エンパイアウォー④~樹海に響く怨霊の声~
●姫君は笑う
「よいのう……やはり樹海は良い。怨霊であふれ返っておる」
しゃなり、しゃなりと歩む小さな影。青き着物を纏い、扇を広げた彼女はうっとりとその瞳を細めた。彼女の瞳には無数の怨霊たちがところせましと映りこんでおり、怨嗟の声をあげている。
彼女はオブリビオン、怨霊姫。かつての家臣たちをすべて怨霊に堕とし、意のままに操る美しき暴君。支配能力に長けた彼女にとってみれば死者の溢れかえる樹海は居心地の良いことこの上なく、まるで己が城でくつろいでいるがごとき心地だろう。
「さて……魔将軍コルテス殿というたか? 彼の方の力も素晴らしい……まさか太陽神の力さえ操るとは……私もまだまだじゃのう」
この国最大の山、富士山。その頂上に太陽神ケツァルコアトルを操る魔将軍、コルテスがその竜の上より地上を見下ろしている。そんな魔将軍の姿に見惚れるよう、怨霊姫はうっとりと目を潤ませた。
「素晴らしき力、神さえ超越したお方……しかも富士山を噴火させるなど、考えることの趣味がいい」
ぺろり、と怨霊姫の赤い舌が唇を舐める。これだけ大きな火山が、ひとたび噴火すればそのふもとはもちろん、東海・甲信越・関東地域に至るまで、全て壊滅状態となるだろう。そうすれば地上には死者が溢れ、愚かな反逆者共を狩るのも容易となる……!
怨霊であふれかえる素晴らしい世界を想像し、怨霊姫はぞくぞくとその身を震わせた。
「ふふ……まさかこの私が膝を折る方が現れるとは……彼のお方のためならいくらでも殺しつくして差し上げましょう……!」
怨霊姫に指示されたのは富士山噴火のために行う『太陽神の儀式』。数が必要らしいが、やることは単純なので片などすぐにつくだろう。
「ギャア、ギィィア!」
「ああ、不愉快な……まあ、その血に使い道があるのだから許してやろうぞ」
怨霊姫が手を出せば、臣下たる怨霊がその手に古刀を乗せる。小さくも鋭い首狩刀は祭壇に縛り付けられた小さな竜……ケツァルコアトルの子竜へと向けられた。
「子の無惨な最期に、よくよく怒り狂うのじゃぞ、太陽神……!」
その刀は無慈悲に、振り下ろされる。
●殺人鬼は笑う
「……ってのが、オレの予知だなァ」
長い耳がぴくぴくと揺れる。フードをかぶった猟兵、一門・楔はその手の斧を地面に突き刺した。
「ついに戦争、それもあの信長公を討つだァいじな戦。そこに富士山噴火なんて横やりは阻止してェだろ?」
魔将軍がひとり、侵略渡来人コルテスは、太陽神ケツァルコアトルの力を用いて富士山噴火を目論んでいる。しかも配下のオブリビオンたちに「ケツァルコアトルの子を殺し、その血を聖杯に注ぐ」という残虐極まりない儀式をもって。幼き子竜は父へと泣き、その断末魔が太陽神の怒りを買う。そうなれば日の本の国最大の火山は噴火してしまうだろう。
「いやァ怖い怖い。なんつうおっかないことすんだよって話だよな」
と、のたまうは殺人鬼。しかしそのニヤニヤした笑顔を一度消して、彼は息を吐いた。
「……ホントはオレが行きたいんだけどね。予知しちまったからには仕方ねェ。オレの分まで暴れてきてくれよなァ」
子竜の血をもって作戦を成そうとするやり口は気に食わない。だからその実行犯でコルテスの信奉者を倒してほしい。そうすれば、徳川幕府軍への脅威は少なくとも減らされるはずだ。
「あ、と……子竜、ちゃんと助けてやって。頼むぜ、みんな」
兎は困ったように笑う。グリモアが輝き、猟兵たちは富士山の樹海へとたどり着いていた。
夜団子
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
諸君! 戦争の時間だ!
