あにまるゆーとぴあ!
●どうぶつだってひんやりしたい
スペースシップワールドに浮かぶ、とあるリゾート船。観光産業の発達したその船は特に動物好きのための楽園を目指しており、掲げるその名も分かりやすく「あにまるゆーとぴあ」。
ここにはありとあらゆるタイプの動物に対応した遊泳施設があり、さらには動物用のご飯まで用意されているので時間を気にせず遊び尽くすことができる。連日、多くの動物好きや動物たちで賑わうその様子はまさにユートピアと呼ぶに相応しい。
もちろん動物を飼っていない人にも楽しむチャンスは平等に用意されていて、よく人に慣れた動物をレンタルしてもらうことも可能なのだ。
多種多様のプールに、美味しそうな料理、水着のまま楽しめるペット用品店――愛らしい動物に囲まれたこの楽園でどんな物語を紡ぐかは、君しだい。
●どうぶつだっておいしいごはんがたべたい
「――ってことで、一緒にあにまるゆーとぴあ号のプールに行ってくれる人、この指とーまれ!」
踵をあげてめいっぱい突き上げられたホワイティ・ティティ(ちちんぷいぷい・f09167)の指先に一番に飛びついたのはアホ毛の似合う一羽のアヒルだった。
話の内容を理解しているのか、どうにも前のめりで興奮気味の一羽を何とか腕におさめるとホワイティは話を続ける。
「えへへ、この子はね、ホワイティのお友達なのだ。皆にも動物のお友達はいるかな?」
いなくても大丈夫! とホワイティは瞳を輝かして。
「向こうでめっちゃんこ可愛い子たちを貸してもらえるからね! おっきなわんちゃんがいいかなぁ。あ、もちろん一番のおすすめはアヒルさんだけども!」
腕の中のお友達がせかすようにつつくので焦って付け足して笑う。
「もちろん動物同伴じゃないといけないってルールはないから、遠巻きに眺めつつのんびり過ごすのもアリアリのアリだよ」
視界を賑やかす動物がいるだけでも非日常を味わうには十分なものだろう。楽しみ方に正解はないのだ。
「皆が楽しく過ごせるといいね!」
さわやかな風にオレンジの髪飾りが揺れる。
夏はまだまだ始まったばかり。
京都
●注意
【このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります】
●オープニングをご覧いただきありがとうございます。
京都(けいと)と申します。
プレイング関係のご連絡は適宜雑記、Twitterに記しております。
Twitter【@keito_tw6】
プレイング募集開始予定日【8/5(月)】
※プレイングが流れてしまっても気にしないという方は募集開始以前に投げていただいても結構です。
もし空き時間ができればちまちま執筆するかもしれません。
やり易いようにどうぞ!(ただ、仮に書けたとしても公開は8/5以降です)
●第一章(フラグメントは無視してください)
動物と一緒にプールで泳いだり、水着でご飯を食べたりしようなシナリオです。
ペットを飼っていない方は、一般的に飼育可能そうな動物であればレンタルしてもらえます。
もちろんヒトだけで普通に遊ぶこともできます。
何があるかなどはあまり気にせず、プレイングにやりたいことを押し込んでみてください。
多分なんとかなります。
今回はグループ参加の人数を3名までとさせてください。
●その他
・NG事項がございましたらお伝えください。
・再送はたいへん有難いです。
・お声掛けがございましたらホワイティも顔を出します。
(ひとりはちょっとな……という場合などにご利用ください)
以上となります。ご確認ありがとうございました。
楽しい水辺へ導けますよう、精一杯努めてまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りに勤しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アロイス・グレイアム
アレンジ・絡み歓迎
どうした、クーノ(狼)?
ああ、この暑さに参ってるのか
そうだ、スペースシップワールドに海があるらしいから行ってみるか
少しは涼しくなるだろう
――これが、びーちぼーるか
聞いた話によると手で跳ねさせたり遊びらしいが……
ひと泳ぎして元気も出てきたことだし
よし、クーノやってみるか
よければホワイティとアヒルさんも一緒にどうだろうか
みんなで遊べばきっと楽しいと思う
思いっきり遊んだ後は、クーノには肉を俺は『かきごおり』というものを食べてみよう
なんでも頭が痛くなったり舌の色が変わったりするらしい
故郷は雪に囲まれていたから海は初めてだが、楽しくなりそうだ
●
アロイス・グレイアム(迅雷不滅の水着竜・f12900)に寄り添う狼はくったりとして。
「大丈夫かい? クーノ」
狼は目を細めるばかり。
「ほら、もう見えてきた。あそこのゲートをくぐれば海はもうすぐだ」
海水に身をあずければきっと少しは涼しくなるだろう。
クーノを優しく思いやりながら、アロイスの夏が幕をあける。
●
海に濡れた身体を輝かせたアロイスは手のひらのそれをじぃっと眺め。
――これが、びーちぼーるか。
そこには青々とした新品のビーチボール。
