#ダークセイヴァー
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●話の意味は、それを聞く者によって変わる
数ヶ月前、村が1つ滅んだ。
霧が良く出る湖畔にある、小さな村だった。
村が滅びる程度、この世界では珍しい事ではない。
生き残りがいることも、あるだろう。
だが――生き残った子供が救い出されたのみならず、村を滅ぼした『切り裂き魔』が討たれたとなると、珍しいどころではない。
故に、噂が走る。
村人達の間から、村に立ち寄る行商人に。
行商人から、周囲の村々へと。
広まる過程で、いつしか噂の中には『英雄』という言葉が含まれていた。
含まれたまま――彼らの耳にも届いた。
オブリビオン。
人々にとっては希望と聞こえる話でも、彼らにとっては支配体制を揺るがしかねない驚異として喧伝されたのである。
月明かりが闇に包まれた城内を照らす。
『英雄か……本当にそんな連中いるのかね?』
『判ラヌ。ダガ、我ラヲ倒シ得ル力ヲ持ツ者ガイル。ソレハ汝モ聞イタ筈ダ』
響く声は2人分。
『ああ、それは間違いない。だからこそ、興味が湧いたんじゃねえか』
1人は、銀髪の偉丈夫。
『我ハ危機感ヲ覚エル。ダカラコソ、汝ニ種ヲ撒カセタ』
答えるもう1人は――姿が見えない。
無機質な声は、確かにその場から発せられて響いている。だが、この光景を見ている者にその声の主の姿は見えなかった。
『ソシテ、ソロソロ繁栄ガ始マル頃合イダ』
『なら手筈通り、村を滅ぼして来るとするか』
無機質な声に返して偉丈夫が両腕を伸ばす。見るからに筋骨隆々な左右の腕で無骨な戦槌を1つずつ掴むと、軽々と持ち上げた。
『噂の英雄とやら――俺が叩き潰しても構わんよな? 本当の領主様よ?』
『構ワヌ、バジリスクヨ。人間達ニ教エテヤルノダ。英雄ナド、希望ナド幻想ダト。モシモノ時ハ、我ガ全テ喰ラウマデダ』
人々が心のどこかで幻想が現実であれと願うが故に、噂は広まった。
そして支配者達は、幻想を幻想のままにするべく動き出す。
●グリモアベース
「このままだとダークセイヴァーで村が1つ、地図から消える」
集まった猟兵達に、ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)は前置きもなしにいきなり本題を切り出した。
最近、ダーウセイヴァーのオブリビオンの中に、自らの支配体制を揺るがす存在が現れている事に気づいた者が現れていた。
そして中には、斯様な存在を誘き寄せて始末する計画を立てる者もいる。
ルシルの今回の予知も、そんな企みの1つ。
「連中は、猟兵を誘き寄せる、ただそれだけの為に村を1つ滅ぼそうとしている」
その表現は、敵が複数である事を示していた。
「まず先陣切って出てくるのが、バジリスク・ヴァーミリオン。岩をも砕く戦槌を振るう膂力と、石化の魔眼を併せ持つヴァンパイアで、一帯の領主――と思われている」
歯向かう者を正面から叩き潰す事を好む、好戦的な存在である。
「更に、村の周囲の畑の地下に、野菜頭の異形達が潜んでいる。彼らはバジリスクを倒した頃合で動き出す筈だ」
ルシルはそこで言葉を切ると、彼にしては珍しく言い難そうに話を続けた。
「異形達は、バジリスクの配下ではないみたいなんだ。主は別にいる。申し訳ない事だけどね。それが何者なのか、正体が判明していないんだ」
何者かがいるのは、間違いないとルシルは続ける。
「バジリスクと『何者』かが、どこか城内で話している光景が予知で見えたんだよ。なのに、何者かは無機質な声が聞こえるだけで、何故か姿が判らなかった」
そこにいると感じるのに、見えない。判別出来ない。
そんな違和感のようなものがあったと言う。
「敵の策に乗る事になってしまうけれど、手を拱いているわけにはいかない。転移先の村にはね、以前、救って貰った子供等がいるんだよ」
それは廃墟と化した村で、猟兵達が手繰り寄せた命。
「正体不明の敵がいるのも申し訳ないけれど――頼んだよ」
どうか気をつけて、とルシルは転移の準備を始めた。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
今回は、ダークセイヴァーです。
敵は猟兵を誘き寄せようとしているオブリビオン達となります。
3章全て、戦闘です。
1章はボス戦。
敵はバジリスク・ヴァーミリオン。
初戦から強力なオブリビオンです。
2章は集団戦。
敵は繁栄を願う者ども。
3章は再びボス戦となります。
3章のみ、あえて章公開まで敵の正体は伏せてあります。
(投稿者の方にはわかってしまうでしょうが)
舞台は、夜の湖畔の村とその周辺。
当方の過去シナリオ『夜霧幻影』の2章と同じ村ですが、読まずとも全く問題ありません。
今回は戦闘メインですし。
ただ、猟兵の戦い様は、村人の心、精神面に少なからず影響するでしょう。
なお各章ごとに、プレイング受付期間を設ける予定です。
シナリオ内、及びMSページ、ツイッターで告知をしますので、ご確認いただければと思います。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 ボス戦
『バジリスク・ヴァーミリオン』
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POW : 無双壊滅撃
【両手の戦槌の振り回し】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : ヴァーミリオンブラッド
【ヴァーミリオンの血統の力】に覚醒して【朱の戦鬼】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 石化の魔眼
【魔眼の邪視】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:やまひつじ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠天御鏡・百々」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●石橋を作って渡る
その夜も、湖に立ち込めた夜霧が村に昇って来ていた。
コーン、コーン。
何か堅いものを踏む足音の様な音が、その中から響いてくる。
「何の音だ?」
まだ起きていた村人が、その音に首を傾げて霧の湖に目を向ける。
コーン、コーン。
『先に言っとくぜ。お前達に罪はねえ』
近づいてくる足音と共に、低い声も響いて来た。
霧の中から偉丈夫が姿を現す。
『お前達は英雄を知ってしまった。それが真実だろうが偽りだろうが、それ故にこの村は滅びる事になる』
魔眼で石化させた湖の上を悠々と歩いて渡ってきたバジリスクが、淡々と言いながら村に足を踏み入れる。
「バ、バジリスク様……何を」
『諦めろとは言わんぞ。刃向かう事を許可する。お前達に出来る事は2つだ。刃向かうか、いつぞやの様に英雄が救いに現れるのを祈るか――好きな方を選べ!』
突然の言葉に驚く村人達を尻目に、バジリスクは片手の戦槌を1つ、今しがた渡ってきた石の橋へと振り下ろす。
そのたった一撃で石は砕け散り、湖が波立つ。
村を揺らした衝撃が、滅びを告げる咆哮の様に響いた。
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第1章プレイング募集期間は
公開から7/7(日)18時まで、の予定です。
期間中に頂いた分は、内容に大きな問題がない限り採用します。
期間外に頂いた分は、不採用の可能性があります。
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灰神楽・綾
…俺の故郷は買い物に行ってくるくらいの感覚で
村が滅びそうになるねぇ(溜息)
英雄ってポジションは他の人に譲るよ
俺はただこの血気盛んな奴と殺し合いをしにきただけだからね
Emperorで斬る・突くなどの攻撃を仕掛ける
これは当たればラッキー程度で、武器で防がれた場合は
そのタイミングを狙って【紅雨】で召喚した武器達を浴びせる
魔眼は見られただけで喰らうのかな、面倒だね
前動作を感じたら【残像】を発生させつつ後ろに回り込むなど
回避を試みるけどそれでもダメそうなら敢えて喰らおう
「しまった」なーんてリアクションして
俺の動きとUCを封じたと思わせといて
【念動力】でダガーを死角からぶち込むという【だまし討ち】
栖夜・鞠亜
オブリビオンを追っていけば、いつかアイツに出会えるかもしれない。
だから...貴方を倒して、私は前へ進む。
見る限り近接が得意そうね
鞠亜の武器はこれ(L96A1)だから...近づかれたら危険、かも。
なるべく離れて、狙撃[スナイパー]する
1発毎に移動する事を心がけて、急な接近に備える
夜だし霧で視界も悪そう...だけど鞠亜にはダンピールの目がある[視力、暗視]気負わずにしっかり、狙うわ。
距離を置くつもりだから無双壊滅撃にはそうそう当たらないとは思う、けど
狙われたらユーベルコードで戦槌の影から腕を伸ばして
その2つの獲物を切断するわ。
月明りの存在に、運命を託す。
アドリブ歓迎です
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
POW判定*アドリブ歓迎
あなたが何を企んでいるかは存じ上げないですが、
おびき寄せるだなんて姑息に考えるあたりきっと黒幕ではないのでしょう
かの地には縁があるゆえ、その性根叩き折らせてもらうのです
【存在感】を発揮して大ぶりな攻撃を誘うのです
他の得物ならともかく、こと槌の軌道ならば
【見切り】反撃に移ることも可能なはず
仮に技巧で上回られても、結束の力でねじ伏せてやるのです
予感、悪寒。ジズは、ナイトフォグに勝るとも劣らない強敵だとみとめるのです
その上で……敗北するのはそちらだと、断言します!
煌天宮・サリエス
暗き夜は、1発の銃弾と眩い光によって昼に変わる。
「英雄ではないが、聖者ならばここにいる。」
そう、光と共に黒翼の天使は空から現れるのだ。
私の光は奇蹟の光。そこにいるだけで、自分を含む他者を強化し、敵を弱体化させる聖なる光。
登場と同時に【先制攻撃】を行う。【破魔】の力をこめた【誘導弾】を放ち、右肘の関節の【部位破壊】を狙う。
その後、敵の攻撃を十分に避けれる距離感を保ちつつ、先制攻撃と同じ行動をとる。
相手の行動の鈍化を確認できたら、武器を『イーラの劫火』に持ち替え、高速移動の速度を活かした一撃を放ち、そこから近接戦闘に切り替えます。
さあ、あらゆる災厄を叩き潰す奇蹟を彼らに見せようか
アドリブ・共闘歓迎
稲宮・桐葉
※アドリブ・連携歓迎じゃ!
危ない時はすぐ距離を取れるように『機巧大狐ちゃん』に騎乗した状態で物陰に潜み様子を窺うぞ
ばじりすくが村人相手に気勢を上げておる隙を突いて弓で狙撃じゃ
卑怯上等!不意打ちを狙うのじゃ
わらわは英雄などと大層な者ではないのでの!
狙撃の成否にかかわらず居場所を悟られたら牽制の矢を射て離れるぞ
お主の様な脳筋に迫られては恐ろしゅうて敵わぬわ
何せわらわはか弱き乙女じゃからのぅ
『機巧大狐ちゃん』に騎乗しながら矢を射かけ敵を翻弄したいところじゃの
敵に隙を作り味方の攻撃の補助をするのじゃ
味方の被害が大きいならば我が身の安全を確保の上、UCを使用し癒すぞ
UC使用の為、無駄な疲労は避けるのじゃ
ペイン・フィン
……真逆、またこの村に、来ることになるなんて、
しかも、こんな理由でなんて……ね。
転移後に即座にコードを使用。
敵の姿が、1舜でも見えれば、それで良い。
即座に転移して、ナイフ“インモラル”を振るおうか。
その後は、村人へ攻撃が行かないように、こっちに意識を向けるように、
コードを使って、ヒットアンドアウェイを意識しながら、攻撃を重ねるよ。
……別に、そんな、大層な存在じゃ無いけど、
今は、名乗ろうか。
……自分は、ペイン。
猟兵、ペイン・フィン。
……この村を、救いに来たよ。
真守・有栖
嗚呼、成る程
道理で聞き覚えのある名だと思ったわ
朱の戦鬼
また会ったわね?
最も、違う個たる貴方は知らぬでしょうけれども
狼が牙を剥く
月に狂いて己を晒す
えぇ、今宵こそ
幻に呑まれることなく
己がままに。喰らい尽くして、あげるわ
真守・有栖。……参る
抜刀。光閃
延びる斬光を魅せ、己が牙を示し
手の内を明かせば、笑みを浮かべて
瞬閃
先と同じく、太刀振る舞うは狼牙の連閃
夜霧を裂く烈光が迸り、幾重もの刃を煌めかせ
戦鬼と成り、振るう鉄槌。轟く豪打
餓狼と成り、振るう光刃。瞬く光閃
後先いらず。一歩も引かず
手負うも太刀止まらぬ
刃と己を削りて、さらに前へと
咆哮
刃に込めるは“断”の一意
光刃、連閃
渾身を込めた連撃にて、朱鬼を断つ……!
織銀・有士郎
ここがダークセイヴァーか……聞いていた通り、殺伐とした世界だな。
まぁ、観光している余裕は無い訳だが。
(あれはヤバいでござる!? 逃げるでござる!?)
狸神様の気持ちは解らなくもないが……【野生の勘】なのか、逃げたらマズい気がするんだよなぁ。
敵がヤバいのも何となくわかるが、ここは勇気を出して戦う必要がありそうだぞ?
躊躇いを振り切るように狸神様に乗って【ダッシュ】で接敵。【早業】にて斬りつける。
石化の魔眼が一番厄介そうだが、他も大概ヤバそうだな……。
敵の動きを【見切り】って回避するか、無理そうなら【武器で受けて】ダメージを減らすか……【野生の勘】にも頼る必要が出てきそうだ。
アルトリウス・セレスタイト
※アドリブ歓迎
魔眼使いだそうだな
面倒なことだ
自動起動する真理で無数の己を盾と纏い、更に自身の個体能力及び干渉の精度と規模を最大化
その上で真正面から歩み寄ることで態度による挑発
力量に自信ありとみえる。故に乗ってくるだろう
真正面から向かうのは、正面から来させるため
力を誇示することは支配の手段でもある筈
此方が自信ある素振りで向かえば、解りやすく潰そうとする可能性は高いだろう
その後は何で仕掛けてくるにせよ、その動きを見切って、魔眼・統滅で消去
不意討ちでも構わんと言えば構わんが。正面からこっちへ来てくれる方がやりやすい
真理の盾は目標の魔眼への保険程度のつもりで積極的に頼りはしない
リュカ・エンキアンサス
初っ端から強そうなのがいる
いつもどおり
気をつけていこう
なるべく距離をとり、他の猟兵たちを援護するように射撃
村の建物なんかで遮蔽が取れるようなら、そこから撃つ
同じ場所から打ち続けるのは危険なので、ある程度したら場所を移動。なるべくどこから攻撃しているか、悟らせないようにする
強い一撃よりは、協力して着実に削っていくイメージで
攻撃が届かない範囲で行動したいけれども、飛んでくるようなら絶望の福音でよけながら距離をとる
お望みどおり、来てあげたよ、顔は出さないけど
…あの重たそうなのと、正面から殴りあうのは避けたいからね
遊びに付き合う気はない。こっちは淡々と、仕事をするだけだから
あなたは死ぬ覚悟を、して
鷲生・嵯泉
何れはこうした事態が起きるやもしれん事は想像に難くなかったが
いざ実現となると些か複雑な心境にもなるものだな……
だからと云って成すべき事を違えはせんぞ
刃に手を滑らせ妖威現界にて対処
お前が鬼に変じるならば、此方も其れ相応に変じさせよう
見切りと戦闘知識、第六感で攻撃は躱すか衝撃波での軽減を図り
間に合わねば武器受けで弾く
多少の傷は激痛耐性と覚悟で無視して前へ出る
フェイントからのカウンターで、怪力に鎧無視攻撃も乗せ
死角からの攻撃を叩き込んでくれよう
……此れが又同じ危機を呼ぶのかもしれん
しかし其れだからと云って、見過ごす事等出来よう筈も無い
何れは此の連鎖をも立ち切ってみせよう
私の刃は其の為に在るのだから
アヤネ・ラグランジェ
誘いには乗る質でネ
村が潰れる?そんなことはどうでもいい
珍しく暴れたい気分なんだ
招待したつもりかも知れないけど
付き合ってもらうのは君たちの方だネ!
