6
寛永三方ヶ原の戦い~過去を塗り替えるは今の決意~

#サムライエンパイア #【Q】 #寛永三方ヶ原の戦い #武田二十四将

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#【Q】
🔒
#寛永三方ヶ原の戦い
🔒
#武田二十四将


0




●これからの未来のために
 三方ヶ原の戦い――サムライエンパイアの歴史においても、それは武田軍を相手に徳川軍が敗走した戦である。その歴史の記憶は未だに市井に根付いており……いかに今の徳川が世に太平をもたらす存在であろうと変わることはない。
 故に、かの「軍神」が再臨すると噂されている戦場に向かわねばならない兵士たちの中には少なくない恐怖や畏怖、そしてうっすらとした諦念も感じられる。
 ――そういった戦場の様子を語るのは、いつもよりやや引き締まった表情をしたニコラだ。
「彼らが恐れているのは武田信玄……甲斐の虎と呼ばれ、かつて徳川家康公を破った軍神の再来よ。そして、そんな軍神に仕えていた『武田二十四将』たちもまた、武田家の一部として畏怖の対象になっているわ」
 敗戦の記憶から厭戦ムードが強いのはある程度仕方のない部分もあると前置きし、ニコラは話を続ける。
「――まずやるべきは、そういう状況の打破よ。かつての戦とは違って、今、この場にはオブリビオンに対抗できる猟兵が居るわ。敗北という過去を、今を生きる者たちの力で塗り替える。それが出来ると伝えることが重要よ」
 即ち、猟兵に求められているのは徳川家光公の命により集った軍勢の鼓舞。
「どんな方法を使っても、というと極端だけれど……猟兵としての力を示したり、兵士たちと共に戦の用意をしたり、あるいは演説や説得といった方法で戦意を煽ったり。これまで様々な世界でオブリビオン絡みの事件を解決してきた猟兵だからこそ、説得力のある行動が出来ると思うわ」
 軍勢の鼓舞が完遂できれば、その後は武田信玄復活のために三方ヶ原に集っている武田二十四将たちとの決戦、という段取り。特に二十四将の周辺を固めるオブリビオン兵たちの防御を抜けるためには軍勢との連携が不可欠だという。
「気持ちで負けていれば、勝てる戦にも勝てないわ……だからどうか、彼らの気持ちを支えてあげてちょうだい」
 転移ゲートが接続されているのは、ニコラが担当することとなった徳川軍の陣地のひとつ。真摯な願いと共に頭を下げ、ニコラは現地へと跳ぶ猟兵を改めて募り始めた。


Reyo
 はじめましての方ははじめまして、そうでない方はいつもありがとうございます。今回は儀式魔術【Q】により提唱されたシナリオをお届けいたします。

 本シナリオは全3章で構成され、7月30日までの完結を目指すシナリオとなっております。お預かりしたプレイングは可能な限り迅速に判定を行いリプレイ化させていただきます。
 以下、各章の説明と注意点となります。

●第1章:三方ヶ原の徳川軍
 本シナリオ用の固定フラグメントです。甲斐の虎復活という可能性に怯える徳川軍を鼓舞し、戦場へと向かえるよう勇気付けてください。
 OP中にニコラが提示したように様々な方法があります。どのような方法で彼らを奮い立たせるのか、そのアイデアは皆さまの中に。

●第2章:兵器百般
 第1章で徳川軍を鼓舞できた場合、ついに戦闘へと突入します。
 猟兵たちの役割は、徳川軍がオブリビオン武田軍と競り合っている間に、敵方本陣に居る武田二十四将の元へとたどり着き、将を討ち果たす事となります。
 第2章では戦場を駆け抜けつつ、将を守る護衛オブリビオンたちと対決します。

●第3章:戦国武将
 武田二十四将いずれかとの対決となります。
 どの二十四将が指揮を執っているのかは現地にたどり着くまでわかりません。現場で明らかとなる情報を元に、将の首獲りを完遂してください。

 それでは、皆さまのプレイングをお待ちしております。
94




第1章 冒険 『三方ヶ原の徳川軍』

POW   :    陣頭に立って力を見せつける事で、徳川軍の戦意を高揚させます

SPD   :    兵士一人一人への細やかな配慮や事前準備によって、士気を上昇させます

WIZ   :    演説や説得によって、徳川軍のやる気を引き出します

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

草野・千秋
武田信玄……この世界でも名を馳せた武将なのですね
しかし世界も違えばその存在の象徴も違う
この世界を脅かしているんですね
ともかく僕も少しでも力にならなければ
僕達猟兵は今を生きて、過去を覆す存在なんだ!

兵達と共に戦の準備
情報収集、コミュ力で警戒心を解くように柔らかく話しかける
僕達援軍が来たからには大船に乗ったつもりで
ドーンと任せて下さい!
そちらの世界にもありますよね、この言い回し?
(にっこり笑って)

ちょっとした宴の準備をし、UCで鼓舞の歌を歌う
「Cloud cuckoo land」
ちょっとそちらの世界では
馴染みのない横文字のタイトルで申し訳ないですが
これで士気が上がるといいのですが



●雲間の理想を求める歌
 音楽というものは、国を超える。万人の持つ「心臓の鼓動」や手拍子で刻むビート、声や息遣いにより成り立つ歌など、言葉という垣根を取り払う根源的な要素が含まれているからだ。
 故に、そのアカペラの歌詞が耳慣れぬ異国の言葉で紡がれていても――その勇壮な雰囲気と理想郷を目指す前向きなリズムは徳川軍兵士たちの耳に違和感なく馴染んだ。
「――急にすいません。少しでも皆を勇気付けることが出来ればと思って、歌わせてもらいました」
 Cloud cuckoo land……その歌で最も盛り上がるサビの部分を一通り歌い上げ、兵士たちの注目を集めた草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)がぺこりと一礼する。
「いま僕が歌ったのは世界のどこかにある理想の国を目指し、どんな困難があってもそこに辿り着こうという決意を紡いだ歌です」
 静かにゆっくりと、言葉が兵士たちの心へと届くように千秋は続ける。
「武田信玄、彼が名を馳せた武将であることは僕もよく知っています。そして、今、その武将がこの世界を脅かそうとしていることも」
 そこで言葉を区切り、千秋は己に注目する兵士たちの顔をぐるりと見回す。そこにあるのは未来への不安、脅威への畏怖。それと同時に、守りたい者への思い。
「家康公をも負かした信玄を恐れる気持ちはよく判ります。だけど……今回は僕たちが、猟兵がいます」
 兵士たちの表情に僅かに熱が戻る。そう、今と昔では状況が違うのだと気付いたから。
「それに、ここに居るのは猟兵だけじゃない。あなた達という、今を生きる人が居ます。僕も、あなた達も、今を生きて過去を覆すことができるんです!」
 ざわり。兵士たちに宿った熱が、じんわりとその心に灯をともす。
 ――そうだ、俺たちがやるんだ!
 ――応、家康公の屈辱を注ぐのは今だ!
 誰かひとりがそう呟けば、それがふたりへと。そして三人、四人。じわりじわりと熱が伝わり、やがてこの陣にいる全ての者へ。
「僕達援軍が来たからには、大船に乗ったつもりでドーンと構えて下さい!」
 この言い回し、この世界にもありますよね? と首を傾げる千秋に兵士たちはこくりと頷く。
「さぁ――心の準備は出来ましたか?」
 行きましょう、という千秋の声に兵士たちは鬨の声で応えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ラムダ・ツァオ
機先の情報こそ大事なのはいつでも同じこと。
というわけで、一足先に戦場の様子でも探ってきましょう。

