#アリスラビリンス
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「はぁはぁ…」
メイプルの木の葉が絵の具をぶちまけたように毒々しく色を変えた森を一人の少女が懸命に駆ける。手にした旅行鞄を大切そうに抱きかかえて、息を切らし、玉のような汗を流しながらそれでも必死に足を動かす。
がしゃん。がしゃん。
少女の背後からは重い金属音がいくつも重なり、まるで不気味な音楽を奏でているようだ。
「おにげおにげ、かわいいかわいい僕のアリス!せっかくのゴチソウなんだから、モット楽しませておくれよ!!」
音の外れたような不気味な声が低く、高く、メイプルの森に響く。少女の背後に迫った、重い金属音の招待。彼女の背を優に超える巨大な金属鎧をまとった兵隊たちが彼女を追い詰めようとしていた。
「なんで、こんなことに…私、なんでっ!っ!」
少女は貼りだした木の根に足を取られ、どさり、と転んでしまう。その間にも兵隊は距離を詰め、不気味な声は少女の心を嬲るように響き渡る。
「…んんぅ…こんなのいやぁ!」
少女は絶叫とともに立ち上がり、旅行鞄を開く。取り出した謎のガジェットを携え、少女は一人、絶望の迷宮の者たちに立ち向かうのだった。
「キャキャキャ…アラガエあらがえ。こコろがクチタとき、おまエをいただくとシヨウ」
不気味な声は高く低く、絶望を振りまき少女を追い詰める。
キケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)はグリモアベースに到着するとすぐに猟兵たちを呼び集めた。
「アリスラビリンスの世界の事件だ!あの世界のアリスの一人が今にもオウガに殺されてしまう」
予知の内容を搔い摘んだキケの声に猟兵たちが聞き耳を立てるのを確認したキケはより詳しい話を続ける。
「アリスラビリンスのたくさんある不思議の国の一つ。メイプルの森が広がる世界に一人の女の子がオウガ、つまりオブリビオンの餌、アリスとして召喚されたんだ。アリスの女の子はメイプルの森でオウガたちに捕まらないように逃げている。みんなで彼女の救出に向かおう」
アリスラビリンスのオブリビオンであるオウガによって彼らの餌として召喚されたどこかの世界の生命アリスはアリスラビリンスの世界で理不尽な命の奪い合いに身を投じることになる。今回、キケの予知した少女もまた、アリスの一人でありオブリビオンの被害者である以上、彼女の救助は猟兵の使命といっても過言ではないだろう。無垢な存在がオブリビオンの脅威にさらされている予知を思い返しキケは一瞬眉を顰め、説明を続ける。
「少女を追っているのは巨大な金属鎧をまとった兵隊のようなオブリビオンたちと、それらを指揮するオブリビオンだ。指揮しているオブリビオンは姿を現さずに少女を痛めつけるみたいに兵隊で執拗に追い回してる。だから、まずは少女を兵隊から守ろう。きっと指揮しているオブリビオンも、兵隊たちが倒されたら姿を現すはず。そうしたら出てきた指揮していたオブリビオンも倒して、少女を元の世界に帰してあげよう」
アリスラビリンスにアリスとして召喚される者たちは本来彼らが住んでいた世界が存在する。そうてアリスラビリンスにはアリスを元の世界に帰す扉があるはずなのだ。
「アリスは自分か帰るための扉を近くまで行けば知覚できるらしい。だから、オブリビオンを倒したら少女と協力して彼女が元の世界に帰れるようにしてあげよう」
キケは一通り説明し終えると短く息を吐き、呼吸を整える。
「まとめるよ。アリスラビリンスの世界に召喚された少女がオブリビオン、オウガに襲われている。みんなはオブリビオンを倒して、少女が元の世界に帰れるように協力してあげよう。理不尽に召喚されて命を奪われるなんて、そんなのはずがない。みんな、何としてもあの子を助けてあげて。よろしくね」
キケは言い終わるとグリモアを起動する。極彩色の世界が、小さなグリモアの向こうに移りこんでいた。
Yggd
こんにちはYggdです。メイプルって甘いイメージですよね。パンケーキにはメイプルシロップがたまりません。
アリスラビリンスの世界でアリスの一人がオブリビオン、オウガたちに襲われています。猟兵の皆さんは急行して彼女を助けてあげましょう。また、アリスには自らの世界に帰るための扉を知覚する能力があります。アリスに強力して彼女を元の世界に帰してあげること。それがアリスを助けることになります。
それでは、皆さまの勇気あるプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『トランプの巨人』
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POW : 巨人の剣
単純で重い【剣】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : トランプ兵団
レベル×1体の、【胴体になっているトランプのカード】に1と刻印された戦闘用【トランプ兵】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : バインドカード
【召喚した巨大なトランプのカード】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:はるまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アーノルド・スカーヴァティー
?【アトシュ・スカーレット(f00811)と参戦】
俺自身も追われる立場だけど、自分の扉がわかんねー俺より予知ってのができるグリモア猟兵が言ってた通り、あの子の為に張り切って行きますか!
なんかその辺で合流した奴と共闘するぜ
…なんだか、初めて会った気がしねぇけど、元の世界であったことでもあんのかな?知らんけど
【殺人芸妓・葉薊】での連続攻撃を主軸に戦うぜ
アキレス腱や肘の後ろを狙って手足を動かせないようにしたいな
…殺したいなぁ、この兵士も、あの猟兵とかいうやつも……
って、あいつは味方!!そりゃダメだろ!
…あ、すんません!!こうしないと寿命減るから!!許して!
アドリブ大歓迎
アトシュ・スカーレット
【アーノルド・スカーヴァティー(f19324)と参戦】
アリスラビリンスか…
いきなり知らないところに放り出されて食べられそうなのは怖いよね…
こっちで合流できた人と共闘するね
……??
いや、オレはあなたのことは知らないけど…?
女の子の護衛なら任せて!
庇えるように近くにいるから、安心してね
両手の武器を銃にして、【付与術・天災式】で炎と氷、腐敗の呪詛も一緒にかけておくね
アーさん(アーノルド)、まだ戦い慣れしてなさそうだし、なるべく援護にまわ…ってなんでオレの方攻撃してくんだよ!?
…はぁ!?UCのデメリットが味方を攻撃がしないとマズいタイプ!?
なんだよっ、その不便なやつ!!
