4
エンパイアウォー④~狂信者の黙示録

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0





「三方ヶ原での戦いが終わる否や一気に攻めてくる、か。余程織田信長が焦っているのか、それともそれ程までに首塚の一族と家光さん率いる徳川軍の士気を怖れているのか……判断に迷うところだな」
 グリモアベースの片巣でとある光景を目撃しながら、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)がぽつりと呟きを一つ。
 それはさておきと小さく息をついた後、優希斗が静かに語り始めた。
「まあ事情はさておき、この機会を見逃す理由は無いな。丁度織田信長軍の動きの一つが視えた所でも在る訳だしね」
 そう呟きながら、小さく溜息をつく優希斗の表情は、少々沈痛そうではあった。
「さて現在皆には、徳川軍を一人でも多く関ヶ原へと送って貰うべく活動して貰っているだろうとは思う。その上で、今回の件に対してどう対応するかを考えて欲しい。……現在、信長軍の魔軍将の一人である侵略渡来人『コルテス』が、富士の樹海に隠された儀式場で、コルテス配下のオブリビオンが富士山を噴火させる為の『太陽神の儀式』を行うべく活動を開始している」
 もし、この作戦が成功すれば、富士山が噴火を起こし、東海・甲信越・関東地域が壊滅的な状態に陥るのは間違いない。
「この壊滅的な状態を放置しておけば、流石に徳川幕府への民の信頼が脅かされることになる。となると、徳川軍としては、この災害による被害から各地域を復興させるために、全軍の2割以上の軍勢を残さざるをえなくなってしまうだろうからね」
 同時にそれは、それだけ徳川軍が織田信長軍と衝突する時の戦力が削られてしまうことになる。
 最悪の場合は、民を見捨てる決断を家光はするだろうが……それはそれだけ民に徳川幕府への不信を植え付けることになってしまうだろう。
「ならば、予め皆がこの富士山を噴火させる儀式を阻止するために富士の樹海を探索し、その儀式の主導者を見つけて討滅する事は無駄にはならないだろう」
 一人でも多くの民を救うために、この富士山の噴火が起きるのを防ぐべく行動を起こすか否か。
 それは全て、猟兵達の意志に委ねられている。
「いずれにせよ、富士山の噴火という未来が視えてしまった以上、この富士山の噴火を起こそうとするオブリビオンを見つけ出し、皆に討滅して貰う必要性はあるだろう、と俺は思っている。……サムライエンパイアの民を守るためにも、ね」
 尚、優希斗の予知の範疇ではどんな敵が隠れて富士の樹海でこの儀式を行なっているのかは不明。
 分かっていることは、今回彼が視たオブリビオンは、織田信長に心酔し、彼のためであればどんな犠牲でも払うことが出来るという事。
 つまり、織田信長がこの作戦の成就を願っているのであれば、その為に最善を尽くすであろう事だ。
「そう考えると、恐らく富士の樹海から彼を探し出すのは困難を極めるだろう。その上で皆には2つの選択肢がある。1つは、彼の性格を読んで困難なのを承知の上で何処に彼が儀式場を作っているのかを推測してその現場に向かい、儀式中の彼を撃破すること。もう1つは、ある程度どの様な所に隠れているかの目星は付けた上でこのオブリビオンを皆が儀式場から誘き出して短時間で彼を討滅するか、だ」
 とは言えどちらを選ぶにせよ、リスクは生じる。
 そもそも彼が何処に隠れているかをある程度予測して行動しなければ、全ての行動は水泡に帰するのだから。
「……少々難しいかも知れないが、皆にならきっと出来ると俺は信じている。どうか皆、宜しく頼む」
 優希斗の言葉に背を押され。
 猟兵達はサムライエンパイアの富士の樹海へとテレポートされるのであった。


長野聖夜
 ――狂信者の行方は如何に?
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけで戦争inサムライエンパイアと相成りましたね。
 此方は、富士の樹海に潜むオブリビオンを見つけ出し、彼等が富士山噴火の儀式を成功させるのを阻止するシナリオとなります。
 基本的には、富士の樹海を探索して頂き、その上で儀式場を発見し、儀式中のオブリビオンを撃退するという流れが妥当ですが、このシナリオに限りましては、もう一つ、儀式阻止の手段を提示させて頂いております。
 但し、本来の儀式阻止の手段とは異なる手段となりますので、其方の手段を選択した場合、戦闘難易度がそれなりに上がります。その点、厳し目に判定致しますのでご了承の程を。
 下記、2点が今回の敵オブリビオンの特徴となります。
 1.このシナリオのオブリビオンは織田信長に心酔しており、それこそ絶対神の様に崇め忠誠を誓っている。
 2.信長の要請を受けて今回の儀式を行なっているので、儀式を何とかして成功させたいと死力を尽くしている。

 プレイング受付期間、執筆期間は下記の予定でおりますが、状況によっては変更もございますので、マスターページも合わせてご参照頂けますと幸甚です。
 プレイング受付期間:8月2日(金)8時31分以降~8月3日(土)19時頃迄。
 リプレイ執筆期間:8月3日(土)~8月5日(月)夜。
 プレイングは上記リプレイ執筆期間内に入る様、お送り頂ければ幸甚です。

 ――それでは、良き樹海探索を。
112




第1章 ボス戦 『宗教家・ニェポス』

POW   :    ニューレリジョンメーカー
技能名「【洗脳式勧誘・調略術】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    ゴートリック・パースエイジョン
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【対象の脳内に教義を語り意識を混濁させる声】が出現してそれを180秒封じる。
WIZ   :    アフターライフガチャコンダクター 37
【サムライエンパイアの民草の現世への未練】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【洗脳を強化し、信者を自決すら厭わぬ殉教者】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はリダン・ムグルエギです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

