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テーブルトーク邪神召喚!

#UDCアース

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#UDCアース


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●ファンブルが導く大惨事
 GM:ではこちらの行動順で『牙で喰らうもの』がAさんに攻撃。回避判定どうぞ。
 PLA:これを食らったら死ぬっ! 絶対避ける!(ころころ)……って、1ゾロ!?
 GM:命中して、HPがマイナスになりましたね。死亡判定をどうぞ。
 PLA:いや、まだ出目が7以上なら生きてるし……(ころころ)……6。
 GM:いちたりないですね。ではAさんのキャラは死亡しました。

 ここは、私立■■■■■大学に設立されたTRPGサークルの部室。
 手書きのキャラクターシートと分厚いルールブックを持った学生たちが、コロコロとダイスを転がして意味深なやり取りを交わしている。
 同好の士であれば「あるある」と笑うような、しかし知らない人間にとってはまるで意味の分からない――そう、例えば何かの儀式のように見えるかもしれない光景(セッション)が、そこでは繰り広げられていた。

 PLA:「クソッ、油断した……すまねぇ、みんな……」って言い残して死にます。
 GM:がぶり、むしゃり。Aさんの体は無数の牙に貪られ、死体も残りませんでした。
 PLB:「よくも俺のダチを!」って叫びながら攻撃!(ころころ)ってまた1ゾロ?!
 GM:ではBさんの拳銃が暴発します。ダメージの対象はランダムに。
 PLB:(ころころ)……ごめん、気絶中のCに当たった。
 PLC:マジですか!?(ころころ)私もそのダメージで死んじゃったんですけどー!!

 その日のセッションは何かがおかしかった。
 ここぞという場面で連発する低い出目。最悪のタイミングで出る1ゾロ。プレイヤー(PL)の出目が腐る一方で、進行役のゲームマスター(GM)の出目はやたらと走る。その結果、ボス戦で怪物に蹂躙されるプレイヤーたちの阿鼻叫喚が卓上に響き渡っていた。

 ――実のところ、それは単なる不運であり、偶然である。何者かが彼らのダイスを操作して貶めようとしていたわけではない。
 だが、一度のセッションの間に何十回と転がされる「不運な偶然」が、天文学的な確率によってとある邪神召喚のトリガーを引き、さらなる「大惨事」を呼び込んでしまったことを、彼らはまだ知らなかった。

 女神:ダイス運、ほしいですか?
 GM:え? うわっ!! 誰あんた?!
 PLA:うちのサークルの部員じゃないよね……?
 女神:私を信仰すれば、ダイス運が良くなるかもしれませんよ?
 PLB:ダイス運……ほしい……。
 PLC:女神よ! ダイス神の女神が降臨したわ!
 一同:女神バンザイ!! 女神バンザイ!!

 こうして、一介の学生サークルのメンバーだった彼らは、後に日本全国に数十万人規模の信者を擁する「ダイスの女神教団」の創設者となったのであった――。

●目指せクリティカルヒット
「――という未来を予知しました。リムは猟兵に出撃を要請します」
 ナニソレ、という顔をした猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で説明を続けた。
「改めて要点を説明しますと、UDCアースのとある大学のTRPGサークルで邪神が召喚されます。召喚を行ったのはオブリビオンの存在など何も知らないごく普通の学生で、召喚自体も偶発的なものだったようです」
 みんなでゲームを遊んでいたら、たまたま参加プレイヤーのダイス運が悪く、それが偶然にも邪神召喚の儀式として成立してしまったという――冗談のような本当の話である。
「召喚された邪神は『ダイス神の女神』。その名の通りダイス判定で人々を弄ぶ神で、召喚に応じたのは退屈しのぎのようです」
 彼女はべつに幸運の神では無いのだが、それでも良いダイス目を求めて彼女を崇拝する者は絶えない。これを放置すればあっという間に多くの卓ゲーマーやギャンブラーを信者とした、危険な邪神教団が誕生してしまうだろう。

「そうなる前に、召喚された直後のダイス神の女神を叩きます。現場にはリムがグリモアで直接転送を行うので、皆様は全力で目標を撃破してください」
 戦場となる部室はあまり広くはないので大立ち回りには向かないが、そこは工夫するか別の場所に敵を誘導するかして上手く対処してほしいとリミティアは言う。器物の損壊については後でUDC組織が補償してくれるので問題はない。
 また、室内にはダイス神の女神にちょっと洗脳されかかってるサークルメンバーの一般人もいるので、彼らの安全確保も必要になるだろう。
「戦闘になると、ダイス神の女神は事あるごとに『ダイス判定』を要求してきます。彼女がダイスを振ったり誰かに振らせたりするたびに、何らかの不幸や大惨事が起こる……そういう能力を持っているようです」
 運命操作か現実改変か。詳細は不明だがとにかく人智を超えた力であることは確かだ。
 とはいえその能力を除けば基本的な戦闘力は低いようで、勝機は十分にあるだろう。

「しかし敵はダイス神の女神だけではありません。この邪神の召喚を察知した強力なオブリビオンが、彼女の能力に目をつけたようです」
 ダイス目を通じて不幸や惨事を操る力。それを我が物にしようと画策したオブリビオンは、配下を引き連れてサークル棟に現れる。当然、邪神を討伐する猟兵たちとその目的は相容れない。
「彼らにダイス神の女神を渡すわけにはいきませんが、普段は暗躍している強力なオブリビオンが向こうから現れてくれるのは好機です。女神ともども彼らも撃破してください」
 そう言ってリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、UDCアースへの道を開く。
「転送準備完了です。リムは武運とダイス運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはUDCアースにて、ゲームしてたら偶然召喚されてしまった邪神を倒し、その邪神の力を我が物にしようと企むオブリビオンも倒す、そんな依頼になります。
 内容としてはほぼ純粋な戦闘シナリオとなるので、TRPGについての知識がなくても特に問題はありません。興味がある方はお知り合いに聞いてみるか、ネットで調べてみてください。面白いですよ。

 第一章では学生サークルに召喚された邪神『ダイス神の女神』との戦闘になります。召喚してしまったサークルメンバーは何も知らない一般人ですので、なるべく戦いには巻き込まないようにしてあげてください。
 第二章では女神のダイスパワーを欲したオブリビオンの配下との戦闘。第三章ではその配下を束ねる大ボスとの戦いになります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ダイス神の女神』

POW   :    ダイス神の女神はルールに従うように言っている
【ダイス判定】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    ダイス神のイタズラ
【ダイス判定】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【悪いダイス判定】で攻撃する。
WIZ   :    ダイス神のダイス判定が荒ぶっておられる
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:祥竹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠純・ハイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

デナイル・ヒステリカル
レトロゲーを愛するものとしてダイス運を弄ぶ存在を見過ごすことは出来ませんね
ところでこの依頼でダイス神にお供え物をすれば僕のダイス運が良くなったりとかは…?
えっ、しない? そうですか……(悲しげ)

サークル楝で遊んでいる学生さんたちには申し訳ありませんが少しの間避難していて貰いましょう。
パチリと指を鳴らして細い電流を火災報知器へ伝わせ、ベルを鳴らしてこの建物に存在する学生の方には退場していただきます。

敵が本当に神であるというのならば力押しは得策ではないですね。
彼女が振るダイスが転がっている内にUC:シリアライズを発動
ダイス自体をデータへと変換し、ダイス目の良し悪しそのものを無効化しようと試みます。


アマータ・プリムス
運は天に任せるモノではなく自分でつかみ取る物です
しかし攻撃するためにダイスを振らねばならないのは難儀ですね
ですがルールならば仕方ありません

「これは……ファンブルというものですか」
女神のUCで恐らく当機の判定は悪い方向に
ですがこちらにも切るカードがあります
UCを発動して今の判定を無効化
再度振り直させていただきましょう
UCとは理を曲げてしまうものですから

「はい、クリティカルです」
こちらの攻撃判定に対する女神の防御判定
そこに先程無効化したUCを排出
女神の判定を悪い方向へ

攻撃判定が成功したのでダメージロール
クリティカル分も上乗せして【武器改造】したアルジェントムからミサイルの一斉掃射で攻撃します



「ふふふ。なにやら面白い場所に召喚されましたね」
 TRPGサークルのメンバーを足元にひれ伏させながら、降臨したばかりのダイス神の女神は室内を見回す。
 棚に並ぶルールブックにテーブルに広げられたキャラクターシート、そして何よりそこらに散らばる大量のダイス。彼女にとってはさぞ居心地の良い場所だろう。
「4面、6面、8面、10面、12面、20面、100面――どんなダイスも私の思いのまま。賽の目一つで一喜一憂するニンゲンたちの無様な姿を、たっぷり楽しませてもらいましょう♪」
 まずはこの場所にもっと沢山のニンゲンを集めないと。愚かなダイスの信者(ドレイ)を増やすために、女神が部室の外に出ようとした時――。

 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!!!!!!

