#UDCアース
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●ある男子高校生たちの日常
「はぁ、はぁっ、はあっ……!」
「頑張って、タカヒロ、もう少しだから!」
「というか、オマエ、間に合わなかったらマジで殺すからな?」
七月の炎天下としても尋常ではない汗を流す少年が、フラフラと歩道を歩いていた。左右から彼を支える同年代の少年たちには焦燥感が滲んでいる。
三人共、この近くの高校の制服を着ていた。時刻からして帰宅途中であろうが……。
「……なあ、タカヒロ。何で学校でしなかったんだ?」
「家まで……最悪でも駅までは耐え切れると思ったんだ……」
「駅までの道のり、半分も消化してないから! 展望が甘過ぎるよ……」
タカヒロというらしい中央の少年の左でチビな少年が半眼になり、右側でガタイのいい少年が天を仰ぐ。
……どうも、タカヒロという少年に何かトラブルが起こり、それに友人である二人の少年が途方に暮れているということらしい。――では、そのタカヒロ少年に発生したトラブルとは……。
「――あ。ヤバいヤバい何か来たもう肛門の所まで来てる……!!」
「待った待ったこんな往来で漏らしたら社会的に死ぬから!?」
「離せタカヒロォ! オレまで巻き込んだらマジ殺すぞ!?」
変な痙攣をするタカヒロの左右で友人たちが悲鳴を上げた。……要するに、タカヒロくんは今、大便を漏らすか否かの瀬戸際なのである……。
顔立ちも整い、背も高くスタイリッシュなタカヒロ……。もう少し頑張れば学校のカーストの上位に喰い込めそうなのに……残念過ぎるオーラを纏っていた。
……とにかく、何とか今回の波を乗り切ったタカヒロを、友人二人はすぐそこの公園内へと引っ張っていく。
「ま、間に合ったかな?」
「オラ、この公園の便所でとっとと済ませやがれ。出すモン出せば落ち着くだろ?」
「うぅ、ごめんな、二人共……」
それなりに広めで遊具も豊富なその公園の隅に、砂漠のオアシスのように輝いて見える公衆トイレ。それを目にしたタカヒロは男泣きする。
「……それにしてもさ、タカヒロ。何で腹を壊したのさ?」
疑問を呈するガタイのいい少年に、タカヒロはポツポツと語る。
「……昨日、田舎の祖母ちゃんが倒れたんだ……。親父とお袋、それで慌てて飛び出していって……まあ、祖母ちゃんの容体は大したことなかったんだけど、あまりにも慌ててたもんだから、お袋……俺の飯のことすっかり忘れてたんだよ。何も用意されてない、金も渡されてないで、昨日の晩は何も食えなかったんだ……」
「ふーん、それで?」
チビな少年の相槌に、タカヒロの瞳は遠くを見た。
「それで、今朝とんでもない空腹で目が覚めたから、本気で何か食い物ないかって家中探し回ったんだよ。そしたら、死んだ祖父ちゃん……あ、倒れた祖母ちゃんはお袋の母ちゃんで、祖父ちゃんは親父の方の父ちゃんな……その祖父ちゃんの部屋で、昭和に製造されたらしいトマトの缶詰を見付けたんだ……」
そこまで聞いて、他の二人も事情を察したらしい……。
「……食べたんだ……」
「オマエ、何でンな危なそうなモンを……?」
「……あからさま過ぎたから、逆に安全だと思った……」
……何はともあれ、原因も解ったところで少年二人はタカヒロを公衆トイレへ放り込んだ。これで事態解決――となるのが普通だったのだろうが……三人が知る由もない真実があったのである。
――タカヒロの祖父は、生前UDCエージェントだったのだ。
彼はあるUDCの怪物を特別な容器に封印し、それを保管・管理していたのである。……しかし、彼の死後、ゴタゴタによってそれに関する情報はUDC組織から散逸し、件の怪物の封印容器は長らく放置されていたのだった。
彼の封印容器……缶詰と酷似していたのである。
――つまり、タカヒロが食べたのはトマトではなく、封印で弱体化した邪神(或いはその眷属)だったのだ。
……そして、タカヒロは非常に特殊な血脈を受け継いでいたのである。彼の胃や腸は常人とは異なる独特の形状をしており、それ自体が邪神に関わる陣として機能した。
タカヒロの体内に入り、その消化器官を抜けた問題の怪物は、それの影響を受け、激しく活性化を始めていたのである。
……要するに、タカヒロが公園の公衆トイレの和式便器にしゃがみ込み、力んだ瞬間……。
「……ふんぬらばっ!!」
――尻の穴から邪神復活!
●尻から生まれたトマト太郎
「――華の女子中学生に何ちゅう予知をさせるんよー!!」
……予知の内容を猟兵たちへ話し終えた灘杜・ころな(鉄壁スカートのひもろぎJC・f04167)は、顔を両手で覆ってグリモアベースの地面を転がっていた。短いスカート姿でそんなことをすれば、普通はスカートがめくれて下着も丸見えだっただろうが……鉄壁スカートに定評があるころな、ここまでやっても見えそうで見えない。
暫し後、どうにか立ち上がったころなは説明を再開する。
「とにかくな、UDCアースの日本でそんな風に邪神が復活してまうんよ。皆にはそれを撃破してほしいんや」
戦場の公園の情報は予知の中で話された通り。ただ、公衆トイレは邪神復活の余波で吹き飛んでいるとのこと。
「そんで、今回復活した邪神……もしくはその眷属なんやけど……見た目はでっかいトマトや」
過去にも何度か猟兵と交戦している『正気を奪う赤い果実』なる怪物だ。
「本来は見た目に反して危険なオブリビオンなんやけど、こんな形での復活は当人? も予想外やったみたいでなぁ……何や呆然と固まっとるんよ」
なので、しばらくは猟兵側が一方的に攻撃出来るところなは語る。そのまま、短期決戦で『正気を奪う赤い果実』は片付けてほしいというのが彼女からの要請だ。
「現場が街中、突発的過ぎて一般人の避難も出来取らん状況やから……というのも理由やけど――実は、別のより上位のオブリビオンが、今回のUDCの怪物の復活を察知しとるんよ」
その者が、配下を連れて『正気を奪う赤い果実』を迎えに来ようとしているのだと。そちらの到着の前に彼の怪物を滅ぼしておかねば、強力なオブリビオン2体+配下のオブリビオン多数と一斉に戦う羽目になる。そうなれば敗北は必至だところなは注意した。
「ほんま、ツッコミどころ満載で恐縮やけど、皆、気張ってな!」
そう締めて、ころなは猟兵たちを送り出すのだった。
天羽伊吹清
どうも、天羽伊吹清です。
初めに。今回のシナリオ、シリアスは最初から撤退しております。そこを念頭に置いて下さりますようお願い致します。
さて、補足ですが、OP本文中の『●ある男子高校生たちの日常』で登場したタカヒロという彼は、下半身丸出しかつ気絶した状態で『正気を奪う赤い果実』の傍に転がっております。とはいえ、件のオブリビオンも茫然自失状態の為、当面は彼に危険はありません。
残る二人、チビな少年とガタイのいい少年は、とっくにタカヒロを見捨てて逃げていますので気にせずとも大丈夫です。
また、重要な案件を。
ああいう復活を遂げたせいか、今回の『正気を奪う赤い果実』は大変臭います。そして、猟兵の皆様がそれに近付けば、あまつさえ触れるなどしてしまえば、その臭いが移ってしまうかもしれません。
ご注意を。
そんなわけで、色々と酷いことになる予感しかしないシナリオですが、ご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『正気を奪う赤い果実』
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POW : 硬化する赤い果実
全身を【硬質の物質】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 振動する赤い果実
【高速で振動することで衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 空腹を満たす赤い果実
【空腹】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【無数のトマトの塊】から、高命中力の【トマト弾】を飛ばす。
イラスト:井渡
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠赤城・傀」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
火奈本・火花
「なんだこれは。……いや色々と何なんだこれは」
■戦闘
身内の不始末が続くな……
邪神の封印に成功するのは良いが、その後の管理まで徹底してこその収容だろう
今更言っても仕方ないが
とにかく今回のUDCには近付きたくない
呆然としている間に、9mm拳銃による『クイックドロウ』で『2回攻撃』を行う
同時に機動部隊にも攻撃させ、ありったけの弾丸を叩き込みたい
「良いか! 総員、アレをこちらに近付けるなッ!」
だがタカヒロ君の安全と尊厳も確保したい
UDCの意識が機動部隊に向くなら、私も『覚悟』して接近し、彼の『救助活動』を行う
下半身にはタオルか、無ければ私のジャケットをかけて隠し
『怪力』で背負って離脱しよう
■
アドリブ可
雲一つ無い蒼天に、太陽はやや傾き気味ではあるが燦々と輝いている。気温は明らかに30度を上回っていた。
……その下にあってもきっちりとスーツで身を固めたUDCエージェントの火奈本・火花(エージェント・f00795)は、伊達眼鏡の奥の瞳に困惑の光を灯している。
「何だこれは? ……いや、色々と何なんだこれは?」
平時なら子供たちの、及びその母親たちの憩いの場なのだろう、それなりに広めの公園。そこにブランコだのジャングルジムだのと一緒に鎮座するのは、直径3mはあろうかという瑞々しいトマトだった。……それだけでも戸惑いは大きいのに、彼のトマトの傍らには下半身丸出しの男子高校生が大の字に倒れている……。
いや、グリモアベースで話を聞いてここに来た以上、火花だって本当は理解していた。あの男子高校生こそ今回邪神を尻から産んだタカヒロという少年で、あの巨大トマトこそ尻から産まれた邪神であることは。
……ちょっと頭を抱えたくなる火花だった。彼女に率いられて現場にやって来た特殊機動部隊『四葉のクローバー』の隊員たちも、きっと同じ気持ちであるだろう。
「身内の不始末が続くな……。邪神の封印に成功するのは良いが、その後の管理まで徹底しての収容だろう?」
火花は嘆息した。本を正せば、あのトマト――『正気を奪う赤い果実』は、生前は火花と同じUDCエージェントだったというタカヒロの祖父が封印・管理していた存在だという。タカヒロの祖父の死後、それの引き継ぎが上手く出来ていなかったことが今回の事件の遠因であり……そこは明確にアンダーグラウンド・ディフェンス・コープのミスだった。
「これは防げていたはずの事件だな。……今さら言っても仕方ないが」
後悔は頭の片隅に退け――火花は思考を戦闘用に切り替える。
「『我々は、我々の総力を持って戦う!』」
火花の号令の下、『四葉のクローバー』の隊員たちが公園内に散開した。各々が遊具を遮蔽物に利用し、構えた銃器をトマトの邪神へ向ける。
配置に着いた『四葉のクローバー』の隊員たちを確認して、火花は……改めてその事実と向かい合う。
「……本当に臭うな」
口と鼻を左手で覆い、顔をしかめる火花。
今までに猟兵と交戦があった同型の個体とは異なり、今回の『正気を奪う赤い果実』は……臭かった。恐らく、タカヒロ少年の尻の穴から復活したが故の副作用なのだろうが……ぶっちゃけた話、人糞の悪臭がトマトの爽やかな芳香と混ざり合って、形容し難いフレーバーとなっている。
……ガスマスクを持ってこなかったことを、火花も『四葉のクローバー』の一同も真剣に悔やんだ。
(とにかく、あのUDCには近付きたくない)
未だ全く動く気配を見せない『正気を奪う赤い果実』へ、火花はそれを幸いに自動拳銃を向けた。弾倉に収められた9mm弾を、彼の赤い巨体へ解き放つ。
火花の射撃を攻撃開始の合図とし、『四葉のクローバー』の隊員たちもそれぞれの銃器から鉛弾を発射した。晴れ渡る空とは裏腹に、公園に銃弾の豪雨が降る。
「良いか! 総員、アレをこちらに近付けるなッ!」
割と切実な響きを帯びる火花の指示に、『四葉のクローバー』の隊員たちも気持ちは同じとばかりに銃の引鉄を引き絞る。……ただ、火花の警戒はこの時点では杞憂であった。
ダダダダッ……と、銃声が連続するだけ連続し、やがて火花はポツリと呟く。
「……動かないな……?」
火花と『四葉のクローバー』、合計すれば間違いなく四桁の弾丸を浴びているにもかかわらず、トマト型のアンディファインド・クリーチャーは微動だにせずそこに佇んでいた……。
流石に、『四葉のクローバー』の中から困った様子の声が上がる。
「エージェント・火奈本……こちらの攻撃が効いているか、それすらもはっきりしません」
「……全くだ」
火花も全面的に同意する。
そもそも、トマト染みた外見からして反応が解りづらい相手ではあるが……それでも反撃などがあれば、それを介して向こうの状態も推察が出来るものだ。……が、今回はそれさえも一切無いせいで、どうにもやりづらい。「こいつ……どれだけ尻から復活したことがショックだったんだ……?」「いや、もしかしてもう、死んでいる?」……そんな風に『四葉のクローバー』からも疑問が上がった。
ただ、そんな中、火花には一つの考えが浮かんでいたのである。
「……今なら、タカヒロ君の救助を行えるか?」
火花の言葉に、『四葉のクローバー』の隊員たちに緊張が走った。
……如何に地面に倒れた状態とはいえ、攻撃目標の付近に一般人が居ることは、『四葉のクローバー』としても懸念事項だったのである。何かの拍子に誤射する危険性はあるし、『正気を奪う赤い果実』が我を取り戻して暴れ出せばそれに巻き込まれることも考えられた。救助が出来るのなら直ちにそれを実行するべきだが……『四葉のクローバー』の面々には非常に苦しげな表情が浮かんでいる。
――「あんな臭いのに近付きたくない」……と。
しかし、そんな状況下でも覚悟を決められるのがこの人、火奈本・火花であった。
「いざという時は援護を頼む」
そう告げて火花は、自分よりも遥かに大きいトマト目掛けて疾駆を開始した。
(警戒は怠らない――)
真っ直ぐに突っ込みはせず、ジグザグ、或いは大きく弧を描いて、時には遊具の陰に身を潜めて、トマトとの距離を段々と詰める火花。時間としては一分にも満たないものであったが、息が詰まるような長さに感じられた。
そして、ついに――火花はタカヒロの許へ到達する。
……すぐ近くから見上げる『正気を奪う赤い果実』は、想像以上のプレッシャーがあった。……臭いも真に、鼻がひん曲がりそうなほど臭過ぎる……。
(……くっ、長居は無用。彼を担いで直ちに離脱を――)
そう思いつつも火花は、いくら何でもこの格好は憐れだと、タカヒロの丸出しの下半身へ自らのジャケットを脱いで被せようとした――が。
「……………………」
……ふと、思い至ってしまった。彼は――尻を拭いたのかと。
…………邪神復活の直後に気を失ったと考えるなら、自力で拭けるわけがない。
………………隣のトマトが拭くわけがないことは、誰にだって解る。
――火花はジャケットを着直すと、運良く近くに転がっていた昨日の日付の新聞をタカヒロの下半身に被せた。そのまま、彼を抱えて『正気を奪う赤い果実』の横から離脱する。
こうして、火花の活躍によってタカヒロ少年の救助は成ったが――彼のトマト型邪神は、それでも不気味な沈黙を保っていた……。
――実際のところ、そこまで、本気で今回の復活はショックだったらしい……。
大成功
🔵🔵🔵
稲宮・桐葉
※アドリブ・連携歓迎じゃ!
どの様な珍妙な状況であろうと、オブビリオンを討ち尊き命を守るのじゃ!(キリッ)
タカヒロ殿の安否は気になるが…(チラッ)…当面危険は無いらしいからの…(チラッ)…この凍り付いた時を逃す手は無いっ!(チラッ)
しかし…肥溜めの如く酷い臭いじゃな…近寄りとうない!
常に風上に陣取り雷上動で矢を射かけるぞ!
風が無い時はどうしよう…
敵の「空腹を満たす赤い果実」も臭いそうじゃな、当たりとうない!
UCを使い全て射落とすぞ!絶対にじゃ!
わらわの矢よりトマトが多かったら、ムラサマブレードの声など聞く耳持たぬ!抜き放ち切り落とすのじゃ!
機巧大狐ちゃんにもわらわを庇わせるぞ!
意地でも当たらぬ!
一人の猟兵の決死の行動により、一般人の高校生男子・タカヒロは安全圏まで救助された。
……しかし、公園の遊具と並んで直径3mを超すトマトが佇み、悪臭を放っているシュールな状況は変わっていない……。
「どのような珍妙な状況であろうと、オブリビオンを討ち尊き命を守るのじゃ!」
金髪紫眼の美貌をキリッと引き締め、凛々しく言ってのけたのは稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)である。魅惑的な改造巫女装束で装われた佇まいも、弓の弦のようにピンッと張り詰めていた。
「タカヒロ殿の安否は気になるが……(チラッ)……当面危険は無いらしいからの……(チラッ)……この敵が凍り付いた時を逃す手は無いっ!(チラッ)」
……いや、本当に、カッコいいシーンなんです……。ですから、桐葉さん……後ろに寝転がされているタカヒロの、新聞紙を被せられただけの下半身を、そうもチラチラと見るのはやめてもらえませんかね……!?
――ともかく、若干後ろ髪引かれる様子ながら、桐葉はアンディファインド・クリーチャーたる巨大トマト・『正気を奪う赤い果実』との戦線に踏み込んでいくのであった。
「しかし……肥溜めの如く酷い臭いじゃな……!?」
巫女装束の袖で鼻と口を押さえつつ、桐葉は顔をしかめる。かつてこのUDCアースの日本にも存在した、人の排泄物を発酵させて肥料として用いる為の溜め込み……。まさにそれの如くだと、巨大トマト型UDCの悪臭を形容する。
……ごく微かに、巨大な赤い果実がピクッと震えた気がした。
「何にせよ……近寄りとうない!」
ならばどうするのかと桐葉が取り出したのは『雷上動』――源頼政が妖獣・鵺を退治する際に用いた名弓の名を冠する重籐の弓であった。即ち、目論むのは遠距離攻撃。それも風上から、臭いがこちらに流れてこないように徹底しようという思惑である。
……が、ここで残念なお知らせが……。
本日のこの地方、風が極めて無い……無風であった。
「……どうしよう……」
いきなり途方に暮れる桐葉。頭の狐耳もへにゃんと垂れる。
「……ええいっ、女は度胸じゃ!」
それでも、義に篤い性格である桐葉。他の猟兵も戦線に立つ中で自分だけが退くことなど出来るはずがない。雷上動に矢を番え、赤い巨大果実へ狙いを定めて――射放つ。
的は大きく、その上動くことも無い。桐葉ほどの弓の腕があれば外すことなど無かった。放たれた矢が、次から次へと巨大なるトマトに突き立つ。
「ああ……しかし、勿体ないのう。あの矢、もう使えぬじゃろうな……」
あんな汚物に突き刺さった矢は、流石にもう使いたくない……そんな風に言外で語る桐葉。それが、彼のオブリビオンの心の柔らかい部分をザクッと抉ったらしい。
――それまで微動だにしなかった巨大トマトが、ブルブルと震え出す……。
「ひょえっ!?」
明らかに自分に向けて怒りのオーラを立ち昇らせる『正気を奪う赤い果実』に、桐葉の尻尾がピンッと立ち上がった。腰が引ける桐葉の視界の中で、巨大トマトの真上に莫大な量のトマトが寄り集まった塊が出現する。
――ちなみに、その塊が出現した途端、周囲の悪臭がますます強まった。
本体に負けず劣らず臭うそのトマト塊から――桐葉目掛けて赤い果実がショットガンのように弾け飛ぶ。
「んきゃああああああああっ!?」
桐葉は全力疾走して横に逃げた。地面で潰れて余計に悪臭を撒き散らすトマトの散弾が、その後を追ってくる。……もしも命中したら、18歳の乙女としてかなり可哀想なことになるのは間違いなかった。
「いやぁぁっ!? 当たりとうない! 当たりとうないっ!!」
やや涙目で、必死に足を動かす桐葉。……この『正気を奪う赤い果実』のトマト弾は、元々相手に空腹の感情を与えねば性能が著しく落ちるユーベルコードである。現状の悪臭の中、桐葉が空腹を覚えることなどあり得ない為、余程のことがなければ当たる心配は無いと思えるが――当たったら女子として何かが終わるというプレッシャーは、桐葉の心を酷く追い込んだ。
結果――桐葉の側もプッツンとキレたのである。
「『我が弓より放たれし矢から逃れる術無し!』」
走りながら雷上動の弦に矢を番えた桐葉は、力いっぱい引き絞ったそれを飛び来るトマト弾の雨に向けて解き放った。弓鳴りの残響の中、その矢が揺らぎ――20を超える数へ分裂する。それらが時に直角的に、或いは螺旋を描くように不自然な軌道で、次々にトマト弾を撃ち落とす。
桐葉のユーベルコード・『降神弓術 ~神懸かりの矢~』であった。射った矢を増殖させ、しかもその一本一本を念動力で個別に制御出来るその技には、恐るべき面制圧力がある。……迫り来る悪臭のトマト弾を、ただの一発も桐葉自身に届かせないほどに。
……でも、こんな使い方をされて本望なのだろうか、このユーベルコード……。
だが、この勝負、どうしても桐葉の側に不利な点がある。『正気を奪う赤い果実』のトマト弾は異界より召喚されてくる為、事実上弾数が無限だが……桐葉の降神弓術は実在する矢を媒介とする為、その本数という使用制限があるのだから。
「くっ……!?」
そこに思い当たり、一瞬だけ矢筒から矢を抜き取る動作が遅れた桐葉。それが致命的だった。その隙を突くように放たれた今回のトマトの雨あられは……矢で撃ち落とすのは間に合わない。
「やられて……堪るかえっ!!」
『……え? ちょっ、待ぁぁああああああっ!?』
妖剣士としての桐葉の能力をかつて覚醒させた妖刀・『ムラサマブレード』――いつもはフランクな彼の悲痛な叫びを無視し、桐葉はその刃で臭いトマトを切り払って躱す。
……それでも回避し切れないトマト弾は、脇に追走してきた自律式の狐型ロボット・『機巧大狐ちゃん』をむんずと掴み、盾にした。主からの無体な扱いに、機械の狐も哀しげな声で鳴く。
色々なものを犠牲にして……そうであっても桐葉は己の女の子としての尊厳を諦めるわけにはいかないのだった。
「意地でも当たらぬ! 絶対にじゃ!!」
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
何…?どっから登場したって?……マジかよ。(聞いてゲンナリ)
普通、んなトコから邪神が生まれるか?奇跡だぜ。
【SPD】
けど、これさえ片付けりゃ、残りはマトモな相手かも知れねぇしな!
あの子供も放っておけねぇ。仕事に掛かるか。
まず、攻撃は絶対に食らいたくない。【第六感】【残像】【見切り】をフルに使用し、全ての攻撃を回避…衝撃波って見えるのか?見えなきゃ、気合で躱す。
攻撃は二丁銃で【二回攻撃】【属性攻撃】【一斉発射】【範囲攻撃】で銃弾を撃ち込んでいく。茫然自失状態はアタックチャンスだ。派手にやるぜ。
攻撃は絶対に…食ら…っ!(食らった場合)あぁぁぁぁぁぁっ!?
俺のお気に入りのコートがぁぁぁっ!!(慟哭)
「………………!?」
グリモアベースで聞いた此度の邪神復活の情報を反芻し、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は目を白黒させていた。
「何……? どっから登場したって? ……マジかよ」
改めて、人の尻の穴から邪神が復活したという事実を認識し、カイムの顔にはゲンナリとした表情が浮かんだ。
「普通、んなトコから邪神が生まれるか? 奇跡だぜ……」
普段はお喋りでノリが軽く、ハイテンションなカイム。こんな辟易とした彼は珍しいかもしれない。
それでも、いざ現場の公園に立てば、カイムの顔には『便利屋Black Jack』としての、そして猟兵としての表情が浮かぶのであった。
……少し前までは、ある猟兵の発言に怒った様子で暴れ回っていたという巨大トマト型アンディファインド・クリーチャーだが、今は再びテンションが下がったように静止している。それを手近なベンチの陰から覗きつつ、カイムは『双魔銃 オルトロス』を両手に握った。……鼻がひん曲がりそうな悪臭がトマトから漂ってきて、彼は顔をしかめるが……己を奮い立たせるように口の中で呟く。
「……正直、本気でゲンナリする相手だが……これさえ片付けりゃ、残りはマトモな相手かもしれねぇしな! ――仕事に掛かるか」
この後に控えているというさらなる邪神とその眷属に思いを馳せ、カイムは自身に発破を掛けた。
さて、本来はカイムもタカヒロのことを気に掛けていたのだが、彼の救助は他の猟兵によって既に果たされている。後顧の憂いは無くなったと、カイムは視線の先の邪神・『正気を奪う赤い果実』を撃破することに意識を集中し始めた。
(……まず、攻撃は絶対に喰らいたくない)
それは、この現場に来たほとんどの猟兵の共通の思いだろう。とはいえ、今のトマトからは攻撃に転じる気配を感じなかった。
(今は茫然自失状態……? なら、アタックチャンスだ。派手にやるぜ)
「『It’s Show Time! ド派手に行こうぜ!』」
カイムは潜んでいたベンチの陰から颯爽と飛び出すと、双魔銃の銃口を巨大なるトマトへと向けて疾駆を開始した。怪物の赤い巨体と一定の距離を保ちつつ、地獄の番犬・ケルベロスの弟の名を持つ二挺の銃を、速射、連射、乱射する。
音すら置き去りにする速さで、弾丸が篠突く雨の如く3m超のトマトの表面を叩いた。的の大きさ、及び一切動かないという事実。カイムほどの銃の腕があれば、目を瞑っていても全弾命中は当たり前の話である。
……それでありながら、カイムの所作には警戒心が強く滲んでいた。トマトの一挙手一投足(手も足も無いが……)を見逃さないように睨み、急な方向転換で残像を生じさせ、向こうの認識を撹乱させようとする。
それもこれも、あの赤い怪物がいきなり攻撃に転じてきた場合を想定してのことだ。何があっても全ての攻撃を回避する……そんな強い決意があってこそのもの。
(確か、このオブリビオンは衝撃波も放つんだったか? ……衝撃波って見えるのか? ――見えなきゃ、気合いで躱す)
――今、来るか? ――もうすぐ、来るか? ――まだ、来ないのか……?
「………………」
オルトロスの咆哮を響かせ続けていたカイムは、何周か巨大トマトの周りを回った後、再び最初のベンチの陰へと身を滑り込ませる。
「……ヤバい。こっちの攻撃が効いているのか、全然解らねぇ……」
他の猟兵も直面した問題に、カイムの頬を冷や汗が伝った。
本当に……ただでさえ表情が一切存在しないオブリビオンなのである。向こうの状態を見た目だけで察知するのは困難を極めた。反撃などをしてくれれば、それを介してあちらの状態を推察することも出来ただろうが……この個体に関しては、それもやらせてはもらえない……。
「……もう少しだけ近付いてみるか?」
不安を胸中に渦巻かせながらも、カイムはそんな案を打ち立てた。
トマトとの距離を詰めれば、その分向こうの状態も見破り易くなる。攻撃もより通じ易くなるであろう。……道理ではあった。もちろん、接触するほど接近するのはカイムとしてもNGではあったが……。
「――はっ、らしくないんじゃねぇの!?」
自らに喝を入れるように自嘲して、カイムは不敵に唇の端を吊り上げた。元より自信家の己を思い出し、便利屋Black Jackは自分の実力を頼りに――駆け出す。
先程よりも一歩、二歩と『正気を奪う赤い果実』へ近付き、相手がそれでも微動だにしないことを幸いに、双頭の魔銃の顎をその赤い巨躯へと照準した。――オルトロスが雄叫びを上げる。
先刻よりも近い距離から放たれる双魔銃の弾丸は、より激しく、より深くトマト型オブリビオンを抉った。その瑞々しい表面に銃弾が喰い込み、めり込み、埋没して――とうとう一角が大きく弾け飛ぶ。
流石に、その瞬間には痛みを感じたのか、巨大トマトがビクンッと震えた。その震えが止まらぬまま激しさを増し、赤いオブリビオンの輪郭がぶれる。
カイムは、それが攻撃の予備動作だと悟った。
「攻撃は絶対に……喰ら……っ!?」
直後にトマトから放たれた、全周囲に向けての衝撃波。ほとんど第六感でそれは回避してみせるカイム。
……が、その衝撃波に乗って、カイム自身がトマトに付けた傷から、果汁――実にそれっぽいオブリビオンの体液が飛び散った。カイムの頭上にも降り注ぐ……。
「――あぁぁぁぁぁぁっ!? 俺のお気に入りのコートがぁぁぁっ!!」
便利屋Black Jackのトレードマークにもなっている紺色のトレンチコート……それに点々と、邪神トマトの果汁が染みを作ってしまった。中身の汁もやはりとても臭くて……ひとまず安全圏まで退避した後、カイムは慟哭する。
……その向こうで、『正気を奪う赤い果実』もまた、己が撒き散らした悪臭にテンションが急落した様子でぐったりとするのだった……。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
なるほどね…それじゃ、帰るわ♪
放して!嫌よそんな相手!
そして現場が遠くから見える位置へ…触りたくないし、近づきたくもないのよね…(げんなり)
悩んだ末、【虜の軍勢】で戦闘系眷属(雪花、エビルウィッチ、邪悪エルフ、ハート・ロバー、ぽんこつ女王様、女エージェント)を召喚。
…緊急であの汚物をどう退治するか会議よ…。勿論、自分が倒すって子は歓迎するわ♪
雪花「おねぇさま、任務の丸投げはよくないのー…」
わたしも嫌なのよ…。とりあえず、会議の結果、臭いがこっちに来ない様に自分達を【念動力】の膜で覆い、敵を【サイコキネシス】で空間ごと包み込んで圧縮。そのまま眷属達の遠距離攻撃を仕掛けるという案を採用する事に…
グリモア猟兵から此度の事件の説明を一通り受けた後、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)はその可憐な美貌に輝かんばかりの笑顔を浮かべたという。
「なるほどね……それじゃ、帰るわ♪ ――離して! 嫌よそんな相手!!」
フレミアは逃げ出そうとした。――けれど回り込まれてしまった! ……そんな一悶着を終えて、幼艶で気まぐれな吸血姫は今、炎天下の日本に居る……。
尻から産まれた悪臭オブリビオンとの戦場になっている公園の外、そこからさらに車道を一本挟んだ向こう側の歩道より、フレミアはげんなりとした視線を件のトマト型邪神に注いでいた。直径3mを超える彼の存在は、この距離からでもよく見える……。
「触りたくもないし、近付きたくもないのよね……」
そう呟くフレミアの周りには、彼女が異空間に所有する居城・『魔城スカーレット』に住まわせている眷属たちが呼び出されていた。雪女見習いの女の子・『雪花』を始め、エビルウィッチや邪悪エルフ、ハート・ロバー、ぽんこつ女王様、つい先日の事件で新たに加わった元UDCの少女エージェントまで……。
……彼女たちの顔には一様に『嫌な予感』の文字が浮かんでいる。
「……皆、緊急であの汚物をどう退治するか会議よ……。――もちろん、自分が倒すって子は歓迎するわ♪」
主たるフレミアの微笑みを前にしても、彼女の眷属一同は首をブンブンと横に振った。
「……おねぇさま、任務の丸投げはよくないのー……」
普段はフレミアにべったりな雪花からも、そんな冷静なツッコミが入るほどである。
「だって……仕方ないじゃない。わたしも嫌なのよ……。何よ、何なの? この世界の邪神はそんな風に復活出来てしまうものなの? 意味が解らないわ……」
俯き、頭を抱えるフレミア。歴戦の猟兵であり、真祖の血脈を受け継ぐ強力な吸血鬼でもある彼女をして取り乱すほど、あの『正気を奪う赤い果実』(変異種)はショッキングであったらしい……。
とにかく、何だこうだで全員フレミアへ恩義を感じ、慕っている眷属たちである。主の危機に今こそ恩返しの時と対策を考え始めた。
「……でも、近付くのはやっぱり嫌よね……」
「それは同意なのー……」
「遠距離から攻撃するのは確定として……」
「うぅ、それでも臭いが流れてこないかしら?」
「なら――おねぇさまー」
ああでもない、こうでもないと暫し話し合いが持たれ……やがて、作戦がまとまったフレミアたちは満を持して出陣する。
「……本当は、今すぐに回れ右して帰りたいんだけど……」
「だから、おねぇさま、任務の丸投げはよくないのー」
雪花に手を引かれ、やっとフレミアは戦場たる公園内へその足を踏み入れた。――途端、嗅覚を突き刺した形容し難いフレーバーに、フレミアも眷属たちも顔を引き攣らせる。
……一時退却。
「ちょ……ちょっと、想像以上の臭いなんだけど……!?」
「鼻がもげそうなのー」
「人の排泄物の香りにトマトの爽やかな芳香がブレンドされることで、臭みの輪郭が余計にはっきりと……。まるで、スイカに塩を少量掛けると甘味が増すように――」
「ごめん、解説しないで」
戦うのであれば、即刻仕掛けて速攻で片付けなければ自分たちの鼻の方が耐え切れないと判断したフレミアとその眷属たち。作戦を修正し、再度公園に臨む。
「……やっぱりこのまま退却するのは――」
「駄目なのー、おねぇさま」
やる気が右肩下がりのフレミアを頑張って激励する雪花であった。
何にせよ、改めて公園に突入したフレミアたちの行動は、今度は早い。フレミアの金髪が翻り、その小柄な体躯から信じられない量のサイキックエナジーが溢れ出す。
「皆、『纏わせる』わよ」
そのサイキックエナジーは念動力となり、フレミアの眷属たちを、フレミア自身を膜のように覆った。それがバリアとなって、巨大トマトから漂ってくる悪臭が遮断される。フレミア、そしてその眷属たちの表情が少しだけ和らいだ。
だが、フレミアが『纏わせる』と言ったのは、何も自分と眷属たちだけに限った話ではない。何処か哀愁を漂わせて(ついでに悪臭も漂わせて)佇んでいた『正気を奪う赤い果実』――それにもフレミアのサイキックエナジーが纏わり付いたのである。
ただし、こちらは――非常に攻撃的に。
赤く巨大な果実が、凄絶な軋みを上げる。
「……なかなか硬いわね……」
フレミアが追加のサイキックエナジーを立ち昇らせながら嘆息した。彼女は、その『サイコキネシス』でトマト型邪神を周囲の空間ごと圧縮しに掛かったのである。要は、ラップフィルムでトマトを密閉した後、そのまま潰しに掛かったようなものだ。これなら、潰した後も汁などが飛び散らず、実に衛生的である。
――が、流石に邪神というべきか、或いはユーベルコードで硬化でもしているのか、フレミアの強大なサイコキネシスに晒されても、赤い邪神の身体はその形状を保つ。けれど、フレミアたちもその程度のことは織り込み済みだった。
「皆でおねぇさまに加勢するのー」
雪花の号令の下、フレミアの眷属たちがそれぞれの遠距離攻撃用のユーベルコードをトマト型邪神へ向けて発動させる。
エビルウィッチからは燃え盛る火球の魔法が飛んだ。
邪悪エルフが有害物質を発生させ、トマトの瑞々しい表面を汚染する。
ハート・ロバーは召喚したハートマークからキューピッドの矢を射った。
ぽんこつ女王様はかつての手下の霊たちを召喚し、自分の代わりにその者たちをトマトへけし掛ける。
かつて邪神のエージェントだった少女は、トマト邪神の同類を召喚し、その触手を叩き付けた。
そして、雪花からはこの真夏にも威力が落ちない猛吹雪が放たれたのである。
無数のユーベルコードの猛威に、『正気を奪う赤い果実』がメキメキとひしゃげていった。その赤いボディのあちらこちらが裂け、中の汁が滲み出てくる。
――ぐっしゃあっ……!!
