混沌の祭典! 筋肉魔法少女と触手神!
●爆誕、筋肉魔法少女!
UDCアースの、とある住宅地の一角にて。
都市開発を逃れ、築数十年以上の一戸建てが立ち並ぶ古き街。そこに建てられた一軒家の寝室にて……なにやら、野太くもファンシーな声が響いていた。
「むふふふ……今回のコスプレも、大成功ねぇん♪」
そこにいたのは、スマホを片手にやたらセクシーなポーズを決めている、魔法少女の姿をしたオネェだった。まあ、個人的な趣味でやっているのだから、そっとしておいてやった方が良い気もするが……その日に限って、彼女(?)は何故か絶好調だった。
「あ、でも、どうせだったら、アタシのプリティな姿が、もっと全方位から見えるようにしたいわぁ♪」
何を考えたのか、オネェは部屋の奥から複数の姿見を取り出すと、自分を囲うようにしてそれらを配置した。その際に、片付け忘れていたBL本が、足下に転がっていたことにも気付かずに。
「あぁ、なんて可愛らしいの! 惚れ惚れしちゃ……」
だが、そこまで呟いた時、凄まじい閃光と共にオネェの身体は鏡の中へ吸い込まれるようにして消えてしまった。
後に残されたのは、オネェが持っていた魔法少女のステッキだけ。そして……入れ替わるようにして現れたのは、凄まじく筋肉質な身体を持った、魔法少女の恰好をしたオッサンだった。
●迎えに来る触手神
「……UDCアースで事件が発生したわ。なんか、偶然に偶然が重なって、UDC怪物が召喚されちゃったみたいなんだけど……」
よりにもよって、とんでもない奴が召喚されてしまった。そう言って、神楽・鈴音(歩く賽銭箱ハンマー・f11259)はグリモアベースに集まった猟兵達に、いつになく険しい表情で語り出した。
「事件が起きたのは、住宅街にある一軒家ね。そこに住んでた、コスプレ……っていうのかしら? 魔法少女の恰好をするのが趣味のオネェの家主が、偶然にも邪神を呼び出しちゃったみたい」
なんでも、そのオネェは変身願望があったらしく、鏡の前でポーズを決めていたのだという。その際、調子に乗って合わせ鏡をした結果、鏡の数やら角度やら、おまけに時刻やら方位やらが絶妙にマッチした挙句、その辺に転がっていたBL本が魔導書の代わりに媒体となって謎の反応を引き起こした。結果、オネェは邪神召喚の生贄となり、恐るべき変態騎士が召喚されてしまったのだとか。
「その、召喚される怪物なんだけどね。その名も『大変態魔法少女騎士』ダンディーニよ。見た目は魔法少女のコスプレした、筋肉質のオッサンよ」
そこまで話を聞いた猟兵達の何名かは、明らかにドン引きした顔になっていた。
いったい、何故にそんな変態が召喚されてしまったのか。いくら偶然が重なったとはいえ、もう少しマシなもんが現れなかったのか。
これでは、生贄になってしまったオネェが、あまりに哀れ。しかし、鈴音の話は、そこで終わらない。
「……で、この変態魔法少女騎士なんだけど、こいつに波長の合った別の邪神が、手を組むために眷属を送り込んでくるわ」
何を隠そう、その眷属こそ、ある意味では最も危険な邪神。多くの心清き青少年の尻を狙い、恐怖のドン底に突き落としてきた邪悪の権化!
「ダンディーニを狙って現れる邪神は……『原初の触手神』ウホ・サセロよ。おまけに、色々な意味で腐った女の子の眷属……発酵少女を連れているわ」
最悪だ。そんな言葉が、誰かの口から思わず零れた。変態魔法少女騎士だけでもお腹いっぱいだというのに、そこに腐った少女の眷属やら、男色な触手神やらが出現すれば、どんな恐ろしいことになるか想像したくもない。
「まあ、そういうわけで、この変態邪神どもをサクッと退治して来て欲しいってわけ。とりあえず、これ以上の被害が出ない内に、出現したばかりのダンディーニから倒すべきね」
なんとも恐ろしい相手ばかりだが、気合を入れて対峙して欲しい。それと、イケメンやピュアな心を持った男子は、くれぐれも背後に注意するように。
最後に、念を押すようにして告げると、鈴音は猟兵達をUDCアースの民家へと転送した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
UDCアースの民家にて、偶然にも邪神が召喚されてしまいました。
召喚された邪神を迎えに、別の邪神と眷属も出現しますので、合流される前に叩いてしまいましょう。
第一章では、家主であったオネェの肉体を生贄に降臨した、『大変態魔法少女騎士』ダンディーニとの戦いです。
続く第二章では、『原初の触手神』ウホ・サセロが送り込んだ眷属、『発酵少女』と戦っていただきます。
第三章では、合流計画をブチ壊しにされたウホ神が襲い掛かってきますので、彼を倒せば依頼成功となります。
第1章 ボス戦
『『大変態魔法少女騎士』ダンディーニ』
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POW : 可愛らしい呪文(野太い声で)
単純で重い【魔法】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ライドオンステッキ
【ステッキに跨り絶叫しながらの突撃】による素早い一撃を放つ。また、【服をパージして褌一丁になる】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : レッツ!メイクアアァァァァップ!!
いま戦っている対象に有効な【魔法少女化洗脳光を放ち、新しい衣服と武器】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
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神羅・アマミ
隠れてこっそり女装やBLを嗜むことに何の問題があろうか!
今回たまたまオッサンだっただけじゃろうが!
世の中には「やめてよ~なんでボクが女装しなきゃいけないんだよ~」とか口では言いつつわざわざ自分から着用して人前に出てくるオスガキもおるのに!
そいつらは良くて、オッサンはダメか!?
何故か特定の方面にケンカを売っていくスタイル。
コード『結髪』を発動しスピード勝負に持ち込む。
加速のため褌一丁になった時が肝要じゃ。
目を覚ませ!オッサン!
魔法少女のアイデンティティをかなぐり捨てて裸になったら、それはただのオッサンじゃぞ!
お前の志はそんなものだったのかー!