メイプルの森に甲高い金属のぶつかり合う音が響き渡る。森にやってきた者はその激しい戦闘の音に自らの体が発する警戒感に身構えるだろう。
「まぁ、俺自身も追われる立場だけど…」
音を聞きつけた青年はぐっと自らの得物を握りこむ。ひどく手に馴染み、体の奥底から湧き上がる衝動に頬を吊り上げ、青年は森を駆け出した。
「ぐぅう…!」
少女はガジェットを構えて巨大な金属鎧の兵隊の攻撃を受けるが、衝撃を殺しきれずに軽々と吹っ飛び、地面に転がる。よろよろと立ち上がる彼女の様子を鎧の兵隊たちと彼らが呼び出したトランプカードの体に武器を持った奇妙な姿の兵士が嘲笑するように眺めている。
「はぁ…はぁ…」
息も絶え絶えの少女は懸命に立ち上がろうとするが、膝が笑い再び崩れ落ち、兵隊たちは嘲るように体を揺らした。だが直後、一体のトランプカードの兵士の体に無数の穴が開く。
「いきなり知らないところに放り出されて食べられそうなのは怖いよね…」
銃声とともにトランプカード兵士の一体を紙切れに変えたのは一見では清部の判断に迷う少年だった。少年はそのまま流れるような動作の中で両手に携えた銃を構えて、続けて2体のトランプカードの兵隊に風穴を開ける。
「安心してね。オレは君を助けに来たんだ」
少年、アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)は両手に構えた二丁の愛銃の弾倉をほんの瞬きの程の間に換装しながら、少女と兵隊たちの間に割り込むように立つ。
「ほ、ほんとうに…」
両目に涙を湛えて見上げる少女にアトシュは一瞬だけ、彼女を振り返って笑いかける。
「ありがとう、ございます。…私は、メニィ」
「メニィさんだね。オレはアトシュだよ」
短く自己紹介を済ませる二人。兵隊たちはアトシュを警戒し、武器を構えて様子を見ている。アトシュは自ら、さらに言えばその手元の銃に視線が集中しているのを感じる。
「チィ…オマえじゃマだなぁ…」
メイプルの森に高く低く、不気味な声が響く。声を聴いた兵隊たちは弾かれるように二人に接近を始め、アトシュの愛銃が兵隊たちに向く。だが、兵たちの刃がアトシュに届くことはなかった。兵隊たちの横腹を食い破るように別の青年が武器を手に躍り出たのだ。
「見つけたぜ!」
白い髪を鬣のように靡かせ、乱入してきた青年は喜色を含んだような声で彼の得物を握り込んで敵に殴りかかる。アトシュは飛び込んできた青年に一瞬だけ眉を顰める。
(直情的な攻撃だ、まだ戦い慣れしてなさそうだな)
アトシュは青年の未だ洗練されたとは言い難い直情的な戦闘を看破し、金属鎧の兵隊に蹴りを見舞った青年の背後に回り込んでいたトランプカードの兵隊を打ち抜き支援する。
「おっ、サンキューだ」
援護を受けた青年がアトシュを振り返る。大きな緑色の瞳が中性的な印象を与える顔立ちだ。青年はそのまま一歩踏み込むと急加速して獲物を振りかぶる。青年の緑の瞳が煌めき尾を引いて駆ける。
「っ!?なんでオレの方攻撃してくんだよ!?」
青年とアトシュ、互いの武器がぶつかり合い火花を散らす。意図の読めない青年の行動にアトシュの背筋に冷たいものが流れ、背後にかばったメニィの息を飲む声が聞こえた。
「…殺したいなぁ…」
「お前、猟兵だろう!?」
青年の口から洩れた欲望の呻きにアトシュは戦慄し、不安を拭うように大声を上げる。
「って、こっちは味方だった!すんません!こうしないと寿命減るから!!許して!」
アトシュの声に青年ははっとして飛び退き謝罪を口にする。
「…はぁ!?UCのデメリットが味方を攻撃がしないとマズいタイプ!?なんだよっ、その不便なやつ!!」
いまだ早鐘を打つ動悸に任せた感情を乗せてアトシュは青年に罵声を浴びせ、青年が再度軽く頭を下げるが、二人はそんなやり取りの間にも周囲のオウガたちに注意を払うのを忘れてはいない。幸い、オウガたちは青年によって受けた被害に警戒し、二の足を踏んでいる。
「ほんとすんません。えっと、そういえば名乗ってなかったか。俺はアーノルドで」
「…アトシュ」
青年、アーノルド・スカーヴァティー(欠片の死神・f19324)はアトシュの名前を聞くと怪訝な顔を浮かべる。
「…なんだか、初めて会った気がしねぇけど、元の世界であったことでもあんのかな?」
「……??いや、オレはあなたのことは知らないけど…?」
純粋な疑問の感情を抱いたようなアーノイドの様子にアトシュは思ったことを素直に言葉にする。けれど、アーノイドはさらに深く首を捻るのみだ。会話の様子から警戒が緩んだと思ったのだろう。金属鎧の兵隊の一体が手に持った直剣でアーノイドに切りかかる。
「させないっ!」
動いたのはメニィだ。手に持った用途不明のガジェットの金属部分で振り下ろされる直剣をはじく。
「へぇ、根性あるな。ありがと」
「守ってもらってばかりは、嫌だっただけです!」
茶化すようなアーノルドにメニィは語気を強く言う。けれど、メニィが暴力の応酬に慣れているようには見えず、ガジェットを持つ手は震えている。荒い口調になっているのも押しつぶされそうな恐怖をこらえる空元気なのだろうことは明らかだ。
「そっか。気が付けば見知らぬ世界。それに加えて自分と扉も見つからない俺だけど、君は頑張ってるし、張り切って行きますか!」
「扉?それじゃあ、あなたも…」
メニィの言葉を聞き終える前にアーノルドは再び緑の瞳を爛々と輝かせてオウガの群れに獲物を手に突貫する。
「アーさん、援護するよ!メニィさんの護衛なら任せて!」
突撃するアーノルドを見送り、アトシュは二丁の愛銃を構え、銀の瞳で狙いをつける。一丁の銃は赤く、もう一丁は青いオーラを纏う。それは猛火と氷結の魔力を宿らせたアトシュの付与術・天災式。災いをもたらす腐敗の呪詛とともに炎と氷の二重苦を纏った弾丸が左右の銃口から放たれる。先を駆けるアーノルドの緑の瞳と赤と青の弾丸の軌道が三本の筋となり、オウガたちの迫る。
「巻き込まれたくないヤツは視界に入るな!!」
「我が身に宿れ、灼熱の業火、全てを凍てつかせる氷雪!天災の力、ここにあり!」
流星のごとき三色な輝きはオウガたちの間を駆け、敵を次々と打ち砕く。緑の光は流れるようにオウガの懐に飛び込み腱や関節を破壊し、続いた赤と青の瞬きがオウガたちを穿ち、地に引き倒す。
「…すごい」
メニィはアトシュの背に守られながら、メイプルの森に流れる光の舞踏に目を奪われるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アンコ・パッフェルベル
騒がしいですね。お陰で探す手間が省けたのは幸いですけども。
どちらさま?(迫る巨人たちを見)ハートの女王。
(しゃらり、ハートの飾りを揺らす)
…あーうそうそっ!頼まれてあなたを助けに来た者ですー!
ここは私達が足止めするのでそのスキに逃げるですよ。
じゃ行きましょーか白狼。テトちゃんも。
流血の代償を負いながら鞭と盾を手に突っ込むです。
鴨が葱しょってやってきた、という顔ですね?
