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エンパイアウォー③~莫連の蟒蛇

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●信濃国・上田藩 山中
 森の中を派手な赤い大蛇が這いずり回っていた。ずるずると這いずるその身体は、丸太のように太く長く、人間など一飲みにしようかという程に大きい。
 しかも1匹ではなかった。20匹近い数の大蛇たちが群れとなって辺りを這いずり、木に登り、あるいは地面でとぐろを巻きながら何かを待っている。

 彼らは知っていた。
 やがてこの場所を大勢の人間が通り、自分たちの餌となってくれることを。
 森の中に身を潜めた彼らは、その時を待ち遠しく思いながら、ただじっと待つのだった。

●グリモアベース
「最近ちょっとキナ臭いなーって思ってたらこれだよ……」
 上崎・真鶴は渋い顔で溜息をついた。
「もう皆知ってると思うけど、サムライエンパイアで信長軍が本格的に動き出したんだ。例の『第六天魔軍将図』っていうアレに名前が載ってた連中だよ」
 寛永三方ヶ原の戦いで手に入れた『第六天魔軍将図』。そこには全部で8人、名のある人物や武将の名が、信長軍の陣容として記されていた。その彼らが一斉に動き出したらしい。
「これに対して徳川幕府は、色んなところから援軍やら何やら10万も戦力を掻き集めた。んで、織田信長のところに向かおうってわけなんだけども……」
 その徳川軍が目指しているのは関ヶ原。本隊は東海道を、別動隊が中山道をそれぞれ通っていく予定らしい。だが、その中途に幾つもの障害が待ち構えているという。
「その一つが、今回皆に行ってもらうところ。信濃国の上田藩、信州上田城……ってところの近くだね。とりあえずこれ、見てくれる?」
 真鶴は猟兵たちの前に地図を広げる。そして、その中の一点に赤く印を付けた。
「上田城はここ。堅固な山城で中山道の要衝でもあるんだけどさ、実はもう上杉謙信に取られちゃってるんだよね、これが……」
 真鶴は気まずそうに頭を掻く。魔軍将の一人である『軍神』上杉謙信。彼は既に大勢とオブリビオンたちと共に城を陥落させ、かつ部下たちを城に配置しているという。
「ただ上田城ってそんなに大きい城でもなくて、オブリビオンたちは城から溢れ返ってるんだって。で、そいつらが何処に居るかっていうと、城の近くの山の中ってわけ」
 真鶴は上田城に付けた印を囲むように、大きな円を描いた。
「オブリビオンたちが居るのは大体この範囲内。皆に受け持ってもらう敵は、うわばみと呼ばれる大蛇たちだよ」
 その数、約20匹ほど。森の一角に群れを成しているその大蛇たちは、上杉軍の中でも敵の主力になり得る部隊の一つらしい。
「とりあえずそんな感じで敵の部隊を削っていけば、敵は勝手に撤退する……はず。主力を狙い撃ちにされて、そのまま戦うほど上杉軍も馬鹿じゃないからね」
 ここで上杉軍を上田城やその近辺から撤退させれば、中山道を通る徳川軍の安全を確保出来る、ということになる。
「注意してほしいのは、戦う場所が山であり森であるってこと。身を隠すにはうってつけの地形だし、敵だって待ち伏せしている可能性は十分にある。それは忘れないでね」
 上杉軍がわざわざ上田城を落とし、城に入り切らない程の戦力を配置しているのは、中山道を通る徳川軍を待ち受けて殲滅するためだ。少なくとも油断しているということは無いだろう。
「負けてもいい戦いなんて無いけれど、今回は何時にも増して負けるわけにはいかないんだ。大変だろうけど、よろしく頼むよ」
 説明を終えた真鶴は、真面目な顔付きで猟兵たちを見回した。


若林貴生
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 こんにちは。若林貴生です。

 細かい理屈は特に必要ありません。大蛇の群れを倒してください。
 森の中であることを考慮に入れて工夫すれば、有利に戦えるかもしれません。

 それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『うわばみ』

POW   :    噛みつく
【鋭い牙】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    巻きつく
【素早い行動】から【巻きつき攻撃】を放ち、【締めつけ】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    炎を吐く
【体内のアルコールを燃焼した炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:塚原脱兎