……ついには、その形が地面に思い切り投げ落としたトマトのようにぐしゃぐしゃに潰れたのであった。
「……終わったかしら? ……終わったわよね?」
フレミアが眷属たちにも問い掛けて確認する。眷属たちも流石にあの有様では死んだのだろうと判断し、主へと笑顔を向けた。……約一名以外は。
「やったのー、おねぇさま」
「……わたし、本当に今日は頑張ったと思うわ。これで一段落ね――」
肩の力を抜いたフレミアがふっとユーベルコードを解除した瞬間……。
「あ! フレミア様、待って――」
制止しようとしたのは元UDCエージェントの少女。彼女は、過去にUDCに所属していたからこそ理解していた。この世界の邪神やその眷属たちの、異常とまで呼べる生命力を……。
――フレミアのサイコキネシスが解かれた途端、トマトはぷっくぅ~と焼いた餅のように膨らみ、元の形を取り戻したのである。
……同時に、一度潰れたことでますます強まった悪臭が公園中を席巻した。
「っっっっ!? ――もう嫌! わたしは、帰るわよっ!!」
「ちょっとー、おねぇさまー!?」
もう我慢も限界といった様子で、フレミアが脱兎の如く公園から撤退した。それを雪花が慌てて追い掛ける。……残されたフレミアの眷属たちも、公園から飛び出していく主の背中を見、巨大トマトの邪神を見て……頷き合うと転進を開始するのだった。
……とはいえ、よく見ればきっと気付けたであろう。『正気を奪う赤い果実』の側も、それを追撃する元気は無いということに。
フレミアたちの攻撃は、確実に彼の邪神の寿命を削っていた。
大成功
🔵🔵🔵
アイ・リスパー
「うっ、なんて酷い臭いでしょうか……
タカヒロさんには申し訳ないですが、
あんなのに近付くのは生理的に無理なので放置させていただきます」
さて、赤い果実への対応策ですが
電脳魔術士である私にお任せください!
要は近づかずに敵を撃破すればいいのです!(フラグ
「オベイロン、実体化プロセス開始です」
【クラインの壺】で電脳空間に格納している
『機動戦車オベイロン』を実体化。
搭載してある『多連装ロケットランチャー』で敵を遠距離砲撃です!
「トマト弾による攻撃!?
甘いですね!
ロケットランチャーで迎撃です!」
敵が放ったトマト弾をロケットランチャーに迎撃させ……
空中で爆散したトマト(臭い)を全身に浴びるのでした。(びちゃ
尻の穴より現れ出た巨大トマト型邪神を討つべく、続々と猟兵たちが現場である公園へと集まってきている。……が、その多くは想像以上の彼のトマトの悪臭にショックを受けているようだった。
アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)も、公園に踏み込むなり愛らしい顔立ちを蒼ざめさせる。
「~~~~っ!? うっ……なんて酷い臭いでしょうか……。申し訳ないですが、あんなのに近付くのは生理的に無理です」
両手で口と鼻を包み込んで、くぐもった声でそう言うアイ。彼女がチラッと視線を向け、頬を赤らめた先には、丸出しの下半身に新聞紙を被せられたタカヒロの姿。ある猟兵の勇気ある行動で、一般人の彼もあの悪臭オブリビオンの傍からは救助されている。
(だから、無理して近付く必要だって最早無いんですっ!)
大義名分を用意出来たアイ、絶対に悪臭の根源たる巨大トマトには近付かない、臭いを移されて堪るかと決意を固める。
……しかし、そうは言ってもあのトマトが『正気を奪う赤い果実』というれっきとした邪神である以上、撃破はしなければならないのが猟兵であった。如何にして彼の邪神に有効打を与えるのか……皆そこに頭を悩ませている。
「ここは、電脳魔術士である私にお任せ下さい! 要は近付かずに敵を撃破すればいいのです!」
……述べている主張は何一つ間違っていない、いないのだが……どうしてだろう? アイが言うと全てがフラグとして聞こえてしまう……。
……そういう星の下に、アイは生まれてしまったのだろうか……?
何にせよ、「我に策あり!」と自信満々なアイは、自身の周囲に展開させたホロキーボードを操作、輝いたホロディスプレイに「ALL CLEAR」の文字が浮かぶ。
「『マイクロブラックホール生成完了。空間歪曲率固定。電脳空間アクセスゲート開放します』」
いきなり『マイクロブラックホール』と聞いてギョッとした者も居たかもしれないが、アイが発生されたそれは完璧に制御され、周辺のものを無差別に吸い込むようなことは無かった。実際のところ、攻撃の為のものですらなかったのである。
「『オベイロン』、実体化プロセス開始です」
今回のマイクロブラックホールはその超重力で空間を歪める特異点。それが生じさせた空間歪曲は次元の壁を貫通するゲートとなり、アイが支配下に置く電脳空間と現実を繋げるのである。今、虹色に煌めく闇を通り抜け、電脳空間より何かが現実世界へと降臨しようとしていた。
――『機動戦車オベイロン』。
アイによってそう名付けられたそれは、UDCアースのそれよりも遥か先まで世代を重ねたと思しき異世界の戦車であった。陸地ばかりではなく水上や水中も難無く進み、時には人型にもなってアイをサポートする機械の戦士。それに搭載された人工知能が、主たるアイの命令を今か今かと待ちわびている。
「オベイロン、『多連装ロケットランチャー』準備です! それで敵を遠距離攻撃して下さいっ!」
アイの指示に、オベイロンは従順に従った。3m超のトマトである『正気を奪う赤い果実』にも負けぬ威容の一角から、鋼のサイロの蓋を解き放っていく。
そこに収められていたのは無数のロケット弾。多量の推進剤を内包するそれらは、いつでも大空に飛び出せるとばかりに鈍く輝いていた。
「オベイロン――撃ちなさい!!」
アイの号令を受け、オベイロンのサイロから炸薬を積んだロケットが一発、また一発と飛び立っていく。それらは狙い過たず邪神の赤く瑞々しい巨体へと着弾、爆炎と爆風を上げた。
「んきゃー!? 爆風で臭いがっ、流れてきます!」
――が、ここでアイにとって第一の予想外。ロケット弾の爆風によって、邪神トマトの悪臭が押し流されてきたのだ。……形容し難いフレーバーを帯びた風に白いロングヘアを弄ばれ、アイは半泣きである。
しかも――続けて第二の予想外が来た。流石に、この重火力には対抗せねばという防衛本能が働いたのか、暫し無防備にロケット弾を浴びていたトマト型UDCが、反撃の為のユーベルコードを立ち昇らせたのである。
巨大なトマトの直上に、普通サイズのトマトが幾千、幾万と寄り集まった塊が現出した。――そこから、アイとオベイロン目掛けて流星雨の如くトマトが飛び出してくる。
「トマト弾による攻撃!? ――甘いですね! オベイロン、ロケットランチャーで迎撃です!」
電脳空間の申し子たるアイは、事前の情報収集も欠かしてはいなかった。『正気を奪う赤い果実』は別個体が何度も猟兵たちと交戦しており、戦闘方法に関する情報も集まっている。眼前の赤い邪神がこのような攻撃を仕掛けてくることはアイも織り込み済みであり、キッチリ対策も立てていたのであった。
オベイロンより飛翔したロケット弾の群れが、飛び来るトマト弾の群れと正面衝突し、それを粉砕する。
……そう、ここまではパーフェクトだったのだ。相手が通常の『正気を奪う赤い果実』なら、アイの作戦は完璧だったのである。
…………今回の個体のように、鼻がひん曲がるほど臭くなければ。
他の猟兵も体験していたことだが、今回の悪臭トマト邪神、召喚するトマト弾もまた臭い。それが……大量のそれが、上空にて粉々に爆散したのである。公園全体にその汚濁が、芳香が、雨となって降り注いだのだ。
……雨具など用意していなかったアイは、当然それを全身に浴びる。
「……………………ぅ、うぁぁああああああああぁぁ~~~~~~~~~~んっ!? く、臭いですっ、汚いですっ、わぁぁああああああああああ~~~~~~~~~~んっっ!!」
髪を赤と白のまだらに染め、ブラウスもスカートも華奢な肢体に貼り付かせたアイが、自分から漂う赤い邪神と同じ香りに泣き叫ぶ。その横で、こちらも全身に悪臭トマトを浴びたオベイロンが、悲哀に満ちた様相で佇んでいた。
一刻も早く、自分からもオベイロンからも悪臭の根源たるトマトの欠片や果汁を洗い流したいアイは、公園設置の水飲み場の水道に駆け寄るが……。
「――出ません!? 一滴も水が出ませんよ!? どうなってるんですかっ!?」
……邪神復活の余波で公衆トイレが吹き飛んだ折、この公園の水道設備も一緒に死んでいたのだ……。おかげアイが浴びたトマト、及びその悪臭は、刻一刻と彼女の衣類へ染み込んでいき……。
……下着にまで臭いを染み付けられたアイは、ただただ涙するしかなかったという……。
とはいえ、邪神の側も一部が焼きトマトとなり、決してダメージは浅くはなかったようだ。
……余談として。
ロケット弾の爆風で、タカヒロくんの下半身を隠していた新聞紙は何処かへ吹き飛びました。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
アドリブ◎※身に<呪詛>宿す
えぇと……
体内で邪神召喚の準備が出来てしまえるなんて重大な事件、ですよね(本人精一杯のフォローのつもり)
《機能強化》<第六感>含め知覚拡大強化、<情報収集>開始。
邪神も呆然としているそうですが警戒は怠らず、
突発的な事件とのこと、余裕があれば<『人払い』の呪詛>込めた立ち入り禁止のテープ張っておきます[マーレ+倉庫]
相手に召喚などさせません
なにせ今回の邪神、色々な意味で汚い……ですから
まき散らされてはたまりません。
こういう時は「汚物は消毒だー」が定番なのでしょう?
<高速詠唱、早業>で《不死鳥》召喚
臭いの粒子ごと纏めて焼却してしまい消臭です
速やかに燃え尽きなさい
邪神・『正気を奪う赤い果実』へとダメージを積み重ねつつも、悪臭がより増していく現場の公園の様相に、月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)は戦慄を隠し切れなかった。
このような事件の発端となった少年・タカヒロにもある種の戦慄を覚えてしまうユイ。彼に視線を走らせた彼女は――その視線を再び正面へと戻し、呟く。
「えぇと……体内で邪神召喚の準備が出来てしまえるなんて重大な事件、ですよね」
……何故か、被されていた新聞紙が無くなり、再度下半身丸出しの有様となっていたタカヒロへ、頬を少し赤らめたユイに出来る精一杯のフォローがそれであった。
とにかく、これ以上色々な意味での被害を拡大させない為にも、ユイは悪臭を帯びる巨大トマトへと立ち向かっていく。……直前まで他の猟兵へ激しい攻撃を放っていた赤い巨体は、今は肉体的にも精神的にも疲れた様子で動きを止めていた。
「『(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。情報読取蓄積更新……各技能へ反映継続、最適化……機能強化)適用……』。――『(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。読取・取込・収集・解析・分析・記録)ロード……(行動・未来予測)演算開始……』」
ユイが自身の知覚力を拡大強化し、戦場の情報収集を開始した刹那――その頭をハンマーで殴られた如き衝撃に見舞われる。
「――は!? ………………っっ!?」
ユイは、思わず両手で鼻と口を押さえた。ユーベルコードにより、知覚能力も情報収集能力も桁違いに増大しているユイだからこそ解る。具体的に数値化が出来てしまったのであった。……今、この公園が、どれほどおぞましいレベルの悪臭に汚染されているかが。それは、ユイをして暫し凍結してしまうショッキングな数字であった。
(……この事件が終わったら、いつも以上に手早く、即刻で身体を新品に作り直しましょう、ええ)
任務ごとに肉体を新しく作り直す呪物兵器の制御核のヤドリガミ・ユイの、心の底からの誓いであった。
(……少し手間でしたが、『あれ』もやっておいてよかった……)
強大な呪詛をその身に宿すユイが、それの一端を『人払い』の効果に変容させ、織り込んだ立入禁止テープ。公園への突入前に、彼女はそれを周囲に張って一般人の接近を抑制していたのであった。……猟兵でも脅威を感じるこの場の臭い……一般人には体験させない方が絶対に良い。これはまさしくユイのファインプレーである。
ともあれ、事前に仕込むべきことは全て終わったと言えた。残されたユイのやるべきことは――眼前にそびえる汚物たる邪神を、速攻で焼却すること。
「こういう時は『汚物は消毒だー』が定番なのでしょう?」
まさしく、ヒャッハー! ……その通りである。ユイの呪詛が、ユーベルコードが、普段にも増して超高速で編み上げられていった。
「『(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。無限連環具現化術式起動。概念制御、効果・対象指定、具現)舞え……』」
増殖し、万物を滅して喰らう貪欲なる焔……同時に、あらゆるものへと癒しと浄化をもたらす清廉なる炎が、『不死鳥』の名の通りに翼を広げるが如く顕現する。それをユイは、一瞬の逡巡も無く赤々とした邪神へ叩き込んだ。
「速やかに燃え尽きなさい」
真っ赤な邪神がそれ以上に赤く輝く火炎で包まれる様を、ユイは真っ直ぐに凝視していた。唐突に炎に巻かれた邪神は、何とか抵抗しようとしてか頭上に砲弾と化すトマトたちを召喚しようとするが――それらが出現するはずの空間にもユイは不死鳥の火を渦巻かせ、召喚されたトマトたちが発射される前に焼き尽くしていく。
「召喚などさせません」
ヘテロクロミアの双眸に強い意志を宿らせたユイが、厳かに宣言する。凛とした表情の彼女は裁きの女神の如き雰囲気だが……その胸中ではやや焦りが首をもたげていた。
(……あちらのトマトも凄い臭いなのは既に情報収集済みなので。撒き散らされては堪りません)
……実際のところは、他の猟兵たちとの戦いで最早相当な量が撒き散らされてしまっているのだが――それでも、これ以上を看過出来ないのがユイなのである。何せ、彼女は案外刺激に敏感なのだ。それは、嗅覚の方面にも適応されることであり……現状でも、実は刺激的過ぎる悪臭に心が折れそうになっているユイなのである。……そうであっても、同時に根が真面目な彼女が現場を放棄して逃げ出すこともあり得ない。心境は『前門の虎、後門の狼』状態のユイ、こっそり内心は戦々恐々としつつ、己が力を振り絞る。
「臭いの粒子ごとまとめて焼却してしまい――消臭です」
圧倒的業火が、トマト邪神ばかりか公園中を席巻していく……。
……やがて、完全にユイの意思に従う不死鳥の炎が羽根を舞い踊らせるように消え失せると――そこには丸々と焼けた『正気を奪う赤い果実』の姿が。……そして、ユイは知る。
「焼けたことでフレーバーが変わって、また別の臭さが……!?」
曲がりなりにも邪神であるせいか、その臭いの粒子も普通より根強かった。
「トマトの爽やかな香りのせいで臭みの輪郭がはっきりすることはなくなりましたが……代わりに焼け焦げたトマトの変な香ばしさが加わって、臭みに段階的な深みが……!? うぅぅ……」
非常に優れたユイの情報収集能力は、そんなことまで把握させてしまうのだった……。
成功
🔵🔵🔴
彩波・いちご
うぇ……ひどい臭いですね……
しばらくトマト料理は作れそうにありません……
とにかくあのトマト邪神を何とかしようと、異界の抱擁や侵食で触手やスライムといった私の中に棲む異界生物を呼ぼうとして、ふと気づきます
……アレに触ったモノを私の体内に戻したくない
な、ならば方針転換!
燃やして消毒といきましょう!
【フォックスファイア】の狐火を呼び出して、焼きトマトにしてあげますっ
……燃えて悪臭がひどくなったり、爆発して破片が飛んできたりしません、よね?
※アドリブ、連携歓迎です
「うぇ……酷い臭いですね……。しばらくトマト料理は作れそうにありません……」
現場の公園に漂う、直接的に臭くて、爽やかにさりげなく臭くて、香ばしく段階的に臭くて、もうとにかく臭い……そんな空気に、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は愛らしく整った容姿を泣きそうにしかめる。可憐な鼻梁と唇を両手で覆う仕草も実に清楚な雰囲気だった。
……ええ、何も描写的には間違ってはおりません。
「と、とにかく、あのトマト邪神を何とかしましょう!」
たとえ、一見弱々しくたおやかな印象でも、いちごとて猟兵としてこの事件に挑んでいる身。勇気を奮い立たせ、臭いの原因たる『正気を奪う赤い果実』へとユーベルコードを高めていく。
「『ふんぐるいふんぐるい……、星海の館にて微睡む我が眷属よ!』――『ふんぐるいふんぐるい……、全てを喰らう形なき我が眷属よ!』」
この世のものとは思えぬ異様な呪文が大気を震わせ、いちごの足元の影が太陽の光を無視するように大きく広がる。水面のようにたゆたったそこから、異形の姿が数え切れぬほど浮かび上がってきた。
いちごは、その身に遥か異界の生物を棲まわせている。それを召喚し、自らの手足の如く操ることが出来るのだ(……時々、暴走しますが)。触手やスライム、そのような見た目を取る彼の生き物たちの大群を呼び出して、圧倒的物量で赤い果実の邪神を押し潰してしまおう……それがいちごの作戦である。……だが……。
(……ん? ……あれ……ちょっと待ってほしいです……?)
今にも自分の影から這い出てこようとしていた触手やスライムたちへ、いちごはストップを掛ける。……その視線が、今や焦げたり裂けたり抉れたりして大分生ゴミ的オーラを醸し出すようになってきた3m超のトマト型邪神を凝視した。
(……相変わらず本当に臭いです……。見た目も何だか汚いですし……)
実にもう、『汚物』という様相を呈してきている邪神だった。
――で、いちごは今からアレに向かって自身の内より呼び出した触手やらスライムやらをけし掛けるわけである。……まあ、百歩譲ってそこまでは良いのだが――その後、『アレに触れた触手やスライムたちを再び自分の中へ回収する』必要もあるわけで。
(……アレに、あんな代物に触ったモノを、私の体内に戻す? ――否! 断じて否です!!)
「――ちゅ、中止っ、召喚中止ですっ!」
いちごは首を横に振って艶やかな髪を躍らせ、使おうとしていたユーベルコードを中止した。急速に本来の大きさに戻っていくいちごの影の中から、出番を奪われた触手とスライムたちからの不満の声が上がった気がするが、いちごは取り合わない。
「……な、ならば方針転換です! 燃やして消毒といきましょう!!」
妖狐たるいちごは、当然狐火の扱いにも長ける。それによる熱消毒で臭いを元から絶ってしまおうというのが、咄嗟に閃いたいちごの新たな作戦であった。
……だが、同じ作戦を直前に他の猟兵が用い……『正気を奪う赤い果実』に絶大なダメージを与えたものの、臭いを消すことには失敗している。
(つまり、より大きい火力が必要ということです……)
それを踏まえたいちごは、自分が生み出せる限界まで生み出した狐火たちを、一つの塊へと統合していった。最大級まで熱量を上げ、一点集中で焼き尽くしてしまおう……そういう魂胆なのである。
(燃やし方が甘いと悪臭が酷くなるのは、他の方が実証済みです。そうならないように、私の出せる最大の、限界の熱量を振り絞らないといけません……)
……いちごの前に発生したユーベルコードの炎が、周辺に陽炎を立ち昇らせた。7月の炎天下の気温が、いちごの狐火に煽られてさらに、さらに上昇していく……。
自らも水晶のような汗の玉を浮かべながら、いちごはそのサファイアの如き瞳で赤き邪神を見据えた。
「……焼きトマトにしてあげますっ。――いきます!!」
いちごの全力全開の狐火が、彗星の如く宙を翔けてトマト型UDCへ着弾した。火山噴火の如き爆音を上げ、火柱が天と地を繋ぐ。周囲の陰影まで変えてしまう炎と光の乱舞の中、邪神たるトマトが悲鳴を上げるように震えた。
……そんな中にあって、それでも『正気を奪う赤い果実』はいちごへ対抗するように、自らの上空に砲弾の如く飛ぶ通常サイズのトマトの集合体を呼び出していって……。
――ここで、唐突ながらクッキング豆知識のお時間です。
皆も良く知るお野菜・トマトですが、実はこれ、電子レンジに入れる時は注意が必要だったりするのですよ。
トマトに限らず、他にもブドウのような『薄い皮に包まれていて、中身に水分が多い』果実類は、そのまま電子レンジに入れると破裂する危険性があるのです。
それを防ぐには、表面の皮に包丁などで切れ込みを入れておきましょう。
……そんな知識を、料理上手ないちごは当然ながら存じていた。だから、どれだけ高熱を浴びせようと、今のズタボロの、表面の皮も大きく裂けている『正気を奪う赤い果実』が、そのまま電子レンジに掛けたトマトのように破裂することなど無いことは確信している。
――ただ、召喚されたトマトの方は?
「……あ――」
大急ぎでいちごが狐火に消えるように命じたが、やや遅い……。
トマト型邪神の真上で召喚された幾万……もしかしたら幾億にも達していたかもしれないトマトたちが、一斉に膨張して――破裂した。赤い豪雨が公園中に降り注ぐ……。
「っきゃああああああああああっっ!?」
回れ右したいちごは、猛ダッシュでそれの範囲外を目指す。
他の猟兵が我が身にて確認した通り、召喚されるトマトも本体たる巨大トマトに負けず劣らず悪臭を帯びているが――今回はそれだけでは済まない。破裂によって撒き散らされたトマトの果汁は煮え滾っており、その色も相俟って溶岩を思わせた。そんなものを頭から被ったら、猟兵でもただでは済まないだろう。
脚線美を必死で前へと回転させ、最後はヘッドスライディングをする形で、どうにかいちごはギリギリのところで臭くて高熱のトマト果汁から逃げ延びた……。
「……せ、精神的にも肉体的にも、死ぬかと思いました……」
そう、いちごが呟く向こうでは……必然的に頭から超高熱悪臭トマト果汁を被る羽目になった『正気を奪う赤い果実』が、「もういっそ殺せ」と言わんばかりにぐったりとしていた……。
成功
🔵🔵🔴
火奈本・火花
「本当にショックだったようですね。……一見して人間的な判断基準があるように見えないUDCも、出自や自身の状態を鑑み、精神的な動揺をする、という状況は注目に値しますが」
■戦闘
状況は後で報告書に纏めるとして、なるべく被害を抑えて対処したいな
状況終了後に異臭騒ぎになっても面倒だし、機動部隊の数人に消臭スプレーを買って来させたい。鼻が麻痺していて、実は臭いが移っていたりしたら……
残った人員は引き続き、私と共に銃撃を継続
表皮を削ぐようにすれば、臭いの大元は絶てるだろうか?
もし倒す時に、あの実が爆発でもしたら大事だ
「総員、奴の破裂などの事態に備えて身を隠せ!」
と言うか、アレを回収したい連中がいるのか……
決死の行動で邪神・『正気を奪う赤い果実』の傍に取り残されていた一般人の高校生男子・タカヒロを救助した火奈本・火花(エージェント・f00795)。
彼女が再び戦線へ復帰するまでの間に、戦場の状況はさらに混迷を深めていた……。
公園内は地面も遊具も悪臭を上げる赤い色によって染め上げられ、直径3mを超すトマト型の邪神は裂かれて抉られて焼かれて、かなり痛々しい有様になっている。
特に、この決して長くはない時間の間に相当なダメージを被っている巨大トマトに、火花は着目した。
「記録にある同型の個体よりも、同じ時間でより深い傷を負っている……? ――復活の仕方が本当にショックだったようですね。……一見して人間的な判断基準があるように見えないUDCも、出自や自身の状態を鑑み、精神的な動揺をする、という状況は注目に値しますが」
だからといって、のんびりと観察をしているわけにもいかないのがアンディファインド・クリーチャー――邪神というイキモノである。弱り始めているのならそこを畳み掛けて殲滅するのみと、火花は自動拳銃の弾倉を新たな物へと入れ替えた。
そして、火花は自らが率いる機動部隊ひ‐4……通称『四葉のクローバー』の隊員数名へ一つの命令を下す。
「この先の駅前に大手ドラッグストアのチェーン店がある。そちらで販売されている消臭スプレーを、在庫も含めて買い占めてこい」
……火花自身、動揺して混乱の渦中にある……というわけでは決してなく、眼前の悪臭邪神を撃破したその後を見込んでの命令であった。
(状況終了後に異臭騒ぎになっても面倒だしな。臭いを消し、この場を出来る限り早く元の状態へ復帰させる準備も、今の内にしておいた方がいい……)
同時に、火花の女性としての本能が強く警鐘を鳴らしていたのである。
(もしも、我々の鼻が麻痺していて感じられないだけで、既にこの身に臭いが移っていたりしたら……!)
その脅威は火花も看過出来なかったのだ。
……駅前に向けて駆け出していった数名の隊員を見送り、残る『四葉のクローバー』のメンバーは、弾丸の補充を終えた銃器類を手にして再度赤く巨大な果実が鎮座する公園内へと突入していく。
「『全てを私が対処する必要は無い。我々は人類だ、我々には我々のやり方がある』」
火花の指揮の下、『四葉のクローバー』はまたも赤々とした邪神へ猛攻撃を開始した。日本の真夏日に、冷たい殺意で研ぎ澄まされた銃弾のブリザードが吹き荒れる。
「総員、敵UDCの表皮を削ぐように銃撃を継続。臭いの大元を絶ってやれ」
自身も自動拳銃より9mm弾を連射しつつ、火花は『四葉のクローバー』の面々へそう指示を送る。……全体的に余す所無く臭い今回の『正気を奪う赤い果実』であるが……その中でも特段に表面が臭いのは、タカヒロの体内から出る間際に彼の汚物へ直接触っていたのがその部分だったからだろうか? とにかく、これ以上の被害をなるべく防ぐ為、少しでも悪臭を削ぐ為に、火花は敵邪神のより臭いその部分へと攻撃を集中するようにと『四葉のクローバー』へ命じた。
果たして、悪臭を弱めることに火花と『四葉のクローバー』たちの攻撃が一役買ったのか……それは解らないが(……真面目な話、火花も『四葉のクローバー』の面子も、それがなかなか判断出来ない程度には鼻が麻痺し始めていたのだ)、少なくとも今回の攻撃は、前の時とは異なってトマト型邪神に明確に嫌がる素振りを発生させた。充分に、効いている……。
「――総員、耐性を低くして備えろ。衝撃波が来るぞ」
全体を激しく振動させ始めた巨大なるトマトの次の行動を先読みした火花が、『四葉のクローバー』の隊員たちへ対処と警戒を促した。火花自身も地面に伏せ――その上を通り過ぎていく波動をビリビリと感じ取る。
直後に跳ね起きて自動拳銃の銃口を邪神の赤き巨躯へと向けた火花の視界の中、同じように起き上がって銃を構える『四葉のクローバー』に、欠けた隊員は一人も居ない。
再開した弾丸の雪嵐を浴び、寸前の振動とは違う痙攣するような震えを走らせる『正気を奪う赤い果実』に、火花は首をもたげた懸念事項を『四葉のクローバー』の全員へ通達する。
「総員、奴の破裂などの事態に備えておけ。……もしも倒した瞬間に、あの実が爆発でもしたら大惨事だ……」
想像もしたくないその結末に、火花も『四葉のクローバー』たちも内心震え上がる。
そして、火花自身はさらに胸の内でいくつもの疑問を自問自答していくのだった。
(というか、アレを回収したい連中が居るのか……。物好きといえばそれまでだが――)
如何なる連中がその目的を持ってこの場に来ようとしているのか? せめて、目の前のあのトマトよりはまともな相手であってほしい……そんな風に考えていた火花の耳に、ふと何処からか珍妙な囁き声が聞こえてきた。
「凄いわ……なかなかカッコいいあの見た目で、下半身丸出しよ」
「彼の身に果たしてどのような攻めが繰り広げられたのか……はかどるわ。はかどってしまうわよ」
「――どうしました、エージェント・火奈本?」
「……いや、今、何か……?」
首を傾げる『四葉のクローバー』の隊員へ、火花も首を傾げ返す。彼女が振り返っても、そこには下半身丸出しのタカヒロが寝かされているだけだった……。
「――ところで、私が彼の下半身に被せておいた新聞紙はどうした!?」
成功
🔵🔵🔴
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
うつろぎ参上!(ちゅどーん
登場即自爆です
即自爆即退場がモットーです
戦法は自爆以外しないことです
とにかく台詞よりも自爆です
喋る時間で即自爆、うつろぎです
ユーベルコードの射程範囲が広いので
登場即自爆が可能だと思います
なので1歩も動きたくないでござる
動く時間で即自爆、うつろぎです
技能:捨て身の一撃を用いたジバクモードによる自爆
対象は範囲内の敵全てと言うかトマト
自爆した後はボロボロになってその辺に転がっています
重傷システムがあれば良かった!
ちゅぅぅどどどどどどどどどどどどぉぉおおおおおおおおおおおおおお――――――――――――――――――――んんっっっっ!!!!!!!!!!
……紅蓮と表現するのが良く似合う鮮烈な炎が、猟兵たちと邪神の戦場だったはずの公園を丸呑みにした。
大気中を駆けた爆音は遥か数十km先にまで届き、鳥の群れを大慌てで大空に飛び立たせる。
巻き起こった爆風は台風の瞬間風速すら問題にならない速度で、周辺に満ちていたはずの悪臭を天空の彼方まで吹き飛ばしてしまった。
――大破壊。
そうとしか表現出来ぬ恐るべき惨状に、UDCアースという世界そのものが震えているようにも錯覚される……。
……一体、この場で何が起きたのか? 少しばかり時間を遡って確かめてみたいと思う……。
――その存在は、あまりにも突然にこの場に現れた。
此度の邪神・『正気を奪う赤い果実』の姿形に目を白黒させた猟兵も数多い。彼のトマトがそれだけ珍妙な外見の邪神であるということは疑いようの無い事実であるのだが……今、出現した彼の存在に比べれば、その存在感は霞んでしまうかもしれない。
……『う』である。
……『つ』であった。
……『ろ』でもある。
……『ぎ』ですらあった。
――そんな四文字が縦に並んでいる。それが全てであった!
……え? 何なの、こいつ? 新たな邪神? 予定よりも早く『正気を奪う赤い果実』を迎えに来た……? ――違います、彼もまたれっきとした猟兵の一員、その名を虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)。
……『名は体を表す』ということわざがここまで似合う者も珍しい。
うつろぎが現れた瞬間、この場の全てが彼に持っていかれてしまった。時間が凍り付き、周辺の悪臭すらも凍り付いてしまったかの如き印象。そのありとあらゆるものが静止してしまった世界で、うつろぎだけが揺れている。
彼のうつろぎに、『正気を奪う赤い果実』さえも目を奪われていた。……こいつ、目が無いけど、多分そう。
うつろぎの側も、『正気を奪う赤い果実』を真っ直ぐに見据えている。……恐らく? 彼にも目が無いので、多分だが……。
奇妙な場面……そうとしか言いようがなかった。数居る邪神の中でも特にツッコミどころ満載な外見を持つ『正気を奪う赤い果実』と、多種多様な猟兵たちの中でも次元が違う外面を有するうつろぎ……。両者が同じ空間に存在するだけで、見た者の正気度がガリガリと削れていく混沌の時空が発生してしまう。
何よりも驚愕すべきことは、うつろぎが登場してからここに至るまで、実時間はまだ0.1秒も経過していないということだ。時の流れが遅過ぎる。うつろぎの存在に、時間の経過すらその仕事を忘れてしまったかのようであった……。
――だが、時間は唐突に元通りの速さで流れ出す。
「……うつろぎ参上!」
うつろぎが、何処から出したのかも解らないそんな声で名乗りを上げた――その瞬間だった。
……冒頭のあれである。
爆心地=うつろぎであった。
うつろぎ……それは登場即自爆。
うつろぎ……モットーは『即自爆即退場』。
うつろぎ……戦法=自爆。それ以外の技は無い。
うつろぎ……台詞よりも自爆が大事。
うつろぎ……喋る時間があったら即自爆したいお年頃。
彼のユーベルコード・『ウツロギ(ジバクモード)』は、その性質上効果範囲が結構大きかった。なので、もしもこのリプレイに他の猟兵が登場していたら、うつろぎの自爆に巻き込まれて大変なことになっていただろう。
……偶然、他の猟兵が全員戦場から退避しているタイミングで良かった……。
何で、ユーベルコードの効果範囲がこんなにも大きいのかといえば、うつろぎが一歩も動きたくないからだという。
うつろぎ……動く時間があれば即自爆が信念であった。
……やがて、遥か上空から二つのものが公園の地面に落下する。
片方は、結構な質量に重力加速が加わって、大地にちょっとしたクレーターを刻み付けた『正気を奪う赤い果実』。……当初の真っ赤で瑞々しかった外観は、最早面影が無く。真っ黒に炭化して、辛うじて3m超のトマト的な形状が垣間見えるくらいであった。
……それよりやや離れた地点にひらひらと舞い落ちたのは、『う』と『つ』と『ろ』と『ぎ』で構成されたズタボロの影……。
遊具も全て跡形もなくなり更地と化した公園に、焦げた邪神トマトとうつろぎが転がる様は、何やら世界の終わりを連想させる哀愁漂う風景であった……。
『ゴッドうつろぎアタック……神風となり……HPは1になる……!』
雲一つ無い蒼穹にうつろぎの顔(?)が浮かび、そんな風に呟いた気がした……。
――ちなみに、『第六猟兵』には重傷システムが無い為、うつろぎさんは次の場面になればピンピンとしております。
……「解せぬ」と、『正気を奪う赤い果実』が言った気がした。
大成功
🔵🔵🔵
蒼汁権現・ごずなり様
薔薇(オブリビオン)、向日葵(オブリビオン)ときて今度はトマトかの?よし、こやつも我が蒼汁(アジュール)の材料にしてくれようぞw
ふはwくっさwちょーうけるーwでもドリアンとかくさやとか臭くても美味いものあっしイケるじゃろw
ゴッド・クリエイションで繁殖力を高めたヤバそげに輝く蒼汁スライムちゃんを創造するゾイwふっはwこれなんてチェレンコス光?大丈夫、ヤバい成分は放射しておらぬゾイ。
さぁイケ蒼汁スライムちゃん、あやつを取り込み新たな成分を獲得するのじゃ、その涅槃寂静の繁殖力でトマト邪神を取り込むのじゃ!
