●響
――ぽつん。
何処かで落ちた雫。広がる円。
――ぽつん。
それは一定の間隔で空間に響く音。
それ以外の音は、今はまだ何処にも存在していない。
ただただ静かに波打つ水と、碧々と輝く洞窟が、そこにあるだけ。
●ローズウェルの情報
「皆さん皆さん! どうですか! 楽しんでますか!?」
ローズウェル・フィリンシア(太陽と月の神子・f09072)は初めて着た水着に一人はしゃいでいた。
彼女がグリモアベースで何かを説明する時は事件を予知した時なのだが、今回はそれではなさそうだ。何より彼女のテンションがまるで違う。
「あのですねっ、私、素敵なものを発見したのです! 題して『鍾乳洞ツアー』なのです!」
ローズウェルが猟兵達に見せたものは一枚のチラシ。スペースシップワールドのもののようだ。
「たくさんある超巨大ビーチリゾート船の一つ『オアシス号』はですね……他の船とはちょっと雰囲気が違うそうなのです。というのも、浜辺や海を売りにしているのではなく、洞窟や鍾乳洞を楽しんで貰う方に力を入れているらしいのです」
海に隣接した鍾乳洞なので、到着後すぐに辿り着く事が出来る。透明にも等しい海水はそこまで深くはないので、容易に歩いて進む事が出来るだろう。外の光も届かなくなる場所まで深く進んでいくと、そこには幻想的な光景が待っているという。
「コバルトブルーの鍾乳石に、エメラルドグリーンの海。そんな素敵な空間が見られるそうですよ!」
静寂に包まれた宝石のような空間の中、どう過ごすのかは自由だ。注意は一つだけ、大声を出すと周囲に反響してしまうかもしれない事だ。
「はしゃぐには難しい場所ですが……ちょっと休憩したい方にはピッタリかもしれません。楽しいお祭りの気分転換にいかがでしょうか?」
ローズウェルはひらりと水着を揺らしながら、猟兵達にそう問い掛けた。
ののん
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このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります。
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お世話になります、ののんです。
●状況
スペースシップワールドが舞台となります。
●当シナリオについて
分かる方に伝えるとするならば、これはイベシナです。
1章で完結します。邪魔な敵もいませんので思いっきり楽しんで頂ければ!
とはいえ内容的には……落ち着いた場所で楽しみたい方向けかもしれませんね。
フラグメントの選択肢は一例ですので無視して頂いても構いません。
●プレイングについて
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 日常
『猟兵達の夏休み』
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POW : 海で思いっきり遊ぶ
SPD : 釣りや素潜りに勤しむ
WIZ : 砂浜でセンスを発揮する
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
葛籠雄・九雀
SPD
鍾乳洞、であるか…。…ふむ、そうであるな。オレは此処へ行くとしよう。水着を購入したはいいが、実は泳げんのであるぞ。それに、あまり人が多い場所もな。オレ一人ならまだしも、この肉体と共に在る今を、そういう『オレたちの時間』を、誰かと過ごすのは…さして好かん。オレが何かの拍子でこの体から外れるとも限らんであるしな。
嗚呼…美しい場所であるな。
…誰かが、昔、図鑑を見て…鍾乳洞の話を…はて、それは誰であったか…ハハハ。清々しいほど、何も覚えておらん。
寂寥も悲哀も、感じてはおらなんだ…だが、愛しさだけが募っている。
この虚を、オレは…今後一生愛していくのであろうな。そう思うのである。
アドリブOK
連携NG