逆ですよ。
【早業】+【範囲攻撃】鞭撃一閃。
追撃で猫神ちゃんが一掃。そして私が癒やされる。
沢山居るとこに突っ込んでしばくので隙は白狼に守って貰ったり【盾受け】もするです。
敵が合体したら?これ(召喚石)をその辺にぽいぽいして続行です。
「せいやっ!です!」
アンコ・パッフェルベル(アクロニアのストライダー・f00516)は彼女の快活な声に気合を十分に乗せ、手にした鞭を横に一閃して薙ぎ払い反対の手に持つラウンドシールドを突き出して道をこじ開けてメリィのそばに立つ。
「あなたは?」
「んー?」
アンコの登場にメニィは彼女を他の猟兵と同様自らの救出に来た存在なのだろうと予測して安堵の表情を浮かべる。しかし、アンコが答えを濁すのでその表情が一気に猜疑心に満たされる。極めつけにアンコは茶化して迫る巨人たちを見、手にしたしハートの飾りをしゃらりと揺らして自らを『ハートの女王』と自己紹介したことでメリィは手にしたガジェットをアンコに向けることになる。
「…あーうそうそっ!頼まれてあなたを助けに来た者ですー!」
メニィが本格的に敵視するのでアンコは大慌てで自分の発言を撤回する。メニィよりもさらに幼い少女で、紫色の足元まで届くかと思われる長いツインテールのアンコは、年相応の愛らしい笑顔で自らの手に持った鞭を引き、年齢の割に様になった戦闘態勢を整える。ハートの形の鞭の先が地面を削り取ると、いつの間にかアンコの周囲には美しい白い毛の狼と、アンコよりも一回り小柄な猫の耳を模したフードを被った聖職者風の人影が現れる。
「ここは私達が足止めするのでそのスキに逃げるですよ。じゃ行きましょーか白狼。テトちゃんも」
アンコはラウンドシールドを掲げると金属鎧の兵隊に真正面から突撃する。その無策と思われるような行動に兵隊は馬鹿にしたように肩を揺らした。兵隊の鎧に張り付いていたトランプの絵柄が浮き上がり、剥がれ落ちる。落ちたトランプのカードからは黒い棒のような手が生え、足が生え、そしてどこに保持していたのか各々が武器を携えて立ち上がる。たちまち、アンコはトランプカードの兵士と兵隊によって取り囲まれてしまう。数的不利での無謀な突出行為はどう見ても自殺行為だ。兵隊はアンコが倒れる様子を確信する。
「鴨が葱しょってやってきた、というかんじですか?逆ですよ」
けれど、アンコは余裕すら感じさせる笑みを浮かべる。一瞬の後、鞭撃一閃。薙ぎ払われたトランプカードの兵士に修道服の人影、テトが鋭い爪を立てて薄いカードの体を引き裂いてゆく。自らの前に立つ存在の脅威を正しく認識した兵隊は体を縮めて力を溜め、ばねのように体を跳ね上げて直剣を水平に薙ぐ。けれど、兵隊の一撃は割り込んだ白い影によっては軌道を変えられ空を切る。アンコの白狼が間に割り込み、峰に体をぶつけて切先を逸らしたのだ。アンコが薙ぎ払い、テトが止めを刺して回り、白狼が守る。洗練されたコンビネーションによって不利を覆し、アンコは再度鞭を振るう。
「…!」
直後にアンコのすぐ横で甲高い金属音が響く。見ればメニィがガジェットを持ち上げてアンコを守るように立っていた。足元にはトランプカードの兵士の持つ直剣が転がっている。白狼が金属鎧の兵隊にかかりっきりになった瞬間を狙って一体のトランプカードの兵士がアンコめがけて凶器を投じ、それをメニィがガジェットで防いだのだ。
「あ、ありがとです。でも、さっき逃げてって」
「そんなに血だらけな女の子に全部押し付けて、逃げられるわけないでしょう!」
メニィが指摘した通り、アンコの体はテトを召喚するのに必要な流血の代償により絶えず血液が皮膚を裂いて流れだしお世辞にも無事とは言い難い状況になっていた。アンコもその程度は織り込み済みの戦闘だったのだが、メニィには見逃せるものではなかったのだ。本気で心配した様子のメニィは震えながらもしっかりとした声で続ける。
「私のために来てくれたのに、代わりに誰かが傷つくのは嫌…それなら…邪魔かもしれないけど私もできることをしたい!」
メニィの手は命の奪い合いの重圧に震えている。けれど、それと同時に彼女の宣言には確固たる意志が宿っていた。
「わかったです。それじゃ!そばを離れないでくださいね!」
アンコはメニィの意思を組み取り、鞭を振るう。テトがそれに応じて追撃に飛び出し、白狼がアンコを守る。時々、メニィが震える手でガジェットを振るって敵の攻撃を受け止める。そうして次第にメニィと猟兵たちは金属鎧の兵隊たちを押し返し始めたのだった。
成功
🔵🔵🔴
フォルク・リア
どの世界でもオブリビオンに大差ないか。
「なら、此方のする事も決まっている。」
遠方から敵の配置や動きを見極めてから
メニィに近づくと共に突出しない様に注意しつつ敵と距離を詰め。
「先ずは安心して欲しい
これだけ仲間がいるんだからね。
ただ、万一の時は
君が戦って、逃げる覚悟はしておいた方が良い。」
自分が必ず勝てるとは敢て言わずに。
攻撃を見極めて拘束する闇の黒鎖を発動。
自分の周りに鎖を巡らせトランプのカードと敵本体を纏めて拘束。
カードを留める事により敵から自分の姿を隠し
嵐撃縋咬鞭でカードの隙間から【2回攻撃】や
【衝撃波】を伴った攻撃でダメージを与えて行く。
「トランプの姿をしてる割に
頭を使った戦いは苦手か?」
猟兵たちとトランプの兵隊たちが激しい戦闘を繰り広げる中を一歩引いた場所からフードを深くかぶった男が観察していた。彼は兵隊たちの強さを自らの観察眼で推し量り、顎に手を当てふむ、と考えこむ仕草を取る。どの世界でもオブリビオンに大差ないか、と。
「なら、此方のする事も決まっている」
フードの男、フォルク・リア(黄泉への導・f05375)はぼそりと言うとゆったりとした足取りで戦闘の渦に足を踏み入れる。
「おっと」
兵隊の攻撃をガジェットで受けたメニィが眼前でよろめいたので、フォルクは彼女が転ばないよう軽く抱き留めてやる。フォルクの視線がメニィのガジェットを観察する。大きな鋼の薄い板が重なり合い、頂点に留め具で固定された扇のような構造が左右に突き出した、巨大な盾のような外見だ。
「あっ!」
フォルクが一瞬の間に自らのガジェットを観察していたことに気が付いた様子もなく、メニィは飛び起きようとして足をもつれさせ、再びフォルクの支えられる。メニィは慣れない戦闘に疲労と、命を狙われる恐怖で上手く体を動かせない。
「先ずは安心して欲しい。これだけ仲間がいるんだからね」
そっとメニィを立たせてフォルクは落ち着き払った声で彼女の肩を叩く。
「ただ、万一の時は君が戦って、逃げる覚悟はしておいた方が良い」
フォルクの言葉は優しいが決して甘くはない。メニィは青い顔を白くして、しかし、気を持ち直すように首を振ると力強くうなづいた。厳し現実を直視できる人が、その前に安心してくれといったのだ。メニィはその言葉を信じた。フォルクが勝利の確約を行わないのは彼が研究者であり、常にあらゆる状況を想定する性格であるからだろうか。しかし、おかげでメニィはフォルクの言葉を信じ、申し訳なさそうな表情ながらも、体力の温存のために後退する。メニィが下がるのを確認したフォルクは彼女から視線を切り、正面に構えている兵隊たちに意識を向ける。
メニィに追撃を加えようと迫っていた兵隊たちが巨大なトランプカードをかざし、投擲してきた。魔法的な力が込められているカードであることは、知識の深いフォルクには人目に分かる。真っ直ぐに飛翔してくるカードに向けてフォルクは自らの指先を向け、何かを手繰るように動かす。瞬間、彼の手からは影のように黒い鎖が飛び出し、空中でカードを絡めとり固定する。影の鎖は更にフォルクの周囲を取り囲むように浮き上がり、結解を形成しては飛んでくるカードを次々と固定し立て、兵隊たちの視線を遮る。ちろちろと伸びる影の鎖はトランプを這いまわり、近づこうとした兵隊たちの足を救い上げようと絶えず狙い、その隙にトランプカードの陰にフォルクを見失う。鬱陶しい鎖を直剣で弾き、兵隊は激高するように空中に並んだトランプカードに切りかかる。
「トランプの姿をしてる割に頭を使った戦いは苦手か?」
突っ込んできた兵隊に冷めた声と鋭い風切り音が届く。視界の端ちらりと映った鎌首をもたげた蛇のような鞭の先が強かに兵隊を薙ぎ、わずかに開いたトランプカードの隙間に吸い込まれていく。予想にしなかった攻撃に混乱する兵隊たちだが、思考を与える間もなく再び固定されたトランプカードの隙間から鞭が伸びてきて強烈な打撃を与え続ける。
「なにヲしてイルんだ!マッタクつまラない。もっとあいつラをくルしめろ!」
高く低く、不気味な声がメイプルの森に響く。激高していた兵隊たちははっとしたように体制を立て直すと、トランプカードから距離を取る。
「ふむ、黒幕は多少、知恵のある相手か?」
フォルクは空中に固定したトランプカードに潜んだまま、敵の観察を続ける。新たな世界、アリスラビリンスでの彼の『研究』は始まったばかりなのだ。
成功
🔵🔵🔴
マルガ・ヴァイツェネガー
遠呂智・景明と連携
先ずはあちらの兵隊さんが相手ですね!