と、本体へ呼びかけることで邪神への抵抗を促したい。
鈍川家・玉五郎
よくわからんけど人間じゃないなら問題ないのにゃ?
敵さんや同僚さんがいたら、
「私はニルヴァーナ・ファイブボール。ニルと呼ぶにゃ」
とかっこよく挨拶するにゃ。そうしないと玉五郎って呼ばれそうだしにゃあ。
ダンディーニとかいうのは鈴音の話しだと見た目おっさんらしいのにゃ。女の子なのに可哀想なのにゃ。
ここは紳士的にきちんと女の子として扱うにゃ。
ダンディーニ嬢と呼び、手荒なことはしたくないから降参を呼びかけるにゃ。
それでも抵抗するなら仕方ない、屈強な体だけどラッキー・ファイアでダメージを狙うのにゃ!
同僚がいれば、足や攻撃しようとする箇所を狙って援護するのにゃ。
早撃ちにミニミニトマホーク投擲で勝負にゃ!
●変態潜む魔窟
ひょんなことから邪神が召喚されてしまったとの報を受け、UDCアースへと急行した猟兵達。現場となった民家の扉を開け、中へ足を踏み入れると、彼らを出迎えたのは想像を絶する存在だった。
「あらぁん、お客さんねぇん♪ あなた達も、わたしと一緒に魔法少女にならないかしらぁん?」
嫌だと言っても、絶対に魔法少女になってもらう。そう言って、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)と鈍川家・玉五郎(かっこよくなりたい鈍川さん家の玉五郎・f19024)に迫り来る、変態魔法少女騎士ダンディーニ。
はっきり言って、のっけから色々とアウトな存在だった。その恰好こそ魔法少女を思わせる可愛らしい服装だが、しかし中身はガチムチマッスルな筋肉質のオッサンである。
これぞまさしく、見えてる狂気! しかも、半ば強引な手法を使って、それを誰彼構わず感染させようというのだから、性質が悪い!
「私はニルヴァーナ・ファイブボール。ニルと呼ぶにゃ」
それでも、身体はオッサンで中身は乙女なダンディーニに哀れみを感じたのか、玉五郎は敢えて紳士的に振舞いつつ名を名乗った。
「ダンディーニ嬢、私は淑女に手荒なことはしたくないにゃ。だから、大人しく降参するにゃ」
あくまで、相手を一人の女性として扱うことを忘れずに接する玉五郎。だが、そんな彼の姿を見たダンディーニの反応は、想像の斜め上だった。
「いやぁん! なんて可愛らしい猫ちゃんなのぉ♪」
途端に、野太い声で色めき立った台詞を叫び、ダンディーニは玉五郎へ一直線! しかも、その瞳は何かを懇願するように輝いており、両手は胸の前でしっかりと組まれている。
「あなた、きっと魔法少女のマスコットなのね! わたしに、新しい変身アイテムをプレゼントしに来てくれたんでしょう?」
いや、いったい、何をどう解釈すれば、そんな発想になるんだよ。
これには、さすがの玉五郎も思わずドン引きである。だが、一度暴走したダンディーニは、もう止まらない。
彼女の(?)の瞳に映るものは、その全てが魔法少女に関する妄想に変換されてしまう。おまけに、自分の思い通りに行かないと、逆ギレして周囲に当たり散らすので、やってられない。
「ねぇ、変身アイテム、持ってるんでしょう? くれないのぉ? ちょうだいよ? お願い、ちょうだぁい♪ ダメなのぉ? どうしてもぉ?」
身体を無駄にくねらせながら、ダンディーニは玉五郎に甘えてくる。
うげっ、戻しそうだ! まともな感覚の持ち主が目の前の光景を目にしたらならば、間違いなく口元を抑えて逃げ出したであろう。
「欲しいわ、欲しいわ! ちょうだいったら、ちょうだい! ねぇ、本当にくれないのぉ? 欲しいって言ってるでしょぉっ! 寄越しなさいったら、寄越しなさい! ほら、さっさと寄越せ! むきぃぃぃっ! 寄越しなさいよ、このクソ猫がぁぁぁっ!!」
いつになっても変身アイテムをくれない玉五郎に対し、とうとうダンディーニがブチ切れた。
勝手に妄想し、勝手にお願いして、勝手にキレる。なんというか、あまりにしょうもなさ過ぎる展開に、もはや乾いた笑いと溜息しか出ない。
「さっさと、新しいアイテムを出しなさぁぁぁぃっ!! まじかる、みらくる、るるるんぱぁぁぁっ!!」
奇声を発し、ダンディーニが手にしたステッキを振り上げる。それを力任せに振り下ろせば、ステッキが直撃した部分の床が陥没し、巨大な穴が開いていた。
(「な、なんて威力だにゃ……。あんなの食らったら、無事では済まないにゃ……」)
想像を絶する威力に、玉五郎の背中を冷たいものが走った。人間でなければ大丈夫。そんな淡い期待は、開始5分で木っ端微塵に崩壊である。
こうなれば、殺られる前に殺ってやる。弾いた5円玉に弾丸を当てることで、即席のダムダム弾にして仕掛ける玉五郎だったが、拡散したはずの銃弾を、ダンディーニは凄まじいステッキ捌きで防いで行く。
「ふんごぉぉぉっ! 負けない! 負けないわぁぁぁっ!!」
多少、銃弾が身体を掠めようとも気にしない。ドサクサに紛れて投げ付けられたトマホークが身体に刺さっても、それさえも気にせずダンディーニは玉五郎を捕獲して、変身アイテムを強奪しようと迫って来た。
●怒りの変態騎士
勝手な妄想で玉五郎をマスコット認定し、あまつさえアイテムを要求する変態騎士。おまけに、それが叶わないと知るや否や、いきなり逆ギレして攻撃した来た。
はっきり言って、会話がまったく通じていない。というか、こんな変態と、果たして意思の疎通ができるのか。
さすがはUDCアース出身のオブリビオン。この、会話の通じなさと色々な意味で冒涜的な恰好が、彼女(?)が邪神と認定される所以であろう。
だが、納得している場合ではない。あの変態ガチムチ魔法少女を止めなければ、周囲への被害は増すばかり。
「隠れてこっそり女装やBLを嗜むことに何の問題があろうか! 今回、たまたまオッサンだっただけじゃろうが!」
こうなったら、怒りには怒りで対抗しようと、アマミが唐突にブチ切れた。が、その怒りの矛先は、どうにも奇妙な方向へと向いている気が……。
「世の中には『やめてよ~、なんでボクが女装しなきゃいけないんだよ~』とか口では言いつつ、わざわざ自分から着用して人前に出てくるオスガキもおるのに! そいつらは良くて、オッサンはダメか!?」
「いいえ、そんなことはないわ! 世の中、誰もが魔法少女になれる可能性を秘めているのよ! だから、それを今から、わたしがあなた達にも教えて揚げるわぁん♪」
アマミの言葉に、ダンディーニは更に調子に乗って、ステッキを振り回しながらポーズを決める始末。
確かに、アマミの主張は、自由や平等という点では一理ある。が、しかし、ダンディーニは別にオッサンが魔法少女になることを否定などしておらず、むしろ爺さん婆さんであろうとメタボのキモオタニートであろうと、あらゆる存在を魔法少女にしようと目論んでいる。
そんな変態に、アマミの怒りは火に油を注ぐようなものだった。完全に絶好調モードになったダンディーニは、もはや誰にも止められない!