猛々しくも神々しい狼の横顔は同じく新品のサーフパンツとお揃いだ。
「クーノ、これは思った以上に軽いな。こんなに軽いボールは初めてだ」
どう扱うべきか。
手で跳ねさせたりだのして遊ぶと聞いたが、加減を間違えば二度と自分のところへは返ってこない気がしないでもない。
「――とりあえずやってみるか」
再び手にしたビーチボールはやはり猟兵の腕にあるには弱弱しいが、せっかくだもの。
クーノもきっと同じことを考えているのだろう。塩水に濡れた毛並みをぶわりと持ち上げ、念入りに身を振るっている。
――と、そこへ。
「うっわー! ビーチボールだ! いいなぁ!」
通りすがりに漏れた独り言にしてはあまりに大きな声に振り返らんとしたアロイスの視界は、しかしあたたかくてもふもふな暗闇に蔽われてしまう。
「ギャッ! アヒルさんってば張り付いちゃだめー!」
強めの抵抗とともになんとか戻った視界には暴れるアヒルを抱く少女。
あれが張り付いていたとは想像に易く、アロイスはなおも暴れるアヒルをじぃっと見つめ。
「ひぇぇ……えっとね、あのね! ホワイティもこの子もビーチボール楽しそうだなって思っただけで悪気はなくて、その、だからっ……た、食べないでほしいのだぁ」
どうやら注がれる視線の意図をたっぷり勘違いしたらしい。
「いや、食べる気はない。なぁ、クーノ」
喧噪の中でも賢く侍る傍らの狼に問うてみれば穏やかな瞬きが返り、それを見たホワイティは血の気を戻してにっこにっこと笑みを輝かす。
「よければホワイティとアヒルさんも一緒にどうだろうか」
遊び方が掴めぬなかではあるがそれでもよければ、とアロイスはビーチボールを掲げ誘ってみせた。
それに乗らぬ一人と一匹ではなく、両者翼をはためかせるほどの喜びよう。
「遊び方ならホワイティが教えてあげる! こうしてー」
ビーチボールが舞い上がる。高く高く。
光を受けてキラキラと輝く美しいそれを――。
「こうするんだよ!!!!」
バッシィィィン!!!!
思いっきり弾き飛ばした。
「えっ」
小さく漏れたアロイスの声。
彼方へと飛んでいくビーチボール。
そしてしばしの沈黙。
それを破り動いたのはクーノ。
一度大きく見開かれた瞳は満月のような激しい光を宿し、次の瞬間にはビーチボールの消えた方向へと駆け出していった。
しなやかな筋肉の収縮を繰り返しながら浜を突き進む狼の姿は珍しくも見事なもの。
小さな女の子があの子が欲しいと駄々をこねて両親を困らせてしまうのも仕方のないことだろう。
それに対抗意識を燃やした一匹のアヒルもなりふり構わずお尻を振ってクーノの後を追いかけていくものだから、その対比に少女が泣き笑いしまうことも、これまた仕方のないこと。
「へへ、二匹とも楽しそうだね」
彼方へと消えかけている二匹を遠くに見つめるホワイティも楽しそう。
それはきっとその通りなのかもしれないけれど。
しかし。
「……思っていた遊び方と少し違うな」
「遊び方はね、いーっぱいあるんだよ。楽しければ全部正解!」
「……それもそうか。さて、クーノたちが戻ってきたらまた別の遊び方もしてみようか」
「だいさんせい!」
そうして始まる小さな作戦会議。
みんなで遊べばたくさん楽しい。
●
世間の感覚からはちょっとずれた激しめのビーチボールを堪能したアロイスとクーノは空腹の真っただ中にあった。
いま、クーノは肉を、アロイスは青い色をした氷の粉の塊を前にいざ実食というところ。
「これが“かきごおり”。これを食べると頭が痛くなったり舌の色が変わったりするらしい」
クーノに語りかければ、肉に食らいつきながらも心配そうな横目がこちらを窺っている。
「あぁ、大丈夫だ。割と一般的に食されているものらしい」
周りの席もかき氷を前に笑顔が尽きない。言葉にするとさながら劇物ではあるのだが。
「これもまた食べてみないとわからないな」
しゃくり。
氷の山にスプーンを突き刺せば小さな氷山がくしゃりと崩れ、冷ややかな風がアロイスの頬を撫でた。
そして、ひと口。
――甘い。
もうひと口。
――甘い。
もうひと――。
「……痛い」
経験したことのない鋭い痛みが脳をじわりと走り抜け、アロイスは思わず頭を抱えた。
そこに割り込んで入ってきたのは他でもないクーノで、心配するようにアロイスの匂いを嗅いでは湿った鼻をくっつける。
「クーノ、大丈夫」
大丈夫だけれど――何でもないわけではない。
この狭間をどう伝えるべきか。
迷って漂うアロイスが見つけたのは“ペット用かき氷”の文字。
「――よしクーノ、論より証拠だ」
クーノにも少し冒険をさせてやろう。
僅かに覗くアロイスの口には、少し青ざめた甘い夏のしるし。
大成功
🔵🔵🔵
サギリ・スズノネ
あにまるゆーとぴあ!
とっても心惹かれる素敵なリゾート船なのですよ!
スペースシップワールドすげーのです!
人とー動物がいっぱいなのです!正に楽園なのです!
サギリ、今日は一人で来たのですよー。
でもここで動物をレンタルしてくれるって聞いたのです!
サギリ、大きな白いわんこさんをお願いしてみるのですよ!
自己紹介をしてー、撫ででー、それから一緒に遊……ぶ前に!
