…。
ここは挑発をしてこちらからおびき寄せてみよう
「天下の大泥棒ともあろうお方が煙を巻いて隠居かい?」
「目立ってなんぼのこの舞台、噴火よりも熱く滾ろうじゃないか」
最悪煙が晴れない場合は【幽玄の舞「泡沫語リ」】と【四葩扇】を使って風で一気に吹き飛ばそう。

戦闘が始まったら【見切り】でしっかり攻撃を避けつつ、踊るように動きながら攻撃を繰り出すよ

※アドリブ、他猟兵との絡みも歓迎


御形・菘
あんなにデカい火山…フジサン?を噴火させようと企むとは、壮大な作戦で素晴らしい!
だが残念! 妾が居なければ、という前提であったな!

さあ右腕を高く上げ、指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 元気かのう皆の衆!
詳細は概要欄を参照! 妾より目立とうとする輩に、格の違いをきっちり見せつけてやるぞ!
妾に歓声を! 喝采を! 存分に浴びせてくれ!

さあ出てこい大泥棒!
妾の名は御形・菘! あらゆる世界を統べる邪神にして蛇神よ!
どちらが目立ってよりイケてるのか、そして何より! どちらの応援が素晴らしいか、はっきりさせようではないか!

妾の戦法は至って単純よ
攻撃を耐えて凌ぐ! そして左腕をブチ込む!


ハルカ・ラグランジュ
樹海の奥でコソコソ悪巧みなんて、天下の大泥棒に相応しくないわよね?
だから私が派手にショウアップしてあげるわ。

イカロスの翼で樹海上空を飛び回りながら、挑戦状を…いえ予告状をばら撒くわ(空中浮遊/空中戦/パフォーマンス)。
内容は「あなたの大切なものを頂きます。」でいいかしらね。

上手く五右衛門をおびき出せたら、「散るが故に」の桜吹雪で美しく終わらせてあげるわ。

貴方の心、私のアートで美事盗んでみせましょう!

※アドリブ・連携歓迎


雨乃森・依音
富士山が噴火したらやべぇのは
この世界出身じゃない俺でもわかる
石川五エ門…傾奇者、ね
見得を切るとかよくわかんねぇけど
要は目立てばいいんだろ?
俺はぶっちゃけ戦力外だし
こいつを引っ張りだすことに注力する

UDCアースではな
毎年夏にこの辺りでロックフェスティバルをやるんだよ
ゲインは最大
山全域に響くほどの爆音で
傾奇者でもなんでもいい
ぶっ刺してやるよ!俺の!歌で!
ギターを掻き鳴らし歌って歌って
いいからここに現れやがれ!

五右衛門が現れたなら
足手まといにならない後方に陣取りサポートに回る
歌で土砂降りを降らせて
お前が喚び出した霊ごと動きを止めてやる

――この雨で戦火も、流された血と涙も
全て洗い流せればいいんだけどな



●イェーガー、ショータイム!
 猟兵の奇策によって一時的に煙が晴れ、石川五右衛門はさらなる痛烈な一撃を受けた。
 つまり、ここが奴を追い詰め、畳み掛けるための絶好のタイミングだということだ。
 だが敵もまた、それを理解している。ゆえに幾度目か、奴は姿を晦ませた……!

「なぁーんて、それで逃げ切れたと思っているのかしらね?」
 樹海上空! 飛行術式兵装『イカロスの翼』によって空を舞うハルカ・ラグランジュ!
 煙が晴れつつある今ならば、空からの捜索はまさに妙手と言えるだろう。
「あっちへ逃げてこっちへ隠れてコソコソ悪巧みだなんて、天下の大泥棒に相応しくないわ。
 だから私が、派手にショウアップしてあげる! さあ、強く正しく美しくいきましょう!」
 謳うように言いながら、ハルカは花吹雪めいていくつもの紙片を撒き散らした。
 なんとも鉄火場に相応しくない、派手でアーティスティックなアクションである。
 だがそれも当然。なにせ彼女は、由緒正しき魔術師としての生まれを捨て、あの日見たアートの衝撃に未来を感じたのだから。
 どうせやるならアーティストらしく! ちまちま敵を探すなどらしくないというわけだ!
 撒き散らされる紙片は、挑戦状……いや、正しくは『予告状』というところか。

「あなたの大切なものを頂きます」

 という、いかにも怪盗めかした、痛烈にアイロニカルな文言が書かれている。
 盗人相手には効果覿面だろう。ハルカは楽しげに笑いながら空を舞う――!

 一方、地上のある一角。
「あらあらー……なんですかねぇ、これはー……」
 どこかのんびりとした口調のオラトリオ、寧宮・澪が、落ちてきた予告状を拾い上げた。
 空を見れば、いかにも楽しげに歌い踊りながら飛行するハルカの姿が遠くにある。
「なるほどー……目には目を、派手に派手を……ということでしょう、かー」
 電子の海をたゆたい、微睡むように日々を生きる澪には、あんなアクティブな真似はできそうにもない。
 となれば、ああして陽動を務めてくれている猟兵は、存分に利用させてもらうべきだろう。
「富士山を噴火させられても、困りますしねー……頑張ってみるとしま、しょー……」
 つい、と指揮をするかのように虚空を指先がなぞる。
 するとそこから電子の海への扉がわずかに開かれ、電脳の魔術を完成させるのだ。
 きらきらと舞う光の粒子は、琥珀金の見目麗しいいくつもの機械に変じる。
「お仕事ですよー……れぎおーん……」
 その数、ざっと200体以上!
 澪の友であり、手足であり、目にもなるレギオンたちは、魔術士の指示に従い、あちこちへ散る。
 そして澪は、手に持つぜんまい仕掛けの小箱に、息を吹きかけるように囁くのだ。
「絶景かな、絶景かな、とは言えねどもー……富士のお山は雄大かなー。
 けれども姿を隠して逃げようなんざ、天下御免の大泥棒の名前が泣いてるぜぇ……」
 声はレギオンを伝い、リレイし、樹海のあちこちに拡大されて響き渡る。
 挑発である。はたしてその程、効果はありやなしや……?