戦闘開始
相手の魔眼が厄介だネ
こちらはUCを封じておこう
遠距離からPhantom Painで攻撃しつつ
電脳ゴーグルで敵の弱点を探る
弱点の見当がついたら武器を持ち替え
対UDCライフル「Silver Bullet」
こいつを一発お見舞いする
●鉄火場にて
「ここがダークセイヴァーか……聞いていた通り、殺伐とした世界だな」
潤いの乏しい暗く乾いた世界を、織銀・有士郎(織りなす銀の一振り・f17872)が物珍しそうに見回す。
「ここは『まだ』いい方だったと思うよ」
村人にハッタリをかましたのはこの辺りだったかな、と見覚えのある景色を見やりながら、リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)が有士郎に告げる。
「そうなんだ? けどまぁ、観光している余裕は無い訳だ」
リュカの言葉に、有士郎は残念そうに首を横に振った。
――起きろ!
――急いで逃げるんだ!
薄くかかった夜霧の中から、そんな声が聞こえてくる。
既に大半の村人が起きているようだ。
だが、突然のバジリスクの襲撃に、逃げる動きが乱れている。
「どうやら軽く混乱しているようだな。夜に突然の襲撃となれば無理もないか。鎮めた方が良いだろう」
「ジズも手伝いましょう。この地には縁があるゆえ」
聞こえる声と足音から状況をそう読み取った鷲生・嵯泉(烈志・f05845)に、ジズルズィーク・ジグルリズリィ(虚無恬淡・f10389)が頷いた――その瞬間。
ドゴォンッ!
爆発みたいな音がして、すぐそこの湖から岩が跳ね上がった。
「……俺の故郷は買い物に行ってくるくらいの感覚で、村が滅びそうになるねぇ」
思わずそれを目で追ってしまった灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)が、ため息混じりの声を漏らす。
「ま、こっちも買い物に行く感覚で――殺し合いと行くか」
人畜無害そうな笑顔を浮かべたまま物騒な事を口走って、綾は迷わず岩が跳ねた方へ向かって進み出す。続いて、1人、また1人と猟兵達が動き出す。
「しばし任せるぞ」
「すぐに向かうです」
嵯泉とジズは、ますます逃げ惑うであろう村人達を纏めに、別方向へ駆けていく。
「遥か彼方より我が声に応えよ……」
その背中を見送る有士郎の傍らに、愛らしい3m超のまめだぬきが現れる。
「ん? それは狸――じゃの?」
妖狐が狸の妖を喚ぶ。その様子にこちらも妖狐である稲宮・桐葉(戦狐巫女・f02156)が思わず首を傾げる。
「ああ、狸神様だ。そちらのは――狐?」
「うむ。機巧大狐ちゃんじゃ」
有士郎と桐葉がそれぞれ、狸神様とキツネ型ロボの上に乗ると、先を行く猟兵達の後を追って進み出す。
「救済式――聖星願光、起動」
そんな中、煌天宮・サリエス(復讐謳いし星の聖者・f00836)が黒翼を広げて空に浮かび上がっていた。
「星に願いを我が身に光を、祈りの光は奇蹟を起こす」
サリエスの羊馬の星煌痕から溢れ出すは、祈りの光。
翼の先に至るまで、全身に眩い光を纏ったサリエスが、光の尾を引く速さで猟兵達の頭上を飛び越え、一気にバジリスクの頭上に飛来する。
「英雄ではないが、聖者ならばここにいる」
『ほう? そんなもんを持ってるって事は……どうやら当たりだな!』
昼と見紛う眩しさの中、サリエスが向ける銃口に気づいたバジリスクは、喜色を露わにその顔に笑みを浮かべた。
「私の光は奇蹟の光。甘く見ているのなら――後悔するぞ?」
『ハッ! させてみろ!』
サリエスの神煌銃から放たれた輝く弾丸に、バジリスクが戦槌を振り下ろす。
だが、戦槌は空を切った。
『ぬっ!?』
戦槌が叩いた地面が砕けると同時に、あり得ない軌道を描いた光弾がバジリスクの右肘を撃ち抜く。
『痛みを感じたのは久々だ!』
「肘を砕くつもりだったのだがな?」
撃たれた右腕で戦槌を担ぎ直すバジリスクを、サリエスが見下ろす。
「嗚呼、成る程。道理で聞き覚えのある名だと思ったわ」
光に照らされたバジリスクの姿をみとめて、真守・有栖(月喰の巫女・f15177)がこくりと小さく頷いた。
あの姿、忘れる筈もない。かつて戦った事のある相手だとはっきり見える。
そう。この瞬間、バジリスクの姿は光に照らされ、何に遮られる事無く、まるで舞台の上でスポットライトを浴びる様に見えていたのだ。
(「……真逆、またこの村に、来ることになるなんて、ね」)
その姿を見ながら、ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)は胸中で呟いていた。
(「しかも、こんな理由でなんて……ここで戦う事になるなんて、ね」)
呟いたその姿が、掻き消える。
罪背負う者に逃げ場など無し――ペインのその力の効力の1つは、視認している対象の元への瞬間移動。
『っ』
バジリスクの背中に小さな痛みが走る。痛みで気づいた時にはそこにいたペインが、拷問用多機能ナイフ“インモラル”を翼に突き立てていた。
『なっ……てめえ、どっから湧いて出た!』
「さあね」
振り向いたバジリスクが振るう戦槌が届く前に、ペインの姿が赤い血霧の様なものに覆われ、溶けるようにして掻き消える。
結果、バジリスクはまだ向かってくる猟兵に、背中を晒す形となった。
この機を、狙撃手達が逃す筈もない。
●弾雨
「標的補足。照準――捉えた」
栖夜・鞠亜(人見知りな・f04402)細い指が、照準をバジリスクにピタリと向けた狙撃銃『L96A1』の引き金を引く。
ターンッ!
甲高い銃声が響いて、弾丸がバジリスクの背中を撃ち抜く。
鞠亜は駆けながらボルトを引いて次弾を装填――即座に照準を合わせ直し、射撃。
『狙撃か……そっちか!』
二発目に撃たれた瞬間、バジリスクが戦槌を振り上げた。
無双壊滅撃。
ただ戦槌を振り回す。それだけなのに、槌では本来届かない筈のところまでその衝撃が迸り、建物を瓦礫に変えていく。
「そうそう当たらないとは思う、けど。やはり近づかれたら危険ね」
銃の射程を超えるほどではないにせよ、警戒はしておいた方が良いだろう。
鞠亜は更に距離を取りながらボルトを引いて新たな弾丸を装填し、再び照準を合わせ直して、射撃。
『っ……だが、少し見えたぜ』
撃たれながら、バジリスクはその瞳を血玉の様に紅く輝かせた。
「っ」
とっさに鞠亜が飛び出した茂みが、灰色に変わって崩れ行く。
『外したか。が、動いたのが見え――っ!?』
タタタタッ!
違う方向から、今度は複数の弾丸がバジリスクに浴びせられた。
(「お望みどおり、来てあげたよ。顔は出さないけど」)
胸中で続けて、リュカは改造アサルトライフル『灯り木』の引き金を引き続ける。
『おいおい、何人出てきやがんだ』
浴びせられる弾丸を頼りに、バジリスクが再び戦槌を振り回す。その衝撃が幾つかの弾丸を蹴散らし、建物を壊してく。
だが、撃ちながら動き続けていたリュカは既にそこにはいなかった。
『いつまで隠れてねえで、出てこい! 村が滅んでも良いのか!』
吠えたバジリスクの瞳が再び紅く――。
「この数は予想外かナ?」
その視線の前に、アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)が銃を構えて身を晒す。
『やっと出てきやがったな』
「ん? 村が潰れるのは、そんなこと僕はどうでもいい」
ニィっと笑うバジリスクに、アヤネはしれっと告げる。
「ただ誘いには乗る性質なのと――珍しく暴れたい気分なんだ!」
アヤネが銃口を向けたアサルトライフル『Phantom Pain』から、タタッ、タタッと短い間隔で銃火が瞬き、弾丸がバジリスクに浴びせられる。
「招待したつもりかも知れないけど、付き合ってもらうのは君たちの方だネ!」
『ごちゃごちゃうるせえぞ!』
バジリスクの瞳が輝く。石化の魔眼。その邪視が、アヤネを射抜いた。
「っ……予想通り、動けない程じゃないネ!」
急に身体が重くなったような感覚を覚えながら、アヤネは『Phantom Pain』の銃口だけは逸らさなかった。
『石化しないだと!?』
湖すら石化させる邪眼も、猟兵を石化させるには至らない。
それでもユーべルコードを封じる事は出来ていたが、この射撃はアヤネ自身の技量によるものだ。止まる筈がない。
鞠亜とリュカも、時折互いの位置を変えながら射撃を重ねる。
『石化が完全には通じないとはな。だが、そこならこっちは届くぜ!』
雨と撃ち続けられる弾丸を耐えながら、バジリスクがアヤネを狙って両手の戦槌を振り下ろした。
迸る破壊の衝撃――その前に、黒衣の姿が割り込んだ。
もうもうと立ち込める土煙。それが収まった時――その瞳と同じ藍の燐光を周囲に漂わせたアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、無傷でそこに佇んでいた。
「槌の間合いとしては大したものだが、威力はその程度か?」
悠然と告げながら、アルトリウスが歩き出す。
『貴様……何だ、その力は』
「さあな? 言ったところで、お前には判らんだろう」
訝しむバジリスクを正面から見据えて、アルトリウスは淡々と返す。
「お前の槌でも砕けぬ力がある。それだけのことだ」
自信に満ちたアルトリウスの姿は、バジリスクの目には、ぼやけているようなブレているような、そんな感じに見えていた。
今のアルトリウスは、自分という盾を無数に纏っている。
とは言え、アルトリウス自身、それが無敵でないことは判っていた。実の所、先の槌の一撃で盾は幾つかが叩き壊されていたのだ。
「力を誇示することは支配の手段でもあったのだろう?」
それでも、アルトリウスは見透かした様に言いながらバジリスクに正面から歩み寄っていった。
桐葉は機巧大狐ちゃんの背中に乗って屋根の陰からバジリスクを見下ろしていた。
その両手は既に、木材と竹を合わせ藤で巻いた重藤の弓を構えている。
キリリリリッ――限界まで引かれた弓弦が鳴らす小さな音が耳朶に届いた瞬間、桐葉の指が弓弦を離した。
その弓の名は、雷上動。
此処と違う世界で、その最初の使い手は百歩離れて柳葉を射抜き、やがて鵺なる妖怪を討ったとされる名弓と同じ名である。
桐葉の放った矢は弓の名に恥じぬ弓勢で、バジリスクの肩に突き刺さった。
『ちぃっ! 今度は弓か! 遠くからうざってえ!』
(「卑怯上等じゃ! わらわは英雄などと大層な者ではないのでの!」)
苛立ちを露わにしたバジリスクの声に胸中で返し、桐葉は機巧大狐ちゃんを走らせながら第二、第三と、矢を番えては立て続けに射掛けていく。
「ま、時間稼ぎと牽制は十分じゃろ――なあ、狸の狐よ?」
桐葉の呟きは、ズドドドドッと言う大きな獣が駆ける足音にかき消された。
●護れるもの
「よし。此処ならば、しばらくは大丈夫だろう」
猟兵達が転移してきた村外れのすぐ近く。戦闘音が遠い場所で、嵯泉の前には、何とか集められた村人達が不安そうにしていた。
(「良かった。無事ですね」)
「ジズは先に戦線に加わってます」
その中に、いつかの夜、此処ではない滅びた村で見た幼い姿がいるのを確認して、ジズルズィークは踵を返した。
この場所を、廃墟と化したあの地と同じにしない為に。
「もう判っているだろうが、此の村は戦場になる」
残った嵯泉が、口を開く。
何れはこうした事態が起きるやもしれない。
その可能性を想像しなかったわけではなかったのだ。
「それはもう、避けようがない」
現実となったそれを口にすれば、些か複雑なものを感じる。嵯泉はそれを隠して彼らに告げた。
「既に家を失った方もいるだろう。村にこれ以上の被害は出さぬとも言えぬ。だが――人は、命は、奴らには奪わせはしない。ここで待っていて欲しい」
その言葉に、返答はない。だが、異論も上がらない。
村人達の沈黙こそが、無言の肯定と懇願だった。
●刃林
(「あれはヤバいでござる!? 本当に逃げないでござるか!?」)
「狸神様の気持ちは解らなくもないが……逃げたらマズい気がするんだよなぁ。だからここは勇気を出して、頼むぞ」
3m超の愛らしいまめだぬき――ビビる狸神様を背中の上で宥めながら、有士郎は白鞘の刀に手をかける。
狙撃手達の上を狸神様が飛び越えた瞬間、少し錆びた刃が鞘走る。
キィンッ!
その銘と同じ鈴鳴るような音を立てて、有士郎の刃と戦槌がぶつかり火花を散らす。
「っ! 狸神様、跳んで!」
膂力では押し負ける。衝突の瞬間に野生の勘でそれを悟った有士郎の声で、狸神様が跳び上がる。
狸の腹の毛を掠めた戦槌が、ガキンッと斧のような刃とぶつかった。
狸神様のすぐ後ろに付いていた綾の『Emperor』。
『狙撃が止んだと思ったら、次は不意打ちか?』
「英雄らしくないとでも言いたいのか? だったら、残念だったな」
長柄をぐるんと回し、斧刃の反対の槌を戦槌に叩きつけながら、綾が口を開く。
「俺はただ、血気盛んなお前と殺し合いをしにきただけだ!」
隠した戦闘狂の気質を露わに、綾は『Emperor』を振り回す。
斬って、突いて、打って。得物の特製を活かし繰り出す三種の攻撃は、しかし2つの戦槌に悉く弾かれ届かない。
「ハハッ! お前すごいねぇ!」
明らかな力量差。その力の差こそが、綾を興奮させる。
「どの子で切り裂かれたい?」
嗤う綾の周囲に、その興奮が喚んだ大小様々な20の刃が現れた。
『どれもいらねえよ』
ギラリと、バジリスクの瞳が紅く輝く。綾を射抜いた邪視の力が、放たれようとしていた大小様々な刃の力を失わせる。
「しまった!」
力を失った刃がバラバラと地面に落ちて散らばるのを見て、綾が舌を打つ。
『ぶっ潰れろ!』
「なーんてな」
バジリスクが戦槌を振り上げたのを見て、綾は笑った。手首の動きだけで抜いたダガーを、念動力でバジリスクへ矢の様に飛ばす。
『うぉっ!』
驚き目を見開いたバジリスクの腹に、ダガーが突き刺さる。
そこに、光が閃いた。
ガキンッ!