お腹が空いたので―、いっしょにご飯を食べるのです!
サギリも昔ー、わんこさんみたいなわんこと一緒に、ご飯を食べたりーたくさん遊んだりしたのです。
お世話になった人(神社の宮司さん)の子なんですけどね
久しぶりでーとっても楽しいのです!
※アドリブ諸々歓迎です!
●
――リン。
涼やかに鈴の音が転がれば。
ひらり。
遅れて翻る衣の尾ひれ。
人と動物とで賑やかにざわめくこのあにまるゆーとぴあ号に降り立ったのは。
「スペースシップワールドすげーのです!」
佇まいとは対照的にこれまた賑やかな少女、サギリ・スズノネ(鈴を鳴らして願いましょう。・f14676)だ。
これから向かう人、帰路に着く人――誰も彼も幸せそうな表情で、連れ添う動物たちもまた然り。
サギリの心はいっそうこの宇宙船に惹き付けられて、カツリカツリと慣れないヒールを元気いっぱいに幼く履きこなす姿はきっと、その辺の小動物に負けないくらい可愛かった。
動物とめいっぱい触れ合おうとやってきた彼女が真っ先に向かったのはもちろんレンタルサービス店。
「わぁ、動物がいっぱいなのです! まるで動物園みたいなのです」
まるっきり彼女の言う通り、ここはペットショップというよりは動物園に近い。店の奥には大型動物の姿さえあった。
まさによりどりみどりという中、しかしサギリには確かな目標が。
きょろきょろ。とてとて。
サギリの向かう先には大きくゆったりと構えた白い犬。
「いたのです!」
たどたどしく駆け寄っていくと、向こうも待ち遠しそうにケージに寄りかかってサギリを窺う。
そんないじらしい様子に気付いた店員がいちはやくケージの扉をあけてやれば、白犬は大きな躯体でゆるやかに店内を駆け、サギリの元へ。
「わぁ! へへ、サギリのこと気に入ってくれたんです?」
両手いっぱいのもふもふは、サギリに濡れた鼻を寄せてワンと鳴く。
よろしくね――とでも言うように。
●
中心へ繰り出せば、あらゆる商品を扱うショッピング街に飲食店、プールの種類もこれでもかというほどで、一番奥には海まであると聞く。
さぁ、何から楽しもうか――。
「はっ! その前にまずは自己紹介なのです!」
日陰でちょこんと向き合って、黄金の瞳と茶色の瞳がこんにちは。
「サギリはサギリって言うのですよ。今日はこことは違う遠いところからやってきたのです。わんこさん、ふつつかもののサギリですが今日はよろしくお願いするのですよ」
ぺこと頭を下げれば犬も合わせて鼻先を下げ、得意そう。
「すごいのです! わんこさん、とっても賢いのですね」
小さな手で一生懸命に犬の額を撫でるサギリ。わんこは満足そうにとろりと瞳を細め、もっともっとと身ごと寄せてすりすりすり。
「ふふっ、くすぐったいのです」
でも、とても幸せなこそばゆさ。
サギリもわんこにもたれかかって、それはとてもやさしい触れ合いだった。
「さて、わんこさん。サギリと一緒に遊――ぶ前に!」
人の耳には届かない、きゅうきゅうとした胃の収縮音。耳の良い君には聞こえたかもしれないけれど。
「ちょっとお腹が空いたのです。だから一緒にご飯を食べるのです!」
びしっと一か所を指さすサギリ。その人差し指を辿った先にあるのは一軒のハンバーガーショップだ。
「外の看板で見たはんばーがーの写真がすげーのだったのです。もちろん、ちゃんとわんこさん用のメニューもあったのですよ!」
――アオンアオーン!
「わぁ! ひょっとしてわんこさんのお気に入りのお店なのです?」
ならば行かぬ手はないだろう。
それではいざ、じゃんくふーどの世界へ。
●
店のテラス席に白ふたつ。
このお店のとっておきのハンバーガーを前にごくりと唾を飲み込んで。
「はぁぁぁこれがあるてぃめっとはいぱーまーべらすとれびあんばーがーなのですね!!」
サギリの前には彼女の顔よりも大きなハンバーガー。
もちろんシェアを前提とした商品であるが、そこはあにまるゆーとぴあを名乗る船にある店のすること、なんと犬と分けあうこともできるのだ。
「なるほど、サギリはこっちのソースで味付けしながら食べればいいのですね」
わんこはそのまま召し上がれ。
「はんぶんこ、なのです!」
ワンと鳴くのも忘れ、大きな犬は白い毛が汚れるのも厭わずハンバーガーに食らいつく。
「よっぽど好きなのですね」
それでも時折りサギリを気にして目線を寄越す犬に、大丈夫だよとサギリは笑う。
「サギリも昔ー、わんこさんみたいなわんこと一緒に、ご飯を食べたりーたくさん遊んだりしたのです」
その子と一緒に食べたご飯はこういうのとは違っていたけれど、重ねられずにはいられなかった。
かつての住処、彼の人のことも。
記憶のページを捲るサギリの表情はわずかに大人びて。
「――ふふ、わんこさん、お口にいっぱいついちゃってるのですよ」
こんなことを言うのも久しぶりで、とてもとても心が弾む。
ごはんを食べたら、次はどんな想い出を辿ってみよう。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
【診療所】
芦屋さん芦屋さん、動物レンタルだって!
