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エンパイアウォー②~驟雨の如し

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 グリモアベース。満ちる喧騒は普段のそれと違い、緊迫感に満ちていた。
 サムライエンパイアを征服せんとする『第六天魔軍将』らが動き出した。その一報は世界を越え、猟兵たちに伝播する。
 三度駆け巡る戦争の気配の中、制服姿の女子高生、白神・杏華(普通の女子高生・f02115)は猟兵たちに声をかける。
「お疲れ様です! 今度はサムライエンパイアで戦争だよ。まずは徳川幕府軍のみんなを無事島原に送れるよう、できることからやっていこう」
 杏華は日本地図を取り出した。それはサムライエンパイアで広く使われている地図で、やや歪な日本列島に地名が書き込まれている。
「今回、みんなに行ってもらいたいのはここ。奥羽地方だね。なんでもここに、水晶屍人……うーん、なんて言ったらいいのか……水晶の生えたゾンビみたいなものが大量発生してるらしいんだ」
 水晶屍人はまさしく映画やドラマに登場するゾンビと同じような特性を持つ。
 人に噛みつくことでその力を感染させ、噛みつかれた者は水晶屍人となる。この能力によって、彼らはいくらでも増殖することができる。
 加速度的に増加するその軍勢は、奥羽諸藩に多大な被害を及ぼしながら江戸に向かっているのだという。
「このままこの軍勢が江戸に到達したら、徳川幕府軍は防衛のために一部の軍勢を残していかないといけない。そうならない為にも、皆の協力が必要なの」

 とは言っても、水晶屍人を殲滅せよ、という依頼ではない。彼らは猟兵でなければ対処できない脅威ではないからだ。
 水晶屍人はただ数が多いだけで知能が低く、本来ならば武士だけで対応できる相手である。
 ではなぜ、奥羽諸藩は大きな被害を受けているのか? そこに水晶屍人らを率いるオブリビオンが存在するためである。
 屍人らを率いるのは孫・金華という名の棒術士である。第六天魔軍将の一人、陰陽師「安倍晴明」配下のオブリビオンだ。
 異国の棒術を操る彼女は、無数の棒を壁のように地面に突き立て、道を作っては屍人の行進を誘導している。
 砦や罠といった水晶屍人への対処に欠かせない設備もまた彼女によって尽く破壊されており、奥羽の武士たちは不利な戦いを強いられ続けていた。
「皆には、この指揮官の孫・金華っていうオブリビオンを倒してもらいたいんだ。
 この棒術士がいなくなればゾンビは簡単に倒せるみたいだから、とにかく指揮官の撃破を最優先でお願い!」
 とはいえ、数百の屍人の中に隠れているオブリビオンを発見するのはそう簡単ではない。いかにして水晶屍人を蹴散らし進むか、そして指揮官を見つけ出すか。
 猟兵個々人の実力が試される場面と言えるだろう。
「皆は噛まれても屍人にはならないけど、噛まれたら普通に痛いからね! そこら辺も十分注意したうえで……頑張って!」
 杏華は猟兵たちに頭を下げ、転送を開始した。


玄野久三郎
 玄野久三郎です。オープニングをご覧いただきありがとうございます。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 水晶屍人の行進は様々な地点を移動しているため、時には城の近く、時には街中、時には街道で戦うことになるでしょう。
 戦闘が行われるシチュエーションは猟兵の皆様の自由です。仕掛けやすい場所や状況を自由に指定してご参加ください。
 それでは、皆様の熱いプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『異国の棒術士』孫・金華』

POW   :    如意分身法・天降驟雨
【上空から降り注ぐ無数の如意棒】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に如意棒が乱立し、その中を自在に動き回り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    如意加重法・爆砕地裂撃
単純で重い【振り下ろし時に重量を増やした如意棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    如意伸縮法・千里彗星突
【如意棒の伸縮】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突き】で攻撃する。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リア・ファル
共闘・アドリブ歓迎
SPD