「さぁ、行っくわよぉん♪ ステッキ、ライドオォォォン! フォォォォッ!!」
謎の雄叫びを上げつつ、ステッキに乗ったダンディーニがアマミ目掛けて突撃して来た。おまけに、何故か衣服が破れてキャストオフ! 褌姿となったダンディーニが、股間を強調させながらアマミに迫る!
「目を覚ませ、オッサン! 魔法少女のアイデンティティをかなぐり捨てて裸になったら、それはただのオッサンじゃぞ! お前の志はそんなものだったのかー!」
ダンディーニの心に眠る魔法少女への憧れ。それを刺激することで正気に戻そうとするアマミだったが、当のダンディーニは聞いちゃいない。
そもそも、オブリビオンとして顕現した時点で、ダンディーニの精神は歪んだ形に崩壊してしまっているのだ。生前は名のある騎士だったかもしれないが、今やただの変態である。
ましてや、生贄になってしまったオネェにしては、言わずもがな。そもそも生贄にされた時点で血肉はおろか精神さえこの世には残っておらず、邪神への抵抗も、本体にもなにもあったもんじゃない。
「んっほぉぉぉっ! えっくすたしぃぃぃぃっ!!」
恍惚とした……より具体的に述べるならば、白目を剥いて涎を垂らし、ヤバい薬でもキメているかのような表情で、ダンディーニがアマミとの距離を詰めて来る。
「くっ……眩き光子に誘われ、自らその身を焦がしに来たか! 妾が水先案内人となりて、直々に躯の海へと渡してやろうぞ! 死ねーッッ!!」
眼前に迫る変態の股間に危機感を抱き、アマミは仕方なく必殺のフォトンブラストを発動させた。同時に、全身を反重力エネルギーで包み、反動を生かして距離を取るのも忘れない。
「なっ……! いやぁぁぁんっ!!」
直撃を食らい、部屋の壁をブチ抜いて吹っ飛んで行く変態騎士。今のは確実に決まった。そう、確信したアマミだったが……果たして、壁の向こう側から現れたのは、ボロボロになりつつも立ち上がるダンディーニだった。
「な、なんというやつじゃ。直撃を受けて、まだ倒れぬとは……」
「んふふふ……やるじゃなぁい♪ でも、そういう激しいのも、嫌いじゃないわぁん♪」
唖然とするアマミを他所に、再び動き出す変態騎士。攻撃こそ命中させることに成功したが、ダンディーニを骸の海へと送り返すためには、まだまだ時間が必要そうだ。
成功
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紅狼・ノア
(物陰から様子を見ていた)
うわぁ、めっちゃカオスな状況だなぁ…さすがの僕でも引く。
あの変態ガチムチのオッサン。強いなぁ、真正面から正々堂々と挑んだら数秒でヤラレルネ(笑)
そういえばあのステッキが無くなったら…どうするんだろう?
気になるなぁ…(ニヤッ)
力じゃあ負けるから 僕の身軽さを生かしたスピード戦で挑む。
こっちに突進してきたら避ける、そしてコード【シーブス・ギャンビット】を発動(ドサクサに技能【盗み攻撃】ステッキを盗んちゃうよ♪それ以外でもOK!)
この後は…鬼ごっこ!(逃げる)
避けたり逃げるために上着などを脱ぎさらに加速する。
後ろからオッサンが迫ってくるって何気にホラーだよねぇ(笑)
●地獄の鬼ごっこ
攻撃すればする程に、よりキモい変態的挙動によって反撃して来るダンディーニ。その、あまりに色々な意味で凄まじ過ぎる光景に、紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は物陰から様子を窺うだけで精一杯だった。
(「うわぁ、めっちゃカオスな状況だなぁ……」)
報告には聞いていたが、これはない。もう一度言おう。これはない。
(「あの変態ガチムチのオッサン、強いなぁ……。真正面から正々堂々と挑んだら、数秒でヤラレルネ」)
ドン引きしつつも、ノアは冷静に状況を把握しつつ、ダンディーニを倒す方法を考えた。
真正面から挑めば、敵は謎の変態パワーを繰り出して、精神的トラウマを引き起こす攻撃を繰り出して来る。そうでなくとも、あのステッキから放たれる魔法攻撃は、変態云々関係なしんい、凄まじい威力を秘めている。
直撃を食らえば、敗北は必至だ。おまけに、敵はあらゆる存在を魔法少女にするべく、手段を選ばぬ行動に出る変態である。敗北したら最後、あのオッサンの玩具にされて、仲間の魔法少女にされてしまうに違いない!