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

遠呂智・景明
なるほど。蛇か。
なるほどなるほど。
斬らなきゃいけねぇなぁ。
森の木々を●迷彩にしつつ、できるだけ速く敵を視認する。

視認さえすればあとは奇襲。
手心加える必要はねぇ。
こちとら大蛇切と呼ばれた刀。
風林火陰山雷外道 同胞の太刀を使う。

●殺気を放ち敵の意識をこちらに向けさせ、念力で操った複製達で蛇を切り刻む。
近づかれたら?
それこそ本物の大蛇切で切り裂くのみよ。

はっはっは、やべぇな久しぶりに愉しくなってきやがった。
さあ、どんどんこい。斬れるだけぶった斬ってやるよ!!!


リュカ・エンキアンサス
うわ……。すごい、いっぱいいる
とりあえず近寄られる前にレプリカクラフトで
人に似せた人形とか、そんな感じの罠を作る
森の中に隠れるように置いておけば、巻きついてくれるかな
で、自分は少し離れたところから銃で撃つ
近寄られて絞められると困るから、なるべく近寄らないようにして、罠にかからないやつからしとめていくよ
周囲に他の猟兵がいるなら、援護射撃で協力していけたら
万一接近されたときは、フックつきワイヤーを引っ掛けて離脱を試みる
蛇と酔っ払いは、見るのは楽しいけれど、絡まれるのはちょっと困るからね
やむなく絡まれたときは、即座にダガーを抜いて首を刎ねるよ

深入りはしない。すこしでも徳川軍の安全を確保出来たらいい



●大蛇切
 遠呂智・景明は自身の姿を森の木々に馴染ませつつ、慎重に歩を進めていた。だが視線の先で何かが光ったように感じ、その足をぴたりと止める。
(「今のは……?」)
 距離的には恐らく30m前後。幾重にも重なる緑の隙間から、鮮やかな赤色が見え隠れしていた。しかし今は8月だ。少なくとも紅葉の季節ではない。
 景明は身動き一つせずに、ただじっと目を凝らす。夏の山には不似合いなほどの派手な赤い色。それは日の光を照り返しながら、ゆっくりと動いていた。
(「……見付けた」)
 赤い鱗を持つ大蛇は、まだこちらに気付いていないようだ。景明の前を横切る形で、ずるずると這いずっていく。
(「流石に数までは分からねぇか」)
 敵の数を推し量るには遮蔽物が多過ぎた。だが下手に近付けば大蛇に気付かれ、奇襲の機会を失うだろう。
(「まぁいいさ、何匹いようがやることは変わらねぇしな」)
 景明の周囲に無数の刃が浮かび上がる。折れ砕けた不完全なその姿は、往時の大蛇切によるものだ。骸の海より呼び戻した、『大蛇切』になれなかった影打の群れ。景明はそれらを念力で自在に操り、近くの茂みに忍ばせて準備を整える。
 仕込みが済んだところで、景明は大蛇を見据えたまま殺気を放った。その殺気を感じ取ったのか、近くの鳥たちが騒ぎ出し飛び去っていく。
 その騒ぎを聞き付けたか、それとも鳥たちと同様に景明の殺気を感じ取ったのか。真っ赤な大蛇が動きを止めた。鎌首をもたげて振り向いたその頭に、景明の操る影打が数本突き刺さる。景明は更に影打たちを差し向け、苦しみ悶える大蛇の胴を切り刻んだ。
「……やはり他にも居たか」
 景明は別方向から接近する物音に気付く。そちらに視線をやると同時、新たな大蛇が襲い掛かってきた。景明は伏せてあった影打を藪の中から射出して、突っ込んできた大蛇を迎え撃つ。その鋭い刃に貫かれながらも、大蛇は長い身体をうねらせて景明に飛び掛かった。
「はっはっは、やべぇな久しぶりに愉しくなってきやがった」
 ニヤリと笑い、景明は大蛇の前に躍り出る。そして今度は本物の大蛇切を抜き放ち、突き刺さっていた影打ごと、大蛇の胴を真っ二つに切り裂いた。
「さあ、どんどんこい。斬れるだけぶった斬ってやるよ!!!」

