エンパイアウォー⑤~本陣屋敷の謎かけ
「本陣ってのは大名なんかが泊まるために用意された、いい宿のことらしいぜ」
ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は地図を片手に説明をはじめる。
サムライエンパイアで戦争が始まった。
戦争には金がいる。兵士には食料がいる。
その大事な大事な兵糧が、『大悪災 日野富子』によって買い占められ、とんでもない金額に高騰しているというのだ。
「くく、女傑ってのも悪かねえけどな。食わなきゃ士気は下がる上に、飢えちゃ戦にならねえだろうさ。そんなこともあろうかと、家康が用意した金がある。まったく、抜かりのねえジイさんだ」
ジローが言うように、家康が密かに蓄えた埋蔵金がある。
根こそぎ奪われぬよう、子孫へと地図を託し各地に分散させた隠し財産だ。
●謎かけ
「この印の場所にあるのが本陣。狩猟の際の休憩所として作られた小さくも居心地のいい屋敷だ。埋蔵金が屋敷のどこに隠してあるかまでは分からねえ。代わりに地図の欄外に家康自身の筆跡で『有事の際は各々に託せしひとつを合わせよ』とあるな」
託したものとはなんだろうか。
屋敷を管理する者たちには、幕府の関係者以外には決して口外せぬと誓わされた『謎かけ言葉』があったのだ。
門番の家系には、こんな言葉が。
『平時でも、夏の彼奴らの夜襲には気をつけよ。火をもって対処せよ』
厩番の家系にはこの言葉が。
『長き友もいつしか色を変え、いずれは去っていくだろう』
庭師の家系にはこの言葉が。
『遠く心を伝えるには、これを学ばねばならぬ』
屋敷の主人の家系にはこの言葉が。
『耐え忍び、乗り越えるもの。いつかはそれも楽になる』
ジローは地図を見つめながら顎に手をやった。
「こいつをヒントにして、答えが分かったら口に出してみてくれ。何か起こるはずだぜ」
自然を再現した庭からは絶えず水の流れる音が聞こえる。静寂と程よい暗さが心を落ち着かせてくれる屋敷だ。
「んじゃ、お宝探し頼んだぜ」
氷水 晶
●注意事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●謎掛け
江戸時代を満喫する系の謎解き任務です。
謎解きと雰囲気を楽しみながらご参加頂ければと思います。
謎を解く過程や考える場所、キャラクターの雰囲気などもお教え頂ければ幸いです。
●屋敷
通りに面した、炊事等を使用人が行う長屋。
大名が宿泊する日本庭園を楽しめる続きの座敷。
自然を模して草木を植え、小さな滝と池を備えた日本庭園。
その他に立派な門、厩、蔵、離れがあるようです。
●リプレイ・締切について
正答箇所があれば可能な限り採用させていただきます。
締切は随時マスター紹介ページに乗せていきますので、参考にしてみて下さい。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
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POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『平時でも、夏の彼奴らの夜襲には気をつけよ。火をもって対処せよ』
『長き友もいつしか色を変え、いずれは去っていくだろう』
『遠く心を伝えるには、これを学ばねばならぬ』
『耐え忍び、乗り越えるもの。いつかはそれも楽になる』
有栖川・夏介
※アドリブ歓迎
謎かけ言葉をメモし、まじまじと見つめる。
ふむ、この謎かけ言葉、順番に解いていきましょうか。
■門番
夏、夜襲、火をもって対処
これは……「蚊」か?
■厩番
長き友、色を変え、去る
……色を変えて去るもの、木?
いやしかし、長き友というのが……(周りに目をやり人をみてハッと)
「毛」か?
■庭師
遠く心を伝える
手紙…でしょうか、手紙を書くには文字を知る必要がある。
……「字」が答えか
■屋敷の主人
耐え忍び乗り越え、いつかは楽になる
これは「苦」でしょうか
でてきた言葉は「か、け、じ、く」
「掛け軸」これが答えでしょうか?