なお、この蒼汁スライムちゃんは一滴でも触れれば呪詛で味覚が無くとも魂に宇宙的狂気な味を刻むゾヨw
この素晴らしきUDCアースに大いなる幸あれと言わんばかりの爆炎が咲き誇った後――黒焦げの邪神・『正気を奪う赤い果実』の前に現れたのは紛う方無き神……ヒーローズアースより来訪した本物の神に他ならなかった。
「ふはwくっさwちょーうけるーwでもドリアンとかくさやとか臭くても美味いものあっしイケるじゃろw」
テンション高く言ってのけたその神様こそ、蒼汁権現・ごずなり様(這い寄るごにゃーぽ神・f17211)である。……蛍光ピンクの液体に満たされた巨大な瓶型のヒーローカーに乗る桃色髪の幼女という姿には、彼のトマト型邪神も「神……?」という疑問符を頭上に浮かべていたが、直径3m超のトマトの姿の邪神と比べたら、ごずなり様の方が余程神々しかった。
そのごずなり様、相対する邪神の反応など意に介さず、その臭いも意に介さず、何やらマイペースに呟き続ける。
「薔薇、向日葵ときて今度はトマトかの? よし、こやつも我がアジュールの材料にしてくれようぞw」
……『アジュール』なる単語に聞き覚えが無いトマト型邪神は何処となく首を傾げるような雰囲気を醸し出すが――直後に高まったごずなり様のユーベルコードの気配に警戒心を漲らせる。流石に先の大爆発を喰らって懲りたのか、先手必勝とばかりにその直上の空中に数え切れぬほどのトマトが集合した塊を召喚した。そこより、散弾の如くトマトが弾け飛ぶ……が。
――べちゃべちゃぬるべちゃぐちゅちゅちゅちゅっ……!
……放たれたトマト弾は、一つ残らずごずなり様の前に盛り上がった物体に衝突し、そのままそれの内へと取り込まれたのである。異様な色に輝くその物体は、粘るように流動する身を秒単位の速さで膨張させていっていた……。
「ふっはwこれなんてチェレンコス光? 大丈夫、ヤバい成分は放射しておらぬゾイ」
シニヨンヘアを揺らして笑むごずなり様のすぐ前に佇立したのは、巨大な……あまりにも巨大なスライムであった。ヒーローズアースの神の御業・『ゴッド・クリエイション』にて生命を与えられたごずなり様の被造物たるそれは、ただでさえ大きな質量をますます増やしながらうぞうぞと焦げ付いた邪神トマトへと這い寄っていく。
……『正気を奪う赤い果実』という対比物と並べば、彼のスライムの常識を置き去りにしたサイズがよく解った。タカヒロ少年の尻より生まれて以来、自分よりはっきりと巨大なものなど見たことが無かった彼の邪神……明確にビビった気配を放出する。
「さぁイケ、アジュールスライムちゃん。あやつを取り込み新たな成分を獲得するのじゃ。その涅槃寂静の繁殖力でトマト邪神を取り込むのじゃ!」
……また『アジュール』なる単語が出たが、果たしてそれは何なのか……? しかし、当のトマト型邪神にはそこまで気にしている余裕は無い様子だった。次々に撃ち込まれるトマト弾もものともせずに迫ってくる巨大スライム――繁殖力が超強化され、際限なく大きくなり続けるらしいそれの圧迫感に追い込まれ、とうとうスライムの一部が邪神たるトマトの表面に触れる……。
――その刹那、トマト邪神に急速な変容が起きた。
焼け焦げて黒くなっていた表面が一気に赤く戻ったかと思えば、直後に青くなり……さらには紫、黄色、ショッキングピンクと点滅するように色を変える。かと思えば数m跳ね上がり、着地と同時にゴロゴロと地面を転がりまくった。
表情など全くない邪神トマトの表面に、歪むに歪んだ顔が浮かんだような気がする。声無き声が、この世のありとあらゆるものへ訴え掛けるように響き渡った風に錯覚された。
―― 不 味 い !!
……そんな具合に主張するように。
ここに至り、『正気を奪う赤い果実』も『アジュール』とは何ぞやという疑問に解答を得たようであった。それは、端的に言ってしまえば『アレ』のことである……。
――『蒼汁』。
健康的ではあるが、クソ不味いことでも有名な彼の飲み物……。ごずなり様が生み出した巨大スライムは、それによって構成された『蒼汁スライム』だったのである。
……しかもその味、一般人向けのそれの比ではない。何せ、少し触れただけで『正気を奪う赤い果実』が……見た目はアレだが能力的には決して低くはないはずの邪神が、ああものたうち回ったレベルである。
はっきり言って、宇宙的狂気な味――しかも、味覚が無い相手だろうとその魂に呪詛的に刻み込まれる代物……。
だが、それも当然と言えた。初めにごずなり様が言っていた『薔薇』とか『向日葵』とは、れっきとしたそのような姿形のオブリビオンのことであり、ごずなり様の蒼汁はそれらを材料として混ぜ込んだ一品なのだから。
……そして、ごずなり様はこうも言っていた――「こやつ(トマト)も我が蒼汁の材料にしてくれようぞw」と。
……………………。
……………………。
蒼汁スライムと暫し見詰め合った(?)トマト邪神は、猛スピードで身を翻して逃亡を企てた。が、蒼汁スライムはまるで津波の如く。瞬く間にトマト邪神をその内へと呑み込む……。
「――トマトの成分、ゲットゾヨw」
若干赤みが加わった蒼汁スライムの前で、ごずなり様が指をピースの形にした。
……その陰で、直径3mはあったはずの『正気を奪う赤い果実』の体積が半分になっていたのである……。
大成功
🔵🔵🔵
ルナ・ステラ
この依頼何なのでしょうか?
それにしても、タカヒロさん大丈夫でしょうか?
うぅ...臭いです...
トマトなのに...
臭いが移る前に、速く終わらせたいですね。
【属性攻撃】の風魔法で臭いを遮りましょうか。
そして、そのまま風魔法で攻撃しましょうか。
―なんか、すごい速さで振動してないですか!?
けほっ、けほっ...衝撃波に合わせて臭いが一気にこっちに...
臭いですよぅ...
(何か有効な手段はないでしょうか?)
星霊さんたち力をかしてください!
...水瓶座の星霊さんですか!?
臭いとともに洗い流しちゃってください!
もし、タカヒロさんも水瓶座の星霊さんで綺麗になったら、救助しましょうか。
※アドリブ&絡み等歓迎です!
「……この依頼、何なのでしょうか……?」
ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)が呟いたその言葉は、割とこの事件を端的に表していたかもしれない……。
邪神・『正気を奪う赤い果実』の存在がぶっ飛んでいるかと思えば、集まった猟兵にもぶっ飛んだ者たちが居て……まさに今、この公園は混沌の極地であった。そんな中にあってルナのような存在は一服の清涼剤である。
「それにしても、タカヒロさん大丈夫でしょうか?」
このような混沌の領域の中で、如何に猟兵側に救助されたとはいえ、一般人たるタカヒロは大丈夫なのかと心配する心優しいルナ。……もっとも、彼女が今居る場所からタカヒロの姿が見えなかったのは幸いだっただろう……。
――彼は現在、諸々の事情から再び下半身丸出しの有様だったのだから。
そんなことは露知らぬルナ、自分は自分に出来ることを……と、彼のトマト型邪神へ挑んでいく。
「うぅ……臭いです。トマトなのに……」
他の猟兵たちとの激戦の果てに、当初の直径3m超の大きさの半分程度までサイズダウンしたトマト型UDCを前に、ルナは口元を手で覆って顔をしかめる。……各猟兵たちの奮戦によって、最初よりは大分臭いがマシになってはいたが、やはり臭いものは臭かった。
(臭いが移る前に、早く終わらせたいですね)
そんな自分の切実な願いを叶えるべく、魔女っ子のルナが選択した魔法は、本来彼女が得意とする星と月に関する魔法ではなかった。
「お願いします。力を貸して下さい――」
ルナの星の光のように煌めく髪を、優しい光を湛える魔女っ子衣装を揺らしたのは――風。夏の暑気を吹き払う如き涼しげな風がルナの周囲を渦巻き、トマト型邪神から流れ来る悪臭を彼女に届かぬように遮断する。
……呼吸が楽になった為か、ほっと一息吐くルナ。そして、風は何も守りの為だけのものではない。今度は嵐の如き暴風と化して、『正気を奪う赤い果実』へと牙を剥いたのだ。
「行って下さい! あの邪神を切り裂いて……」
ルナの頼みを聞き届け、鋭き刃へと変貌した風がトマトの邪神へ次々と喰い込んだ。元よりかなりボロボロになっていたトマトの表皮がさらに裂け、その痛みに邪神が身を震わせる……。
「――え? 何か凄い速さで振動してないですか!?」
……いや、ルナは気付いた。邪神は苦痛に痙攣を起こしているわけではないと。トマトの震えは際限なく増大していき、やがて――周囲を席巻する衝撃波と化したのだ。
「きゃああああっ!? ……けほっ、けほっ……!?」
衝撃波そのものは、纏っていた風を解き放つことで相殺したルナだったが――直後に苦しそうに喘ぎ、咳き込み始める。目尻に涙を浮かべ、口と鼻を羽織っていたマントを引き寄せて覆った。
「……衝撃波に合わせて……けほっ……臭いが一気にこっちに……。けほっ、けほっ……うぅ、臭いですよぅ……」
他の猟兵たちによって深いダメージを与えられているとはいえ、邪神は邪神。『正気を奪う赤い果実』のユーベルコードは未だ威力が高く、ルナの風魔法では力負けしてしまった。
(このままじゃ駄目です。何か有効な手段はないでしょうか……?)
ルナは思考を巡らせ……結局のところ、これしかないと解答に辿り着く。
「『伝説の星霊さんたち力をかしてください!』」
――自分の最も得意とする、星と月に関する魔法を使うしかないと。
ルナの許に、『夜空の仲間たちの力添え』が届く……。
「これは……水瓶座の星霊さんですか!?」
ルナの眼前に降臨したのは、清く澄み渡る水をその内より湧き出させる水瓶であった。それの口より溢れ出た水が滝のように降り落ち、ルナへと迫るトマト型邪神の悪臭を大気より洗い流す。
……そう、臭いなど洗い流してしまえばいい。実に単純で、だが単純だからこそ有効な手立てであった。
目に見えた希望に、ルナの青い瞳も光り輝く。
「お願いします、水瓶座の星霊さん……臭いと共に洗い流しちゃって下さい!」
ルナの懇願を聞き入れて、水瓶座の星霊はより膨大な水流をその内より噴き上げた。水の龍の如く渦巻きながら空中を舞ったそれが、激流と化して『正気を奪う赤い果実』へと躍り掛かる。
――公園の一角に、渦潮を思わせる猛烈な水流が生まれた。その中で、洗濯機に入れられた衣類のように邪神たるトマトが乱回転する。水の暴威に臭いを、果肉を削り落とされて、ますますトマト型UDCは小さくなっていった……。
それを維持しながら、ふとルナは思い付く。
(……あ。タカヒロさんも水瓶座の星霊さんに頼んで洗ってもらったらどうでしょうか?)
彼を救助した猟兵が話していたことを、ルナも少し耳にしていた。タカヒロは何やら、何処がとは解らないが汚れていたらしい。
その汚れを落としてあげられればと考えた優しいルナは、タカヒロを探して視線を巡らせる。そうして、公園の外の歩道に寝かされている彼の姿を見付けて……。
「………………っっっっ!?」
……しっかりと、目撃してしまった。剥き出しで丸出しのタカヒロの下半身を。必然的に丸見えである彼の……男性の証を。
「っっきゃぁぁああああああああああああああああっっ!?」
普段、声が小さいルナが、珍しく上げた絹を裂くような絶叫と共に――水瓶座の星霊の水流がタカヒロ(特にその股間の一部分)へ殺到する。
「――!?!?!?!?」
凄まじい衝撃を受けたタカヒロは、一瞬だけ目覚めてまた気絶したのだった……。
「……はっ!? ご、ごめんなさい……」
真っ赤になったルナは、12歳の女の子の顔でポソポソと謝るのであった。
成功
🔵🔵🔴
村雨・ベル
ころなちゃんの鉄壁スカートの中を激写ー!
……って、私この依頼受けに来たわけじゃ
ちょっと ほら からかっちゃおうかなーって あのー 聞いてるー?
ひぃぃ 強制転送は やー めー てぇぇぇ(エコー)
●無駄なあがき
しくしく、来てしまった以上はどうにかしましょう
というか戦いたくないです…… ええと無差別に攻撃されるとか
無数に増えられるのもあれですし
……ここは一番平和的なPOW これですね!
魔眼でトマトのスリーサイズでも測ってますか……
向こうも無敵状態で動かないならこのまま時間切れ(?)を狙って
うう……ガン見してるだけで正気度が失われてる気がします
うう……帰りたい 臭すぎるぅ…… しくしく
備傘・剱
…自宅にんなもん残しておくなよな…
で、いくら腹減ってるからてんなもん喰うなよな…
血か?血がそうさせるのか?
えー、てなわけでして、青龍撃発動して、水弾で洗い流して、せめて、触れる様にしよう
飛び散る雫に関しては高速移動で逃げ切ってやるわ!
悪臭は我慢するしかないが、オーラ防御で全身を満遍なく覆えば、汚水ぐらいははじけるだろう
あ、近くに平たい物が有れば、念動力で動かして、扇いで悪臭を飛ばしてみようかな
まぁ、色々と被っても後で綺麗にすれば問題は無いだろうがなぁ…
あ、丁度いい、彼方此方、水弾で洗い流せたら、戦いも楽に…ならねぇよなぁ…
どっちも気の毒って言うか、なんていうかなぁ
アドリブ・絡み・好きにしてくれ
今回の事件が発生した顛末を思い返し、備傘・剱(絶路・f01759)は深々と溜息を吐いていた。
「……自宅にんなもん残しておくなよな……。で、いくら腹減ってるからってんなもん食うなよな……。血か? 血がそうさせるのか?」
自分の家に封印した邪神を残しておいたタカヒロの祖父も、それを食べたタカヒロも似た者同士だと、剱は断じる。
……まあ、タカヒロに関しては全くその通りであり、フォローのしようも無いが……タカヒロの祖父に関しては、自らの本当に傍に置いておくことで邪神の封印を真に厳重に管理していたのだろう。そして、彼が急逝した際にその封印の管理をきちんと後任に引き継がせることが出来なかったのは、どちらかといえば組織としてのUDCのミスだ。その辺りについては、少しフォローしておきたい。
何はともあれ、そうして復活した邪神・『正気を奪う赤い果実』は、猟兵たちの奮戦もあって最早大分弱っている。その身から放つ悪臭も、最初と比べればかなりマシになってきていた。……それでも、牛乳を拭いてからそのまま10日ほど放置した雑巾の方がまだ嗅げる臭いではあるが。最初の段階が臭過ぎた……。
そんなトマト型邪神と相対しようとして――剱は先客が居ることに気が付く。
「うう……帰りたい。臭過ぎるぅ……しくしく」
邪神を前にしてそんな泣き言を言っているのは、眼鏡が似合う黒髪のエルフの女性――村雨・ベル(いすゞのエルフ錬金術士・謎の村雨嬢・f03157)であった。赤い双眸に涙を滲ませる彼女、実は他の猟兵たちとはこの場に立っている事情が違う。どういうことかというと……。
――グリモアベースにて。
「ころなちゃんの鉄壁スカートの中を激写ー! ……って、私この依頼受けに来たわけじゃ、ちょっと、ほら、からかっちゃおうかなーって……あのー、聞いてるー? ――ひぃぃ!? 強制転送は、やーめーてぇぇええええええええ……!?」
……悲鳴に、物凄くエコーが効いていた。
――100%自業自得である。
そんなこんなで事件の現場に来てしまったベルは、涙を流しながらも一念発起するしかなかったのだった。
「しくしく、来てしまった以上はどうにかしましょう。……何もしなかったらそれこそ後が怖いですし」
何だこうだ言って、猟兵としてそこそこの戦闘経験があるベル。本気で戦ってくれるのなら充分な戦力である。
「――でも、戦 い た く な い で す 。……ええと、無差別に攻撃されるとか無数に増えられるのもあれですし」
……駄目な方向へ、ベルは思考を加速させた。その結果、彼女の脳細胞が弾き出した方針はこうである。
「……ここは一番平和的なPOW――これですね!」
ベルの眼鏡がキラーン☆ と光り輝く。
「『森羅万象、全ての根源を見通す我が瞳に測れぬ物は無し。目覚めよ我が身に宿りし魔力の輝きよ』」
ベルのユーベルコードが高まり、その視線が『正気を奪う赤い果実』を射抜いた。ベルの眼光に籠められた莫大な魔力に恐れをなしたように、トマト型の邪神は身を硬質化させて防御態勢を取る。強烈なプレッシャーがベルと邪神の間で渦巻くのを、剱は目撃した。
その状態のまま、両者が相対すること暫し……。
……1分経過。
…………2分経過。
………………5分経過。
……………………10分経過……。
「……おい、一体、何やってるんだ……?」
一向に微動だにしないベルと『正気を奪う赤い果実』に、流石に剱がツッコんだ。
防御形態に突入したトマト型邪神が動かないのは仕方がないとしても、ベルの側がアクションを起こさないのは如何なる理由か? そもそも、彼女が発動させたユーベルコードはどのようなものなのか……? その答えを端的に言ってしまおう。
――ベルの使っているユーベルコード・『封印指定・魔眼覚醒』は、『対象のスリーサイズを見通す能力』である。
……もう一度言おう。『対象のスリーサイズを見通す能力』だ。
(向こうも無敵状態で動かないなら、このまま時間切れを狙って……)
……生憎、猟兵とオブリビオンの戦いは時間無制限一本勝負。時間切れというルールはございません。
埒が明かないと悟った剱は、ベルとトマト型邪神の戦い(?)に乱入することを決めた。
「『天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!』」
朗々と天に叫んだ剱の身に、空気中の水分が凝縮して成された無数の刃が纏われる。それは、龍の牙と爪の如く。まさしく青き龍の化身と化した剱の姿が、次の瞬間には掻き消えた。
「……水弾で洗い流して、せめて触れるようにしてやるよ」
――刹那の間に『正気を奪う赤い果実』の背後に回っていた剱が、高圧力が加えられた水をレーザーのように放出する。それは、硬化中のトマト型邪神の表面を撫で斬り気味に駆け抜けた。……硬化状態とはいえ、事前に他の猟兵たちが散々に痛め付けて傷だらけの有様だった邪神である。如何に硬化していても、そこには傷口という無数の隙間があった。その隙間を高圧水流で撃ち抜かれて、邪神たるトマトは悲鳴染みた震えを走らせる。
その震えが止まらず、むしろ加速して、トマトは全周囲に向けて反撃の衝撃波を迸らせた。
「喰らうかよ……逃げ切ってやるわ!」
剱はその衝撃波は元より、一緒に飛んできた汚れの溶けた水滴をも稲妻の如き機動力で回避する。どうしても避け切れないものも、高めたオーラで全身をくまなく覆うことで弾き飛ばしてみせた。……トマト型邪神を挟んだ向こう側では、ベルが「うきゃー!?」と悲鳴を上げてどうにかこうにか逃げ回っている。
「くそ、それにしても悪臭が酷いな……。近くに何か平たい物でもあれば、それを念動力で動かして、扇いで、臭いを吹き飛ばしてやるんだが――」
剱にとって不幸だったのは、別の猟兵の自爆による大破壊攻撃によって、公園内からはそのような都合の良さそうなものも根こそぎ失われていたことである。無い物ねだりをしても仕方がないと、剱は気合いを入れ直すようにますます己の速度を上げた。
そんな風に剱と『正気を奪う赤い果実』の交錯が頻度を増していく中、ベルはまだひたすらにスリーサイズ看破の魔眼でトマト型邪神を凝視し続けている。
「うう……ガン見してるだけで正気度が失われてる気がします」
……いや、それは一概に気のせいとは言えない。何せ、相手は名前に『正気を奪う』を冠したトマトであるが故に。
「……あ、何だか唐突にトマトの良さが解ってきた気がします。弧を描くあのライン、素敵ですよね。綺麗な曲線じゃなく、少しだけデコボコしてるところがまたセクシーというか……。――は! 私、もしかしたら物凄い事実に気付いたかもしれません」
ベルが、両の拳を握って仁王立ちした。
「あんな魅惑的なボディラインの持ち主が男性であるはずがありませんよ。あのトマト――女の子なのでは!?」
「その発想は無かったな!?」
反射的にベルにツッコミを返して、剱は疾走する勢いのままに跳躍した。高く、上空から見下ろしたトマト型邪神に向け、感慨深げに呟く。
「まぁ、色々と被っても後で綺麗にすれば問題は無いだろうがなぁ……」
それでも、避けられる汚れや臭いは避けたいというのが人情であった。
「彼方此方、水弾で洗い流せたら、戦いも楽に……ならねぇよなぁ……」
そもそも、どのようなオブリビオンが相手であれ、猟兵に楽な戦いなどありはしないのだ。……今回のような方向性で苦しい戦いもそうはないだろうが……。
そして、チラリと目の端に映る気絶したタカヒロ少年の姿に、最初と同じように剱は深々と嘆息した。次いで、切られて撃たれて焼かれて縮んだ満身創痍のトマト型邪神へ視線を戻す。
「どっちも気の毒っていうか、何ていうかなぁ――まぁ、これで終わりだ」
天空から降臨する青龍の如き剱の一撃が、ついに『正気を奪う赤い果実』を真っ二つに割る。果汁の一滴すら浴びずに走り抜けた剱の背後で、色々な意味で猟兵たちを苦しめた邪神はその身体を細胞の一片に至るまで崩壊させていくのだった。
……それが、彼の邪神と猟兵たちの死闘の終焉である……。
「――はい! 邪神も無事に倒せましたねー。これで依頼終了、お疲れ様でしたー。……さ、帰ろー」
朗らかに言ったベルが、回れ右して公園の出口へと向かう。
……待って下さい、ベルちゃん。物語はまだ、第一章が終わったに過ぎないのですから……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『発酵少女』
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POW : 呪縛の藁人形納豆
【藁人形】から【粘性の高い納豆のような物体】を放ち、【猛烈な悪臭と粘り】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 強酸性乳酸液
【口から吐き出した白色の溶解液】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を侵食し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 名伏し難き缶詰の開放
【頭の缶詰を開放することで冒涜的な臭気】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:しらゆき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
苦闘の末に邪神・『正気を奪う赤い果実』(途轍もなく臭い)を下した猟兵たち。
……だが、次なる脅威はもう既に来訪していたのであった。
「――まさか、邪神様がやられてしまうなんて……!?(チラッ)」
「大変な、大変なことですわ(チラッ)」
「何という不敬……あなた方にはきっと裁きが下るわ!(チラッ)」
そう、口々に猟兵たちを責める少女たちが、いつの間にか公園を囲んでいたのである。……猟兵たちには流石に推測が出来た。彼女たちこそ、『正気を奪う赤い果実』を迎える為にこの場へと向かってきていた邪神、その眷属なのだと。
幸いにも、まだ邪神自体は到着していないようだが……彼のトマト型邪神を討ち取った際の、僅かな気の緩みを猟兵たちは突かれてしまっていた。――タカヒロが、邪神の眷属の少女たちの傍に取り残されていたのである。
しかし……どうしたことか? 邪神の眷属の少女たちは、頬を赤らめつつ下半身丸出しのタカヒロをチラチラと見て、何やら囁き合っている。
「ズボンが何処にも見当たらないわ……!」
「きっと、無惨に引き裂かれてしまったのですわ」
「そして、剥き出しにしたあのお尻に、『お前を助けてやる報酬の先払いを貰うぜ……』とばかりに、太く逞しいモノを……」
「これが噂に聞く猟兵……恐るべし……! はかどる、はかどってしまいます……!!」
……何か、物凄い誤解を受けている気がした。――が、それを解いている暇は猟兵たちには無かったのである。少女たちの数名が協力し合い、タカヒロを抱え上げたのだ。
「復活した邪神様をお迎えすることは叶いませんでしたが、ならばせめて、その邪神様の復活の一助になったというこのお方をお連れ致しましょう。このような素敵なお尻の殿方……我らが主様もきっとお喜びになるはずです!」
そう言って、タカヒロを抱え上げた少女たちは「えっほ、えっほ」と彼を運んで走り始めたのである。向かうのは、駅前の方角。
……奇しくも、M字開脚の格好で神輿のように少女たちに担がれたタカヒロ……。その股間のブツが、少女たちが駆けるのに合わせて上下左右にぶらんぶらんと揺れる。
時刻はそろそろ夕方になってきていた。この時間帯になれば、駅前には下校中の学生や退勤したサラリーマンたちが大勢溢れているだろう。……もしも、その中にあのような有様のタカヒロが突入したら――彼は死んでしまう(社会的な意味で)。
それを防ぐ為に追走しようとした猟兵たちだが――その前に、タカヒロを運ぶのとは別の邪神の眷属の少女たちが立ち塞がり、壁を成した。
罪無き高校生男子の尊厳が奪われる前に……死力を振り絞れ、猟兵たち!
フレミア・レイブラッド
…あの子の尊い(?)犠牲は無駄にしないわ…。
寧ろ、あの色々な意味で腐ってる子はなんなのかしら…。
雪花「流石に可哀想なのー…」
雪花と一章で呼び出した眷属の子達に連れられて辛うじて現場を遠巻きに見えるトコまで戻って来たわ…。
溜め息と共に【ブラッディ・フォール】で「蘇る黒き焔の魔竜」の「黒焔魔竜・ヴェログルス」の力を使用(ヴェログルスの角や翼、尻尾等が付いた人派ドラゴニアンの様な姿に変化)。
一章と同様に念動力の膜を張りつつ、【生ヲ貪リ喰ラウ黒キ焔蛇】を大量に放ち、眷属達と一緒に遠距離攻撃するわ。焔蛇は生物じゃないから臭いなんて関係ないしね。
後は【禍ツ黒焔ノ息吹】で臭いの元を焼き尽くしてあげる!
雪女見習いの少女・雪花を始めとした己の眷属たち……彼女らに説得されて、ようやく『正気を奪う赤い果実』が鎮座していた公園が遠巻きに見える所まで、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は戻ってきていた。
件の悪臭に汚染された邪神が滅ぼされたらしいことにほっと息を吐きつつ……フレミアは新たな混迷を発生させている現場に辟易した顔になる。本来はトマト型邪神を迎えに来たらしき少女の姿をした邪神の眷属の一団が、代わりにタカヒロを神輿のように担いで攫っていくのを目撃したのだ。次なる局面に移行した事件の様相に、彼女は決意を固める。
「……あの子の尊い(?)犠牲は無駄にしないわ……。――さ、皆、今度こそ帰りましょう」
「流石にそれは可哀想なのー……」
踵を返し掛けたフレミアを、すっかりツッコミ役が板に付いてきた雪花が喰い止める。雪花だけでなく、他の眷属たちからも若干非難が籠もった眼差しを向けられれば、彼女たちの主として規範となるべきフレミアも頑張るしかない。
「それにしても……あの色々な意味で腐ってる子たちは何なのかしら……?」
気を取り直し、タカヒロを連れ去っていく邪神の眷属たちを観察して、フレミアは眉根を寄せた。一様に少女の姿形をしているというのは、前述した通りだが……臭い。タカヒロの尻から復活した『正気を奪う赤い果実』よりはマシだが、充分に呼吸の妨げになる悪臭である。フレミアも思わず鼻と口に手を当てた。
……その上、BでLな方面的に腐っている気配も垣間見える……。また精神的な意味合いで疲れそうな相手だと感じて、フレミアは溜息を吐いた。
「ええ、もう、それでも頑張るわよ……。――『骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!』」
フレミアの魔力が高まり……このUDCアースの外、骸の海の何処かで竜の咆哮が上がった気がした……。――否、それは一概に気のせいではなかったのだろう。フレミアの艶やかな金髪の間からねじれた黒い角が伸び、背中からは鋭利な皮膜の翼が広がる。ドレスのスカートの内からは装甲の如き鱗を纏う尻尾が生えて……そのいずれも、黒き炎を纏わり付かせていたのだから。
かつて、フレミアがアルダワ魔法学園の地下迷宮にて戦った『黒焔魔竜・ヴェログルス』というドラゴン型のオブリビオン……今、彼女の身に生じた各部位は、その竜の特徴を色濃く表していた。
フレミアが過去に葬ったオブリビオンの能力を彼女自身が再現するユーベルコード・『ブラッディ・フォール』。それによって黒き焔のドラゴンの力をその身に宿したフレミアは、皮膜の翼を羽ばたかせて新たな邪神の眷属の少女たちへ向け、飛翔した。
「……っ!? 新手の猟兵よ!」
「皆様、迎撃準備ですわー!」
迫るフレミアと、彼女に続いて突き進んでくる雪花を中心としたフレミアの眷属たち。その姿を認めた邪神の眷属の少女たちが、対抗とばかりに頭に乗せていた缶詰の蓋をパカッと開いた。
……途端に溢れ出す、ニシンを年単位で発酵させた如きフレーバー……。空輸が出来ないともっぱらの噂のスウェーデンの名物缶詰が、ふとフレミアの脳裏を過ぎる。
「――お生憎様、対策済みよ」
……が、此度の敵も何やら臭いそうだと、フレミアは事前に対策済みであった。自分にも、自分の眷属たちにも、念動力を膜のように纏わせて周囲からの臭いを遮断している。敵オブリビオンの放った冒涜的ですらある臭気は、フレミアにも彼女の眷属たちにも届かない。
「それから……あなたたちにもやっぱり近付きたくないのよ。遠距離攻撃で失礼するわね」
邪神の眷属たちから一定の距離を保ったフレミアは、身に纏う黒炎から200を軽く超える数の火球を撃ち放った。その火球のことごとくが空中でスルスルと伸び、蛇のような形へ変貌する。黒き焔の蛇の大群が、雨の如く邪神の眷属の少女たちへと降り注いだ。
「んきゃー!?」
「熱い! 熱いですわ!!」
「そんな……夏コミの原稿、まだ一枚も描けてないのに……」
邪神の眷属たちが立ち昇らせる悪臭も全く意に介すること無く、黒焔の蛇は彼女たちに巻き付き、牙を突き立て、その身を焼き焦がしていく。それで崩れた敵の陣形をさらに崩さんと、フレミアに従う元邪神のエージェントの少女がUDCの幼生をけし掛けた。そこに、ぽんこつ女王様もかつての手下たちの霊に命じて銃撃を乱舞させる。どうにか逃れようと地を這った邪神の眷属の鼻先へとハート・ロバーがキューピッドの矢を突き刺し、邪悪エルフが有害物質をこれでもかと浴びせた。主の放った黒き焔蛇の熱量をますます上げるように、エビルウィッチが火の玉を飛ばしまくる。
「熱いのが嫌な人には冷たいのをプレゼントなのー」
何とか、そんなユーベルコードの絨毯爆撃から逃れた邪神の眷属の少女も、今度は雪花の吹雪によって凍り付かされ、地面へと倒れ伏した。
「後は、臭いの元まで焼き尽くしてあげるわ――」
そして、フレミアがとどめとばかりに黒き焔の息吹で地上を席巻すれば、その場にはもう邪神の眷属の少女たちは一人として立ってはいなかった。
……けれど、フレミアも察する。
「結構な数が逃げたわね……」
フレミアたちが攻撃を始めた瞬間、敵オブリビオンの集団は二つに分かれた。タカヒロを抱えた者たちを中心に、この場からの移動に注力する者たちと、フレミアたちに積極的に立ち向かってくる者たちに。……後者は、明らかにフレミアたちの追撃を阻む為の足止め部隊であった。それを全滅させたものの、前者の集団にフレミアたちはかなりの距離を空けられてしまったようである。急いで追い掛ければ充分に追い付けるだろうが……。
「……他の猟兵たちがそっちを追い掛けていくのも見えたし、わたしはどうしようかしらね……?」
己の眷属たちからの視線を一身に受けつつ、フレミアは悩ましげに天を仰ぐのであった。
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
畜生…もうこのコート、着れねぇ…。お気に入りだったんだが…。(コートを脱いで適当な所に掛ける。後でUDCに新品を申請しとくか)
って、あぁぁぁーーー!あいつら、担ぎ上げてタカヒロ、連れて行きやがった!あの状態で駅前に神輿担ぎで突入ってあの連中に常識ってモンはねぇのか!ったく!!(慌てて追いかける)
【POW】
追いかけながら銃弾を放つぜ。駅前に入っちまったら流石に気安く銃弾をぶっ放す事は出来ねぇから、ジ・エンドだ。……タカヒロ的にもな。
短時間の勝負になる。【二回攻撃】【属性攻撃】【一斉発射】【範囲攻撃】を組み合わせて担いでる奴を優先的にUCで。
攻撃は【残像】【見切り】【第六感】で回避だ。逃がすかよ!
備傘・剱
一つ言っておく、発酵と腐敗は似て非なるものだからな!
そして、俺は極めてノーマルだ!
それをふまえた上で、一言言わせてもらう
それ以上、そいつをもてあそばないでやってくれ!