 ……同じ頃、樹海の別地点!
「なんだこりゃ……怪盗の予告状かなんかかよ。それにこの声……のんびりしすぎだろ」
 澪の挑発音声と、ハルカがばらまく予告状は、雨乃森・依音のもとにも届いていた。
 呆れつつも、自分がやろうとしていたことを思えば笑えるはずもない。
 なにせ彼は、自分のアイデンティティであり唯一の取り柄(と彼が思っている)というべきその歌声とギターの音色で、敵を誘い出そうとしていたのだから。
「……けどまあ、いいじゃんか。ようは派手に目立てばいいんだろ」
 愛用のギターをチューニングしながら、依音はらしくもない薄い笑みを浮かべた。
 それなら得意分野だ。この後ろ向きな、けれど抑えきれぬ想いを歌にすることこそ、
 自分にできる唯一の――そして誰にも負けない、世界への反抗なのだから。
「それになぁ、UDCアースじゃちょうどこのあたりでロックフェスをやるんだよ。
 大噴火なんてさせちまったら、歌うどころの話じゃねぇだろ! そういうのは――」
 奥歯を噛み締め、こみ上げる激情をピックに載せ、弦をかき鳴らす!
 爆音が大気を張り裂けさせる! だが足りない、もっとボリュームを上げろ!
「気に入らねぇんだよ!! ああわかってるよ、俺は所詮力もねぇ戦力外さ!!
 だからって!! 黙ってみていることなんざ! できやしねぇ……!!」
 あまりにも荒々しく、若々しさをそのまま旋律にしたかのようなギターサウンド。
 がなりたてるようなシャウトは、音のスコールとでもいうべき激しさを伴う。
 それがどうした。傾奇者だろうがなんだろうが、知ったことじゃあない。
 突き刺してやる。この歌で。音で。俺自身が感じた、この心と想いで――!
「……いよいよ音楽まで加わったか。これはもう乱痴気騒ぎのようだね」
 一心不乱にギターを掻き鳴らす依音を、遠巻きから見守る少年がいた。
 人狼の少年、白寂・魅蓮は、年頃に似合わぬ沈着さで苦笑し、肩をすくめてみせる。
「せっかく煙が晴れたっていうのに、これじゃあ挑発しておびき出すどころじゃない。
 ああ、でも手間は省けるし、それに――こういう騒がしさも、悪くないんじゃあないかな」
 少なくとも、霊峰を噴火させ人民を焼き尽くそうなどという、派手なだけの大災害よりはよほどいい。
 幼き芸妓が舞うには、響く音はあまりにも痛烈で、紙片が降り注ぐ空は騒がしく、あちこちを走る機械たちは観客にはそぐわないけれど。
「舞台の上の役者は目立ってなんぼ。この舞台、いっそ僕のものとしてしまおうか」
 くすりと笑って、紫陽花の描かれた舞扇『四葩扇』を高く掲げてみせる。
 もはや煙を払う必要はない。であればこの扇を以て、激しい風を起こしてやろう。
 そして音を森の隅々まで届かせて、予告状をそよがせてやろう。
「いるんだろう? 石川五右衛門。おいでよ、この舞台で熱く滾ろうじゃないか――」
 黒狐の面を被りし少年は、激しくも幽玄なる舞を以て幾重もの風を樹海に巻き起こす!

 さて、そんな思い思いの途方も無い大騒ぎのなか、肝心要の敵はどうしているのか?
 のたうち回りたくなるような悔しさと怒りにまみれ、地面を叩いていた!
「クソ、くそ、糞っ! 猟兵、猟兵、猟兵……!! どこまでも俺様をこけにする!
 挙句の果てに、なんだこりゃあ。なんだこの騒ぎは、なんだこの状況は!!」
 ともすればふざけた、協調性もかけらもない、場にそぐわぬ野放図である。
 だからこそ目立つ。だからこそ派手なのだ。見得とはそういうものなのだ。
 真面目くさった連中を嘲笑い、とさかを立てた連中にあかんべえをしてみせて、
 我は我なりとふんぞり返ってみせる。ふてぶてしく、堂々と、憎らしいくらいに。
 そうやって天下御免に立ち回り、天地をぐるりと回してみせるのが己ではないのか。
 だのになぜ、今! 自分はこそこそ逃げ回り、こうして挑発されている。
 自分の晴れ舞台のために用意されたこの場所が、猟兵どもに占領されている!?
 冷静な理性は言う。このまま逃げろ。使命は果たせないが仕方ないと。
 だが、ここで背を向けて逃げれば、それこそいよいよ"終わり"ではないか。
 天下を嘲り、騙してかどわかす大悪党が、派手さにケツをまくって逃げ出した?
 片腹痛し! それはだめだ。それはできない。己は"そういうもの"なのだ!

 ……それこそが、オブリビオンがオブリビオンたる所以である。
 彼奴らは強大であり、ユーベルコードを使い、以てほとんど不滅である。
 だが、"それだけ"だ。オブリビオンは成長しない。学ばない。進歩しない。
 人が生きる上で当然に経ていくそれらを、なんら体験しない。
 "変化しない"。それは強みであり、絶望的なまでの弱点でもある。
「あぁああああ……畜生、畜生畜生畜生畜生!!」
 過去の残骸だからこそ、"そうせざるを得ない"ものこそがオブリビオン。
 だから石川五右衛門は、これが悪手だとわかっていながら、飛び出さざるを得ないのだ!