埋蔵金を手に入れるよりも、謎が解けるほうが嬉しくなりつつありますね……。
謎かけ言葉を書き留めたメモを、有栖川・夏介(白兎の夢はみない・f06470)は血色の瞳でまじまじと見つめる。
白皙(はくせき)の顔に目を伏せて、縁側を歩きやってきたのは離れをつなぐ小橋の上。庭から流れる小さな川が、さらさらと音をたてる。ここは涼しい風がよく通る。
「ふむ、この謎かけ言葉。順番に解いていきましょうか」
夏に夜襲、火をもって対処。
多くの世界で実感を伴うせいか、分かりやすい謎かもしれない。
「これは……『蚊』か」
問題は次の謎かけ言葉。
長き友。色を変え、去っていく……。
離れの近くには楓の樹。
「(紅葉のことか……? 『木』か……?)」
いやしかし、長き友の言葉が引っかかる。
「お疲れさんです」
唐突に声をかけられて、夏介は顔を上げた。
庭を通りかかりこちらを見ている老人の姿。この顔はたしか、厩番の男だった。
「いやはや、幕府からの使者様に、あなたのようなお若いかたがいらっしゃるとは」
そう言って禿頭を下げる。
動きをそれとなく目で追って、夏介はハッとした。
「何かお手伝いなど必要で?」
「いえ、今、十分助かりました」
心の中でこっそりと、謝罪の念も抱きつつ。
「……答えは『毛』だな」
遠くへ心を伝える手段。
「まず思い浮かぶのは手紙……でしょうか」
手紙をしたためるためには、まず文字を知る必要がある。
「『字』が答えか」
残すはひとつ。主人の謎かけ。
「耐え忍び乗り越え、いつかは楽になる」
世界知識が伝える家康の幼少期は、人質の生活だったそうだ。きっと『苦』の方が長かったのかもしれない。
出てきた言葉は、『か、け、じ、く』。
「掛け軸」
口に出してみれば、風の流れが変わった気がする。ほぼ同時に閃いたような声が、屋敷の所々から聞こえてきた。
「埋蔵金を手に入れるよりも、謎が解ける方が嬉しくなりつつありますね……」
確実に子孫に受け渡す為、この時代の人物が頭をひねって作り出した謎。宮中に僧侶に侍の間で楽しまれ、大衆へと『なぞなぞ』文化が広まったのも江戸時代だ。
「掛け軸なら、ここに来る途中の座敷にあったような気がします」
夏介はもと来た廊下へと足を向けた。
大成功
🔵🔵🔵
宙夢・拓未
▼場所
屋敷内、庭の見える場所
▼キャラの雰囲気
正義感が強くて快活な青年
一見すると人間のサイボーグ
▼謎解き
まず、門番の家系の謎かけの答えは『蚊(か)』
うるさい蚊は、蚊取り線香で対処しないとな
一旦飛ばして、屋敷の主人のは、『苦(く)』
苦あれば楽あり、ってな
庭師のは……『語(ご)』?
いや、遠くってことは手紙か。じゃあ『字(じ)』だな
分からないのは厩番だな……去るってことは『死(し)』か?
色を変えるんだから、枯れ落ちる『葉(は)』か、『樹(き)』か……。
……あ。そうか、『毛(け)』か!
白髪になって抜け落ちるってことか。なるほど
つまり、答えは順に、『か』『け』『じ』『く』
ひとつに合わせて、『掛け軸』だ!
