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呪われた海域

#UDCアース

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#UDCアース


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●――閑散とする浜辺にて
 夏を目前に控えたこの季節。
 海開きを待ち切れずにこっそりと冷たい海と暑い日差しを楽しもうとする若人や、この時期に回遊してくる魚を狙って張り込む釣り人の姿が例年の風物詩となっているこの浜辺が、今年は人っ子一人居ない静けさに包まれている。
 理由は一つ。
 いつからかこの浜辺を含む海域が、呪われていると言う噂が立ったからだ。
 船よりも大きな鮫を見たとか、海中から伸びる無数の手を見たとか。
 噂の内容自体は何処にでも有りそうなものだった。
 が、その噂が広まったのには訳がある。
 そんな馬鹿な事が有る訳無いとこの浜辺を訪れた人達が十数人に一人程の割合で失踪している。
 当初は関連性を疑う者は殆ど居なかったが、行方不明者の数が十を超えた辺りから俄に噂が勢いを増した。
 捜索は続けられているが未だに手掛かりは無し。
 そして今日も。
「……何だ、ただの平和な浜辺じゃん。本当に呪われてんの?」
 また一人、犠牲者が生まれる。

●――海の恐怖
「今回の事件はUDCアースのとある浜辺で起きました! 如何やらオブリビオンが密かに人々を手に掛けているようです」
 望月・鼎が手にした資料を読みながら説明を始める。
 閑散とした浜辺に流れた噂の正体。
 如何やらオブリビオンを遠目に見掛けた人達の証言が重なり合って、一つの噂が生まれたらしい。
 幸いと言うべきかオブリビオンの存在は露見しておらず見間違いか大法螺として捨て置かれ、専ら何かの犯罪組織の仕業と考えられている様だ。
 話が大きくならない内に討伐してしまいたい所。
「噂に有った引き摺り込む手や巨大なサメがオブリビオンと見て良さそうです。主な戦場は砂浜や海中、海上になるでしょう。足場の悪さがちょっと面倒ですね」
 上手く戦い易い場所へ誘導するか、或いは戦い易い足場を作ってしまうと言うのも良いかも知れない。
 自分の土俵に乗せてしまえば格段に戦い易くはなるだろう。
「大変な戦いになるとは思いますが、どうかお願いします! あ、付近に一般人は立ち入れない様になっていますのでその辺は心配有りません。存分に暴れちゃってくださいな!」


一ノ瀬崇
 そう言えばまだサメ映画見てないなぁ。
 こんにちは、一ノ瀬崇です。
 今回はUDCアースでの戦闘ですね。
 戦い難い場所での戦闘ですので何かしら工夫して戦うと良さげです。
 どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『深淵に至る亡者』

POW   :    私は此処にいる・俺は待ってる・僕は望んでいる
技能名「【おびき寄せ】」「【誘惑】」「【手をつなぐ】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    僕は君の仲間だ・私はあなたと一緒・俺はお前と共に
敵を【無数の手で掴み、自らの深淵に引きずり込ん】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ   :    俺は幸せだ・僕は全部理解した・私は誰も赦さない
【妄執に魂を捧げた邪教徒の囁き】【狂気に屈したUDCエージェントの哄笑】【邪悪に巻き込まれた少女の無念の叫び】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。

イラスト:V-7

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

火奈本・火花
「海に人が多くなる時期に、海に関連したUDCですか。やはり人が集まるところは狙われやすいですね」

■戦闘
海上での戦闘となるでしょうし。UDC組織に依頼して水上バイクを用意して貰うつもりです。機動力がある方が良いでしょうしね
万が一バイクから落とされた時に備え、水着とライフジャケットに着替えておきましょう

水上バイクで海上を走りながら、9mm拳銃で命中率を重視した銃撃を行います。UDCの数は多いですし、余裕があれば『2回攻撃』などで追撃を行いたいですね
『呪詛耐性』でUDCの誘因を振り払い、水上バイクで距離を取りつつ……ですがチャンスがあり危険がなければ、奴らを直接バイクで轢いて攻撃する事も試しましょう


波狼・拓哉
…あの手はどっから出てるんだろうか。底が見えないし手だけを攻撃すれば何とかなるものなのか?
まあ、全部焼き焦がせば問題ないか。箱型状態のミミックを掴んで投擲。最初は捕まれる前くらいに炎転化させようかな。化け焦がしなー。効果が薄そうなら掴かまれ引きずり込まれたを確認してから炎転化で内部から焦がす方向にシフトで。
自分は相手の手が届きそうにない所でミミックを投擲し続けよう。素手での投擲距離が足りないとかならロープに括りつけて遠心力で追加して伸びるように工夫したりしようか…一体しか存在できないとはいえミミックに再召喚のラグとかないしドンドンいこう。
足場悪いから近づくのは避けたいしね。
(アドリブ絡み歓迎)


ジニア・ドグダラ
第二人格『ヒャッカ』として行動

アレはまだ噂としてある。しかし、噂としてある以上探る者がいる。それ故その犠牲も出ているはずだ。阻止しなければ。

戦場は敵にとって有利な地形である。しかし、此方も対処できる手などいくらでもある。
棺桶から漏れ出る死霊を【高速詠唱】にて素早く弾丸に精製し、自身や周囲の地形に対して弾丸を射出する。それと共にアレらにより死した死霊達を湧き上がらせ、敵の行動を阻害する【呪詛】をばらまかせる。
アレも何らかの強化を得て行動するつもりだろうが、それを防ぐため湧き上がる死霊達を盾にしワタシ自身の【呪詛耐性】を高め、攻撃に耐えつつ死霊の弾丸による射撃を継続する。

※アドリブ・連携・絡み歓迎


パリジャード・シャチー
〈心情〉
・鮫の気配がする。ころさなきゃ(使命感)
・まったく他人様に迷惑をかけるなんてやっぱり鮫は悪
 シャチメイドこそが令和のトレンドだって分からせないと
 ね、爛華ちゃん。(シャチぐるみで妄言)
・うふふー、日ごろ料理を教えてあげるてるんだからばっちり手伝って
 もらうよー
・【神宮寺(うち)】の面子が全員ゴーイングマイウェイ?何を今更。
 ってかオーキッドちゃんだって、ノリと勢いで秘密結社のエージェント
 してるじゃん
≪戦闘≫
・愛羅を召喚して戦闘するよ。雲を足場にして戦闘だ。地面に居なきゃ
 平気
・空中から弓型の獣奏器で戦闘だい。
・矢に激辛ソースを塗って敵を攻撃
 激辛ソースを使う時は手袋しないと駄目だぞ


オーキッド・シュライン
パリと連携
≪心情≫
・駄目ですわ。このアホ女神…
 何を言ってるんだか理解したくありませんわ
・まさか……料理を教わった所為で、こんなことに巻き込まれるなんて…
 いやまあ、世の為人の為になりますし良いんですけど
・しかし…身内がどいつもこいつもマイペース過ぎて困りますわ…。
≪戦闘≫
・UCを発動して疑似的に真の姿を解放して空中戦をしかけますわ
・例え水の中に居ようと、わたくしの焔は消せませんわよ
・空中を蘭の花弁を爆発させてた勢いで残像の出るほどの速度で
 踊るように空中をダッシュで駆けまわりながら、蘭の花弁をばら撒き
 ブラスターで一気に起爆しましょう
・空中戦という利点を活かしてパリと一緒に立ち回りますわ


アマータ・プリムス
水辺の戦闘ですか
これは少々面倒ですね
というわけでサクッとお願いしますよ、ネロ

UCを発動してネロを召喚
「元から浮いているから簡単でしょう。早く片付けてくださいな」
日頃から浮いているネロなら足場の悪さも関係ありません
存分に鎌を振るってもらいましょう
といってもネロが大鎌で【範囲攻撃】をしても手が足りないでしょう
当機も少しばかりお手伝いを
指先からフィールムを伸ばしわざと掴ませる
そのまま【敵を盾にする】要領で釣りあげてしまいましょう
「さ、これでやりやすくなったでしょう?」
服が濡れるのは嫌ですし釣り以外はネロにお任せ
後で洗ってあげるので許して下さいな

さて、あとは次の戦いに向けて足場を整えましょうか


御手洗・花子
「ふむ、掴んで引きずり込む相手か…」
となると、有利な戦場と言う物は向こうが勝手に作ってくれるじゃろう。
掴まれるという事は、同時に掴むことができる間合いであり、掴んでいる限り回避もできないのだから。

掴んできた相手に対して【御手洗の御技】を使用する、回避不能な状態で三擊を叩き込み無力化させ、骸の海へ流してしまう。
それまでの間、敵の攻撃は『呪詛耐性』『激痛耐性』『狂気耐性』で耐え切る『覚悟』を決める。

