エンパイアウォー③~聚蚊成雷、餓鬼の毒
サムライエンパイアの存亡を賭けた大いくさ、エンパイア・ウォーいよいよ開戦!
だが、決戦のための道のりは易くはない。
信長軍に数多の猛将あり! その一、上杉謙信の軍勢が立ちはだかるのだ!
「……中山道の要衝、『信州上田城』が制圧されてしまったようなのだ」
グリモア猟兵、ムルヘルベル・アーキロギアは深刻な面持ちで語る。
このままでは、中山道方面を進む軍勢に大きな痛手を与えられてしまう!
「我ら猟兵が先んじて信州上田城を攻め、敵軍の力を削ぐ他にないだろう。
とはいえ、その全てを一度に相手取るのは自殺行為。ゆえに、オヌシらには主力部隊の撃滅を願いたい」
いわば、進むべき道の「前掃除」といったところだろう。
その主力部隊とは、『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』で構成されたオブリビオン部隊のことだ。
「彼奴らは城の周囲に展開し、魔軍将からの指示を待っている状態である。
周囲は山岳地帯ゆえ、奇襲するための起伏には事欠かぬであろう」
禍鬼は数十体といったところだが、主力を構成するだけあって、毒の尾や紫雷といった危険な能力を持つ強敵。
いかに地形を活用するかが鍵だ、と賢者はアドバイスする。
「来たる決戦にひとりでも多くの兵を送り届けるためにも、こういった前哨戦が肝心である。
“戦争は誰が正しいかを決めるのではない。誰が生き残るかを決めるのだ”。
とある哲学者の言葉だ、オヌシらの健闘を祈る」
賢者が本を閉じた時、転移が始まった。
唐揚げ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
唐揚げです。そんなわけでまとめいってみましょう。
●目的
『信州上田城』の上杉軍戦力を削ぎ、中山道方面軍の安全を確保する。
●敵戦力
『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』数十体(集団戦)
●備考
敵は城の周囲の山岳地帯に展開している。
地形を活用することで有利が得られるかもしれない。
こんな感じです。
なお戦争シナリオであること、また当方の執筆環境の都合により、普段より採用数を絞る予定です。
どの点ご理解の上、ご参加をお願いいたします。
ではみなさん、地の利を得つつよろしくお願いします!
第1章 集団戦
『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』
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POW : 伽日良の鐵
【サソリのようにうねる尻尾(毒属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 欲欲欲
【血肉を求める渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ : 鳴神一閃
【全身から生じる紫色に光る霆(麻痺属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:ヤマモハンペン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●信州上田城周辺・山岳地帯
どろどろと、黒雲が渦巻き不穏な稲光を投げかけていた。
いかにもそれは天然自然のものにあらず、禍つの鬼が招ばいしこの世ならざる紫雷なり。
見よ。毒の尾を震わせ、殺戮への飢えにしゅうしゅうと獣じみて吐息漏らす鬼の群れ!
あれなるは軍神の傘下に降りし恐るべき鬼神ども。
鳴神の力従えし飢えたるものどもに、いかにして争うか?
是は本懐にあらず。されど吉兆占う大いくさの火蓋なり!
●
プレイング期限は適当なところで締め切ります。ご参加はお早めに。
ロク・ザイオン
※ジャックと
そういう「機能」も、あるんだな。
(森の中だ。
その上今の自分には、ジャックに貰った雷光がある。)
……ちょっと、楽しい。
じゃあ。
キミの体は、預かった。
……おーば!
(いつもよりも尚の事、負ける気が、しない。)
(【野生の勘】で森の中の病を捕捉。
全速で飛翔、「燹咬」で蠍を貫いては尾の攻撃範囲から全力で離脱する。
飛ぶ光は目立つだろうが、それを追わせて尾を振り回しにくい場所へ誘い込めるだろうか。
鬱蒼とした山間、視界の狭い木立の奥。
自分が最も得意とする戦場)
病は、灰へ。
森の糧になれ。
(雷光と灼熱。
二人分の一閃で、敵を穿とう。)
ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)
――君の力を借りた時、着想を得た。
君が"本機の剣"となり手を貸してくれたなら逆もまた然り。
今回は本機が"君の鎧"となろう。
("Cyber JACK-et"。自身を任意の対象の鎧へと変形・装着させ戦闘行動を行う。)
今の本機は意思持つ君の鎧。
支援は任せろ。オーヴァ。(ザザッ)
(【ダッシュ】での速度向上、【視力・情報収集・学習力】での情報支援、【迷彩・目立たない】でステルス化――ロクの行動を全力支援する。
敵の霆は雷光にて相殺、ロクの苦手な遠距離の敵はファンネルで火線支援【援護射撃・スナイパー】。)
霆には霆で対抗しよう。
我々の雷霆と閃光が如何なる物か、目に焼き付けるがいい。
(ザザッ)
●森を駆ける
かつてアックス&ウィザーズにおいて、強大な魔神と相対した時、ふたりはこれまでと違う戦い方を選択した。
森を駆け、病を灼く狩人──ロク・ザイオンはその身を鋼とし、刃とし、己を相棒に任せた。
相棒が変じたその刃を振るい、ジャガーノート・ジャックは万に等しい邪悪を打ち滅ぼしたのだ。
《──あの時、君は本機の“剣”となってくれた。ならば今度は、本機が君の“鎧”となる番だ》
そう語るジャガーノートの全身に、幾何学的なレイラインが走り、走行の亀裂からサイバーチックな光が溢れ出す。
驚くロクの目の前で、重厚だがスリムな鎧は完全に分離し……そして、パーツとなったそれらがロクの周囲に漂う。
「ジャック、これは──」
《──外装変形完了、電脳体置換……》
まるで磁力に吸い寄せられるように、ジャガーノートでありジャガーノートであった鎧が、ロクの全身に着装されその身を鎧(よろ)う!
「……そういう“機能”も、あるんだな」
《──君の力を借りた時から着想を得た。いまの本機は、意思持つ“君の鎧”だ》
頭の中に響いてくる声に、ロクは頼もしそうに……そして楽しそうに微笑む。
周囲は森。そしていま、この身には相棒が一心同体のように在る。
ジャガーノートの雷光が、己のチカラとしてこの手の中に在る。
それはとても頼もしく、そして……そう、“楽しい”のだ。
《──支援は任せろ、オーヴァ》
「わかった。キミの体は預かる。……おーば!!」
そして雷光と閃光がひとつに重なり、風よりも速く森を駆ける。
負ける気がしない。相棒は己で、己が相棒なのだから!
深い森の中、暗闇の中にどろどろと光り煌めくのは、禍々しき鬼神の紫雷。
彼奴らは強壮であり、狡猾であり、なによりも飢えていた。
何に? ……殺戮と、蹂躙と、暴力にだ。
だからおよそ三体の鬼神の群れは、凄まじい速度で迫る何者かの気配を即座に感知したし、それが天敵のものであることを本能的に理解した。
猟兵! オブリビオンの天敵にして仇敵! 相容れぬもの!
毒の尾が鎌首をもたげ、群れの周囲に稲光が散り、まんまとやってくるであろう獲物を待ち構える。
殺戮の気配に悪鬼どもの目がギラつき、そして手ぐすね引いた毒と雷の顎(あぎと)に、獲物は間抜けにも突っ込んで──。
「「「…………!?!?」」」
来ない! だが獲物の気配はすぐ近くにある!
どこだ。獲物はどのようにしてこちらを察知し、そして消えた!? 気配を辿り、この尾でその身を貫いてやる!
「迂闊、だぞ」
狩人の声が密やかに響く。
直後、空を切った毒の尾を、鋭い鋼の刃がざっくりと切り裂いた!
「「「!!!!」」」
近い! いつのまに、どこから!?
鬼どもは素早く身を退けた獲物=ロクめがけ、帯電していた紫雷を鞭めいて放つ! ZZZZTTTT!!
《──その攻撃は“知っていた”》
鎧=ジャガーノートが明滅し、ばちぃ! と電撃によって雷霆を防御的相殺。
さらに追いすがる尾をレーザーファンネルで焼灼牽制し、ロクの離脱をサポートする!
「「「……!!!」」」
「外さない。逃さない。病は、灼く」
ロクはその神経と動体視力を全力活用し、超人的速度で森を駆け、後退しながらの離脱戦法を継続。
火砲と電撃でこれをサポートし、敵の行動を演算予測し思考速度で伝達するのがジャガーノートの仕事だ。
《──我々の閃光と雷光が如何なるものか》
ステルス機能、アクティブ。ロクの姿がじわりと歪み、光学的に溶け込み姿を消す。
鬼どもはたじろいだ。ロクとジャガーノートは──その背後!
「目に焼き付けて、森の糧になれッ!」
一閃──森の暗闇を、鋭く強きふたりでひとつの閃光が、煌々と灼いた!
禍鬼は混乱する。何故だ、何故我らの尾が! 毒が、雷霆が届かない!?
なぜ斯様にいいように引き寄せられ、一方的に攻撃され、あまつさえダメージを受けている!?
刈り取り殺戮すべきは我らのはず。
もてあそび蹂躙しくびり殺すのは我らのはず!
何故だ、何故……!!
「わからないなら、教えてやる」
ひび割れた声がどこかからした。刃はすでに、雷光を纏い大気を焦がして走っていた。円弧の軌跡。
《──本機と相棒は、誰よりも強いからだ──!》
かくて邪悪なえう鬼は、殺戮に飢えし病は狩り取られた。
それこそ、彼奴らを蹂躙せし猟兵たちの反撃の嚆矢に他ならない!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
霑国・永一
女将さん(f02565)と
生き残った奴が正しいと提唱できる
いやぁ分かりやすくていいなぁ
女将さんも血が騒いじゃうかい?ここは最早戦場だし、旅館みたいに取り繕わなくていいし、思う存分殺したり殺されたりしようじゃあないか。狂気的にねぇ
せっかくの地形だ、こういう所は上を取った方が有利だからねぇ
静かに山の上の方へ移動して待機、頃合いを見て狂気の分身を発動して次々上から奇襲させて自爆させまくろう。人間土砂崩れに注意さぁ
巨大化した奴には分身を集中的に多数飛びつかせて自爆させるよ
『〇番俺様!死ぬぜー!』
ああ、女将さん。これだけ混乱作ったんだし、楽に暴れられるかもしれないよ?その醜い血に飢えた鬼を見せて貰おうか
千桜・エリシャ
永一さん(f01542)と
私お掃除は得意ですのよ
いつもお仕事でやっていますもの
…なんですの?別に私は取り繕ってなんか…
まあ、いいですわ
あなただって遠慮する必要はありませんからね?
あら、中々いい策ではありませんの
分身自爆だなんて相変わらず悪趣味ですが
あなたにお膳立てされるなんて
明日は嵐かもしれませんわね
…なんて
癪ですが好機は見逃す私ではありませんの
それでは遠慮なく…
高速移動で敵に視認されないよう駆け下りて
爆風の煙に隠れるようにして肉薄
死角から呪詛のせた刃で首をいただきましょう
敵の攻撃は永一さんの分身を盾にしてやり過ごしますわ
これくらいやっても構わないでしょう?
さあ、いくつ首を持って帰れるかしら?
●鬼気迫り狂い咲くは
阿鼻叫喚の地獄が生まれていた。
殺戮に酔いしれる飢えた鬼どもが、ついに獲物を見つけ襲いかかったのか?
……否である。むしろ逆だ。
阿鼻を以て叫喚するは鬼どものほうであり、斬り裂かれ翻弄されるのも禍々しきものどもである。
あちこちに前触れなく爆炎が生まれ、鬼を飲み込み、その苦痛と絶叫によってなおもごうごうと燃え上がる。
……爆ぜて飛んでいたのは、人であった。
全て同じ顔、同じ背丈、同じ髪に同じ表情をしている、男たちだ。
それは霑国・永一という男によく似た、しかしまったく別で、だが同じ存在(モノ)だった。
なぜなら、どいつもこいつも──狂ったように笑って、喜びながら、山肌を駆け下りて死んでいるからだ。
『25番、俺様! 死ぬぜぇー!!』
『ヒャハハハ! 派手に死にやがったなざまあみろ! さぁ俺様も死ぬかぁ!!』
KBAM! KBAM!! KA-BOOOOOM!!
狂ったような目で、狂ったように笑い、狂ったような爆炎の火種となってぶっ散らばっていく。
いくらユーベルコードに生み出された分身とはいえ、正気の沙汰ではない。
それを命じるほうも。従うほうも。どちらも、どいつもこいつも、完全に狂っている。
「まったく本当に悪趣味ですわね。ええ、ええ、相変わらずひどい有様」
狂気の自爆特攻攻撃で浮き足立つ鬼どもの狭間を、言葉と裏腹な薄い笑みを浮かべながら、桃色の風が胡蝶を連れて疾走する。
速度に溶けるようにして胡蝶はほどけ──真の姿を取り戻し──屍人の怨念が、桜色の鬼にまとわりつき、おのれらの仲間を求め、涼やかな屍人の怨嗟を残響させる。
「……まあ癪ですが、私、好機を見逃すほどお人好しではありませんの。
そういうわけですから、遠慮なく──首を、戴きますわね?」
鬼すらも震えさせるほど恐ろしく、しかしてぞっとするような色気のある、艶やかな笑みを浮かべる桜の鬼。
千桜・エリシャの言葉は、幾重もの刃と、怨念と、吹きすさぶ桜花のあとに密やかに響いた。
狂気の嵐が吹き荒れるよりも、やや前のこと。
城を一望し、その周辺にわだかまる鬼どもを黒々とした点で認められる、小高い山の頂上。
「生き残った奴が正しいと提唱できる、か。わかりやすくていいねぇ。
女将さんもそう思うだろう? 血が騒いでいるんじゃないかい?」
何もかもを見透かすような、それでいてなんの興味もなさそうな……永一の軽薄な笑みは、そういうものだ。
水を向けられたエリシャは、狂った盗人のねじれた眼差しを、しかし涼風のように受け流してみせる。
「さあ? 鉄火場に立つのは私にとって呼吸と同じようなことですもの」
「違いない。旅館で働く女将さんの姿は、あくまで仮のものだもんねぇ」
取り繕う必要はないさ、という狂人のセリフに、ぴくりとエリシャの眉が揺らいだ。
……永一の軽薄な笑みは、不思議だ。
何もかもを見透かしていそうで、しかしなんの興味もないかのように醒めている。
「……なんですの? 私が何を取り繕っていると?」
「さあてねえ」
みなまで言う必要はない、と言わんばかりの永一の笑みが、なおさらにエリシャの堪忍袋をもてあそぶ。
いや、あるいは自分は、この男を……その首を伐って、そして肉と骨を──。
「思う存分殺したり殺されたりしようじゃないか。なあ、女将さん?」
「──……ええ、そうですわね。殺されるのは勘弁ですけれど。
お掃除なら慣れていますもの。お仕事でいつもやっていますから」
思索をやめる。永一の笑みは変わらない。
「あそこにさあ、辺り一面爆弾でも落として所構わず起爆したら、楽しそうだと思わないかい?」
狂った盗人は、まるで楽しい馬酔木を思いついた子供のように、何気なくそう言った。
エリシャはそれが可能なことを知っている……彼自身の裡に在るモノの分身がそう出来ることを知っている。
「あなたにしてはいい作戦ですわね。けれどとどめには足りませんかしら?」
「そこはそれ、適材適所さぁ。得意なんだろう? ”お掃除“」
「……あら。まさか私のためにお膳立てしてくださると?」
永一らしからぬ殊勝な提案に、エリシャは心底意外そうに言った。
「変わったこともありますわね。明日は嵐かしら」
「嵐ならこれからすぐ起きるさあ」
分身を生み出しながら、永一は笑った。エリシャは眉根を顰めた。
「血に飢えた醜い鬼の、阿鼻叫喚の嵐がね」
……そして今、風となって鬼を斬りながら、エリシャは思う。
首尾は上々だ。奇襲は成功し、鬼の首をふたつみっつと刈り取った。
少なくない個体が順応し反撃を始めたが、それもまた良し。
盾には事欠かない。狂ったあの男の分身を利用してやればいい。
「これぐらいは別にいいでしょう? ──だなんて」
『ハハハハハ! 俺様を盾にすんのかよ? クソみたいな女だな!』
「よく言われますわ」
尾に貫かれて死んだ分身を一瞥すらせず、エリシャは剣を振るう。鬼の血が飛沫をあげる。
欲に飲まれた鬼が、見越すほどに体躯を膨れ上がらせ咆哮し、そこに分身たちがまとわりついた。爆炎。
「まあ、大きな図体ですこと。斬りがいのある首ですわ」
──血に飢えた醜い鬼の、阿鼻叫喚の嵐がね──。
「……ええ、ええ、いいでしょう」
爆炎を纏いてなお立ちはだかる鬼を見上げて、鬼は笑った。
「たっぷりと、剣の嵐を吹かせましょうか」
そこにはもはや、同じ餓鬼しかいない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
……、
防御に徹するって約束してくれるよね
無茶はしないで
そっと掴んだ服の袂から手を離して身を潜める
辺りを広く見渡せる樹の上、目立たない場所に位置取り
ヨハンと敵の様子を注視
戦場全体の敵数は数十
ひとりで陽動なんて、本当はすごく心配
でも、そう思うことが
『見くびられていると感じる』ことに繋がっちゃうんだろうな
……大丈夫、信じてる
敵が挑発に乗って攻撃態勢に入れば、槍を構えて一気に降下
攻撃阻害が間に合いそうなら木陰から死角を狙いたい
【早業】で反抗の隙も与えない
複数の敵が挑発に乗っていたら【範囲攻撃】に切り替え
そんなに血肉に飢えてるなら共食いでもしててよ
ヨハンには手を出させない!
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
水晶屍人と比べれば、随分とやり易い
彼女も心痛めることなく戦えるだろう
道を塞ぐ岩みたいなものです
砕いて野ざらしにしてやりましょう
二人で動く利点を最大限に活用しましょう
防御に徹して敵の目を惹くので、オルハさんは潜伏して隙を突いてください
『蠢闇黒』から闇を喚び自身の周囲に障壁を展開する
<呪詛>と<全力魔法>で防御に特化させ、姿を見せる
血肉を求めるならかかってこいよ
お前らの攻撃など届かないだろうがな
安い挑発でも乗ってくるのなら、その間に彼女が穿つと信じる
間を寄せられれば【影より出ずる者】を
むざむざ的になる気もないので俺も隠れますよ
影を選び身を隠す
それでも彼女には伝わるはずだ
●想いの膨れる先に終わりは無く
互いに想いを伝えあって、誓いあって、ぎこちなくも"らしい"ことをして。
満たされている。はずだ。この高鳴り、暖かな想いは間違いなくそうだ。
……けれどなぜだろう。満たされれば満たされるほど、伝えれば伝えるほど。
新たな想いが芽生えてきて、すれ違って、やっぱりまだ足りなくて――。
「……」
「大丈夫ですよ、オルハさん」
ヨハン・グレインは、オルハ・オランシュを見つめて静かに言った。
かつての彼ならば、『どうして服を掴むんですか』なんて素っ頓狂にもほどがあることを言っただろう。
だが、もうそんなことは――といっても、まだまだ彼は未熟だが――しない。
彼女が何を思っているのか。どうしてそんなに心配そうな顔をしているのか。
問わずともわかる。当然だ、自分はこれからひとりで陽動を務めるのだから。
「……言わなくていいってわかってるけど、言うね」
「……」
「防御に徹するって、約束してくれるよね。無茶はしないって――」
言いかけて、オルハは言葉の落とし所を見失い、視線を彷徨わせた。
ヨハンは何も言わない。彼女が、己の想いを言葉にするのを……あるいは、それを諦めるのを待つ。
「…………うん。やっぱり、言わなくてよかったね」
「でも、正直うれしいですよ。……答えはいりませんよね?」
オルハは何も言わずにうなずく。ヨハンもまた首肯し、今度こそ身を翻した。
――言うまでもありません、無茶をするような性質でもないので。
きっと彼は、そんないつも通りの言葉を、求めれば吐いたのだろう。
だがなんの意味があろう。言葉にするまでも必要ない、はじめからそうだ。
けれどこうして、その無意味なはずの言葉を求めて、結局悔やむ。
(恥ずかしいな。まるで、私がヨハンのことを信じられてないみたい)
ひとり樹上に取り残されたオルハは、息を潜めつつ自嘲する。
ああ、この想いも、言葉にすればきっと……彼は不器用になにか言ったのだろう。
頑張らなくていい。あなたはそのままでいいと言われた。けれど。
「……だめだめっ。気持ちを切り替えなきゃっ」
木々の擦れる音に隠れる程度の小声で言うと、オルハは己の頬を張る。
いまは不要だ。ただ、己のなすべきことを、なすべきときに為せばいい。
――彼はそのために往った。今の"なすべきこと"は、その時を待つことだ……。
敵は鬼だ。殺戮に飢えたる、純然たる悪。この世に生じた黒点じみたモノ。
哀れな水晶屍人などではない。ならば、自分も彼女も、はるかにやりやすい。
(本当、丸くなったものだ。この状況で自分以外の誰かのことを慮るなんて)
内心で苦笑しつつ、ヨハンは外套を翻し、影から影へと飛び渡り、着地する。
彼女に比べればまるで不出来。それでも彼が、彼の唯一持つ根性で鍛え上げたものだ。
敵は鬼だ。ただ飢えたる悪鬼――ならば、道を塞ぐ岩となんら変わらぬ。
「砕いて野ざらしにしてやるよ。……お前らだって、そのつもりなんだろう」
立ち上がり、言い放った彼の見据える先に、いくつもの赤黒い眼光が灯る。
鬼である。獲物の気配を察知し、数体の鬼が意地汚くも駆けつけたのだ。
どろどろと頭上で黒雲がわだかまる。煌めく紫雷が――ZZZZTTTT!!
「ッ」
疾い。事前に備え、周囲の闇の障壁を張っていなければ危なかったか。
まさに光の速度で降り来たった鳴神の鉄槌を弾き、ヨハンは眼鏡をかけ直す。
精神をフラットにしろ。術式を手放すな。恐れを見せるな。焦りもまだ然り。
鬼どもが姿を表す。毒の尾を揺らめかせ、獲物を脅かし取り囲む。
「……どうした。脅かしだけで手一杯か。噂の鬼もそんなものか」
ZZZZTTTT!! 再びの雷霆! だが二度も不意を打たれるヨハンではない。
障壁を局所集中させてこれを防ぎ、間隙に黒き闇の矢を一条放つ。着弾!