というわけでエンパイアでの戦争です。まずは富士山噴火の儀式を阻止しましょう。
●今回のシナリオについて
『富士の樹海を探索して、儀式場を発見し。太陽神の儀式を行っている怨霊姫を撃破』してください。
現実世界も暑いですが、ここはひとつ熱いプレイングをおまちしております!
第1章 ボス戦
『怨霊姫』
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POW : 怨霊乱舞
【無数の怨霊の群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 怨霊傀儡
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【怨霊を憑依させることで、自らの傀儡】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : 怨霊家臣団
【レベル×1体の、怨霊武者】の霊を召喚する。これは【刀や槍】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠天御鏡・百々」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヨナルデ・パズトーリ
『動物使い』により呼びだした『動物と話す』事で情報を集め敵の遺した痕跡を
『野生の勘』により『見切り』『追跡』
『目立たない』様に気配を消しつつ『暗殺』の技能を活かし『先制攻撃』
『怪力』によって振るわれる斧を『鎧無視攻撃』の『なぎ払い』で叩き込む
其の後は間髪入れず『高速詠唱』による『呪詛』のこもった『全力魔法』を叩き込む
カカカ!あの大ばか、妾の好敵手にして兄妹、伴侶たる者と同じ名を持つ者の
前に妾が貴様に怒りを叩き込んでやろうか下郎!
喜べ、あ奴、ケツァルコアトルと妾、テスカトリポカの力を同時に喰らう
等、滅多にない事ぞ?
今の妾が此処まで怒り狂うのもの!
故に疾く滅びよ・・・貴様の様な下郎には勿体ない力ぞ
ゼット・ドラグ
「やれやれ、竜を殺せると思ったが助けるハメになるとはな。世界が違うって事で俺の主張は引っ込ませておこう」
というわけで、子竜を助けるために動く。
予知ではコルテスに見惚れていたって事は樹が邪魔をしない場所だと推理して、上を見渡せるような場所を重点的に探す。
近くにいけば子竜がこちらの存在を察知して騒ぐかもしれない。音にも注意しつつ探索しよう。
敵を見つけたら【竜を殺す百の刃】を薙刀形態にして怨霊の群れを薙ぎ払いつつ、怨霊姫と戦う。
戦いの最中に敵の隙を突いて【ヴァリアブル・ウェポン】で右手から命中重視のワイヤーを射出し、子竜を救出しようとする。
防がれたら普通に怨霊姫を攻撃して戦いを有利な方向に展開する。
「やれやれ、竜を殺せると思ったが助けるハメになるとはな。世界が違うって事で俺の主張は引っ込ませておこう」
なによりおっかない神様がここにもいるからなぁ、とゼット・ドラグ(竜殺し・f03370)は笑う。古き神の怒りを“おっかない”で済ませる辺り、竜殺しの名は伊達じゃない。
「我が子を生贄にするとはなるほどのう……よほど死を拝みたいらしい」
ヨナルデ・パズトーリ(テスカトリポカにしてケツァルペトラトル・f16451)の顔に浮かぶは微笑み。怒りのあまり固まった死神の表情は、その激情を伝えてあまりあった。その怒りに触れてか動物使いの力によるものか、普段は樹海でひっそりと暮らす小動物たちがその場に姿を見せ始める。ヨナルデの望みをかなえようと集う彼らはこれ以上ない偵察要員となるだろう。
「怒んのはわかるが、殺気をそんなにばらまいていたら敵や子竜が気づくかもしれないぞ。特に母親が来たんだ、子竜が察知して騒いだら予知が変わる」
ふ、とゼットが頭上を見上げる。その視線は樹海の木々に覆われ空を眺めることはできない。しかし予知では、“怨霊姫はコルテスに見惚れていた”。
つまり、木々が開け山頂を拝むことのできる場所がこの樹海に存在するということだ。コルテスを信奉する怨霊姫は儀式の場所を山頂を眺められる特殊な場所に設定した。そこが探索の糸口だ。
「上を見渡せるような場所を重点的に探すぞ。動物の力を借りれば簡単だよな」
「殺気を抑えよとは難題を言うものよな。しかしお主が正しかろう……しばしの間、影にとけるとするか」
怒りを封じ込め闇へと消える。二人の猟兵はオブリビオンを狩るため、その身を樹海に溶け込ませた。
祭壇は緻密に、そして華々しく用意されている。その中心で山頂の魔将軍に見惚れる姫がひとり。その無防備な背中に、隠された殺気が突き刺さる!