こいつら蹴散らして、タカヒロが(社会的に)抹殺される前に、救い出す
雷獣駆、発動
上空から先回りし、街中に行かない様、妨害しておこう
そして、タカヒロを傷つけない様に、誘導弾と呪殺弾で狙撃して一人づつ、戦力を削いでやるぜ
こいつら、沢山いるのなら、敵を盾にして、攻撃を防いでやろう
同族から放たれるんだから、こいつら自身には耐性あるだろ
悪臭邪神を迎えに来た腐り女子ってさ、中々のコンボだよなぁ
こいつらの上って何者よ?
アドリブ、絡み好きにしてくれ
邪神・『正気を奪う赤い果実』(大変強烈な悪臭を放つ変異個体)との激闘は、猟兵の側にもいくらかの犠牲を強いていた……。
「畜生……もうこのコート、着れねぇ……。お気に入りだったんだが……」
苦渋の表情でカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は紺色のコートを脱ぎ、辛うじて残っていた公園のフェンスにそれを掛けた。……彼のトマト型邪神の汚濁が染み付いたそのコートは、カイムの心情的には天へと召されてしまったのである……。
「あとでUDCに新品を申請しとくか――って、あぁぁぁっっ!?」
そんな風に考え込んでいたカイムは、いつの間にか新手の邪神の眷属……頭に謎の缶詰を乗せ、その手にけったいな藁人形を持った少女たちの集団がこちらへと迫っていたことに気付いた。しかも――彼女たちはお迎え出来なかった邪神の代わりとばかりにタカヒロを「えっほ、えっほ」と連れ去っていったのである。向かう先には、帰宅途中の学生やサラリーマンたちが闊歩しているはずの駅前があった。
「あいつら、担ぎ上げたタカヒロ、連れて行きやがった! あんな……下半身丸出しの状態で駅前に神輿担ぎで突入って……あの連中に常識ってモンはねぇのか!?」
……常識があるなら、邪神の眷属などやっているはずがない。「ったく!!」と吐き捨てたカイムは、邪神の眷属の少女たちを、彼女たちに攫われたタカヒロを慌てて追い掛ける。
――そんなカイムがふと横を見れば、同じように疾駆する男性猟兵の姿が。
「一つ言っておく、発酵と腐敗は似て非なるものだからな!」
そんな言葉を邪神の眷属の少女たちへ叩き付けるのは、備傘・剱(絶路・f01759)。どうやら彼は、彼の邪神の眷属たちが『発酵少女』と呼ばれる種類であることを知っている様子だった。……まあ、見たまんまの連中である。
「そして――俺は極めてノーマルだ!」
……その発酵少女たちが重ねていた深刻な誤解に対して、必死の否定を叫ぶ剱。そのことも踏まえた上で、彼にはあと一言、どうしても言っておかなければならないことがあった。
「それ以上、そいつも弄ばないでやってくれ!」
タカヒロに対して、同情しきりな剱である。
そんな彼をチラチラと振り返りながら見ていた発酵少女たちは、「……愛ね」「愛ですわ」と囁き合い、唇の端を吊り上げる。……色々と想像の翼を羽ばたかせている模様だった。
「こいつらは……いい加減にしやがれ!!」
目を本気にした剱の身体に、一瞬火花が走った。
「『駆けよ雷獣! 森羅万象、万里一空、全ては汝が望むままに! 理外が己の理であるがの如く!』」
剱の額から一本の角が伸び、その全身を黒色の稲妻が駆け抜けた。次の瞬間、彼の姿が消失する。
「――こいつら蹴散らして、タカヒロが(社会的に)抹殺される前に、救い出す」
雄々しく宣言した剱は、その一瞬で発酵少女たちの向かう先へと回り込んでいた。『雷獣駆』――そんな名を持つ剱のそのユーベルコードは、彼に音の速さを遥かに凌ぐ途轍もない飛翔速度を与えるのである。
行く手を阻まれてたたらを踏んだ発酵少女たちへ、剱は自身の腕に嵌めたガントレットから光弾を飛ばす。剱の精神力を凝縮したその礫は呪詛を纏い、彼の思考に誘導され、発酵少女たちを次々に撃ち抜いた。
剱が発酵少女たちの進行を止めたことで、カイムも彼女たちへと追い付く。既に『双魔銃 オルトロス』を左右の手に握っていた彼は、躊躇無くそれの引鉄を引いた。
「駅前に入っちまったら流石に気安く銃弾をぶっ放すことは出来ねぇから、ジ・エンドだ。……タカヒロ的にもな」
そんな破滅的な未来の到来を防ぐべく、カイムはオルトロスより紫色の雷を纏った銀の弾丸を雨あられに放出する。射線上に立つどうしても邪魔な個体をまずは排除しつつ、狙うはタカヒロを担ぐ個体たち。猶予は無いと判断したカイムは、短時間でのタカヒロの救出を試みたのだ。
……しかし、発酵少女たちも、尻から邪神を復活させる貴重な人材たるタカヒロをそう簡単に手放すつもりは無いらしい。タカヒロを担ぐ者が倒れても、倒れても、すぐさま別の個体が代わりに加わって、タカヒロをカイムから遠ざけていく。
そればかりか、発酵少女たちは手にする藁人形を引き裂くと、それの中身をお返しというようにカイムへ投げてきたのである。……とはいえ、単純な軌道を描く投擲をカイムはあっさりと見切り、その場に残像を残して華麗に回避してみせた。
「……うっ!?」
……が、地面にべちゃぁっと落下した藁人形の中身は、猛烈な臭気でカイムの鼻を突き刺したのである。パッと見は納豆に酷似したその物体に、カイムの顔は引き攣った。
「……あの臭ぇトマトがようやく倒せたってのに、今度の相手も臭ぇとか……今日はなんて日だ!!」
吐き捨てて、カイムは追撃の『紫雷の銃弾』をオルトロスの銃口より連射する。
カイムと剱に挟撃された形になっている発酵少女たちは、どうにかそれを打破する為か、剱の方に向けて押し寄せてきた。剱の方が容易な相手と思ったということではなく、そもそもそちらの方向に彼女たちが向かうべき理由があるのだろう。
「……こいつらの仕える邪神が、あっちの方角に居るんじゃねぇのか?」
第六感的に、カイムはそんな風に独りごちる。
さて、発酵少女たちに押し寄せられた剱はというと、こちらも藁人形の中身である納豆的な何かの集中砲火を浴びていた。もっとも、剱は何の対策も無く発酵少女の大群の前に身を晒したわけではない。彼は、敵オブリビオンの攻撃が自分へと集中し始めると、果敢に敵中へと駆け込んだのだ。
「こいつら、こんなにもたくさん居るんだ。盾にして、攻撃を防いでやろう」
次から次へと自分に降り注ぐ納豆弾を、カイムは手近な発酵少女の陰に滑り込むことでやり過ごした。代わりにフレンドリーファイアを浴びたその発酵少女が悲鳴を上げる。……同族からの攻撃ということもあり、発酵少女は納豆弾を喰らってもそこまでダメージを負ったりはしないようだが――そういう隙を見せた個体を、名高きUDCの便利屋『Black Jack』……カイムは見逃さない。双魔銃を轟かせ、引導を渡していく。
黒き迅雷と化した剱が発酵少女の軍団の中を走り回って翻弄し、その隙をカイムが放つ紫の雷霆が射抜く。黒と紫の稲妻の共演が邪神の眷属共を1体、また1体と葬っていく様は、芸術的と言っても過言ではなかった。
「くぅっ……黒髪黒瞳黒い肌の眼光鋭い美形と、銀髪紫瞳色黒の肌の自信に溢れた美形が、こうも息の合ったコンビネーションを……!」
「今年の夏コミを迎えられずに死ぬなんて悔しい……! でも、こんな想像がはかどる男二人の共同作業によって死ぬなら、それも本望ですわぁ……!!」
「……骸の海の底で、あなたたち二人を推しておくわね……」
「「真面目にいい加減にしろ!!」」
自分たちで変な妄想をされていることに鳥肌を立てつつ、カイムと剱は発酵少女たちを薙ぎ払っていった。
……タカヒロを救出する機会は、今はまだ見出せない。けれど、発酵少女たちの移動は喰い止められており、その数も削られていっている。他の猟兵たちも追い付けば、一気に優勢に転じることが出来るはずだった。
……なのだが、それであっても剱の顔には不安の影が差す。彼は、思わず戦いの最中、カイムへ話し掛けた。
「……悪臭邪神を迎えに来た腐り女子ってさ、なかなかのコンボだよなぁ……」
「……同感だぜ」
カイムも辟易とした顔で同意する。物理的に臭い相手の次は、物理的にも抽象的にも臭い相手……。傍で見ている分には洒落が効いているのかもしれないが、当事者として巻き込まれている分には洒落になっていなかった。
だからこそ――剱は嫌な予感がして仕方なかったのである。
「……こいつらの上って何者よ?」
「………………」
剱のその疑問に対し、カイムが答えを持っているはずが無い。……だが、カイムの側も胸中に急速に膨れ上がっていく不安を押し殺し切れないのであった……。
――まあ、期待してくれていいよ☆
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
稲宮・桐葉
ぬぬ!前途ある若者の未来を破滅させるわけには行かぬ!
出し惜しみはせぬ!【真の姿】解放じゃ!
ムラサマ、絡繰大狐ちゃんよ!かの者を救うのじゃ!行く…ぞ!
(大狐ちゃんとムラサマには公園の水道で洗う様指示しておいたから臭いとかは大丈夫なはずじゃ…)
【ダッシュ、ジャンプ】を駆使して神輿の前に回り込み足止めを試みるのじゃ!
待てい!その者を連れては行かせぬぞ!
訳の分からぬ事をぬかしおって…(チラッ)うきゃー!?
こっちに向けるでない!
足もとを狙った大狐ちゃんの尻尾【なぎ払い】で妨害
もしタカヒロが投げ出されたら【救助活動】機能でモフモフした物を射出じゃ
後は余裕があればUCで攻撃じゃ
◆アドリブ、連携大歓迎じゃ!
邪神の眷属・発酵少女の集団に、『正気を奪う赤い果実』の代わりとばかりに連れ去られたタカヒロ……向かう先には人通りの多い駅前があり、彼の社会的生命は瀬戸際であった。
「ぬぬ! 前途ある若者の未来を破滅させるわけにはいかぬ!」
その後を追って走り出した稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は、一歩進むごとにユーベルコードを高まらせていった。
「出し惜しみはせぬ! 真の姿――解放じゃ!」
桐葉の周りに飛び出した蒼い狐火が輝きを増して舞い踊る。ポニーテールから解けた桐葉の髪がより深い金色へと変じ、狐火と共に翻った。彼女が纏う魔改造巫女装束・『妖華の巫女装束』もさらに露出度が高く妖艶な形態へと変貌し、そこから覗く腹部や胸元、また額には、鮮やかに赤い紋様が浮かび上がっていく……。
普段よりも大人びた雰囲気を醸し出した真の姿の桐葉は、凛とした声を響かせた。
「ムラサマ、機巧大狐ちゃんよ! 彼の者を救うのじゃ! 行く……ぞ!?」
……否、響かせようとして最後が若干尻すぼみになった。
桐葉の紫の瞳がやや疑いの色を宿し、自分に追従する大型自動二輪サイズの狐型ロボットとそれに運ばれる妖刀を見詰める。……両者は、先の非常に臭いトマト型邪神との戦いで、その悪臭をまともになすり付けられてしまっていたのだが……。
(大狐ちゃんとムラサマには公園の水道で洗うよう指示しておいたから、臭いとかは大丈夫なはずじゃ……)
……桐葉は知らなかった。あの公園の水道は、『正気を奪う赤い果実』が復活して公衆トイレを吹き飛ばした折、その影響を受けて使用出来なくなっていたことを。それに加え、後にある猟兵が盛大な自爆をぶちかまし、公園のありとあらゆる設備を消し飛ばしてしまっていた。
――要するに、ムラサマブレードも機巧大狐ちゃんも、その身を一切洗えてはいなかったのである。……とりあえず、拾った新聞紙で拭いて見た目は何ともないようになっているが、染み付いた臭いはそのままだった。
けれど、桐葉もずっとトマト邪神の悪臭を嗅ぎ続けていた為、嗅覚が麻痺していてその事実には気付けない。ムラサマブレードも機巧大狐ちゃんも、自分から暴露するようなことはしなかった。
……後で一体どうなるやら……?
――ともかく、ムラサマブレードを手にし、機巧大狐ちゃんを従えた桐葉は、真の姿になって増大した身体能力に任せて発酵少女たちへと見る見る内に追い付いた。彼女よりも先行した他の猟兵たちが既に戦闘に突入しており、そのせいで発酵少女たちは足止めを喰らっている。
(これは幸いじゃ。この機に乗じてタカヒロ殿を助けるぞ)
跳躍で上空に舞い上がった桐葉は、発酵少女たちの一角に担ぎ上げられたタカヒロの姿を認める。着地するが早いが、そちらへ向けて疾駆した。
「待てい! その者を連れては行かせぬぞ!」
三次元的な機動で自分たちの前へと回り込んだ桐葉、及び機巧大狐ちゃんに、タカヒロを神輿とした発酵少女たちは急停止する。
「くっ……また新たな猟兵が追い付いてきたわ」
「……えー、女の子ー? 男性だったら、『そいつと俺の仲を引き裂こうなんざ千年早いぜ……』って一念で追い付いてきたって空想がはかどったのに……どうしてくれるのよ!?」
「……このオブリビオン共、わけの解らぬことをぬかしおって……」
戸惑いつつも桐葉は、安否を確認する為に発酵少女たちに担がれたタカヒロへチラッと視線を走らせる……。
ぶらーん、ぶらーんっ。
「……うきゃー!?」
……M字開脚されたタカヒロの脚の付け根で斜陽に照らされた彼のブツを、桐葉は直視してしまった。悲鳴を上げた桐葉の反応に、発酵少女たちは「ふむ?」と思案顔になって……頷き合う。
「そーれー、ワッショイ、ワッショイ!」
「「「「ワッショイ、ワッショイ!」」」」
まさしく神輿のようにタカヒロを揺らす発酵少女たち。その動きに連動し、タカヒロのムスコさんがぶらっ、ぶらんっ、ぶらぶらっ、ぶらーんっと踊った。
「ちょっ……こらー!? こっちに向けるでない!」
そのままじりじりと迫ってくる発酵少女たち&タカヒロに、桐葉は顔を両手で覆った。……ただ、指の隙間は大きく開いていて、そこから紫色の双眸が輝いているのが見える。
「な、何であれ、これ以上調子には乗らせぬのじゃ! 機巧大狐ちゃん、やってしまえぃ!」
「「「「「――あ。きゃー!?」」」」」
主の命を受け、狐型ロボットは果敢に発酵少女たちの足元へ滑り込んだ。低い体勢から尻尾を一閃させる。それに綺麗に足を払われた発酵少女たちの上から、タカヒロがぽーんっと投げ出された。
「大狐ちゃん、タカヒロ殿の救助を!」
桐葉の指示に、機巧大狐ちゃんは桐葉の尻尾の如く大変モフモフした物体を射出した。それがタカヒロの落下地点に先回りし、彼をモフーンと受け止める。……尻を高く突き出した、いわゆる女豹のポーズ的な姿勢になったが、タカヒロには怪我は無いようだった。
「くぅっ、このままあちらに奪われてなるものですか! 皆様、もう一度確保しますわよ!!」
「させぬ! タカヒロ殿にはもう指一本触れさせはせぬぞ!」
再びタカヒロの回収を目論む発酵少女たちの前に、ムラサマブレードを構えた桐葉が立ち塞がった。ムラサマブレードの鍔を鳴らし、彼女は獅子吼する。
「『さあ、ムラサマブレードよ、お仕置き時間の開幕じゃ! わらわの命を削った分、キリキリ働くがよいわっ! 金剛石でも切って見せよ!』」
桐葉からトマトのように赤いオーラが迸り、その身が疾風と化した。発酵少女たちが一人、また一人とムラサマブレードの錆に変わる。
発酵少女たちは口から白色の液体を噴出して対抗するが、ムラサマブレードから絶叫するような音波が放射され、それが見えざる壁となって桐葉を守った。……地面へと飛び散った白色の液は、そこのアスファルトを侵食して煙を上げる……。
「溶解液か……。喰らってはことじゃな」
発酵少女たちから断続的に飛ぶ白い溶解液を、桐葉はムラサマブレードの絶叫音波で払い除けていく。酷使される妖刀から抗議の声が上がるが、桐葉は黙殺した。
「わらわだって寿命を削っておるんじゃ! それくらい我慢せい……!」
猟兵たちと邪神の眷属たちのタカヒロ争奪戦……それはより激しさを増していくのだった……。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
路地裏で【マックスウェルの悪魔】で作った氷と炎で簡易シャワーを浴びて一息つきます。
「この服はもうダメですね……
お気に入りだったのですが」
この臭いで電脳空間を汚染するわけにはいきません。
「というわけでオベイロンもパーツの分解洗浄が終わるまではここで待機です」
まさか私の最大戦力がこんな形で使えなくなるなんてっ!
「とにかく、タカヒロさんを追いかけないとっ!」
【電脳の天使】で魔法少女姿に変身してタカヒロさんを追いかけます。
この恥ずかしい魔法少女の格好で大勢の前に出るわけにはいきませんっ!
なんとしても駅前に着く前に確保しますっ!
【マックスウェルの悪魔】で攻撃しますが……
「な、なんですか、この液体っ!?」
……その頃、付近の路地裏にて……。
「――この服はもうダメですね……。お気に入りだったのですが」
半袖のブラウスにプリーツミニスカート、ベスト……さらにはニーソックスや青と白のストライプの下着まで――身に着けていた衣類を一つ残らず脱ぎ捨てたアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)が、一糸纏わぬ裸身を晒していた。
……頬を赤らめつつもアイの表情が憮然としていたのは、今もその肢体の各所に染み付いた赤い汚濁のせいだろう。悪臭に塗れた『正気を奪う赤い果実』より、その臭いをこれでもかというほどなすり付けられてしまったのである。
「……はあ……誰かに見られる前に手早く済ませましょう――『エントロピー・コントロール・プログラム、起動します』」
アイがホロキーボードを展開して指を踊らせると、まずは彼女の真上に氷の塊が生じた。次の瞬間、その氷は一瞬で溶け、それどころか湯気を上げて、アイへと降り注ぐ。
――『マックスウェルの悪魔』。熱エネルギーを制御するアイのユーベルコードである。それによって生み出したお湯を何度か浴びて……白いロングヘアを身体の線に貼り付かせたアイの裸体からは、汚れも臭いも綺麗さっぱり洗い流されていた。
「……ようやく一息吐きました。あの臭いで電脳空間を汚染するわけにはいきませんでしたし」
同じく『マックスウェルの悪魔』を利用して髪を乾かしたアイは、この路地裏への入口に鎮座し、誰も入ってこられないようにしている『機動戦車オベイロン』を見上げて哀しげな瞳をした。……オベイロンもまた先程までのアイと同様に、トマト型邪神の悪臭に汚されてしまっていたのである。
「というわけで、オベイロンもパーツの分解洗浄が終わるまではここで待機です。……まさか私の最大戦力がこんな形で使えなくなるなんてっ!」
予想外の戦力の低下に、アイの顔には苦渋の表情が浮かんでいた。……正直、一度撤退したいというのがアイの本音であったが、そうもいかない理由がある。――一般人のタカヒロが邪神の眷属たちに攫われてしまったのだから。彼女も猟兵として、ここで現場を放棄することは出来ない。
「とにかく、タカヒロさんを追い掛けないとっ!」
その為に――アイはホロキーボードに指を走らせた。
「『電脳プログラム『天使』起動。同調開始します』」
アイの周囲に無数のホロディスプレイが開き、その光が彼女の裸身を包み隠した。シルエットとなったアイの輪郭が広がって、その端がひらり、ひらりと翻る。――一際強い輝きが爆発した後、そこに立つアイには煌びやかかつ可憐な衣装が装着されていた。
「『電脳天使マジカル☆アイ』、覚醒ですっ」
微笑み、可愛くポーズを決めて――アイはその場に崩れ落ちた。
「こ、こうしないと服が無いとはいえ……こんな恥ずかしい魔法少女の格好で大勢の前に出るわけにはいきませんっ! 何としても人通りが多い駅前に着く前にタカヒロさんを確保しますっ!」
自分も社会的生命の危機を背負い……強い決意を持ってアイは路地裏から駆け出していくのであった……。
――CMを挟んで、『電脳天使マジカル☆アイ』再開である。
魔法少女になっても実は身体能力は上がらないアイ。彼女が息を切らせて辿り着いたタカヒロの周辺では、先行していた他の猟兵たちと邪神の眷属・発酵少女たちによるタカヒロ争奪戦が既に始まっていた。
「な、何でタカヒロさんはあんな、お尻を空に突き出すような格好で倒れているんですかっ!? 何にせよ、彼は渡しませんよっ!」
タカヒロを目指して集まってくる少女型オブリビオンたちへ向け、アイは『マックスウェルの悪魔』を起動した。灼熱の炎が渦となって発酵少女たちを襲う。
「わちゃちゃちゃっ!?」
「――ぐふっ!?」
手に持った藁人形が炎上したり、頭に乗せた缶詰が破裂したりしてダメージを負う発酵少女たち。突如戦場に舞い降りた魔法少女に、彼女たちは危機感を覚えたようである。
「あそこの夏コミに居そうな魔法少女、案外強いわ! 気を付けて!!」
「炎で藁人形と缶詰を狙われるとまずいですわ、燃えたり破裂したりして! くっ……触手に襲われるのが凄く似合いそうな魔法少女の分際で……!!」
「薄い本にすれば二千部……いえ、三千部はイケると思うの……!」
……発酵少女たちの発言に、ちょっとアイ、いたたまれない気持ちになってきた……。
――が、それに気を取られたのがいけなかったらしい。発酵少女たちが、今度は口から白い液体を吐き出してきたのである。隙を突かれたアイは、それをまともに浴びてしまう。
「な、何ですか、この液体っ!? ……って、え? あ……きゃああああっ!?」
その白い液体はじゅぅぅっ……という低い音を立て、アイの魔法少女衣装を溶かし始めたのだ。パニエで広がったスカートが裾から崩れていき、アイの細い脚線美が段々と露わになっていく。胸元の布もどんどんボロボロになっていき、アイの慎ましやかな乳房が今にも垣間見えそうになる。焦りと羞恥で彼女の顔は真っ赤になった。
「ちょ、待っ……待って下さいっ! この衣装までダメになったら、私本気で全裸で戦わなきゃいけなくなっちゃいますー!?」
アイの悲痛な叫びに、彼女の周囲の発酵少女たちが顔を見合わせ……その口が三日月のような笑みを刻んだ。
「魔法少女を脱がせられる機会なんて逃せませんわー♪」
「それそれ、それー♪」
「ぐへへ、愛い奴、愛い奴じゃのう♪」
「んきゃああああっ!?」
発酵少女たちは実に楽しそうに、アイに向けて白い液体を集中砲火し始めた。見る見る溶けて面積を失っていく電脳天使マジカル☆アイの衣装に、割と真面目に絶叫するアイ。……何せ、彼女は下着まで先のトマト型邪神に汚されていた為、それすら脱いで今の魔法少女姿へ変身していたのだ。
即ち――今のアイはノーパンノーブラなのである。これ以上溶かされたら、本当に大事な所が見えてしまう……。
(それに、折角『マックスウェルの悪魔』で簡易シャワーを浴びて綺麗にしたのに、またベタベタですっ! ……あれ? ――は!)
しかし、そこでアイは閃く。ホロキーボードを叩き、急いで『マックスウェルの悪魔』を起動。上空に巨大な氷塊を出現させ、それを一気に溶かした。
「「「「「うきゃああああああああああっ!?」」」」」
空から降り注いだ熱いお湯に、発酵少女たちが戸惑った声を上げた。――直後、アイを中心に今度は冷気が吹き荒れる。
「……溶解液は、洗い流させてもらいましたっ!」
衣装にこびり付いていた白い液を一滴残らずお湯で流し終えて、アイは柳眉を逆立てる。その憤りを体現するが如き『マックスウェルの悪魔』の冷気が、濡れ鼠状態の発酵少女たちをバキバキと凍らせていった。
……実はあの白い液体、発酵少女たちの能力を底上げする効果もある。それを押し流されてしまった彼女たちには、アイに抗う術など最早無く……。
「私だって、やる時はやるんですからっ!!」
周囲の発酵少女たちを氷像へと変えて、アイは高らかに言ってのけるのだった。
成功
🔵🔵🔴
アリス・セカンドカラー
腐の臭いを嗅ぎ付けて私推参☆
ワンダーラビリンスを展開して尻(タカヒロさん)を抱えた発酵少女の足止めという名目で腐語りをしにきたわ♪いや、出口はきちんと反対側に創ったから最低限のお仕事はきちんとしてるわよ?
なお、私の精神世界が反映された迷宮なので男の娘×男の娘な腐海が広がってますが私の頭は大丈夫です。
腐敗性の違いで結局は敵対かなぁ?開放された臭気は萌擬人化させて迷宮の一部にしましょう、失敗してもこの相手からなら『我々の業界ではご褒美です☆』。
私は百合もイケるので発酵少女をアブセナティダンスの二回攻撃で腐海に沈めての肉弾戦で悪戯よ♡
尻(タカヒロさん)の無事は確保、ナニも無いわよ?
私の頭は大丈夫です
猟兵たちと発酵少女たちのタカヒロ争奪戦が白熱する中、それすらも上回る熱量を内に秘めて、彼女はこの現場に降り立った……。
「……腐の臭いを嗅ぎ付けて、私推参☆」
――アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)である。数多居る猟兵の中でも群を抜く貴腐人(誤植にあらず)の彼女、その瞳は既に爛々と輝いていた。
「『(あまりにもアレな妄言のため削除されました)』」
リプレイに掲載出来ない詠唱と共に、周辺の風景が全く別のものへと変貌していく。『アリスの不可思議迷宮』と名付けられたそのユーベルコードは、アリスの恐るべき精神世界を現実へと降臨させるものだ。UDCアースの日本ならば何処にでも見られるようなアスファルトの道路が、今、とんでもない姿へと変わってしまう……。
「あ、あっ、あぁぁああああああっっ!?」
「僕……私……もう、もうぅ……!!」
「やぁぁ……お尻で、孕んじゃうぅ……♪」
セーラー服、ゴスロリドレス、振袖、メイド服……多種多様な女物衣装に身を包んだ美少年たちが、頬を朱に染め、荒い息で喘いで身体を絡め合う乱交の場……。先に戦っていた猟兵たちは一人残らず固まり、発酵少女たちからは耳をつんざく黄色い悲鳴が上がる。
「――私の頭は大丈夫です」
キリッとした顔で言ってのけるアリスのその言葉を信じられる者は、多分猟兵の側には存在しないのではなかろうか?
……一応言っておくと、アリスだってきちんと今回の猟兵側の援軍だ。彼女がユーベルコードで展開したこの空間は迷宮になっており、その上で出口は発酵少女たちが本来向かっていた方向とは真逆の方角に作られている。邪神の眷属たちを足止めするという意味では、かなり有効な仕事をアリスは行っていた。
……迷宮のデザイン以外は。
「――私の頭は大丈夫です」
キリッと顔を引き締めて、大事なことだからともう一度言うアリス。……誰が信じるというのか、その言葉を。
とにかく、スカートをまくり上げた一見美少女な美少年の下半身へ、同じくスカートをまくり上げた一見美少女な美少年が腰を打ち付けるというカオスの中で、発酵少女たちの意識はそれを生み出したアリスへと集まっていく。両者の間では、鬼気と表現するしかない強烈なプレッシャーがぶつかり合っていた。
「……やってくれたわね、あなた」
発酵少女の一人が、言葉と共に槍のような戦意をアリスへ叩き付ける。それを真っ向から受け止めたアリスは、何処か寂しげに微笑した。
「やっぱり……腐敗性の違いで結局は敵対するしかないのね?」
「いえ、男の娘×男の娘は、ありか無しかで言えばむしろあり」
ありなんかい。……天の声のツッコミは、しかし発酵少女たちには聞こえない。
「なら、何故わたしたちが敵対し合わなければならないの?」
猟兵とオブリビオンだからだよ! ……そんな天の声のツッコミは、アリスにもまた聞こえるはずがなかった。男の娘たちの嬌声をBGMに、双方の語りは熱量を増していく。
「男の娘という属性を推したいのは解るわ。でもね、ここが迷宮であるというシチュエーションをもっと前面へと押し出すべきではないかしら? 男性が男性の尻を掘るという行為には、未踏の領域へ足を踏み入れる……即ち、迷宮探索に通じるものがあるのだから。男と男がお互いの尻という迷宮を踏破し合う、その達成感! あなたにはそれが解らないの!?」
……そう、発酵少女が熱弁を振るえば……。
「解っていないのはあなたたちの方よ。男の娘とは、外側から観察すれば完全に女の子にしか見えないけれど、実際には生えているものなの。でも、その事実は服を脱がせてみるまでは解らないものなのよ。即ち――服という迷宮の内側に踏み込み、その真実を暴くという要素を最初から内包している男の娘とは、それ自体が迷宮へのリスペクトに他ならないの」
……アリスの方も、揺るぎなき自分の主張を返す。ああでもない、こうでもない、そうではない、それは違うのだ……言葉を交わし合う中で、アリスと発酵少女たちはお互いに強い共感を得つつも、決定的に譲れない一線で自分たちが解り合えないことを、刃を交えるしかないことを理解してしまう。
「……もう、言葉を重ねる意味は無いのね……」
「……あなたとは、出来れば別の形で出会いたかったわ……」
8月の東京ビッグサイトとか――目を伏せるアリスへ発酵少女たちがそう告げて、両者はついにユーベルコードをぶつけ合った。
発酵少女たちの頭に乗る缶詰が開放され、溢れ出した臭気がアリスの鼻を衝く。冒涜的なフレグランスにアリスの小柄な肢体がビクン、ビクンッと跳ね回るが、彼女は息を荒くしつつも頬を染め、微笑んでみせた。
「……『我々の業界ではご褒美よ☆』」
「何、だと……!?」
アリスの訓練された変態力は、スウェーデン名物の某ニシンの缶詰に匹敵する悪臭すら己の快楽へと変換していた。それどころか、『アリスの不可思議迷宮』の影響で発酵少女たちの放った臭いまでもが擬人化し、ストリートチルドレン風の男の娘たちが発生する。
戦慄する発酵少女たちへ、アリスは自身の唇をチロッと舌で舐め、厳かに告げた。
「……ところで――私は百合もイケるのよね☆」
「「「「「…………えっ?」」」」」
顔面に『嫌な予感』の四文字を浮かべた発酵少女たち。思わず腰が引けたが……時は既に遅かった。
「『さぁ、アリスと遊びましょ?』」
アリスの魔術刻印が、怪しく、妖しく輝いて――淫獄が顕現した。
「「「「「ああぁぁああああああ~~~~!?」」」」」
男の娘たちが交配し合う腐海に、発酵少女たちの悲痛な、けれども甘い泣き声がこだまする。
「いや、いやぁ……あぁっ……むぐぅっ!?」
アリスと共生するバイオモンスター・『パラサイトテンタクル』の触手に全身を絡め取られた発酵少女の一人が、上げ掛けた悲鳴を触手によって喉の奥へと押し戻される。
「あ、あっ、あっ、あぁっ……!? わたくし、こんなぁ……あ……♪」
その隣では、もう一人の発酵少女がスカートの中から淫らな水音を響かせていた。……彼女の下半身へ群がっているパラサイトテンタクルの触手は、10や20では足りない。
「やぁ……無理、無理ぃ……! そんなの、入らないからぁっ!!」
それの向こうでは、アリスが『ワンダートイボックス♪』と名付けた玩具箱から取り出した『肺魚の如き形状のナニカ』を、組み伏せて全裸かつ大股開きにした発酵少女の股間へと宛がうところだった。
「大丈夫よ。女の子のここって、このくらい大きいモノでも案外すんなり入るものなのよね……それっ♪」
「ひっ……いっ……いぅっ……あぅぅうううう~~~~んっ……!?」
発酵少女の中で大切な何かが破れ散るのを感じつつ、アリスは彼女の頬へ優しくキスをした。
……ところで、そんなアリス無双が展開するこの迷宮空間に、いつの間にか他の猟兵たちの姿は無い。タカヒロの姿も消えている。発酵少女たちの多数がアリスに気を取られている隙に、他の猟兵たちはタカヒロを連れてこの迷宮から脱出していたのだった。彼らを追い掛けた発酵少女たちも居たようだが……アリスがこうして無力化した発酵少女の数の方が僅かに多い。アリスは猟兵として、充分に役割を果たしたと言えるだろう。
「そう、だから断言出来るの。――私の頭は大丈夫です」
……いや、それはどうだろう?
大成功
🔵🔵🔵
蒼汁権現・ごずなり様
ふ、こやつらの嗜好は理解したゾイ。
ならば、タカヒロを助け出す手段はこれじゃな。おにぃ、よろしく♪
混沌権現だけあって見るたびに姿のかわる我が自慢の兄上様ぞw時にオカマバーのママとして、時に頭が瓶の怪人として、その場の状況に合わせた姿できてくれる頼れるおにぃちゃんだゾイw
今回は発酵少女の嗜好に合わせてタカヒロと掛け算をするに相応しい姿で顕れてくれるじゃろう、エイプモンキーも平気で喰っておったからきっとノリノリでのw
くくく、理想のシチュを生で拝める機会をお主らに振り切れるかの?ほれ、新刊の資料を提供してやろうぞwリクエストはあるかの?罠使いの業と分かっておっても抗えぬじゃろw
足止めは成した、今じゃ!
蒼汁之人・ごにゃーぽさん
今、とは?ごずなり様の合図に戸惑う猟兵の皆様にさもありなんと思う。
だが、安心して欲しい。あそこで酷い目にあってるのは『タカヒロさんに間違われた発酵少女』だ。ボクのUC【シリアスブレイカー】略して尻ブレでそう概念改変した。アリスもごずなり様もフリーダムすぎぃ!
まぁいい、ギャグシナリオにおいて尻ブレの影響化に入れば、ギャグ漫画的な意味での酷い目にあうことから逃げることはかなわないだろう。さぁ、タカヒロさんを救い出すのは今の内だよ!