敵軍の動向も調べられればいいけど、
戦場の様子、足場、高さ、動植物などの地形状況、
足跡などの有無、
情報は多いに越したことはないわ。
後は確実に持ち帰って、頭の回る人たちに任せましょ。
勿論、敵に見つからないように気を付けないと。
こちらも足跡を残さないよう、気を配るわ。

それと武田といえば歩き巫女、忍びも有名よね。
こちらの情報を探っている可能性もあるから、
陣へ戻ったら、見慣れない人がいなかったか、集まった人たちに話を聞いておかないと。
不審な人がいれば、賢者の影を使いつつ、どちらから来たか尋ねてみましょうか。



●厭戦気運を断ち切る意志
 スタリ、と。戦場偵察を終えた1人の猟兵が徳川軍の陣地へと帰参する。闇に親しむ黒の色を全身に宿した彼女はラムダ・ツァオ(影・f00001)。
「敵将の名前こそ判らなかったけれど……地形情報におおよその規模がわかれば十分な収穫でしょう」
 そう呟きつつ、ラムダが向かうのは前線の情報を統括し指示を出すための将兵が集う陣営、そのうちのひとつ。
 ラムダが陣を仕切る布を捲り上げた音に釣られたのだろう、そこで額を突き合わせて会議をしていた徳川軍兵士たちが一斉に彼女を振り返った。
 ああ、猟兵殿ですか――そう言ってラムダを迎える前線指揮官の表情も、厭戦気運にやられてか心なしか悪い。
「ああ、今帰ったわ……ひとつ、安心して。先のことはこれからの戦次第だけれど、今この瞬間、武田信玄が蘇っていないことは確実よ」
 ラムダがそう報告した瞬間に、陣全体に安堵のため息が満ちる。それだけ、家康公と信玄の逸話はサムライエンパイアの人々にとって「重い」ものだという証左だ。
「それと、戦場になり得る場所……そっちの軍師さんが出してくれた予測に沿って一通り見て来たわ。報告はこっちに纏めてあるから、あとはこれを使える人たちで存分に使い倒してちょうだい」
 ラムダが差し出すのは和綴じの冊子と数枚の地図。それらは軍全体の作戦を司る者たちにとって垂涎モノの成果だ。
 しかし……その情報に目を通しながら、なお悲観的な表情を崩さない将が1人。
「……しかし、信玄公が居ないといっても相手はかの武田二十四将。我々だけでどこまで抗えるか」
 どこか大袈裟な所作で首を振り、その将は後ろ向きな意見を大声で述べる。
「あら……機先を制すには十分な情報を持ってきたつもりだけれど」
「情報だけで戦に勝てるのならば、どれほど楽か」
 眉をひそめて首を横に振るその将に、ラムダは1つの確信と共に問いを投げた。
「そう――貴方は徳川幕府に忠義を捧げる立派な将だと思っていたのだけれど、違う?」
 疑問形の語尾はその答えをはいかいいえの2択に絞るもの。首を縦横のどちらに振ればいい簡単な問いに――しかし、その将は凍り付いたように動けない。
「もしかして貴方……実は甲斐の方がご出身じゃあない?」
 応えぬ将に二の矢を放つラムダ。
 未だ応えぬ将の身体がぐらりと傾ぎ、倒れた。
 ユーベルコードの名は賢者の影。答えるのが簡単な問いかけであればあるほど、真実を告げぬ者に厳しい報いを与えるもの。沈黙による嘘を保とうとしたその将――武田の手の者が忍び込ませた間者がその効果により絶命したのだ。
「……これで、一丁上がりね?」
 徳川軍の気勢を削ぐべく、武田の間者が潜り込んでいる。その情報を持ち帰り、なおかつ機転を利かせて対処してみせたラムダの存在は、徳川軍の心を奮い立たせるのに十分であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セゲル・スヴェアボルグ
鼓舞するのはいいが、飛び出して玉砕でもされたら敵わんからな。
最低限の自分自身の力量ぐらいは把握してもらわんと困る。
まずは準備運動を兼ねて兵たちを軽く揉んでやるとしよう。
こちらも力を示してやらんと、話を聞く気にもならんだろうしな。

自身の弱さを悲観する必要などない。弱さを知っているからこそ、人は強くなれる。
何も一人で全てを抱え込む必要はない。己ができることを成せばそれでいい。
一手一手の積み重ねが活路を開く。
周りには志を同じとする者達がいる。
出来ない事は出来るやつに頼れ。
それでも傷つき死ぬのが怖いのならば、俺がお前さん達の盾となり、壁となろう。

お前さん達は生きる為に抗う。
それを忘れるなよ?



●強くなるための弱さ、生きるために為すべきこと
 弱さは恥じるものではないと、彼は知っていた。だからこそ、徳川軍の兵士たちを見て彼らに最も必要なのは己の弱さと、それでも出来ることを知ることだと考えた。
「どれ、戦の前の準備運動だ。自分が背中を預ける奴の実力、知りたくはないか?」
 戦意を鼓舞し、戦場に向かえるようにするのは良い。だが、無謀に飛び出して玉砕しては無駄死にだ。
 無駄死にするなと訓戒を垂れるも良い。だが、彼らとてつわもの。力の示せぬ者の言葉は届かない。
 今、この場に参じた猟兵のひとりとして力を示す。そして、それを兵士にとって最も判りやすい方法で伝えるのであれば、セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)が選ぶのはまずは己がどういう覚悟でこの場に居るのかを示すこと。
「1人では怖いか? ならば2人で。それでも怖ければもっと数を頼るといい」
 巨大な錨槌と大楯をそれぞれ片手で構え、じわりと兵士たちとの距離を詰めるセゲル。その巨躯が武器と共に迫れば威圧感は拭えず、兵士たちは委縮したように後退る。
「どうした? 俺1人相手にその様では、武田軍を相手にしたときには尻尾を巻いて逃げることしか出来んぞ」
 セゲルが錨槌を振り下ろす。軽々とした動作に反し、大地に穿たれた痕は深い。
「己が出来ることを考えろ。己が出来ないことは誰なら出来るか、友の顔を思い浮かべるといい。独りでは無理でも、集えばできることがあると胸を張れ」
 振り下ろした錨槌を、そのまま大地に線を描くようにして横へ振る。セゲルが示すのは、覚悟と決意を表明するための一線。
「さぁ、コイツとなら俺にも立ち向かえる。そんな仲間は居たか?」
 沈黙。兵士たちが押し黙る――ほどなく、そのうちの1人が震える手で刀を抜いた。
「来るか。俺からはその線を超えるまで手出しせんが、実際の戦場で敵は待ってくれんぞ」
 錨槌を担ぎ上げ、大楯を前に。臨戦態勢を取りつつ、セゲルは覚悟を決めた兵士に向けてニヤリと笑顔を向けた。
 じわり、と間合いを詰めるのは兵士から。それは1人の独断ではなく、複数人の決断によるもの。ある者は槍を構え、ある者は矢を番え、そしてある者は火蓋を切る。それぞれの得意とする武器を持ち、威圧の姿勢を崩さぬセゲルに向けて一歩を踏み出す。
「そうだ、それでいい。活路を一撃で開けずとも、手数の積み重ねは必ずものを言う」
 刹那。
 兵士たちがセゲルの引いた線を踏み越えるに要した時間は一瞬。普段の訓練によって研ぎ澄まされた連携攻撃が間断なくセゲルへと降り注ぎ、
「――そして、それでもなお。傷つき死ぬのが怖いやつが居れば俺を思い出せ。こうやって、お前さん達を守る盾となり、壁となろう」
 その全てを、セゲルはユーベルコードに頼ることなく防ぎ切った。
「貴殿らは、生きる為に抗うのを忘れるな。それを忘れない限り、必ず間に合ってみせる」
 ゆっくりと構えを解きながら、セゲルは真に伝えたい事を言葉に籠める。
 それを受け取った兵士たちの目に灯るのは、戦いに臨み必ず生き残るという決意であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