「また会ったわね? 朱の戦鬼」
『月喰』から伸びる光刃で斬りつけた有栖が、戦槌を交差させてその一撃を止めたバジリスクに言い放つ。
「尤も――違う個たる貴方は知らぬでしょうけれども?」
『ほう? いつかどこかで別の「俺」と会ってるわけか』
有栖の言葉に、バジリスクが眉根を上げる。
それでいて生きている――つまり有栖が此処ではない別のどこかで、バジリスクに勝ったと言うことに他ならない。その事実が、火をつけた。
『俺の知らない俺がもう、負けてたわけか。そう言う事なら――正真正銘、全力だ!』
吠えたバジリスクの瞳が朱く輝く。邪視とは違うアカ。
バジリスクの全身を覆ったそのアカイロは、ヴァーミリオンの血統の力。
『さぁて、ぶっ潰されてえのは誰だ』
全身を朱く染めた、朱の戦鬼がニタリと嗤う。
●戦鬼
「待っていたわ、それを」
朱の戦鬼――本気のバジリスクの姿を前に、有栖が笑みを浮かべる。
「えぇ、今宵こそ。幻に呑まれることなく、喰らい尽くしてあげるわ」
ただ己があるがままに。
「真守・有栖。……参る」
『月喰』の刃に込めるは“断”の一意。
振るう烈光は狼牙。光刃連閃。ぶつかるは、双槌の豪打。
光が朱に届く――寸前で、先に届いた戦槌が有栖の身体を高々と打ち上げて遠くへと吹っ飛ばした。
『ガァァァァァッ!』
バジリスクが両手の戦槌を翻し、振り下ろす。
「っ」
「おっと」
その衝撃の威力を見た瞬間、鞠亜とリュカはその場から飛び出した。
直後、2人が陰に隠れていた建物が、浴びた衝撃で半壊する。
「そう。射程まで上がったのね」
「槌であの射程か」
鞠亜とリュカは互いの声が届かぬ場所で、同時に同じような事を呟いていた。
「目立った弱点がなかったのに……更に強くなるとはネ!」
アヤネが外した電脳ゴーグルに映っていた数値は、朱の戦鬼となったバジリスクの戦力が爆発的に上がった事をデータとして示していた。
弱点を探るつもりのそれで、敵の強化を見てしまうとは。
「なに、弱点がないなら作れば良い」
変わらず空で黒翼を広げ、光を纏った弾丸を撃ちながらサリエスが口を開く。
「断言しよう。奴の絶頂は、今この瞬間。これ以上は、ない」
サリエスの言葉は、纏い放ち続ける光と同じくらいの自信に満ちていた。
その声が、聞こえたか。
『ずっとなぁ、眩しいんだよ!』
「させません」
バジリスクが振り上げた戦槌を、ジズルズィークが振り振り下ろした「拷問具」でもある槌が食い止めた。
『何だ、また新手か』
「その性根叩き折らせてもらうのです」
バジリスクが振り回す槌に、ジズルズィークが己の槌をぶつけていく。
「他の得物ならともかく、槌の軌道なら」
ガンッ、ゴンッと重たい金属音が響き、火花が散る。
『やるじゃねえか。だがなぁ――こっちは2つだぜ!』
ガッ、ゴンッ!
バジリスクは叩きつけた右の戦槌でジズルズィークの槌を押さえ込み、そこに左の戦槌を振り上げる。
(「静聴、聖寵。願くは、われらをあわれみ、赦しを与えたまえ」)
避けるのは間に合わない。そう悟ったジズルズィークは、敢えて槌を手放し全身を弛緩させて胸中で、その言葉を唱えた。
次の瞬間、バジリスクの戦槌がジズルズィークの身体を容赦なく吹っ飛ばした。
宙を舞ったジズルズィークが建物の壁に叩きつけられ――その衝撃が抜けた建物だけが粉々に砕け散る。
「予感、悪寒。ジズは、ナイトフォグに勝るとも劣らない強敵だとみとめるのです」
その残骸の上に立って、ジズルズィークはバジリスクに告げる。
『無傷だと……どんな手品使いやがった!』
バジリスクが再び戦槌を振り下ろす。
「その上で……敗北するのはそちらだと、断言します!」
残骸を更に砕いて吹き飛ばす衝撃を浴びながら、ジズルズィークが微動だにせずに言い放つの合わせて、バジリスクの背後にペインが瞬間移動で現れていた。
インモラルの刃が、朱色の翼に突き立てられる。
『また貴様か!』
バジリスクが横薙ぎに戦槌を振るうがペインの姿はなく、槌が空を切る。
「……自分は、ペイン。ペイン・フィン」
名乗る声は、バジリスクの頭上から。
「……この村を、救いに来たよ」
すぐ真上に転移して飛び降りる形になったペインが、インモラルを戦槌を振り切った腕に突き刺し、またすぐに遠く離れる。
「駆けつけてみれば、既に鬼に変じていたか」
そこに現れた嵯泉が、柘榴のような赤い隻眼を細める。
「ならば、此方も其れ相応に変じさせよう――代償はくれてやる」
嵯泉は抜いた刃を、己が腕に滑らせる。
「相応の益を示せ」
嵯泉の流した血とその意志が、刃の封印を解いて天魔鬼神と変生させた。
「此処でお前を倒す事が、又同じ危機を呼ぶのかもしれん。しかし其れだからと云って、見過ごす事等出来よう筈も無い」
槌に打たれながらも、嵯泉が変生した刃を振るう。
此の連鎖をも立ち切ってみせよう――その意志を込めた天魔鬼神の刃が、バジリスクの朱く染まった身体を叩いて、後退させた。
『ぬぅっ!?』
「まだよ!」
その間を、駆ける銀狼。
吹っ飛ばされた距離を駆け戻った有栖が、再び刃を振るう。
槌が有栖を血に叩き伏せる寸前、今度は光刃が先に届いた。
『っ!?』
即ち、僅かに有栖の斬撃の方が速かった証。
(「まだ――もっと!」)
跳ね起きる動きで距離を取った有栖が、またすぐに地を蹴って飛び出す。
後の先など不要。刃と己を削りて、ただただ、前へ進むのみ。
「俺も混ぜてくれよ!」
「狸神様、自分達も行くぞ」
綾と有士郎もそこに加わる。4人4種の斬撃が間断なくバジリスクに向けられる。
「見ちゃおれんのぅ」
激化する戦いを、機巧大狐ちゃんの上で見ていた桐葉が、檜扇を広げた。
シャンと神楽鈴が鳴らされる。
「これより舞いしは生命の息吹を言祝ぐ舞い。八百万の神たちよ。我が舞い奉納たてまつる。なにとぞ我らに幸をもたらし賜え」
シャンッ、シャンッ。
鈴が鳴る度に、桐葉を中心に気が変わる。戦の気を清めるは神気。
『何をしてやがる!』
気の変化を感じたバジリスクが、戦槌を振り上げる。
「させない」
タタタッ!
リュカが向けた『灯り木』から、数発の弾丸をバジリスクの腕に撃ち込んだ。
「遊びに付き合う気はない」
タタタッ!
続けて肘、肩、膝の順に、リュカは立て続けに数発撃ち込む。
「あなたは死ぬ覚悟を、して」
10秒程で、弾倉1個使い切る程のオート連射。
バジリスクがどう動くのかが判っていた様に、リュカが淡々と撃ち込んだ弾丸が、僅かな時間、その動きを止めていた。
そして、桜花が吹き上がる。
桐葉の舞いで呼び起こされた神気に満ちた桜吹雪が、戦場に吹き荒れる。
「ふぅ……流石に疲れるのぅ。じゃが、もしもあんな脳筋に迫られては、恐ろしゅうて敵わぬ。何せわらわはか弱き乙女じゃからのぅ」
額に汗の珠を浮かべた桐葉が、ふにゃりと笑う。
「じゃから、後は任せたのじゃ」
「任されたわ!」
応えた有栖の身体は、何度も打たれた傷が桜吹雪で癒えていた。
「鉄火散り、血華舞う」
それでも万全ではないが――地を蹴る足には、力が湧いていた。
「刹那を刻むは狼牙の連閃!」
月喰らう刃が鞘走る。餓狼と成り放たれた光刃は、今度こそ戦槌よりも完全に速く、朱の戦鬼の身体に届いていた。
『なっ――んだ、と』
縦横無尽に走った光の一筋が、バジリスクの片腕を斬り飛ばす。
「呆けている暇なぞないぞ」
驚くバジリスクを、嵯泉が天魔鬼神で更に逆袈裟に斬り裂いた。
『がっ……何だ!? 何だ、此の力が抜ける感覚は』
「最初に言ったぞ? 私の光は奇蹟の光だと」
膝をついたバジリスクの頭上から、サリエスの声が降ってくる。
降下するサリエスの手には、波打つ刃。怒りの思念を宿したフランベルジュ――『イーラの劫火』は、その身に纏い続けているのと同じ光を纏っていた。
それは猟兵の力を高めて敵の力を削ぐ聖なる光。そして、光源が近くなれば光も強くなり、影が生まれる。
「あらゆる災厄を叩き潰す奇蹟の光を、思い知るがいい」
『貴様か! 貴様が――!』
サリエスが振り下ろした刃を、バジリスクは残るで戦槌を構えて受け止める。
(「月明かりに運命を託すよりも、確実ね」)
近くなった光に照らされたバジリスクの影がくっきりと出ているのを見て、鞠亜がすぅと息を吸い込んだ。
「彼我の溝に言葉は不要なればこそ、絶死を以て告げるまで」
告げる鞠亜の声で、バジリスクの影が蠢く。そこから伸びる、黒い腕。
鞠亜が喚んだ黒腕の手刀が、バジリスクの戦槌――その長柄を半ばで切断した事で、遮るものがなくなったサリエスの『イーラの劫火』がバジリスクを斬り裂く。
『ぐっ! ならば魔眼で――』
「いや。先はない」
上昇するサリエスを見上げたバジリスクの瞳が紅く輝くより早く、アルトリウスの瞳が藍に輝いた。
此の場に魔眼を持つのは、バジリスク1人ではなかった。
――魔眼・統滅。
アルトリウスの魔眼の力が、バジリスクの持つ石化の邪視の力を消失させる。
『なっ!?』
魔眼の効力が消失したバジリスクの両瞳が捉えたのは、アヤネが向ける大型ライフルの巨大な銃口。
「もう、こいつを止める術はないよネ」
対UDCライフル『Silver Bullet』から放たれバジリスクを撃ち抜いた弾丸の威力が、朱の身体をふっ飛ばした。
アヤネが放った弾丸は、ただ大きく強力なだけではない。
UDC細胞炸裂弾――敵を内から破壊する、人外の弾丸。
『くっ……くっくっく、こいつは参った』
内から喰われ激痛を感じている筈だが、バジリスクはそれを押し殺して――笑った。
『1人もぶっ殺せねえとな。まじで英雄かよ』
「別に、そんな大層なもんじゃないけど」
インモラルを手に、ペインがそこに歩み寄る。
バジリスクに戦う力が残っていないのは、明らかだった。
「あなたが何を企んでいるかは存じ上げないですが、黒幕ではないのでしょう。黒幕の事を吐く気は?」
その手に戻した「拷問具」を手に、ジズルズィークも声をかける。
『ねえな。大体、気にしてる暇はねえぞ――そろそろ、アレが生えてくる』
ああ、そうだ。
バジリスクの言う通りだ。
バジリスク1人を倒しても、まだ危機は去っていないのだから。
「……そう」
そうとだけ短く呟いて、ペインが手にした刃でバジリスクの喉を掻っ切った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
第2章 集団戦
『繁栄を願う者ども』
|
POW : 収穫せよ、生まれ出でよ、同胞よ
レベル×1体の、【頭部の農作物】に1と刻印された戦闘用【自分たちそっくりな異形の人型】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
SPD : 耕せ、耕せ、畑を作れ
【農具】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を耕して畑に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 繁栄せよ、増えよ、埋め尽くせ
自身の創造物に生命を与える。身長・繁殖力・硬度・寿命・筋力・知性のどれか一種を「人間以上」にできる。
イラスト:笹にゃ うらら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●繁栄を願う者ども
ボコッ。
1つの戦いが終わり、静かになった――と思われた村の外で、土が波打つ。
畑が、ひとりでに蠢いていた。
誰もそれを目撃する村人がいなかった事は、幸いだろう。
ボコッ、ボコボコッ!
波打ち蠢く土の動きが、次第に激しくなり――。
ズシャァッ!
そして、野菜が顔を出した。
正確には、野菜頭の異形達が姿を表した。
ジャガイモ、麦、トウモロコシ。キュウリに、ナス、トマトにピーマン、オクラ。
野菜頭は多種多様。
……今の季節ならではの野菜が気持ち多いような。
繁栄を願う者ども・夏野菜版、と言った所だろうか。
『耕せ……耕せ……耕せ』
そして異形達は動き出す。
周辺の建造物や人々すらも耕して、辺りを血に塗れた畑に変える為に。
====================================
第2章プレイング募集期間は
公開から7/9(火)8:30からです。
受付終了時刻は、現時点では未定です。別途告知致します。
====================================
アルトリウス・セレスタイト
次もあるのだったな
早々に始末するか
破天で掃討
高速詠唱と2回攻撃で間隔を限りなく無にし、全力魔法と鎧無視攻撃で損害を最大化
爆ぜる魔弾の嵐で蹂躙する面制圧飽和攻撃
周囲諸共吹き飛ばして回避の余地を与えず、攻撃の密度速度で反撃の機を与えず
無理やり反撃を行っても正面から弾幕で飲み込んで押し切る心算
数を増やすとしても人間以上になる程度で耐えられはしない
攻撃の物量で全てを圧殺する
※アドリブ歓迎
●青光弾幕
『よーし、いい調子だ!』
『あの村を畑に変えてやるんだ……!』
農具を振り回し、ざっくざっくと耕しながら野菜頭の集団が進む。
「いや――行き止まりだ」
その前に、アルトリウスが立ちはだかった。
その両手はコートのポケットに突っ込まれたまま、淡く輝く青い光の粒子だけがアルトリウスの周囲を漂っている。
『繁栄の邪魔をするか!』
『ならばお前も肥料に――っ!』
ナスとトマトが気勢を上げると同時に、アルトリウスの周囲を漂うだけだった青光が突如、弾丸の様な勢いで飛び出した。
空間に青光の軌跡を描いて、魔弾が乱れ飛ぶ。異形自身、或いは周囲の地面に当たった青光りは、その度にパパッと瞬いた。
『ゥ……ウァ……ッ』
『ガフッ』
青光が爆ぜる光を浴びたナスとトマトが呻き声を上げ、倒れて動かなくなる。
『む? どうした、ナスにトマト。こ、これは……!?』
ナスとトマトに起きた異常に気づいて驚き駆け寄るキュウリに、新たに撃ち出された青光が当たってやはりパパッと瞬き――キュウリがその場で崩れ落ちた。
『な、何だ、あの光は』
『おい、あの光を浴びるな――!』
異形達も、流石に3人があっという間に倒されては、アルトリウスが纏う光が自分達を倒し得るものだと気づく。
「無駄だ」
ただ一言、アルトリウスが告げると同時に青光が瞬く。
破天――それがアルトリウスが放つ青い魔弾の業の名。
その青光は、浴びた者の存在を終わらせる事で死を導く光の調べ。
光を放つのに、アルトリウスが何か動く必要はない。既に術式は鳴っている。
ドクン、ドクンと脈打つ音。
アルトリウスの心臓が鼓動を刻むその度に、青光の魔弾は放たれ続ける。攻撃に転ずる時を異形達に与えない密度の青光の弾幕。
『くそっ! こうなったら土を使って創造を――ぐ、がふっ」
鋤を振り上げ、地面を掘って土を取ろうとしたピーマン頭がいたが、その土で何かを作る前に青光に撃ち抜かれる。
「お前達で終わりではなく、次もあるのだったな。故に、早々に始末する」
アルトリウスが告げる度に、青が放たれ光が瞬き、異形が倒れる。
最初に告げた通り。
アルトリウスと出遭った異形達にとって、此処が行き止まり。
アルトリウスの後ろに進めた者は、1人としていなかった。
成功
🔵🔵🔴
煌天宮・サリエス
……食べれればいいですが、まあダメですよね。
なので、生命力だけでも収穫しましょう。
ユーベルコードを起動。人を癒す白き光の花は黒く穢れ、私の身を包み込む。
黒のビー玉2つを『呪いの武器袋』から取り出し、2本の長剣に変形させ、敵陣の真ん中に降り立つ。【オーラ防御】で敵の攻撃の威力を和らげながら両手に持った剣で切りかかる。
長期戦になればなるほど強くはなりますが、村の被害を抑えるためにも効率よくダメージを受け、【生命力吸収】をして短期決戦を決め込みたいという訳なのです。
……村の畑から生えてきたということは……畑は大丈夫なのでしょうか?