「来やがったな」
「来ました、ねー……」
「やっぱり来たね」
「来たわね! 遅いじゃない!」
 依音、澪、魅蓮、そしてハルカは、まんまと出てきた敵を見た。
 石川五右衛門はなにかを叫んでいる。怒号とも言えぬ雄叫びである。
 そして煙をもうもうと生み出し、猟兵たちを撹乱して一網打尽にしようと、
「させねえよ。させるかよ! お前にゃ! 何も、させやしねぇんだよ!!」
 依音が叫ぶ! その声は、旋律は、空に高らかと響き、そして雨雲を呼んだ!
 降り注ぐ土砂のような雨が、たちまち煙の出掛かりを潰して霧消させてしまう!
「ぐうっ!? こなくそ、だったら手前からァ――」
「させません、よー……れぎおーん、数で押しつぶしてしまいま、しょー……」
 ひょいひょいと現れる機械たち。各々の武器を構え、あっという間に五右衛門を取り囲む!
 そして殺到。さしもの大悪党とて、200を超える統率された機械兵器は鎧袖一触といかぬ!
「言ったじゃないか。これは僕の――いや、この場合は僕らの舞台、かな?」
「顔を赤くして暴れるなんて美しくないわ! アートというのは、こういうものよ!」
 地上の魅蓮、そして頭上のハルカが、それぞれに花びらを生み出す。
 己の武器を花へと変えるユーベルコードふたつ、舞うは黒き蓮と桜吹雪!
 いっそ美しいほどの花吹雪は、それ自体が敵を切り裂き押し止める弾幕である!
「まだだ、まだ死なねぇ。許さねえ、許さねえぞ猟兵、猟兵ィイイイ!!」
 これほどの攻撃の猛威にさらされて、なおも憤るは石川五右衛門。悪鬼の形相!
 凌がれるか? 猟兵たちの脳裏に一抹の不安がよぎった、そのとき――。

「はー、はっはっはっは!!」
「「「「!?!?」」」」
 突如の呵々大笑! そして……なんだあれは、巨大スクリーン!?
 映し出されたのは、禍々しいが美しいラミアめいた蛇の美女である!
「土壇場に横殴りしてスペシャルアピール! まさに邪神!! うむ、妾らしい!
 元気かのう皆の朱! 元気でないなら妾を見て元気になるがいい! この美体を!!」
 ふてぶてしいまでの大言壮語を(映像付きで)ぶちあげるこの女、一体何者だ?
 その名を御形・菘。自称・蛇神にして邪神たる……実際ただのキマイラだ!
「素晴らしい音楽にダンス! そしてアートのパフォーマンスに多くの観客!
 よい、よいぞ! ここまでチャンスをこそこそ伺っていたかいがあるというものだ!」
「なんだあれ」
「……まあ、キマイラらしいんじゃ、ないかな」
「私とは正反対の方です、ねー……」
「けどいいわね! アートを感じるわ!」
 四者四様、呆れたり苦笑したり、平気な顔だったり喜んだりと反応は様々だ。
 菘はうんうんと満足そうに頷き、ぽかんとしている石川五右衛門を指差す!
「さあどうした天下の大泥棒! お主には応援してくれる霊とやらがいるのだろう!
 この邪神にして蛇神たる妾と、お主! どちらが目立ってよりイケてるのか……そして!
 どちらの応援とオーディエンスが素晴らしいのか、競おうではないか!!」
「……もしかしてオーディエンスって俺らのことか?」
「勝手にスタッフ扱いされているね……」
「まあ……別に、構わないですけれどー……」
「つまりプロデュースをご希望ね? いいじゃない!」
 四人はだいぶたじたじである。菘はそんな反応にめげはしない! 鋼のメンタル!
「な、なんだ手前――」
「どうしたどうしたぁ! 来ぬなら妾から行く、ぞッ!!」
 そして菘、あろうことかその隙を突き――SMAAAAASH!!
「グワーッ!?」
「「「「な、殴った……!?」」」」
「喝采ある限り! 妾の黄金の左腕は無敵であるっ!!」
 プロレスラーめいて異形の左腕を掲げる菘! ラウンドワン、ファイッ!
 乱痴気騒ぎ、ここに来ていよいよカオスの度合いを増していく……!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マルコ・トリガー
アドリブ連携歓迎

フーン、石川五右衛門か
有名だから名前は知ってるよ

【竜飛鳳舞】で樹海の上空を跳びまわって五右衛門に話しかけてみようか
稀代の泥棒って聞いてたけど、こそこそ煙に隠れてるなんて案外大したことないんじゃない?
富士山を噴火させる大偉業をやろうとしてる割に
例えば、ボクがここでそれっぽい呪文を叫んで銃を鳴らして、その後に富士山が噴火したらボクがやったように見えない?
ボクの功績になって有名人になっちゃうなー
ボク、全然【目立たない】五右衛門より絶対目立っちゃうなー

とか言って五右衛門が飛び出してくるかわかんないけど
もし姿が見えたら、上空から緩急つけた【2回攻撃】でキセルの【部位破壊】を狙ってみよう


有栖川・夏介
※アドリブ歓迎

闇雲に探すには時間がかかるようですし……ここはなんとか【言いくるめ】て、あちらから姿を現していただきたいです。

声をあげて挑発
「大泥棒ともあろう者が、私のような若輩の処刑人ごときにすら姿をみせないとは……たかがしれていますね」
「臆したのなら、そのままそこで処刑の時を待つがいい」
これで姿をみせてくれるといいんですけどね……

