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寛永三方ヶ原の戦い~サムライ・リヴェンジェンス

#サムライエンパイア #【Q】 #寛永三方ヶ原の戦い #武田二十四将

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 サムライエンパイア、三方ヶ原。
 かつて、武田信玄が徳川・織田軍を破った戦場に、禍々しい気配が集結していた。
 武田軍の配下たちと、漂う魑魅魍魎の群れから成る異形の軍勢。武田信玄その人こそ存在しないが、彼に仕えた武将とその軍勢がオブリビオンとして蘇り、ここに押し寄せてきているのだ。
 響くおどろおどろしい鬨の声。怪物と化した武田軍の雄叫びに、相対する徳川軍の侍たちは及び腰になっていた。
 侍たちの間に、ひそひそと囁き声が湧き上がる。
「家康公すら敵わなかったんだぞ……勝てるわけがない……」
「家光公は一体なにを考えておられるのか……」
「蹂躙されるのが関の山だ……」
「早く逃げた方が……」
 じわじわと広がっていく、内なる不安と恐れの具現。
 それは水に落とされた墨汁めいて、軍の中に溶け出して行く。
 三方ヶ原と徳川軍のVTRを消したシーカー・ワンダーは、困り顔を映し出した。
「……と、ちょっと困った事態になってしまいました。順を追って説明しますね」
 シーカーが咳払いをひとつ挟んで語り出す。
 調査の結果、信長軍が『武田信玄の復活』を目論んでいることが判明した。
 甲斐の虎・武田信玄。力ある将軍であった彼はまだ復活していないものの、その配下である『武田二十四将』とその軍勢がオブリビオンとして蘇り、三方ヶ原に集結して、信玄公を蘇らせようとしているのだ。
「今、家光さんが号令をかけて、侍たちを迎撃のために集めたんですが……彼らは武田軍が強敵であると知って、士気がどんどん下がってきてしまっています」
 戦いには力が要るが、力は心を伴って初めて意味を成す。このまま戦っても徳川軍の侍たちに勝ち目はあるまい。
 そこで、猟兵の皆には、まず侍たちの士気をなんとかして上げてほしい。方法は問わない。とにかく、侍たちに戦って勝つ気概を与え、合戦に斬り込む覚悟を与えてやる必要がある。
 侍たちが戦えるようになれば、その時こそ猟兵の出番だ。敵陣深くに斬り込み、武田二十四将を守る『オブリビオンの直属護衛団』を撃破。その後、戦国武将との戦いに臨み、これを討ち取ってもらいたい。
「どうやって武田信玄を復活させるのかはわかりません。だけど、このまま三方ヶ原に武田軍を居座らせれば、武田信玄は確実に復活してしまいます。なんとしても、ここで追い払う必要があるんです。……というわけで」
 シーカーは右足で床を二度つつく。彼の後方にボンと白い煙が湧き立ち、巨大な薄型テレビが現れた。
 画面を白く染めたそれこそ、シーカーが生み出す別世界へのゲートである。
「サムライエンパイア、三方ヶ原へのゲートを開通致しました。それでは皆様、ご武運を!」
 シーカーは手を振り、テレビに入る猟兵たちを見送った。


鹿崎シーカー
 ドーモ、鹿崎シーカーです。何気にサムライエンパイアに手を出すのは初めてなのでは?

●三方ヶ原
 サムライエンパイアにおける合戦の舞台。かつて、徳川・織田・武田軍が激突した地でもあり、現在はオブリビオン武田軍と徳川軍が向かい合っている状態です。
 武田軍はここで、なんらかの方法によって武田信玄を蘇らせようとしています。

●第一章『三方ヶ原の徳川軍』(冒険)
 家光の号令によって集められた徳川軍。しかし彼らは家柄だけで武士になったものも多く、実力不足です。その上、神君家康公が負けた軍勢に勝てるわけが無いと気持ちで負けてしまっています。
 彼らの士気を上げ、戦に臨む準備をしてください。

●第二章『残滓』(集団戦)
 過去の人々の未練・後悔の念を集めて強化された、オブリビオンの幽霊です。生きているもの、特に強い思いを持つ相手を殺して取り込もうとしています。
 今は武田二十四将を守る護衛兵団となっており、武将の首級を上げんとする者を食らうべく待ち構えているようです。

●第三章『戦国武将』(ボス戦)
 武田信玄に仕えた武将、『武田二十四将』の誰かです。二十四人のうち誰に当たるのかは不明ですが、強大な力と戦術眼を以って軍勢を指揮しています。
 第三章冒頭に追加OP挿入予定。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

 途中参加歓迎。8人までならチーム参加もOK。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 冒険 『三方ヶ原の徳川軍』

POW   :    陣頭に立って力を見せつける事で、徳川軍の戦意を高揚させます

SPD   :    兵士一人一人への細やかな配慮や事前準備によって、士気を上昇させます

WIZ   :    演説や説得によって、徳川軍のやる気を引き出します

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
【POW】判定

おいおい、ようやく夏が始まったと思って飛んで来てみりゃ…
徳川の武士は忠義に篤いモノノフってのは御伽噺の中だけだったか?

武田信玄と言えば、俺ですら知ってる名だたる名将。まあ気後れするのも分かるってのもんだが…そもそもまだ復活してねぇんだぜ? 今だからこそ、行けると家光公も判断したんだ。その判断は、信じられるぜ?

後は…訓練を手伝ってやるか。体を動かせば、気持ちも解れるさ。
【ウェポン・アーカイブ】で簡単に武器を作って、ちょいと相手してあげるぜ。

この日本を守るのは他でもないアンタ達なんだ、しっかり頼むぜ?


ミハエラ・ジェシンスカ
アドリブ可

戦争を知らない世代の兵士達か
それだけこの世界が平和であった証でもある
経験不足を責めるのは酷というものだろうな

悪いが人を勇気づけるような真似は得意じゃない
それを布石にだまし討つというのならまだしもな
故にフォースマインドトリックによる【催眠術】で兵士達の頭の中を弄らせて貰う
無論、本人達には気取られないようにな

安心しろ、洗脳めいた真似をするつもりはない
そもそも私の催眠術はそこまで強固なものではないからな
それで戦えるのは最初のうちだけだろうさ

だから少しばかり「意識を前向きに」したり「緊張を和らげる」だけだ
そうすれば後はこういう事が得意な猟兵が上手い事やってくれるだろうさ
あるいは兵士達自身がな


カイム・クローバー
一人称:俺 二人称:あんた 三人称:あいつ 名前:名前で呼び捨て

やれやれ…家柄で武士ね。平和になったってコトなんだろうが、それにしてもこの状況はマズイな。
こいつらだってやる気になりゃ、それなりと思うんだが…

【POW】
陣頭に立って力を見せつけるってのが手っ取り早いな。
ここの連中で一番強い奴は誰だ?…あん?一人で挑む気概がねぇなら、二、三人、纏めてでも構わないぜ。木剣で手合わせしてやる。
【二回攻撃】と【範囲攻撃】にUCを組み合わせて猟兵としての力を見せつけるぜ。勿論、攻撃は寸止めだ。怪我させたんじゃ意味ねぇしよ。
俺みたいなのが後、数人居る。今なら助っ人としてお買い得価格、安くしとくぜ?(笑いつつ)



 寛永三方ヶ原、徳川軍陣地。
 戦のために集まった、侍たちの待機キャンプ。布と簡素な骨組みで作られたテントで作られたスペースがいくつも建つ場所で、侍たちが忙しなく動き回っていた。
 数人で、時には二桁に昇る数で集団を作り、何かを語らう足軽たち。明瞭な言葉にならずとも、彼らの表情と声に滲んだ不安が空気に溶け出し、キャンプ全体に重苦しい雰囲気を作り出す。
 それらを一望できる丘の上、風に揺れる草花をブラウンの靴が踏みつけた。
「おいおい、ようやく夏が始まったと思って飛んで来てみりゃ……」
 キャンプ地を見下ろす人影。首に巻いた赤のマフラーをはためかせ、アーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)は失望の表情で呟いた。
「徳川の武士は忠義に篤いモノノフってのは御伽噺の中だけだったか? 今にも集団疎開しそうな感じだぜ……」
「そう言うな、アーサー」
 アーサーの肩を、鉄の骨組みじみた機械腕が叩く。腕の主、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は、振り返ったアーサーの瞳を黒いバイザー越しに見返した。
「彼らは戦の経験が無いにもかかわらず、家光の一声でここまで出て来てくれたのだ。戦に対する態度はともかく、忠義は本物と見てもいいだろう」
「まぁ……そうなんだろうけど……それにしたってちょっと不味い雰囲気じゃねえか? みんな腰が引けてるみたいだし……カイムはどう思う?」
 アーサーがミハエラの後方に視線を投げた。そこには、切り株に座ったカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)。指先で長く伸びたもみあげをくるくると巻きつつ、神妙な面持ち。
「どう思う、と聞かれてもな。あんたとそう変わらないぞ、アーサー」
 カイムは自分の髪から手を離し、立ち上がる。二人の隣に進み出て、キャンプ地を見下ろす彼の脳裏に、グリモアベースで聞かされた話が蘇った。
「やれやれ……家柄で武士ね。平和になったってコトなんだろうが、それにしてもこの状況はマズイな。見てみろ、あいつらの顔。どいつもこいつも自分でビビって、それを他人に伝染させてビビらせてを繰り返してやがる。不安なのはわかるが、これじゃあ最悪、戦う前に逃げ出すぞ」
 カイムの言に、ミハエルは鉄骨のような腕を組んだ。
「経験不足を責めるのは酷というものだろうな。しかし、いかに実力を持った者でも、千の修羅場を潜り抜った猛者でも、心持ちで負けていてはどうにもならない。それは、どこの戦場でも同じことだ。戦う意志が無い者に、勝利は決してやってこない。……とは言ったものの」
 ミハエルが、片手を顎の下に持っていく。作りかけのロボットめいた胴体に反して、首から上は人間の女性と遜色がない。
「悪いが、人を勇気づけるような真似は得意じゃない。それを布石にだまし討つというのならまだしもな」
「そいつはバッドニュースだな。ミハエラ、あんたそれでどうするつもりだったんだ?」
「心配するな。鼓舞は不得手だが、無策で来たわけではない」
「だと良いがな……」
 カイムが言い、侍衆全体から侍ひとりひとりに視力をフォーカス。走る時のフォーム、一挙手一投足をじっと見つめ、検分していく。
「見たところ、意外と動きに無駄がねえ。戦いの経験が無くても、普段からある程度鍛えちゃいるんだろう。こいつらだってやる気になりゃ、それなりだと思うんだが……」
 走ったり、情けない表情で右往左往する侍を眺める三人。やがて、アーサーが大きく息を吐き出した。
「とりあえず、ここであーだこーだ言ってても仕方ねえし、一旦下りようぜ。ちょっと喝入れてみて、後は……訓練を手伝ってやるか。体を動かせば、気持ちも解れるさ」
「では、私は残ろう。全員の頭をいじるなら、全体の俯瞰が必須条件になるからな」
「ちょっ……!」
 色めき立ち、振り向くアーサー。ミハエルは薄い微笑みを彼に返した。
「安心しろ、洗脳めいた真似をするつもりはない。そもそも、私の催眠術はそこまで強固なものではないからな。それで戦えるのは最初のうちだけだろうさ」
「せいぜい気分を変える、ぐらいのもんか。…………」
 カイムがわずかに思案する。一瞬の沈黙思考の後、彼はミハエラの肩に手を置いた。
「ミハエラ。ちょっと頼みがあるんだが」
「私に出来る範囲であれば協力しよう。……なんだ?」
 ミハエラの耳元に口を寄せ、カイムが何事か囁いた。十秒もしないうちにカイムはミハエラから顔を離す。
「……どうだ?」
「その程度なら、容易いことだ。請け負った」
「よし」
 うなずくと、カイムはアーサーの背中を叩く。行動開始の合図と受け取りつつも、アーサーは問うた。
「なに話してたんだ?」
「侍連中の気分についてだ。それよりアーサー、木剣は出せるか? 二本でいい」
「木剣……は無ぇけど、訓練用の剣なら作れる。双剣にすりゃ二本に出来るぜ。リーチと破壊力は落ちるけど」
「それでいい。怪我させちゃ意味ねぇしよ」
 ミハエルは、会話しつつ丘から身を躍らせた二人を見送る。やがて話し声が聞こえなくなると、彼女は両手に赤黒いオーラをまとわせた。それは知性体の精神に干渉するサイキックの具現!
「では、始めるか。栄光ある勝利のために」
 オーラをまとった両手の平を青空に掲げ、緩く黒鉄の指を折り曲げる。揺蕩うオーラを見つめ、自身の戦う意志を投影し――――。
「ふんっ!」
 ミハエラの両目が光り、オーラが爆ぜて波紋を広げる。一瞬空を走った光を感じて侍たちが空を仰ぐが、オーラの波紋は既に無い。異変を見逃した彼らは再び自分たちの談義に戻った。
「それで……なんの話してたんだっけか」
「だから、武田二十四将ってのが妖怪引き連れてるって話で……」
「そう、そうだ。だからそいつらをどうにかしねえと駄目なんだよな」
「けど、俺たちじゃあどうしたって力不足だ。誰か……そういうのに強いお人を探した方がいいんじゃねえかって」
「名案だが、時間がねえ。今から探しに行ってる暇なんて無いだろ」
「いや、早馬走らせれば誰か見つかるかもしれねえ! とにかく、やってみるべきじゃねえか? こんなところでむざむざ死んでられねえよ!」
 不安を訴えるだけだった声が、やがて現状打破を目指す言葉を紡ぎ出す。雰囲気が変わったのを丘の上から感じ取り、ミハエルは満足げに微笑んだ。
「種は撒いたぞ。あとはお前たち次第だ」



 十数分後。
 件の侍キャンプの広場で、勇ましい掛け声が放たれていた。
「はァッ!」
 気合い! 木剣を手にした侍が、双剣の片割れを手にしたカイムに斬りかかる! だがカイムは軽やかなステップで後退しながら連撃をかわし、大上段から振り下ろされた一撃を刃の腹で受け止めた! 若い侍は剣に力を込めるが、カイムの剣はピクリとも動かぬ!
「な、にっ……!」
「おっと、ここで限界か?」
 鋭い顔立ちに不敵な笑みを滲ませ、カイムは剣を振り抜いた。大きく弾かれる若侍の木剣! がら空きになった胴体にカイムの左手が伸び、胸倉をつかんで一本背負い! 若侍の背を地に打ちつけた。
「ごはあっ!」
 肺から空気を絞り出す若侍。悠然と背筋を伸ばしたカイムは、不意に半身になった。彼の腹スレスレを木剣刺突が貫通! 突きを繰り出した若侍の体がカイムの懐に飛び込んでくる。カイムは不意打ちをかわされ驚愕する彼の胸倉をつかみ、片足を蹴り飛ばした。
「うわっ!?」
 仰向けになった二人目の胸倉を離し、背中から地面に落とす。一本! カイムと若侍たちを囲む侍衆が、わっと歓声を上げた。
 カイムは余裕の表情で、3メートルほど離れた三人目の侍に切っ先を向ける。三人目の侍はひっくり返された二人を驚きの表情で見つめていたが、やがてカイムを視界に捉えた。カイムは切っ先で侍を招く。
「かかって来い。それとも、仲間を補充するか?」
「ばっ、馬鹿に、するなあッ!」
 勇ましく吠えた三人目が雄叫びと共に突撃していく。
 観衆と化した侍たちの中に混じってカイムを見守るアーサー。彼の傍らに立った初老の侍は信じられないと言った面持ちで問いかける。
「い、一度に三人も相手して、全く息切れもしてねえだって……? あんちゃん、あやつ、何者だい……」
「何者って、言っただろ? 俺の仲間さ」
 事も無げに返すアーサー。
 キャンプ地に降りてくるなり、アーサーから修練用の剣を借りたカイムは侍たちを挑発。侍たち全員とアーサーが見守る中、模擬戦を行うことになったのだ。
 先刻までの侍たちでは相手をしなかっただろう。だがミハエラの力で知らぬ間に士気を上げられた今、観客の侍たちはボルテージが最高潮に達していた! 下がるカイムを追って木剣を振り回す侍もまた同様!
(みんな盛り上がってるし、不安そうにしてもいない。これは……行けるか?)
 思考するアーサーをよそに、カイムは相手の袈裟斬りを短剣一本で吹き飛ばす! 流れるように続く後ろ回し蹴りが侍の横面を撃ち抜く寸前で止まり、代わりに風圧が襲った。硬直する侍に、カイムが蹴り足を戻さぬまま問う。
「……まだやるか?」
 若侍は手から木剣を取り落とし、両手と膝を地面についた。
「参りました……!」
 観戦していた侍たちから万雷の拍手。カイムは銀髪をかき上げ、
「ここの連中で一番強い奴は誰だ? ……あん? 一人で挑む気概がねぇなら、二、三人、纏めてでも構わないぜ。それとも、四人以上でかかってくるか? いいぜ、木剣で手合わせしてやる」
「では、それがしが」
 群衆の中から太い腕がすっと挙がった。道を開ける侍たちの間から進み出たのは、がっしりした体格の中年侍!
「お初にお目にかかる。それがし、名を五郎丸と申す。先の戦いぶり、見せてもらった。突如訪れ、力を貸すとはなんたる不遜と思いもした。しかし」
 五郎丸は自身の木剣をつかみ、カイムへ真っ直ぐ突き出した。
「その力、確かに本物! 故に手合わせ願いたい!」
 周囲の侍たちから煽るような声。
(言うなー。さっき不安にやられてたのとはエラい違いだぜ……。それとも、こっちが素なのかな)
 アーサーがカイムの方を見ると、彼は不敵な顔で見返してきた。
 人垣で形成された決闘場にゆっくりと入ってくる五郎丸。丸く広く切り取られた砂地の中央、カイムから畳四枚ほど離れた距離に立ち、足を肩幅に開く。
「一人で良いのか?」
「手出しは無用だ」
 向かい合った二人の周囲で、空気が強く張り詰める。数秒にらみ合ったのち、カイムと五郎丸は同時に剣を抜いて構えを取った! 五郎丸の草履が砂を踏み躙る。
「いざ……参るッ!」
 DASH! 飛び出した五郎丸が肩を狙って振り下ろした木剣を、カイムは半身になって回避し、鳩尾に短剣を突きに行く! 素早く下がった五郎丸は木剣の腹で刺突を防ぎ横薙ぎ一閃! これを裏拳で弾いたカイムは滑るように間合いを詰めて連撃を仕掛けた。
 素早い攻撃を木剣一本でさばく五郎丸。カイムの武器はアーサーが作ったものであり、実際刃を潰した練習用のものである。だがその攻撃は高威力! 五郎丸の木剣が一撃防ぐたびに軋みを上げる!
(命賭けでないにも関わらずこれほどの腕! やはり相当な手練れ! ならば……)
 カイムが腕をムチめいてしならせてのラッシュ! これを全て弾き切った五郎丸は剣を下段に構えて斬り上げる。わずかに身を反らして紙一重の回避を見せたカイムに、五郎丸は腰をひねって横薙ぎの攻撃!
「はあああああッ!」
 膂力と遠心力を込めた木剣を、しかしカイムは逆手に握った短剣一本で受け止めた。衝突の風圧で砂埃が舞う。剣を押し込めないと悟った五郎丸は反動を利用してバックジャンプ。水切石めいて跳ねながら距離を取った。
「やる気になれば出来るじゃねえか。それじゃあ、俺も……」
 カイムが空の左手を持ち上げた。手の平が紫紺に輝き、雷を放射! 超自然光景に五郎丸が息を呑む。
「ちょっとだけ、手の内見せてやる! 括目しな、紫雷の一撃!」
 カイムはほとばしる紫色の電光を右手の刃に叩きつけ、そのまま剣を振り下ろす! CABOOOM! 爆ぜた雷が四方八方へと拡散。うち一条が五郎丸のまなじりを掠めた。
「むうっ!?」
 五郎丸がたじろいだ。一拍遅れて吹き荒れた暴風に圧されて半歩後退。稲妻に面食らい、風に怯んだ彼のゼロ・インチ距離にカイムが踏み込んだ! 銀の髪に紫電が走る!
「何ッ……!? 一体いつの間に!」
 五郎丸は驚愕しつつも切っ先を下向けた木剣を突き下ろした。次の瞬間、五郎丸の時間は恐ろしく鈍化する。目を見開く彼が見たのは――――神速で木剣の腹を殴る刃! 稲妻が木剣の刀身を駆け、流された電圧に耐え切れず爆散!
(なんだ? それがしは今、何を見ている!?)
 飛び散る木くずを目で追う五郎丸。その喉笛にカイムの刃が突きつけられたところで、全ての時間が元に戻った。木剣だった粉塵がパラパラと砂に還っていく。
 水を打ったように静まるキャンプ地で、アーサーはひとつ頷いた。
「勝負あったな」
 挙手し、大声で宣言!
「一本! 勝者カイム!」
 直後、観客の侍たちがひと際大きく湧き立った。盛大な拍手と口笛。お祭りめいた騒ぎの中、五郎丸は呆けた顔で両膝を突いた。
「負け、た……今のは、一体……それがしは、狸にでも化かされたのか?」
「ま、なんだ。これが俺たちの力ってわけだ」
 一言告げ、カイムは侍
「他に相手して欲しい奴は! いねえのか!」
 その問いかけに、歓声はすぐに静まった。互いに顔を見合わせる侍たち。しかし表情に保身や不安が無い。誰が行くか、誰と行くかを考える顔。勝つために知恵を回す戦士の顔だ! カイムは、説得のチャンスを悟った。
「いねえなら、改めて言わせてもらう。俺の強さはわかってもらえただろ。今、近くに俺みたいなのが後、数人居る。今なら助っ人としてお買い得価格、安くしとくぜ? ……ああ、金はあんたらの大将からもらうんで、心配するな。ついでに、そこのアーサーも、数人いる俺みたいな奴の一人だ」
 カイムが指差した方向、アーサーに侍衆全員の視線が集まる。アーサーは一瞬動揺した。
(こ、このタイミングで振るのかよ……! いや、落ち着け?)
 しかし心を押さえ、静かに大きく息を吸い込む。
(元々ここには侍の士気を上げに来たんだ。今なら聞いてくれる。好機だ! よし、行くぜ……!)
 アーサーは咳払いをひとつすると、やや緊張しながらも口を開いた。
「……武田信玄と言えば、俺ですら知ってる名だたる名将。まあ気後れするのも分かるってのもんだが……そもそもまだ復活してねぇんだぜ? 今だからこそ、行けると家光公も判断したんだ。その判断は、信じられるぜ?」
「けどよ、あんちゃん」
 演説に口を挟んだのは、アーサーの傍に居た初老の侍。
「武田軍は化け物になってるんだろう? 勝てるのか?」
「勝てるさ。敵の本陣は、必ず俺たちが討ち取ってくる!」
「…………!」
 力強い一言とアーサーの表情を見、初老の侍の目に希望が灯った。他方、カイムは砂利が擦れる音に振り返る。五郎丸が、彼に向かって土下座していた。
「それがしから、どうかお頼み申す。我ら常日頃の鍛錬忘れず、家光公に忠義を誓った身の上なれど、この通り戦はあまりに未熟! 貴殿のような猛者が居てくれれば百人力だ。どうか、お力を!」
 五郎丸に合わせて、円を作った侍たちも土下座する。カイムは答えた。
「了解した」
 五郎丸が面を上げる。
「その依頼、便利屋Black Jackが引き受けた」
「ぶ、ぶら……?」
「……なんでもねえ。気にするな」
 ポカンとする侍から、カイムはやや恥ずかしそうに顔を背けた。アーサーは苦笑し、丘を見上げてサムズアップ。彼の視力は、そこで口角を持ち上げるミハエラを捉えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アゼリア・リーンフィールド
強敵を前に怖気づいてしまうなんて……分かりますけれど、それはよろしくありません!
未来ある者が過去に負けるわけないのですから。

きっとみなさま心に余裕が無いから弱気になってしまうんです!
心の余裕とはつまり自信。という事で兵士の方々とコミュニケーションを取って褒め倒しますよ。
立派な体躯、聡明な口ぶり、すばらしい武具などなど……褒めるところが無い方なんていらっしゃいません!
誰かの良い所を見つけるのは得意なんです。
とにかく、褒めることがたくさんあるような方々があんな過去の産物に負けるなんてことは無いはずです!
そういう方向性で説得していきましょう!

わたし・あなた・~さん・左側の名前


氏神・鹿糸
花を大切にする徳川家。手助けをしない理由が無いわね。
兵士たちの間を回ってみるわ。
随分と意気消沈しているわ。
どうしたの、貴方?

異形の軍勢は恐ろしいものね。
でも、私たちだって負けないわよ。
そうでしょう?

UCを発動。
地面を裂いて飛び出すのは巨大な沈丁花。「勝利」と「栄光」を与える綺麗な花よ。
大丈夫よ、素敵な貴方たち。
勝利の花だって、こんなに開花しているもの。

―前線の…随分と辛気臭い空気が気になるけれど。
私の花は枯れないわ。

(アドリブおまかせ。【私・貴方・相手の名前】)


ソラスティベル・グラスラン
【存在感】を放ち、【鼓舞】

―――【勇気】は、負けませんッ!!


それは忠義を志し、守るべきの傍に侍る者
守るべきは長!我らが家光公!退けば刃に露と消ゆ!
守るべきは営み!両親、友、愛しき人!臆せば永久の別れなり!

戦うことは恐ろしい、それは当然の事
ですが喪うことは、一人残されることはもっと恐ろしい
だからこそ、今が【勇気】を振り絞る時なのです!

今こそ誓うは不退転の意思!
『勇者』とは誰より前に立つ者!
これこそが、わたしの【勇者理論】!!

【怪力】の大斧で正面の大地を真っ二つ!

わたしの力、そして【勇気】は皆さんと共にあります
敵が誰であれ、最後に勝つのは【勇気】ある我らです!
さあ、いざ勇猛に参りましょうっ!!



