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夏を迎えるその前に

#UDCアース

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#UDCアース


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「これも違う、これも違う!」

 ここはとある港にある廃倉庫。
 荒々しい声を上げる男は、気を失っている人々に手をかざしては、また次へ。

「ダメだダメだ! 全部ダメだ! クソっ!」

 けれどそこに横たわる人間だけでは彼の求めるものは見つからなかったのか、苛立ちを足元の一斗缶にぶつける。
 がらん、と一斗缶の転がる音が倉庫内で反響して何重にも聞こえた。

「行って来い、お前たち。今度こそ俺の肉体に相応しい身体を持ってくるんだ」

 男の周囲に跪いていた無数の人型が立ち上がる。
 魚のような頭で、大きな口を開いてカチカチと顎を鳴らした。



「邪神ってさぁ、すげえセンスしてるよなー」

 猟兵たちが集まった頃合いを見て、天壌・つばさ(クレバスを満たして・f17165)読んでいたファッション誌を閉じた。
 奇抜なセンスだというのなら、つばさの服装も奇抜であることは否めないが、センスは尖ってこそ、とでも言わんばかりに堂々と猟兵たちの前に立つ。

「さて、事件だぜ猟兵諸君。場所はある港町。ここでは最近、失踪事件が起きている。そんで、それはUDCとその眷属の仕業であることがわかったんだ。なんで人を攫ってんのかはわかんねーけど」

 つばさが地図を広げて、赤い絵の具で倉庫に丸をつけた。

「この倉庫に、眷属とそれを操るUDCがいるはず。それと被害者もね。突入して、倒す」

 丸の上からバツを足して、猟兵たちの方へ向き直る。

「ボス格のUDCを倒せば眷属は散り散りに消えるはず。とはいえ、近づくにはある程度、眷属とも戦わなきゃいけないけど……」

 そう言うと、つばさは空色の絵筆で壁に扉を描く。
 押して開けば、向こうから波の音が飛び込んできた。

「これが終わったらさぁ、そろそろ水着、買いに行こうぜ。今年のトレンドは何だったかなー」

 つばさはひらひらと手を振って猟兵たちを見送った。


るーで
●ご挨拶
 水着の季節に最も活発になるるーでです。
 そろそろ今年に水着、決めたいんじゃないですか?
 見たいなぁー!
 みんなの水着見たいなぁー!

●概要
 一章、二章は通常の戦闘シナリオです。
 描写は普通です。
 三章では水着選びをしてもらいます。
 わたし的には気合がだいぶ入ると思います。

●プレイング
 二章まではさくさくと書けるものを採用して行きたいと思っています。
 三章では【WIZ】で判定された場合はステシ等からこちらでオススメを出します。
 グリモア猟兵のつばさに聞いて頂いても応えますよ。
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第1章 集団戦 『アングラーフィッシュ・レイダース』

POW   :    丸呑み攻撃
【頭部の誘因突起から放つ催眠光】が命中した対象に対し、高威力高命中の【丸呑み攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    祭儀場の召喚
【口から吐く霧状の催眠ガス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を邪神復活の儀式空間に変える霧で満たし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    胃袋空間
小さな【体躯】で【丸呑みした口】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【広大な胃袋空間】で、いつでも外に出られる。

イラスト:蛭野摩耶

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 猟兵たちが倉庫の扉を開くと、狭い隙間から中が照らされていく。

「ギェ、イィィィ!」

 急激な明かりに目が眩んだのか、倉庫から苦悶の声が響いた。
 眷属たちの姿が露わになっていく。
 異様なまでに大きな頭と口、その頭から生えた触腕、そして幼児のように短い手足が印象的だった。

 ――アングラーフィッシュ・レイダース。

 チョウチンアンコウ型の頭部を持つ邪神の眷属が、そこにいた。
 相手を丸呑みすることで体内に収めることのできる彼らこそ、失踪事件の犯人だった。
 眷属たちは猟兵の襲撃に気付いたものの、多くは急激な光に目が眩んで動くことができない。
 叩くなら、今だ。
 猟兵たちは武器を取り、一斉に倉庫内へと突入した。
コロナ・グレイティア

■心情
水着かぁ……あんま気にしたことないな!
まぁ、それはともかくゆーでぃーしー……だっけ?そんな奴らが人をさらってるっていうなら助けにいかないとな!

■戦法
なんだあの魚みたいな奴……あんまり近づきたくないな
紅蓮の刃雨で、遠距離から攻撃していくぞ!
何事もつっこむだけが勇気じゃない!……はずだよな?




「うげえっ、なんだコイツら!」

 明かりに照らし出されたアングラーフィッシュ・レイダースの姿を見て、コロナ・グレイティア(ブレイズブレイヴ・f17954)が驚きの声を上げる。
 人のような五体でありながら、人からかけ離れたアンバランスなその姿は、見る者に生理的な嫌悪感を与えるには十分だ。
 コロナも、不気味な眷属に肉薄することを躊躇した。

「あんまり近づきたくねえし……」

 ――ならば。
 イメージするものは、敵を貫く赤き炎。
 心の灯火を撚り集めるように魔力を練り上げる。
 コロナは身体の前を払うように手を振るった。
 その手の動きに合わせて、空中に現れたのは百を超える炎の刃。

「穿って燃えろ!」

 コロナの声を合図に魔力で練り上げた炎のダガーが、未だ目が眩み動けずにいるアングラーフィッシュ・レイダースの一体の額を穿った。

「ギィ、ヤアアアァ!」

 ぬらりと湿った表皮を、灼熱の刃が乾かし、燃やし、焦がしていく。
 不意の攻撃を受けたレイダーズは、全身にその炎が燃え移り、やがて倒れた。

「よぉーし! 何事もつっこむだけが勇気じゃない! 飛び道具を試して見るもの勇気ってもんだよな!」

 目標が倒れたのを見て、コロナがガッツポーズを取る。

「さぁ、どんどん行くぜ!」

 仲間の悲鳴に、状況を理解し始めたアングラーフィッシュ・レイダーズに対して、コロナはさらに炎のダガーを次々飛ばす。
 倉庫内に降り注ぐ紅蓮の刃雨によって、戦いの火蓋が切って落とされた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
水着、かぁ。この所、よく話題に出てるもんね。
トレンド…流行りだっけ。
あの子、そういうのに詳しそうだし…アドバイスとか、貰えないかな?