胡・翠蘭
※アドリブ歓迎

甲斐の虎…こちらの世界もなかなか、騒がしくなっておりますのね…
敗戦の過去があるともなれば、士気を高めねばまず刃を向けることも難しくなりそうですわね?

【SPD】
UCで分身体を生み出し、それぞれで兵の皆様たちに声をかけさせて頂きましょうか
鎧の紐を結び直して差し上げたり、使い込まれた武具を称えたり…

この戦いは…過去、厳しい戦いを強いられた敵とのいくさ…
ですが、モノは考え様、ですわ
敗れてから悪夢の様に思える脅威をキッチリ倒し、恐れと決別できる…よい機会とはお思いになられませんか?

猟兵も皆、貴方がたと共に戦場を駆けましょう
ですから、どうか
貴方様の勇ましいお姿、わたくしたちに見せて下さいませ



●縁の下で支える力
 その陣営において、他の陣営と明確に違う部分が1つあった。それは、他の陣営では見られない妓女服を着た女性「たち」が働きまわっているという点。人数にしておよそ40。せかせかと動き回り物資を解いては兵士の元へ届け、あるいは武具の最終確認をする兵士の元に侍ってその手伝いをする姿は甲斐甲斐しいの一言に尽きた。
 それらは元をたどれば胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)という名の猟兵へと辿り着く。献身的に兵士たちの世話をする分身たちに交じり、翠蘭本人もまたこの陣営の兵たちを取り仕切る将の身辺に控えていた。猟兵が傍に控えていることに落ち着かないのか、あるいは軍神と呼ばれた武田信玄と対決する事実に震えているのか、将の表情は蒼白に近い。
「戦場に向かうのは、確かに恐ろしいことと存じます」
 かたかたと貧乏ゆすりを続ける将の太腿に手を置き、翠蘭は落ち着いた声音で語り掛ける。
 もし翠蘭がただの妓女であれば、将はその手を振り払っていたことだろう。戦場に出ない女の身で何が判る、と。しかし、ここに侍っているのは猟兵だ。
「こちらの武具……丁寧に整備され、大事に使い込まれたことがよく判ります。きっと数々の戦場を主である貴方と共に駆け、勲を立ててきたのでしょうね」
 ちらりと翠蘭が目線で示すのは将の腰に佩かれた脇差。翠蘭の目利き通り、その脇差は将が元服し初めて戦場に出てから常に共にあった愛刀。この場に居る何よりも、将の経験してきた戦場を知っている戦友だ。
「勝ち戦、負け戦。様々な過去があるのでしょう?」
 将の貧乏ゆすりが止まる。少し遅れて、将はこくりと頷いた。
「モノは考え様、ですわ。敗れた経験も、また貴方の一部。恐れもまた、相対し踏み越えて決別することができれば強さの一部」
 言葉を区切り将の反応を伺う翠蘭。ちらりと翠蘭を見た将が続けるよう目で促す。
「良い機会です。貴方だけではない、徳川の世に刻まれた悪夢に等しい脅威、それをきっちりと倒し過去の箱に収めて決別するための良い機会とは思われませんか?」
 考え込むように、将は遠くを見た。天幕の上から見えるのはしばらく後に徳川軍と武田軍がぶつかりあうこととなる合戦場。そこへ思いを馳せてしばらく。座り込んでいた椅子からゆっくりと立ち上がり、将は翠蘭の目をまっすぐと見た。
「鎧の紐を、確かめていただきたい」
「――喜んで」
 スッと腕を組み、将が申しつければ翠蘭が鮮やかに侍る。将の不安を示したかのように緩く結ばれていた鎧の留め具が、翠蘭の手によって固く結びなおされた。
「わたくしども猟兵も皆、あなた方と共に戦場を駆けましょう」
 全身の留め具をしっかりと検めた後、翠蘭が懐から取り出すのは火打石。
「ですから、どうか。その勇ましいお姿をわたくしたちにも見せて下さいませ」
 景気よく切られる切火は2つ。将だけでなく、徳川の元に集った兵全員の武勲と生還を願って打ち鳴らされたその音は高らかに響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リダン・ムグルエギ

はいどーも
ご用達めいた山羊屋の商品のお届けよー

アタシは戦なんてガラじゃないし下手に鼓舞して死なれちゃやーでしょ
その辺の面倒ごとは他の猟兵にお任せよ

アタシが準備するのは大量に作った防具改造済み衣服とお揃いの鎧の飾り布
鎧自体のデザインはムリだけど…
衣服を緩衝材入りにするだけで鎧の着心地は段違いだし
防刃性の高い布なら生存率を上げられるでしょ?