何時、何処でこの体と自分が離れてしまうのか。そんな予測など不可能に近い。
だからこそ、今という有限の時間を、『オレたちの時間』を大切にしたい。そう仮面は考えた。
葛籠雄・九雀(支離滅裂な仮面・f17337)は下を向きながら洞窟の中を進む。水着は着てみたものの、如何せん泳げないのだ。
「良いか、一歩でも穴を踏み抜いてみろ。オレは泳げんからの、あっという間にお陀仏だぞ」
膝下に波打つ水を蹴りながら、慎重に、しかしゆっくりでもない速さで進んでいく。
「まぁこの様な場所ならば、さして人は多くなかろう。故に焦る必要もないものではあるが」
大勢が押し寄せないであろう場所の方が、ゆっくり思考を巡らせる事も出来るだろう。勿論、ここを選んだ理由は他にもあるのだが。
ぱしゃり、ぱしゃり。
浅い海の中を歩く音。それがぴたりと止まったのは、海の色が少し色付いてきた事に気付き、顔を見上げた時だった。
「嗚呼……美しい場所であるな」
辿り着いた先の光景は、思わず九雀が声を漏らしてしまう程であった。
まるで本当に宝石が固まってしまったかのような空間だった。普通、鍾乳洞は人工的に照明で照らし色を飾るものなのだが、ここにはそういった設備は見当たらない。天然の色のようだ。
青色に輝く鍾乳石はまるで宇宙のよう。それを映すエメラルドグリーンの海は鏡のように天井を映し出す。きらりきらりと反射する光は、そこまで眩しくもない柔らかい光なので見飽きる事もない。
「ほう、成る程な……これは確かに、現実離れした光景であるな」
九雀は一人関心しながら空間の隅々まで見回す。ふと水に浸かっていない岩場も発見したので、そこへ腰を下ろす事にした。
体を休める事暫くして。九雀の脳裏に何かがぼんやりと浮かび上がる。
「おや、確か、あれは……誰かが、昔、図鑑を見て……鍾乳洞の話を……」
鍾乳洞へ辿り着いてから、この気持ちは何だろうかとずっと引っ掛かっていた。そう、この光景に似たものを、昔何処かで見たような……。
懐かしいような、そうでもないような。ぼんやりうっすら、何かを思い出せそうな気がしたのだが。
「……はて、それは誰であったか……ハハハ」
そのモザイクが晴れる事はなかった。九雀は乾いた笑いをあげた。
嗚呼、清々しいほど、何も覚えておらん。全く、オレというやつは……。
「寂寥も悲哀も、感じてはおらなんだ。……だが」
愛しさという思いだけが募っている。それだけは分かる。
「……この虚を、オレは……今後一生愛していくのであろうな」
なぁ、肉体よ。オレはそういう仮面であるぞ。
青く照らされた人間と仮面は、その日その場で、有限を忘れ静かに語り合ったという。
大成功
🔵🔵🔵
マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
船に鍾乳洞とか…
この世界ってキマヒュ以上になんでもアリだな
わぁ…めっちゃ綺麗だな
宝石みたいにキラキラしてる
ふふっ、光が反射してグラナトさんも今は青に見えるな
オレ色に染まったみたい…?
それはそれでちょっと嬉しいけど
オレの『赤』がなくなるのはやだなぁ、なんて
ん?オレも静かなとこは好きだぜ
賑やかなのもいいけど
こうやってグラナトさんの傍にいるが一番好き
けどせっかくだからさ
グラナトさんと色んなとこ行ってみたいじゃん?
だからこれからも、オレといっぱいお出かけしてね♪
アドリブ歓迎
グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と。
鍾乳洞が船の中に…?(不思議な感覚に少し戸惑いつつ)
あぁ、ここの海も綺麗な色をしているな。
青というよりはエメラルドグリーンだが…これもまた澄んだ海の色だ。
中の鍾乳洞はコバルトブルーか…。
こちらの方が俺の好きな青に近いかもしれんな。
(ちらりとマクベスの瞳を見て)
水滴が落ちる音も心地いいな。
俺としては静かな場所は好きだがマクベスはここで良かったのか?
もっと賑やかな場所でもよかったんだぞ?