畳の縁を踏まぬよう、座敷に宙夢・拓未(未知の運び手・f03032)は足を踏み入れる。
UDCアース出身の拓未にとって、サムライエンパイアは古典の世界だ。
革ジャンは脱いで傍らに置き、座敷の真ん中に用意された座布団に座る。
「(これが殿様の見る景色か)」
現代人の目にはやや暗くひっそりとした室内は、外の景色を明るく見せた。縁側と庇(ひさし)によって横長に切り取られた、日本庭園のパノラマだ。
上まで見えぬ大木の幹。低木は奥の傾斜に沿って自然を模して、その間からは灯篭が立つ。
聞こえてくるのは滝の音。絶えず庭に広がる音は、この上なく静かだった。
ドライブの途中に立ち寄ったなら、意外な穴場を見つけたと感じただろう。
「(が、今は任務が先だな)」
拓未が望んだ庭の見える場所。主人の置いたお茶を前に、思考を内に走らせる。
まずは門番の謎かけの答え。
「(火をもって……蚊取り線香か?)」
ふと畏まりながら通り過ぎる女中が目に入る。手には何かを持っている。
「すまない、それは?」
「こちらで御座いますか? 蚊遣り器です。この中で『蚊遣火(かやりび)』を炊いています」
穴が複数空いたグラスを、伏せたような素焼きの器。顔を寄せると強い草と煙の臭いがする。松の葉にカヤの木にヨモギ。いぶして煙を起こさせて、蚊を追い払うのだという。
「なるほど、ありがとう」
最初の答えは『蚊(か)』。これで間違いなさそうだ。
次の厩番と庭師は正直悩む。
すっぱり飛ばして先に最後へ。学生の頃にやったテストを思い出す。
「屋敷の主人のは『苦(く)』だろうな」
これは簡単に思い当たった。
「苦あれば楽あり、ってな」
後回しにした問題にとりかかろう。
「(庭師のは……『語(ご)』?)」
どうもまだしっくりこない。
誰かに心を伝えるには、言葉が必要だと思う。言葉を伝えるもの……。
「(いや、『遠く』か。ってことは手紙か。じゃあ『字(じ)』だな)」
ここまでくればきっと最後も一文字だろう。
分からないのは厩番だ。庭を見る。枯れ落ちる『葉(は)』、それを育てる『樹(き)』……?
つい癖で焦げ茶の髪をかき上げて、 拓未ははっとする。
「……髪……あ。そうか。『毛(け)』か! なるほど」
まだまだ想像などできないが、いつか白髪になって去っていくもの。
つまり答えは順番に『か』『け』『じ』『く』。
「掛け軸……この部屋に無かったか?」
かたん、と小さな音がして、拓未は後ろを振り向いた。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
言葉遊びは得意ってわけじゃないけど。
ちょっと頭の中の辞書ひっくり返してみましょうか。
んー…この感じだと、そう長い言葉ってわけじゃなさそうねぇ。
夏に夜襲で火で対処…平時ってことはその辺にいる…ひょっとして、蚊?
で、次が…長い友、色を変え、去る…
そういえば髪って漢字だと長と友が入るわねぇ。も、ってことはもっと広く、毛?
次のは…多分、字、よねぇ?この世界じゃ遠くに伝えるなら手紙でしょうし。
最後は割と簡単ねぇ。「苦」。楽は苦の種苦は楽の種、ってね。
で、合わせると…蚊・毛・字・苦。
かけじく…掛け軸?
じゃあ、座敷とか離れの床の間かしらぁ?
とにかく、行ってみましょ。
「言葉遊びは得意じゃないけど、ちょっと頭の中の辞書をひっくり返してみましょうか」
幼い少女を思わせる、甘くとろけるような声でティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は屋敷の縁側に腰かけた。
茶を持ってきた女中は危うく段差に転びかけ、無事な茶碗と中身を前にほっと息をつく。
「あらぁ、ありがと」
庭の光を透かす髪はどこか青く見える夜色で、閉ざした目蓋に長い睫毛。凛とした美女と声のギャップを口元の微笑で覆い隠した。
初対面の人物がティオレンシアの声に驚くのは、今に始まった話では無い。そしてギャップとは人を強く惹きつけるものだ。
茶を口にして笑顔のまま、立派な桃山様式の庭を眺める。
「(んー……この感じだと、そう長い言葉ってわけじゃなさそうねぇ……)」
夏に夜襲、火で対処。なにやら不穏な言葉が並んでいる。
「でも平時ってことは、その辺にいる……?」
庭の草の影、建物の影。そして夏。
……ひょっとして『蚊』?