遠呂智さん!今回は宜しくお願いします、張り切っていきましょう!
兵隊さん達は指揮を受けているだけあって統率が取れた動きをしていますねー、正面から行っても効率が良くないかもです!先ずはフラム・ヴェスパで牽制しながら接近、隊列の横から【早業】で武器を切り替えます!ウィース・ベルグランデにバスターカートリッジをセット、持ち替えて【グラウンドクラッシャー】を叩き込みますね!
動きが鈍ったら遠呂智さんと一気に攻勢に出て優位に立っておきたい所!
さぁ行きましょうベルグランデ!キミのデビュー戦、しっかりと使いこなしてみせます!
アドリブ歓迎
遠呂智・景明
マルガ・ヴァイツェネガーと連携
アドリブ歓迎
さて、今回は新しい武器のお披露目ってことらしいし、マルガを支援するかね。
マルガが横っ面叩きやすいように、敵を正面から引きつける。
まずは●殺気をぶつけてこっちに気を引く。さあ、こっち向けよデク人形ども。
UC【風林火陰山雷 雷霆の如く】で精霊達に命じて、遠隔から敵を攻撃する。
マルガの攻撃が決まりゃ、それに合わせて敵に特攻だ。
●早業、●2回攻撃、●鎧無視攻撃、出し惜しみはしねぇ、一緒に喰い散らかすぞマルガ!
「先ずはあちらの兵隊さんが相手ですね!」
獣を彷彿とさせるほど豊かな赤茶の髪を振り乱しながら、軽装の年若い女性が拳銃を握り弾丸を放つ。弾丸が発射されるたびに響く銃声は質量を持っているかのように重く、それだけで扱うことには尋常ではない力を必要とするのがわかる。その怪物じみた拳銃を握り女性は難なく弾丸を発射してゆく。最低限の布面積程度しかない彼女の服装と、重い弾丸を放つ彼女の荒くれのような豪快な腕っぷしが、野性味がある彼女の活発な魅力を際立たせ、戦いに生きる者であることを如実に表していた。彼女の隣には雰囲気が異なる、片側の頬を持ち上げて笑みを湛える飄々とした雰囲気の美丈夫が腰に差した刀に片手を乗せて控えている。後ろで一つにまとめて背に流した彼の長い黒髪には、所々色素の薄いところがあり幾筋の刃が煌めくような模様を描いている。
「マルガ、今回は新しい武器のお披露目なんだろ?なら、俺は支援に徹する」
「遠呂智さん!宜しくお願いします、張り切っていきましょう!」
軽装の女性、マルガ・ヴァイツェネガー(絶望を砕き生を掴む者・f11395)は隣の美丈夫、遠呂智・景明(いつか明けの景色を望むために・f00220)に礼の言葉をかけると戦場を大きく迂回するように駆け出し、メイプルの森の陰に飛び込む。
「さあ、こっち向けよデク人形ども」
マルガの大胆に露出した背を見送った景明はそれまでの美丈夫の気配を一変させ、低く唸るような、けれどハッキリ分かる重圧感を感じさせる声色で威圧し眼前の兵隊を見据える。もし、兵隊たち同様に景明の放つ殺気を浴びれば、自らの皮膚がビリビリと粟立ち、鍛えの無い者ならば腰を抜かしてしまうだろう。景明の殺気に危険を感じた兵隊たちは小細工を弄することを捨て去り、抜剣してありったけの力で切りかかる。
「それじゃあ届かねぇ。雷霆の斬れ味に切り裂かれろ」
景明はふっと兵隊たちを嘲るように鼻を鳴らし、腰に佩いた刀に添えていない方の手を横に払う。景明の周囲に青白い電光が迸ったかと思えば、眩い雷光が先頭にいた兵隊を雷撃の槍が貫き内部から破壊する。迸る電撃に崩れ落ちた兵隊の傷は、鋭い刃によって切断されたかのように滑らか走っている。
景明の攻撃に兵隊が攻撃を躊躇した一瞬の間を埋めるようにズンズン、と再び腹に響く銃声が森に響く。兵隊の隊列の側部だ。
「一気に決めます!」
森の影から飛び出し、兵隊の隊列の側部に飛び出したマルガが手にした銃を腿のホルダーに収納すると、勢いに任せ体ごと突進するように前傾姿勢で走る。美麗な動きではないが、言葉は悪いが泥臭く無駄のない戦闘にだけ特化した動きで敵のど真ん中に躍り出る。マルガは背負った巨大な斧槍を振り上げ、いつの間にか口に咥えた極彩色に光る力の籠った筒、カートリッジを吐き出し空中で斧槍にはめ込む。
「さぁ行きましょうベルグランデ!キミのデビュー戦、しっかりと使いこなしてみせます!」
マルガの持つ巨大な斧槍、ウィース・ベルグランデは持ち主の意に応えるように、カートリッジを一層輝かせ刃を薄青に煌めかせる。全身を弓のように逸らせ、反動を利用して放つマルガの渾身の一振りが一体の金属鎧の兵隊に向かって振り下ろされた。
戦闘が始まってから最も大きな衝撃がメイプルの森を震わせた。衝撃の中心地にはもうもうと土煙が立ち上がり、胸先の視界すら朧気だ。けれど、彼らが臆することはなかった。極彩色の輝きは土煙の中でもはっきりと色褪せず、それに呼応するように雷光が煌めく。
「出し惜しみはしねぇ、一緒に喰い散らかすぞマルガ!」
「はい!」
景明が刀を抜き放ち、雷を纏わせて土煙の中で叫べば、マルガの溌剌とした返事が続く。互いの武器の放つ輝きを頼りに、土煙の中で狼狽する兵隊に急接近し、一瞬で切り伏せて回る。景明の雷光を纏う一振りが走れば、雷鳴が獣の唸り声のように轟き、マルガの一撃は兵隊を押しつぶして巨大な足音のように地面を揺らす。視界を潰された兵隊たちは自らが獰猛な獣の檻に閉じ込められたような感覚に襲われ、自棄になって武器を振るう。手応えなんてあるはずもなく兵隊は鋭い一閃と剛腕の一振りに屠られる。
土煙が晴れた時、メイプルの森の一部は更地と化しメニィを守るように立つ猟兵たちが残っているのみだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 ボス戦
『チェシャ猫』
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POW : キャット・マッドネス
【殺戮形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : チェシャ・スクラッチ
【素早く飛び掛かり、鋭い爪での掻き毟り攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ストレンジ・スマイル
【ニヤニヤ笑い】を向けた対象に、【精神を蝕む笑い声】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
兵隊を一掃した戦闘の余波で一部の木が切り倒され視界が開けたことにより、森の陰に隠れていた黒幕が姿を現す。暗い藍色の毛に所々赤黒い染みが浮き上がり、やせぎすの体は骨ばって骸骨のようだ。ツンと尖った耳と長い尾が猫のように見えるが、つぶれた顔に浮く血走った眼と獰猛な牙、それにちろちろと覗く血色の悪い舌が気味悪い。
「めんどうヲ、かけサせヤガッて。マッてロ。おまエラぜんいんくるしメて、ぜつボウさせテ。ころしてクレとイウまデいためツケテ、そシて、コこロごと、くってヤる!」
低く、高く。猫のような化け物の声が響き、猟兵の背後でメニィが息を飲んで崩れ落ちる。血走った眼がぎらぎらと輝いて猟兵たち眺めて、化け物は牙を剥いた。
アーノルド・スカーヴァティー
【アトシュ(f00811)と】
お?なんか斬りがいのありそうなオウガじゃねぇの
さーて、殺される準備はOK?