酷い目にあうことから逃れられないだろう……誰一人として。ボクは諦めの境地で制裁エンドを受け入れよう。
だが、その犠牲でタカヒロさんは貞操も尻も社会的な死からも護られたのだ。
さて、一人の猟兵が展開したカオスな……真にカオスな空間のおかげで、邪神の眷属・発酵少女たちの数も大分減少した。……けれど、未だ残る発酵少女の総数も決して侮れる数字ではない……。
それの前に威風堂々と立ち塞がったのは、ヒーローズアースからやって来たピンク髪の神様こと蒼汁権現・ごずなり様(這い寄るごにゃーぽ神・f17211)だった。彼の女神様は勝ち誇った様子でニヒルに笑う。
「ふ、こやつらの嗜好は理解したゾイ。ならば、タカヒロを守り抜く手段はこれじゃな。『おにぃ、よろしく♪』」
ウィンクしたごずなり様の前に、何やら物凄い色をした空間の歪みが発生した。極彩色に輝く暗黒の帳とでも表現するべきか……? その明らかにヤバげな時空の狭間より、気配だけで周辺の重力を増大させるような何かが歩み出てくる……。
――美形だった。
ちょっと洒落で済まないレベルの美形である。顔立ちには少し野性味があり、表情には自信の二文字が溢れていた。首から上ばかりでなく、その下の肉体も猫科の猛獣のような筋肉で装われており、細いながらも力強さを感じさせる。何より、股間に下がった男性の証すらも、芸術品として花の都・パリの美術館に展示したいレベルで美形……。
非の打ち所がない超絶美形様の登場であった。
そんなのが全裸で出てきたのであるからして、発酵少女たちからの嬌声は稲妻が轟いた如くである。ごずなり様以外のこの場の猟兵たちも、目が点になっていた。
「我の双子のおにぃ、『混沌権現ごずなり様』ゾイ。混沌権現だけあって、見る度に姿の変わる我が自慢の兄上様ぞw時にオカマバーのママとして、時に頭が瓶の怪人として、その場の状況に合わせた姿で来てくれる頼れるおにぃちゃんだゾイw」
ごずなり様が嬉々として解説するが、いくら何でも例として挙げられた二種とキャラが違い過ぎだった。発酵少女の何名かは鼻血が止まらない有様になっている。
「我の予想通り、今回は発酵少女たちの嗜好に合わせてタカヒロと掛け算をするに相応しい姿で顕れてくれたぞwくくく、理想のシチュを生で拝める機会をお主らに振り切れるかの?」
……え? おい、ちょっと待て……!? という天の声など聞こえもせず、少々悪っぽく微笑した混沌権現の方のごずなり様は、その腕で力強く意識無きタカヒロを抱え上げた。鼻息を荒げまくる発酵少女たちへ見せ付けるように、タカヒロの顎を指でクイッと持ち上げる。
「おにぃ、エイプモンキーも平気で喰っておったから今回もノリノリじゃぞwほれ、新刊の資料を提供してやろうぞw」
煽る蒼汁権現の方のごずなり様に応える如く、その兄たる美形ごずなり様が、噛み付くようなキスでタカヒロの唇を奪った。
ズキュゥゥウウウウンッッ! という擬音が踊り、発酵少女たちの歓声が騒音のように鳴り響く。
タカヒロの唇を割り開き、その口内にまで舌を差し込んだごずなり様(美形)……。左腕でタカヒロの腰を抱き、右手は彼の太股を撫で上げる。右手は段々と上に向かって這っていき……やがて、タカヒロの股間の項垂れたモノを指先でなぞり上げた。ビクッと震えるタカヒロ。その反応に気を良くしたごずなり様(兄)は、今度はその右手をタカヒロの尻の方へと這い進めさせていく……。
「ほれほれ、リクエストはあるかの? 罠使いの業と解っておっても抗えぬじゃろw」
ごずなり様(妹)が言う通り、混沌少女たちは誰もが薔薇を咲き乱れさせるごずなり様(美形兄)とタカヒロに目を奪われていた。そこにタカヒロを奪い返そうとする意思は、それによって目の前のこの世界を壊してしまうような考えは、欠片も見受けられない。確かに今、タカヒロは邪神の眷属の魔の手から完璧に守り抜かれていた。
……『本末転倒』という言葉を知っているか?
何にせよ、二柱のごずなり様の活躍で発酵少女たちは完全に動きを止めてしまっていた。妹の方のごずなり様は、勝利宣言のように高らかに声を上げる。
「我は成した、今じゃ!」
――その瞬間、周囲の風景がひび割れる。ガラスのように砕け散ったそれの向こうで、モノクルを着けたフェアリーのような姿の者が微笑んだ。
「『ごにゃーぽ☆ シリアスパート終了のお知らせ♪』」
そう告げたのは、実はモノクルが本体のヒーローマスクである蒼汁之人・ごにゃーぽさん(偏在する混沌の媒介・f10447)。彼女は一連のごずなり様たちの暴走に戸惑う他の猟兵たちへ、ある方向を指し示す。
「ごずなり様に戸惑う猟兵の皆様にさもありなんと思う。だが、安心してほしい――タカヒロさんはあそこで無事だ」
ごにゃーぽさんがフェアリーっぽいナニカである肉体で指差した先には、何事も無く下半身丸出しのまま眠り続けるタカヒロの姿。他の猟兵たちはそれに一安心するが――では、先程までごずなり様(兄貴)に弄ばれていたタカヒロは……?
「……あそこで酷い目に遭ってるのは『タカヒロさんに間違われた発酵少女』だ。ボクのユーベルコード・『シリアスブレイカー』……略して『尻ブレ』でそう概念改変した。――ごずなり様フリーダム過ぎぃ!」
略称はアレだが、ごにゃーぽさんのユーベルコードにはそんな、ある程度までなら現実まで書き換えてしまう力があるらしい。
――ともあれ、それのおかげで無事にタカヒロは猟兵側に確保される。発酵少女たちは元より、ごずなり様たちも阻むように壁が作られた。それを見届けて、ごにゃーぽさんはシルクハットのつばを下げて目元を隠す。
「……ギャグシナリオにおいて尻ブレの影響下に入れば、ギャグ漫画的な意味での酷い目に遭うことから逃げることは叶わないだろう……」
……ごにゃーぽさんが多少メタ的に口にする通り、タカヒロの代わりにごずなり様(おにぃ)の餌食となった発酵少女は……うん、かなり酷い目に遭っていた。もしも彼女がオブリビオンではなく、普通の女の子だったら……間違いなくお嫁に行くことが出来なくなっていた事態である。――自分好みの美男子に色々とイタされてしまったわけだから、ある意味ではご褒美だったかもしれないが。
そんな、一人の発酵少女の不幸(?)を噛み締めながら、ごにゃーぽさんは独りごちた。
「そう……酷い目に遭うことから逃れられないだろう……誰一人として。ボク自身もまた……」
諦観を滲ませた声で呟き、ごにゃーぽさんが顔を上げる。
――そこには、折角の琴線に触れまくるBL展開を穢された発酵少女たちが、怒りのオーラを立ち昇らせてごにゃーぽさんを囲んでいた。……ついでに、何故かその中にごずなり様兄妹も混ざっている……。
ごにゃーぽさんは一切の言い訳をせず、逃げる素振りも見せずに、両腕を広げて彼女たちを迎えた。
「――来い☆」
次の刹那、ごにゃーぽさんに向けて発酵少女たちから一斉にユーベルコードが飛んだ。藁人形をぶっちぎって中身の納豆っぽい物体をこれでもかとごにゃーぽさんに投げ付ける。猛烈な悪臭と粘り気の中にごにゃーぽさんが埋もれていく……。
そこにごずなり様たちからも蒼汁が瓶のまま飛んで、混沌の様相が加速していった。
……あれ? ごにゃーぽさん、何も悪いことしてなくね? むしろ悪いのはごずなり様たちじゃね? ……そんな風に思えもするが、生憎とその点を冷静にツッコんで止めに入るには、放たれるユーベルコードの雨が激し過ぎた。
(いいさ……この制裁エンド、ボクは受け入れよう)
そうすることでタカヒロの貞操が守られたのだから――達成感と満足感を胸に、ごにゃーぽさんは苛烈なる暴力の嵐の中、倒れ伏すのであった……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ルナ・ステラ
目撃しまいました...
―気を取り直して、タカヒロさんを連れ戻さないとですね!!
うぅ...今度も臭います...
えっと...そこをどいてくれませんか?
びーえる?尊い?
えぇっ!?そんなものを描いてるんですか!?
―きゃあっ!?
うぅ...何ですか、これ!?
ネバネバしてるし臭いです...
あぅ...粘ついて動けないです...
すごい臭いがします...
纏わりついて気持ち悪いです...
囲まれてしまいました...
勧められたってわたしにはわからないですよぅ...
(もう見たくないです...そうだ!!光線で本や絵を貫けば、見ずに済みます!)
もし、終わって余裕があれば、水瓶さんの星霊さんに綺麗にしてもらいましょう...
猟兵たちと邪神の眷属・発酵少女たちの戦いが激しさと混迷を増していく中、呆然とした様子でその戦場に佇む少女が一人……。
――ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)である。
彼女の瞳が虚空をさ迷うのは、やむにやまれぬ理由があった……。
「……目撃してしまいました……」
一体何をと言えば……『タカヒロの股間のアレ』を。先の『正気を奪う赤い果実』との戦いの最中、偶然に偶然が重なって、それはルナの目に焼き付いてしまった。……若干12歳の無垢な女の子であるルナにとって、それは自分を見失うほどの衝撃であったらしい……。
……まあ、そのおかげで、少し前まで他の猟兵たちが展開していたもっとヤバい世界をルナが認識せずに済んだことは僥倖だったと言える。あれらはとてもではないが、ルナのような子にはお見せ出来ない……。
とはいえ、ルナもいつまでも茫然自失としているわけにはいかなかった。他の猟兵たちの活躍でタカヒロの身は猟兵側に確保出来たが、発酵少女たちは再度タカヒロを連れ去ろうと押し寄せてきていたのだから。
「――気を取り直して、タカヒロさんを守らないとですね!!」
頭をぶんぶんと振って雑念を追い払い、ルナは毅然と発酵少女たちの前に立ち塞がる。……が、即座に彼女の顔は気弱げに歪んだ。
「うぅ……今度も臭います……」
何せ、相手は先のトマト型邪神のような偶然の産物ではない、れっきとしたユーベルコードとして悪臭を操る発酵少女たちである。彼女たちが醸し出すフレーバーは、ルナの腰を引かせるには充分なものであった。
「えっと……出来たら退いてくれませんか?」
おずおずとルナが撤退や降参を促してみるが、未だ目が死んでいない発酵少女たちは断固拒否する。
「この程度の状況……真夏や真冬の有明と比べれば何ということもないわ!」
「蒸発した汗で霧が立ち込める国際展示場を、水分も無く徘徊したあの夏の日……雪がちらつく寒空の下、それでも推しの作家様が描くBL同人誌を求めて牛歩したあの冬の日……それらの記憶がわたくしたちを強くするのですわ!」
発酵少女たちの気迫がルナにもビリビリと伝わってくるが……彼女たちの言葉にはいくつかルナが知らない単語が混じっていた。首を傾げ、ルナは発酵少女たちへ質問する。
「……びーえるって何ですか?」
「……は? BLを知らない!? あれはこの世で最も尊い価値あるものよ!!」
「……尊い……? いえ、具体的にはどんなものなんですか?」
「BL……それは世間一般的には後ろ指を指される……でもだからこそ熱く燃え上がる恋を描いた物語。非生産的であるという人も居るけれど、生産的ではないからこそそこに伴う感情はより純粋なものではないかと私は考えるわ、逆説的に。まあ、ぶっちゃけた話をすると凄くイカした男性同士がくんずほぐれつして穴に棒をソイヤッ、ソイヤッ! する――」
……さらに続く発酵少女からのBL解説に、ルナの頬はリンゴが熟すように真っ赤になっていった。
「……えっ? えぇぇええええっ!? そんなもの読んでるんですか!?」
「そんなものとは何よ!? BLは本当に尊くて……私自身の創作意欲すら掻き立てるものなんだから!!」
「読むどころか描いてるんですか!?」
信じられないものを見たように、ルナの肩がカタカタと震える。……そんな彼女の反応がお気に召さなかったらしく、発酵少女たちは一斉に手に持つ藁人形を引き裂いた。その中身がルナへと投擲される。
「――きゃあっ!? うぅ……何ですか、これ!? ネバネバしてるし臭いです……」
納豆に似た、しかしそれとは比較にならない粘り気と臭気を有する物体が、尻餅をついたルナの白い魔女っ子衣装を汚していた。しかも、ルナと地面との間で強く糸を引き、彼女の身体を大地へと接着してしまう。
「あぅ……粘ついて動けないです……。うぅ……凄い臭いがします……。纏わり付いて気持ち悪いです……」
「大丈夫、直に気持ち良くなるわ。――偉大なるBLの尊さに触れることによって!」
「……え? ――っっっっ!?」
涙目のルナの眼前にそう言って発酵少女の一人が突き付けたのは……。
『へへっ……何だよ? もうギンギンじゃねぇか。……けど、オレはもっと昂ってるんだよ』
『ああっ……やめ……!?』
『そら……観念しろ……!』
『――っああぁぁああああああああっっ!?』
……一人の少年がもう一人の少年に後ろから覆い被さられて、悲鳴を上げているイラストが描かれた薄い本だった。ちなみに、少年たちは両方ともズボンもパンツも穿いていない。
「ふっ、わたくしからのおススメはこれですわ!」
次いで、別方向から突き付けられた同じく薄い本には、ルナも名前を知っている国民的漫画・アニメの人気の男性キャラ二人が、ベッドの上で裸で抱き合っている姿が描かれていた。
「あ……あっ……あぅぅっ……!?」
何よりルナを困惑させたのは、どちらの本でもあのタカヒロの股間にあったモノと同じアレが、若干の修正を加えられつつも堂々と描かれていたことである。……つい、タカヒロのアレもルナの脳裏にカムバックしてきて、彼女の頭からは煙が上がり始めていた。
「さあ、受け入れなさい! 私たちの業界にはこんな金言があるわ――『ホモが嫌いな女子なんか居ません!!』」
……いや、居るだろ? ――そんな天からのツッコミの声を無視した発酵少女たちは、ルナに対して熱いBLの布教を繰り返す。顔を耳まで赤く染めて小さくなっていくルナは、か細い声で必死の抵抗を呟いていた。
「勧められたってわたしには解らないですよぅ……」
(もう見たくないです……どうすれば、どうすれば……………………そうだ!!)
瞬間、ルナに稲妻のような閃きが走った。彼女は『ファイアボルト』――偉大なる魔法使いが使用していたという謂れがある、魔力を高めてくれる箒を握り締めて……魔法を紡ぎ上げる。
「『月の女神さんによる裁きを! 敵を貫いて!』」
ルナの周りに、月光を思わせる柔らかな光が集った。だが、柔らかな光でも、寄り集まれば烈しさを秘めた輝きとなる。雷電もかくやの光輝の槍と化したルナの魔法が、周囲の発酵少女たちへ向けて激発した。
「「「「「――んきゃああああああああっっ!?」」」」」
発酵少女たちから悲痛な絶叫が上がったのは、彼女たちの身体……ではなく、その手に持ったBL同人誌がルナの魔法で貫かれたからである。……ルナは知る由も無いことだが、あの手の本は一度売り切れると再発行されることが無い物も多い。それ故、人気があるのに再発行されなかったことから、中古であっても元の値段の数十倍……物によっては数百倍の値段で取引されている物も存在するのである。
……実は、今回発酵少女たちが持ち出した本の中には、その類いの品も含まれていて……。
「うぅ……水瓶座の星霊さんを呼んで綺麗にしてもらいましょう……」
あまりのショックに戦闘不能に陥った発酵少女たちを尻目に、ルナはぐすっと鼻を鳴らして得意の星の魔法を成就するのだった……。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
アドリブ◎
※身に<呪詛>宿す《機能強化》維持
新しい臭いが足されて
っ…刺激強すぎて痛い位です。
あのままではタカヒロさんの尊厳が色々な意味で死にそうです。
タカヒロさんを咄嗟に守護対象指定した[宣誓刻印]の防御陣1回分使い局部に展開しつつ、<迷彩の呪詛>帯させ、一般の人の目を誤魔化し、一時的な対処とする。
一時凌ぎにはなるでしょうか
どちらにせよ速やかに奪還しましょう
<念動力で強化したオーラ防御に破魔の呪詛>混ぜ『汚れ』を浄化する事で攻撃や臭いに耐性獲得
《縛鎖》召喚
奪還までは射出し吹き飛ばし、縛り動き封じる等突破優先
色々溶ける等一般の目に触れると不味い物も迷彩で対処予定
後は耐性頼りに我慢……我慢です
猟兵たちが邪神の眷属・発酵少女の集団を相手取る戦況は、段々と猟兵側の有利へと傾いていっていた。……が、それでも事態は予断を許さないことを多くの猟兵は理解している。
相手は曲がりなりにもオブリビオン。猟兵たちに油断があれば、すぐにでもその鼻を明かされてしまう存在なのだから……。
――今回の場合、悪臭的な意味でも。
「新たな臭いが足されて――っ……刺激強過ぎて痛いくらいです」
両手で鼻と口元を覆い、目尻に涙さえ浮かべて呟いたのは月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)である。元より、何かにつけて敏感な気質の持ち主であるユイ……彼女にとって、悪臭に塗れた『正気を奪う赤い果実』からユーベルコードで臭気を操る発酵少女たちと続いた此度の連戦は、本音を言えばとてもつらいものであった。
「だけど……ここで退くわけには……」
……根が真面目なユイ。どのような理由があろうと、ここで現場に背を向けることなど出来はしなかった。ならば、せめて……と念動力で自らのオーラを強化し、そこに自身の中枢たる共鳴式制御核より溢れ出す呪詛を織り交ぜる。破魔の力へと変換された呪詛が『汚れ』……或いは『穢れ』を浄化する効果をオーラへと付与し、周辺の臭気を遮断した。……少しだけ鼻や喉が楽になり、ユイはほっと息を吐く。
「……私もいきます。一般人であるタカヒロさんを、見捨てるわけにはいきません」
他の猟兵たちの尽力によって、タカヒロは既に発酵少女たちから奪還されていたが……今なお発酵少女たちは彼の身柄を狙って攻勢を強めている。そのことをユイは看過出来ない。ついでに……タカヒロのあられもない下半身も、そのまま相変わらずである。
「……あのままではタカヒロさんの尊厳が色々な意味で死にそうです」
ほんのり頬を赤らめたユイは、咄嗟にタカヒロを指差して『宣誓刻印』を発動させた。ユイの下腹部が熱を帯び……直後、彼女のその部位に刻まれた紅の紋様と同じ形の光が、タカヒロの股間に展開する。天使の翼の意匠を組み込まれたハート型のそれは、絶対の防御陣を成す。今後、仮にタカヒロが猟兵か邪神の眷属のユーベルコードに巻き込まれたとしても、一度だけならばそれを無効化して生還出来るはずであった。
(……あ、あれ……? ですが、見た目的にはますます尊厳が危うくなったような……?)
……局部にハートを輝かせる男子高校生……確かに、見えてはいけない部分は見えなくなったが、別の方向へ突き抜けてしまった気がする……。
「……何にせよ、速やかに事態を収めましょう」
決意も新たに、ユイは拳を握り締めるのだった。
……なお、彼女はこの後、タカヒロの周囲に迷彩の効力の呪詛も渦巻かせる。それにより、一般人にはタカヒロの姿は見え難くなったはずであった。何かの拍子にこの場に一般人が集まってきても、これでタカヒロの尊厳はそう簡単には失われない……はずである。
――気を取り直して、ユイは発酵少女たちとの戦線へ飛び込んでいった。
「『(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。概念制御、情報収集、縛鎖強化更新最適化)永久の縛りを……』」
ユイの近辺の虚空が歪み、そこからシャリシャリと音を鳴らして数知れぬ鎖が零れ落ちてきた。それらは蛇の如くのたうって、発酵少女たちへと射出される。
(タカヒロさんが奪還済みである以上、心置きなく戦えます――)
タカヒロが未だ発酵少女たちに囚われていた場合は、彼の許へと突破することを優先するつもりだったユイだが、実際にはその心配は杞憂だった。ならばと全力で鎖型の概念兵装を振るい、暴れ始める。それを喰らった発酵少女たちから困惑の声が上がり出した。
「な……何、この黒い鎖!? ユーベルコードが弱まる……!?」
「この銀の鎖……動けないわ……! それに力が、奪われ……!?」
「鬱陶しいですわ、この金の鎖! この程度でわたくしが――あぅ」
ユイの放つ黒い鎖は『減衰相殺』を司り、銀の鎖は『捕縛吸収』を旨とする。金の鎖に至っては『封印拘束』の力を持ち、縛り上げた相手を行動不能に陥らせていた。それに加え、三種類全てが命中すればユーベルコードすら完全に封じてしまう……。厄介な鎖を前に、まだ動ける発酵少女たちは連携を取って反撃してきた。
「皆様、強酸性の乳酸液ですわ! それを鎖に囚われた仲間たちへ……! 鎖を溶かせれば御の字。無理でもそれで地形を侵食すれば、仲間たちを強化出来ますもの! それで、仲間たちの能力が鎖の効果を上回れば……」
自力で鎖を振り解くことも出来るかもしれない――そんなことを言い出し、実践し始めた発酵少女たちに、ユイは舌打ちする。
「させません……!」
折角行動不能に陥らせた個体を復帰させられて堪るかと、ユイはさらなる概念兵装の鎖を召喚し、まだ動くことが出来る発酵少女たちへけし掛けた。自身も積極的に前に出て攻め手を強める。……その甲斐あって、発酵少女たちの反撃の策を妨害することは出来たが……代わりに彼女たちが放った強酸性の白い液を、ユイはいくらか浴びてしまった。今はカットソーのブラウスとミニスカートの形状であった生体衣装が腐食し、面積を小さくしていく……。
「くぅっ……一時凌ぎですが」
自分自身のオーラにも迷彩の呪詛を織り込み、半ば零れ落ち掛けている乳房を、ほぼ見えてしまっているショーツをごまかすユイ。ユイの身体そのものは、破魔の呪詛で高められた耐性によって酸でも傷付くことは無いものの……タカヒロほどではないが、人に見られると少々まずい様相にユイ自身もなってきていた。
「我慢……我慢です……んっ……!?」
自分で自分に言い聞かせていたユイが、唐突にピクンッと身を震わせた。……ユイの素肌の上を滑り落ちた白い酸は、確かに耐性の強まった彼女の皮膚を焼くことは無いが……その代わりに痒いようなくすぐったいような刺激をもたらしてくる。ユイの敏感な肢体にとって、そんな感覚は結構な強敵であった。
「我慢……我慢、です……んんっ……♪」
成功
🔵🔵🔴
村雨・ベル
なかなか立派な物をお持ちで!
いやー 腐ってますねー 色々な意味で!
ここでタカヒロ君を助けに来る少年二人が駆けつける燃える展開とかないですかー?
男の子同士の友情ですよ いやー 尊い
タカヒロ君が攻めですか?受けですか?リバーシブルですか?
妄想が捗るってもんですよ~
確かにきつい臭いはたまりませんが、わかっていれば対策もできるってもんですよ
汚されるぐらいなら先に自分のスライムで溶かしてしまえば被害は皆無!(?)
しかもスライムを全身に纏うことで臭いもわかりにくくなってる可能性もあるしね
そちらの溶解液とこちらの服だけ溶かすスライム 勝負です!
さあ発酵少女ちゃんも同レベルまで堕ちるといいわー!(道連れ)
彩波・いちご
いろんな意味で死ぬかと思いました…もう帰りたい
でもさすがに彼をこのままにするのも寝ざめが悪いといいますか…
…ところで発酵少女は私の性別認識してるんですかね?
(※普段通り女装で見た目は完璧美少女ないちごちゃんです)
女扱いされて彼をとりあう女のように見られるのも困りますが
男扱いされて発酵少女の妄想の種になるのもぞっとしませんですよ?!
ぶらぶら揺れるものはこの際見ない振りしつつ(見てもどうという事はありませんし!)
【異界の抱擁】の触手で、発酵少女をからめとってしまいましょう
人で妄想するなら自分も妄想の種になることは覚悟なさいっ
…触手暴走したとしても、今回は知りません(目逸らし
※アドリブ連携歓迎
火奈本・火花
「……強烈な眷属が来るのは予想していたが、予想の斜め上の腐り具合だな」
■戦闘
タカヒロ君を担ぎ上げている連中を『追跡』しよう
目論見通りに攫せる訳にも行かないし、彼の未来の為にも
私はまぁ、経験もあるし物を見た所で動揺も無いが、逃走に専念されると厄介か
腐った方の知識(『世界知識』的な)を話せば『時間稼ぎ』出来るだろうか
『コミュ力』で同類を演じて際どいネタも話し、気絶しているタカヒロ君の実物を使う事で妄想を捗らせられないだろうか
隙を見て底力で隊列を崩すが
タカヒロ君がこっちに倒れてきたらマズイ体勢になったり…
尻的な意味か、成人向け的な意味かはその時次第だろうが
…邪神はどんな事になるのだろうか
■
アドリブ可
猟兵たちと邪神の眷属・発酵少女たちとの戦いは佳境に入っていた……。
「……強烈な眷属が来るのは予想していたが、予想の斜め上の腐り具合だな」
発酵少女たちのぶっ飛んだ性質をそう評し、火奈本・火花(エージェント・f00795)は嘆息する。……タカヒロを連れ去った発酵少女たちを追跡する過程で、彼女たちの縦横無尽ぶりは嫌というほど目撃出来てしまっていた火花だった。
(向こうの目論見通りに攫われてしまっていたら、タカヒロ君はどのような目に遭わされていたか……)
とはいえ、他の猟兵たちの発酵少女たちに負けぬ縦横無尽ぶり……もとい活躍により、タカヒロは既に猟兵側で保護が完了していた。彼の未来が無事であったこと、そこは火花も胸を撫で下ろす。
けれど、発酵少女たちはタカヒロの再度の奪取を未だ諦めてはいない。各猟兵たちに撃破され、当初より数は激減してしまっていたが、まだ生き延びている個体はその分精鋭であるとも言える。
(油断は出来ないか)
気を引き締め直し、火花は残る発酵少女たちへと相対した。
「――ところで、お前たちはタカヒロ君を攻めと受け、どちらで考えている?」
……ご安心下さい。別にエージェント・火奈本まで狂気に蝕まれたわけではございません。――これは火花なりの牽制・時間稼ぎである。コミュ力を駆使して発酵少女たちの『同類』(オブリビオン的な意味合いではなく腐女子的な……)を演じ、向こうを会話に引き込むことで、隙を探ろうという試みなのだ。
……ただ、火花にとって想定外だったのは――発酵少女以上にそれに喰い付いてきた猟兵が居たことである。
「――そこは私も気になるところですねー。タカヒロ君が攻めですか? 受けですか? リバーシブルですか? 妄想がはかどるってもんですよ~」
眼鏡を煌めかせて会話に飛び込んできたのは村雨・ベル(いすゞのエルフ錬金術士・謎の村雨嬢・f03157)である。彼女は目が点になっている火花や発酵少女たちも置き去りに、滑らかに舌を回した。
「いやー、腐ってますねー、色々な意味で! ここでタカヒロ君を助けに、彼の友人二人が駆け付ける燃える展開とかないですかー? 男の子同士の友情ですよ、いやー、尊い」
「……あ、ああ」
ベルに同意を求められて、火花も勢いに負けて首を縦に振るしかなかった。
ベルはそこから意味深に自分たちの背後……その場所に大開脚状態で横たわっているタカヒロへと視線を走らせる。彼女は口元に手を当てて微笑した。
「いやー、タカヒロ君、なかなか立派なモノをお持ちで!」
「……今は、何かハート型の光で隠されているが」
他の猟兵による配慮の賜物だが……火花の正直な感想としては、「もう少しこう……どうにかならなかったのか……?」と思えてしまう。
ベルの方は特に気にしていないようで、ますます腐語りを加速させていた。
「私としては、助けに来た友人の少年二人によってタカヒロ君がサンドイッチにされるのが至高だと思うのですよ! ただ、問題なのは、背の低い少年とガタイのいい少年、どちらがタカヒロ君の尻に突っ込んで、どちらがタカヒロ君から尻に突っ込まれるべきかということなんですが!」
「ええと――タカヒロ君に突っ込むなら、やはりガタイのいい少年じゃないか? 大きい方が……いいだろう?」
……元より、気絶しているタカヒロの実物を利用することで、発酵少女たちの気をより引き付けられないかと考えていた火花は、ベルが振ってきた話に乗ってみることにした。
「なるほど、確かに小さいよりも大きい方がいいに決まってますね……。ですが、グリモアベースで聞いた話から察するに、ガタイのいい少年は受けっぽくないでしょうか?」
「……そこを言われると否定出来ないな。攻めの気配は、確実に小柄な少年の方が強い」
「ええ、ですが、強気受けや弱気攻めなど普通に跋扈するのがこの業界です。ガタイのいい少年が攻め、小さい少年が受け、その可能性も充分にありますよ!」
「…………。あの人たちは何を語り合ってるんでしょう……?」
……そのような火花とベルの熱い(ように見える)腐談義を眺めながら、深々と溜息を吐いたのは彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)だった。いちごはその珊瑚のような唇から、もう一度溜息を吐く。
「……色んな意味で死ぬかと思いました……」
先の『正気を奪う赤い果実』との激闘を思い出したいちごに重い疲労が圧し掛かる。臭いだけでもかなり疲弊していたところに、本気で生命の危機を感じるハプニングまであったのだ。正直なところ、現時点でいっぱいいっぱいのいちごである……。
「……もう帰りたい。でも、流石に彼をこのままにするのも寝覚めが悪いと言いますか……」
後ろで仰向けのタカヒロをチラリと見て、いちごは三度溜息を吐いた。……なお、彼の股間に輝く赤いハートを目撃し、少し頬を赤らめるいちごだが、別に見てしまったこと自体はどうということでもない。――何せ、着ているのは女物の服でガーリーな雰囲気たっぷりないちごであるが、性別は紛う方なくタカヒロと同じなのだから。
……そんないちごにとって、割と切実な疑問がある……。
(……ところで、発酵少女たちは私の性別認識してるんですかね?)
外見は完璧に女の子、それも街を歩けば男性10人中10人が振り返るような美少女っぷりのいちごである。そこの部分には思い悩んでいた。
(女扱いされて彼を取り合う女のように見られるのも困りますが、男扱いされて発酵少女たちの妄想の種になるのもぞっとしませんですよ!?)
そんな風に危機感を募らせるいちごの存在に、発酵少女たちも……ついでにベルと火花も気付いた。
「もしかして、私たちの会話に加わりたいですか?」
「やめて差し上げろ」
いちごを嬉々として腐語りに混ぜようとするベルを、察した火花が止める。……そして、発酵少女たちはいちごを指差してこそこそと囁き合っていた。
「ねぇ、あの子……もしや男の娘ではないかしら?」
「確かに、あんな可愛い子が女の子であるはずがあり得ませんわ……!」
「いえ、でも、そう思わせておいて裏切られる可能性も……!?」
「大丈夫、この世にはトランス・セクシャルという最後の手段もございますから……!」
(……何か、意味の解らない単語も散見出来ますけど――)
――少なくとも、発酵少女たちの腐り具合が自分の想像の遥か上を行くものであることは、いちごも確信出来た。
……前述した通り、もう色々といっぱいいっぱいないちご。躊躇いをかなぐり捨て、全力全開で暴発する決意を固めたのだった……。
「『ふんぐるいふんぐるい……、星海の館にて微睡む我が眷属たちよ!』」
辺り一帯を包み込んでしまうほどに、いちごの影が巨大化する。その表面が風を浴びた水面のように波打ち、深淵から異形の者たちを招き寄せた。
「人で妄想するなら自分も妄想の種になることは覚悟なさいっ!!」
いちごの裂帛の咆哮と同時、その影が繋いだ異界への門から数多の触手が躍り出た。蛸やイカのようなオーソドックスな形状のものから、ゴーヤーを長く引き伸ばしたようなマニア向けのもの、さらにはムカデの如き凶悪なフォルムのものまで取り揃えられたいちごの眷属たちが、我先にとばかりに発酵少女たちへ殺到する。
……『正気を奪う赤い果実』との戦いでは、召喚寸前までいきながらそこで回れ右させられたいちごの触手たち……。その溜まるに溜まったフラストレーションが、津波を思わせる荒々しさで発酵少女たちへ襲い掛かった。
「きゃああああっ!? いやぁああああっ!!」
「何ですの!? 何ですのこれは!? あぁー!!」
「やめて、止して、堪忍してぇー!!」
襟元から、スカートの裾から、触手たちが発酵少女たちの服の内へと潜り込む。頭の上の缶詰の蓋を開け、そこより流れ出す臭気により対抗しようとする個体も居たが……触手たちはそんなもの全く通じていない様子で発酵少女たちの身体へと絡み付いていった。……しばらくは甲高い悲痛な声を上げていた発酵少女たちだが、その悲鳴は段々と弱々しくなり……いつしか切ない喘ぎ声へと変わっていく……。
「あ、あ、あっ……♪」
「あたしの、臭い……触手の臭いに……塗り潰されちゃうぅ……♪」
「はぁっ……BLより、ずっと素敵だよぉ……♪」
「……触手暴走したとしても、今回は知りませんっ」
頬を可愛く膨らませたいちごは、発酵少女たちの甘く蕩ける惨状から目を逸らすのであった。
……しかし、触手たちのスタンピードから何とか逃げ延びた発酵少女たちも居る。彼女たちは一発逆転の目に懸けて、タカヒロの許へと移動を開始したが……。
「『スライム制御術式オートモード発動。溶かし尽くせ何もかも!』」
――その前に仁王立ちしたのはベルだった。彼女を視認した発酵少女たちは、一様に目を見開く。何せ……ベルは我が身に服だけを溶かすスライムを纏っていたのだから。……そのスライムに自らの衣類を溶かされて、徐々に豊かな乳房や魅惑的な曲線を描く腰回りが露わになっていくベル……。
危険な匂いを感じたか、幾名かの発酵少女たちがベルに向かって強酸性の白い液体を吐き出した――が。
「……嘘っ、全然通じない!?」
戦慄する発酵少女たちへ、ベルは勝ち誇った笑みを浮かべた。
「ふっふっふ、確かにきつい臭いは堪りません。強酸性の乳酸液も脅威です。ですが、解っていれば対策も出来るってもんですよ。――汚されるくらいなら先に自分のスライムで溶かしてしまえば被害は皆無! しかもスライムを全身に纏うことで臭いも解り難くなる可能性も……? 一石二鳥ですね!」
……人、それを『自爆戦術』と呼ぶ。とはいえ、確かに案外有効な手立てではあった。それ自体が酸性であるベルのスライムは、発酵少女たちの強酸性の乳酸液にも耐性がある。元からネバネバしていることもあり、藁人形の中身の納豆的なものをぶつけられても動じない。悪臭さえも、スライム自体には鼻が無いから効かないのだ。それに守られている形の今のベルにも、発酵少女たちの能力はほとんど通じないと言える……。
「それでは……そちらの溶解液とこちらの服だけ溶かすスライム――勝負です!」
「え? ちょ……いやぁぁああああああっ!? 折角触手からは逃げたのにー!!」
スライムを纏ったまま、ベルが発酵少女たちへダイブする。人体には無害ながら、服であればどんな物でも溶かし尽くす溶解液がスライムより放出され、それが降り注いだ発酵少女たちは下着の糸切れ一本すら残さずに全裸へと剥かれていった。
「さあ、発酵少女ちゃんたちも私と同レベルまで堕ちるといいわー!」
「……何ということだ」
触手とスライムが大乱舞し、発酵少女たちを蹂躙していく光景を目の当たりにした火花は、慄いた声で呟いていた。
「……発酵少女たちよりも猟兵たちの方が、余程斜め上にぶっ飛んでいる……」
猟兵たちに色々な意味で上を行かれた発酵少女たちは、最早総崩れだった。ここから持ち直すことは、流石にもう無いだろう。
這うようにしてどうにかこうにか触手の群れから逃げてきた発酵少女の一団の隊列を、火花は『エージェントの底力』を叩き付けて崩し、今度はスライムの中へと突き落とす。発酵少女たちの何処か艶やかな泣き声がこだまする中、火花は踵を返してタカヒロの許へと歩いていった。……如何に今なお気絶中とはいえ、未成年の高校生をこの場に置いておくのは些か躊躇われたからである……。
ちなみに、ここまでに他の猟兵がその辺りを考慮してタカヒロを移動させなかった理由は簡単だ。……タカヒロの格好もアレで、近付き難かったのである。
(私はまぁ、経験もあるしモノを見たところで動揺も無いからな――)
そんなわけで、タカヒロを背負って担ごうとした火花だが――バランスを崩して前につんのめってしまった。見た目より怪力ではある火花だが、高校生男子としては背が高めのタカヒロとの身長差がある。絶妙にバランスを崩されて、火花は彼に覆い被される形で下敷きになった。
「……あっ……」
火花の喉から思わずそんな声が出た。
ちょうど火花のお尻に当たる形になったタカヒロの股間のブツ……火花でさえびっくりするほどギンギンだったのである。
――だって、タカヒロも健康的な男子高校生だもの。意識が無いとはいえ、こうも周囲で悩ましい声が上がっていれば……ねぇ?