動物さんとあそぼ!
ふわぁどの子も可愛くて迷うけどぉー
…よし、じゃあ僕この兎さんでっ
兎や猫は濡れるのが苦手って言うけど
この子達は慣れてるのかなぁ?
浅めの水場に腰掛け
イルカフロートを傍らに置いて兎を太ももの上に抱えつつ
手で掬った水を兎の足元に優しくかけてみる
耳には気を付けないとね
思ったより大人しいねー、いい子いい子
芦屋さんの猫ちゃんはどう?
ふふ、あばれん坊さんじゃなくて良かったね
ねぇねぇ、猫ちゃんもちょっともふらせて!
はぁ…しあわせ♪
芦屋さんが動物と戯れてる隙に
芦屋さんだけに掛かるよう掬った水をてーいっ(ばしゃっ)
あははっ、隙ありぃー
大人げなーい!
芦屋・晴久
【診療所】
栗花落君元気ですねぇ……
動物レンタル……プールでこの様なイベントがあるのですねぇ
…………………………(迷いに迷って)
それでは私は猫を選択致しましょう
水場に腰掛けて猫を横に置いて共に水面を見つめるとしましょう。
たまに撫でて顎をかいて相手することも忘れずに
それにしても大人しい子というか水にも物怖じしてませんね……
栗花落君も楽しそうで結構。膝の上……?いやぁ私には柄では無いというか
あ、のってきましたか……結構重いですね
たまにはこうしてゆっくりとした時間を過ごすのも悪くない
栗花落君から襲撃を受けてる……!大人としてここは耐えなければ
…………よし、ここに水鉄砲があります。後はわかりますね?
●
「芦屋さん芦屋さん!」
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が見て見てと指さした先には動物のレンタルサービスを担う施設があった。
賑やかでファンシーだけれど、どこか優しさを感じさせる店構えに澪は心を躍らせる。
「レンタルしたいしたい!」
いたるところにある水辺の光にも負けないくらい瞳を輝かせる姿はまだ幼さを残し、見る者の庇護欲を煽るには十分のものだ。
「栗花落君元気ですねぇ……」
そんな中、澪とは対照的にのらりくらりと姿を現す芦屋・晴久(謎に包まれた怪しき医師・f00321)。
サングラスの奥で何を考えているのかは知れないが、少なくともキラキラと陽を全開にする種の人間で満たされたこの場の雰囲気に対して前向きに馴染む気はなさそうに見える。
「動物レンタルですか。今どきのプールではこのようなイベントがあるのですねぇ」
「ねー動物さんとあそぼ!」
見慣れぬ景色に呆ける晴久のアロハシャツをぐいぐいと引っ張り歩き出す澪。
「……栗花落君、シャツの丈を伸ばすつもりはありませんので。現状でジャストサイズです」
半ば引き摺られるかたちになりながら、せめて言葉だけでもと抵抗の色を示すもまぁ聞いちゃあいない。
諦観の溜息さえ雑踏に飲み込まれ、誰の耳にも届かず消えていった。
「すっごーい、動物がいっぱい。結構大きな子もいるんだね」
犬に猫にアヒル、変わったものだと爬虫類や両生類なんかもいる。赤ちゃんカバまでいるが、需要は未知数。
「ふわぁどの子も可愛くて迷うけどぉー」
小柄でつぶらな瞳の子らを順に見て回る澪の心を射止めたのは――。
「……よし、じゃあ僕この兎さんでっ」
垂れた耳が特徴的なロップイヤーと呼ばれる種のウサギで、その中でも特に小柄な子であった。
小さなうさぎは澪に見初められたのを察したようにケースの中を跳び回り、迎える澪の手にすり寄り可愛くご挨拶。
「かっわいー! 僕は澪。へへ、よろしくね」
その一方で。
晴久は店を端から端まで行ったり来たりの繰り返し。その往復回数は両の手でも足りぬほど。
――猫。いや、うさぎか。待てよ、アルマジロも捨てがたい。
屋内でサングラスをかけたまま店内を物色する姿は当たり前のように目立つものだったが、晴久は真剣だった。
そのままどれくらい経っただろうか。
「……それでは私は猫を選択致しましょう」
晴久が涼しい顔で一匹の猫をようやく選んだとき、一部始終を見守っていた店員たちが心の中で一種の感動を覚え、震えていた。
抱えられた猫も、よくぞわたくしをえらんでくださいましたと鳴いたとか。
●
運命の出会いを果たした二人と二匹がやってきたのは、腰掛けやすい浅めの水場。
時折り波打つように寄せる水面がなんとも夏らしく、深く浸かって遊ぶ人や動物たちの生み出す水音も耳に心地よい。
晴久はやれやれとばかりにどっさり腰掛けると、隣に優しく猫をおろしてやる。
「浅いとこにしてみたけど、やっぱり濡れちゃうよね。この子たちは慣れてるのかなぁ?」
一般に猫やうさぎは濡れるのを好まない。それをよく知る澪は小さな身体を屈ませ二匹と視線を合わせ、心配そうに眉を下げた。
「どうでしょう。でもいってみればこの子たちは“プロ”ですし」
水面に向けていた視線を猫へと戻す。ついでに顎を掻いてやれば猫は目を細め喉を鳴らし、すっかり晴久に気を許している。