 三方ヶ原に近い森の中。木の根元に座りこみ、木漏れ日を見上げる武士が居た。
 鎧をつけ、腰に刀を帯びたまま、手には筆と縦長の紙。一句読む際のアイテムを持ち、しかし彼は何を書くでもなく空を仰いでいた。
 この武士は実際、家光の呼びかけによって戦いに来た者の一人である。だが、忠義のためにここまで出向きながら、魑魅魍魎を相手する不安を胸に抱えた彼は――――戦場から、逃げ出したのだ。
「ふぅ……」
 細い嘆息を零し、彼は筆と紙を投げ捨てた。何も思いつかなかった。
 武士は刀の柄に手を置き、虚ろな顔で木の幹に背中を預ける。風がざわめき、小鳥が飛び立つ。潮騒じみた葉擦れの音に混じって、草を踏む足音が聞こえて来た。――――足音?
 バッと振り返った武士は、なびく青い長髪を見る。彼の背後、樹に寄り添うように佇んでいた氏神・鹿糸(花の妖怪・f00815)は、しっとりと微笑んで見せた。
「あら、こんなところに居たのね。随分と意気消沈しているわ。どうしたの、貴方?」
「あ、あんたは……?」
「貴方を探しに来たの。兵士さんたちが、突然いなくなったって心配してたから」
 鹿糸の言葉に武士は視線を泳がせる。彼は鹿糸に背を向け、押し殺した声で言った。
「俺は、自害してたと伝えてくれ」
「自害とは物騒ね。それはまた何故?」
 問いかける鹿糸。武士は力なく首を振った。
「俺は……逃げてきたんだ。年取った母親のことを思うと、戦うのが怖くなって……まだ孫の顔も見せてやれてねえのに」
 籠手を嵌めた拳が、地面を殴る。
「それに今更戻っていったって、駄目だ。敵前逃亡なんて侍の恥。腹を斬れって言われるに決まってる。でも死にたくないんだ! 化け物に殺されるのも嫌だ! どうせ無駄死にするぐらいなら、このまま逃げる! みんなそうするに決まってるんだ! 腹ん中じゃビビり上がって、俺みたいに逃げ出す機会をうかがってるんだよ!」
 自棄になって叫ぶ言葉。何もかも諦めた者の悲鳴に、鹿糸はただ優しく頷いた。
「仕方ないわ。異形の軍勢は恐ろしいものね。でも、私たちだって負けないわよ。そうでしょう?」
 それを聞いた武士は不意に立ち上がり、噛みつくように鹿糸へ叫んだ。
「なんでそんなこと言えるんだ! こっちは人間相手の戦だってしたことないのに!」
 突っかかられた鹿糸は、穏やかな表情を崩さない。彼女は武士の手を握って開かせ、何かを握らせた。
「戻りましょう。切腹はしないで済むようにしておいてあげる。その代わり……」
 鹿糸の手が武士から離れる。彼が自分の手の平を見下ろすと、白い花弁が一枚、手の平に乗っていた。鹿糸は続ける。
「私たちの言葉を聞いて。まずは、それだけで充分だから」
 武士は花弁を手に乗せたまま、言葉を失って立ち尽くした。



 侍衆の戦略拠点として作られた、簡易キャンプの青空食堂。
 古びたちゃぶ台をいくつか設置し、と汚れた座布団を落としただけの壁すらない場所で、アゼリア・リーンフィールド(空に爆ぜた星の花弁・f19275)は抜き身の刀をじっと見ていた。
「これは……立派な武器ですね」
「いやあハハハ。そりゃ、我が家に代々伝わる侍の刀だしな」
 アゼリアの対面に座った侍が笑う。端の欠けた茶碗を持ち上げ、中に入った緑茶を揺らす。茶柱は無かった。
「ま、立派なのは刀だけだがよ。ロクに振り回したこともねえし……宝の持ち腐れって奴さ」
「そんなことはありません」
 アゼリアは、刀身に映った自分自身を見下ろし告げた。
「この刀、しっかりお手入れされていますし、使い手の大事にしようという思いが伝わってきます。道具を大事にする人は、その分野に長じているもの。あなたの剣は、あなたに応えてくれますよ。きっと、この戦いで武勲をあげられると思います」
 大真面目な顔で褒められ、侍が豆鉄砲を食らった鳩のような顔をする。茶碗を置き、照れ臭そうに頬をかく。
「そ……そうかな?」
「そうですよ。この刀と、この刀を扱うあなたが、未来無き過去の産物に負けることはありません。自信を持ってください」
 アゼリアの真摯な視線が侍を釘づけにした。侍は表情を少し和らげた。
「そうか……そういうもんか。嬢ちゃんにそう言ってもらえると、なんか出来そうな気がしてくるよ。……ありがとうな」
 アゼリアはにこりと笑いかけ、その場を立った。別のちゃぶ台へ向かう彼女を見つめる侍の肩に、同僚と思しき武者が腕を回す。いつの間にか湧いて出た武者は、からかうような笑顔。
「おう、お前も褒められたのか? 褒めてもらっちゃったのか?」
「まあな。良い刀だって言われたよ」
「良かったじゃねえか。俺はガタイが良いって褒められた。これなら誰にも負けやしないってよ」
 侍の肩から外した腕を、武者は後ろに投げ出した。その目は別の侍と話すアゼリアに向けられている。
「健気なもんだよなぁ。あの娘、さっきからああやって一人一人に声かけてやがる。全員回るつもりなのかね?」
「回るんだろうよ。んで、励まして士気を上げるつもりなんだろ」
 侍は自分の刀を膝に乗せ、茶を飲み干す。器を古びた卓に叩きつけると、両方嫌な音を立てて軋んだ。
「なあ、勝てると思うか? 今回の戦。俺、初陣だからわからなくてよ」
「奇遇だな。俺も初陣だからわからねえ。けど、正直勝てる気はしねえ」
 侍が陰気に溜め息を吐いた。
「死ぬのかなァ、俺たち」
「たぶんな。最後に、別嬪さんから手放しに褒めてもらったのを勲章にすっか。直接死にに行けって言われるより遥かにマシだ」
「同感だぜ」
 乾いた声で笑い合う二人。他方、同席した侍と和やかな会話を展開していたアゼリアの隣に、日傘を差した鹿糸が来た。
「ただいま、アゼリア。順調かしら?」
「氏神さん。ええ、つつがなく」


「ソラスティベルがいないようだけど」
「ソラスティベルさんなら、今準備中です。……そろそろでしょうか」
 やおら席を離れるアゼリア。食堂エリアから出ていく彼女に続いて歩く鹿糸が辿り着いた先は、キャンプ地に作られた簡易の広場だ。端には訓練用と思しき木人や、指揮官が使うと思しきお立ち台が据えられている。そして、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は。木製お立ち台の足元でそわそわしていた。
「大丈夫大丈夫、ちゃんとわかってもらえます。手の平に人の字三回書いて飲み込んだし、一応集まってくれるって言ってたし……うん、わたしがしっかり励まさないと……」
 ぶつぶつ独り言を呟きながら、手の平に人の字を重ね書きするソラスティベル。アゼリアは彼女に近づき、呼びかける。
「ソラスティベルさん。首尾は如何ですか? ……ソラスティベルさん?」
「んっ!?」
 びくっと肩を震わせて、ソラスティベルが振り返った。そして、二人を見て胸をなでおろす。
「びっくりしたー……アゼリアさんと鹿糸さんじゃないですかー。驚かせないでくださいよー……」
「すみません。随分集中なさっていたのですね」
「もちろんですっ!」
 ソラスティベルは両拳をぐっと握った。
「人々に勇気を与えるのもまた勇者の役目! 私がしっかり鼓舞しないと!」
 その時、広場のあらゆる方向から侍たちが広場へと入り込んで来た。皆、表情にどこか捨て鉢な雰囲気をはらんでおり、生気は薄い。しかし彼らをみたソラスティベルは、俄然やる気を出した様子で
「それじゃあ、わたし行ってきます!」
 言うが早いか、ソラスティベルがお立ち台にジャンプで飛び乗る。侍たちは既に広場を埋め尽くしており、高台に立つソラスティベルを怪訝そうな顔で見ていた。
 ソラスティベルは息を整え、数度深呼吸。気持ちを落ち着け、覚悟を決めると、背負っていた大斧を引き抜き石突を台に打ちつけた。ZGAM! 衝撃音が広場に走り、侍たちを驚かせる。ソラスティベルは大きく空気を吸い込むと、声の限りシャウトした。
「勇気は、負けませんッ!」
 負けません! 負けません! 負けません……やまびこが響き、侍衆がソラスティベルに注目。彼女は彼らの視線を流し見、演説を始めた。
「侍。それは忠義を志し、守るべきの傍に侍る者。守るべきは長! 我らが家光公! 退けば刃に露と消ゆ! 守るべきは営み! 両親、友、愛しき人! 臆せば永久の別れなり!」
 ソラスティベルは蒼い片刃の斧を掲げた。刀身が陽光を跳ね返し、刃と同じ色の稲妻をまとう。
「戦うことは恐ろしい、それは当然の事。ですが喪うことは……一人残されることはもっと恐ろしい! だからこそ、今が勇気を振り絞る時なのです!」
 ZZZZZZZZT! 斧に宿った稲妻が励起!
「今こそ誓うは不退転の意思! 『勇者』とは誰より前に立つ者! 勇気で攻め! 気合で守り! 根性で進む! そうすればどんなものでも打ち倒せます! こんな風に――――――っ!」
 ソラスティベルが斧を両手で振りかぶり、全力で地面に振り下ろした! SMAAAAASH! 雷が大地を叩き割り、轟音と共に侍衆のど真ん中を突き抜ける。蒼い光が輝きを増し、侍たちの目を焼いた。
 激しい地鳴りと雷鳴が数秒つんざき、フェードアウト。あまりの光量に目を覆っていた侍たちは、恐る恐る 絶句した。
 広場の侍衆を二分する形で、巨大な谷が大口を開いていたからだ! 狼狽する侍たちを見て、鹿糸はソラスティベルの背中へ苦笑気味に問いかけた。
「……ソラスティベル? ちょっとやり過ぎじゃない?」
「ふふっ、景気の良い壊しっぷりです。兵士が引く一撃など、そう誰にでも出せるものではありません。お見事です」
「あの、アゼリアさんは褒めてるんですよね? それ……」
 ソラスティベルは小声で訝りつつも、咳払い。気を取り直して振り下ろした斧を再び、兵士たちに掲げて見せた。
「わたしたちの力、そして勇気は皆さんと共にあります! 敵が誰であれ、最後に勝つのは勇気ある我らです! さあ、いざ勇猛に参りましょうっ! いざ、鬨の声を! 勝利はわたしたちにありです!」
 侍衆は静まり返った。何を信じるべきか。そんな逡巡の表情を突き合わせる中、侍の一人がぎこちなく動いた。
 まだ若いその侍は意を決して刀を引き抜く。刃を掲げ、ためらいがちに雄叫びを上げた。
「う……ウオオオオオオオオオオオオオッ!」
 それを見た別の侍が、同じく刃を掲げて雄叫びを上げる。さらに四人、八人、十六人、三十二人! 侍たちの鬨の声がどんどん増えて重なっていき、大地を揺るがす咆哮と化した! 鹿糸は微笑みを浮かべると、右手の平をソラスティベルが作った亀裂へとかざす。
 直後、深い谷の暗闇の中から、巨大な白いドームが浮上した。それは白い花弁を無数に集めて構築された、ひとつの花だ。ドーム型の巨大花は、白い花吹雪を噴出。ひらひらと降り注ぐ花びらのひとつを手に取った鹿糸は、透き通った声音で告げた。
「大丈夫よ、素敵な貴方たち。勝利の花だって、こんなに開花しているもの。大輪の花、捧げましょう?」
 返答に、より一層大きな侍たちの声!
『ウオオオオオオオオオオオオオッ! ウオオオオオオオオオオオオオッ! ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
 幾度となく押し寄せる咆哮の波。アゼリアは感極まった様子で胸元に両手を当てた。
「とても……とても素晴らしい光景です。みなさまの勇猛な叫びが胸に沁みます。不安がっていた人々を、こうも勇敢に導けるとは……ソラスティベルさんにも、このような特技があったのですね」
「なんかわたし、駄目な子みたいに言われてません!?」
「?」
 アゼリアがきょとんと小首を傾げる。素で不思議そうな顔をする彼女にソラスティベルは肩を落とした。
「あ、普通に褒めてたんですね……」
「はい。わたし、誰かの良い所を見つけるのは得意なんです。氏神さんも、お見事でした。あれはジンチョウゲの花ですね。花言葉は、栄光・不滅・永遠でしたか」
 鹿糸は驚いた顔でアゼリアを見た。
「あら、知っているの?」
「花屋に務めていますから。……良いチョイスだと思います」
「ふふ。ありがとう、アゼリア」
 微笑で返しつつも、鹿糸の瞳はどこか遠くを眺めはじめる。浮かび上がるのは、少し離れた徳川軍最前線のイメージだ。
(前線の……随分と辛気臭い空気が気になるけれど。私の花は枯れないわ。彼らに咲いた勝利の花も、きっと)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

天道・あや
(あたし、あんた、だね、だよ、~的な?年上にはさん、同年代年下は呼び捨て)
いやー、夏休み何しようかなーって思ってたらまさかの事件…!?…よしっ!さよなら夏休み!平和の為に頑張らなきゃ!

【レガリアス】でお侍さん達の中を駆け巡りながら【サウンドウェポン】で【サウンド・オブ・パワー】を発動!【楽器演奏、歌唱】

お侍さん達!そんな弱気じゃ勝てる戦いも勝てなくなるよ!!大丈夫!勝てるよこの戦い!だってあたし達が…皆が手を取り合って力を合わせれば越えられない壁は…過去はないから!
皆、家族とか友達とか恋人とか守りたい者あるでしょ!失いたくないでしょ!無事でいてほしいでしょ!だから…勇気を持って一歩踏み出そう!


リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ大歓迎

士気を上げるといえば
バンドです!
それはとっても楽しそうな気持ち!(何でも形から入ろうとするドールはゴシック系の服を着て)
因みにバント名はゼピュロスです!

さぁさぁみなさん!ご一緒に!
ベースを弾きながら歌いまース!(楽しそうに周りの方のノリに合わせるように弾いていきいきます。腕前は普通)(一緒に居る動物達も一緒なって音楽会)

(最後はニコニコしながら喝采を)気合いいれますよー!
えいえいおー!な気持ち~♪
(一緒に来ている動物達(普段はアイテムとして模しているハムスターとかチンチラ)も一緒になって「おー!」と手を上げる)


メルノ・ネッケル
【WIZ】
演説で、皆の心に勇気を!

「コトダママイク」スイッチオン。声を良く響かせて……行くで、【鼓舞】の時間や!!

あんな化物と戦うって聞いて、及び腰になる気持ちは嫌という程分かる。

けれど、そんなの関係なく、大切なもんを守りたいって気持ちは皆の心の何処かにあるんやないか?
うちもそういう気持ちを抱えてここにおる。これでもエンパイアの出やからな。

……奴らは今を食い尽くす化物。
うちらが止めんと、うちが、皆が愛する人も国も奪われてまう。
誰かが立ち上がらんといかん!
その誰かってのは……今、ここにいる皆なんや!!

……声を上げろ!心に勇気の火を灯せ!
家光公の兵の力、奴らに見せてやろうやないかぁっ!!



 徳川軍、本陣にほど近い場所にて。
 オブリビオン武田軍との激突予定地から最も離れたここでは、指揮系統の設置や支援物資が集まっている。最前線に比べれば、非戦闘員の数は非常に多い。だが、ここにも万一攻め込まれた際の保険として、また増援や追撃のために多くの侍が配置されていた。
 後ろに配置されてる以上、前線よりは侍たちの不安は薄い。しかし、もし前線を突破されれば少ない手勢で武田軍を相手せねばならぬとあって、完全にはぬぐいされていないのも事実であった。
 そして、そんな場所のど真ん中に、見張り台じみた縦長の建築物がひとつ。紅白幕で包まれたそれの内部で、メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)は自分の恰好を見下ろした。
「……なんでこないな事になっとるん」
 彼女が来ているのは、ゴシック風のドレス衣装。炎のようなフリルがついたスカートに、黒地に橙のアクセントを加えた胴体部分。スカートの裾を落ち着かない様子で押さえるメルノを、一緒にいたリヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)がニコニコと眺める。
 彼女の服は、白地に青のラインを刻んだゴスロリドレスだ。
「心配無用デす! サイズもバッチリ!」
「そうやのうてね?」
 メルノの頬がやや引きつる。
「うち、『演説で、皆の心に勇気を!』って思ってたん。そこで他の猟兵と出くわして、たまたま一緒にやることになったのまではええ。けど、そこでなんで服剥かれてこないヒラヒラした格好させられなあかんのってこと」
 リヴェンティアは底抜けに明るい笑顔で言い切った。
「士気を上げるといえばバンドです! それはとっても楽しそうな気持ち!」
「いや、その理屈はおかしいやろ!」
 メルノがすかさず突っ込みを入れた。
「歌で士気上げよ言うんはわかるよ? 実際そういうのあるそうやし。けどなぁ、なんでうちが、こないフリフリの服来て歌わなあかんの!? 歌う予定あらへんし、百歩譲って歌うとしても普通の服でええやんけ!」
「えー……」
 リヴェンティアの顔にたちまち不服が現れる。彼女は首を傾げて言った。
「バンドなんでスから、衣装合わせた方が絶対イイです。よく似合ってるしそのまま着てて欲しい気持ち!」
 リヴェンティアの足元にたむろす小動物たちがこくこくと相槌を打った。そのハリネズミ、ハムスター、チンチラなどもまたゴスロリ衣装を着ており、ハリネズミに至ってはドラムスティックとサングラスを装備していた。メルノはげんなりと呟く。
「リヴェンティアちゃん、あれか。もしかして形から入るタイプか」
「はイ! 因みにバンド名はゼピュロスです!」
「そこまで決まっとんの!?」
 完全に巻き添えを食ったことを悟るメルノ。と、彼女の右サイドで見張り台を包む天幕が左右に開いた。首だけ入った天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)は、言い合う二人に声を投げる。
「二人とも、準備出来たー?」
「準備?」
 まばたいをするメルノ。あやは興奮した面持ちで、首を縦に振った。
「うん。そろそろ本番入るから、準備しといて。もうお客さん集まってるよ!」
「……え? は?」
 事情を呑み込めず、メルノが視線を泳がせる。リヴェンティアは元気よく跳ねた。
「おおーっ! いよいよ本番なンですネ! ちょっとドキドキする気持ち! お客さん、どれくらい居ますか?」
 リヴェンティアに問われ、あやはウィンクと共にVサイン。
「聞いて驚け? ……いっぱい!」
「おーっ!」
 ぱちぱちとリヴェンティアが拍手。メルノが頭痛を堪えるような顔で首を振るのには気づかず、あやは天幕の内側に入り込んだ。服装は二人と同じゴスロリドレス。
「ここでこうして会ったのも何かの縁だし、一緒に頑張ろうよ! あたしたちの歌で、みんなを元気づけないと!」
「や、うち歌う予定あらへんのやけど……ていうか何歌うかすら聞いとらんし」
「あ、これが今日歌ってもらう歌詞ね」
「周到やな……」
 メルノは歌詞カードを渋々受け取り、抱えた歌詞に目を通す。数秒としないうちに、彼女の視線があやに戻った。
「あのな、ひとつええか?」
「うん」
「うち、この歌知らんわ。やっぱ降りてええ?」
「ぶっつけで!」
「無理やろ!」
 メルノは狐耳の生えた頭を抱えた。同時に、簡素な着物を来た少女が天幕を覗き込んで声を投げ込む。
「全員集まりましたー!」
「はーい! よしっ。メルノさん、リヴェンティアさん、行こ行こ。応援バンドゼピュロスの初ステージだよ!」
「リハも無しでか!?」
 あやは叫ぶメルノの背中をずいずいと押し、見張り塔の骨組みに沿って螺旋状に設置された階段を登る。木製の段を昇りきると、そこは見張り塔の頂上。屋根は無く、壁も無い場所からは、地上にあつまった大勢の侍たちが一望できた。
 目を輝かせるあやとリヴェンティアを余所に、メルノは密かに腹をくくる。
(もうここまで来たら下がれへん。やるだけやったる! 行くで、鼓舞の時間や!)
 それぞれベースとギターを構えるリヴェンティアとあやの間を進み出たメルノが、見張り台の縁に立つ。腰にとりつけていたマイクをつかみ、彼女は大音声を響かせた。
『ええか侍! 近くば寄ってよーく聞けぇッ!』
 スピーカーもアンプリファーも無し。だが音の呪術によって増幅された声が、辺り一面に広がった。
『あんな化物と戦うって聞いて、及び腰になる気持ちは嫌という程分かる。けれど、そんなの関係なく、大切なもんを守りたいって気持ちは皆の心の何処かにあるんやないか? うちもそういう気持ちを抱えてここにおる。これでもエンパイアの出やからな』
 リヴェンティアが思いつきでベースを鳴らす。メルノはさらに言い募る。
『……奴らは今を食い尽くす化物。うちらが止めんと、うちが、皆が愛する人も国も奪われてまう。誰かが立ち上がらんといかん! その誰かってのは……今、ここにいる皆なんや! ……声を上げろ! 心に勇気の火を灯せ! 家光公の兵の力、奴らに見せてやろうやないかぁっ!』
 メルノが力強く拳を振り上げると同時、リヴェンティアのハリネズミがドラムを乱打し始めた。チンチラがDJブースでコアビートを刻み出し、三匹のハムスターがトランペットを吹き鳴らす。
 ロックンロールの前奏に合わせて、リヴェンティアとあやの二人が速弾きパフォーマンスを披露。スタンドマイクに向かって叫んだ。
「さぁさぁみなさん! ご一緒に! 歌いマスよー!」
「聞いて! あたしたちゼピュロスの歌っ! せーのっ!」
 慌てて歌詞カードを取り出すメルノ。そして三人は歌い始める。
『The previous come、The Deadmans reborn、You should face mighty relics!』
 呪法を込めた曲が野に響く。理屈も無く演奏に心ひかれた侍たちは、一人、また一人と手拍子を開始。それはやがて大きな快哉へと変わっていった!
『Maybe they will kill、Blood! Shed! Take your sword and It's to time to fight! Fight、win、and survive for yourself――――――!』
 あやはギターをかき鳴らしながら見張り塔を飛び降りた! 侍たちの頭を踏みつける寸前で虚空を蹴りジャンプ! 錐揉み回転しながら観衆たちの中に飛び込み、インラインスケートを駆って疾走し出した。フィギュアスケーターめいたトリプルアクセルを決め吠える。
「お侍さん達! そんな弱気じゃ勝てる戦いも勝てなくなるよ! 大丈夫! 勝てるよこの戦い! だってあたし達が……皆が手を取り合って力を合わせれば越えられない壁は……過去はないから!」
 着地と同時にバックジャンプで空へ飛翔。あやは拳を突き上げ、輝くような笑顔と共にシャウトした。
「皆、家族とか友達とか恋人とか守りたい者あるでしょ! 失いたくないでしょ! 無事でいてほしいでしょ! だから……勇気を持って一歩踏み出そう!」
 あやが空中で宙返りを決め、ギターの間奏に取りかかる。甲高い音色を素早く紡ぎ、両手指にムチを打つ。侍たちは歌詞の意味などわからないまま、しかし歌にこもった意志を受けて湧き上がった。
 やがて間奏が過ぎ、終曲。波が引くように音楽が薄れ、代わりに侍たちの拍手喝采が台頭してきた。満足げな表情を浮かべたリヴェンティアは自分のマイクに口を近づける。
「気合いいれますよー! えいえいおー! な気持ち~♪ せぇーのっ!」
 リヴェンティアが、バンドをしていた小動物が、そして聞き入っていた侍たちが、リヴェンティアの声に合わせて握り拳を振り上げた。
「えい、えい、おーっ!」
『えい、えい、おーっ!』
 一体となった侍たちを見下ろすメルノの隣にあやが着地。眩しいスマイルを浮かべ、ハイタッチを求めるあやに、メルノは苦笑交じりに手の平を挙げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●POW



サムライエンパイアに現着
躯体番号L-95、行動を開始します
ミッション、友軍の戦意高揚・士気向上を目的とした『火力演習の開催及び射撃武器の啓蒙』

・沢山のカカシとかを試射用ターゲットとして遠間に配置
・それら目掛け、コードの力で産んだ銃砲火器(火縄とか臼砲とか、現地の方々にも分かり易いやつ)を【一斉発射+範囲攻撃】でブッぱなしてジャンジャン当てて行く

――あの的は、典型的な鶴翼陣形を想定して配置したものです
敵軍の「個の練度」及び「量」がいかに優れていようと、この通り
距離と陣形と射撃兵装を適切に運用し得る精神状態さえあればなんら脅威ではありません

(一人称:当機
二人称:
名前の呼び方:フルネームで)



「サムライエンパイアに現着。躯体番号L-95、行動を開始します」
「ミッション、友軍の戦意高揚・士気向上を目的とした『火力演習の開催及び射撃武器の啓蒙』」



 三方ヶ原のあちこちに点在する侍たちのキャンプ。そのうち、突撃してくる敵を想定した防馬柵を張った拠点に、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)が訪れていた。
 位置はオブリビオン武田軍がやってくるであろう方向。深く掘った溝の前に立てられた三重柵越しに見えるのは、陣形を組んだカカシの軍隊。エルの後ろには、神妙な面持ちの侍たちが居並ぶ。
 物珍しそうな様子の彼らは、エルが提唱した戦略を気にして教えを乞うた。近接戦より負傷・死亡の確率は低く、且つ強大な敵をも打ち倒せる――――エルの誘い文句は、願ってもいない天声じみたものだった。
 エルは金属トゲの生えた円盤状パーツを背に、遠方のカカシを指差した。
「……あの的は、典型的な鶴翼陣形を想定して配置したものです。敵軍の『個の練度』及び『量』がいかに優れていようと、この通り」
 エルが腕を振った瞬間、彼女の目前に浮遊する火縄銃が横一列に大量出現! 侍たちが驚く間もなく、火縄銃は柵の隙間に銃口を差して火を噴いた。BLAMN! 同時砲火の直後、全てのカカシ頭が吹っ飛ぶ!
「おおっ!?」
 侍の誰かが面食らって声を挙げた。火縄銃はポルターガイストめいて柵から銃口を引き抜き、自動リロード。再度柵の隙間に入り込んで発砲! カカシの胸元が消し飛んだ。同様のことをもう一度。残ったカカシの腹から下を吹き飛ばさせたエルは、一度火縄銃の動きを止めた。
 体の周囲に無数の火縄銃を浮かべたまま、再び侍衆を振り返る。
「距離と陣形と射撃兵装を適切に運用し得る精神状態さえあればなんら脅威ではありません」
 侍たちは驚きと好奇の眼差しでカカシの刺さっていた棒をつぶさに観察した。カカシの体は吹き飛ばされ、残ったのは棒の足元に散らばる手首部分のみ。威力と飛距離に舌を巻いていた彼らに、エルは軽く腕を振る。自分の周りを覆う火縄銃を侍たちの手元に送ると、彼女は淡々と促した。
「どうぞ」
「ど、どうぞって……?」
 侍の一人が聞く。エルは指をパチンと鳴らした。カカシの棒が翡翠色の01を無数に吐き出し、新たな体を編み上げる。吹き飛ばされたカカシは全て、一分と経たないうちに元通りになっていた。
「実際に、自分の手で射撃を体験してください。命中率100%は不可能ですが、狙った的に安定して命中するのにそう時間はかかりません。平静を保ち、銃の優位を記憶してください。馬ではこの柵を突破できません。この技術を体得すれば、安全地帯からの一方的な攻撃が可能です」
 別の侍が、不安と期待の入り混じった顔で質問を投げた。
「……出来るのか? 俺たちにも? こんなの、触ったこと無いぞ……」
「剣術より難易度は下がります。構えて、狙って、引き金を引くだけです。やることは弓矢と一緒です」
 侍衆が、手元に現れた火縄銃に目を落とす。
 押し寄せる化け物の軍勢。生半可な剣技の腕前。死への恐怖。安全と優位を保った一斉攻撃。様々な要素が絡み合い、彼らにひとつの決意をさせた。
「なあお嬢さん。やってみて、いいか?」
「どうぞ」
 エルが爪先を浮遊させ、柵の前から身をどかす。カカシ頭を吹き飛ばした火縄銃が0と1に分解されて消滅すると、入れ替わりに侍たちが柵の隙間に火縄銃を差し込んだ。エルは真剣な侍たちの横顔を見つめ、平淡に宣言する。
「それでは、三段撃ちの演習を開始します。当機の指示に従い、行動してください」
 その後、キャンプ地では幾度も銃声が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロカジ・ミナイ
士気を上げるにはハッタリが不可欠
ちょいとお顔を上向きに、クイッと顎でも持ち上げてやりゃ
女も男もその気になるってもんさ

なんで名将家康殿が負けたか分かるかい?
一説にはね
……コレよ
そう、お薬

かの武田軍は
コレと違ってもっといやらしいのを使ったと思うのよ
反則だよねぇ?