●繁栄の簒奪者
(「……村の畑から生えてきたということは……やはりこうなっていますか」)
サリエスの眼下には、懸念が現実となってしまった畑があった。
中から掘り起こされたような、奇妙な跡。
そこから現れたであろう異形達は、そこから少し進んだ辺りで開墾を始めている。
「呪われた奇蹟」
その様子を見下ろしながら、サリエスは手にした袋から直径10mm程の小さな黒い球を取り出し、放り投げた。
「――反転するは『救いの光花』」
空から落ちてきた時、黒い球は2本の黒い長剣となってサリエスの両手に収まった。
「――治癒は命の簒奪へ」
長剣を握ったサリエスの手が、黒い輝きに包まれる。
否、手だけではなかった。
「――天使は光から闇へと堕ちる」
広げた翼に至るまで、サリエスの姿は黒く輝く花弁に包まれていた。
そのまま、サリエスは黒い翼を広げ黒い花弁を撒き散らして上空から一気に滑空し、敵の真っ只中へと飛び降りた。
黒刃、一閃。
『なに? 空からだと!?』
突然現れたサリエスに驚くトマト頭を、黒剣が斬り飛ばした。
「これ、食べられればまだ良さそうなんですが」
切り飛ばされ、宙を舞ったトマト頭を見やりながら、サリエスが呟く。
確かに今しがた切り飛ばしたトマトも、ナスもダイコンピーマンも、どの野菜頭もつやつやとしている。
「まあ――ダメですよね」
ああ、これが野菜であったなら。
「せめて生命力だけでも収穫しましょう」
言うが早いか、サリエスが両手に持った黒剣でオクラ頭を斬り倒した、その瞬間。オクラ頭の生命力を剣を通して吸って、纏う黒い花弁が輝きを放った。
この花弁こそが『救いの光花』――但し、呪いで黒く穢されたものであるが。
『くそっ、相手は1人だ』
『やっちまえ!』
「これ以上、勝手に耕せはしませんよ」
サリエスは異形達が振り下ろす鍬や鋤を避ける事無く、黒いオーラで耐えながら両手の黒剣で斬りつけた。
その瞬間、やはりサリエスを覆う花弁が光を放つ。
敵を斬りつければその生命を斬り取り奪い、受けた傷すら力に変える――それこそが『救いの光花』の持つ力。
命を救う奇蹟の光は今この時、繁栄を簒奪する魔の光と変わっていた。
成功
🔵🔵🔴
稲宮・桐葉
やれやれ…一難去ってまた一難じゃな
畑の方から感じる異変を感じ取り、機巧大狐ちゃんを駆り現場に急行するのじゃ
只の被り物じゃったら良かったのにのぅ…
流石に麦の異形は見ておると気分が悪くなるわ
耕すのは人の仕事じゃ!野菜は大人しく人に刈られるがよい!
基本、弓で戦い【援護射撃】で仲間の支援を行うぞ
《神鹿の弽》の力【属性攻撃】で次々と矢に野菜に効きそうな属性を乗せ、炎で加熱調理、氷で冷害攻撃、水で水害攻撃など行い、更にUCで複数の敵を射抜くのじゃ
肉薄されたら包丁…ではなく《ムラサマブレード》で切り払うのじゃ
《機巧大狐ちゃん》は【かばう】ほか『耕せ、耕せ、畑を作れ』で地形利用する敵を【吹き飛ばし】するのじゃ
織銀・有士郎
今度は変な奴が出てきたな……ダークセイヴァーは魔境なのか?
まぁいいや。
真の姿に近づいてるが、まだ自分のままらしいので、新しく覚えたユーベルコードでも試してみるかね。
「我が太刀が織りなすは三千世界……」
相手が複数いるなら纏めて攻撃するまで。ダメージが大きそうな奴をメインに複製した太刀を射出していく。
フォローが必要な味方がいるならそっちにも射出するか……42本もあるとコントロールが面倒くさいなコレ。
畑の上に立つ事で強化されるならその畑を壊したらどうなるのやら……試しに狙ってみるか。
敵のヘイトがこっちに向きそうだが。
敵の攻撃は【野生の勘】で【見切る】か、無理そうなら【武器で受け】るかで対処しよう。
真守・有栖
光刃、一閃
間髪入れず、視界に捉えた野菜頭の首を断つ。
ひぃ。ふぅ。みぃの……頭数だけは揃えたじゃないの。
いいわ。黒幕とやらが出てくるまでの腹ごなしに――
一切合切。この刃にて食らい尽くしてあげる
――月食
刃に込めるは“断”の一意
何処も彼処も己が間合いと
次々と喚ばれた異形を断ち、薙ぎ払うように首を飛ばす。
……ふぅん?
群れて駄目なら束ねて合わせて、と。
えぇ、歯応えのある方が好みよ。かかってらっしゃいな?
口元に笑みを。牙を覗かせ。
合わさり、力を増した異形と対峙。
交錯。
農具の一撃をあえて、受け。返す刃にて、敵を断つ……!
刃に込めるは“断”の一念
光刃、烈閃
……少し大味だったけれども。嗚呼、堪能させてもらったわ
●狐狼の野菜刈り
「やれやれ……一難去ってまた一難じゃな」
機巧大狐ちゃんの上で、稲宮・桐葉が肩を竦める。
異変が起きるような予感を信じた桐葉が、他の猟兵たちとは違う方向へ機巧大狐ちゃんを駆ってみれば、村の境界すぐにまで、野菜頭の集団が迫ってきていた。
『人間はどこだ! 肥料にしてやる』
『建物も人もきっといい肥料になるな!』
「此奴等、只の被り物じゃったら良かったのにのぅ……特に麦の異形なんぞ、見ておると気分が悪くなるわ」
物騒な事を口走る異形に思わず呻きながら、桐葉が右手の手袋をはめ直す。
弽(ゆがけ)は元来、弓の弦から指を守る為の道具である。桐葉のそれは神鹿の革から作られたと伝えられている品であり、それだけに留まらない。
「まずは狼煙ついでの炎害といくかの」
雷上動に番えた矢に、神鹿の弽から炎が灯る。
桐葉はその矢を頭上の夜空へ向けて放った。
炎を纏った矢は、夜空に光の軌跡を引いてぐんぐん昇っていく。だが重力に引かれ、その勢いは次第に衰えていく。
「我が弓より放たれし矢から逃れる術無し!」
それを見上げていた桐葉が地上で告げた瞬間、炎が爆ぜる様に矢が増えた。
降神弓術――神懸かりの矢。
20を超える炎の矢が一斉に鏃を地上に向けて、炎の雨と降り注ぐ。
『うわわわっ』
『熱! 熱!』
突然降ってきた炎の矢に、野菜頭が慌てふためく。
『くそ、何だ今のは』
『あそこにいるぞ!』
「むう。流石に見つかるのう。まあ、わざと目立つ様に射たのじゃが」
焦げた野菜頭達の視線のようなもの(?)を向けられても、桐葉は慌てなかった。
機巧大狐ちゃんをけしかけ、向かってくる野菜頭を吹っ飛ばす。
聞こえていたから。
近づいてくる、足音が。
落ち着き払った桐葉の両隣を、銀髪をなびかせた影が2つ駆け抜ける。
夜空に放たれた炎矢を見て駆けつけた、真守・有栖と織銀・有士郎である。有栖の光刃と有士郎の錆刃が鞘走り、トマトとピーマン頭が切り落とされた。
「取り敢えず斬りかかってみたが、今度は変な奴がぞろぞろと出てきてるな……ダークセイヴァーは魔境なのか?」
「まあ、今この場はそうであろうよ」
ずらりと居並ぶ野菜頭に目を丸くする有士郎に、桐葉が返す。
「頭数だけは揃えたじゃないの。ひぃ。ふぅ。みぃの……」
指折り数える有栖の前で。
ぼこっ。
ぼこぼこっ。
野菜頭がぼこぼこ、ぼこぼこ。あっという間に数十体、一気に増えた。
その全ての野菜頭の「1」の数字が刻印されている。
「…………。い、いいわ! 黒幕とやらが出てくるまでの腹ごなしよ!」
指折り数える途中で固まっていた有栖が、月喰の柄を握り直す。
「一切合切。この刃にて食らい尽くしてあげる」
有栖は指折り数えるのをやめて、月喰の柄を握り地を蹴って飛び出した。
「何体いようが、纏めて斬れば同じ事! 何処も彼処も、私の間合いよ」
有栖の意志に反応して月喰から伸びた光刃が、刀の間合いを遥かに越えて野菜頭を纏めて薙ぎ払う。
「ふむ。刃の間合いを伸ばしたのか。良い手だな。自分には出来ないが」
有栖の攻めを称賛しながら、有士郎は『涼鳴』を鞘に収める。
「まだ自分でいられそうだし――新しい業を試してみるかね」
手から離れた筈の『涼鳴』は、有士郎の前に浮いていた。
「我が太刀が織りなすは三千世界」
『涼鳴』が増えた。
「ゆくぞ、一斉抜刀」
40を超える太刀が一斉に放たれ、野菜頭の目の前で鞘走った。
錆びた刃がバラバラに動いて野菜頭を斬り、貫いていく。
相手が複数いるなら纏めて斬る。
有栖と有士郎の考えの根幹は同じと言えよう。その為に用いた手段が、質か、量かの違いであっただけの事だ。
「わらわも負けてられんのぅ」
有士郎の同質の業を目の当たりにし、桐葉も再び矢を番える。
放たれ、増えた矢が纏うは――氷。
「耕すのは人の仕事じゃ! 野菜は大人しく人に刈られるがよい!」
桐葉は氷柱の如く鋭い氷矢を、今度はバラバラに操って上下左右から振らせ、或いはくるくると空中で回し、有栖の刃から迸る光を反射させる。
『な、何だこれ!?』
『どうなってやがる! 相手は3人だろ』
3人の手数を越えた猟兵達の攻勢に、野菜頭達は半ば混乱しながらも、農具を投げて応戦してくる。光と刀と矢と、鍬や鋤や鉈が飛び交う混戦。
「む……42本もあると、コントロールが面倒くさいなコレ」
有士郎がその混戦の中、増やした刃の制御に苦慮していた。
リィィンッ。
事実、時折涼鳴の錆びた刃同士がぶつかり、甲高い音が鳴り響く。
それでも、野生の勘で敵の動きを見切って刃を放つ操法は、野菜頭達にその苦慮を感じさせる余裕などなくさせていた。
『畑を耕せ! 畑の上なら俺達が――』
一方、有士郎は野菜頭の言葉を聞き逃さない。
「畑、か。ならばそれを壊したらどうなるのやら……試しに狙ってみるか」
有士郎は涼鳴の数本を集め、束ねて回し出した。
束ねられ回る刃が土を巻き上げ、地を穿つ。謂わば刀のドリル。
『折角耕してた畑になにしてくれてんだー!?』
響く野菜頭の絶叫。
「ふむ。やはり怒ったか」
野菜頭から怨念めいた視線のようなものを向けられるも、こうなるのは予想の範疇。有士郎はどこ吹く風である。
「まあ問題ないだろう、近寄らせなければ良いだけだ」
地を穿った刃束を再びバラバラにして、有士郎は刃の壁と並べる。
『こうなったら、人形を合体させて!』
『それだ! 生まれ出でよ、同胞よ。合わされ、同胞よ!』
野菜頭達に残された手は、召喚した人形の合体。
次々と人形が集まり、合わさり、野菜頭も胴体も少しずつ大きくなっていく。
「そうはさせんのじゃ」
桐葉が合体を止めようと増やした氷の矢を放つが、それは召喚者以外の野菜頭が身を挺して止められてしまう。
そして、倒れる野菜頭の向こうから、体長3m近くにもなろうかと言う大きさになった合体野菜頭がゆらりと立ち上がった。
そのズッキーニ頭には、50の数字が刻まれている。
「大きいな。だが良い的だぞ」
その巨体へ、有士郎が涼鳴を撃ち出す。
『これぞ、繁栄!』
ドスドスと錆びた刃が刺さりながら、ズッキーニは訳の判らない事を言ってズンズンと進んでくる。
「……ふぅん? 群れて駄目なら束ねて合わせて、と」
その姿を見上げて、有栖が口の端を釣り上げた笑みを浮かべた。
「えぇ、歯応えのある方が好みよ。かかってらっしゃいな?」
笑う有栖の口元から覗く、狼の牙。
『舐めるなぁ!』
大ズッキーニが鍬を振り下ろす。
有栖は避けず、敢えてそこに踏み込んだ。
ゴッ!
鍬の刃の部分を外したものの、鍬の柄が有栖の頭を叩いていた。鮮血が舞い、有栖の身体がぐらりとよろめく。
「――月食」
消えかけた月喰の光が、一層、輝きを強くする。光刃、烈閃。
迸った光は込められた断の意念の通り、ズッキーニ頭を両断していた。
「……少し大味だったけれども。嗚呼――堪能させて貰ったわ」
頬を伝う血をぺろりと舐め取って、有栖は倒れた野菜頭を見下ろし――嗤っていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と】
・共闘OK
ダークセイヴァー(以下DS)にちゃんと野菜の形をした野菜がありますよ?!
DSは荒廃した土地の印象が強くて
ここの野菜は小さな芋とか萎びた葉っぱとかそんな印象でした
てかこれは食べ…られませんよね
食べられたらDSの深刻な食糧事情に革命を起こせると思ったんですけど
食べられないものは仕方ない
刀を抜き【ダッシュ】で間合いを詰めます
仕留めきれなければ負傷箇所へ【傷口をえぐる】で追撃
一体一体確実に減らしていく
離れた敵にはUC【死神の矢】で攻撃し
囲まれたら【衝撃波】で蹴散らし包囲網を抜けます
特に好き嫌いは無いですよ
アヤネさんは炭水化物系が多いですね
緑黄色野菜をとらないと
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
【共闘OK】
落ち着いてソヨゴ
これ食べられるとしても僕が食べたくないネ
そんな革命起こさないで!