「血肉を求めるならかかってこい。お前らの攻撃なんて――」
ZZZZTTTT!! 三度の雷霆、同時に二条! 見え透いた手だ!
受け止めるのではなく受け流し、雷撃の魔力を闇に取り込み――ZANK!
『!!』
「……届かないし、こうして"投げ渡す"ことだってできる」
ヨハンは攻撃していない。ただ、雷霆の指向性を"捻じ曲げた"だけだ。
魔力に干渉を受けた雷霆は、黒々とした闇の雷となり、鬼を打ち据えた!
「さあ、それでもかかってくるなら、いくらでも来い。相手になってやる」
ぐるる、と、餓狼のごとき呻き。さらにいくつもの眼光が闇に灯る。
(――あとは、どこまで耐えられるか。やるだけやるとしよう)
一瞬の静寂――そして、鬼どもは咆哮し、四方から獲物へ殺到した!
「!!」
オルハは見た。雷霆の煌めき。最初の三度はやや間を開けて。
その後、断続的な光と撃音が響き渡る。戦闘が始まったのだ!
(いま――いや、ううん。まだ、まだだ)
ウェイトリアイナを握りしめる手が、白くなるほどに力を込める。
大丈夫だ。信じろ。彼は――ヨハンは、決して無理をしない。
負けることもない。まだ敵は惹きつけられる。だから、心臓よ、鼓動を早めるな!
(私はヨハンを見くびってなんか、ない。信じてるんだから)
不安よ去れ。飛び出したくなる我が両足よ、いまは巌となれ。
一瞬。残光。
二秒。雷鳴。
三拍――今だ。今しかない。ここが潮流だ!
「――は、ぁあああああっ!!」
裂帛の気合! 翼をはためかせ、オルハはいま空舞う風となる!
そして見た。闇の障壁を砕かれ、雷撃の熱気に外套を焼かれた彼の姿を。
傷は? 無い。当然だ。彼は耐え忍んだ。無茶はしていない。ああ、よかった。
「……それ以上、ヨハンには手を――出させないッ!!」
だが、それとこれとは話が別。湧き上がる憤怒を刃に込めて、振り下ろす!
『!!!』
「邪魔っ!」
一閃! 着地際に、手近にいた禍鬼を頭上からなます斬り!
尾が奔る――ああ、遅い。遅すぎる。対して我が身のなんたる軽いことか!
「そんなに血肉に飢えてるなら――」
三段突き、入った。鬼が血反吐を吐きぐらりと倒れ伏す。
その身の影から新たな敵! オルハは――否、避けぬ! なぜだ!?
「共食いでもしててくださいよ」
言葉は彼が次いだ。ヨハン。影から放った黒闇によるインターラプト。
のたうつ黒き蛇に絡め取られ、鬼の体幹が揺らぐ。迅風は意識の速度で。
「ヨハン!」
「後はおまかせします」
ふたりはアイコンタクト。ヨハンは躊躇なくその影を外套めいて己に纏う。
それでいい。敵の狙いがぶれる。そこをオルハという矛がかき乱す。
(伝わっているはずだ、彼女には)
(大丈夫だよ、わかってるから)
"無茶はしないでください"。
同じことを彼は言おうとしていた。けれど言わなかった。
わかっている。これは前哨戦。己らに倒せる手勢には限界がある。ならば。
「――死にたいのからかかってきて。時間が惜しいから!」
今はこの敵を、一秒でも早く、一瞬でも疾く、屠り去るのみだ――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎
僕の櫻の故郷が壊されるのは嫌だよ
君が傷つくのはもっと嫌
はぁ…僕の心配もしらないでそんな事
けれど櫻は行くのだろう
なら僕のすることはひとつ
でも
平和な世界に咲く君(桜)が一番、綺麗だよ
不意打ちに備えオーラ防御の水泡で櫻と僕を包み込む
僕だって守りたいんだ
戦う君の背を、常に守る
風は揺らぐ尾鰭で感じてみよう
櫻に向けた歌唱に込めるのは鼓舞
鬼に向ける歌唱には
動き鈍らせる誘惑を添えて
風裂き歌う「魅惑の歌」で動きを止める
毒が櫻を害したなら
音色転じて「癒しの歌」で傷を毒を癒してあげる
僕の櫻は毒になど侵させない
だからほら
首をとってきて
はやく一緒に帰ろうよ
どんな首より櫻の無事が一番なんだ
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎
嫌らしい蠍鬼ね
うふふ!
血肉に飢えた鬼の血肉を貪るのもさぞや楽しいわ
戦場には毒より美しい血桜が似合うのよ
木々に身を潜め
毒煙が風に流れるよう風上から攻撃を仕掛けてみましょ
リィ
あなたはあたしが守るわ
第六感を働かせ敵の気配を察知
死角を狙い踏み込みなぎ払い2回攻撃
毒撒く尾から斬り捨て
太刀筋に生命力吸収の呪詛を添え
攻撃を避け躱したなら咄嗟の一撃、怪力込めて力一杯抉り斬る
傷口抉り毒ごと衝撃波で吹き飛ばし
踏み込み咲かす「絶華」
毒も痛みも戦の甘露
もっと斬らせて!昂らせて頂戴よ!
小賢しい毒はリィの歌が癒してくれる
毒の尻尾も魅力的
でも
やっぱり首ね
王子様が首をご所望よ!
鬼の首、頂戴!
●まるで底が抜けたかの如く
雷霆が鳴り響く。鬨の声、打ち鳴らされる矛と矛、そして断末魔。
世界を変えど、敵は幾千幾万あれど、戦場の音はいつも同じようなものだ。
殺す者がいて、殺される者がいて、血が流れて命が潰える。
無情である。だがそのひりついた空気が、どうしようもなく心地よい。
甘やかであるとさえ言っていい。嗚呼、きっと己は狂っているのだろう。
この熱は、どうしようもなく退廃的で、邪悪で、あってはならぬのだろう。
いいとも。それでも世界で少なくともただひとりは、それをよしとしてくれる。
受け止めてくれる。見ていてくれる。歌い、謳ってくれるのだから。
「うふふ――うふふ!」
だから、誘名・櫻宵は笑っていた。
笑いながら影から躍り出て、風を味方につけて剣舞に身をおいていた。
嗚呼。嗚呼。この高揚。突き刺さる敵意と殺意の渦すら愛おしい。
愛だ……これは紛れもなく愛欲。愛情。燃え上がるような炎に他ならぬ。
「でもね、ごめんなさい。あたしにはもう大事なひとがいるの」
だから笑いながら斬る。迫る尾を火花散らして受け流し、これを裂く。
雷霆が迸れば、首を傾げて光の鞭を避け、桜を散らしながら一足を踏み込む。
斬撃。鋼じみた禍鬼の身が裂ける、この手応えすらも愛おしい。
呪詛が流れ込む手触りが愛おしい。
紙一重で攻撃を避け、応報をもたらすスリルも。
吸い上げられる甘露のような生命力の味わいすら。
怪力に軋む骨肉の音も、きりきりと鳴る五体の悲鳴ですら。
「もっと斬らせて。昂ぶらせて頂戴よ! 足りないの。足りないのよ!」
呵呵と吠え、花のように大笑して、狂い溺れて櫻宵は泳ぐ。あがく。
戦場の狂気を。生と死の間を。鬼どもの隙間を、桜舞う暗闇を。
「――だって、鬼は外道の輩なんでしょう。畜生にも劣るモノなのでしょう。
ならあたしを満たしてよ。もっと。もっともっと、もっともっと! もっと!!」
この熱(あい)を。この愛(ぞうお)を。
振るわれる剣は不可視にして不可避。空間すら断つ異常の太刀。
銘は絶華。止むこと無く咲き誇るからそう呼ばう。
諱は黄泉。狂った熱を駆け抜けて、敵を葬送るからそう呼ばう。
ああそうとも。いかにもその銘は正しい。
満たされぬなら、それはまさに、"絶"対に咲かぬ"華"なのだから。
愛するひとの故郷を壊され、侵され、蹂躙されることを望む者がどこにいる?
たとえそこに残る記憶が忌まわしいもので、己にとって妬ましいものでも。
関係はない。故郷とはそういうものだ。一部なのだ。魂の在処なのだ。
でも、でも。そんなことよりも、あのひとが、彼が傷つくのは厭だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。心配で、怖くて、なにより"羨ましい"。
彼の何もかもが愛おしい。彼を愛すること自体が愛おしい。
ならば、傷つけることすらも己のものでありたい。
傷つけたいのだと? 否。否否否。違う、そうじゃない。そんなわけがない。
"けれども傷つけるなら、僕以外は厭だ"。
「だから、櫻。傷つかないで。苦しまないで。悲しまないで」
歌い、謡いながら、リル・ルリは謳う。ねじくれた想いのままに。
汚らしい。おぞましい。狂っている。そうだ、自分は狂っている。
狂わされてしまった。狂うことが出来た。彼のすべてに。彼の存在に。
櫻! 嗚呼、誰よりも愛しきひと!
櫻! 嗚呼、けして傷つくことなかれ!
櫻! 嗚呼、望むならば、その生命すらこの手で――。
「……でも、でもね、櫻」
声はひそやかに。込める想いは暖かく。叶わぬ願い。硝子細工のような脆い想い。
「――平和な世界に咲く櫻(きみ)が、一番綺麗だよ」
口の中で呟く。だって、彼はそんなことを望まないだろうから。
だから唄おう。鬼すらも、降り注ぐ雷霆すらも魅了する唄を謳おう。
閉じ込められ、忌まれ、妬まれたこの熱情(こえ)で惑わそう。
黒雲が煌めく。紫雷が降る。だが己は灼かぬ。ましてや櫻をや。
だってこの身には燃えているのだ。何よりも熱く紅き炎が。
愛の炎。ああ、それは水に生まれ水に死ぬ己には毒である。
毒だとも。この甘さ、狂おしさ、苦しさはまさに毒だ。
きっと己を滅ぼしてしまうのだろう。それは厭だ。でもそれもいい。
櫻とともにいれるなら。この想いに殉じられるなら。それもいい。それは厭だ。
「櫻は僕のものだ。櫻を毒していいのは、僕の愛(どく)だけだ」
退け。水泡の割れる音が歌声に重なり、毒をも退ける輪唱となる。
「滅びてよ。その首を遺してさ、みんなみんな滅んでしまえ」
ああ。その声を聞いて、愛しいひとが笑っている。
"王子様が首をご所望よ"。
"鬼の首を頂戴"。
嬉しそう。嬉しい。でもね櫻、違うよ。違うんだ。
ほしいのは首じゃない。君の笑顔で、君と一緒にいる平穏で、永遠で。
(けれど君は征くのだろう。愛(たたかい)を求めるんだろう)
なら謳おう。叶わぬ平穏が手に入るように。水の泡で彼を守ろう。
「――僕が欲しいのは、櫻、君の無事なんだよ。だから」
「「だから、君/あなたは、僕/あたしが守る」」
戦場に踊り謳う影は、どうしようもなく狂っていた。
刃を捨てて水の底へと堕ちてしまえば、その望みは叶うのに。
だのに戦う。だからふたりは狂っていた。
けれどもそれが、生きるということでもある。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
紅呉・月都
血肉に飢えた……へぇ
鬼だろうがなんだろうが関係ねえ。
奴らが動き出す前に、ぶっ潰す
山岳地帯の【地形を利用】し、敵の死角から【怪力】を活かした【気絶・マヒ攻撃】を試みる
上手くいけばそのままトドメを刺し、次の敵へ
まだ動けるようなら間髪入れず【鎧無視攻撃】を2撃目にぶち込む
「よお。早速でわりいが…此の地から失せろ」
正面からかち合った場合は敵の尻尾を【武器落とし】で排除
間に合わなければ【見切り、残像、野生の勘】で回避を試みつつ、その辺の【敵を盾にする】
「テメエだけに時間を掛けてる暇はねえんだよ。さっさと燃え尽きろ!!」
ユーベルコードで拘束した敵は山肌に叩付けるなどして怯ませた間にトドメを刺しておく。
●紅焔、燃え盛るは雷霆より煌々と
様々な世界で"東洋"とされる文化圏において、『鬼』という名で指されるモノは多岐にわたる。
それは人外のもの、化外のものの尽くを指す言葉でもあり、同時にひとつのあやかしを指すものでもある。
あるいはヒトの裡に生じる悪心に形を与える呪であり、同時にそれもまたあやかしであった。
ただ、"鬼"という名=呪には、共通してひとつの特徴がある。
強壮。強靭。強大。
鬼とはヒトならざるモノであり、ヒトが届かぬ領域である。
ならばそれの力、意、速、霊、魂――すべてはヒトを超える。
ヒトに鬼は討てぬ。だが、ヒトの日向の隣には鬼が棲まう闇がある。
ならばどうする。ヒトは震えて怯え、ただ鬼を息を潜め逃れるのみか。
否である。刃とは、見えぬ鬼を討つためにこそ鍛(う)たれたものだ。
ならば、刃の化身ならばどうか。――答えは彼の戦いぶりを見れば、わかる。
「こいつで……終わりだッ!!」
ごう――!! 燃え上がる刃が闇を、そして鬼を裂いた。
なんたる苛烈な、それでいて若々しく、まっすぐとした剣閃だろうか。
振るい手の揺らす髪もまた、その残影と同じく、紅く燃えるようだ。
「よお。まだいるんだろ。かかってこいよ。こっちは手間が惜しいんでね」
紅呉・月都の挑発に応えるように、また一体新たな禍鬼が現れる。
一体目は不意打ちで仕留めた。だが二体目はそうもいかぬ。
月都とてひとかどの猟兵。それで全てが済むとはハナから思っていない。
「お前ら、飢えてるんだってなぁ」
じりじりと円を描くように横歩きしつつ、月都はぶっきらぼうに言う。
鬼は無言。あるいははじめから、言葉というものを持たぬか。それもまた鬼。
「お前らはオブリビオン、過去そのものだ。どれだけ求めようが満たされねえ。
正直、哀れにも思うぜ。飢えて暴れたって満腹にならねえんだからな」
だが構える剣はいささかも揺らがぬ。鋒は急所を狙う。
「――わかるだろ。此の地に、いや、この世界に、お前らの居場所はねえ」
鬼が腰を落とした。殺気が――爆ぜる。毒の尾が奔る!
「遅いッ!」
キン! 清らかですらある剣音! 尾を弾き、火花とともに疾駆!
狙いすました雷霆――見え透いている。月都は身をかがめてこれを回避!
焼け焦げた髪の毛を一筋散らしつつ、ぐるりと身を翻し、剣を握りしめる。
「テメエだけに時間をかけてる暇はねえ。さっさと、燃え尽きろッ!!」
紅焔、刃風を得て燃え上がるさまは水面の月の如く。
あるいはそれは、邪鬼を追い落とす人々の祈りに満ちた灯に似るか。
円弧を描いた剣は、はたして禍鬼の首を焼け焦がし斬り落とした!
「次だ!!」
亡骸に構わず月都は奔る。死角から三体目――こそばゆし!
「テメエらみてぇなもんを斬るのが俺の仕事だ。今までも、これからもな!」
蛇めいてうねる尾を一刀のもとに斬り、血を焦がしながら月都は吠える。
「全員まとめてぶっ潰す。何体でもかかってきやがれ!!」
横薙ぎ! たたらを踏む鬼は生存……だが!
「逃さねえよ」
紅焔の鎖が刃から獲物を伝い、それは燃え上がる鎖となって鬼を戒める。
ヒトは鬼には勝てぬ。刃のみがこれを殺す。そして刃は化身を得た。
「――燃えて、灰燼と化して、滅びちまえ」
だから、月都という刃(おとこ)は、がむしゃらに剣を振るうのだ。
成功
🔵🔵🔴
ゼイル・パックルード
似た者同士、かな。しかはさ俺にとっちゃ血肉にいたるまでの仮定も大事でね
地形の利用か
とりあえず上を、相手より高い位置を維持するようにするか
敵と対面したら鉄塊剣で近くの岩や木を砕いて、敵のほうへと向かって転がし、避けるなり受け止めるなりするように仕向ける
避けるにしろ防ぐにしろ、そこからどう動いてくるかを考えておき、本命の風斬り、かまいたちで相手を迎撃する
巨体になられたら更に山を上のほうへと登っていく。戦闘力が上がろうと重くなりゃそんだけ上に来るのに身体を支えなきゃいけないし、一気に来るにしても相応の踏み込みがいるだろ
それを注意して観察しながら、上へ横へとダッシュやジャンプをし、風斬りで攻撃していく
●無間地獄の百万由旬
悪事を働き、徳を積まなかった愚か者、罪人は業火燃え盛る地獄に落ちる。
形や仔細は異なれど、あらゆる世界のあらゆる国、多くの宗教はそう伝える。
信心深くない者ですら、地獄というものを思い浮かべる時は必ず"それ"がいる。
鬼だ。
罪人を罰し、あるいは地獄に堕ちた者が成るという成れの果て。
ヒトならざるモノ。畜生にも劣り、世界にあってはならぬというモノ。
罪深きモノが鬼というならば。
ヒトが持っていて当たり前の倫理(もの)を持たぬモノが"そう"だというのなら。
ああ、いかにも"似た者同士"だろう。自分でもそう思う。
――ただ、やっぱり違う。だって己のこの飢えは、そう……。
ばきばきと音を立てて、大木があっさりとへし折れた。
ずずん――! 地面に倒れたそれが、粉塵を黒雲へ届かんほどに巻き上げる。
禍鬼どもは注意を惹かれる。いかに鬼とて反射には逆らえまい。
「音がすれば気を引かれる。何かが降ってくりゃ避けるか防ぐ。
誰だってそうだ。――だからさ、結局、そいつが隙になるんだよ」
らしくない台詞を言いながら、ぬっと影から人が現れた。
……人である、はずだ。だが禍鬼たちは、"それ"を見間違えた。
「どうした? 同類にでも見えたかい」
それは静かに笑って、暗く沈み、そしてまた消えた。
否、そう思えるほどの速度で疾駆し、剣閃を放ったのだ――疾い。
そして実際、これは彼――ゼイル・バックルードにとっての"二の太刀"である。
大木を断ち割った斬撃はそれに数えぬ。木など動かぬ文字通りの木偶。
影から現れる前、すでに彼はそこに潜んで鬼を一体斬っていた。
そしていま、二の太刀は、ごうう!! という大気の唸りとともにさらに二体を屠り去る。
風斬り。かまいたちすら生じさせる、鋭く細い致命的な刃。
軽くしなやかな刀でなくば為し得ぬこの瞬速の太刀を、斯様な鉄塊剣で満たす矛盾。
尋常の膂力ではない。振り抜く覚悟に至ってはもはや人外のそれ。
いかに相手が邪悪であろうと、過去の残骸であろうと、人は倫理を知る。
道徳を学び、常識を知り、だからこそ人としての"体裁"整えられる。
それは武器であり、鎧であり、枷だ。本能的に人は武器を振るうことを躊躇する。
どんな武道も、そのあって当然の躊躇をごまかすことが初歩であろう。
だが、ゼイルにそれはない。だがら当然のようにこれを振り回せる。
次の瞬間、己が死んでいても"まあいいか"と考えて、あっさりと命を手放す。
狂っていると人は云う。そうなのだろう、どうでもいい。
ただ、この振り抜いたあとの筆舌に尽くしがたい充足があれば、それでいい。
『――!!』
声なき咆哮を以て、禍鬼はその巨躯に邪気を満たし、さらに膨れ上がった。
見上げるほどの巨体。ゼイルは間髪入れずに山肌を駆け抜ける。
鬼の爪がそれを追う。跳躍。すぐ一瞬あとに地面がひしゃげて砕けた。
「わざわざ足場を用意してくれるとは、嬉しいねぇ」
鬼の肌を小虫じみた男が奔る。だが禍鬼は本能的にそれを怖れた。
笑っている。笑いながら鬼の肩を抜け、また一太刀。剣閃一条、吹くは風の波。
「――"それ"に至るまでの過程を忘れちゃあ、せっかくの楽しみが半減するだろ」
ごろりと生首が落ちる。ゼイルはそれに飛び乗り、盾として雷霆を退けた。
そうとも。己は飢えている。血に。殺戮に。死合のもたらす狂熱に。
同じような、されど異なる鬼と、この焔の化身を分かつものはただひとつ。
「俺は、この飢えすらも楽しいのさ――」
ヒトにも鬼にも理解できぬ、焔の影のごとき闇である。
成功
🔵🔵🔴
露木・鬼燈
山岳地帯、ね。
羅刹的にはホームグラウンドってやつだね。
地形を利用とゆーか、割と無理のあるルートを移動。
想定外の位置から奇襲をかけるのがいいかも?
忍体術で木々を潜り抜け、急斜面を駆け上がり…
まぁ、この辺りでいいんじゃないかな?
上を取ったうえで背面を突ける位置っぽい。
跳躍からの自由落下、そして空中から秘剣を放つ!
踊る連結刃で敵軍を斬り刻みながら着地。
忍体術で落下エネルギーを前進する力に変え高速移動。
魔剣で斬り、魔弾で貫く。
敵陣の中を止まることなく移動し、暴れるっぽい!
囲まれた?
そんな時は足元を潜り抜けたり、頭上を駆け抜けたり。
忍なら方法はあるのです。
無差別攻撃だって敵を盾にすれば切り抜けられる。
●忍の本領、あるいは研ぎ澄まされし技の乱舞
駆ける。獣すらも避けるであろう茨じみた道を、風のごとく。
あるいはもしかすると、それはヒトの形をした風なのやもしれぬ。
そんな突拍子のないことを思わせるほどに、彼の足取りは軽く、力強い。
獣道ですらない。草が生い茂り、木々が重なるそれは、明らかな"壁"だ。
だが彼は――露木・鬼燈は、それをなんの気無しに踏破する。踏破している。
「このへんでいいかなーっと!」
心臓破り……いいや、握り潰しそうな急斜面を一足飛びに超えて、一息。
ねじれた松の木に猿(ましら)めいて捕まり見下ろす。見つけた。獲物の背面。
「――あはっ」
毬のごとく身を丸め、みしみしと全身の筋肉に力を込める。充足――発破。
大気を破裂させて忍は幹を蹴り、重力に任せて音もなく落ちていく。落ちていく。
自殺行為である。ヒトであればそうだろう。獣であってもそうだろう。
だが彼はどちらでもない。羅刹であり、そして忍であるゆえに。
『!?』
獲物がいまさら気づく。なるほど、反射神経は思ったより上か。
だが遅い。そして鈍い――もはや秘剣は鎌首をもたげている!