芸術性の高い飾り布は結束感を高めるパフォーマンスとしては悪くないはずだし
精神的な攻撃というかプレッシャーを和らげる香りとかを付けてもいいかもね

ご要望あるならアレンジくらいはすぐできるわよ
ミシン持ってきたし

うん、大量に売れて購入者も満足な案件ね
コレは楽でいいわー



●商人なりの命の購い方
 リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)は、無駄な労力を嫌う。しかし、それは怠惰だとか不精であるという意味ではない。むしろ、先で楽をするための苦労は好んで行うタイプの性格をしている。
 そんな彼女が戦争において最も嫌う「無駄な労力」とは、それ即ち準備不足による戦死である。もしも、もう少し質のいい防具を用意していれば。もしも、ほんの少し動きやすい肌着を身に着けていれば。そんな「あと少し」を積まなかったことで詰めを誤ることがあれば、それはその寸前まで至った努力を無に帰すことと相違ない。
「はいどーも、山羊屋の商品のお届けよー」
 故にその無駄を出さないため、徳川軍の陣地を商品満載の荷車を曳いて回ることはリダンにとって自然な選択であった。無論、荷車を曳くための省力機構を用意したうえでの行動であり、無駄を省くための努力に隙は無い。
 GOATiaの商標が印刷された紙箱は荷車の上にこれでもかと満載。そこに収められているのはリダン渾身の大量生産システムによって可能な限り用意した改造防具だ。
 とはいえ、ファッションデザイナーにとって鎧や鎖帷子といった重装備は専門外。ここに持ち込まれているのは鎧の下に着こむための襦袢、具足下着、鎧下着といった布製品だ。
「さぁさぁ、着やすい襦袢に踏み込みやすい具足下着、そう簡単には斬られない防刃下着はご入用? 今ならお好みの色で飾り布も付けるわよ!」
 張り上げる声は手馴れたもの。落ち込んだ気分だった陣の中でそんな声が上がれば、兵士たちの目がそちらに向くのも無理はなく。
 まずその声に惹きつけられたのはリダンとよく似た思考の者。次いで少しでも防具の質を上げて生き残りたいという臆病者。そうやって人が集まり始めれば他の者たちも自然と吸い寄せられ、装備が行き渡るのにもそう時間はかからない。
「飾り布に飾り縫いが欲しい? 任せなさい、ミシンは用意してきたわ」
 おずおずとそう言い出す兵士が居れば、荷車から降ろすのはミシン。電気のないサムライエンパイアで使うことも考慮してバッテリー駆動。ついでにいざというときの人力発電ペダルもついた優れものだ。
「襦袢のウリ? 緩衝材が入ってるから鎧の着心地は段違いのはずよ。はい、飾り縫いも仕上がったわ。色はあなたの指定通り、マルに徳をのマークは全員共通よ」
 リダンの早業に、おお、と兵士たちがざわめく。早速飾り縫いのついた布を鎧に結び付けた者たちは互いのマークを見せ合って頷き合う。
「ン? 匂いが気になるのかしら。それならこっちに別の香りの匂い袋もあるわよ、好きなのを持って行きなさい」
 そういった兵士たちの要求も、リダンは幾通りも想定済み。隙の無い準備は円滑な装備更新を最高効率にまで引き上げるリダンにとって最も効率の良い労力の使い方。
「さて――全員、行き渡ったわね?」
 陣の者たちが満面の笑顔で頷くのを見て、リダンもまた得意気な顔で笑う。
「アタシは大量に売れて満足、あなたたちは生存率を上げられて満足。双方お得の大満足な案件ね……さ、次に行って楽にするわよ」
 兵士たちに手を振りつつリダンはまた荷車を曳く。無駄な労力を少しでも減らすため、リダンは時間の許す限り納得のいく方法で労力を支払いつづけるのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『兵器百般』

POW   :    騒霊カミヤドリ
【纏っている妖気の色が血のような赤】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ひとりでに動く武器
【念動力で浮遊すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身が持つ武器としての機能】で攻撃する。
WIZ   :    武器の知恵
技能名「【武器攻撃】【武器受け】【戦闘知識】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●過去より抜かれし武具を越え
 法螺貝の勇壮な音が開戦を告げる。
 かつての三方ヶ原を映したかのように相対した徳川軍と武田軍の陣容が激突を開始する。
 かたや鶴翼を敷いた徳川軍。かつてと異なり猟兵を含むその陣容は武田軍と同等か凌駕する兵数。猟兵たちの参陣により鼓舞された彼らは勇猛果敢に戦場を駆ける。
 かたや魚鱗を敷いた武田軍。過去の残影である彼らがその陣を取ったのは過去に縛られた故か。しかしオブリビオンという強大な力により敵陣を貫くという意味では合理的。
 混沌とした戦場において猟兵に下される命はただ一つ、武田二十四将討つべしの文字。
 電撃的に戦場を駆け抜ける猟兵たちの前へと立ちふさがるのは、将を守るべく過去より抜かれし数々の武具そのもの。
 ひとりでに宙を舞うそれらが作るのは、武具百般により敷き詰められた刃の道に他ならない。
リダン・ムグルエギ

「武田の兵よ!とくと見、震えよ!
西より現れしは身の丈八尺、巨躯に剛腕
奴こそ山羊宇・宙兵衛なり!
かの敵を倒さねば武田に勝利の道など無く!
他兵を眼中に入れる暇もはや無し!


精神を落ち着かせる香は心を抑える毒の霧とも言えるわ
アタシはそんな匂い袋を多量に配布した
なら、戦場には既に立ち込めているはずよ
コードの下地となる香りがね

戦場の外、西側で
空の荷車を縦に立ててアンカーを打ってから
拡声器を使い暗示の声を放つわ

コードの力で荷車を屈強な兵に見せ
敵軍の意識を側面へ向けるために

荷車は壊れてもいいわ
魚鱗陣が横へ向いたり敵陣がばらければ…
仲間達の無双チャンスね

餅は餅屋、後は任せるわ
喋って逃げてアタシの仕事は終わりよ



●戦争の省力化(あるデザイナーの場合)
 徳川軍と武田軍。武田軍を構成するオブリビオンのうち、特に実力のある者が対猟兵に振り分けられた結果、そこにはある種の均衡が生まれていた。どちらかの軍がどちらかの本陣に迫るは難しく、しかしその前線では少なくない血が流れ続け負傷者は時を追うごとに増え続ける。そのような状況で徳川軍が戦い続けられるのは一重に「ここを支えれば猟兵が必ず決着へと至る筋道をつけてくれる」という信頼故。
 だからこそ。
「武田の兵よ! 遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よ! 西より来たりしかのもののふ、身の丈八尺、巨躯剛腕! 山羊宇・宙兵衛その人なり!」
 戦場に響き渡るその声を聞いた徳川軍兵士たち――特にリダンと直接会って防具改造を受けていた者たちは耳を疑った。次いで湧き上がるのは、猟兵とはいえ一介の商人にしか見えなかったリダンもまた、守り通さねばならぬという決意からくる戦意。
 対して、驚いたのは武田軍である。猟兵たちは武田の将が差し向けたオブリビオンたちと交戦中の筈、なぜ徳川軍に加勢している余裕があるのだと。一瞬とはいえ乱れた武田の戦列は、徳川の兵たちに付け入ることを許してしまう。
「さぁさぁ、山羊宇を倒さねば武田に勝利の道などありはせず! 山羊宇以外を眼中にする隙など最早無いと思うが良い!」
 その文言をノリノリで唱え上げるリダン。マーケティングのために学んだ宣伝技法は的確に「山羊宇」なる武士の強さをアピールするが――その実態は虚像である。
 ユーベルコード、ゴートリック・フォース。
 普段であれば己に纏う香りは、既に仕込みとして徳川の兵たちに届いている。であれば、あとは戦場に薄く満ちたそれらを土台に、リダンが狙うのは口八丁の謀。わざわざ徳川幕府御用達の柳生一族と近い響きの偽名を名乗ったのも計略の内。匂い袋の香りを嗅いだ者たちには、空になった荷車をリサイクルしたカカシが「山羊宇」に見えていることだろう。
「さぁて、鼻のないあの武具たちまでは釣れなくても――」
 拡声器を下ろし、そう一息ついたリダンの鼻先を一本の矢が掠めた。
「――餅は餅屋、布石も上々! 遅かったわねオブリビオン、アタシの仕事はちょうど終わったところよ!」
 予想外に釣れた兵器百般に対して、リダンは低く構え。
「皆、後は任せるわ!」
 戦場の攪乱という最大の目的を達成したリダンに迷いなどない。
 転進、180度。グリモアベースと繋がる転移ゲートに向け、リダンは全速力で走りだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
@SPD

…恐らく、それぞれが家臣たちが持っていた武具だったのでしょうね
おまけに本体にはこちら側の武具を使役させる力があるようです

それなら、数には数…で勝負ですね
ボルトアクションライフルを構え、UC【影の模造品】で映し出され、術者の私に合わせて動くボルトアクションの影らを【拠点防御】するよう私を基準にして一列に配置させます
そして迫り来るであろう武具達をギリギリの線まで【おびき寄せ】て…それぞれ個別に狙いを付けながら私が引き金を引くのに合わせ影の銃達も影の銃弾を【一斉発射】し掃討します
この逸話は後世の創作だと言われていますが、弾を装填するためにボルトを引いて、戻し…撃つ
これが私の…三段撃ちです!