(「……そういえば、あのステッキが無くなったら……どうするんだろう?」)
だが、そこまで考えたところで、ノアは思わず閃いた。
敵の攻撃は、魔法のステッキを基軸に繰り出されている。ならば、あのステッキを奪ってしまえば、敵は攻撃の手段を失うのではないか。
そうと解れば、善は急げだ。調子に乗ってキモい決めポーズをしているダンディーニの背後から近づいて……神速の如きスピードで、手に持っていたステッキを奪い取った。
「悪いね! このステッキは、いただいたよ!」
「……んなっ!? ちょっと、なにするのよ、あなた! 返しなさい!!」
唐突に武器を奪われたダンディーニが、怒りを露わにして叫びながら、猛烈なタックルを食らわせて来た。が、ノアはそれを軽々と跳躍して避けると、ステッキを持ったまま逃げ出した。
「ふんごぉぉぉっ! この、泥棒小娘がぁぁぁっ! あたしのステッキを返すのよぉぉぉっ!!」
「う、うわっ! 来たぁぁぁっ!!」
後ろから物凄いスピードで迫り来るダンディーニの姿に、ノアは慌てて部屋の外に逃げ出した。しかし、是が非でもステッキを取り返したいのか、ダンディーニもしつこく彼女の後を追い掛けて来る。
「ふんぬぅぅぅっ! ステッキ返せぇぇぇぇっ!!」
部屋の扉を蹴り破り、拳で壁をブチ破り、障害物もなんのその。凄まじい執念で追い縋るガチムチのオッサン魔法少女とか、もはやこれは別の意味でホラーだ。
「こ、このままじゃ追い付かれる!? もっとスピード上げないと!!」
着ているものを脱ぎ捨て、更に加速するノアだったが、それでもダンディーニは諦めなかった。家の壁という壁を穴だらけにして、とうとう居間の一角へとノアを追い詰め、ステッキを返せと叫びながら迫って来る。
「……ふ~ん、どうしても、返すつもりはないのね。だったら、わたしにも考えがあるわ!」
だが、それでも返却を拒否したノアに、とうとうダンディーニは最後の切り札を繰り出した。
「見てなさい! これぞ、魔法少女の二段変身! レッツ! メイクアアァァァァップ!!」
身体のラインを強調するような気色悪いポーズを決め、声高に叫ぶダンディーニ。高々と掲げられた手が光に包まれ、その爪先が無駄に明るい蛍光ピンクの色に染まったかと思うと……次の瞬間、ダンディーニは新たな魔法少女の衣装を纏い、これまた新しいステッキを手にしていた。
「えぇっ! な、なんでステッキが復活してるんだよ!? それって反則だよね!」
慌てて逃げ出そうとするノアだったが、もう遅い! ダンディーニの多段変身によって生じる魔法少女のコスチュームとステッキは、目の前の相手に対して有効打を与えられるものに変化しているのだ。
「さあ、もう逃げられないわよぉん♪ ぴんきー・るーじゅ・はーと・あたぁぁぁっく!!」
甘い砂糖菓子のような香りの漂う光を発しつつ、ダンディーニが新たなステッキを振るう。その先端から発射されたのは、よりにもよって、キスマークの形をした無数の魔法光線! しかも、それらは全てノアの姿を正確に捉え、逃げる彼女をしつこく、どこまでも追尾して来た。
「オーッホッホッホ! わたしの愛からは、誰も逃げられないわぁん♪ 大人しく、あなたも魔法少女になることを受け入れて、わたしの眷族になりなさぁい♪」
「じょ、冗談じゃないんだよ! 死んでもお断りだよぉ!!」
家中の壁に開いた穴を巧みに利用しつつ、ノアは迫り来るキスマークのオーラから逃げ出した。これぞ、真の意味で地獄の鬼ごっこ。捕まったら最後、オッサン魔法少女の唇を、間接的に食らってしまうことになるのだから。
恐るべきは、骸の海より帰還せし、変態魔法少女騎士である。時に、部屋の中に置いてあった家具や装飾品を投げ付けて相殺しつつ、全てのキスマークが消滅するまで、ノアは息を切らせながら、奪ったステッキ片手に延々と逃げ回った。
成功
🔵🔵🔴
中條・竜矢
(とにかくやばいとしか言えない組み合わせだが、警戒よりも怖いもの見たさの方が上回った)
噂以上に危険な火力と……見た目だな。放置したときの被害が想像も付かない。ここで沈んでもらおう。
別に魔法少女がどうとか、そんなものに私は興味が無い。敵としてみられようが構うものか。覚悟しろ。
敵の魔法の隙を突いてドラゴニック・エンドで攻撃。命中したらそのまま【2回攻撃】で追い打ちをかける。
ステッキが攻撃の鍵なら振り下ろされる前に武器受けで受け止めたタ発動を中断できないだろうか。
(アドリブ、絡み歓迎)
●パワー全開! 屋敷、崩壊!
圧倒的なパワーと変態力で、猟兵達の攻撃を次々と凌ぐダンディーニ。そんな彼女(?)を前にして、さすがの中條・竜矢(変化する竜騎士・f03331)も、戦慄せざるを得なかった。
「噂以上に危険な火力と……見た目だな。放置したときの被害が想像も付かない」
怖い物見たさで馳せ参じてみたものの、実際にダンディーニを前にした瞬間、そんな気持ちは吹っ飛んだ。
断言しよう。こいつはヤバい。色々な意味で存在自体が間違っているし、この世に解き放ってはならない代物だ。
「あらぁん、イケメンねぇ♪ あなた、よかったら、わたしのナイトになってくれないかしらぁん?」
「断る! 別に魔法少女がどうとか、そんなものに私は興味が無い!」
薄気味悪い笑みを浮かべて誘って来るダンディーニの言葉を、竜矢はバッサリと切り捨て、否定した。
お前のナイト? 冗談も、休み休み言って欲しい。そもそも、お前は元々が騎士であり、ナイトなど必要ない存在ではないか。というか、ナイトに守ってもらう必然性が、全く欠片も感じられないのに、何を言う!