「芦屋さんの猫ちゃん、すごくいい子だね」
暴れん坊だったらきっと今頃この場はしっちゃかめっちゃかで、こんな穏やかな時には巡り合えなかっただろう。
もちろん賑やかなのも嫌いじゃないけれど――猫と一緒に寛ぐ晴久が、澪にはとても羨ましく映り。
「うぅ、今日出会ったばかりとは思えない仲良し具合、いいなぁ。僕の子も大人しいけど、どうかな……」
イルカのフロートを傍らに置き、晴久の隣に腰掛ける。
そうしてパートナーのうさぎをそぅっと太ももに乗せてみれば、ふわふわとしてじんわりとあたたかい小さなうさぎの命が澪の心に灯りをともす。
感動に打ち震える澪の膝の上、うさぎはのんびりと欠伸をしゆったり足を伸ばして寛いでいる。澪の太ももはこのうさぎにとって極上のベッドのようなものだったのだろう。
その様子に澪は安堵し、片手で僅かな水を掬うとうさぎの足元に優しくかけてやった。
うさぎは驚く様子もなく、あたたかな太ももとひんやりとした水との温度差を嬉しそうに受け入れて、澪の瞳をじぃっと見つめる。
「もっと水をかけてほしい――と言っているようですね」
「……! わかった!」
ひと掬い、ふた掬い。
足先が水に浸る度とろりと目を細めるうさぎを見て、澪は琥珀の瞳を輝かす。
彼らの楽し気な様子を眺め見守る晴久の口元もわずかな緩みを見せた。
「芦屋さんの猫ちゃんはどう? お膝の上に乗せてみたら?」
「え。いやぁ、それは、私には柄ではないというか……」
煮え切らない晴久。
それをじぃっと眺めていた猫は何かを察し、おもむろに立ち上がったかと思うと当たり前のように晴久の膝の上に。
「あ、乗ってきましたか、そうですか。……結構重いですね」
しかし決して嫌な重みではなく、もちろん退ける気もない晴久。
「ふふ、良かったね、芦屋さん。…………。」
――じぃ。
「……なんでしょうか、栗花落君」
「へへ、猫ちゃんもちょっともふらせてほしいなって!」
「何かと思えば。ええ、いいですよ」
といっても自分の一存で決めることではないけれど、と膝上を窺ってみればお安い御用とにゃあと鳴く声。
猫は澪に向かって居直りいつでもどうぞの構え。さすがプロのペットである。
「わぁい! ありがと猫ちゃん!」
初めはそーっと触れてみる。膝の上のうさぎより、ちょっとかたい毛質だがとても滑らかで艶やかで。
「はぁ、しあわせ」
幸せの吐息は猫の額にふわりと落ちて、お裾分けを賜った猫の耳も幸せの重みにしっとり垂れた。
たまにはこうしてゆっくりとした時間を過ごすのも悪くない――サングラス越しの瞳が、僅かに動いたのは気のせいだっただろうか。
●
その後、しばし穏やかな夏を共有した二人と二匹。
徐々に周囲の喧噪が恋しくなってきたのは澪だった。
横目でちらと晴久の様子を探り、その視線が水面にとらわれているのを確認すると静かに事に移る。
そーっとそーっと、自然な感じを装って水を掬うと――。
「てやーっ!」
ぴしゃ!
晴久の顔面には被りたての滴がつつと頬を伝って、サングラスには数多の水玉模様が施された。
「…………」
「あははっ、隙ありぃー」
カラカラと気持ちの良いほどの笑い声。
幼さを実感させられるその笑顔に、水を滴らせた晴彦は大人になることを誓う。
耐えねば。相手は子どもである。そして自分は大人である。
だから耐え――。
「もういっちょー!」
しかしこれも幼さのなせる業か、澪は無邪気に追撃をかます。なお攻撃力には若干の上昇がみられた模様。
「…………よし、ここに水鉄砲があります」
――後はわかりますね?
「えー! 大人げなーい!」
ごもっともである。
しかし、今日は夏の日。水のある日。
童心を取り戻すことは誰にも止められないのかもしれない。
二人の膝を離れたうさぎと猫が、こちらも競って大きく跳ねた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
都槻・綾
f01982/咲さん
相棒は翼を持つ黒仔猫
エレメンタルロッドの精霊
惺です
初めまして
とお披露目
好奇心旺盛な仔猫は
興味津々に白狐の尻尾を追い掛けたり
水の眩さへ手を伸ばしては
弾ける飛沫に驚いて飛びついて来たり
魚型のフローにじゃれつこうとしたり
ちっとも落ち着きが無くて
一緒に追いかけて泳ぎ回る時間は
きっとずっと笑み綻んでいるに違いない
もう降参ですよ
私は休憩、
白旗代わりの両手を掲げ
ふかり
水に浮かび揺蕩う
遊び疲れた惺が
ちゃっかり上に乗って来て
すやすや寝るものだから
可笑しさと愛しさで
咲さんと共に撫でる毛並み
呼び掛けに応えるより先
水に潜ってしまった可愛い音の主へ
堪らずに吹き出せば
揺れた腹の上、仔猫もにゃあと笑い顔
雨糸・咲
綾さん/f01786
水着姿が恥ずかしくて
初めの内こそ上着の前をしっかり掻き合わせていたものの
わ、わ、可愛い…!