 突如、けたたましいベルの音が鳴り響く。それはサークル棟の各所に設置された、火災報知器の警報の音だ。
 それを鳴らしたのは、ダイス神の女神を討つためにこの場にやって来た猟兵の一人、デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)。
「サークル楝で遊んでいる学生さんたちには申し訳ありませんが、少しの間避難していて貰いましょう」
 彼がパチリと指を鳴らすと細い電流が火災報知器へ伝わり、ベルが鳴る。それを聞きつけた学生たちは多少驚いたようだが、すぐに訓練通りにサークル棟から避難を始める。
 さほどの時間を要さずに、この建物に存在する者は猟兵たちとごく一部の者を除いて、全て退場していった。

「あらら。もうやって来てしまったんですね、猟兵」
「レトロゲーを愛するものとしてダイス運を弄ぶ存在を見過ごすことは出来ませんね」
 学生たちの避難を完了させて部室に現れた猟兵たちを見て、顔をしかめるダイス神の女神。それと対峙するデナイルは眼鏡の奥の眼光を細めながら毅然と宣言し。
「ところでこの依頼でダイス神にお供え物をすれば僕のダイス運が良くなったりとかは……?」
「運は天に任せるモノではなく自分でつかみ取る物です」
 その舌の根も乾かぬうちにちょっと心が傾いている彼をたしなめたのは、アマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)。銀色のトランクを持って部室に入ってきた彼女は淡々と指摘する。
「そもそも相手は邪神でしょう。何を捧げたところで素直に願いを叶えてくれるとは思えません」
「そうですか……」
 デナイルもきっと分かっていた。分かっていたはずだ、そんなことは。
 それでも、彼の表情はとても悲しげだった。幾度となくダイス目に泣かされ続けてきた、レトロゲーマーの哀しき性である。

「一人信者が増えるかと思いましたが、ダメみたいですね。なら仕方ありません」
 消沈するデナイルはさておいて、ダイス神の女神は臨戦態勢を取る。その手には2個の6面ダイス。
「見せてあげましょう、私の力を!」
 それをコロコロとテーブルの上に転がす。突然遊び始めたようにしか見えないが、これはれっきとした攻撃である。
 ダイス神のダイス判定が荒ぶれば、それは現実に大惨事を引き起こす。例えば突然部室で火事が起こるとか、窓ガラスを割って飛んできた野球ボールが猟兵の脳天にクリーンヒットするとか。
 その災厄は彼女自身にすら制御が難しく暴走しやすいほど。つまりは本当にタダの大惨事だが、ダイス神はまったく気にしない。

「さあ私の攻撃判定の結果は――?」
 だがその時、気を取り直したデナイルが、転がるダイスに向けてユーベルコード【シリアライズ】を発動した。
「敵が本当に神であるというのならば力押しは得策ではないですね」
 ならば相手の力が発現する起点を断つ。彼の電脳魔術はダイスを構成する質量をデータに変換し、物質空間から消去する。
 ダイス目の良し悪しそのものを無効化してしまえば、大惨事も起こりようがない、という理論だ。
「わ、私のダイスが消えたっ!?」
 女神は慌てて新しいダイスを探す。だがデナイルのユーベルコードは既に部室全体に効果を発揮しており、室内にあるダイスというダイスはほとんどデータ化されていた。
 引き換えに彼のデバイスの容量は大量のダイスマクロやダイスアプリのデータで圧迫されることになったが、些細なことである。

「それで攻撃は終わりですか?」
「ではこちらの番ですね」
 それぞれの武器を構えて照準を合わせるデナイルとアマータ。慌てた女神は何か無いかと部室中を見回し――そして気付く。
「ま、待ちなさい! あなたたちもダイス判定を!」
「もうダイスはありませんが?」
「ありますよ、そこに!」
 そう言って彼女が指さした先にあったもの。それは――。
「まさか……木製ダイス、ですか」
「そう! それは消せなかったみたいですね!」
 デナイルの【シリアライズ】がデータ化できる物質は無機物に限られる。有機物である木製ダイスはその対象から外れ、その場に残されていたのだ。
 自慢の能力を完全無効化されずに済んで、ほっと胸を撫で下ろす女神であった。

 そんなわけで仕方なく、猟兵たちもダイス判定をする羽目になる。代表して木製ダイスを握るのはアマータ。
「攻撃するためにダイスを振らねばならないのは難儀ですね。ですがルールならば仕方ありません」
 ころころ、と赤と青に塗り分けられたダイスを振る。赤が10の位、青が1の位だ。
 しかしこの場は既にダイス神の女神に支配された領域。その神力――ユーベルコードに影響されたダイスは、9と9の目でピタリと止まる。
「これは……ファンブルというものですか」
「そうですね、残念でした!」
 アマータの攻撃判定は失敗。それどころか最悪の結果として、武器の暴発や暴走など、不幸な被害が彼女に降りかかる――はずだった。
「ですがこちらにも切るカードがあります」
 その前にアマータが発動したのは【Nunc aut numquam】。敵のユーベルコードを無効化するユーベルコード。
 彼女の持つ銀色のトランク型ガジェット「アルジェントム・エクス・アールカ」の中から、木製の人形「アリウス・プーパ」が姿を現し――サイコロをつまみ上げると、ぽいっと口に放り込んだ。
「今の判定は無効ですね。再度振り直させていただきましょう」
「えっちょっと今のアリですか!?」
「アリです。ユーベルコードとは理(ルール)を曲げてしまうものですから」
 正確にはアマータが無効化したのは女神の運命(ダイス判定)を操る力だが、それを物理的に表現するとこうなる。
 概念的には極めて高度な戦いなのだが、現実にはサイコロを振っているだけにしか見えなかった。

「はい、クリティカルです」
 そんなわけでアマータが振った二度目のダイス目は01。文句なしの大成功である。
「くっ……でもここで私もクリティカルを出せば……!」
「いいえ、もう結果は決まっています」
 攻撃判定に対する防御判定を振ろうとする女神に向かって、アマータは先程無効化した女神自身のユーベルコードを人形から排出する。
 ぽーん、とアリウスの口から放たれた2個のダイスは、女神のおでこにスコーンと命中し、
「へぶっ!」
 もんどり打って倒れる彼女の前で、9と9の目を上にして止まった。

「攻撃判定が成功したのでダメージロールです」
 ガシャンと音を立てて変形するアマータのアルジェントム。その中から発射されるのは、大量の小型ミサイルの嵐。
 ヤバい気配を察した女神は慌てて起き上がろうとするが――。
「そこ、危ないですよ」
「え? へぶしっ!」
 デナイルが足元の床をいきなりデータ化したことで、再びすっ転ぶ。そこにクリティカル分の威力ボーナスを上乗せされた、アマータのミサイル一斉掃射が降り注ぎ。
「ぎにゃーーーー!!!!」
 派手な爆音と悲鳴を上げて、吹っ飛ばされていく女神であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ボゴ・ソート
学生さんは部屋の外へ出てて下さい。