なんて。こういうのは、きちんとお仕事を済ませた後に、考える事だよね。
相手の数が数だから、まとめて攻撃とかしたくなるけど…
被害者がどこにいるか、わからないし。あんまり大掛かりな事はしない方がいいかな。

それじゃあ。ユーベルコード…金盞火。
数にぶつける力は、数。群れの力。
焦がせ、その炎で。喰らえ、その牙で。
燃やせ、その命を。あなたの死は、群れの勝利の礎になる。
…陸の上は、獣の…人の領域。お魚が出てきちゃ、自由に動いちゃ、ダメな場所だよ。
ふふふ、なんてね。

【アドリブ歓迎】




 猟兵たちの突入により騒然となった倉庫内。
 多くの眷属たちは未だ目が眩み、何が起こったのか認識できている者は多くない。
 倉庫の入り口からパーム・アンテルシオ(写し世・f06758)が中を覗くが、生理的嫌悪感のある眷属が中を埋め尽くしているだけだ。

(まとめて攻撃したいけど、被害者はどこにいるのかわからないし……)

 複数の敵に対して広範囲の術を使うのは定石ではあるが、今回は襲撃作戦であると同時に、一般人の救出作戦でもある。
 七火竃や恵莉歌では巻き込んでしまうだろう。

(こういうときは)

 選択したのは、対多数に向いていて、かつ、小回りの効く術。

「数にぶつける力は、数。群れの力」

 パームの小さな手のひらに灯る桃色の火。
 それにそっと息を吹きかければ、小さな火の粉がひらりひらりと舞う。
 床に落ちても火の粉は消えず、徐々にその勢いを増していく。

「焦がせ、その炎で。喰らえ、その牙で」

 綴る律令に従い、無数の炎は狼を象る。
 一方で、アングラーフィッシュ・レイダーズもパームの存在を認識した。
 現れた外的に対して、立ち上がり、その大きな口でひと呑みにせんと歯を鳴らして近寄る。

「燃やせ、その命を。あなたの死は、群れの勝利の礎になる」

 一歩、二歩、眷属たちがパームに迫る。
 その先頭を歩く眷属の喉元に、炎の狼が喰らいついた。

「――――ッ!!」

 牙が食い込み、その喉が焼ける。
 焼けた匂いと乾いた悲鳴をあげて、魚頭の眷属はあっさりと倒れた。

「……陸の上は、獣の……人の領域。お魚が出てきちゃ、自由に動いちゃ、ダメな場所だよ」

 パームが手を掲げると同時に、炎の狼たちは一斉にアングラーフィッシュ・レイダーズへと襲いかかった。
 倉庫内にいっぱいの眷属を、狼たちが駆逐するまで、そう長くはないだろう。

「ふふふ、なんてね」

 パームの妖艶な笑みを、桃色の火の粉が彩った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・クロト
……そいや、そんな時期だったなァ……。
まぁ俺にとっちゃ本番は『こっち』もそうなんだが。
さー、文字通りの雑魚ども。あの精神体野郎への道を開けやがれ。さもなきゃ凍結してポイだァ。

【七天の氷製】を【高速詠唱】。
増やすのは『凍滅の顎』。
催眠ガスとかけったいなのには態々近寄ってやる必要もねーなァ。
【鎧砕き】【2回攻撃】【属性攻撃】【マヒ攻撃】の氷の魔弾の弾幕をフェイントと複製した銃を遣いながら繰り出して制圧すんぜェ。
攻撃は【属性攻撃】【オーラ防御】を組み合わせた氷壁を活かして受け流す。

「しっかしきっとこの先にゃ生贄候補まみれなんだろうなァ……アイツの事だし」
※アドリブ・連携可





 猟兵たちの襲撃に一旦は怯んだアングラーフィッシュ・レイダーズだったが、次第に落ち着きを取り戻し始めた。
 大きな口で鋭い歯を鳴らし、猟兵たちとの距離を詰めていく。
 その眷属たちの視線の先で、霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)は思考を走らせていた。
 眷属たちは人間を誘拐して何かをしようとしていることはわかる。

(殺害目的か、洗脳目的か……いや、違ェな)

 この先に何があるか、何がいるのか、クロトには心当たりがあった。
 その相手を倒すことこそが、クロトの目的だ。

(だがまずは、目の前にいるこいつらの処理だなァ)

 障害となる敵は単体での戦力はあまり驚異ではないが、如何せん数が多い。
 この敵を全て平らげて、話はそれから。

「さー、文字通りの雑魚ども。あの精神体野郎への道を開けやがれ。さもなきゃ凍結してポイだァ」

 アングラーフィッシュ・レイダーズが、眼の前の獲物に向けて飛びかかる。
 クロトはその頭に蹴りを入れて、口ずさむ。

「北天に座す七天よ、我が許に冷たき加護の刃を授けよ――!」

 一息に言い放ち、行使するのは複製の魔術。
 クロトの両手の周辺の空気が瞬時に冷え、凍結した水分が光を反射する。
 瞬きをすれば、クロトの両手には拳銃というには大きな銃が握られていた。
 ニィ、と笑い、その得物を向かい来るアングラーフィッシュ・レイダーズへと向ける。

「喰らいつけェ!」

 大きな破裂音と共に右手に持った銃から氷の弾丸が放たれてアングラーフィッシュ・レイダーズの頭部へ命中すると、まるで力強い顎で食い破られたかのように大きな穴が空いた。
 びりびりと痺れる反動をサイボーグの膂力で抑え込み、その銃口を次の対象へ。
 同時にさらに多くの拳銃を複製する。
 魔力で宙に浮かせると、敵の群れへとその銃口を向けた。

「邪魔すんじゃねェぞ!」

 クロトがトリガーが引くことを合図に、全ての拳銃から氷の魔弾が発射された。
 轟音を伴う大量の弾丸の嵐により、アングラーフィッシュ・レイダーズは確実に数を減らしていく。

「なんとまあ、数ばかり多い連中だなァ!」

 撃てども撃てども、次の眷属がやってくる。
 悪態をつきながら撃ち続けていると、後ろで大きなものが動く気配。
 クロトが振り向くと、そこにはすでにクロトへ向けて飛びかかるアングラーフィッシュ・レイダーズの姿があった。
 しかし、クロトまで数十センチというところで、眷属は見えない何かに当たり、その表面を滑るように逸らされて着地する。

「残念だったなァ!」

 半透明ゆえに薄暗い倉庫内では視認することが難しいが、クロトを覆っていたのは薄い氷壁。
 それがレイダーズの攻撃からクロトを守ったのだ。
 何に邪魔されたのか理解できず首をひねるレイダーズの胸と頭に2発、銃弾を叩き込んで黙らせる。

「しっかしきっとこの先にゃ生贄候補まみれなんだろうなァ……アイツの事だし」

 ため息をひとつ吐き、倉庫の奥へと目を向けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
※アドリブ歓迎
み、水着か……そ、そろそろ、DLCとか、ガチャとかで、絞られる、時期なんだ、な。ギヒヒ。(嘆息しつつもどこかニヤついて)

ま、まずは、雑魚戦、か。
は、あ、アンコウの、半魚人とは、なんか、珍しいけど、が、ガスとか、当たり判定が広くて、面倒だ、な。
……こ、こういう時、は、まとめて、吹き飛ばすと、するか。
あ、相手の集団の、懐に飛び込んで、ゆ、UCの、メガクラッシュを、使う、ぞ。
が、ガスは、『敵弾』の、一種だろ? フィールドに、残ってる分まで含めて、まとめて、消しとばして、やる。
……そ、そう言えば、な、仲間を、巻き込む、やつだから、使いどころは、注意しないと、な。


ティオレンシア・シーディア


はじめてみるタイプの眷属だわぁ。こんなのもいるのねぇ。
ま、躊躇する理由もないし、さっさと駆逐しちゃいましょ。

催眠光だのガスだの、撃たれたら対処が難しい技揃えてるのねぇ。
光に目が眩んでるみたいだし、〇先制攻撃で混乱させ続けて封殺しちゃいましょ。
フラッシュグレネードの〇投擲とかシゲルのルーン応用した閃光弾とかで〇目潰ししながら●鏖殺で〇範囲攻撃するわぁ。
カノの炎やイサの氷の〇属性攻撃も乗せたほうが攻撃通りやすいかしらねぇ?