お、サンキュー坊主
流石にあの子庇いながら戦う余裕はないから助かるわ
…まぁ、一回だけなら寿命削れても問題はないだろうな
黒鍵・月桂樹と暗器・豌豆で攻撃していくわ
俺はそんなに周り気にしてる余裕はまだないから、攻撃に専念するか
あっ!ヤッベ!!武器が…
ないわけねぇだろ?
この光の剣、すぐに出せるんだからな!
…手抜いてないって!!むしろ精一杯!!
アトシュ・スカーレット
【アーノルド(f19324)と】
へーふーん
テメェがここのオブリビオン?
いいじゃねぇか!なかなか面白そうだな!
アーさん、今度はオレも前衛行くわ
メニィちゃんの方に行かせないように注意はオレがすっからあんたは気にすんな
UCの代償もあるし、さっさと片付けるぜ!
アーさんと連携して攻撃して行くわ
オレは援護や隙を潰すように行動するぜ
…てか、アーさんとの共闘、かなりしやすい気がするのはなんでだ?
……しかも、アーさんの動き、こんなもんじゃねぇ気もするんだけど
手抜いてないよな?
「へーふーん」
「お?なんか斬りがいのありそうなオウガじゃねぇの」
アトシュは興味なさそうに、アーノルドは興味深々に、二人は真逆の反応を目の前の化け物に返す。
「テメェがここのオブリビオン?」
アトシュは手に取った二丁の拳銃を掌の上で一回転させ、形状を変化させる。飛び出した二振りの刃が白い軌跡を走らせる。
「アーさん、今度はオレも前衛行くわ。メニィちゃんの方に行かせないように注意はオレがすっからあんたは気にすんな」
「お、サンキュー坊主。流石にあの子庇いながら戦う余裕はないから助かるわ」
化け物に聞こえないよう、二人は言葉を交わし合う。
「なマいきナがき…おマエがはジめか!」
化け物はじゅるりとよだれを啜り不快感を抱く音を出しながら、骨と皮ばかりの体の残像を出現させるほどの速度でアトシュに接近。ぎらりと鋭い爪が光る。
「いいじゃねぇか!なかなか面白そうだな!」
振り下ろされた化け物の爪を、片手に持った刃で受け、アトシュは好戦的に口角を持ち上げて眼前の敵を睨み付ける。
「おっと、こっちががら空きぃ!」
初撃を受け止められた化け物の隙に、アーノルドは手にした虹彩を放つ不可思議な光の剣を振り上げ迫る。間一髪で避ける化け物の暗い色の毛が空中を舞う。
「代償もあるし、さっさと片付けるぜ!」
ごう、と音を当てアトシュの体が燃え上がる。彼が纏ったのは彼自身が抱く強力な魔力であり、魔力は彼の体を伝って手にした二振りの刀を覆う。一方の刃を燃え上がらせ、もう一方を凍えさせる。しかし、強力な魔力を身にまとうことは彼自身の身にも少なからず負担をかけている行為だ。
「…まぁ、一回だけなら寿命削れても問題はないだろうな」
アトシュの自らの危険を承知で大技を放つ覚悟に当てられ、アーノルドもまた気合十分にその瞳を輝かせ、不可思議な光を放つ光の剣を構える。
「めんドウメンどう!おまエラまとメてシマつだ」
化け物は二人の猟兵に苛立ち唾を吐き捨てながら、鋭い爪を再び襲いかかる。その速度は先ほどよりも速く、鋭い。二人の猟兵は真っ向から打ち合い、削れる鎬に火花が散る。
「あっ!ヤッベ!!武器が…」
数合打ち合ったとき、アーノルドが焦って自らの危機を口に出す。化け物の一振りがアーノルドの魔力の剣を払い、彼は光の剣を遠くに弾かれてしまったのだ。ニンマリと意地悪い笑みを化け物が浮かべる。
「よそ見が好きみたいだな!」
アーノルドに襲いかかる化け物をアトシュが横から二本の剣で打ちかかる。業火と氷雪、それぞれの魔力を纏った刃を化け物に押し込み、よろめかせる。
「武器を落してチャンスだ、とでも思ったか?ないわけねぇだろ?この光の剣、すぐに出せるんだからな!」
アトシュの攻撃の後、間髪入れずに接近したアーノルドの手には弾き飛んだ筈の彼の輝く光の剣が握られている。なぜなら、アーノルドの剣は彼自身の魔力を基に具現化し、たとえ彼の手から離れたとしてもすぐに彼の手の中で生成されるためだ。緑の瞳がその色と同じ輝きを放ち、アーノルドの放つ刃の一閃が化け物のやせぎすな体に一筋の傷を刻み込む。隙を生み出し、逃すことなくそれを見事に突いた二人の連携に、化け物の猛攻は打ち止めになり、負傷によろけて猟兵たちから一歩後ずさる。
「…てか、アーさんとの共闘、かなりしやすい気がするのはなんでだ?……しかも、アーさんの動き、こんなもんじゃねぇ気もするんだけど…手抜いてないよな?」
隣で化け物と対峙するアーノルドに対してアトシュは戦いを繰り広げる中で強まる自身の違和感を言葉にして吐き出す。
「手抜いてないって!!むしろ精一杯!!」
アトシュの発言にアーノルドは何を言っているんだとぎょっとして、思わず思っていたよりも大きな声で反応を返した。それでもアトシュは納得しないのか小さく唸り、アーノルドの方を凝視する。
「なンダってイい!おまエらフかイだ、はヤく、まケテ、くルしンデ、ソシて、くわレロ!」
化け物が猟兵に怒鳴り、再度立ち上がって縦に避けたような目をギラつかせる。
「とにかく、坊主。その話は後、こいつを倒してからにしようぜ」
「…わかった」
アトシュとアーノルドはそれぞれ自らが手にした刃を構え、眼前の化け物を見据えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フォルク・リア
メニィを庇う様に立ち