●当意即妙
 リュカ・エンキアンサスは愛用のアサルトライフルを手に、樹上で大蛇を待ち受けていた。呼吸一つにも気を遣いながら身を潜め、流れる汗をそっと拭う。
(「……暑いな」)
 ゆっくりと息を吐きながら、リュカは地面を見下ろした。森の中にはリュカが作り出した等身大の人形を、何箇所かに分けて配置してある。
 この人形たちは囮だった。大蛇が人形に釣られて巻き付いたところを狙い撃つ作戦だ。高所からであれば仕掛けた人形を全て確認出来るし、現れた大蛇を離れた場所から射撃することも出来る。
 だがリュカが地上に視線を巡らせていると、やや離れた場所で鳥たちが一斉に飛び立った。続いて戦闘によるものと思しき、激しい物音が聞こえてくる。
(「誰かが動いたのかな」)
 下に降りて加勢するか、それともこのまま作戦を続行するべきか。リュカは思案した。
 今のところ大蛇は一匹も姿を見せていない。場所が良くないのか、それとも人形の出来栄えが関わっているのだろう。レプリカクラフトで作り出した人形は、それほど精巧に出来ているわけでもなかった。もし敵が本物の蛇と同じ機能を備えているのなら、体温が無い人形であることもバレているかもしれない。
(「……仕方ない。こういう時もあるよね」)
 リュカが作戦を断念しようかと思った時、地上からガサガサと大きな葉擦れの音がした。反射的にそちらを見ると、真っ赤な鱗の大蛇が現れる。別の猟兵に追い立てられてきたのか、樹上のリュカに気付いた様子は無く、彼の眼下を通り過ぎようとしていた。
(「来たか」)
 リュカはゴーグルを嵌め、静かにアサルトライフルを構える。そして離れていく大蛇に狙いを定め、その頭部を撃ち抜いた。
 だが銃声で位置がバレたのか、新たな大蛇が一匹、二匹と続けて顔を出す。
「うわ……。すごい、いっぱいいる」
 再びリュカのライフルが火を噴いて、新たな大蛇たちに銃弾を浴びせた。大蛇たちは身体に風穴を開けられつつも、リュカに向けて炎を噴きかけてくる。しかしリュカはフック付きワイヤーを使って隣の木に飛び移ると、もう一度大蛇たちに向けてアサルトライフルを掃射した。そうやって付かず離れずに射撃を繰り返していると、リュカのことを諦めたのか大蛇たちは向きを変えて逃げていく。その後ろ姿を、リュカはそのまま見送った。
「……まあ、ここで無理をする必要も無いかな」
 元より深入りするつもりは無い。更に言えば、大蛇が逃げた先にも別の猟兵が待機していたはずだ。
「あちらはあちらに任せるとしよう」
 リュカは素早く地面に降り立つと、大蛇が向かった先をちらりと眺めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

メディウム・シャルフリヒター
蛇・・・ですか。私達の世界にはヨルムンガルドの伝説がありますが。こちらはその小さいようなものでしょうか・・・。

いえ、例えそうであったとしても油断は禁物ですね。エインヘリヤルの召喚を行います。サブマシンガン(2丁)を代償に、それを使用した勇敢なる兵士2名を召喚します。彼らにはペアで大蛇の一部を任せるとします。互いの援護射撃や追い詰められた時の零距離射撃が有効に使われるでしょう。

私は私で柳葉刀を構えるとします。敵が噛みつき等を狙って近くまで休息に接近するなら残像を残した回避後、そのままカウンターを行います。流れるような動作で追い詰め、数を減らすとしましょう。