「ひとぉーつ!」
斬! 連結刃、奔る! 裂かれた鬼を迂闊とは誹れまい!
踏破不可能の山を抜け、あまつさえ頭上から落下死を怖れずの奇襲!
支えとする地面もないのに、腰の入った自在かつ超高速の斬撃が来たのだから!
『!!!!』
ざんっ、と着地した鬼燈を、禍鬼どもが取り囲む。数は――五、いや六。
「僕相手に少なすぎじゃない? ま、手がかからなくていいけど!」
落下速度と着地衝撃すらも前に進む運動力に変え、鬼燈が地を転がった。
ため息が出るほどに滑らかで美しい倒立、前触れなしの全力疾走。
毒の尾が来る! これを弾き、絡め取り、螺旋を描いて伝う!
「ふたぁーつ!」
瞬き一つの間に剣閃五つ! 尾と四肢と首が泣き別れして地を転がる!
「ほらほら! こっちこっちぃ!」
常人では見切れまい。雷霆、尾、そして鬼の爪が入り乱れる丁々発止の修羅場。
間隙なき怒涛を、鬼燈はなお激しき剣嵐の舞踏をもってこじ開け、泳ぐように舞う。
一時とて彼は止まらぬ。止まれば死ぬ。それは忍とて例外ではない。
風のごとくに身を翻し、されど山のごとくに泰然と寄せ手を迎え撃つべし。
「忍の本領、見せてあげるっぽい!」
鬼は、獲物が地を這うと読んだ。それは"途中までは"当たっていた。
だが鬼燈は、途中で腕の力だけを使い、逆しまに飛んだのだ。その身は宙に!
「みぃっつぅ!」
がぎん!! 鎖骨を断ち割り腰すら叩き砕くほどの猛烈な兜割り、絶命!
凄絶なり。されど華麗。これが忍の技か。然り、されど否!
「僕に斬られる誉れが、冥土の土産と思うがいいですよ!」
それが屠龍の忍、露木・鬼燈という羅刹の本性なのだ。
成功
🔵🔵🔴
ルーナ・ユーディコット
誰が生き残るか
……仲間に生き残ってほしい
私は……敵を狩る
鬼と言えば恐ろしい敵と聞いていたけど
私が猟兵だからか……ただの獣にも見えてくるね
あっちから私がただの小娘に見えるか、同じ獣に見えるかは定かじゃないけれど
まあ、そんなこと倒しながら考えればいいか
反応を見れば……わかるだろうし
奇襲とか小難しい事は得意じゃないけれど
岩陰から敵の戦線が薄い個所を探して突撃……かな
半端な速度だと対応されて奇襲にはならないだろうから
孤狼【彗星】を使って一気に切り込む
元より捨身は覚悟の上
それでも私は戦える限り人の世を侵す埒外に挑む
この目で見た世界の為に、名前を呼んでくれた声の為に
立ち止まっている場合じゃないから
●獣、鬼を喰らうために駆けるのこと
飢えた禍鬼どもが獣に見えるのは、己が猟兵であるゆえか?
……あるいは、病に侵されしこの身が獣に変じつつあるからか。
ルーナ・ユーディコットは思索に耽りかけて、それをやめた。
こういう時、病が与えてくれたこの力と四肢は、忌まわしいが有り難い。
全力を以て駆け抜ければ、その爽快感と速度が、余計な心を洗い流してくれる。
ただそれは、ヒトらしい心を鑢で削るような愚行でもある。
(それでもいい。私は、私が仲間だと思う人々に生き残ってほしいから)
そのためならば、心だろうが身体だろうが、いくらでもくべてやろう。
さあ燃えよ。我が生命を糧に燃えよ蒼炎。地を奔る箒星となれ。
『!!!!』
鬼は見た。地を駆ける獣を。
否、それは正しいが違う。それは焔だ。焔であり、星である。
ジグザグの軌道を描き、ときに岩陰に隠れ、身を潜め、あるいは跳び、星は煌めく。
雷霆が走った。愚かである。稲妻が星の光を砕けるか? 無論、否。
(遅い。あなたのそんなものが、私に追いつけるわけがない。追いつかせない!)
なぜならば、この焔、この輝きは命を糧に燃えるもの。ルーナという女の生きる証。
鬼は何かを叫んだが、その身が膨れ上がるより先に、星光は鬼を呑んだ。
断末魔――喉元を爪で引き裂き、ルーナは屍を蹴立てて三日月を描く。
美しき哉。消え去る前の蝋燭が見せる有終のそれのような――。
「……私は」
忘我を振り払い、ルーナは瞠目した。消えかけた意識を意地で握りしめる。
見下ろす。早速詰めかけた鬼が三――いや、影に四。その身は二回りは大きく。
「敵を! ……狩るッ!!」
獣に堕ちるのは容易い。この矜持を捨て去ればそれでよい。
それはそれで一つの選択肢であり、得られる力と道があるのだろう。
だがルーナはそれを拒絶する。命が燃える苦痛を噛み砕く。
闇を縫うように駆けて、青い炎を燃やし、遮二無二地を蹴立てる。
なんたる速度か。それはルーナの命が消えゆく速度でもある。
「来い。来い、来い、来いッ!!」
鬼どもには獣の咆哮にしか聞こえまい。だがそれはヒトの叫びだ。
敵はみな己が狩ろう。運命からこぼれ落ちたこの生命を燃やして焼き尽くそう。
この目で見た世界を守るために。
名前を呼んでくれた声のために。
――交えてきた人々のために。
あるいは、もしかしたら。そこに、己の明日を入れてもいいのだろうか?
(――やめよう)
逡巡ののち、ルーナはその迷いを、甘えを振り捨てる。
立ち止まっている暇はない。かけらのようなこの生命にはまだ価値がある。
ただ、そこに燃えかすのようでも命が遺って。
そして、己が守ると決めた人々と、守った世界で生きられるなら――。
(……それはなんて、平和なんだろう)
焔の影に"いつか"の幻を視て、焼き捨てて、獣であるはずの女は敵を灼く。
そのために輝く。それはまさに星の一生。見えたときには届かぬ死の残影。
鬼がまた一体滅びる。降り積もる屍は、いつか平穏に届く礎になるのだろうか。
その答えは、きっと誰にもわからない。
成功
🔵🔵🔴
須藤・莉亜
「ふむ、山岳地帯に展開してるのか。」
(少し考えて)探すのも面倒だし、周囲の山ごと敵さんを腐蝕竜さんに食べてもらおう。
世界喰らいのUCを発動。巨大化させた腐蝕竜さんに、敵さんが展開しているあたりに全力でブレスを放ってもらう。
その後は爪での引っ掻き、尻尾でのなぎ払い、体当たり、噛み付きなんかで攻撃しといてもらう。
僕はLadyで狙撃しときます。近付いたら危なそうだしね。
「…後で怒られないよね、これ」
●竜"鬼"相打つ!
須藤・莉亜は思った。
(敵を探すの、面倒だな)
気だるげで紫煙と酒精に耽溺する、彼らしい結論である。
だがその結論に至らせたのは、ひとえに彼が持つユーベルコードゆえか。
「よし。腐蝕龍さーん、よーろしくー」
鉄火場に不釣り合いな緊張感のない声。すると頭上に……おお!
ばちばちと闇色の電光を纏いながら、禍々しい魔法陣……否、それは門だ……が浮かび上がり、両開きに拡がっていく。
そして見よ! 異界から現れし龍の顎(あぎと)!
あれこそは、世界そのものの規矩から精髄を吸い上げ現れし腐蝕の龍。
"世界喰らい(ワールドイーター)"。それが莉亜の使うユーベルコードだ!
なるほど、その巨大さ、おそらく全長は50メートルに匹敵するだろう。
ともすれば城そのものを攻撃することすら可能な規格外の質量である!
「敵はいる。それがわかってるなら――全部飲みこんじゃえばいいのさ」
なんたるシンプルかつ短絡的、しかし効果的な戦法か!
身を捩り現れた世界喰らいは、はたしてその吐息を吸い上げ――だがしかし!
巨大であるということは、すなわちそれだけ目立つということである。
そして禍鬼たちは、龍には匹敵せずとも、相応の巨躯を得るユーベルコードを持つ!
「お?」
莉亜は訝しみ、そして瞠目した。山間から……鬼が、"伸びてきた"のだ!
「うわ、そうきたか」
鬼が三体。無限じみた飢えに突き動かされるように、欲を生み出してそれを喰らい、己の五体をふくらませる!
そして爪を伸ばし、龍の喉元にがっきと組み付いた! 小賢しい!
「妨害はあると思ってたけどさぁ、僕のこと忘れてなーい?」
BLAMN!! 白く染まった対物ライフルのトリガを、反動への恐れもなく引く。
ヒトに向けるには余りある威力が、鬼の巨体を貫く。苦悶する禍鬼!
「そっちがこっちを狙い放題ならさぁ、こっちだって同じことなんだよねぇ」
BLAMN!
BLAMN!!
BLAMN!!!
腕を貫かれ、足を穿たれ、鬼どもはよろめく。
龍はいじましき雑魚どもの爪を振りほどき、吐息を解き放った!
ゴオオオオウ――!! 世界の規矩を食らった、その龍の咆哮を見よ!
吐息は鬼の巨体を飲み込み、腐らせ、蝕み、たちどころに滅ぼしていく。
そしてさらに爪! 門から現れた龍の尾が山を砕こうとする!
『――!!!!』
されど鬼にも意地があるか、真っ向からこれを受け……止め、た!
莉亜は舌打ちし、援護射撃を行う。拮抗はすぐさま龍に趨勢を明け渡す。
もはや怪獣映画じみた有様だ。はたしてどちらが敵なのかわからぬほどである!
「……これ、下手すると普通に暴れるよりひどいことになってない?」
もしかするとなんか偉い人から怒られるんじゃ、という不安は、ひとまず忘れることにした。
龍と鬼が、中山道を舞台に喰らい合う。馬鹿げたスケールの闘争である。
「ははは、どうせなら派手な方が良いや。もう一発!」
BLAMN!! ほとばしる砲声は、争いにかけられる油の如し。
鬼も、龍も、互いへの憎悪をむき出しに喰らい合うのだ……!
成功
🔵🔵🔴
ヌル・リリファ
◆アドリブ、連携など歓迎です
いくよ。オブリビオンは殺す。いつもどおりだし。
しりあいがかちたいっていってるの、かたせてあげたいっておもったから。
……わたしのすることとおんなじでよかったよ。
てだすけできるもの、ね。
UC起動。
たかいきのうえから、【視力】でみつけた敵を攻撃していく。めはいいから。
みつけた相手を一体もにがすきはないけど。最低限、きずはおわせてほかの猟兵のたすけになるようにする。
相手の攻撃は、シールドを展開、【盾受け】でふせぐよ。必要なひとがいれば、【かばう】こともできるとおもう。
なにをしたがえてようが関係ない。
わたしはマスターの最高傑作だから。ただ、うちたおすだけだよ。
リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎
エンパイアでも色々あったしね、
もう一暴れしようか!
山中なら、崩落しそうな場所とか、
水攻めされたらヤバイ渓谷とか、切り立った一本道とか、
色々ありそうだ。自身に「迷彩」を施した上で
「戦闘知識」「情報収集」の上、「破壊工作」「罠使い」で
罠を各所に仕掛けよう
いよっし山狩りだ、イルダーナ!
UC【召喚詠唱・流星戦隊】を使用、
「空中浮遊」「空中戦」で上空からローラー作戦で攻め立てる!
もし、雷撃で麻痺した猟兵や
尻尾の毒にやられた猟兵がいたら「救助活動」
で『イルダーナ』や『グラヴィティアンカー』で「運搬」
「医術」で応急手当しておこう
「軍神にこれで一歩近づけると良いけど……!」
クロエ・ウィンタース
確かにそうだ。ものの正邪なぞ生き残った者が決めること
オブリビオンであれば斬る。俺はそれで良い
【SPD】共闘アレンジ歓迎
>行動
敵の全滅が主目的なので
戦闘自体は単独で行うかもしれないが全体として他の猟兵と連携を行う
【忍び足】【ダッシュ】【ジャンプ】を駆使し
他の猟兵の包囲が薄い方向の茂み、木々やその枝の上から
他猟兵とタイミングを合わせ奇襲を掛ける
正面が手薄なら正面からだ
奇襲が露見したら群れに飛び込むぞ
敵の攻撃に対してはUC【一寸の見切り】で【見切り】、【カウンター】。
共闘する人間がいるのなら防御主体で攪乱と攻撃の引き付けに徹しよう
逃走者が居たら優先して討伐、
討ち漏らしが無いようとどめはきちんと刺す
●影を駆け抜け、鬼を討つ
ざん、ざざざざ――。
木々の隙間、あるいは草の茂みが揺れる。風に? いいや、ただの風ではない。
それは風のような速さで駆け抜ける、クロエ・ウィンタースという名の剣豪だ。
(ものの正邪なぞ、生き残った者が決めること)
闇を見据え、鬼どもの気配を肌で感じながら、クロエは思う。
(オブリビオンであれば斬る。俺はそれでいい)
ただ一振りの刃であればいい。殺意に濁りは必要ないのだから。
極限まで息を潜めて己を殺すさまは、ともすれば獣よりも鋭く恐ろしい。
(鬼を斬る。そして次の敵への道が開けたなら、これも斬る。ただそれだけだ。
……ただそれだけでいい。正義など、俺のこの身にはそぐわぬ、大きすぎる――)
白く染まるような錯覚。速度が余計な思索を洗い流し、闘争に最適化させていく。
その時、しかし、クロエは感じ取った。慣れ親しんだ旧知の気配――。
その気配の主……すなわちリア・ファルは、その時どうしていたか?
彼女は彼女で、自らを周囲の地形に溶け込む迷彩武装で覆い隠し、戦場をかけずりまわっていた。
目的はひとつ。敵の虚を突くための、多種多様な罠の設置と準備である。
(なんだかんだエンパイアでも色々あったし、ね。もうひと暴れといこうか)
世界の危機を、猟兵として救うために戦うことに、リアは異論を持たない。
むしろ喜ばしいと思う。商売的な意味でもそうだが、そうした正義を彼女は尊ぶゆえに。
ただ、そんな正道を、まっすぐ歩けぬ者たちのこともよく理解している。
(ま、それぞれが出来ることを、各自なりにやる。戦いってそういうものだよね)
心のなかでひとりごち、リアは最後の罠を設置し終えるとうん、と頷いた。
「よっし、山狩りだイルダーナ……っと?」
愛機にまたがったそのときに、ちょうどリアはこちらを見つめる気配に気づいた。
そうして、リアとクロエは、戦場でひとたび邂逅し交錯したのだ。
……禍鬼は、餓鬼である。殺戮に飢えた、どうしようもない邪悪だ。
しかしその一方で、彼奴らは強大な力と毒を持ち、それに相応しい戦闘センスを有していた。
だからこその主力である。真正面から叩くには相応の手管を必要とするだろう。
ここに存在する鬼はおよそ7……いや、8。それを見下ろす影がある。
(数はこれで、ぜんぶ。うん、まちがいない。配置もわかった)
ヌル・リリファは暗闇をも見通す眼をもって敵の状況を確認し、首肯する。
その身は樹上。見つけた以上は、すべて殺すのが彼女の当然の存在意義である。
「……じゃあ、はじめようか」
呟いた人形少女の周囲に、ぼんやりと浮かび上がるいくつもの光。
それらはたちまち刃や矛の形を取り、その鋒がことごとく敵を見据えた。
死斬光雨。数はおよそ200以上――それだけでも飽和攻撃には十分だろう。
だが、あろうことか! ヌルは高みから、ふわりと躊躇なく飛び降りたのである!
『『『!!!!』』』
禍鬼とてバカではない。敵が姿をさらせば瞬時に気づく。
自殺行為だ! いかに光の武器が驟雨のように降り注ぐとて……!
ZZZZZTTTT!! 見よ、思ったとおり。幾重もの鳴神――すなわち紫雷が、空中のヌルをめがけて奔り……!
「あまいよ。そんな攻撃、わたしの盾にはつうじない」
バチバチバチ!! ヌルのすぐそばで、雷の鞭は四散して消えていく。
違う。それは彼女が滞空させた光盾による自動防御だ!
「リアさん、うまくいったよ。あとはよろしく」
そして少女は言った。直後、がさりと鬼の足元にある茂みがゆらぎ――!
「鬼と言おうと所詮は畜生。このような陽動にかかるとは」
声は斬撃のあとに。クロエはすでに鞘走るどころか、円弧の斬撃を終えている。
かちり。鍔が納刀の音を響かせれば、不意を打たれた鬼二体が真っ二つに割れて即死!
然り。ヌルが姿を晒したのは囮。狙いすました連携による奇襲だ!
『――!!』
だが残る禍鬼のうち、二体がその身を一回り以上膨れ上がらせ、ずしんと迫る!
振り下ろされる巨大な鬼の腕! まともに喰らえばひとたまりもない、が!
「いかな剛力とて、一寸ずれれば涼風と同じ。なにより、あまりに鈍い」
ズシン!! 鬼の腕が空を切り、地を叩いたときにはクロエはわずかに退いている!
一寸の見切り。剣術の秘奥とは、生死の狭間の一寸を見切るその先にある。
剣豪として道を究めんとする彼女にとって、鬼の爪はまさに止まったも同然か!
「よおし、いい感じに集まってるね! イルダーナ編隊、出撃!」
そして、ここでリア――と、彼女が複製量産した流星戦隊の出番である。
上空に展開したイルダーナ編隊が、火砲を向け残る鬼を弾雨で攻め立てる!
「ヌルさん、陽動ナイス! クロエさんもさすがだね!」
「オブリビオンはころす。それが、わたしの仕事だから」
「是非も無し。敵がいるならば斬る――ある意味では俺も似たものだな」
光の武器が火砲に加わり、禍鬼どもをとどめの飽和攻撃に晒した。
だが三人の戦士は足を止めぬ。互いをみやってうなずきあい、向かうは次の戦場。
過去の残骸を、その一体まで残らず滅ぼすために。やるべきことは多いのだ。
「ポイントA、それとC2に罠を設置済みだよ。まずはここに追い込もう!」
「わかった。俺はさきほど同様奇襲を担当しよう」
「わたしは、こんどはわざと攻撃をしかけて、きをひくね」
その連携も、歴戦の猟兵たる所以といえよう――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ハゼル・ワタナベ
※アドリブ・他猟兵との絡み歓迎
あ゛ー…コイツらまさか、俺と同じ毒持ちか?
しかもウジャウジャ…蠍っつーより蟻みてェだな
俺の血肉が欲しいか? 欲しけりゃくれてやる
――どっちの毒が強烈か、勝負といこうぜ
PM形態である『ヨルムンガンドの蛮牙』を展開
俺の限界量の毒を孕む瘴気をバラ撒いて一網打尽にしてやる
ただこのUCは無差別な代物だ
猟兵の仲間には一言注意を呼びかける
テメェらも飢えてんだろ?そのデッケェ身体や殺気でわかるぜ
俺もテメェらと同じ【毒使い】だからな
……誰が生き残るかを決める、ねぇ
考えたこともなかったな
すまねェなグリモア猟兵さんよォ
“結社”ってのはどいつもこいつも命知らずの馬鹿野郎ばかりだからな
非在・究子
こ、今度の、ミッションは、鬼退治、か。
な、なかなか、強そうな、やつらだ、な。
か、数もいる、みたいだし、確実に、行くと、する、か。
ゆ、UCの、力で、周辺地形(マップ)を【ハッキング】して、支配状態に、おいて、し、静かに、マップを、改変、して、落とし穴、やら、連動する、地雷、やら、飛び出す、槍衾、やら、電撃発生装置、やら、思いつく、限りの、トラップを、設置していく、ぞ。
と、トラップの、チェーンコンボの、仕込みが、終わったら、ピタゴラ、スイッチの、はじまり、だ。
こ、今回は、とにかく、混乱させて、機動力を、奪うのを、重視して、援軍とか、呼ばれないように、注意しつつ、他の猟兵を、助ける、ぞ。
壥・灰色
竜殺し、悪魔殺し、まあいろいろ殺したものだけど――
今度は鬼か。鬼殺しも称号に足させてもらうとしようかな
起伏の中から、ひときわ深まった溝を探す
スコップを突き立ててそこから穴を掘り、敵の布陣する周辺まで掘り進め
真下から、壊鍵を全開にして真上へと拳を叩きつけ、地面――
――すなわち『敵の足場』を破壊する
地滑り・崩落によって敵陣営を混乱に至らしめるとともに、滑落する敵を攻撃しやすくする狙いがある
崩壊して落ちてきた敵は拳のラッシュで手ずから破壊
戦史を見て哲学者の言葉に付け足すなら、『生き残ったものが正しくなる』んだ。死人は口を利かないからね
――じゃあ、俺たちの『正しさ』を証明しよう
覚悟はいいな? 鬼ども
●戦いの中での"正しさ"
ざっ。ざっ。ざっ。
「……な、何、し、してるん、だ?」
非在・究子の言葉に、一心不乱に作業をしていた壥・灰色が顔を上げた。
「見ての通り、スコップで穴を掘ってる」
「そ、そうじゃなくて、な、なんでってことなんだけど、な……」
たしかに不可解である。いまは集団戦の真っ最中なのだ。
それを、ただひとりで、スコップを使って掘削しているなど妙な話だろう。
「こうやって地面の下から布陣の近くまで行く」
「……で、く、崩す、のか?」
屈託ない無表情で素直にうなずく灰色に、究子は呆れたような、困ったような顔をした。
途方も無い話だ。独力ですすめるには、道具もなにもかも、労力コストが半端ではない。
だが、灰色は疲れというものを知らぬ。諦めるということも、知らぬ。
それと決めたならば、やる。まっすぐに、音をも突き抜けて確実に、雄々しく。
まるでミサイルのような戦い方をする、灰色はそういう男である。
「……て、手伝う、ぞ。そ、そんな泥臭い仕事、み、見てるだけで、あ、暑いし」
スコップ使う? みたいな感じに差し出そうとした灰色に、慌てて手を振る。
「に、肉体労働とか、な、なおさらごめんだ! そ、そうじゃなくて」
究子が指差した先。小さな山めいて積み上がった土の塊が、ブロック状に変形した。
どことなく、人気ゲームに出てくる土地素材に似ていなく……も、ない。
「あ、アタシのユーベルコードなら、こ、こうやって楽できるし」
もしかしてやぶ蛇だったか。そういうの、許さないタイプなのか?