「さて、お主の深淵は『死』よりも深きものかのぉ?」



 人気の無い静かな浜辺。
 波打ち際に小さな波が白く彩りを添えるくらいで、海は緩やかに凪いでいる。
 耳を済ませても波の音よりも鳥や虫の声の方が大きく聴こえる程だ。
 時間は正午を過ぎた辺り。
 頭上で薄い雲を棚引かせながら暑い日差が水面と砂を照らしている。
 そんな平和な波打ち際へと降り立つ七人の猟兵。
「海に人が多くなる時期に、海に関連したUDCですか。やはり人が集まるところは狙われやすいですね」
 伊達メガネをくいと左手で押し上げながら、火奈本・火花は油断無く周囲の様子を窺う。
 戦いに備えて普段のUDCエージェント制服から動き易い水着とライフジャケットへと着替えた姿は、何も知らない者が見れば海を楽しみに来た観光客に見えるかもしれない。
 左腰に吊り下げられたホルスターに仕舞い込まれた『自動式9mm拳銃』にちらりと意識を向けながら何かしらの変化が無いかを探る姿は、正に頼もしきエージェントと言った所か。
 傍らにはこの戦いに備えて準備した水上バイクもある。
 海での戦いが主になると見据えての判断だ。
「見る限りは平和な普通の海なんだけどなー。何か前兆とか出るんですかね?」
 普段通りの口調を崩さず自然体で構えるのは波狼・拓哉だ。
 緑のジャケットに白いパーカー、黒のスラックスと見た目は普通の好青年。
 シャツとパーカーの間に『防弾刃チョッキ』を着込み、ユーベルコードで召喚した箱型生命体ことミミックを連れているので分かる者には一見して猟兵と分かるが、逆に言えばそれらが無いと彼を特異な存在と見分けるのは難題だ。
 と言っても猟兵の傍ら探偵としても活動しているので、その目立たなさは彼にとってメリットでもある。
「幽霊ではなく実体を持つオブリビオンが相手だ。なら奴等が姿を見せる時には波の揺らぎや気泡の粒等の前兆は必ず出る」
 拓哉の問いに答えるのは体全体を包む程丈が長い灰色のローブと、自身の背丈程も有る棺桶を赤黒い鎖で繋ぎ止めて背負う女性。
 普段は温和で内気なジニア・ダグドラだが、今表に出ているのは彼女ではなく、冷酷さと慈悲の心を併せ持つ第二人格のヒャッカだ。
「アレはまだ噂としてある。しかし、噂としてある以上探る者がいる。それ故その犠牲も出ているはずだ。阻止しなければ」
 強い決意を棟にジニア――ヒャッカは、深く息を吐き出す。
 そんな彼女へと気負い過ぎない様に声を掛けるメイド服姿の女性と特徴的な案山子。
「今日、その噂は真に噂へと成り果てます。これ以上の犠牲は出ませんし、出させない……ですね?」
『けけけ、狩られる側になったキモチを聞いてみたいもんだぜ』
 アマータ・プリムスと南瓜頭の案山子人形『ネロ・フラーテル』の二人だ。
 戦場が海と有って余り海水には晒されたくないアマータだったが、ふよふよと浮遊しているネロに攻撃を担って貰う事で一先ず良しとした。
 使われるネロは不満を漏らしてそうではあるが、そこは上手く言い包めたのかもしれない。
 今は波打ち際でフラフラと移動しながら得物の鎌を弄んでいる。
「ふむ、掴んで引きずり込む相手か……」
 同じく波打ち際で訳も無く歩いているのは着物姿の童女に見える御手洗・花子だ。
 しっかりと着込んだ着物姿はこの陽気では暑苦しく思えるが、当人は至って涼しげである。
 傍から見ると遊びに来た子供にしか見えないが彼女も列記としたUDCエージェント。
 怪異への対処はお手の物である。
「早い所片付けてのんびりしたいもんじゃな」
 見た目とは裏腹に成熟した、或いは達観した様な口振りで話すのが癖でもある。
 そして彼等彼女等の背後で一際存在感を放つ謎のシャチぐるみを着込んだ女性と、その隣で頭痛を堪えるかの様に頭に右手を当てている女性が居る。
「まったく他人様に迷惑をかけるなんてやっぱり鮫は悪。シャチメイドこそが令和のトレンドだって分からせないとね、爛華ちゃん」
 鮫は生かしておけぬと、謎の使命感に心を燃やすシャチぐるみの女性。
 彼女はパリジャード・シャチー。
 姿は少しばかり個性的だが、立派な猟兵である。
 その呼び掛けに爛華ちゃんと呼び掛けられた女性が脱力した声色で応える。
「駄目ですわ。このアホ女神……何を言ってるんだか理解したくありませんわ。それと、私はオーキッドですわ」
 オーキッド・シュラインは呆れた様子で半眼を向けている。
 今回はパリジャードに連れられての参加だ。
 日頃彼女に料理を教わっている事を出汁にされ、急遽鮫を殴り付ける為に駆り出された。
 オブリビオンを倒すのは世の為人の為になるので異存は無いが、ノリがマイペース過ぎるので付いて行くのも一苦労だ。
 そんなオーキッドの心中に対し、パリジャードは両手を腰に当てて頬をぷくっと膨らませる。
「うちの面子が全員ゴーイングマイウェイ? 何を今更。ってかオーキッドちゃんだって、ノリと勢いで秘密結社のエージェントしてるじゃん」
「ノリと勢いとは失敬ですわ! と言うか何でシャチぐるみですの!?」
 ぎゃーぎゃーと賑やかに言い合う姿はまるで同世代の友人の様にも見える。
 微妙に緊張感が無いが、変に固まって動きが鈍るよりは良い。
 そんな十人十色な猟兵達の様子が、ある瞬間を境に統一される。
 空模様に変わりは無いが、その場に漂う空気がそれまでとは一変している。
 戦いの時間だ。

 戦いの気配を察知し、猟兵達は二手に分かれた。
 波打ち際に残り迎え撃つ者と、海上に出て攻撃を仕掛ける者。
 先ず動き出したのは火花だった。
 水上バイクを走らせ、ホルスターから拳銃を抜き放つ。
 MODは装着されていない至ってスタンダードなものだが、それ故に取り回しやすい。
 海中からこぽこぽと湧き上がってきた気泡に接近し過ぎない様に留意しつつ警戒していると、大きく水飛沫を上げてオブリビオンが姿を現した。
 幾つもの腕が無数に折り重なり群体となった姿。
 肉の塊と言うには少々見てくれが悪い、紛れも無い異形だ。
『俺は、私は、僕は』
 統一されていない思考を撒き散らしながら火花を狙う腕。
 如何やら個としての群体ではなく寄せ集めを無理矢理一つに繋ぎ合わせたものらしく、一本一本の腕はそれぞれ各個の意思を持っている様だ。
 直視するのも躊躇われる醜悪なビジュアルだが、火花は動じる事無く左手に構えた拳銃を向ける。
 乾いた破裂音と共に飛び向かう銃弾が一本の腕に命中する。
 風穴を開けた腕は薄汚れた血を流しながら悶える様に筋肉を躍らせているが、その他の腕は特に気にした様子も無い。
「ダメージの蓄積は個別……? それなら!」
 円を描く様に周囲を走りながら次々に腕、特に手首の位置を狙って銃弾を放つ。
 命中した腕は動きを鈍くしもがく様に蠢いている。
 そうしてマガジンを二回程交換した辺りで、火花は右手を回しスロットルレバーを捻り込む。
 狙いは直接攻撃。
 事前に掴まれない様に腕を念入りに撃ち抜いたお陰で、腕は抵抗するそぶりすら見せない。
 勢い良く走り抜ける水上バイクが腕を跳ね飛ばし、ゴムボールを髣髴とさせる軌道で空中へと打ち上げる。
 そこへ伸ばした左腕に握られた拳銃が向けられ、数度破裂音が鳴る。
「使えるものは全て使う。それがエージェントのスキルだ」
 ユーベルコード【二丁拳銃乱舞】によって放たれた銃弾が吸い込まれていくのは、折り重なった腕の付け根の部分。
 如何繋がっているのかは目視出来ないが、根元を断てば全ての腕にダメージを与えられるのではないかと言う算段だ。
 彼女の目論見通り付け根部分へと集中する銃撃には耐え切れなかったらしく、腕は怨嗟の声を撒き散らしながら海に溶けて行った。
「先ず一つ」
 スロットルを全開にした事で暴れ馬と化した水上バイクを上手く乗りこなしながら、火花は次の獲物へと向かう。
 圧倒的な機動力と精密な銃撃を以ってヒットアンドアウェイを繰り返す彼女を捕らえるのは、腕の群体と言えども人手が足りないだろう。
 そんな華麗とも言える戦いの横では、随分と賑やかな戦いが繰り広げられている。
 相対するのはパリジャードとオーキッドのコンビだ。
「前哨戦は腕かー。こりゃ猫の手も借りたいね」
「アホな事言ってないで、ほら、右からも来てますわよ!」
「ほいさっさ」
 シャチぐるみを着込んだままの姿で器用に弓を射るパリジャード。
 彼女はユーベルコード【純白なる女神の騎獣】で召喚した真っ白な巨象『愛羅』と共に空を行く。
 愛羅が操る雲を足場に次々と戦い易い位置へ移動しながら弓を放つ姿は何処か神々しい。
 雲に乗り弓を構える女神、と聞けば誰しも神話やファンタジーなイメージを抱くかもしれないが、現実は往々にして残酷である。
 シャチぐるみの時点で厳かさは一揆の打ち壊し以上にブレイクフルだが、彼女が手にした弓型の獣奏器から射られる矢に塗られているものがまた問題だ。
 これが蛙や蛇、その他生物由来の猛毒ならまだ絵にはなったのだろうが鏃を浸す瓶に張られているラベルに書かれた文字は『Spicy hell』と言うおどろおどろしいもの。
 そう、これは彼女御用達の激辛ソースの瓶だ。
 絶望的な辛党である彼女の欲求を満たすこの激辛ソースは、生半可な毒物よりも余程劇物である。
 現に矢が突き刺さった腕は激しく悶えながら痙攣を繰り返している。
 余りの威力に、感覚が独立しているはずの別の腕の動きも鈍っている。
『やめて、よして、ゆるして』
 撒き散らされている声が怨嗟から懇願に変わっている辺り、その恐ろしさが伝わってくる。
「激辛ソースを使う時は手袋しないと駄目だぞ」
 可愛らしくウインクして見せるパリジャードに本日幾度目かのジト目を向けながら、オーキッドはオブリビオンに少しばかり同情する。
「まだ無念を抱えたまま骸の海を漂っていた方が幸せでしたのに……」
 視線の先、矢を受けて痙攣していた腕は妙な色に変色しながら脂汗を滲ませている。
 その様子に思わずうわぁ、と声を漏らしながら慈悲の心でブラスターを向ける。
「せめてこれ以上は苦しまなくて済みます様に」
 事前にユーベルコード【紅蘭の悪魔ファレノプシス】でばら撒いていた蘭の花弁は海中に満遍なく広がっている。
 引き金を引いて熱線を撃ち出せば、反応した花弁が小さな爆発を幾重にも引き起こす。
「例え水の中に居ようと、わたくしの焔は消せませんわよ」
 爆発に巻き込まれた腕は爆炎に飲まれ、海中へと消えて行った。
「波が行きますわよ!」
「っとと」
 爆発の余波で荒れた水面を水上バイクで器用に駆け抜けながら腕を撃ち抜いて行く火花は、気にするなとばかりに左手を振って応える。
 それを見てほっと一息付くオーキッド。
「この調子でどんどん行くよー」
「弱らせるのは任せますわよ、パリ」
 愛羅の操る雲を足場に、海中から現れた腕を射抜いていくパリジャード。
 狙いは的確で、放った矢は一度も外れる事無く腕へと深く突き刺さる。
 時折愛羅自身もその巨体で体当たりを仕掛け、腕を葬っていく。
 その合間に高速で飛び回り、見るものを魅了する輝きと共に花弁をばら撒いて行くオーキッド。
 残像が残る程の速さで踊る様に駆け巡る姿は神話に謳われていそうな程に美しい。
 そうして十分に花弁をばら撒いた所でブラスターを撃ち起爆。
 空を翔る二人に有効な手出しも出来ず、腕は次々と屠られていった。