「あれが出てきたって事は
敵を追い詰めたと考えて良さそうだ。」
敵に近づき
メニィには後ろにいる様に伝える。
「俺は絶望をした事がないんでね。
どうやって絶望させてくれるんだ?」
挑発し敵の言動や動きを観察
攻撃タイミングを把握。
敢えて一撃受け攻撃の性質を覚え
(狂気耐性や覚悟で軽減)
次は見切り、第六感で攻撃を予測
早業、高速詠唱を使い蒼霊焔視を放ち攻撃阻止。
攻撃阻止と真の姿の発動
(禍々しい血煙のオーラを纏う)で恐怖を与え。
隙を狙い催眠術で
敵がアリスにしてきた事、
しようとした事を自分がされるという暗示をかけ
動揺したら全力魔法での蒼霊焔視で攻撃。
「さあ、絶望が見えたなら。それがお前の未来だ。」
崩れ落ち、肩で息をするメニィを化け物の視線から遮るようにフォルクは立つ。彼はあくまで平静を保ち、化け物の登場に動じることなくフードの奥の目を細めて観察を始める。
「あれが出てきたって事は。敵を追い詰めたと考えて良さそうだ」
誰に言うでもないそのつぶやきは、けれどすぐ後ろにいたメニィの耳に届き、彼女ははっとして顔を上げる。
「そうなんですか?」
「ああ、メニィは後ろに下がっていてくれ」
フォルクの言葉にメニィは頷き、一抱えほどのガシェットを背負って後退を始める。背負うように持つガシェットの両端の扇のような金属の羽が隠れたメニィを守るように彼女の姿を覆い隠す。
「せッかくイいグアいニおびエテぜツぼウシはジメていタのに、よケイナことヲ」
「そうか、俺は絶望をした事がないんでね。どうやって絶望させてくれるんだ?」
化け物と相対してもなお余裕な態度を崩さないフォルクに化け物はにんまりと口角を持ち上げて下品な笑みを浮かべる。そのニヤニヤとして笑みを向けられたフォルクの周囲からケタケタと這いまわるような笑い声が響く。高く、低く、近く、遠く。四方八方から響く笑い声は精神を蝕み、悪寒を走らせる。
(なるほど、こういう技か)
しかし、フォルクは覚悟を決めてその狂気の笑い声に耐える。もともと、最初の攻撃を受ける覚悟で化け物の手の内を探ろうと決めていたフォルクにとって自らの周囲を飛び回る笑い声など、子ども騙し程度にしか感じない。
「では、次は私がお前に恐怖を与える番だ!」
宣言と共にフォルクの周囲に血煙のようなオーラが纏わり尽き、彼の真の姿が露わになる。禍々しいオーラは化け物の奥底に眠る恐怖を叩き起こし、身をすくませる。
「な、ナンアんダ!」
狂乱するように叫び、ひきつった笑みを浮かべてフォルクにもう一同狂気の笑みを向けようとするが、赤黒いオーラが与える恐怖が筋肉を痙攣させて許さない。フォルクの周囲に浮いた青白い炎が化け物の瞳に映り自らの記憶にある、かつて捕食したアリスたちの姿を呼び起こす。兵隊の剣に両断された青年。狂気に蝕まれ発狂した少女。運命を嘆き自ら命を絶った少年。彼らの姿が走馬灯のようにながら、そして彼らが最後に抱いた感情を化け物は今、理解できてしまう。
「さあ、絶望が見えたなら。それがお前の未来だ」
引導を渡すようにフォルクの言葉が続き、青い炎の渦が化け物を包み、焼いた。蒼炎の中に揺れる黒い化け物の絶叫が森にこだまする。
「くそ、クソくそクそくソクそくクソくそクソクそクソクそくそ!」
地団太を踏み、化け物は蒼炎を掻き消す。体毛を焼き焦げた匂いをあたりに漂わせる化け物は血走った目で猟兵に爪を剥く。
「おマエらヲくウノはおレ!こンナことハあリエなイ!」
「それを決めるのは、お前じゃない」
激高する化け物にあくまで淡々とした口調でフォルクは応える。絶望には絶望を。赤黒いオーラがフォルクの体を包み込んでいた。
成功
🔵🔵🔴
※トミーウォーカーからのお知らせ
ここからはトミーウォーカーの「猫目みなも」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
テケリリケテルリリ・テケリリテケリャア(サポート)
『テケリャア!!!』
バイオモンスターのフードファイター × 破戒僧
年齢 100歳 女
外見 243cm 黒い瞳 赤茶の髪 白い肌
特徴 特徴的な声 声が大きい 実は美形 虐殺を生き延びた 奴隷だった
口調 テケリャア(私、呼び捨て、言い捨て)
お腹が減ると ケテルャア(私、呼び捨て、言い捨て)
常に飢餓感に苦しんでいます
てけりゃあ叫んで捕食したり怪力任せに潰すのが得意です
不定形の化け物として描写してください
連携歓迎です
マヤ・ウェストウッド(サポート)
「アタシの右眼? ああ、今朝焼いて食べちまったよ。ベーコン付きでね」
◆口調
・一人称はアタシ、二人称はアンタ。いかなる場合でも軽口とジョークを欠かさない
◆癖・習性
・獣人特有の嗅覚で危機を察知できるが、犬耳に感情が現れるので隠し事は不得意
・紅茶中毒
◆行動傾向
・普段はズボラでとぼけた言動や態度をとる三枚目ながら、ここ一番では秩序や慣習には関わらず自身の義侠心の赴くままに利他主義的な行動をとる(中立/善)
・戦場では常に最前線でラフな戦い方をとるが、戦いそのものは好まない。弱者を守る事に自分の存在意義を見出している
・解放軍仕込みの生存技術を活かし、役に立つならステージのギミックやNPCを味方につけて戦う
レフティ・リトルキャット(サポート)
サポート:詠唱省略やアドリブOK
にゃ、通りすがりの子猫の猟兵参上にゃ!