「なッ! 来たか、反逆者!」
「カカカ! 避けたか下郎! 面白い!」
ヨナルデは、その小さな体に見合わぬ巨大な斧を縦横無尽に薙ぎ払う。黒曜石の戦斧は無数の祭具を破壊し、樹海の地へ飛び散らせた。
「好き勝手に暴れてくれる……!」
すんでのところでそれを避けた怨霊姫であったが、祭壇は滅茶苦茶に破壊された。捕えられていた子竜の声が、戦場に響く。
「好きに? カカ、言ってくれる……それはこちらの台詞じゃッ!」
ヨナルデの詠唱を察知した怨霊姫は、仕える怨霊を打ち放った。樹海は自殺者・遭難者の宝庫。怨霊がいるのならばここで沈んだ者は更に多くいることだろう。地面の下より蘇るそれらは、怨霊姫の臣下に取り憑かれ、傀儡となる。
「あの大馬鹿、妾の好敵手にして兄妹、伴侶たる者と同じ名を持つ者……あれにも鉄槌を食らわせてやらねばならぬがな。その前に! 貴様へ妾の怒りを叩き込んでやろう」
その肌を鱗が覆い、その背に翼が生える。半身の力を得た月の神はその身を空へ投げ出した。傀儡など彼女にとっては物言わぬ木々と同じ。切り倒すように斧を振るう。
「太陽神の儀式を月神が阻止せんとするとは……ふふ、愉快なもの……ッ!」
バチンッと音を立ててワイヤーが扇に弾かれる。樹木の影からそれを飛ばしたゼットは、チィッと舌を鳴らした。
「ほう、もうひとり薄汚れた反逆者がおったか!」
「ばれたら仕方ないな……!」
隙を見て子竜を助ける作戦から、怨霊姫の陽動へ作戦を変更する。子竜を助けようにもこのオブリビオンにマークされていてはかなわない。傀儡どもが死滅するのも時間の問題だ。ならばヨナルデと共に彼女を叩きのめす方が子竜の安全度は高いだろう。
竜を殺す百の刃____竜を殺すために特化したこの武器でまさか竜を守る日が来ようとは。何が起きるかわからないものだな、とゼットはうすら笑う。
「ならばそこの月神ともども我が臣下たちの糧となるがいい……! さあ、踊れ、殺せよ、怨霊ども!」
無数の怨霊がその地に沸き立ち、その禍々しい姿を二人へ晒す。ある者は剣を持ち、ある者は槍を持つ。その怨みを呪いと変える者もいるだろう。
「クソ、怨霊姫を直接叩けねぇか……!」
「なに、やることは変わらぬ……喜べ、怨霊ども。あ奴、ケツァルコアトルと妾、テスカトリポカの力を同時に喰らう等、滅多にない事ぞ?」
やる気満点だな、とゼットはその刃を薙刀へと変える。多くを斬り捨てることに特化したその形は怨霊たちを片づけるのに最適だ。
「故に疾く滅びよ……貴様の様な下郎には勿体ない力ぞ!」
「おうおう、それなら主より先に殺し直してやるよ、怨霊ども!」
斧と薙刀、二つの刃が怨霊たちを薙ぎ払う。臣下たちの数は確実に減っていき、彼らの活躍は確かに怨霊姫の戦力を削った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロバート・ブレイズ
「太陽神を従えるとは。全く『コルテス』とは天晴れな冒涜野郎だ。俺の精神に油を注ぐなど莫迦者の極み。クカカッ!」
情報収集と狂気耐性を合わせ、怨霊の『残滓』を辿る。虱潰しで敵の居場所を突き止め、宙に漂う『暗黒』で奇襲する
「太陽神を従えたならば暗黒の類は如何だ。混沌の面は如何だ。貴様は何物だ」
無数の怨霊が放たれたならば『それ』を悉く【三つ目の炎】で燃やして魅せよう
富士が噴火する前に対象を爛れさせるべきだ
相殺が完了したら鉄塊剣を構えて圧し潰す。地獄の炎を噴出させて勢いも増しだ