 海上の三人とは裏腹に、波打ち際の四人はそれなりに忙しい戦いを強いられていた。
「海から出て来ないのはやりやすいけど、数が多い事多い事!」
 ユーベルコード【偽正・炎精陽炎】を使い、ミミックを投げ付けて腕を焼き焦がしながら拓哉は額に浮かんだ汗を拭う。
 此方では腕は海から上がって来る事は無いものの、代わりに波打ち際を埋め尽くすかの様に次々とやって来ている。
 まるでタワーディフェンスゲームをプレイしている心境だ。
 勿論、こんなビジュアルでは人気は出ないだろうが。
「次から次へと! ええい、鬱陶しい!」
 彼の隣ではヒャッカが悪態を付きながら『呪詛塗れの死霊拳銃』を振り回す様に操っていた。
 ユーベルコード【死地弾丸】で周囲に死霊を湧き上がらせ囲まれるのを防ぎつつ、呪詛を撒いて腕の動きを鈍らせる。
『私は此処にいる・俺は待ってる・僕は望んでいる』
 呪いとも言える腕の招きを振り払いながら、ヒャッカは次々に弾丸を放つ。
 一点集中で中心部を狙い、斃していくが如何せん数が多い。
「さあ、化け焦がしなミミック……! 陽炎が全てを焼き尽くす時だ!」
「沸き立て! 力及ばず命を弄ばれし、殺意を抱き続ける者よ!」
 互いにユーベルコードを使いながら腕を蹴散らしていく。
 拓哉は一度ミミックを取り込ませた所で爆破し内部から焼き焦がす戦法へとシフトしてより効率を上げ、ヒャッカは死霊の盾による誘導で攻め寄せる方向を限定し誘い込み戦い易い土壌を作り上げた。
「一体何体出て来るんだか」
「飽きもせずに、よくも来る!」
 派手に戦えば戦う程、脅威と見做され腕が集まってくるのだが二人は気付かない。
 それだけ効率良く片付けているとも言えるが、当人達はこの状況に飽き飽きしている様だ。
「あー、こりゃ明日筋肉痛だな……」
 オーバースローでミミックを投擲する拓哉がうんざりした声色で呟く。
 その声を拾い、ヒャッカはふっと小さく笑う。
「その点ワタシは気楽で良い。筋肉痛に悩まされるのはジニアの方だからな」
「ずる……いのか? ずるくないのか? どっちだ」
 思わず不平を叫ぼうとした拓哉だったが、多重人格の場合の負荷が如何処理されるのか判断出来ず思わず頭を悩ませる。
 そんな彼の様子に笑い声を上げて、ヒャッカは引き金を引き続ける。
 徐々に早撃ちと命中精度も上がってきたらしく、先程までよりも少ない弾数で腕を骸の海へと叩き返して行く。
「斃した数やコンボ数でアイテムは出ないのか?」
「そっちはガンシューティングで羨ましいなぁ……!」
 疲労で熱を持ち始めた右腕を酷使しつつ、拓哉はミミックを放り投げる。
 気分は爆弾男だ。
「右腕だけムキムキになりそう」
 妙な悲観を携えて戦い続ける拓哉。
 何だかんだ言いつつも自身が最多撃破数を更新し続けている事には、まだ気付いていない。
「元から浮いているから簡単でしょう。早く片付けてくださいな」
『けけけ、人形遣いが荒いぜ』
 二人から少し離れた場所ではアマータとネロが戦っている。
 と言っても主に戦闘しているのはネロの方だ。
 鎌を振って手首をスパスパ切り落として、腕が弱った所で中心へ鎌を振り下ろす。
 魂を引き摺り込む様な誘惑も人形である彼には効かない。
 寧ろ手を繋ごうと伸ばしてくるので切り落とし易くて仕方が無いくらいだ。
『けけけ、馬鹿なヤツらだぜ。学習能力はねぇのかよー』
 踊る様にフラフラと動きながら次々に腕を切り伏せて行くが、その度に返り血や海水が自慢の外套に染み込んで行く。
 その度に嫌そうな顔をしてアマータを見遣るが、彼女は何処吹く風で見返してくる。
「後で洗ってあげるので許して下さいな」
 少しばかりの手伝いとして、アマータは指先から懸糸『マギア・フィールム』を伸ばして腕へと向かわせる。
 腕はこれを嬉々として掴み掛かってくるが、当然罠である。
 糸を絡ませた相手を盾にする要領で腕を海中から釣り上げて、無防備な姿を晒させる。
「さ、これでやりやすくなったでしょう?」
 そう言ってアマータが示す先には釣り上げられた腕がプラプラと揺れている。
 砂浜からは見えていなかったが、腕の付け根部分はスーパーで売られているエノキダケの、くっ付いた菌床の様になっている。
『うわキモ』
 思わずいつもの不気味な笑い声を忘れて本音を漏らすネロ。
 余りまじまじと見たくは無かった様で、鎌を下から振るって根元に深々と突き立てる。
 呆気無く一撃で消滅した腕に満足そうに頷き、アマータは口を開いた。
「効率的で良いですね。どんどん釣り上げるのでサクッとお願いしますよ、ネロ」
 次々に釣り上げられた腕を屠っていくネロだったが、その後姿は何処か煤けて見えたと言う。
 賑やかな二人の横で誰よりもストロングな戦いを繰り広げていたのは花子だった。
「さて、お主の深淵は『死』よりも深きものかのぉ?」
 試す様な問い掛けを放ちながら、花子は右手を差し出す。
 寄って来た腕はそれを硬く握り締め引き摺り込もうとする。
 が、それは叶わない。
「御手洗の御技を以てその厄災を浄化せん……デザインはあれだが……」
 呟きと共にユーベルコード【御手洗の御技】を発動する。
 次の瞬間、腕は横殴りに叩き付けられた。
 ぶつかったのは白磁を思わせる美しい白が映える陶器の洋式便器だ。
 続けて水流が腕を揉み洗い、最後に骸の海へと引き摺り込む腕が群体の腕を掴んで『持って』行く。
 物理的な防御力に乏しいらしい腕は一連の流れで耐える暇も無いまま骸の海へと押し流されていった。
 一撃目の洋式便器が命中した瞬間に骨が砕け肉が弾け飛んでいるのだから、その威力は推して知るべし、である。
「なんじゃ、こいつもだらしが無いのぅ」
 握っていた手が消えたのを見送りながら右手を振って呆れを滲ませる花子。
 先程から、彼女はこの方法で寄って来る腕を返り討ちにしていた。
 割とリスキーな戦い方だが確実に攻撃を当てられると言う面も有る。
「しかしなんじゃったか。何かの漫画でこのスタイルで死ぬまで殴り合う決闘法が有った様な無かった様な」
 ストロングスタイルで戦い続ける童女の姿は或る意味この場の誰よりも漫画染みているとも思えるが、生憎それを指摘する者は居なかった。
「有利な戦場と言う物は向こうが勝手に作ってくれるじゃろう。掴まれるという事は、同時に掴むことができる間合いであり、掴んでいる限り回避もできないのだから」
 理には適っているかもしれないが、実行に移せるかは猟兵でも半々だろう。
 それを躊躇無く選んでしまえる辺り、彼女の豪胆さが垣間見える。
「お、次が来たか。さて、どれだけ保つかのぅ?」
 小さな喉を鳴らして笑う花子。
 その笑顔だけ見れば道行く男の半数は虜に出来るかもしれない。
 が、彼女に群がるのは無数の腕ばかり。
「……なんじゃ、こいつも歯応えが無い。全く、腰の入った奴はおらぬのか」
 そして便器に砕かれ流され引き摺り込まれて行く。
 手並みが鮮やか過ぎて最早コントの領域まで達していそうだ。
 戦いから作業へと移行してしまい、花子は退屈そうに欠伸を噛み殺すのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『サメ』