ややびくびくしながら、灰色の様子を伺っていた究子だが……。
「ずるくない?」
「えっ」
「便利だね、それ。だったらそれでいいか」
あっさり楽なほうに流れるあたり、灰色もなんやかや若者なのであった。
ところで、そんなふたりが目指していた先……つまり、禍鬼どもの散開地点。
あろうことかそこへたったひとりで飛び込み、相対している男がいた。
「……やっぱ勘違いじゃねぇよなあ」
蛇めいた顔立ちの男、ハゼル・ワタナベは、確信を得た様子で顔をしかめる。
あの尾だ。鬼という名にはややそぐわぬ、サソリめいたあの尾。間違いない、毒だ。
(まさか鬼とお揃いとはね、別に嬉しかねぇけどな)
"結社"とだけ呼ばれる謎の組織に属するハゼルは、その本質をある『剣』に由来している。
蛇めいた面持ちに相応しい蛇腹の剣――『ウロボロスの雷牙』がもたらすのは、毒。
つまり禍鬼の尾と同じく、ハゼルもまた毒を以て敵を侵し滅ぼす蛇なのだ。
「ま、ウジャウジャ群れるさまはサソリっつーより蟻みてェだけどなぁ」
数の利は圧倒的。されどハゼルは臆することなく、にたりと陰気な笑みを浮かべた。
「飢えてるねェ。そんなに俺の血肉が欲しいか? 悪食にも程があるぜ」
言葉に嘘はない。短針のⅧたるその身はすなわち輪廻の蛇そのものであり、つまりは毒蛇そのもの。
「欲しけりゃくれてやるよ――どっちの毒が強烈か、勝負といこ……」
……ズズズズズズ……。
「……あ? なんだ?」
……ズズズズズ……ズ、ゴガァンッ!!
「あぁ!? おい、ちょ、まッ」
その時である。振動が止んだかと思った瞬間、地面が――"爆ぜた"!
禍鬼はもちろん、ハゼルも突然の天変地異に、逃れられず巻き込まれる……。
その時、地下で何が起きていたのか。答えは明白!
「う、うそだろ」
究子はぽかんとした。目の前には、拳を頭上に振り上げた灰色がいる。
その拳、ただの拳骨の一撃が、ふたりの頭上――つまり頭上の地面を、砕いたのだ!
「て、ていうか、ちょっと、ま、まて。こ、これアタシたちも」
ズズズズズズ……KRAAAAAAASH!!
「や、やっぱ、い、生き埋め、じゃ、じゃない、か!!!」
「おれはこれ(拳)で砕けるから」
「あ、アタシがいる、だろ!?」
むしろ砕けないの? みたいな顔で、降り注ぐ土塊をラッシュ破壊している灰色に呆れつつ、究子は"ゲームナイズ"を発動!
あわや生き埋めの憂き目を、土や瓦礫をブロック素材化して即時回収することでなんとか回避!
「ふ、ふう。で、でも、これでチェーントラップも発ど」
「いっでででででで!! なんだよこれェ!!」
「や、やばい。味方ま、まきこんだ」
バリバリバリバリ! と、電撃発生装置で痺れているハゼルを見て焦る究子。
禍鬼がひっかかった槍の落とし穴のほうは放置して、次の仕掛けが発動する前に電撃を停止させる。
「おい、おかしくねェか!? いきなり地面砕けてトラップまみれとかよ!」
「ご、ごめん。で、でも、文句は、あ、アタシじゃなくてあっちに……」
「あ? ……あー」
ハゼルは見た。落ちてくる岩を拳で凄まじい速度で破壊している人間兵器を。
あれやべえ。俺も砕かれそう。絶対パワーイズストロングだろあれ。
「あぁ糞、こうなったら俺も好き勝手すっぞ! いいか、テメェら気をつけろよ!
――俺の"毒"はよォ、いちいち狙いを外すなんてことは出来ねえからなァ!」
ネックスプリングで立ち上がったハゼル、晒した舌には数字の"8"!
「行くぜ――刻器真撃だ。"ヨルムンガンドの蛮牙"を見せてやらァ!」
これこそが結社の一員、ナンバーズたる証左!
ウロボロスの真の姿、それは世界蛇の名を持つ出血毒の噴霧散布である!
「こ、この閉鎖空間で、が、ガス兵器とか、て、テロだろ!」
「テロだよォ! ハハハハ、終わりなんだよ何もかも!」
究子は地面を操作し、味方に影響がないよう空気の通り道を素早く操作。
これが功を奏し、ハゼルの毒はうかつな禍鬼どもだけを苦しめる殺意の霧となる!
「……ったく。嫌なモンだよなァ。テメェらの飢えも何もかもよくわかっちまう。
同じ毒使いで、あいにく俺も他の連中同様、命知らずの大馬鹿野郎なもんでな」
ハゼルは自嘲の笑みを浮かべ……そして、瞠目した。
「ってオイ、警告しただろ! 近づいたら毒がかかンぞ!」
ずん、と踏み出した灰色は、肩越しにその言葉に振り向く。
「あの転移の前の言葉」
「あ?」
「付け足すなら、おれはこう思ってる。"生き残ったものが正しくなる"んだ、って」
「…………」
ハゼルは無言。
「し、死人は、く、口を効かないから、な。げ、現実にコンテニューは、な、ないし」
「そう。だからさ、おれたちは、おれたちの"正しさ"を証明すればいい」
――戦い、そして生き残る。それこそが正しさの証明。
「命知らずでもいいと思うよ。生きてるなら」
「…………」
今度は究子が無言になる番だ。
なにせゲームのバーチャルキャラクターとして、擬似的な死を数百度は繰り返している。
ただ、本質的な死を恐れず、しかし生きるために戦う。矛盾めいたその行為の重みはよくわかる。
「げ、現実はクソゲーだから、な! ノーコンテニュー前提とか、ま、マジクソだ」
「やってやるさ。だから、なあ」
灰色の瞳が、鬼を捉えた。拳が弓をひくように構えられる。
「覚悟はいいな、鬼ども」
――壊鍵、起動。これより破壊の撃力が吹き荒れる!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三咲・織愛
血肉に飢えた殺戮者ですか
さぞや多くを殺めてきたのでしょうね
手加減するつもりなど毛頭ありません
あなた方の悪意、害意が大きいほど
私の槍も鋭さを増すと思いなさい
巧く立ち回るために周辺の地形を意識して動きます
ヒットアンドアウェイを基本に、
<槍投げ>による<串刺し>から開始し、すぐに隠れます
攻撃後は『ノクティス』を竜へと戻し、
私の元へ戻ると見せかけ陽動もしてもらいましょう
背の見えた敵には『帚星』で<怪力>を叩き込みます
密集させるのに向いた地形へと誘い込み、<範囲攻撃>
必ず背を壁に向け足を止めない
かかってきなさい
【閃撃】で、愚かな感情ごと叩き返してやりましょう
矢来・夕立
山岳戦ですね。承知しました。
【紙技・渡硝子】を展開。上空から《情報収集》。
有益な地形や敵陣の情報を発見したら周辺の猟兵に伝える。
52羽います。適当に使いつつ使い捨てつつリサーチしましょう。
オレは《忍び足》で中腹らへんに待ち伏せしておきます。
アンブッシュですね。
あちらこそが伏兵なワケですけど、その状況は他の猟兵が動かしてくれます。
山岳戦の位置取りがわかる敵なら、傾斜の上方へ移動してくるでしょう。
それを狙っています。いました。ご苦労さまです。《暗殺》。
渡硝子の情報をもとに、次の標的に向かって移動。
どんどん引っかかってほしいんで、一匹ずつ静かに殺ります。
草の根運動ですよ。草ですし。
鎧坂・灯理
露払いか。ああ、掃除は得意だ。
思い切り暴れてすっきりしたいな。
魔術回路イヤカフ良し、魔力蓄電池UDC良し
よろしい、外付魔術の使用が可能だ
といっても火だ雷だとするわけじゃない
純粋に脳を――念動力の出力を爆発的に上げるだけだ
それで充分だからな
念動力で、木々をへし折りながら空中を『白虎』で駆け、敵にへし折った木々をぶち当てて挽肉にしてやる
地面を念動力で砕いて地割れを起こし、多くの個体を呑み込んでやろう
私は空に居て、貴様らの尾は届かない
ワンサイドゲームだ、虫けらめ
パーム・アンテルシオ
サソリ…だよね、あの形は。本物は、見たことは無いんだけど。
尾が大きなサソリほど、毒が強いんだっけ。
…痛そうだね。あの尻尾に刺されたら。
痛いのなんて、イヤだし…
…毒なんて受けるのは、もっとお断りだから。
先手必勝。その尻尾、頂くよ。
九ツ不思議…鎌鼬。
奇襲にうってつけの場所に、見えない風の刃。
どんなに強くても…不意を撃たれて、なんとも無いものなんて、いないはず。
狙うは、大きな尻尾。
大きい事は、強い事でもあるけど。
大きいのは…的にもなりやすいって事でもある。
例えば…怖くて強い、けれど、たくさんの人に狙われる、鬼みたいに。
尻尾さえ落とせば、勝ったも同然…
とは、言えないけど。
それでもきっと…勝機は近づく…
●勝利の意味、殺意の価値
血肉を求める、飢えた殺戮者。禍々しき鬼。毒と雷霆を操る外道の存在。
許されざる悪意である。三咲・織愛は、そうしたモノを決して許容しない。
「これ以上、この世界の誰かを……あなたたちには殺させませんっ!」
振るう龍の槍・ノクティスは、そしてそれを担う織愛の強き意志と鋭い瞳は、敵が邪悪で苛烈であればあるほどその鋭さを増す。
臆するようなことはない。これまでだって、何度もそうして戦い、打ち砕いてきたのだから。
山肌を駆け、木々を盾にして敵の攻撃を避け、膨れ上がった鬼の体を矛で切り裂く。
喉元、あるいは逆鱗めいた急所。戦いの中で垣間見えた隙を、躊躇なく突く。
『!!!!』
「これで、一体……っ」
とはいえ、相手は多数。ましてや城の主力部隊に数えられる精鋭オブリビオンである。
近距離戦闘は、膂力の差で相手に分がある。包囲されないように立ち回るだけで手一杯だ。
そして機動戦は、当然目立つ。つまり、鬼の注意を引くことになる!
「新手……!?」
鬼が二体! 毒尾を鎌首もたげて狙いを定め、織愛めがけて一直線に――!
「はい、ご苦労さまです」
しようとしていた。だが、あいにくそれは叶わなかった。
何が起きた? 空から突然、黒髪にメガネをかけた少年が落ちてきたのだ。
頭上からのアンブッシュ。獲物に気を取られた鬼では察知することなど不可能である。
ましてやそれが、矢来・夕立という歴戦の忍ならばなおさらのこと。
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、人助けが好きなので礼はいりません。まあ、ウソですけど」
真顔でさらっと冗談(らしきなにか)をのたまう夕立のノリに、きょとんとする織愛。
「戦うなら、ここから少し離れたあちらの林がおすすめです。身を隠す場所が多いので」
「! わかりました! ありが」
「礼は結構だと言いましたよ。それはウソじゃないんで」
懐から取り出した折り紙を投げれば、それはばさばさとはためくカラスへ。
一際大きな個体の足に捕まり、夕立は再び空へと舞い上がる。
「あとそうですね、もう一つアドバイスするとしたら」
メガネ越しに、熱を感じない赤い瞳が織愛を見下ろす。
「ここから今すぐ離れたほうがいいですよ。もうじき更地になるんで」
言葉を証明するように、どこからともなくモンスターめいたエンジン音が響く――!
……直後!
ふたりが去った傾斜地帯を、轟音とともに地ならしするモンスターマシン!
銘は白虎。だが、唸り声じみたエンジン音ともに木々をへし折るさまは、まるで龍のようだ。
あるいは四凶――聖獣と相対する災いの獣とされたモノども――の、貪婪たる悪行の如し。
少なくともそれは、正道を歩むような輩のやるようなことではない。
一方で、自然も地形も意に介さない轢殺走行は、逃げ遅れた鬼をミンチめいて轢き殺していく。
効果はある。むしろ覿面とすら言えよう。だがこの所業はあまりにも……!
「ハッ! 何が鬼だ。地面を這い回る虫が。虫ならば虫らしく潰れて死ね」
マシンを駆る男装の麗人、鎧坂・灯理の目は常よりも見開かれていた。
今の彼女は、外付けの魔術回路を全身の神経に同化接続。
以て己の五体を自立型の術式回路とし、UDCを媒介に超自然的エネルギーを汲み上げる機構……。
早い話が、頭のてっぺんから爪先までを、破滅的魔力が流れる濁流に変えているのだ。
脳ブーストによって念動力を操るサイキッカーにとって、これはたしかに効果的である。
現に見ての通り、灯理の超出力は、木々をへし折るどころか地面に割れ目を刻み、そして割いた。
「それとも呑まれて死ぬか? 岩に押し潰されるのがいいか。どれでもいいぞ、どれかを選んで死ね!」
たたらを踏んだ鬼が尾を振り回そうが、そんなものは空を飛ぶ鳥を捕まえようとするようなもの。
ギャリリリ!! と曲芸的走行を見せる白虎と麗人を捉えることは出来ない。
「ワンサイドゲームとはこのことだな。貴様らにはこれで十分だ。十二分ですらある」
心地いい。魔力が己に流れ込み突き抜けていく感覚は、それだけで無駄がない。
だがこの悪鬼ども――いいや、世界のゴミを"掃除"出来るのは、何よりいい。
「色々と心労が貯まる職業なものでな。ストレス解消に使わせてもらうぞ」
憐憫? こんな存在するだけで世界のタスクを埋めるゴミどもに? 不要だ。
躊躇? 掃除をすることを厭うのはものぐさなクズだけだ。不要。
ならば義憤はどうか。片腹痛い。そんなもので一体何が出来るという?
灯理は正義の人ではない。そう言われれば慇懃に皮肉を返すことだろう。
ただ、ゴミどもが蔓延るのが、どうしようもなく我慢できない。
ただそれだけ。だから殺す。そこに躊躇や後悔といったノイズは存在しない。
「虫けらめ。虫けららしく、喚いてあがいてのたうちまわれ」
おそらく、人の倫理はそれを"悪"という。
「…………」
天然自然をなんとも思わぬ蹂躙に次ぐ蹂躙を、パーム・アンテルシオは静かに見ていた。
この世界に生まれた者として、思うことはある。感じることも、いくつもある。
ただ、それを口にしようとは思わない。彼女が怖いから? ……違う。
(皆、皆、理由があって戦ってる。背負うものがあって、考えていることがあって)
そこに踏み込むことこそ悪なのではないか。
それを詳らかにすることこそ、愚かなのではないか。
己にそれは出来ぬ。ましてや、背負うことなど出来はせぬ。
求められてもいまい。ならば、己も同じように、なすべきことをなす。
……すなわち、この地に蔓延りし鬼を、鬼という毒を除去する。
「九ツ不思議、鎌鼬――」
天変地異じみた蹂躙から逃れた鬼の毒尾が、見えない風の刃によって裂かれた。
毛並みのいい九尾を撫でながら、樹上に潜むパームは目を細める。
(鬼は、大きくて強くて、怖いもの。けれどそれは、目立つし狙われるということ)
視線があちらを見る。森林地帯、相棒たる龍の槍を擲つ少女がいた。
織愛。敵を串刺しにせしめた槍は龍の姿に戻り彼女のもとへ。
(よくないことだと怒って、戦う人も)
別の一方。音もなく、影から現れたカゲに喉を裂かれて鬼が死んでいる。
夕立。忍びの視線がパームを見返した気がして、その姿は再び消える。
(仕事のように、淡々とする人も)
そして嫌悪を以て殺す、悪の如き者――灯理。
それだけではない。この戦場、この戦争、この世界の狭間の戦いには多くの猟兵がいる。
それぞれに理由がある。
それぞれに信念がある。
それは良いことだと思う。確固たる礎は、いかな毒にもゆらぎはしない。
「……勝ちたいよね。勝たなければ、それも意味はないんだから」
静かに呟いて、桃色の狐もまた、闇に紛れるようにして姿を消した。
正義のために。
義務として。
怒りを以て。
どれでもいい。勝たねばならぬ。勝つためならば、どれでも――いや。
たしかに彼らは強い。その多様性はすなわち群れとしての強固さに通じる。
だが――確固たる信念は、同じだけの迷いを、各々の心に産みもするのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
城攻めの前のゲリラ戦、か。
本当は罠の扱いに長けた他の奴らが向いてるんだろうけどねぇ。
潜んでいる先が分かってるなら、事は単純さ。
深く静かに『迷彩』姿で潜み、一気に崩させてもらうよ。
樹木のあるなしに関わらず、山岳地帯で気を付けなきゃいけないのは
いわゆる土砂崩れ、山津波かねぇ。
【弱点特攻作成】で敵さんに答え合わせを済ませたら、
山頂近くにクラフトした爆薬を仕掛けるよ。
もちろん、一番ヤバいポジショニングまで
『地形の利用』をするために考える。
ついでにオマケだ、崩落で浮足立ったところに
単分子ワイヤー製の網をクラフトして被せてやる!
巨大化しようとすりゃ、切り裂かれるだろうさ!
安喰・八束
全てとは言わんが、慣れた世界だ。
山も、戦さ場も。
使い方は、よく知っている。
……どこぞの芥とも知れん死人どもが。
狼の縄張りでいきがってんじゃねえよ。
弾が届く距離まで退き、姿を現さんように追う。(目立たない、戦闘知識)
奴が仲間を追い回してくれてるなら、此方も都合が良い。
援護射撃で補佐しよう。(援護射撃)
……動きゃ腹が減るからな。
でかい的なんざ、外す訳がねえだろう。
狼殺し・九連は全て奴に叩き込む。
叶・景雪
アドリブ歓迎
難しい漢字は平仮名使用
カタカナはNG
「SPDで判定」
まがつおにがあいてだなんて、これぞ、ゆいしょ正しいおにたいじだねっ!ぼくに、その由来はないけれど、つゆばらいならおまかせだよっ!
てきの気をひくのに、ちょうはつするよう短刀に手をかけこいくちをきるね。って、おっきくなった!?むむっ、ぼくだって負けないよ?
集だんなら、まとめて相手をするよりも、じんけいをくずした方がいいから…ん、このあたりかなっ!
なるべく風上にじんどり、谷あたりからの強風がふいてきたら、そのいきおいも利用するよう舞風でしょうぶをしかけ、武器落としをためすね!
「おにをきるは刀の本分!いざいざ、じんじょうにしょうぶっ!」
●戦場で生まれるもの、失われるもの
……狩りに必要なものが何かと問われれば、彼は『辛抱強さ』と答えるだろう。
忍耐、と言い換えてもいい。最適な狩りは常に"待つ"という作業との戦いだ。
獲物が狩場に来るのを待つ時間。
獲物が隙を見せるまでを待つ時間。
狩りが出来るようになるまでを待つ時間――。
獣も人も変わらない。獲物を狩ろうとするならば、そこには忍耐が要る。
……現実がどうなのかはさておき、安喰・八束はそう思っている。
狩りも、戦も、やはり同じだ。どれほど耐えられるか、がすべてを決めるのだ。
(それをどこの芥とも知れん死人どもが、うろちょろといきがりやがる)
どことも知れぬ暗がり。猟師はただ静かに伏して、土に塗れ、息を潜める。
鬼どもの気配がする。飢えて、餓えて、獲物を求める畜生どもの呻きが。
(……変わらんね。山も、戦場も、結局は同じか)
過酷な環境は飢餓を呼び、飢餓は均衡を失わせ、精神を殺す。
獣ならばまだいい。痴れ狂ったそれは潮時になれば死ぬ。
……だが人はそうはいかぬ。狂気とは伝搬するし、歯止めを知らぬ。
鬼はどうか。言わずもがな、彼奴らに辛抱だの、倫理だのは存在しない。
(慣れた世界さ。――そういう奴らを狩って掃除するのも、ようく慣れているとも)
狩人は銃を構える。引き金にかけられた指が、狼めいて鋭い爪を生やした。
病に侵され明日をも知れぬ身。だのにこんな鉄火場に身を置くのはもはや性分か。
あるいは、自分もあれらと同じように、とっくに人としてあるべきものを失ったか。
戦場はそういう場所だ。そうでなければ、生き残れないのだから。
一方で、そんな乾いた荒野の如き戦場を、快活に生き生きと駆け回る者もいた。
若さゆえか、あるいはヤドリガミという出自ゆえか、刀の化身であるからか。
少年の姿をした猟兵、叶・景雪は、絶望するどころか目を光らせているくらいだ。
「やあやあ! まがつおにども、このぼくがあい手になってやる!」
舌っ足らずな声で、敵の前にまざまざ姿を晒して戦国武者さながらの名乗りあげ。
二体の鬼はゆらりと景雪のほうを見、値踏みするように様子を伺った。
「ふふん。おそれをなしたか? こないならぼくのほうから行くぞっ!」
短刀に手をかけ、鯉口を切る――ぴくりと、サソリめいた毒の尾が動く。
世間知らずな子供めいているとはいえ、景雪とて刀として鍛えられた身である。
猟兵として経験した戦場も少なくはない。覚悟や判断力がないわけでは、ない。
(ゆいしょ正しいおにたいじ、これこそまさしく刀のほまれ!)
ただ、心からそう思い、敵に臆することなく相対している。それだけの話だ。
風上に陣取る地の利の得方は、ベテランの兵士もかくやという好判断と言える。
もちろん、仮に鬼どもが挑んできたとして、そのまま打ち合うつもりはない。
狙いは陣形を崩すこと。そのためにはもう少し鬼を誘い込む必要があるか……。
「むむっ!」
だが見よ。二体の鬼はみるみるうちに風船めいて膨れ上がり、見上げるような巨体へ!
そして吠える。まるでそれは、狼めいて仲間を呼ぶ号令でもあるのだ!
「ぼくだって負けないよ? まだこないの?」
じり、じりと両者の間合いが詰まる。まだだ、あともう少し惹きつけねばならぬ。
あとは風を待つ。向かい風で敵が怯んだところへ己の刃を叩き込むのだ。
……しかし景雪の狙いと裏腹に、もたらされた予兆は谷風などではなかった。
「お?」
ずずず……かすかな振動。そして巨大な何かが身じろぎするような違和感。
見上げる。山のはるか彼方、闇の奥から……木々が、岩が、流れてきている!