まずは敵将捜しだね
『空中浮遊』『情報収集』『失せ物探し』『視力』で
イルダーナが上空を駆けて探そうか

水晶屍人はセブンカラーズの『マヒ攻撃』『呪殺弾』で
無力化を狙っていく

孫・金華、なるほど、神気も感じるオブビリオンだね
ボクもお相手しようか

イルダーナで機動力を活かしつつ、相手の情報を収集
「やるね、孫くん。 …いや孫ちゃんか。 だけどボク達も負けないよ、イルダーナ!」

一撃一撃も鋭く重い。だが隙が無い訳じゃないはず!
ヌァザで『武器受け』しつつ、反撃の機会を探す

UC【封絶の三重錨】で相手を縛り上げる!
「緊箍児とどっちがキツいかな?」

捕縛できたら一気に近づいて、ヌァザで斬撃!


鈴木・志乃
正直に言おう
この世界の敵は私苦手だ
有効UCがまるでない

けど屍人を操る技は大嫌いだ
だからとりあえずお前らは許さん

【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた【歌唱の衝撃波】でガンガン敵を【なぎ払う】よ
安らかに骸の海で眠れ

敵を視認と同時にUC発動
さてユミト、行って吹っ飛ばしてやんな
あの如意棒ごとね
如意棒から手を離した瞬間、【念動力】で回収してやる

敵攻撃は【第六感】で【見切り】
光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動

必要に応じて敵の死体を【念動力】で操り
嵐と壁と化して攻撃と防御に転用するよ



 それはまるで、人型の雫が生み出す河のようであった。
 空を飛ぶ宇宙バイク、イルダーナに跨るリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は、街道を埋め尽くす水晶屍人の群れに息を呑んでいた。
 屍人らは各々がどこか破れた調子の着物を着ており、その中には農民の木綿の服もあれば、仕立てのいい町人の服を着たものもある。
 だがそれらは今は、身分の差も何もない。ただものも言わず、意志もなく、生命を冒涜するだけの人型である。
「いやぁ……こりゃひどいね」
 リアは上空から死者の行進を見ていた。その中にいるというオブリビオンの指揮官を探すためだ。しかし、人の波の密度は非常に高く、すぐにその姿を見つけることはできない。
「ちょっと減らさなきゃ、かな」
 マグナム銃を取り出したリアと同じように、鈴木・志乃(ブラック・f12101)もまた、水晶屍人を減らすことを考えていた。
 志乃はサムライエンパイアでの戦いに一抹の不安を抱えていた。果たして自分のユーベルコードがこの世界において有効打になりうるのか、と。
 だが目の前の、無関係の死人を操る冒涜の行進の前にその思いは消える。有効であれなんであれ、この光景を生み出したオブリビオンは決して許してはならない……!
 志乃は行進する死者の進行方向に立ち、歌い始めた。白い風が声に呼応し、籠められた祈りが屍人らを弾き飛ばしていく。
 そのまま前進すれば、屍人は彼女に近づくことも出来ずに次々に吹き飛ばされていく。嵐に巻き上げられる砂のように。突風に攫われる木のように。
 その攻撃範囲から漏れた敵を弾丸で撃ち抜きながら、リアはなおも注意深く観察していた。指揮官のオブリビオンが行進を妨げるものを破壊するというのなら。この志乃の攻撃を無視しているはずがないのだ。