何のために人を攫ってたのかは分からないけど…どうせロクな目的じゃないわよねぇ。
黒幕共々しっかり駆除しないと。


月山・カムイ

目がくらんでいるのでしたら、好都合ですね
そのまま、動き出す前に一気に切り刻んで差し上げましょう

有効射程は40m近いというのを利用して、斬撃を飛ばして一気に提灯アンコウもどきを切り刻みましょう
動く前に足を狙い、ついでにその提灯のようなものを切ってしまうのがいいでしょう

催眠光はそのフラフラした動きを見切って回避する
あの手のものはそこまで精密に動けないでしょうから、一度かわせば次が来るまで時間がかかりそうですからね
その隙にカウンターで一気に切り落としましょう

とはいえ、こうも数が多いと面倒ですねぇ
まぁ、他の猟兵も居る事ですし、手分けして片付けていきますか





 アングラーフィッシュ・レイダーズとの戦いが始まって数分、彼らも次第に襲撃に対応し始めた。
 眩んだ目は戻り、猟兵たちの攻撃に対して、手近な猟兵を威嚇するように歯を鳴らし、じりじりと距離を詰める。

「はじめてみるタイプの眷属だわぁ」

 血と煙の匂いが充満する倉庫の中を、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が歩み出た。
 レイダーズはその足音に反応し、同時にティオレンシアへと目を向ける。

「あらぁ、もう目が見えるようになってきちゃった? それならおかわりはいかがかしらねぇ」

 ティオレンシアは円柱状のものからピンを抜くと、レイダーズへ向けて投げつけた。
 眷属たちはそれが何であるのか認識するため、目で追いかける。
 それが彼らにとって、悪手であった。
 レイダーズの頭上まで飛んだところで、強烈な光が倉庫内を満たす。
 ――フラッシュグレネードだ。
 彼らは再び目が眩み、その場で目を覆った。

「そのまま止まっていて頂戴ねぇ」

 カラメルように甘い声でそう言うと、細く開けた目で眷属たちをしっかりと見据え、慣れた動作で腰のホルスターからリボルバーを抜いた。
 右の獲物へ1発、2発、3発。
 添えた手を扇ぐように動かして撃鉄を弾き、瞬きする間に3発打ち込み、さらに狙いを左へ変えてもう3発。
 即座にスイングアウトすると同時に銃口を上に向けて排莢した。

「ま、まるで、ゲームみたい、だ」

 ティオレンシアの素早く正確な動作に、非在・究子(非実在少女Q・f14901)が感嘆の声をあげた。
 彼女は後方、倉庫の入り口に立ったままではあるが――。

「ほらほらぁ、さっさと駆除しちゃうわよぉ」

 撃って、薬莢を落として、弾を込めて、また撃つ。
 その繰り返しで、ティオレンシアはレイダーズを寄せ付けないように弾幕を張った。
 だが。

「う、上にも、いる、ぞ?」

 究子が倉庫の天井を指す。
 ティオレンシアが見上げると、天井の梁から何匹かの眷属が飛び降りたところだった。

「あらぁ……困ったわぁ。任せていいかしらねぇ」

 リボルバーと視線を正面の眷属たちへ戻し、対処を続ける。
 上空から放置されたアングラーフィッシュ・レイダーズがティオレンシアへと襲いかかるが――。

「ええ、お任せを」

 レイダーズの身体に、幾つもの剣閃が走る。
 ティオレンシアが一歩横へ避けると、空中でバラバラになった眷属は倉庫の床へと落下した。
 紅色の刃についた眷属の血を振り払い、月山・カムイ(絶影・f01363)が着地する。

「ガスだの光線だの……飛び道具ばかりで相手し辛いですねぇ」

 倉庫の梁に未だ乗ったままの数匹の眷属を見上げて、カムイはため息を吐いた。

「とはいえ、こちらも――」

 カムイが小太刀を上段に構えて、振り下ろす。
 ただの素振りかと、様子を見ていた眷属たちが笑った。
 だが次の瞬間には、カムイから十数メートルは離れていたレイダーズが、まるで身体が先端から崩れるように、細切れになる。
 一瞬の間に幾重にも斬撃を重ね、切り裂いていたのだ。

「40メートル程は届くのですが」

「ひっ、ひひっ。す、すごい、な。刀で遠くを、斬れる、のか」

 少し離れて見ていた究子が感心したように笑う。

「おや、あなたは戦わないのですか?」

「あ、アタシの出番は、い、いまじゃない、な」

 究子はもったいぶったように、手を後ろに組んで眷属と猟兵との戦いを見ていた。

「そのまま出番がないかもしれないわねぇ」

 ティオレンシアが正面の眷属を撃ちながら言う。

「げ、ゲームでは、役割分担が、大切なんだ」

「役割、ですか……私が前衛でティオレンシアさんが後衛だとすると……究子さんはなんでしょうかねぇ」

 カムイが飛びかかるレイダーズの頭の提灯を斬り、手足を斬り、首を落として血を払う。
 しかしアングラーフィッシュ・レイダーズも、やられるばかりではない。
 気付けば倉庫内には、色のついたガスが漂っていた。
 仲間の死体の影でティオレンシアの銃弾とカムイの斬撃を防ぎ、催眠ガスを吐き出していたのだ。

「おっと、催眠ガスですか」

 ティオレンシアとカムイが、その場から飛び退いてガスから逃れる。

「こ、ここ、だ」

 究子は二人とは逆に、前に出た。
 息を止めて催眠ガスの中へ、アングラーフィッシュ・レイダーズの中心へ飛び込むと、周囲に他の猟兵が居ないことを確認する。

(よ、よし、ここなら、仲間を、巻き込まない、な)

 究子を中心に、光が集まり、そして小さな爆発をいくつも起こしながら広がっていく。
 その小さな爆発は、当たりを漂う催眠ガスを、飛び込んできた究子の様子を見ていた眷属を、"打ち消して"いく。

「ギ、ギェッ!?」

 自らの攻撃範囲に入ったはずの究子が、何故か攻撃を受けず、むしろアングラーフィッシュ・レイダーズを駆逐していく光景に、彼らは悲鳴をあげた。
 やがて派手な光の爆発が収まると、催眠ガスも、アングラーフィッシュ・レイダーズも、すっかりいなくなっていた。

「無事……ですかね」

 中心で一人立つ究子に、カムイが駆け寄る。

「く、喰らいボム、だよ。あ、当たっても、すぐボム使えば、あ、当たってないことに、なるん、だ」

 究子はニッと歯を見せて得意げに笑った。

「なんだかよくわからないけど、すごいことができるのねぇ」

 ティオレンシアが感心半分、呆れ半分で究子とカムイの横まで歩き寄る。

「とはいえ、これで――」

 三人の視線の先には、倉庫の奥への扉。

「ギヒヒ、み、道、開いた、な」

 倉庫内に、もうアングラーフィッシュ・レイダーズは残っていない。
 猟兵たちは倉庫の奥へと突入した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『殖え続ける者』』

POW   :    「俺は『殖え続ける』」
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分の分霊を憑依させた状態】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
SPD   :    「身体の具合を見させてくれねェか?」
【掌】から【自分の分霊体】を放ち、【分霊の憑依】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    「この身体は使い物にならねェな」
自身が戦闘で瀕死になると【自分を憑依させた別の生贄】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:純志