苦戦する際は対象の周囲を燃やし、退路を断つ。次の猟兵に繋げるのだ
狂気は怨みに通ず、闇は混沌に通ず。死者、嘆き、無念____それらが渦巻く樹海は、儀式をするにふさわしい場所だろう。血を注ぎ、地を滅ぼさんとする儀式ならば、なおさら。
そしてそんな場所は、ロバート・ブレイズ(冒涜翁・f00135)にとっても馴染みやすい場所である。
「太陽神を従えるとは。……全く『コルテス』とは天晴れな冒涜野郎だ。そして___」
怨霊を怨霊たらしめるのは、その魂から溢れる怨みや激情、狂気ゆえ。これだけ溢れていれば、その残滓を辿るなど容易いことだ。特に標的、怨霊姫は霊たちを従えるゆえにその身に多くの狂気を宿している。
まるで暗闇の中、たった一点で輝く結晶を見つけるがごとく。虱潰しであったがロバートは遅れることなく彼女の居場所を特定した。
「俺の精神に油を注ぐなど、莫迦者の極み。クカカッ!」
まずは冒涜者の前にその配下、太陽神の儀式を完遂せんとしている者を暗黒へ導こう。樹海を迷うことなく突き進むロバートの影から、無数の暗黒が飛び出した。それはまるで生き物のように蠢き、己の主より先に標的へと這い寄る。
「な、なんじゃッなんじゃこの奇妙な妖術はッ!」
突然現れた暗黒に泡を喰う怨霊姫。いかにその身に狂気を宿せど、彼女も元は人間であったオブリビオンだ。怨霊の支配術に長けているからこそその暗黒を妖術としか見られぬし、人間の精神を持つゆえにそれを理解しようとしてしまう。混沌を理解などしたら、それこそ正気ではいられないだろうに。
「太陽神を従えたならば暗黒の類は如何だ。混沌の面は如何だ。貴様は何物だ」
低いその声と共にロバートが儀式の祭場へ姿を現す。剣を手に現れた翁はその身から地獄の炎をゆらめかせていた。
「な、なんじゃ、なんなのじゃ! 来るな……来るでない!!」
怨霊姫の悲鳴がごとき声に反応して、従順な怨霊たちが一斉にロバートを向く。多にして一、群として存在する怨霊たちは口々に言葉にならぬ恨み言を吐き出し、その腕を、牙を、呪詛をもって、ロバートへ襲い掛かった。
「笑止!!」
暗闇より、三つ目が出現する。ぐるぐると祭壇を見渡したそれは、見つめた者の正気を削る混沌の化身。
ぎょろり。
怨霊の群れを見つけたそれは、ロバートへ襲い掛かる前に怨霊たちへと殺到し、燃え上がる炎をその場にまき散らした。
あ、ああ。あああああ。あつい、あつい。くるしい、しにたくない。
「死してなお死を拒むか。哀れな者ども」
地獄の炎に巻かれ、消えゆく怨霊たち。そしてまた怨霊たちという薪を失った炎もまた消えていく。
「爛れよ、潰れよ。富士が噴する前に」
鉄塊剣が炎の光に鈍くきらめく。地獄の炎を纏ったそれは勢いをなおさら増して、ロバートを突き動かした。その刃は、家臣という壁を失った姫に肉迫する____!
「うッ、アアアアアッッ!!!」
袈裟懸けに斬りつけられた怨霊姫の声が樹海に轟く。斬り傷こそ浅いものの地獄の炎を浴びたその体の一部は爛れ、皮膚の焼かれる臭いが鼻についた。
成功
🔵🔵🔴
終夜・還
ンー、イイねぇ、怨霊であふれ返っててスッゲー心地いい。何処かで聞いたような台詞だって?まー楔が予知した姫ってのが怨霊達の姫なら俺とそういうとこは合うんじゃねーの?
ハァイ、ストップどうぞ~~~
【目立たない】様に、又はわざとらしい笑顔で【存在感】を主張して移動。
振り下ろした古刀の間に腕を差し込んででも小竜ちゃんを【かばう】ぜ
で、怨霊使いだっけ?