 そして、その甲斐あって彼女は辛うじて視認した。吹き飛ばされる屍人の影に隠れつつ、高速で志乃に接近する人影を。
「来るよ! オブリビオンだ!」
 リアの警告が功を奏し、志乃は視認よりも僅かに早く攻撃に備えた。次の瞬間、眼前に現れたのは長い棒を手にした若い女性。
 孫・金華。そのオブリビオンは突きを放つ。咄嗟に志乃は光の鎖を纏わせた腕を挟み込み、その直撃を防いだ。
「ぐっ……!」
 しかし、それでも威力は高い。数メートル後ろに吹き飛ばされた志乃は改めて敵を見た。オブリビオンは油断なく棒を構え、リアと志乃とを視界に入れている。
「なるほど。アンタが指揮官ってわけね。別にこいつらを生み出した主犯じゃなくても、気に食わないことに変わりはないけど」
 志乃はユーベルコードを叩き込む隙を伺う。だが、少なくとも今ではない。本来ならば視認した瞬間に撃ち込みたかったが、先に接敵された今は不利な行動になるだろう。
 リアはイルダーナの高度を下げ、魔剣型デバイス『ヌァザ』を解放した。彼女の接近に対し、金華は弾かれたようにそちらに向かう。
 如意棒とヌァザが激突した。見た目に反し、如意棒の一撃は異様な重さを誇る。リアの腕が痺れ、即座の反撃に転じるのは困難だ。
「やるね、孫くん。……いや孫ちゃんか。だけどボク達も負けないよ、イルダーナ!」
 イルダーナはタイヤを逆回転させ、後方に滑りだした。近距離で直接対決したところで戦況は不利。ならば機動力を活かし、距離を離す。
 なおもリアへの追撃を狙うオブリビオンの様子を見て、志乃は詠唱を開始した。それは、希望の一撃を叩き込むための祈り。魔力が膨らみ、彼女に集まっていく。
 それに対し、金華は迷う動きを見せた。リアを追うか、詠唱を止めるためそちらを攻撃するか。コンマ数秒の逡巡の後、彼女は志乃に飛び掛かる!
 無防備な今、敵の攻撃を喰らえば間違いなく頭蓋を砕かれる……だが、そうはならなかった。孫の行く先を無数の屍人が遮ったのだ。
「……!?」
 それは念動力で持ち上げられた死体の壁である。耐久力こそ薄いが、意表を突くには十分。その壁に紛れさせ、リアは三重の錨を金華に打ち込んだ。
「……っ」
「さぁ、これは緊箍児とどっちがキツいかな?」
そのうち、敵は蒼と銀の錨を弾き落とす。だが残る一つ、超重力を生じさせる黒の錨が彼女に突き刺さった。その重力を前に、金華はその場に足を止める。一秒か、二秒か。それだけ拘束できれば、戦場では充分である。
「駆けろ、希望の流れ星!」
 志乃の詠唱が終わり、『Ray of Hope』が放たれる。それは端的に言えば、超高速で激突する天馬。精霊は屍の壁を突き破り、その奥にいる金華の身体の真芯を捉えた。
「がは……!」
 金華の体は宙を舞い、水晶屍人の群れの中に落ちた。……それからしばらくしても、彼女が姿を表す様子はない。
「隠れたか……」
 手の内を見られた以上、同様の方法での追撃はむしろ危険だ。そう判断した二人は、一旦死者の行進から離れることにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アメリア・イアハッター
増え続けるゾンビ?
そんなのずっとほっといたら、例え戦争に勝ってもこの世界は…!
被害を出さないよう、可能な限り早く退治しましょう!