(……どしゃくずれ!!)
好機! だが景雪も危険だ。この状況、とどまるか、逃げるか?
瞬時の思考。……留まるべきだ。逃れれば鬼はフリーになってしまう。
「さあ、かかってこい! いざいざ、じんじょうにしょうぶっ!」
鬼を誘う。しびれを切らした禍鬼が、ついに景雪へ――飛びかかった!
「もらった! 一げきひっさつとはいかずとも、手数でしょうぶ!!」
舞風! 無数の短刀が瞬時に複製製造され景雪の周囲を嵐めいて飛び交う。
そして彼にとってもひとつの誤算だったのは、それとは別に鬼の体を切り裂く何かがあったということだ!
「!」
「ビンゴ! デカくなりゃそれだけ当たる面積も増えるってことだからねぇ!」
なにか――よく見れば張り巡らされたワイヤー群――と、複製された短刀によって鬼どもがたじろいだ、その時。
声とともに誰かが横合いから飛び出し、身構えていた景雪の体をさらった!
「わわっ!?」
「悪いねっ、こうなったら三十六計逃げるに如かずだよ!」
少年を抱え上げた女――数宮・多喜は、不敵に笑って山肌を蹴る。
いかにも、突然の土砂崩れを爆薬によって企てたのは彼女にほかならない!
「ひ、ひなんぐらいできますがっ!?」
「このほうが楽ちんだろう? 文句言うな――っと!」
だが眼前! 先程の咆哮で現れた増援の鬼がふたりを待ち構えている!
押し通る他ないか? そう覚悟した瞬間、闇をつんざく銃声、およそ九つ!
「こっちだ。お前ら、若いだけあって胆力があるな」
茂みから立ち上がった八束が、手振りで避難経路を示す。
ふたり(というか抱え上げられた景雪に選択肢はない)はその声に従い、複雑な山道を駆け下りていく。
「やるじゃないか、おっさん! ずっとあそこに隠れてたのかい?」
「ぼくがちょうはつをしているあいだも?」
「まあな。……悪く思うなよ。実際手出ししなくて正解だったろう」
苦笑めいた表情になり、先導する八束が傘の下に目元を隠す。
「俺も歳かね。若者の眩しさに目がくらんだのかもしれん」
あるいはそれは、前向きに戦場を駆け抜けようとする生命力にあてられたか。
狩人は何も言わぬ。去っていく一同のあと、敵を土砂が飲み込み洗い流していく。
まるで、戦乱という巨大な潮流が、戦場に渦巻く何もかもを飲み込むように。
ただ少なくとも今回は、彼らはそれを逃れた形になったようだ――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイリ・ガングール
群れなら群れで対抗じゃてな。さて、赤狼衆、やってやりな。召喚した赤狼衆をけしかけて戦わせるよ。とはいえ、相手が使ってくるのは範囲攻撃。そこに巻き込まれてみどもが傷を負ったら赤狼衆共も消え去ってしまう。
故にみどもは将の立ち位置。出来るだけ近寄らんで赤狼衆の指揮に専念しつつ、山岳地帯の一部、あらかじめ罠を張っておいた場所へ誘導するよ。
地形を利用するのは得意じゃてな。故に金狐霊糸を木々に張り巡らせて、脚を取らせたり、こけたら首に絡ませるような形で配置しておくでな。コココココ。地形を利用するのは得意じゃて。
さぁて、やっぱり戦は楽しいねぇ。さっさと次を狩りたいから、死んでくれな。
祇条・結月
鬼、か。
地獄図とか見て、泣いた事とかもあったっけ。
昔の話。……できることをして。勝つよ。それだけ
高所を取って【罠使い】で落石や、木々の間に張ったワイヤートラップで妨害しながら苦無の【投擲】をメインに戦うよ
それでも抜けてくる鬼たちは少しずつ後退しながら、徐々に本隊から分断していく
その間も適宜反撃して、敵意を煽っていくのは忘れない
大きくなるのはアドバンテージだけど山岳地帯じゃ傾斜や、障害物で小回りは利きにくくなるでしょ
そこを突いて≪鍵ノ悪魔≫を降ろして
木々や鬼たちの体を透過しながら縦横無尽に駆け回って足を薙ぎ払ってく
倒れてしまえば立て直すのも難しいだろうから、そこを狙って止めをさしてくね
フェルト・フィルファーデン
……ふふっ、こんな立派なお城を落とそうだなんて、なんて罰当たりなのかしら?――気に入らないわね。
敵の居場所が割れているならどうとでもなるわ。でも、時間をかけてもいられないし……一網打尽にしましょうか。
UCで炎の壁を山の麓で展開。まるで山火事がおこったように見せかけて徐々に頂上の方へと追い詰めるわ。でも実際に燃やすのは最小限に、野生動物とは【動物と話す】事で事前に逃すわね。
それでも降りて来る敵は物影から騎士が【暗視、スナイパー、破魔】を乗せた矢で急所を居抜き仕留めるわ。
追い詰めたら炎の壁で囲い纏めて仕留めましょう。さあ、燃え尽きなさい?
……ええ、世界を救う邪魔をするなら、何者であろうと許さない。
●"戦争"のやり方
山が燃えている。よもや、何かの要因で山火事を起こしたのか?
(……いや、違う)
燃え盛る炎を遠くから睨んでいた祇条・結月は、そんな懸念を切り捨てた。
あれは"そう見せている"のだ。山火事ならばもっと早く火の手が伸びているはず。
つまりあのあかあかと燃える輝きは、山火事に見せかけた誰かの陽動……いや、罠か。
山麓で生まれた火の手は、山頂に向かってすぼまっていく――ように見せかけて――じわじわと広がっている。
結月はなにか得心した様子で頷くと、身を翻して木々から木々を飛び渡る。
ほどなくして、火の手を逃れようと下山する鬼の一部隊を発見した。
「鬼も火を怖がるんだ。てっきり近づくかと思ったのに」
なんて呟きながら、結月はあえてその身を鬼の前に晒す。集中する視線と殺意。
「っと、これは……」
脳裏によぎるのは、幼い頃に読んだおどろおどろしい物の本。
仏教に謳われる地獄の戯画は、小さな子どもを怖気づかすにはあまりあった。
地獄に落ちちゃうかも、なんて子供らしい不安を抱いて、わんわん泣いたこともあったか。
「…………」
昔の話だ。頭を振って虚像を振り払い、両手を鞭めいてしならせる。
ヒュン――鋭く大気を切り、苦無が四つ。牽制だ。鬼はこれを尾でなんなく弾く。
「これぐらいじゃ効かないか。で、僕のことはどうするの?」
言うまでもない、とばかりに、鬼どもはじりじりと結月を包囲せんとする!
おとなしく囲まれるいわれはない。結月は身を翻して、山を降り……いや、違う。
「来るなら来いよ、追いつかれるつもりもないけどね!」
山頂を目指して走る。自ら囮になって、誰かの策に乗ろうというつもりか!
鬼のうち、半数はこれを警戒して撤退。残る半数は結月を追跡する。
ひとりで惹きつけた数としては上々か。となれば次の問題は、逃走の成就だ。
囮になって捕まりました、では笑い話にもならない。
結月は牽制と足止めの苦無を放ちつつ、抜け目ない雷霆を回避しながら走る。
まるでパルクールだ。あいにく、飛び越える障害物は人工物よりもよほどランダムだが。
(止まるな。あそこまで……あそこまで、引き付けられれば――)
そこかしこには、さきほどまで隠密行動をして仕掛けた罠がある。
いけるはず……だ。しかしやはり、少年の時分、不安というのは拭えない。
なにより、撤退した鬼どもの様子も気になる。もはやどうしようもないが……。
(走れ。そのぐらいなら、僕にだって出来る!)
駆ける。目指す先は、炎が燃える先、すなわち山頂――!
ところで、その鬼の半数――警戒していた連中はどうしたか。
火の手を逃れて山を降り、猟兵の追跡を逃れたか? 残念ながら、それは否。
「コココココ。鬼どもにしては良い判断じゃな。ま、お見通しじゃてな」
山麓を降りようとしていた鬼どもを、逆に包囲する赤備えの兵士たち。
赤狼衆。もはやこの世界のどこにも在らぬ、かつて滅びた国の死した兵士たち。
弓と刀を備えた精強なる兵士たち、その横列のはるか奥で嗤笑する妖狐がひとり。
「さて、赤狼衆、やってやりな。山狩りとは兵士の仕事にゃ見劣りするが、まあいいさ。
敵は一匹たりとて逃しゃせんのが、みどもの兵の定評じゃて。慣れておるじゃろ?」
アイリ・ガングール。かつて滅びた国に在った、ただひとり遺された女。
兵士たちはかつての将軍の声に従う。なぜなら彼らはそういう死者だからだ。
とはいえその戦いぶりは、アイリの言葉通り応時のままと言っていい。
潰走する兵を余さず包囲殲滅し、"赤狼衆の赤は返り血の赤"とまで謳われた無慈悲な追討戦術。
鬼どもに逃げる先はない。雷霆が兵士を迎え撃つが、当然アイリには届かぬ。
これはあくまでユーベルコード、術者が攻撃されれば兵士たちは露と消える。
存在しないモノ、すでに滅びた死者が現世に立ち戻るには、相応の制限がある。
それを承知しているからこそ、アイリは後ろに己を釘付け将として動くのだ。
「コココココ! 楽しいねぇ、戦ってのはどんな形でも楽しいもんじゃ!」
からからと笑い、兵士たちを手足のように率い、敵をつっつき山の奥へ奥へと追いやる。
あの山麓の日の手を、アイリも見ている。当然、その術者の狙いも読んでいる。
そしてなにより、アイリもまた結月同様、山のそこかしこに罠を敷いている。
「逃げられんよ。あんたたちは袋の鼠、となりゃあとは狩られて死ぬだけじゃてな。
ほれ、ほれ。進め進め、でなきゃ赤狼の牙があんたらを食っちまうよ、コココココ!」
誤解されがちだが、狐は立派な狩猟動物。獲物を追い詰め狩りもする。
戦争を飽きるほどに嗜んだ女にとっては、赤子の手をひねるよりたやすいのだ。
……山頂!
「ええ、ええ、わかっているわ。大丈夫、全部手はずどおりよ」
物言わぬ騎士の人形たちに囲まれ、まるで話しかけられているかのように頷くフェアリーの少女。
フェルト・フィルファーデン。かつて滅びた国の、ただひとり遺された王女。
在りし日の栄光を取り戻そうとする、自ら生み出した虚ろな希望にすがる悲しみの子。
その電脳魔術で生み出した炎の壁は、いよいよ山頂部のすぐ手前まで来ている。
「山の動物たちはみんな逃したし、手伝ってくれている人たちもいるみたいですもの。
じきにここへ、あの鬼どもが来る。そうすればあなたたちの仕事よ、ねえそうでしょう?」
騎士たちは何も言わぬ。それはフェルトが手繰り操るただの人形なのだから。
しかし敵と相対すれば、彼らは――フェルトの意思のもと――生きているかのように戦うだろう。
苛烈に。精強に。そして見よ。炎に追い立てられた鬼どもの、黒黒とした姿。
「まあ、まあ! たいへんね、一体どこの誰なのかしら。あんなに数を減らすなんて!」
目視した残存敵数、すなわちそれだけの消耗をもたらした姿知らぬ猟兵――言わずもがな結月とアイリのことだ――の手際に感嘆するフェルト。
そして表情を引き締め、騎士たちにつながる糸を、糸のたもとの指輪を構えた。
「さあ、鬼退治の大詰めといきましょう! わたしの騎士たちよ、その力を振るいなさい!」
騎士たちが弓を引く。矢をつがえ、弦を張り詰めさせ、鬼めがけて解き放つ。
降り注ぐのは無数の鏃だ。そこには赤狼衆が射ったものも加わっている。
「……始まったんだ」
降り注ぐ矢を察知した結月は、己を対象にユーベルコードを発動。
自らの存在そのものに"鍵"をかけ、木々も鬼もすり抜ける"鍵ノ悪魔"と一体化する。
「おうおう、こりゃまた乱戦模様だねえ。あっちにとっちゃ弱り目に祟り目じゃね。
コココココ! ま、撤退戦てのはそういうもんじゃて。そろそろ仕上げじゃなぁ」
敵の間から間、木々や岩の影を駆け回り、鬼の足を打ち砕く結月の攻勢。
言葉をかわさずとも、戦に長けたアイリならばそれが好機とわかる。
回収した金狐霊糸を新たに張り巡らせ、万が一の退路を抜け目なく塞ぎ、兵を動員。
倒れ伏した鬼、矢を逃れた者、それらを赤狼衆が容赦なく縊り殺していく。
無残である。だが、戦争とはそういうものだ。狩りとはそういうものだ。
「……無残ね」
炎の壁によって鬼を焼き払いながら、フェルトはひとりごちた。
いくらそれが最適といえど、これは胸を誇るべき戦いなのだろうか。
いや。名誉などどうでもいい。重要なのは敵を倒さねばならぬということ。
世界を害する者は許さぬ。世界を救うことを邪魔する者は許さぬ。
「――だから、死になさい。皆諸共、跡形もなく、燃え尽きて」
ごうごうと燃え盛り、鬼の屍を焦がす炎は、彼らを褒め称えも貶しもしない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
石上・麻琴
■心情
ふむ……山岳地帯に陣取られているのは厄介ですね
普通に攻めるのではこちらが不利と……
ただ、このような状況をひっくり返す為に僕達猟兵が居るのです
では、いきましょうか
■戦闘
ユーベルコードで巨人に変身し、その飛翔能力で上空から攻めます
牽制として技能:破魔と技能:属性攻撃を用いた霊力の弾丸……五行がひとつ、『金行』の力を込めた霊力の弾丸を降らします
その後は急降下して斬撃→上空に逃げて霊力の弾丸を降らすという行動を繰り返して敵を混乱させましょうか
できれば、城には傷をつけたくないですからね……
後は、他の猟兵にお任せしますよ
■その他
アドリブ等は大歓迎です
アリス・イングランギニョル
さぁさぁ、それじゃあひとつ、鬼退治と洒落こもうじゃないか
生憎とキビダンゴは持ち合わせてないので、お供の彼らも物語とは違うけれどね
呼び出すのはトランプ兵
武装は分かりやすく盾に槍と行こうじゃないか
ボクは勿論、後ろで見学
前に立つのは彼らや他の猟兵諸君に任せるさ
血肉がを求める渇望に比例するってーことはさ
目の前の相手じゃその渇望を満たせないと気付いたら、その感情も少しばかり揺らぐんじゃないかな?
なにせ、彼らはトランプ
文字通りに血も涙もありゃしない
敵に隙ができたらトランプ兵たちを一斉に合体
巨大化させた彼で叩き潰すとしようか
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
喜羽・紗羅
(信州上田の城攻めか。随分とデカい話になりやがったな)
だって戦争なんでしょ。そりゃそうよ
(相手は越後の龍かよ……冗談でも恐ろしいぜ)
分身して私は偽装バッグの銃火器で高所より地形を利用して援護射撃
俺は下から太刀を薙刀に変形させて一気に攻め込むぜ
巨大化する奴でしょ……それでも弱点は同じ筈
顔面狙って散弾かまして逃げて、また撃って
一ヶ所に留まらない様に気を付けるわね
俺も地形を上手く使って
懐近くに入ったら走って一気に飛び掛かる
鎧ごと貫く大業物だ――初太刀を受けて躱したら
返す刃でその首落としてやらあ
ただ数が数だ……仲間と連携して上手い具合にやってやるさ
こいつら仕留めりゃ奴の力も削げるってなら、やるだけだ!
●巨躯、相伐つ
信州上田の城攻め。歴史に聡い者ならば、その重大さはよくわかる。
ましてや、その城を制圧したのは、あの越後の龍・上杉謙信なのである。
(随分とデカい話になりやがったな……)
『だって戦争なんでしょ。そらそうよ』
己の裡に潜む別人格"鬼婆娑羅"と、思考の速度の対話を行う喜羽・紗羅。
魔軍将たるかの軍神は、当然この場にはいないとはいえ……。
その配下、かつ主力部隊に数えられる精強とあらば、身構えるのも無理はない。
(冗談でも恐ろしいぜ。この戦争、本当に勝てるのかよ?)
『勝たなきゃいけない、のよ。この世界を守ることが武士道でしょ』
(だからって相手をする敵の規模にも限度が……ああ、まあしょうがねえな)
鬼婆娑羅らしくない、奥歯に物が挟まったような物言いに、沙羅はふう、と嘆息した。
人格同士の対話は口に出す必要はないとはいえ、気を抜くとため息ぐらいは表に出てしまう。
意識を集中する……瞑目した沙羅のフォルムが"ぶれ"、そして、"分かれる"。
「……働かないなんて言わないでよね。猫の手も借りたい状況なんだから」
『わぁってるよ。やらねえとは言ってねえだろ、やらねえとは』
隣に現れた――ユーベルコード、オルタナティブダブル――鬼婆娑羅は、伸びをしつつうんざりした様子で言う。
かくして現世に別人格を表出させた沙羅は、戦場へ駆け込もう……と、して、傍らを見た。
「ねえ、何ぼけっとしてるの? 早く行かなきゃ!」
『あー、いや。あれ見ろよ』
鬼婆娑羅は薄く笑みを浮かべ、なにやら空を指差している。視線で追う沙羅。
「……は!?」
『ははは! こりゃなかなか派手なことになりそうだ!』
彼女らが見た先にあった、その光景は――。
巨人である。
山をも持ち上げるほど……とまではいかないが、明らかに人を超えた巨体。
刀を携えた巨躯が、その背に霊力の翼を広げ、戦場を睥睨しているのである!
「"貴人招来式・武天頼"――さあ、これで空の利は僕のものですよ」
巨人……本来はあどけない風貌の少年である……こと石上・麻琴は、堂々たる声で鬼どもに言った。
地の利は敵にあり。仮にここで殲滅したとして、城の奪還が成るわけではない。
だがそんな不利な状況をこそ、猟兵という規格外の存在がひっくり返すには足る。
これまでもそうしてきた。ならば此度も、それを以て嚆矢となすべし。
「さあ、いきましょうか! これなるは五行が一、金気帯びし木克の弾丸なり!」
ZZZZZTTTTT!! 地上に展開した鬼どもが、巨人めがけ雷霆をいくつも放つ!
しかし古代中国の五行思想において、雷気は木気に当たる。
金克木。陰陽師である麻琴が、万物の根源たるその大前提を忘れるはずもなし!
霊力の弾丸は雷霆を打ち払い、波濤となって降り注いで応報をもたらすのだ!
「おやおや、まあまあ。鬼退治かと思いきや、天魔調伏かなにかでも始めるのかな」
鬼と巨人とが天地に分かれて相伐つさまを、アリス・イングランギニョルは面白そうに眺める。
書物のヤドリガミにして"童話魔法"なる独自の術式を操る魔女からしてみれば、この戦いはいかにもありきたりな鬼退治だ。
あいにくお供に渡すきびだんごはない。が、見るがいい、あの巨人の威容!
「そこに火砲支援までつくとは。いよいよ荒唐無稽だね」
BRATATATATATA……麻琴の制圧攻撃を、地上から援護しているのは沙羅である。
彼女の銃火器が走らせる弾丸の軌跡を見て、アリスはやれやれと頭を振った。
これだから猟兵というのは興味が尽きない。どんな童話よりも破天荒な戦いを見せてくれるのだから。
「とはいえ、見学だけというのは心苦しいね――ふむ、足りないのは兵隊かな?」
ぺらり。手元の本をめくってみれば、挿絵に描かれたトランプの兵隊が書面から起き上がる。
「女王様の気紛れな首刎ねに。怯える可愛く、可愛そうな兵士たち。命が惜しけりゃ今日も元気に働きな?」
いたずらっ子めいて歌うアリスの声に従うかのごとく、ぞろぞろと現れるトランプ兵たち。
どこぞの童話そのままの姿をしたそれらは、しかし危険な武器を備えた立派な戦力である。
「というわけで、行きたまえ。どうぞボクに興味深い戦いを見せてくれよ」
盾と槍とを構え、縦列をなしトランプ兵たちは山間を意気揚々と進軍していく。
空から巨人=麻琴の霊力攻撃が降り注ぐなか、これを見咎める鬼どもが立ちはだかった!
血肉を求める殺戮者たちは、獲物と見ればその飢えを高めてさらに巨躯へと膨れ上がる。
だがそれは、あくまで相手が"殺すことの出来る生者"である場合のみ。
童話の中から現れたかのような、薄っぺらいトランプ兵が相手では、満たすことなど出来るわけもない!
『迷いやがったな? 隙だらけなんだよッ!!』
トランプ兵たちが槍を構えたそのとき、鬼の背後から躍りかかる影がある!
沙羅の別人格、鬼婆娑羅だ。振るうは鎧すらも貫く大業物の薙刀!
ザンッ!! 前後同時の攻撃を禍鬼は防ぎきれず、はらわたを槍で貫かれ、首を刎ね飛ばされてあっさりと討ち取られた!
『返す刀も必要ないってか? 口ほどにもねぇ!』
「そうかな? ボクにはキミが上回っただけに見えるけどね」
などとからかうアリスのほうを一瞥しつつ、鬼婆娑羅は新たに現れる鬼どもを見やる。
初太刀は仕留めた。しかし数はいまだ多い――此処から先はそうはいくまい。
『沙羅のほうはうまくやってんだろうな……』
では、援護射撃に徹する沙羅のほうはどうか?
BLAMN!! 迫りくる鬼の巨躯、その顔面に叩き込まれる至近距離からの散弾銃!