俺の使役するのまで従えられちゃ堪んねーし、【呪詛耐性】には自信がある方だから耐える方面で。激痛にも耐性ありますし?
攻撃は勿論ブラッド・ガイストさね
姫本体は勿論、周りの怨霊も喰えたらイイなぁ。そしたらお持ち帰り用サンプルが採れるかもだしね!!
炎に焼かれた肌を押さえながら怨霊姫は唸る。じくじくと痛むそれは地獄の底から彼女を責め立てていて。その呵責に耐えながら怨霊姫は思考を巡らせた。
自分がするべきはなにか? 無論、反逆者どもは許しておけぬ。だがそれよりも優先すべきこと、そして、反逆者たる猟兵どもに最もダメージを与えられることはなんだ?
儀式の成功、それに尽きる。
「ギィッ、ギィィッ」
「啼け、啼け、太陽神が愛し子よ! その血をもって、我が主の望みをかなえようぞ!」
古刀を手に、怨霊姫が大きく振りかぶる。貫き血を溢れさせんと、鈍く光る鉄の輝きが子竜へと振り下ろされた。
それは肉を裂き、鮮血を祭壇に散らす。
「ハァイ、ストップどうぞ~~~」
しかしそれは、子竜の血にあらず。
「なんッ、貴様ァッ!」
終夜・還(一匹狼・f02594)の拳を腹に受け、大きく後退する怨霊姫。子竜の代わりに刃を受けた腕から古刀を引き抜き、やれやれと還は肩をすくめた。
「ンー、イイねぇ、怨霊であふれ返っててスッゲー心地いいわ、ここ」
その言葉に怨霊姫は思わず眉を寄せる。彼女が違和感を覚えるのも当然だろう。それは猟兵たちが変える前の未来、あったはずの未来で怨霊姫が口にした言葉。そして先ほどまで怨霊姫が感じていたであろう思い。覚えがあるのにないという奇妙な感覚を彼女に植え付ける。
そして予知を知る還はそんな怨霊姫へ口端を釣り上げて笑った。
「んで、怨霊使いだっけ? 気ィ合いそうだね、俺たち」
敵陣のど真ん中で堂々と笑う還に怨霊姫の殺気は集中する。一時的にでも彼女の視界が狭まればいい、そうすれば子竜は彼女の意識外になる。
そんな思考でわざとらしい笑顔を浮かべる還だが、決して楽な戦況ではなかった。彼女は怨霊使い。そして己の術もまた、死霊を扱う。怨霊を支配することに長けた怨霊姫相手では死霊使役の技は無効化、もっと悪ければ利用されてしまいかねない。戦況を悪化させることだけは避けねばならないだろう。
「ふざけた真似を……! 変現せよ、怨霊ども! この無礼者を叩き潰せッ!」
扇を大きく仰ぎ上げた怨霊姫に従い、臣下たちがその場に姿を現す。怨霊の塊を前に死霊使いは小さく笑い、耐性を支えにそれを受け止めた。
「ぐ、ぅッ……はは……流石に、とんでもねぇなッ!」
怨霊に噛み付かれ、掴みかかられながらも、還は彼らを受け止める。否、彼らを捕えたのだ。
古刀で傷つけられた片腕の血。その匂いを嗅ぎつけた魔導書が、ひとりでに浮かび上がる。掲げられた片腕に噛み付く二つの書の名は『記憶の書』、そして『嘆きの書』。呪詛の込められた二冊が還の血をもって覚醒し、殺戮捕食態へと移行する!
「書っていうのはえてして暴食なもんだ。特に俺の二冊はな、どうやらこれっぽっちの血じゃ足りねぇらしい……!」
大きく口を開いた二冊の書物が、怨霊たち、そして怨霊姫に襲い掛かる。題名無き黒き本は還を襲う怨霊たちへ、嘆きで埋め尽くされた魔導書は怨霊姫へ。血肉を求めて飛びついた。
「あああァッッ!! こ、の木偶が、本如きがァッ」
怨霊姫の右腕に食らいついた嘆きの書がその鋭い牙で姫の肉を裂く。怨霊姫の腕は血を吹き出し、喉が苦悶の声を絞り出すが、一度喰らいついた暴食の本が離れることはない。
「上々、上々♪ お持ち帰り用サンプルも採れたし、耐えた甲斐はあったかな」
怨霊を喰らい尽した記憶の書が満足げに還の手へ納まる。流れる血を申し訳程度に止血し、還は耐えた己が身を労わるのだった。
成功
🔵🔵🔴
アノルルイ・ブラエニオン
鳳鳴【f17841】と一緒
戦いの時だ!