人の住む所に辿り着かれる前に接敵したいね
棒の壁を目指して進み、進行中の集団を見つける
棒の上に立てば、敵から襲われる前に高所から短時間だけ指揮官を探索
見つかればそちらに向け跳び、見つからなければその場で跳躍

そしてUCを発動し、この場を空にする
屍人はそのまま空から落ちていくでしょうけど、指揮官はそうはいかない筈
抵抗し攻撃してくるのが指揮官ね
でも、空で私に勝てると思わないことね!
降り注ぐ棒を逆に足場として勢いつけて接近
地上に落ちるまで殴り蹴り、密着すれば関節も極めてあげる!


御鏡・十兵衛
【共闘・アドリブ歓迎】
とにかく大将首を獲れば良いと。
うむ。実に某好みのわかりやすさでござる。

最前線であれば、敵に仕掛ける場所に拘りはござらぬ。
誘導の如意棒が新たに突き立つという事は、見える範囲には居る可能性が高いと言う事でござるからな。

突き立った如意棒や水晶屍人の脚を斬って誘導の妨害をし、敵が横槍を……横棒を入れて来るのを誘う。
突きか、振り下ろしか、何かしら棒で攻撃してくるでござろうが、そうなれば此方の狙いは成功よ。

すれすれで受け流し、伸び切った棒の上を駆け抜けてこんにちは……という寸法でござるな。
敵が道をくれるなら乗っかってしまえという……ん?
探すのが面倒で横着している?いやいや、ははは。