尾守・夜野
儀式場探す為と、仲間や敵に俺が見つかりやすいようにスレイに乗って上空から探す【存在感、情報収集】


「…狂信者…ねぇ
どこにでもいやがるな
糞な奴らは…」


こいつにでは無いが狂信者、邪神に対して激しい憎悪を抱いている
しかも噴火…つまるところ「火」だ (宿敵が実は火の巨人だったり)

俺の恐怖、憎悪、怒りの感情は激しいな。だからモンペのように火の玉出て来て追いかけてくだろう

他の奴らにも良い目印になるんじゃね?
飛んでいく火の玉の後をつけながら
「信長も大したことねぇな!
こんなびびりな奴が配下なんぞ…程度が知れるな」

後適当に思い付く限りの信長への罵倒を織り混ぜて【挑発・誘き寄せ】しながら探そうか


白石・明日香
この樹海で探し物か・・・・面倒だな。
なにがなんでも儀式を成功させたいようだし、何より心酔している信長に頼られて有頂天になっているはず。となると儀式に必要なものとかを運んだ痕跡が残っているだろう。敵に時間がないから全てを隠しきることはできないだろうから、その痕跡を探して追跡儀式場と探す。首尾よく見つけて戦闘に持ち込めたら予め耳栓でもしておき、勧誘には聞く耳持たず。ダメ押しで残像を展開して突撃。相手が特定できないうちに接近して叩き切る!もし相手の勧誘が広範囲に及ぶものなら、予め忍ばせていたナイフで自身を刺して痛みに意識を向けて勧誘を無視する。
セリフのアドリブや他の方との絡みは大歓迎です。


ボアネル・ゼブダイ
奴は儀式を絶対に成功させなければならないという強い信念を持っている
故に我々が邪魔立て出来ぬように徹底的に秘匿するであろう
だが、信長を神の如く盲信しているのならば己を通じて為す偉業を周囲に示したいという欲求は誰よりも強いはずだ
ならば儀式に至るまでの道に僅かな痕跡を残している可能性は高い
神の教えを小出しにしてその価値を高めることは宗教家が最も得意とするところだからな
UCを発動
魔狼で痕跡を辿る
森の狩人でもある狼は匂いや音だけではなく
周囲の僅かな違和感すら感じ取り獲物を追い詰める高い追跡能力がある

発見したら信者は魔狼に任せ宗教家は私が相手をしよう

その狂った信仰と共に骸の海で永遠に眠るがいい

アドリブOK


駆爛・由貴
樹海の中でかくれんぼか
ハッ!おもしれー話だなオイ

敵がそこまで信長に心酔してるってんなら
信長の悪口を言いふらせば誘い出せるか
あるいは何かしらの反応を掴めるんじゃねぇか?
宗教家なんて頭でっかちでシャレが通じねー奴が多いからな

UCで自律ポッド達を呼び出し
スピーカーを大音量にして敵をおびき寄せるぜ
「信長なんざえらそーにしてても所詮は田舎侍だよな!」
「引きこもりの臆病もんだし!」
「そりゃうつけ呼ばわりされるよな!」
「尾張の恥だぜあいつはよ!」

敵が現れたら信者は自爆前にバサンとUCで遠距離から掃射
本体はミストルティンの誘導弾とオンモラキのビーム砲で撃ち抜くぜ

説法なら地獄でしろよ!オッサン!

アドリブOK


ウィリアム・バークリー
織田・信長の狂信者ですか。オブリビオンの心をそこまで掴むとは、第六天魔王、侮ってかかるわけにはいかないようです。

敵は富士山を噴火させたいというのなら、きっと富士山頂が見えやすい位置にいるのでしょうね。
樹木が少ない方向から調査を始めます。

『スプラッシュ』を大地に刺し、地脈の流れに歪みがないか、あるとしたらそれはどこかを、「全力魔法」と大地の「属性攻撃」で読み取り儀式場を見つけます。

発見後は、Stone Handで敵の動きを封じてからIcicle Edgeで「串刺し」にします。
怯んだところに突っ込んでルーンスラッシュ!
この世界に破滅をもたらそうという邪悪な企みは、見逃すわけにはいきませんよ。討滅!


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

僕自身は探索→撃破方針
事前に参加者全員と連絡先・連絡手段共有

信長に心酔し、どんな犠牲を払ってでも儀式を成功させたい、か
となると、儀式完遂まで絶対見つかりたくないはず

そうなるとどこかの洞窟で儀式をしていそう
「世界知識、情報収集、視力、暗視、地形の利用、失せ物探し」で足跡等に注意を払いつつ
樹海の最奥、富士山と直接接している当たり、重点的に探すか

発見次第全員に連絡
「目立たない」ように背後を取り
「先制攻撃、2回行動、怪力」+【憎悪と闘争のダンス・マカブル】を叩き込む(※味方攻撃なし)
封じられた場合もそのまま黒剣を叩き込むのみ

※誘き出し→撃破方針のほうが多い場合は攻撃に徹します


藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ連携可
齟齬不足は多数派に従います

これから長丁場になるから、予知するグリモア猟兵の負担が大きい
優希斗さんにもゆっくり寝てほしいし、早く終わらせよう
三方ヶ原以来、心休まる時はなかっただろうしな

事前に全員と連絡先共有

まずは虹色のミラーコンパクトでサムライエンパイアにおける富士の樹海の情報を集め(世界知識、情報収集)、皆と共有
定期的に【もふもふさんたちの救護活動】で小動物を呼び集めて
怪しい人影を見なかったか、いたらだいたいの方角を聞いてみる