まずは鳳鳴や僧兵達とともに敵を探し
発見したら角笛を吹き、戦いの始まりを知らせる!
辛気くさいこの場所を、生命力に満ち溢れた空間に作り替えてみせる。私の音楽で
それが私のBattleGraundMusic!
エレキギター(テロリズムスカル)をかき鳴らし大爆音を響かせるぞ
ハードロックなのに……メロディはBon=dance
僧侶と死者が一緒に踊る!
Bon=danceとは、死者の供養
まさにうってつけだな
僧侶達が念仏をあげてくれるならなおさらだ
そしてこの曲はUC、鳳鳴や僧兵達の力を増すもの
そして演奏の合間に怨霊姫に向かう鳳鳴のため【援護射撃】するぞ
鳳鳴・ブレナンディハーフ
アノルルイ【f05107】と共に
終始第一人格
第六天魔王を名乗る仏敵の目論見は阻止せねばならん!
相手が怨霊の軍団だというなら全て調伏してくれようぞ
参れ! 僧兵の精鋭達よ!
正義を示すのだ
我がUCで召喚した僧兵達の力を借りて敵を捜索し
数を持って怨霊の家臣団を食い止める
壮大な盆踊り大会となるだろう
同胞たちよ、死者のために祈れ! 踊れ! 戦え!
そして自身は直接怨霊姫に挑むのだ
味方の援護を得て近づき【グラップル】を試みる
徒手格闘で倒す!
僧兵達には子竜の保護を最優先で頼みたい
死者には安らかな眠りを
念仏と武威をもって調伏しよう
「戦いの時だ!」
アノルルイ・ブラエニオン(変なエルフの吟遊詩人・f05107)の一声と角笛の音が騒々しく樹海へ響き渡る。その音に呼応するがごとく、木々のあちらこちらから僧兵の雄叫びが上がった。彼らを率いる鳳鳴・ブレナンディハーフ(破戒僧とフリーダム・f17841)が多くの僧兵を引き連れ、祭壇へと躍り出る。
「第六天魔王を名乗る仏敵の目論見は阻止せねばならん! 相手が怨霊の軍団だというなら全て調伏してくれようぞ!」
「ええい、騒々しい! 信長様に仇なす僧兵どもじゃと!? 迎え撃てい、怨霊ども!」
口々に雄叫びをあげ武具を構える僧兵たちに対し、同じく武具を纏った怨霊たちが出現する。各々の刃を手に、異なる軍団がぶつかり合う。刃が刃を打ち、鉄の擦れ合う音が響き渡る樹海は血生臭く、合戦場のように荒々しい。
「辛気くさいこの場所だな、ここは……よし、生命力に満ち溢れた空間に作り替えてみせようじゃないか」
ジャアアン、とギターを掻き鳴らす金髪のエルフ。この場に似合わぬエレキギターを構え、ハードロックに演奏を始めた彼を怨霊姫は忌々しそうに睨みつける。
元はサムライエンパイアの姫である怨霊姫にギターの音はなじみがなく、そのハードロックな大音量に頭痛さえすることだろう。
しかもその音楽に混じり、僧兵たちの念仏が唱えられるのならば、なおさらに。
「Bon=danceとは、死者の供養の音楽だそうだな。まさにうってつけだ」
「かか、まさに壮大な盆踊り大会よ。さあ、同胞たちよ、死者のために祈れ! 踊れ! 戦え!」
一進一退の攻防、しかし数は怨霊が上。召喚された僧兵たちだけでは押されるのが目に見えている。ならば、と鳳鳴は数珠を手に構えた。狙うは怨霊ではなく、その主。アノルルイの音楽に苦しむ怨霊姫だ。
「拙僧が直接お相手いたす。覚悟せよ、オブリビオン!」
「ああ、ああ騒々しい上に暑苦しい! これだから僧兵どもは嫌じゃのう。我が尊身に触れさせてなるものか!」
召喚されていた怨霊たちの一部が、ぐるりとこちらを向いた。怨霊姫の命令に忠実な彼らは足止めの怨霊を残し、主の元へ駆けつける。いくらか同胞が犠牲になろうとも、所詮は怨霊。彼らに死への厭いはない。
「ここはひとつ頼もう」
「了解したよ」
演奏の手を止め、アノルルイは弓矢をつがう。やっと本来のエルフらしい面構えで彼は弦を引き絞る。