不運や失敗が怖くてシーフや探索者が務まるわけないじゃないか。
それに失敗したら何度でも挑戦すればいいだけさ。
レプリカクラフトでダガーを大量に作って、判定に成功、つまり女神様に命中するまでひたすら投げ続ける。
もしダメージを伴う失敗をしてしまったら、その時は持ち前の頑丈さで耐えるよ。
といった感じで、ダガーによる攻撃が目的だと思わせておいて、スキあらば女神様がダイスロールをしたその瞬間にダイスを受け止めて盗んでやる。
出目が確定しなけりゃ失敗も成功もないからね!
女神様がダイスカップ派だったら諦めてダガーで斬りかかるよ。

(使用技能:投擲、激痛耐性、目立たない、盗み)



「学生さんは部屋の外へ出てて下さい」
 仲間がダイス神の女神と戦っている間に、ボゴ・ソート(ウォーマシンのシーフ × 探索者・f11583)は洗脳されかかったTRPGサークルのメンバーを避難させていた。
 幸いにも到着が早かった甲斐もあって大したことはない。頬を叩いて刺激を与えてやれば、彼らの目には光が戻る。
「はっ、俺たちは何を……う、うわぁっ!?」
 我に返った学生たちは、目の前で繰り広げられている猟兵と女神の戦いを見るや、慌てて逃げていった。

 これで一般人が戦いに巻き込まれる心配はない。憂いを払ったボゴは強気な笑みを浮かべて女神に立ち向かう。
「不運や失敗が怖くてシーフや探索者が務まるわけないじゃないか。それに失敗したら何度でも挑戦すればいいだけさ」
「けほっ、けほっ……大した自信ですね。ですがそういう職種こそここぞというダイス目に泣かされるのですよ! トラップの解除とか目星とか!」
 爆煙の中から戻ってきた女神は、挑発的な笑みを浮かべながら身体の煤を払うと、ダイスを構える。
 対するボゴは二本のダガーを構えると【レプリカクラフト】を発動。造りの荒いダガーの複製が、何十本と彼の手元に現れる。
 成功率の低さは試行回数で補う、それが彼のダイス運に抗う戦術だった。

「食らえっ!」
 洗練されたフォームでダガーを次々と投擲するボゴ。その狙いは正確――にも関わらず、ダイスの女神にはその一本も命中しない。
 女神は何もしていない。ただ、手元でダイスを転がしているだけだ。それなのに、まるでダガーのほうが彼女を避けているように軌道が逸れるのだ。
「忙しそうなので、かわりにダイス振ってあげますね……おや、ファンブル♪」
 転がった2個のダイスが1と1の目で止まる。その瞬間、投げようとしたダガーがボゴの手の中で滑り、彼の身体に突き刺さった。
 これがダイス神の女神の力。彼女がダイス判定を行えば因果は歪み、敵対者にはありとあらゆる不幸な結果が降りかかるのだ。

 だが、それでもボゴは諦めなかった。失敗の連続でダメージを受けようとも、頑丈なボディを持つウォーマシンの彼は怯まない。
 何度でもダガーを投げ続ける彼を、ムダな努力だと女神は嘲笑う。気がつけば複製したダガーも残り僅か。確かにこのままではボゴに打つ手はないように見える。
「ふふふ。さて次の判定の結果は――」
 余裕綽々の様子でダイスを投げる女神――だが、彼女が油断しきったこの時こそ、ボゴの待っていた瞬間だった。
「今だっ」
 ダガーを投げると見せかけて不意に駆け出した彼は、テーブルに転がるよりも速く女神のダイスをキャッチする。シーフとして磨かれた盗みの技で。
「ああっ、何を!?」
「出目が確定しなけりゃ失敗も成功もないからね!」
 驚愕する女神の前で、ボゴは盗んだダイスを弄びニヤリと笑う。ここまでずっとダガーによる攻撃を続けてきたのは、本当の目的を相手に悟らせないためだったのだ。

「ズルですよこんなの……っ!」
 抗議の言葉を口にしながら、新しいダイスを取り出そうとする女神。しかし彼女がもう一度ダイスロールを行うよりも、ボゴが斬りかかる速度のほうが速い。
「女神様がダイスカップ派じゃなくて良かったよ!」
 複製ではない二振りのダガーが鋭く閃き、女神の身体を切り刻んでいく。
 ダイス神の女神はオープンダイス派。それが彼女の敗因であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

波狼・拓哉
・・・偶にあるんだよね。ダイス目偏る時(遠い目)
クリティカル7連は正直トラウマレベルだよ・・・
とと、その辺は後だ。今は対処に向かおう。
部屋が狭いとなるとあんまり無茶は出来ないな。衝撃波込めた弾と戦闘知識から狭いとこで戦い方思い出して安全にいこう。
机とかはあるだろうから地形の利用も組み合わせて一般人守るように拠点防御ぎみで行こうかな。ダイス判定は・・・考えても仕方がないし、気合いで。
・・・余りにもダイス目悪かったらミミックに頼もう。化け転がせー。・・・一応実力で倒したくはあるし最終手段で。効くかも一応は分からんし。
(アドリブ絡み歓迎)



「……偶にあるんだよね。ダイス目偏る時」
 戦場と化した部室に散らばるダイス。それをを見た波狼・拓哉(ミミクリーサモナー・f04253)はふと遠い目になる。
 彼が思い出したのは過去の苦い記憶。ダイスが引き起こした大惨事の数々である。
「クリティカル7連は正直トラウマレベルだよ……とと、その辺は後だ」
 そんな悲劇を引き起こす神がいると言うなら、放ってはおけまい。過去の記憶にはいったん蓋をして、今は目の前の対処に向かう時だ。

「ぐぬぬ、運命(ダイス)を操るこの私がこうも苦戦するなんて……ですが、まだです!」
 傷ついたダイス神の女神は再びダイス判定を始める。すると、部室の窓から唐突に激しい風が吹き荒れ、室内にあった備品が宙を舞う。
 分厚いハードカバーのルールブック。真鍮製のサイコロ。それらに勢いがつけばもう立派な鈍器や凶器である。
「部屋が狭いとなるとあんまり無茶は出来ないな」
 敵はそんなことお構いなしとはいえ、こちらとしてはあまり被害を拡げるわけにもいかない。避難していった一般人に累が及べば最悪だ。
 拓哉はさっと腰から引き抜いたモデルガン「MODELtypeβ バレッフ」から衝撃波を込めた弾丸を放ち、飛来物を撃ち落とす。同時に重くて吹き飛ばずに済んだテーブルや本棚を遮蔽物として活用し、即席の防御陣地を築いた。
 相手をこの部屋から決して出さず、確実に仕留めるために。

「さあ、次はそちらの攻撃判定ですよ!」
「あ、やっぱりやらされるのか。ダイス判定は……考えても仕方がないし、気合いで」
 近くに転がってきたダイスを握りしめ、クリティカル出ろクリティカル出ろ、と念じながら投げる拓哉。すかさずモデルガンの銃口を女神に向けて、引き金を引く。
 しかし彼の想いも虚しく、出目は最悪。放たれた弾丸と衝撃波は、風が巻き上げた備品に"偶然"遮られ、女神には届かない。
「ふふふ、気合いでダイス目が良くなるなら私みたいな邪神が生まれるわけないでしょう!」
「邪神って自分で言うのか……」
 それからも拓哉はダイスロールと発砲を何度か繰り返すが、結果はすべて失敗。逆に吹き荒れる備品という名の凶器は、確実に彼の陣地を破壊していく。