●死せる戦士たち
 昼間とは言え、森の中は薄暗い。その木陰に潜んでいた大蛇が二匹、メディウム・シャルフリヒターに襲い掛かった。やや傾斜している地面に足を取られつつも、メディウムはすんでのところで大蛇の噛み付きを躱す。
「蛇……ですか」
 メディウムは現れた大蛇との間合いを取って後退した。大人を丸呑みに出来そうなほどの大きい蛇ではあるが、メディウムの世界に伝わっている毒蛇の怪物と比べれば随分と小さい。
「いえ、例えそうであったとしても油断は禁物ですね」
 眼前の大蛇に鋭い視線を当てながら、メディウムは両手に持つサブマシンガンを掲げてエインヘリヤルの召喚を行う。
「武器にふさわしい持ち手を今ここに。さぁ、戦いなさい!」
 メディウムの言葉と共に屈強な兵士が二人、呼び出されて姿を現した。二人の兵士は先程までメディウムが持っていたサブマシンガンを一丁ずつ手にしている。
「あなたたちは右の蛇を。左は私が相手をします」
 メディウムは兵士たちに命令を下すと、サブマシンガンと同じく翼の装飾が施された柳葉刀を抜き放った。陽光を受けた刀身と、装飾のイエローサファイアが燦然と輝きを放つ。
 兵士たちはそれぞれの銃からビームを放ち、大蛇を相手に戦い始めた。それを横目に見つつ、メディウムは柳葉刀を構えて大蛇との距離を詰める。それを黙って見ているわけもなく、大蛇もメディウム目掛けて飛び掛かった。
 大きく口を開けて牙を覗かせる大蛇。メディウムに噛み付こうというのだろうが、彼女は寸前で身を捻り、大蛇の大顎を躱した。そして大蛇が残像に噛み付いた隙に、横へと回り込んだメディウムは大蛇の首を叩き斬る。
「さて、あちらの様子は……」
 首を落とされてもなお動く大蛇に止めを刺し、メディウムは兵士たちを振り返った。そこには既に幾条ものビームで貫かれ、蜂の巣にされた大蛇の躯が転がっている。二人のエインヘリヤルは大した傷も無く、新たに現れた別の大蛇を相手取っていた。
「調子は悪くないようですね」
 口元に僅かな笑みを湛え、メディウムは彼らに加勢すべく柳葉刀を手にして駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

樫倉・巽
軍神とはな
よく知らないがなかなか面白そうな相手ではないか
刀を使う者として縁がある土地だ
守るために死力を尽くさせてもらおう

森の中が戦場なら
木々を盾にしたり
相手が葉や蔦を擦る音をたよりにしたりできそうだな

【蜥蜴剣術無天流】を使い戦う
木々が密集している場所では細かく刀を振るい
蛇の口や腹を狙い的確に攻撃を当てようとする

開けた場所では刀を大きく使い
相手を牽制しながら迫ってくる蛇を多少荒くなっても一撃で倒しに行く

草や蔦が多い場所では蛇が動いてくる音を聞きつつ
飛びかかる気配を読み呼吸を合わせて交差法で蛇を返り討ちにしようとする

仕掛けてくる瞬間に隙はできるだろう
勝負は一瞬
心を研ぎ澄まし戦う


清川・シャル
上杉謙信ですか。
軍神に対抗するとはなかなかに。
ここで敵を削らねばですね!
蛇さんボッコしましょう!
鬼が参りまーす!あ、お酒はいらないですよ

森ですね?
身を隠しながら攻めましょう!
地形の利用、第六感、野生の勘を駆使してダッシュをかけながら移動します
時には空中浮遊も使って忍び足も使います

近接次第UCで急襲しましょう
そーちゃん(なぎ払い、衝撃波)をチェーンソーモードで振り回しです
敵攻撃には見切り、カウンターに加え、
櫻鬼(傷口をえぐる)とSoulVANISH(咄嗟の一撃、串刺し)にて対応です