POW   :    サメは潜航する
【地形に姿を隠した状態からの不意打ち】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛み付き】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サメは飛行する
全身を【任意の属性】で覆い、自身の【サメ力(ちから)】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    サメは仲間を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【の任意の属性のサメ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:井渡

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 数十体の腕を葬り去った猟兵達。
 彼等の前に、遂に目的のオブリビオンが姿を見せる。
 豪快な水飛沫を上げながら海中から飛び上がったのは、一匹の巨大な鮫。
 その大きさは最早鮫と言うよりもモンスターと称した方がまだ信じられそうな程である。
 背びれを揺らめかせながら、鮫は猟兵達へと静かに狙いを定める。
 しかしこの鮫、オブリビオンだけあって常識が通用しない。
 海中のみならず、空中はおろか砂浜でさえ『此処は俺のホームだ』と言わんばかりに自由に泳ぎ回るのだ。
 この荒唐無稽な鮫に、少しばかり常識を叩き込んでやる必要があるかもしれない。
御手洗・花子
UCを使用し、サメを殴る準備を整える。

「何属性じゃろうと『一撃で消滅する』のなら同じ事じゃ」
小型のサメは無属性の【衝撃波】を広範囲に放ち一掃する、威力が低かろうが一撃は一撃である。

「サメの弱点は鼻じゃ」
衝撃波を伴う掌底を鼻先に叩き込み、神経が集中してるロレンチーニ器官を破壊する。

「そして、軟骨魚類は骨が弱い」
鮫肌が硬かろうが、衝撃波を内部に叩き込む『御手洗式マーシャルアーツ』には関係ない。
軟骨魚類の骨は折れやすく、内蔵も余りガードできていない…即ち、サメは打撃系に弱い、そんな鮫が十全に打撃を行える地上に出るのは不用意なのだ

「即ち、サメは殴る!、それに限るのじゃ!」
良い子は真似してはいけません。


ジニア・ドグダラ
『相手は巨大な鮫。地形に囚われぬ存在であるならば、此方から一本釣りしてしまえ』

引き続き第二人格『ヒャッカ』として行動する。
霊縛之棺の【封印を解く】ことで棺内部より、巨大な骸骨の霊を召喚し、その肩にワイヤーフックに飛び乗って安全を確保する。

手段は不明だが、相手が地形に隠れたのならば【怨嗟の声】をここ一帯に響かせ、身を蝕む【呪詛】で【釣り】あげてみようか。
そのまま行動するのならば、骸骨の【拳】に【生命力吸収】の呪術を付与し迎撃してみる。
何らかの手段を発動するならば私を囮に相手を【おびき寄せ】、骸骨にワイヤーフックを掛けて【空中戦】で回避しながら、もう一度【怨嗟の声】による【呪詛】で弱らせていこう。


アマータ・プリムス
……最近の鮫は空を泳ぐのですか
にわかに信じられませんが目の前の光景を信じましょう

縦横無尽に動き回られては戦闘も不利になってしまいます
空を泳ぐ鮫へ向けてUCを放ちまずは拘束させていただきましょう

呼ばれた仲間はアルジェントムを【武器改造】してミサイルの【範囲攻撃】で一掃
鮫を拘束したら【敵を盾にする】要領で他の方の攻撃に当ててしましましょう
「空飛ぶ鮫の一本釣りとは……貴重な経験ですね」

もし鮫が高速で飛翔しようとするのなら流石に危険ですので指からフィールムを切り離しましょう
ですが巻き付いたモノはそのまま
少しは動きも鈍るはず
そこにアルジェントムから銃口を伸ばし狙撃
「貴重な体験をありがとうございました」


火奈本・火花
「巨大だな……。恐竜の時代には、今の鮫とは比べ物にならない巨大な種もいたと聞くが、何か関係があるのだろうか」

■戦闘
「だが、鮫は砂浜を泳がないし、ましてや平然と空を飛んだりもしない。結局は鮫型のUDCだな」
水上バイクに乗ったままの状態で奴を迎え撃とう
機動力はかなりのものに思えるし、バイクに乗ったままの方が対応出来るだろうからな

鮫は血に反応するらしい
先程の戦闘の傷か、刃物で軽く腕を傷つけて血を流して『おびき寄せ』よう。9mm拳銃での牽制もいれる
向かってくれば『捨て身の一撃』のつもりで、限界までに引き付けてからヤドリギを開放する
追いかけるよりは、攻撃範囲に飛び込んできて貰った方が仕留めやすいだろう


波狼・拓哉
鮫だー!!!取り敢えず時空の歪みにだけは気を付けよう。タイムスリップするぞ…!
はっ変な電波受信してた、さて飛び回るとなると厄介だし放置した場合の被害とか考えたくないからここで沈み還そうか。
さあ、化け喰らいなミミック…!捕食者はどっちか教えてあげようか。何体出てきても全部噛み付き動き止める感じでお願いね。
自分は衝撃波込めた弾でミミックが止めてくれた奴から一体一体撃ちトドメを指していこう。…いやね?腕がね?プルプルしててね?狙いが付けにく過ぎて…後は戦闘知識から相手の行動予測して先打ちしてサポートしとくくらいかな。
(アドリブ絡み歓迎)


パリジャード・シャチー
≪心情≫
・ついに出やがったなーサメェ!絶対にぶっとばしたるからなー。
 覚悟しとけよー!
・この日の為に持ち出してきたもう一つのメイド特製調味料で
 神宮寺家侍女式弓術激辛ヘル&ヘブンかましてやるかんなー。
・ってなわけで、行くよ。爛華ちゃん。眉間に皺寄せてないでさー。
≪戦闘≫
・愛羅に乗って空中戦だよ。愛羅は雲に乗りながら空を駆けるよ。
・うちは白蛇弓Rを使ってガンガンスナイピングするよん。
・大技を打つときは2種類のソースを混ぜたものを鏃に塗るよ。
 この時は早着替えでメイド服に戻ろう。全力で弓を引くには
 シャチ衣装だとちょいキツイからね。
「この一撃はとことん辛いよ!覚悟しな!侍女式ヘル&ヘブン!」


オーキッド・シュライン
≪心情≫
・ああ、やっぱりあるんですのね…。もう一本のメイドソース。
 何てものを持ち込んでくれやがったんでしょうか、あのアホ女神。
・鮫…同情はしません。とっても苦しんで死ぬといいですわよ。
 筆舌に尽くしがたい辛さらしいので。
・辛さに苦しむ前にわたくしの炎で死んだ方が幸せですわよ
≪戦闘≫
・UCを発動して空中戦を挑む
・愛羅の周りを炎の翅で残像が出るほどの速度で飛び周りながら、
 ブラスターを連射していきますわ。
・敵が突っ込んでくるようならばすれ違い様に細剣でカウンターの
 突きを入れながら、体の中を焼きますわ。
・基本的にはマスデバリアでのオーラ防御やカトレアでの武器受けで
 パリと愛羅への攻撃を防ぎますわ