 ――しかし、拓哉はまだ希望を捨ててはいなかった。叶うならば実力のみで倒したくはあったが、彼にはまだ最終手段が残っている。
「効くかも一応は分からんけど……頼むミミック。化け転がせー」
 いつも彼の傍らにいる、謎の箱型生命体ミミック。命令に応じて様々な姿に化けるソレが今回変じたものは――一組のサイコロ。拓哉はそれを掴み取ると、今度こそ、と想いを込めて投げる。
 果たして切り札のミミックダイスは彼の意思に応え、クリティカルの出目でピタリと止まった。
「いや待ってくださいそれグラサイでは!?」
「さて、なんのことやら?」
 抗議する女神だったが、そもそもダイス目を操作しているのは彼女も同じである。知ったことかとモデルガンを構えた拓哉は、残っていた7発の弾を纏めて連射。
 今度は"偶然"による妨害はない――それどころか弾丸はまるで吸い込まれるかのように、女神の急所へと全弾クリティカルヒットした。
「ぎゃふんっ!?」
 7連続で鳴り響く派手な衝撃音とともに、勢いよく吹き飛ばされる女神。
 ――拓哉がかつて味わったトラウマも、少しは彼女に刻み込まれたかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
【遺跡酒場】の皆さんと参加です。
【WIZ】で攻撃です。
「ダイス運に関しては私も欲しいですけど、振ってみるまで何が起こるか分からない事がワクワク感があって良いのではないですか。」
【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【属性攻撃】の【全力魔法】の【サンダーボルト】を【誘導弾】にして、『ダイス神の女神』だけを狙って【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「さて、あなたのダイス運を見せてください。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



「くっ……馬鹿な。この私が、追い詰められている……?」
 度重なる攻撃で全身に傷を負ったダイス神の女神は、信じられない、といった面持ちで呟く。
 自慢のダイス運を操る力も、猟兵たちの技と工夫とユーベルコードの前に、ことごとくねじ伏せられてきた。彼女にとっては受け入れ難い事実だろう。
「ダイス運に関しては私も欲しいですけど、振ってみるまで何が起こるか分からない事がワクワク感があって良いのではないですか」
 打ちのめされた女神にそう告げたのは火土金水・明(人間のウィザード・f01561)。
 悪いダイス目もあれば、良いダイス目もある。だからこそゲームはゲームとして成り立つし、楽しい。
 それは紛れもなく正論であり――同時に、ダイス神の女神の存在を否定する宣言だった。

「う……うるさいっ! 貴女たちニンゲンなんて、私の転がすダイスに翻弄されていればいいんです!」
 激高しながらダイスを握りしめ、再び大惨事を引き起こそうとする女神。だが、彼女がダイスを振るよりも速く明は動いた。
「受けよ、天からの贈り物!」
 すっと指先を標的に向けて、放つ魔法は【サンダーボルト】。天より降り注いだ一筋の雷光が、女神の身体を貫く。
「ぐぅ……っ!」
 悲鳴を上げた女神は、それでも残された力を振り絞ってダイスを振った。
 そのダイス目は当然のように荒ぶり、判定の結果は現実に大惨事を起こす。
 部室に落ちた雷は室内にあった可燃物に引火し、あっという間に炎上。凄まじい火災が猟兵たちを焼き尽くさんと襲い掛かった。

「往生際が悪いですね」
 明は魔力のオーラでその身を覆うことで火災の熱と煙を防ぎながら、女神にトドメを刺すべくもう一度詠唱を紡ぐ。
「さて、あなたのダイス運を見せてください」
 魔力を全開にして放つ、全力の【サンダーボルト】。初撃を上回る規模の雷光が、一直線に女神目掛けて襲い掛かる。
 ぎり、と奥歯を噛み締めた女神の防御判定は――クリティカル。"偶然"にも倒れてきた本棚が女神と盾となり、雷光を防ぐ。
「どうですか! 舐めないでください、私のダイス運を!」
「勝ち誇るのはまだ早いですよ」
 明の攻撃はまだ終わっていなかった。一発目の雷光は言うなればフェイント。間髪入れずに本命の二発目が、蛇のように曲がりくねった軌跡を描きながら天より降る。
 それは明の意思によって誘導され、"偶然"の妨害をするりと潜り抜ける。その向かう先は、慌てて次のダイスを振ろうとする女神――。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
 雷の矢が、女神を貫く。その絶叫は高らかにサークル棟全体に響き渡り――ぽろり、と手からこぼれ落ちた2個の6面ダイスが、1と1の目を上にして止まる。

「く、そ……召喚されてすぐ猟兵が来るなんて……とんでもない不運(ファンブル)でしたよ……」

 それが、ダイス神の女神の最期の言葉だった。
 雷光に焼き焦がされた肉体はボロボロと炭のように崩れ去り――その後には、小さな1個のサイコロだけが、コロンと残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『六一六『デビルズナンバーまきびし』』

POW   :    悪魔の忍刀(デビルニンジャソード)
【忍者刀】による素早い一撃を放つ。また、【魂を削る】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    悪魔の巻物(デビルスクロール)
いま戦っている対象に有効な【忍法が記された巻物】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    悪魔の撒菱(デビルカルトロップ)
自身の身体部位ひとつを【まきびし】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。

イラスト:FMI

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍によって、TRPGサークルに降臨したダイス神の女神は討たれた。
 不運にも邪神召喚を成し遂げてしまった学生たちを始め、民間人への被害もない。
 戦場となった部室はかなり荒れ果ててしまったが、致し方ないことだし、UDC組織が後で何とかしてくれるだろう。

 それよりも依頼はまだ続いている。
 ダイス神の女神が最期にいた場所には、この部室の備品ではない奇妙なダイスが転がっていた。
 微かではあるが力を感じる。恐らくは討たれた女神の神力の残滓のようなものが宿っているのだろう。
 放置すべきではないと判断した猟兵たちは、回収か破壊を試みようとするが――。

「――そのダイス、渡してもらおうか、猟兵」

 瞬間、音もなく姿を現したのは、まるで忍者のようなシルエットを持つ、刀で武装した奇怪なヒトガタの集団。
 UDCアースの各地に出没する不可思議殺人オブジェクト『悪魔の数字(デビルズナンバー)』が一つにして「616」の数字を持つ者、デビルズナンバーまきびし。
 主と定めた者の命に従って行動するという特徴を持つ、集団型のUDCである。

「我らの主は女神の力――ダイスという"運命を操る力"を欲している。これ以上、貴様達に邪魔はさせぬ」

 本来ならば生きたままダイス神の女神を捕らえるのが最上だったのだろうが、先に現場に駆けつけた猟兵によって、その計画は叶わなくなった。ならばせめて、その力の残滓だけでも持ち帰ろうという算段か。
 無論、それをみすみす許す理由はない。まきびしの群れが忍刀を抜き放つのと同時に、猟兵たちは再び臨戦態勢を取った。
ボゴ・ソート
シーフに有効な忍法とは一体!?
クソッ、中身のたっぷり詰まっていそうな宝箱を召喚とは。
しかも解錠にハッキングが必要な電子ロックだなんて卑怯だぞ。
忍者で宝箱で電子ロックってジャンルがバラバラじゃないか!
こうなったら敵からの攻撃をこの湧き上がる怒りと頑丈な体で耐えぬいて反撃してやる。
宝箱を使った攻撃、シーブズ・ギャンビット・トレジャーボックスを食らうがいい!
説明には「ダガーによる素早い一撃」って書いてあるけどダガーとタカラは似てるから細かいことだ。
ついでに重量は怪力でカバーしてやる。
(使用技能:鍵開け(一応試す)、激痛耐性、怪力)



「女神の確保には間に合わなかったが、貴様たち一人一人に友好な忍法は判明した」
「我らが悪魔の巻物(デビルスクロール)に記されし忍法、とくと味わうが良い」
 ニン、と印を結んだデビルズナンバーまきびしの手の中に召喚されたのは、古風な巻物状の忍法帳。
「シーフに有効な忍法とは一体!?」
 思わず身構るボゴ。敵の攻撃に備えようと観測ユニットの感度を高め、油断なくダガーを握りしめる――だが、邪悪なるUDCの忍法の力は、彼の予想を超えていた。