●無天流
 木漏れ日が振降り注ぐ森の中、樫倉・巽は一匹の大蛇と対峙していた。両者は睨み合いながら間合いを測り、互いに攻撃の機会を窺っている。
 その均衡を崩したのは大蛇の方だった。素早い動きで巽の頭を狙い、噛み付こうとする。巽は逆に大きく踏み込んで相手の狙いを外すと、大蛇の口や腹部などの軟らかい部位を狙って何度も斬り付けた。そして大蛇が怯んだところを狙い澄まし、その首を斬り落とす。
「これが軍神の使役する大蛇か……」
 仕留めた大蛇の躯を見下ろしながら、巽は刀身に付いた血を丁寧に拭い落とした。だが刀を鞘に納めたところで、その動きをぴたりと止める。
(「……見られているな」)
 何処からか、獲物を狙う粘り付くような視線を感じた。
(「隠れていた……? いや、今の騒ぎで引き寄せたか」)
 もし最初から居たのであれば、先程の大蛇と同時に襲って来ただろう。巽は近くの木に身を寄せて、感覚を研ぎ澄ます。そして刀を手に掛けたまま、ゆっくりと視線だけを巡らせた。異変は見当たらないが、間違いなく何者かに狙われているという感覚は続いている。
(「何処から来る……?」)
 幾ら隠密行動が得意と言っても、大きな図体の大蛇が一切の音を立てずに行動出来るわけはない。葉擦れの音、枝が折れる音、草を掻き分ける音。特に攻撃を仕掛けてくる瞬間は、必ず音を立てるはずだ。巽は鯉口を切り、微動だにせず、その時を待つ。
 そして十数秒後。風によるものとは違う、不自然な葉擦れの音が、頭上から微かに聞こえてきた。
「上かっ!?」
 巽が頭上を振り仰ぐと、そこには大きく口を開けて迫ってくる大蛇の姿があった。
「ちぃっ!」
 巽は身を屈めて大蛇の顎を避けつつ、下から大蛇の顎に刀を突き入れる。その瞬間、刀を通して大蛇の力と体重が圧し掛かってきた。渾身の力でそれに耐えた巽は、そのまま相手の重量と落下の勢いを利用して大蛇を綺麗に両断する。
「他は……いないようだな」
 大蛇の絶命を確かめつつ、巽は注意深く周囲の気配を探った。だが先程のような視線は特に感じられない。ここに居たのは、この一匹だけだったのだろう。
「……よし、次に行くか」
 巽は軽く息を吐いて、再び刀の血を再び拭い、鞘に納める。そして注意深く辺りを見回しながら、森の奥深くへと入り込んでいった。

●鬼が出るか蛇が出るか
 清川・シャルは警戒と移動を繰り返しながら森の中を進んで行く。ある時は樹上に登り、ある時は木陰に身を潜めて奇襲を仕掛け、既に二匹の大蛇を仕留めていた。他の場所でも多くの猟兵たちが戦っているらしく、耳を澄ますとそこかしこから銃声などが聞こえてくる。
「さて、次の蛇さんは――」
 そう呟いた時、シャルは殺気を感じて大きく飛び退いた。その瞬間、横合いの茂みから炎が噴き出し、シャルの眼前が熱と光で満たされる。
「……危ないですね」
 足を止めたシャルは、桜色の金棒を構えて大蛇の姿を探した。炎によって周囲の木々や茂みは焼け焦げ、熱気と煙が辺りに漂っている。
 警戒したシャルが待ち構えていると、隠れていても無駄だと思ったのか、大蛇が藪の奥からずるずると這い出してきた。大蛇は一定の距離を保ったまま、鎌首をもたげて盛んにシャルを威嚇する。
 だがシャルは威嚇を無視して大蛇に肉薄すると、高下駄の魔力噴射によって滑るように移動した。大蛇の背後に回り込んだシャルは大蛇が身構えるより早く、てらてらと光沢を放つ真っ赤な頭に向けて金棒を叩き付ける。高速回転する棘が激しく唸り、大蛇の鱗を削り落として地面にばら撒いた。
 しかし、その手応えは思ったよりも薄い。
「今のは……」
 シャルは微かに眉根を寄せる。恐らく打撃の威力そのものは、大蛇のしなる首によって吸収されてしまったのだろう。
 大蛇は素早く身体をうねらせ、反撃とばかりに襲い掛かる。僅かに身を反らして大蛇の噛み付きを躱すと、シャルは袖の下に仕込んであったパイルバンカーを大蛇の首に打ち込んだ。更に高下駄の仕込み刃で同じ場所を刺し貫き、同時に魔力噴射を最大にして大蛇を地面に叩き付ける。
 それでもシャルの攻撃は止まらない。彼女は続けざまにパイルバンカーを射出して、のたうち回る大蛇を素早く地面に縫い付けた。
「これでもう逃げられませんね」
 大蛇は必死にもがいて抜け出そうとするが、何本もの杭で打ち付けられては身動きの取りようがない。それを見下ろしていたシャルは金棒を大きく振り被ると、大蛇の頭部に全力で振り下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

穂結・神楽耶
【白焼き】
鎧坂様/f14037、ウィンターミュート様/f01172

…本業は探偵ですよね、鎧坂様。
まさかそちらに転職とか本当勘弁しましょう?ね?