戦闘になったら「歌唱、鼓舞」+(可能なら)【サウンド・オブ・パワー】で皆を鼓舞し、士気を高めよう
殉教者の攻撃は回避に専念…それしかできないしな


マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

【泉照焔】を手にして樹海を探索
これは俺がいつか黄泉路を辿るときに迷わぬようにと無二の友であるカガリが贈ってくれたもの
光を発し失せ物探しや見切りの効果がある
妖しげな儀式には生け贄や結界が定番
連れされられた者を探すよう念を込め、樹海の迷路を見切る
さらに結界に供えて【破魔黒弓】を携え、【黒華軍装】の情報収集と追跡で痕跡を辿るように

敵は誘惑・魅了のような術を操るようだが、生憎と俺はカガリにしか気を許さなくてな
敵の技はカガリが遮断してくれるだろう
俺はカガリを盾に【碧血竜槍】を投げて【流星蒼槍】を発動
召喚した竜に続けて素早くダッシュ
自身も【魔槍雷帝】を手に一気に攻め込もう


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

太陽神の、儀式場。その為の富士噴火、と。
…いけないぞ、それは、とても

【導きのペンデュラム】、太陽神の儀式を行っているオブリビオンを見つけたい
その願いを、叶えてはくれないか
この森を照らすのは、カガリの篝火(命の篝火)よりも、まるの焔の方が適しているだろう
要らぬ火災を起こして、儀式の手助けをするのもな

敵を見つけたら、その一途な意思を閉ざそう
何のかんのと御託を並べはしているが、
結局は狂信の域に達した忠義、崇拝、依存と拒絶に他ならない
非常にわかりやすく――捉えやすい(【死都之塞】)
弱点(視界から外れる)は、隠形させた【籠絡の鉄柵】を絡ませることで行動の自由を奪っておこう


ナミル・タグイール
さむらいな世界にもこんな森があったんデスにゃ。
お宝探しに行きたいけど…まずは敵探しにゃー。

儀式には呪いアイテムとか色々置く場所が必要なはずにゃ。
だからきっと森の中の洞窟にお宝とかいっぱい溜め込んで儀式場作ってるにゃ!
【呪詛】を感じる方に向かいながら洞窟がないか探検にゃ!

…なんだか友達に似た山羊デスにゃ?親戚にゃ?
でも敵なら容赦しないデスにゃ!
(金ぴかいっぱい稼げる!みたいな話は聞く単純猫
でも宗教とか難しい話はよくわかんないにゃ!!

儀式を止めればいいって聞いたし儀式場をめちゃくちゃにしてやるにゃ。
UCで武器を【呪詛】ましましにして儀式に上書きしてやるマスにゃ!
敵も儀式も全てぶっ壊れろデスにゃー!


須藤・莉亜
「さてと、どうしたもんかなぁ。」
さっさと見つけて、敵さんの血を吸いたいとこだね。

血狩りのUCを発動、47人の僕の分身たちを召喚。
敵さんに対する吸血欲求を利用して、彼らに敵さんを追跡してもらう。

上手いこと見つけられたら、分身たちと敵さんを攻撃。
Ladyを持たせた分身には周囲に潜んでもらい狙撃。
他には奇剣で斬りかかる奴、深紅で縛り上げる奴なんかを混ぜて攻撃。
本体の僕は血飲み子と悪魔の見えざる手で攻撃していく。