こんなやつの戯言など、相手にするだけ時間の無駄だ。敵として見られようが、構うものか。何か、おかしなことをされる前に、徹底的に粉砕してやる。
「食らえ!」
先手必勝。敵が何かを仕掛けて来るよりも先に、竜矢は相手の胸元目掛けて槍を投げ付けた。
宙を舞う槍が、美しいアーチを描いてダンディーニの胸元に突き刺さる。鋭い穂先が魔法少女のコスチュームを破り、その内側に隠れていた、分厚い胸板を貫くが。
「いやぁん! 乙女の服を破るなんて、あなた、さては変態ね!」
「黙れ! 変態に変態と言われる筋合いはない!」
両手で胸元を抑えて叫ぶダンディーニに、竜矢は間髪入れず叫んでしまった。
こうなったら、一思いに竜の吐息で始末してやろう。続け様にドラゴンを呼び出し、竜矢はそれをダンディーニに差し向けた。途中、呼び出されたドラゴンが、明らかに拒絶の意を示していたが、それはそれ。
「ぬぐぐぐ……ま、負けないわ! こんなことで、わたしは負けない!」
ドラゴンの吐き出す炎を、ステッキを回転させることで防いで耐えるダンディーニ。しかし、それだけで炎の勢いを完全に殺せるはずもなく、徐々に衣服が燃え上がり、部屋の隅へと追いやられて行く。
「こうなったら、必殺の魔法を使っちゃうわよぉん! ぴんきー・だいやもんど・らぶりー・あたっ……」
「甘い! させるか!!」
苦し紛れの反撃として、ダンディーニがステッキを大きく振り被った瞬間。そこを狙って、竜矢は強引に身体を割り込ませ、降り降ろされたステッキを武器で受け止めた。
魔法の発動条件がステッキを振ることであれば、それを中断させてしまえば、必殺の魔法も撃てないはず。そう、踏んでいた竜矢だったが……果たして、事態は彼の予想を越え、ステッキからは魔力の奔流が凄まじい勢いで溢れ出していた。
「きゃぁっ! た、大変! 魔法のパワーが、抑え切れないわぁん!!」
「な、なんだとっ!?」
中途半端に発動させたことで暴走した魔力の奔流は、もはやダンディーニ自身にも止められない。ステッキから放たれる光は四方八方に拡散し、巨大な爆発を引き起こし。
「……いやぁぁぁぁんっ! だめぇぇぇん!!」
妙に野太い声で紡がれたダンディーニの艶っぽい叫びと共に、ついに事件現場となっていた民家が大爆発して崩壊した。
「う……な、なんという威力だ。まさか、暴発しただけで、家を一軒吹き飛ばすとは……」
瓦礫を押し退け、辛うじて無事だった竜矢が姿を現す。暴発の瞬間、慌てて退いたことで致命傷こそ逃れたものの、後少し遅れていたら危なかった。家屋の方は、先の戦いで壁を穴だらけにされていたことも相俟って、残念ながら持たなかったようだ。
「はぁ……はぁ……。あなた、なかなかやるじゃない。でも、そういうのも、嫌いじゃないわぁ。強い男の人は、わたしも大好きよぉん♪」
だが、その一方で、爆心地にいたダンディーニも、少なからずダメージを受けていた。
減らず口こそ叩いているものの、その身体は既に傷だらけ。無敵の変態に思われたダンディーニだったが、徐々にだが確実に、その体力を消耗させているようだった。
成功
🔵🔵🔴
ファインライト・サークルヒル
みんなの想いを力に変えて!いま光と闇が混ざり合う!魔光少女ファインライト参上!
魔法少女を名乗り悪を為すのは許せま…えぇー……
ちょっと待ってください!同類発見みたいな目で見ないでください!私イロモノのつもりありませんので!
UCで自身を強化。【存在感】で攻撃を引きつけて上空に回避した後光の力を纏った一撃を撃ち込みます!
私は!ちゃんと!正義の!魔法少女です!
●対決! 魔法少女VS魔法少女!?
度重なる激戦により、とうとう現場の民家は完全に崩壊!
後に残ったのは大量の瓦礫の山と化した、無残な家屋の残骸だけである。
だが、それでも戦いは終わらない。確かにダメージを負ってはいるが、しかしダンディーニは未だ健在なのだ。
今までの戦いによって、猟兵達も疲弊している。このまま戦い続ければ、敗北は必至! 禁断のUDCモンスターと化した変態魔法少女騎士を、世に解き放つことになってしまう!
そんなピンチを救うべく、遅れて馳せ参じた者がいた。
「みんなの想いを力に変えて! いま光と闇が混ざり合う! 魔光少女ファインライト参上!」
悪の組織に改造された、ダークヒーローにして魔法少女。光と闇をの双方を司る、ファインライト・サークルヒル(魔光少女ファインライト・f19027)である。
「魔法少女を名乗り、悪を為すのは許せま……」
崩れた家の上に立ち、バシッと決め台詞を言うはずだった。が、いざダンディーニと目が合った瞬間、彼女は思わず言葉を飲み込んでしまった。
「えぇー……ちょっと待ってください! 同類発見みたいな目で見ないでください! 私イロモノのつもりありませんので!」
両目を輝かせ、恐ろしく期待に満ち溢れた笑顔を浮かべている変態が、そこにいた。咄嗟に否定し、拒絶の意を示すファンライトだったが、ダンディーニの中では、既に彼女のことは仲間の魔法少女に確定していた。
「んふふふ~♪ ようやく、わたしと話が合いそうな子が現れたわねぇん♪ さあ、遠慮はいらないわ! あなたも一緒に、全人類を魔法少女化させましょう!」
ファンライトの意思は完全に無視し、ダンディーニは彼女を自らの計画に引き込むべく手を差し伸べて来た。もっとも、実際に目の前のダンディーニを見たが最後、その計画を実行してはならないことは、火を見るよりも明らかだったが。
「じょ、冗談じゃないです! それに、全人類を魔法少女化とか、自分の恰好を鏡で見てから言いなさい!」
「あら、心外ね。……ハッ! さては、あなたは悪の組織に洗脳された魔法少女なのね! きっと、そうに違いないわ!」
拒絶の意を示すファインライトだったが、ダンディーニの中ではいつの間にか、洗脳されて悪堕ちした魔法少女という設定になっていた。まあ、確かにファンライトの恰好は、どちらかといえばヒーローというよりも、悪の女幹部といった感じなのだが。
「えぇっ!? い、いや……確かに、そんな風にされそうな過去もありましたけど……って、それでも、闇堕ちとかしてませんから!」
「お黙りなさい! その破廉恥な恰好も、洗脳されてしまったからなのね! だったら、わたしの力で洗脳を解いてあげるわ! さぁ、いっくわよぉぉぉっ!!」
ファンライトの弁明はガン無視し、ダンディーニがステッキを掲げて迫って来る。こうなっては、もう何を言っても無駄だろう。色々と恐ろしい相手が、覚悟を決めて挑むしかない!