「さぁて、踊れぬ死霊たちは一度おかえりいただこう」
アノルルイの援護射撃を背に鳳鳴も走り立つ。武器を振りかぶる怨霊をいなし、時に拳を入れ、時にただ受け流す。放り出した怨霊はアノルルイの矢に穿たれ消えていった。
「道を開けい!」
「ええい、役立たずどもめ! 私を守らんか!」
怨霊姫は護衛を足そうと命令を放つが、僧兵たちに足止めされている彼らは動けない。たとえ動けたとしても、突然背を向けた敵を、僧兵たちが見逃すはずがない。袈裟懸けに斬られ、またはつばぜり合いに負け、怨霊たちは消えていく。
「見誤なったな、怨霊姫」
いつしか、鳳鳴は怨霊姫の目前まで到達していた。
怨霊姫は怨霊支配力に長けた女性。しかし、本人はただのか弱き姫君。鳳鳴の拳を捌く術などあるはずがない。
「____死者には安らかな眠りを。念仏と武威をもって調伏しよう」
最後の一言は、今までと裏腹に静粛に。その掌破を受けた怨霊姫はその体を吹き飛ばされ、祭壇へと沈んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
竹城・落葉
【POWで判定】
我が故郷にも、この時がやってきたか。職場が壊滅した日のことが脳裏によぎる。何としてでも、この戦いには勝利せねばなるまい!しかし、罪なき竜の子を残酷に殺すとは、非人道にも余りある!許せん!
我は名物竹城を手に敵の懐に飛び込み、『支柱一閃』で切り伏せてやろう。そして、【フェイント】で隙を作り、【早業】で素早く切り伏せてやろう。武将であったのは過去の話だが、技量はまだ衰えてはおらん!
敵を倒した後は、時間があれば、この可愛らしい竜の心のケアをしたいところだ。丁度おにぎりを持っているので、時間があれば、この竜におにぎりをあげたいものだ。
*アドリブ&共闘、歓迎です
西条・霧華
「この世を死人が闊歩する領域になんて変えさせません!」
敵の密度が高い場所が儀式の場所である可能性が高いと思います
ですから、そういった場所を重点的に攻撃していきましょう
儀式の場所を発見出来たら怨霊姫を強襲します
叶うなら、小竜は先に助け出したいですね
【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
私が宿すは地獄の炎…
地獄の主・閻羅法皇には及ばなくとも、死者を冥府に送り帰す位はできます
私が鬻ぐのは所詮殺す為の業
それでも、其で誰かを救えるのなら…
私は「守護者」の【覚悟】を以て歩み続けるだけです
破壊された祭壇より、怨霊姫が這い出でる。その身は既に満身創痍であるが、怒りに狂った瞳は爛々と輝き、戦いの意思を鈍らせない。
どこだ、未だ抗う反逆者どもはどこにいる。
残酷なその光は失われることなく、開けた樹海を見渡した。
しかし、その瞳に映ったひとつの影を、彼女は追い切ることはできなかった。
激しく響き渡る鉄の音。鉄扇と刀、籠釣瓶妙法村正がぶつかり合う不快な音が、怨霊姫と西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)によって生み出された。
「この世を死人が闊歩する領域になんて変えさせません!」
「小癪なァ……反逆者如きがァッ!」
怨霊姫の怒りと共に、霧華の周囲より怨霊に憑りつかれた亡骸が湧き出でる。ぼこぼこと音を立て地の底から蘇ったそれは、怨霊姫によって操られるただの木偶。
「く……ッ」
怨霊姫を弾き、来襲する傀儡の首を跳ねる。しかしそれは既に死した身。首がなくともからくり人形のように霧華へ襲い掛かった。
「ひとりでは手に余る相手だ、助太刀する」