前は任せた
重いケースを地面にどさりと置き
Silver Bulletを素早く組み立てる
【スナイパー】で後方から射撃する
狙うはヘッドショット
食べ物を粗末にはしてはダメと教えられたけど
これは紛い物だからいいよネ?
創造物ってやっぱり野菜?
人間以上の寿命の野菜とか?
寿命が長くても今殺してしまえば関係ないネ
硬度が人間より硬いってこのライフルにはちょうどいいし
戦闘後ソヨゴに話しかけ
ソヨゴは野菜好き?
僕は嫌いなのが多いけど
小麦とポテトとトウモロコシは食べられる
ふうん
じゃあ今度何か作ってよ
と微笑み
リュカ・エンキアンサス
なにあれ怖い(棒読み)
夏野菜はカレーにすると美味しいって聞いた
俺は味がわからないし、あれを食べる気にはまったくなれないけどね
怖いっていうのは冗談だけれども、
係わり合いになりたく無いのはちょっと本音
面白時空にほり込まれた一般人みたいなもので、どんな顔していいかわからないから
なのでひとまず離れた場所から銃撃を続行する
自分が倒すことよりも、援護射撃をメインにして敵の動きを阻害して味方の動きを助けられたら
農具が当たらない場所から攻撃をしてるけど、万が一投げられたら&接近されたら絶望の福音で回避する
面白おかしい姿形のわりに、そこそこ武器は痛そうだ
…それが終わったら、ようやく正体不明の敵に会えるだろうか
●問われる野菜の概念
『耕せ、耕せ』
『これは良い土だ』
野菜が自ら農具を手にして、街道を耕している。
「なにあれ怖い」
そんな異様な光景に、リュカ・エンキアンサスは全然怖くなさそうな半眼で、全然怖くなさそうな棒読みで呟いていた。
「アヤネさん、見てください!
そんなリュカの後ろで、興奮した声が上がる。
「ダークセイヴァーに『ちゃんと野菜の形をした野菜』がありますよ?!」
琥珀色の瞳を輝かせた、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)の声だった。
「落ち着いてソヨゴ。野菜の形をしていると言っても、頭部だけよ。普通の野菜には胴体とか手足とかついてないのよ?」
ドサリと重たそうなケースを傍らに置きながら、アヤネ・ラグランジェは興奮気味な様子の冬青にツッコミを入れる。
「いやあ。この世界は荒廃した土地の印象が強くて。野菜と言えば、小さな芋とか萎びた葉っぱとか、そんな印象だったもので」
確かに冬青の言う通りだろう。あの野菜頭ほどの野菜、この世界ではそう何処にでもあるものではあるまい。手足や胴体があって自ら動いて勝手に畑を増やして何なら人まで襲う点を除けば。
相違点、多すぎない?
「でも、あれは食べ……られませんよね」
冬青の残念そうな一言に、アヤネの銃の部品が足元に落ちる。
「待ってソヨゴ!? 食べられるとしても僕が食べたくないネ」
たまに口走るアメリカンジョークの類ではなさそうだと察して、アヤネの両手が思わず冬青の肩を掴んで、ゆさゆさ揺さぶっていた。
「夏野菜はカレーにすると美味しいって聞いたよ」
「あ、良いですねカレー!」
「味の問題じゃないネ!?」
2人のやり取りを横で聞いていたリュカがぼそっと告げた一言に、冬青とアヤネが全く正反対の反応を返す。
「冗談だよ」
先程と変わらぬ声で、リュカは野菜頭の群れを見たまま2人に返す。
「俺は味がわからないし、あれを食べる気にはまったくなれないし。っていうか、出来れば係わり合いになりたく無いなって、ちょっと本気で思うし」
淡々と言っているけれど、係わり合いになりたくないのは、リュカの本音であった。
「だってどんな顔して良いのか判らないから」
「僕も食べる気になれないネ」
リュカの言葉に、アヤネもこくこく首を縦に動かす。
「そうですよね……あれが食べられたら、ダークセイヴァーの深刻な食糧事情に、革命を起こせると思ったんですけど」
「そんな革命起こさないで!」
まだちょっと残念そうな冬青の肩を、アヤネが掴んで止めにかかる。
だが、あの野菜を食べたくないのは他にもいる。
正確には、食べられたくない連中が3人のすぐ目の前にたくさんいるのである。
『俺達を……食うだと?』
『いつもいつも、野菜が喰われる側だと思うなよ!』
『畑にしてやらぁ!』
野菜頭の皆さんが、怒りの籠もった視線を――いや目はないけれど、多分怒りの視線のようなものを3人に浴びせていた。
「野菜に怒られるとか、ますますどんな顔していいかわからないな」
向けられたその情念に、リュカが遠い目になる。
常識の通じない面白時空的なものに放り込まれた一般人ってこんな気分なのかな、なんて事を考えながら、リュカは取り敢えず灯り木を向けて、引き金を引いた。
放たれた弾丸が、野菜頭達の手足を撃ち抜く。
「……ソヨゴ。前は任せたネ」
「食べられないものは仕方ないですね」
アヤネの爪先が落とした部品を軽く蹴り上げると同時に、冬青が『花髑髏』をスラリと鞘から引き抜く。
その切っ先を冬青は野菜頭の群れに向けて――。
「切り裂け、疾風!!」
放たれた鎌鼬が、耕された土を巻き上げる。
『ぐっ!』
「一太刀では倒せませんか――なら」
呻くトウモロコシ頭の前で、『花と髑髏』と『透かしの蝶』が舞う。
放った風の刃を追って、冬青は飛び出し間合いを詰めていた。花髑髏で斬りつけた斬撃の軌跡をなぞる様に、不死蝶の刃が閃く。
二連の刃に、トウモロコシ頭が倒れ伏した。
『くそっ』
『食われてたまるか!』
トウモロコシ頭がやられた事よりも、食べられたらだの革命だの言っていた冬青の接近を警戒した様子で、野菜頭達が一斉に農具を振りかぶる。
タタタッ!
リュカの射撃が野菜頭数体の手から農具を撃ち落とし、或いは弾き飛ばす。
ズドンッ!
そこに重たい音が響いて、ピーマン頭が粉々に砕け散った。
「食べ物を粗末にはしてはダメと教えられたけど、これは紛い物だからいいよネ?」
後ろでアヤネが構えているのは、組み立て終えた大型ライフル『Silver Bullet』。野菜頭達に向けた銃口からは、硝煙が立ち昇っている。
『くそ! 後ろの狙撃手を』
「面白おかしい姿形のわりに、案外頭悪くないね。そこそこ武器も痛そうだし」
すぐにアヤネを狙ってオクラ頭が投げた鉈を、リュカが横から撃ち落とす。
「さて、どんどんぶっ壊すネ!」
ズドンッ!
重たい銃声が響いて、また野菜頭が砕け散る。
冬青は二刀を構え複数の農具と切り結びながら野菜頭の進行を阻み、リュカは2人の連携を崩さぬ様に、周囲を走り周りながら援護に徹する。
1体ずつ、確実に駆逐される野菜頭達。
だが、野菜頭達も黙っているだけではなかった。
キィンッ!
「っ――それは」
硬い音を立てて、冬青の刃が弾かれる。
カンッ、ココンッ。
「え、なにそれ」
リュカが浴びせた弾丸も、軽い音を立てて弾き飛ばされた。
緑と黒の縞模様を持つ球体に。
『これぞ我らが創造物』
『めっちゃ硬い西瓜だ!』
西瓜は学問上、お野菜に分類される農作物ですゆえ。
『こいつで人間共の頭を砕いて――』
ゴシャァッ!
『――え?』
大根頭が誇らしげに掲げた西瓜が、しかし一瞬で砕け散った。
「硬度を人間より硬くしたみたいだけど、このライフルにはちょうどいい的ネ」
(目も口もないけれど)ぽかんとした様子で呆然と立ち尽くす大根頭に、アヤネが笑みを浮かべて言い放つ。
その手で硝煙を上げているのは、元々人間以上の相手を想定して作られたライフル。人間以上の硬度を西瓜に持たせたところで、撃ち砕けぬ道理がない。
3人の前から動く野菜頭がいなくなるまで、時間は余り掛からなかった。
まだダークセイヴァー食糧事情革命に未練があったのだろうか。
「うーん……やっぱり、これは食べられそうにはないですね」
野菜頭の残骸を調べていた冬青が、膝の土を払いながらそんな事を口走っていた。
「……」
あ、まだ諦めてなかったんだ、みたいな顔をリュカがしているけれど、何も言わない事にしたようだ。
「ソヨゴは、そんなに野菜好き? 僕は嫌いなのが多いけど」
「特に好き嫌いは無いですよ」
不思議そうに声を掛けるアヤネに、冬青は笑顔で返す。
「すごいね。僕は小麦とポテトとトウモロコシなら、食べられるけど」
「炭水化物系が多いですね」
アヤネが上げた葉物がない野菜の羅列に、冬青の笑顔が苦笑混じりに変わった。
「アヤネさん。もっと緑黄色野菜を摂った方が良いですよ」
「ふうん……じゃあ今度何か作ってよ。動かない野菜で」
冗談めかした微笑みを浮かべたアヤネの言葉に、冬青は勿論と頷くのだった。
(「正体不明の敵も、面白食材系だったりしないといいんだけど」)
2人のやり取りを聞きながら、リュカはぼんやりと少し明るくなりつつある夜空を見上げていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
繁栄を願う…なるほど?
希望、鬼謀。自然を希う者として、ジズは意表を突かれた心地です
しかし、あなた方が願うのがおのれのみの繁栄ならば、対処するのです
使用したユーベルコードで珍獣とゴーレムを召喚!
喰らい尽くせ、引っこ抜け
今この時こそが収穫祭なのです
【ロープワーク】にてかれらを一網打尽にし、残りは召喚した従者に任せましょう
従者で力不足ならば、味方と連携して
時に荒ぶる自然は、仲間と乗り越えてこそですからね
人を害して栄える自然などないと、反省するのですよ
半永久的に、です
ペイン・フィン
やれやれ……。
真逆とは思ってたけども、ね。
……1体でも残すと、後が厄介。
討ち漏らしが無いように、倒さないとね。
コードを使用。
拷問具8種を錬成。
夏野菜達を攻撃していこうか。
……できれば、普通の野菜の方が、良かったね……。
鷲生・嵯泉
……些かならず冗談めいた姿だが
村人達にとっては十分な脅威である事に違いは無いか
黒幕を引きずり出す為にも、早々に片付ける事としよう
数の多いものにバラバラに動かれるのも邪魔というもの
衝撃波での範囲攻撃を使って遠方から1ヶ所へ纏める様に誘導し
怪力乗せた破群猟域で一気に叩いて潰す
攻撃は見切りと戦闘知識で躱し、多少の傷は激痛耐性で無視
此れが正しく農地で在れば人の為にも成ったろうに
だが煮ても焼いても喰えんどころか人の命を脅かす野菜等
此の世界に必要無かろう
駒を使って時間稼ぎをした所で無意味だと解らん程に愚かなのか
其れとも此方を侮っての事か
どちらにせよ斃さねばならん事に変わりは無い
さっさと出て来るがいい
●宿縁
猟兵達の攻勢で、『繁栄を願う者ども』はその数をかなり減らしている。
『同胞がだいぶ、やられてしまったようだな。もっと耕さねば!』
『我らの繁栄の為に!』
『さらなる収穫地を求めるのである!』
それでも残った野菜頭は、ここからの繁栄を願い輪となり気勢を高めていた。
「……些かならず冗談めいた姿だな」
円陣を組む野菜頭という常軌を逸した光景に、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)の隻眼の中にも、流石に呆れのような色が混ざっていた。
「繁栄を願う農作物ですか……希望、鬼謀。自然を希う者として、ジズは意表を突かれた心地です」
ジズルズィーク・ジグルリズリィも、脳裏に疑問符が浮かんでは消えているような感覚を覚えていた。
「…………」
そんな2人の様子に、なんとも居心地の悪さのようなものを感じているのが、誰であろうペイン・フィンである。
(「真逆とは思ってたけども、ね……ほんとに、出てくるとは」)
あの野菜頭、ペインは良く知っていた。
おそらく、この場にいる猟兵の中の誰よりも。
「あれは……1体でも残すと、後が厄介。その上、戦闘中に増えかねない。討ち漏らしが無いように、倒さないと」
その辺りを仮面と心で押し殺し、ペインは知る情報を2人に告げる。
「成程。村人達にとっては十分な脅威である事に、違いは無いか」
嵯泉が黒く昏い闇纏いし禍断の刃を鞘から引き抜く。
『奴らを倒して、此処を畑とする』
『開墾だ! 繁栄だ!』
野菜頭達も、農具を振り上げ自分たちを鼓舞しながら向かってきていた。
「あなた方が願うのが、おのれのみの繁栄ならば、対処するのです」
迫る野菜頭に告げながら、ジズルズィークは拷問具の槌を構えるのではなく、自身の傍らに立てかける。
振るう必要がないからだ。
「灰は灰に、塵は塵に。ジズの内奥に秘めた邪悪エルフの力よ、目覚めるのです」
ジズルズィークの瞳が怪しく輝き、短い銀髪が揺れる。
ズズズ、ゾゾゾッ。
何かを引きずる音が、ジズルズィークの後ろから聞こえてきた。その音は、木、木材がひとりでに動いていた音。
先の戦いで壊された村の家屋。そこに使われていた木材の残骸――それは即ち、伐採された木々であり、故にジズルズィークの術の対象となった。
ズズズッ、ゾゾッ。
蠢く木材の残骸は一所に集まり、そのままミシミシと音を立てて互いに組み合い、時に曲がりながら形を得ていく。
「木のゴーレムか。……そちらの、それは何だ?」
人に近い形に組み上がった木材。その隣に現れた見たこともない獣に気づいて、嵯泉がジズルズィークに問いかける。ペインも、その生き物は見たことなかった。
「既に絶滅した生物です。ジズにも詳しくは判らないのですが――今回は、草食の生物を召喚したつもり、です」
倒木は下僕に、百獣は四肢に――アッシュズ・トゥ・アッシュズ。
木材を体素材とするゴーレムと、既に絶滅したとされる希少生物を喚ぶ業。
ジズルズィークにとっては思い出したくない過去に通ずるものであり、多様するものではないが故に、答えられることも限られる。
「行くのです、ゴーレムと珍獣。喰らい尽くし、引っこ抜くのです」
『オォォォ』
『……』
ジズルズィークが野菜頭に向き直って指示を飛ばすと、ゴーレムは雄叫びを上げて進み出し、珍獣は無言でのっそのっそとその後に続く。
『木のゴーレムか! この鍬で壊して畑の肥やしにしてくれる!』
赤パプリカ頭が、鍬を握りしめゴーレムに真っ向から飛びかかり――。
『あ』
ゴーレムの両手にあっさりと捕まえられて、引っこ抜かれた。
『あ、ちょ。え、待って、もしかして――』
もがく野菜頭の異形を両手でがっしりと押さえ、ゴーレムはそのパプリカ頭を珍獣の顔の前に差し出す。
『……』
『あ、やめ、食べな――』
かぷっ。
もしゃもしゃ。
「……できれば、普通の野菜の方が、良かったね……」
珍獣がパプリカ頭を噛り、食っていくその様子に、拷問具のヤドリガミであるペインですらも思わず声が漏れる。
「どんどん喰らうのです。今この時こそが収穫祭なのです」
ジズルズィークが指示を変える事無く、むしろ煽るように告げれば、ゴーレムがその言葉に応えて2体目の異形を捕まえようと手を伸ばす。
『じょ、冗談じゃねえ』
『喰われてたまるか!』
野菜頭達も黙って食われるのを待つ筈がない。ゴーレムから距離を取ろうと、その場から下がり出す者が出てくる。
ジャラララッ!