「増え続けるゾンビ……」
 屍人の行進を前にして、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)はその危機の大きさを実感していた。これを放っておけば、例え戦争に勝ったとしても日本中に屍人が広がりかねない。
 可能な限り素早く、これを殲滅。それも増殖し切る前の、今の段階で叩いておかなくてはならない。アメリアは屍人の集団に注意深く接近していく。
 無軌道に歩きまわる屍人らを制御するためか、街道には大量の如意棒が突き立てられていた。屍人がアメリアを発見して向かってこようとするが、棒に阻まれ手を出せないようだ。
「檻って感じね。これは、結構前に打ち込まれたものかな」
 アメリアは彼らを追い抜く形でさらに前進し、屍人集団の最前列を目指した。

 一方、屍人らの通過を待ち伏せていた御鏡・十兵衛(流れ者・f18659)は、まさに如意棒が天から降り注ぐ様を目撃していた。
 ふらふらと進もうとした屍人の列の前に、ズラリと棒が突き立てられる。目の前に壁が現れた、と判断した屍人は進行方向を変え、ゆっくりと他の屍人と同じ方向に歩き出す。
「なるほど。これが誘導……そして、今の屍人の動きが見えたということは」
 敵も、この屍人の動きを視認できる位置にいる。そう判断した十兵衛は、壁となっていた如意棒を一刀で斬り倒した。
「見える位置で誘導の妨害をされたら、どうするのでござろうな?」
 柵がなくなったことで、水晶屍人が一気に十兵衛に襲いかかる。彼女は慌てることなく、まずそれらの脚を斬り機動力を奪った。そして、一体一体確実に仕留めていく。
 それでも、数は減らない。仕留めた数と同じだけ、また屍人が現れ向かってくる。
「ちょっと失礼!」
 十兵衛に向かってきた水晶屍人のうち一体の頭に、跳躍してきたアメリアが着地した。踏まれた男の首がゴキリと折れ、体が力を失う。
「うわっ、どこから来てるんでござるか」
「棒から棒に飛び移ってきた! 指揮官がいるのはこの辺り?」
「恐らくは。少なくともここを視認できる位置には……と!」
 十兵衛は自らに高速で迫る如意棒に気付くと、その軌道を逸らした。それはどうやら屍人の群れの内部から伸びてきているらしい。
「自分から教えてくれたでござるな。居場所がどこか!」
 十兵衛は軽やかにその棒の上に飛び乗ると、その根本めがけて駆けた。横着と言われようと、これも戦術。敵を探して消耗するより、敵から探してもらうほうが余程いい。
 如意棒が収縮するより先に、水晶屍人らが伸ばす手に捕まるより速く、十兵衛はオブリビオンの元に辿り着く。目を見開いた孫・金華の姿がそこにあった。
「さぁ! その大将首、頂くでござるよ!」
「ふん……」
 首を狙った一閃。それに対し、金華は如意棒から手を離して後ろに跳躍。屍人の中に紛れつつ、攻撃を躱してみせた。
 周囲は無数の屍人に囲まれている。今の十兵衛は、「歩兵」に四方を囲まれた「龍王」のようなもの。王手を躱された今、一転して危機に陥った。
「ちっ……」
 まさに屍人が口を開き、襲ってくる――その瞬間に、彼女はガクリと足を踏み外す感覚を得た。
「は?」
 それは錯覚ではない。全く完全に、地面が消え失せていた。
「はああああ!?」
 周囲は雲ひとつない青空だ。地面も見えない。そして落ちているのは彼女だけでなく、周囲の水晶屍人らも皆同じように落下していた。
「フッフッフ……今からここは、私の空になる!」
 落ちながらも冷静なのは、この現象を引き起こしたアメリアである。この落下現象により、水晶屍人は完全に無力化された。彼らは落ちゆく感覚に怯え、ただ浮かんでいるだけだ。
 アメリアは先程のようにその屍人の上に立ち、辺りを見回した。それに倣い、十兵衛もまた手近な屍人を葬ってからその死体の上に登る。
「とんでもない事するでござる……しかし、かたじけない。助かり申した」
「いーのいーの! それより……やっぱり、指揮官は素直に落ちてはいかないよねぇ」
 オブリビオン、金華は六本の如意棒を足場代わりにして空に立っていた。さらに四本、空中に如意棒が浮かぶと、それが十兵衛とアメリアに射出される!
 十兵衛は、伸びる如意棒を弾いたのと同じようにそれらの軌道を逸らす。まさに水の如く、攻撃を滑らかに受け流す。
「むしろありがたいわね!」
 アメリアは如意棒に対し、避けも退きもせずに跳びかかると、それを足場にさらに高く飛んだ。ついに金華の眼前に迫ると、そのまま拳を振り下ろす。
「……!」
 金華もまた異国の武術使い。徒手といえどそう簡単に負けることはない……だが、ここは空。アメリアにとってのホームグラウンドだ。
 踏ん張りの効かない場所での戦闘とは、相応の熟練がなければ行えるものではない。辛うじて反撃を試みた金華の腕を、アメリアが掴む。
「く……っ」
「空で私に勝てると思わないことね!」
 関節を極めたまま、さらに敵の喉に蹴りを放つ。呼吸を封じ――アメリアは、ユーベルコードを解除する。
 空は突然地面に変わり、屍人らが倒れた状態で着地する。そして金華は腕を極められたまま、地面に押さえつけられる形で拘束された。
「さぁ、トドメを……!」
「ゲホッ……别舔」
 金華がボソリと呟くと、アメリアの周りをぐるりと如意棒が囲み込む。近距離で射出されるソレを避けるには、高高度まで跳躍する以外に方法がない。
 そしてそれは、同時に敵の拘束を解くことを意味していた。やむを得ずアメリアは回避を選び、金華は立ち上がり棒を構える。
 倒れていた屍人らも、体に異常がないと悟るとのそのそと起き上がり始めた。完全に彼らの活動が再開すれば、また囲まれる。
 このあたりが潮時だろう。二人は倒れる屍人の何体かにとどめを刺しつつ、群れの中心部から撤退した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
索敵から戦が始まるというならば「世界知識」が物を言うだろうか
エンパイアでは八つの陣形が有るというが
数的有利かつ消耗戦に強い連中ならば、魚鱗の陣形を取るかと推測
其の場合、大将たるオブリビオンは底辺の中心に居るだろうので
物陰に潜んで水晶屍人達の動きを良く観察し大将の位置を見極め
後背を取れれば狙うは大将首ひとつ