「ふんぬぅぅぅっ! 洗脳解除、女子力あたぁぁぁっく!!」
杖先に魔力を凝縮させ、ダンディーニが力任せに振り下ろした。その光が当たった瓦礫が文字通り蒸発するようにして消滅し、ファンライトの背中を冷たいものが走った。
見た目以上に、恐ろしい攻撃だ。というか、女子力というよりも、これでは完全に単なる物理攻撃ではないか。まさか、女子の使う怪力だから女子力とか、そんなことを言うつもりでは……。
「まだまだぁっ! 逃げるんじゃないわよぉぉぉっ!!」
力に任せてステッキを振り回すダンディーニに危険なものを感じ、ファンライトは咄嗟に距離を取った。そのまま黄金のオーラを纏って宙へ飛び上がると、ジェット機顔負けのスピードで飛翔する。
「私は! ちゃんと! 正義の! 魔法少女です!」
一撃だ。こいつを仕留めるには、一撃に賭ける他にない。
輝く光を身に纏い、ファンライトは最大まで速度を上げた状態で、強烈な拳の一撃を叩き込んだ。普通に殴っただけでは効果が低くとも、圧倒的な加速度を上乗せすれば。
「……はぅぁっ!? も、悶絶ぅぅぅっ!!」
さすがに、これは効いたのか、ダンディーニは身体をくの字に曲げて震えている。しかし、それでも最後の最後で踏み止まると、鬼のような形相のまま立ち上がった。
「はぁ……はぁ……ま、まだよ! こんなところで、負けてたまるもんですかぁぁぁっ!!」
殆どヤケクソになり、魔法少女の服を脱ぎ捨てるダンディーニ。そのまま、褌姿になってステッキに跨ると、ファンライト目掛けて突進して来たではないか!
「いやぁぁぁっ! へ、変態が突っ込んで来ますぅぅぅっ!」
迫り来る変態魔法少女を前に、スピード全開で逃げ回るファンライト。
いくら何でも、これは酷い。竿に跨った魔法少女風のガチムチなオッサンとか、もう存在そのものが変態要素の塊ではないか。
幸いなのは、ダンディーニの動きがダメージによって鈍っており、ファンライトに追い付ける余裕がなかったことだ。
「ま、待ちなさい……はぁ……はぁ……わたしが、洗脳を解いてあげるって……言ってるでしょぉぉぉっ!!」
「だから、そんなの要りませんって! ま、間に合ってま~す!!」
加速しつつも、息を切らすダンディーニ。色々とヤバ過ぎる相手ではあるが、それでも変態魔法少女騎士の討伐まで、あと僅かだ。
成功
🔵🔵🔴
メルフローレ・カノン
遅れての推参で失礼します。
目前の怪物……もとい魔法少女を討伐することは理解しました。
性別や状況などは生暖かい視線で流せばいいことも了解です。
[怪力][力溜め]を持って力技で対抗しましょう。
では、全力で行きますよ!
私の得物はメインがメイス、サブが剣です。
[2回攻撃][気絶攻撃][マヒ攻撃][傷をえぐる]で攻撃します。
また、[属性攻撃]で武器に炎を纏わせて
[鎧砕き]を合わせてコスチュームを燃やしにかかります。
足りないなら【神の見えざる手】で力づくで剥ぎ取ります。
魔法少女コスチュームがなくなればただの邪神となり、
撃破も容易になるでしょう(多分)。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
斉賀・悠
あの。帰って良いですか。
「初戦が色物とか聞いてないって!!!」
(※地味に猟兵デビュー戦)
しかも!相手が!変態とか!
「こんなの嫌だぁぁぁぁぁ!!!」
(叫びながら魔法少年に変身する)
「うぅ… 帰りたい…」
UC:雷の矢 を使用して、全力全開フルパワーで、遠距離から攻撃
!!!(【属性攻撃】【一斉発射】)
「こっち来るなぁぁぁぁぁ!!!」
近付かれたらUC:スーパージャスティス で、三十六計逃げるに如かず!!!
「もうやだぁ…帰りたいよぉ
………」(ぐすぐす)
●禁断のデビュー戦!?
猟兵達との度重なる死闘の果てに、さすがの大変態魔法少女騎士も、消耗を隠し切れない様子だった。
もっとも、それでも相手は色々な意味で恐るべき邪神。ここで確実に倒さねば、何をするか分かったものではない。
「遅れての推参で失礼します。目前の怪物……もとい、魔法少女を討伐することは理解しました」
UDC発生の報を受けて馳せ参じたメルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)は、現場に到着するなり全てを悟り、臨戦態勢に移行する。が、同じく駆け付けた斉賀・悠(魔法少年 エクレール・f17889)は、完全に腰が引けていた。
「あの……帰って良いですか?」
邪神が現れたと聞いて来たのに、目の前にいるのは魔法少女の格好をした、筋肉ダルマなオッサンである。
いったい、これは何の冗談だろう。もしくは、これも邪神の使う精神攻撃の類だろうか。
「あらぁん、可愛い子ねぇ。あなたが、次の相手なのかしらぁん?」
悠の姿を視界に収めるなり、ダンディーニが薄気味悪い笑みを浮かべてロックオン!
その視線にヤバ過ぎる何かを感じ取り、悠は堪らず逃げ出した。
「いや、いや、いや! 初戦が色物とか聞いてないって!! しかも! 相手が! 変態とか!」
これが猟兵として数多の世界を渡り歩いた上での、数ある戦いの内の一つであれば、まだマシだった。
しかし、彼にとって、これは初陣。記念すべき初陣の相手が、狂気丸出しの変態とか、マジで勘弁して欲しい!
「こんなの嫌だぁぁぁぁぁ!!!」
全力で逃げ出しつつも、魔法少年に変身する悠。そのまま迫り来るダンディーニに向けて、雷を纏った不可視の矢を一斉発射!