けどさ、僕らだってこのままじゃあいけねぇ
いつまでも剣に鍬で挑むなんて馬鹿らしい
だからこの滅茶滅茶強くなるけど然程卑怯じゃない茶をお飲み

実際は元気前借り粉薬と元気前借り用元気の素の煎茶
ちょっとハイになる事もあったりなかったり
まぁまぁ、病は気から、元気も気から
この後しーっかり働いてもらわなきゃならないしね

頑張っておくれよ、ちっぽけなツワモノ共


戒道・蔵乃祐
◆鼓舞・礼儀作法で説得
後世に伝わる是非はどうであれ
武田もまた、彼等なりの大義のために戦い。戦国の世にその名を知らしめた名家

しかしオブリビオンへと堕した今
彼等の心中に在るは討ち死にの苦痛と怨恨。果たせなかった覇道への妄執。そして太平の世に仇為さんとする生者への純粋殺意だけです

徳川が敷いた太平の世に産まれ落ちた我等に、合戦に臨む心構えが無いのは致し方無きこと

領地から招聘された貴殿方に、生き死にの鉄火場に飛び込むことを強いる事も出来ない

だが、先祖代々武家として家名を継いできたのは民草。家人を護る事こそが武士の本懐!

護国のため。戦国の世の再来を目論む夷敵を討つために、
どうか、何卒お力を御貸しください!


メンカル・プルモーサ
んー……これは戦う前から負けている……どうにかしないと……

…まず、勝てる気にさせないとだね……
…【夜飛び唄うは虎鶫】により戦場周辺の情報を収集、世界知識を有効活用して…
…まずは士官クラスの侍と相談して戦術を練ったり有効な陣地の構築を始めよう…
…その上で、奴らが過去の存在である、事、我々は奴らが死んでる(骸の海に還っている)間にも経験の蓄積を積んでいることを指摘
…いまこそ家康公の果たせなかったリベンジを果たすとき…とけしかけよう…
…それに、相手が怪物ならこちらは猟兵たる我々が味方をしている…
蹂躙などさせてなるものか…と説くよ…


メイスン・ドットハック
【SPD】
徳川軍の勝率を上げるための努力のー
それじゃ、僕にしかできないことをやるとするかのー

ユーベルコード「井の中の蛙、大海を知らず」のノーキンくんの力も借りて、部隊長以上の連携を高めるための電脳伝達装置の作成に着手する
部隊同士の連携というのものをより効率よくするために、電脳技術の粋を尽くして電脳ウィンドウを駆使した情報通信技術を使う
悪用されてはいけないので、この戦いのみ使えるように耐久を定めておく
これを使ったテストも兼ねて、演習をして兵士・軍としての質を向上するように努めていく
これで少しは勝率が上がればよいがのー

アドリブ絡みOK



 徳川軍の最奥に設置された一際大きなテントは、将軍・士官クラスの会議場である。
 天幕の内側には大きな円卓が設置され、三方ヶ原全体を描き出した地図が張り出されている。徳川の陣地には、自軍の手勢を示す将棋の駒。それらを半円状に取り囲んだ五人の侍のうち、指令役と思しき男が対面に鋭い視線を突きつけた。
 そこには、侍と向き合って立つ四人の猟兵がたたずんでいた。士官の侍は険しい表情で問う。
「つまり、だ。奴らはなんらかの妖術によって蘇った屍であり、殺しても殺しても蘇る不死の存在であると。加えて、実践経験を積んで強くなりもする。そういうわけだな?」
「……ん、大体合ってる……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が頷く。オブリビオンについて解説した彼女の隣で、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は少し補足。
「ただし、何度蘇ると言っても、それには様々な条件があります。今回の戦の途中で、倒した敵が復活することはまずないでしょう」
 残る二人、メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)とロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)が肩をすくめて口を挟んだ。
「ま、普通の人間には倒すどころか、一太刀浴びせるのも苦労する手合いじゃがな。それに、そちらも既にわかっておるじゃろうが、兵士共の士気はどん底じゃ。ぶち回されるのがオチじゃろ」
「相手は、かつて徳川軍を破った武田信玄率いる軍隊。信玄本人がいなくても、オブリビオン化した手勢は今の徳川軍を蹂躙するのに充分過ぎる力を持ってるわけだ。しかも、ただでさえ地力で物凄い差をつけられてるのに、士気も低い。これじゃあ、万が一にも勝てやしない」
 ロカジに言われ、五人の侍が低く唸った。士気の低さは大きな問題であり、実のところ経験不足よりも由々しき自体。そして敵は条件付きとはいえ不死身になった武田軍! 実際絶望的な状況であった。
 顔を見合わせる五人の侍。どうするべきか考えあぐねる様子の彼らに、ロカジは紫煙をくゆらせながら尋ねる。
「時に、なんで名将家康殿が負けたか分かるかい? 一説にはね……コレよ」
 ロカジの背中で木箱が上下に開いた。彼は後ろ手に箱からビンを手に取り、戦略卓の上に置く。大ビンの中身は、黒く乾燥した草で一杯になっていた。士官の侍が訝しげに両目を細める。
「……なんだそれは。茶……いや、薬草か?」
「そう、お薬。これは単なる滋養強壮の薬草だけど、かの武田軍は、コレと違ってもっといやらしいのを使ったと思うのよ。反則だよねぇ?」
「何が言いたい」
 睨みつけてくる士官を、ロカジは笑って片手で制す。最後まで聞けというサイン。
「けどさ、僕らだってこのままじゃあいけねぇ。いつまでも剣に鍬で挑むなんて馬鹿らしい。だから……」
 ロカジはビンを押し出し、五人の方へ滑らせた。警戒の表情で半歩引く士官侍以外の四人。ロカジは煙管の灰を足元に落とす。
「この滅茶滅茶強くなるけど、然程卑怯じゃない茶をお飲み。兵士に配って飲ませれば、実力と戦意の問題は一発で解決するよ」
「ロカジさん、一体何を……」
 問いかけてくる蔵乃祐に、ロカジは人差し指を口元に添えた。メンカルとメイスンの視線も受けて、小声で教える。
「危ない薬なんて使ってないよ。元気前借り粉薬と、元気前借り用元気の素の煎茶さ。プラシーボ効果ってやつ。ちょっとハイになる事もあったりなかったりするけど」
 メイスンが肩を竦める。
「ずいぶん大法螺吹くのぉ。真に受けて誰か死んだらどないすんのじゃ」
「まぁまぁ、病は気から、元気も気から。この後しーっかり働いてもらわなきゃならないしね。どの道このまま戦わせたら、死んじゃうだろうしさ」
 うっすらと微笑するロカジに、メイスンは仕方ない奴めと言いたげな溜め息。猟兵四人の間に立ち込める妙な雰囲気に、士官侍の声が割り込んだ。
「それだけか?」
「うん?」
 ロカジたちの目が士官に戻る。ビンには触れようとせず、瞳に殺気をはらませる。
「貴殿らは我らに要らぬ不安を煽り、胡乱な薬を売りつけるために来たのかと聞いている。黙って話させておれば、荒唐無稽な話ばかり口にしおって。謀るのならば容赦はせんぞ……」
「お待ちください、士官!」
 蔵乃祐が声を上げ、拳を握って説得にかかった。
「既に伝令より、武田軍が人ならざる者であるとの報告は受けているはず。信じがたい話であるのは重々承知の上ですが、それを言えば武田軍が物の怪を従えて蘇り、戦を仕掛けて来たこの状況こそ荒唐無稽そのものです。我々は現場を混乱させるためではなく、徳川軍と共闘して武田軍と戦いに来たのです」
「……嘘つくためにわざわざ来るほど……暇じゃない……。……そんなことをするぐらいなら……もう武田軍に斬り込んでいる……」
 メンカルが眼鏡を押し上げ、表情を変えないまま蔵乃祐に続く。
「……でも、それじゃあ意味がない……徳川軍が……この世界に暮らす人たちが……剣を取らないと……」
「こっちとしても、君たちの軍が戦えないのは困るんだ。敵将には敵わないとしても、前座の軍勢ぐらいはどうにかしてほしい。僕らは侍たちより強くても、決して無敵というわけじゃない」
 さらに台詞を引き継ぐロカジ。士官は顎を引き、獣の如く唸り声を上げた。
 勝率、士気、練度、敵軍、怪物。渦巻く様々な問題に猟兵たちの言葉が混じり、判断しかねる。フェイス・トゥ・フェイスの対話の中で、士官は四人のシリアスな雰囲気を感じ取っていた。
(奴らは本気だ。子供すら信じぬようなおとぎ話を、大真面目に語っている)
 士官の目が、卓上のビンに向く。曰く、滅茶苦茶強くなる煎茶。
(単なる狂人と見るべきか? それとも……)
 重苦しい空気が天幕を包む。四人の視線を受けて沈黙思考する士官を見たメイスンは、足元に置いた大きな麻袋を拾って卓上に投げた。どすんと着地した袋の口がほどけて傾き、腕時計めいた機械をいくつも零す。
 思考を乱された士官が怪訝そうにメイスンをにらんだ。
「……今度は何だ」
「部隊同士の連携というのものをより効率よくするために、僕が作った伝達装置……そちら風に言うなら、カラクリじゃ。それさえあれば、戦場のどこにおっても時間差無しで自分の声を伝えられる」
「……何?」
 士官は片眉を上げた。メイスンは話をまとめるべく攻めにかかる。
「信じられないなら、煎茶ともども兵士に配って演習すればええ。使い方は教えちゃる。それを上手く使いこなせば、軍としての勝率も……まぁ、多少は上がるじゃろ。百聞は一見に如かずと言うし、ここでグダグダ考えるより建設的なはずじゃ。開戦まで時間も無い」
 士官の表情が歪む。そんな彼に対し、蔵乃祐は組んでいた両腕をほどき、背筋を伸ばした。
「後世に伝わる是非はどうであれ、武田もまた、彼等なりの大義のために戦い。戦国の世にその名を知らしめた名家。しかしオブリビオンへと堕した今、彼等の心中に在るは討ち死にの苦痛と怨恨。果たせなかった覇道への妄執。そして太平の世に仇為さんとする生者への純粋殺意だけです。徳川が敷いた太平の世に産まれ落ちた我等に、合戦に臨む心構えが無いのは致し方無きこと。領地から招聘された貴殿方に、生き死にの鉄火場に飛び込むことを強いる事も出来ない」
 蔵乃祐が両腕を握り込む。
「だが、先祖代々武家として家名を継いできたのは民草。家人を護る事こそが武士の本懐! 護国のため。戦国の世の再来を目論む夷敵を討つために、どうか、何卒お力を御貸しください!」
 蔵乃祐が勢いよく頭を頭を下げた。お辞儀の風圧が五人の侍に吹きつける。
 困難な思考の極みに達した士官は歯を剥き出し、控えた四人も互いの顔を見合わせた。その時、天幕の外から微かなどよめきと猛禽の声! メンカルが入り口を見返った瞬間、一羽の機械鳥が中に飛び込んで来た。
 掲げられたメンカルの腕に止まった機械の鳥は両目を光らせ、戦略卓の地図を照らす。たちまち表示させる立体映像に、四人の側近がどよめいた。
「……これは、私がたった今集めて来た情報……これを使えば、戦術を練ったり有効な陣地の構築が出来る……。……オブリビオンは強力だけど、戦い方次第でなんとか出来るかもしれない……」
 メンカルは鳥を腕に止まらせたまま、士官を見た。眠たげな目に灯る、鋭い切っ先じみたシリアスの光。
「……相手が怪物ならこちらは猟兵たる我々が味方をしている……蹂躙なんてさせない……」
 平淡ながらも力強い声を、メイスンとロカジがさらに後押し。
「連中の将はこちらで請け負う。あれは兵士がどうとか言う次元におらん。人の形をした天災が歩いているようなものじゃ。千人の兵士が向かったところで、全員無駄死にするだけじゃ」
「別に、手柄を独り占めしようってんじゃないさ。少なくとも、僕たちの力があれば、武田軍は追い払えるだろうって話。信玄公の復活は、こっちとしてもよろしくないんだ」
 頭を下げたまま、蔵乃祐は言葉を尽くす。
「いきなり現れ、信用しろと言うのは難しいのかもしれません。しかし、今大事なのは、甲斐の虎と恐れられた存在がこの世に邪悪なものとして再生し、世界を蹂躙するかもしれないということ。そして、我々がそれを止めに来たということです」
 沈黙。
 ついに静まった天幕は、士官を中心に静まった。
 今や彼の脳裏には天秤のイメージが浮き上がり、大きく右に左に揺れる。何を信じ、どうするべきか? 考えあぐね、思考を巡らし――――やがて彼の天秤は、決定的に傾いた。
「……わかった。そちらの要求を呑もう。おい」
 士官が側近の一人に顎で示す。彼はロカジが滑らせたビンを拾った。
「薬師。その茶を煎じて全員に配れ。虚言であったと言うならば、その首を落とす」
「大丈夫だって。それじゃ、お先」
 三人の仲間にひらひら手を振り、ロカジはビンを持って天幕を駆け出す側近に続いた。頬に一筋、冷や汗が垂れる。彼は首を押さえて小さく呟く。
「元気にならないと首持ってかれるか。頑張っておくれよ、ちっぽけなツワモノ共」
 やがて天幕からロカジが出ていく。次に士官は、メイスンを見た。二人目の側近がこぼれた機械を集め、手にした麻袋に戻す。
「青い娘。貴殿には足軽一個小隊と士官を預け、カラクリを使った演習をしてもらう。まずは試験だ。せいぜいその玩具が役に立つと示すがいい」
「結局使い捨てじゃし、使い手次第になるんじゃがな。これで少しは勝率が上がればよいがのー」
「否が応でも上げてもらう。そして鳥を侍らせた娘! ここで我が軍の参謀と戦術を構築せよ。一部の隙も無い、無欠の策をな。貴様らの言葉、断じて撤回なぞさせんぞ!」
 メンカルが表情を変えずにこくんと頷く。士官の目が蔵乃祐に移った。
「残る貴様は、兵士に説法せよ。見たところ坊主の類であろう。士気を高めよ」
「鼓舞せよということであれば、喜んで」
 蔵乃祐は一礼し、メイスンと共に天幕を出る。士官は彼らの後に続く側近の三人を見送ると、メンカルと一対一で向き合った。
「では軍議を始めるぞ。屍風情に、徳川の世を乱されては敵わんからな」
「……うん……いまこそ家康公の果たせなかったリベンジを果たすとき……がんばろう……」
 地図に投影されたホログラムを見ながら、メンカルは眼鏡のレンズを光らせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『残滓』

POW   :    神気のニゴリ
【怨念】【悔恨】【後悔】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD   :    ミソギの火
【視線】を向けた対象に、【地面を裂いて飛びだす火柱】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ケガレ乱歩
【分身】の霊を召喚する。これは【瘴気】や【毒】で攻撃する能力を持つ。
👑7
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お知らせ

 第二章を開始します。プレイング受付は、本日(7月27日)8:31~7月28日8:29までです。
 皆様のご参加をお待ちしております。
天道・あや
よしっ!お侍さん達のやる気MAX!になったしこれなら武田軍にも勝てる!…って言いたい所だけど、流石にちょ…直属護衛団とかはお侍さん達じゃキツいよね…よし!右よし!左よし!あたしよし!幽霊とかお化けは正直相手にしたくないけど……いくぞー!出陣!!


POW
まずはお侍さん達の方に行かないように【挑発、存在感、おびき寄せ】!そこの幽霊達!あたしの相手してよね!
そして【レガリアス】で【ダッシュ】しながら相手の攻撃を避けながら相手の動きを【見切り】相手の隙を見つけて【あたしの歌と想い!世界に響け!!】(属性攻撃(聖)歌唱、楽器演奏)

幽霊は!オブリビオンは!…過去が今を生きて未来へ進む人達の邪魔をさせない!


アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
【POW】判定

士気を高めたとは言え、流石に亡霊相手じゃ戦いようがないよな
ま、こいつらの相手は俺らに任せな!

で、敵さんは恨み辛みを背負ってスーパー怨念タイムか。こいつは除霊するしかないな!
【シューティングギャラクシィ】フォームに変身し、レイシューター片手に【範囲攻撃】を展開。【レイシューター・フルバースト】をぶちかましてダイナミック除霊といこうじゃないか。
どんな暗い思いを抱えているかは知らねぇが…今を生きてる奴らを巻き込もうなんざ、お天道様はもちろん…何より俺が許さねぇぜ!!


ミハエラ・ジェシンスカ
アレンジ連携可
では悪いが先駈けの誉れは頂こう

【念動加速】を使い友軍に先んじて敵陣へと突入
セイバー2刀流とドローン2基
必要なら2本の隠し腕も展開し可能な限り多くの敵を攻撃する

心霊の類いには馴染みがないがな
要するに負の精神活動に拠って立つ存在である事は間違いないのだろう?
ならば【催眠術】の応用で干渉できる筈だ
尤も先程よりも荒っぽいやり方になるがな
セイバーを形作るサイキックエナジーにフォースマインドトリックを加え
敵の肉体(?)諸ともそこに宿る怨念をも斬り捨てる光の剣を形成する

私だけで全ての敵を殺し切れる必要はない
こうして宿る怨念を斬る事で敵の強化を阻害できれば
後続の兵達が幾分か戦いやすくなるだろう?


メルノ・ネッケル
"残滓"……過去から今を食い潰しに来る、オブリビオンに相応しい連中やね。

悪いが、「甲斐の虎」こと武田信玄……アンタらの総大将に蘇ってもらうんは困る。

行くで、戦の始まりや。
……まずは、アンタらから成仏してもらおか!

視線を向けた所から火柱を立てる……面倒な技やけど、向けてる所から立ちっぱなしな訳やない。
必ずタイムラグがあるはずや……そこを突く!

「そないな風に見つめられても、アプローチにゃ答えてやれへんで?」
熱視線へのお返しは熱線や、『クイックドロウ』!
タッチの差での【先制攻撃】、されどこの差は大きいで……火柱が出るより速く、その体を撃ち抜く!
数は多いが、おひとり様ずつ確実に仕留めてこか!


戒道・蔵乃祐
我等が幕府の命運。この一戦に在り
国家転覆を目論む逆賊武田を討つ大義は我等にある!出陣!!

◆戦闘
合戦場では前線に立ち、気炎を揚げて武士達を鼓舞
オーラ防御を拡大化した武器受けで守りを固め。一般人武士団を狙った分身からの攻撃をかばう

ケガレ乱歩の瘴気を毒・激痛・呪詛耐性で凌ぎ、範囲攻撃をなぎ払うカウンター
破魔の力を込めた属性攻撃。『火界呪』の浄炎で残滓を纏めて焼き祓います

◆優しさ
魔王信長の邪気に囚われ歪められたオブリビオン達

死者の眠りを妨げられ、望まぬ生者への渇望を植え付けられた尊厳無き亡者として使い潰される
あまりにも悲しすぎる

苦痛無く送り還す事は出来ない
それでも。許されるなら念仏を唱えさせてください


カイム・クローバー
一人称:俺 二人称:あんた 三人称:あいつ 名前:名前で呼び捨て

出陣だ。必要なら先頭に出るぜ。狙いは派手な銃撃で兵士の士気上げだ。馬?乗った事ねぇな。

【POW】
乗せて貰ってるなら集団戦に入る前にそいつには撤退して貰うぜ。こっからは…俺達の仕事だ。さぁ、戦場で踊るとするか。
二丁銃を用いて紫雷を纏った銀の弾丸【属性攻撃】と火力を高める為の【一斉発射】にUCを交えて【範囲攻撃】。ダンスのアンコールは必要かい?安心しな、客は待たせねぇよ。ノーハンド【早業】リロード。同じ組み合わせを【二回攻撃】。
幽霊の強化を【見切り】、【残像】で足を止めずに躱す。
まだまだこれから…って悪ぃ、付いて来れねぇか(肩竦め)


須藤・莉亜
「戦だーって、張り切って来たら、敵さん幽霊じゃん…。」
血は吸えるのかな?

UCでスピードと反応速度を上げて戦う。
悪魔の見えざる手にはLadyで攻撃してもらいつつ、僕は敵さんに突っ込んで大鎌と奇剣で攻撃して行く。
一応敵さんに噛み付いて【吸血】も試しとこうかな。

敵さんの攻撃は【第六感】と強化された反応速度を駆使した【見切り】で回避と、【武器受け】で防御。

「煙草吸いたくなって来た。ちとたんま…は無しだよね。」

【僕・きみ・年上の相手のみ名前+さん、他は名前呼び捨て】


メンカル・プルモーサ
…戦術は出来る限り構築した…私も切り込むからそろそろ戦場に向かうよ…そちらも武運を…次は戦勝会で…(参謀や士官に挨拶して箒に乗り戦場へ)

…【愚者の黄金】により大柄な武士の像を250体召喚、【浮かびて消える生命の残滓】により生命を与える…大半は兵士として筋力増強、少数は指令役として知力増強しておく…
…霊体だから武器は【空より降りたる静謐の魔剣】により作り出された大ぶりの太刀を持たせるよ…

…さて、黄金武士達には積極的に敵を引きつけて貰って…
私は上空から猟兵への戦況の連絡と妨害に専念するか……
…【世界鎮める妙なる調べ】で残滓達を眠りに落として連係を崩していくよ…敵が他に流れないようにも注意しないと…


アゼリア・リーンフィールド
武士みなさまのやる気が戻ってきた様子を見ていたら、わたしもなんだか元気が湧いてきました!
うふふ、やりますよ!

瘴気も毒もお花の敵です。幽霊もわたしあまり好きではありません。
なので近づかれる前にユーベルコードで捕まえてギュッと締め上げてしまいましょう!
高速詠唱は得意ですからぴっぴっぴと素早く杖を向けて、なるべくたくさんやっつけたいですね。

もし接近を許してしまったり、もしくは困っている方がいたら、持っているお花のバスケットでばこーん!です!
狙うなら顎でしょうか。目くらましくらいにはなりますよね!
わたしはただのか弱い神ではないのです!!


ロカジ・ミナイ
ヒッ、お化けかい!?
やだやだ、ジトジトしてやだやだ、
怨念なんておっかないねぇ!
よくもまぁこんなに趣味の悪い兵隊を用意したもんだよ、全く

出でよオロチ
大好物の幽霊だよ
好物が違う?黙れクソ蛇共
残滓が漏らすもの諸共全部食っちまいな
残したらしばらく飯は抜きだからな

僕は後方支援、こそこそ様子を窺う役だよ
指の隙間から見たくないものを覗き見て
寄ってきたら塩をぶっかけてやる
南無南無!
もっと寄ってきたら、長い妖刀で一刀両断
御冥福をお祈りするからこっち来るな!