その傀儡が、目にもとまらぬ速さでバラバラに散る。斬り捨てられたそれはもはや人の形をしておらず、流石に動くことはなかった。
「! すみません……助かりました」
「まだ礼は早い」
見れば、前線から退いた怨霊姫は、己の能力に憤怒を乗せて怨霊の群れを召喚している。禍々しい陣から湧き出る怨霊たちは、鬱屈とした呪詛と共に二人の前へ現れた。
「まずはあれを倒さなくてはいけませんね」
「ああ。そして、元凶へとどめを刺す。……切っ先が届けばいいが」
一度抜いた刀を鞘にしまい、深緑の剣客は怨霊姫を強く睨みつける。その額のシワは深い。
____我が故郷にも、この時がやってきたか。竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)の脳裏に在りし日の情景が蘇る。楽しい思い出だったか、と問われれば簡単には答えられない。それでもこの世界は故郷であり、かつての職場は懐かしき思い出だ。
だからこそ、なんとしてでもこの戦いには勝利せねばならない。
「罪なき竜の子を残酷に殺すとは、非人道にも余りある……!」
「その通りですね……竜の子は私が。あなたはどうか、あの者に引導を」
霧華の言葉に落葉は静かにうなずく。彼女たちの意思疎通は、たったそれだけですんでしまった。
「私が宿すは地獄の炎……地獄の主・閻羅法皇には及ばなくとも、死者を冥府に送り帰す位はできましょう……」
霧華の体より溢れる炎が全身へと纏わりつく。まるで生き物のように蠢くそれは彼女の籠釣瓶妙法村正へと集まりその妖しさをより引き立てる……!
「私が鬻ぐのは所詮殺す為の業。それでも、其で誰かを救えるのなら……」
私は刀を振るうことを躊躇わない。
ふッ、と霧華の姿が消え、刹那怨霊たちの目の前へと姿を現す。疾走により眼前に迫った彼女は炎を纏った刀を打ち居抜く!
斬ッ!
反撃すら叶わない。目に捉えることさえ許さない。そんな殺人剣が怨霊たちを冥府へ叩き帰し、残った残骸は千々と散って消えゆく。
「……さあ、もう大丈夫ですよ」
斬り捨てた同じ手で彼女は子竜を救い上げる。己の剣がこの子を救ったのだ、という実感と共に。
同刻。
「では、終いの時間だな、怨霊姫」
落葉はただ、始末する。もはや己を守るすべもなくなった女を。数多の魂をもてあそび、罪なき子竜さえ殺そうとした業深きオブリビオンを。
「く、はは、ははははァッ! 私をここで倒そうが、すべては無駄なことよ! お主らなぞコルテス殿にもかなう者かッ!」
「さて、試してみぬことにはわからんな。武将であったのは過去の話だが、技量はまだ衰えてはおらぬゆえ」
ただ、一閃。
その一撃が全てを終わらせた。真っ二つに分かたれた怨霊姫は哄笑をあげたまま腹を捌かれ、脚と胴を斬り離される。太陽神を愚弄し儀式を完遂せんと目論んだコルテスが配下の一人は、消滅した。これで、富士噴火の憂き目はまた一歩遠のいただろう。
「ふう……」
ひとまずは終わった、と息をつき、落葉はもうひとりの猟兵へと振り返る。任せた手前、心配はしていないが、可愛らしい竜の安否が確かめたいと思ったからだ。
「おつかれさまです。この子はなんとか、無事そうですよ」
霧華の腕の中で小さく丸くなる子竜。竜には見えない臆病さだが、あの狂ったオブリビオンに殺されかけたのだ。それも致し方ないか、と落葉は懐を探った。
「おにぎりがあるのだが、食べるか?」
差し出されたおにぎりに子竜は興味を持つ。ふんふんと嗅いだあと小さくかじりついた子竜を見て、自然と二人の顔はほころぶのだった。
成功
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