 前座を蹴散らして一度砂浜へと戻り、本命との戦いに備える猟兵達。
 そんな彼等の前に大きな水飛沫を上げながら迫り来る遠洋からの突起。
 見る間に大きさを増して此方へと近付いてくるそれは、太陽を背負う様に高く飛び上がって上空から此方を睥睨した。
 濁り切った黒い相貌が、静かに見詰める。
「鮫だー!!!」
 思わず叫ぶ様にしてオブリビオンの襲来を伝える波狼・拓哉。
 突然の襲来で彼の脳内に変な電波が送り込まれていく。
(取り敢えず時空の歪みにだけは気を付けよう。タイムスリップするぞ……!)
 色々と危うい思考に走っている彼を正気に戻したのは、すぐ傍で気炎を上げているシャチぐるみの女性の声。
「ついに出やがったなーサメェ! 絶対にぶっとばしたるからなー。覚悟しとけよー!」
「はっ変な電波受信してた」
 ビシィッと右ヒレを伸ばして鮫へと突き付けるパリジャード・シャチーの横ではオーキッド・シュラインが頭痛を抑える様にして左手を頭に当てている。
 理由はパリジャードのテンションではない。
 彼女が鮫に対して並々ならぬ敵愾心を抱くのは既に慣れた。
 問題は彼女の左手にぶら下がっている真っ赤な液体が詰まった瓶だ。
「ああ、やっぱりあるんですのね……。もう一本のメイドソース。何てものを持ち込んでくれやがったんでしょうか、あのアホ女神」
 前哨戦で猛威を奮った激辛調味料だが、実はもう一本有ったのだ。
 その名も『spicy heaven』である。
 地獄と天国両方を兼ね備え最強に見えるが一歩間違えればケミカルテロだ。
「巨大だな……。恐竜の時代には、今の鮫とは比べ物にならない巨大な種もいたと聞くが、何か関係があるのだろうか」
 シャチぐるみの後ろで冷静に観察しているのは火奈本・火花だ。
 意識して真っ赤な瓶から視線を外している。
 地獄の方の威力は先程間近で見ていた彼女は、或る意味で最も真っ赤な瓶の脅威に敏感であった。
「……最近の鮫は空を泳ぐのですか。にわかに信じられませんが目の前の光景を信じましょう」
 アマータ・プリムスは鮫に対しての価値観を揺るがされた様で、頻りに頭を振っている。
 一応そう言ったトンデモ生物と化した鮫が出て来るZ級映画の存在は聞き及んでいるが、実際にこうして動き回っているのを見るとその衝撃も尋常ではないらしい。
 現に、海中へ潜るかと思われた鮫はそのまま悠々と空を泳ぎ回っている。
 アレは本当に鮫なのか、オブリビオンだとしても本当に鮫の括りに入れて良いのかと言う疑問が脳裏で反復横跳びをしている。
 珍しく困惑を示すアマータへ、御手洗・花子が背伸びして肩をぽんぽんと慰めるように左手を乗せる。
「深く考え込んだら負けじゃぞ? 取り敢えず倒せばこっちの勝ちじゃからな」
 花子は既に順応している。
 小さい頃から異形と向き合う機会が多かった故か、その小さな体躯からは歴戦の勇士が醸しだす独特の雰囲気を放っている。
 そして思考も最適化されているので躊躇が無い。
 殴って倒せなかったら別の方法を考える、オブリビオンの相手はそれくらいで丁度良い。
「鮫は砂浜を泳がないし、ましてや平然と空を飛んだりもしない。結局は鮫型のUDCだな」
 火花も頷きながら水上バイクのエンジンを掛ける。
 足を取られる砂浜よりは幾分素早く動き回れる筈だ。
 その動きを機に戦闘準備に入る猟兵達。
「んで、如何やって止めようかね」
「相手は巨大な鮫。地形に囚われぬ存在であるならば、此方から一本釣りしてしまえ」
 拓哉の声に答えるのはジニア・ドグダラ。
 引き続きヒャッカの人格が表に出て来ている。
「集え! 己に刃を突き立てた者への惨劇を祈る、怨恨晴れぬ朽ちた者よ!」
 背中に背負っていた棺桶『霊縛之棺』の封印を解いてユーベルコード【蛾者髑髏襲来】を発動。
 現れた巨大な骸骨の肩にワイヤーフックを掛けて飛び移る。
 視線の高さを合わせた事で、鮫の醜悪な顔が良く見える。
「空飛ぶ鮫の一本釣りとは……貴重な経験ですね」
 アマータのユーベルコード【Festina lente】で指先から鋼糸が射出される。
 飛来した鋼糸が空を切り裂きながら鮫の肌へと巻き付き。
「……はい?」
 その身を絡め取ったかと思った矢先、鮫は弾ける様に空気に溶けて行った。
 予想していなかった光景に思わず首を傾げるアマータ。
 そんな停止した空気を吹き飛ばす様に、ヒャッカが声を上げる。
「――アレは『小型』の召喚体だ! 奴は既に仕掛けて来ているぞ!!」
 その言葉に、全員が焦りと共に構え直した。
 周囲にはいつの間にか鮫が潜んでいる。

「あのド派手な登場からトリックだったってか!」
 箱型生命体『ミミック』を巧みに操り、迫り来る鮫を迎撃していく拓哉。
 砂浜に陣取った彼は海中や砂浜を泳ぎ回る鮫を相手取っていた。
 背びれが突き出ているので位置の把握はし易く、加えて或る程度接近してくると海上若しくは地上へと浮かび上がってくるので、近付かれる前に対処が可能だ。
 次々に襲い来る鮫をあしらいながらも、彼の脳裏には想像するのも嫌な疑念が浮かぶ。
 普通の鮫よりも余程巨大に見えるこの召喚体が小型だと言うなら、本体は果たしてどれ程の大きさなのか。
 それ程大きいのなら、一体何処に身を潜めていると言うのか。
「こいつらは一撃で撃退出来るからまだ良いけど……!」
 ユーベルコード【偽正・神滅迫撃】で鮫の動きを止め、カラフルな装飾が特徴のモデルガン『MODELtypeβ バレッフ』で鮫を撃ち抜いていく。
 衝撃波を込めた弾は召喚体を倒すには十分な威力の様で、縦横無尽に泳ぎ回る鮫の数も着実に減って行く。
 とは言え映画の主役の様に華々しいスタイリッシュな戦いとは断言し難い。
 理由は一つ。
「めっちゃ照準ズレる……!」
 先程までの戦いでぽんぽんミミックを投げ過ぎた所為か、肘の周りの筋肉を始めとして腕全体がプルプルと震えてしまっている。
 言うまでも無く乳酸のフィーバータイムだ。
 これまでの戦いの経験と鮫の動きの予測を併せて、震える腕を大きく振り回して射線と鮫の動きが交差する一瞬を狙って引き金を引き絞り、如何にか命中させている。
 それも普通に考えれば神業的技術なのだが、当人はもう少しカッコ良く戦いたかったのかもしれない。
「これ帰ってから一時間くらいお風呂に使ってマッサージしないとアレなヤツだ」
 戦闘によるものではない脂汗を額に滲ませつつ、拓哉は戦い続ける。
 専ら、彼の相手は鮫ではなく自分との肉体だった。
「あの動きで良く当てられますわね……しかも全部鮫の脳天ド真ん中」
 そんな戦いを上空で横目に眺めながら、オーキッドは空を舞う鮫を『インフェルノブラスター・デンドロビウム』で撃ち落していた。
 空気を泳ぐ、と言う物理法則も何も有ったもんじゃない動きで全周囲から迫る鮫を着実に迎撃していく。
 多種多様な属性を身に宿している為か、鮫の外見は実にカラフルだ。
 見て火や雷と分かる赤や黄色の鮫はまだ良い。
 だが金や銀を始めとして鼠色や紫陽花色、果ては玉虫色辺りの鮫は一体何属性だと言うのか。
 それらの色合いの鮫が迫ってくるのは倒すべき敵と言う面を差し置いても些か画面の圧が激し過ぎる。
「あぁ、もう! 飛んで火に入る夏の虫とは言いますけど、流石の虫も此処まで集まっては来ませんわよ!?」
「くそー、手応えが無いぜぃ。とっとと本体出てこいやー!」
 愚痴りながらブラスターと細剣で戦うオーキッドの横で、パリジャードは不満げにその顔を歪めている。
 引き続き召喚した真っ白な巨象『愛羅』に騎乗して人馬一体ならぬ人象一体で鮫を蹴散らしていくが、相手が一撃で弾けて行く現状では彼女の『絶対サメ殺す』と言う漆黒の意思が満たされない様だ。
「ふぇっへへへ、早くこの激辛ソースの餌食にしてやりたいねー」
「ちょっとパリ、その顔は女神が浮かべて良い顔ではありませんわよ!?」
「おおっと、ついシャチソウルが」
 冗談も交えつつ弓型獣奏器『白蛇弓・因達羅R』を振るい競う様に鮫を撃ち抜いていく。
 愛羅も寄って来た鮫を返り討ちにしており、今の所は危ない様子は無い。
 とは言え相手の数が減っている様にも思えず面倒臭いと言う思いがしっかりと表情に出ている。
「あーもう、面倒臭いったら!」
「まるで鰯の群れですわね。次のサメ映画のモチーフには良さそうですわ」
「そんなものよりシャチ映画撮ろうぜ!」
「妙な所でノって来ないでくださいまし!」
 軽口の応酬が出来るくらいには両者とも余裕らしい。
 空で派手な戦いを繰り広げている最中、砂浜の一角ではこれまた映画になりそうな戦いが始まっていた。
 だが、ジャンルは不明である。
「薙ぎ払え!」
 ヒャッカの声に応じて巨大な骸骨が左腕を振り回す。
 甲の骨にぶつかり、数匹の鮫が水風船を割る様に弾け飛んでいく。
 背後から迫る鮫には体躯を回して右の拳を振り上げて打ち払い、自身は怨嗟の声を響かせて鮫の動きを鈍らせていく。
「空の鮫はお任せください」
 銀のトランク『アルジェントム・エクス・アールカ』に武器改造を施し多連装ミサイル砲となし、頭上を泳ぎ回る鮫へ向けてトリガーを引き絞る。
 白い弾頭を魚と見間違えたのか、一斉に群がっていく鮫。
 先頭の一匹が喰らい付いた瞬間に大きな爆炎が広がり、周囲を焼き焦がしていく。
 その余波がお下げを揺らしていくのを感じながら、アマータは次の獲物を定めてミサイルを放って行く。
「花火と言うには風情が足りませんね」
「まぁまだ日中だからな」
 群れを成して正面から迫る鮫を両手のラッシュで迎え撃たせながら、ヒャッカは油断無く周囲を見詰める。
 これだけの鮫を向かわせながら、本体は未だ姿を見せない。
 果たして何を狙っているのか。
 見極めようとする彼女の視界に、とても凄まじい戦い(精一杯の表現)をしている猟兵の姿が見えた。
「何属性じゃろうと『一撃で消滅する』のなら同じ事じゃ」
 ユーベルコード【素敵なエージェント花子さん】を発動した花子が首を振る。
 その姿は今までの童女のものとは違い、身長が伸び肉付きも良くなり髪もそれなりに伸びたものである。
 言わば『普通に成長出来た姿』だ。
 口調と相俟って不思議な雰囲気の漂うロリっこから、妖しげな色香を纏った美女へと変身を遂げた花子。
 しかし、その戦い方はストロングスタイルを正統進化させたものだった。
「サメの弱点は鼻じゃ」
 口を開き鋭い歯を剥き出しにして迫る鮫の鼻先にカウンターの掌底を叩き込む。
 鮫の鼻先には小さな孔が幾つも空いている。
 それらの奥にはゼリー状の物質が詰まった『ロレンチーニ器官』と呼ばれる電気を感知する感覚器官が有る。
 この器官を使って鮫は獲物となる魚の居場所を極めて精密に感知しているのだ。
「そして、軟骨魚類は骨が弱い」
 鮫は硬骨ではなく軟骨で全身の骨が形成されている。
 一番硬いのは歯であり、鮫の化石も殆どは歯しか見付からない程だ。
 鮫の骨が何故軟骨なのかの理由は諸説有るが、深海での活動に適応する為に水圧で折れてしまう硬骨から軟骨へと進化した、なんて学説も有る。
 それら軟骨は水中で掛かる圧には強いが、瞬間的な打撃には非常に無防備である。
「即ち、サメは殴る! それに限るのじゃ!」
 結論を言えば、ぶん殴られると致命傷となる。
 掌底を受けた鮫は弾けて消える前に、エラの間から粘性の血を噴出していた。
 威力が強過ぎるが故の現象だ。
「うむ、やはり鮫の処理はこれに限るのぅ」
 良い子は真似してはいけません、と注釈が出そうな戦い方である。
 そんな賑やかな彼等の戦いに紛れて、火花は一人水上を駆け抜けていた。
 水上バイクを駆り寄って来る鮫を次々と『自動式9mm拳銃』で撃ち抜いて処理していく。
 その合間に、思考を巡らせる。
(これだけ暴れ回っても未だに本体は姿を見せない。ただ漫然と待っているのではなく、何かを、機会を待っている?)
 オブリビオンとは言え姿形や習性は元となった鮫のものと相違無い。
 ならば、鮫としての本能がその行動を取らせている可能性が高い。
(如何にかして本体を誘き寄せたいが……鮫が強く反応するものと言えば、やはり)
 恐らくは間違いない。
 試す価値は十分に有ると判断した火花は、皆に声を掛ける。
「今から本体を誘き出す! チャンスを逃すな!」
 声に皆が反応したのを見て、火花はツール代わりの刃物で軽く左腕の肌に線を引いた。
 見る間に血がぷくりと浮き出て、直ぐに流れ落ちていく。
 左腕を大きく振って海中へと血を落とす。
 じわりと海に溶けて、血が有った痕跡が目には見えなくなって数秒。
「……来たっ!」
 水底から鳴動を振り撒きながら、遂に本体が海上へとその姿を晒した。
 召喚体が小魚に見える程の巨体。
 小型の船舶程度ならば飲み込んでしまうであろう鮫が、水飛沫を撒き散らして空へと飛び上がる。
 その黒く濁り切った目は血の出所、火花を見据えている。
「やはり血の匂いで……!」
 本体たる鮫は待っていたのだ。
 召喚体に襲われた獲物が血を流し、弱っていく所を。
 十全な抵抗が出来なくなった所で真下から一飲みに襲い掛かる。
 自身にしてみれば必勝の仕掛けだったのであろう、火花を見詰める鮫は忌々しげに歯をカチカチと打ち鳴らしている。
 そこへ飛来する鋼糸。
「今度は逃しませんよ」
 アマータが指先から鋼糸を射出し、鮫を絡め取る。
 鮫は身を捩って逃れようとするがそこへ火花のユーベルコード【宿木乱舞】が襲い掛かる。
「一瞬だけ、だ……暴れすぎるなよ――!」
 右腕から暴れ狂うヤドリギと蔦が伸びていき、鮫肌を打ち据えながら締め付ける。
 一瞬動きを止めた鮫の鼻先と耳朶を、拓哉の弾丸とヒャッカの怨嗟の叫びが捉える。
「サポートする!」
「アァァァァァアアア――ッ!!!」
 動きを完全に止めた鮫の脳天へと向かい来るのはブラスターの熱線。
 オーキッドが放った熱線は鮫肌に小さく孔を開け、脳天へと一直線に届く通路を築く。
「同情はしません。とっても苦しんで死ぬといいですわよ。筆舌に尽くしがたい辛さらしいので」
「この一撃はとことん辛いよ! 覚悟しな! 侍女式ヘル&ヘブン!」
 そこへシャチぐるみからメイド服へと早着替えを済ませていたパリジャードが、禍々しく染まった赤を纏う矢を放つ。
 例の激辛ソースをブレンドして漬けた鏃が鮫の脳天に食い込むと、鮫は狂った様に全身を痙攣させ始めた。
「引導を渡してくれるわ!」
 激痛から如何にか逃れようと悶え苦しむ鮫が逃げ場を求めて上へと泳ぎ出す。
 その鼻先へと、高く飛び上がった花子が上空からの一撃を放った。
 鋼糸とヤドリギと蔦で拘束され、衝撃全てを逃す事無くその身で受け止めた鮫は一度大きく体を震わせて、鼻先から真っ赤に染まった粒子となって消えて行った。
 同時に、離れて様子を窺っていた召喚体の鮫も空に海に砂にと溶けて行く。
 如何やら完全に撃破出来た様だ。
「っと」
 反動で海へと落ちる花子を、火花が水上バイクを回して受け止めに行く。
 無事後部座席へと収まった花子だったが、その顔を強く歪めている。
「如何しました、何処か怪我でも?」
 戦闘を終えて普段の口調へと戻った火花が心配そうに声を掛ける。
 対する花子は、涙声で告げた。
「倒した時の粒子が何かとても辛い」
「え?」
 思わぬ所で激辛ソースの被害者が生まれていた様だった。
 花子の様子に、誰からともなく笑い声が漏れる。
 笑っていないのは顔を真っ赤にして辛さに耐えている花子と、激辛ソースの威力にドン引きしているオーキッドだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『海を楽しめ!』