無事、石川五右衛門と対峙することができたら、そのまま戦闘へ
「初めましてさようなら……処刑の時間です」

「処刑人の剣」を振るって攻撃。
敵が手にしている煙管は何かと厄介そうなので【武器落とし】で落とせないか試みる。
敵の攻撃は【白騎士の導き】を駆使して回避。


ヌル・リリファ
◆アドリブ、連携等歓迎です

サイキックエナジーの【衝撃波】でけむりをふきとばして、あたらしいけむりがくる、発生源とおもわれる方向へむかいながら【視力】でさがす。
サーモセンサーもつかうよ

同時に
かくれるなんてわたしにかつ自信ないんだ?
みたいに挑発する

正直わたしだったら無視するけど、このひとは義賊らしいから。
誇りとかを大事にするとおもう。多分。
ダメなら普通にさがすだけだしね

みつかったら、たたかいながら様子をみてUC起動。
いれかわって、相手が攻撃をこっちにあてたとおもって油断したとこを爆破、さらに追撃してダメージをあたえるよ

生前どんなひとでも、オブリビオンになったならわたしの敵。敵は、殺す。それだけだよ


セリオス・アリス
アドリブ◎
まずは目だてばいいんだろ
【囀ずる籠の鳥】
『歌』で身体強化して
風の『属性』を靴にこめる
勢いよく跳び上がったら
空中で回転して勢いをつけて
着地と同時に強く風を吹かせる
「知らざぁ言って聞かせやしょう」だったか?
煙に頼らなきゃやってられねぇお前と違って
こっちは逃げも隠れもしねぇ
さあ、どっからでもかかってこいよ
『挑発』して『誘い』だし
『第六感』を働かせ『咄嗟の一撃』
来た攻撃を弾き返す
ハッ…!でかい図体だけあって
中々重たい一撃だこった
なるべく受けない様に『見切り』かわして『2回攻撃』
『踊る』様に風で煙を散らしながら
炎を纏わせ斬りかかる
…挑発なんざされるまでもねぇ
こっちは最初っから
お前の首狙いだよ!


奇鳥・カイト
そーだよなァ、噴火なんてされちまったら暑ィもん
そりゃ困るぜ

煙、煙な
目に頼っから面倒なんだよな
俺ァ糸の感知で探させてもらうぜ
必要なさそうならやらない方が楽だが
なんか向こうから来てくれるかもしれねーしな
……なんかフリでも言っとくか



戦いがあるのはわかっているので、仕込みを行っておく
やるのは戦場への糸の結界を作っておく、及び自分へのカウンター糸を仕込んでおく
結界は勿論俺が戦う範囲内、移動で向かうる辺りで
どーも俺の戦い方は他の奴らとやるのは相性悪いっぽいからな
邪魔すると面倒だ

そんなんでも近くで戦ってくれる奴にゃ万々歳ってとこだな、諸手を挙げて喜んでやるよ

粗暴な不良の喧嘩ような戦い方に糸を混ぜて



●大悪党、いよいよ大詰めにかかるのこと
「グワーッ!!」
 KRAAASH!! 流星めいて大木に叩きつけられたのは、石川五右衛門である。
 猟兵の奇策によって煙の結界を晴らされたばかりか、乱痴気騒ぎじみた挑発にまんまとかかり、すさまじい連続攻撃を受けたのだ。
 もはやほうぼうの体。よろける石川五右衛門に、天下の大悪党らしいカリスマは微塵も感じられない。
「ゲホッ、ゲホ……ち、畜生……俺様が、こんな……」
「おや……これは探す手間も、引っ張り出す手間も省けましたね」
 石川五右衛門はハッと表情を変え、顔を上げる。目の前には青年がひとり。
 季節にそぐわぬ赤いマフラーを巻き、表情はまるで物憂げに瞼が閉じかけられている。
 だが石川五右衛門を即座に警戒させたのは、彼が纏う……ある種の、殺気だ。
(こいつ――人斬りか? いや違う、だが……)
 静かな立ちふるまいのなかに、たしかに感じられる死の気配。血の匂い。
「はじめまして、そしてさようなら。処刑の時間です」
 そしてそれは即座に裏付けられた。有栖川・夏介が鞘走らせたのは突起なき実直な剣!
 その自称通り、彼は処刑人である。オブリビオンという邪悪を殺すためにここに来たのだ!
「ちいッ」
「また逃げますか? 天下の大泥棒ともあろう者が、私のような若輩の処刑人ごときを相手に」
 身を翻そうとした石川五右衛門に、夏介はすかさず挑発を投げかけた。効果的!
「それではあなたの実力も、たかが知れていますね――と」
 ガギンッ!! 振り向きざまの煙管と処刑剣が激烈に打ち合い火花を散らした!
「その煙管、やはり何か厄介ですね――」
 愛剣を巧みに操り、夏介は煙管を手放せようと搦手を次々に繰り出す。
 しかし瀕死とはいえ、石川五右衛門も、このような使命を任せられる相手である。
 丁々発止。攻防は互角、両者を徐々に煙幕が渦を巻いて包み込む……!