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は霧島・クロトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「ったく、やってくれたなァ」

 倉庫の奥へと突入した猟兵たち。
 そこで待っていたのは、赤髪の男だった。
 足元で倒れた一般人の身体を蹴飛ばし、悪態をついた。

「あの魚共に俺の身体にふさわしい肉体を探してたンだが……どいつもこいつもイマイチだ。クソが!」

 ナイフをくるりと回して遊びながら、ゆらりと揺れるように前に出る。

「なァ、お前らはどうだ? 試させてくれよ」

 『殖え続ける者』は、歪んだ笑みを浮かべた。
霧島・クロト
おーおー。随分とお焦りなこって。

一先ずは『凍滅の顎』で牽制射撃。
分霊の憑依が来る?知ってる。
だから憑依される手前で【氷戒装法『貪狼の双星』】を【高速詠唱】。

俺が攻撃を仕掛ける事自体が【フェイント】だっての。
コピーの俺が宿った『貪狼の依代』に
【属性攻撃】【全力魔法】【怪力】【2回攻撃】【鎧砕き】
までぶっこんだ全力凍拳ラッシュを噛ましてもらうぜェ。
無論、行動不能が解除された瞬間俺も乱入。

てめぇが命乞いするまで殴るのは止めねェ。
なんでって?……俺達が『都合の良い容れ物』じゃねぇように
『お前に都合の良い肉体』なんて一つもねぇからなァ?
……仮に生き残れたとしても生き残れたのを後悔するぐらい扱き使ってやる


コロナ・グレイティア

■心情
お前が親玉か!お前にくれてやる体なんかないぞ!
ぶっとばしてやる!

■戦闘
とりあえず言ってることから考えると、他の奴の体を操ったりしそうだな!
じゃあそんな仕草を見せる前に、ドラゴニアン・チェインのドラゴンオーラを本体にぶつけて爆破!
そしてオーラの鎖で縛って敵を狙いやすくするぞ!
そして鎖を振り回したりひっぱったりだ!
【技能:勇気】と【技能:属性攻撃】、そして【技能:捨て身の一撃】を合わせて全力でぶん殴る!
後は……えっと、他の猟兵にも任せるぞ!!!


ティオレンシア・シーディア


精神系の能力もちかぁ…なら、最近覚えたアレ、使えるかしらねぇ?

気絶してる一般人もいるみたいだし、まずは憑依された連中の対処に回ろうかしらぁ。
〇マヒ攻撃・目潰し・足止めに吹き飛ばし…〇時間稼ぎの方法ならいろいろあるのよぉ?
雑魚散らしに専念してると思わせて、〇目立たないように立ち回るわぁ。

…警戒が外れたら、隙を〇見切って〇早業の●射殺で〇精神攻撃の〇呪殺弾を〇一斉発射。
刻むルーンはエオロー・ラグ・ユル。
エオローは退魔、ラグは浄化。そしてユルは悪縁との決別。
一撃で仕留めれば、別の生贄は出てこないんでしょ?

戦場で敵から意識を外すんだもの、撃ってくれってことでしょぉ?
…〇暗殺ってのはこういうものよぉ?


非在・究子
……か、身体の具合を、見させて、くれないか、だって?
ぐ、ぐひひっ……ふ、ふざけるなよ。あ、アタシの体を『操作して(使って)いい』のは、TASさんか、ゴシュジン、だけだ。
お、お前に、なんか、1ビット足りとも、さわらせて、やるかよ……
(UCの力により『現実』という、『ゲーム』を【ハッキング】し、手加減なしに改竄し、愛用の『ゲームウエポン』は、十字架を模した聖別された弾丸を放つという悪魔払いゲームの銃器に改変し)
(そうした改竄の反動で掘り始めるHPの数値を意識しながら、ニタリと笑い)
ち、チートマシマシ、の、限界を超えた、速さで、め、メタメタの、ぎ、ギタギタに、叩きのめして、やる。


パーム・アンテルシオ
あなたの求める体が、どんな体か、はわからないけど…
…ううん。求めるものが、どんなものでも。
人を足蹴にしてまで求めるのは。それを見るのは。気持ちよく無いよね。

だから、ってわけじゃないけど…
私の体は、試させてあげられないかな。
ユーベルコード…鳳仙火。
その子のことなら、好きにしてくれてもいいよ。
ただし。大事に扱ってくれないと…砕けちゃうかも。だけどね?

欲しいものがあるのなら。それが本当に必要なのか。
それを手にした時、どんな事が起こるのか。自分の周りに、何が残るのか。
一度、考えてみて。出来るなら、どう思ったか…教えてほしいな。

私の望む答えじゃない事は、予想してる。
けど、私は…人の悪意も、知りたいから。


月山・カムイ
何を考えて他人の身体を奪おう等としているかは知りませんが、その怨念は速やかに断ち切らせていただきましょう

殖えようとするのなら、その分霊を破魔の小太刀で断ち切るのみ
猛然と斬りかかり、剣刃一閃にて相手を両断にかかる

基本的には真っ向勝負、相手のナイフとこちらの絶影の切り合いにて最前線を構築
この手の相手はコチラの攻撃を封じる為に、一般人を操る等のあらゆる手段を講じてくるでしょうね
ですが、その手の攻撃には私は滅法強いんですよ、コレがね
手にするは破魔の小太刀、人に憑依した邪悪な分霊に対して肉体を傷つける事なく断ち切る事が出来ます
戦闘力が落ちた憑依された者の攻撃程度、見切ってカウンターで開放してみせましょう





「お前が親玉か! ぶっ飛ばしてやるからな!」

 まず飛び出したのはコロナ・グレイティア(ブレイズブレイヴ・f17954)だ。
 両足に力を込めて、弾丸のように駆け出した。
 燃えるような赤髪を揺らし、殖え続ける者へと迫る。

「まあまあ強そうじゃねェか。身体の具合はどうなんだろうなァ」

 殖え続ける者が、舌舐めずりをしてコロナの身体を見る。

「げぇっ、なんだコイツ……気持ち悪いやつだな!」

 殖え続ける者の舐めるような視線に強烈な生理的嫌悪感を覚え、コロナは鳥肌が立った。
 ポケットに突っ込んでいた左手を出し、コロナへと向ける。
 何かが来ると、コロナが受けの体勢を取ろうと脚を止めたところで、殖え続ける者が横へと跳んだ。
 直後、獣が吠えるかのような轟音と共に、彼の居た場所へと弾丸が放たれていた。

「脚を止めんなよ! 油断すると身体を持っていかれる」

 霧島・クロト(機巧魔術の凍滅機人・f02330)の牽制射撃だ。
 避ける殖え続ける者を追いかけてさらに一発、二発と打ち込んでいく。
 そのたびに巨大拳銃が吠え、倉庫の床を削り取った。