そこに、鎖の音が鳴った。ジズルズィークの拷問具をつなぐ鎖である。
「逃しません。一網打尽にしてやるです」
ロープを扱う要量で鎖をジャラリと振り回し、ジズルズィークは野菜頭にぶつけてその動きを阻まんとする。
「人を害して栄える自然などないと、反省するのですよ」
『繁栄に犠牲はつきもの!』
ガキンッ!
鈍い音を立てて、トマト頭の鍬が鎖を叩く。緩んだ鎖を、トマト頭が飛び越え――。
ヒュンッ!
『うげあっ!?』
何か黒くて細長いものに打たれた衝撃で、ひしゃげたトマトが押し戻された。
「囲んで片付けるのなら、助力しよう。私もそのつもりだった。この数の多いものにバラバラに動かれるのも邪魔だ」
黒く細長いものは、嵯泉の手元から伸びていた。
「逃しはしない――残らず叩き潰す」
告げる嵯泉の柘榴の右目がギラリと輝く。
振るう黒鞭は、禍断の刃――縛紅が変化したもの。
「黒幕を引きずり出す為にも、早々に片付ける事としよう」
ヒュンヒュンッヒュンッ!
断続的に鳴り響く風を切る音が、嵯泉の言葉を消していく。
鞭に変化したとて、刃の数自体は増えていない――筈である。だが、まるで刃が幾つにも分かれたかのように、黒鞭は縦横無尽に跳ね回り、嵯泉の隻眼が捉えた対象を逃す事無く打ち据える。
それこそが、破群猟域。
「此処が正しく農地で在り、此れが正しい野菜であれば人の為にも成ったろうに。煮ても焼いても喰えんどころか、人の命を脅かす野菜など、此の世界にも必要無かろう」
だから獣に喰われてしまえと、嵯泉は昏い黒鞭を振るう。
『くそ、こうなったらまず耕して――』
『人形も召喚して――』
「然様な暇、与えると思ったか!」
農具を振りかぶり、或いは耕そうと振り回す野菜頭達に、嵯泉の腕に力が籠もる。怪力を乗せた黒鞭が、容赦無く野菜頭を打ち据えた。
それでもゴーレムの手と、飛び交う黒鞭を乗り越える野菜頭もいる。
「……ほんと、嫌だな……」
その背中を見送りながら、ペインがポツリと呟いた。
その頭上に、8種の拷問具が浮かび上がり――ずらりと並んでいる。8種の拷問具全てが増殖し、そして逃げる野菜頭を追って放たれた。
『痛っ……って罠? いつの間に!?』
ジャガイモ頭が罠と勘違いしたのは、それが足を挟んでいたからであろう。
それはペイン自身の本体でもある二枚の金属板からなる拷問具――親指潰し。
『ぐぇっ!?』
足を挟まれたジャガイモ頭を、石抱き石“黒曜牛頭鬼”が背中に降って押し倒す。
倒れたジャガイモ頭を、大きくなった膝砕き“クランツ”がポテトマッシャー代わりになってぷちっと押し潰した。
潰されたジャガイモ頭を、ジズルズィークの珍獣がむしゃむしゃ食べだす。
「……煉獄夜叉だけは、使わないで、おこうか……」
こんな野菜頭でも珍獣の食材になり得るのならと、ペインは毒液以外の拷問具で逃げる野菜頭を潰し続けた。
「ぬんっ!」
最後に残ったキュウリ頭を、嵯泉の黒鞭が叩き潰した。
「片付いたか」
剣に戻った縛紅を鞘に収める嵯泉の胸中には、しかし安堵はなかった。
(「斯様な駒を使って、黒幕は何をしたかった? 時間稼ぎをした所で、無意味だと解らん程に愚かなのか……其れとも此方を侮っての事か」)
どちらにせよ――確かな事は、まだ戦いは終わっていないという事。
斃さねばならない敵が、まだ何処かにいるということ。
「見ているのか? さっさと出て来るがいい」
闇の向こうに鋭い視線を向けて、嵯泉が告げた――その直後。
ズンッと大地が揺れた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『悪食の断片』
|
POW : 闇の帳
全身を【猟兵の視覚と嗅覚を遮る特殊な濃霧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を回復させ、自身の食欲】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : 膨張する体躯
【底なき食欲と飢え】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ : 刻喰らい
予め【周囲の者の年齢を一時的に半減し、吸収する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
イラスト:クロジ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「宇冠・龍」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●正体
ズンッ!
ズンッ!
足元から伝わる震動が、徐々に大きくなってくる。
地響きが近づいて来る。何かが大地を揺らしながら、村に迫っている。
だが、何が?
見回してもまだ昏い空と闇の靄があるくらいで――否。
土が剥き出しの道の向こうの闇の靄が大きくなっている。近づいて来ている。
そもそも、あんな靄のような闇など、いつからそこにあった?
『バジリスク、繁栄ヲ願ウ者ドモ。ドチラモヤラレタヨウダナ』
闇の靄の中から、無機質な声が聞こえてくる。
『ナラバ我ガ全テ喰ラウマデ』
霧が晴れる様に、闇が晴れる。
そこには――城がいた。
城に『いる』という表現はあまり使わないだろう。『ある』という方が多いのではないだろうか。だが、その城はそこに『いた』。
ズンッ!
大地を揺らす地響きは、城の足音。
この城は自ら歩く足を持ち、邪魔となる木々を喰らう鋏を持つ。
城であって、城でない。城を喰らって城に扮した怪物。それは時にオブリビオンすら喰らうオブリビオン。
此れほど巨大な物の接近に気づかなかったのは、あの闇の靄のようなものに秘密があるのだろう。音は消せないようだが、猟兵の視覚すら遮るようだ。
その大きさと闇の能力が故に、予知で『見えているのに見えていない』という状態になっていたのだろう。
そして、その巨大な威容は――村人達の心に罅を入れるのに、十分過ぎた。
野生動物の中には、身体の大きさが同種の争いでものを言う種もある。
大きさとは、それだけで驚異となり得るのだ。
ましてや、本来動かぬ城が動くなど――人々にはどれほどの驚異か。
膝を付いたことすら気づかず、呆然と見上げる村人がいても無理からぬ事。
それでも。
それでも彼らが絶望せず、狂乱を起こさずにいられるのは。
猟兵達がいるからだ。
バジリスクを打倒し、野菜の異形の侵攻も鎮圧した猟兵達がいるからだ。
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第3章プレイング募集について、
以下の予定とさせて頂きたいと思います。
公開~7/16(火):内容に大きな問題がない限り確実に採用します。
7/17(水)0時~正午:一応、不採用の可能性はありますが、多分大丈夫です。
7/17(水)正午以降:不採用の可能性が大きくなります。
リプレイは7/17深夜の公開予定です。
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アルトリウス・セレスタイト
そうか。では食いでのあるものをくれてやる
界離で自戒の原理の端末召喚。淡青色の光の、剣に絡みつく茨の針金細工
目標の食欲を目標自身へ向けて自らを「食わせ」、その大きさに比例した規模で存在を虚無へ消し去る
尽きそうもない飢餓に苛まれているようだが、それだけ食えばそれなりに満腹感もあるだろう
自身へ向けられる攻撃は全て攻撃者自身を害するものに変え更に削る
食った後は寝ると消化に良いそうだ
無限の空虚であれば邪魔する者もいない
送ってやるからゆっくりとしておけ
煌天宮・サリエス
……デカイ。えっ、あのバジリスクはコレと会話してたの?
しかし、絶望も狂乱もせず、私達を信じてくれている彼らのためにも頑張らなくてはです。
【真の姿:魔焼の熾天使】を開放。それは、『熾天使の書』をその身に取り込むことで至る姿。銀の髪は金色に、黒翼は白翼に、体から吹き上がる白き炎は新たに4枚の翼を作り出す。
そして、発動するのは【救済式:熾天白炎】。ユーベルコードをも焼く【破魔】の炎は、敵を濃霧ごと焼き払いダメージを与えていくだろう。
夜と闇の世界には、私の炎……熾天使の炎はとても目立つだろうね。
そして、私は高らかに謳おう。
――救済は訪れた。とね
アレンジ・共闘歓迎
稲宮・桐葉
真の姿解放じゃ
基本、弓を使い、機巧大狐ちゃんに騎乗して行動するのじゃ
大狐ちゃんに予備の矢を大量に積み込んであるのじゃ
《闇の帳》の濃霧に対しては【第六感】を研ぎ澄まし、敵の動きを察知、攻撃を回避するぞ
的が大きいゆえ、目を瞑っていても攻撃を外す事はないじゃろうが…見た目通り堅牢ならば弱点を見つけたいところじゃ
目視で確認できる機会を見計らい、窓や目と思われる部分、脚の関節など、脆そう、柔らかそうな箇所を様々な属性を乗せた矢で攻撃するのじゃ
特に窓や目には炎属性、関節には雷属性を試してみるぞ。弱点といかなくても、延焼させたり動きを止められるやも知れぬ
UCも使い確実に当ててゆくのじゃ
アドリブ・連携歓迎じゃ
ジズルズィーク・ジグルリズリィ
POW判定*アドリブ歓迎
英雄など、希望や幻想
そう言い切る大口で、われらを喰らい切れるか、試してみなさい
視覚聴覚を奪われるのならば、捧げましょう
避けきれぬ姿を装い【覚悟】を決め、まさに食らいつかれたその瞬間を【見切り】
ユーベルコード〈神聖なる祈請〉を起動です
不満、憤懣。ジズは、あなたの不満足が手に取るようにわかるのです
時に、希望が目に見えぬ、天啓が聞こえぬ、それが何だというのでしょう
希望を幻想だと見て見ぬ振り、目を背けるよりよほど、見えざる希望を信じ、立ち向かう方々の方が強いと思いませんか
英雄幻想?
われらを、ジズを……見ろ!
そして敗北の味を噛み締めるのです!
今は遠くの村人たちに思いを託します
城島・冬青
・アヤネさん(f00432)と
共闘◎
野菜の次は城ですか
つーかでかっ!
攻撃が通るのかな?
…いや、あのオブリビオンを手懐けられれば深刻なDSの住宅事情に革命が起こせるのでは?食糧難も深刻ですが住宅事情も結構深刻じゃないですか?
この世界他にも色々深刻ですけど
振動…そこは確かに厳しい
ダメかぁ
ぶっ壊すのは忍びないですがやるしかありません
さっきと流れがほぼ一緒なのはスルーして下さい
陽動を担当
敵の攻撃に当たらないよう【ダッシュ】と【残像】を用いて翻弄
アヤネさんの合図が来たらUC【廃園の鬼】を発動
花髑髏から渾身の【衝撃波】を【傷をえぐる】で叩き込む
え?城ですか??
食べませんよ
でもヤドカリは美味しいみたいですね
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
共闘◎
落ち着いてソヨゴ
ここに住めるとしても僕は住みたくないネ
城が動くたびにテーブルの上のお茶がこぼれてしまうよ
この城は無難に倒壊しておこうネ
建築物の爆破となると難しそうだけど
ヤドカリみたいな構造になっていると予測する
それなら本体を攻撃すれば良いでしょ
Silver Bulletを用意
姿が見えづらくても眼だけは見える
どんな生物でも眼は弱点
あれほど大きな的なら外さない
遠距離から撃ち抜く
さらにもう一方も
眼に命中したらその次は目と目の間を狙う
UCでソヨゴを援護
敵の動きが鈍ったら
ソヨゴ!今だ!
と声をかける
落城後
そういえば
日本人ってアレ食べるのかしら?
ヤドカリっぽい城を指差して
鷲生・嵯泉
其の図体を隠してこうまで近付けた事は見事かもしれんな
だが其れも此処迄だ
喰わせるもの等何も無い、疾く骸の海へと還るがいい
視覚で捉えられずとも、其処に在る事に変わりはあるまい
終葬烈実での能力底上げを利用し、第六感にて位置を測る
位置さえ知れれば後は叩くのみ
多少の傷は激痛耐性で無視して前へ進む
其の図体では細かな動きには付いて来れまい
攻撃はフェイントと残像、見切りで躱して接敵し
鎧擬きな其の城ごと、怪力に鎧砕きも加えて砕いてくれる
今此処に在る刃は幻想では無く、お前を屠る為に在る現実
何度でも言おう
此の身は――私の刃は護る為に在る
何れ連鎖を断ち切る其の時まで
何度でも希望に害成すものの前に立ち塞がってくれる
真守・有栖
全てを喰らう。
朱き鬼も。異形たちも。そして、私たちも。
……嗚呼、いいわ。
その欲望。その悪食。相手にとって、不足無し。
一切合切。喰らい尽くす。
真守・有栖。……参る。
語るは不要。
己を以て、示すのみ。
視えず。匂わず。
阻む漆黒の帳。遮るならば断ち斬るまで。
――月喰
光刃、一閃
延びた斬光が闇を裂きて、霧を暴く。
けれど、一条の銀閃に過ぎず。まだ、足りぬ。嗚呼、足りぬ。
我が意を喰らえ
我が意に応えよ
我が意を成せ……!
吼えろ、月喰
その銘の如く。
月に届け。月すら喰らえ、と。
咆哮。
渾身を以て、太刀振る舞う。
刃に込めるは“断”の裂意。
光刃、裂閃。一刀、両断。
迸る光が闇を霧を呑みて。
悪喰なる巨躯も欲をも一切を断つ……!