ここは30代目様のUC【ガイアキャット】を活かすのにゃ。
僕は溶岩や水中等でも活動出来る様に「地形の影響を無効化」する子猫になって環境適応し、肉球をあてた地形を素材に配下子猫達を錬成。更に立場的に配下の上に立つリーダー効果で自身を強化します。
配下子猫の素材特性や数を活かした連携、組体操、情報収集や自身の子猫の暗視や身体能力を活かして解決します。
基本戦法は、呪い(アイテム)やUCによって子猫に変身し、髭感知で動きを見切り、肉球や爪で攻撃を受け捌き、反撃に肉球でシールドバッシュや爪攻撃。
※チョコレートは死にますのでご注意ください。
「キャ、キャキャキャ……ころス、こロす、コロスゥゥゥゥゥ!!!!!」
もはや怒りの感情が更なる狂気へ転じたのか、奇怪な哄笑を上げてチェシャ猫は長い爪を振りかざす。振り下ろされた凶爪を受け止めたのは、子猫に変身したレフティ・リトルキャットの肉球だった。腕に力を込めて化け物の手を押し返し、小さな猟兵は敵の血走った目をきっと睨む。
「子猫の猟兵として、こんなの見過ごす訳には行かないにゃ」
「なマイキ! ナマいキ!! コねコのクセニ!!!」
ケタケタと嗤う声に精神を捻られるような不快感を覚えながら、レフティは自分より遥かに大きな化け物目掛けて肉球パンチを放つ。難なくそれをかわし、こんなものかと嘲りの笑みを浮かべたチェシャ猫の表情が、次の瞬間驚愕に歪んだ。
「ナ……!」
空を切り、そのまま土に触れたレフティの肉球から溢れ出したユーベルコードが、不思議の国の土を素材に次々彼の『配下』を作り出す。地面から弾き出されたように飛び掛かり、引っかき、噛みついてくる子猫の群れを振りほどこうと、チェシャ猫は無茶苦茶に手足を振り回す。そう――元よりレフティはこれを狙っていたのだ。
レフティのガイアキャットに気を取られ、チェシャ猫はまだ気づいていない。子猫たちによって、次第に一本のメイプルの木の下に誘導されていることに――そしてその高い枝の上に、黒い影が待ち構えていることに。
「おっと、随分隙だらけじゃないか。それじゃ遠慮なく、どっこい……しょッッ!!!!!!」
掛け声とともに、マヤ・ウェストウッドが真下にふらふら踏み込んできたチェシャ猫の脳天目掛けて思い切りよく尻落としを叩き付ける。潜んでいた枝の高さの分だけ重さを増したその一撃に、チェシャ猫はぐらりとたたらを踏んだ。
「グェッ!!」
「悪いね、すぐそこにいたもんで。ただまあ、ソファとしての座り心地は最悪だったねぇ」
「ふザけるナ!!!」
「おっと」
軽口に怒り心頭で振るい返された爪が、飛び退るマヤの喉元をごく浅く裂く。僅かに熱を感じる傷口をなぞり、後ろに守ったメニィの気配を捉え直すように耳をぴんと立てて、マヤは真っ直ぐにチェシャ猫へ得物を向けた。
「何を言うやら。……ふざけてるのは、お前の方だろ?」
こんないたいけな少女ひとりを追い詰めいたぶり、喰ってしまおうなど、そんなふざけた話があるものか。義侠心と共に引き金を引けば、放たれた熱線がチェシャ猫の髭を焼き切った。元より赤い目を一層赤々とぎらつかせ、無差別に爪を振りかざすチェシャ猫の前に、テケリリケテルリリ・テケリリテケリャアの巨体がぬるりと滑り込む。覗き込むように獣の瞳を見つめて、彼女は笑いかけるように声を発した。
「ああ全く。ふざけているのは、間違いなくお前だ」
何故なら――喰われるのは、お前のほうだ。
囁きをも飲み込むかのように、テケリリケテルリリの利き腕がごぼごぼと不気味に泡立ち始める。波打ち、のたうち、まるで意志を持つアメーバのように動き出した不定形の腕は、やがて一振りの無骨な大剣へとその形を変えて。
「――お前を、喰う」
それが、彼女の発した最後の人語だった。腕の剣を大上段から力任せに振り下ろす音に、森中に響かんばかりの異形の叫びが重なって――そして頭から両断されたチェシャ猫は、断末魔すら許されずにその狂った生に終止符を打たれたのだった。
成功
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第3章 冒険
『気球にのって何処までも』
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POW : 気球を攻撃する事で、上昇を止めます。
SPD : 別の気球で追いかけて、アリス達を救出しようとします。
WIZ : 気球が暴走した理由を突き止め、制御を取り戻します。
👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オウガを退け、自身を守ってくれた猟兵たちに、メニィは零れ落ち始めた大粒の涙を拭いもしないまま深々と頭を下げた。何度も何度もお礼を言って、今度は自分の扉に辿り着くために歩き出す彼女に、猟兵たちは同行を申し出る。
やがてそう長く歩かないうち、開けた丘が猟兵たちとメニィの眼前に見えてきた。あ、と声を上げた彼女の視線を追うように見上げれば、空の上に光り輝く扉がひとつ浮いている。
そして丘の上には、まるで誘うようにしつらえられたいくつもの大きな気球が。迷う様子もなくそのひとつに乗り込んで、メニィは猟兵たちに笑いかけた。
「きっと、これで帰れるんですよね。……皆さんが助けてくれたこと、私、絶対忘れませんから!」
そうして彼女を乗せ、火を入れられた気球は、徐々に徐々に高く空へと浮き上がっていく。
だが――ちょっと待って欲しい、あの勢いでは扉を素通りしてどこまでも飛んで行ってしまうのではないか?
気球が制御を失っていることに気付いたメニィの悲鳴が、不思議の国の空に響き渡った。
※この章に参加する猟兵は、「メニィと同じ気球に乗り込み、気球の操作を手伝っていた」ことにしても、「地上から別の気球などでメニィの気球を追いかけ、助けに行く」ことにしても構いません。暴走する気球をどうにかして制御し、メニィを空中の扉へ送り届けてあげてください。
アーノルド・スカーヴァティー
【POW】
【アトシュ(f00811)と一緒に】
へー、あれが自分の扉か…
もしかしたら初めてみたかも
……ん?待て待て待て!?あの速度だと扉潜れないぞ!?
気球に飛び乗るのは坊主(アトシュ)に任せる!移動系のユーベルコードってやつ持ってねぇんだよなぁ…
俺はあいつの合図を待ってから火を出してる装置を狙い撃つ!
【スナイパー】と【部位破壊】を組み合わせて使うか…
アドリブ、連携大歓迎
アトシュ・スカーレット
【POW】
【アーノルド(f19324)と一緒】
見つかってよかったー…と思った矢先にこれ!?
え、待って!?あれはまずいって!!
【転移術・花弁式】でメニィちゃんの気球まで移動するよ!
確か気球って空気を暖めて浮かせるんだよね…
【属性攻撃】で氷属性の魔力を発生させて空気を可能な限り冷やすよ!
それでも足りないなら…アーさん(アーノルド)!!よろしくね!
アーさんへの合図としてルルディを槍にして、全力で投げるよ!