綾さんの仔猫さんに目を輝かせ
初めまして、咲です
こちらは雪霞
よろしくお願いしますね
真っ白子狐も嬉しそうに尾を揺らしご挨拶
元気に飛び回る黒猫さんを追い掛けあちらこちらへ
水のかけあいっこをしたり
雪霞と一緒に思い切り泳いだり
ふふ
綾さんは少し休んでいて下さい
黒白の二匹と一緒に散々遊び回り
やがて遊び疲れて眠った惺さんを微笑んでそっと撫で
そろそろ休憩がてらごは…
ご飯行きませんか、と
言いかけたところでお腹がぐぅと鳴き
思わず赤面して水に沈む
(やだもう、恥ずかしい…!)
●
羽織をきつく掻き合わせて纏う雨糸・咲(希旻・f01982)のいじらしいことよ。
可憐な佇まいは道行く人の視線をさらい――。
「お似合いですよ」
しかし連れの男――都槻・綾(夜宵の森・f01786)の声にまばらと散った。
「あ、ありがとう、ございます……」
ひゅうと風に流されてしまいそうな声に綾はすべてを見通し、柔い笑みで和ませながら。
「はい、咲さん」
頬の熱を引き摺る咲がチラと視線を上げれば、綾の手のひらにちょこんと座りこちらを窺う円らな瞳。
黒々とした毛が艶やかに輝き、その背に翼を携えたなんとも愛らしい、綾の使う精霊猫だ。
「わ、わ、可愛い仔猫さん……!」
優しく焦げた瞳は仔猫に負けないくらいくるりくるり。
にゃあと鳴いて仔猫が首を傾ぐと、彼女もまた。
先の羞恥は何処へやら、咲はもう自分が水着であることなどすっかり頭から抜けてしまったようだ。
これが綾の作戦勝ちなのかどうか――彼のみぞ知るところ。
「惺といいます。初めまして」
手元に広がる守るべき景色に綾は優しく微笑みを落とし、精霊猫の耳はとろけて垂れる。
「ふふ、初めまして。私は咲です。それと――」
咲の傍らに顕著したのは、この暑さに溶けて消えてしまいそうなほど白く輝く一匹の狐。
こちらも綾の仔猫に同じく、杖に宿りし精霊だ。
「こちらは雪霞。よろしくお願いしますね」
ふさりと豊かな尻尾がご挨拶に大きく揺れて、その軌跡には粉雪が舞う。
見つめあう二匹はどちらも巡り合いの齎す高揚に戯れ、嬉しそう。
――もちろん、主たちだって。
●
二人と二匹と、ここと決めるは小さなプール。小さいといってもこの人数で泳ぎ回るには十分の広さで、今は貸し切り状態だ。
浜辺を模したこのプールは穏やかなさざ波までもが再現され、遠浅なれど最奥まで行けば腰まで浸かることができる為、様々な水遊びを堪能することが出来るだろう。
「浅いとはいえ、気を付けてくださいね」
綾が波打ち際に腰掛けつつ惺を解放してやれば、やんちゃな仔猫は波の上を滑るように走り行く。
生に満ち溢れた艶やかな黒い毛並みは水面の光を返し極上の輝きを放っていた。
「あらあら、待ちきれなかったみたいですね」
上品な笑い声は波音と混じりあい軽やかな夏となり、耳に心地よく残るもの。
困ったものですねと溜息を漏らす綾も、緩む双眸の優しさは隠せない。
「雪霞もいってらっしゃい」
水面を目にしたときからそわそわと様子を窺う狐に主が気付かぬはずもなく、抱く腕を緩め波打ち際へと放ってやった。
足の先に夏を感じた雪霞は一度咲を振り返って、感動を目配せで伝う。
そしてすぐに前に向き直り、少し先で水面をはたく惺を目掛け走っていった。
「――楽しめてもらえたようで何よりですね」
「ええ、本当に」
「さて、咲さん。私たちもいきましょうか。あの子らだけでは少々心配ですから」
特に惺の方が。
魚の浮き具を片手に、綾が先行き、振り返る。
「よろしければお手を――」
もう片方の手は咲を誘い、そして彼女の手を握り。
「……あ、ありがとうございます、綾さん」
それが嬉しくもこそばゆい咲は幼く笑い、感情を誤魔化して視線を二匹へと逃がすのだった。
●
惺はちょっと変わった魚に夢中になってじゃれついて、それでも視界を白い尻尾が掠めようものならすぐさま向かう対象を変える。
うつろいがちな仔猫らしい遊び方だ。
しかしそれに驚いた雪霞がばしゃりと派手に向きを変えたものだから、とばっちりを受けた咲はむぅと片頬を膨らませ小さくお返し。
そのままいつしかあっちでパシャパシャこっちでパシャパシャの大騒ぎ。
最初は笑って見ていた綾もついには混ざり、みんなで楽しく水を蹴ったり掬ったり。
そのままどれくらい経っただろうか――とても短いような気もするけれど、それはきっと夢中のなせること。こんなときの感覚はいつだって頼りにならないものだから。
「はぁ――もう降参ですよ。休憩させてください」
参ったと両手を掲げ、綾は水面に身を横たえた。
ふよふよと不規則に揺蕩い瞳を休ませれば水の冷たさが身に染みていく。