「受けよ、忍法"宝箱くらましの術"!」
 ぼむっ! と部室を包み込む真っ白な煙。それが晴れた時、室内のあちこちに現れたものは――鍵のかかった宝箱。
「こ、これはっ!?」
 その直後のボゴの行動は、まさにシーフとしての本能だったと言ってもいい。宝箱に駆け寄って、重さと中身の有無を確認。返ってきたのはみっしりと重い手応え。
「クソッ、中身のたっぷり詰まっていそうな宝箱を召喚とは」
「ククク、どうだ。開けてみたくてたまらないだろう?」
 確かに開けてみたい。この厳重な封をこじ開けて、中に何が入っているのかその目で確かめたい。そんなシーフとしての性がボゴを誘惑する。
 まきびしの忍法"宝箱くらましの術"とは、宝箱に対するヒトの欲望を刺激し、戦闘に集中できなくする恐るべき悪魔の忍法だったのだ!
「しかも解錠にハッキングが必要な電子ロックだなんて卑怯だぞ。忍者で宝箱で電子ロックってジャンルがバラバラじゃないか!」
「何とでも言え! ちなみに本物の宝が入っている箱は一つだけだ! アタリを引くまでもがき続けるがいい!」
 宝箱を抱えて苦悩するボゴへと、まきびしたちは一斉に襲いかかる。

「クソッ、このままじゃ埒が明かない……」
 次々と振り下ろされる忍刀の刃を躱そうとするボゴ。しかし重たい宝箱を抱えたままの彼の動きは鈍く、まきびしたちの連携攻撃のすべてを避け切ることはできない。
 一応鍵開けも試してみたものの、やっぱり箱が開く気配はない。だったら手放せばいいのにと普通は思うだろうが、そう簡単には割り切れないのが物欲というものだ。
「こうなったら……」
 ボディを削る斬撃の嵐を、持ち前の頑丈さで耐え抜きながら、ボゴは反撃に転じる。その手に宝箱を掴んだまま。
 必要なのは発想の逆転だ。宝箱を手放せないのなら――宝箱を武器にすればいい。
「宝箱を使った攻撃、シーブズ・ギャンビット・トレジャーボックスを食らうがいい!」
「なっ、何ッ!?」
 突如として加速したボゴの動きに目を見張るまきびし。シーフの素早い身のこなしとウォーマシンの怪力、そして宝箱の重量を一つにした【シーブズ・ギャンビット】の一撃が、彼の顔面に直撃した。
「ごふぉぉっ?!!?」
 鈍器のフルスイングを食らったに等しい衝撃が、まきびしを部室の外まで吹き飛ばす。驚いたのは彼の仲間たちだ。
「そ、その技は本来"ダガーによる"素早い一撃を繰り出すものではないのか?」
「ダガーとタカラは似てるから細かいことだ」
「いや大分無理があるぞ!?」
 UDCの総ツッコミなどにボゴは怯まない。事実としてユーベルコードは発動しているから問題はない。
 何にせよ発想の転換によって頼もしい武器を得たボゴは、動揺するまきびしを次々と宝箱のカドで殴り倒していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

デナイル・ヒステリカル
なんと、このダイスにはそんな力があるのですか。
肝心なところでファンブらないためにも僕が個人で所有したいところではありますが…
これは特定の誰かが持つには過ぎた力ですね。

特にあなた方には渡しませんよ。全力で邪魔をさせていただきます。

UC:オーバークロックをスタート
巻物にどのような忍法が記載されているのか定かではありませんが、
もし、万が一、この世界の一般市民を危険に晒すような術であった場合は問題です
彼らの行動を先読みし、巻物を召喚すると同時に焼き焦がしてしまいましょう

雷の軌跡が残るような圧倒的な速度で壁や天井を蹴り、相手の死角を突いて接近
至近距離から雷撃で攻勢を仕掛けます



「それは運命を操る女神の力を宿したダイス。我らが主の欲する力だ」
「なんと、このダイスにはそんな力があるのですか」
 寄越せ、と言外に込めた威圧感を放ちながら迫るデビルズナンバーまきびしに対し、デナイルは冗談混じりの口調で答える。
「肝心なところでファンブらないためにも僕が個人で所有したいところではありますが……これは特定の誰かが持つには過ぎた力ですね」
 しかしてその眼差しは真剣。ダイスとまきびしの間に立ち塞がる彼の身体は、青白く瞬く稲妻に包まれていく。
「特にあなた方には渡しませんよ。全力で邪魔をさせていただきます」
「ならば死ね」
 まるで影そのもののような静かな身のこなしで接近するまきびし。その手に握られた忍刀が、ギラリと剣呑な輝きを放つ。
 繰り出されるのは瞬速の斬撃。だが、稲妻を纏ったデナイルは安々とそれを躱す。まきびしの体捌きや斬撃を遥かに上回る速度で。
「優先順位を変更。オーバークロックをスタート」
 稲妻そのものと見紛うようなスピードは、自らの肉体を構成する質量をエネルギーに変換するユーベルコード【セルフ・オーバークロック】の力。自らの命の優先度を下げてでも、目標の撃破を優先する力だ。
 まきびしが何度忍刀を振るおうとも、その刃は空を切るばかり。実を捉えるどころか影に触れることさえ叶わない。

「ちぃ……ッ」
 剣戟での分がないことを悟ったまきびしたちが後退する。無論、それが諦めたわけではないことはデナイルにも分かる。
 肉体の加速と同時に思考速度もクロックアップ。次に敵が取るであろう行動を先読みし、その機先を制する。
「来たれ、デビルスクロー――ッ!?」
 まきびしたちが虚空より悪魔の巻物を召喚するのと同時。デナイルの手から放たれた雷撃が、出現直後の巻物を焼き焦がし、チリに帰す。
 巻物を読む暇は与えない。それにどのような忍法が記載されているのか定かではないが、万が一にもこの世界の一般市民を危険に晒すような術であった場合は問題だ。
(例えば広範囲の標的を無差別に攻撃するような忍法……僕のスピードに対抗する手段としては十分考えられることです)
 だが、どんな忍法であっても発動させなければ脅威とはならない。
 剣戟も、忍法も、圧倒的な速度の前に封殺されたまきびしたちは、デナイルに対抗する有効な手段を失った。

「では一気に仕留めさせていただきます」
 攻め手を失ったUDCに対し、攻勢に転じるデナイル。踏み込んだ彼の身体は雷の軌跡を残して加速し、標的の視界から消える。
 軽い身のこなしで壁や天井を蹴り、三次元の軌道で死角へと回り込むと、そのまま接近。悟られることなく懐に肉迫し、至近距離からの雷撃を放つ。
「ぶっ飛べ……!」
 戦場に迸る青白い稲妻と轟く雷鳴は、まきびしに断末魔の悲鳴を上げる間さえ与えずに、その生命を灼き尽くしていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
連携歓迎

悪用されるとわかっている物を渡す人はおりませんよ
このダイスは死守させていただきましょう

既に荒れてはしまいましたがこれ以上荒らすのは後が大変ですね
今回はスマートにいきましょう

【ダンス】の要領で攻撃を避けながら【フェイント】をかけ【だまし撃ち】でUCを【範囲攻撃】で発動
まきびしとなった部位ごと【敵を盾にする】要領で絡みとってしまいましょう
このままですと両手のふさがった当機は攻撃できませんね
ですので他のどなたかにこの纏めた相手を一掃していただきましょう
「どーん、とかましてくださいませ」

敵を【掃除】し終わったら転がるダイスは回収しておきましょうか
何事もなければ良いのですが


波狼・拓哉
…動くまきびしとか色々矛盾してるのでは。(ミミックを賽子から箱に戻しつつ)
さて数がそこそこと…面倒だけど一体一体撃っていこうか。化け撃ちなミミック…!…飛んだらまきびし踏むことなさそうだしなぁ。ミミックに掴まって浮いてみたりできるかな…?ミミック、動くときは手加減してね?
自分は続けて衝撃波込めた弾を装填しつつ、ミミックと共に集中砲火を浴びせ確実に一体持っていけるようにしていこう。後巻物出てきたら読まれる前に撃ち落としたり、武器落としで忍者刀落とせないかとかのサポートもしておこうかな。
(アドリブ絡み歓迎)