全員で【吸血】出来るように頑張ろう。

敵さんの攻撃は【見切り】や【第六感】で回避。後は【武器受け】で防御。




「……狂信者……ねぇ。何処にでもいやがるな、糞な奴等は……」
 愛馬、スレイことスレイプニール、即ち北欧神話に代々伝わる神馬に跨り、富士の樹海の上空から怪しげな場所はないかと、身を焼き尽くさんばかりの憎悪に身を焦がしながら、屋守・夜野が冷たく息を一つつく。
「何か見つかりそうか?」
「……いや、駄目だな。上空から見た所でどこで何が起きているのかさっぱり分からない」
 ボアネル・ゼブダイからの呼び掛けに、夜野が軽く頭を振った。
(「やはり、か」)
 相手の心理を鑑みれば、そう簡単に儀式場を見つけられれば苦労はしないだろう、と胸中で結論づけていたボアネルの表情に納得が浮かぶ。
「まっ、しょうがねぇ話だな! 流石に敵さんだって見つかるつもりはないだろうからな、お前もそう思うだろ、ボアネル!」
「ああ、そうだな、由貴」
 駆爛・由貴の声に、先程の考えを念頭に置いたままボアネルが返事を返した。
 館野・敬輔もまたそれに同意する様に静かに頷きながら、周囲に集まった猟兵達を見まわして問いかける。
「皆は、どちらの方針を取るつもりなんだ?」
「そうだねぇ、どうしたもんかなぁ。まあ、僕としては取り敢えずさっさと見つけて敵さんの血を吸いたいとこだね」
 敬輔の呼び掛けに軽く肩をすくめながらそう返したのは、須藤・莉亜。
「お前は……」
「敬輔さんですね。カガリさんがご存じかどうかはわかりませんが」
 出水宮・カガリの呼び掛けに本人に代わってそう答えたのはウィリアム・バークリー。
 何度か戦場を共にした間柄だ。顔見知り程度には知っている。
「けいすけ、か。カガリはカガリだ。こっちはまる」
「マレークだ。まあ、俺達は元々探索するつもりだったぜ? 無二の友のカガリが送ってくれたこれでな」
 カガリの隣にいたマレーク・グランシャールがそう頷きかけながら、懐から取り出したのは小さな水晶の内側で、消えない炎を灯し続けるまるでカガリ……篝火を思わせる炎を伴った宝石、泉照焔。
「まっ、そうだな。取り敢えず相棒の手伝いをして、それで絞り込めなかったら信長の悪口でも言いふらしてやろうかとは思っているぜ?」
「まぁ、オレもそうだな」
 スレイで上空偵察をするのを一度中断し、怨剣村斬丸から解き放たれた40を優に越える火の玉がユラリ、ユラリと陽炎の様に周囲を浮遊しているのを見ながら由貴に同意するは、夜野。
「正直、この樹海で探し物ってのも、面倒ではあるが……まあ、オレも探すつもりではいるぜ。ボアネルに敬輔だったか? あなた達も気が付いている様だが、敵は何が何でも儀式を成功させる為の手段、それを見つけるための証拠は間違いなく探せばあるだろうとは思うからな」
 白石・明日香の言葉に、ボアネルがそうだな、と小さく頷いた。
「奴からすれば、我々が疎ましいのは間違いない。だから、我々が邪魔だて出来ぬ様、徹底的に秘匿する一方で、信長の偉業を周囲に知らしめたいという欲求は確かかにあるだろう」
「つまりその痕跡を追って探していく、という考えがある、と言う事か」
 そっと虹色のミラーコンパクトを取り出し、この世界の富士の樹海の情報を集積しながら、納得した、と言う様に頷くのは藤崎・美雪。
(「それにしても……優希斗さんも相変わらず無茶をしている様だな」)
 まあ、それに限っては敬輔もある意味同様ではあるが。
 はぁ、とそんな美雪達の様子を見ながら感心した様に溜息をついたのは、ナミル・タグイール。
「さむらいな世界にもこんな森があったんデスにゃ。アックス&ウィザーズにもあった訳デスがにゃ……う~ん、お宝探しにでも行ってみたいものデスにゃ」
 ナミルのお宝探しと言う言葉に、愉快そうに由貴が鼻を一つ鳴らす。
「お宝探しか! まぁ、ある意味お宝探しと言えばお宝探しだろうな」
 最も、今探さなければいけない儀式場をお宝と言っていいのかどうかは微妙な問題ではあるが。
「取り敢えず皆が探索を重点に置きつつ、状況によって挑発を混ぜるつもりなのは理解したよ。その方針には僕も異存はない」
「けいすけ、だったか? それならば、カガリ達も協力しよう」
 呟きながらカガリが懐から取り出したのは、白き星の欠片。
 それは、最愛の婚約者である願い星の彼女が渡してくれた『導きのペンデュラム』
(「太陽神の、儀式場。その為の富士噴火、と。……いけないぞ、それは、とても」)
 富士噴火と言う大災害。
 太陽神の力を借りるその儀式を行われては、どれだけの犠牲が出ることだろう。
(「願い星、願い星。カガリの願いを、叶えてはくれないか、太陽神の儀式を行っているオブリビオンを見つけるというカガリの願いを」)
 カガリの願いに応じる様に。
 白き星の欠片が流れ星の様な煌めきを発し、まるで、カガリ達を案内するかの様にある道筋を指し示していた。
「……なんだか、呪詛があちらに向かっている様な、そんな感じがするのデスにゃ」
「ならば、我々全員で其方に一度向かってみるべきであろうな」
 ナミルの呼び掛けに、ボアネルが静かに首肯を一つ。
「まる。この森を照らすのは、カガリの篝火よりも、まるの焔の方が適しているだろう」
「そうだな。カガリがくれたこれには、失せもの探しをするには優れた力を持っているしな。……皆、俺達に着いて来てくれ」
「分かりました。それでは皆さん、行きましょう」
 先行するマレークの言葉に同意する様に頷きかけ。
 ウィリアム達は樹海を探索するべく、カガリが指し示し、マレークが照らし出した樹海の獣道を歩き始めるのだった。