「まぁたそうやって煙、煙でこそこそ立ち回るかよ、させるかっつうの!!」
「この声は――」
 夏介は、咄嗟に一歩退いた。入れ替わる形で一陣の風が吹き込む!
「ぬおおっ!?」
 ガンッ!! 石川五右衛門を襲ったのは、槍のように鋭い風纏う襲撃である!
 まるで鳥のように軽やかに、猛禽めいて鋭い一撃。バク宙着地したのは青髪の青年!
「よっ! 見知った顔がやりあってるのを見てたらつい、な!」
「いえ……ありがとうございます、セリオスさん」
 ぺこりと軽く会釈をした夏介に助っ人のセリオス・アリスはにっと笑い返した。
 そしてそれを不敵な笑みに変え、挑みかかるように石川五右衛門を睨む!
「こっちは煙に隠れられなきゃやってられねぇお前と違って、この通り逃げも隠れもしねぇ。
 さあどうした。俺はここにいるぜ。悔しいならやり返してみろ、どっからでもかかってこいよ!」
「うらなり野郎がァ……!!」
 ぎりぎりと歯ぎしりし、石川五右衛門は注意深く攻め方を探る。
 明らかな挑発。セリオスにはなんらかの策があるのは間違いない。傍らの処刑人も油断ならぬ。
 二対一は荷が勝るか? いや待て。……そもそもなぜセリオスは、追撃をせずにわざわざ挑発をした?
 こちらから攻めさせるため? にしては妙だ。あの身のこなしも妙に無駄が多く、派手だ。
 そして何より、あの風。まるで何かの存在を己の知覚から隠すような――。
「上かッ!?」
「遅いよ」
 BLAMN! 咄嗟に見上げた石川五右衛門を直上から襲う弾丸の雨!
 見よ! 一同の頭上、木々を飛び渡る形でイニシアチブを得ていた少年の姿!
「おいマルコぉ、せっかく陽動してやったのに仕留めそこなってんじゃねーよ!」
「セリオスがガキだから見抜かれたんじゃない? ボクはちゃんと仕事したよ」
 ふてぶてしく言い返すマルコ・トリガーに、セリオスはぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる。
 少年の姿をしたヤドリガミは、油断なく構える夏介をちらりと一瞥しつつ、視線を石川五右衛門へ。
 不意打ちに気づいた大悪党は、脳天めがけた銃弾を、片腕を犠牲にかろうじて防いでいた。
「あのさぁ、さすがのボクも石川五右衛門って名前ぐらいは知ってるんだけど」
 明らかな嘲りを瞳に浮かべながら、淡々とマルコは言う。
「こうして実際に戦ってみると、話に聞いてたより案外大したことないって感じだね。
 そもそも、富士山を噴火させるとかいう大偉業はどうしたのさ。まだ達成できてないよ?」
「……の、ガキ……ッ!!」
「ああ、逃げ回るのが精一杯でそれどころじゃなかったのか。なんだ、やっぱり大したことないな。
 それならボクが、そこらへんを飛び回って銃を撃ちまくったほうが目立てるんじゃないかなー?」
 ガンスピンをしながらこれみよがしに言う。お前の悪事は鉄砲遊び以下だと。
 よりにもよって、子供の姿をした猟兵にそんなことを言われるのは業腹である!
「手前――」
「はい、隙あり」
 BLAMN! 緩急をつけた二連続射撃、狙いは彼奴が持つ煙管の手元だ!
「今度こそ、いただきますよ――」
「ぬうっ!」
 この好機を逃す夏介ではない。処刑剣が煌めき、ざっくりと手元を切り裂いた!
 かろうじて煙管を取り落とすまいとする石川五右衛門だが、その執着こそが仇となる!
「バカが、俺らの一番の狙いがなんなのか、わかんねえのか? お前の首だよッ!」
 歌声が魔力を呼び、風が炎を孕む! 首元を狙った旋風斬撃、鋭くそして疾い!!
「――!!」
 石川五右衛門は、これを受けるわけにはいかない。そのために別の部位を犠牲にせざるを得ぬ。
 もう一方の腕をかざして剣を受けるが、代償は大きい……吹き出す滂沱の血!