…というのはちょっとした演出で
僕がお化けを怖がる訳ないでしょう?僕26よ?
……はぁ、みんな消えてホッとした



 BOOOOOOOOOOOOO―――――――――! BOOOOOOOOOOOOO―――――――――! BOOOOOOOOOOOOO―――――――――!
 徳川軍の陣地に、角笛の音が立て続けに響き始める。連鎖的に天突く低音。陣の全域に沁み渡るそれは軍の最奥、士官が詰める天幕の内側にまで届いていた。
 座っていた士官が戦略卓を殴って立つ。
「攻めて来たか……武田軍の物の怪共め!」
 髭面に悪鬼羅刹めいた凶相。士官は傍らにかけた参謀に片手を向けた。
「この策を急いで全軍に伝えろ! あの青肌娘のカラクリは使えるのであろうな!?」
「はっ! 全て問題なく動き、全駐屯地に配布したと先ほど!」
「ならばとっとと指令を飛ばせ! 化け物に先んじられる前に!」
「ははッ!」
 腕時計型通信機を苦心して起動し、参謀は威圧するように声を張る。一方士官の対面、同じく戦略卓に腰掛けていたメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)はゆっくりと立ち上がった。
「……戦術は出来る限り構築した……私も切り込むからそろそろ戦場に向かうよ……そちらも武運を……次は戦勝会で……」
「ふん。状況が状況だ、貴様らの如き胡乱な者でも信じざるを得ん」
 無表情で見つめてくるメンカルに士官は恐るべき怒声を繰り出す!
「せいぜい化け物狩りに勤しめと他の者共にも伝えろ! もし敵前逃亡でもしたが最後、我らが軍の刃は貴様らの首に向くと知れ!」
 士官に背を向けるメンカルの右足真横に、青白い小型魔法陣が浮かぶ。メンカルは中央から飛び出した銀色の箒をつかんで横向きに乗り、ジェット機じみて天幕を脱出! 一瞬で空に達すると、腕時計型の通信機に呼びかけた。
「……出る……」
『承知しました。ロカジさんたちは既に向かっています』
 通信機越しに報告した戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、居並ぶ兵士たちに振り返った。この侍たちは蔵乃祐の鼓舞を受けていた者たちだ。蔵乃祐が居るのは前線。即ち、合戦の際真っ先にぶつかる面々である。
 緊張、不安、そして覚悟の混ざった表情をする彼らに対し、蔵乃祐は腹の底から声を発する。
「我等が幕府の命運。この一戦に在り! 国家転覆を目論む逆賊武田を討つ大義は我等にある!」
 並の人より大きな拳を握りしめ、勢いよく天に突き上げた。 
「出陣ッ!」
『ウオオオオオオオオオオオオオッ!』
 侍たちの鬨の声が三方ヶ原の大地を揺るがす。
 一方、前線から大きく離れた最前線! 武田軍側の空から押し寄せる無数の影にスコープが合う。ズームアップしてみれば、それは白い装束と頭巾を被った女の亡霊。ALAS! オブリビオン化した幽霊の大群が青空を覆い、大津波じみて押し寄せてきたのだ!
 スコープを顔から離し、白銀の狙撃銃を下ろした須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は、走りながら濃い隈が浮いた目で半眼を作った。
「戦だーって、張り切って来たら、敵さん幽霊じゃん……」
「ヒッ、お化けかい!?」
 莉亜と並走するロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)が上擦った声を上げる。ロカジは両二の腕を擦つつ、嫌悪の表情で迫りくる亡霊の軍勢を見た。
「やだやだ、ジトジトしてやだやだ、怨念なんておっかないねぇ! よくもまぁこんなに趣味の悪い兵隊を用意したもんだよ、全く!」
 総毛立たせて震える彼を余所に、莉亜は顎に手を据えた。オブリビオンゴーストたちの頭巾から流れる青い髪や、白紙めいた肌を遠くに何やら考え込む様子。やがて彼は呟いた。
「……血は吸えるのかな?」
「あ、そっち!?」
 驚くロカジを、莉亜が見る。
「吸えると思う?」
「思わないね! っていうか食べようとしないの! あんなの不味いに決まってるから!」
「……ふーん」
 莉亜の目が迫りくるゴースト軍団に戻った。その時、二人のやや後ろを走りつつ、やりとりを微笑ましく見守っていたアゼリア・リーンフィールド(空に爆ぜた星の花弁・f19275)の左手首から電子音! アゼリアは腕時計型通信機を起動した。
「はい、アゼリアです」
『あー繋がった! 良かった! 俺だ、アーサー! 今どこにいる?』
「もうじき敵陣に突入するところですが、どうかしましたか?」
『そっちにさ、俺たちと一緒になった奴が一人行かなかったか? 先に突っ込んじまって!』
 直後、三人の頭上を鮮血めいて赤い光が一条突き抜ける。ゴーストが埋め尽くす空へ飛翔していく未確認飛行物体を眺め、アゼリアは通信機に目を落とした。
「もしもし。その人、真っ赤に光って空飛びますか?」
『あ、それだ。俺たちも向かってるけど、もうちょっと時間かかりそうでさ。悪いけど、援護してやってくれ!』
「わかりました。それでは、お待ちしております」
 通話を切ったアゼリアに、莉亜が疾駆しつつ肩越しに振り向く。無言の問いかけに、アゼリアは屈託の無い微笑みを返した。
「どうやらお一人、突撃なさったお方がいるようです。援護をお願いされました」
「はあ!?」
 ロカジが再度驚愕してアゼリアを見た。
「突撃って何、あれに? 真っ正面から!?」
「はい。先ほど空に見えた赤い光がその人のようです」
 ロカジは絶句し、先ほどより遥かに近くなってきた幽霊たちを見やった。巨大な白い雲に見えるそれへ一直線に飛ぶ真紅の閃光! アゼリアが両手をきゅっと握り込み、弾んだ声を上げる。
「機運のおかげでしょうか。他のみなさまも張り切ってらっしゃるようですね。武士みなさまのやる気が戻ってきた様子を見ていたら、わたしもなんだか元気が湧いてきました! うふふ、やりますよ!」
「そろいもそろって怖いもの知らずか……頭痛がしてきたよ、僕は」
 重い溜め息を吐きつつ、二人とそろって加速するロカジ。そして彼らより遥か先、赤い流星となって空を突き抜けるミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は、一瞬背後を見返った。
 そこに徳川の軍は無く、涼やかな風が抜ける平原が広がる。ミハエラは前方、ぐんぐん近づいてくるオブリビオンゴースト『残滓』の軍勢に目を向けた。
「どうやら私が一番手のようだな。では悪いが、先駈けの誉れは頂こう」
 ミハエラの両肩、肩甲骨付近から新たな機械腕が二本出現! 無骨な四本腕の手に一本ずつ握った赤い光剣に、赤黒い炎じみて湧き立つエナジーをまとわせた四刀流スタイル。さらに加速するミハエラの聴覚センサーが残滓たちの声を捉えた。
「あらあら」
「うふふふふふ」
「カラクリ仕掛けの生者なんて珍しいわね」
「でも好きよ、貴方」
「生きる意志が強いもの」
「だから殺してあげるわ」
「うふふふふふ!」
 口々に言葉を紡いだ残滓の最前線が、懐から小刀を取り出して腹に突き刺す! 引き裂かれた傷から吹き出した漆黒の瘴気を身にまとい、空を埋める白が一瞬で黒く染め上げられた。残滓たちはミハエラめがけて急加速! 黒い暴風じみて襲い掛かった!
「はッ!」
 高速の四刀流ラッシュが残滓を次々斬り殺して行く! 奔流の中で輝く真紅の斬撃。背後に回った残滓の群れを竜巻じみた回転斬りで首狩り殺し、垂直上昇! 甲高いソニックブームのサウンドを撒き散らして天突く彼女の真横、間欠泉めいて空に吹き上がった残滓たちが遥か上空で方向転換。ミハエラめがけて降り注ぐ!
「うふふふふふ!」
「いらっしゃい!」
「恨みと悔いを見せて頂戴!」
 真上から突っ込んで来る残滓たち! ミハエラは上の両腕に握った光剣の柄と柄を連結。長い両刃を持つ一本の剣に変えて回転させた。
「生憎だが、貴様らにくれてやるものなど何一つない。道を開けろ、亡者共ッ!」
 両刃剣投擲! ホイールソーの如き高速回転刃が直下降してくる残滓の群れに突っ込み斬り抜き、瘴気と白装束を引き裂きながら天空に抜けた。死した残滓が変じた霧をぶち抜いたミハエラは、滞空する両刃剣に追い付いてキャッチし連結解除! 今度は真下から襲い来る残滓たちを見下ろす。
「怨念もろとも斬り捨てる!」
 今度は縦回転しながら垂直落下! 対する残滓たちは両手を振り上げ、どす黒い液体を噴火じみて噴き出した。命食らう毒の血が命中する寸前で、ミハエラが消滅。残滓を毒血の噴水ごと縦一閃する赤光が走る! 一瞬で地に達したミハエラの足元で地面が陥没!
「消えろ」
 呟いた瞬間、SLASH! 残滓の群れと血の噴水が真っ二つになった! だがすぐさま立ち上がる彼女の取り囲む新たな残滓たち。亡霊たちは大勢で旋回して瘴気の輪を作り出し、声をそろえて歌い出した。
『かーごーめ、かーごーめ』
『かーごのなーかのとーりーや』
『いーついーつでーあーう』
「遊びに付き合っている暇は無い」
 ミハエラは四本腕を頭上に掲げ、光剣を束ねて合体せしめる。赤い刃がひとつになり、極太の光線と化して天を突いた!
「一気に片をつけさせてもらう対艦魔剣、イグニッション!」
 ZGYUUUUUUUM! 空気をつんざくノイズと共に巨大な剣を振りかぶるミハエラ。直後、残滓の一体が彼女の真後ろから抱きつき両手でバイザーの視界を塞ぐ。ぐっと後ろに引かれかけてのけ反るミハエラ!
(しまった……!)
 即座に光剣を分解したミハエラは上両腕の刃で背中に取りついた残滓の頭蓋を貫通殺! 死霊の手から解放された彼女の視界一杯に、ワン・インチ距離まで迫った複数の残滓が映り込む!
「死にましょう」
「死になさい」
「殺してあげるわ」
「殺します」
 総勢八体、怨念・悔恨・後悔の黒霧をまとった刃がミハエラの胴を穿つべく迫る! 下両腕の光剣を交叉して防御態勢を取るも防ぎきれない数だ。ミハエラが死の未来を見た、その時である!
「ちょぉ――――――っと待ったぁ―――――――!」
 ミハエラ刺殺に走った残滓たちの真後ろで跳躍する影! 聖なる光を身にまとった天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)が、ミハエルを囲む残滓たちの視線を集めた。
(よしっ! お侍さん達のやる気MAX! になったしこれなら武田軍にも勝てる! ……って言いたい所だけど)
 あやは地上と空に視線を巡らせる。ミハエルだけではない。戦場と化した周囲一帯に蔓延る亡霊部隊! 小刀を抜き、瘴気をまとった数百数千に昇る圧倒的な物量差に冷や汗を流した。
(流石にちょ……直属護衛団とかはお侍さん達じゃキツいよね……よし!)
「そこの幽霊達! あたしの相手してよねっ!」
 臆病風を振り払った啖呵に、残滓の群れが不気味な微笑み!
「あらら?」
「あらあら」
「もっと眩しい子が来たわ」
「輝かしいわね」
「殺したいぐらい!」
「殺しましょう!」
 インラインスケートを履いた足で着地したあやに怒涛じみて襲い掛かる残滓の大群! あやは生唾を呑み込み、自らの両頬を張った。
「右よし! 左よし! あたしよし! 幽霊とかお化けは正直相手にしたくないけど……いくぞー! 出陣っ!」
 両膝を曲げ、あやはロケットスタートを決めた。スピードスケーターめいて疾走し、ジグザグダッシュで残滓の間を駆け抜ける。喉笛めがけた刺突を側転回避し、ジャンプ! 虚空を蹴っての三角跳びを繰り返し、飛び交う瘴気や毒血の奔流を紙一重でかわして空へ空へと上昇していく。だが!
「うふふふふふ!」
「つかまえた」
「待ってたわ」
 彼女の真上に傘の如く陣取る残滓たち! 毒血に濡れた刃を手に手に振りかぶる彼女たちとあやの間にミハエルが割り込んだ。四本腕を束ねた巨大光剣を大上段に振り上げる!
「対艦魔剣リブート」
 バイザー越しに輝く真紅の瞳。次の瞬間、振り下ろされた巨大剣が残滓の群れど真ん中をぶった斬った! さらにX字に振るって横薙ぎ一閃! あやを待ち伏せた残滓を全滅させ、
「これで借りは返したぞ。やれッ!」
「わかったっ!」
 あやは背負ったギターの身体の前に回して構え、閃光をまとってギターピックを大きく掲げた。
「幽霊は! オブリビオンは! ……過去が今を生きて未来へ進む人達の邪魔をさせない! 響け、あたしの歌と想い! おりゃああああああッ!」
 ピックを叩きつけるようにギターかき鳴らす! GYUAAAAAAAAN! 星めいた光を共に放たれた爆音の衝撃波が、上昇するあやを追って来た残滓を呑み込みながら地面に激突。爆発し平原を放射状に駆け抜けた! 余波を食らって消し飛ばされていく残滓の断末魔が響く。
「ぃよっし! クリーンヒット!」
 あやがガッツポーズを取り、バク宙を繰り返して着地した瞬間、彼女の足元を中心に青白い光の円が広がった。円の外側には、闇より黒い瘴気をまとった残滓たち! 白装束に光る赤い血の紋様を浮かべた亡霊たちは、いよいよ生気の抜けた小声で歌う。
「あ、やばっ……」
 瞬時にバックダッシュしかけたあやのローラースケート車輪が、地面スレスレを飛んできた小刀を受け破損! 勢い余って尻餅をついたあやの周りで編まれる残滓たちの死んだ歌声。
「後ろの正面」
「だーあれっ」
 円がひと際強く輝いた刹那、円に飛び込んだメルノ・ネッケル(火器狐・f09332)があやを横抱きにしてハイジャンプ! 円と残滓を飛び越える彼女の背後で、CABOOOM! 太い青の火柱が噴き上がった。あやはメルノを見上げ、泣きそうな顔でしがみつく。
「メ、メルノさぁんっ!」
「よーやっと追いついたわ。一も二もなく飛び出していきおってからに」
 メルノは地に足を着けるなり再び跳躍! 錐揉みして左右から飛んでくる小刀を避け、着地点に待ち構える三体のうち一体に前方回転からの飛び蹴りを打ち込む。反動を使って飛び下がったメルノに、蝿めいて集る残滓の集団!
「残滓……過去から今を食い潰しに来る、オブリビオンに相応しい連中やね。悪いが、『甲斐の虎』こと武田信玄……アンタらの総大将に蘇ってもらうんは困る。行くで、戦の始まりや。……まずは、アンタらから成仏してもらおか! ほれ、火葬の時間やァッ!」
 燃える片足を振り上げ、爆炎を蹴り出す! BOOOOOM! 一直線の炎の道は残滓を複数体飲み込んで焼き払った。戦場に走った業火のライン左右を飛ぶ残滓たちが小刀を抜いてメルノを強襲。亡霊の蒼い瞳が凶悦に燃え、メルノの足元に青白い熱の円を展開させる!
「その子が欲しい、花いちもんめ」
「やらんわド阿呆! 投げるで。堪忍せえよっ!」
「うえっ!?」
 目を丸くするあやを、メルノは真後ろに放り投げた。
「うひゃあああああああっ!」
 遠ざかるあやの悲鳴! 一方のメルノ真下の円は熱を帯びて下草を焼き、土を溶かして蒸発させる。瞬間、メルノの手が閃いた。彼女に熱っぽい視線を送っていた残滓全てが脳天に風穴を開けられ、大きくのけ反る! メルノは赤いライン模様の入った黒い大型銃を持って笑う。
「そないな風に見つめられても、アプローチにゃ答えてやれへんで?」
 一言残して連続バク転。獲物を逃した青い円は炎を爆発させるに止まった。着地から制動をかけたメルノは不意に空を見上げる。上空に浮かんだ百体近いの残滓が両手をかき混ぜるように動かし、瘴気で出来た巨大な球体を生成していた。そのサイズ、黒き太陽が如し!
「うげっ……! なんやアレ」
 メルノの頬が引きつるが早いか、残滓たちは編み上げた瘴気砲弾を発射! 負の感情で作られた爆弾がメルノを押し潰さんと迫る中、張り詰めた声が戦場に轟く。
「出でよオロチ! 大好物の幽霊だよ!」
 平原を揺るがす激しい地鳴り。直後、メルノの足元を派手に突き破って巨大な蛇が頭を出した! さらに平原の八か所をぶち抜いて一匹ずつ、計九体の大蛇が鎌首をもたげる。戦場に突入したロカジは、不満そうに見下ろしてくる蛇たちの目を睨み返した。
「なに? 好物が違う? 黙れクソ蛇共。残滓が漏らすもの諸共全部食っちまいな。残したらしばらく飯は抜きだからな!」
『SHRRRRRRR……』
 五階建てビルじみた威容を誇る九匹は不満げに鳴き、大口を開けて落下する巨大瘴気弾へと突撃をしかけた! 九つの口が瘴気を飲み込み、奥に居た残滓たちをダース単位で食い荒らす。
 蛇たちの巨体の隙間を縫った残滓の大群がロカジに殺到! 小刀を抜き、瘴気をまとった先頭の一体が彼の額に刃を突き出す! 切っ先は、ロカジの頭蓋を穿つ寸前で停止した。刺殺に走って来た一体の全身を草花のツルが縛り上げ、ガッチリと固定。後続の残滓も同様植物の戒めに捕まり動けぬ!
「おや? お一人かと思ったら沢山いらっしゃったのですね。援護致します」
 後方で、アゼリアが花の蕾をつけた枝のタクトを振るう。戦場のそこかしこから次々と噴出するツル草が残滓を一体ずつ縛り、固め、その場に固定! 白銀の狙撃銃を投げ上げた莉亜が、天使の片翼じみた刃を持つ鎌を振り上げて捕らわれた残滓たちへ肉迫していく!
「はい、どうぞ!」
「ありがとうアゼリア。食らわせてもらう」
 手中で鎌をひと回し、一体目を切断! 二体目の胴を断ち、三体目を真っ二つにして四体目の顔面を横薙ぎ一閃! 鎌を振って回り、五体目の首筋に噛みついた莉亜は、突如顔を青ざめさせて口を押さえた。膝を突いた彼の腹の底から吐き気が昇る。
「うぇっ、不味い……!」
「だからそう言ったろうに!」
 駆け寄ったロカジが莉亜の腕をつかんで素早く下がった。莉亜の居た場所に残滓が小太刀を振り下ろす! ロカジは背負った薬箱に手をやって一握りの塩を取り出し、残滓の顔面に投げつけた。顔を押さえて悶絶する残滓。その両脇を別の二体が突っ切ってロカジに追いすがる!
「なんでわざわざ吸血するかねえ、あんなもんから!」
「……出来るかなって思って」
「それで吐きそうになってちゃ世話ないっての! ってああもう!」
 袖で口元を拭う莉亜を抱えたまま、ロカジは背負った長刀を引き抜く。
「南無南無! 御冥福をお祈りするからこっち来るな!」
 SLASH! 横薙ぎ一閃で残滓二体の小太刀を弾く。ノックバックした二体の胸に、不可視の手に抱えられて宙を舞う莉亜の狙撃銃が照準。BLAM! BLAM! 残滓の胸に穴が開き、霊体が霧散した。莉亜が視線を横に動かすと、狙撃銃もそちらに転進しマズルフラッシュを光らせる。
 BLAM! BLAM! BLAM! 銃弾が軍勢に突っ込み、三連続で爆発した。手数が減ったのを機と見たあやは、バックダッシュを止めて両膝を折り曲げ跳躍! 拳を振りかぶって残る軍勢に殴りかかった!
「こんのぉぉぉぉぉっ!」
 急降下パンチが残滓一体の顔面を撃ち抜き、そのまま地面に打ちつける。SMAAAASH! 巨大なクレーターが生まれ、衝撃波が他の残滓を押し流した! 
 KADOOOOOOM! クレーターから噴き上がった粉塵を、遠くから見つめる者あり! 侍が駆る馬の背に乗ったカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は、魚群じみて渦巻く残滓たちと暴れ回る巨大蛇、そして断続的な爆発を確かめて嘆息。
「やーっと見えて来やがった。とっくにパーティ始まってるじゃねえかよ」
 馬と並んで、竜頭をかたどった赤いバイクがひた走る。乗り手のアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)はエンジンを吹かしながら言った。
「追い付いたから良しだ。ヒーローは遅れてくるもんだってことにしとこうぜ!」
「……ヒーローね」
 ニヒルに笑ったカイムは、馬を御する侍の肩を叩いた。
「ここまででいい、あんたは下がれ」
「いいのかい!」
 問い返す侍に、アーサーがサムズアップで答える。
「ま、こいつらの相手は俺らに任せな! 祝勝会の宴で会おうぜ!」
「応! 死ぬなよ旦那方!」
 ドリフトめいて前後反転する馬の背からカイムが跳躍。地に着いた右爪先に紫電が走る!
「こっからは……俺達の仕事だ。さぁ、戦場で踊るとするか!」
 雷鳴を残してカイムが消失! 雷をまとい、音を越えて加速した彼は猟兵たちと残滓が暴れ回るキリングフィールドに踏み入った。手近な大蛇の背中を駆け上がり、頭を蹴って空高くに躍り出る! 両腰のホルスターから引き抜いた二丁拳銃、その先端についた番犬型装飾の目が赤く光った。
「遅れて登場ついでの祝砲だ! 消えろ雑魚共!」
 虚空で身をひねって横回転を始めたカイムが紫の電光をまとい、雷鳴を空にいななかせた。その姿は実際雷の竜巻! 四刀流回転斬りで自身に集る残滓を始末したミハエラは、空中で湧き立つそれを見上げた。バイザーが素早く雷を解析。
「あれは……カイムか!」
 危険を察知し、ミハエラは仲間たちへ叫んだ!
「皆、下がれ! 巻き込まれるぞ!」
 警鐘を聞き届けたアゼリアが大きく短杖を振る。猟兵たちの遥か後方から飛び出したいくつものツルが、先に戦っていた六人腹部をグルグル巻きにした。アゼリアは杖の先を軽く振り上げる。
「失礼しますね」
 ツルが猟兵たちをグンと真後ろに引っ張った次の瞬間、カイムの雷が最大励起! まき散らされた雷が地を舐め、虚空を千々に引き裂く。その中央でカイムは二丁拳銃の引き金を引いた!
「エクレール・バレット!」
 ZGGGGGGGGGGGGGGGGG! 全方位にぶっ放される紫電の弾丸が、残滓のことごとくを蜂の巣に変え跡形も無く消滅させる。平原に降り注いだ弾は砂煙を起こして膨らませ、空に放たれた弾は雲に無数の風穴を開けた。ZGAM! ZGAM! ZGAAAAAM!
 やがて回転銃撃をやめたカイムは、滞空しながら両手の銃をガンスピン。秒速リロードを終え、銃を範囲外に逃れた残滓の大群に向ける。銃口に膨大な紫電をチャージ!
「こいつはオマケだ。吠えろ、オルトロスッ!」
 ZGGAAAAAAM! 撃ち出された二つの巨大な紫電の球が、軌道上で二匹の狂犬の頭部に変形。遠方から押し寄せてくる残滓、その最前列に突っ込んで、CABOOOOOOM! 大地を焼き滅ぼす大爆轟を引き起こした!
 銃撃を終えて自由落下するカイム。じっくりと紫の瞳を凝らすと、銃弾の雨によって生まれた円形焼け野原の遥か向こう側、天突く爆煙を突っ切って、大量の残滓たちが押し寄せて来る! カイムは舌打ちした。
「撃ち漏らしたか。アーサー、頼んだ!」
「ああ!」
 VONG! カイムの真下を駆け抜けたアーサーは、バイクをウィリーさせて跳ぶ。座席のシートを蹴ってハイジャンプした彼の、機械ベルトが音声を放った。
『Select……CALL, SUNRISER!』
「変身! シューティングギャラクシィフォ――――――ム!」
 四肢を大きく広げたアーサーが太陽の光に包まれた。手足から順に燃え上がり、胴体から頭部を火の渦が巻き込む。炎が消え去った後には、白を基調とした機械アーマー! フルフェイスメットを被り、純白のマフラーをたなびかせたアーサーは、左手を真上に突き上げた。
「来いッ! レイシューター!」
 空の彼方から黄金のマシンイーグルが飛来! 一声鳴いたイーグルは翼をパージし残る体をキャノン砲に変形させる。アーサーの左腕にイーグルキャノンが、背中に翼パーツが合体!
『Select……BURST ACTION!』
「どんな暗い思いを抱えているかは知らねぇが……今を生きてる奴らを巻き込もうなんざ、お天道様はもちろん……何より俺が許さねぇぜ! レイシューター、フルバーストッ!」
 BOOOOOOM! プロミネンスを束ねたが如き灼熱の奔流が天へと昇り、無数の火炎の帯に分裂。流星群じみて地表に急降下したそれらは三方ヶ原を右から左へ横断し、残滓を片っ端から焼き払う。そしてKRA-TOOOOOOOOM! 万里の長城じみた爆炎の壁が噴き上げた!
 遠雷のように合戦場を震わせる爆発音。徐々に静まっていく炎の壁へ、九体の大蛇が高速で接近していく! うち一匹の頭の上で、ロカジが叫んだ!
「行けぇ蛇ども! このまま決着をつける! 勝てば明日は好きな物好きなだけ食わせてやるから頑張れ!」
『SHEEEEEAAAAAAAAAAAAARGH!』
 突き進む蛇の背に降り立つカイムとアーサー。先客である莉亜が、二人に振り返った。
「……派手な登場だね。巻き込まれるかと思った」
 カイムがひょいと肩をすくめる。
「安心しな。敵味方の区別ぐらいはつく。……で、だ」
 頭を掻きつつ、アーサーが焼き払った三方ヶ原の遠くを眺める。焼け落ち、赤熱した大地の上を滑走する残滓の大群がロカジの大蛇を真っ向から迎え撃たんと攻め上がってきていた。
 長期戦に持ち込み、散々範囲攻撃を撃ち込んでなお今だ戦場を埋め尽くさんとする亡者の暴威!
「結構潰したと思ったんだが。何匹居んだこれ」
「さあ」
「莉亜……さあってあんた……」
 げんなりするカイム。彼の背中を、メルノが肩を勢いよくぶっ叩いた。思わずよろめく青年に、サングラスを駆けながら言い放つ。
「なーにをグダグダを言っとんのや、何匹居ようがやるこた変わらん」
 メルノは左掌に右拳を打ちつける。その表情は不敵!
「全員シバきゃええだけの話や! どの道そうせんと勝てへんしなあ!」
 四人が乗る蛇の隣、メルノの言葉を聞いたあやが、少し疲れた顔で溜め息をつく。
「うー……正直お化けはお腹いっぱいなんだけど……やるしかないんだよね……」
「きっともう少しですよ。頑張りましょう。私も全力でサポートしますから」
 あやの背中を撫でて励ますアゼリア。その時、猟兵たちの遥か後ろ、徳川軍の陣地側から雄叫びの重奏が轟いて来た。思わず振り返る一同。彼らよりかなり離れた場所から、徳川の侍たちが大挙して走ってきていた! ミハエルが愕然と叫ぶ。
「馬鹿な! 侍たちが何故ここに!」
 直後、残滓の軍勢が行進を止め、両手を組んで何やらブツブツと呟き始めた。白装束の輪郭がぶれ、一人一人が二人に分身。二人が四人に、四人が八人に。倍々ゲームじみて増殖していく残滓たちから、超広範囲を覆うどす黒い瘴気が噴き出し始めた!
 地上から空までを覆う黒霧の断崖。奥から聞こえる呻きや虚ろな笑い声、恨み節などが不気味に広がる。ロカジは蛇の頭の上で後ずさりした。
「まさか、侍ごとあれで一掃しようってこと? 流石に冗談じゃないよねえ……」
 ロカジが足元の蛇を見下ろす。蛇たちは瘴気を前に速度を落とし、まさかあれを食えと言うんじゃないだろうな、と言いたげに主人を見ていた。
 背筋に冷たい気配を感じながらも、アーサーが言う。
「……急がないと駄目っぽいな。あいつらが巻き込まれる前にッ!」
「しかし、どうしましょう。瘴気は花の大敵ですし、あれを除去する方法は……」
 悩ましそうな様子で頬に手を添えるアゼリア。その時、大柄な人影が大蛇たちを飛び越えた! 瘴気の前に割って入った戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)は、全身を赤紫色のオーラで包みながら着地する。
「戒道・蔵乃祐、遅ればせながら到着しました。ここはお任せを!」
 DASH! 返事を待たずに飛び出して行く蔵乃祐! 彼は大振りな太刀で居合いの構えを取り、瘴気へ真っ直ぐに突っ込んでいく。同時に、怨念で出来た瘴気の壁が前進を始めた。
 全てを滅ぼす負の感情の具現体。アポカリプスじみた光景を前に、蔵乃祐は刀をしっかりと握る。
(アルダワの迷宮奥底で、災魔の邪気を取り込み続けて来た魔剣。その力、今こそ!)
 赤紫のオーラが膨張! 瘴気との距離は既に5メートル、4メートル、3、2、1……抜刀!
 SLAAASH! 下から上にオーラの剣閃が走る。勢いのまま斬り上げた蔵乃祐は分かたれた瘴気に飲み込まれた。呪いが彼の体に黒い斑点を刻み、肌を赤黒く変色させていく。だが蔵乃祐はこれに耐え、抜いた剣を高く掲げた! 周囲に降り注ぐ、オーラの雷!
「おおおおおおおおおおおおおおッ! 英雄幻妄、この世に顕現せし闇を! 亡者たちの嘆きの声を! 厄災の中へ取り込むが良いッ!」
 蔵乃祐の刃が、周囲の瘴気を吸い込み始めた。黒い霧が激しく渦巻き、一本の剣へと流れていく。ZGAM! ZGAM! オーラの雷をほとばしらせる蔵乃祐の口から血が垂れた。彼は両目を見開いて叫ぶ!
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
 蔵乃祐の肉体が発火! その時、漆黒の渦の直上に青白い魔法陣が展開された。瘴気の範囲をカバーした陣に立ち、メンカルは銀の三日月が装飾された杖を突く。魔法陣から湧き立つホタルめいた光の粒子! メンカルは静かに呪文を唱える!
「……邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
 魔法陣の真下にもうひとつ魔法陣が現れる。息を整えたメンカルがさらに唱えた。
「……後続詠唱。誘う旋律よ、響け、唄え。汝は安息、汝は静穏。魔女が望むは夢路に導く忘我の音……」
 二重魔法陣が空色の閃光で瘴気を照らし出した。白き魔女が紡ぐのは、世界に語る力ある言葉!
「……ロクス・アモエネス……!」
 メンカルが掲げた杖を振り下ろす! SMAAACK! 魔法陣から放たれたビームが瘴気の渦に突っ込み、内側から青い光で爆散せしめた。衝撃の余波が大きく広がる。瘴気が晴れた先では、焼け焦げた剣を手にして立つ蔵乃祐と、虚空で項垂れる形で眠る残滓たちの姿!
 剣を垂直に構えた蔵乃祐が、柄を両手で握る。
「魔王信長の邪気に囚われ歪められたオブリビオン達。死者の眠りを妨げられ、望まぬ生者への渇望を植え付けられた挙句、尊厳無き亡者として使い潰される。……あまりにも悲しすぎる」
 BOMB! 蔵乃祐の刃に火が灯り、彼の前身が紅蓮の炎に包まれた。爆発的に膨れ上がった熱は蔵乃祐の周囲を溶岩帯に変え、火柱で雲を突き破る。
「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カン。不動明王よ、葬送の火をもたらしたまえ―――――――!」
 爆炎をまとった横薙ぎ一閃が眠る残滓の分身たちを駆け抜けた。直後、CABOOOOOOOM! アーサーのそれにも引けを取らない大爆轟が幽霊たちを消し炭にする。膝をついた蔵乃祐は、血を吐きながら空を仰いだ!
「メンカルさんッ!」
「……合成術式、準備完了……遅発連動術式クロノス、並びに重奏強化術式エコー、アンロック……三重魔法陣展開、異常無し……戦場に立つ英雄たちよ、目覚めよ、構えよ。汝は戦い、汝は刀剣。魔女が望むは集いし覇軍の戦士たち……」
 二重魔法陣が消え、新たに三重魔法陣が現れる。空全体を覆い尽くさんばかりの巨大魔法陣は、黄金色の光を雨の如く降り注がせた。大地を次々と突き刺さる閃光、響き渡る地鳴り!
 光を破って進み出たのは、3メートルはある巨体の黄金侍像! 蒼氷で出来た大太刀を手にしたそれが、250体! 黄金侍像のうち一体が刃を突き出すと、250体は全員で残滓に突撃し始めた!
 氷の刃が振るわれるたび氷山が次々現れる。数分と経たず氷河時代めいた光景と化す戦場。そこへ九匹の大蛇が速度を上げて突撃を敢行した、その時である!
『KIYAAAAAAAAAAAAAA!』
 甲高い奇声が響き、氷山が全て砕け散った! 氷河の奥から身を起こしたのは、白い薄布を被った八つ腕の超巨大骸骨! 異様に長く伸びた指の骨。骨盤から下は無く、眼窩と周囲に据えた八個の眼球が、猟兵たちを睥睨している。アゼリアが表情を引き締め、短杖を持ち上げた。
「どうやら合体したようですね。向こうとしても最後の切り札、といったところなのでしょうか」
 アーサーがキャノン砲を突き出し、カイムがガンスピンリロード!
「ちょうど良いぜ。的がひとつになって倒しやすくなった!」
「これだけ大きければ、目をつぶっても当てられるぜ。カモだ」
 四本剣を手にしたミハエラは、姿勢を低くして残滓集合体のドクロを見上げた。
「ここが正念場と見える。行くぞ、決着の時だ!」
「あーやだやだ。増えるし合体するしなんなのもう……」
 ぼやいたロカジが前髪をかき上げる。
 刹那、残滓のガラスを引っかくような叫び声を合図に飛び出す猟兵たち! 残滓は骨の拳を地に叩きつけ瘴気の衝撃波を放つ。吹き飛ばされる黄金侍像たち! しかし大蛇は辛うじて耐え、残滓集合体の喉笛めがけて噛みかかった。骨の八本腕が蛇の首を捕らえ、空中に浮いた眼球が蛇を見た。
 BOOOM! 頭部を青白い炎で燃やされ、大蛇たちが絶叫しながらのたうち回る! 蛇から振り落とされたロカジは、落ちてくる骨拳をバックダッシュで回避した。骨の拳に飛び乗ったメルノが腕を素早く駆け上がる! それを追う浮遊眼球の視線!
「眼球増やして強うなったつもりか? 甘いわ!」
 跳躍しムーンサルト回転したメルノは光線銃を乱射する。オレンジのビームが複数本、蒼い瞳に突き刺さって爆発! さらに前後反転、残滓を挟んで反対側の眼球も同様に撃ち抜いた。滞空しながらニヤりと笑うメルノを、上下から襲う骨の掌底。そこへ蔵乃祐が飛び込んでいく!
「やらせませんッ! はァァァァァッ!」
 鉄拳を振り下ろして下の掌底を破壊し、空中前転。骨の手首を足場に再ジャンプして上の掌底を殴り砕いた! 蔵乃祐はメルノに手を差し出す。
「メルノさん、手を貸します!」
「おおきに!」
 足裏から炎を噴出したメルノは蔵乃祐の手の平に足をかけた。蔵乃祐はメルノを残滓の顔面へ投げる!
「ぬぇぇぇいッ!」
 THROW! ジェットじみた速度で飛翔したメルノは、しかし真横に振るわれた骨の腕に吹き飛ばされた。刹那、メルノを弾いた腕は高速回転しながら飛んできた複数の白鎌に刺身の如く寸断されバラバラに崩壊。崩れ落ちてくる腕骨の残骸に飛び移りながら上昇した莉亜は指笛を吹く!
「開門。んでもって第九圏へ直結。さあ、今だけは僕に従ってもらうよ」
 直後、残滓が少し顔を挙げた所に巨大な門が姿を現す! 左右に骸骨をあしらった両開きの門扉が開かれ、中から飛び出した大悪魔の腕が残滓の顔面を殴打した。ノックバックした鎖骨に飛び乗った莉亜が一息に残滓の右目にまで到達。鎌の一閃で破壊!
「GYAAAAAAAAAAAAAAARGH!」
 右目を押さえた残滓の、無事な眼球の視線があちこちを向きそこかしこに青い火柱をいくつも立てた。赤黒いオーラをまとって飛翔したミハエラは四本の光剣を手に高速回転!
「はッ!」
 ミハエラは高速回転し、残滓の腕を螺旋状に駆け上がって顔面に到達。四本の刃で残滓の左目を突き刺した。
「アーサー!」
「ああ!」
 ミハエラに呼ばれ、アーサーが地上から真上に砲門向けた。BOOOOOOM! 青白い火柱に混ざって真紅の炎が空へと呑まれ、数秒後にプロミネンスの雨を降り注がせる! BOOOMBOOOMBOOOM! 雨は浮遊眼球を二つ破壊し、腕一本と右の鎖骨を打ち砕いた。そこへ、残滓の肋骨部分にロカジが刀の切っ先を、カイムが二丁拳銃を向ける。
「失礼っと」
「食らいな」
 BLAM! 三条の雷撃が胸を撃ち、巨大な骸骨を空中で仰向けにする。その隙をついて、アゼリアは短杖を軽く持ち上げる。
「薫る風は審判、たなびく花は天秤、息吹く命は戒め。若葉萌える夏のはじまり!」
 残滓真下の地面を打ち砕いて生えた巨大蔓草が残滓の周囲に螺旋を描き、締め上げた! 拘束を脱しようともがく残滓!
「AAAAAAAAAAAAAAAAAARGH!」
「捕まえました。わたしはただのか弱い神ではないのです!」
「アゼリアさん、ナーイス!」
 あやが快哉を叫び、多段ジャンプで空を舞う。構えたギターとピックに電光! 
「心が痺れるようなあたしの思い! 聴かせてあげる! イェーイッ!」
 ギターをかき鳴らすと同時、残滓の巨体に電撃が走った! 苦し気な咆哮を上げて苦悶する亡霊。生まれた決定的瞬間! メルノ、カイム、アーサーがハイジャンプを決め、仰向けになった残滓の真上を取る。あやの演奏は高速ギターソロに差し掛かっていた。
「さーて、趣味悪うお化け屋敷もここらで終いや!」
「悪いが、後が控えてんでな!」
「行くぜッ! 必殺!」
 三人の銃が一斉砲火! 爆炎二条と紫電二条が残滓の眉間に命中し、頭蓋骨に亀裂を入れる。一方、仰向けになった残滓の胴体に疾駆したミハエラ、蔵乃祐、莉亜、ロカジはそれぞれの刃を手に急加速! 高速で周囲を動き回りながら、アゼリアの拘束ごと骨身を斬り刻んでいく!
 空のメンカルは杖を掲げて再三詠唱!
「……世の理よ、騒げ、暴れろ。汝は天変、汝は動地。魔女が望むは安寧破る元素の乱」
「どおおおりゃあああああああああああああああああッ!」
 メンカルの詠唱にあやのシャウトが重なった瞬間、他の面々は素早く距離を取った。合体が解け、バラバラになった残滓を雷の大竜巻が飲み込み、全て跡形も無く消し飛ばした。