●ワン・マン・バタリオン
 火縄の落ちる音というのは、金属同士がぶつかりあう撃鉄の音と本質的に異なる響きを持つ。
 先込め式の鉛玉が宙を駆ける音もまた、同様。特に射程と直結する初速は現代兵器と比べるまでもなく遅いが故に、その音はどこかくぐもったものとなりがちである。
 故に。
「――初弾、命中」
 戦場を切り裂く甲高い銃声は、猟兵のみが放ちうる鬨の声。愛用のボルトアクションライフルを構え地に伏せた秋月・信子(魔弾の射手・f00732)は、その鬨を引き連れた己の銃弾が目標を違わず撃ちぬいたのを見てそう呟いた。
 ユーベルコードに頼ることなく、己の技量のみで為すのはおよそ数百メートルというサムライエンパイアではあり得ない超長距離の戦闘。銃の性質上1km以上離すことも可能な狙撃の間合いをわざわざ縮めているのは、射撃即着弾という即時性を発揮することと、なによりも徳川の兵では対処しきれぬ強さのオブリビオンを惹きつけるため。
 手馴れた動作でボルトを引き、次弾装填。スコープを覗き込みその先を睨めば――信子の予想通り。射程外から一方的に貫かれ砕かれたひとりでに舞う武具の群れ、それらが信子目掛けて殺到し始めている。
「横一列に並んで、こちらの数が少ないと読んでの圧殺狙いですか」
 甘いですね、と呟きながら信子は2発目を放つ。響く銃声は――単独ではない。
 横一列に並んだ銃弾の隊列。そこに並び立つのは50に近い対物徹甲弾。信子の持つ銃から放たれた物を除けばそのすべては影による模造品だが、その威力は本物と遜色ない。
「あの逸話は後世の創作とされていますが」
 鋼が鋼を砕く音が戦場に響く。ユーベルコードにより複製された50本近いボルトアクションライフルから放たれた影の弾丸たちもまた、狙い違わず。一射一殺の精度で武具の姿をしたオブリビオンを貫く。
「こちらの世界では、どうなんでしょうね?」
 言葉と共に放たれるは、ボルトにより送り込まれた3発目の弾丸。信子の操作を写し取るようにして影の銃たちも一斉にボルトが引かれ、再度放たれるは総勢47発からなる銃弾列。
「――これはは私にとって長篠の再現、武田の騎馬兵を破ったとされる三段撃ちです!」
 都合3回の射撃で相対したオブリビオンたちを掃討し、信子は銃を持ち立ち上がる。
 ヒット&アウェイ、ならぬサーチ&デストロイ。射程という有利点を一方的に押し付け、信子はさらに戦線奥深くへと進軍を開始した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

胡・翠蘭
※アドリブ歓迎

あらあら…妖刀と成り果てた歴戦の武具――といったところかしら
ただ命を欲するだけの玉鋼よりも、意志を持ち、護るべきものを持ち戦場に立つわたくしたち…どちらの刃が鋭いか、試してみたくなりましたわ

SPD
UCで分身
それぞれ防具改造、激痛耐性を活性
武器にはマヒ攻撃、錆毒、酸の属性を付与して…さぁ、存分に鍔迫り合い致しましょう?
鎧砕き、鎧無視攻撃で刀身に傷が付けれたならば、毒で存分に染め上げて…ふふ。脆くなれば、折って差し上げたいところですわね

沢山の戦場を侍と共に駆け抜けた、誉れ高き名刀もありましょう
ですが今はオブリビオン…なれば、わたくしたちの滅すべき敵でしかありませんの



●その美しき毒は鋼をも溶かす
 単身にして軍勢。ゆっくりとした進軍速度でありながら、確実に武田の陣へと浸透していく翠蘭の姿を表すのにその文字列は最適であった。40名の分身を引き連れ、ひとりでに舞う兵器百般を1つ1つ丁寧に折り砕きながら進むその姿は戦場に染み渡る美しき毒の如く。
 分身であることを示す刻印を妓女服に隠され、どれが本体かを知るのは翠蘭のみというのもオブリビオンたちにとっては苦しいところ。仮にどれか1体に殺到して切り刻もうと、それが分身であれば時間の無駄どころかその1体に費やした兵器は折れ砕かれて終わるのみ。弓矢であれば遠方から狙うことができても、数を前にしては効率が悪すぎる。
「名のある将が携えたような誉れ高き名刀も、ありましょうね」
 そうやって数の利を活用しながら進む翠蘭がぽそりと漏らす。オブリビオンかどうかという一点を除き、いま相対している兵器百般は先の陣営において翠蘭が語らいの種とした将の武器と同等の物。
 武田の兵たちが用いていた歴戦の武器。オブリビオンとして過去のある一点で終わりを迎えていても、積み重ねていた歴史の量や質に優劣はない。
「しかし――ただ命を欲するだけの玉鋼であれば、こうも鈍らへと堕するものなのですかね」
 鈍く響くのは一振りの刀が翠蘭の振るった鎌状のガジェットにより砕かれる音。鍔迫り合いのために軽く受け、そこに塗布された錆毒と酸を刀のオブリビオンへと擦り付けてから交わした刃は3合のみ。1度受けただけでオブリビオンの身に罅が入り、2度の刃を撫でるように当てればその鋼を更なる毒が蝕んで。そして3度を数えたところで終に砕けた。
「使い手の意思もなく、護るべき者もなく、ただ人を殺めるためだけの存在――人を殺すのは武器ではなく人、とはよく言ったものですね」
 ため息を漏らしつつ。鎌状ガジェットに手を翳す翠蘭。今のやり取りで消耗した鋼蝕む毒の類がその一瞬で補充される。
「武具の在り様を最終的に決定づけるのは人の意志。使い手を無くし彷徨うあなた方の刃はわたくしには届かない」
 ゆらりと。艶やかな所作で翠蘭は周囲に浮かぶオブリビオンたちを眺める。
「ご理解いただけたのならば、道を開けることをお勧めしますわよ?」
 覇気でもない。威圧でもない。戦場に咲いた一輪の花は、その美しさの裏に潜んだ毒を余すことなく振りまいて戦場を席巻した。
「もし、退いていただけないのであれば。仕方ありません」
 翠蘭の言葉にオブリビオンは退かず。それは彼女が評したように、使い手の意志がオブリビオンたちに介在しないからであり。
「滅すべき敵は、かくあれかし。わたくし手ずから、折って差し上げましょう」
 戦場に、翠の蘭が咲き乱れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
さて、啖呵を切った手前、俺も成すべきことを成さんとな。
前線に立ちつつも、兵士たちへの注意は常に怠らん。