織銀・有士郎
※真の姿を開放しているので、性格が変わっています。
最後は城ヤドカリ……やはり魔境か。
……甲殻類は斬りがいが無いから迷惑。
「……まぁ、目の前に立つなら斬るだけ」
言葉は最小に。【ダッシュ】で接近して【早業】の如き抜刀術で斬りつける。
下の生き物らしい所を狙えば良いのだろうか。
城を直接狙うよりハサミや足などを狙った方がまだ斬れる気はする。
「……霧」
城だけでなく霧も面倒。攻撃にしろ防御にしろ【野生の勘】を駆使する必要があるか。
敵の攻撃は【見切る】か【武器で受ける】かで対処し、隙あらば【カウンター】で『是空』を放つ。
私は死合いの場のみ存在する。終われば元に戻るだけ。
ペイン・フィン
さて……。
……大きいね。
こうも大きいと、どうにも、自分の武器は、相性が悪いんだけど……。
まあ、何とかしようか。
真の姿を解放。
数歳程度若返り、血霧のようなモノを纏う。
そして、コードを使用。
拷問具8種を錬成し、展開。
後は……、ごり押し、だよ。
ひたすらに、複製した拷問具全てで攻撃を重ねる。
どちらかというと、足止めとかを狙う感じで、かな。
仲間の攻撃がうまく当たるよう、敵の動きを封じようか。
リュカ・エンキアンサス
すごいな。大きくて、おまけに大食漢だなんて
これは……ちょっと攻めあぐねる
けど、とりあえず、頑張ってみようか
銃弾を殺傷力の高いものに変えて、
とりあえずその口っぽいところに打ち込む
大きいから
たぶん外すことはないとは思う
踏み潰されたらひとたまりもないから、
そのときはフックつきワイヤーを利用して城の屋根あたりに引っ掛けて
飛び越えられたらいいけれども、大きさによっては無理だろうから、そのときは攻撃がこなさそうな城部分に退避できたら
英雄とか希望とか、俺にはそういうものを支えにする気持ちは理解できないけれど
請け負った仕事はきちんと終わらせたいと思うよ
もちろん、無理しない範囲内で、だけどね
今は充分、可能だろう
●動く城
無機質ながら整然と組み上がられた見るからに堅牢そうな石壁。
枠に装飾の施された窓。
どこをどう見ても、城である。
手足を持ち動くという点を除けば。
「最後は城ヤドカリ……やはり魔境か」
赤い瞳を細めた織銀・有士郎が『城ヤドカリ』と称した通り、巨城の下からは、それを支える節榑立った足が伸びていた。
甲殻類か昆虫のような足だ。
前方に伸びた巨大な鋏を合わせれば、ヤドカリという表現も頷ける。
「……デカイ」
その巨躯に、煌天宮・サリエスが珍しくも目を丸くしていた。
「……大きいね」
稲宮・桐葉も、その大きさに目を見張る。
「ううむ……大きいのぅ」
ペイン・フィンも白地の仮面で半ば隠れた目が丸くなっている。
三者が思わず零した言葉も反応も、ほぼ同じ。
それほどに、この敵は――大きかった。
「すごいな。大きくて、おまけに大食漢だなんて」
多くの戦場を渡り歩いたリュカ・エンキアンサスでも、これほどに巨大な敵は初めて見るものだったようだ。
「うん?」
その巨躯を見上げていたサリエスが、ふとあることに気づく。
「つまり、バジリスクはコレと会話してたの?」
『会話ドコロカ住マワセテイタガ?』
サリエスが思わず口走った呟きに、悪食の欠片は律儀に答えた。
「アヤネさん、聞きましたか?」
「どうしたの、ソヨゴ?」
そのやり取りに、なぜか目をか輝かせる城島・冬青の表情に、なんとも言えない予感を感じながらアヤネ・ラグランジェが問い返す。
「住めるんですって、あのオブリビオン! これはあれを手懐けられれば、この世界の深刻な住宅事情に革命が起こせるのでは?」
……。
(「革命、好きなのかな」)
既視感を覚えるやり取りに、リュカが思わず視線を向ける。
「落ち着いてソヨゴ」
「だって、食糧難も深刻そうですが、住宅事情も結構深刻そうじゃないですか?」
肩をガシッと掴んだアヤネに、冬青が真顔で告げる。
「ここに住めるとしても僕は住みたくないネ。城が動く度に、中はきっとすっごい揺れる筈よ。テーブルの上のお茶がこぼれてしまうよ」
「振動……そこは確かに厳しい。ダメかぁ」
真顔で返すアヤネに、冬青が神妙な顔で頷いた。
え、そこなの?
『クハハハッ!』
そんなやり取りを聞いた悪食の欠片が、笑い声を上げる。
『貴様ラハ喰ラウガ、村人ハ住マワセテモ良イゾ』
「ほら、やっぱり住めるって――」
「いやいや、そんな筈ないネ」
悪食の欠片のそんな言葉に、冬青が再び目を輝かせかけ、アヤネが肩を竦める。
しかし、悪食の欠片が続けた言葉が――2人に顔色を変えさせた。
『城内ハ我ノ中。我ガ軀モ同ジ。肚ノ中デ良ケレバナ。イズレ喰ウ時マデハ、我ノ肚ノ中デ生カシテヤロウ』
お城の入居費用は生命。
それはまさに、生命を喰らうものとしか見ていない、怪物の言。
「ソヨゴ。この城は無難に倒壊しておこうネ」
「やるしかありませんね」
人間を喰らうものとしか見ていない言葉に、アヤネと冬青の空気が変わる。
2人だけではない。
アルトリウス・セレスタイトも黙って、自由の理を刃と纏った剣を構える。
(「こうも大きいと、どうにも、自分の武器は、相性が悪そうだけど……」)
ペインは拷問具“指潰し”のヤドリガミである。
それ故にか、操る得物も拷問具が多い。拷問具とはその名の通り、人が人を痛めつけるために作られた道具だ。
人が城を攻める為に作られた拷問具など、果たしてあるのだろうか。
「……まあ、何とかしようか」
小さな溜息を一つ漏らしたペインの足元から、血のように朱い霧のようなものが立ち昇り始める。
「ちょっと攻めあぐねるけど、頑張ってみようか」
リュカの愛用するアサルトライフル『灯り木』は拳銃よりは口径があるとは言え、あの巨躯相手では、豆鉄砲にすぎないかも知れない。
さりとて、諦められる筈もない。
(「英雄とか希望とか、そういうものを支えにする気持ちは俺には理解できないけれど……請け負った仕事は、きちんと終わらせたいからね」)
胸中で呟いて、リュカは弾倉を取り替える。
使う得物と敵のサイズ差。彼我の質量差。
其れがどうした。
攻めあぐねていた2人も、戦意を固める。
猟兵達が向ける視線が、気配が。変わっていた。
●生命を喰らう力
『抗ウカ。我ヲ見テモ、抗ウカ!』
猟兵達の戦意を感じ、悪意の欠片が鋏をガチガチと打ち鳴らす。
『此処マデ活キノ良イノハ――久シブリダ』
「……嗚呼、いいわ。その欲望。その悪食」
全て喰らわんとする悪食の欠片の欲望。
「相手にとって、不足無し」
最上の捕食者たらんとするそれを浴びて、真守・有栖は笑みを浮かべていた。
「真守・有栖。……参る」
『ソノ名モ喰ロウテクレル。嗚呼、正々堂々ナドト期待シテクレルナヨ』
有栖の名乗りに返すのは、闇の帳。
城の下、足元から立ち昇るそれが、悪食の欠片の身体を覆っていく。
「成程。眼の前で隠れても――こうも見えなくなるものか」
眼前で闇を纏う様子を見せつけられ、鷲生・嵯泉が右目を瞬かせる。
「其の図体を隠してこうまで近付けた事は見事……と言っておこう」
敵を称賛する事を言いながら、嵯泉の表情には感嘆の相はなかった。
恐れるでも、気負うでもなく。
どちらも不要。
「だが其れも此処迄だ」
すぅぅぅ。
言葉を切った嵯泉が瞳を閉じて、深く息を吸い込む。
――箍は要らん。擁するのは討ち砕く力のみ。
終葬烈実。
心身を解放し、武芸際涯――武の極みの域へと強引に己を高める業。
「喰わせるもの等何も無い、疾く骸の海へと還るがいい」
告げて、嵯泉は地を蹴った。
「……またその霧」
面倒くさそうな嘆息一つついて、有士郎も地を蹴って駆け出す。
「あまり我らを舐めるでないぞ?」
微笑すら浮かべて言い放ち、弓を構える桐葉の額――そしてはだけた胸元には、先程の戦いではなかった赤い紋様が浮かび上がっていた。
周囲には、青い炎も漂っている。
他に大きな変化はないが、それが桐葉の真の姿。
「此れほど的が大きければ、例え闇で遮られ視えずとも、目を瞑っていても。攻撃を外す事などない」
神鹿の弽から青炎を纏った矢を、桐葉が雷上動から放つ。
「鎧擬きな其の堅城、砕いてくれる」
秋水。護るべきの為に災禍を絶ち切る刃。
春暁。禍を必滅せしめる短刃。
嵯泉が振り下ろした2つの刃が、闇を打ち据えた。
青い軌跡を描いた桐葉の矢が、闇の霧の中へ吸い込まれて行く。
「……甲殻類は斬りがいが無いから迷惑」
刀に手を伸ばす有士郎の言い様は、斬れるかどうかではない。斬れないとは疑っていない言い様だ。
その物言いも纏う空気も。まるで、人が変わった様に変わっている。
ガキンッ!
鞘走った涼鳴の僅かに錆びた刃が、闇の向こうの何かを叩いて硬い音を響かせる。
例え見えずとも――見ずとも。其処に在る事に変わりはない。
桐葉と嵯泉は、第六感で。
有士郎は野生の勘で。
闇の向こうの敵の存在を感じ取り一撃を加えていた。
「視えず、匂わず。遮るならば断ち斬るまで」
有栖が月喰を抜き放ち、光刃一閃。
斬光が闇に届いて突き抜ける。だが、それだけだった。一条の銀閃は、闇に届きはしても、闇を払うには足りない。闇の中に一筋の傷も刻んだだろうか。
(「それでも、嗚呼。まだ足りぬ」)
「っ!!」
足りぬものを埋める術を自問していた有栖を、何の前触れも無く動いた闇の塊が吹き飛ばした。
有栖だけではない。
「む? これは……」
「……」
咄嗟に刃を盾と構えた嵯泉と有士郎も、刃で受けた衝撃以上のものを感じていた。魂を直接に掴まれ、生命を削り取られたような感覚。
闇の帳の持つ、生命力吸収の力。
更に大人の頭ほどもありそうな石礫が、幾つも飛来する。
闇の塊は、おそらく悪意の欠片の鋏。それを振り回し近い猟兵を打ちつつ、地面を抉って礫と飛ばしたのだろう。
「むう……やはり堅城か。散発では、効果が薄い」
勘で射っても闇雲に鳴るばかり。
桐葉は闇が晴れる隙を伺って、機巧大狐ちゃんを走らせた。
『コノ程度カ?』
闇の中から、無機質な声が響く。
『コノ程度ノ攻撃デハ、我ハ倒レヌ。ヤハリ――英雄ナド、幻想ダッタナ』
「英雄など幻想――ですか」
嘯く悪食の欠片の足元で、ジズルズィーク・ジグルリズリィが声を上げる。
「そう言い切る大口で、われらを喰らい切れるか、試してみなさい」
言い放ち、しかしジズルズィークは瞳を閉じる。
「その闇が視覚を遮るのなら。奪われるのなら――捧げましょう」
目を閉じたまま、祈るように手を組む。
『早々ニ諦メタカ。然様ナ小サキ身、喰ラウマデモナイ!』
それをジズルズィークの諦めと見た悪食の欠片が、閉じた鋏を振り上げる。
――静聴、聖寵。願くは、われらをあわれみ、赦しを与えたまえ。
胸中で祈るジズルズィークに、悪食の欠片の鋏が振り下ろされた。
●反攻
身体が大きければ、声も大きい。
――我ガ肚ノ中デ良ケレバナ。
悪食の言葉は、村人達にも聞こえていただろうか。
それでも村人達はまだ、絶望する事も、恐慌に陥る事もなかった。
コップの縁でこぼれそうな水のような、ギリギリの状態かもしれない。
そうだとしても、まだ彼らは人のままだ。まだ村は滅んでいない。サリエスの記憶にある、屍で埋め尽くされたあの光景にはならない。
するわけにはいかない。
「ならば、彼らに救済を告げましょう。光を見せましょう」
告げたサリエスの背中で、白が羽ばたいた。
浮かび上がるサリエスの背にあった黒翼は、いつの間にか真っ白な翼になっていた。
更に体から吹き上がった白焔が、背中に2対4枚の焔の翼を作り上げる。
焔が巻き起こした風の流れがなびかせる髪も、銀から金へと色が変わっていた。
それこそが、サリエスの真の姿――魔焼の熾天使。
「魔を滅せよ白き炎。全ての厄災は神の名にて焼却される」
振るう力は、コード・ミカエル――熾天白炎。
背中の焔翼から撃ち出された白焔は、悪食の欠片が纏う闇にぶつかり――焼いた。
『何ッ!?』
「私の炎は熾天使の炎。闇の濃霧すら焼き尽くす」
驚く悪食の欠片に、サリエスが言い放つ。
とは言え、白焔が焼いたのは闇霧のほんの一部。1人の猟兵と巨城という体躯の違いは軽くなかった。
全てを焼き尽くすのは、不可能ではないが時間がかかる。
ならば。
「――救済は訪れた」
サリエスはわざと遠くまで目立つ様に焔の翼を広げながら、白焔を地を這わせる様にして広げていく。
白焔は木々も草も他の猟兵達も焼くこと無く、悪食の欠片の下側、闇霧を纏い直す前に鋏と足があった辺りを焼いていった。
そして、再び露わになる。
節榑立った虫か甲殻類のような足と、巨大な鋏が。
「こういう機を、待っておったぞ!」
桐葉はずっと待っていたのはこういう機会だ。
機巧大狐ちゃんに内蔵していた矢を取り出すと、桐葉は数本纏めて雷上動に番える。
「我が弓より放たれし矢から逃れる術無し!」
バヂィッ!
放つ矢にまとわせたのは、雷の力。
分裂し数十にも及んだ雷の矢は、桐葉の念力で全てが別々の軌道を描いて飛び交う。その様はまさに雷霆の如し。
雷霆の矢群は悪食の欠片の足、その関節に突き刺さった。
「足の関節なら矢が通るか。なら鋏はどうかな」
リュカが銃口を向けたのは、悪食の欠片の鋏。
口代わりに大きく開いたその中へ、銃弾は吸い込まれる様に飛んでいき――ばくんっと口が閉じた。
「無駄だよ。その銃弾は、食えない」
閉じた鋏の中から、銃弾が突き抜ける。
リュカが撃ち込んだのは、あらゆる装甲を撃ち砕く星の弾丸。オブリビオンすら喰らう巨大な口の中であれ、喰われる前に撃ち抜いていた。
だが――弾丸が抜けた鋏が、リュカの頭上に振り上げられる。
「あれ? ……あまり効いてない?」
驚愕は一瞬。
「……アレに潰されたら、ひとたまりもないな」
リュカは銃把から手を放すと、フックつきワイヤーを頭上の闇の中へと当てずっぽうで投じた。
どこでもいい。引っかかれば。
カチンっとかかった手応えを感じると、リュカはワイヤーを引いて跳び上がった。
ヒュンッ、カチンッ。
空中でもう一つフック付きワイヤーを森へと伸ばし、リュカは鋏を躱しつつ帽子を抑えて森の中へと飛び込んだ。
『逃シタカ。チョコマカト』
「こっちですよー」
仕留めそこねて呻く悪食の欠片の足元で、冬青がわざと明るい声を上げる。
ズンッ!
問答無用で鋏が振り下ろされ――冬青の姿が消えた。
「こっちですよー」
かと思えば、反対側に現れる。残像だ。
『ヌゥゥ!』
「やっぱり、ヤドカリみたいな感じだネ」
冬青の残像に翻弄される、鋏を左右に振り下ろす様を見ながら、アヤネが口の端に笑みを浮かべる。
いつでも撃てるように構えていた『Silver Bullet』の大口径を向けて。
ズドンッ!