……生理的現象なのだから、勘弁してほしい……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『原初の触手神』ウホ・サセロ』
|
POW : フハハハ!我が真の姿を見るがいい!
対象の攻撃を軽減する【名伏し難き触手生物の塊 】に変身しつつ、【冒涜的な行いをする触手】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 出でよ!ヤオ=異本に封じられし眷族よ!
【爽やかな笑顔を湛えた人面イカ 】の霊を召喚する。これは【対象の背後に回り込むこと】や【耳元で冒涜的な愛を囁き精神力を削ること】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 出でよ!アン・ナ・コト写本に封じられし眷族よ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【筋骨隆々のガチムチ兄貴マン 】と【スキンヘッドの筋肉質なオネェ】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠パトリシア・パープル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
トマト型の邪神・『正気を奪う赤い果実』に続き、邪神の眷属たる発酵少女たちも下した猟兵たち。
一般人の男子高校生・タカヒロの保護も完了して、状況的には一安心というところである。……だが……。
「――ほう? 我の眷属たちをここまで蹂躙するとは……良いモノをお持ちだ」
……唐突に響いたイケメンボイスに、周囲の重力が10倍にも……100倍にも増したように錯覚される。
それは、現実に重力が増大したわけではもちろんない。圧倒的なプレッシャー……まさに『神威』と表現するしかないものによって、猟兵たちの精神が、肉体が、悲鳴を上げたのである。
この脅威……発酵少女たちは当然、『正気を奪う赤い果実』すら問題にならない……!
……来訪してしまったのだ。発酵少女たちの主たる、大いなる邪神が……。
猟兵たちは慄く我が身を叱咤し、顔を上げ、その存在を目に焼き付ける。
――切れ長の瞳は、涼しげな光を宿していた。
――すっと通った鼻梁に不敵な笑みを刻む唇は、絶妙な配置取りがされている。
――首筋から胸板、腹筋へと続くボディラインは、ルネサンス期の彫刻の如く美しい……。
……美を司る男神……そう思えてしまうような美男子が、足元まで届く腰布を巻いただけの姿で立っていた。
UDCアースの日本のアスファルトの道路が、彼の放つオーラだけでギリシア神話の世界へと旅立ってしまいそうになる……。
そんな美形なる邪神の眼差しが、未だ意識を取り戻さないタカヒロを射抜いた。
「……その少年が、尻の穴より『正気を奪う赤い果実』を復活させた者か……」
タカヒロを見た途端――邪神の双眸にとても強い熱が灯る。
「我は――その尻を堪能してみたいっっ!!」
……いきなり何を言い出すんだこの邪神は?
恐るべき圧迫感は何処かへと吹き飛び、目を点にした猟兵たちを尻目に、美男子邪神は熱っぽく語り出す。
「邪神すらひり出し、それでもなお形状を歪ませもしない肛門括約筋の、なんと凄まじいことか……! まさに、選ばれし尻! アナル・オブ・アナルッ! 我は、この尻の穴と出会う為に生まれ落ちたのかもしれない……!!」
情熱的に頭のネジが外れまくった弁を振るった邪神は、その美貌を凛々しく引き締め、こう言った。
「その少年を置いていくなら、女共は見逃そう――というか、我は貴様らなど眼中に無い! とっとと消えろ、邪魔だ! ……だが、男たちは逃がさぬ! 少年は元より、他の者たちも……我が掘って掘って掘りまくる、そう決めた!! ふふふっ……今夜は熱い夜になるぞ……!!」
……うん、もう、何というか……多分、薄々予想していた人も居たのではなかろうか?
――はい。最後の、第三章の敵こそが、このシナリオで一番アレです。
太陽は西の空の果てに沈もうとしており、間も無く夜の帳が訪れるだろう……。
まあ……頑張れ猟兵たち!!
備傘・剱
…ごめん、この展開は予想の斜め上だったわ
自分の操は、絶対に守る
全兵力完全起動、呪殺弾、誘導弾、衝撃波、頭の上の一足りないの迎撃ダイスで、弾幕張る
接近してきたら零距離射撃して水龍撃の高速移動で全力逃走
で、常に尻にオーラ防御を集中させてる
最接近を許したら、グラップルで組み付いて投げ飛ばしてやるわ
…絶対に後ろは取らせない
お、俺は今、生まれて初めて、恐怖している…
邪神とはこんなに恐ろしい存在だったなんて…
魂の奥底から湧き上がる恐怖とは、このことなのか!
…って、真面目にやってるけど、ごめん、少しだけ、泣いていい?
最後の最後にこんなんか!
タカヒロ!お前の血脈はどないなってんねん!
アドリブ・絡み・好きにして
――考えるよりも先に、本能が備傘・剱(絶路・f01759)の身体を動かしていた。
「『天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!』」
空気中の水分が剱へと集束・凝縮し、彼の身に鋭利な水の刃を纏わせた。加速していく感覚に背中を押されるようにして、剱は龍の爪の如き、或いは牙の如き水刃を連続して翻す。そこより真空と超高圧の水が迸り、剱の前方に向けて疾駆した。
その先に立つのは、発酵少女たちの主たる邪神。薄い笑みを浮かべた美男子の姿の神に、風と水の猛威が炸裂する――かと思われた刹那。
「『出でよ! ヤオ=異本に封じられし眷属よ!』」
邪神の手元にふっと出現した、革の装丁の豪奢な本。金の装飾がされたそれのページが自動的にパラパラとめくられ、ある部分が開かれた瞬間――邪神の前にダイオウイカを思わせる巨大な軟体動物が出現した。しかも、その胴体部分には爽やかな笑みを浮かべた男性の顔が刻まれており……そこに、剱の放った真空刃も水弾も吸い込まれる……。
――で、そのまま通り抜けて邪神に直撃した。
……よく見ればその巨大イカ、半透明である。霊体であることが一目瞭然だった。霊なので物理攻撃は透過したのである。
「ふっ……呪殺の業が籠められた真空刃と水弾か。しかも、狙った対象を外さぬよう誘導の術式も組み込まれているな? なかなかの衝撃だったぞ! メインディッシュの前のオードブルに相応しい……当然、メインディッシュは貴様の尻だがな!!」
口の端から血を垂らしながらも爛々と目を輝かせる邪神に、剱の背筋を戦慄が駆け上った。
「……ごめん、この展開は――この相手は予想の斜め上だったわ。自分の操は、絶対に守る」
全身に冷たい汗が滲むのを自覚しながら、剱は己を鼓舞するように宣言する。
そんな剱を見定めるように、邪神は彼を足元から頭頂部まで睨め回した……腰を前後に揺らしながら。そして、眷属であるという人面巨大イカの霊に仕草で命じた――「行け」と。
――直後、その巨体からは信じられぬ速さで人面イカは剱の背後へ回り込んでいた。霊体であるが故に、重力を始めとした物理法則の縛りが無いのである。だからこその移動力……。
「くっ……!?」
しかし、剱の速度も恐るべきものだった。一瞬と間を置かずに振り返って、水で成る青龍の爪牙を閃かせる。零距離から放たれた真空刃と水弾が次々に白い軟体を抉った。……先の攻撃透過を鑑み、今回は破魔の力も乗せて霊体にも傷を与えられるように調整している。イカがそれに怯んだ隙に、剱はイカから、もちろん邪神からも距離を取った。その臀部が光の軌跡を残したのは、オーラによる防御をそこに集中しているからに他ならない……。
「……美しい……」
尻好き邪神がそんな風に評する。
たった一度の交錯……なのに、剱の消耗は莫大に見えた。僅かな交錯の間に、霊体巨大イカから脅威的な攻撃を仕掛けられていたからである。それは……。
『我らが偉大なる主がそなたの尻を優しく撫でた。「初めてなのか? 緊張し過ぎだぞ……」そなたの耳たぶを甘噛みしながら囁いた我らが主は、そなたの右手を取って自らのモノへと導いた。熱く、硬く、滾ったソレの脈動をそなたに感じさせながら、我らが主は言う。「緊張させるのは、ここだけで充分だ」――』
(ぎゃああああああああっっ!?)
断片的ながら、剱と邪神のそんな創作ストーリーが剱の耳へと飛び込んできたのである。あまりのおぞましさに、彼は声にならない悲鳴を上げた。
(お、俺は今、生まれて初めて、恐怖している……。邪神とはこんなに恐ろしい存在だったなんて……。魂の奥底から湧き上がる恐怖とは、このことなのか!)
緊張が度を越して、尻がキュッと引き締まる思いの剱だった。
そんな彼の前で、触手をゆらゆらと揺らす巨大イカの霊……。再度剱の背後へ回り込もうと、そこで冒涜的な剱と邪神の絡みの物語を語ろうと、そう狙っているのは明白だった。
(あの話をまともに聞いたら、きっと俺の精神は保たない……)
確信して、剱は唾を飲み込んだ……。
――その瞬間に、人面巨大イカは動く。人知を超えた機動で、剱の背中へと肉迫した。その禍々しい唇が、精神を削る言葉を紡ぎ出そうとして……。
「……!?」
……いくつものダイスが投げ付けられ、霊体イカは面喰らった様子で目をパチクリさせた。『妖怪一足りない』――ゲーム界に稀に現れるという小憎い妖怪である。剱の頭にしがみ付いたそれが、イカを牽制したのであった。その機を、剱は逃さない。
「……絶対に後ろは取らせない」
破魔の力と強い意志を籠めた『フォトンガントレット』で、巨大イカの邪霊をむんずと掴んだ剱。そこからジャイアントスイングの如く、力任せに投げ飛ばす。
クルクル回転して宙を舞った人面巨大イカは、そのままエネルギーが尽きたように虚空へと溶けた……。
一息吐きつつも、剱の表情は硬い。……邪神自体はまだ健在の上、消耗も少ないのだから。
意味深に笑う彼の存在を睨みつつ、剱は内心で絶叫する。
(……って、真面目にやってるけど、ごめん、少しだけ、泣いていい? ――最後の最後にこんなんか! タカヒロ! お前の血脈はどないなってんねん!?)
……そんなこと言われても、タカヒロだってきっと困る。まあ――そういう星の下に生まれた『ケツ』脈だったのだろう……。
成功
🔵🔵🔴
月宮・ユイ
アドリブ◎※NGなし御自由に
※身に<誘惑の呪詛>宿す
<情報収集した世界・戦闘知識>より
えぇ、発酵少女達の言葉からなんとなくは察していました…出てくるのは彼の邪神だと。
何だか酷い見た目になっていますが[宣誓刻印]護り強化。
彼(の貞操/処女)は護ります。絶対にヤらせませんからねっ
…何を言っているのでしょうね
自分の言葉に落ち込みつつも、
《機能強化》した<怪力>でタカヒロさん抱き上げ距離を取る
強化された<念動力>と<属性攻撃:破魔の呪詛>で攻撃
イカの霊共々弾き飛ばし浄化してあげます
女性に興味ない敵故気が回っていないが服ボロボロ
加え咄嗟に抱え込む様に抱き上げた為割と危うい状態で。
もし目覚めでもしたら……
ついに出現した大いなる邪神、それと先陣を切った猟兵との激しい交錯を見据え、月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)は戦慄を表情に滲ませていた……。
「……『原初の触手神』ウホ・サセロ……」
彼の邪神の名を唇より零すユイ。ユーベルコードすら用いた情報収集により、彼女は眼前の邪神の登場を予期していたのである。
「えぇ、発酵少女たちの言葉から何となくは察していました。出てくるのは彼の邪神だと」
……出来れば、男性猟兵たちにはそのことを教えておいてあげてほしかった……。
何にせよ、眷属であった発酵少女たちと同様にタカヒロを狙っていると思しきウホ・サセロ。そんなことはさせてなるかと、ユイはタカヒロの護衛へと回る。
「……何だか酷い見た目になっていますが……」
一向に意識を取り戻さないタカヒロを見下ろし、ユイはばつが悪そうに頬を掻く。先の発酵少女たちとの戦いの中で、ユイはタカヒロを守る為に自身の『宣誓刻印』――守護対象を防御の陣を展開して守る紋様の効果の一部を、タカヒロへと貸与していたのだが……その結果、今のタカヒロ、ズボンも下着も失った股間の局部に赤く輝くハート型の紋様が浮かぶという変態性溢れる形態になっていた。これはユイにも想定外のことである。
「……と、とにかく、『宣誓刻印』の護りを強化」
さらなる力を注がれて、一際強くタカヒロの股間のハートが輝きを増す。
「彼(の貞操/処女)は護ります。絶対にヤらせませんからねっ」
ウホ・サセロを睨み、宣言したユイ。その言葉が偶然聞こえたのか、彼の邪神の片眉がピクッと跳ね上がる。……もっとも、当のユイは自分の口を突いて出た台詞のシュールさに、若干ヘコんでいた。
「……何を言っているのでしょうね、私……」
しかし、ユイは落ち込んでばかりもいられなかった。寸前のユイの言葉を挑発と受け取ったのか――ウホ・サセロがユイの方へ、即ちタカヒロの方へ視線を向けたのである。
「再び『出でよ! ヤオ=異本に封じられし眷属よ!』」
邪神が革の装丁に金の装飾がされた書物を手に命じれば、ユイの目前にダイオウイカにも匹敵しそうな巨体のイカの霊が現れる。胴体部分に爽やかに笑う男性の顔を浮かべたそれを前に、ユイは咄嗟にタカヒロを抱え上げた。
「『(共鳴・保管庫接続正常、能力強化。情報読取蓄積更新……各技能へ反映継続、最適化……機能強化)適用……』」
ユーベルコードにて身体能力……特に筋力を強化したユイは、男子高校生としては背が高いタカヒロという荷物があっても動きはそうそう鈍らなかった。自分の背後へ回り込もうとしてくる人面巨大イカの霊を、どうにか引き離そうと素早くステップを踏む。
……だが、霊であるが故に重力や慣性などの物理法則に囚われない人面巨大イカは、歴戦の猟兵たるユイでもそう簡単には振り切れなかった。しかも、踊るように腰を振りながら、ウホ・サセロもじりじりとユイたちの方へ迫ってくる……。焦燥感に、ユイの頬を冷や汗が伝った。
「もう一度言ってやろう。我は女など眼中に無い。その少年を置いてすぐさま消えるなら、寛大な我は貴様を見逃してやる」
「……っ、舐めるな……!」
傲慢なウホ・サセロの言い分に、無意識にかつての口調が飛び出すユイ。ヘテロクロミアの瞳を強く輝かせ、自身の中枢たる共鳴式制御核から呪詛を引き出した。
「イカの霊共々、弾き飛ばして浄化してあげます……!!」
「何だと……!?」
ユイが、その黒髪を舞い上がらせながら迸らせた念動力が、渦を巻いてウホ・サセロへ疾走した。主の危機を感じたか、巨大人面イカがそこに割って入るが――霊体であるその軟体動物でさえ、ユイの念動力は捕らえて乱回転させる。ユイに宿る呪詛が、破魔の力と化して念動力に混在しているのだ。端から光の粒となって崩れていきつつ、巨大人面イカは砲弾となって自らの主へと着弾する。
人面巨大イカも、ウホ・サセロもまとめて吹き飛ばしたユイだが……彼女の方もなかなかの惨状だった。発酵少女たちとの戦いで、彼女たちの強酸性の乳酸液を散々に浴びていたユイ。その結果、ボロボロになっていた衣装が念動力の反動で最早残骸同然となっている。ノースリーブのブラウスからは、小柄な身体に反して形良く実った乳房がとうとう零れてしまっていた。……敵オブリビオンが全く女性に興味が無い態度なので、ユイの側もその辺りについては一切気を回してはいなかったが……。
……ところで、強い人が好きと言いつつも無自覚に奉仕好きで、つまり結構庇護欲や母性は強いと思われるユイ。激しさを増す敵との攻防に、反射的により力を籠めてタカヒロを抱え込んでいた。そのせいで、タカヒロの頬に彼女の胸が思い切り押し付けられる形になっていたのだが……。
「……ぅ……うぅっ……? あれ……? 俺、どうなって……?」
そのタイミングでなんと、これまで全然起きる気配が無かったタカヒロがぼんやりと瞼を開く。しかし、まだ意識は朦朧とし、目の焦点も合っていない様子で……夢現のまま、彼はユイの美乳を捕捉した。
(……肉まん?)
そう思ってしまった彼を、誰が責められようか……。
「頂きまーす……はむっ」
「――ひゃわぁああああっ!?」
タカヒロにおっぱいを、それも何の因果か先っぽの部分を甘噛みされたユイ。素っ頓狂な悲鳴を上げてしまう。……その上、元々が敏感な気質のユイが、完全な不意打ちで……であった。彼女の肢体を駆け抜けた刺激は桃色の稲妻としか表現出来ないもので、指先の一つ一つに至るまで一瞬麻痺してしまう。
……だから、ユイは否応なくタカヒロを腕から滑り落としてしまった。
「……ぐふっ!?」
……そのタカヒロの後頭部が、アスファルトの地面とぶつかり盛大な音を立てる。
「あ!? タ、タカヒロさん!?」
運良く宣誓刻印の防御陣が働いたのか、命に別条は無いようだが……白目を剥いて二度目の気絶に突入してしまったタカヒロは、今度もそう簡単には目を覚ましそうにはなかったのだった……。
成功
🔵🔵🔴
シャルロット・アルバート
何か変なオブビリオンが居るわね。
男色な邪神というなら(見た目)女の私に興味は示さないはず。
鎧纏いし戦乙女で変身(女性化)するまでも無く、空を舞う戦乙女で充分よ!
(実性別男だからってことで反応されたとしても)空まで飛べば触手は届き辛いはず!
しかも持ってるのはビームマシンガン、一方的に蹂躙してみせる!
以下PL
男の娘な上フラグまで建ててるので少年漫画レベルのトラブルは大歓迎です。
某ダークネスレベルでも構いませんが、それ以上(貞操喪失とか)はご遠慮願いたいです。
大物邪神の出現を受けてか、グリモアベースより援軍の猟兵も到着していた。
マッハ3を上回る速度で現場の上空に飛来したのはシャルロット・アルバート(閃光の戦乙女(ライトニング・ヴァルキュリア)・f16836)である。
まさしく異名通りの閃く速さで宙を旋回しつつ、現場であるアスファルトの大通りを見下ろして、シャルロットは眉をひそめた。
「……何か変なオブリビオンが居るわね」
先発の猟兵たちと既に激突しているそのオブリビオンは、ダイオウイカの如き人面の軟体動物の霊を召喚して吠え猛っている。
「有象無象の女共は道を開けよ! 我は、邪神を復活させるほどのその少年の尻に興味がある。その肛門括約筋の締め付けを想像するだけで我は、我は……! えぇい、だから、女共など眼中に無いのだ!!」
「………………」
十数秒に亘る沈黙の後、シャルロットは深く溜息を吐いた。
「……まあ、いいわ。男色な邪神というなら、『女』の私に興味は示さないはず。『鎧纏いし戦乙女』で『変身』するまでもなく、『空を舞う戦乙女』で充分よ!」
所々の単語で何やら意味深な響きがあったような気がしないでもないが――シャルロットは眼下のオブリビオン……『原初の触手神』の名を冠するウホ・サセロへと照準を合わせて、より加速した。
「『パワードスーツ、最大出力!』」
「……ぬっ?」
墨のような色に染まり始めた空に、黄金色の粒子が煌めく。それに気付いたウホ・サセロが顔を上げた。その双眸が流星のように夜空を舞うシャルロットの勇姿を捉える。
「何……? 天翔ける――『男の娘』だと!?」
(……!? こいつ、一目で……!)
ウホ・サセロが吐いた台詞に、シャルロットは内心戦慄した。……実はシャルロット、凛とする美少女然とした外見に反し、実性別は男であったりする。強化手術の副次効果で骨格が女性に近くなっており、見破るのは困難であるはずなのだが……それをこの距離、しかもシャルロットが音速を超えて飛翔中に看破するなど、やはりウホ・サセロ、侮れない……。
(この眼力……曲がりなりにも強大な邪神だということね!)
けれど、シャルロットはそれ以上動揺しない。
(こちらは空まで飛んでいるわ。向こうの攻撃は届きづらいはず!)
「――しかも、私が持ってるのはビームマシンガン……一方的に蹂躙してみせる!」
このUDCアースでは未だ実現が遠い光線兵器を構え、シャルロットはウホ・サセロへ牙を剥いた。光の礫が驟雨となって邪神へと殺到する。
「ぬっ? ぬおおおおおおおおっ!?」
ウホ・サセロの、見た目だけなら絶世の美男子染みた姿が光線の雨の中に消えた。共に穿たれたアスファルトから砂塵が舞い上がり、戦場の様子を隠す。それを真上から睥睨しながら、シャルロットは油断なくビームマシンガンのトリガーに指を掛けていた。
「……死んだの? 生きていても、次はその命まで届かせてみせるわ――」
「――ほう? それは楽しみだ」
「……っ!?」
意外なほど近くから聞こえた返事に、シャルロットは反射的に全速力で上昇していた。――間一髪、その足首を捕らえ掛けた何かからシャルロットは逃げ延びる。
……シャルロットの飛行が巻き起こした風が周辺の砂煙を吹き飛ばし、隠蔽されていた戦場の全容を露わにした……。
「……なっ!?」
シャルロットの喉から引き攣った呻きが漏れる。
「『フハハハ! 我が真の姿を見るがいい!』」
ウホ・サセロの声が響く中、だが先までの彼の姿は何処にも見られない。代わりに……地上のアスファルトの四車線道路を埋め尽くすように、紫色の触手が氾濫していた。『パープルテンタクルズ』という、猟兵たちの間でも有名なアンディファインド・クリーチャーが居るが……それを何万体、何億体と寄せ集めたような、恐るべき規模である。……それの全体から、ウホ・サセロの声色が鳴り響いているのであった……。
「その光を放つ飛び道具……なかなかの威力であった。万が一尻に当たっていたら、我は昇天していたかもしれん!」
「ほざきなさい!」
うそぶくウホ・サセロ……その驚愕の正体へ、シャルロットはビームマシンガンを再度連射した。触手を何十本、何百本と弾け飛ばしたが……サイズが途方もなさ過ぎて、どれほどの痛痒を与えているかも把握出来ない。しかも……。
「さあ……逃げぬと捕まえてしまうぞ?」
「くぅっ……!?」
その巨大さの分、シャルロットが想定していた以上にウホ・サセロの間合いは長かった。クラゲの一種である『カツオノエボシ』は、本体の大きさは10cm程度ながら、触手の長さは50mを上回る個体も居るという。本性を現したウホ・サセロは、まさにそのカツオノエボシを途轍もなくサイズアップさせたようなものであった。シャルロットが雲の浮かぶような高さまで昇っても、彼の邪神の触手は追い掛けてくる。
「この――なんて速さなの……!?」
――それに加え、ウホ・サセロの触手は音速の3倍を上回るシャルロットのスピードに追従してくる。達人の操る鞭の先端は音速を超えるというが、それと同じ。鞭を圧倒的に凌ぐ長さでそれのようにしなる触手は、音を軽く置き去りにするのだ。
……その上、ウホ・サセロの触手……明らかにシャルロットの尻を狙ってきている。その先端を、シャルロットの尻の一番デンジャラスなポイントへ、突き込もうと動いているのだ。
「…………っ!?」
シャルロットの全身に冷や汗が滲んでくる。
そして、問題の触手の回避に集中してしまったのがまずかった。――ウホ・サセロの触手は一本ではないのだから。
「……あっ……!?」
シャルロットが気付いた時には遅かった。四方八方から押し寄せた触手に、腕が、脚が絡め取られる。……高空で磔にされたシャルロットの眼前で無数の触手が絡み合い、元々のウホ・サセロの美男子染みた姿を形作った。
「ふふふっ……その尻、堪能させてもらうぞ?」
シャルロットに背後から迫った触手がパワードスーツの隙間から滑り込み……インナースーツが密着した尻の曲線を、さわさわ~っと撫でた。
「う――うわぁぁああああああああああっっ!?」
全身に怖気が走り、シャルロットが絶叫する。インナースーツをめくり上げ、触手が今にもその内へ入り込もうとしていた。何とか、何とかしないと――必死で思考を回したシャルロットは、先にウホ・サセロが言っていたことを思い出す。
『尻に当たっていたら、我は昇天していたかもしれん!』
瞬間、シャルロットはビームマシンガンの引鉄を引いていた。明後日の方向にビームが連続して飛び出す。――が、それは『誘導弾』。途中で大きく軌道を変え、ウホ・サセロの……その美形の男の姿をした擬態へ背後から襲い掛かった。
……尻の穴を射抜く形で。
「んほぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!?」
夜空を割らんばかりの声を上げ、ウホ・サセロの巨躯が震え上がった。全ての触手が見る見る縮まり、遥か地上の一点へと集束して……出現した時のままの、人間大のウホ・サセロの姿に戻る。
……その過程で触手による拘束から逃れたシャルロットは、さらなる距離を稼ぎつつ、荒い息を整えていた。
「とんでもない邪神ね……」
バクバクいうシャルロットの心臓は、しばらく大人しくなりそうにない……。
――あと、大地に四つん這いになりながら何故かサムズアップしているウホ・サセロに、少しだけ泣きたくなった……。
成功
🔵🔵🔴
火奈本・火花
「……この邪神、こういう方向性か」
■戦闘
私は奴の対象外ではあるが、だからと言って油断は出来ないな
……機動部隊は何か危険な香りがするし、今回は待機して貰おう
タカヒロ君の貞操? を守る為にも、彼の背後に回って戦いたい。可能なら後ろから抱き支えるような感じだな
その状態でエージェントグローブの鋼糸を鞭のように使い、UDCを捕縛、切り裂いて攻撃出来ればと思うよ
急接近されたらペンライトによる『眼潰し』と『催眠術』で、仲間をその対象だと思わせて場を凌ぎたい。絵面が凄い事になりそうだが
しかしタカヒロ君はまだギンギンなのだろうか
意識は取り戻していないが、処理した方が良いのだろうか?
余裕があれば手で、とは思うが
……アスファルトの道路の上で四つん這いになり、尻を押さえて悦びに震えるウホ・サセロの姿に、火奈本・火花(エージェント・f00795)は冷静にツッコんだ。
「……この邪神、こういう方向性か」
とはいえ、寸前までの他の猟兵との攻防の中でウホ・サセロが晒した真なる姿は、大きさといい能力といい恐るべきものであった。
「私は奴の対象外ではあるが、だからといって油断は出来ないな」
……そして、火花が率いる機動部隊・『四葉のクローバー』には男性の隊員も多い……。
「……機動部隊は何か危険な香りがするし、今回は待機してもらおう」
火花のその指示に、『四葉のクローバー』の隊員の何名かは安堵の息を吐いたという……。
ところで、UDCの優秀なエージェントである火花。その本分として一般人の保護も疎かには出来ない身である。故に、この場では常にタカヒロを意識して行動していたのだが……。
「ふふふふっ……フハハハハッ! 何とも鮮烈な尻への衝撃であった! おかげでますますあの少年への意欲が高まったぞ!!」
ダメージから復帰したウホ・サセロが、改めてタカヒロをターゲットとして行動を再開する。それを見て取った火花は、一目散にタカヒロの許へ駆けた。
(タカヒロ君の貞操? を守る為にも、彼の背後に回って戦うべきか? ……いや、より効率良く彼を守るには――これだ!)
「……何だとっ?」
目撃したタカヒロの姿に、ウホ・サセロが驚愕の声を漏らした。……火花は、タカヒロの身体を後ろから抱え上げていたのである。だが、火花とタカヒロでは火花の方が背が低い為、普通に抱えてはタカヒロの足を引きずることになって動きづらい。それ故、火花はタカヒロの膝の裏へと手を差し入れて持ち上げる形にしたのだが……。
……結果、タカヒロM字開脚状態である。股間で輝く赤いハートの紋様が、また一層眩しい……。
「おおおおっ……! 『出でよ! アン・ナ・コト写本に封じられし眷属たちよ!』」
タカヒロの痴態に、何か盛り上がったウホ・サセロが今まで手に持っていた物とは別の本を開き、何者かを召喚する。
「――なっ……!?」
火花が戸惑う声を上げたのも仕方がない。ウホ・サセロの前に出現したのは、筋骨隆々なガチムチの兄貴とスキンヘッドのマッチョマン。……スキンヘッドの方は、仕草が妙に女っぽい。そんな2体の筋肉の塊が、相撲のぶちかましのような勢いで火花の、タカヒロの方へ突貫してきたのである。
「『捕獲任務はエージェントの得意分野だ――舐めるなよ』」
火花は咄嗟に片手をタカヒロの膝の裏から引き抜き、そこに嵌めていたエージェントグローブから鋼糸を伸ばす。艶が消されたそれは、陽も落ちた今はほぼ目視出来ない。鞭のように宙を走った鋼糸は、迫る兄貴マンとスキンヘッドオネェの身体に巻き付き、締め上げた。
「ヌォォッ!?」「あぁんっ!?」
低く呻く兄貴と色っぽく喘ぐオネェ。けれど、火花は歯噛みする。
(……硬い……!)
この、新たに召喚されたウホ・サセロの眷属2体……捕縛こそ出来たが、纏う筋肉の量も質も半端ない。火花の鋼糸がある程度までは肉に喰い込むものの、切断までは至らないのだ。
(下手をすればこの2体……主たる邪神自体に匹敵する強さを……!?)
嫌な予感が溢れ出る火花だが、それをさらに加速させるものを目の端に捉える。ウホ・サセロ自体もまた、妖しく腰を振って火花たちの方へと歩み寄ってきていたのだ。
(このレベルの敵を3体……!? それはまず過ぎる……!)
火花が反射的にスーツの胸ポケットに手を伸ばしたのと、ウホ・サセロが急な瞬動で彼女たちとの距離を詰めたのは、ほとんど同時だった。
「さあ、小娘! 少年を我に渡せぇっ!!」
「させるかっ!!」
「……ぬっ?」
火花の指が胸ポケットより弾き上げたのは『記憶消去用ペンライト』。本来はUDC事件に巻き込まれた一般人の記憶を改竄する為に用いられる道具である。
――だが、使い方次第ではオブリビオン相手にも通じないわけではない。
火花が口で咥えたペンライトから閃光が迸る。それは、至近距離からウホ・サセロの目を焼いた。……そのまま数秒間停止したウホ・サセロ。唐突に回れ右をした。
眷属であるはずの兄貴とオネェを見詰める彼の邪神の目は、熱い……。
「うぉぉ! 我は、我はもう堪らんぞぉおおおおっ!!」
「ヌ、ヌォオオオオッ!?」
「あぁぁああああんっ!?」
両腕を幾百本もの触手へ変容させたウホ・サセロが、鼻息荒く兄貴とオネェへ襲い掛かった。筋肉が触手と絡み、軋み、うねって、野太い嬌声が跋扈する。丸太のような脚が爪先までピンッと天に伸ばされ、山脈の如く盛り上がった肩が小刻みに痙攣していた……。
「……絵面が凄いな。……酷いな……」
記憶消去用ペンライトに、自前の催眠術も駆使してウホ・サセロの認識に干渉した火花。向こうが己の眷属へ欲望の限りをぶつけている隙に、抱え直したタカヒロと共に距離を取った。……曲がりなりにも相手は邪神、認識阻害も直に解けてしまうだろうが……ひとまずは時間を稼げたはずである。
一息吐いたところで……ふと火花は、先の発酵少女たちとの戦いの最中のことを思い出した。
(……タカヒロ君はまだギンギンなのだろうか?)
ぶっちゃけた話をすると、他の女性猟兵とも色々とあってギンギンの度合いがアップしております。
それを確認した火花は、暫し悩む。
(意識は取り戻していないが……今後のことを考えると処理した方が良いのだろうか?)