POW   :    海の家や屋台廻りでとにかく食べ物を堪能

SPD   :    水泳、ビーチバレー、水鉄砲の打ち合い、体を張って夏を満喫

WIZ   :    海を眺めて物思いに耽る、もしくはのんびり徹底的に日焼け、パラソルの下でのんびり

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無事にオブリビオンを撃退した猟兵達。
 事件解決の知らせは直ぐに回り、猟兵達にはお礼として近くの海水浴場で後日行われる海開きへの招待状が贈られた。
 協賛企業の協力も有り、当日の飲食からレジャーグッズ、更には水着までもが無料で購入出来るとか。
 今回の戦いで疲れた心身をリフレッシュすべく、存分に海を満喫すると良いだろう。
ジニア・ドグダラ
……ヒャッカ、何か言う事は?『筋肉痛で動けないのは、積極的な運動をしないジニアが悪い』うるさい、です。ここまで痛むのは、久々ですよ。

『ヒャッカ』に対して文句を言いつつも、二人とも水着を着て海で遊ぶことにします。とはいえ、私も『ヒャッカ』も、筋肉痛であまり動けないので、浮き輪で海に浮かんでいたり、浅瀬で水に浸っていたりとのんびりしましょうか。手達や鮫の事もありますので、あまり遠くまではいかないようにします。

他の方が、何か遊ぶようでしたら、参加させていただきたいですが……。まぁ、筋肉痛があっても、多少は動けることでしょう。ヒャッカ、あなたも参加します?

※アドリブ等歓迎 水着はあまり派手じゃないので


波狼・拓哉
海を前にしてブラブラするとか実は男性自分しかいないし役得ラッキーと思うとか食べ物堪能するとか本当ならあるよ?でもね?その辺がどうでもよくなるぐらい腕がプルプルして死にそう。日日たった今でも死にそう。年かな…(白いキャップを被り防波堤辺りの海が見える位置に腰かけ黄昏る)
…一応呼ばれたからには顔出さないとねぇ。世間体もあるし…
まあ、こうやってぼんやり海眺めておくのもありっちゃーありか。ここには腕も鮫も出てこないし、猟兵になってから忙しかったしなー…………あれ休日があった記憶がねーぞ。
…さてここでぼーっとするのもいいけど海水浴場の方も行ってみるか。他の人らはどうしてるかねっと。
(アドリブ絡み歓迎)


オーキッド・シュライン
≪心情≫
・水着は…うーん。左腕の呪符とパリがいるとは言え、余計なトラブルを
 起こすのは嫌ですし、止めておきましょうか
 片腕だった時に何度か溺れかけているので、苦手なんですのよね‥海。
・まあ、海の家とかあるみたいですし、そこの料理を食べたりしましょう。
 オリュンポスの喫茶店で、海の家とか急にやるかもしれませんし、
 その料理を覚えるのもいいかもしれませんわ
・えっ、貴女はそれで泳いできたんですの…。正気?というかパニック
 起こしてないですわよね
 あー…愛羅にビックリしてた人は多かった
 まあ、日本の海岸に象はいませんものね
・それよりもパリ、貴女料理得意でしょう?海の家の料理について
 教えてくれません?