「……というのはちょっとした演出で。僕がお化けを怖がる訳ないでしょう? 僕26よ?」
 静まり返った平原に屈みこみ、ロカジが言う。アゼリアは優しい微笑みで彼を見下ろした。
「大丈夫ですよ、ロカジさん。誰にでも苦手なもの、怖いものありますから」
「そうだよー。あたしだってお化けとはあんまり戦いたくないし。全然変じゃないよ。ねえ?」
 あやが同意を求めて振り返る。彼女の視線の先、メルノとカイムは愉快そうな顔で肩をすくめる。蔵乃祐は残滓集合体が居た場所に座り込み、集中して念仏を口ずさんでいる。ロカジは顔を背けると、誰にも聞こえないように呟いた。
「……はぁ、みんな消えてホッとした」
 その様子を眺めていたアーサーとミハエラは、ふと周囲に目を配る。仲間たちの輪から少し外れたところで、メンカルが腕時計型通信機に向かってなにか
「おーいメンカル。どうかしたのか?」
「……ん」
 メンカルは腕を下げ、仲間の元へやって来た。眠たげな瞳が、少し不安定に揺れている。ミハエラは無言で訝しんだ。
「……みんな、ちょっといい?」
 全員の胸に嫌な予感が風めいて吹き抜けると同時、メンカルは言った。
「……二十四将の一人、こっち側の陣地に近づいてるって……今、射撃隊が直属護衛部隊と交戦中……押し切られるのも時間の問題だって……」
 その場の全員が、絶句した顔で凍りついた。
「煙草吸いたくなって来た。ちとたんま……は無しだよね」
 莉亜は肩を落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●WIZ



敵性体接近中
目視で確認しました

友軍を展開します
コール、ウイングキャット『マネギ』
(羽の生えたデブ猫がワラワラ湧いて出る)


・敵集団プラス分身、敵陣容の頭数を相手にマックス220の手勢:マネギを召喚し合戦を挑む
・マネギ達には【メカニック+武器改造】にて、胴丸具足とか火縄とか三間槍とか脇差とか、色々とこの世界っぽい武装を搭載して送り出す

・自身は防御柵後方で電脳世界を展開しマネギ達を全数管制
・敵の撃破状況、マネギ達の被撃破状況、敵陣の動向等、マネギ達の視覚による【撮影】で戦場の流動要素を【情報収集】しつつ、攻め時の勘案等を差配する

・切り札は自身がレクチャーした三段撃ち布陣への【一斉発射】の号令


メイスン・ドットハック
【WIZ】
いよいよ軍勢との戦いじゃのー
それじゃ、張り切っていこうかのー

ユーベルコード「月夜に跳梁跋扈せし銀狼」の人狼の電脳工兵部隊を各地各部隊に派遣
仕掛けるトラップは霊魂が発する瘴気に反応して炸裂する地雷爆弾
電脳センサーも反応して、人体には影響なく霊体のみにダメージを与える特製の爆弾で、残滓本体に直接打撃を与える
メイスン本人は遊撃として電脳魔術を駆使して、敵に電脳ミサイルを【一斉発射】【誘導弾】しながら、電脳工作部隊が仕掛けた電脳トラップ群に誘導して一網打尽にしようとする

アドリブ絡みOK



 時は数刻さかのぼる。
 三方ヶ原、徳川軍陣地の一角。三重の防馬柵によって築かれた防陣の奥に、火縄銃を握りしめた侍たちが張り詰めた表情で敵襲を待つ。緊張に汗をにじませ、両目を凝らして見通しの良い平原をにらむ。
 そして、無言のまま片膝立ち姿勢で構える侍たちの最後方。エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)とメイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が、空中に浮かべたホロウィンドウにそろって指を走らせていた。
 やがて、ホロキーボードをタイピングしていたエルが手を止める。
「プログラム構築終了、起動準備完了、システム・オールグリーン。そちらの首尾はいかがですか?」
「順調じゃのー」
 メイスンは複数浮いたウィンドウのひとつ、平原を走る狼の群れの映像を見ながら言った。この狼は、実際メイスンの能力によって召喚された電脳工兵部隊である。別のウィンドウには、狼から人狼形態に変身して穴掘りを始める群体が見えた。
 赤点が複数ついた周辺マップのウィンドウを隣にスライドさせ、メイスンが言う。
「包囲網は完備。地雷も置いた。これならいつ来ても平気じゃろ。……ミサイルでも持ち出されたら、話は別じゃがの」
「その懸念は杞憂であると判断します。サムライエンパイアに広範囲爆撃を行う兵器、及び大量殺戮を行う武装は存在しないかと」
「ま、大体オブリビオンがそんな感じじゃけどな」
 エルに肩をすくめるメイスン。
 開戦の角笛が鳴ったのがつい先ほど。その後は突貫工事で防馬柵を広げ、三段撃ち射撃体制を取って待ち伏せの状況を整えた。空いた時間で人狼工作部隊を展開し、罠を仕掛けていたのだ。
 そしてエルの方はというと――――唐突にタイピングの手を止め、平原の向こう側に目を向けた。
 目元を覆うバイザーに刻まれた、エメラルドカラー二重線が規則的に発光。彼女の視界を遥か彼方へ連れていく。平原の向こう、中型の雲の中に隠れてやってくる白装束の亡霊軍団を補足!
「敵性体接近中。目視で確認しました」
「来たか。こっからじゃまだ見えんの」
 メイスンが腕時計型通信機を起動した。『CALL』サインの点灯を待って、声を投げる。
「全員聞けぃ。武田軍の雑兵共がもうじき近づいてくる。撃つタイミングはこちらから合図する故、その状態のまましばらく待機じゃ。ある程度は削る。そちらは残る残党を撃ち殺せば良い。わかったな?」
『ははっ!』
 威勢の良い声が通信機から放たれる。一方で、エルはバイザーの側面に指を触れた。緑の二重ラインが右から左へ光を流し、メイスンの目前に新たなウィンドウを生成。
 流れた映像は、攻めてくるオブリビオン亡霊『残滓』の群れ。ズームアウトして空に浮かぶ雲に代わり、視点を流して自分たちの頭上へと移動。その後さらにズームアウト、自分の部隊と残滓が潜む雲が一緒を映した。彼我の距離は1キロを切っている。
 メイスンは胸の下に右腕を敷き、左腕で頬杖をついた。
「ほーん。雲に紛れて少数精鋭……いや、400は別に少数でも無いか。ともかく、それでコソコソ攻め入るつもりというわけじゃな?」
「陽動作戦ではないでしょう。恐らくは別動隊。最前線とは別に、状況に応じて遊撃や非戦闘員の抹殺を目的とした部隊であると推測されます」
「いずれにしても、こっちに来るなら相手するしかないの」
 メイスンが背中を伸ばした。青く透き通った肌が太陽光を反射する。
「さて。お膳立てをしてやるとするか」
「了解しました。友軍を展開します。コール、ウイングキャット『マネギ』」
 エルがエンターキーを叩くと同時、彼女の上空に翡翠色の01が噴き出した。四方八方に散った数字のいくらかが集合し、固まり、ひとつの具体的形状を組み上げる。翼を生やした、白いデブ猫の姿を!
 次から次へと生み出されていく肥満体猫。その一匹一匹の周囲に胴丸具足や籠手、兜などが出現し瞬時に装着されていく。鎧武者めいた格好の猫は、手元に召喚された火縄や三間槍、脇差、サスマタ、ジュッテなどをつかんだ。欠伸めいた鬨の声と共に武器を振り上げる猫、上空に220!
『ぶにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん……』
 三段撃ちの侍衆が驚いて振り向いてくる。メイスンは胡乱げな半眼で空飛ぶデブ猫軍団を見上げた。
「…………。気の抜けたナリしとるのぉ。大丈夫なんか、こやつら」
「問題ありません。迎撃・誘導を開始します」
 そう言って、エルはホロキーボードに手をかけた。



 木を隠すなら森の中。白いものは白いものの中に隠れれば、実際発見し辛い。
 100体ずつの四部隊に分かれて雲に紛れ、進軍を進める残滓の集団。彼女たちは両手で顔を覆ったまま、声も出さずに進んでいく。遠くからは僅かに地鳴り。遠雷じみた戦争の音だ。
 彼女たちはエルが予想した通りの遊撃部隊。敵方の遊撃役や前線兵士を背後から襲って殺し、隙あらば後方支援部隊を呪殺する腹積もりである。
 風に乗り、雲と共に悠々と徳川軍陣地へ向かう亡霊部隊。その後方上空に、突如紫色の光が四つ顕現! 光はワープゲートめいて空に開いた穴となり、中から一本ずつポリゴン生成されたミサイルを生やす。穴が閉じた次の瞬間、ミサイルのジェット機構に火が点いた!
 BOOOM! 四本の弾頭が同時に放たれ、残滓集う雲にそれぞれ突っ込んで爆発した。紫色の煙と炎の中から残滓たちが飛び出し、流星群めいて地上へと滑空していく。逃げる幽霊たちの後方上空、再度開くミサイル発射ワープゲート! ミサイル視点の映像を横目に、メイスンがキータイプ。
「ほい、第一弾着弾っと。第二弾、発射じゃ」
 BOOOM! 再び撃ち出されたミサイルが亡霊の群れ最後尾へと追いすがる。残滓たちは散開してこれを回避。地表で上がる爆轟の真上をすり抜け、地面スレスレを低空飛行し始めた。つかず離れずの距離を取る残滓たち、その両サイドに武者デブ猫兵団が半分ずつ回り込む!
「ぶにゃああああああ」
「ぶにゃあああああああ」
「にゃああああああん」
 左右に展開した猫軍団が和弓を取り出し、残滓たちに次々射かける。SHOTSHOTSHOT! 両側から押し潰すように襲い来る矢を腕や脇腹、大腿部に受ける残滓たち。直後、残滓たちは懐から取り出した小刀で自らの腹を引き裂き、傷口から瘴気を放った。
「許さない」
「許さない」
「消えなさい」
「木偶人形め」
 ドスの利いた恨み声を口々に上げ、瘴気をまとう残滓たち。その時、彼女たちの真下、地面の各所が紫に光ってBEEP音を発した。CABOOOOOM!
 メイスンはやや離れた場所で噴き上がる紫の爆炎を遠目に見た。ウィンドウのひとつ、マップに表示された赤ドットのいくつかがバツ印に変化する。起動済み地雷のマークだ。
「引っかかりおった。まぁまぁ減ったんじゃないかの?」
「引き続き追い込みます」
「あいよ。人狼部隊を使う。武器をくれんかの」
「了解しました」
 エルがタイピングを速める一方、残滓たちは身をひるがえしていた。部隊の三分の一ほど消滅。しかけられた対空攻撃、地雷と挟撃から撤退を判断! しかし後退せんとする彼女たちの前方で空間がバチバチと壁を張るように火花を散らす。光学迷彩を解いた人狼工作部隊が残滓の退路を塞いでいた!
 口々に遠吠えする人狼工作部隊の手元に、それぞれ翡翠色の01が噴出してガトリングガンを作成。人狼たちは現れた重火器をつかみ、残滓に向かって弾幕をぶっ放した!
『GRAAAAAAAAAAAAAARGH!』
 BRRRRRRRRRRRRRR! 横殴りの雨めいて鉛弾をばらまきながら、人狼たちはジリジリと前進。残滓たちは後ろ向きに飛行しながら、指の隙間から憤怒に燃える瞳を青く光らせた。人狼たちの足元が青白く熱され、BOOOM!
 噴き上がる火柱に飲まれた人狼たちが悲鳴を上げる。左右から矢を飛ばしていたデブ猫部隊は近接武器を手に残滓たちを強襲!
「にゃおおおおおおおおー」
「んにゃうううううう」
 残滓は小太刀で応戦しながらも、後退を余儀なくされる。瘴気の宿った小太刀を防ぎ、力尽くで押し込んでいくデブ翼猫たち。やがて、三段撃ち侍たちの目に残滓たちの背中が、耳に刃のぶつかり合う音が入り込んで来た。エルは一旦キータイプを止め、侍たちに号令をかける。
「撃ち方用意」
 三列目の侍が平淡な声を聞き届け、続いて声を張り上げた。
「撃ち方用意!」
「撃ち方用ォォォォォ意ッ!」
 呼びかけを受けて、第一射撃侍たちが柵の隙間に銃口をねじ込む。息を呑んで待ち構える彼らの目に、小さく、しかしはっきりと残滓の白装束に包まれた背中がいくつも見えた。反撃で数匹のデブ猫が斬り捨てられるも、反撃の刃が亡霊たちの腹や胸に突き刺さる。
 エルはバイザーの裏で猫たちの視界を確認しつつ、取りこぼしの有無や残敵の数を確認。400居た敵勢力数は、残滓が繰り返す分身によって誤差程度の変動しか無い。指先ほどだった背中は大きくなり、やがてリンゴ程度のサイズになった瞬間、エルは迷わず言い放った。
「第一波、ファイア」
『撃てぇぇぇぇぇぇぇぇッ!』
 侍たちが雄叫びを上げ、BLAM! 三段撃ち最初の火縄銃が火を噴き、残滓の肩や横面、脇腹などを抉り取る! 攻撃を受けて振り返る残滓たちの目が喜色に輝いたのを見、エルはさらに指示を重ねる。
「敵勢力、今だ健在。撃ち方を続行してください!」
「だ、第一波、下がれ!」
「だ、第二波! 撃ちます!」
「第三波、構え!」
 ぎこちなくも三段撃ちが稼働し始め、断続的に銃声が響き始める。BLAM! BLAM! BLAM! BLAM! 残滓の背中や頭、下半身が消し飛ばされる。生者を目にした彼女たちは猫軍団を放り出し、侍たちに近づかんとするが額を吹き飛ばされ消滅。胸に風穴を開けられ消滅。首を打ち砕かれ消滅!
「ああああああああああああっ……!」
 残る残滓のうち一体が侍たちを求めるように手を伸ばし、手の平ごと顔面に風穴を開けられて消滅。さらに後方から追いついたデブ猫たちが、瘴気と共に二つに分かれんとする残滓の背中に槍や刀を突き刺して殺害。数を減らし、黒い霧と化していく亡霊たちを遠くに、メイスンは大きく欠伸した。
「ふわぁーあ……仕事はこれで終わりけーのぉ」
 勇ましく吠え、近づいてくる残滓を始末していく三段撃ちの侍衆。エルはバイザーに映し出された、スロットマシンめいた速度で減少する残敵数の表示を眺める。既に70、50、40。なおも減少。エルが右手を横薙ぎに振り、新たなウィンドウを出現させた瞬間、残敵数が1で止まった。
「…………?」
 訝しげに目を細めるエル。戦場にもはや残滓は無く、勝ち鬨を上げる侍たちの姿だけがある。敵影は無い。エルが両手で宙を押し開くように開き、大量のウィンドウを出現させる。映っているのは、無事なデブ猫たちの視界そのままの映像。猫たちに戦場中を見渡させるが、やはり敵の影は無い。
(システムチェック。…………エラーではない)
 再び右手を横薙ぎに振り、ホロキーボードを呼び出しタイプ。侍たちを眺めて体を伸ばしていたメイスンが、エルの下へと近寄った。
「終わりじゃな。前線もそろそろ決着ついた頃合いじゃろうし、僕らも救援に………………どうした?」
 雰囲気を察してメイスンが訝しむ。エルは無言でひたすらにキーボードを叩き、NoError、NoCrackingの文字を確認。デブ猫視界は上昇し、空撮映像へと変わる。だがいない! エルはきゅっと引き締めた唇を開いた。
「残敵数1。しかし確認できません」
「……なんじゃと?」
 次の瞬間、二人の前に『WARNING!』のウィンドウが現れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『戦国武将』