要は早く動くものに寄せればいいんだろう?
こんなガタイでも飛べばそこそこの速度は出るが……

承従タル退者でそこら辺の敵を捕まえてぶん回すか。
そうすれば、ある程度の距離も稼げるし、
盾を構えながら兵士たちの護りもできる。
最悪、俺自身が体を張って兵士の壁になってやればいい。
敵同士の同士討ちも狙えて一石二鳥。
使えなくなったら手近な奴を絡め取れば何度でもできるしな。
それに、敵がそちらに意識が向けば兵士たちも攻撃しやすかろう。
危険な時は鎖を切断すればいい。
超攻撃力と超耐久力、どちらが上回るのか見ものだな。



●竜の威光、鉄壁の猟人
 鉄壁の堅さを帯びた蒼い風が戦場を疾駆する。それが駆け抜けた後に残るのは使い潰された数々の武具と、それによって打ち砕かれたオブリビオンの残骸たち。
「忠、なれば即ち二心無し――これだけ居れば、武器に困ることはないな!」
 セゲルの眼光がオブリビオンを貫き、その手から伸びた不可視の鎖ががっちりとその柄を絡めとる。無数の武具によって構成されるオブリビオン、兵器百般にとってセゲルのそのユーベルコードは天敵と言い切っていい程の存在であった。
「どうした、心もないのに怯えているのか……?」
 片手には愛用の大楯。此度絡めとったのはその穂先に赤く妖しい輝きを宿す名槍。楯を前に押し立て、セゲルが詰めれば詰める分だけ、使い手も心も持たない兵器百般たちがじわりと間合いを外す。
「来んのなら、俺から行くぞっ!」
 蒼の翼が開かれる。空気を震わせる重く力強い羽ばたきがひとつ、その巨躯からは想像し難い瞬発力でセゲルが兵器百般たちへと突撃。シールドバッシュで手近なオブリビオンを殴り飛ばし、その後を追うようにして石突を握り込んだ槍による薙ぎ払いが旋風を巻き起こす。
「切れ味こそ悪いが、頑丈なのは助かる。こうやって雑に振り回しても問題がないからな」
 セゲルという天敵たる猟兵と相対して超絶的な耐久力を宿していた数本の武具を巻き込み、叩き折ったところで槍の方が限界を迎える。ユーベルコードにより武具本来以上の攻撃性能と耐久度を獲得していたとはいえ、同様にユーベルコードで限界突破していた元同胞とかち合い続ければそうなるのも道理だろう。
「フン、さすがに矛盾の故事の通りとはいかんか。が――やはり、無敵の堅さは得られんようだな、貴様らは」
 槍を大地に投げ捨て、踏みつけるセゲル。オブリビオンのうちの1本をユーベルコードで絡めとり、それを使って周囲を薙ぎ払うというのを繰り返す事、これで数度。いかに耐久性能を向上させようとその限界があることがこれではっきりとした。
「さて、次の1本を選ばせてもらおうか」
 セゲルの眼光が再度オブリビオンを貫く。
 無双を誇る蒼のドラゴニアンは敵同士の同士討ちを無理なく戦術に組み込みつつ、圧倒的な暴威をもって武田の本陣へと迫りつつあるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草野・千秋
@
ついに護衛オブリビオンの登場ですか
武田二十四将の一体、あなどれませんね
きっとその刃は幾多もの血を吸ってきたのでしょう、なんておぞましい
ともかく!僕達援軍の猟兵が来たからに徳川軍を負けさせてはいけない
我らの勝利はここにあり!
変身!ダムナーティオー推参!

戦闘開始と同時にUC発動
防御力をアップさせる
僕は信じてくれた人のために!
攻撃は2回攻撃と範囲攻撃と怪力を主軸に行う
特に範囲攻撃で敵をなぎ払い
怪力で敵を持ち上げて振り回し投げたりもする
敵からの攻撃は第六感と武器受けでかわし
味方への攻撃はかばう
皆さんにお怪我はさせない!
自分への攻撃は盾受けと激痛耐性で耐え凌ぐ
この程度の傷ッ……、なんてことない!



●断つべき罪は
 猟兵たちは激戦を超えて武田軍の本陣に迫りつつあった。その先陣を切るのはダムナーティオーとしての鎧をまとった千秋の姿。
「もう、僕らの勝利は目の前だ! 最後まで気を抜かないで、勝つよ!」
 進軍を続ける兵士たちの戦闘で、鼓舞の声を張り上げ戦い続けるその姿は兵の模範。兵器百般たちの攻撃をものともせず、その拳を主軸に果敢に格闘戦を挑む。
「幾多もの血を吸ってきたおぞましい刃、侮りはしませんが、それでも今は!」
 真っ向から刺突を放たれた槍の一撃。それを回避する素振りすら見せず、千秋は反撃の拳を真正面からソレへ叩きつける。
「――僕たちを、猟兵を! 信じてくれた人のために、負けない、負けられない!」
 掲げるは正義、己を信じ応えてくれた者のために掲げた志は曇りなく。ユーベルコードによる力の源となるその思いは尽きることなく沸き上がり、強化される千秋の肉体。鋼以上の堅さを獲得したその拳は正面衝突した槍の穂先を叩き砕き、それだけに飽き足らず石突までを粉々に割った。
「その程度か、オブリビオンッ! それくらいじゃあ、傷ひとつ負わないぞ!」
 拳を振り抜いた一瞬の隙を突いて、オブリビオンの刀が千秋の首を狙って振り下ろされる。が、響き渡ったのは斬首の音ではなく鋼同士のぶつかり合う鈍い音。寸でのところで掲げられた千秋の腕がその一撃を受け止めたのだ。
「お返しだ、食らえ!」
 受け止めた刀の柄を、有無を言わさぬ強力でむんずと掴む。抵抗空しくその手に収まるオブリビオン。千秋は全力でそれを振りかぶり、振り下ろす先は武田の陣までを塞ぐ兵器百般、刃の道。技術も何もなく、ただその全力でもって叩きつけられた刀はその一振りで折れ、道連れとでもいうように幾体もの武具を砕いていく。
「安寧の世に再びの戦乱をもたらそうとするその罪、ダムナーティオーが裁かせてもらいます!」
 その名乗りは戦国の流儀の則ってか。千秋は断罪者としての称号を高らかに叫び、切り開いた道をひた走る。
 目指すは武田軍本陣、この合戦の指揮を執る二十四将が1人の座す終着点。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『戦国武将』