重たい銃声が響いて、弾丸が放たれる。
『ッッッ!?』
上がる、悪食の欠片の驚愕の声。
「どんな生物でも眼は弱点」
アヤネの弾丸が撃ち抜いたのは、足でも鋏でもない。鋏と鋏の間の奥で僅かに輝いている2つの光点――悪食の欠片の、眼だ。
「そっちだけ見えてるのも、不公平ってもんネ」
ズドンッ!
再び銃声が響いて、もう1つの眼をアヤネが撃ち抜く。
放った弾丸は、UDC細胞炸裂弾。闇の帳の回復力とUDC細胞の内から壊す力が拮抗し、悪食の欠片の視界を大きく制限させる。
「ソヨゴ、今よ!」
「了解です!」
アヤネの声に、冬青が刀を掲げる。
「花髑髏の本当の姿を見せますね」
冬青の掲げた刀に、黒い何かが纏わりついていく。刀鍔に彫られた髑髏が吐き出した何か。或いは刀鍔の花弁が黒い花となったか。
血を啜り生命を喰らう漆黒の刃――それが、封印を解かれた花髑髏のあるべき形。
「生命力を奪うのは、あなたの専売特許じゃないんですよ!」
言い放ち、冬青は花髑髏を振り上げる。黒刃から放たれた衝撃波が地面を走り、城の下に巣食っている悪食の欠片を斬り裂いた。
●届く刃
『グ……グォォアァァァァァ!』
視界を奪われた悪食の欠片が、両鋏をめちゃくちゃに振り回し暴れ始めた。
えぐられた地面や木々が、無軌道に飛び交っていた。
『闇ヲ少シ払ッタクライデ、調子ニ乗ルナ! 満足ニ視エズトモ、貴様ラヲ叩キ潰スクライ訳ナイノダ』
ズッ……ズゾズズズッ!
巨城が動く。前後左右ではない。全方位に。
元々大きかった城が、更に巨大化をはじめていた。城だけではない。振り回す鋏も、打ち鳴らす足も太く大きくなっていく。
『人など――否。この世界の全て、我が喰らうものに過ぎぬ!』
世界の全てを喰らわんとす、底なき食欲と飢え。
それを爆発させることで、悪食の欠片の身体は更に膨張していた。確かに此処まで大きくなった鋏ならば、まともに当たれば人は潰される。
これでは、とても近寄れない――常人ならば。
『貴様ラ如キガ我ヲ倒セル筈ガナイ!』
「ぬんっ!」
めちゃくちゃに振り回される鋏を、嵯泉の構えた二刀が受け流した。
『!?』
「そんなものか?」
飛び交う石が礫となって打つ痛みを無視して、嵯泉は進む。
「其の図体では、フェイントなど使う事もないようだな。闇雲に振り回すだけでは、虚を突くことは出来ん」
淡々と告げる嵯泉は、悪食の欠片の動きを完全に見切っていた。
並以上程度の技量では、嵐と振り回される鋏を見切る事など不可能だろう。だが、今の嵯泉は武芸際涯の域にいる。
苦し紛れの手負いの暴虐など、見切れぬ筈もない。
「今此処に在る刃は。矢弾は。術は。幻想では無く、お前を屠る為に在る現実だ」
言った所で、あの敵に言葉は届くまい。
言葉が届くような敵ではあるまい。
「此の身は――私の刃は護る為に在る」
それでも嵯泉は告げる。何度でも。
「何れ連鎖を断ち切る其の時まで、何度でも。お前のように希望に害を成す存在の前に立ち塞がってくれる」
嵯泉が振り上げた双刃が、片方の鋏を打ち上げる。
鋏を打ち上げてなお止まらなかった斬撃の衝撃が、城の尖塔を斬り裂く。
『ッ!!!??? ソコカ!』
だが、痛みが悪食の欠片に感覚を取り戻させる。
走った斬撃が、嵯泉の位置を告げていた。
悪食の欠片は足をガシャガシャ動かし体の向きを変え、もう片方の鋏を振るう。
「身体を、心を空にし、ただ一振りの刀として閃く刻を待つ……」
その鋏と、刃を納めた白鞘がぶつかった。
刃を納め腰帯から外した、有士郎の涼鳴だ。とは言え、刀一つで受け止めるには、鋏はあまりにも巨大すぎる。
だが衝突の瞬間、有士郎は跳んだ。
「奥義――是空」
跳躍した空中で、涼鳴の柄に有士郎の手が伸びる。
抜き手を見せぬ早業で、少し錆びた刃が鞘走った。
抜刀術。刃を鞘内で滑らせ走らせる事で、斬撃の速度を上げる剣技。刃を鞘に納めるのが必須の剣。畢竟、その前後には隙が生じる。
多くの場合、先の先を取って敵より早く切り込み一撃で仕留める形で使われる。
そんな剣技でカウンターを狙おうなどと、正気の沙汰ではない。
だが、有士郎はそれを成し遂げた。
狂の域に踏み込んだ剣鬼。それが、有士郎の真の姿であった。
●幻想が壊れ、生まれる畏れ
「ん……」
仰向けに倒れていた有栖が、目を開く。
身体が重い。力が入らない。闇の帳を纏った鋏の直撃を受けたのだ。生命力をごっそりと吸い取られていた。
それでも伸ばした手に、何かが触れる。
開いた目に、光が見える。
月。
ああ――そうだ。
指が届く藍糸の柄は。其処に込められた銘は。
月に呑まれず月を喰らえ。そう込められたが故ではないか。
――オォォォォォンッ!
立ち上がった有栖の口が、咆哮を上げる。
「我が意を喰らえ。我が意に応えよ。我が意を成せ――吼えろ、月喰!」
咆哮に引かれる様に、力が入らない腕で掲げた月喰から光が伸びる。
力で斬るに非ず、意念で斬れ。
其の光に断てぬものは無いと知れ。
月まで届く光に届かぬ間合いはないと知れ。
平時の有栖という少女には、見栄っ張りな面がある。
だが、見栄を張るというのは己を信じている事の裏返しだ。例え根拠など無くても、己を信じられるという裏返しだ。
(「私が――私と月喰を信じないでどうするの!」)
故に、有栖は届いた。光刃・月喰――其の妖刀の極みに。
光が迸り、木々より高く伸びていく。
『何ダ……何ダ、何ダ。一体、何ダ其レハ』
其の光は、未だぼやけたままの悪食の光の視界にも鮮烈に映っていた。はっきりと映らぬからこそ、得体の知れない感覚を覚える。
『アリ得ヌ。我ニ届クチカラナド。人間ドモニ、希望ナドアル筈ガ無イ!』
ガキンッ!
焦りを隠さず悪食の欠片が突き出した鋏が、止まった。
『何ダ?』
大地すら喰らう鋏が、岩よりもずっと小柄な影に止められている。
「不満、憤懣。ジズは、あなたの不満足が手に取るようにわかるのです」
止まった鋏の先で声を上げたのは、ジズルズィークだ。
悪食の欠片がとっくに叩き潰したと思っていた小さな身体が、全身に力を入れずに祈る姿勢のまま、鋏を止めていた。
「希望が目に見えぬ、天啓が聞こえぬ、それが何だというのでしょう」
その体を覆っているのは、聖なる護り。天が祈りに応えた証である。
「希望を幻想だと見て見ぬ振りをし、目を背けるよりも。見えざる希望を信じ、立ち向かう方々の方が、よほど強いと思いませんか」
『何ダ……貴様ラ、何ダッ!』
淡々と告げるジズルズィークの声は届けど、其の姿はやはり悪食の欠片には正しく映っていなかった。ただ光る人影とだけ。
「英雄が幻想? われらを、ジズを……見ろ!」
『っ!!』
護りに徹するジズルズィークの言葉に、悪食の欠片が息を飲む。
壊せない、喰らえない。それは、悪食の欠片にとってはあってはならない事。
「そして敗北の味を噛み締めるのです!」
『イイヤ!』
言い放つジズルズィークに、悪食の欠片が言い返す。
進まぬ鋏と、小さな身体で食い止めるジズルズィーク。
「敗北を味わうのは嫌か? ならば――味わう口を奪ってやろう」
そんな膠着状態の所に、藍の瞳を細めたアルトリウスが悠然と進んでいった。
『何ヲスル気カ知ランガ、ソレモ喰ラッテクレル』
「そうか。では、食いでのあるものをくれてやる――顕せ」
悪食の欠片に言い返し、アルトリウスが剣を掲げる。
その手に淡く青い輝きが生まれる
輝きは細い光となり、アルトリウスの手から剣へ。四方八方へ、短い棘のようなものを生やしながら剣に絡みつくその様は、さながら淡く輝く茨の針金細工。
淡青光の茨は切っ先まで届いてなお伸び続け、アルトリウスの前に茨の壁を為す。
『ソンナカ細イモノ。束ネタトコロデ一口デ喰ラッテクレル』
光の茨の壁を、悪食の欠片は大口を開けて喰らおうと――。
『ヌォッ!?』
悪食の欠片の驚愕。
開いた鋏は茨に触れた瞬間、その先端が消失していた。
まるでなにかに喰われた様に。
「お前の『食欲』に干渉した。お前の食欲が食らうのは、もうお前自身だ」
光の茨はただの光ではない。アルトリウスが操る世界に干渉する力の一端。
アルトリウスに向けられる攻撃は、光の茨によって全て攻撃者自身を害するものへと変わる事となっていた。
「尽きそうもない飢餓に苛まれているようだが、それだけの巨体。全て自分で食えば、それなりに満腹感もあるだろう」
茨の壁が解けて、先が欠けた鋏へと絡みつく。
『コンナモノ!!』
絡みつく淡青の光を、悪食の欠片は反対の鋏で引き千切ろうとして――その鋏が消失した。今度は、ほぼ半ばまでだ。
『っ!?』
此処までなれば、ただの攻撃反射ではない。
『ツ、対消滅? ナ、何ヲシタ!?』
「食った後は寝ると消化に良いそうだ」
驚愕の声を飛ばす悪食の欠片の疑問には応える変わりに、アルトリウスは剣から光茨を更に伸ばす。
「無限の空虚であれば邪魔する者もいない。送ってやるからゆっくりとしておけ」
『ッッ!!!』
ぼやけた視界の中にせまる青い光を見た悪食の欠片が、アルトリウスから大きく距離を取るように後ろに跳んだ。
オブリビオンすら喰らうオブリビオンが、ついに猟兵を――畏れた。
『我ガ負ケル筈ガナイ。人ノ中ニ英雄ナドイル筈ガナイ』
「――見つけた」
悪食の欠片が上げたその声を、言葉を。
森に潜んだリュカが、聞き逃さなかった。
それこそが、悪食の欠片の持つ『幻想』だ。リュカが照準を向けるべきものだ。森に飛び込んだ時に切った頬を拭いもせず、銃口を向ける。
「……星よ、力を、祈りを砕け」
バレット・オブ・シリウス――星の弾丸は、あらゆる幻想も撃ち砕く。
パリンッ。
灯り木から放たれた一発の弾丸は、城の壁を貫き、その奥にある悪食の欠片の持つ幻想を――その心を、撃ち砕いていた。
『ッ!?』
パリンッ。
何かが割れる音は、悪食の欠片だけが聞こえていた。
揺らぐ。巨城という巨躯を支えていた、精神的支柱が砕ける。
「……ほんと、嫌だな……」
呟いたペインの手から、複数の拷問具が浮かび上がり、増えていく。
その身体は、幾らか小柄になって血霧のようなものを纏っていた。
それがペインの真の姿だ。
拷問とは、手段である。標的の精神を砕いて、目的を得るための。
鋏を消滅させられ精神の中にあった幻想を打ち砕かれた悪食の欠片を、更に追い詰めるならば、ここ以上の機会はあるまい。
蒼い焔を纏った焼き鏝“ジョン・フット”が、足を包む甲殻に焼印を刻む。
9本の縄からなる猫鞭“キャット・バロニス”が、その足に絡みつく。
膝砕き“クランツ”は、巨城を支える足を挟めるサイズにまで大きさを変えて、その棘を足に突き立てる。
石抱き石“黒曜牛頭鬼”の石は、ペインの予想を超えた数にまで増殖し、膝砕きで関節を砕かれた足の各所を完全に押し潰した。
ペインが選んだ手段は、単純な物量によるゴリ押し。
単純だからこそ、この局面で効く。
増やせるだけ増やした拷問具が襲いかかる光景は、まさに――地獄はここにあり。
鋏を奪われ、心を砕かれ、足を奪われ。
最早蠢く城と化した悪食の欠片の眼の前で、光が天を衝く。
「光閃」
彼方まで届く光刃を、有栖が遠くから悪食の欠片に振り下ろす。
「私の炎も合わせましょう」
サリエスが焔の翼を広げ、白焔を光刃に纏わせる。
「見事な光刃――我も光矢で重ねよう」
桐葉が大狐ちゃんから取り出した矢に、神鹿の弽で光を纏わせ射掛ける。
空中で30本にも分裂した光の矢は、白焔を纏った光刃に沿って、悪食の欠片との間にずらりと並んだ。
「月喰。闇も巨躯も欲をも、一切を、断て……!」
有栖の意念が、光をより強くする。光と焔が混ざり合い、闇が斬り散らす。
間に入った光矢が楔となって城を砕く。
そして、悪食の欠片が――光の中に、消えた。
●革命は成らず
崩れていく。
膨張してもなお城の形を保っていたものが、其の形を支えていた存在を失って。
その大きな物音の中、きゅぅと、冬青のお腹が小さく音を立てる。
廃園の鬼――花髑髏の封印を解く業は、ひどくカロリーを消費するのだ。
隣にいたアヤネにだけは、その音は聞こえていた。
「そういえば……日本人ってアレ食べるのかしら?」
それで思い出したアヤネが、両断された悪食の欠片の身体を指差し、冬青に尋ねる。
「え? 城ですか?? 食べませんよ」
「違う違う、そっちじゃなくてヤドカリ」
「ああ。ヤドカリですか。食べたことないけど、美味しいみたいですね」
アヤネにツッコまれながら、冬青は笑顔で答え――。
「食べます?」
「残念、もう消えかけてるネ」
悪食の欠片の方は、もうその存在が骸の海に還りつつあった。
●後日談
村の受けた被害は軽くなかった。
多くの家屋が半壊以上。
畑も繁栄を望む者たちによって、大半が荒らされてしまった。
だが。
領主を城ごと倒したという事はつまり、しばらくはこの湖畔周辺はヴァンパイア達の支配が及ばない地域となった事を意味していた。
故に、行商人が頻繁に訪れる事が可能となった。
畑を荒らされはしたが、それ以上に多くの土地が耕された。種さえ得られれば、新たに畑を作る場にこまる事はない。
壊れた家も、資材は立派な石材が大量に転がっている。
オブリビオンだった城の残骸を使う事に抵抗があるならば――そこに抵抗がない商人に売って別の資材を得ればいいだけの事だ。
一時訪れた、滅多に無い程の自由。それは、長く続かないかも知れない。
それでも、その間に村人たちは復興の足がかりを得られる筈だ。
人々は、時に英雄を望む。
されどかの村人達は、英雄に頼り切る事無く生きていくだろう。
英雄を、見たからこそ。
猟兵達がその二文字で見られるのを望まないとしても――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年07月18日
宿敵
『悪食の断片』
を撃破!
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