「クソ……ッ、強い!」
 猟兵たちの反撃を受け、次々と撃破されていくデビルズナンバーまきびし。
 元よりこの猟兵たちは、格で言えば上位であるダイス神の女神を下している。数では勝るとはいえ、最初から彼らが敵う相手ではなかったのかもしれない。
「だが、この生命に代えてでも、女神のダイスは渡してもらう……!」
 決死の覚悟を決めた怪異の肉体が変化していく。ある者は拳が、ある者は脚が、ある者は肘が、鋭く尖ったまきびしの形状へと。
 その名に相応しき異形と化したこれぞ、彼らの戦闘形態【悪魔の撒菱】である。

「悪用されるとわかっている物を渡す人はおりませんよ。このダイスは死守させていただきましょう」
 襲い掛かるまきびしを迎え撃つのはアマータ。灰色の髪をふわりとなびかせ、優雅なステップと共にスカートの裾を翻す。
 迫り来るのはまきびし化した部位による打撃の連打。直撃は言うまでもなく、掠めるだけでも棘が衣服や肉に引っ掛かり、その後の行動を制限される。
 だが、アマータは踊るような身のこなしで、軽やかにまきびしを躱してみせる。
「既に荒れてはしまいましたがこれ以上荒らすのは後が大変ですね。今回はスマートにいきましょう」
 部室を全壊させてしまわないためにも、求めるのは効率的な敵の排除。そのための好機を作るために、アマータは踊りながら密やかに"仕込み"を行う。

「……動くまきびしとか色々矛盾してるのでは」
 一方で、まきびしの擬人化とでも言うべき敵の外見にそんな感想を呟くのは拓哉。
 確かに撒菱とは本来、足元にばらまくことで敵の移動や追跡を妨げるための道具だが――不可思議殺人オブジェクトに、そんな常識は通用しないのだろう。
 何にせよ今はそんな疑問よりも、敵の殲滅が優先である。
「さて数がそこそこと……面倒だけど一体一体撃っていこうか」
 サイコロから箱に戻ったミミックの姿が、再び変化していく。室内では収まらず、窓から飛び出し、さらに大きく。
 【偽正・械滅光線】――現れたモノは星の海を渡る船。巨大な砲を搭載した宇宙戦艦である。

「……飛んだらまきびし踏むことなさそうだしなぁ。ミミック、動くときは手加減してね?」
 拓哉は空に浮かぶミミックを追って跳躍し、片手でその艦体に掴まりながら、空いた手でモデルガンに衝撃波を込めた弾を装填する。
「な、何だアレは――!?」
 突如として戦場に現れた巨艦の姿に、敵も驚きを隠せない。彼らにSFの知識があるとは思えないが、少なくとも刀や撒菱でどうこうできる相手には見えないだろう。
 ならば頼みの綱は忍法――あの戦艦に有効な手段を見出すために、彼らは一斉に悪魔の巻物を召喚する。
 だが、彼らが巻物を読み上げるよりも、ミミックの大砲と拓哉のモデルガンが火を噴く方が速い。
「何の忍法を使う気か知らないが、やらせるかよっと」
 放たれた光線と衝撃が、まきびしの手から巻物を撃ち落とす。

「しまっ……!」
「隙だらけですよ」
 そして、敵が宇宙戦艦に気を取られていた間に、アマータの仕込みも完了する。
 はっと振り返る彼らの目の前で、これみよがしにアルジェントムを開く。女神と猟兵の戦いを見ていたまきびしは、そのトランクの脅威も知っているだろう。彼らの警戒は即座に強まる。
 だが、その行動はフェイント。敵の注意がアルジェントムに集まった瞬間、アマータはユーベルコード【Festina lente】を発動する。
 彼女の本命はトランクではなく、指先から伸びる細い鋼糸――室内に張り巡らされた「マギア・フィールム」がピンと張り詰めて、敵集団に絡みつく。
「ぐ、うぅっ!?」
 まきびし化した棘だらけの部位は、特に糸が絡まりやすく縛りやすい。あっという間に雁字搦めになったまきびしは、アマータの糸使いによって一箇所に纏められた。

 しかし、このままではアマータも糸の操作で両手が塞がっているため、攻撃を仕掛けることはできない。そこで彼女は空に浮かぶ宇宙戦艦へと視線を向けて。
「どーん、とかましてくださいませ」
「了解。化け撃ちなミミック……!」
 こうなれば一体ずつ狙いを定める必要もない。拓哉は身動きがとれないまま密集した敵に照準を合わせ、ミミックと共にありったけの集中砲火を浴びせる。
 一点集束で降り注ぐ光線と、衝撃波の魔弾が、まきびしの群れを一掃していく。

「申し訳ありません、我が主――グワァァァァァァァァッ!!!」

 やがて砲撃が止んだ時、そこに残っていたのはバラバラに砕けた撒菱の残骸のみ。それもすぐに風に吹かれて散っていく。
 戦いの終わりを確認した拓哉は、ミミックを元の箱型に戻し。アマータは伸ばしたフィールムを収納すると、転がったままのダイスを回収する。
「何事もなければ良いのですが」
 こうして手にとってみれば、はっきりと感じる邪神の力。触るだけで害がある物ではないようだが、コレでダイスロールはしないほうが賢明だろう。
 破壊するか、さもなくばUDC組織に収容してもらうのが良いだろう――しかしまだ、戦いは終わっていない。

 猟兵たちの直感は、すぐ近くに迫っている、新たなオブリビオンの気配を感じ取っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『未知を既知とする者』紅葉・公英』

POW   :    観測器具に依る短期未来演算
【周囲の観測機を用いた正確な未来演算で】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    作業用腕部投棄に伴う純戦闘特化形態への移行
【背中のロボットアームを捨て、純戦闘形態】に変形し、自身の【精密作業の精密さ】を代償に、自身の【未来演算の精度と戦闘行動の練度】を強化する。
WIZ   :    機械化兵団援護射撃及びトリモチランチャー
【人体改造により作り出したサイボーグ傭兵を】【召喚し、その援護射撃に合わせて背中の】【ロボットアームから特殊なトリモチ】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:純志

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠紅葉・智華です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「女神は討たれ、部下も撃破されたか……予測された中でも最悪の未来だな」
 デビルズナンバーとの戦いを終えた直後、かつん、かつんと靴音を響かせて、それはサークル棟に姿を現した。
 感情を感じさせない無機質な声。カタカタとキーボードを叩く音。そして、ウィィィン……と微かに聞こえる駆動音。
 それは、まるで機械のような気配を纏った男だった。

「お初にお目にかかる。私の名は紅葉・公英。人からは『未知を既知とする者』と呼ばれる事もあるが、そんな大それたものではない。単なるいち研究者だよ」
 それは一見すれば人間のように――少なくともかつては人間だったのだろうと推察できる。しかし異様に血の気の薄いその肌や、妖しく輝く眼、そして背中から伸びるロボットアームは、彼が既にヒトを踏み外したモノであることを物語っている。
「私がここに来たのは研究の為だ。ダイス神の女神の力……限定的とはいえ運命を左右する神力を解析すれば、開発中の未来演算の精度をより高められると思ってね」
 彼の態度は嘘をついているようには見えない。そもそも、秘密にする必要すら感じていないのだろう。
 何故なら、彼が猟兵たちに向ける視線は、とても対等の相手に対するものではない――まるで実験室のモルモットを見るような、冷たいものだったから。

「諸君ら猟兵の介入も予測の内ではあったが、こうも迅速な対処は些か想定外だった……そこで提案なのだが、女神の残滓を私に渡してほしい」
 断片であっても神の力を宿す以上、それには大きな研究価値があると男は言う。
「もしこの提案を受け入れてくれれば、諸君はこれ以上の戦闘を避けられる。もし拒むのであれば――私にとってはその方が喜ばしいことだな。新しく貴重な"素材"が手に入るのだから」
 左手でカタカタと端末を操作し続けながら、彼は右手に構えた長銃の銃口を猟兵に向けて、告げた。