POW   :    合戦具足
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【自分の城の一部もしくは武者鎧】と合体した時に最大の効果を発揮する。
SPD   :    乱世斬
【日本刀による衝撃波を伴う斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    戦国兵団
【自分に従う兵士達】の霊を召喚する。これは【火縄銃】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●武田二十四将、小山田信茂
 戦闘音もほど近い武田軍本陣が1つ。その上座にどっしりと構えた将が1人。
 信茂様、と駆け寄った部下の報を聞き、そのオブリビオンはこくりとひとつ頷いた。
 彼の名は小山田信茂。その最期は武田を裏切った不忠者として処刑された、と伝えられる信茂であるが……今ここに最盛期の姿として在る彼は、数々の戦において信玄から先陣を任された軍神の懐刀としてのそれだ。
「なるほど、彼奴ら猟兵と矛を交えることは想定しておったが。まさかここまで早くなるとはな」
 陣中、地面から石をひとつ拾い上げ、手慰みのように手玉に取る信茂。
「――まさか、ここで敗れるわけにはいかぬ。そうなっては従兄弟殿に……信玄公に向ける顔がないからな」
 トッ、と軽い所作で拾い上げた石を投擲する信茂。陣の入り口付近を狙ったそれは、没、という重い音を立てて地面に大穴を穿った。
「具足を持て。彼奴らを俺自ら迎え撃つ。信玄公に献上する首として、猟兵のものであれば最上級と言えよう」
 ハッ、と応じて側近が用意する具足・甲冑は派手さにこそ欠けたが、ところどころに刻まれた毘沙門天の真言と控えめな装飾が華美にならぬ程度にその美しさを伝える。
「さぁ、勝負と参ろうか。猟兵諸君」
 三方ヶ原において猟兵との戦、その先陣。
 歴史に記された通りの戦働きを完遂するべく、信茂が出陣した。
草野・千秋
@
出たな、武田二十四将、小山田信茂!
お前にも信玄公に忠誠を尽くし
負けられない理由があるようだが
僕だって徳川軍を勝利をもたらさなければいけない
誓ったんだ徳川軍の皆さんと、勝たなきゃって
この勝負で三方ヶ原の戦いの行方が決まる
迅雷の如くこの戦場を駆け抜けてみせる!
鬨の声をあげるは今、このまま推し進みますよ、皆さん
行きますよ!

ヒーローたるもの勇気を持って挑む
2回攻撃をメインに使用、よく狙い当てる
怪力でパンチしたり
投擲で敵を投げて地面に叩きつけたり
敵からの攻撃は盾受け、武器受け、激痛耐性で耐える
敵を倒すためなら多少の傷は厭わない
決め場所と見たらUCを使用
喜びの島ではない……骸の海に帰るがいい!


セゲル・スヴェアボルグ
向こうさんが数で来るならば、こちらも剛勇ナル手勢で頭数を揃えんといかんな。
向こうの飛び道具を持つが故に、否応にも俺自身の守りを固めざるを得んが……まぁ、数人いれば問題はなかろう。
当然、侍たちを鼓舞するだけでなく、攻撃から護らねばならんからな。
基本的には列で盾を構えさせて間合いを詰め、隙あらば攻撃させる。
さながら、移動する城壁と言ったところか。

銃は直線的だが、放射状に頭上から来る矢は位置取りが悪いとしのぎ切れん。頭上には要注意だな。
故に前に出る出ないにかかわらず、侍たちには必ず中隊の構える盾の直下に位置取るよう指示しておこう。

万が一、UCの効力が切れたのなら、俺自身が矛となり、盾となるのみよ。


胡・翠蘭
※アドリブ歓迎
SPD

これはこれは…勇ましくも逞しい、まさに豪傑…
ふふ、味方であればこれ程頼もしい武将はそういらっしゃらないのでしょうが…
逆に言えば、敵を倒せば此方の…徳川の士気は天に届くほど高まりましょう
いざ、骸の海へ永遠に帰して差し上げますわ、お客様

防具改造と激痛耐性を施し、敵の攻撃は第六感と野生の勘で見切り、なるべく持久出来るよう立ち回り

敵の攻撃範囲外から、視認して…わたくしのUCで存分に…
マヒ、神経毒、延焼属性を付与した触手を伸ばし、他の味方が攻撃しやすいように拘束狙いで鎧無視攻撃、2回攻撃、隙あらば串刺し致しましょう

わたくしたちの首は…お高いですわ
どうぞ懐には三途の川の渡り賃の御用意を


リダン・ムグルエギ

うん、無ー理ー

アタシじゃ近寄った瞬間お陀仏な手合いだわ
投石に剣舞、配下達
先陣を任された男に相応しい隙の無い能力
アタシができるのはその能力の高さを逆手に取るだけよ

コード定義、小山田信茂
無敵の【武田軍理想の忠義の武者】を想像から創造し、戦闘に利用できる
強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する存在
ゆえに疑念を感じ揺らいだ瞬間に…その忠義が崩れ汚名を負ってしまった人物…
それがアナタじゃないかしら?
ま、想像100%だけどね