相手に悟られぬよう静かに構え「先制攻撃」、「スナイパー」で
狙いを定めた【疾走する炎の精霊】を撃ち込もう
念の為「誘導弾」にして「属性攻撃」で炎もサービスしておいたぞ

一発放つ事で此方の位置も割れてしまうだろう
強烈な一撃が来たら「オーラ防御」の念を通した
精霊銃の銃身で受け止めようか、痛いのは我慢だ


上野・修介
※連携、アドリブ歓迎
「戦、か」
だが、やることは変わらない。
もとより常在戦場。

事前に藩の地図を確認。
森のような遮蔽物の多い場所で待ち伏せ。
敵将が遮蔽物排除に動きだしたら行動開始。

調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
呼吸を整え、無駄な力を抜き、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
敵の大まかな数と配置、周囲の遮蔽物を把握。

得物は素手喧嘩【グラップル】
UCは攻撃力強化。

防御回避は最小限。ダメージを恐れず【勇気+激痛耐性】、【覚悟】を決めて最短距離を駆け【ダッシュ】敵将の懐に飛び込みリーチを殺す。
擒拿術と柔術を主眼にした超至近戦闘【グラップル+戦闘知識】で攻める。
水晶屍人は無視。



 大量の屍人は未だ人里に到達することなく、その勢力を維持したまま歩いている。
 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は木の上で地図を広げる。彼らの進行方向にこの森がある。仕掛けるならばここしかない。その確信とともに、彼は木の上で息を潜めていた。
 静かな木々のざわめきに混じり、うう、ああ、という唸り声が聞こえ始める。
(先頭集団が到着したか……)
 水晶屍人らは彼の存在に気付いていない。無防備にその頭を晒しているのみだ。視力も嗅覚も退化しているのだろう。
(まったく、夥しい数だ)
 ニコは自らの精霊銃の弾丸を検める。彼の予想が正しければ、敵将が来るのはまだまだ先だ。
 魚鱗の陣。サムライエンパイアにおいて使われる陣形で、消耗戦に強く、後方や側面からの攻撃に弱いとされる。彼はこの水晶屍人の群れは、その形に沿って作られているだろうと予測していた。
 それはおよそ三角形の陣形であり、底辺の中心に将を配置することで陣全体の把握を容易にする。つまり、オブリビオンは群れの最後尾に現れる。
 ニコは息を殺す。元よりヤドリガミの彼に呼吸などさほど重要ではない。最低限に抑え、その瞬間を待つ。
(……来たか!)
 木の葉の隙間から僅かにその姿を視認し、ニコは素早く自らの体を再度枝の裏に隠した。おそらくあと二十秒で森に入り、彼にその後頭部を晒すだろう。
(その瞬間に撃ち込む)
 オブリビオン、金華は歩を進める。十秒経過。
 ニコは銃を構える。十五秒経過。
 そして――二十秒経過。ニコのいる位置から、丁度敵の後頭部が拝める。
(今だ……ッ!?)
 だが、ニコの人差し指は引き金を引かなかった。……敵がその場で突然、足を止めている。森に入った途端に。ニコのいる木を通り過ぎた直後に。金華が如意棒を右手で握る。
(気付かれたか……?)
 止まらずに進む水晶屍人たちから離れるのも気にせず、金華はその場に立ち止まり続ける。
 確実に奇襲を成功させるため、まだ様子を見るべきか。或いは、気付かれていないと信じ今すぐ撃つか。彼の決断を待つかのように、金華は動かない。
「――おおぉぉぉぉッ!」
 その沈黙を破った乱入者は上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)であった。木の死角から飛びかかった彼は丸腰である。金華は冷静に棒を操り、彼の顎に一撃ぶつけた。
 修介の頭がグラリと揺れ、膝が折れかける。だが、その足は力を失ってはいなかった。その場で踏ん張った彼は、一気に金華の至近距離まで接近する!
「ちっ……」
「その程度では、俺は止まらない」
 至近距離において、如意棒という獲物は不利だ。少なくとも、十分な威力を発揮することは難しい。大きく振り、突くことが出来ないならば、近距離戦闘においてそれは手枷にも等しいものだ。
 初撃に繰り出された修介の右フックを、金華は左腕でガードする。いかにオブリビオンといえど、その元は女性。体格で勝る修介の拳を安全に受け切れる道理はなく、身体がふらついた。
 すかさず繰り出された左のアッパーカット。それを防ぐ右手は如意棒を握りしめたままで、衝撃を逃がすこともできず、手の甲に修介の拳が直撃した。
「ーーーーっ!」
「まだだ」
 修介の追撃は止まない。攻撃を潰し姿勢を崩したところで、さらに近距離で掴みに行くべく姿勢を低くする。その様子を、木の上からニコは観察していた。
 この戦況、明らかにオブリビオンが不利だ。水晶屍人も音を聞き集まってきてはいるが、二人に横槍を入れるまでにはまだ数秒かかる。
 その時間を稼ぐため、そして本来の自分の得意射程に戻すため。金華が次に狙うのは距離を取ることだろう。
 そうはさせるか。彼女の膝が跳躍に備え曲がった瞬間に、ニコはその脹脛を狙い弾丸を放つ。
「――っ!?」
 着弾点から炎が広がる。その衝撃に、金華はガクリと大きく姿勢を崩し倒れこんだ。
「ヒヤヒヤさせられたぞ。だが無事、届いたようだな」
「你这个混蛋……」
「さて。その脚で逃げることはできないだろ。ここで終わらせるぞ」
 倒れたままの金華がググ、と拳を握る。そして、地面に両手をついた。
「……両手?」
 それを見た瞬間、修介は強烈な違和感と悪い予感を覚えた。如意棒はどこへ行った? と。
 次の瞬間、金華の体が勢い良く前方に吹き飛ぶ。咄嗟に躱した二人が見たのは、両手に如意棒を掴むオブリビオンの姿だ。
「倒れた瞬間に棒を縮めて、それを一気に伸ばしバネ代わりに飛んだのか。悪知恵の働く……」
「追うか?」
 修介の問いにニコは、いや、と短く答える。金華の姿はすでに森の奥、屍人の群れの中に消え去っていた。
「十分にダメージは与えた。あとは他の猟兵がうまくやってくれるはずだ」
 そうか、と修介は答える。前方から迫る屍人を二体ほど殴り倒し、二人は森から撤退した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷲生・嵯泉
【烈刃】穂結(f15297)同道
此の手の光景等、見慣れたくは無いものだがな……
そうだな、逸る心が無いとは言わん
だが其れで冷静さを失う程短慮でも無い心算だ
――往くぞ、先ずは撃砕の狼煙を上げる為に