アドリブ、連携大歓迎
「へー、あれが『自分の扉』か……ん?」
もしかしたら初めて見たかも、と呑気に地上から感想を零しかけたアーノルド・スカーヴァティーの目が、真ん丸く見開かれる。片手で傍らのアトシュ・スカーレットの肩を引っ掴み、勢いよく上昇し続ける気球をもう片方の手で指差して、アーノルドはわたわたと声を上げた。
「待て待て待て!? あの速度だと扉潜れないぞ!?」
「うん、あれはまずいって!!」
「坊主、向こう任せる!」
「オッケー!」
それだけの言葉で、アトシュはアーノルドの言いたいことを完璧に理解してくれたらしい。軽く膝を屈めてメニィの乗る気球を見据えた次の瞬間、黒薔薇の花弁が空に舞い――そして、アトシュの身体は気球のゴンドラ上へと移動していた。
「え、あ、アトシュさん! どうしましょう、これ、全然止まってくれなくて……!」
涙声で縋り付いてくる少女を落ち着けるようにその背を擦ってやりつつ、アトシュは気球の仕組みを冷静に思い出す。
「気球って空気を暖めて浮かせるんだよね……なら!」
高くかざした手の中に、寒色の光が灯る。ふわりと放たれた冷気が球皮内の空気を冷やしていけば、気球の上昇は幾分緩やかになってくれたようだった。冷気の制御に注意を払いつつ、アトシュは地上で見上げるアーノルドに確認を取る。
「アーさん、どう!? 下から見て大丈夫そう!?」
「いや、まだ勢い付き過ぎだ! その火を出してる装置、止められないか!?」
万一どうしても駄目ならバーナーを地上からの狙い撃ちで破壊することもやむを得まいと武器を構えつつ、アーノルドが怒鳴り返す。気球が高度を失い過ぎ、そのまま地上に落ちてしまっては元も子もないため、できれば避けたい手段ではあるが――いざという時は、いざという時だ。
返された言葉に頷いて、アトシュはバーナーのバルブに手をかける。だがどこかの部品が壊れてしまっているのか、力一杯握り締めてもバルブはうんともすんとも言ってくれない。諦めて再び球皮の中へ冷気を送りつつ、アトシュは地上に向けて声を張り上げた。幸い、気球のバーナーは緊急時に備えて二つ備え付けられている。
「ごめん、頑張ってみるけどほんとに頼むことになるかも!」
「了解、いつでも準備しておく!」
万が一があれば、合図を貰うと同時に動けなければ――緊張を鎮めるように深呼吸して、アーノルドは未だ上昇を続ける気球を睨んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鞠丘・月麻
■方針
・【SPD】使用
・アド/絡◎
■行動
これは、大変です。
急いで何とかしないといけませんね。
近くにある他の「気球」で追い掛けます。
「重り」等も減らし出来るだけ早く追いつける様にしますね。
追いつけましたら、まず声を掛けます。
「一般的な「熱気球」の場合、天井部に開閉可能な「蓋」が有って、そこから「熱い空気」を逃がすことで降下出来る様になっています。
その「操作用のロープ」がゴンドラの中にあるはずですから、其方を動かして操作して下さい」
その上で、自分の乗っている「気球」を使って、横で実際にやって見せます。
もしも「その機能」も壊れている様なら【指定UC】で「気球の上」に跳び移り、此方から窓を開きますね。
「これは、大変です。急いで何とかしないといけませんね」
光る扉をとうに追い抜いてなおも上昇を続ける気球に追いつくべく、鞠丘・月麻は近くにあった他の気球にひらりと飛び乗った。ゴンドラの中から極力重りになるものを廃し、勢いよく火を焚いて自身の気球を全力で上へ上へと向かわせながら、月麻は斜め上方に見えるゴンドラのメニィへと呼びかける。
「一般的な熱気球の場合、天井部に開閉可能な『蓋』が有って、そこから熱い空気を逃がすことで降下出来る様になっています。ゴンドラの中に、蓋を操作するためのロープは見つかりませんか?」
「えぇと、えぇと……あ、これっ、これでしょうか?」
「そうです!」
慌てていた分メニィがロープを手にするのは幾分遅れたが、その分だけ月麻の気球の高度はメニィのそれに近付いている。自分でも同じように手に取ったロープを持ち上げてみせ、月麻はメニィにしっかりと視線を合わせた。
「では、見ていてください。このように動かせば、天井の蓋を操作できる筈です」
ひとつひとつの動作を区切りながら実際に操作の手順を示してみせれば、元々ガジェットを扱っていた分理解も早かったのだろう、メニィがしっかりと頷くのが見えた。やがてメニィの操作によって蓋が開き、熱気を空へ逃がした気球はそれまでとは比べ物にならない速度で降下を始める。
「とは言え上空の風の吹き方は、高度によって様々に異なりますからね……少しばかり押し流されてしまいましたか」
ゴンドラから扉へ直接乗り移るには、メニィにとっては少々ならず酷な距離だ。適切に風を読みつつ高度を操って、メニィの気球をあの扉の傍まで導いてやる必要があるだろう。いつでも声を届けられる位置を保てるように自身の気球をコントロールしながら、月麻は思案げな表情を浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
一ノ瀬・千智
連携アドリブ歓迎。
【POW】で判定
他の気球に乗って追っかけるぜ。
本来こういう用途の武器じゃねぇんだけどなー。
まぁそんなことは言ってられねぇか。
まずは本来は武器である【希望剣】を発現。
そして対象が乗る気球に向けて伸ばし、先端をフックのように変形させて引っ掛けても問題なさそうな部分に引っ掛けます。
その際間違っても刃で切らないように変形させておきます。
あとは力持ちのジョブを生かして【怪力】を使って力業で軌道を調整していくぜ!
軌道の微調整は向こうに乗ってるアリスたちや他の猟兵に教えてもらおう。
前の連中に比べればスマートとはいかねぇが、まぁこれが俺のやり方だしな。
カイ・オー
SPDで判定。別の気球で追いかける。
UC【現実改変能力】使用。目の前の、「気球が暴走している」という現在の現実を書き換える。無茶な話だが、皆の今までの積み重ねが望む未来を掴む手掛かりになる。
一気に都合よく全てを改変する事は出来ない。前提として過去の解読が必要だ。何故気球が暴走しているのか、過去知の超感覚で感知。原因を突き止める。
原因が分かったら、過去に遡って一つ一つを丁寧に改変していく。歪んでいた部品があれば正しい位置に治し、熱量が強すぎたなら修正。罠の類が仕込まれてたなら解除しておく。
過去を訂正しきったら、現在を改変。今の気球は万全だ。
お疲れ様。良い旅を。
「COMMAND:REALITY-ALTERATION:ENTER……」
青く光るカイ・オーの瞳の奥に、メニィの気球の『過去』が映し出されていく。なぜ制御が狂い、なぜ大空高くまで攫われそうになってしまったのか、その原因を細やかに丁寧に解析して、彼はそこにある不幸な『現実』を超能力によってひとつひとつ書き換える。一歩間違えば、目の前にある現在の形すら取り返しがつかないほど狂ってしまいかねない繊細な作業だ。端正な顔立ちの上を汗が伝い落ちていくのも構わず気球を睨み、指先で額を叩き、或いは宙へ再び手を伸べて、そうして『現実』への干渉を続けていた彼は、やがて。
「……これもオウガの奴の仕込みだったとしたら、どこまでも悪辣な敵だな」
ひとつ息をつき、額を手の甲で拭って、彼はぽつりと呟いた。それが今や扉の数メートル手前まで現在位置を改変されたメニィに聞こえていたかは分からない。――聞こえていなかったなら、それはそれで幸いだ。そんなことを思いつつ、カイは自身の乗る気球に同乗していた一ノ瀬・千智を振り返る。
「あと少しなんだ、任せていいか?」
「本来こういう用途の武器じゃねぇんだけどなー。まぁそんなことは言ってられねぇか」
実年齢よりも幼く見える愛らしい顔立ちとは裏腹に、少年のような言い回しでからりとそう答えると、千智は片手をすいと前方に伸ばした。
「そういう訳で、出番だぜ……我が思い描く、希望の剣っ!」
白く細い手の中に、煌きと共にひと振りの剣が具現化していく。彼女の想像に応じて先端が大きく円弧を描いたその形は、どこか異国の踊り子の剣のようでもあり、実用的な工具のようでもある。弧の内側の刃が充分に丸まっていることを指先で一度確かめて、千智は希望剣の柄を強く握り締めた。頼むぜ、と小さく呟くやいなや、無敵の刀身は意志を持ったかのようにぐんぐんと伸びていき、やがてメニィの乗る気球のロープを先端の弧で見事に引っかけた。
「よし捕まえた! 軌道がズレたら教えてくれよな!」
他の気球、そして地上にも大声で呼びかけ、自分の乗る気球の操縦をカイに頼んで、千智は力いっぱいメニィの気球を牽引し始める。力持ちゆえの膂力はやがて、空に浮かぶ気球を確かに扉の方へじりじりと引き寄せ始めた。他の猟兵たちに比べればスマートとは言えないやり方かもしれない、と剣を引き続けながら千智は思う。だがそれでいい、とも。これが、千智のやり方なのだから。
そしてようやく少女の乗るゴンドラが扉の前にやって来た時、誰からともなく安堵と喜びの声が零れた。彼らの方をひとりひとりしっかりと見回して、最後にメニィはもう一度深々と頭を下げる。
「ありがとうございます、皆さん……本当に、ありがとう。どうか、お元気で!」
そうしてメニィは、光り輝く扉の向こうへ消えていく。後には綺麗に晴れ渡る、真っ青な空だけが猟兵たちを祝福するように広がっていた。
大成功
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