「さすがにこれだけ派手にぶっ放してれば居場所も悟られるよね……!」
コッキングしながらも、沙羅は木立を駆け抜けて追手の目を撹乱する。
頭上からは、彼女の逃走を支援するかのように霊力の雨が鬼どもを牽制していた。
やはり数の利が大きい。加えて、鬼どものあの巨大化能力だ。
何体かの鬼は、麻琴のそれには劣るもののかなりの大きさに変貌し、白兵戦を挑んでいる。
まずあれをなんとかしなければならない。鬼婆娑羅はここにはいない、ならば――。
「関係ない、誰が相手だろうとやってやるだけよ!」
己の不安に鞭をくれ、沙羅は山肌を駆け抜ける。
魔軍将の配下、何するものぞ。猟兵には多様性と、けして挫けぬ戦意がある。
空を舞い、弾丸を放ち、兵を連れ、刃を振るいて鬼退治と洒落込むのみ!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ジャハル・アルムリフ
鬼の群れを狩るとは、如何にも猟兵の肩書きらしいな
…しかし手荒で構わぬ故
獣相手より気楽で良い
樹々の間へと踏み込んだら
暗がりをゆく影を見分け、足音を聞き分け
先ずは一体、【怨鎖】で狙い撃つ
討った後は鎖を樹から樹の間へと素早く渡し
駆ける敵の行動を阻み
足を止める、また方向を変えた先へと再び放つ
怪力をも活かし、枝に巻いた鎖を引き
撓らせ、離し、弾き飛ばす
また根に紛らせておいた鎖を引き上げ
危険にある猟兵の保護や、気付かぬ敵への罠ともする
少々の手傷は戦の付き物として
毒尾の攻撃は撓らせた鎖や樹々で、籠手で受け、払い
受けきれぬなら耐性で耐える
は、行儀の悪い尾だ
手近に来れば掴み捕らえてくれよう
千切られれば毒も放てまい
●餓鬼と餓鬼
闇の中を駆ける。速く。疾く。しかして密やかに。影のごとく。
ジャハル・アルムリフは思う。鬼の群れを相手取った狩り、いかにも猟兵という肩書に相応しい仕事だと。
だが、獣を相手に山野を駆け巡るよりは、此度のそれはよほど気が楽である。
なにせ、"手荒にやってもいい"のだ。普段の狩りではそうもいかぬ。
敵は飢えたる殺戮者ども、オブリビオン、すなわちあってはならぬモノ。
(なんとしても滅ぼさねばならぬ――言い換えれば、"何をしてもいい"ということだ)
190cmの巨躯を縮こませ、木々の間を駆け、影に潜み、淡々と思考した。
(ならば、相応に始めるとしよう――たまにはこの戦の熱を隠さず暴れるのも必要だろう)
禍鬼の気配が、研ぎ澄まされたジャハルの五感をくすぐった。
影から飛び出したとき、その長い手足はわんぱくな子供めいてのびのびとしている。
気楽だ。なんともリラックスできる――いくら暴れてもいい、というのは!
そして不運にも、斯様に滾った男の前に現れた最初の鬼。
彼奴とてけしてオブリビオンとしては弱くはない。むしろ強大といえよう。
しかしその尾に、血の雫がこびりついていると気づいたときにはもう遅い。
『――!?!?』
KBAM!!
まるで液体火薬めいて血はひとりでに爆ぜたのだ。
その爆炎に紛れて飛び出したジャハルは、燃え上がる炎へと指を伸ばす。
触手、あるいは糸のように幾重にも細まるそれらは彼の指先へと殺到する。
あっというまに、編み上げられたのは黒ずんだ血染めの鎖である。
「もう終わりだ。逃すつもりはない」
じゃらり。"怨鎖"が不穏な音を立てる。ジャハルは疾走。
禍鬼が雷霆を放つより先に、怪力を以てじゃらじゃらと鎖を首輪のリードのごとくに引き、おお!
その巨躯を宙へと浮かび上がらせ……グシャンッ!!
放物線を描いて地面に落下した禍鬼は、大地という壁に叩きつけられあべこべに圧し曲がった。
屍を鎖から開放し、動脈血めいたその鎖をさらに別の木へと擲つ。
跳躍。木々から木々へ飛び渡るさまは猿(ましら)に似るか。
『!!!!』
眼下。ジャハルの接近に気づいた鬼が二体、尾を構えて待っている!
「は、行儀の悪い尾だ」
大気を切り裂き狙い来るそれを、巧みな鎖の操作によって絡め取って弾く。
その反発力を殺さぬまま、ジャハルは向かいの木の枝に鎖を絡みつけ着地している!
「さあ、どうした。貴様らの飢餓とやらは、鎖遊びに翻弄される程度のものか?」
応じる声の代わりに尾が二つ。さらに背後から一つ。当然のように察知し跳躍回避。
雷霆のおまけをも金属で散らし、ジャハルは上下左右を重要無人に舞う。
「貴様らが鬼だというなら、龍を討ってみるがいい。出来るものならな!」
鎖がじゃらじゃらと、衝突と鉄槌の気配に震えるかのごとく鳴らされる。
鬼の間を飛び交い、戦場の高揚に浸るはぐれ龍の表情は、悪童めいた剽悍たるもの。
餓鬼と餓鬼。山野を舞台に繰り広げられる攻防は、はたしていずれの勝利に終わるか――。
「ならば俺が、狩りの仕方というものを教えてやる」
おそらくは、牙を剥いた龍に軍配が上がるだろう。
成功
🔵🔵🔴
ネグル・ギュネス
【フルールと参戦】
アドリブ歓迎
世に鬼あらば、鬼を断つ
この山に踏み入れた事が、貴様らの敗因と知れ
左腕義手の【ヴァリアブル・ウェポン】起動
敵の進行方向に、黒の鋼糸を張り巡らせる
振動、接触、音を感知し、敵が寄らば合図を送る
3.2.1───今だ、フルール!
大地の力を利用した攻撃や罠を要請!
仕留めきれねば、糸に【破魔】の【属性攻撃】を付与し、巻き付け、破魔の雷光を流し込む
敵に位置がバレぬよう、山の木々に【迷彩】で隠れ、【残像】で撹乱
尻尾攻撃は黒刀で受け止め、逆に破魔を流し返して返す
敵が固まれば、一網打尽と行こう!フルール、敵にぶちかませ!
自然の強者たる妖精に、強襲の兵士
我ら二人に挑んだ愚かさを悔いよ!
フルール・トゥインクル
ネグル・ギュネスさんと一緒に
ふんふん、地形の活用ですか、いいアドバイスをいただいたのです
グルナ、どうやらあなたの力を借りるのが一番のようなのですよ
先んじてグルナの力を借りて周囲の地形を把握、仕掛ける場所と隠れるのに適した場所を把握してネグルさんと共有するのです
可能であればそう、少しだけ坂のある地点の上側に
後は合図に合わせて岩の塊を生み出して敵目掛けて転がしちゃうのですよ
個別での対応はネグルさんの方が強いですけど……
纏まった時の能力は私たちのが勝るのですよ?
エレメンタルファンタジア!さぁ、土属性の津波で全部飲みこんじゃうのですよ!
私たちの導きがあればこれぐらい容易いのです
●互いを信じ、力を合わせるからこそ
世に鬼あらば、鬼を断つ。
それは今回の相手のような見ての通りの鬼であれ、悪鬼のごとき外道であれ、同じこと。
ネグル・ギュネスという男、冷たい鋼の裡に燃える義憤を秘めた男は、いつだってそうして駆けてきた。
ましてや此度は、彼にとって大事なひとが――フルール・トゥインクルが、すぐそばにいるのだ。
「飢えた鬼どもよ! 今日が貴様らにとっての最期の日、天誅が下るときだ!」
ネグルはその激情に突き動かされるかのごとく、傾斜のある山の中腹に身を躍らせた。
そして草木を揺らすほどの大音声。当然のごとくそれは鬼どもの注意を引く!
「怯えたか? 臆したか? 所詮はそれが鬼の本性か。
違うというならばかかってこい。どうした、私はここにいるぞッ!!」
刀のようにまっすぐとした言葉と声、そして挑み射すくめる眼差しを、禍鬼どもは本能的に忌まわしく思った。
飢えとは関係ない。この男を――天敵どもを討たねばならぬと、奴らの本能が刺激されたのだ。
……そう、今の彼はひとりである。
では同道しているはずのフルールは、一体どこにいる?
よもや、悪鬼どもを恐れ、フェアリーらしく小さな体を隠してしまったと?
否である。ネグルの姿を見通すことが出来る木の枝の上、たしかに彼女はそこにいる。
(ネグルさん……大丈夫だとわかっていても、少しだけ心配なのです)
一喝して鬼どもを挑発するネグルの後ろ姿を、フルールはじっと見つめている。
心配はない。事前調査は十分に行ったし、ここは間違いなくベストポジションだ。
仕込みも上々。大事な要点であるネグルの挑発も、あの通り舌鋒冴え渡っている。
しかし――この湧き上がる不安は、そういう理屈で片付けられるものではない。
(でも、それを押して信じることが、きっと大事なのです……よねっ)
だからフルールはぐっとこらえて、飛び出したい気持ちを押し殺した。
好機は来る。自分はネグルという男を信じて、それを待つだけだ。
彼が自分を信じ、慈しみ、優しい言葉をかけてくれたように。
そう思うと、小さな体のどこにあるのかというくらい、強く温かい気持ちが湧き上がる。
あるいは、その思いに名前をつけるのだとすれば――。
さて、禍鬼どもとて、虫めいて能のない馬鹿どもではない。
ネグルの挑発には明らかな策があるとわかった上で、確実に彼を屠ろうとする。
すなわち、包囲戦術だ。
じりじりと横に広がり、ネグルひとりを六体の鬼が取り囲んでいる。
一触即発。いまさら泣いてこうたところで、殺戮者どもは獲物を逃しはすまい。
ネグルにそんなつもりはないし、たとえ半身を裂かれたとてそんなことはすまい。
「まだ私を恐れるか。ならばこちらから行くとしよう」
鬼どもが身構える。ネグルはその包囲網へ、自ら飛びかか――らない。
「……などと、馬鹿正直に言うとでも思ったのか?
見よ! 踏み込むと見えた動きはフェイント!
大地を強く蹴立て、描いたのは三日月……すなわちムーンサルトである!
見上げる鬼どもを軽やかに飛び越え、追撃の尾を鋼糸で防ぎながら着地! 包囲脱出!
そして走る! 坂の上を目指して、遁走のように一目散に!
この突然の行動に、鬼どもは警戒を諦めて追撃せざるを得ない。
それほどまでにネグルの足取りは決断的であったからだ。
六体の鬼が、尾と雷霆を纏いながらネグルを追う。距離が詰まる。だがその時!
「――いまだ、フルールッ!」
「はいなのです、ネグルさん!」
きりきりと音を立てて、ネグルは張り巡らせた黒の鋼糸を思い切り引いた!
破魔の魔力を纏ったそれは、鬼どもが予測していたよりもはるかに広範囲に張り巡らされていたのだ。
彼奴らの数、配置、そして挑発に応じるかどうか。この囮にかかるかどうか。
それを察知するための布石。引き絞られたそれは今や、鬼を囲む糸の結界である!
「グルナ! 私たちに力を貸してほしいのです!」
さらにフルールだ。土の精霊に呼びかけ、それを媒介に自然そのものに干渉する。
するとどうだ――坂の上、ごとり、ごとん、ごろごろと音を立てて、おお、あれは!
『『『!?!?』』』
「言っておくが逃しはせんぞ、貴様らはとっくに詰みだ!」
ぎしり! と、黒の鋼糸が、鬼の四肢を絡め取り拘束する。
頭上からくるもの。それは津波――エレメンタルファンタジアで起こされた土砂崩れ!
「自然の強者たる妖精に、強襲の兵士。我らふたりに挑んだ愚かさを悔いよ!」
「私たちの導きがあれば、このくらい容易いのですっ!」
そして津波がすべてを飲み込む――動けぬ鬼どもを餌食として。
糸を伝って退避したネグルのもとにフルールは寄り添い、ふたりは莞爾と笑うのだった!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マルコ・トリガー
アドリブ連携歓迎
フーン、城攻めか
どうやら敵は巨大化するらしい
なら、小さなボクはこの体と地形を生かして隠れながら攻撃してみようか
敵は数十体もいるから囲まれたら厄介だ
一体だけ【おびき寄せ】られないか試してみよう
木々の茂った場所まで牽制射撃をしながら引きつけよう
【目立たない】ように【竜飛鳳舞】で跳びながら移動して多方面から射撃
【フェイント】をかけて【2回攻撃】で緩急をつけたり、【誘導弾】を背後から撃ち込んだりしてみようか
他の猟兵への【援護射撃】も忘れないよ
とにかく一体ずつ確実に倒したいね
誰が生き残るか?
それは今を生きるボクらの方だよ
過去からしみ出た君らにこの地を渡すわけにはいかないんだ
瀬名・カデル
アドリブ、絡み歓迎
なんだかとっても強そうな鬼さんたちだね。
しかも集団でいるなら倒すのにも大変そうだよ。
手強い相手になるなら、ボクは回復と誘導役になろうかな?
あとは鬼さんたちの気を引く囮ぐらいにはボクだってなれるもんね。
どんな状況か確認するために回り道で空を低めに飛びながら近づきたいな。
山岳地帯だというなら樹がいっぱいあるところに誘導できないかな?
電気でびりびり攻撃されたり大きなしっぽで攻撃されても回避がしやすくなると思うんだ!
アーシェと一緒に、鬼さんたちに来て欲しい場所で木の枝を大きく折ったりして誘導をするよ。
鬼さんこちら、木の鳴る方へ!
深傷を負った人がいたら「生まれながらの光」で癒やすよ。
●空を舞う双星
敵は群れている。数の利。地の利、そして戦術の差。
これを覆すための方法はいくつかある――その中でもっとも手堅いものはなにか。
「そりゃ、各個撃破が一番だよね」
マルコ・トリガーはそう結論づけて、己の本体たる銃を抜くなり無造作に撃った。
ZAP!! 狙いはいい。だが鬼どもの雷霆はそれ自体が一種のエネルギーバリアである。
熱線が鬼を討つことはなく、当たり前のように奴らは小さな少年に注意を引いた!
「そうそう、撃ったのはボクだよ。怒った? 別に怒ってなくてもいいけどね」
などと悪童めかして言うと、マルコはさらに一発引き金を引いた。
ただしそれは、敵の注意を引くためのあからさまな陽動などではない。
マルコに突撃しようとしてきた、後方の禍鬼に対する牽制射撃である。
「追ってくるなら来なよ、捕まるつもりはないよ」
そしてひらりと身を翻して駆け出した!
微妙に拍子を外したような振る舞いに、鬼どもの足並みはわずかに乱れる。
わけても面倒なのが、合間合間に的確に差し込まれるマルコの熱線射撃である。
追いすがろうとする鬼がいれば、これを牽制して退かせる。
一方で、先頭の鬼が追いつきそうになれば、足元を焼灼して足止めする。
すると不思議なことに、マルコを追撃するのはたった一体の鬼になるというわけだ。
「って、ちょっとちょっと!」
ん? と、頭上からかけられた声にマルコは視線を巡らせた。
見れば、跳ねるように飛び渡るマルコと並走する形で、低空飛行するオラトリオの少女がひとり。
「いくら引き離したって、一対一じゃ危ないよ? ボクが手を貸すからっ!」
「フーン、まあ好きにすれば? ボクひとりでも十分だと思うけどね」
「……もう! 何かあってからじゃ遅いのにっ!」
オラトリオの少女、瀬名・カデルはぷんすことマルコのつっけんどんな言葉に腹を立てつつも、低空飛行を継続。
「それにしても考えたね、こうやって一体ずつ鬼を誘き出せば」
「何体いようが同じってこと。まあ、そのぶん面倒は増えるけどね」
「ううん、すごいと思うよ! ボクも囮ぐらいは出来ると思ってたけど……」
マルコに先んじられた格好だ。が、そんなことでカデルはめげたりしない。
「とにかくっ、あっちのほうに林があったから、そこまでおびき出そうっ!」
「ん。ならもう少し早く……ッ!?」
マルコは背後を見てわずかに息を呑んだ。鬼のスピードが予想よりも速い。
"獲物を追いかける"という行動が、殺戮者の飢餓を高めその巨体を膨れ上がらせたのだ!
徐々に間合いが縮まる。そのサイズは一回り、いや二回り近く……!
シュッ! と、毒の尾が、危うくマルコを貫こうとして地をほじくった。
カデルは肝を冷やす。このまま彼に注意を任せるのは危険だ!
「アーシェ! 一緒にお願い!」
呼び声に応じ、カデルが操る人形がふわりと飛び上がり、マルコを追い抜く形で林のなかへ。
遅れて木々に飛びついたカデルは、手近な枝を手折り、これみよがしに己の存在をアピールする!
「鬼さんこちら、木の鳴るほうへ! なあんてねっ」
禍鬼の目からみても、獲物としてどちらが容易いかは一目瞭然だ。
戦闘能力において、マルコに劣るカデル。あちらから殺せば話は速い!
「……!」
マルコは、禍鬼の注意がカデルに向かったのを見て、わずかに歯噛みした。
このまま少女に任せるか? 冗談ではない。生き残るのは自分たちだ。自分たち全員だ!
「射手に背中を向けるなんて、間抜けにもほどがあるよね!」
ZAP! 狙いすました威嚇射撃が禍鬼の大木じみた両足を貫き、足止めする!
木々ごとカデルを薙ぎ払おうとした爪は、がりがりと地を削った!
「ひゃあああ!」
「止まってないで飛んで! このままやっつけるよ!」
「わ、わかった!」
ふたりはそれぞれのユーベルコードと翼で頭上アドバンテージを維持。
木々の間を飛び渡ることで鬼の狙いを撹乱し、合間合間にマルコが射撃を見舞う。
「ボクだって戦わなきゃ……アーシェ、君に光を!」
人形に魔力を込め、カデルは光の軌跡を描きながら鬼を指差す。
マルコの熱線をかいくぐり、友たる人形は物陰から躍りかかり――そして一撃!
『!?』
「……これでとどめ、かな」
ZAP。精密な射撃が、体勢を崩した禍鬼の脳天を貫いた。
「はぁ。まずはこれで一体か……」
「でも勝てたよ! ボクたちのコンビネーション、だね!」
明るく笑うカデルを見て、マルコは口を開きかけ……やめた。
今は、いつもの減らず口を叩くべきではないと感じたのだ。
なにせまだ戦いは長い。倒すべき敵は数多いのだから……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
飛鳥井・藤彦
むさ苦しい鬼の団体さんの歓迎とは、また華のない仕事やねぇ。
せや。
山ん中だと大筆振り回すのも難儀やし、ここはいっちょ僕の符で綺麗な花を咲かせて貰いましょ。
人よりちょーっとばかし目はええし、鬼さんを先に見つけ次第高速詠唱で藤花繚乱を発動させますわ。あと小細工として属性攻撃で水属性を術に付与させときます。
木々に囲まれ傾斜や草なんかで足場も悪い中、逃げ回ったら転けるんが目に見えとる。
木の影に隠れるなり、藤花で相殺するなりして対抗しよか。
鬼が苛立って迫ってくれば、濡れた藤花もとい符で足滑らせてくれへんかなぁ。
体勢崩した所を木々の間から大筆を槍代わりにして突いて吹き飛ばせたら面白いやん?
ジェイクス・ライアー
ダンスホールであろうと、戦場であろうと。
紳士たるもの、品位を損なうことがあってはならない
敵情は把握した
指輪より射出したワイヤーで木々の間に足場を組み、来るべき時に備えよう
戦場において卑怯と呼ばれるものは何もない
援護も、撹乱も。必要とあらば
【千軍万馬】
傘型のライフルからの凶弾で狙い撃つ
本来なら、近接での暗殺こそ得意とするところだが致し方あるまい
負傷への対処ならいざ知らず、人間身1つでは毒へも麻痺へも対処は難しい
距離をとり、敵勢力を確実に削ることこそ最善だ
認識される前に、その息の根を止めてくれよう
Hope for the best, prepare for the worst.
さあ、仕事の時間だ。
●戦場における気品について
戦争とは無残なものだ。
いかな理由やイデオロギー、過程ややむを得ない信条、事情があったとして。
結局のところ、殺し合い奪い合う戦争、戦場は醜いものである。
「……であったとして、ダンスホールであろうと戦場であろうと、だ。
紳士たるもの、品位を損なうことがあってはならない――」
木々の間に張り巡らされたワイヤーの上。上品な装いの老紳士がひとりごちた。
ジェイクス・ライアー。瞑目し静かに佇むさまは、ともすれば休息を嗜む高貴なひとのように見えなくもあるまい。
だがここは、いまや戦場である。鬼どもが跋扈し相争う鉄火場である。
そこに身を置くならば、猟兵としてやること、なすべきことはただひとつ。
……"だとしても"、いや、"だからこそ"守るべき品格というものがある。
ジェイクスはそう考える。それは矛盾しているが、人が人たりえるための最低条件でもあった。
さもなければ、戦争の当事国同士で「人道的行為」などというたわけた言葉は出まい。
「おやまぁ、むさ苦しい鬼の団体さんだけかと思うたら、えらい華のある方がおるやん」
ちらりと、片目を開けたジェイクスが声のしたほうを見やる。
そこにはなにやら、大きな筆を杖めいて携えた、飄々とした様子の青年がいる。
飛鳥井・藤彦という男だ。ジェイクスの流儀に習うように、慇懃に礼などしてみせる。
「華か。ああ、たしかに戦場には欠けがちな要素だ。嘆かわしい」
「ここが開けた平野とかなら、僕の筆で大輪でもなんでも咲かすんやけどねぇ」
なるほど、どうやら藤彦は芸術を己の武器とするもの……ゴッドペインターであるらしい。
しかしこの、山岳地帯を舞台にした乱戦では、そんな悠長なことは出来まい。
「ならばどうするかね? 種でも蒔いて芽が出るのを待つのかな」
「あっはっは! それもええけど、ま――僕が使うのは"これ"かなぁ」
さながら扇のように、一瞬のうちにばっと広がる霊符の束。
藤彦はそれを手に、ちらりと城のほうを見やる。目を細めわずかな沈黙……。
「――"見える"のかね?」
「ええ、まあ。ちょーっとばかし、目はええんで」
ジェイクスは片眉を吊り上げた。彼が言ったのは、禍鬼どもの軍隊のことだ。
紳士ははじめから、ここを狙撃ポイントに定めて張り込んでいたのである。
ライフルに長じた己は無論のこと、この青年は同じように敵の動向を目視してみせたか。
「面白い。ならば君のその"華"とやら、ひとつ咲かせてみてはくれまいか?」
「おや? てっきりお株を奪うと怒られると思っとったんやけど」
ジェイクスは、笑いもせずに顎をさすり、こう言った。
「戦場には品位がなければならない。華やかさもまたあるに越したことはない。
だが――生死をかけた戦いにおいて、"卑怯"と呼ばれるものは、何もないのだ」
ましてや、矜持を貫いて己のポジションを誇示するなどもってのほか。
能力を持つ戦士がいるならば、その力を借りて敵を討つのは当然のことである。
「Hope for the best, prepare for the worst.(最善の状態が訪れるように祈り、最悪の事態に覚悟する)
君の国で言うならば――備えあれば憂いなし、というやつかな。手は、多いに越したことはない」
戦場傭兵ならではのシビアな物言いに、藤彦は飄々とした面持ちを崩さない。
「ほんなら、ありがたく」
「ああ。"仕事の時間”だ」
ふたりが見据えた先。近づいてくる鬼の気配がある……!