パリジャード・シャチー
オーキッドと一緒
≪観光≫
・さて、泳ぐぞ。水風神であるうちにとって海はまさにホームグラウンド。
 着ぐるみでも平気平気。(※良い子はマネしないで下さい。死にます)
・せっかくだから、カモン愛羅。一緒に遊ぼうぜい。
・愛羅の鼻で大ジャンプして、シャチが宙を舞い深めな所に飛び込むという
 水族館のシャチ芸みたいなのをしながら遊ぶ。
・爛華ちゃんは海入らないの?うちがいれば水神の祟りも平気だよ。
 まあ、好きじゃないならいいんだけど。
・愛羅と扇で着ぐるみの水分は雲にして散らすよ。
・海の家の料理かい?あれも海辺で売る用の工夫が色々してあるね。
 味付けとか、色々と変えているよ。料理は環境によっても味が
 変わるからねー



 晴天の空。
 じりじりと照り付ける太陽は、まるで夏を先取りしたかの様な輝きを放っている。
 打ち寄せる波は陽を受けてきらきらと宝石の様に光り、砂浜を染めていく。
 絶好の海水浴日和となった海開き。
 砂浜には早くも観光客が押し寄せ、我先にとパラソルを立ててレジャーシートを敷いて場所を確保している。
 その内半数はやや草臥れた男性だ。
 家族サービスお疲れ様です。
 そんな光景を眺めながら、トリコロールのパラソルが作り出す陰で涼んでいる男女が居る。
 女性はレッドワインのツーピースに白のラッシュガード、男性は紺のサーフパンツに白のTシャツと白いキャップを被った姿。
 どちらも波打ち際に繰り出して走り回る元気は無い様だ。
「……ヒャッカ、何か言う事は?『筋肉痛で動けないのは、積極的な運動をしないジニアが悪い』うるさい、です。ここまで痛むのは、久々ですよ」
 小声でぶつぶつと文句を垂れているのはジニア・ドグダラ。
 先の戦いで精力的に動き回ったツケが回り、現在全身に響き渡る筋肉痛が一足早い夏祭りを開催中だ。
 此処に来るまでも地味な鈍痛と戦っていたので、顔には早くも疲れが見える。
 猟兵となり丈夫な体は手に入れたが、日頃からアウトドアを楽しんでいる訳ではない。
「あー……日差しよりも両腕の筋肉のが熱持ってそう……」
 その隣で両腕を引き攣らせた様に小さく震わせているのは波狼・拓哉だ。
 彼はそれなりに精力的な毎日を送ってはいるが、流石に先日のミミック乱れ投げは両腕を酷使し過ぎたらしい。
 戦闘後に一度腕の痛みが引いたのをもう回復したと思い込んでそのままにして置いたのが失敗だったのか、寝て起きてからと言うものずっと両腕の筋肉がプルプルと震えっ放しだ。
 お湯に使ったりマッサージしてみたりと色々試してみるがどれも功を奏さず、幾分収まりはしたが未だに震えは止まらない。
 仕方なく、両腕を痙攣させたまま今日の海開きに参加したのだった。
「つっても折角の海をこのまま過ごすのもアレか」
「ですね……取り敢えず、海に入ってみます」
「んじゃ俺は適当に散歩しますかねっと」
 オブリビオンと戦った時よりもボロボロに見えるお互いの姿に笑いを零して、二人は気の向くままに歩き出した。
 ジニアは浮き輪を片手に砂浜を行く。
 ビーチサンダルを通して熱せられた砂がしゃりしゃりと鳴るのを感じつつ歩いて行く。
「うひょーい♪」
 突如聴こえてきた楽しげな声。
 見れば大きな白い象の鼻先を滑り降りて、大ジャンプを決めながら空を舞うシャチぐるみの姿が。
 大きく水柱を立ててすいすいと泳いで戻って来るパリジャード・シャチーのパフォーマンスはイベントの一種と勘違いされているらしく、大勢の観光客が拍手を贈っていた。
「あら、ジニアさん」
 声援に応えて手を振っていたパリジャードを遠巻きに眺めていると、不意に背後から声を掛けられた。
 振り返ると、プラパックに入った焼きそばを片手に持ったオーキッド・シュラインが居る。
「筋肉痛は大丈夫なんですの?」
「えぇ、まぁ。動き回れない訳では無いですし、折角の海ですから。オーキッドさんは……?」
 ジニアの視線はもう半分程に減った焼きそばに向けられている。
 気付かなかったが、反対側の手には焼きとうもろこしの芯と烏賊焼きの串と空いたラーメンの発泡カップが有った。
 到着してからそこまで時間は経って居ない筈だが、彼女は早くもラーメン・焼きそば・焼きとうもろこし・烏賊焼きと四品程、海の家のメニューを制覇したらしい。
 視線に気付き、オーキッドは少し照れ臭そうに目を逸らした。
「お世話になっている旅団で海の家とか急にやるかもしれませんし、その料理を覚えるのもいいかもしれませんと思いまして。パリにその辺を聴いてみようとしたんですけど『先ずは食べてみてから。海辺で売る用の工夫が色々してあるから、それを舌で味わってみるんだー』と言われまして。まぁ、当の本人はあの通り愛羅と一緒にアトラクションと言うか出し物みたいになっちゃいましたので」
 少し早口で説明する彼女にくすりを笑みを零す。
「確かに、浜辺に象の組み合わせは目立ちますからね」
「そうなんですの。他意は有りませんのよ?」
 そう言いつつも、近くのゴミ箱へ分別して投げ入れて残りの焼きそばを食む姿は何処と無くわんぱくさがある。
 手早く食べ終えたオーキッドは容器を捨てて丁寧に口許を拭くと、思い出した様に口を開いた。
「ジニアさんはこれから泳ぎに?」
「流石に泳ぐのは大変なので、浅瀬でのんびりしようかと」
「波打ち際付近でならわたくしもご一緒しますわ」
「オーキッドさんは泳がないんですか?水着も持ってきていなかったみたいですし」
 その言葉に、オーキッドは少し困ったような笑みを浮かべる。
「片腕だった時に何度か溺れかけているので、苦手なんですのよね……海」
「あ、そうだったんですか」
「ですので泳ぐのはちょっと。足首が浸かる程度の場所でちゃぷちゃぷ遊ぶのは別になんともないんですけどね」
「じゃあ一緒にのんびり過ごしませんか?」
「喜んで。流石にパリのアシスタントは色々と大変ですし、腹ごなしに丁度良い所でしたから」
 何気無く、二人して視線を動かしてみる。
 パリジャードはいつものシャチぐるみのまま縦横無尽に泳ぎ回っている。
 愛羅が鼻を伸ばして作った輪を潜り抜けると言う技も披露していた。
 技を一つ繰り出す度に最前列のちびっこ達が両手を叩いて歓声を上げている。
「すっかり人気者ですわね」
「ですね」
 その楽しげな姿に顔を見合わせて笑い合う二人。
 一方、拓哉は防波堤の先の方で腰を下ろしてのんびりと揺れる波間を眺めていた。
 何処かアンニュイな雰囲気を醸し出して黄昏ているが、彼の頭を悩ませているのは相も変わらず両腕の鈍い痛みだった。
「海を前にしてブラブラするとか実は男性自分しかいないし役得ラッキーと思うとか食べ物堪能するとか本当ならあるよ? でもね? その辺がどうでもよくなるぐらい腕がプルプルして死にそう。日日たった今でも死にそう。年かな……」
 齢二十二にしてこの世の無常と過ぎ行く刻の早さを嘆いている。
 間違い無く原因は年では無い。
 それでもそんな事を言わずにはいられない、やるせなさが胸中からぷかりぷかりと浮かんでくる。
「お、悩める青年発見!」
「オブッフ」
 突如、背後から波飛沫が彼を襲った。
 何事かと振り返れば、先程まで老若男女問わずビーチの視線を独り占めしていたパリジャードが腰にヒレを当てて立っていた。
 その傍らには愛羅の姿も有る。
「あれ、ついさっきまでオンザステージだったじゃないですか。もう良いんです?」
「あれだけハシャげば愛羅を見てビックリする人も、もう居ないだろうしねー。此処からはまったり遊ぶのぜい」
 ていっ、とパリジャードが右手の入ったヒレで扇を振るうとTシャツに染み込んでいた水分が綺麗に飛ぶ。
 取り込んだ後の様にすっきり乾いたのを背中で感じつつ、拓哉は目を開いた。
「へぇー、便利なものですねぇ」
「ふっふっふ、水風神であるうちにはお茶の子さいさい! ホームグラウンドと言える海は、庭所か茶の間レベルで動き回れるんだー!」
「おぉー」
 腰に両手を当ててフフンと胸を張るパリジャード。
 思わず拓哉も拍手を贈る。
「そう言えばまだ両腕はぷるぷる?」
「ぷるぷるさ加減で言えばどんなプリンよりも良い自信が有ります」
「謎の自信を!」
 からからと笑うパリジャードに対し、拓哉は額に脂汗を滲ませている。
 ノリで拍手してみたは良いが当然の如く捻れる様な痛みがじくじくと届いている。
 治った頃には腕だけちょっとムキムキしてそうで嫌だ。
「ま、そんな感じでのんびりと黄昏てたんですよ」
「んー、それなら筋肉を酷使しないでも楽しめる事でもするかい?」
 そう言ってパリジャードはくいっと右手で示す。
 その先に有るのは『カキ氷』や『ラーメン』と書かれた幟が棚引く海の家。
「なるほど」
「のんびりするのも良いけど、じっとしてたら日射病になっちゃうしね。お金も気にしなくていいし、全メニュー制覇するくらいの心意気で楽しもうじゃないかー」
「良いアイディアですね。波打ち際の二人も誘ってみますか」
「んだねー。おーい、オーキッドちゃんやーい」
 間延びした呼び声とは裏腹に凄まじい速度で海を掻き分けていくシャチぐるみ。
 知らない人が見たら、いや知ってる人が見てもパニックを起こしそうな絵面だ。
 案の定超スピードで寄って来るシャチぐるみを見て慌て、尻餅を付くオーキッドの姿が遠くに見える。
「アクティブでアグレッシヴな人だなぁ……」
 ぱおーん、と呟きに同意する様に愛羅が鳴く。
 こっちも行くか、と立ち上がって防波堤を歩いて行く。
 途中、気を抜き過ぎて沖へと流されかけていたジニアを愛羅が浮き輪ごと回収していた。
「……おぉっ、いつの間に」
 浮き輪に乗る様にしてプカプカと浮いていたジニア。
 如何やら自身が思っていた以上に、波に揺れているのは気持ち良かったらしい。
 鼻先で浮き輪を押されながら波打ち際まで戻り、そのまま四人と一頭で海の家へ。
「流石に愛羅は入らないよねぇ」
「海の家横のスペースをお借りしましょう。丁度空いてるテーブルと椅子も有る事ですし」
「取り敢えずメニューに有るもの全部で良いですわね?」
「全部食うのか……?」
 この日、海の家の売り上げは過去最高を記録したとかしないとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
今年初の海ですね
といっても水着がまだ届いておりませんので今日は眺めるだけにしておきましょう