水中にありながら火照りを感じるのは、それだけたくさん遊んだ証だろう。
「ふふ、たくさん遊びましたからね。綾さんは少し休んでいてください」
穏やかな咲の声は眠気を誘い、綾は好意に甘えて不確かな意識にまどろむ。
――と。
「あ、」
惺がするりと水面をすり抜け、綾の腹へと寝そべった。
そのまま、すとん。落ちてゆくは夢の国。
「あらあら」
「……仔猫は急に寝ると言いますが、惺も例に漏れないようですね」
まるで電池切れだ。
困ったように眉を下げて笑う綾であったが、瞳に滲むのは紛れもない愛情。
愛おしさに猫毛を梳いて、至極の情を注ぎ続ける。
誘われるように加わった咲の細い指先も上等な思い遣りに満ち、幸せに眠る仔猫はどんな夢を見るのだろうか。
「気持ちよさそうですね」
「ふふ。――あら、雪霞?」
遊びか何かだと勘違いしたのだろうか、それとも愛情故の行動だろうか――雪霞の白い前脚も、黒い毛並みをすぅっと撫でた。
「……ありがとうございます、雪霞。惺は幸せ者ですね」
「これだけ撫でてもらえればきっとよく眠れますよね」
そろそろ昼時が近い。ここまでめいっぱい遊んだのだから疲れも溜まったことだろう。
――それにしても。
「あの、綾さん。そろそろ休憩がてらごは――」
ぐぅ。
切り出すのが少々遅すぎたよう。
――は、恥ずかしい……!
しゃしゃり出た腹の虫に咲は顔を赤らめ水中へぷくぷくと身を沈ませた。
「――……っ、」
綾が堪らず吹き出してしまったものだから、惺も揺れて目を覚ます。
そしてにゃあと鳴いて、一緒に笑って楽しんで。
水中を彩る美しい彼女はまるで絵画のように美しく、しかしその心中を慮れば察するに余りある。
「咲さん、大丈夫ですよ。私もお腹がぺこぺこですから」
なんてフォローしたところで彼女に届くはずもなく。
水面にくぐらせたこの両腕が彼女を手繰り寄せたら――嗚呼、どうやって君を慰めようか。
大成功
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リル・ルリ
■クロウ/f04599
アドリブ歓迎
相棒のペンギン、ヨルとお揃いのあろはと帽子
クロウ、涼しそうだ
ヨルを抱えてご機嫌
たくさん動物がいる!
撫でられればヨルも嬉しげにきゅ!となく
クロウの相棒は蝙蝠なんだ
僕も仲良くなれるかな
おかし!すごい、綺麗
桜と貝殻と金魚の、泳ぎそう
食べるのもったいないけれど
ふふ
甘くて美味しい、僕も好きな味
ヨルにも半分こ
初恋の人の……?
僕が食べてよかった?
僕は琥珀糖をつくったよ
ぱいなぷる、らいち、れもんの味
クロウ、どうぞ
…僕は猫が少し怖い……だって猫は魚を食べる
僕は魚じゃないぞ!と尾鰭をぴるり
水に入ればヨルとボールで遊んだり游ぐ
水鉄砲の水がかかれば尾鰭でぱしゃり、水弾き
ふふ、仕返し!
杜鬼・クロウ
リル◆f10762
アドリブ◎
夕日色のサーフパンツ
麦藁帽子
夜雀…蝙蝠だけど少し遊ばせてヤるか(式神召喚
ヨル、また会ったな(頭撫で
好奇心旺盛の夜雀がリルの周りを飛ぶ
ひんやり冷たい風呂敷に包まれた枝垂れ桜に白の貝殻と金魚を描く錦玉羹を持参
エンパイアで購入
今にも泳ぎそう
食べるの勿体無いか?(くす
甘いモンは苦手だがコレは好きなンだよ
…俺の初恋の人の好物だったから
ン、ヨルの分もあるから遠慮なく食えや
残りはお前の櫻へ(ウインク
リル達が食べてる姿見て満足げ
檸檬味の琥珀糖貰う
猫が怖い?あァ…
ふぅん?(ニヤリ
そうだな、お前は人魚様だよ(頭ぽむ
小動物とプールで水遊び
膝に乗せてもふもふ堪能
手で器用に水鉄砲作り水飛ばす
●
明るさの頂点にあるこの船に気の早い夕日が射し込む――杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)のサーフパンツだ。
被った麦藁帽子のつばは、そよ風に揺れてカサリと笑っている。
「クロウ、涼しそうだ」
リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)は見上げ双眸を伏すが、そう言う彼も桜の美しい“あろは”を纏い、上等そうな帽子に身を包んでいかにも涼し気だ。
腕に収まるちいさなペンギンの式神ヨルと仲良しおそろな夏の装い。
「楽しそうだな、リル」
「ふふ、まぁね」
輝く水面、道行く動物――どれを見たって鱗が輝いてしまう。
「さて――蝙蝠だけど少し遊ばせてヤるか」
クロウが呼ばうは蝙蝠の姿をした一匹の式神、名を夜雀と言う。
「へぇ。クロウの相棒は蝙蝠なんだ」