だが! 本来ならばあっという間に詰められたであろう間合いは一向に縮まらない!
なぜ? その答えは、山のそこかしこに咲き誇る藤の花にある!
"藤花繚乱(グリシナ・プレーステール)"。
梅雨時の紫陽花めいて水気を纏ったそれらは、いわば足並みを乱す罠だ。
獲物を追おうとすれば転びかけ、退くにしても山道を踏みしめるには悪環境。
そして――BLAMN!! 立ち往生する鬼どもの脳天がスイカのように爆ぜとんだ!
「ナーイスショット。狙いがええなぁ」
「本来は、こんなスナイプに使うものではないのだがね」
洋傘を模したライフルを排莢し、うっそりとした声音でジェイクスが言う。
BLAMN――キルカウント、2。藤の花に囲まれた鬼どもに逃げ場はない。
「これならいちいち、近づいて筆でぐさりと仕留める手間もいらなさそうや」
「怠惰は毒だ。紳士ならば、君も相応の働きを見せたまえ」
BLAMN。銃撃の合間のジェイクスの言葉に、藤彦はうんざりした様子で頭を振る。
ならば言葉通りに。鬼どもの滅びという、派手派手しい華を開かせるとしようか。
「藤の花に囲まれて死ねるなんざ、羨ましい鬼やねえ」
言いながら踏み出す男の口元には、飄々とした笑みが張り付いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ステラ・アルゲン
ふむ。味方の為に敵の戦力を削らなければならないのですね
ならば我が剣にてその道、斬り開こうか!
数がいるならばまずは纏めねば
【全力魔法】【高速詠唱】にて風【属性攻撃】で敵をまとめよう
【オーラ防御】も用いて風の防壁とし敵の攻撃もこれにて封じてしまおうか
敵を一箇所に纏めたら敵を討ち滅ぼす【祈り】と【破魔】を込めた【流星雨】を中心に落とそう!
もし敵の攻撃を受けたとしても【呪詛耐性】【激痛耐性】で耐えよう
仮初の体ゆえ、剣さえ振れれば傷は構わないからな
(アドリブ・連携OK)
クロト・ラトキエ
誰が生き残るかを決める…か。
えぇ、正しく!
それに…そう言われると弱い。
絶対に勝ち(いきのこり)たくなるじゃないですか。
遠目又は高所より敵の散開具合を視、
各々の交差位置、或いは中心点を掴み。
基本、移動は風下より。
気配を殺して岩場の陰を渡り、持てる内でも細い鋼糸を
地、岩上等に配して下地に。
只の範囲攻撃、2回攻撃に留める気は無いですよ?
比較的狭い範囲、ぐるり巡らせた仕掛けの内に禍鬼の何体を入れられたなら…
ごきげんよう。お暇です?
等と自ら餌に
…なぁんてわけ無い。
拾式起動。
自在の糸よ、篤と食い込め。
さぁ、望むが儘に血肉を欲し、欲する儘に力を得るが宜しい。
増大した身、肥大化したエゴの末路――
存分にご賞味を
杜鬼・カイト
※アドリブ・絡み歓迎
とりあえず全部ぶっ壊しちゃえばいいんだよね?
はいはーい、んじゃさっさとやっちゃいましょうか
地の利を活用しろって言うのなら、上から攻撃するのが定石かな?
気配を殺し【忍び足】で敵よりも上の位置に移動
その後薙刀を手に、敵めがけて加速しながら一気に下る
「一斉に散れっ」
下った時の力をそのまま利用し、薙刀を思い切り振って【なぎ払い】による【衝撃波】で敵を攻撃
同じ手はなんどもきかないだろうから、上からの奇襲は一度だけ
あとは敵と正面から対峙
敵の攻撃は【見切り】で回避、回避が間に合わなそうな場合は、近くにいる
弱ってる禍鬼を遠慮なく盾として使う(敵を盾にする)
「さあ、まだまだ壊してあげる!」
●悪鬼砕く意思、その根源は――
ごう――ごう、びょうっ!
山間を、この季節らしからぬ鋭く雄々しい風が幾重にも吹き抜ける。
言わずもがな、それは天然自然のものではない。それは剣風であり魔法の風だ。
「遅い! その程度の殺意で、仮初とて我が身を砕けはしませんよっ!」
単身、鬼を相手取って疾風怒濤の如くに立ち回る、怜悧な女騎士がいた。
剣風は彼女が生み出したものであり、その刃はさらに風の壁すらも生む。
ステラ・アルゲンと名乗るその姿は、しかしてあくまで仮初の化身に過ぎぬ。
ヤドリガミ。年経た器物の霊であらばこそ、反撃の手傷を恐れることはない。
あるいはそれは、かつての主を喪った悲しみからの捨て鉢か?
……否である。女騎士には、ともに時を歩むと決めた門があるのだから。
敵を討つ。その大目的と勝利の達成のために、ステラは我が身を惜しまぬ。
目標や規範として目指すのではなく、不言実行の生き様として戦場を駆け抜ける。
それをなせるからこそ、その身は白亜の騎士として顕現しているのだ。
四方から襲いかかる毒の尾をかいくぐり、あるいは弾き、切り払う。
雷霆が来るならば、渦を巻く風の防壁を以てこれを受け止め、散らす。
縦横無尽、孤軍奮闘。だが数の利は、いかな信念があろうと覆し難い。
ではなぜ、ステラはわざわざ、この大群を相手にたったひとりで戦っているのか?
「まだです……まだまだ、毒も雷も、私を滅ぼすには足りなさすぎます。
それともお前たちの飢えとやらは、たかが騎士ひとり斃せぬ程度のものか!」
朗々と名乗るように挑発し、憤る鬼どもの攻撃を己に集中させる。
あるいは誰かがそれを客観的に俯瞰していたならば、
はたまたステラに釘付けにされた鬼どもに、冷静さが戻ったならば、
彼女を中心に渦巻く風は、嵐めいて分厚く勢いを増していることに気づくだろうか。
仮に鬼どもが我に返り、戦場を離れようとしたとしても、もはやそれは叶わぬ。
……これが。この閉鎖空間こそが、ステラが求め完成させつつある"布石"だ。
鬼どもが友軍を狙い待ち構えるというならば、道を切り開くが剣たる己の役目。
であれば、一匹たりとて討ち漏らしてはならぬ。一匹でも多く倒さねばならぬ。
そのために自ら矢面に立ち、傷を恐れず立ち向かい、そして風を起こす。
風はステラを守る壁であり、その剣を早める追い風であり、そして敵の退路を塞ぐ鎖でもある。
はじめは散開していた禍鬼どもも、ステラという台風の目を中心に集め"られつつ"ある!
一網打尽とする切り札がステラにはある。ゆえにこその誘き出し。
とはいえ、数が多い。そして禍鬼どもの"飢え"はさらに高まり餓えていく。
(攻撃が徐々に速まっている? これはなかなか骨が折れそうな……!)
"仕上げ"の前に、剣も振れずほどに傷つき倒れるのがオチか?
あるいは城門たる彼がいれば――否、それは騎士らしからぬ甘えというもの。
肌をかすめた尾、そこから流れる毒と呪詛を己の信念と意地で押し殺し、ステラは踊る。
戦場を舞台とした、徒花のような舞踏。剣舞。その果てはいつ訪れる――いや待て、鬼どもを見よ!
ステラは訝しんだ。
激しくなるばかりであったはずの鬼どもの攻撃が、突然ぴたりと止んだのだ。
なぜだ? まさか、奴らは己を追い込み、じわじわとなぶり殺す算段か?
……否である。あれだ、禍鬼の首や四肢に絡まる無数の鋼糸。あれが理由だ!
「糸……?」
「ごきげんよう。お暇です?」
出し抜けな声。見れば、そこにはにこにこと笑う優男が立っていた。
ステラのほうに、手を振りながら挨拶までしてくる気安さ、気楽さである。
「……潜んでいたのか? いつから!」
「さあ、それはいいでしょう。現に今まで手出しはしていなかったんですし」
優男……クロト・ラトキエは悪びれもせず言うと、鬼どもを一瞥した。
「が、あのままだと、うまく集めたとしても貴女がひどく傷つきそうでしたので。
余計なおせっかいでしたなら謝りますが、そのへんどうでしょうかね?」
「……いえ。お心遣いは感謝します。事実、手をこまねいたのは確かですから」
ふう、とわずかに嘆息しつつ、ステラは素直に認めて礼を示した。
問うまでもなく、この糸が、目の前の男=クロトの仕業であることはわかっている。
「"誰が生き残るかを決める"と、賢者さんも言ってたでしょう? あれは正しい。
そして、そう言われると弱いんですよ、私。どうしても勝利(いきのこり)たくなってしまう」
己だけではない、肩を並べた猟兵たちも、無事で帰ってほしいと願う。
その気持ちは間違いではない。ステラがひとりで敵を集め、とどめたように。
「さて、これで一通りは絡め取ったわけですが――」
見よ。新たな鬼どもが数体、ふたりのもとへ現れ襲いかかろうとしている。
「あれを招き入れるには、まだもう少し手間が――」
と、クロトが言いかけたその時! 頭上から猛然と降ってきた人影ひとつ!
「一斉に、散れッ!!」
黒い髪をたなびかせ、スカートを翻すさまは見目麗しい少女である。
薙刀を振るい、神霊体となって敵を切り裂くさまはまさに巫女そのものだ。
しかしてその実、この異色の双眸を持つ猟兵――杜鬼・カイトは少女ではなく少年であり、
"ある理由"から、この禍鬼どもに対する敵意みなぎる猟兵『の片割れ』であった。
鉄槌のごとく降ってきた奇襲は、すなわち放射状の衝撃波を伴い敵を吹き飛ばす。
薙刀の追撃を受けた鬼どもは、糸と風で囲われた結界の中に叩き込まれたのだ!
「全部ぶっ壊しちゃえばいいんでしょ? だったらほら、一思いにやっちゃってよ!」
「催促されてしまいましたね。ま、いいでしょう」
クロトは手に握る糸を、躊躇せずきゅ――とさらに絞る。
「"拾式(ツェーン)"、起動。自在の糸よ、篤と食い込め――!」
ぎち、ぎちぎちぎち――ぶちぶちぶち、ぶちぶちり!
鬼どもを絡め取った糸は、すなわちそのまま鬼を引き裂き切り裂く刃となる!
だが裏を返せば、それは拘束からの解放をも意味する。目配せされたステラは頷いた!
「もはやお前たちが解き放たれることはない。降り注げ、流星よ――!」
剣先を向けた瞬間、天より降り注ぐはまさに"流星雨"である。
破魔の祈りを込めた光芒は、狙い過たず邪悪な鬼どもを貫き……崩壊せしめた!
「……これでどのぐらい? まだ足りない。まだ、もっと壊さなきゃ」
光が邪悪を焼き尽くす光景を見ながら、カイトは薙刀を手にひとりごちた。
鬼は滅する。すべてだ。すべて。この戦場には"彼"がいる。
「ねえ、他の鬼どもはどこ? 知ってたら教えて」
「待ってください。そう焦っても逆に足元を掬われて――」
「いいから!」
諭そうとするステラに、カイトは逆に食って掛かった。
……そしてはっと我に返り、深く深く息を吐く。
「なにやら事情がお有りのようですが、援護に向かうとしても一拍起きましょうよ、ね?」
クロトは人当たりのいい笑みを浮かべて冗談めかすが、カイトの顔色は浮かばれない。
「…………兄さま……」
カイトの呟きは、はたして彼のもとへ届いたのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴァン・ロワ
アドリブ◎
強~い敵相手に真っ正面から対峙するなんて
そんなの正気の沙汰じゃないよねぇ
適当にへらっと笑って【影渡り】
戦う準備はもういいかい
けどおあいにく様
こっちはアンタらとぶつかるつもりは毛頭ないんだ
『目立たない』様に『地形の利用』
影の中でもより深い影から
自身の牙に『毒』を仕込んで『投擲』
即『逃げる』
毒持ちだから効きも弱いかもしれないけど
まあ、嫌がらせには丁度いいでしょ
でかくなられても
的が当てやすくなっただけにしか見えないぜ?
当たりもでかいのはめんどうだけど
おちょくりながら全力回避
その間に月蝕でひっそり『生命力吸収』して
動きが鈍くなったら
『2回攻撃』牙を突き立てる
卑怯?やだなぁ
手間隙かけただけだよ
ユエイン・リュンコイス
●連携アドリブ歓迎
さて、さて。こちらも始めるとしよう。
鳴神だのと嘯いている様だから、黒鐡の機械神でも使いたいけれど…流石に大きさが過ぎるね。
ここは普段通りに行くとしようか。
機人を前面に出しつつ[グラップル、カウンター]で格闘戦を行い、ボクは後方から『観月』による[援護射撃]を。隙を見て【絶対昇華の鉄拳】も叩き込んでやろう。
相手の手の内は麻痺に毒、自己強化か。それならやりようはいくらでもあるさ。
機人もボクも、人の形を取る無機物。[毒耐性]はあるし、機人はそもそも糸と魔力によるアナログ操作だから[電撃耐性]も問題ないだろう。力だけなら、より強い相手を経験済みさ。
なら、何も問題はないよ。
ランドルフ・リードル
「数が多いからこそ確実にいった方が良いな」
この地形を上手く味方に付けられたらいいんだが
自身に草木、土で簡易迷彩を施し地形の情報収集しつつ目立たないよう忍び足で木々の合間を移動、毒と麻痺の力を織り込んだUCで攻撃
(この場所は知られた)
攻撃したらすぐに別の木や茂みへ足音に注意しつつダッシュ移動
これを敵が倒れるまで繰り返す
基本的に同一個体を集中的に狙うが範囲内に別個体がいたら巻き込めるよう攻撃
敵の動きや移動音にも注意し、先手取られることがないよう回避に備える
また自身の勘は頼り過ぎず、無視し過ぎず
まずいと思ったら周囲にも注意喚起
どうしても避けられない攻撃のみオーラ防御でダメージ軽減を行なって耐える
●燃え上がる拳、影に潜みし者たち
……長い長い深呼吸のあと、ユエイン・リュンコイスは目を開いた。
傍らには相棒にして半身たる"黒鉄機人"。己も、彼も、最高のコンディションだ。
「鳴神だのなんだのと、鬼の分際で嘯く輩には、本当の"機械神"を見せてやりたいけれどーー。
ここではさすがに大きさが過ぎる。黒鉄機人、ここはいつもどおりのボクたちでいこう」
ゴシュウ――半身たる人形は、関節駆動部から蒸気を吹き出しこれに応える。
ともに人形(ミレナリィドール/からくり人形)である。
だからといって、ユエインは何も感じない無感動な少女なわけではない。
喜怒哀楽があり、邪悪に対して憤る心があり、此度の戦いへの義憤がある。
「どんな世界でも、そんな軍勢でもオブリビオンのやることは変わらない。
世界そのものに仇なし、未来を侵略し、破滅させようとする。
銀河帝国。
キマイラフューチャー。
同じだ。魔軍将だろうとなんだろうと、根本は何も変わらぬ。
であれば止めなければならぬ。彼奴らを滅し、戦いを終わらせねばならぬ。
「――さて。ボクらも始めるとしよう」
ずしん。
ずしん、ずしん、ずしん――。
見よ。闇の向こう、ユエインと機人の前に現れた異形どもを。
禍鬼。殺戮と闘争に飢えし、鳴神を僭称する毒蠍のごとき災害。
「黒鉄機人ッ!
ゴシュウ――! 先手を取ったのはユエインと黒鉄機人だ!
敵の群れがサソリめいた尾を構えた瞬間、蒸気とともに黒いボディが疾走する!
一歩、二歩、三歩! ――ズシン!!
大地をクモの巣状にひび割れさせるほどに強く踏みしめ、黒鉄機人は高く跳躍。
ジェット噴射じみた加速を得て、頭上に身を翻す。鬼どもはそれを見上げるのみだ!
そこへ再度の尾による一斉攻撃である。回避余剰空間は……ない!
だが、覚悟の上だ。ユエインは糸を巧みに操り、黒鉄機人の四肢を駆動。
ややタイムラグを置いて迫りくる毒尾を受け流し、弾いた尾を別の尾にぶつけることで防御。
一部の尾は先端が機人の装甲をギャリギャリと火花散らして削るが、想定の範囲内である。
ぐるぐるとボールのように回転する黒鉄機人は、その勢いのままに敵の只中に落下……いや、着弾!
KRAAAAAASH!!
粉塵を巻き上げて巨躯が地面を削る。さしもの禍鬼どもも、この質量にはたじろいだ。
痛烈なカウンターがヒットした形だ。そして体幹を崩した敵を機人は逃さぬ!
「まだだ! "観月"ッ!」
それを後ろで座してみているユエインではない。
BRATATATATATATA! 蒸気型マルチツールガジェットを機関銃形態に変形させ、援護射撃!
禍鬼どもは獣じみて飛び退いてこれを避ける。そして退いただけ機人が前に出るのだ。
ならばと彼奴らの周囲に、紫雷がばりばりと帯電し……ZZZZTTTT!! 雷の鞭を放つ!
「甘いよ、ボクと機人には毒も雷も通用しやしないっ!」
そしてなによりも、ただ力の強さだけならば、ユエインは今以上の強敵を何体も相手取ってきた。
「黒鉄機人! 押していくぞ!」
臆する心はなし。ユエインは相棒とともに決断的に前進する。
「……あーあ、うまくいっちゃいるが、ありゃ正気の沙汰じゃねえよ」
そんな勇壮たる戦いぶりを、影から呆れた様子で見やる男がいた。
名をヴァン・ロワ。飄々とした軟派者、後ろ向きな自由を愛する自堕落者だ。
あんな鬼共を相手に、正面から挑むなど彼にとっては狂気の沙汰である。
「こちとらハナからそんなつもりはないんだよ、まったく暑っ苦しいね」
とはいえ。ニヒリズムに浸るようなことを言いつつ、ヴァンはその場を離れない。
加勢することもなく、さりとて見捨てることもなく、ユエインと機人の戦いぶりを見ている。
「……ホーント、狂ってるとしか思えねぇよなぁ」
へらりと笑って言う横顔には、言いようもしれぬ感情の色が浮かんでいた。
そして俯瞰しているヴァンだからこそ、敵の動きの行き先が読めている。
おそらくユエインも、漠然と気づいてはいるはずだ。敵の包囲網の存在を。
「ほっときゃこっちは気づかれずに逃げられるが――っと」
それも浮かびはした。が、ヴァンは、彼らしくないことにその選択肢を放棄した。
("同業者"がいるのにそれやっちまったら、俺様が薄情者だしなあ?)
闇を見る。そこに"同業者"はもういない。
が、影から影を渡るユーベルコードの使い手は、たしかに気配を感じている。
(……地形の活用とか、その手の話はどうしたんだ?)
ヴァンが見つめる暗がりとはまた別の場所。
土で簡易迷彩を施した青年――ランドルフ・リードルが鎌首をもたげた。
彼もまた、ヴァンとはまた別の……ひどくアナクロな方法で隠密を続けていたのだ。
ユエインと機人の戦いぶりを目の当たりにしたとき、ランドルフは正直怖気づいた。
なにせまだ周辺地形の捜索と情報収集は十分に終わっていなかったし、
加勢するにしても、彼の戦い方とユエインたちのそれはまるで相性が悪いからだ。
(あのデカブツが大立ち回りしてるんじゃ、俺の"銀刃"も飛ばせやしない)
より遠く、より早く。銀の光刃を撃ち出す速度はコンマゼロ秒以下で十分である。
裏を返せば、それだけに精密な狙いを万全の準備が必要であるということだ、
もしも大立ち回りのさなかに、誤射でもしてみろ。大変なことになってしまう。
(――とはいえ)
この周囲の闇のどこから己を見ているであろう"同業者"の視線を感じつつ、ランドルフは思う。
ここで見過ごすのは、寝覚めが悪い。地形はもとより、猟兵もまた味方なのだから。
(まだこの場所は知られちゃいない。敵にも味方にも。なら……やれるか?)
ゆえに伏してその時を待つ。機人と少女の舞踏を、影から見守る奴らがいる。
……そして!
「白き指先、繋がる絹糸――」
禍鬼が自分たちを包囲しつつあることを確信したユエインは、賭けに出た。
「振るわれるのは、昇華の鉄拳!」
絶対昇華の鉄拳(サブリメーション・インパクト)。
黒鉄機人の切り札にして、圧倒的熱量による殴打で敵を破壊する必滅術式だ。
そのぶん隙は大きい。だが包囲網を突破できれば御の字――!
(いいぞ、いいぞ。その調子で大きな大きな明かりをつけてくれよ)
ヴァンは喉を鳴らして笑った。光はいい。光が強まれば相応に影も伸びる。
そこは彼の領域だ。沈み、浮かび、戦場を駆け抜ける彼だけの海原となる。
(チャンスは一度。仕損じれば、おそらく敵は巨大化する――)
ランドルフは呼吸を止めることで全身の筋肉を硬化し緊張させる。
ゴシュウ――! 燃え上がる機人の拳が、禍鬼に――振り、降ろされた!
(Citius)
「欠片も遺さず――」
(Fortius)
「……無に、還れッ!!」
"Perficio!!"