……それは、何とも言えない。
「……今なら私にも余裕がある。ここは、手で……」
己の五指を動作確認のようにワキワキと蠢かせ、火花は意を決する。
――いざ……!
成功
🔵🔵🔴
カイム・クローバー
これが期待の正体って訳ね。口を開くまではマトモかと思ったんだぜ?ころなが予知を見た時点で怪しい気配はあったのによ…。想像以上だわ。俺は多分、半年の猟兵生活で一番ディープな体験してると思うね。
【SPD】
うげぇ…俺、あんなのに近付きたくねぇんだけど。距離を取って魔銃で攻める。こんな接近戦が別の意味で危険な奴、初めてだわ。【二回攻撃】と【一斉発射】で射撃しながら紫雷の銃弾【属性攻撃】を撃ち込む。イカに対しては背後回り込みって事だが…幸い、銃は二本。【範囲攻撃】を利用してUC。銃を左右真横に構えて回転しつつ、周囲一帯に弾幕を撃ち込んでいくぜ。
俺にそういう趣味はねぇんだ。大人しく骸の海で一人で逝ってろ。
「――たまには、自分の眷属たちとヤるのも乙であるな!」
いい汗を掻いたという感じで爽やかな笑みを浮かべるウホ・サセロの後ろで、全ての穴を蹂躙された筋骨隆々な兄貴とスキンヘッドのマッチョオネェが霞んで消えていく……。
他の猟兵の計略に嵌まり、自身の眷属たちと一戦を交えることになったウホ・サセロ、むしろ心身共にリフレッシュされた様相であった。
……その一部始終を目の当たりにし、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は絶望的な表情になる。
「うげぇ……俺、あんなのに近付きたくねぇんだけど」
……それは、この現場に居るほとんどの猟兵の共通の思いかもしれない。
「口を開くまではマトモかと思ったんだぜ? ころなが予知を見た時点で怪しい気配はあったのによ……。想像以上だわ。俺は多分、半年猟兵生活で一番ディープな体験してると思うね」
……何というか、申し訳ない。
天からの詫びの声を背景に、それでもカイムは『双魔銃 オルトロス』を抜く。猟兵として、UDCの便利屋Black Jackとして、ここでオブリビオンに背を向ける選択肢はカイムには無かったのだ。
色々と危機感を漲らせつつ、カイムは後方へバックステップする。そのままオルトロスの銃口をウホ・サセロへ照準、銃声を轟かせた。
「ぬっ……!?」
ウホ・サセロとて強大なる邪神、直線的な銃撃など見切って躱そうとするが……紙一重で掠めた銃弾から紫雷が迸り、ウホ・サセロの身を揺らす。カイムが得意とする雷の属性を帯びた弾丸は、邪神にも充分に通じる電力・電圧を秘めていた。
間髪入れず、同様の弾でカイムは畳み掛ける。
「……こんな接近戦が別の意味で危険な奴、初めてだわ」
とにかく、ウホ・サセロに距離を詰められてはまずいと、それだけは防ぐ為にカイムは銃の連射を止ませない。……けれど、肉体を紫電と弾丸で抉られながら、彼の邪神は不敵に笑っていた。
「貴様の初めての一つを貰えるとは、光栄だな!」
「その言い方マジでやめろ!?」
「だが……我もこのままでは終わらんぞ!」
嫌悪感をありありと滲ませるカイムに向けて、ウホ・サセロは豪奢な装丁の本を開く。
(――来やがった……!)
禍々しき本の内より召喚されたのはダイオウイカを思わせる巨大な霊体。彼の邪神の厄介な眷属。胴体部分に男性の笑顔を貼り付けた異形の軟体動物の霊は、霊であるが故の物理法則を無視した機動で、カイムの背後へ回り込もうとする。
とはいえ、その存在をカイムは予期していた。対策も、戦術に織り込んでいたのである。
(幸い、俺の銃は二挺。それを利用すりゃ対応策はあるってね!)
「『弾代はツケとくぜ! 特注品だから味は保証してやる!』」
腕を左右に広げ、双魔銃をそれぞれ真逆の方向へ向けて構えたカイム。その身体が独楽のように横回転を始めた。同時に、オルトロスの顎から紫の雷を纏う弾丸が豪雨の如く射出される。
「ぬっ……くっ……!?」
まさに、『銃撃の狂詩曲』と呼ぶに相応しい銃弾の狂乱。カイムを中心にした50m近い半径の空間に弾丸と稲妻が乱舞する。……或いは、殺意の台風か? その勢力圏に呑まれたウホ・サセロと人面巨大イカの霊が、着弾と感電の衝撃で踊る、踊る、踊り狂う。
……だが、如何にオルトロスほどの名銃でも、弾切れは避けては通れない。双魔銃が弾倉内の全てを吐き出し尽くしたところで、カイムを起点とした暴嵐は一旦終息を迎える。
人面ダイオウイカの霊は、弾丸とそれが纏う稲光に吹き散らされたか、既に居ない。対して、ウホ・サセロは……身体の前面に無数の銃創を刻みながらも、その顔には一つの傷も無かった。変わらず、唇の端を吊り上げる。
「……実に良い、激しい攻めだった! 惜しむらくは我の尻に一発も届かなかったことだが……。あれほどの衝撃……もしも尻に当たっていたらと思うと怖くもなるが――期待感に胸がはち切れそうにもなる……!!」
あれだけの攻撃を喰らってもなお、変態性を全く揺るがせないウホ・サセロに、カイムは心底辟易した様子で吐き捨てる。
「俺にそういう趣味はねぇんだ。大人しく骸の海で一人で逝ってろ」
「無論、イクとも! だが、一人ではないな! 骸の海にもまた、我の胸を高鳴らせてくれる良い尻の持ち主たちが山ほど居る! いずれは彼の者たちとも熱く! 激しく! 尻を! 魂を! ぶつけ合いたいと考えているぞ!! ――しかし、その前に我は今、貴様に興味津々だ。貴様の尻に興味津々だ! 邪神をひり出した少年の尻の前に、貴様の尻を堪能してやる……! ありがたく思え!!」
「何一つありがたく感じねぇよ……!!」
ウホ・サセロの精神が削られる弁舌の間に、カイムはオルトロスへ弾丸の補充を終えた。
(こいつには絶対に負けられねぇ……。負ければ、俺は何もかもを奪われる! 本気で何もかもをだ!!)
全身に立つ鳥肌を嫌というほど感じ、冷や汗を垂らすカイム。気を抜くと震えそうになる両手を気合いで抑え付けると、再び『銃撃の狂詩曲』の構えに入った。
……脳裏を過ぎるのは、婚約者の面影……。
(必ず、綺麗な身体で帰る――必ずだ!!)
またも、雷鳴を孕んだ銃弾の暴風雨が戦場に吹き荒れる。
猟兵たちと邪神の戦いは、荒天の如く激しさを増していくのだった……。
成功
🔵🔵🔴
アイ・リスパー
「アナとか掘るとか言ってますけど
敵は土木工事の神様か何かでしょうか?」
まあ敵の正体が分かればこちらのもの。
タカヒロさんから注意を引き離しましょう。
「私と穴の掘り合いで勝負です!
より深くまで掘った方の勝ちです!」
触手を構えた工事の邪神。
どうやら誘いに乗ってくれたようですね。
ですが触手程度で穴掘り勝負に勝てると思ったら大間違いです。
こっちには秘密兵器があるのですから。
「オベイロン!
ロボットアームのパワーを見せてあげましょう!」
電脳空間の入り口を開きますが
おかしいですね、オベイロンが出てきません……
「って、なんで触手がこっちにっ!?」
スカートに潜り込んでくる触手を見て
ようやく勘違いに気付くのでした。
ウホ・サセロ――男の尻に熱い情熱を傾ける邪神と猟兵たちの熱戦が繰り広げられる中、やや遅れてその戦場に駆け込んだ少女が居た。『電脳天使マジカル☆アイ』……もとい、アイ・リスパー(電脳の天使・f07909)である。
思い返せば、発酵少女たちとの戦いが佳境に入った頃から姿が見えなくなっていたアイ。彼女がどうして一時的にこの戦場を離れていたかといえば……身に纏う魔法少女衣装を見れば答えは明白だった。
「うぅ……服を直していたら遅くなってしまいました……」
発酵少女たちの強酸性の乳酸液によって散々に溶かされてしまっていたはずのマジカル☆アイのコスチュームだが……現在は新品同然の形に戻っていた。彼の衣装は、アイがユーベルコードにて変身することで現れる物。つまり、一旦ユーベルコードを解除して発動し直せば、元通りの物が再び出現するのである。
それを実行すべく、アイは人気の無い場所まで離脱していたのであった。
その程度のこと、この場で行えば良いと思われるかもしれないが……そうはいかない理由がアイにはある。何せ彼女……マジカル☆アイへの変身を解除すれば、全裸になってしまうのだから。
流石にそれを男性猟兵も居るこの場で行う度胸は、アイには無かったのである。人通りの無い路地の物陰まで行ってそこで……とやっていたら、ここまで時間が掛かってしまったのだった。
諸々の事情からすっぽんぽんでマジカル☆アイに変身していたことが、ここに来て祟っていたのである……。
……そのせいで、アイはウホ・サセロの登場からここに至るまでの彼の邪神と他の猟兵たちの激闘を全く見ていない……。
――それが此度のアイの不幸の始まりだった……。
「まさか……我が(タカヒロの尻の)穴を掘ることにここまで苦労することになるとは……! 侮れぬな、貴様ら!!」
「……アナとか掘るとか言ってますけど、敵は土木工事の神様か何かでしょうか?」
ウホ・サセロのアレな言動を、そんな風に勘違いするアイ。そして、勘違いから突っ走るのもまたアイであった。
(まあ、敵の正体が解ればこちらのもの。タカヒロさんから注意を引き離しましょう)
猟兵として、一般人であるタカヒロをオブリビオンから守るという崇高な使命感の下、アイは堂々とウホ・サセロの前に立つ。
「……ぬっ? 何だ、小娘……? 我は女に用など――」
「私と穴の掘り合いで勝負です! より深くまで掘った方の勝ちです!」
「…………は?」
アイの持ち掛けた勝負に、ウホ・サセロはキョトンとした顔になった。
「……何をわけの解らぬことを? 大体貴様、掘ろうにも掘るモノが無いであろう?」
ウホ・サセロのこの台詞は、正しくは「貴様(アイ)は女だから、股間に男のイチモツは無いだろう? それで尻を掘れるわけがあるか」ということだったのであるが……ウホ・サセロを土木作業の邪神と勘違いしているアイは、全然別の意味として受け取っていたのだった。
「私を見た目で侮らないで下さい。私が本気で穴を掘ったら……凄いですよ?」
「何っ……?」
自信たっぷりのアイに、ウホ・サセロの顔に戸惑いが滲んだ。
「待て……此奴、女であろう? ……女のはずだ。しかし、この自信は何だ……? まさか――本当に生えているとでも? 我が眼力をもってしても見破れぬほど完成度の高い男の娘だとでもいうのか……!? いや、だとしたら、その尻が如何なるものか、興味は確かにあるぞ……!」
……暫し、アイには聞こえぬ音量で呟き続けていた彼の邪神は、意を決した様子で顔を上げる。
「よかろう。その勝負受けてやろうではないか!」
(どうやら誘いに乗ってくれたようですね……)
アイもウホ・サセロも、お互いに誤解と勘違いを重ねたまま激突の瞬間を迎えた。
「『フハハハ! 我が真の姿を見るがいい!』」
「…………!?」
高笑いと共に自身の本性を解放したウホ・サセロに、アイは絶句した。途轍もなく、途方もなく巨大な触手の塊……。そのサイズを前にすれば、このUDCアースの普通の動物の中で最大の体躯を誇るシロナガスクジラすら霞むレベルであった。――まさに触手の怪獣。
けれど、アイは臆病風を吹かせそうになる己の心を叱咤する。
(大丈夫ですっ。触手程度で穴掘り勝負に勝てると思ったら大間違いです。こっちには『秘密兵器』があるのですから)
その秘密兵器を頼りに、アイは自分を奮い立たせた。
「『マイクロブラックホール生成完了。空間歪曲率固定。電脳空間アクセスゲート開放します』――『オベイロン』! ロボットアームのパワーを見せてあげましょう!」
自身が管理する電脳空間より、圧倒的な性能を誇る機動戦車・オベイロンを呼び出そうとするアイ。彼のオベイロンのロボットアームは万能であり、穴掘り程度ならドンと来いなのだ。それこそが此度のアイの秘密兵器にして勝算だったのだが……。
「……。…………。………………。あれ……? おかしいですね、オベイロンが出てきません……あ。ああぁぁああああああああっっ!?」
……そこで、やっとアイは思い出した。オベイロンは、先立っての大変臭い『正気を奪う赤い果実』からその臭いをこっ酷く移されており、洗浄するまでは電脳空間にも入れられないと少し離れた路地の前に待機させておいたのである。要するに――今、アイがオベイロンを召喚することは不可能なのだった。
勝利へのプランが一瞬で崩壊して呆然とするアイ。――そんな彼女へ、ウホ・サセロの触手が殺到した。
「――って、何で触手がこっちに!?」
「何を言っている、誘ったのは貴様であろうが!」
困惑するアイの両腕を瞬く間に触手で縛り上げ、宙吊りにするウホ・サセロ。さらに、彼の邪神の触手はアイの細い脚を這い……パニエで膨らんだ魔法少女衣装のスカートの中まで入り込んできた。
……アイは、大人しげで可憐な容姿の持ち主であるが……実のところ、そのカラダは大変経験が豊富である(豊富に『なってしまった』というのが正しいところではあるが……)。故に、ウホ・サセロの性癖の看破までは流石に出来ないものの、今自分へと向けられている触手が『そういう目的のもの』であることには、いくら何でもアイも気が付く。
「……あ、穴を掘るってそういぅ……!? や、やああああああっ!!」
「そう暴れるな。――とっておきを喰らわせてやろうというのだ」
そう言ってウホ・サセロがアイに見せ付けたのは――アスパラガスのような形状をした触手だった。当然ながら、太さと長さは数十倍、数百倍にも達しているが。
「……えっ? あ、あの……ちょ、ちょっと待って下さいぃ!? 太さもさることながら、そんな尖ってゴツゴツしたモノを挿入されたら……本当に壊れちゃいますからぁ!!」
「――試してみなければ、解らぬだろう?」
「いぃやぁああああああああああっっ!?」
白いロングヘアを振り乱していやいやとするアイのスカートの中へ、アスパラガス触手は滑り込んだ。そして――何ということか。実はマジカル☆アイのコスチューム、下着が含まれていないのである。即ち、今のアイはノーパンで。アスパラガス触手がアイの愛らしいヒップの、その谷間の奥に隠された小さなクレーターに到達することを阻む物は、一切存在しなかったのだ……。
「う、うっ…………ぅぁああああぁぁああああああああああああああああ~~~~~~~~~~っっ!?」
……アイは、こじ開けられ、ねじ込まれ、押し広げられ……アスパラガス触手をお尻で受け入れてしまったのだった。
「はぁ……うっ……あぅっ……!?」
猛烈な異物感に喘ぐアイへ、ウホ・サセロは容赦が無かった。
「これは、想像以上に良いモノであるな……そらっ、そらぁっ!!」
「ひゃぁぁうぅぅううううううううううっっ!?」
アスパラガス触手が、力強くアイのお尻を出たり入ったりした。どんどん奥へと入り込み、抉り回されたかと思ったら、ズルズルと引き抜かれて……。アイはビクッ、ビクンッと打ち震える。
「あぁ、あぁっ、やぁぁっ……! へ、変な感じがします……!!」
……これは、流石というべきか? 邪神として、人間の寿命など遥かに凌ぐ年月を尻と向かい合ってきたウホ・サセロ。その尻に関する手管は絶妙で……アイのお尻から、気持ちのいい所を次から次へと発掘していく。
「あ、あ、あっ、あっ、あっあっあっあっあっあっあっあっ――駄目ぇぇええええええええええ~~~~~~~~~~ぁぁああああああああああ………………っっ!?」
……やがて、尻邪神の熱く強烈な迸りを腸内へと炸裂させられて、アイは果ててしまった。全身から力が抜けて……ユーベルコードすら霧散して、アイの肢体からマジカル☆アイの衣装も消え失せる……。
「………………はぇ?」
で、アイの生まれたままの姿がウホ・サセロにも晒されたわけだが……。
「――ぼひゅぅぅううううううううううううううううううううっっ!?」
ウホ・サセロの触手という触手が見るからにヤバい痙攣を起こした。中には弾け飛んだり灰と化して崩れ去るものまである始末。真の姿を晒しておく余力も無いように元の美男子の姿に戻ったウホ・サセロは、それだけでは治まらないように地に突っ伏し、膨大な量の血を吐いた。……血涙までも流して、アイを睨む。
「き、貴様……女ではないか!? 何というおぞましい真似をさせるんだ、おぇぇ……!?」
「……わ、私のお尻をあんなにも弄んで……何ですかその態度は!? うわぁぁああああああああああんっっ!!」
今日一番のダメージを受けて息も絶え絶えなウホ・サセロの喘ぎと、アイの大泣きの声は、それからしばらくの間続いたのであった……。
大成功
🔵🔵🔵
彩波・いちご
あの……私、かえっていいですか?
ダメですか
そうですか……(がくり
2章の段階で予想はしていましたけど、これ私が一番あっちゃいけないタイプの存在ですよね
私の性別もバレているっぽいですし…
男の娘だからって私は性自認は普通に男なんですよっ
……絶対死守します、尊厳とかいろいろと
暑い夜とかノーサンキュー!
そんなヨコシマな欲望ごと、全部まとめて凍らせてやりますっ
【幻想よりきたる魔法の演者】にて、大量の雪の結晶のオブジェクト、鎌実はもちろん氷の魔法を召喚、全部まとめてぶつけますっっ!
触手とか、自分でも使いますけども、絡まれたくはないですからねっ!
※アドリブネタ絡み被害等歓迎。でもいろいろ尊厳は死守で!
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
しつこくしつこくやってくるー
その名はうつろぎ!(ドーン
やっぱり自爆
ただひたすら自爆
なので速攻で自爆するね
特撮ヒーローもので良くある爆破演出的な扱いで良いですよー
皆の活躍に華を添えやしょう
ただしボスは巻き添えに
技能:捨て身の一撃を用いてのジバクモードによる自爆
対象は敵のみ
自爆後はお空のお星さまになっておくよ
「う」の字の爆発煙があがることでしょう
「――殺す! 女共は皆殺しにしてやる! そして男たちは一人残らず我がハーレムの一員にしてくれる!! うぉぉりゃぁぁああああああああああ!!」
……ちょっと色々とあってブチ切れてしまったウホ・サセロ。目から血の涙を流し、口から血の涎を吐きながら大暴れ中であった。
それを目の当たりにし、彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は切実な表情を浮かべる。
「あの……私、帰っていいですか? ……ダメですか。そうですか……」
運命からの返答に、狐耳も狐尻尾もへにゃんとへたらせていちごは項垂れた。……気持ちは本当によく解るが、いちごとて猟兵。これが猟兵稼業のつらいところである……。
それでも、いちごは主張したかった。
「……これ、私が一番遭っちゃいけないタイプの存在ですよね? 私の性別もバレているっぽいですし……」
配下の発酵少女たちでさえ、外見的には美少女以外の何者でもないいちごの本来の性別を看破したのだ。その上位者たるウホ・サセロには余裕だろう。……寸前にとんでもないミスをかましていた気もするが。
「男の娘だからって、私は性自認は普通に男なんですよっ」
だから、いちごは強く誓うのだった……。
「……絶対死守します、尊厳とか色々と」
……だが、そんないちごを燃える眼光に捉えたウホ・サセロが迫りつつあったのだった……。
「おぉぉぉぉとぉぉぉぉこぉぉぉぉのぉぉぉぉ娘ぉぉぉぉ! 今度こそ本物だな!? 本物だなっ!? 口直しに貴様の尻を頂く! 頂くと我が決めた!!」
「全身全霊全力でもって拒否します!!」
ウホ・サセロの何やら涙に濡れた咆哮を、きっぱりシャットアウトするいちご。
「何故だ!? 我は上手いぞ? 巧みだぞ? 天国イキは保証するぞ!? だから我と熱い夜をー!!」
「熱い夜とかノーサンキュー!」
ダンスの如き軽やかな足捌きで、突っ込んできたウホ・サセロをどうにか回避するいちご。
けれど、ウホ・サセロはならばと己の眷属を召喚した。――ダイオウイカの如きサイズの人面イカの霊。霊であるが故の物理法則を無視した機動は、これまでにも幾人もの猟兵たちを翻弄してきている。
それへと対抗する為、いちごも己のユーベルコードを振り絞った。
「『ここからは私の魔法のステージです! Object Stand-up!!』」
高らかにいちごの声が響き渡った刹那――夏の夜空よりあり得ないはずの雪の結晶が舞い降りてきた。徐々に数を増やし、周辺の風景を白く染め上げていくそれらは、地上の混沌を覆い隠そうとする天の慈悲にも見える……。
――否、それはむしろ怒れる天からの裁きであった。
降り落ちる雪の結晶はいつしか風に舞い、吹雪と化す。吹雪は強さを増して……やがて、極北に吹き荒れるブリザードの如くなった。
雪混じりの風に青いロングヘアを踊らせながら、いちごが凛と叫ぶ。
「そんなヨコシマな欲望ごと、全部まとめて凍らせてやりますっ!!」
周囲の全てをホワイトアウトさせるレベルの雪と氷が、ウホ・サセロを眷属の軟体動物霊ごと押し包んだ。
いちごのユーベルコード・『幻想よりきたる魔法の演者』は、現在戦闘中の対象に有効な属性の魔法、それを具現化したビジョンを召喚する。即ち、この氷雪の魔法はウホ・サセロに、その眷属に有効なはずであった。
事実として、巨大人面イカの方はこのユーベルコードによって急速にその活動を弱めている。……イカは別に寒さ自体に弱いわけではないが、暑くなるにせよ寒くなるにせよ急激な温度変化は苦手とするという。それは霊体と化した、異形の人面イカにも通じる常識だったようである。
……では、ウホ・サセロの方には……?
「――はぁっくしょぉんっっ!! ……んんっ! ……ふむ? 頭が冷えたのである……」
全身に霜を纏わり付かせた彼の邪神からは、先までの苛烈さは感じられないようになっていた。本人も言っているように、沸き立っていた頭の熱が冷えて冷静さを取り戻した模様である。それは、無作為に被害が拡大することが無くなったという意味では確かに有効であったと言えよう。……だが……。
……実際にウホ・サセロが負ったダメージは、如何ばかりか……?
「ふっふっふっ……では、この冷えた身体は貴様の体温で温めてもらうぞ……!」
「嘘、何だか事態が悪化していませんか!?」
凍った身体をパキパキと鳴らしつつ、ウホ・サセロがいちごへと距離を詰めてくる。その白い腰布の内から、アスパラガスのような形状の触手が蠢きながら顔を出した。それに危機感を増したいちごが、じりじりと後退を始める。
「触手とか、自分でも使いますけども、絡まれたくはないですからねっ!」
「ほぅ、貴様も触手を使うのか……」
いちごの言葉に、ウホ・サセロがやけに優しげな声を零した。
「我は『原初の触手神』。全ての触手は等しく我が子と言える。だから――」
原初の触手神がいちごへウインクする。
「――パパと呼んでくれても良いのだぞ?」
ゾゾゾゾゾゾォォッ……!!
……その瞬間、いちごの全身に鳥肌が立った。全身の毛穴という毛穴から嫌悪感が噴き出すような……そんな感覚に囚われる。
「――あっ!?」
しかし、それがいけなかった。ウホ・サセロの四肢が解け、数多の触手と化し、震えで動きが止まったいちごへと群がってきたのである。いちごの服の襟元から、スカートの裾から触手が滑り込み、陶磁器のように滑らかな肌へぬめりのある液体をなすり付けていく。……特に、腋の下とか内股とかを執拗に……。いちごの口から悲痛な声が上がった。
「ぃいやぁああああああっ!? 汚い! 気持ち悪いっ! 怖いっっ! いやああああああっっ!!」
その上、ウホ・サセロの触手はいちごの狐耳までさわさわと撫でてきて……いちごは少し本気で死ぬかと思った。
……しかし、その表現は実際のところは正しくなかったのである。――本当の本気でいちごが死ぬかと思うのは、ここからであった。
「フハハハ……は? んん?」
ほくそ笑んでいたウホ・サセロが、唐突に首を傾げて視線を下に向けた。涙目のいちごも、釣られて同じ方向を向く。両者の足元の地面にはいちごが降らせた雪が積もり、凍り付いて、薄氷の如くなっていたのだが……そこに墨で書いたように黒く、文字が浮かんでいたのである。
『う』
『つ』
『ろ』
『ぎ』
……そんな四文字が。
その四文字を、ウホ・サセロの足が変化した触手がパキッと踏み抜いてしまう……。
……いちごの『幻想よりきたる魔法の演者』は、真実として限りなく今回のウホ・サセロとの戦いに有効であったのだ。
しつこく、しつこくこの現場にやって来た虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)。彼の漆黒の身体は、いちごの巻き起こしたブリザードによって攫われ、この地点へと運ばれてきていたのである。ホワイトアウトを起こすほどの雪と氷に隠されて……。
それどころか、その雪と氷で凍て付いたうつろぎ。それは彼が内包するエネルギーが凝縮・圧縮され、臨界状態で固められる結果を生んだ。そして、邪神によって踏まれたことにより、非常に不安定に安定していたその状態は解き放たれる……。
――あまりにも大き過ぎる音は、そもそも音として認識出来ないことをいちごは身をもって知った。
いちご以上にウホ・サセロが驚いた結果、触手が緩んでそこから逃げ出せたことはいちごの僥倖であったが、それでもその幸運を頼りにせず、いちごは直後に身を翻して駆け出す。
爆風と呼ぶには生温い勢いの風がいちごを追ってくる。チラリと振り返ったいちごの目に、爆炎という表現が陳腐に感じるほどの火が天を焦がしているのが見えた。
うつろぎを、ウホ・サセロを中心とした大破壊は、秒単位どころか瞬間単位でその被害を拡大させていく。足元がふらつくのは爆音で三半規管をやられてしまったからなのか、それともうつろぎの爆発が本当に地面を揺らしているからなのか、それすらもいちごには解らなかった。
ただ、一点。解り切っていることもある……。
「――私、今回死にそうな目にばかり遭っていませんか!?」
天へと向かって、いちごは思い切り絶叫する。……そこに、星になったうつろぎが素敵な笑顔(?)を浮かべているのが見えた気がした……。
――一応言っておくと、うつろぎのユーベルコード・『ウツロギ(ジバクモード)』はいちごを対象から外しており、仮にいちごが爆心地に留まっていたとしても傷一つ負うことは無かったはずである。
……それでも、恐慌に耐えてあの場に居られる人間など居ないと思うが。
なお、後に遠方より観測した者たちが語ったところによると、今夜星空を紅蓮に染め上げた大爆発は、『う』の形の煙を上げていたという……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
わたしだって貴方なんかの相手なんてしたくないわよ!ねぇ…ホントにもう帰って良いかしら?…ダメ?うぅ…なんでこんなのばっかり…ころなには絶対後でこの埋め合わせして貰うわ…!
引き続き眷属の子達と参戦…
【ブラッディ・フォール】で「ヒーラーこそ究極の魔法使い」の「フェンネ・ホーリーウッド」の力を使用。【シードバルカン】と【バインドバイン】で敵を攻撃・阻害しつつ【ホーリーウッド】で回復支援するわ
眷属の子達には各自連携して敵の眷属の排除を指示。
みんな、存分にやりなさい!
ホラ、男性陣と戦いたいみたいだし、今回は援護に回るわ。幾らでも癒してあげるから、存分にヤられて来なさい♪(ヤケ)
「男性陣、可哀想なのー…」
稲宮・桐葉
先に繰り広げられた…戦い…?
うう…世の中には知らぬままの方がよい事があると言うが…禁断の扉を開いてしまったような気がするのじゃ…
しかし、あのトマトの臭いが鼻について消えぬな…
公園から随分離れたのじゃが…?
む!?敵の大将のお出ましか!
大した美男じゃが…うむ…見逃してくれるなら帰ろうかの
いやいや!タカヒロ殿を救い邪神を倒しに来たのじゃった…!
ふむ…男性猟兵が体を張って敵を誘惑…いや…引きつける間に、タカヒロ殿を確保。更に男性に(色々)体を張ってもらい隙を誘い討ち取るのはどうじゃろう?(キリッ)
じょ…冗談じゃよ?
真の姿を解放し真面目に戦うのじゃ…
皆がお疲れのようならUCで癒すぞ
アドリブ連携歓迎じゃ!
……数分前に上がった爆炎がようやく鎮火し、その爆心地にかなり焦げたウホ・サセロが転がっているのを見て取って、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)と稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)は揃って声を上げた。
「さぁ、敵は倒れたわ。帰りましょう、今すぐに!」
「これでこの事件も無事解決じゃな。皆、お疲れ様じゃ!」
「……そうは問屋が卸さないのー……」
回れ右しようとした二人に、フレミアの眷属たる雪花が嘆息混じりにツッコミを入れる。
……全身から黒々とした煙を燻らせながらも、ウホ・サセロはまだ生きていた。頭を振り、必死で我が身に起きた事態を把握しようとしている。
「な、何が起きたのだ……? あの四つの文字は一体……?」
……そして、そんな邪神の双眸は嫌々とこちらを見据えるフレミアと桐葉を捉えたのであった。理不尽な大爆発に対する怒りもあったのか、ウホ・サセロは乱暴に吐き捨てる。
「……本当にしつこいな、貴様たちは!? 我は女など眼中に無い、見逃してやるから失せろと何度言えば解るのだ!?」
その言葉は、フレミアの堪忍袋の緒を切ったらしい……。
「わたしだって貴方なんかの相手なんてしたくないわよ! ねぇ……ホントにもう帰って良いかしら? ……ダメ? うぅ……何でこんなのばっかり……。ころなには絶対後でこの埋め合わせしてもらうわ……!」
怒りの矛先をグリモア猟兵に向けないで頂きたい。
対して、桐葉の方はこれ幸いとこそこそとこの場を後にしようとしていた。
「あれが敵の大将か。顔は大した美男子じゃが……うむ……見逃してくれるなら帰ろうかの?」
そんな桐葉の巫女服の袖を、機巧大狐ちゃんが噛んで必死に止める。
「……じゃがのう、大狐ちゃん? 先に繰り広げられた……戦い……? あれのこともあるしのう。うう……世の中には知らぬままの方が良いことがあるというが……禁断の扉を開いてしまったような気がするのじゃ……」
発酵少女たちとの一件も声に上げ、桐葉はここは帰るべきなのだと主張を変えない。――だが、そんな桐葉の目の端が、気を失ったままのタカヒロを掠めた。それは、桐葉の胸に大事なことを思い出させる。
「――は! いやいや! そうじゃった!! タカヒロ殿を救い、邪神を倒しに来たのじゃった……!!」
流石に、一般人を引き合いに出せば桐葉にもやる気が出てくるらしい……。
その勢いのまま、桐葉は作戦も立案した。
「ふむ……男性猟兵が身体を張って敵を誘惑……いや……引き付ける間にタカヒロ殿を確保し、安全圏まで移動させるのじゃ。さらに男性に(色々)身体を張ってもらい、隙を誘い討ち取るのはどうじゃろう?」
キリッとキメ顔で言ってのける桐葉に、フレミアが同意した。
「ホラ、向こうも男性陣と戦いたいみたいだし、わたしは今回は援護に回るわ。いくらでも癒してあげるから、存分にヤられてきなさい♪」
――しかしながら、それらの案を支持する男性猟兵など一人も居ない。
「男性陣、可哀想なのー……」
「……じょ……冗談じゃよ?」
男性猟兵たちに同情的な雪花に、桐葉は明後日の方を向いてそう答え、フレミアも深々と溜息を吐く。
――何より、ウホ・サセロがもう待ってはくれなかった。
「『出でよ! アン・ナ・コト写本に封じられし眷属よ!』」
ガチムチの兄貴マンとスキンヘッドのマッスルオネェ。それらが具現化し、フレミアと桐葉たちの方へ疾走してきたのである。
「……皆、各自連携して向こうの眷属の排除をなさい。――存分にやりなさい!」
ようやく少しばかりのやる気を出してきたフレミアの指示を受け、彼女の眷属たちがウホ・サセロの眷属たちと衝突する。
そうして、フレミアと桐葉はウホ・サセロ自身へと向き直った。
「『骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!』」
「仕方ないのう……真の姿を解放し真面目に戦うのじゃ……」
フレミアが過去に撃破したオブリビオンの能力を再現するユーベルコードを発動し、その服装が彼女にしては地味めのローブへと変容する。桐葉の方も周囲に蒼い狐火を渦巻かせ、姿を真のそれへと変じさせた。
フレミアの眷属たちとウホ・サセロの眷属たちの眷属対決は、本来ならウホ・サセロの眷属側に分があっただろう。しかし、自分たちの高い実力に任せて完全に個々で戦う兄貴とオネェに対し、フレミアの側の眷属たちは、かつての邪神のエージェントが吐息で牽制を仕掛けたところに、ハート・ロバーよりキューピッドの矢が飛んで相手の出鼻を挫く。邪悪エルフが汚染で敵を蝕んだところへ、エビルウィッチの火の玉や雪花の吹雪が舞い、確実にダメージを重ねていった。その上、各々のメンバーにどうしても出来てしまう隙も、ぽんこつ女王様がかつての部下の霊たちを呼び出して埋めていく……。
主の指示通り、お互いの長所を活かし合い、短所を補い合うことで、フレミアの眷属たちは実力の何倍もの成果を発揮していた。
眷属たちが頑張っているのなら、負けてはいられないのが主人というものである。
「アルダワ魔法学園の地下迷宮で戦った『フェンネ・ホーリーウッド』の力よ。存分に味わいなさいな」
「くっ……!?」
弾丸の如き速度で雨あられに飛んでくる植物の種から、ウホ・サセロは這う這うの体で逃げ回っていた。
「はああっ!」
そこに、ムラサマブレード片手に桐葉も切り込んでくる。妖刀による鋭い斬撃を、邪神は紙一重で躱すしかなかった。
本来の実力を考えれば、あまりに消極的なウホ・サセロの行動であるが……今は仕方がない。兄貴とオネェは強力な眷属であるが――それの召喚中は、ウホ・サセロはまともに戦えなくなってしまうのだから。……強大な力であるが故の代償である。
それを見逃してやるほど、フレミアも桐葉もお人好しではない。
「貴方の触手よりも、あの子のこれの方が厄介だったわね」
「なっ……!?」
半壊したアスファルトの地面を突き破り、無数の植物の蔓がウホ・サセロを縛り上げた。指一本動かせなくなった邪神の放つユーベルコードの気配が、急速に弱まる。
「ムラサマ、大狐ちゃん、頼むぞ!」
その、ウホ・サセロの大いなる隙に、桐葉はムラサマブレードと機巧大狐ちゃんと共に渾身の一撃を打ち込んだ。ムラサマの刃と機巧大狐ちゃんの爪が邪神の胸に十文字を刻む。
「がっ――がああっ……!?」
ウホ・サセロの顔右半分が崩れ、触手へと解けた。美形の男という擬態が保てないほどに、傷が深まったのかもしれない。――けれど、追撃の機会は得られなかった。フレミアの放ったフェンネの蔓は巻き付けた対象のユーベルコードを封じる。それの影響を受けて、ウホ・サセロの眷属は消えており……結果、その分の制限を脱した邪神は、ユーベルコードを用いない力技でどうにか蔓を解き、全力で猟兵側から距離を取ったのであったから。
それに……自分の許へと馳せ参じた眷属たちを、フレミアは気遣ったのである。連携を駆使したとはいえ、本来は格上の相手との戦いだったのだ。彼女たちの疲労は濃い……。
「フェンネの『ホーリーウッド』……こんな形で役に立つなんてね」
本質は優れたヒーラーであったフェンネの高速治療の魔法にて、フレミアは自身の眷属たちを労う。次いで、桐葉が申し出た。
「お疲れのようならわらわのユーベルコードで癒すぞ」
そう言った桐葉の周囲に桜の花びらが舞う。
「『これより舞いしは生命の息吹を言祝ぐ舞い。八百万の神たちよ我が舞い奉納たてまつる。なにとぞ我らに幸をもたらし賜れ』」
桐葉の神楽に伴い、神気に満ちた桜吹雪が辺りへと舞い散る。それを浴びたフレミアの眷属たちが、またフレミア自身も、身体の底から活力が甦ってきた。
……だが、どうしてか彼女たちは一様に微妙な顔をするのだった。
「……しかし、あのトマトの臭いが鼻に付いて消えぬな……。公園から随分離れたのじゃが……?」
鼻を擦る桐葉へ、フレミアの眷属たちは目配せをし合う。
「ねぇ……言ってあげたら?」
「いくら何でもハードルが高いのー……」
「下手なことを言って傷付けたら……」
「あのね、その刀と狐のロボットが――もがもが」
「……やめておきましょう。そっとしておくのが救いだと思うわ……」
自らの眷属たちへそう言って、フレミアはさりげなく鼻と口元をハンカチで隠す。
……先の悪臭の化身たる『正気を奪う赤い果実』との戦いで、振るう妖刀と相棒のロボット狐にその臭いを移された桐葉。少しずつ、だが確実に、その臭いは桐葉自身も蝕みつつあった……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アリス・セカンドカラー
ワンダーラビリンスで発酵少女製のキマシタワーを建設。この邪神に対抗するには彼女達の妄想パワーを借りなければ足りないでしょう。
少女達の妄想パワーで時間稼ぎ用の生贄を想造して囮にするわ。囮が掘られてる間に悦楽の狂宴で寄生触手マーラ様を想造して自分に擬似的なナニを構築。そして赤い魔糸、マインドジャック、情欲の炎で理性を蒸発させれば性別を誤認してくれないかしら?