次は、長い友、色を変え、去る……。
「そういえば、サムライエンパイアには漢字があったわね」
ティオレンシアの本職は、マスターにしてバーテンダー。とある場所の裏路地にバーを構えている。
お客様と話すには、幅広い知識が求められる。その中のひとつが漢字だ。
「髪って漢字には『長』と『友』に似た字が入るわねぇ……『も』ってことは……もっと広く、『毛』かしら?」
江戸でも流行った言葉遊び。それに近いものなのかもしれない。
となると次も発想がしやすい。
「多分、『字』よねぇ?」
この世界で遠くに何かを伝えるには、筆でしたためる手紙が主流だ。
「最後のは割と簡単ねぇ」
『苦』という文字が脳裏に浮かぶ。
猟兵の道を歩めば行き当たる苦。誰かの話に聞いた苦。誰もがどこかに抱える苦。
「楽は苦の種、苦は楽の種、ってね」
で、合わせると……蚊・毛・字・苦。
「かけじく……掛け軸?」
座敷とか離れの床の間が怪しい。
「とにかく、行ってみましょ」
茶碗を置き、甘く柔らかく礼を述べ、ティオレンシアは縁側を後にする。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
(庭を広く見渡せるところでゆったりと)
ああ、良い雰囲気だな…俺好みだ!
戦時である事も忘れ…てはいけないな。さあ謎解きだ!
夏の夜に襲い来る敵…「蚊」だ!
眠りを妨げる能力は真に一流だよな…。
色を変えいずれは去る長き友…人の「毛」だな!
遠く心を伝える為には、文をしたためる為に「字」の読み書きを学ばねばだな!
耐え忍び乗り越えるは「苦」…この戦いも出来る限り楽で終わらせたいものだ!
これを合わせると…か、け、じ、く…「掛け軸」か!主人よ!意味有り気に伝わる掛け軸など無いか?案内してくれ!
ああ、それとだ!ここは良いところだな!僅かな時ではあるが楽しませて貰った!
「ああ、良い雰囲気だな……俺好みだ!」
廊下代わりの縁側の、曲がり角で足を揺らす。
亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は庭を広く見渡せるここがひと目で好きになった。
木の葉はさわさわと微風に揺れ、滝と小川の水音が清涼感を感じさせる。自然を模した日本庭園は、日陰の緑が美しい季節を迎えていた。
妖狐の耳と妖狐の目。
銀色と赤のそれを様々な方向へと動かして、庭を隅々まで堪能する。
柔らかな苔。形の美しいシダ。どこからかやってきた蜻蛉に梢で鳴く小鳥。
「戦時である事を忘れ……てはいけないな。みんなにごはんを届ける為に、さあ恩返しの謎解きだ!」
狐の少女はそう宣言して気合を入れた。
夏の夜。寝苦しい夜に襲い来る。
眠りを妨げる能力は、一流と言っていいだろう。
「『蚊』だよな……」
あの羽音を思い出すだけで、もう痒くなってる気がしてくる。
色を変え、いずれは去っていく長き友。
ふわふわの狐の尻尾とも、柔らかい毛並みとも感触が違う。
つるつるで、この近辺では黒が多く、段々と色を変え、去っていってしまう長き友。
「人の『毛』のことだな!」
「遠く心を伝える為には――」
文をしたためる為、お触れを読む為、自らの名を書く為。
「『字』の読み書きを学ばねばだな!」
最後は今大事に響く言葉。
「耐え忍び、乗り越えるは『苦』……この戦いも出来る限り楽で終わらせたいものだ!」
戦争が終わればまた、楽が待っている。そのために猟兵がいる。
珠の命を救った人間が、人間同士で争って、命を落としてしまわぬよう。
「これを合わせると……か、け、じ、く……『掛け軸』か!」
珠はすっくと立ちあがった。
「場所がお分かりになられたのですか?」
茶を運んできた主人が、妖狐の幕府の使者が立ち上がったのを見て目を丸くする。
珠は牙を覗かせて笑うと、颯爽と羽織を翻して腰に手を当てた。
「ああ! 主人よ! 大事な掛け軸など無いか? 案内してくれ」
「座敷に将軍家由来の掛け軸が御座います。まさかそれが……?」
「多分な。――ああ、それとだ。ここは良いところだな! 僅かな時ではあるが楽しませて貰った!」
本陣屋敷の主人は狐の少女の誉め言葉に目を細める。
そうしているうちに、庭の方からもまた別の猟兵から声がかかる。
「皆も解けたようだな!」
大成功
🔵🔵🔵
新山・陽
wiz 屋敷を訪れた際、丁寧な所作で挨拶をします。まず日本庭園を歩きつつ良い景色を眺めましょう。
4つあわせるということは、一つが簡潔で意味を持たない工夫が伴う?