「チィッ、邪魔すンじゃねェよ!」

 殖え続ける者は肉体を強引に動かし、着地と同時に跳んで次の銃弾を躱す。
 倉庫の柱の後ろに身体を隠し、猟兵たちの様子を伺った。

「やれやれ、知ってるヤツがいンのか。面倒くせェ――――」

 顔を出した殖え続ける者の眼前に迫るは、紅蓮の竜騎士。
 炎を迸らせてたその右手を、殖え続ける者へと向けていた。

「うおぉッ!」

 炎のオーラが、殖え続ける者を包み込む。
 それと同時に小さな火柱が上がり、倉庫内を赤く照らした。

「ガ、アアァァァァァ! て、てめェ!」
「もう一発!」

 爆炎が小さくなり始めると、それはやがてコロナの右手と殖え続ける者を繋ぐ鎖へと代わる。
 その鎖を強く引き、殖え続ける者を自身へと近寄らせる。
 それと同時に前へ出たコロナの拳が、殖え続ける者の頬へと叩き込まれた。

「ぐ、おおおああああッ!」

 殖え続ける者はクリーンヒットを受け、空中で身体を回しながらダンボール箱の山へと吹き飛ばされる。
 その衝撃で、倉庫の床に積もった塵が舞い上がって土煙を起こした。

「ってェな……やってくれるじゃねェか。ハハッ」

 ゆらり、と起き上がった殖え続ける者。
 ダメージこそ入っているものの、まだまだその意志は死んでいない。
 それどころか、余裕さえ感じさせていた。

「オレの全力を食らっても倒れないのかよ!」

 コロナは一旦後ろへと跳び、距離を取る。

「ひとりで殺ンのは手間だなァ……ったくよォ」

 首を捻って関節を鳴らし、ダンボールの山から出てきた殖え続ける者が、ぱちりと指を鳴らす。

「コイツらはもう試したから用済みのつもりだったんだがなァ……せっかくだから有効活用させてもらうぜェ」
「ア、アアア……」
「ウウ……」

 猟兵たちの周囲から、足元の土煙の中から、うめくような声が聞こえる。
 それから少しして、靴音が辺から聞こえ始めた。
 ひとつ、ふたつ、みっつ……。
 猟兵たちを囲うように数を増す。
 十を超え、土煙が落ち着きはじめた頃、それが何なのか猟兵たちにも認識できた。

「野郎ォ、都合良く使いやがって……」

 バイザー越しに彼らを見たクロトが舌打ちする。
 起き上がってきたのは、倉庫内に倒れていた一般人だ。
 その目には殖え続ける者と同じ邪悪な意志が宿っていた。

「……タチが悪いね、あなた」

 後方で術式を組み上げていたパーム・アンテルシオ(写し世・f06758)が、小さく呟く。

「ハッ、俺は『殖え続ける』のさァ。」

 "全て"の殖え続ける者が、同時に言った。
 それは、彼らは操られているのではなく、この一般人全てが殖え続ける者であることを示していた。

「ンじゃまァ、大人しく俺になるか、死んでくれやァ」

 本体の一言と共に、分霊の憑依した一般人がパームへと襲いかかった。

「いやだねぇ。そんなんじゃ女の子にモテないわよぉ」

 その殖え続ける者の腕を、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)が掴む。
 同時に足を払い、宙に浮かせたところで、手首を返して地面へと投げ落とす。

「憑依された連中はあたしが止めておくわぁ。本体をお願いねぇ」

 細い目で他の猟兵たちへと目配せを送り、殖え続ける者本体へと向かわせる。

「オレは手加減とかできねえし……頼んだぞ!」

 一旦仲間の元へと下がっていたコロナが、再び殖え続ける者へと攻撃を仕掛けに向かった。
 他の猟兵たちも、それに続いて行く。

「時間稼ぎするだけなら方法はいくらでもあるのよぉ? あの子たちがあなたを倒すまで……あたしと遊んでねぇ」

 投げた分霊の肩を外して、次に襲いかかる分霊も同じように投げ落とした。
 背中に回させた腕を踏みつけて拘束すると同時に、殺気を感じて振り向く。

(いやねぇ……思ったより速いじゃないのぉ)

 殖え続ける者の分霊が窓ガラスの破片を振りかぶっていた。
 直後、ティオレンシアの視界に飛び込んでくる黒い影。
 手にした武器でガラス片を弾き、ティオレンシアの盾になるように立つ。

「おひとりでこの数は辛いでしょう。手伝いますよ」

 真紅の小太刀を構え、月山・カムイ(絶影・f01363)が微笑んだ。

「それに、こういう輩には滅法強いんですよ、私は」

 ガラス片を弾かれ、腕が上がったままの分霊へと横薙ぎに一閃。
 一般人の身体を、なんの抵抗もなく、刃がするりと通る。

「――――ッ!!!」

 血も無く、傷もなく。
 それでも分霊は声にならない叫びを上げ、身体は力を失って倒れ込む。 

「破魔の刃です。これなら肉体を傷つけること無く、邪悪な霊のみを断ち切ることができます」
「あらぁ、ずいぶん便利な得物ねぇ。こっちの子もお願いできるかしらぁ」

 カムイの言葉に、感心したような声を上げてティオレンシアが足元の分霊体から飛び退く。
 お安い御用です、とカムイがその分霊へと刃を突き立てれば、分霊はそのまま倒れ伏した。

「それで本体を斬ったら、あの体も助からないかしらぁ」
「それは……無理でしょうね。多分、もう身体の持ち主は消えてしまっているでしょう」

 そんなことを話しながら、分霊の攻撃をカムイが弾き、ティオレンシアが動きを止め、カムイが倒す。
 それを繰り返していくうちに、分霊体は徐々に数を減らしていった。

「さて……あちらはどうなったでしょうか」

 カムイが視線を送った先、殖え続ける者は壁を蹴り、柱を足場とし、人間とは思えない動きで倉庫内を動いて猟兵の銃撃を避けていた。
 しかし、その銃撃を繰り出す小さな身体は、さらに人間どころか、現実離れした動きで殖え続ける者を翻弄する。

「っざけんなチートだろそんな速さはよォ!」
「ぐ、ぐひひっ。そ、そう、これは、チートだから、な」

 まるで地を縮めるかのように進んだかと思えば直角に曲がって撃ち、右へ動いたかと思えば左へと向きを変えてまた撃つ。
 慣性の法則を無視したような動きをしながら、非在・究子(非実在少女Q・f14901)が笑う。
 三次元的挙動に加え、予測できない動きに、殖え続ける者は致命傷を避けることで精一杯だ。

「だが、てめェの身体なら俺はもっと強くなれるかもしれねェ。身体の具合をよォ、試させてもらうぜェ」

 殖え続ける者が口角をあげる。
 究子の速すぎる動きを、完全に対処できているわけではない。
 だが、より強くなるための身体が目の前にあるかもしれないという期待が、殖え続ける者をどこまでも漲らせた。

「ふ、ふざけるなよ。あ、アタシの体を使っていいのは、TASさんか、ゴシュジン、だけだ。お、お前に、なんか、1ビット足りとも、さわらせて、やるかよ……」

 究子が不機嫌に呟く。

「そ、それと……お、お前、言い方がなんか、ヤラシイ。げ、現実は、全年齢向けだ、ぞ」
「それ! オレもそれ思った!」

 殖え続ける者に近付いて指差して文句を言うと、コロナが同意した。

「っせえなァ! 黙って俺に身体を寄越せってェの!」

 ナイフを振って究子を攻撃するが、それもまた物理法則を無視した動きで避けられる。
 交代で前に出てきたコロナの拳を避けて、再び距離を取った。

(そ、そろそろ、HPが、げ、限界かも、な)