(「信長を神の如く盲信している相手であれば、己を通じて偉業を周囲に示したいという欲求は誰よりも強いだろうな」)
 マレークを先頭に、カガリや明日香が虱潰しに何か痕跡は無いかと目で追っているのを確認しながら、両手で素早く印を切るボアネル。
「相棒、どうするつもりだよ?」
 周囲に200体の小型の戦闘用で有りながらも、それ以外にも軽作業や治療に使える自立型ポッドを展開しスピーカーモードをONにした由貴の問いかけに、ボアネルが其方へと深紅の瞳を向けた。
「こうするつもりだ。『光届かぬ暗黒に潜み、影の中を走る餓えた獣よ、血の盟約に従い、我が意のままにその力を示せ』」
 詠唱と同時に影に金色の瞳と、暗夜の如き黒い巨躯と爪牙を持つ自らの影に潜む魔狼を召喚するボアネル。
 得心がいったのか、明日香がへぇ、と愉快そうな声音を上げた。
「随分とデカイ狼だな。もしかして、そいつにも探索を調査して貰うってことか?」
「狼は、森の狩人だ。私達には読むことの出来ない匂いや音は勿論、周囲の僅かな違和感すら感じ取り獲物を追い詰めるだけの能力があるからな」
「そう言うものか」
 ボアネルの言葉に納得した様に頷き返すは敬輔。
「可愛いもふもふさん達……最近、何か誰か怪しい影を見なかったか?」
 ボアネルの魔狼に刺激されたか、目を閉じ歌う様に言の葉を紡ぐ美雪。
 美雪のそれに応じる様に樹海の木々の影からひょこひょこと姿を現わすは、リスやオコジョ等、思わず触れてモフモフしてしまいたくなってしまいそうな愛らしい小動物達。
「僕もさっさと見つけるとしようかなぁ」
 莉亜が誰に共無く呟くと同時に、47人の自らのオブリビオンに対する吸血欲求……そして、ほんの微かに混じっている様に感じる血の匂い……に反応した自らの分身達を召喚。
 彼等は、樹海の四方へと散らばっていき探索を開始していた。
 それに伴う様に、夜野の怨剣村斬丸の周囲を漂っていた死人の魂達が、マレークが泉照焔で照らし出している方角……恐らくそれは樹海の最奥部、富士山と直接接している辺りだろう……を指差していた。
「……歪んでいますね……」
 ルーンソード『スプラッシュ』の先端を大地に突き刺し、地脈の流れの歪みを感じ取りながら、ウィリアムが息を一つ吐く。
(「ですがこの地脈の流れの歪みだけでは……直ぐに敵を見つけるのは難しそうですね」)
 それは恐らく、この儀式自体が、幾つもの場所で行なわれているから。
 複数箇所で儀式が行なわれているのだから、成程、地脈が歪み、幾つもの乱れが生じ、これだけで今回の敵が何処にいるのかを探し当てることは難しいかも知れない。
「あっちだと言うのだな? 願い星」
 祈る様にギュッ、と握りしめていた白き輝きを発する導きのペンデュラムに呼びかけるカガリに応じる様に、ボアネルの魔狼や、夜野の呼び出した火に対する憎悪の塊とも言うべき人魂達が火の玉と化した者達もまた、敬輔やウィリアムが予測した方角……即ち樹海の最奥部の方からその空気を敏感に感じ取っていた。
「血の匂い、だね」
 愉快そうに口元に笑みを閃かせる莉亜の呼びかけに小さく息を吐きながら頷きを返すボアネル。
「……その様だな」
「確かに、あっちの方から強い呪詛を感じマスにゃ」
「地脈の流れは千々になっていますから、正確に読み切ることは難しいですが……皆さんが向かっている方角の地脈も大きく乱れが生じているのは確かですね」
 ナミルの問いかけに応じる様にウィリアムが頷きを一つ。
 と、その時。
「ふむ、これは……」
「どうした、まる?」
 マレークが泉照焔に念を籠めて何かを感じて一人呟くのに気がついたか、カガリが呼びかけるとマレークは見た方が早いだろうとばかりに泉照焔で地面を照らした。
 その様子を目を凝らして見つめていた明日香があっ、と思わず声を上げる。
「何かを引き摺っていったみたいだな……痕跡が真っ直ぐ続いてやがる」
 明日香の言葉を裏付ける様に、夜野の放った火の玉達が、まるで其方の方角で正しいとばかりに周囲を照らし出しながら迷う様子も無く樹海の奥へと進んでいく。
 その痕を由貴達が追っていって暫くの後……。
「~~! ~~!」
 異様な呪詛と強い血の臭気が漏れる巧妙に隠された洞穴を見つけ出させたのだった。


――だが、そこには更なる災難が待ち受けていた。
 それは……。
「結界、か。予想通りだな」
 退魔具である黒漆仕立ての和弓、破魔黒弓を携え自らの体格に合わせられたオーダーメイドの黒華軍装に身を包んだマレークが巧妙な偽装のために行なわれていた結界を見つめ直しながら息を一つ。
 想定していたのは目的地に辿り着けぬ様、この樹海を木々による自然迷路に擬態させる結界術であったが、そうではなく洞穴の入口を塞ぐ為の結界を張っていたのは、意外な計算違いだった。
「さて、どうしようか」
「まっ、それだったら俺達に任せろよ」
「成程、そう言う考えか。悪くは無い手だな」
 自信満々に告げる由貴のそれに得心がいったか、魔狼を影に潜ませながらボアネルが静かに頷く。
 夜野もスレイに跨がり、軽く指を一つ鳴らした。
 そして……。
「信長なんざえらそーにしてても所詮は田舎侍だよな!」
 嘲弄を交えて、由貴が叫んだ。
 由貴のそれは、200体の自律ポッド達の大音量スピーカーの効果も相まって洞穴の入口で勇ましく響き渡り……音遮断の結界でも無い限りは、先ず洞穴内にいる敵にも確実に聞こえているであろう事は想像に難くない。
「信長も体したことねぇな! こんなびびりな奴が配下なんぞ……程度が知れる。本当にどうしようも無い天下統一し損ねた、田舎侍だぜ!」
「しかも引きこもりの臆病もんだし!」
 夜野の罵倒に合わせる様に、その言葉を引き取り叫ぶ由貴。
 夜野と由貴の叫び声が重なり合い、ビリビリと大気を振動させる。
「おまけに人民の事なんて一切考えなかった愚か者。そして極めつけは家臣に裏切られたどうしようも無いバカ侍!」
「そりゃぁ、うつけ呼ばわりされるよな!」
「全くだ! どうしようもない愚図侍だな!」
「本当に尾張の恥だぜ、あいつはよ!」
 数々の罵詈雑言を浴びせる由貴と夜野。