俺はマクベスと行けるなら何処でもいいからな。
館に引きこもっていた頃の自分ではとて思い付かないような言葉だが。
お前となら出かけるのも苦ではないしむしろ楽しいと思えるからな。
火炎と戦の神であるグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は静かに驚いていた。船の中にこんな場所があるとは想像すら出来なかったのだから。
「世界とは広すぎるものなのだな……改めて思い知らされる」
「ホント、この世界ってキマヒュ以上になんでもアリだな」
マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)も不思議そうに周囲を眺める。
「わぁ……めっちゃ綺麗だな。照明もないのに色が付いてるなんて、本当に宝石みたいだぜ」
人の手が一切加えられていない事は、素人である彼らにも分かる。鍾乳石や海の色が『本物』なのだ。
宝石のように輝く空間だが、決して眩しすぎない自然なその色は、飽きる事なく永遠と見ていられそうだ。
勿論、ここには時計など存在しない。故に今、何秒、何分、何時間経ったのか、知る由もない。
「エメラルドグリーンの海と、コバルトブルーの鍾乳洞、か……」
「ふふっ、光が反射してグラナトさんも今は青に見えるな」
耳(普段は帽子で隠しているが、今回は特別。折角の水着姿なので取ってみた)を動かしながらマクベスはグラナトの横顔を覗く。炎の様に赤いグラナトも、ここでは鍾乳石の色に照らされ静かな青色に染まっていた。
「青色に見える、か。随分と縁のなさそうな事を言われたものだ」
「なんと言うか、オレ色に染まったみたい……? それはそれでちょっと嬉しいけど、うーん」
にっこり笑うものの、首を傾げるマクベス。
「……オレの『赤』がなくなるのはやだなぁ、なんて」
呟くようにそう言い、苦笑いをしてみせた。
自分の色に染まった姿はとても新鮮で面白い。だけど、好きな色がなくなってしまうのは寂しいものだ。
あわよくば両方の色があるのが好ましい……なんて言うのは我儘か。
「そうだな、こちらの方が俺の好きな青に近いかもしれんな」
隣から聞こえたグラナトの声。
あぁそうだな、この神秘的な青色は綺麗だもんな、とマクベスは頷いていたのだが、グラナトの視線はマクベスの瞳をじっと見つめていた……ような気がした。
「所で」
と、話題を変えようとしたのはグラナト。
「俺としては静かな場所は好きだが……マクベスはここで良かったのか? もっと賑やかな場所でも良かったんだぞ?」
「ん? オレも静かなとこは好きだぜ」
問いに対してきょとんとするマクベス。
「賑やかなのもいいけど、こうやってグラナトさんの傍にいるのが一番好き」
迷う事なく自然と出た、素直で率直な答え。彼らしい答え方にグラナトの悩みはすぐさま消えていった。
「そうか。俺はマクベスと行けるなら何処でも良いからな。お前となら、出掛けるのも苦ではないし……寧ろ楽しいと思えるからな」
そう彼に言った直後、グラナトはふと自分に驚いた。
かつて館に引き篭もっていた頃の自分では、とてもじゃないが思い付かなかった事を口に出してしまったな、と。
その事に対して感じたものは、惨めさよりも誇らしさの方が強かったのだが。
「へへ、折角だからさ……こうやってグラナトさんといろんなとこ、行ってみたいじゃん?」
その証拠に、隣に座る少年、マクベスが尻尾を振りながら喜んでいる。
「だからこれからも、オレといっぱいお出かけしてね♪」
その言葉を聞けただけで、十分に安心した。
ぽつん、ぽつん。
天井から落ちる水滴の音。広がる波紋。
それは二人の心を清めていく。これから二人が見る世界も、広がっていく事だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
※アドリブ◎
カガリがくれた【泉照焔】を携え、鍾乳洞を探検
この【泉照焔】が友である彼が贈ってくれたもの
無くした記憶が見つかるよう、孤独に彷徨わぬよう、先往く黄泉路を照らすようにと
神話では死者の国は地下にあり、洞窟が入り口になっているという
俺がやがて辿る道もこんな風に美しいところなのだろうか
そんな心配そうな顔をするな、俺はまだ死なない
頬に垂れた鍾乳石の地下水を拭ってやり、不安がらないよう歌いながら歩く
足下が濡れて滑るから気を付けろと手を差し出す
冥界に下ったオルフェウスは妻が付いてきているか疑い振り返ったが、俺は振り返らない
繋いだ手と貰った焔を頼りに、地上へと戻ろう
出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と
※アドリブ可
まるに贈った灯りを頼りに、進んでみようか
頼むぞ泉照
洞窟というと、アックス&ウィザーズの依頼で、オブリビオンの退治で向かうことが多かったが…
どうしたまる 黄泉への道?