「こっち来るなぁぁぁぁぁ!!!」
放たれた無数の矢がダンディーニに突き刺さり、電撃が共鳴を起こして爆発した。
さすがに、これだけ叩き込めば、あの変態とて無事では済まないだろう。そう思い、安堵のため息を吐いた悠だったが……しかし、煙の中から現れたものを見て、彼の瞳が絶望の色に染まった。
「もぅ、いきなり激しいじゃない♪ そんなに慌てなくても、ゆっくりと可愛がってあげるわよぉん♪」
「ひ、ひぃぃぃっ!!」
あれだけの攻撃を食らったにも関わらず、ダンディーニは全く動じていなかった。いや、実際はダメージを受けていたのだろうが、目の前の少年を色々な意味で食べることに執念を燃やし、その想いだけで立ち上がって来たのだ。
「くっ……噂には聞いていましたが、なんという耐久力! これは、本気で挑まないと、大変なことになりますね……」
剣と棍を握り締め、メルフローレは改めてダンディーニの恐ろしさに息を飲んだ。が、そんな彼女のことなど眼中になかったのか、ダンディーニは杖に跨ると、そのまま悠に狙いを定め、凄まじい勢いで突撃して来た!
●さらば、変態魔法少女!
己の欲望全開に、目の前の少年に襲い掛からんと迫る大変態魔法少女騎士ダンディーニ。ステッキに跨った彼は勢いに任せて魔法少女の衣服を脱ぎ捨てると、褌一丁になって悠へと襲い掛かる。
「うわぁぁぁっ! に、逃げろぉぉぉっ!!」
竿に乗って素っ飛んで来る変態を前に、悠はとうとう空を飛んで逃げ出した。
そのスピードは音速の一歩手前。さすがに、ここまで逃げれば追って来ないだろうと思われたが……それでもダンディーニはしつこく悠に狙いを定め、ともすれば飛び掛かろうと眼下の瓦礫の上で跳ね回っていた。
「ま、まさか、自分から魔法少女の服を脱ぎ捨てるなんて……。ですが、これはチャンスですね」
あまりに衝撃的な展開に茫然としつつ、それでも我に返ったメルフローネが武器を構えてダンディーニへと一直線! 防具を失った今こそが、あの変態を討伐する最大のチャンス!
「では、全力で行きますよ! 力技なら、負けません!」
まずは一撃、渾身のメイス攻撃を仕掛けるが、しかしダンディーニも然るものだ。直撃する寸前にステッキを構え直し、それを使ってメルフローネの攻撃を受け止めた。
「あらぁん……あなた、なかなかやるじゃなぁい? あなたも、わたしと一緒に魔法少女しないかしらぁん?」
「……お断りします! それに、あなたはどう見ても『少女』じゃありませんよね?」
互いに拮抗するステッキとメイス。敵のパワーは想像していた以上に高く、このままでは有効打を与えられない。
だが、それでもメルフローネには、もう一つの武器がある。棍で殴って駄目ならば、剣で直接斬りつければよいのだ。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
こんなやつには勿体ない技だが、それでも背に腹は代えられない。祈りの言葉によってメルフローネが呼び出したのは、聖なる神の見えざる手。
「……痛っ!? ちょ、ちょっと、なによこれ!?」
いきなり死角から見えない何かに殴り付けられ、ダンディーニの注意が一瞬だけ逸れた。その隙を逃さず、メルフローネは炎を纏った剣で斬り付ける。渾身の力を込めた斬撃は正面からダンディーニに直撃し……彼女(?)の最後の一枚である、褌さえも焼き払った。
「……っ! きゃぁぁぁっ! ちょっと、なにするの、あなた! 乙女の下着を燃やすなんて、さては痴女ね! そうなのね!」
股間を両手で隠しながら、ダンディーニが身体をくねらせつつ叫ぶ。
うん、これはキモい。キモ過ぎる。というか、あわや局部を丸出しにしそうになっていた変態から、痴女呼ばわりされる筋合いはない。
「も、もう許さないわ! 女の子を脱がせた恨みは、恐ろしいんだから!」
自分から勝手に脱いでおきながら、ダンディーニは無茶苦茶な八つ当たりを叫ぶ。そのまま片手で股間を隠しつつ、もう片方の手を高々と掲げ。
「いっくわよぉ! レェェェッツ! メイクアアァァァァップ!!」
本日、二度目の多段変身。失われた衣服を、よりメルフローネとの戦いに特化させたものに変化させ、新たに纏うダンディーニ。
「うふふふ♪ 今度のわたしは、姫騎士バージョンよ! これでもう、あなたの剣は通用しないわね♪」
どことなく王族のドレスを思わせるような鎧を身に纏い、ダンディーニは勝ち誇った表情を浮かべていた。確かに、あんな鎧を纏われては、斬撃は通用しないだろうが。
「……甘いですね。剣が通用しなくとも、私には神の加護と……そして、愛用のメイスがあるんです!」
鎧を纏ってドヤ顔を決めるダンディーニに、メルフローネは一歩も退かず殴り掛かる。そう、彼女の得意とする攻撃は、本来であれば斬撃ではなく打撃! そして、強固な鎧は斬撃を防ぐことはできても、打撃の衝撃までは完全に殺せない!