 もはや進退窮まったか。石川五右衛門は高速思考し、取るべき手を模索した。
 三対一、かつ己は深手を負っている。正面から打ち勝つことはもはや不可能だ。
 状況を立て直すにせよ、逃走するにせよ、まずはこの場を離れなければ――。
「……!?」
 そして身を翻そうとして、気づいた。木々の合間に張られた、光の筋に。
 それはまるで蜘蛛の糸のように、あるいは牢獄の鉄格子めいて隙間なく、そして堅牢である。
「糸……だと、いつの間に……!?」
「お前がそうやって、大立ち回りしてる間にだよ。悪ィな」
 樹海の暗がりから、音もなくゆらりと、ひとりの少年が姿を表した。
 学帽を被る彼の名は奇鳥・カイト。当人の言葉通り、この糸の結界を貼った人物だ。
「こうやって誰かと肩並べて戦うのは、俺のやり方だと相性悪ィんだけどよ。
 お前があっちゃこっちゃ逃げ回ってくれるおかげで助かったぜ。手間が省けた」
 敵が縦横無尽に動くならば、それ自体を隠れ蓑に欺くことなど赤子の手をひねるより容易い。
 もはや、樹海のそこかしこには、カイトが張り巡らせた罠が敷き詰められている……!
「こんだけクソ暑いのに、山なんぞ噴火されちまったら敵わねェだろ。
 本当は手ェ下すのも面倒なんだが――ま、そこは任せてよさそうだな」
 なおも戦う猟兵たちを見て、カイトは肩をすくめてわざとらしく万歳してみせる。
 そして掲げた手を、引く。きゅ――と音を立て、糸が五右衛門めがけ絞られていく!
「う、うおおおおっ!?」
 こそ泥は当然逃れようとする。しかし全方位の結界はそれを許さぬ!
「往生際が悪いんだよッ!」
「ほんと、口ほどにもないよね」
 セリオス、さらにマルコの援護攻撃が、煙を生み出そうとした煙管の動きを牽制!
 しかし糸の結界は、カイトの言う通り味方にとっても危険な代物である。
 だがその結界に、一切躊躇することなく突き進む少女がいた。
「さんざんばかにされて、こけにされて、おいつめられた気分はどう?」
 人形の名をヌル・リリファという。空色の眼差しが、一度だけカイトを見た。
 カイトは糸の結界を解除――しない。彼女の意図を察したがゆえに。
「いんがおうほう、っていうんだよね、こういうの。べつに可哀想とはおもわないよ」
 ヌルは淡々と踏み込む。糸が肌を裂き、肉を斬る。だが意に介さぬ。
 石川五右衛門は恐怖した。なんだこの人形は? 己もろとも死ぬつもりか?
「わたしみたいな、おんなこどもにいわれて、くやしくない?」
 この期に及んでの挑発。石川五右衛門はこれに抗えぬ。オブリビオンであるがゆえに。
 死なば諸共。せめてこの少女だけでも道連れに――!
「……しようと、するよね。なんだかんだいって、泥棒なんだから」
 卑賤な輩は必ずそうする。彼女はそれを知識として知っている。
「でも、ざんねん。それは"わたし"だけど、わたしじゃない」
 セリオスたちの傍ら、もうひとりのヌルがそこにいた。
 では。石川五右衛門がいままさに、その首を砕こうとしたこの少女は――。
「さようなら。ひとをだましてわるいことをしてたなら、これが因果応報だよ。
 ――みなもにうつる幻に騙されて、骸の海にかえればいい」
 少女の姿をした幻が、首の骨が折れるとともに膨れ上がり、爆ぜた。
 相打ち覚悟の特攻などしない。すべてはブラフ。泥棒が最期に騙されたのだ。

 そして樹海に、新たな火の玉が、ぼんっと生まれて咲いた。
 それは霊峰の噴火にしては、あまりにも呆気なく、そしてみじめである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
――天下御免の大泥棒
奪いに奪って荒らしに荒らし、享楽至極を極めて生きて
自由を謳ったおまえには、幾多数多のツケがある

奪って与える、大いに結構
義賊と言われたおまえには
それしか手立てがなかったやもと
思わぬ心もなくはない

しかしてしかし、奪ったそれも
人が身命賭した財

おう、此度、ツケを貰いに参じたは
手前、名も無きただの灰色
泣いた民草、怒る施政者
万里に座した人々の、願いを一つに集めてサ


派手を好まば、思うまま
咲いて弾けて天まで届け


――壊鍵、『爆殺式』。起動!!
地に突き立てた拳から『衝撃』を伝播
五右衛門の周囲に存在する無機物すべてに『衝撃』を浸透させ、ヤツを天まで打ち上げるような爆轟に巻き込み、滅却する……!


ヴィクティム・ウィンターミュート
【アサルト】

仕事の時間だぜ…ハッ、天下御免の大泥棒が相手とはな
Arsene差し置いて大泥棒を名乗るなんざ…万年速いぜ、三流

そんじゃあネグル、煙の方はお前に任せる
吹き散らしたんなら、すぐに煙で満たそうとするはずだ…つまり、煙が来る方向を【見切り】、【追跡】すれば…奴はいる

ダメ押しの大見得といこうか
「俺と技比べしようや、大泥棒。それとも何かい?煙に隠れる奴ぁやっぱ腰抜けってか?つまんねえなオイ」

出て来てアイツがUCを発動した、こちらもUC発動
召喚した霊ごと衛星レーザーで薙ぎ払う

──つまんねえ
義賊気取っても、所詮は信長っつーデカい力に巻かれた煙ってことかい
恭順を選んだ時点で、俺とは格が違うってこった


ネグル・ギュネス
【アサルト】
おぉ…珍しく熱くなってるな…
それじゃあ今日は、私がサポートと行こうか

敵の放つ煙の対処なら、これさ
【スターダスト・トリガー】を起動
風の【属性攻撃】たる弾丸を放ち、【衝撃波】を孕んだ突風を巻き起こす

出鱈目に撃っていると嘲笑うだろうが、…丸見えだぞ、貴様
煙の流れ、デカイ図体、サイバーアイで感知完了、駄目押しといく!

【誘導弾】に特殊弾丸装填、ペイント弾発射、敵にペンキと匂いを付着させてやる

ここまでやれば、最早二人には楽な的か?

さらに見栄に釣られるタイミングに合わせ、弾丸チェンジ
銃の力をフルチャージ

悪いな、大泥棒
地獄で再度、閻魔の裁きを受けるが良い

衛星レーザーに合わせ、エアロバースト、発射!


鳴宮・匡
◆アサルト


衝撃波で吹き散らした煙が再充填する様子を
眼で視て、肌で感じ取り
首魁のいる方角を大まかに察知・追跡
何度か繰り返せばそれなりの精度になるだろ

追跡はヴィクティムのほうでも行ってるし
一応リソースの半分程度は聴覚に割いて
相手が煙に紛れて奇襲かけてこないかくらいは注意しておくよ

レーザー??
……お前なんてもん出してくるんだよ
いやいいけどさ……まあこっちはこっちでやるか

ヴィクティムやネグルの攻撃で浮足立ってるところを狙撃していくよ
「別の攻撃を防御した後」「体勢を崩した瞬間」など
確実に防御が間に合わないタイミングを見計らって狙撃する
防御も回避もさせやしない
ここで仕留める