「回答を待つ時間は必要ないだろう。諸君の返答する未来はもう"視えている"」

 ――男に言われるまでもなく、猟兵たちの答えは決まっている。
 ダイスの不運から始まった邪神召喚事件、そのクライマックスの戦いの火蓋は、ここに切って落とされた。
アマータ・プリムス
返答が要らないなら何故聞いたんですかね
答えなくていいのは楽でいいですが

回収したダイスをUCを使いアルジェントムの中へ
戦闘中はとりあえずしまっておきましょう


そしてアルジェントムから古着の山を周囲へブチまけ目晦まし兼トリモチの防御
傭兵の援護射撃はアルジェントムを盾に

「未来が視えているのであれば視界いっぱいに広げればいいだけの事」
そのまま指先のフィールムで古着を操り【フェイント】をかけ敵を翻弄
「着れなくなってしまうのは残念ですが即興劇をお楽しみくださいな」
こうして当機が隙を作っている間に誰かが決めて下さるでしょう

回収したダイスは最後にUDCの職員の方に託します
「人目のつかない所にしまってくださいね」


波狼・拓哉
…未来演算ねぇ。一番重要なの予測してないんじゃない?お前の最後とか。…え?ここでは死なない予測してる?そうかそうか、だが死ね。
じゃあ、化け咆えなミミック。狂気を狂気で塗潰して真の狂気を教えてあげな。聞こえても衝撃が伝わっても爆発…自分で言うのも何だけどクソみたいな性能だな…避け続けられるといいですね。後、狂気が混じっていつも通りの思考出来るといいね?
自分は衝撃波込めた弾で相手の観測機やロボットアーム等武器を撃って武器落としを狙いサポートに。
龍化したミミックの図体は壁としても便利だし壁にしつつミミックにある程度のダメージが入ったら再召喚して仕切り直し。え?再召喚制限?ないよ?
(アドリブ絡み歓迎)


デナイル・ヒステリカル
『未知を既知とする者』という名乗り、未来演算という単語、そして"視えている"という表現…

相手は情報集積によって高い精度で未来を予測する能力の持ち主でしょう
僕自身が類似した機能を保有している為、その能力の厄介さは身に染みています

周囲の一般人への影響を考慮し、迅速な戦闘終了を目指すのであれば、相手の予測を外すしかない

建物の消火システムをハッキングしてスプリンクラーを作動
降り注ぐ水滴に雷を放ち濃い霧状に変換します
直接観測できなければ予測の精度も落ちるはずだと判断しました

UC:レギオンを召喚
この環境を想定していた僕の方が相手に先んじて攻撃を仕掛けられるはず
勝機は一瞬
先にどれだけの損害を与えられるかです


ボゴ・ソート
パーティで誰を最初に殺すべきか?
諸説あるが俺はシーフ派だよ。
なぜならシーフのいないパーティは不意打ちを受け続けることになるからね。
でも敵にシーフはいないから、狙うのはその「観測機」だ。
まず全知覚能力を駆使して観測機を探して、順番にダガーで壊してやる。
紅葉・公英に俺の必殺技【帝国式タックル】からの投げっ放しジャーマンを食らわせるのはその後だ。
長銃弾を受けるのは苦しいので頑丈な体(俺はそればかりだ)で防ぐぞ。
もし敵が機械系の猟兵を相手にすることまで予測していて、電撃を放つ武器を用意していたならこっちのもの。
俺は電撃には特に強いんだ。
(使用技能:聞き耳、視力、投擲、怪力、激痛耐性、電撃耐性)



「返答が要らないなら何故聞いたんですかね。答えなくていいのは楽でいいですが」
 冷たい視線を敵に投げかけながら、アマータは回収したダイスを銀のトランクの鍵穴に放り込む。鍵穴の繋がる先はユーベルコード【Exitus acta probat】が作り上げた倉庫の中。ここに収納しておけば、戦闘中にダイスを奪われる心配はないだろう。
「言葉にすることで確定される未来もある。様式美、あるいはお約束というやつだ」
 紅葉・公英の目的は女神のダイスの確保。であればその保管者であるアマータが第一の標的となるのは自然なことだ。
 彼がターンッとキーを叩くと、彼の研究成果の一つである機械化兵団が召喚される。様々な人体改造を施されたサイボーグの傭兵たちは、即座に全身に搭載された武装から一斉射撃を開始した。

「短期未来演算完了。君が防御に成功する可能性は7%だ」
 まるで相手がどこに避けるか分かっているかのような、正確すぎる狙いで襲い掛かる銃弾の嵐。アマータはアルジェントムを盾にして銃弾を防ぐが、それは公英の予測の範疇だった。
「ダイスごと破壊する訳にはいかないからな。動きを封じて安全に回収させてもらおうか」
 防御のために足の止まったアマータに、公英の背中のロボットアームが先端を向け、ネバネバとしたトリモチ弾を射出する。
 これに捕らわれてしまえばもう満足に身動きはできまい。猟兵の撃破よりもあくまで研究対象の確保を優先する、それが研究者である彼の判断だった。

 ――しかし彼にとっての誤算は、猟兵の奇想天外さを計算しきれなかったことだ。
「未来が視えているのであれば視界いっぱいに広げればいいだけの事」
 アマータは盾にしていたアルジェントムを開封する。その中から飛び出したのは、大量の古着の山。
 勢いよく周囲へブチまけられた衣類は、トリモチ弾を防ぐ障壁となり、同時に敵の視界を遮る目眩ましとなる。
「むぅ……?」
 トランクから何かを出してくる可能性は敵も考えていただろうが、その中身までは予想外だったようだ。
 視界を埋め尽くす古着によって、公英は一瞬、猟兵たちの姿を見失う。

 その一瞬のチャンスを逃さずに動いたのはデナイル。
(『未知を既知とする者』という名乗り、未来演算という単語、そして"視えている"という表現……)
 その言動と行動から考えて、相手は情報集積によって高い精度で未来を予測する能力の持ち主だと彼は判断していた。
 デナイル自身も類似した機能を保有する為に、その能力の厄介さは身に染みて理解している。この戦いが敵の手のひらの上で進行する限り、猟兵たちの勝機は薄い。
(周囲の一般人への影響を考慮し、迅速な戦闘終了を目指すのであれば、相手の予測を外すしかない)
 パチリと鳴らした指から放たれる電流。ダイス神の女神との戦いに際して、火災報知器を操作して一般人の避難を促した時のように。デナイルは今度は建物の消化システムをハッキングしてスプリンクラーを作動させる。
 ざぁっ、と雨のように戦場に降り注ぐ水飛沫。これだけでも多少視界は悪くなるが、まだ足りない。
 デナイルはさらに雷を放つと、降り注ぐ水滴を電気分解し霧状に変換。その結果、屋内はまるで雲の中に迷い込んだような濃霧に包まれることになる。

「何だ、これは?」
 散らばる古着に続いて、この濃霧。急激な環境の変化を想定していなかった公英は明らかに戸惑っていた。
 対して仕掛け人であるデナイルに動揺はない。限られた観測情報から敵の位置を素早く把握し【バーチャルレギオン】を召喚。仮想の領域から現れた電子精霊の大群が、装備した架空兵器の照準を合わせる。
 直接観測を妨げられれば、未来予測の精度も落ちるはずだとデナイルは判断していた。つまり今こそが攻撃を仕掛ける最大のチャンス。
「勝機は一瞬。先にどれだけの損害を与えられるかです――さぁ、状況開始だ」
 デナイルがそう囁いた直後、一斉攻撃を開始するレギオン。架空兵器から放たれるビームが、電撃が、弾丸が、濃霧を引き裂いてオブリビオンに襲い掛かる。
「なんだと……っ、ぐぁっ!?」
 予測を妨げられた公英は勿論、援護するサイボーグ傭兵も反応は間に合わず。霧の向こうから浴びせられる電子の猛攻に為す術なく撃破されていく。
 ――やがて濃霧が晴れる頃には、機械化兵団は全滅。そして公英も少なからぬダメージを負ったようで、全身からは流血が。そして表情から余裕の色は失われていた。