逢魔が時の似合う彼らしいとヨルに目配せすれば、ヨルの視線はクロウへと。
「お、ヨル、また会ったな」
挨拶代わりにふわふわの頭をぽんと撫で。
うれしそうに鳴くヨルの瞳がとろりと垂れた。
「二人は仲良し。……僕も仲良くなれるかな」
クロウの肩先に侍る夜雀をじぃと眺め、もの言いたげに。
それに気付いた夜雀はぱたぱたりと薄い翼をはためかせ、リルの肩にて羽根休め。
それはきっとよろしくの合図。
「お前のこと、気に入ったみたいだぜ」
リルの頬がふやりと緩み、新たな絆が産声あげた。
●
泳ぐ前に腹ごしらえ。
クロウは冷たさ残る風呂敷を前に、リルを手招き。
「何を持ってきたの?」
「まぁ見てろって」
風呂敷の結びがゆるりと解かれれば、そこに広がるのは――澄んだ透明の美しい檻のなか、桜の重みに枝垂れる枝と、物言わぬ潔白の貝、それに泳ぐは鰭はためかす赤い金魚。
「わぁ! おかし! すごい、綺麗。どういうおかし?」
「錦玉羹。サムライエンパイアで買っといた」
「ありがとう、クロウ。でも食べるのもったいないな」
むぅと口先を尖らせ真剣に悩むリルに、クロウは微かに笑む。
小さいけれどどれも生き生きとして、金魚なんかは泳ぎだしそう。
つまんで宙にかざしてみれば、けれど金魚は食べてと誘っているようにも映り。
「――甘いモンは苦手だがコレは好きなンだよ」
そう言われてしまってはもう我慢も潮時で、リルの細い指先が透明の檻をぱかりと裂く。
半分は自分に。もう半分は、僕の周りを飛ぶ君に。
「はい。ヨルにも、半分こ。ね」
仲良く分け合った錦玉羹は、それはもうあまくておいしくて。
「ふふ、僕も好きになっちゃった」
「そうかよ。元々別にヨルの分も買ってあるからもっと遠慮なく食えや。……コイツは俺の初恋の人の好物だったンだ」
「初恋の人の……? 僕が食べてよかった?」
「ハッ、分かりきったことを聞くんじゃねェよ。――好いてもらえて何よりだ」
――他でもない、親愛なる君にならば。
「まだ数はあるからよ。だから――」
あとのは愛しき者への土産にしろと、クロウはキザにウインクを飛ばす。
リルはこそばゆそうに頬を染め、誤魔化すように荷をあさり。
「これ、僕もおかしをつくってきたよ」
両手をひろげればパステルに輝く琥珀糖がころころころり。
とても単純な材料でつくられたお菓子だけれど、美しくつくろうと思うと一朝一夕でどうにかなる代物ではく、予てよりこの日を心待ちにしたリルの情が見て取れる。
パイナップルとライチとレモンと。どれも夏を思わせる涼し気な果実たちだ。
「器用なもんだな。んじゃ俺は檸檬味にすっかね」
ひとつ摘まんでポイっと口に放り込む。
豪快な食べ方が君らしいと笑うリルに、クロウも美味いと微笑んだ。
それは甘くて優しくてとろけそうな――まるでお菓子みたいな夢の一頁。
●
腹を満たせば今度は遊びの時間。
優雅な尾鰭を水面にひたし、リルはまさに水を得た魚といった様子。
しかしふいに横を猫が通ると、ぴくと肩を震わせクロウにすり寄り。
「猫……少し、怖い」
「猫が?」
「……だって猫は魚を食べるから」
「魚……あァ……そういう」
「ち、違う! 僕は魚じゃないぞ!」
ぴるりぴるりと尾鰭を翻し、リルは可愛く抗議する。
眺めるクロウはニヤと口端をあげるがぽんと優しくリルの頭を撫でてやり、お前は人魚様だと慰めた。
「ほれ、猫ももういっちまったしボチボチ泳ごうぜ」
「そうだね、せっかく来たんだもの」
ちゃぷんと水面をたゆませ水に身を預ければ、あぁ、やっぱりここは陸よりずっといい。
すでに水を堪能していたヨルも主にすぅと寄りそい歓迎す。
水に慣れない夜雀はクロウの肩からそれをじぃっと眺めていたが、やがて浅瀬に身を預けこれまた幸せそうに揺蕩って。
「お前意外と適応能力高ぇのな……」
呆れ笑うクロウ。しかしその溜息は慈しみ溢れる愛情吐息。
「さ、水遊びはこっからが本番だぜ」
今日一番不敵な笑みがゆらり影を落とし――。
「うらっ! くらえ!」
両手を器用に操り、水を溜めてばびゅっと発射。
「ひゃっ……! うぅ……」
恨めしくクロウをじっとり睨むリルであったが、当の本人はケケケと悪党笑いに夢中のようで。
「――目には目を、」
「あァ?」
「――水にはっ水をっ!!」
豊かな尾鰭をぶわりと漕いでさざ波を呼ぶ。
悪党クロウはあっという間に水びたし。
「ふふ、仕返し!」
べ、と可愛く舌を出してみせれば、気の収まらないクロウがまた水面へと手を伸ばす――。
楽しい時間はまだまだこれから。
大成功
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