 ――そんな罵詈雑言を浴びせられ、この儀式を成功させるために病的なまでの努力を行なっている敵が、怒り心頭に発しないわけが無く。
 その怒りを表わす様に。
 ビリビリ、ビリビリ、と洞穴を守る結界に罅が入っていった。
『言わせておけば貴様等……あの御方を虚仮にしおって……! この儀式が終わったら、必ず貴様等一人残らず血祭りに……!』
 地の底から鳴り響く様な怒号。
 それに反応して結界が音を立てて崩れ始めていく。
「どうやら、由貴達の挑発に乗った様だな」
 音を立てて崩れ、ぽっかりと口を開けた洞穴の姿を見ながら、ボアネルは静かに首肯を一つ。
 何が何でも儀式を成功させるべく、儀式場を徹底的に隠し、罵詈雑言に耳を貸さない可能性は想定していた。
 故に、魔狼の力を借りて徹底的に富士の樹海を探索、本人を見つける作戦をとっていたのだが……そこに次の試練の様に現われた結界を破壊するために、一定の挑発を行なえば良いというのは、少々予定外だったのだ。
「何はともあれ、上手くいったようデスにゃ。さっさと中に入ってお宝……じゃなかった、敵も儀式もぶっ壊してしまおうデスにゃ!」
 勇ましい呼びかけと共に、儀式場を守る結界に黄金に輝く巨大な斧、カタストロフを叩き付ける様に振り下ろすナミル。
 振り下ろされたカタストロフが、妖艶な金色……それ即ち呪いの輝き……を放って、罅の入っていた結界を叩き割った。
「さあ皆さん、行くとしマスにゃ!」
「ああ、そうだね」
(「さて……彼はどんな血の味がするのだろうね?」)
 47体の、ユーベルコード程では無いが、それなりに力を持った自らの分身達を率いた莉亜がクスクスと嗜虐的な笑みを浮かべながらナミル達の後ろに続いて戦場へと向かう。

 ――かくてウィリアム達は儀式場への潜入に成功した。


 ――ビチャ、ビチャ……。
 儀式場の中央で行なわれていたそれは、あまりにも血生臭い風景だった。
 何処からか連れてきた小竜に短刀を突き立て、その体から溢れ出す血液を、並々と巨大な器へと注ぎ込む。
 仰々しくその儀式を行なう主は、小竜の悲嘆の籠められた叫び声など一切合切気にすること無く、その口元に狂気の笑みを浮かべて呪を紡いでいる。
「森羅万象を司る全てを焼き尽くす終焉の炎を齎す我等が神よ! 我が供物を受け取り、今は静かに大地で眠る全てを滅ぼし飲み尽くす地に煮えたぎる焔達を目覚めさせ、世界に大いなる災いを齎したまえ! 全ては、我が主第六天魔王、織田信長様の覇道のために!」
 呪を紡ぎ、小竜の血を吸い取り不気味に脈動する大地に描き出された魔法陣を満足げに見つめがながらくるりと敬輔達の方へと視線を転じるオブリビオン。
 その姿は……。
「……なんだか友達に似た山羊デスにゃ? 親戚にゃ?」
「貴様達、信長様を愚弄せし愚かなる猟兵達か……! 何故だ!? あの御方の大いなる偉業の数々を貴様達は知らないとでも申すのか?!」
 絶叫と共に己が手に持つ巻物を広げ、そしてそれを朗々と読み上げる宗教家・ニェポス。
 そこには信長の偉業と覇道の記録と、自らの信じる信長を神格化した説法が延々と認められている。
 その巻物を読みながらとくとくと信長について語ろうとする宗教家の姿にカガリがふぅ、と静かに息を吐きながら、その紫の瞳でまるで宗教家の全てを射貫く様に見つめていた。
「何のかんのと御託を並べはしているが、お前のそれは、結局は狂信の域に達した忠義、崇拝、依存とそれ以外の物に対する拒絶に他ならない」