アタシは敵の射程外からコードを放つわ
相手が想像通りに忠義の武者なら
過去の己の終わりを嘆いているのなら
己を貫く一撃は強くなるでしょうけど…

外れてたら周囲の兵士達の支援に専念するわ



●オブリビオン、小山田信茂
 猟兵たちが武田の陣営へと雪崩れ込む。徳川の兵たちはその入り口や周囲を固めるように動き、武田の将と猟兵たちとの戦いの間に邪魔が入らぬよう万全の布陣を整える構え。戦の前にあった怯えはどこへやら、徳川の兵たちは猟兵に並んで戦線を支える重要な戦力として機能していた。
「――武田二十四将、小山田信茂とお見受けします!」
 無手を構え、油断なく陣奥を睨むのは千秋。信茂の座す陣前に居たオブリビオンを全力で薙ぎ払った余波か、その鎧は普段の鈍銀色ではなく漆黒へと染まっていた。その後に続く猟兵の姿は2つ。千秋の開いた道を走り抜けたのはセゲルと翠蘭の2人だ。
「いかにも。俺こそが小山田信茂。再び信玄公の元へ参じる為、この三方ヶ原に集いし二十四将が1人なり」
 ズシリ、と重い一歩を見せ、全身を甲冑に包んだ信茂が猟兵たちへと向きなおる。
 遠目から見ても分かるその威圧感は将としての気だけでなく、その物理的な大きさにも拠る。甲冑との合一により十尺にも及ぼうかというその巨体は、武田家臣の中でも武勇に優れ数々の先陣を務めたとされる過去を如実に表していた。
「お噂はかねがねよ、信茂公。ひとつ、戦闘前にお尋ねしたいことがあるのだけれどいいかしら?」
 と、そこへ徳川軍兵士たちの手を借りてやや遅れて陣に参じたリダンが猟兵たちの最後衛から声を張り上げる。
「それが冥途の土産となるのであれば喜んで。なに、お代の首は後で落とさせてもらうがな」
 肩を竦めるその動作には鎧の音が付いて回る。が、滑らかかつひっかかりもないその静かな金属音は猟兵たちにその鎧の仕立てと信茂本人の実力の高さを知らせる、いわば警告でもあり。
 だが、僅かであれど音がたてば、詠唱の起点をそこに紛れさせる程度のことはリダンもやってのける。
「貴方が奉じるのは武田軍理想の忠義厚い武者。その理想像への思いこそが貴方の力……裏切り者として処断されたのは、その理想と忠義が食い違って思いが揺らいでしまったから。違うかしら?」
 蒼く揺らめくリダンの瞳は、ユーベルコードが確かに成立した証。相手をユーベルコードに例えることにより、そのコードに基づいた性質を与えるなり自刃させるなりするという一種の催眠術であるが――
「フン、俺の終わりも知っているとは。よくよく勉強はしているらしい」
「――っ!」
 当の信茂はそれに動じる様子も見せず、言外に見せるのは「否」の一文字。
「いいか、小娘――少なくとも俺という兵のなかに理想などという2文字はない。常にあったのは、領民を食わしていかねばならぬという現実のみ。忠を立て奉公し、その恩に報いる者に付き従うのは、ただ食わせなければならぬ者がいたからだ」
 ギロリ。信茂の顔を覆い隠す甲冑の向こうから、リダンを鋭い視線が貫く。
 リダンが読み間違えたのはただ一点。忠義の先、その志が「上」に向いていたのか「下」を見ていたのか。
「が……貴様のその力。嵌れば無敵の類と見た。真っ先に首を落としてやろうではないか!」
 その一点を違えていなければ、今の一撃で死んでいた――そうとでも言いたげな雰囲気を纏い、信茂が腰を落として猟兵たちへ突進する。
「む、無ー理ーッ!?」
「焦るなリダン――俺が居る」
 他の猟兵を一切無視し、リダンの元へ突っ込もうとした信茂の元へと割り込むのは蒼の聖竜騎士。セゲルが構えた楯を大地へと打ち下ろし、大地に根を張る城塞と化すとともに呼び出されるのは彼に従う剛勇なる仲間たち。一瞬にしてその場に馳せ参じた大隊規模の召喚体たちが八重垣を組み上げて信茂の突進と真正面からカチあった。
「ヌゥ――!」
「一撃で数人か……なるほど、護りを固めねば防御すら儘ならんとは。腕が鳴るッ!」
 鎧袖一触とはその文字通り、セゲルの呼び出した戦士たちの一割弱がいまの一瞬で弾け飛ぶ。しかし信茂の突進は確かにその数人の身体を張った防御で押し止められる。
「徳川の雑兵とは話が違うか――であえ、であえッ! 今こそ戦働きのしどころぞ!」
 セゲルの防御陣を崩すには手が足りぬと読んでか、信茂もまたユーベルコードを起動。その掛け声とともにこの世界に蓄積された過去から信茂の手勢たちが呼び出される。信茂の兵たちが持つのは火縄銃に弓矢、さらに特徴的なのは信茂自身の逸話に基づいた投石兵が混じる点。
「総員、防御陣構え! ……矢と石は頭上からも来る、楯は上に掲げろ!」
 セゲルの声に応じ、セゲルの兵たちが形作るのは古の密集陣形に見られるような楯構えのファランクス。
「直接攻撃は無理でも、支援ならアタシに任せて!」
 そしてそれを補強するのはセゲルの間合いに守られているリダン。事前の仕込みは万全とばかりに懐から取り出した魔方陣付きの布を周囲にばらまけば、即席の防御陣地の完成だ。信茂の兵たちが投じた攻撃の悉く、セゲルとリダンの手による防御に遮られて猟兵たちに届くことはなく終わった。

●雌雄決するは武士と猟人
「さて、的も増やしていただけましたところで……」
 弾込め、あるいは二の矢の番え。投石ですら攻撃の間には一瞬の隙というものがある。その一瞬を突いてするりとそのファランクスから抜け出て、オブリビオンたちの全てを視界へと収める翠蘭。
「味方であればこれほど頼もしい将はそう居らず、しかしてそれが敵とならば……敵対する豪傑の死は、さぞや徳川の士気を高めることでしょう」
 戦場に似合わぬ艶やかな笑みを浮かべ、翠蘭はゆるりと一礼。嫋やかなその所作は血なまぐさい戦場であっても変わることはなく、むしろその「変わらぬ様子」こそが信茂には脅威に映る。
「戦場であれば、そのような様子を見せても遠慮はせんぞっ!」
「ええ、承知の上ですとも信茂公――何故なら、これより皆様をお送りするのは骸の海、その彼方。どうぞ懐には三途の川の渡り賃を御用意してお待ちくださいませ?」
「抜かせッ!」
 投じられるのは再装填の早い矢と石。ファランクスという防御の傘から抜け出た翠蘭を一斉に狙うその数はとてもではないが片手や両手で足りるものではなく。そこに重ねて放たれる信茂の鋭い斬撃もあって、まさに致命の連携攻撃。
「ふふ、皆様一斉にかかっていらして……」
 くすりと笑い、数多の攻撃にさらされるスリルを愉悦と替え、さらには捧げて。翠蘭の爪先から周辺一帯が沼へと変じる。それらを為すのはユーベルコード――淫蕩の沼に引き摺り込みし触手の群れ。
「そう熱くなられると、感じてしまいますわ」
 言葉の締めは唇に手を当てて。ゆらりと翳して飛ばすのは口付けの残滓。応じて、沼から伸びた無数の触手が投石や矢を撃ち落とし、信茂の斬撃に対しては束で抗することで主である翠蘭を守り抜き。
「甘く深い泥濘の沼はここに。堕ちてしまいましょう?」
 翠蘭の指差した通り、触手たちが信茂の兵に殺到。無限の快楽地獄の先にある骸の海へと兵士たちを引きずり込み。
「戦に、一体何を持ち込んだ、貴様っ!」
 飲み込むまでは至らずとも、信茂の足を縫い留めることに成功する。
「申したはずです――貴方を倒し、徳川の士気を挙げさせていただくと。わたくしが用意したのは、ただ甘く深い底なしの沼」
「――毒婦が!」
 悪びれもなく頭を下げる翠蘭に対し、信茂本人から向けられるのは投石の一撃。兵士たちのそれとは比べ物にならない威力を持つそれに対しては、さすがの触手群も撃ちぬかれ――
「仲間はやらせないと! そう誓った!」
 翠蘭の背後から飛び出してその礫を拳で撃ち落とすは千秋、またの名をダムナーティオー。
「そして決め場所はここだ、小山田信茂……!」
 信繁の呼び出した兵士たちは翠蘭により動きを縛られるか、あるいは攻撃を放たれてもセゲルとリダンが対抗して防ぎきっている。
 つまり、今この瞬間にあるのは己が為すべきはトドメの一撃と読んだダムナーティオーがまさに狙いすましていた絶好のタイミング。
「――なるほど、それが貴様らの力か、猟兵ッ!」
「お前を、骸の海へ送ろう!」
 振りかぶった1撃目は拳。己よりはるかに高い視線を持つ信茂の頭を真下へと殴りつけ、着地。傾ぎ落ちる信茂の頭を追うようにして繰り出される2撃目は着地の反動を十全に生かしたシャイニング・ウィザード。膝部装甲により補強された圧倒的な硬さを持つ強烈な膝蹴りが信茂の頭蓋を撃ちぬいた。
 頭部を失い力なく倒れた信茂。その全身を覆っていた甲冑も主を無くしてはその巨体を維持できないのか、まるで砂のように崩れて消えていく。
「僕たちの、徳川軍の勝ちだ、オブリビオン!」
 千秋の言葉が、陣地の中で響き渡る。
 僅かに遅れ、信茂のものであった陣地を囲む徳川の兵たちから勝利を称える喝采があがるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月26日


挿絵イラスト