しかし…森が遮蔽になっているのが厄介ですね。
さて、どう動きましょ…………
…………。
「じゃあ森を消そう」という発想になるとは……。
いやはや、発想と能力のスケールの違う方々を敵に回したくありませんね。
逆に言うと、味方で本当に有難い。
頼りになります。

──では、折角開いて頂いた戦場です。
せいぜい派手にやりましょうか。
【朱殷再燃】《範囲攻撃》《なぎ払い》《破魔》!
延焼の心配もなし、火力勝負でしたら負けません。
まとめて白焼きに致しまして、勝利につなげましょう。


ヴィクティム・ウィンターミュート
【白焼き】

ふーん、森林地帯ね…
アンブッシュが懸念されるが…まぁ、大した問題じゃねえな
今からクリーンにしちまうんだしよ…なぁ、鎧坂?
伐採ご苦労、いい切れ味だな?
せっかくの資源をデリートをしちまうのは惜しいが…っと、ちゃんと50m以上離れたか?
では──『Void』アクティベート
問答無用、情状酌量の余地無しに…消し飛べ

さ、後は残りの蛇を処理だ…神楽耶、真打として輝いてこい
俺はそうだな…【ダッシュ】【フェイント】【早業】【見切り】で高速機動しつつ、ナイフによる【マヒ攻撃】で動きを鈍らせるか
ヒット&アウェイで、決して絡みつかせやしねぇ

──蛇でいるには、ちょいとダーティーさが足りねえな?
出直して来い、三下


鎧坂・灯理
【白焼き】
どうも、害虫駆除業者です。ウソですよ。
蛇も長虫と言いますからね。これは本当です。

ご安心ください、私はずっと探偵です。

茶番はこの辺で。山。森。なにが面倒かって視界が埋まる事だ。
なのでUCを使い、視界いっぱいの木々を全て伐採する。
バラした木々は念動力で一カ所に集め、ミスタ・ヴィクティムに「消して」貰う。
いくつか地面に叩き付けて埋め込んで、しっかりした足場にしてもいいな。

後は掃討戦だ。ミス・穂結が「白焼き」にしてくれるそうだ。
非力な私は背後から狙撃するに留めようか。外しはしない。
念動力で敵の攻撃を防いだりも出来るが……二人とも実力者だからな。
自前でなんとかするだろうよ。



●茶番
「どうも、害虫駆除業者です」
「……本業は探偵ですよね、鎧坂様」
 穂結・神楽耶は、やや心配そうに鎧坂・灯理を見た。
「まさかそちらに転職とか本当勘弁しましょう? ね?」
「ウソですよ」
 平然とした顔で灯理が言う。
「蛇も長虫と言いますからね。これは本当です」
 大蛇退治のことを指していただけだったのだろう。灯理はニヤリと口元を歪めた。
「ご安心ください、私はずっと探偵です」

●伐採
「しかし……森が遮蔽になっているのが厄介ですね」
 鬱蒼とした深い森。目の前に広がる圧倒的な緑に目をやって、神楽耶は眉根を寄せる。
「さて、どう動きましょ…………」
「確かにアンブッシュが懸念されるが……」
 ヴィクティム・ウィンターミュートは森を一瞥した。
「まぁ、大した問題じゃねえな。今からクリーンにしちまうんだしよ……なぁ、鎧坂?」
「ええ」
 話を振られて灯理が頷く。それを見て神楽耶は不思議そうに小首を傾げた。
「……? どういうことです?」
「ミス・穂結の言う通り、森のなにが面倒かというと、こちらの視界が埋まる事。なので、この近辺に生えている木は全て伐採するとしましょう」
「……え?」
 きっぱりと言い切った灯理に、神楽耶はあっけにとられた顔を向ける。
「この邪魔な木を全部切り倒して削除する。それで視界はオールクリア。問題解決だろ?」
 ヴィクティムがニヤリと笑う。
「ちょっとその発想は無かったです……」
 灯理とヴィクティムを交互に見やり、神楽耶は感心と驚きの篭った溜め息を漏らした。