 ――そして、狂信者のその意志は、カガリの保有する『大地の神眼』にとって確認し易いものでもある。
 紫に覆われていた瞳が、徐々に柘榴色を帯びた。
 そう……かの存在の行動の全てを捕らえる力を持った、神の瞳としての色に。
「信長様の偉大さの分からぬ愚か者が! そんな貴様の技の本当の弱点はその瞳だ! その瞳の視界から一度我が外れれば、貴様の術は我に届かぬ! 何よりもその瞳で我等を視界に捕らえた所で信長様より与えられし術とこの者達の無念を晴らすことなど出来ぬ。あの御方より伝えられた民草達の事を想い、現世に未練を持つこの者達の未練を晴らす力とすべき秘技をな……!」
 宗教家の叫びと共に、彼の背からまるで陽炎の様に立ち上り、現われたのは手に手に武器を、或いは農具を持った嘗て人であったであろう死者達。
 その死者達が其々に武器を構え、狂信的な光を讃えた瞳で射貫く様に美雪達を睨付け、其々に武器を振り上げ雄叫びの声を上げる。
(「……不味いな、このままでは」)
 思いながら咄嗟に高らかな声音でかの熱狂者の熱に飲まれぬ様、戦意を昂揚させる歌を歌い始める美雪。
 その歌声を背に聞きながら、ウィリアムが咄嗟に地面に左手をつけると同時に、地につけた左手指でその場に黄色の魔法陣を描き上げる。
 描き上げられた魔法陣が徐々に、徐々に広がっていき、岩石で出来た大地の精霊の腕と化して、宗教家を捕らえるべく解き放たれた。
 解き放たれた大地からの岩だったが……宗教家は素早くそれを躱し、自らの配下に置かれていた殉教者達をけしかける。
 だが、その時。
「由貴、行くぞ。どうやら此処は、私達の出番の様だ」
 ボアネルが由貴に呼びかけると彼の影に潜んで様子をじっと伺っていた魔狼が飛び出し、死を怖れず突進してくる信者達の刃を、その巨体に似合わぬ俊敏な動きで回避しながら漆黒の爪を解き放った。
「そこだな! 『仕事だぜ! お前ら!』」
 すかさず周囲に展開していた200体の自律ポッドに命じる様に右手を翳して横薙ぎに振るう由貴。
 由貴のそれを命令と受け取ったのだろう。
 自律ポットの中でも指揮官格であるガトリング砲を先端に取り付けられたバサンの銃口が凄まじい速度で回転し、1秒間に無数の弾丸を吐き出した。
 更にそれを補佐する様に小型の連射砲を2本取り付けられた自律ポッド達が動き出し、一斉に弾丸を射出。
 放たれた弾丸が片端から、殉教を望む信者達を落としていくその間に、ウィリアムが『スプラッシュ』の先端で青と深緑色の混ざり合った魔法陣を十重二十重に展開。
 美雪の支援によって強化された魔法陣がキラキラと淡い輝きを発し、また自然と詠唱が滑らかになっているのを自分でもはっきりと自覚しながら、展開した魔法陣に、氷の精霊達を収束しそして刃を敵に突き入れる様に『スプラッシュ』を鋭く突き込んだ。
(「織田・信長の狂信者ですか。オブリビオンの心をそこまで掴むとは、第六天魔王、侮って掛かるわけにはいかない様ですが……負けるわけにはいきません!」)
「……Icicle Edge!」
 高らかにウィリアムが叫び声を上げると同時に、190の氷柱の様な氷の槍が豪雨の様に天空から降り注ぎ、ボアネルと由貴が仕留め損ねた狂信者の部隊を次々にその場で串刺しにし、止めを刺していく。
 それでも尚、襲いかかろうとする殉教を望む信者達に向かって、今度はスレイに乗って戦場を駆け回り、更に彼の怨念村斬丸から放たれた44の人魂達が殉教者達とぶつかりあい、爆ぜて消滅していた。
「おいおい、本当に体したことなさ過ぎるぜ、お前? こんなお前みたいな奴を囲っているなんて、信長って本当に体したことねぇんだなぁ?」
 狂おしい程の憎悪にその身を焦がされながら愉快そうに口元を歪める夜野の姿に流石に狼狽を隠せぬ表情になりながらも叫ぶ宗教家。
「ばっ……バカな! だが、貴様達の弱点は分かっている! それはその歌は周囲の空気を断てばそもそもこの場で音を遮断することが出来、これらの氷柱の槍も、その槍の雨の間隙……何よりもこの氷柱の槍を構成する魔法陣そのものを絡め取って封印してしまえば、これ以上の効果が認められなくなると言うものだ……! 貴様のこの火の玉共は、貴様のその剣をこの巻物で締め上げてやれば身動きが取れなくなるだろうし、貴様の影の獣は、所詮は影にしか潜むことの出来ぬ存在! で有ればその影を生み出すことの出来ない空間を作り出してやれば存在することが……!」
「気付いたか……だが、遅い」
 ウィリアムの氷柱の槍の群れ及び夜野の火の玉達による攻撃と、影から影へと溶ける様に消えては、また直ぐ姿を現していた魔狼、そして相棒である由貴の召喚した自律ポッド達の支援を受けて肉薄したボアネルが呟きながら、月と時間を表し、過去の遺物を喰らう宝石の眼を持つ蛇が柄に巻き付いた、死した父の形見である黒剣グルーラングを大上段から袈裟に振り抜いている。
 振り抜かれた刃に危機を察した宗教家が咄嗟にサイドステップを行い、攻撃を避けようとするが。
「そこから先は通行止めだぜ! 説法なら地獄でしろよ! オッサン!」
 まるでそこに宗教家が来る事が分かっていたかの様に漆黒の化合弓、ミストルティンに装填されていた誘導弾を射出して宗教家の身を射貫き、続けざまに天井近くに浮遊していた自律ポッド、オンモラキに取り付けられたビームランチャーが火を噴いた。
 誘導弾にその身を撃ち抜かれ、更にオンモラキのビームによりその身を射貫かれることを怖れた宗教家が咄嗟に巻物の一つを展開しそれらの攻撃を受け止めるが、その時にはボアネル達の影に隠れて畳みかける様に放たれていた攻撃の流れを読んでいた明日香が全てを食らうクルースニクを下段から撥ね上げている。
「確かにお前はオレ達のユーベルコードの弱点を指摘し、それを証明しようとすることが出来るかも知れないが……その五月蠅い口を縫い止めちまえば、そんな事、出来なくなるぜ!」
 全てを食らうクルースニクの下段からの斬撃はそのまま明日香自身の言葉を示す様に宗教家の口を狙っていたが、その攻撃を宗教家は素早く巻物の一つを力任せに掴み取って放り投げて作り上げた結界で辛うじて受け止める。
 ――と、その時。