●雲煙飛動、隠れし賊
 かくして爆炎に呑まれ、哀れ大泥棒を気取った小悪党は露と消えた――。
 ……と、話が終わらぬからこそ、彼奴は石川五右衛門などと嘯くのだろう。
 悪あがきという他ない。まったく引き際をわきまえぬ、醜い悪あがきである。
 ともあれ。炎に呑まれたとき、石川五右衛門はある選択をした。
 それはあらゆる意味で致命的で、間違った、しかしある意味では最適な行動。
(終われねぇ)
 こけにされ、嘗められ、嬲られ、挑発され、嘲笑われ――。
 挙句の果て、己が騙されて終わる。天下御免の大泥棒、石川五右衛門様が?
(終われねぇ。"俺様"というものが滅びなかったとしても、それだけは認めねぇ!)
 それは、矜持というにはあまりにも薄汚く、そして醜く歪んでいる。
 あえて形容するならば、それは――悪性だ。
 世界に仇なすモノ。未来を破壊し侵略する過去の残骸、オブリビオンの根源。
 "そう"だからこそ、奴らは世界の大敵たりえる。
 "そう"だからこそ、こいつは邪悪たりえる。
(関係ねぇ。猟兵ども。天敵ども。奴らを、ぶっ殺してやる!!)
 石川五右衛門は、業火の中で何をしたのか?
 ――簡単だ。奴は、本来儀式に用いるべき、神の仔の血を……!!

 突如として、炎の中から異様に濃い煙が、ぶわぁっ!! と溢れ出した。
 猟兵たちが突然のことに後手に回るなか、一足早く動いた三人の男たちがいる!
「ヴィクティムの読み通りか、相変わらずぞっとするほど正確だな!」
 ネグル・ギュネス! 彼は即座にその身を青白く輝く装甲へと変身させ、流星と化した。
 BLAMBLAMBLAM!! ペネトレイトブラスターから放たれるのは風の属性弾丸だ!
 壁のように思えるほどの分厚い煙を切り裂き、風の弾丸は爆ぜてそれを吹き払う!
『ああああ……ァアアアアアッ!!』
 そして見よ。煙のなかから現れた、全身に縄めいた血管を浮かべた石川五右衛門!
 二回り近くも膨れ上がった体躯。それはまさしく太陽神の加護を己のものとした証左。
 追い詰められた大悪党は、血を噴火のためではなく自己強化に利用したのだ……!
『俺様はぁあ……天下御免の大泥棒よォ!! 嘗ぁめるんじゃあねえ!!』
 BLAMBLAM!! ネグルは巨体に風の弾丸を打ち込むが、効果は薄い……。
 そして切り裂かれた煙も、石川五右衛門の吐き出す新たなそれによって補われるのだ。
「役目すらも放棄してよく吠える。どれだけ覆い隠そうが、その図体は丸見えだぞ!」
 さらに弾雨を――いや、待て。彼が放ったのは風の弾丸では……ない!
『なぁにぃ……!?』
 べしゃりと彼奴の体のあちこちにへばりついたのは、匂いを付与されたペイント弾!
「今日は私はサポートなものでね。誰より熱くなっているヤツがいる」
 ガンマンめいてにやりと笑い、ネグルはおどけてみせた。
「それでも嘘だと思うなら、こそ泥らしく逃げて隠れてみせるがいい!」

 ……一方、樹海の別地点!
(ハッ、天下御免の大泥棒が、このArseneと張り合う? 悪いジョークもいいとこだ)
 影に潜むヴィクティム・ウィンターミュートは、言葉にせずあざ笑う。
 あの手の大言壮語を吐く悪党は、追い詰められたときにその地金を晒すもの。
 窮地に陥った石川五右衛門が取るであろう行動を、ヴィクティムはすでに読んでいたのだ。
 そして今まさに、噴霧じみた煙は、樹海を満たしつつある。断続的な衝撃音。
 ネグルと石川五右衛門が機動戦闘に入っているのだ。通常であれば位置の特定は難しい……が!
(煙に隠れようとするなら、当然煙を常に維持しようとしなきゃならねえ。
 裏を返せば、そいつが来る方向を追えばいい。大泥棒を名乗るにゃ万年速いぜ、三流!)
 影から影へと走る。向かう先は、たしかに敵の居所と一致していた……。

 そして煙の流れを見て読み取ることなど、もうひとりの猟兵にとってはあまりにも容易かった。
 鳴宮・匡。機械よりも正確な感覚器と、それを冷静に取捨選択し最適判断する技量の持ち主。
 見当をつけるまでもなく、最短最速のルートを音もなく進むさまはもはや非人間的だ。
 それが匡という男だ。そうでなければ生き延びられないからこそ、そうしてきた。
 ならば、彼の内面もまた同様なのか? ……言うまでもなく、それは否。
 たとえその力、技、そして敵を殺す手際が非人間的で、残酷なまでに無機質でも。
 お前は人で、仲間なのだと。生きてくれと願われ、約束を交わしたならば。
(……ヴィクティムのやつ、完全に頭が血が上ってるな)
 兵士として考えれば弱くなったとも言える変化。それはこんな思索をも生む。
 率先して戦いに臨むハッカーの、らしくもない前のめりさに対する怪訝と呆れ。
 戦場には不要だ。彼もまた、どこかの影を同じように駆けているのだろう。
(まあ、ならさっさと片付けちまえばいい。それで話は終わりだ)
 細かいことはあとだ。敵を殺すことに、今も昔も感慨はない。抱くこともない。
 匡が足を止める。高精度カメラめいてズームした先――彩られた巨躯の兆し!