●白焼き
 周囲に立ち並ぶ立派な樹木。灯理が操る念動力の刃は、それを野菜でも切るかのように、すぱすぱと切り倒していく。
 大騒ぎで逃げ去っていく鳥たちを見送りながら、灯理は切り倒した木々を片っ端から念動力で持ち上げた。そして、それを待機しているヴィクティムの下へと移動させる。
 そうやって灯理は一歩も動かないまま、辺り一面を丸坊主にしてしまった。
「……ああ、居ましたね」
 視界を塞いでいた森林が取り除かれて、後に残された大蛇たちが姿を現す。木々の伐採に巻き込まれたのだろう、既に身体をばっさりと斬られている大蛇もいた。おまけに念動力で宙に持ち上げた木々の隙間からも、大蛇が一匹落ちてくる。
「取りこぼしがありましたか」
 空中に浮かせたまま、ゆさゆさと木々を揺らすと、更に追加で何匹かぼとぼとと落ちてきた。
「さ、後は残りの蛇を処理だ……神楽耶、真打として輝いてこい」
「ありがとうございます、ウィンターミュート様」
 ヴィクティムに軽く背中を叩かれ、神楽耶が前に進み出る。その身体から炎が溢れ出し、全身を包まれた神楽耶は、炎そのものに姿を変えた。
「──では、折角開いて頂いた戦場です。せいぜい派手にやりましょうか」
 神楽耶は大蛇たちに向けて炎を放つ。荒れ狂う炎は大蛇たちをまとめて薙ぎ払い、燃え盛る炎の壁となって彼らを焼き焦がした。
 その壁を突き抜けてくる大蛇も、再び放たれた神楽耶の炎に包まれる。炎を吐きかけてくる大蛇もいるが、神楽耶の炎には及ばない。彼女は更に炎を重ね、炎で炎を押し戻した。

 神楽耶が大蛇に対処している間にも、ヴィクティムは自分の作業を進めていた。
「せっかくの資源をデリートをしちまうのは惜しいが……っと」
 ヴィクティムは周囲を見回す。戦闘中の神楽耶も、木材を運び終えてそちらに向かった灯理も、ヴィクティムから十分に離れていた。
「ちゃんと50m以上離れているようだな。では──『Void』アクティベート。問答無用、情状酌量の余地無しに……消し飛べ」
 ヴィクティムがプログラムを起動する。その途端、現実に存在していた木材がただのデータに変わり、そして消去された。あっさりとし過ぎていて、傍から見れば何の魔法かと思うだろう。
「……よし、それじゃ俺も行くとするか」
 戦闘続行中の神楽耶たちを振り返り、ヴィクティムはゆっくりとナイフを抜いた。

●大蛇
 遮蔽物も何も無い広い場所を作り上げた後は簡単だった。残っていた藪や下草も、ほぼ全てを神楽耶が焼き払ったために、大蛇が身を隠せるような場所は完全に消えている。後は神楽耶が作り出した火の海から這い出してきた大蛇を倒すだけだ。
 灯理は炎の中でもがいている大蛇の影に狙いを定め、念動力の刃で燃え盛る炎ごと輪切りにする。逃げ出す大蛇がいないかどうか注意しながら、神楽耶とヴィクティムの様子も時折確認する。灯理が持つ強大な念動力を以ってすれば、二人をサポートすることも難しい話ではないのだが……。
(「まあ、あの二人なら自前でなんとかするだろう」)
 灯理が考える通り、神楽耶とヴィクティムの二人に助けは必要なさそうだった。神楽耶は相変わらず大蛇を寄せ付けないまま、敵を炎で薙ぎ払い続けている。ヴィクティムはナイフを手に、その素早い動きで大蛇を翻弄していた。

 炎に焼け出されてきた大蛇が、ヴィクティムに巻き付こうとする。だがヴィクティムは、余裕を持ってそれを躱した。大蛇は既にヴィクティムのナイフで幾重にも切り刻まれ、大幅に動きを鈍らせている。
「──蛇でいるには、ちょいとダーティーさが足りねえな? 出直して来い、三下」
 ヴィクティムが大蛇の頭にナイフを突き立てた。力尽きて倒れ込んだ大蛇は火の波に飲み込まれ、炎に巻かれ燃え尽きていく。そしてそれが、ちょうど最後の一匹だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日


挿絵イラスト