ヴィガーイーターとサキュバスライフの2回攻撃によるアブセナティダンスで抜かずの18連戦を目指すわ。掘っても掘られても別の方法でいたぶられても
寄生させたマーラ様のおかげでパワーアップしていくわよ♡
精力が過剰吸収になりそうなら階層増築で消費するわ。
蒼汁権現・ごずなり様
む、こやつは、兄上様だけでは格が足りぬの。我等も神とはいえまだまだ若輩だからのぉ。仕方なし、質より数で勝負ぞよ。
ゴッド・クリエイションで繁殖力を高めたタカヒロを創造するぞよ。尻か、尻がいいのか、ならば尻に拘って造形するゾヨ。
さぁ、産卵プレイで繁殖し続けるタカヒロ達に搾りつくされて腎虚に陥るがよいわw
およ?兄上様ダウン?タカヒロ達も繁殖が間に合わぬ?……ですよねー。
と、とにかく他の猟兵が精神を立て直す時間は稼げる筈じゃ。腐っても邪神じゃからなそうろげふん一戦一戦が短いということもあるまい。いや、回数と量で勝負するタイプかも知れぬがどちらにせよ一戦が短いということはあるまい。
村雨・ベル
ぶはーっ!!(鼻血)
何ということでしょう これはまさに神!
そして繰り広げられる阿鼻叫喚もまた神!
なんですかこの原稿が進んじゃう素敵空間は
私こと村雨ベルはエルフの不可視化で姿を消し
邪魔にならないようにこの恥美的な光景を後世に残すべく
原稿にいそしんでしまいますよー
たまにポーズとか仕草に文句言ったり
邪魔する人を一瞬現れて蹴り飛ばし、また消えて最後までこの戦いが語り継がれるものになるように頑張っちゃいますよ!
えっ 帰ったらころなちゃんが怒ってそう?
うー しょうがないですねー
溜息つきつつ邪神を後ろから羽交い絞めにして誰かの必殺技でも喰らっていただきましょう
これが俗に言うNTRってやつですね!(違います)
ルナ・ステラ
だいぶ綺麗になりました...
―今度は、臭くなくてよかったですが、変なこと言ってます...
タカヒロさんが漫画のようにならないように助けないとです!
近づきたくないので、遠くから魔法で攻撃しましょうか。
きゃっ!後ろに何か!?
ひゃうっ!耳がこそばゆいです...!
(あぅ...耳元で変なことを囁かれて、詠唱に集中できないよぅ...)
(距離をとらないと!!)
ひゃん!捕まっちゃいました...
いやっ!ぬめぬめします...
えぇ!続きを聞けですか!?
先程の少女たちと違って、わたしには良さがわかりませんってば...
(これ以上は無理です...なのに、逃げられないし詠唱も難しいです...ユニコーンさん助けて!!)
猟兵たちからの度重なる痛撃に、顔の半分が触手へと解けたウホ・サセロ。それをどうにか美貌へと修復して、最早完全に笑みを消した激怒の表情で猟兵たちへ怒号を放つ。
「いい加減にしろ、貴様ら! 全ての触手の父にしてパパたる我に、何たる不敬……! 許さんぞぉ! 尻だ、美しき男の尻を持ってこい……!!」
怒れる大いなる邪神の姿に、蒼汁権現・ごずなり様(這い寄るごにゃーぽ神・f17211)は双子の兄たる混沌権現の方のごずなり様と共に厳しい表情を浮かべていた。……なお、兄のごずなり様は引き続き腐女子が喜びそうな美男子モードである。
――そのような姿でこの場に居れば、そうなるのは必然であった。ごずなり様(兄)は、ウホ・サセロの標的となる。
「びぃぃけぇぇぇぇいの男っっ!! ようやく、ようやく見付けたぞ! 色々と口直しさせろぉ!!」
「……っ!? おにぃ!!」
まだここまでの力を残していたのか……一瞬で間合いを詰めてきたウホ・サセロに、ごずなり様(おにぃ)はごずなり様(妹)の横から弾き飛ばされる。その先に待ち構えていたのは、人面ダイオウイカの霊。笑みを湛えるイカの唇が、冒涜的な愛を混沌のごずなり様へと囁いた。
「我が主の攻めはいつになく苛烈であった。まだほとんど解れてもいない後ろの穴に、滾るに滾って天を衝くモノを破城槌のように打ち込む。そなたの城門は一気に打ち抜かれ、赤々と血を流した。だが、そんなことはお構いなしに、主は己の欲望を大軍の如くそなたの中へと雪崩れ込ませる……」
人面の軟体動物が創作した男×男の物語が、直後に現実のものとなった。追い付いてきたウホ・サセロが獣欲を爆発させたからである。ごずなり様(兄上)が為す術無く受けに回り、ウホ・サセロが攻めて攻めて攻め立てた。……その邪神の頬には涙すら伝っている……。
「あぁ……我が心から求めていたのはこれ! これである! 男の肛門括約筋、サイコー!!」
ごずなり様(♂)の尻に自らの腰をぶつけまくって、ウホ・サセロは歓喜の声を上げた。……とある女性猟兵の奇跡的な奮闘(?)によって精神に大ダメージを負っていた分、感動もひとしおのようである……。
ごずなり様(♀)は、その尊顔に悔しさを滲ませた。
「……む、こやつは、兄上様だけでは格が足りぬの。我らも神とはいえまだまだ若輩だからのぉ。仕方なし、質より数で勝負ゾヨ――」
ごずなり様(蒼汁)のユーベルコードが高まっていく……。
「はぁっ、はっ、はあっ! どうだ、我のモノは良いだろう!? ……ん?」
ごずなり様(お兄ちゃん)と盛り上がっていたウホ・サセロの肩が、いきなりぽんぽんと叩かれた。肩越しに振り返った邪神の目に映ったのは――笑顔のタカヒロ、しかも全裸!
「しょ、少年……? ――はおっ!?」
しかもタカヒロは、ウホ・サセロの尻に躊躇なく突っ込んだのである。――それだけでは済まない。なんと、タカヒロがもう一人現れ、今度はウホ・サセロの唇を奪ったのだから。どころか、また一人、また一人タカヒロが姿を見せ、ウホ・サセロとごずなり様(混沌兄)へと群がっていった。
辺りは薔薇の花が咲き乱れる花園と化す。
「――さぁ、産卵プレイで繁殖し続けるタカヒロたちに搾り尽くされて腎虚に陥るがよいわw」
ごずなり様(蒼汁妹)の前で、四つん這いになったタカヒロ(全裸)が尻から次々に卵をひり出し、そこから新たなタカヒロたちが孵っていく……。
妹の方のごずなり様は『ゴッド・クリエイション』にて『繁殖力に特化したタカヒロ』を生み出し、それを増殖させてウホ・サセロにけし掛けたのだ。何というカオス……!
「尻にこだわって造形した我がタカヒロ……そう簡単には敗れはしないゾヨ」
そううそぶくごずなり様(双子妹)だが、その表情には余裕が少ない。何せ、他の猟兵との戦いでウホ・サセロが晒した強大なる本性を目の当たりにしていたのであるからして。
「腐っても邪神じゃからな。そうろ……げふん、一戦一戦が短いということもあるまい。いや、回数と量で勝負するタイプかもしれぬが……。と、とにかく、他の猟兵たちが精神やら何やらを立て直す時間は稼げるはずじゃ――」
……だが、蒼汁権現・ごずなり様の展望にそこで亀裂が走る。
混沌権現・ごずなり様が、圧倒的なウホ・サセロの攻勢の前にとうとう気を遣ったのである。
「およ? 兄上様ダウン?」
「フハハハ、もっとだ、もっと寄越すが良い!」
……タカヒロたちもちぎっては投げられる如く掘られ、その身を地面へと横たえていく……。
「タカヒロたちも繁殖が間に合わぬ? ……ですよねー」
それどころか、肉体的疲労は極致のようだが、精神的には充実しまくっているウホ・サセロ。ごずなり様の脳裏に危機感が首をもたげてくる。
……ところで、ここまでの光景を目の当たりにして固まっている少女が居た。ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)である。
「……大分綺麗になりました……」
発酵少女たちから喰らった強酸性の乳酸液を水瓶座の魔法で洗い流し、戦線に復帰した彼女……いきなりのこの有様に、12歳の精神は既にいっぱいいっぱいだった。
「今度は臭くならなくて良かったですが――へ、変なこと言ってます……!」
発酵少女たちに輪を掛けてアレな言動を繰り返すウホ・サセロからルナが目を逸らせば、右に全裸のタカヒロの群れ。左に向き直れば全裸のタカヒロの大群。……ルナの頭から蒸気が上がり始める……。
「タ、タカヒロさんが漫画のようにならないように助けないとです! ……で、でも、あっちにもタカヒロさん、こっちにもタカヒロさん、しかも、は、裸で……!?」
ルナはもう、目を回して気絶する寸前のようだった……。
――そんなルナを余計に追い詰める存在が現れる。
「あなたたちの奮闘は無駄ではなかったわ。わたしの準備は整ったのだから……」
「む、キミは!?」
ごずなり様たちの戦いを受け継ぐ形で戦場に現れたのは――発酵少女たちが組体操のように積み上がって出来た塔であった。彼女たちはお互いにお互いを慰め合い、同時にBL談義に花を咲かせている。もうわけが解らない。その塔の内へと、ごずなり様たちもウホ・サセロも、ついでにルナも囚われる。
迷宮化している塔の内部に君臨するのは、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐海の笛吹きの魔少女・f05202)であった。……あ、この時点で色々と納得。
アリスの精神世界をユーベルコードにて実体化させたこの迷宮の中には、今はその内へと取り込まれた発酵少女たちの腐の思念も満ちていた。それらが――某人気男性アイドルだったり、国民的アニメの人気男性キャラだったり、一部男性猟兵だったりを具現化させる。
彼らは一斉にウホ・サセロへと襲い掛かった(性的な意味で)。
……その時、迷宮の一角がどうしてか紅に染まる。
――村雨・ベル(いすゞのエルフ錬金術士・謎の村雨嬢・f03157)だった。エルフの2レベル呪文だという『エルフの不可視化』の効果で姿を消している彼女、顔を恍惚の表情にして大量の鼻血を流している。
(何ということでしょう……これはまさに神! そして繰り広げられる阿鼻叫喚もまた神! 何ですかこの原稿が進んじゃう素敵空間は!?)
ベルの手元で、光の速さでペンが漫画の原稿用紙を引っ掻いていた。……一体何をやっているのだろう、このエルフさんは……?
(私こと村雨・ベルはエルフの不可視化で姿を消し、邪魔にならないようにこの耽美な光景を後世に残すべく原稿に勤しんでおりますよー)
……それは果たして、今年の夏コミの原稿なのだろうか? 現時点でまだ描いている途中となると、〆切が結構ヤバくなかろうか……?
とにかく、そんなベルの存在は現状誰にも把握されることはなかった。
そして、アリスは実体化させた発酵少女たちの妄想パワーでさらに稼いだ時間を用い、次なる一手を用意する。
「――ひぃんっ!?」
アリスのエプロンドレスのスカートの前面部がめくれ、顔を出したのは――触手が絡み合って構築された極太かつ長大なナニっぽいシロモノ。……うっかり目撃したルナが喉を引き攣らせる。それは、アリスがユーベルコード・『悦楽の狂宴』で出現させた寄生触手であった。愛称は『マーラ様』。それを我が身に寄生させたアリスは、さらにユーベルコードを重ねる。
「ぬぬっ……!?」
200を大きく上回る数の赤い糸がウホ・サセロに絡み付き、彼に身を焦がすほどの情欲の炎を点した。それに加え、目に見えぬ念動力が邪神の脳をハッキングする……。
「お……? おぉっ! 何という我好みの美少年だろうか……!!」
それにより、ウホ・サセロはアリスの性別を誤認した。他の全てを振り払い、アリスへと突貫するウホ・サセロ。彼へ、アリスはカウンターのようにマーラ様を突き出す。
「おっほぉおおおおおおおお! 良いぞ、良いぞー!!」
「……あっ、あぁああああんっ……♪」
マーラ様を尻に突っ込まれたウホ・サセロが、大興奮で腰をくねらせる。彼の強烈な締め付けがマーラ様を介して伝わってきて、アリスは思わず甘く喘いだ。負けまいと腰をぶれるほどの勢いで前後させ、ウホ・サセロを掘削していく。
「あぁ、ああっ、ああああっ! もっとだ、もっと激しいモノを所望するぞ!!」
ウホ・サセロは触手を伸ばしてアリスの腰にそれを巻き付けると、自分の力さえも加えて彼女の前後運動を激しくさせた。火が点きそうなほどの摩擦に、アリスの背筋を快感が這い登る。
勢いを増すウホ・サセロとの行為に、アリスの側には急速に疲労が募っていくが、今の彼女はそれさえもユーベルコードで快楽へと変換していた。その興奮がマーラ様の硬度を、脈動を、今もまた高めていく。目指すは抜かずの18連戦だ。
「はぁ、はぁっ……♪ ――って、あら?」
(そこのポーズは、もうちょっとこうお願いしますよー。あ、駄目駄目、表情はもっとこんな感じで!)
誰かにそんな風にアドバイスされた気がして、アリスは眉をひそめた。……相変わらず不可視状態のベルである。アリスやウホ・サセロのポーズに文句を言いつつ、彼女ははっとした様子で顔を引き締めた。
「もぅ……! 近付きたくないので、遠くから魔法で攻撃します……!」
涙目のルナが、それでも一念発起して魔力を高めていた。健気に、真面目にウホ・サセロを倒そうと動く彼女の意志に涙を禁じ得ないが――それを妨害する輩が。
「「タカヒロの髪を掻き上げ、その耳を露出させた我が主(ウホ・サセロ)は、耳たぶを甘噛みしながら呟いた。『こんな時間がいつまでも続くと良いな……』そのままタカヒロの首筋に我が主(ウホ・サセロ)の口付けの雨が降る。それは鎖骨、胸元とタカヒロの身体を下りていき、やがて腹筋、下腹部、さらにその下へと……」」
「きゃっ! 後ろに何か!? ひゃうっ! 耳がこそばゆいです……!」
振り返ったルナの目に飛び込んできたのは、人面ダイオウイカの半透明の巨体。それが、冒涜的な愛の物語をルナへと囁いたのであるが……。
(……声、二人分したような……?)
訝しむルナ。彼女の認識は正しい――もう一人はベルである。
(世紀の一戦の邪魔はさせません。この戦いが語り継がれるものになるように、最後まで頑張っちゃいますよ!)
本来は、邪魔する者など蹴り飛ばすつもりのベルであったが、ルナが可愛い女の子だったのでそこはサービスとイカの真似をした腐語りによる精神攻撃だった。
お願いですからオブリビオンの撃破の方を頑張って下さい。
……妨害を受けながらも、ルナは何とか打開策を模索していた。
(あぅ……耳元で変なことを囁かれて、詠唱に集中出来ないよぅ……。距離を取らないと!!)
けれど、バックステップしようとしたルナの身が、何かによって拘束される。
「ひゃん! 捕まっちゃいました……。いやっ! ぬめぬめします……」
物理法則を無視した機動で自分の後ろへ回り込んできた人面巨大イカによって……とルナは認識するが、少し待ってほしい。あくまでも霊体に過ぎない彼のイカに、実体のあるルナを本当に拘束出来るのか……?
――はい、そうです。ベルでした。……ぬめぬめするのは、12歳の美少女を抱き締めて大興奮中の彼女の鼻血である。
「「それでは第二章、いってみましょうか!」」
「えぇ! 続きを聞けですか!? 先程の少女たちと違って、私には良さが解りませんってば……」
意気揚々と続編を語り始めるベルと巨大人面イカに、ルナはもう限界を迎えていた。とうとう涙をぽろぽろと流し、心の中で訴える。
(これ以上は無理です……なのに、逃げられないし詠唱も難しいです……助けて――)
そんな切なる少女の願いに、応えるものがあった……。
(『お願い! 浄化の力を持つ聖なるユニコーンさん来てください!』――助けて!!)
――次の瞬間、人面巨大イカの霊体が跡形もなく消し飛んだ。眩い光輝が辺りを席巻する。何事かと視線を向けたウホ・サセロ、アリス、ごずなり様は目撃した。泣きじゃくるルナをその背に乗せた、額より一本の角を生やした白馬の姿を。
聖獣・ユニコーン――その瞳は「お前らもういい加減にしろよ?」という正義の怒りに満ちていた。ルナを落ち着かせるように優しく嘶いた聖馬は、その角から太陽の如き発光を開始する。
「なっ? はっ? 待て……あ、熱い熱い熱い熱いぞっ!!」
その光を浴びて、ウホ・サセロが煙を上げ始める。ユニコーンの聖なる力が、邪神を焼き始めたのだ。……ただ、問題は――同じようにアリスやごずなり様も煙を上げ始めたことで。
「やぁぁ! 熱っ、熱いから! え? 私たち、邪悪認定!?」
「……さもありなんゾヨ!」
それどころか、アリスの精神世界を具現化したこの迷宮も燃えている。浄化の炎に包まれていく世界の中で、ベルは深く溜息を吐いた。……もちろん、彼女も燃えている。
「……えっ? 帰ったらころなちゃんが怒ってそう? うー、しょうがないですねー」
ベルは姿を消したまま、ルナとユニコーンから距離を取ろうとするウホ・サセロの背後に回り込むと、羽交い絞めにしてその動きを封じたのである。
(このまま彼女の必殺技を喰らって燃えて頂きましょう)
「――何か中身の無い人型の炎が我の背後にぃ!? 何だ貴様新たな邪神かお願いします離して下さいぃぃ!!」
想定外の事態にビビるウホ・サセロの声を何処か遠くに聞きながら、ベルは清々しい思いで天を仰ぐのだった。
「そうか……これが俗にいうNTRってやつですね!」
違います。
……そうして、発酵少女たちで築かれたキマシタワーは、ユニコーンに乗って脱出を果たしたルナ以外の者たちをその内に孕んだまま、燃え落ちて崩壊したのだった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月宮・ユイ
アドリブ◎※NGなし御自由に
※身に<呪詛>宿す《機能強化》維持
落としてしまいすみません
(顔赤くしつつ噛まれた箇所を押さえ)
比較的無事なローブの前を閉めておきます
ほぼ裸ローブ状態、痴女同然ではないですか
それも全て彼の邪神のせいですね(八つ当たり)
<第六感>含め知覚拡大<情報収集>しつつ、
<早業・高速詠唱・2回攻撃>召喚し続ける《不死鳥》纏め力溜め
<属性攻撃:破魔の呪詛>強化乗せた全力魔法の一撃を用意
召喚媒介の本ごと残さず焼却してあげます
▼討伐後?
<知識・医術>診断し必要なら不死鳥の回復効果を
これで色々見、感じた事も忘れさせ日常に帰せますね
しかし彼の特殊能力結構危険ですが、後は組織で要監視かしら?
浄化の炎で燃え上がる某猟兵の精神世界の迷宮から、這いずるようにウホ・サセロが脱出してきた。
「……な、何だったのだ、今のは……?」
全身をくまなく焼かれ、ウホ・サセロは完膚なきまでに満身創痍である。身体のかなりの部分が触手へと舞い戻り、美男子の擬態を維持することすら困難であることが誰の目にも明らかであった。
「遺憾……真に遺憾であるが……ここが潮時か。……退くしかなかろう。えぇい、口惜しい! この屈辱はいずれ何倍にもして――」
「――そんな時は未来永劫訪れません」
ウホ・サセロの復讐の誓いを淡々と遮ったのは月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)だった。ヘテロクロミアの双眸を冷たく煌めかせ、傷深い邪神を辟易と一瞥する。
そんなユイの真上に、鳳凰の如き形の猛火が滞空していた。彼女の概念兵装『不死鳥』。増殖し、万物を滅ぼし喰らう裁きの炎にして、全ての存在を癒して浄化する聖なる炎……。それは、果たしていつから召喚され、待機していたのか? 力を溜め込めるだけ溜め込んだ彼のユーベルコードは、最早ウホ・サセロが万全の状態だったとしても防ぎ切れないほどの灼熱と化していて……。
ウホ・サセロが咄嗟に眷属を呼ぼうと本を手にするが――その二冊は開かれる間も無く灰へと変じる。
「召喚媒体の本は焼却しました。次は――あなた自身を、触手の一本も残さず焼却してあげます」
静かに、だが強い怒りを籠めて宣言したユイの直上から不死鳥が飛翔する……。
「わ、我がこのような所で――」
不死鳥の羽ばたきの音にウホ・サセロの声が呑み込まれ――火の鳥が行き過ぎた後に、彼の邪神の姿はその一切が残っていなかったのである……。
……ウホ・サセロが怒れるユイを前に消え去った後、彼女は気絶中のタカヒロを膝枕していた。
「……先程は落としてしまいすみません」
タカヒロには聞こえない謝罪を、ユイはもう一度告げる。
……ウホ・サセロとの戦闘が繰り広げられる最中、ユイはタカヒロを抱えて彼を保護していたのだが……一度気絶から目覚めたタカヒロを、びっくりして落としてしまっていたのだった。タカヒロはそれで再度の気絶状態へ陥り、次はいつ目覚めることやら……。
「……でも、あれはあなたも悪いと思うんです……」
頬を赤らめたユイは、襟元まできっちり締めたローブの胸元を押さえた。……実はタカヒロ、気絶から覚めて朦朧としている状態で、ユイの乳房をかぷっと噛んだのである。その時の衝撃を鑑みれば、ユイがタカヒロを落として後頭部を強打させたことには情状酌量の余地があった。
……その上、タカヒロが噛んだのはユイの胸のちょうど天辺である。普通の人でも敏感なその部分を人一倍敏感なユイが噛まれたのだから、その影響は計り知れない。
(……ちょっと腫れているかも。ローブの生地と擦れて……んんっ……!)
実際に声を漏らすことは、ユイは何とか耐えた。
さて……ローブの生地と胸の頂点が擦れるということは、ユイはその長衣の下にほぼ何も着ていないということに他ならない。
(裸ローブ……裸ローブ……痴女同然ではないですか)
……自嘲して本気で哀しくなってくるユイである。これもタカヒロを守って発酵少女たち相手に奮戦した代償。彼のオブリビオンたちの強酸性の乳酸液は、ユイの袖無しのブラウスも黒いスカートも溶かしまくってくれていたのだから。
「……これも全て、彼の邪神のせいですね」
八つ当たり気味に吐き捨てるユイ。……ええ。要するにそういうことであった。
――ウホ・サセロに、限界も臨界も突破した不死鳥をぶつけたのも。
――それを実現する為の溜めの時間を集中に集中を重ねて乗り越えたのも。
……全ては八つ当たり。
でも、仕方がないのである。ユイだって、羞恥心を感じればその結果として怒る女の子なのだから。
何にせよ、ユイは改めて、今度は癒しと浄化の力に重きを置いた概念兵装・不死鳥を顕現させる。それの翼から降る火の粉を、タカヒロへ……主に後頭部の瘤に向けて作用させた。後ろ頭からの痛みでうなされていた彼の呼吸が穏やかになったのを確認して、ユイはほっと息を吐く。
「これで、色々見、感じたことも忘れさせ日常に帰せますね」
猟兵として、一般人をオブリビオンの魔手から守り切ったことに誇りを感じ、ユイはそう呟く。……とはいえ、懸念点はいくつかあった。
「しかし彼の特殊能力結構危険ですが、どうなるでしょうか?」
尻の穴から邪神を復活させる能力……改めて記すとアレだが、実際に形はどうあれ邪神をああも容易く復活させられる力である。数多の邪神信奉者たちは、タカヒロの存在を知れば喉から手が出るほどに彼を欲するだろう。
「……後は組織で要監視かしら?」
その辺りは猟兵ではなくてUDC組織の領分となる。果たして、タカヒロの今後は如何様なものとなっていくのか、それにユイが思いを馳せた……その瞬間だった。
……タカヒロが薄っすらと瞼を開く。今回も状況が解らない様子で、彼は目線を泳がせた。そして……その先にあったのは、タカヒロ自身が膝枕されているユイの太股、それが伸びているローブの隙間であった。
――人は隙間があれば覗き込む生き物である。タカヒロもそれの例外ではなく……。
「……ひゃああああっ!?」
うっかり思考の海に沈んでいたユイは、その隙を突かれてタカヒロにローブの内へと首を突っ込まれた。思い切り焦った声を上げたのはさもありなん。何せその場所、要は太股の付け根であり……。
ぐりぐりと額を使ってユイの太股をこじ開けるように顔を進めたタカヒロは――唐突に停止する。……一瞬後、生温かい液体がユイの下半身を濡らした。
――タカヒロの鼻血である。
「タ、タカヒロさん~!?」
ユイは、急いでもう一度癒しと浄化の不死鳥を呼び出すのであった。
……なお、追記しておくと、ユイは『一本も生えていない』らしい……。
状況的に、タカヒロはユイの『全てを見た』と推察される……。
大成功
🔵🔵🔵
火奈本・火花
「ひとまずタカヒロ君の処理は終えたつもりだ。苦しそうだったが、これで大丈夫だろう」
(口元の白い何かをペロリ)
本人は安全な場所に避難させておこう
■戦闘
男性猟兵にも色々被害が出ているし、早急に邪神を捕獲か終了させなくてはな
もしかして尻を攻撃すると甘んじて受け入れるのではないだろうか
ヤドリギの蔦での高速移動で奴の背後に回ろう。人面イカも私の背後にくるだろうが、『呪詛耐性』での『捨て身の一撃』でそのまま攻撃する
私的には、お前のようなタイプは受けが似合うな
ヤドリギで手足を束縛し、寄り集めた蔦で尻を攻撃する
一撃で足りなければ『2回攻撃』など、無力化するまで徹底的に責めてやる
女に攻められる気分はどうだ、邪神
他の猟兵たちが此度の事件の事後処理へと移行していく中で、火奈本・火花(エージェント・f00795)は付近のとある路地裏へと入り込んでいた。
「……ああ、そんな気はしていたんだ。咄嗟に道路の側溝、そこからさらに下水道へと逃げ込んで落ち延びたんだろう? なぁ――ウホ・サセロ」
火花に背後から見下ろされ、慄いた視線を向けてきたのは間違いなく彼の邪神に他ならなかった。……とはいえ、マンホールから這い出したその身は何十分の一……フィギュアのようなサイズにまで縮んでいる。ある猟兵の怒りの炎を真っ向から浴びて……その直前にも大きなダメージを受けていたウホ・サセロ。肉体を構成していた触手の大部分を喪失し、弱体化しているのは明白だった。
――今なら、火花一人でもどうにか出来てしまうほどに。
「男性猟兵にも色々被害が出ていたし、早急に捕獲か終了させなくてはな」
そう言いつつ、火花は口元をハンカチで拭い、それでも残った白い何かを自らの舌で舐め取った。その仕草をウホ・サセロが凝視していたことに気付き、火花はうそぶく。
「……タカヒロ君が苦しそうだったから、な。まあ、大丈夫なように処理はしてきたつもりだ。後は他の猟兵に任せてきたから、安全は確保されている。――もう、お前がどうこう出来る余地は無い」
鬼のような形相で睨んでくる……しかし、情けなく後退りして自分から距離を取っていくウホ・サセロに、火花は呆れた風に溜息を吐く。
――直後、火花は再度ウホ・サセロの背後を取っていた。火花のスーツの袖口や襟元から、異様な植物が覗いている。……『ヤドリギ』。火花の身に巣食う、吸血植物であった。それがもたらす高速移動は、今のウホ・サセロの目に捉え切れるものではない。
「私的には、お前のようなタイプは受けが似合うな」
火花がウホ・サセロに向けて翳した手のひらから、ヤドリギの蔦が無数に伸びる。それを操って今のウホ・サセロを捕らえることは、火花にとっては物足りないほどに容易なことであった。
(この邪神……もしかして、尻を攻撃すると甘んじて受け入れるのではないだろうか?)
実はそんなことを予想していた火花だが、生憎その答えは解りそうにない。両腕、両脚、その他身体中をヤドリギの蔦で雁字搦めにされたウホ・サセロには、そもそも抵抗の余地など残っていなかったのだから。
その、小さくなってしまったウホ・サセロへ、彼の邪神の尻の穴へ、火花は寄り集めたヤドリギの蔦を、一息で叩き込む。
苦痛を秘めた、けれど何処か甲高い邪神の悲鳴をBGMに、火花は油断はしないが拍子抜けする己を自覚した。
(……まあ、僥倖ではあったのだろう)
火花が警戒していたウホ・サセロの眷属たち……ガチムチ兄貴にスキンヘッドオネェ、そして、特に油断ならないと考えていた人面ダイオウイカの霊は、召喚の媒体となっていた本を他の猟兵に燃やされたことで、顕現が出来なくなっていたのだから。
真の姿になる力も最早無い、無力極まるウホ・サセロを、それでも火花は攻めて、責めて、攻(責)めまくる。
(無力化するまで徹底的に責めてやる)
そう心に決め、火花はぜひとも訊いてやりたかったその質問をウホ・サセロに投げ掛けた。
「……女に攻められる気分はどうだ、邪神?」
その問いに、ウホ・サセロは返答することすらとっくに出来なくなっていて……。
火花は嘆息混じりにヤドリギへと命じることにした――終わらせることを。
「『お前を捕獲し、収容する事。それが我々の使命だ』」
ウホ・サセロが絶頂するように身体をビクビクと震えさせた瞬間――ヤドリギの蔦が、完全に彼の邪神を呑み込んだ。そのまま自らを急速に集束・圧縮することで……火花が体外へ伸ばしていたヤドリギの蔦は、内部に取り込んだウホ・サセロごと一粒の種と化す。それを、指先で摘んで拾い上げた火花は……。
「……ふん」
――あっさりと、粉々に粉砕して、今回の事件の終了としたのだった。
こうして、一般人の高校生男子・タカヒロの尻の穴より邪神が復活するという前代未聞の事態から始まった一連の事件は、無事にその幕を閉じたのである。
邪神2柱と数多くの眷属を討滅した今回の戦いは、しかし近隣地域へ少なからず被害をもたらした。それの復興に、UDCは組織を上げて奮闘することになる。
――また、邪神を尻の穴から復活させるという恐るべき異能を有するタカヒロは、ひとまずは事件に関する全ての記憶を消去されて日常へと戻されたという。……もっとも、タカヒロの能力のことがUDCアースに数多居る邪神の信奉者たちの耳に入れば、彼の身柄を狙う者はいくらでも現れるだろう。UDCは、タカヒロとその近辺の監視についても並行して行っていくことにしたとのことである。
何にせよ、今回の事件は猟兵たちにも数多くの教訓を残した。『怪しいモノを食べては駄目だ』とか、『臭いに注意せよ』とか、『自分の趣味嗜好を嫌がる他人に押し付けるな』とか……。
……その中でも、特段にこの一点は大事なのだと思う……。
――『お尻は一生付き合っていくものなので、大事に大事にしていきましょう』。
大成功
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