POW   :    合戦具足
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の城の一部もしくは武者鎧】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    乱世斬
【日本刀による衝撃波を伴う斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    戦国兵団
【自分に従う兵士達】の霊を召喚する。これは【火縄銃】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章
「オオオオオオ……なんたる卑劣、なんたる悪逆……武士の誉れをなんだと思っておるのか、貴様らァ……」
 甲冑を着た鎧武者が地獄めいた声を響かせる。喉を掻き毟り、頭を抱え、彼は暗闇の中、殺意と憤怒を胸に燃やした。
「信玄公……我が忠義、我が命……貴殿と共にあらんとしたこの無念……それがなにゆえ、かの卑劣により打ち砕かれねばならぬのか……許さぬ……」
 甲冑の胸に火が灯り、武者の足場を炎が囲む。彼は腰の刀を引き抜き、天に掲げた。彼の全身が炎に包まれ、周囲に高熱をまき散らす。黒の世界が紅蓮に染まり、武者の業火は山火事が如し。嵐めいて吹き荒れる火の粉!
「武士の心を踏み躙り、戦術の下に侮辱を為す織田軍よ……オオオオオオ……貴様らもまた、その忌々しい手段を以って抗するとならば……疾く、疾く、滅ぼすべし……消えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!」
 炎が膨らみ、ビッグバンめいた大爆轟を引き起こす。
 残滓を迎え撃った三段撃ちの侍たちは、歓喜しながら極大の火柱に焼き殺された。


●追加OP
 武田二十四将が一人、『土屋昌次』が三段撃ちを行った侍衆を襲撃しました。
 彼は第四次川中島の戦いにおいて武田信玄の本陣を守り切って名を挙げた武将です。しかし、長篠の戦いにおいて、織田軍が展開した鉄砲三段撃ちに勝負を仕掛けて一斉射撃を受け戦死しました。
 オブリビオン化した彼は、武田信玄と共に殉死せず、刀も騎馬も交えない一方的な射撃戦に激怒しており、それが能力となって現れています。また、『元』の三方ヶ原の戦いにおいて、徳川方の島居忠広と一騎打ちして首級を挙げた剣の腕も生前以上。
 能力は戦国武将共通のユーベルコードの他に『本陣、雷鳴轟く霊峰が如し』と『我が前に立て、武士たるならば』という名の能力を常時発動しています。
 ふたつはそれぞれ、猟兵で言うところの『ガラスのラビリンス』と『デュエリスト・ロウ』に近いもの。前者は戦場を炎の暴風域に変え、後者は遠距離攻撃を仕掛けた者に問答無用で大ダメージを与えます(遠距離攻撃自体は可能です)。
 この二つのおかげで長距離からの攻撃は一切意味をなさず、戦うには常に燃え盛る竜巻の中で戦わねばならない状態となっています。放置すれば、土屋昌次は二時間と待たず徳川の陣地に到達し、全てを焼き滅ぼさんとします。
 炎の竜巻に突入し、内部の土屋昌次を撃破してください。

●お知らせとお詫び
 ドーモ、鹿崎シーカーです。このたびは皆様のご協力もあり、寛永三方ヶ原の戦いを第三章まで進めることが出来ました。
 しかしながら、真に申し訳ないのですが、当方の執筆速度を加味しまして、本日(7月30日)のニコニコ生放送『ゼロから始める第六猟兵 ボイス実装編』の放送までに第三章を執筆し、返却するのは不可能と判断致しました。
 我が身の不徳、未熟の致すところであり、プレイヤーの皆様並びに運営諸氏には大変なご迷惑をおかけすることとなることを、この場を借りて深くお詫びさせて頂きます。
 このシナリオにつきましては、当方が『やる』と決めて自分の意志で始めたものです。よって、責任を以って頂いたプレイングの全採用と、確実な返却をお約束し、最後まで書き上げる所存です。
 プレイヤーの皆様には、私の力不足によりご不快な思いをさせてしまったと思います。それでもプレイングを頂けることになりましたら、シナリオマスターとして全力で執筆に望ませて頂きます。なにとぞ、ご協力をお願い致します。

 プレイング受付は7:31(水)の8:30までです。
戒道・蔵乃祐
清和源氏の系譜に連なる武田氏一門家臣。土屋昌次様ですね

家督の重責に見合う功労と
武田の忠臣としての名誉と尊厳を重んずる、勇猛果敢と名高き侍にとって
三段撃ちは、不本意な戦死だったのでしょう

ですが、オブリビオンと化し、憤怒に燃え盛る獄炎で世を乱す
信玄公が、このような殺戮を本心から望むと貴方はお思いか?

僕は、貴方の業で歪んだ士道を、猟兵として断ち切る為に来た


『雷鳴轟く霊峰』を、激痛・火炎耐性、残像とダッシュで駆け抜け

二の腕に巻き付けた大連珠で乱世斬を武器受け
そのまま咄嗟の一撃。鎧砕きのラリアットで怪力任せに吹き飛ばし
早業、クイックドロウの二刀流。『鷹蝙剣阿陀呂』で捨て身の一撃を放つ

いざ尋常に勝負!!


メルノ・ネッケル
戦術の下の侮辱……か。耳の痛い話やな。
……ま、気持ちは分からんでもない。
ええやろ、付き合ったろやないか。

二丁の銃をホルスターにしまい「ステンレストンファー」を準備。

遠距離攻撃が出来んのは辛いところやが、【勇気】を持って突っ込むしかない!
【武器受け】で兵士の霊達の攻撃を捌きながら、土屋昌次にとにかく接近する!

鉄砲は遠くから撃つだけやない。それこそ、刀と結ぶ位の距離でも戦えるんや。
うちは武士やない、それどころかアンタの大嫌いな銃士やけど……確かにアンタの前に立ったで。

トンファーを投げ上げ、【クイックドロウ】の動きで「アサルトリボルバー」を抜き放つ!
【零距離射撃】!『旋風連射』、全弾持ってけぇ!


天道・あや
アンタが今回の黒幕の一人?ならどっかーんと倒させて貰うよ!天道あや!押して参る!!
アンタの怒りの思い(炎)とあたしの…この戦場で今未来の為に戦っているお侍さんとあたし達の思い(炎)!!どっちが熱いか……いざ勝負!

炎の竜巻は我慢!【激痛耐性】そして相手が大きくなっているなら力とか固さとかは上がってるだろうけど……その分隙とかが大きくなっている筈!だから【挑発】して相手の注意を【おびき寄せ】攻撃を避けながら【見切り、スライディング】チャンスを見つけて【レガリアス】で炎の暴風を吸い込み、フル稼働からの【ジャンプ】からの【これがあたしの想いの乗った重い一撃!】【カウンター、鎧砕き】

これが未来への一撃!


ソラスティベル・グラスラン
凄まじい思念!肌を刺す程に伝わる烈火の如き激情!
これが、この世界の英雄ですかっ!

彼の憎悪の源
それは恐らく武士として誇りある最後を奪われたこと
ならば!

【勇気】を胸に正面から一歩
元より遠距離からなど器用な手段は持たない愚直な勇者は行く

わたしの名はソラスティベル!
祖たる黄昏竜の子にして、明日の暁に希望を見る者!
今こそ雌雄を決しましょう、『土屋昌次』さんっ!!

【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、
【火炎耐性】全開に【気合】で炎の暴風域を突破する
辿り着いたその先で、

蒼空の果てより響く、あの遠雷が聞こえますか
竜よ、雷の大斧よ
今こそ応えて、わたしの勇気に
正道なる戦いにて憎悪の暗雲を晴らす!汝の名は―――ッ!!


カイム・クローバー
一人称:俺 二人称:あんた 三人称:あいつ 名前:名前で呼び捨て

銃は無粋か?良いぜ。俺も剣の腕にはそこそこ自信があるんでね。決着はコイツ(剣)に委ねるとするか。

俺の得物は大剣。この侍野郎は二刀流か?手数の不利は【二回攻撃】で補い、相手よりも広い間合いを維持するために【範囲攻撃】で距離を一定に保つ。合間に【フェイント】で攻撃の軌道を読ませない。【第六感】に従いつつ、【残像】を置いて【見切り】で侍野郎の剣術を躱していく。狙いは奴にUCを使わせる事。半径なら周囲に逃げ場はねぇ。だから、その瞬間にこっちもUCで自ら間合いを詰めるぜ。刀身に紫雷を纏わせる【属性攻撃】、【串刺し】併用。
届かせるぜ、この一撃


須藤・莉亜
「僕の煙草の為にわざわざ火を出してくれるなんて。サービス良いね?」
…さて、どうしたもんかなぁ。

取り敢えず、Ladyをぶっ放しとこう。
「挨拶がわりにどーぞ。」
んでもって、反撃を食らった瞬間に暴食蝙蝠のUCを発動。
負傷を回復させつつ、体を無数の蝙蝠に変化。
どさくさに紛れて散開し、味方の攻撃に合わせて敵さんの全方位から【吸血】を狙って行く。
鎧も炎も、何でも噛み砕いて血を奪ってやる。

「口直しを所望する。…幽霊はマジでやばかった…。」

【僕・きみ・年上の相手のみ名前+さん、他は名前呼び捨て】


アゼリア・リーンフィールド
むう、なんという暴虐、無為にまき散らす憎悪。わたし、好みません!

炎への対策はしっかりと取らないといけませんね。
冬に輝く幻想の花を発動、あえて効果範囲を狭めることで自分の近くに高密度の氷の花弁を密集させます。
絶え間なく花弁を出し続ければ熱を防ぐことも出来るでしょう。
これを用いて接近し、有効範囲に入ったら一気に広範囲に開放、敵が呼び出すという兵士の霊も含めて範囲攻撃です。
遠距離攻撃になりうる行動も、接近して撃てば実質近接攻撃です!きっと!

でも武将に対してはきっとそれだけでは足りませんね。
氷は蒸気になって目くらましにもなります。
その隙に死角を縫って最接近、後ろから頭などの急所を狙って攻撃です!


メイスン・ドットハック
【WIZ】
武士の矜持という奴かのー
じゃけど、それも所詮は時代に敗れた者の詭弁、過去の遺物は墓へ還るのが道理じゃのー

ユーベルコード「倫敦は霧に包まれて」を発動し、AI「パープルミスト」を周囲展開
その電脳リソースを火炎を打ち消す霧水を発生させることに終始徹底させる
これによって土屋昌次に近接戦を仕掛ける仲間にも炎を気にすることなく戦わせるようにする
戦国兵団を呼び出されたら火縄銃の火種をUCで湿らせ、弓の弦を水で凍らせるなどして戦闘能力を奪った上で、電脳魔術の槍で貫いていく
土屋昌次に対しては、隙を見て電脳槍を重ね召喚した群体を、破壊槌のように叩きつける

アドリブ絡みOK


アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可

武田軍最後の武将だけあって、何かスゲー強そうな感じだな。
ま、どんな奴だろうとぶっ飛ばすだけだぜ!

炎の「竜巻」っつーことは、穴がありそうだな。【フルスピード・スカイドライブ】を発動して超上空から竜巻に突入。炎の熱は【火炎耐性】と【気合い】で凌ぎ、竜巻の中心に要る武将ロボに全力でぶちかましてやるぜ!
望み通り真正面からぶつかってやるぜ? マッハ4でな!

ところで別の場所でこんなん(第六天魔軍将図)拾ったんだけどさ…(※寛永三方ヶ原の戦い~紅蓮の戦場〜参照方)
あんたらって、ホントに信玄公の為に動いてんのか?
それとも…憎き信長に使われてただけっていう、情けないオチとか?


白斑・物九郎
●POW



飛び道具憎しでとんだ常時発動スキルをブン回してやがらっしゃいましてからに

上等ですわ
『ワイルドハント』近接戦闘担当、白斑・物九郎
白兵戦が望みだってんなら付き合ってやりまさァ

――エル!
電脳魔術支援!


・火中へ飛び込み近接戦を挑む
・周囲の炎への抵抗に【狩猟の魔眼(防御力重視)】発動

・直下からの火柱等、不意の攻撃は【野生の勘】で警戒

・【怪力】でブン回す魔鍵で攻撃
・物理攻撃モード(なぎ払い・串刺し)と肉体透過の【精神攻撃】モードを目まぐるしく入れ替えつつ、混乱を誘うよう仕掛ける(だまし討ち)

・守勢時、敵の剣に対し魔鍵での【武器受け】を狙う
・剣の刃を鍵の先端パターン部に引っ掛けて捌き【武器落とし】を


レイ・キャスケット
遅ればせながら駆けつけたら、何この惨状、地獄の業火?
この暑い夏に更に焚火なんてしないでよーって軽口叩きつつも汗一つかかず涼し気
≪付与の羽衣≫で周囲の炎を取り込み【火炎耐性】を高めると同時に手にする「ブランクソード」に自身の魔力と【属性攻撃】を重ね合わせ【全力魔法】で超高温高密度に圧縮した輝く炎の刃のエネルギーに利用
純粋な身体能力に加えて爆炎魔法の噴射を利用した変則的な動きで攻守共に翻弄するよ

遠距離攻撃が卑劣なんて脳筋の戯言だよね、そもそも武器が卑怯なら素手ででも闘ってれば?
相手の土俵で戦うのはちょっと癪だけど、だからこそ得意分野で打ち負かす事も必要だよね
正攻法で相手するとは一言も言ってないけど


ロカジ・ミナイ
うっ、火だね
全く暑苦しいおっさんだねぇ!
もっとさっぱりできないの?モテないでしょ?

火に入る時は水を被るよね、よく見るじゃない、そういうの
ええいままよ!と
大振りの水筒に入れてきた水を被って
いざ突入

熱いしさぁ、やっぱ他人が炊いた火って
心の奥の奥で苦手なわけ
狐だからね

そんな恐怖心を振り払って
だって今日の僕はまだカッコいいとこ見せ切ってないもの

へへっ、実は接近戦の方が性に合っててね
刀を持つと、戦魂に火がつくのさ
愛用の長刀を抜けばここは僕の世界
その首刎ねてやろうじゃないか
…今度こそ、戦さ場で武士らしく死ぬがいい

殺してあげよう
僕の作る切り口は美しいんだよ


水貝・雁之助
炎の暴風域か厄介だねえ

でもそう言うのをどうにかするのも割と得意なんだ

お前みたいな奴に誰かの大切な人を奪わせやしない
自分が負けたからって人が勝利を掴む為の努力を卑劣っていう方が余程卑怯さ

そんな奴は『ワイルドハント』の地形把握・拠点制作担当として全力で潰させて貰うよ


炎をグラフィティスプラッシュで塗りつぶし『地形を利用』出来て襲撃された
侍衆達の『拠点防御』が出来るよう状況を整えつつ土屋の元に向かう

戦闘の際は敵の生み出した炎の暴風域という『地形を利用』し炎という『敵を
盾にする』様に動いたり炎を目晦ましに使いグラフィティスプラッシュで攻撃

敵に有利な炎の地形を自分達猟兵に有利な地形に塗り潰し次の味方に繋ぐ


ミハエラ・ジェシンスカ
ア連歓

旧きモノノフか
戦の作法など時代とともに移ろいゆくものを、哀れだな
……だが、その執念にしてやられたのもまた事実

ウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカだ
モノノフならざるカラクリの身で悪いが、相手をしてやる

そう名乗りを挙げて迎え撃つ
隠し腕は展開済み。対艦魔剣を振るえる程の隙はない
となれば後は純粋に斬り合う他あるまい
【武器受け】【見切り】で攻撃を凌ぎ、4刀による【2回攻撃】で防御を削ぎ落し
一瞬の隙に【捨て身の一撃】を叩き込む
それで殺せる程度の相手ならそれで良い
だが、見事迎撃してみせたのなら――それこそが貴様の隙だ

伏せておいたドローンと
迎撃されたセイバーを無理やり【念動力】で引き戻し【だまし討ち】


メンカル・プルモーサ
……ん、ひとまず…皆。私の視界内に……【起動:応用術式『拡大』】からの【彩り失う五色の魔】を視界内の猟兵全員について発動…火炎耐性を高めておくよ…
さて…これは酷い…(数瞬で頭を切り替える)
炎と遠距離攻撃への反撃が噛み合いすぎてるな…特に遠距離攻撃への反撃が厄介…攻め手が限られる…【闇夜見通す梟の眼】を展開…
『我が前に立て、武士たるならば』『本陣、雷鳴轟く霊峰が如し』を分析……【空より降りたる静謐の魔剣】で生じた氷の剣を材料にした魔法陣からなる【崩壊せし邪悪なる符号】で打ち消す…お前の無念は判る。でもそれを八つ当たりに使われたらたまった物じゃない……だから、その妄執を引き剥がす……!


リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ&他の方との絡み
大歓迎!
もり盛りのモリでも大ジョブです

▼本日のメインの子
響(戦闘特化なハムスター)
他の子が居ても全然大ジョブです

▼【WIZ】

戦国武将さんってかっこいいなッテ思うのですガ…少々お顔が怖いですネ…
武将さんに従う兵士さんを倒す事に全力を尽くしましょうカ!
ひびちゃん行きますヨ!
(戦闘特化のハムスターを前に掲げると、ルーンソードに変形)
UCでハムちゃんのお仲間を出しつつ、その子達と協力して銃や矢を打ち落としていきます
大事な子達なのでむやみやたらには仕掛けず、しっかり正確に見極めながら行動デス
ランセーーランセでスー!!(あんまり意味は解ってない)