 現実の改竄によって物理法則を無視した動きをしていた究子であったが、それは無尽蔵に使えるものではない
 究子の視界に浮かぶHPバーは徐々に減っていき、すでに3割を切っていた。
 一旦下がって休憩しようと、動きを止めたその瞬間を見逃す殖え続ける者ではない。
 コロナの攻撃を避けながら、左手の掌を究子へと向ける。

「いただくぜェ、その身体!」

 目に見えないエネルギー体が、殖え続ける者の掌から放たれる。
 それは足を止めた究子へとまっすぐに向かい――――。

「陽の下、火の下、陽炎の贄を差し出そう」

 ――――間に割って入ったパームの身体へと吸い込まれていった。

「ンだァ? 自分から当たりに来るたァ、そんなに俺にシてもらいたかったのかよ」

 分霊に包まれたパームが、俯いたまま動きを止める。

「あ、アタシの、代わりに……だ、大丈夫、か?」

 究子が心配そうにパームを見る。

「大丈夫。それは幻影。虚像の私」

 しかしパームの声は、別方向から聞こえる。
 戦闘で舞い上がった土煙にまぎれて、屈んでいたパームが立ち上がった。
 パーム本人は姿を隠し、幻影にあえて憑依を受けさせたのだ。

「私の体も……みんなの体も試させてあげられないけど、その子のことなら、好きにしてくれてもいいよ」

 パームの幻影に憑依した殖え続ける者の分霊体がその身体のコントロールを得た頃、憑依された自分自身の幻影から距離を取るように、仲間へと合図を送る。
 
「ただし、大事に扱ってくれないと……砕けちゃうかも。だけどね?」

 口元に指を当てて、ぱちりとウインクした。

「コイツ……ッ!?」

 パームの幻影に憑依した分霊が、ハッとしてその身体を見る。
 直後、パームの幻影は緋色の炎の塊となり、爆ぜた。
 周囲に炎を撒き散らし、幻影は分霊体ごと消え去る。

「クソッ! 分霊の無駄遣いをさせやがってよォ!」

 殖え続ける者が毒づき、猟兵たちを見る。
 このままでは攻め手に欠ける以上、やはり誰かを操るべきだ。
 どれだ。
 もう一度あの素早いチビを狙うか。
 丈夫そうなサイボーグ男を取るか。
 腕力のある竜女に憑依するか。
 便利な術を使えそうな狐女を封じるか。
 分霊を減らす剣士を止めるか。
 そう思考を巡らせていると、ふと気がついた。

(――――目の細い女がいねェ!!)

 直後、乾いた発砲音と共に、殖え続ける者の頭を弾丸が撃ち抜いた。
 倉庫の梁の上で、ティオレンシアが薄く目を開けて口角を上げる。

「戦場で敵から意識を外すんだもの、撃ってくれってことでしょぉ?」

 頭部を狙って物理的に攻撃しつつ、呪殺の弾丸で精神体すらも撃ち抜くティオレンシアの一撃を受け、殖え続ける者は力が抜けたように倒れ込んだ。

「や、やった、か? あ、せ、生存フラグ、立てちゃったけど……」

 少し体力の回復した究子が、ひょっこりと顔を出す。

「なんとも笑いづらい冗談ですね……」

 戦っていた分霊体たちが動きを止めたため、カムイも前へと出てきた。

(これで終わりか? やけにあっさりしてンなァ……)

 そう考えながら、クロトも殖え続ける者の死体を確認しようと、近付いていく。
 しんとした倉庫内に、猟兵たちの足音が木霊する。
 猟兵たちの意識が倒れた本体に集中しているそのときだった。
 倒れていた一般人の身体が、起き上がる。
 そしてその掌をクロトへと向け――――。

「ヒハハッ! その身体、頂くぜェ!」

 分霊を放ち、クロトの身体へと憑依させた。
 ティオレンシアが居ないことに気付いた殖え続ける者は、死の直前、身体を抜け出して別の生贄へと転移していたのだ。
 そしてそれを先程倒された一般人の中へ紛れ込ませて、機を伺っていた。
 今はこちらの身体が、殖え続ける者の本体というわけだ。

「やっべぇ! ぶん殴ったら出てくか!?」

 コロナが慌ててクロトに駆け寄ろうとする。

「心配っ、ねェ! 手は打ってある!」

 クロトが身体の主導権を取らせまいと抵抗しながら、周囲を制止した。
 その直後、倉庫の天井を抜いて人間大の何かが落ちてくる。

「――――。」

 白い髪と、黒いパワードスーツ。
 それはクロトそっくりの、サイボーグの躯体。
 バイザー越しの赤い瞳に宿った強い意志は、クロトそのものだ。
 
「こいつが、もうひとり――――ッ!?」

 クロトは憑依を受ける直前に高速詠唱を始めていた。
 予め用意しておいた依代となる躯体に、クロトのコピーを宿らせたのだ。
 まるで、殖え続ける者の行いを返すかのように。
 狼狽えた殖え続ける者へ向けて、クロトのコピーが突き進み、その拳を頬へと叩き込む。

「オォォ、ラァ!」

 冷気をまとった鉄拳が殖え続ける者を、弾き飛ばした。
 それと同時に、クロト本体へと掛かっていた分霊がかき消える。
 クロトのコピーが反対の拳で二発目を入れる頃には、動き出したクロト本体も殖え続ける者へと距離を詰めていた。

「て、めェ……!」

 ふたりのクロトが、殖え続ける者へと拳の嵐を浴びせる。

「クソ、クソクソクソォ! なんで、なんで邪魔すンだァ!」

 クロトの攻撃を防ぎ、喰らい、また防ぎ。
 終わらないラッシュに、殖え続ける者の命は確実に削られていった。

「なんでって?」

 強く握った拳に、最大の魔力を込めて。

「俺達が『都合の良い容れ物』じゃねぇように、『お前に都合の良い肉体』なんて一つもねぇから、なァ!」

 言葉と共にその拳を叩きつけると、殖え続ける者は膝をついた。

「あ、ああ……減っていく……! 俺が、無くなっていく……!」

 溢れる何かをかき集めるかのように手を寄せる。
 しかしそれで何かが戻るわけでもなく、手は空を切るのみ。

「あばよ。これまでの悪行を後悔しながら逝け」

 クロトがそう言うと、殖え続ける者は自らを倒した者の顔を見上げる。

「俺は、俺はもっと強く……クソが……」

 その身体からは力が失われていき、やがて、殖え続ける者は動きを止めた。

「どうやら、その身体で終わりのようです」

 倒れていた一般人たちを確認していたカムイが、猟兵たちに告げる。

「そ、それじゃあ、今度こそ……」
「うん、私たちの勝ちだね」

 究子の言葉に、パームが頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『水着選び』

POW   :    店内を歩き回って水着を探す

SPD   :    気に入った水着を目ざとく直感で確保!