言葉を交わしたわけではない。
だがその時、ユエイン=機人とランドルフの呼吸は完璧に噛み合った。
鉄拳の着弾と同時、隙を狙おうとした鬼の脳天に銀の光刃が突き刺さる。
だがまだ一手足りぬ! 雷霆を纏った、第三の鬼の攻撃が――。
「……せいぜい嫌がらせしか出来ねえんだよ、俺様はさ」
その影から、ぬるりと起き上がる法師がいた。
「けどまあ、やったほうがいいならやるがね――さて、鬼さんこちら」
禍鬼の肩に手を載せ、背後を取ったヴァンが己の"牙"を走らせる。
「この世とのお別れは、『もういいかい?』」
斬撃――首と胴が泣き別れし、第三の鬼はそのままに倒れ伏した。
卑怯? いいや、これはわざわざ"手間暇をかけた"ということだ。
驚いた顔で見返すユエインは、ヴァンはきざったらしく流し目をして影に沈んだ。
少女がこぼそうとした言葉は、鉄拳がもたらす昇華の熱が洗い流してしまう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイラ・エインズワース
鳴宮サン(f01612)と
主力ダケあって、強そうな相手ダネ
でも、ココを通らなきゃいけないヒトたちがいるんダ
だから、押し通らせてもらうヨ
岩陰に隠れて、期を待って鳴宮サンと同時に仕掛けるヨ
合図はきっといらない
ダッテ、タイミングは大体わかるからサ
【高速詠唱】に【全力魔法】と【呪詛】こめて
駆使する槍は二百に迫る
50で逃げ道の封鎖と牽制、100を本命の一矢に
要となる位置を縫い留めるためにタイミングを計っテ叩き込むヨ
残りの50は……
岩陰に、起伏に、いたるところに忍ばせテ
相手の雷霆に合わせテ、不意を打つように避雷針替わりニ
本当に自分の身も大事にしてるんだカ……
最初よりは良くなったカラいいけどネ!
鳴宮・匡
◆レイラ(f00284)と
有象無象より歯応えはありそうだけどな
ま、心配いらないさ
何があったって負けはないよ
守るって約束したろ
岩陰に潜んで敵部隊近くへと進行
タイミングを合わせ同時に
横合いを衝くように奇襲
合図はなくても
いつが最適かなんてお互い判る
注ぐ雷霆はレイラが逸らしてくれる
こちらは攻撃に集中しよう
槍に縫い留められた相手から順に射抜いていくよ
急所を狙って無駄なく落とす
巨大化して攻撃が通り難ければ
【抑止の楔】で主要器官を潰し、意気を削ぐ
眼、腕、脚……それから尾あたりか
レイラへ敵を近づかせないよう気を配り
必要に応じて援護射撃
……え、自分の身も守れ?
わかってる、大丈夫だよ
自分を大事にするって約束したろ
●道しるべ
猟兵たちによる大攻勢は、禍鬼どもにかなりの痛手をもたらした。
大幅に数を減らした禍鬼の軍勢は、結果としてひとつの方策を打ち出した。
すなわち――あえて今の時点で行動を開始するという強硬策。
部隊がどのみち殲滅されるならば、少しでも被害を出そうというあまりにも危険な判断だ。
まともではない。尋常の部隊であればもはや狂気の沙汰と言ってもいいだろう。
それをやる。それがオブリビオン。本質的な滅びから解き放たれた過去の残骸ども。
そして……禍鬼どもの飢えは、それだけ底なしなのだ。
しかしこれは、彼奴らを壊滅させるための好機でもある。
部隊が動くということは、その規模に応じて相応の隙が生まれる。
戦場の常だ。それを、誰よりも心得ている青年がひとりいる。
「だから、連中が行軍を始めたところを叩くんだ」
「不意打ちダネ。主力ダケあって、強そうな相手だケド……」
レイラ・エインズワースの何気ない呟きに、鳴宮・匡は首を傾げた。
「たしかに、有象無象よりは歯ごたえがありそうだけどな」
ま、心配いらないさ、といつものように表情を変えぬまま言う。
「何があったって負けはないよ。戦ってるのは俺たちだけじゃないし」
……僅かな空白。
「――守るって、約束したろ」
そんな匡の言葉に、レイラは一瞬きょとんとしたあと、くすりと笑った。
「そうダネ。ココを通らなきゃいけないヒトたちのためにも」
戦わねばならぬ。ふたりは、もはや言葉なく頷きあった。
……そして、禍鬼どもの、百鬼夜行じみた行進が始まる。
とはいえ、当初の部隊数から考えれば、それはもはや残存勢力に等しい。
すでに七割以上が猟兵の総攻撃によって消滅し、これを隠れ蓑にした形だ。
だからこそ、禍鬼どもに警戒はない。見据えるべきは遠き獲物ども。
「――それが迂闊なんだよ」
『『『『!!!!』』』』
岩陰から現れた人影、匡! 愛銃を構え、防御のひとつもなしの丸腰だ!
いくら警戒を欠いていたとはいえ、禍鬼の群れはこれに瞬時に対応する。
"してしまう"。
匡が飛び出したのと全く同時。
二人の間に合図はない。そんなものがなくとも問題はないからだ。
鬼どもの視線が彼に集まっていたその時、対面でレイラが動いていた。
周囲に浮かぶは、およそ200本近い槍。その全てが冥界の鬼火を纏う。
"再演・冥府の槍(リプロデュース・ファントムスピア)"。
まず五十。これらが鉄柵めいて、残存部隊の前後を塞いだ。
さらに百。これらが、匡をめがけようとした尾と鬼の爪を串刺しにして防ぐ。
ZZZZZZTTTTT!! 鳴神の雷霆が――いや! 冥府の槍がこれを妨げている!
残る五十! 巧妙に地形に忍ばされた、避雷針替わりの槍だ!
匡はそれに驚かない。レイラならそうするはずだと確信していたからだ。
瞳が海のような蒼を帯びる――見えた。鬼を殺すべきその間隙が。
「もう、動かないでいてくれよ」
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAM!!
……一陣の風が硝煙を洗い流したとき、鬼どもはひとり残らず倒れていた……。
……静寂が訪れたとき、レイラは匡を見て肩をすくめた。
「? なんだよ」
「本当に自分の身も大事にしてるんだカ、ってネ」
はてな? 呆れた様子のレイラの言葉、匡はとんと見当がつかぬ。
約束は守っている。己の体も同じように大事にしているのだ。
「お前がそうしてくれるって、わかってたんだからさ」
青年の言葉に、レイラは少しだけ照れくさそうに微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
──さて、身軽に動かせてもらおうか
山岳地帯となりゃぁ【暗殺】が輝くってなァ?
──悪いが、俺は消えるぞ
ステルスクロークを起動
木から木をパルクールで飛び回り、【忍び足】で静かに移動
軍勢の背後を取り、一人を【暗殺】、すぐさま離脱
そしてまた木の上を移動して、軍勢の別側面を陣取り一人【暗殺】
そしてまた離脱、移動──これを繰り返す
大火力で薙ぎ払うのは、主役がやることだろ?
いつの間にか一人ずつ消えていく恐怖を思い知りな…尤も、恐怖を感じるのかどうかは分からんがね
どれだけ欲望に正直になろうが
どれだけ血肉を求めようが
それに付き合う義理も、必要も無い
淡々と命を狩り、処理するだけ
『戦い』じゃない
『作業』なんだよ
●暗闇
ところで、この禍鬼部隊の攻略戦が始まってから、休むことなく働き続けている男がいた。
だが、禍鬼はおろか、猟兵の誰一人として、その姿を見てはいない。
おそらく彼の存在を知っていたのは、親しい一部の猟兵のみだろう。
実際に見るがいい。暗闇の中、"なにか"に気づいた鬼が、どさりと倒れ伏すのを。
他の鬼すらも気づかぬほど、一瞬にして、かつ静かに行われた見事な暗殺である。
……それをなしたものは姿を見せない。だが、たしかにそこにいる。
その存在を知らせているのは、頭上でぎしぎしとしなる木々のこすれる音だろう。
『!』
一体の鬼が、風もないのに不思議としなる枝葉の違和感に気づいた。
それが――禍鬼に情緒があるのかはさておき――その鬼にとっての不幸であった。
"気づかれた"。その事実を、彼はけして見逃しはしない。
『……!?』
やはり音もなく、姿もなく。
一撃で鬼の喉元を突いた姿なき暗殺者は、屍が倒れ伏すより先に影に潜んでいる。
……この途方も無い暗殺行動、およびそれに伴う地形の踏破、さらに全体状況の把握。
ありとあらゆる、すべての猟兵が行動するための"段取り"を、彼は一人でこなしている。
(大火力で薙ぎ払うのは、主役の仕事だ。端役の仕事はこのくらいがちょうどいい)
ヴィクティム・ウィンターミュート。ステルスクロークによる、光学・電子的多重偽装迷彩。
とはいえ、いくら電脳魔術の研鑽たる装備を用いたところで、テクノロジーには限界がある。
つまり彼を完全な"透明の存在"たらしめているのは、ひとえにヴィクティム自身の技量による。
息を潜め、外界とのあらゆる接続を断ち、己を一個の機械のように定義し、淡々と駆動する。
並の精神力でできることではない。ましてや、それを攻略戦の間、ずっとである。
(いつのまにかひとりずつ消えていく恐怖を――いや、そんなもんを感じる心はねえか)
また一体の鬼を仕留めたヴィクティムは、影のあわいに消える狭間に思った。
血肉と殺戮に飢えた鬼。なるほど、いかにも下賤である。
正道を歩む、それこそ"主役"らしい者たちは、きっと義憤を抱くのだろう。
あるいはひねくれた連中は、その哀れさとみずぼらしさをあざ笑い、唾棄するか。
("どうでもいい"。――ハ、俺にゃ似合わねえセリフだな)
戦友が口癖にしていたフレーズを心のなかで零し、己自身にアイロニーの笑みを向ける。
敵がどんな事情を背負い、どれほど獣じみた執着を持っていようが、関係ない。
付き合う義理もない。
怒りを燃やす必要も、
唾棄する必要も、
嘲る必要も、
なにひとつありはしない。無駄だ。
淡々と命を狩り、戦争目的を達成するという"勝利"に向けて突き進む。
(これは『戦い』じゃない――)
少なくとも、カウボーイにとっては。
(……『作業』なんだよ)
その手にガラスのナイフを握りしめて、そしてランナーは影へと沈む。
つかの間見上げた空に、あの灰色の重苦しい天蓋が見えたのは気のせいだろうか。
あの頃よりくそったれな心持ちになることなんざ、きっとないはずだと思っていたのだが。
成功
🔵🔵🔴
叢雲・源次
戦場に事の善悪は関係無い…しかし、ただ蹂躙する為だけに存在している貴様らを生かしておくのはいささか忍びない。ここで悉くを討ち滅ぼす。
敵は複数…地の利を生かさねば不利になる…
この時期、UDCアースの日本と同様ならば雨季の後…地盤が緩くなっている可能性がある…山岳地帯ならば、もしや。
攻撃を切り抜けつつ高台を取り、対神太刀を地面に突き刺す
「こちらがただの一人と見誤ったのが貴様らの敗因だ。」
対神太刀の特性、エネルギーの放出を行使し地面に衝撃を与え土砂崩れを引き起こさんとする
即座にその場を離脱し、横合いから突撃、土砂に巻き込まれ隙を見せた敵を悉く斬る
「貴様らの断末魔なら、所詮その程度だろうよ。」
ジンガ・ジンガ
ほんとさァ、戦争なんざ他ントコでやってよねェ
なァーんでココでやんのかにゃー
いつも愛されゆるふわ小悪魔ピンクな俺様ちゃんも、たまにはセンチメンタルになっちゃうじゃんよ?
【聞き耳】たてて戦況の【情報収集】
敵の薄い場所への奇襲狙い
【クライミング】で木に駆け上がり
【目立たない】よう【忍び足】で木々を渡り【地形の利用】
敵の近くに寄れたら
戦う他の猟兵ちゃんの存在も利用しつつ
自分とは逆の方向へ礫か何かを【投擲】
【フェイント】かけて【だまし討ち】の【先制攻撃・2回攻撃】
敵の攻撃は【見切り】他の【敵を盾にする】ことで回避
無理そうなら【咄嗟の一撃】オミマイしたげる
生き残んのは俺様ちゃん
死ぬのはお前
カンタンっしょ?
●光と影
この手の集団戦となると、大掛かりで派手派手しいことをやらかす猟兵がひとりは出る。
自称・愛されゆるふわ小悪魔ピンクこと、ジンガ・ジンガはそれをよく知っている。
それ自体はどうでもいい。他人の流儀にいちいち口を挟む必要もあるまい。
重要なのは、それは体のいい"隠れ蓑"になるということだ。
「さぁーてさてさて、俺様ちゃんの手間を省いてくれるのはどの猟兵ちゃんかにゃー」
あちこちから届くかすかな音を聞き分けるほどの聴覚を研ぎ澄まし、羅刹はうずくまる。
機を待っているわけではない。最短効率で、かつ安全に、手っ取り早く仕事できる瞬間を待っているのだ。
ようは自堕落だ。この男、斯様に日々をダラダラと生きるろくでなしであった。
そもそもからすれば、このサムライエンパイアで戦争が起きている事自体が気に食わないのだ。
おかげでこうして、別に来たくもない戦場に駆り出されているのだから。
面倒である。……いや違う、センチメンタルな気分になってしまう。
生まれ故郷とその世界を守るため、いざ決戦だ!
……などと、発奮するような性格でもない。やりたくもないし。
それでもこうして戦いに赴くくらいには、やはりどうしても体が動いてしまうのだ。
「ほんとさァ、戦争なんざ他ントコでやってよねェ」
自分はただのんびりと生きていたいだけなのに。
世の中、ままならないものである。
……そんなジンガが目をつけたのは、フォーマルスーツを着たひとりの男であった。
腰に佩いた刀を見るあたり、おそらくは剣豪かそのたぐいだろう。
この寡黙な男、名を叢雲・源次という。鉄で出来ているかのような無面目である。
ちゃらんぽらんで口を開けば駄法螺を吹かすジンガとは大いに対照的といえよう。
ともあれ、源次。瞑目し、考えることはひとつである。
(この時期、サムライエンパイアの気候がUDCアースのそれと同一ならば――)
ちょうど梅雨明け。すなわち、山岳地帯は雨により地盤がゆるくなっているはず。
もしや、と剣豪は考える。事実、その推測は正しい。
すでに幾人かの猟兵がやっているとおり、山肌を崩し土砂流を起こすのは非常に容易い。
ならば目指すは高台である。問題は、土砂に巻き込む敵の陽動だ。
「……是非も無し」
木の上からそれを見下ろしていたジンガは、思わず唖然とした。
なぜならこの男、あろうことか刀をひとつふたつ佩いただけの状態で、鬼どもにまっすぐ向かっていったからだ!
自殺行為である。しかも足取りは、徒歩どころか一歩ごとに速度を早めている!
(おいおいおい。何何々、猟兵ちゃん一体全体なにするつもりなワケ)
ヤバいんじゃないか、と思いつつも、木々を飛び渡りジンガはこれを追う。
一方、地上では、源次と禍鬼の軍勢がまさに今接触していた!
『『『!!!!』』』
「――押し通る」
あなや! 剣豪、抜刀を以て襲い来る毒尾を切り抜けたかと思えば、速度を落とさずなお走る!
(え、何、暑さで狂った? 狂っちゃった系?)
ジンガももはやわけがわからない。が、こうなったら追うしかない!
逃げる源次。追う禍鬼。それを追うジンガ。
いかに剣豪が腕利きといえど、数の利とは覆し難いものである。
徐々に尾が、雷霆が、その身を――彼はサイボーグではあるが――切り裂いていく!
「ああ、くそ、俺様ちゃんこういうキャラじゃねえんだけどォ!」
ここまで来たら一蓮托生、ジンガは木の上から礫を投擲し、とっさの囮とした。
鬼どもの視線が礫を追い、遅れてジンガ――が、いた場所を見上げる!
「まぁーフェイントなんだにゃー、いやホントこれ俺様ちゃんのガラじゃねェって」
ジンガは鬼たちの背後! ダガーによる鋭い一撃がこれらを退ける!
「おかしくね? 俺様ちゃん楽させてもらうはずだったんですけど!?」
「是非も無し」
「それそんな万能ワードじゃねッからな!?」
結果として、好対照なふたりは、肩を並べて高台めがけ逃げることとなる。
ジンガのインターラプトによりもはや敵の攻撃は届かない。
が、それもあくまで、全力疾走して登ればの話!
「こ、これで、ろくなプランじゃなかったら、お、俺様ちゃんキレるわ!」
「いや」
ぜいぜいと息を切らすジンガをうっそりとみやり、源次は言った。
「策は成った。こちらをただのひとりと……否、ふたりと見誤ったのが奴らの敗因だ」
ぐるり。鞘から抜き放ち、逆手に握りしめるは"対神太刀『黒ノ混沌』"。
これなる剣が持つ特性――すなわち、エネルギーの保持と放出である!
「やっべ」
ずぐん――太刀の切っ先が地面を貫いた。ジンガは本能的危機を察知し駆け出す。
穿たれたそこからどうん、と大地が揺れ、たちまち土砂崩れが地鳴りとともに始まったのだ!
「さあ、逃げるか、この期に及んで俺たちを討とうとするか、選ぶがいい」
大地の怒りが敵も味方も飲もうというその瀬戸際で、源次は鬼どもに言い放った。
「どちらにせよ、貴様らのあげる断末魔など、この地の揺るぎの万分の一にも足りるまい」
所詮、餓鬼の価値などその程度。
「ただ蹂躙するために存在する貴様らを、生かしておくのは忍びないがゆえ」
「って口上打ってる場合じゃないんじゃね!? 離脱しねェーとっしょ!」
「是非も無し」
「だぁからそれそんな便利ワードじゃねーって!!」
ずずん――!! 土砂が、逃げ遅れた鬼どもを飲み込んでいく……!
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
杜鬼・クロウ
単騎・アドリブ・負傷◎
此度相見えようとは(威厳・存在感
テメェの力は十二分程知っている
誰よりも
故郷で主やお嬢と禍鬼退治した過去
己が信ずる道を往く背中を追った
正義の礎
今も根底に在り貫き通す
邪魔立てするなら
何度でも斬る
己を纏う雰囲気一変
心頭滅却
烏が鳴き飛立つ
同時に走る
七つ道具から小町紅握り【無彩録の奔流】使用
朱の軌跡
蔓延る鬼を真正面から切り拓く
敵の攻撃は特性把握した上で回避(見切り
防御一切無し
敵が連携取るなら剣に水宿し地盤を崩す
敢えて足場悪化させ(属性攻撃・第六感・地形の利用
地面滑りつつ混乱に乗じ首と胴を狩る(部位破壊・2回攻撃
俺はこんな処で止まっている暇などねェンだ
拭った血は鮮やか
映る景色は何色か
●聚蚊成雷、餓鬼の毒
……己があえて、独りで戦うことを選ぼうとは。
攻略戦の大詰め、誰一人味方なき孤立無援の状況で、美丈夫は思った。
鬼が来る。取り囲む数は五――いや、六に増えたか。
右から蠍めいた毒の尾。外套を翻しながらも長身を沈め、回避。
狙いすました雷霆。そうだ、奴らは本能でコンビネーションを取る。
殺戮に飢えた鬼だからこそ、殺すための最適行動を自然と選ぶ。
そこが厄介なのだ。"よく知っている"。ああ、そうとも。
「――」
ぐるりと身を翻し、走る雷霆を切り裂くさまは渡り鳥の如く。
ばちばちと紫電が爆ぜて散るその刹那に、男は過去の風景を幻視した。
かつて、己にとって大切な人々がいた在りし日のこと。
我が主。そして"お嬢"。
彼ら、彼女らとともに、この飢えた鬼どもを何体も斬り伏せてきた。
いい思い出……と呼ぶには、あの頃の己はあまりにも青臭かった。
ただ、己の信ずる道を、己の念に従い突き進む彼らの背中は、まばゆかった。
それしか見えなかった。
それしか見なかった。
ただただがむしゃらに追い続け、気づけば根付いた己の正義の礎。
……幻影が消える。戦場のひりつく空気が男を出迎える。
「あの日々は、今でも俺の中にあるンだよ」
鬼どもが理解するはずはあるまい。だが自然と口を衝いて出た。
「――邪魔立てするなら、那由多に届いてもなお斬ってやる」
異色の虹彩を以て鬼を睨む男、その名を杜鬼・クロウ。
斬る。
斬る。
がむしゃらなまでに、斬る。
ともすれば、ここに現れた鬼すべてを己が斬ろうかという無謀であった。
ざん――幾体目かの鬼を斬り伏せて、着地した男の足元に血がぽたぽたとこぼれ落ちる。
無傷ではない。当然である。敵には数の利があり、己は単独なのだ。
「…………」
四方八方を囲まれるなか、何を思ったか、クロウは七つ道具に手を伸ばす。
取り出したのは小町紅。鮮やかな朱は、あるいは流れ行く男の血の暗喩か?
「…………お嬢」
ぽつりと、つぶやいた声は、自分でも笑えるぐらいに震えていた。
酩酊のなか、妹/弟と交わしたひとときが去来する。
……過去に浸るなど後手も後手。いま、己がなすべきことはなんだ。
あの時のがむしゃらなあこがれが、今の俺の正義にあるというならば。
「俺は――」
心頭滅却。クロウは……小町紅を、みしみしと握り潰した。
「……俺は、こんなところで立ち止まってる暇なンてねェ。なァ、そうだろ」
白くなるほど握りしめられた拳、こぼれ落ちるは無彩録の奔流。
それは鮮やかな朱の軌跡となり、流れた男の血と混ざり合って黒き魔剣に絡みつく。
過去を振り払うように、黒魔剣を思い切り打ち払った。
そのフォルム、流麗にして怜悧なる、清らかな河の如き細身の剣。
――遠くで、張り詰めた剣気を恐れた暁鴉たちが飛び去っていく。
「かかってきな。今日の俺は、すこぶる頭が晴れ渡ってやがるンだ」
恐るべき眼光を放ち、羅刹じみた美丈夫は今、風となる――!
鳴神の雷霆が、頭上から同時に八。
クロウは、これを魔剣に宿らせた水気によってわずかに弾く。
そして刃はそのまま地面を円弧に削り、地盤をぐらつかせ波打たせた。
『『『『!!!』』』』
「やっぱりな」
鬼どもは殺戮者である。飢えに任せて最適な行動を選んでみせる。
だからこそ、予期せぬ天変地異には、鬼とは思えぬほどにたじろぐのだ。
「変わらねェな、お前らは。――哀れだぜ、小鬼ども」
走る。否、滑る。崩れ波打ち地を滑り、走らせた魔剣の残影は水月の如く。
――残心。遅れて、鬼どもの首がごとりごとりと地を転がった。
「滅ぼしたはずのモンは変わらずに現れて、大事なモンは消えていく。
ハ――悪い冗談だ。まったく、笑えねェ悪い冗談だよ……」
額を伝う血を拭い、クロウは泣き笑いの表情で呟いた。
男を照らす朝焼けは、残酷なまでに美しい。
大成功
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