パラソルの下デッキチェアに腰を下ろし海で遊ばれている方を眺めながら優雅に読書
「お日様の下で読む本も乙なものですね」

ドリンクのサービスもあるのですか
ありがたく頂戴いたしましょう
ほんの少しアルコールが入った物があればいいですね

しばらく優雅に読書した後
「……ちょっと入ってみたくなりますね」
此処まで来て入らないのも勿体ないので水着ではないですが海には入っておきましょう
靴とストッキングを脱いで素足になり海へと入る
少々冷たいですが心地はいいです
軽くステップを踏んで堪能したら帰りましょうか
今度は皆様で来たいですね


御手洗・花子
回遊してくる魚とやらを狙ってみる。
(噂の所為で他の釣り人が来なかったようじゃし、狙い目かも知れぬのぉ)
とは言え、実際の危険が去った今では、その噂を消すためにも釣り人には帰ってきて欲しいところ、UDC組織の部下達にも釣りに通わせ、安全性をアピール。

また、帰ってこなかった者達は高波が来るポイントに立ってしまったというカバーストーリーでUDCの存在を誤魔化しつつ噂の沈静化を願う。

「さて、浜で釣るこの季節の魚となるとキスかのぉ?、天ぷらにして一杯やるのも良いかもしれぬのじゃ」
見た目に反して海で泳いではしゃぐ事もないお年頃だし、のんびり釣りを満喫する事にした。


火奈本・火花
「……UDCの鮫は居なくなりましたが、普通の鮫や毒のある海月、魚がいる可能性もあります。一応は注意を」

■行動(SPD)
尤もらしい事は言いましたが、普段お世話になっている機動部隊の人達と海を満喫するつもりです
先に言ったトラブルには注意をしつつ、彼らと水鉄砲で勝負をしても良いでしょう。他にする方がいれば、賑やかしにもなりますしね
……しかし機動部隊の人達、水着にヘルメットですか。武器は水鉄砲なので良いですが、筋肉質なのと相まってなんかこう、変態感があるような

まぁ、良いでしょう
私も全力で遊びます。一番成績が悪かった人がお昼奢り、というのはどうでしょう?
(……意外と彼らが強くて負けたり、しそうですが)



 賑やかなスポットから少し離れた、ゆったりとした雰囲気の浜辺。
 此方はカフェテラスや旅館が程近いエリアで、のんびりと海を楽しむには持って来いの場所である。
 その平和な砂浜にパラソルを立てデッキチェアに腰を下ろし、優雅に読書を楽しんでいるのはいつもの侍女服姿のアマータ・プリムスだ。
 水着がまだ届いていないので、今日は海を眺めて心身を癒そうと言う心積もりの様だ。
「お日様の下で読む本も乙なものですね」
 持って来ている本は最近出たばかりの話題作。
 何故か毎度毎度圧倒的に不利な状況から始まる状況をその場凌ぎのハッタリと重箱の隅をつつく様なツッコミで引っ繰り返していくコメディー物だ。
「…………成程、此処でミサイルが」
 読み進めつつ、左手を伸ばしてカップを取る。
 飲み物は直ぐ近くの小洒落たカフェで注文したものである。
 既に話は通っているらしく、好きなものを好きなだけ頼んで良いとの事。
 ブランデーを垂らしたアイスティーを喉に流し込みつつ、ページを捲っていく。
 午前中と言う事も有って周囲も賑わいつつも騒がしくは無い。
 皆、思い思いに海を楽しんでいる様だ。
 そんな中、砂浜に隣接された防波堤へ赴き一人釣り糸を垂れている童女の姿がある。
 普段の着物姿では無く、風通しの良いキャップに子供用ライフジャケットと動き易い軽装だ。
「さて、浜で釣るこの季節の魚となるとキスかのぉ? 天ぷらにして一杯やるのも良いかもしれぬのじゃ」
 御手洗・花子は近くの釣具屋でレンタルしてきた釣竿を手に、穏やかな海と睨めっこをしている。
 今回の事件の噂を受けて釣り人の足が遠退いたとの事だったが裏を返せば噂が流れる前は釣果を求めて釣り人がやって来ていた、と言う事でもある。
 それだけ活気の有った場所がこのまま風化していくのは忍びない。
 そう考えた花子は率先して釣りを楽しむ事で、以前の様に釣りが楽しめる事をアピールする心算だ。
 出てしまった行方不明者は不幸にも高波が来る場所と時間に居合わせてしまった、とするカバーストーリーも用意してある。
 UDC組織が手を回して消波ブロックを幾つか追加する工事を行うのも織り込み済みだ。
 他の場所では部下達が同じ様に釣りをしている。
 集まっているのは希望者だけなので、部下達はこの機会にリフレッシュして貰いたい所。
「後は実際に釣るだけじゃが……」
 用意してもらった仕掛けを船道に投げ、ゆっくりと糸を巻いて行く。
 時折竿を煽って誘いを入れていると、急に強い引きが来る。
「おっ、ヒット!」
 海中で荒れ狂う魚影と遣り取りをしながら引き上げると、15cm程のシロギスが釣れた。
「うむ、良い感じじゃのぅ。この調子でバンバン釣るか」
 機嫌を良くした花子は手早くシロギスをクーラーボックスへと放り込んで、手早く〆ていく。
 手際の良さは一級品だ。
 更なる釣果を求める彼女から少し離れた場所では、やや異質な空気の漂う一角が有った。
 そちらでは大人数が水鉄砲で頭に取り付けた水風船を打ち合うゲームをしているのだが、何故か皆ガッチリした体型でヘルメットを被っている。
 海なので水着姿なのはおかしくない筈だが、風貌と行動の差異で妙な雰囲気が有る。
 とは言え皆楽しそうにしているので、目は引くがおかしい事は無い。
「あはは! 右からも来てますよ!」
 彼等に紛れて笑い声を上げているのは火奈本・火花だ。
 今日は折角なので普段お世話になっている機動部隊の人達と海を満喫するべく、全力で遊んでいる。
 今は2チームに分かれての水鉄砲サバイバルゲーム中。
 日頃の訓練の成果を遺憾無く発揮しつつ攻防を繰り広げている面々の動きは実践宛らではあるが、誰も彼もがキャッキャキャッキャとはしゃいでいる。
 火花も青いラインが特徴的なワンピースタイプの水着を着て楽しんでいる。
 普段はクールでパリっとした印象の有る彼女だが、無邪気に笑う今の姿を見ればビーチに集う男達の半数は釘付けに出来るだろう。
 もう半分は連れの女性に耳を引っ張られているのかもしれない。
「一番成績が悪かった人はお昼奢り、というのはどうでしょう?」
 火花の言葉に『横暴だー!』とか『汚いぞー!』と言った声が笑いと共に上がる。
 ノリの良い面々に笑みを返しながら、火花は水鉄砲を構える。
(……意外と彼らが強くて負けたり、しそうですが)
 果たして勝敗の行方や如何に。

 思い思いの時間を過ごしお昼を回った頃。
 三人は波打ち際を散歩しながらまったりと遊んでいた。
「で、結局誰が奢る事になったのじゃ?」
「あはは……ノーコメントでお願いします」
「花子様、釣ってきたシロギスは如何されました?」
「釣竿を返した後で民宿に持ち込んで天麩羅にしてもらったのじゃ」
「贅沢なお昼ですね」
 そんな風に話していた時、不意にアマータが足を止めた。
「……ちょっと入ってみたくなりますね」
「そう言えばわしも釣ってばかりで海に入ってはおらなんだ」
「此処まで来て入らないのも勿体無いですね。水着は無いですが、海には入っておきましょう」
 言うが早いかアマータは靴とストッキングを脱いでトランクへと仕舞い込み、素足になる。
 そのまま引いた波を追い駆ける様に海へ入る。
「ふふ、少々冷たいですが心地良いですね」
「夏はこれからですからね、体が冷えない様に後で温泉でも入りたい所です」
「意外に趣味が渋いのぅ……」
 追従して海へ行く火花と、それを微笑みながら見守る花子。
 長居する心算は無いらしく、数度波を蹴ってステップを踏んで戻ってくる。
 トランクからタオルを取り出して足を拭い、替えのサンダルへと履き替えるアマータ。
「今度は皆様で来たいですね」
「もう少し暑くなってからじゃな」
「楽しみですね」
 和やかに笑い合いながら、三人は波打ち際を歩いて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月03日


挿絵イラスト