WIZ   :    店員さんにおすすめを聞く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 猟兵の活躍により、失踪事件は解決した。
 だが、彼らにはまだやることが残っている。

 ――――そう、水着だ。
 迫る夏。
 水着を用意せずに迎えるわけにはいかないのだ。
 幸いにもここは海沿いの街。
 水着を置いている店などいくらでもある。
 だから選ぼう。
 今年の夏を最高に満喫できる水着を。

 ※マスターより。
 マスターコメントにあるように水着を選べます。
 今年の水着コンテストに着ていく水着が決まっていれば用意するもヨシ、まだ決まっていなければここで考えてもヨシ、来年に向けてネタ集めでもヨシです。
 楽しんでどうぞ!
秋稲・霖
【WIZ】

みんな着るんなら俺も水着の一着ぐらい買っとこうかなーって思ってるんだけど、やーっぱ自分で選ぶんだとどんなんが合うかわっかんねーんだよなぁ…
シックなのもお洒落なんだろーだけど折角の夏だし、もーちょい派手なのがいいっしょ?…うーん…

つーわけでやっぱ思い付かないから助けてつばさの坊っちゃん!
俺に似合いそうなやつ教えて!全力で参考にさせてもらう!

俺もカラフルな感じのやつ好きなんだよな
パステルもいいけど、ちょいビビッド系のカラフルな感じのが俺好みだったり
坊っちゃんはどんな感じの水着着る予定ー?
すげえお洒落に着こなしそうな気すっけど

【◎、絡みも歓迎です】





 夏といえば海、夏といえば川、そして夏といえばプール。
 いずれのロケーションであっても、必須となるものといえばそう、水着だ。
 それは老若男女関係なく、泳ぐ泳がないを問わず……。
 いわば、夏の正装なのだ。
 それゆえ、秋稲・霖(ペトリコール・f00119)は悩んでいた。

(みんな着るんなら俺も水着の一着ぐらい買っとこうかなーって思ってるんだけど)

 やってきたアパレルショップの水着コーナーで、展示されている物を見て回る。

(デザイン依然に、これじゃ俺に似合うかどうかわからないなぁ……)

 店内に並ぶがっしりとした体型のマネキンを見ては、自分の華奢な身体つきと照らし合わせて、小さくため息を吐いた。

「お兄さん、お兄さん、お悩みかい?」

 見かねて声をかけてきたのは、霖をこの場へとテレポートさせたグリモア猟兵、つばさだった。

「ちょうどいいところに! 助けてつばさの坊っちゃん! 俺に似合いそうなやつ教えて! 全力で参考にさせてもらう!」

 きらきらと目を輝かせながら、霖が拝み手を作ると、つばさは胸を張って頷く。

「オーケーオーケー、任せときな!」

 店内を少し見回すと、隣の列へと移動して水着を物色し始めた。

「今年の流行りは短めタイトめなんだけど、細マッチョ向けだからお兄さんにはあんまり似合わないよね」

 手にした水着を霖と重ねて、つばさがにししと笑う。

「マッチョになりたいわけじゃないけど、はっきり言われるとちょっとだけ凹むね!」

「あはは、トレンド作ってる層がマッチョ寄りだから仕方ない仕方ない!」

 つづいて手にした水着を、再び霖に重ねてみた。

「華奢な霖のお兄さんは膝丈でゆったりしたラインの水着の方がいいだろうね、サーフ型がいいかな。モノトーンコーデが今年のメンズのトレンドだよ。同じ柄のラッシュガードパーカーやシャツを羽織ってみるのもあり!」

 つばさが白地に黒く桜の花びらの柄が入った水着を手渡すと、霖はそれを見て、感心するように顎に手を当て、姿見鏡の前に立ち、自分の脚に重ねて見た。
 だが霖の求めるものとは合わず、首をひねる。

「うーん悪くないね。けど俺、もっとカラフルなやつが好きなんだよな。ビビッド系の」

「おっ、がっつりトレンドから外れちゃっても良い系? ならねぇ、ならねぇ、こいういのはどうだい!」

 次につばさが出したのは、オーシャングリーンに黄色いヤシの木柄の水着。
 彩度高めの色使いが強く目を引く。

「ハワイアンイメージで明るく! これだと羽織るのはアロハシャツとかがいいかもな。派手に行くなら柄色を黄色で合わせて……オレンジに黄色柄とか!」

「へー! ちなみに坊っちゃんはどんな感じの水着着る予定ー? すげえお洒落に着こなしそうな気すっけど」

「へへっ、俺はナーイショ!」

 霖がつばさに問いかけると、つばさはギザギザの歯を見せて笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月山・カムイ
さて、唐突ですが水着売り場で多種多様な水着を前に、月山カムイは悩んでいる
水着なんてものは機能性が問題なければソレで良い、のだが……思ったよりカラフルで、色んな色のものがある
……どう選べばいいのか、いまいちわからない

うーむ、こういった場合誰かからアドバイスをいただけるといいのですが
店員さんにでも聞いてみますかね?

流行とやらは知らないし、似合うという観点で自分の審美眼に自信はない
ということで、悩んだまま固まってしまっているのであった





 時を同じくして、月山・カムイ(絶影・f01363)もまた悩んでいた。
 実用性重視のリアニストなカムイには、水着など、泳ぐ機能があればそれで良いと思っていた。
 だが、いざ水着コーナーに来てみれば、様々な色、形、素材……。
 様々な要素が考慮できる。
 水場に居ても不自然ではなく、いざというときに動きやすく、それでいて自分に似合っていて……。

(水着を選ぶべき基準が……わからない……!)

 カムイの思考は深い深い森の中へと迷い込み、そのまま固まってしまった。

「あの……お困りですか?」

 見かねた店員が、カムイに声をかける。

「水着って……どう選べばいいんですかね」

 陳列された水着とにらめっこしたまま、カムイがそう問いかけると、店員は明るく笑う。

「でしたら、まずはNG要素を考えてみてはいかがでしょうか」

「NG要素……いやなことですか?」

 そのアプローチはなかったと聞き返せば、店員も頷いて応えた。

「そうです。これが良いというものを探すより、これが嫌だというものを探すほうが簡単なものです。そうすれば、自然と選択肢は限られて来ますよ」

「なるほど……動きを阻害されるものや、極端に布面積の小さなものは嫌ですかねぇ。それと、明るくカラフルすぎるのは私に似合わないでしょうか」

 目を閉じて、少し顎を上げて考えてみたところ、出てきたNG要素がそれだ。

「水の中には入られます?」

「水着ってそういうものなのでは?」

 店員の言葉に、当然ではという顔で疑問をあげる。

「いえ、水着とは泳ぐだけのものではありませんので。水際で遊べるならなんでも水着ですよ。女性なら濡れてもいいワンピースですとか……。それでは、条件に合ってお客様に似合いそうなものを見繕ってきますね」

 カムイに似合う思いついたのか、店員が離れていく。
 どんな水着を勧められるのだろうかと、新しい知識への期待を胸に、カムイは店員を見送った。

 それから少しして、戻ってきた店員が水着を広げてカムイに見せる。

「お客様にはハーフスパッツタイプの水着が良いでしょう。結構鍛えられているみたいですから、タイトなデザインも似合うでしょう。色は黒地に赤いラインを入れて、お客様の髪色のメッシュに合わせてあります」

 店員の手にした水着を見て、そうやって選べば良いのかと、カムイが頷く。

「それから、そのままだとスポーツ感が強いので、バカンスっぽさを出すなら上着を羽織るといいかもしれませんね。シンプルに白いTシャツでもいいですが、パーカーを羽織るだけでもカジュアルめでオシャレになりますよ。いかがですか?」