「よおよお、天下に憚る大泥棒よぉ!!」
 突然の大音声! ネグルに気を取られていた石川五右衛門は、声のほうを見やる。
 徒手空拳である。挑戦的な笑みを浮かべ、ヴィクティムがその身を晒していた!
「いっちょ俺と技比べしようや。それとも、俺みたいなガキは眼中にないかい?
 さもなきゃ――煙をしゅうしゅう撒き散らすやつぁ、やっぱ腰抜けってことかね?」
 石川五右衛門が目を見開く。神の仔の血を得ようがなんだろうが、本質は変わらぬ。
 獣じみた咆哮。飛びかかろうとした巨躯に、関節を狙った遠方からのスナイプ!
「おい、挑発はいいけどもう少し自分のこと考えろよ」
 通信機越しの匡の言葉。ヴィクティムはこれを黙殺し五右衛門を手招きする。
 距離を詰めさせねばならぬ。奥の手の兵器で確実に焼き尽くすにはそれが必要だ。
 だがそれは危険な賭けでもある。いまのヴィクティムはそれに臆しはせぬ!
「つまんねぇなぁ小悪党! 何から何までつまらねぇ!」
『俺様をぉ、嘗めるなぁああああああ!!』
 再びの咆哮! すかさず、ネグルはペネトレイトブラスターにエネルギーをチャージ。
 石川五右衛門はもはやネグルを無視し、ヴィクティムへと弾丸のように突き進む――!

 ――ZANK!!

 その時、空高くから、柱のように太く長く伸びる光が、降り注いだ。
『――あ?』
 光の柱は、余さず石川五右衛門を貫いている……!
『が、がぁああああっ!?!?』
「おいおい……なんだよ、それ」
 さしもの匡も呆れた声を出す。ヴィクティムは、悶え苦しむ獲物を鼻で笑った。
「やっぱりつまんねぇ。所詮は信長っつー、デカい力に巻かれた煙ってことかい。
 お前みたいな小物にゃ過ぎた切り札だぜ、衛星兵器(こいつ)はよ」
 然り。降り注いだのは、世界の壁すら超えて来たる秘匿破壊兵器!
 雨のように光芒が来る。何もかもを滅ぼすがゆえに、その名は"ANNIHILATOR"――!!
『お、が、がぁああ……!! て、手前ぇらぁあ!!』
 石川五右衛門は、もがき苦しみながらも光の雨をかわそうとする。
 そうはさせないのが匡だ。弾丸は最小、かつ最大効率。狙いはいずれも最適。
「レーザー、ね。まったくなんてもん出してくるんだよ……まあ、いいか」
 いつもどおり、やれることをただやるだけ。
 防御? させぬ。もともとそんなことは出来ない破滅兵器だが。
 回避? させぬ。神の仔の血があろうがなかろうが、関係ない。
 弾丸はそのために。彼奴が取る行動のすべてを彼は予測している。
「手詰まりだ。再度、閻魔の裁きを――」
 最大威力の弾丸を心臓めがけて構え、しかしネグルは引き金を引く指を止めた。
 そしてヴィクティムと匡をみやり、もう一度石川五右衛門の背後を見る。
「――受ける前に、どうやらお前に下る鉄槌は、もう一つあるらしいぞ」
 そこに、静かに怒る、灰色の魔剣がいた。

 ……もとより、彼はその死人じみた無表情に反し、邪悪に怒りを抱く熱血漢である。
 彼をよく知るものならば、それが心からの激憤であると知っている。
「――天下御免の大泥棒」
 三人もまた同様。ゆえに、誰もが彼の姿を認めて訝しむことはなかった。
「奪いに奪って荒らしに荒らし、享楽至極を極めて生きて。
 自由を謳ったおまえには、幾多数多のツケがある」
 握りしめる拳に、ばちばちと青い稲妻が走った。
「奪って与える、大いに結構。だがそれも、お前が義賊ならばこそ」
 ヴィクティムは肩をすくめた。端役を名乗る身としてはこれこそまさに見ものだろう。
「しかしてしかし、奪ったそれも、人が身命賭した財」
 ネグルはうなずいた。正しき怒りを知る彼は、それをぶつける意味を知るゆえに。
「応。此度、ツケを貰いに参じたは――我ら猟兵、そしてこの身は名もなき唯の灰色」
 壥・灰色。撃力を満たすその姿を、匡はどこか眩しそうに目を細めて見た。
「泣いた民草、怒る施政者。万里に座した人々、願いを一つに集めらば……」
 呼吸。灰色もまた、三人を見る。
「光注ぐ鉄火場に、この身ひとつで失礼仕る」
 言葉はない。振り下ろすべき鉄槌は各々の手の中に。
 派手を好まば、思うまま、咲いて弾けて天まで届け。手向けにするは最大最強の破滅の威力!
「恭順を選んだ時点で、俺とは格が違うってこった」
 ヴィクティムは、破滅兵器の出力を最大にし光を降らせた。
「貴様には地獄すらも生ぬるい。さらばだ、小物」
 ネグルは引き金を引き、破滅の風を弾丸とした。
「――どうでもいいさ。敵は殺す。お前も例外じゃない」
 匡は引き金に想いを込めぬ。だが、必殺の決意は常にそこにある。
「――壊鍵、『爆殺式(デトネイター)』……起動ッ!!」
 そして魔剣は地を穿つ。天より来たる光に応じるかのごとく。
 弄ばれた霊峰の大地がゆらぎ、撃力は樹海すべてを伝い、そして波が還る。
 衝撃浸透! 巨体を天へと打ち出し、悪鬼は風と光と弾丸に貫かれ――!
『…………!!』
 汚らしい断末魔すらなく、怒りに呑まれ――虚無の彼方へ消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト