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エンパイアウォー③～異国のカンフーにゃんこ隊、見参！！

作者：柊透胡

　――先んじて『寛永三方ヶ原の戦い』に勝利した猟兵達は、『第六天魔軍将図』を入手する。
「この『第六天魔軍将図』に記された名前は８つ。内、『武田信玄』は、皆が倒してくれた訳やけど」
　プリズムボールのようなグリモアを見詰める、各務・瞳子（七彩の聴き手・f02599）の表情は厳しい。猟兵達に向き直ると、サムライエンパイアの地図を広げた。
「この『第六天魔軍将』らが、サムライエンパイアの覇権を取らんと一大攻勢を仕掛けてきたんや」
　この国難に立ち向かう為、徳川幕府は諸藩からの援軍も合せ幕府軍10万を招集。幕府の総力を挙げて、オブリビオン・フォーミュラと予測される織田信長を撃破すべく動き出す。
「織田信長の撃破に、この徳川の軍勢は必要不可欠や」
　此度の戦争に於いては、行軍する徳川幕府軍を信長軍の攻撃から守りつつ、行く手を阻む第六天魔軍将らと戦っていく事になるだろう。
「集結した徳川幕府軍は、本隊が東海道、中山道方面軍はまんま中山道を通って、機内の玄関口『関ケ原』に向かうそうや」
　　しかし、中山道の要衝である『信州上田城』周辺は既に、魔軍将が1人、軍神『上杉謙信』の軍勢により制圧されている。
「上杉軍は、中山道方面軍を殲滅する準備を整えとるところや」
　このままでは、中山道方面軍２万は壊滅する。これを阻止するには、猟兵の手で『信州上田城』の上杉軍の力を削がなければならない。
「信州上田城は小さな山城や。流石に、オブリビオンの軍勢全部は収まりきらへん。そやさかい、城の周囲の山岳地帯に、複数の部隊が集まっているようやね」
　そこで、先行した猟兵達が、山岳地帯に屯する上杉謙信配下のオブリビオンの軍勢の内、主力となる強力な部隊を撃破する事となる。
「皆の襲撃で戦力を喪えば、不利を悟った上杉軍は撤退するさかいな」
　瞳子が指さした地図の一点にいる敵は『異国のカンフーにゃんこ』。信長によって異国より召喚されたカンフー使いのにゃんこ達だ。その数は二桁だが、２０より多い事は無いだろう。
「今回は、山岳地帯での戦いや。地形に即して、上手く敵を奇襲出来るように……宜しゅうな！」

第1章 集団戦 『異国のカンフーにゃんこ』

POW   :    にゃんこ流一本釣りにゃ レベル×1tまでの対象の【衣服（棒の先に引っ掛けることで）】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。 SPD   :    これがにゃんの超速戦闘術にゃ 自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。 WIZ   :    にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ 自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。 イラスト：ひろしお 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　中山道の要衝、信州上田城――その周囲に連なる山岳地帯の一角に、赤いものがちらちらと。
「おかしいにゃぁ。織田信長に見参する筈だったのに、にゃ」
　棍を担いでぼやいているのは、ぬいぐるみめいた二足歩行の三毛猫――その名も『異国のカンフーにゃんこ』。織田信長によって異国より召喚された、カンフー使いのにゃんこだ。うん、そのまんまで判り易い。
「ここのえらいひとは……うえすぎけんしん？　まぐんしょーだっけにゃ？」
「ぐんしんらしいにゃ……ぐんしんって、おいしいにゃ？」
　拳法着もお揃いのファンシィに愛らしいにゃんこ達は、ワイワイと賑やかに。緊張感の欠片もなさそうだが、その数は人の両手両足の指の合計に迫る。立派に一小隊だ。
「何で、にゃん達はお城にも入っちゃいけないにゃ？」
　素朴な疑問にも、知らない、と一斉に小首を傾げるカンフーにゃんこ達。帽子の鈴飾りがチリンチリンと鳴り響く――。
「山岳戦ですか。長い得物を振り回すのは難しいのと、上に陣取った方が有利というのが定石ですね」
　そんな異国のカンフーにゃんこ隊に奇襲を掛けんと、虎視眈々と狙う猟兵達。高柳・零（テレビウムのパラディン・f03921）の言う通り、グリモア猟兵に転送の位置を調整して貰い、隊を山頂側から見下ろす位置取りで三方から布陣する。
「まあ……なんだろ。いつも通り気付かれる前にやればいいね！」
　まずは切り立った崖の上に、大量のカタリナの車輪――棘付き巨大車輪の拷問具を並べるカーバンクル・スカルン（クリスタリアンの咎人殺し・f12355）。その数、実に39輪。
「スクラップビルダーの手際をなめんな！」
　原案は源平合戦、屋島の戦いに於ける源氏の奇襲方法！　機を見て一気に転がす算段だ。
「我が故郷でもこの時が来たか……この戦い、絶対に負けられぬ！」
　竹城・落葉（一般的な剣客……の筈だった・f00809）の脳裏に過るのは、職場が壊滅した日の出来事――徐に深呼吸し、両腕を大きく広げ掲げる。
　ウホ、ウホホホ、ウホオオオォォーーッ！！
　ドラミングして喚ばうは森の賢者――即ち、ゴリラ、更にゴリラ、ついでにゴリラ。
　……まあ確かに、森でなくとも、陸の自然であれば、森の賢者たるゴリラに分があるだろう。
「このまま、ゴリラの腕力で捻り潰してやろう！　……いや、我はこの戦争には思い入れがあるのだぞ。思い付いたのが、このユーベルコードだっただけで！」
　何でか、カメラ目線で言い訳している落葉はさて置いて。ゴリラ強襲を認め、カーバンクルのカタリナの車輪も又、一気に崖から雪崩落ちる！
「さて、私が降りるまで、立っている子はいるかな？」
　唸りを上げて急転直下の巨大車輪を余所に、カーバンクル自身はのんびりと。岩肌や張り出した枝に、ワイヤーを着実に引っ掛けながら降りていく。これも先述の戦いで「馬を傷付けたくないから徒歩で降ります」と言った武将に因んで、だとか。
「両翼は動き出したようです。自分達も行きましょう！」
　やはり山頂に近い尾根から見下ろしていた零は、他の猟兵達に声を掛けるや、一目散に駆け下りていく。まさか、敵もいきなり山頂方面から襲来するとは思っていまい！
「さあ、幕府軍の奇襲です！　徳川家は野戦が得意ですから！」
　強気に鬨の声を上げる零。最初は、カンフーにゃんこの一本釣り対策に服を着ないで参戦の心算だったが……妖精でもすっぽんぽんは駄目です。富倫的に。
　まあ、にゃんこの棍に引っ掛けられる箇所は限られるだろうし、そこは集中的に防御すれば。
　にゃにゃにゃにゃっ！？
　三方一斉の逆落としに、ギョッとにゃんこ目を見開くカンフーにゃんこ達。あたふたしている態勢が、整えられるその前に。
「木が邪魔でも、一緒に斬ってしまえば問題ありません」
　諸々一刀両断せんと、テレビウムの少年は勢い良くバスタードソードを振りかぶる。
「天に代わって悪を斬る！」
　威勢の良い掛け声が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「……」
　僅差の速度で一番槍を譲る形となった片桐・公明（Mathemの名を継ぐ者・f03969）は、剣呑に赤の眼を眇める。
「だが、一番首は片桐公明。あたしが頂くぜ」
　チャイナドレスの裾を艶やかに翻し、敵陣へ切り込む公明。常とは全く異なる、荒々しい殺意が溢れんばかり。
　その殺気に反応したか、混戦の最中のカンフーにゃんこ達の目の色が変わる。
「にゃんこ流一本釣りにゃ！」
　掛け声が響くや、公明に殺到する棍。
　――――！！
　時に受け流し、カウンターで反撃し、だが、総てをいなすには至らない。チャイナドレスを引っ掛けるように振り回され、一気に山肌で叩き付けられる。
「興が乗った!!　今日は武器を使わずに素手で相手してやる」
　だが、素早く体勢を立て直した公明は不敵な面持ち。尚も押し寄せる棍を、真っ向から握り込む。
　バァァンッ！
　逆に猫の体躯を釣り返し、地面へと叩き落した。
「ただし、あたしが使うのはカンフーじゃないけどな」
　その名も、諸葛流舞闘術――様々な武術に舞踊を組み合わせた独特な体術は『道』より『術』を重んじ、その威力は一撃必殺をも。
「たりめーだろ。あたしはこれは戦争で、あたしは喧嘩をしに来たわけじゃない。お前らをぶっ殺しに来たんだからな」
「ひるむにゃ！　纏めてかかるにゃ！」
　だが、カンフーにゃんこも然るもの。棍唸り、輝く鈴の音さえも消えた超速戦闘術が奔る。乱戦の中、血華が咲くよう。
（「いやいやありえなっしょ、あんな可愛いの……が……？」
　殿として付いて来ていた、三池・悠仁（幻想世界の迷子・f20144）の顔が引きつっている。最初は普通に可愛いにゃんこと思っていた悠仁だが。
（「ナニアレコワイ！　全力で恐怖しか感じないんですが！」）
　先輩猟兵とカンフーにゃんこの激闘に、腰が引ける思いで息を呑む。
「すいません！　全力で強敵ですね！」
　猫好きだから、少しは前に出られるかも！　と思っていた甘さを後悔してしまう程――そんな少年の周囲に、じわりとバロックレギオンが滲み出る。
　――――！！
　甲高く叫びながらカンフーにゃんこ共に掴み掛る歪んだ軍勢、その数25体。ますます混戦模様の山中にて、忽然と現れたのは――祝聖嬢・ティファーナ（フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580）。
「わが身を水晶の様に透明に……」
　どうやら、透明になるユーベルコードを使っていた模様。身に積もる疲労感を堪え、ティファーナは身体の一部を上位精霊、或いは真神聖霊に変化させる。
「にゃん達にとっては、この世の万物が武器となるのにゃ」
　フェアリーの小柄に尋常でない力を感じたか、足元の岩の類を次々と棍に変換、操作するカンフーにゃんこ達。
「世界を巡りし英霊よ……蘇ノ能力を現わせ……☆」
「え、え……！？」
　次の瞬間、棍の集中砲火をかわし、ティファーナは悠仁の元に転移する。
「ニャンコさんには敗けないからね！」
　すぐさま反転し、意気込む小柄は縦横無尽に戦場を飛び回る。次々と、ユーベルコードを繰り出した。
「強さと美しさの両立。それこそ諸葛流舞闘術の真髄よ」
　そうして、次々とオブリビオン討伐が成される中、悠仁のバロックレギオンに埋もれたカンフーにゃんこへ、公明が一撃を浴びせた時。
　ティファーナの小さな指が、最後のにゃんこに引導を渡す。
　――光を怯える闇と悪よ、悔い改めなさい……。
　にゃぁぁぁっ！！
　天からの光に射抜かれ、くたりと崩れ落ちたカンフーにゃんこは忽ち霧散した。

　――斯くて、猟兵達はオブリビオン小隊を撃破。信州上田城突破の布石を打ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年08月04日