烈戒怒涛にて強化を施し
数の多い内は範囲攻撃となぎ払いにて減らしつつ前へ
狙うは此の戦場の首魁のみ
攻撃は見切りで躱し、受けた傷は激痛耐性で捻じ伏せ無視する
足場が破壊されようと構いはせん、一気に抜けてくれよう

私を此処まで送る為に無理を続ける娘に応えられん様では無様が過ぎよう
我等猟兵が在る限り、護る為の刃が在る限り
過去の亡霊なんぞの好きにはさせん
其の素っ首、貰い受ける


穂結・神楽耶
【烈刃】鷲生様/f05845と

戦争の常とはいえ惨い光景ですね。
逸る気持ちがあるかとは思いますが、鷲生様。
ここだけが戦場というわけではありません。
どうか焦らず。確実に参りましょう。

とかく此度は支援に徹します。
【神遊銀朱】《範囲攻撃》《なぎ払い》──
敵の位置が分からぬのならまとめて打撃してしまえばよろしい。
もしこちらの攻撃を耐えきる影がありましたらそれが指揮官格でしょう。

複製太刀による《武器受け》にて敵の攻撃を引き受けつつ、鷲生様を指揮官まで導きます。
過去の滅びになど、未来を奪わせません。
どうぞ存分に揮ってくださいませ、鷲生様!



「戦争の常とはいえ惨い光景ですね」
 そう感想を洩らしたのは穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)。太刀として時代と人とを見つめてきた彼女にとって、眼前の行進はどこか既視感のあるものであった。
 それが地に足をつけ歩いているかどうか、という程度の差で。戦の後に戦場に残る死体はみなああいうものだった。
「此の手の光景等、見慣れたくは無いものだがな……」
 苦笑した鷲生・嵯泉(烈志・f05845)にとってはそうではなかった。歩いていても寝ていても、これだけ大量の死者はそうそう目にかかるものではない。
 そしてこれは、サムライエンパイアの住人に見せたい代物ではない。嵯泉は刀を鞘から抜き、強く握った。その手を見て、静かに神楽耶が言葉を添える。
「逸る気持ちがあるかとは思いますが、鷲生様。ここだけが戦場というわけではありません。
 どうか焦らず。確実に参りましょう」
 嵯泉はその鋭い隻眼を僅かに開き、そして緩めた。同時に固く握っていた刀の柄も、ほんの少し緩められる。
「そうだな、逸る心が無いとは言わん。だが其れで冷静さを失う程短慮でも無い心算だ。
 ――往くぞ、先ずは撃砕の狼煙を上げる為に」
「はい。あなたの背を私が押しましょう。存分に、進んでください」
 それはとても心強い言葉だった。封じられた剣精も、この時ばかりは嵯泉の力となりその身を覆う。一歩、二歩、歩き出し。四歩、八歩、走り出した。
「邪魔する者は斬り捨てる!」
 と言って、理解できる敵はこの戦場に一人しかいない。ゆったりと手を伸ばす水晶屍人の腕をまとめて斬り落とし、蹴り飛ばし、無理矢理に屍の海を分け入っていく。
 一人斬ればその奥の十人が細切れになり、一人殴り倒せばそれに従い隣の十人が倒れていく。放射される彼の苛烈なる衝撃は、水面の上を滑るように波及していく。
 それでも死体が彼の行く手を阻むならば、それを払うのは後方を走る神楽耶の務めだった。
「どきなさい。猟兵のお通りです!」
 神遊銀朱。無数の刀が空中で暴れ回り、嵯泉の前に立つ邪魔者を斬り払う。彼が駆ける先に死体があるならば真っ二つにして道を拓き、彼に飛びかかる者があるならばそれを貫き捨てる。
 彼女の助力によって、嵯泉は何ら走るのに苦もなく進むことができていた。その一方で、自らの守りが疎かであった神楽耶の右腕に水晶屍人が噛みつく。
「くっ……!」
「穂結!」
「足を止めてはなりません、鷲生様!」
 神楽耶は右腕に噛みつく屍人の頭を刀で切り落とすと、未だ張り付いたままのその頭を振りほどき放り投げる。この進撃は嵯泉の、そして勝利のための進撃だ。足を止めることなどさせはしない。
「過去の滅びになど、未来を奪わせません。どうぞ存分に揮ってくださいませ、鷲生様!」
 烈風の如き刃が屍人の狭間を通り抜ける。彼女らの刃により幾分か背の縮んだ屍人の先に、ようやく異色な気配を視認できた。
「……私を此処まで送る為に無理を続ける娘に、応えられん様では無様が過ぎよう」
 辿り着いた本丸、オブリビオンに対し嵯泉は接敵した。孫・金華は脚を庇いつつ棒を構える。
「我等猟兵が在る限り、護る為の刃が在る限り。過去の亡霊なんぞの好きにはさせん」
 この機会を逃してはならない。周囲が完全に水晶屍人に囲まれた今、敵将も同じく逃げ出しづらい密度の中にある。決着をつけるならここを置いて他になかった。
 神楽耶はその二人の戦いを担保するように、その周囲で耐えず刀を円状に回転させた。巻き込まれた屍人らが刻まれ弾かれ、倒れる。
「其の素っ首、貰い受ける」
 嵯泉の初撃。真っ直ぐに首めがけて振るわれたその刀を、金華は如意棒で受け止めた。
 その棒は、刀をぶつけられたとは思えぬほどに動かなかった。オブリビオンの両手に収まったまま、ピクリとも。その質量が増している証だ。
「如意加重法……!」
 金華は嵯泉の刀を弾くと、如意棒を振り下ろす。これは、受けるのはまずい。咄嗟に判断した嵯泉は半歩下がりつつ、半身をずらし如意棒を回避する。
 ブン、と異様に重い風の音が嵯泉の耳を掠める。直後に破砕音。地面がプラスチック片のように軽々と割れ、同心円状に広がる衝撃がクレーターを生んでいた。
 その威力は見るからに脅威であるが、一方でその攻撃には大きなリスクがあった。そう理解した嵯泉は威力より速度を重視し、速やかに金華の胸に刀を突き刺した。
「ぐっ……!」
 地形を破壊するほどの重量の如意棒。それを叩き付け、そして外したからには、持ち上げて手元に引き寄せるまでには時間がかかる。
 その前に、仕留める。浅く刺さった刀の柄に一歩踏み込むと、嵯泉はさらに深く刀を押し込んだ。
 金華の口から血が吐き出される。彼女は至近に近付いた嵯泉の襟首を掴む、が――その手からするりと力が抜けた。彼が刀を抜くと、その身体が崩れ落ちる。
「仕留めた……ようだな」
「ええ。我々の勝利……ですが」
 言いづらそうに神楽耶の声が籠もる。何事かと嵯泉が振り向くと、ああそうか、と嘆息した。
「帰るまでが戦場です。一旦、ここから抜けましょう」
 敵将を撃破しても、二人はまだ大量の水晶屍人に囲まれていたのだ。もう一度ここから抜け出さなければならないと考えると気が重い。
「だがまぁ、仕方がないな」
「はい。もうひと頑張りですよ」
 烈刃は再び駆ける。幾多の剣閃が数多の血飛沫を連れ、二人は引いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日


挿絵イラスト