「一文字アナグラムか」
と、独り言モードへ。足を止め池を覗き込みつつ推察を始めます。
夏の夜の大敵は蚊。色が変わり抜け落ちる毛。託された厩番さんの家系に幸あれ。一文字の伝達手段は字。苦あれば楽ありの苦。
文字を繋げ掛け軸とします。
「掛け軸を思考の基点としてみよう。ソレが掛かってる場所か、巻いていて置かれている場所かは、見てみないとわからんな。まず蔵から潰すか」
私は独白し終えて、掛け軸の保管場所はどちらですか、と屋敷を知る人に尋ねていきます。
仕立ての良い高級スーツに身を包んだ新山・陽(悪と波瀾のお気に入り・f17541)は、この世界の人々にも『バリバリと働きそうな良い所のお嬢さん』と映るらしい。
「本日はよろしくお願いいたします」
丁寧に礼をした陽を、本陣屋敷の主人も礼節をもって迎え入れた。
桃山様式の庭園は、屋敷から見た時いちばん美しくなるよう整えられていた。
樹木の葉は涼やかな影を落とし、流れる水が耳に心地いい。流れを辿って石段を登れば、低木に囲まれて小さな滝が流れ落ちている。池には鯉が2,3匹。優雅に尾びれを揺らしていた。
これを大名も、家康も眺めたのだろうか? ちょうど滝を望む位置に、座りやすそうな岩がある。
静寂すら感じる自然の響きを聞きながら、陽はそこに腰かけた。
4つをあわせるということは、ひとつが簡潔かつ意味を持たないのかもしれない。
周りに人の気配が無いのを確認し、独り言モードに切り替える。
「一文字アナグラムか」
推察を始めた陽は、さっそくその言葉にいきついた。
「夏の夜の大敵は『蚊』」
虫よけスプレーなどない世界でも、戦場でも平時でも構わず襲い来る脅威。
伝染病の病原にもなる。
「色が変わり、抜け落ちる『毛』」
綺麗にセットされた艶やかな黒髪を揺らし、陽は厩番の容貌を思い出す。
世話好きそうなお爺さん。禿頭だったがそれが託した理由ではない……と信じたい。たまたま近くにいた彼の孫は当分心配無さそうだったが――。
「(厩番さんの家系に幸あれ)」
祈りを捧げて次の謎かけへ。
「手紙、文、文字。一文字で表す伝達手段は『字』」
技術の発展した世界からすれば、考えられぬほど緩慢な情報伝達手段。
地図に描かれた家康の筆跡は、形が整い安定しているように見えた。筆跡は人柄をも残したのかもしれない。
「最後は苦。苦あれば楽ありの苦」
戦乱の世を生き抜いた人だ。苦などどこを探してもあっただろう。
「文字をつなげると、かけじく……『掛け軸』か。ソレがかかっている場所か、収納場所かは見てみないと分からんな。まずは蔵から――」
座敷の部屋の机の上で、何かが淡く光っている。たしかあの部屋には、ここを示した地図があったはずだ。
「おや、皆ほぼ同時に解けたんだな」
屋敷の各所から現れた猟兵に、陽もまたスーツを手で払って腰を上げる。
大成功
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リネットヒロコ・マギアウィゼルーク
・ウチの娘
あらあらうふふ〜なおっとり魔法使い兼科学者です
水の音を聞きながら……庭園を散策しつつ考えを巡らせ……
門番さんの謎かけは簡単ですね〜。
夏に襲ってくると言えば『蚊』でしょう〜。
庭師さんの「遠く言葉を伝える」……これは〜……文字でしょうか〜? 『字』ですね……
\💡/
これ〜……全部1文字だとすれば〜……!