 BOOOOOM……! うなる爆炎の大竜巻が、草原を呑み込みながら進軍していく。
 そして火の粉と熱波をまき散らす災厄の内部、丸く切り取られた広大な空間を、大柄な武者が一歩一歩踏み締めながら歩いていた。陽炎に包まれた赤の鎧具足に、怒れる鬼を模った面頬。炎に包まれた二刀を下げた彼の名は、武田に仕えし二十四将が一人『土屋昌次』!
「オオオオオオ……入門せよ、入門せよ……我が戦場、業炎焦土の戦舞台……真なる侍、護国の兵を名乗るのならば……つわもの共よ、我が声に応え、剣を取るべし……! オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
 刀を掲げ、竜巻の外にも響く大音声を放つ昌次。いきり立つように炎の風壁がバチバチと火の粉を散らし、煉獄じみて紅蓮に染まる暴風域の中を激しく飛び交う。
 『本陣、雷鳴轟く霊峰が如し』。踏み入る力・覚悟無き者を焼き払う死の戦場を引き連れ、徳川軍の陣地へさらなる一歩を踏み出した、その時である! 彼の頭上遥か上空、雲を滅ぼし天まで伸びた竜巻の果て、逆光めいて黒く塗りつぶされた空に、一等星の如き光が灯った!
「ヌゥ……?」
 昌次は足を止めて空を仰いだ。漆黒にひとつ輝いた星は徐々に光量・大きさを増し――――サテライトキャノンじみた光線と化して一直線に落下する! 光線の先には、ドラゴンヘッドをあしらうバイクに乗ったアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)! 狙いは当然、昌次の脳天!
「あれがそうか! 武田軍最後の武将だけあって、何かスゲー強そうな感じだな。ま、どんな奴だろうとぶっ飛ばすだけだぜ! 行くぜライドラン!」
 DRNG! DRNG! アーサーがハンドルを小刻みにひねり、ドラゴンバイクが自ら噴射したオレンジのガスに包まれる。ガスは発火し、業炎と化した! 炎に包まれ加速して突撃!
「フルスピード……スカイドラ―――――――イブッ!」
「オオッ……!」
 昌次は二本の刀を頭上で交叉。刃と具足が燃え上がったところに、垂直落下したアーサーが直撃した! CABOOOOOM! 広がるドーム状の爆炎! 拡張の速度が収まり、花開くように火柱を上げた爆心地から飛び出したアーサーは、連続バク宙して焼け野原に着地。片耳に手を当てる。
「着いたぜメンカル! ここに居りゃあいいのか?」
『……ん、そう……そこに居て……。……あっ』
 通話越しに上がった声に、アーサーは怪訝そうに聞き返す。
「どうした?」
『……何人か、行った……術式、まだなのに……』
「えっ」
 直後、アーサーの遥か後方で、BOOOM! 炎の壁を突き破り、四つの火だるまシルエットが戦場へ乱入してきた。振り返るアーサー。彼の視界内でまとわりつく炎を振り切った一人、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)はハンドマイクを片手に大きく息を吸い、叫んだ。
「たのも―――――っ!」
 爆音の衝撃波が、前に出た三人の炎を消し飛ばす。引きはがされた火炎の中から現れたのは、戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)、ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)、そして雷のオーラをまとった丸盾を掲げたソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)!
「やっ!」
 ソラスティベルが地に両かかとを着いてブレーキをかけ、土を抉りながらアーサーにほど近い場所で停止。彼女はそのまま、手にした戦斧を手中で回転させつつ振り上げ、石突を焦土に突き刺した。胸を張り、堂々たる名乗りを上げる!
「わたしの名はソラスティベル! 祖たる黄昏竜の子にして、明日の暁に希望を見る者! 今こそ雌雄を決しましょう、土屋昌次さんっ!」
 徐々に収束していく火柱の奥に、ゆらりと武者鎧の影が映った。右の刀で爆炎を斬り払った昌次が確かな足取りで歩いてくる一方、アーサーの足元に大きな魔法陣が展開。青白い光を放つそれから、平淡な少女の詠唱があふれ出す。
『……秘されし標よ、拓け、導け。汝は道程、汝は雲路。魔女が望むは稀人誘う猫の道……』
 魔法陣が煌々たる閃光を放ち、アーサー目前に人型の光を生やす。さらに陣の十ヶ所に同様のものが出現し、爆ぜて中身をさらけ出した。一番最初に姿を現したメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は、銀三日月の杖を片手に背後を振り返る。
「……入れたみたい……全員、居る……?」
 無数の光粒子となって溶け消える魔法陣。あとに立つのは、メンカル伝手に炎の暴風域へワープしてきた面々! そのうちの一人、レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)は手で首元を扇ぎながら、涼しい顔で周囲を見回す。
「遅ればせながら駆けつけたら、何この惨状、地獄の業火? この暑い夏に更に焚火なんてしないでよね」
「でもでも、あやさんたちは暑いの我慢して飛び込みまシた! とってもソンケイな気持ち!」
 リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)にキラキラした瞳を向けられ、あやがマイク片手に頬を掻く。
「あはは……すんごく熱かったけどね。服燃えなくてよかったよ」
「なんでそうまでして正面から突き破るかね?」
 黒いジャケットを肩に引っ掛け、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が呆れ半分の苦笑。
「無理しねえでこっちから入りゃあよかったのに……つかロカジ、あんた確か妖狐だろ。狐火とか出せんだし、火ぐらい平気なんじゃねえの?」
「出せるよ?」
 ロカジは肩を竦め、皮肉っぽい微笑みをカイムに投げた。
「でも熱いものは熱いしさぁ、やっぱ他人が焚いた火って心の奥の奥で苦手なわけ。狐だからね」
「で、水被って突っ込んだわけか」
「別にいいじゃないか。だって、今日の僕はまだカッコいいとこ見せ切ってないもの」
 THOOOOM……! 重く響く重低音が猟兵たちの会話を遮る。それは昌次が大きく半歩踏み出した音! 炎獄の武将は、面頬の口と目の穴からチロチロと炎をくゆらせて呟く。
「入門したか……いかなる妖術を以って……。だがしかし……貴様ら、ここに我ありと知って踏み入ったに相違なし……」
 昌次がさらに一歩踏み出し、猟兵たちに刀の切っ先を突きつけられた。
「オオオオオオオ……ならば問おう。汝ら、真なる勇士なりや……?」
「なーにが真なる勇士じゃ、アホンダラ」
 メイスン・ドットハック(ウィザード級ハッカー(引き籠り)・f03092)が冷徹に言い放つ。頬についたススを親指でぬぐい取り、真っ直ぐに昌次を見やって続ける。
「飛び道具絶許なぞ、武士の矜持と言えば聞こえは良い。じゃけど、それも所詮は時代に敗れた者の詭弁。過去の遺物は墓へ還るのが道理じゃのー」
「何……?」
 昌次右目の炎がボッと燃え立つ。腰のホルダーから刃無き剣を抜いたレイと、巨大な絵筆を抱えた水貝・雁之助(おにぎり大将放浪記・f06042)が身構えつつ挑発。
「大体さ、遠距離攻撃が卑劣なんて脳筋の戯言だよね。そもそも武器が卑怯なら、素手ででも闘ってれば?」
「お前みたいな奴に誰かの大切な人を奪わせやしない。自分が負けたからって、人が勝利を掴む為の努力を卑劣っていう方が余程卑怯さ。そんな奴は、ワイルドハントの地形把握・拠点制作担当として全力で潰させて貰うよ」
 無言で鎧の炎を湧き立たせる昌次。メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)は自嘲気味に微笑んだ。
「煽りよるなぁ。や、火に油注ぐ言うとくべきか……」
 隣に立つアゼリア・リーンフィールド(空に爆ぜた星の花弁・f19275)が、上目遣いにメルノを見上げて小首を傾げる。
「火に……? みなさまなりの主張をなさっているだけでは……?」
「ええ子やねえ、あんたは」
 アゼリアの頭を撫でつつ、メルノは薄い茶色のサングラスをかける。一方、刀を下ろした昌次は、鎧の背中に火を点す。
「勇士と、匹夫の混成なるか……奇妙、奇怪、しかしまたとない好機……天誅、武勇、双方共に果たすべし……!」
 次の瞬間、昌次の背後で、BOOOOOM! 広範囲に火災が発生。高く上がった紅蓮の炎に、昌次は両腕を大きく広げた。
「出でよ、出でよ、我らが軍勢。炎の如く戦を駆けた、死してなお闘志たぎる英霊たちよ……! 括目し、恐れ、覚悟を決めよ! これが、これこそが、我らの伝説たる軍団。武田の将に誇るる誉れ!」
 炎がステージカーテンめいて左右に押し開かれた。はけた紅蓮の壁が暴風域に流れ込み、後に残ったのは――――全身を爆炎で構築された、騎馬の侍軍団だ!
「武田騎馬軍団の、再来なりィィィィィィィッ!」
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』
 炎騎馬兵たちの咆哮が、熱風と共に猟兵たちへ押し寄せる! 強烈な圧を真正面から受けたソラスティベルが片目を閉じて生唾を呑み、ロカジとアゼリアが顔をしかめた。
「凄まじい思念! 肌を刺す程に伝わる烈火の如き激情! これが、この世界の英雄ですかっ!」
「うっ、火だね。全く暑苦しいおっさんだねぇ! もっとさっぱりできないの? モテないでしょ?」
「むう、なんという暴虐、無為にまき散らす憎悪。わたし、好みません!」
 空に突き上げられる槍、刀。何もかもを地獄めいた炎で形作られた騎馬兵を見つめていた蔵乃祐が、重々しく口を開いた。
「清和源氏の系譜に連なる武田氏一門家臣、土屋昌次様。家督の重責に見合う功労と、武田の忠臣としての名誉と尊厳を重んずる、勇猛果敢と名高き侍にとって……三段撃ちは、不本意な戦死だったのでしょう」
 蔵乃祐は片足を下げ、半身で拳を持ち上げる。足を踏みしめて地を砕き、彼は昌次に問いかける。
「ですが、オブリビオンと化し、憤怒に燃え盛る獄炎で世を乱す。信玄公が、このような殺戮を本心から望むと貴方はお思いか? 僕たちは、貴方の業で歪んだ士道を、猟兵として断ち切る為に来た」
「問答無用」
 昌次は炎の馬にまたがったまま、刀を鋭く斬り払う。後ろに控えた騎馬兵団の馬たちがいななき、闘牛めいて土を引っかき始めた。
「この世の善悪の全て、即ち覇道を制した者によって語られるもの。信玄公が、我が進軍を悪であると断ずれば、我が首差し出すのが道理。この命、信玄公の病没と共に滅ぶが定めであったもの。既に惜しくなど無いわ……!」
 より熱風が強くなり、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)が加えた煙草をたちまち削った。莉亜は指先程になった煙草を吐き捨て、紫煙の混ざった溜め息を吐く。
「首を差し出すとか、滅ぶとか……とっくに死んだくせに、よく言うよ」
「……だが、その執念にしてやられたのもまた事実」
 ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)の四本腕に握られた、無骨な金属筒が真紅の円筒形光刃を出現させる。上両腕の剣を交叉し、下両腕の剣を下段に構えた格好でミハエラは名乗る。
「ウォーマシン、ミハエラ・ジェシンスカだ。モノノフならざるカラクリの身で悪いが、相手をしてやる」
「さァて、ようやく本番ですかねェ」
 白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が首の骨を鳴らし、指を組んで前に伸ばした。
「上等ですわ。ワイルドハント近接戦闘担当、白斑・物九郎。白兵戦が望みだってんなら……」
 メルノが腰裏に吊ったトンファーを抜き、カイムの手に黒い炎に包まれた大剣が顕現。戦闘態勢!
「ええやろ、うちらも付き合ったろやないか」
「銃は無粋か? 良いぜ。俺も剣の腕にはそこそこ自信があるんでね。決着はコイツに委ねるとするか」
 昌次は微かに笑った。彼の真下に炎が湧き立ち、獄炎の騎馬が浮上してきた。馬にまたがった昌次は火で編まれた手綱を握る。いななき、前足を振り上げる馬の背中で剣を掲げる。
「口惜しや。その気概、よりにもよって敵と向き合うことなく、一方的な蹂躙を良しとした織田の恥さらしと共に在るとは。オオ……なんたる無常、運命の悪戯か」
 馬が前足を振り下ろし、騎馬兵たちが各自の武器で攻撃の予備動作を取る。
「しかし日輪は落ち、我らが世界は戦火に満ちた! いざ、いざ、この地に並み居る猟兵共よ。ここより先は灰と炎だけが残る死地! 踏み入ったが最後、我らのどちらかが死ぬ定め! 互いに侍の志を胸に、いざ尋常にィ…………」
 一気に張り詰める空気! 二十四の将ありと謳われた男は、暴風すら霞む大音声を繰り出した!
「勝負せよォォォォォォォォォッ!」
 BOOOM! 騎馬隊が爆炎を放って走り出す。迎撃に走る仲間たちの後ろで、メンカルが杖を正中線に構え、メイスンが腕をひと薙ぎして複数のホロウィンドウを呼び出した。二人を取り囲む魔法陣と無数の文字列!
「……天網拡大……我が護りよ、削れ、防げ。汝は喪失、汝は絶壁。魔女が望むは五色届かぬ防魔の理」
「電脳AI『パープルミスト』展開。あのけったいなボヤを冷ましてやるのじゃ」
 SMOOOOOOOKE! 二人から真っ白な霧が周囲に広がり、突撃する猟兵たちを一息に包む! 疾走する馬の背で、昌次は刀を突き出し手綱をはたく。
「虚仮脅しに過ぎぬ! 止まるな! 進めェェェェェェッ!」
『オオオオオオオオオオオオオオ!』
 加速した騎馬隊の数名が昌次を追い越して霧に突っ込んだ。直後、彼らの身体が蒸気を放って急減速。その間を真紅の閃光が駆け抜け、一拍遅れて大爆轟を引き起こす! ドラゴンヘッドのバイクに乗ったアーサーだ! ハンドルをひねり、目指すは霧に突入せんとする昌次!
「望み通り真正面からぶつかってやるぜ? マッハ4でな! 飛ばすぜライドラン!」
 DRRRRRRRNG! 雄叫びじみたエンジン音を上げてバイクが爆走! 音を置き去りにする速度に達し、アーサーの視界が昌次一人に絞られる。連鎖爆轟と紅蓮の光を引きつつ突進を敢行する彼の目前に、突如炎の刃が割り込んだ!
「うおっ!?」
 とっさのジャンプで斬撃回避! 宙空を横回転しながら舞うアーサーのバイクに、左右から騎馬兵の槍が突き出される。低姿勢ダッシュでバイクの真下に滑り込んだメルノが上下反転。両手で焦土を押し出して跳び、バイクの後輪部分に足裏を当てた。
「手ぇ貸したる! 跳べぇッ!」
「借りるぜ!」
 スプリングキックの勢いを経て大跳躍するアーサー。虚空に取り残されたメルノは身をひねり、トンファーで槍の刺突を受け流す。つんのめった二騎に霧から飛び出したあやとリヴェンティアが急襲! あやが拳を振りかぶり、リヴェンティアの手で灰のハムスターが橙色の光を放って長剣に変化!
「ゼピュロス参上っ! 速かるごと風の如しってね!」
「ひびちゃん行きますヨ! トリャ――――っ!」
 あやの鉄拳が横面を、リヴェンティアの斬り下ろしが兜をそれぞれ粉砕! あやは倒れる武者の胸を蹴って跳び、リヴェンティアが首を失った侍の両肩に足をかけて飛び越える。リヴェンティアは別の騎馬が繰り出すヤブサメ刺突を斬り上げで弾き、顔面に回転キック! 中空でバク転したあやはマイクに叫んだ。
「アンタが今回の黒幕の一人なら、どっかーんと倒させて貰うよ! 天道あや! 押して参る! あたしの歌を聞けぇ――――――っ!」
 宣戦布告が戦場中に響き渡った。その時、地を覆う白霧を突き抜け昌次が飛び出す! 騎馬の蹄をジェット噴射させ、狙いは息き継ぎをするあやだ!
「オオオオオオ……凱歌には、凱歌にはまだ早かろうぞ、剛毅の娘よ! 我が炎冷めやらぬ故に!」
「っ……!」
 吸い込んだ息を詰まらせるあや! 燃える刀を振り上げて迫る昌次の後方に地獄めいた門が現れ、開いた扉から莉亜を吐き出す。転移した彼は白銀に輝く狙撃銃を昌次の背中に向けた。振り返った武将とスコープ越しに視線が交錯!
「ステージへの登壇はご遠慮くださいお客様。挨拶がわりにどーぞ」
 BLAM! 狙撃銃の一射を昌次は振り返りざまの一刀で撃ち落とす。次の瞬間、莉亜の鳩尾から顔面左側にかけてと狙撃銃全体に黄橙色の亀裂が走った。昌次の燃える眼が侮蔑めいて彼を狙撃手をにらむ!
「痴れ者が……滅びよ!」
 莉亜の亀裂が瞬き、CABOOOOOM! あえなく爆発四散した。四方八方に飛ぶ漆黒の粒子。あやは思わず声を吐き出す。
「う、うそ、莉亜さんっ!?」
「大丈夫」
「へっ!?」
 首だけ振り向くあやの首根っこを複数匹の蝙蝠が噛んだ。蝙蝠たちはそのまま彼女を連れて後方上空へ飛行! 入れ替わりに急降下する無数の蝙蝠の群れが、騎馬の鞍を足場に跳んだ昌次を迎え撃つ! 
「小賢しき……オオオオオオオオ!」
 昌次は吠え、爆炎をまとって竜巻めいて高速回転! お構いなしに炎の嵐にまとわりついた蝙蝠の群れが球状に昌次の周囲を取り囲み、内から爆破されて散る。具足からジェット噴射した昌次は対空し、あやの近くで渦巻く蝙蝠と、その中心から這い出す莉亜を見上げた。莉亜は袖で口元をぬぐう。
「ち……舌がヒリヒリする。火傷したかな……」
 あやがぎょっとして彼を見やった。
「えっ、あれ、爆発っ……だ、大丈夫!? えっ、幽霊じゃない!?」
「生きてるよ」
 BOOOOOST! 二人の会話を爆音が遮る。両足の炎を激しく噴射した昌次が莉亜へ一直線に飛翔したのだ!
「痴れ者よ、今だ現世に留まるか! ならばその首、直接落とす!」
「何ベンジャーズの誰なんだよ……蔵乃祐、頼んだ」
 莉亜が手の平をかざすと、目の前に地獄めいた装飾の門が顕現。開かれたそれから砲弾じみて蔵乃祐が飛び出した! 巨大な数珠を右手に握り、流星めいて昌次へ降下!
「オオオオオオッ!」
「ふんはァッ!」
 CRAAASH! 数珠と刃が激突して火花を散らす。拳をギリギリと押し込みながら、蔵乃祐は決断的に宣言した。
「女子供に手をかける、誇り高き武将にそのようなことはさせられません! 相手は僕が……いえ! 僕らがします! いざ尋常に勝負!」
「良いぞ、武僧よ! その意気や良し!」
 二刀を引き抜いた昌次は腕から切っ先までを燃やして高速斬撃のラッシュ! SLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL――――紅蓮の連撃を蔵乃祐は二の腕に巻いた数珠で防御していく。が、防ぎ損ねた斬撃が彼の肩口、太もも、腕に裂傷を刻んだ。
「ぐむッ……!」
 眉間に皺をよせた蔵乃祐は巨大数珠を持った右腕を引く! 二刀流剣戟を左腕で受けて引き寄せ、右ラリアット!
「ふゥアッ!」
 SMASH! 空を斜めに落下した昌次は空中後転一回して両足を土に着いてハードランディング。静止した彼の真横に回り込んだレイの羽衣がはためき、周囲の炎と霧氷を吸収! 柄の無い剣を真横に振るう。
「ブランクソード、魔力解放! ブレイズ!」
 剣の柄から真っ白い閃光の刃が生えた。白煙を上げるそれは実際、超高密度圧縮された炎熱の剣! 直角軌道を描いたレイが昌次に下段から斬撃を撃つ! 昌次は逆手に持った刀を地に突き刺してガード。即座に後退するレイの、昌次を挟んで反対側から雁之助が跳びかかる!
「鎮火なんだな! モコ!」
 雁之助が放り上げた巨大絵筆を、跳んだ柴犬が噛んで錐揉み! 降り注ぐ極彩色のインクを、昌次はプロペラじみて回転させた刀で次々と弾いていく。雁之助の左手指先から黄橙色の亀裂が登って肩に到達。BOOOM!
「むぐうううううう!」
 片腕を爆破されて地面に転がる雁之助。そこに肉迫した昌次が右の剣を振り上げ断頭の構え! 
「いざ、滅ぶべし!」
 振り下ろされた炎刀の真下にミハエラがインターラプトし、四つの光剣を合わせて介錯妨害! 黒鉄の背骨を軋ませ、相手の刀を押し返す。軽くのけ反った瞬間にミハエラが合図!
「物九郎ッ!」
 昌次の横顔に鋭い冷気が吹きつける。そちらを向いた彼の視界一杯に、左腕を振りかぶった物九郎が映り込んだ!
「ザ・レフトハンド。属性攻撃・氷、ONッ!」
 左手を握り込み、FREEZ! 純白の冷気をまとわせた拳で、物九郎は昌次の頬をぶん殴った! 傾く鎧武者の体をさらに押し込む!
「だらァァァァッ!」
「ヌゥアッ……!」
 SMAAASH! 殴り飛ばされた昌次が地面をバウンドしながらも片膝立ち姿勢で踏みとどまる。そこへ一直線に走った物九郎の右手が白いモザイクに覆われ、巨大な鍵を出現させた。小ジャンプから大鍵を振り下ろす!
「シャッ!」
 反射的に掲げられた刀が鍵を防いだ。二者の怪力が拮抗! ミハエラは四本の光剣を携えたまま、肩越しに雁之助を振り返る。
「下がれ雁之助! ここは受け持つ!」
「ごめんね! お願いするんだな!」
 片腕を押さえて立ち上がり、柴犬と一緒に霧へ飛び込む雁之助。他方、昌次は立ち上がる勢いで物九郎の鍵を弾いた。右刀の一閃が鍵と噛み合い、左手横斬りを撃ち返される! 刹那の数秒、物九郎と昌次は向かい合った。昌次が吠え、物九郎の目が翡翠色にまたたく!
「オオオオオオオオッ!」
「エル! 電脳魔術支援!」
 剣戟再開! CRASH! CRASH! CRASH、CRASH、CRASHCRASHCRASH! 二人の打ち合いは徐々に加速し、ものの数秒で目にもとまらぬ速さに達する! 最大接近距離斬撃の応酬が二人の周囲に赤と銀の筋を無限に描いた!
「オララララララララララララララララララララ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
 火炎二刀流が見切りステップを繰り返す物九郎の体を傷つけ、焼き潰された裂傷を彼の体中に生み出していく。では昌次は無傷か? 否! 赤い武者鎧を鍵が幾度もすり抜けている! 刀をすり抜け、胴体をも透過! その度兜を被った頭が殴られたように揺らぐのだ。だが攻勢は一切止まらぬ!
(ってェ……。結構ブチかましてやってるはずが……!)
 鍵をすり抜けた刀が物九郎の腹を斜めに裂いた。連撃絶やさず、下から上への斬撃で鍵を打ち払った昌次は、大きく跳び下がって二本の刀を猛牛の角めいて構える! 足場を爆ぜさせて突進!
「進撃せよ……オオオオオオ進撃せよ! 鍛え上げた己が身、己が技にて挑まんとする強者! それを打ち破っての戦士! オオオオオオいざ! いざいざいざ! 信玄公よ御照覧あれ! かの者を打ち倒し、愚者に天誅を下し、天下覇道を捧げ奉る! オオオオオオオオ!」
「ちっ……くしょうめぇッ……!」
 突っ込んでくる昌次に対し、物九郎は鍵を下段から鍵を振り上げた! 左の刀を鍵の先端部分で捕まえ、昌次の手からもぎ取り跳ね上げる! 回転しながらすっ飛んでいく一刀。しかし右の刀が物九郎の脇腹を深々と貫き、血の塊を吐き出させた。
「がはッ……!」
「オオオオオオオオオ! 猟兵、一体なんするものぞォォォッ!」
 昌次は突き刺したままの物九郎を振り上げ、大地に叩きつけた。バウンドして転がる物九郎に追撃しかけた彼の前に、再度ミハエラが割り込んだ。刀を受け止め、四本の光剣で嵐の如き連続攻撃! 昌次はこれを刀一本でしのいでいくが、防戦一方を強いられる。
「殺させはせん、誰一人として! はァッ!」
 ミハエラの剣戟が加速! 半歩後退させられた昌次の首筋に白刃が一枚食い込んだ。鎧の背中に密着したロカジは、刀を両手で握る。
「殺してあげよう。僕の作る切り口は美しいんだよ」
「ムゥッ!」
 昌次は即座に状況判断! 無理矢理タックルしてミハエラを吹き飛ばし、振り向きざまに斬撃! ロカジは刀を立ててこれを防御。数十センチ押し込まれた彼は肘で背負った薬箱を叩いた。木箱の二段目が開き、丸薬二つが真上に飛び出す。ロカジは脳天狙いの一閃をガードし、昌次と打ち合う!
「鳴神丸! さ、やっちゃいな、お二人さんっ!」
 宙空に浮いた丸薬を、跳躍したソラスティベルとカイムがひとつずつキャッチした。口に放って奥歯で噛んだその瞬間、二人の瞳と体が眩い電光に包まれる! それぞれ蒼と紫の稲光をまとい、二人はそれぞれ戦斧と大剣を振りかぶる!
「んんんんんんんっ! 力が湧いてきましたっ!」
「こいつぁいい。あとから副作用がどうとか言うなよ、ロカジ!」
「用法用量守れば大丈夫だよ。それじゃあ任せた!」
 SLASH! 斬撃を交わし、跳躍側転してロカジが離脱した直後、ZGYAM! 蒼と紫の稲光が駆け、昌次の周囲を超高速で飛び回りながらヒット&アウェイ斬撃! 昌次は超高速一刀流を振るってしのぎつつ、その一閃で後ろを取ったカイムの脳天に引き裂く! 刹那、真っ二つに割れたカイムの身体が霧めいて消えた。
「……何?」
「こっちだ、侍!」
 昌次が振り返った先、やや遠方に降りたカイムが大剣の切っ先を昌次に向け、大地を蹴った。レーザーめいた速度で特攻してくる彼を振り返った昌次はカイムの突進を受けて真後ろに連れ去られていく! 大剣の切っ先は間一髪、刀の腹が受け止めていた! 昌次は刀に空いた右手を押し当てる!
「折れぬ……射抜けぬ……この刃、決して通さぬ……!」
「そいつぁどうかな! レイッ!」
 稲妻じみた速さで押し込まれていく昌次の後方、レイは手にした羽衣を円を描くように振るう。丸く渦を巻いた薄布の中心に当てたレイの手の平から虹色の波紋が広がった。
「重ねて拡げてその身で守れ。アルコバレーノ!」
 波紋が再び羽衣の円全体に行き渡り、虹色に輝く盾を形成! 超高速で突っ込んできた昌次の背中が盾に激突し、すさまじい衝撃と紫電の余波をまき散らした。しかし虹の盾にヒビは入らぬ!
「捕まえた。ここがデッドエンドだよッ!」
「どらァッ!」
 稲妻の如き速度でカイムが猛然と大剣を振るう! リーチとスピードを最大限活かした猛攻を、しかし昌次は刀一本で的確にいなして行く。そしてカイムへ向けて一歩踏み出した!
「オオッ……!」
「ッ……!?」
 カイムの片足が下がる。昌次が一歩踏み出すごとに一歩下がる。一歩、また一歩。鎧背面から噴き出した炎が武将を前へ進ませるのだ。紫電いななく斬撃の中を!
「幾星霜、時が巡れど途絶えぬ魂……燃え立つ剣は永劫に……侵略すること火の如し……」
「ホントにどうかしてるぜ、あんた……!」
 顔を歪めるカイムの前で、昌次は業火をまとった刀を一閃! 弾かれた大剣が後方へ飛ばすと共に、極太のアフターバーナーを噴きながら接近し、炎の斬り上げ! CABOOOOOM! 爆炎の斬撃が紅蓮の暴風域を横断。全身に雷を宿して斬撃に耐えたカイムが爆音に負けじと声を張った。
「くッ……ソラスティベル!」
「はいッ!」
 CAVOOOOOM! 上空で蒼い稲妻が走り、巨大な雷の竜翼が展開された。翼の中央には、蒼空じみた色彩の戦斧を掲げるソラスティベル!
「蒼空の果てより響く、あの遠雷が聞こえますか! 竜よ、雷の大斧よ! 今こそ応えて、わたしの勇気に! 正道なる戦いにて憎悪の暗雲を晴らす! 汝の名は―――ッ!」
 竜翼が羽ばたき、ソラスティベルが昌次へ一直線に急降下! 連続前方回転で勢いをつけ、めいっぱい斧を振り上げる! 昌次は片足を大きく下げて踏みしめ、拳を握った。前腕部を炎が包む!
「草原の竜王、プレリエルデッ!」
「ヌェェェェェェェェェェアッ!」
 雷斧と火拳がぶつかり、KADOOOOOOOOM! 炎と稲妻が全方位にまき散らされ、二人を中心に焦土が広大な溶岩帯へと急速融解! 黄昏と暁が激突したが如き紅蒼が戦場中を照らし出した。戦斧を受けた昌次の籠手がひび割れ、亀裂が肩当てまでを覆い尽くす。武者鎧の左腕が爆散!