「クソッ……何故だ。何故今の攻撃を予測できなかった……?」
 傷ついた体で公英は思考をフル回転させる。今のデナイルの攻撃は本来ならもっと被害を抑えて対処できるはずだった。観測を妨害されていたとはいえ、演算システム自体が正常に動作してさえいれば。
「まさか、短期未来演算システムに異常が?」
 遅まきながらその可能性に至る。まさにその時、答え合わせをするかのように彼の背後から声がかけられた。
「パーティで誰を最初に殺すべきか? 諸説あるが俺はシーフ派だよ」
 声の主はボゴ。両手にダガーを構えた彼の足元には、バラバラになった小さな機械の残骸が散らばっている。
「なぜならシーフのいないパーティは不意打ちを受け続けることになるからね。でも敵にシーフはいないから、狙うのはその『観測機』だ」
「貴様、いつの間に!!」
 驚愕する公英。そう、古着と濃霧の目眩ましに乗じて動いていた猟兵は、デナイルだけではなかった。
 敵の未来演算の要が、周囲に配置された観測機にあることに気付いたボゴは、搭載された全知覚能力を駆使してその所在を見つけ出し、素早く破壊していった。
 真っ先にシーフである彼を倒しておけばこんな事態にはならなかったと考えれば、確かに公英はダイスに固執するあまり、優先目標を誤ったと言わざるを得ないだろう。

「まずい……未来演算精度低下、的中率25%に減少……再演算を……!!」
「……未来演算ねぇ。一番重要なの予測してないんじゃない? お前の最後とか」
 狼狽も露わにキーボードを叩く相手に、皮肉るような言葉を投げかけたのは拓哉。モデルガンを構えた彼の傍らには、勇壮な龍の姿に変化したミミックが、グルル……と唸り声を上げている。
 既に相手が攻撃態勢であることを悟った公英は、不完全ながらも短期未来演算を速攻で再起動する。
「その予測は事前に完了させている。私がここで死ぬ可能性は0%だ!」
「そうかそうか、だが死ね。さあ、化け咆えなミミック」
 その瞬間、戦場に轟くミミックの咆哮。それを浴びた公英の身体が、突如として爆発に包まれた。

「ぐぅッ!? やはり音波による攻撃か……!」
 公英は長銃を乱射して銃声で咆哮の音を散らそうとするが、聞いてしまうか衝撃が伝わるだけでも爆発するミミックの攻撃を完全に避け続けるのは困難だ。
 加えてミミックの咆哮には相手を狂気に陥れる作用もある。攻撃を受け続けるうちに公英の精神は徐々に蝕まれ、正常な思考は阻害されていく。
「狂気を狂気で塗潰して真の狂気を教えてあげな……自分で言うのも何だけどクソみたいな性能だな」
 そんなことを言いつつも、拓哉に攻撃の手を緩める気は一切ない。そして彼の使役するミミックもまた同様だ。
「ちぃぃっ!!」
 ならば咆哮の主を止めてしまえと、公英は長銃を連射する。だが拓哉は龍化したミミックの巨体の陰に隠れて銃弾を防ぐ。盾にされたミミックも、ある程度ダメージが蓄積したところで召喚を解除し、もう一度ユーベルコードを発動すれば、傷を癒やしたミミックが再召喚される。
「ほい、これで仕切り直しっと」
「くそぉぉぉぉっ!?」
 ミミックの再召喚に制限はない。咆哮と銃弾の撃ち合いは長引けば長引くほど、消耗を回復できない公英が不利だった。

「ぐ、うぅぅぁぁぁぁ……クソッ、どうすれば、どうすれば勝てる……」
 爆発でボロボロになった白衣を振り乱しながら、勝利の未来を演算しようとする公英。しかし彼の瞳の焦点はおぼつかず、長銃のトリガーに触れる指先も震えている。
 その時、ふいに彼の視界の端をスッと何かが横切った。
「っ! そこかぁっ!!」
 反射的にトリガーを引いた公英の銃弾が撃ち抜いたのは、着古された女物の衣服。だがそれを着る者はおらず、服だけが鋼糸に吊られて空中に浮かんでいる。
 それは戦闘序盤にアマータがばらまき、そのまま散らばっていた古着の一着だった。
「着れなくなってしまうのは残念ですが即興劇をお楽しみくださいな」
 アマータは指先から伸ばしたフィールムで古着を操り、敵の周りを舞い踊らせて幻惑する。公英がまだ冷静であれば結果は違っただろうが、観測機を失い、狂気に陥りつつある今の彼に、その効果は覿面だった。
「邪魔だ! クソッ、敵は、本物の敵はどこにいる!?」
 闇雲に長銃を乱射しロボットアームを振り回しても、引き裂かれるのは空っぽの古着ばかりだ。

「隙だらけだね。これで決めてやる!」
 そこでボゴが繰り出したのは、彼の必殺技である【帝国式レスリング】。古着のダンスにすっかり翻弄されていた公英は、前傾姿勢で猛然と襲い掛かってくるウォーマシンに反応できない。
「ぐぅッ!? は、離れろッ!」
 体格相応の質量のあるタックルをどてっ腹に喰らい、悶絶しながら押し倒される公英。しかし長銃だけはどうにか手放さなかった。
 零距離から放たれる銃弾が、ボゴのボディを穿つ。機械兵器への対策だろうか、弾にはご丁寧に電流を放つ仕込みまで施されていた。
 だが、それでもボゴは己の頑丈さと電撃耐性の高さを頼みにして攻撃に耐える。一度捕らえた相手の身体は、絶対に離さない。
「この……ッ!?」
 業を煮やした公英がロボットアームでボゴを引き剥がそうとしたその時――銃声と炸裂音が連続して鳴り響く。
 拓哉の放った衝撃波の弾丸は、狙い通りに敵の手から長銃を叩き落とし、ロボットアームを弾き飛ばした。

「不、味い、ッ!?」
 敵が完全に無防備になった瞬間、ボゴは両腕に力を込めた。慌ててもがく相手の身体を持ち上げ、身体をエビ反りにして投げ飛ばす。
 帝国式レスリング技、投げっぱなしジャーマン。通常のプロレスでも危険なその技をリングの外で、ウォーマシンの怪力で食らわせればどうなるかは言うまでもなく――。
 ぼきん、と。首の骨が折れる音が鳴って、それっきり公英はぴくりとも動かなくなった。

「が……ぁ……馬鹿な……こんな未来は、予測、されなかった……」

 さらさらと、砂のように肉体を崩壊させて骸の海へと還っていくオブリビオン。
 運命を我が物とせんとした狂科学者の野望は、かくして阻止されたのだった。


 ――戦いが終わって暫くすると、UDC組織から事後処理班が派遣されてくる。
 破壊された部屋の修復や一般人への対応、カバーストーリーの作成などの後始末は、彼らがやってくれるだろう。
「お疲れ様です」
 と、労をねぎらってくるエージェントに、アマータは回収したダイスを託した。
「人目のつかない所にしまってくださいね」
「勿論です。誰にも悪用されることのないよう、厳重に保管させていただきます」
 力強く頷くエージェント。これでもう、二度とこのダイスが大惨事を引き起こすことはないだろう。

 ちょっとしたダイス運の悪さから始まった邪神召喚事件は、こうして幕を閉じた。
 ――余談ではあるが、今回の発端であり最大の被害者であるTRPGサークルはその後無事に復旧。二度と邪神を喚ぶこともなく、末永く活動を続けたそうである。




 GM:(ころころ)……あ、1ゾロ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月25日
宿敵 『『未知を既知とする者』紅葉・公英』 を撃破!


挿絵イラスト