さて、さて
カガリの内のもの(【内なる大神<オオカミ>】)は、
現世のものが夢見るようなところではない、と言っているが
(奥の空間にて。水面に触れたり、水を掬ってみたり)
まる、まる
ここは正しく、現世だ
見た事の無い黄泉に焦がれる気持ちは、ちょっとわかるが…
今は、この美しい現世を、まると楽しみたいぞ
そしてちゃんと、日常に帰りたい
後ろを振り向いても許される、この道を通ってな
手に浮かぶ水晶の焔は何処へ誘おうとしているのだろうか。
この洞窟の先にあるものは、果たして黄泉の国なのか、それとも。
「どうした、まる」
出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)がそっと声を掛ける。
彼から贈られた水晶、泉照焔を携えるマレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は、細い目付きはそのまま、視線だけをカガリの方へ向ける。
「……何、先往く黄泉路を照らすようにと、願ったまでだ」
己が無くした記憶が見つかるよう、そして孤独に彷徨わぬよう。ただそう思考を巡らせたまで。
しかしその答えに、カガリは少々残念そうに小さく微笑んだ。
「黄泉への道? ……カガリの内のものは、現世のものが夢見るようなところではない、と言っているが」
カガリは鉄門扉のヤドリガミである。その内に宿るものは古き大神<オオカミ>。
嗚呼、今日は嫌なくらいにざわつくなと思えば、彼がそんな事を考えていたからか。仕方ないな、とカガリは肩をすくめた。
そんな彼の様子など露知らずか、マレークは真っ直ぐと進む先を見つめていた。
進む先に見えるは暗闇、暗闇。……そして、青い輝き。
水の色が透明色から淡い緑色へと変わったように見えた頃、二人は目的の鍾乳洞へと辿り着いた。
天然の青色に輝く鍾乳石から雫が落ち、緑色の浅い海に波紋を作る。
「なるほど、確かに美しい場所だ」
カガリが溜め息を吐きながら周囲を見渡す。鍾乳石の姿をそのまま映し出す鏡のような海。遠くに見えるその光景はまるでオーロラのようにも見え、それはカガリだけでなくマレークも魅了させた。
「……カガリ、知っているだろうか」
マレークはオーロラを眺めながら語り出す。
「神話では、死者の国は地下にあり、洞窟が入り口になっているという」
まるで先程通った洞窟のようだ、と。
「……俺がやがて辿る道も、こんな風に美しいところなのだろうか」
それを聞いたカガリは、はぁ、と再び深い溜め息を吐いた。先程の感嘆のものとは正反対のものだった。
カガリは知っている。彼が冗談など言わない性格である事を。だからこそ、悲しくなってしまったのだ。
「……まる、まる」
下を向いて、彼の愛称を呼ぶ。水面に映るは自分と彼。屈んで膝を着くと、彼の顔に向けて両腕を伸ばす。
ぱしゃり。彼の顔が消える。水面からそっと手を出せば、掌の中には輝く水と波。暫く経てば波は静まり返り、そこに映ったのは――やはり自分と彼だ。
「まる、覗くといい。ここは正しく、現世だ」
あぁ良かった。この掌の中に映らなければどうしようかと思ったけれど。
「見た事の無い黄泉に焦がれる気持ちは、ちょっとわかるが……今は、この美しい現世を、まると楽しみたいぞ」
ここは何処かへ繋がる境界線などではない。現世に存在する、ただの美しい場所であるだけだ。
「泉照焔は、カガリが贈ったものだ。……わかっているのだろう?」
自分の掌に顔を向け続けるカガリの姿を見ても、マレークの表情が変わる事はなかった。
その代わりマレークは、そっと静かに片手を伸ばした。カガリの頬を伝う雫を拭うと、
「そんな心配そうな顔をするな、俺はまだ死なない」
優しくも強い言葉を送った。
カガリは知っている。彼が冗談など言わない性格である事を。だからこそ、ふと微笑んでみせた。
「この辺りは足下が滑る、気を付けろ」
差し出されるマレークの手。カガリは両手で包んだ水をそっと海に返してから、彼の手を握り立ち上がる。
「冥界に下ったオルフェウスは妻が付いてきているか疑い振り返ったが、俺は振り返らない。繋いだ手と貰った焔を頼りに、地上へと戻ろう」
そう固く誓うマレークだったが、カガリは首を横に振る。
「何、ちゃんと日常へ帰られればいい。――それにこの道は、後ろを振り向いても許される」
この幻想空間は、優しい輝きに満ちているのだから。
歌う、歌う、竜は歌う。
誓いを立てた門へ、" "を捧げて。
大成功
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