厩番さんのは……色が変わって去る……『毛』でしょうか〜!
蚊、毛、字とくれば〜!
屋敷の御主人のは……苦難、『苦』!
! このお屋敷に『かけじく』はありますか〜!?
(駆け出す)
・お宝発見
頭を使ったので糖分が欲しいです〜。(大の甘党)
……この小判の中にチョコがあったり〜
しませんよね〜? うふふ〜♪
「あらあら、素敵な場所ですね~」
マギア=ウィゼルーク・リネット・博子(f01528)は縁側でパンプスを履き、分厚い瓶底眼鏡越しに日本庭園を見渡した。
イブキが作る涼しい木陰の奥には低木が生い茂り、その足元を囁くように小川が流れている。
長いエルフの耳を水の音に傾けながら、散策用の飛び石を踏んで博子は考えを巡らせる。白衣の背中には緑の2本三つ編みが揺れていた。
この本陣は狩猟の休憩用に使われていたと聞いている。
魔法使い兼科学者を自負する博子にとっても、この環境は最高だ。思考を纏めていくのには、自然の音がしていたほうが効率がいい。そんな論文がどこかの世界にあった筈だ。
それが本物の水音とあれば、ある意味最高の贅沢だろう。
「答えの分かる物から考えていきましょうか~」
まずは門番さんの謎かけ。
『夏の彼奴らの夜襲には気をつけよ』 。
自分の身に置き換えても分かりやすい。研究の合間。夏に夜襲を受けるもの。
答えは『蚊』と仮定する。
庭師さんに伝わっていたのは『遠く言葉を伝える』。
魔法と科学の融合理論。それを立証すべく、研究を進める博子も操るもの。
「(これは~……文字でしょうか~? 『字』とも言えますね…………)」
博子は顔の前で、両手の平を打ち合わせた。
ひらめいた。
「(全部1文字だとすれば~……!)」
その法則を見つけたならば、あとは早い。1文字の答えを探していく。
厩番さんのは……色が変わって去る。
生物学的な毛根の細胞の老化。
「『毛』でしょうか~!」
蚊、毛、字とくれば~!
屋敷のご主人に伝わっていた謎かけ。
『耐え忍び、乗り越えるもの。いつかはそれも楽になる』
きっと苦難。いつか重ねた苦学の道は新たな扉を開く楽へと続く。
背中の三つ編みを跳ねさせて、博子は振り向いた。
「ご主人ー! このお屋敷に『かけじく』はありますか~!?」
●黄金
光が収まった地図を持って、座敷の『かけじく』の元へ猟兵たちは集まった。
「掛け軸自体に異変は感じられませんが……」
「ずっとこの部屋にいたんだが、謎を解いた時に何か音がしたな」
「ご主人、ちょっと裏を覗いてみてもいいかしらぁ?」
もちろんですと、主人と女中が掛け軸を外す。
そこに壁はなくなって、ぽっかりと通路が開けていた。主人すらも知らない秘密の道だ。
「じゃあこの中に埋蔵金が!? 入ってみよう!」
「地図とヒントと謎の答え、全て揃って開く仕掛けだったのでしょう」
本陣屋敷の壁の中。
全員入れる広さでは無い筈なのに、目の前には箱が並んだ部屋がある。
重い蓋を開けてみれば、まばゆいばかりの大判小判。
魔術的に隠された、神君家康公の隠し財産だ。
「頭を使ったので糖分が欲しいです~。この中に小判チョコがあったり~……しませんよね~? うふふ~♪」
目的のものを手に入れて、猟兵たちは意気揚々と帰路へついた。
大成功
🔵🔵🔵