「――ガラ空きだよ、後ろがね」
「なっ……何?!」
 驚いた様にクワッ、と目を開く宗教家の様子など気にも留めず近くにあった祭壇の影に隠れて不意打ちの機会を狙っていた敬輔が、生贄として捧げられていた小竜を踏み越えながら宗教家の背を取り、自らの黒剣に己が憎悪の塊を刃に乗せて逆袈裟に振り下ろす。
 その右の青い瞳が異様な輝きを発すると共に解き放たれた憎悪と闘争のダンス・マカブルの最初の一閃が、容赦なく宗教家の背を捕らえた。
「ぐぁっ……!」
「貴様のその織田信長への盲信だけで俺の攻撃を見切ることは出来ないと知れ……!」
 続けざまに二閃、三閃と黒曜石の様に鈍く輝く黒剣の刃を閃かせてその背を初めとして全身を斬り裂き、或いはその身を貫く敬輔。
 最初に放たれた九閃の一撃の代償として、肺から逆流してくる血……それは、彼の寿命が血として結晶化したもの……を吐き出しながら放たれた絶大なる一撃。
 だが、それでも宗教家は倒れる様子を見せず、再びスクロールを一枚取りだし朗々と語り始めた。
「さぁ、我が祭の為に此処に集いし者達よ! お前達の真の敵は我等にあらず! 汝等の真の敵は、汝等を我等を狩ることこそ正義と断ずるその己が心也! 何故、オブリビオンだから、猟兵だから、只それだけのことで我等は憎み合い、殺し合わなければならないのか!? 否、そんな筈は無い。我等は今、試されているのだ! 我等にとっての真の敵……自分自身の心、それに身を委ねることの本当の恐ろしさ、と言う魔性に! 織田信長様はそんな脆弱なる心その全てを受け止め、我等に新たな世界の秩序を与えて下さるために活動しているのだ! だからこそ、我等は互いに剣を納め、この場で改めて話し合うべき機会を作らなければならない!」
「無駄な熱弁だな。生憎俺はカガリにしか気を許さない」
 朗々と熱を籠めて語る宗教家。
 それは、マレークの意志を問わず彼を飲み込もうとした詐術。
 だがそれに抗するべくカガリが、自らの一部である宙を泳ぐ頭の無い黒い魚骨、籠絡の鉄柵の隠行を解除させ、宗教家の首を締め上げてその動きを一時的に止めた。
 すかさずマレークと宗教家の間に割って入り、宗教家の自由意志の強奪を図るカガリの影からマレークが飛び出し、碧玉を嵌め込んだ優美な長槍に変貌した彼のドラゴン、碧血竜槍を投擲する。
 碧玉……それは、碧血竜槍の目の色でもある……が投擲されて風を切り、凄まじい速度に加速してその身を貫かんと襲いかかった。
 自由意志を奪われても尚、本能的にそれらの攻撃を防御するべく巻物を展開、防御魔術を発動させようとする宗教家であったが……。
「美味しそうだねぇ。僕に君のこと、食べさせてよ」
 夜野とウィリアムの攻撃に合わせる様に奇剣で斬りかかり、或いは深紅で殉教者達を締め上げ、そこをすかさず白い対物ライフルLadyで撃ち抜かせて、周囲の殉教を望む信者達を文字通り一人残らず殉教させた莉亜が白い大鎌、血飲み子を振り下ろして宗教家の足を切り裂いてその動きを封じる。
(「へぇ……これはまあ、まずまずの味かな」)
 共有された味覚でそれを感じ取りながら、自らが契約した不可視で透明な悪魔の両腕でその身をバターの様に引き裂いてその血の一部を吸い取りその味にペロリ、と軽く舌舐めずりをする莉亜。
 そのままくいっ、と軽く左に移動した莉亜の真横を、マレークの投擲した碧血竜槍が通り過ぎ、宗教家の目に突き刺さった。
 と、同時に。
「な……何っ?!」
 宗教家が現われた蒼い稲妻を纏った碧眼の双頭竜の姿を見て、目を見開く。
 ――一瞬竜の咆哮が、自らの耳に響き渡った様な、そんな気がした。
 双頭竜が激しく両の爪を振り回して敬輔が深手を負わせたその体への負傷を蓄積させ、更に戦いが始まるや否やずっと歌い続けていた美雪の歌声による身体能力強化を受けたマレークが追撃とばかりに、蒼い稲妻を纏った魔槍雷帝を突き出しながら螺旋状にしならせて、雷を帯びた鋭い突きでその身を貫いた。
「ゴ……ハッ……?!」
「ねぇねぇ、こうやって寄ってたかって皆にボロボロにされるってどんな気持ち? まあ、別に僕にとっては何でも良いんだけれど。だって君、そこそこ美味しいからね!」
 喀血する宗教家に寄ってたかって襲いかかる莉亜と47人の彼の分身。
 ある者は寄剣でその身を斬り裂き、ある者は深紅で締め上げる。
 Ladyによる狙い撃ちを行なっていた分身も又、本体と合流して血飲み子を受け取ってその身を残虐に薙ぎ払い、そして莉亜本人もその喉元に食らいつき、満足するまで宗教家の血を吸い上げた。
 急激な血の減少により、一瞬視界が真っ暗になった宗教家の背から、敬輔による更なる九連撃が漆黒の風の如く襲いかかり、宗教家を滅多斬りにした。
「そろそろ止めデスにゃ!」
(「金ピカ一杯稼げるとかなら大好きにゃけど! 宗教とか難しい話は良く分かんにゃいし、今回は儀式を止めれば良いって話だったしにゃ!」)
 そうして儀式場とそこに捧げられた供物を問答無用で破壊し、殺戮し、自らの持つ呪詛でそれらの効果を全て上書きして無力化してしまいながら。
 ナミルが大上段から心身を益々もふ化させ、ついでに心も風の向くまま、気のむくままな獣へと更に近づけさせ、カタストロフを奇妙な黄金色の呪詛で纏って振り下ろした。
「敵も儀式も全てぶっ壊れろデスにゃー!」
 叫びと共にナミルの放った破滅の黄金斧が。
 既に死一歩手前であった宗教家を斬り裂き、同時に周囲の魔法陣をも呪詛によって蝕んでいく。
「ば……バカな、我が……貴様達如きに……!」
「私達を侮った貴様の負けだ、オブリビオン。その狂った信仰と共に、骸の海で永遠に眠るが良い」
 ナミルにその身を唐竹割りに刻まれ、全身を苛む呪詛にその身を崩壊させられながら、絶望し呻く宗教家に、ボアネルが静かにそう告げる。
 そしてそれが、宗教家が聞いた最期の言葉となった。

 ――かくて。

 儀式は失敗に終わり……猟兵達はまた一つ、富士山の噴火儀式を阻止することに成功したのであった。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月04日
宿敵 『宗教家・ニェポス』 を撃破!


挿絵イラスト