「もう、ちょっとっ!」
「オオッ、オオオオオオオオオオオオオオオオ!」
 竜翼が再度羽ばたき、より強く斧を押し込むソラスティベルと、炎で出来た拳で対抗する昌次。激しく波打つマグマの海の中心で拮抗するそれらは、実際神話の再現じみた圧倒的光景! 戦場中に散開していた武田騎馬兵たちが、一斉に昌次の助力へ走る!
『昌次殿ぉぉぉぉぉぉッ!』
 炎の軍馬がマグマをものともせず駆け寄っていく。昌次は顔を上げ、裂帛の気勢を上げた。
「呼んでいる……我が同胞たちがッ! 共に主君のために凱歌を歌うと心に誓った、盟友たちがッ! ヌゥゥゥアアアアアアアアアアアアッ!」
 BOOOOOOM! 火拳が一気に密度を増しソラスティベルの斧を押し返し始める! 一瞬臆したソラスティベルはしかし、湧き上がる侍たちと咲き誇る白い花を思い浮かべて腕にムチ打つ。
「私、だってっ! 負けられないのです! この世界に生きる皆さんを、守るためにッ! 勇者の名に賭けて―――――――っ!」
 二色の光が爆発し、劫炎のパンチが蒼を呑み込みぶち抜いた! KRA-TOOOOOOM! ソラスティベルを殴り飛ばした昌次の元へ、鬨の声を上げる兵士たちが集まってくる。その遥か天上に開いたホロウィンドウからメイスンが這い出し、呆れた眼差しで昌次たちを見下ろした。
「よぉ暴れるもんじゃの。いい加減大人しくしたらどうなんじゃ」
 かざされたメイスンの両手先に二枚の大型ホロウィンドウが召喚された。ウィンドウの表面から無数の01が隆起し、泡のように破裂。中から現れたアゼリアとリヴェンティアが現れ、さらに周囲を01で構成された電脳槍が大量発生した。霧と蒸気に包まれた目下を見下ろし、アゼリアが言う。
「それでは手筈通りに」
「了解でス! 光無き燈火・円環の理・小さくも大きな刃を持つ我が子よ。この世界にその姿を見せよ! ハムちゃんズ、アゼリアさんを守るでス!」
「ひとまず、串刺しじゃの」
 リヴェンティアが指笛を吹くと同時、真っ直ぐ落ちていくアゼリアの周囲に無数の冷気が点々と収束。それは青い毛並みのハムスターに変化し、アゼリアの全身に取りつきひとつの大きな毛玉となった。濃い冷気に包まれ、彗星の如き形態となったアゼリアは落下。霧の中で巨大な気配を察した昌次は空を見上げた。
「構えよ……来るぞオオオオオオオッ!」
 前足を振り上げていななく騎馬にまたがったまま、武田騎馬兵はそろって垂直に飛んだ! ミサイル掃射めいた彼らを、メイスンの電脳槍が貫き地面にぬい留める。メイスンの両腕が爆発する中、ハムスター彗星はなおも下降。昌次が刀を両手で握りしめ、霧を破った彗星に刃を突き上げた、瞬間!
「未だ見ぬ花は果てない夢。儚く咲き誇る雪のように……冬に輝く幻想の花」
 アゼリアの声がしっとりと沁み渡り、ハムスター彗星が青白く光った。BLIZAAAAAAAAARD! 赤を塗り潰す猛吹雪が拡散! それはマグマを氷河に、火炎の騎馬隊を一瞬のうちに氷像へ変え、氷の花で満たされた蒼氷の花園に仕上げてのけた。
 吹雪の爆心地から離れた地点、ふわりと降り立ったアゼリアは自分の両手と体を見下ろす。黄橙色の亀裂が無いのを確かめ、喜色満面の笑顔!
「無事ですね。ふふっ! わたし、やりましたっ!」
 両拳を握ってガッツポーズしたアゼリアが、突如として起こった地鳴りによろめいた。彼女の後方、地面から巨大な門が出現! その上に立った莉亜が、右手の平を振り下ろす!
「開門、第三圏へ直結。裁きの時だ……ケルベロス!」
 骸骨の装飾を施された巨門が左右に開かれる。門の奥には漆黒の闇と、輝く三対六つの眼光。門から飛び出したのは超巨大な三つ首の番犬!
『GRRRAAAAAAAAAAAAAARGHッ!』
 大地を揺るがしながら唾液をまき散らし、ケルベロスが氷漬けになった昌次をめがける。
 細かく振動し、爆炎を吹いて破裂! ロケットじみて飛翔した昌次はケルベロスの前脚とすれ違い、その首筋へ肉迫した。SLASH! 赤い剣閃が三つ首を一刀の下に断つ! ケルベロスの背に飛び乗った昌次は莉亜へと突進。莉亜は天使の翼じみた刃を持つ白鎌を突きつけ、迎え撃った!
「ふっ!」
 数合の剣戟をかわし、莉亜が側転跳躍で昌次の背後へ。回転跳躍でケルベロスの胴へ飛び乗ったメルノが炎をまとわせた両脚で加速! 赤橙色に燃えるトンファーで殴りかかった! 右の殴打を刀で弾いて昌次の頭突きを、左トンファーで受けたメルノがサイドキックで蹴り飛ばす!
「まだやッ!」
 浮き上がった足をつけて制動をかける昌次へ、メルノが再度肉迫していく。昌次は真後ろから仕掛けた莉亜の首狩り斬撃を屈み回避し、炎の腕で彼をつかんだ。莉亜が黒く爆散、蝙蝠の群れとなって拘束を脱したところで昌次は炎の裏拳を繰り出し、メルノをトンファーガードごと殴り飛ばした。
「ぐぁッ!」
 昌次は吹き飛ぶメルノを見据え、居合い斬りじみた構えを取って中腰姿勢。彼の足が番犬の背を踏みしめた直後、巨大なハンマーを振り上げたアーサーが昌次に飛びかかった。彼のベルトから電子音声!
『Select……SMASH ACTION!』
「バスターホーンの馬力……受け止めてみろおおおおお!」
「…………」
 昌次の面頬が火を噴き出す。彼はアーサーに向き直り、刀身に炎の左手を滑らせ、突きを撃った! 刃は振り下ろされたハンマーの頭部を穿ち、内部に炎を流し込んで爆破。そのまま一歩踏み出しての斬り下ろしがアーサーの胴を裂く!
「っく……!」
「斬る」
 下ろした刃を返した昌次が斬り上げで追撃せんとしたその時、彼の足元を蝙蝠の群れが黒い奔流めいて駆け抜けた。具足が噛み砕かれ、下から鮮血じみて噴炎がほとばしる。後方に抜け、寄り集まった蝙蝠の一団の中から出てきた莉亜は、火のついた煙草を口にくわえた。
「僕の煙草の為にわざわざ火を出してくれるなんて。サービス良いね?」
 一服しかけた莉亜は派手に咳き込んだ。彼の隣に呆れ顔のメルノが並ぶ。
「ごほっ、がはっ! ……喉が、あづい……」
「そらそうやろ。ステーキ希望か!」
「ミディアムレアで。口直しを所望する。……幽霊はマジでやばかった……アレもだけど」
「はいはい後でな。行くでっ!」
 トンファーを携えたメルノが爆炎を引いてスタート! アーサーの拳を刀でさばき、鉄拳振り下ろしで彼を叩き伏せた昌次に殴打を仕掛ける。前後反転した昌次がメルノの連打をしのぎ、ショートアッパーを後ろに飛んで回避したところで、武者鎧の懐に踏み込んだ莉亜が大鎌を真横に振り抜いた!
 SLASH! 白の軌跡が昌次を押しのけ後方へと追いやる。昌次が炎になった両脚で番犬の背を踏みしめた瞬間、莉亜は鎌で昌次を指し示した。
「アーサー!」
 DRRRRNG! 莉亜の頭上を飛び越えたアーサーのバイクが地に着き急激な加速! 前のめりになったアーサーは真っ直ぐ昌次へ突っ込んでいく!
「うおらあああッ!」
「グムッ!」
 CRAAASH! 吹き飛ばされ、ケルベロスの背より叩き出された昌次へ飛翔する赤黒い閃光。ミハエラは四本腕の光剣を振りかざし、流星めいて昌次に斬りかかる!
「ハッ!」
 光剣が空気を焼き焦がしながら昌次に素早い斬撃を浴びせかけるも、燃える刀は全てを防ぐ。ミハエラは四刀をひとまとめにして昌次の刀を真横に払った。上両腕を大上段に、下両腕を下段に振りかぶり、海老反りからの四刀を放つ! 昌次は両目を輝かせ、刀を閃かせる!
「オァァッ!」
 一太刀が金属音を打ち鳴らし、ミハエラの手から四本の光剣が飛んでいった。そして彼女の胸を深々と貫く昌次の剣! 光剣を失ったミハエラは、しかしカラになった四つの腕に赤黒いオーラをまとわせる!
「作戦通りだ。これで殺せる程度の相手ならそれで良い。だが、見事迎撃してみせたのなら……それこそが貴様の隙だ」
「なんだと……?」
 昌次が怪訝そうに声を発した、その時である! 回転しながら空を舞っていた光剣が赤黒いオーラを帯びて停止。切っ先を昌次に向け、ミサイルめいて飛翔した。昌次は刀を振り下ろしてミハエラを叩き落とし、空中回転斬りで飛来する光剣を弾き飛ばす! 直後、昌次が軽くのけ反った。
「オオッ……!?」
 肩越しに自らの背中を見る昌次。彼の視界に、背中に突き刺さった二本の光剣が映り込んだ。メインの四本とは別に仕掛けた光刃が赤い武者鎧に命中したのだ! 地上、墜落したミハエラの手足に黄橙色の亀裂が走り、爆発。胴体だけとなったミハエラは、胸の穴から電光を零しながら呟く。
「後は……任せたぞ……!」
 滞空する昌次と同じ高さに巨犬の顔面が昇った。ケルベロスの首元には大きな絵筆を持った雁之助!
「この世ならざる幻獣ならば、筆一本で描き出せるんだなー。片手があれば、それで充分!」
 雁之助は絵筆を突き出す!
「画令転生! 反撃なんだな、ケルベロス!」
『GRRRRRRRRRRRR!』
 ケルベロス中央の頭部が昌次を一口で飲み込んだ。巨犬の頭部が膨れ上がり、CABOOOM! 爆発を突き破った昌次がたじろぐ雁之助をなます斬りにしてのけた。燃える前蹴りで蹴飛ばし、振り返りながら残るケルベロスの首を再切断!
『GR……』
 前のめりに崩れ落ちる番犬。その周囲地面をぶち抜いて五本の白い大柱が突き上がる! それは実際巨大な白蛇だ! 蛇の鱗を垂直に駆け下りながらロカジは長刀を振りかぶった。
「気張れ蛇ども! 寒いって? こっちはさっきから斬られたり炙られたりしてるんだよ! いいからそのままだ!」
 怒鳴り散らすロカジにレイが並走。白熱するエネルギーブレードを携えたまま、足並みそろえて昌次へ!
「切り込むよ! 準備はいい!?」
「へへっ、実は接近戦の方が性に合っててね。刀を持つと、戦魂に火がつくのさ。愛用の長刀を抜けば、ここは僕の世界だ!」
「そう? なら頼りにさせてもらうよっ!」
 大蛇の足場を蹴って直線降下! 昌次を挟む形で立った二人が仕掛ける挟撃剣閃を、昌次は炎手と刀身で撃ち返す。回転斬撃を跳躍回避したロカジが兜をかち割らんとするも昌次はサイドステップでかわし、フルスイング追撃を鉄拳相殺! 武将が放つ反撃の一撃がロカジの鎖骨と肋骨を破壊した。
「いっ……がああッ!」
「フンッ!」
 ロカジがケルベロスの背に叩きつけられた。だが彼は燃える刃を片手つかみ、手の平を焼かれ肌が裂けるのも構わず握る! 剣を引こうとする昌次の横面に、レイが白く輝くエネルギーブレードを突き出した!
「魔力放出! リリース・オブ・フェノメナ!」
 SMACK――――CABOOOOM! 純白の爆炎が昌次をケルベロスの背中から追い出した。氷の花畑に降り立った昌次は鬼の仮面を上方へ向け、そこで硬直した。倒れたケルベロスの上空に、杖を抱えたメンカルとフクロウ型ガジェットが多数浮遊していたのだ! メンカルは眼鏡のレンズを埋める情報を流し見して目を閉じる。
「……さて……これは酷い……。……単純な怨念と憎悪だけで組み上げられたプログラム。条件Aを満たせば発動する純粋な罠……」
 目蓋が開かれ、眠たげな瞳が昌次を見下ろした。
「……お前の無念は判る。でもそれを八つ当たりに使われたらたまった物じゃない……だから、その妄執を引き剥がす……!」
 そう言って、メンカルは銀月の杖を高く掲げた。杖から垂れた三本の鎖、その先に下がった宝石が輝きを放ち、彼女の頭上に巨大な魔法陣を作り出す!
「……合成魔法陣展開……氷に生まれし聖なる刃よ、舞え、穿て。汝は宣告、汝は啓示。魔女が望むは燃える憎悪を封じる氷河……!」
 魔法陣から飛び出したのはビルほどもある氷の剣! 冷たく光る巨刃の下でメンカルは杖を縦に振るった。
「……引き裂き、凍てつけ。これこそは断罪の剣。……コキュートス・コンヴィクション……!」
 氷剣が一人でに刃を振り下ろした瞬間、空間に縦一直線のヒビが入った。ヒビはたちまち戦場中の空間へと広がっていき、KRA-TOOOOOOM! ガラス球が砕けるように空間が破砕!
 キラキラと散る無数のガラス片のような光が、猟兵たちの目を奪う。戦場を取り巻く炎の竜巻は消え、周囲の風景はインクをまき散らした平原と丸く切り取られた氷の花園のみとなっていた! 頭上から魔法陣と剣が消えたのを確かめたメンカルは、杖を下ろす。
「……『我が前に立て、武士たるならば』、『本陣、雷鳴轟く霊峰が如し』、共に解除……これで、遠距離攻撃は解禁できたはず……」
「我が戦場がッ……! おのれ、貴様ァァァァッ!」
 怒りに吠え、跳躍せんとした昌次の足がガチリと止まる。彼が驚いて足元を見下ろすと、紅蓮の炎で出来ていた足は腰まで凍りついており、小規模な氷雪の花吹雪にまとわりつかれていた。枝状の短杖を片手に、離れた場所でアゼリアが微笑む。
「本当ですね。遠距離攻撃、使えるようになっています」
 アゼリアを横目でにらむ昌次。そのワン・インチ距離にメルノが転がり込んだ! すぐそばでかち合う二人の視線。メルノは口角を吊り上げるとトンファーを投げ上げ、腰に吊った二丁拳銃を引き抜いた。昌次の鎧に押し当てられる銃口!
「オオ……それは! それはまさかッ!」
「鉄砲は遠くから撃つだけやない。それこそ、刀と結ぶ位の距離でも戦えるんや。うちは武士やない、それどころかアンタの大嫌いな銃士やけど……確かにアンタの前に立ったで」
 引き金が絞られると共に、昌次は炎刀を振り上げる! だがメルノの方が一瞬速い!
「『旋風連射』、零距離射撃! 全弾持ってけぇ!」
 BRRRRRRRRRRRRRR! おびただしい数のマズルフラッシュが瞬き、鎧の胸にいくつもの弾痕が刻まれていく! 炎の足を縛る氷が少しずつ砕け、昌次の体が徐々に浮き上がっていき――――BLAMN! 最後の銃声が炎武将を斜めに吹き飛ばした!
「オオオオオオ……オオオオオオオオオオオオオオ!」
 絶叫した昌次の体が宙空でピタリと止まった。BOOOOOM! どこからか吹き寄せた紅色の奔流が幾筋も昌次を包み、小型太陽じみた炎球を形成。一気に膨れ上がる火炎の塊が激しい熱波をまき散らす! 燃焼の音に混じって響く、憤怒の言葉!
「オオオオオオオオオオ! オオオオオオオオオオオオオオオオオ! どこまでも、どこまでも決闘を汚すか卑しき者共よ! 許さぬ……全ての戦士の誉れを汚す貴様らを! それを時の流れと傲慢にも言い放つ今を! 生かしては置けぬウウウウウウウウウウッ!」
 CABOOOOOOOM! ビッグバンじみた爆発が巻き起こり、猟兵たちに高熱の風が吹きつける。轟と唸る暴風の中、炎の巨人が立ち上がった。全身が爆炎で出来た巨大な鎧武者が空に雄叫びを解き放つ!
『オオ―――――――――オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
 激しい熱波が氷の花園を瞬時に蒸発させ、平原を黒い焼け野原に変貌させた。巨人の足跡は拡大して大きなマグマの池となり、外縁を侵食して広がっていく。地に伏せたソラスティベルは両手で顔を庇いつつ、変わり果てた昌次を見やった。
「……なんですか、あれ。炎の、巨人……?」
 メンカルが無表情で眺め、汗でずり落ちかけた眼鏡を直す。
「……あれは……まるで、巨人王スルト。終末をもたらす破滅の炎……」
「神々の黄昏ですか。わたし、その言葉嫌です! 燃えてしまいます!」
 焦ったように言うアゼリア。一方蔵乃祐は顎に手を添え、皺の寄った眉間に汗をにじませる。目線は巨人昌次の足元、範囲を広げるマグマと彼が手にした炎熱の刀に向けられていた。ゆらめく陽炎のせいで、刃の輪郭がつかめぬ!
「燃える、で済めば良い方ですね。これが思うさま暴れれば、三方ヶ原は溶岩地帯に成り果てます! なんとしてでも止めなければ!」
 続いて、身を起こしたカイムと物九郎が嘆息。
「いつの間にか、笑ってられねえ事態になってやがるぜ。ったく、どうなってんだ戦国武将」
「いやァ、ほとほと狂ってやがりますわ。鉄砲憎しでココまでなりますかね、フツー」
「大ジョブ大ジョブ! みんなで力合わせれば、なんとかなるでス! ランセー! ランセでスー!」
 リヴェンティアの底抜けに明るい声が、仲間たちを微苦笑させる。あやは気を取り直して自分の頬を張った。
「よしっ!」
 マイクを構えて息を吸い、大声で挑発!
「こっちを見ろぉーッ! あんたなんか……いくらでっかくなったって、ちっとも怖くないんだから――――――ッ!」
 巨人は陽炎揺らめく剣を掲げ、憮然と返す。
『恐れぬならば来るが良い……これぞ武田の一刀なりて……荼毘刀・零刃帝!』
 巨人の刀が大上段から振り下ろされた! 猟兵たちは即座に左右に分かれてこれを回避。刃の当たった部分は即座に融解して溶岩帯に早変わりした。背後に置き去った火山地帯を尻目に、莉亜が溜め息を吐く。
「煙草の火、どころじゃないか。血も煙草も吸えないし、嫌だね」
「アレをライターにしようっていう発想、ボクは流石にどうかと思うな?」
 苦言を呈したレイは疾走しながら周囲に大量の鍵を召喚! ブレーキをかけ、あやに向かって炎剣を振り回す巨人の右半身を指差す!
「この鍵で開くのは可能性、この鍵で閉ざすのは不可能! 滅びの炎よ、閉ざされ眠れっ!」
 レイが腕を振ると同時に鍵が魚群じみて昌次へと飛翔していく。しかし巨人昌次は蝿を払うように腕をひと薙ぎして鍵を全て焼き払い、膝下を駆けてくるあやを斜めに斬りつける! あやは剣と地面の隙間にスライディングで滑り込み回避! 恐るべき熱が彼女の面の皮を焼き滅ぼした。
 他方、巨人の左側に回り込んだメイスンが宙に浮かべたウィンドウを金の腕で高速タイプ。巨人の頭上にアメジスト色の01が嵐の如く渦巻き、大量の槍でハンマーの頭部のような形を生み出す!
「デカいやつには、まぁこれじゃろ。『カズィクル・ベイ』!」
 昌次の脳天をめがける槍ぶすま! しかし彼は刀を真上に突き上げ、全部まとめて焼き払う。だがその一瞬の隙を突き、巨人の左右から莉亜とリヴェンティアが大跳躍! リヴェンティアの両肩に乗ったハリネズミとフェレットが難しい顔で腕を組み、うんうんと唸り始めた。剣を振り上げるリヴェンティア!
「由希くんは情報活性! イチくんは防御網展開でス! みんなで勝つためにGOGO! な気・持・ち―――――っ!」
 ハリネズミとフェレットが鳴き声を上げ、リヴェンティアの剣に両手をかざして赤紫と青紫のオーラを注ぐ。二色の輝きを帯びた剣をリヴェンティアは思い切り振るう!
「とりゃ――――――っ!」
 切っ先からムチ状に伸びた光が昌次の体をグルグル巻きにして縛り上げた! 光に沿う形で大量の管狐が炎の巨体を取り囲み、咆哮する昌次の動きを完全に封じ込める。リヴェンティアは離れた莉亜に肩の小動物と共に手を振った。
「準備オッケーでス! 今がチャンスな気持ちーっ!」
「そのまま捕まえててくれよ、リヴェンティア」
 突き出した莉亜の右前腕部が黒い霧に包まれ、悪魔じみた形状に変異。勝手に暴れ出す五指を押さえるよに手首をつかみ、莉亜は小さく呟く。
「欠片でも現世に出してあげるんだから、僕に感謝してよね」
 悪魔の手に力が込められると共に、濃紫色の重力帯が昌次を上から押さえつけた! 苦しげにうめく巨人をよそに、莉亜は手の平を上向けて指先を上げた。
「きみの出番だ、カイム!」
「おうよ!」
 紫の反重力に飛ばされたカイムとロカジが昌次の顔面と同高度に至る。ロカジは丸薬の入った小瓶を片手に、カイムを訝しく見やった。
「ったく、本当にやるわけ? 薬は用法用量守って使えって言われなかった?」
「やんなきゃ俺たちが死ぬだろうが。どっちにしてもヤバいなら、生き残れる方を選ぶね」
「やれやれ……」
 縮めた首を振り、ロカジは取り出した丸薬をカイムに弾く。もうひとつ取り出して、彼は薬瓶を投げ捨てた。
「仕方ない。ここはひとつ、付き合いますか」
「ハッ。遅れんなよ、ロカジ! 届かせるぜ、この一撃ッ!」
 二人はそろって丸薬を口に含み、噛みしだく! ZGYAAAAM! 激しい雷をまとい、虚空を蹴って昌次の眉間へ一直線! 
「折角の合体技だ! 技の名前でも叫んでみるか!?」
「いいね! かっこいい名前で頼むよ!」
「ならやるか!」
 一本のレーザービームと化して炎の兜を貫通し、巨人の顔面に大穴を開けた! 巨人の後方に抜けた二人は、視線を交わして一緒に叫ぶ!
『神槍・鳴神!』
 CABOOOOOM! 巨人の頭部が大爆発し、僅かに揺らぐ。グラグラとふらつく昌次の両サイドを挟んだメンカルとアゼリアは自分の杖を正中線に据えて目を閉じた。
「……冬の幻花よ、咲け、開け。汝は幻想、汝は氷華。魔女が望むは奇跡を掲げる蒼き薔薇」
「さあ、参りましょう。開花の時です!」
 昌次を中心に広がる蒼の魔法陣! 一瞬の差も無く括目した二人は、杖を捧げるように突き上げる!
『サファイアローズ!』
 巨人の足から下腹までが一瞬で凍結し、氷の青薔薇が無数に花弁を開いて咲き誇る。昌次が頭を修復する間に、手足を金の義肢で補ったミハエラと翼を広げたソラスティベルが炎の断崖じみた胸板に到達!
「手足の修復、感謝するぞメンカル。先程は使っている場合では無かったが……ここまでお膳立てがそろえば話は別だ。対艦魔剣起動……!」
 金の四本腕と光剣を束ね、下段に構えるミハエラ。その手から光の柱が地に突き刺さる! 同時にソラスティベルが掲げた斧が蒼の雷轟を空に放った。
「怖くなんてありません。土屋昌次さん! あなたは必ず! わたしたちの手で倒しますッ!」
 ソラスティベルの啖呵に、ミハエラは僅かに微笑む。
「よく言った。叩き割るぞ、ソラスティベル!」
「はいっ! そりゃあああああああッ!」
 下から巨大な光剣が振り上げられ、上からは雷の戦斧が降り注ぐ! 赤青二条の刃が巨人の胴体を引き裂き、大きな傷から火山噴火じみて炎を吹かせた。炎にふっ飛ばされつつも、ソラスティベルとミハエラは合図を飛ばす!
「今ですっ!」
「アーサー! あや! 奴を叩き出せッ!」
 巨人が闇雲に振り回す刀をステップとスライディングで潜り抜け、アーサーとあやが大ジャンプ! 踊るように回るあやの靴が巨人から溢れた炎を吸い込んで煌々と輝き始める中、二人は昌次の心臓部分に到達! 素早くアイコンタクトを交わす。
「ぶちかましてやろうぜ、あや! 俺たちの手に宿る太陽の力ッ!」
「うんっ! アンタの怒りの思いとあたしの……この戦場で今未来の為に戦っているお侍さんとあたしたちの思い! どっちが熱いか……いざ勝負!」
 振りかぶった二人は拳に炎を宿して巨人の胸へとダイブしていく。周りの風景が紅蓮一色に染め上がる中、アーサーのベルトが音声を放つ!
『Select……BURN ACTION!』
「プロミネンス……インパクトォォォォォォォッ!」
「これが未来への一撃っ! 行っけえええええええええええっ!」
 SMAAAAASH! 巨人の背中が風船めいて膨れ上がり、爆発! 大気圏突破隕石めいて叩き出された昌次が、バク宙を決めて大地に両足を打ち込む。放射状の亀裂が走り砕ける地面。両足を踏みしめて着地の反動を殺す彼に、雁之助が駆けた!
「これで仕上げだ。覚悟してもらうよ!」
 その時、仰向けに倒れかけた炎の巨人は全身をボコボコと膨らませ、紅蓮の暴風を噴き出した! 四方八方・縦横無尽に荒れ狂う高熱の奔流が雁之助の行く手を阻む。が、雁之助は炎の風を飛び越え、潜り、絵筆を振りかぶって昌次に肉迫! 武者に向いた筆先がマシンガンめいてインク弾乱射!
「そりゃッ!」
 撃ち出される色とりどりの弾幕に、昌次は正面から突っ込む! 自分に当たる軌道の弾を撃ち落とし、瞬時に雁之助まで距離を詰めていく。雁之助の真後ろから跳躍したメルノが、二丁拳銃をガンスピン!
「一、二、三、四、五、六、七、八……九秒きっかり! 撃ち抜くで!」
 漆黒と白銀の拳銃が昌次に向けられ、火を噴いた! 昌次は迫る大口径弾丸を斬り捨て、二人まで一気に肉迫!
「オオオオオオ……痴れ者が、痴れ者が、恥を知れェェェェェェいッ!」
「こっちの台詞なんだな!」
 剣を振りかざされるのと同時、雁之助とメルノはバックジャンプで爆炎の暴風に身を隠した。構わず叩き斬る昌次! 両断された炎の奥に居たのは二人ではなく――――。
「残念、俺めだ」
 猫目をかっ開いた物九郎が巨大な鍵を振り上げる! 下顎を撃ち抜かれ浮き上がった昌次の腹を、物九郎は手にした鍵で貫いた。雁之助がまき散らしたインクが蒸発し、霧として物九郎の体にドレインされていく。腕の筋肉を隆起させた彼は前後反転し、一本背負いめいて鍵を大きく振りかぶる!
「どらああああああああああああああああッ!」
 THROWWWWWW! 派手にぶん投げられる昌次。彼の飛んでいく先に居るのは、数珠を巻いた二の腕を引き絞った蔵乃祐だ! 下方向へのラリアットで昌次を地に叩き込む。大きくバウンドした昌次の前に降り立った蔵乃祐は居合い斬りの構えを取った。息を吸って吐き、両目を見開く!
「發吒ッ!」
 抜き放たれた剣が昌次に何重もの斬撃を積み重ねていく! SLLLLLLLLLLLLLLLLLLLL! 蔵乃祐の剣は加速し、昌次の鎧をさらに細かく斬り刻んだ。蔵乃祐は最後に大きく刃を掲げる!
「はアアアアアアアッ!」
 SLAAASH! 全力の斬り下ろしを受け、武者鎧が粉微塵に散った。鎧の中に詰まっていた爆炎が火柱を上げて熱波を散らす。耐え切れず吹き飛ばされる蔵乃祐! 火柱の中、体格のいい男の焼死体が身をよじらせながら声を枯らす!
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ! まだだ……まだなのだ! 雪辱果たせずして、死ねるものかッ……! グオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
 BOOOOOM! 火柱が霧散し、燃え尽きた黒焦げの焼死体が両膝を突いた。白い煙を上げる頭が、ぎこちない動きで猟兵たちに顔を向けた。目に当たる部分はとうに炭化し、顔の輪郭以外はもはや判別不能。顎をガクガクと震わせる死体を、猟兵たちは油断なく身構えたままじっと見つめる。
「オ……オ……なんたる、なんたることか……! この昌次が……動けない、だとォ……ッ」
 フシュ――――――。全身が白煙を噴き、昌次は糸の切れた人形めいて項垂れた。メンカルは眼鏡を押し上げて死体を解析、仲間たちに無表情を向ける。
「……ほとんど、死体。まだギリギリ生きてるみたい、だけど……」
「元より死体じゃからの。性質の悪い悪霊じゃからこの世にいただけというか」
 目元を覆う黒ゴーグルを押し上げ、メイスンが付け加えた。蔵乃祐が二の腕に巻いた数珠を解き、念仏を唱えようとする。アーサーはそれを手で制し、死体へ一歩踏み出した。
「死ぬ前に、ちょっと聞いていいか?」
 昌次の頭がぎこちなく持ち上がる。もはや口以外見受けられぬ黒い貌に、アーサーはひとつの巻物を突きつけた。毛筆で『第六天魔軍将図』と記されたそれを見たのか、昌次の口が動く。
「……なんだ、それは……。あの尾張の大うつけが、どうかしたのか……」
「別の場所でこんなん拾ったんだけどさ……あんたらって、ホントに信玄公の為に動いてんのか? それとも……憎き信長に使われてただけっていう、情けないオチとか?」
「愚問なり。我が主君は武田信玄ただ一人よ。だが……オオ、オオオオオオ……これが全て、あの織田の大うつけが仕込みであらば……!」
 昌次は天を仰ぎ、最後の力で焦げた両手を伸ばした。
「許さぬ……武士の誇りを汚し、踏みにじり、なお飽き足らず利用までするか……オオオオオオ! 呪われよ、呪われよ! それが新たな時代の戦い方とうそぶくならば! 塵と化せ! 灰と化せ! 新しき世に炎あれエエエエエエエッ!」
 怨嗟を叫ぶ昌次の体が太陽の如く輝き始め、発光。彼の身体は、爆発四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月03日


挿絵イラスト