 店員が早口でまくしたてると、カムイは圧倒されて少し驚くが、すぐに話を飲み込んだ。

「ええ、参考になりましたよ。ありがとうございます」

 店員に礼をいうと、夏のビーチを思い浮かべる。
 ビーチチェアでくつろぐ自分、泳いで楽しむ自分、海の家で焼きそばを食べる自分。
 結局、海に現れたオブリビオンと戦っている自分が、一番"らしい"な、なんて思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

非在・究子
【WIZ】
……み、水着なぁ。
(猟兵の水着コンテストとやらには、既にエントリーしている。期間限定イベは一通り手をつける達なのだ。水着はとりあえず『SSR確定ガチャチケ』にお任せのつもりである。だって……)
……しょ、正直、その種の、ファッション、的なやつは、ニガテだ。
ご、ゴシュジン、任せ、だったから、な……ゴシュジンの、センスは、色々と、アレだったきがするけど、な。
(自分の普段着(ビキニなトップスなど)を見下ろして、肩をすくめて)
な、何か、おすすめとか、あるか?
ぐ、グリモア猟兵の、つ、つばさ、だったか? お、お前も、何かオススメとか、あるか?


パーム・アンテルシオ
水着かぁ。ふふ。楽しみだなぁ。
夏をこんなに待ち遠しく感じるなんて、今まで無かったかも。
皆と遊びに行くのも、楽しみだけど…
新しい服。着飾る事。楽しくても…しょうがないよね。女の子なんだから。

今年の水着は頼んじゃったから…ここでは、見るだけだけど。
皆は、どんな水着を選ぶのかな。どんな風に着飾るのかな。
どんなのが…普通の女の子らしい水着なのかな。
皆の水着。見てみたいな。

あのグリモア猟兵…たしか、天壌だったよね。
普通…とは、ちょっと違う感覚の持ち主な気はするけど…
色んな好みを知る事は、人を知る事に繋がる。
あの子も、どんな水着を選ぶのか。聞いてみようかな。
トレンド…だったっけ。ちょっと、難しそうだけど。





「……み、水着なぁ」

 華奢ながら出るところ出たマネキンを前に、非在・究子(非実在少女Q・f14901)は悩んでいた。

(……しょ、正直、この種の、ファッション、的なやつは、ニガテだ)

 究子のファッションを、ビジュアルを決めたのは究子本人ではない。
 ゲームの世界に生まれたバーチャルキャラクターである究子には、それを作った"プレイヤー"がいるのだ。

(ご、ゴシュジン、任せ、だったから、な……ゴシュジンの、センスは、色々と、アレだったきがするけど、な)

 店内の姿見で自分の服装を見直す。
 三角ビキニトップにパーカーとショーパンにニーソ。
 フォーマルからかけ離れて、カジュアルもぶっちぎってフェチに振り切ったその服装は、ハイセンスとは言い難い。

「その格好から水着……って言われても、悩んじゃうかもね」

 隣で頭を抱える究子を見て、パーム・アンテルシオ(写し世・f06758)も苦笑した。
 究子とは対照的に、パームは陳列された水着を次々に手に取っていく。
 友と共に遊ぶ夏に思いを馳せて、自分に似合う水着を探す。
 新しい服を買うことが楽しくて、着飾ることが楽しみで。

(しょうがないよね、女の子なんだから)

 思わず口元が緩む。
 楽しそうなパームを見て、究子はさらに頭を悩ませた。

「おっ、気に入った水着は見つかった?」

 ひらひらと手を振り、二人の方へと歩いてきたのは、グリモア猟兵のつばさだ。
 自分が運んだ猟兵たちがちゃんと水着を選べているのか、様子を見に来ていた。

「まあ、そこそこね」

 パームは見るだけでも楽しいといった様子でウインクを返す。

「あ、アタシは、ダメだ、な。こ、こういうのは、さっぱりだ」

 一方で、究子は何を選んでも、今と違いがあるとは思えず、頭を抱えたままだった。

「つ、つばさ、だったか? お、お前は、何かオススメとか、あるか?」

「あっ、俺に聞いちゃう? 聞いちゃうかーなるほどね!」

 究子の問いに、つばさがニヤついた顔で究子に目を向ける。

「な、なんだよ、そ、その態度……」

 自信満々に胸を張り、人差し指を立ててつばさが語る。

「いいか、水着ってのは泳ぐためだけの服じゃない」

「水着なのに?」

 パームが口元に指を当てて、首を傾げた。

「重要なのは、自分を魅せることだ。暑さだとか泳ぐことを口実に、開放的な格好をするファッションこそが水着の本質なのさ」

 そう言って、つばさは手近にある水着を漁り始める。

「そ、そうは言っても、あ、アタシはもう、こんな格好、なんだが……」

「だから足そう」

 真面目な表情で究子に差し出したのは、ワンピースタイプの水着だ。

「た、足す……?」

「そう、そのボーダー柄ビキニを、あえてワンピースタイプにする」

「い、いいのか? は、肌面積、今より減る、ぞ」

 究子が不安そうな表情でつばさを見るが、それを意に介さずにつばさは続けた。

「いいんだよ。そのかわり、ボトムはハイカットにして脚をまるっと出す。太ももからふくらはぎまで全部だ。これが夏の開放感ってやつだよ」

「な、なるほど……そ、そういうもの、か」

 納得したような、していないような。
 そんな表情で究子がその水着を想像した。

「ああでも、肩は今のように紐がいいな。大事なことだ」

「そ、それは、どんな理由が、あるんだ?」

「俺の趣味」

「そ、そうか……」

 こいつに聞いたのは間違いだったのかもしれない。
 そんな究子の心の声が聞こえた気がした。

「ねえ天壌、それじゃあ私は? 私だったら、どんな水着が似合うかな」

 パームが横から顔を出してつばさに尋ねる。
 対して、つばさはパームを上から下までじっと見た。

「長い髪、ふわふわのしっぽ、それに耳。パーツが多いからな……」

 それから、水着のラックから桜色のビキニを取り出して、パームに差し出す。

「ビキニ。単色のだ」

「へえ、意外。もっと派手なのを選ぶかと思ってた」

 パームは渡された水着を持ち、姿見鏡の前で自分の身体に重ねて見た。
 悪くないかもしれない、と小さく頷いてみせるパームに、つばさが続ける。

「水着以外に見るべきものが多いから、水着はあえてシンプルにいくんだ。これで水着まで派手だと、肌に目が行かなくなっちまうからな」

 身体に水着を当てたパームを見て、つばさも満足げに微笑んだ。

「引き算のファッションってやつ?」

「そうそう。夏はこれが重要でね」

 パームが改めて水着を見て、目を細める。

「ふーん……男の子はこういうのが好きなんだね。でもちょっと、布面積小さくない?」

 パームがからかうように笑うと、蠱惑的な上目遣いにつばさは思わず怯んで目を逸らす。

「う、うっせー! いいから脱げ! 肌を出せ! 夏は開放的になれ!」

「つ、つばさ、お、お前、セクハラだぞ。そ、それに、あ、アタシのときと、ずいぶん、た、態度が違う」

「男の子ってすぐそうやってムキになるよね」

 そのつばさを、究子がジト目で睨み、パームはため息を吐いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月04日
宿敵 『『殖え続ける者』』 を撃破!


挿絵イラスト