「フルパワーです! はぁぁぁぁっ!!」
完全に舐め切り、油断していたダンディーニの頭部に、横殴りの打撃をブチかますメルフローネ。案の定、多少の衝撃は殺せても関節が耐えられなかったのか、変態の首が嫌な音を立てて明後日の方角へねじ曲がった。
「……んごっ!? はべべべべっ!!」
だが、それでもダンディーニは死ぬことなしに、球体間接人形の如く首を360°回転させながら暴れ回る。人間であれば、当に首の骨が折れて死んでいるはずだが、これもまた彼女(?)が邪神であるが故のことなのだろうか。
「あぱぱぱっ! ぶっぱるべっぷるぺっぽっぱぁぁぁっ!!」
奇声を発しながら、焦点の定まらない瞳で首を回転させる大変態。見ている方としては、ちょっとしたホラーである。いや、格好が格好だけに、とある映画に出て来た悪魔に憑かれた少女の方が、まだ可愛げがありそうな気がしてならない。
「いい加減に、倒れなさい!」
もう、見ているのも色々と限界だったので、最後はメルフローネが敵の脳天を容赦なくメイスでカチ割った。
「……はがっ!?」
脳を揺らし、脊髄を駆け抜ける衝撃に、口から涎を噴き出して卒倒するダンディーニ。さすがに、肉体の限界だったのか、そのまま痙攣しつつ倒れ伏し、溶けるようにして消えて行く。
「うぅ……終わったの? もうやだぁ……帰りたいよぉ………」
上空から一部始終を眺めていた悠が、泣きながら降りて来た。
いったい、自分はここで何をしているのだろう。なんだかとてつもなく情けない気持ちになってきたが、それはそれ。
戦いはまだ、始まったばかり。大変態魔法少女騎士ダンディーニは、この地に現れし邪神の一角に過ぎない。
家屋の瓦礫で敷き詰められた地に、どこからか凄まじい腐臭が漂って来る。早くも、新たな敵が現れたことを察知して、猟兵達は気を取り直し、次なる戦いに備えるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『発酵少女』
|
POW : 呪縛の藁人形納豆
【藁人形】から【粘性の高い納豆のような物体】を放ち、【猛烈な悪臭と粘り】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 強酸性乳酸液
【口から吐き出した白色の溶解液】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を侵食し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 名伏し難き缶詰の開放
【頭の缶詰を開放することで冒涜的な臭気】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
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●腐った少女のお出迎え
死闘の末、偶発的に出現してしまった大変態魔法少女騎士を討伐した猟兵達。
はっきり言って、物凄く疲れた。まだ、これから戦いが残っているというのに、ラスボスを倒した後のような虚脱感が、それぞれの肩に圧し掛かっていた。
だが、それでもここで逃げるわけにはいかない。あの変態に同調する形で出現した、新たなる邪神。その眷族が、早くもこちらに向かって来ていたのだから。
「……尊い……。ダンディーな筋肉が……」
「……尊い……。獣にショタに、それとイケメン……」
どこから現れたのか、いつの間にか猟兵達の周りを、白いワンピースを着た少女達が取り囲んでいた。
抑揚のない声で、ひたすら『尊い』と呟く彼女達。その手に握られているのは、紛うことなき薄い本! そして、もう片方の手に握られた藁人形と、頭の上に乗った缶詰からは、なんとも名伏し難き臭気が漂って来る!
変態の次は、悪臭攻めか。なんとも気が滅入る話だが、それでも彼女達を放っておけば、周囲に被害が出るのは明白だった。
気を取り直し、迎撃の体勢を整える猟兵達。薄幸の……否、色々な意味で発酵した少女達を撃破して、その裏にいる邪神を引き摺り出すのだ!
神羅・アマミ
くせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーッ!
物理的に臭いのはアウトじゃろ。
ならば真の姿・ゴリラニックパワーローダー形態に覚醒!
コード『番手』発動にて召喚するのは…右手に溶接トーチ、左手には釘打機じゃぜー!!
トーチは驚異的な高火力で汚物に対する消毒を行うのはもとより、その特性を活かし彼奴らが開放する頭部の缶詰を力づくで封印してやろうというわけじゃ。
釘打機は当然…当然?藁人形目掛けてぶっぱする。
封印とか対策とか以前に、ビジュアルとしてとりあえずやっておくべきことだと判断したまで!
なんか、こう、偶像崇拝と絡めてお説教も考えようとしたけど、無理!
風呂に入るってまず人として最低限のマナーじゃろ!
斉賀・悠
(※魔法少年に変身したまま継続して戦闘)
「うえぇ…臭いから近付かないでよぉ…!」(めそ)
…無理だよね…!知ってた…!(ぐすん)
「さっきよりは数百倍マシさっきよりは数百倍マシ…」(自己暗示)
………でも近付きたくない!!!
キッと涙目で睨み付けながら、多少は持ち直した精神でUC:雷の矢 を【高速詠唱】と【全力魔法】で更に威力を上げながら【一斉発射】!
討ち漏らしが居たら、追尾する雷で攻撃します!(【誘導弾】【属性攻撃】)
敵の攻撃は引き続きのUC:スーパージャスティス で素早く離れたりしながら回避して、避けきれないものは【オーラ防御】で耐え………やっぱ臭いよぉ…帰ったら●セッシュと●ァブ浴びる!!!(泣
紅狼・ノア
*アドリブ・絡み歓迎
や、やっと終わった…(死にかけ)
(クンクン)なんか、納豆の匂いがするような…あと発酵したようなってクサッ⁉
えっ何⁉この悪臭!(キョロキョロ)
ん?もしかして…この匂いの元って…マジかよ…
まず、この匂いを何とかしないとまともに攻撃出来ないよ
何処かに防げるもの無いかな? あったら装備。
数が多いなぁ、一気に減らすためにある程度集めないと(発酵娘を怒らせる事して集めよう)
集まったらコード【人狼咆哮】これで一気に減るだろう。
残りは、【2回攻撃】でどんどん倒していくよ。
速さは、お任せあれ!
仲間が危険だったら駆けつけて̠加勢するよ。
●吐き気を催す腐女子
戦場に漂う凄まじい臭気。思わず胃の内容物を全て吐き出しそうな酷過ぎる臭いに、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)は思わず全力で叫んでいた。
「くせえッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーッ!」
ようやく変態を倒したと思ったら、いつの間にか周囲を物理的に腐った腐女子の軍団に囲まれていたという現実。正直、アマミ自身、あまりにカオスな展開過ぎて、何がどうなっているのか自分でも分かっていない。
汚ギャルとか、焼いたくさやとか、そんなチャチなもんじゃない。より凄まじく、人間の嗅覚を遺伝子レベルで破壊し得る恐るべき臭気が、目の前の少女達から漂っている。
「や、やっと終わった……。あれ? なんか、納豆の匂いがするような……。あと、発酵したようなっ……てクサッ!? えっ、何!? この悪臭!」
同じく、紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)も早々に少女達の放つ臭気にやられ、口元を覆って後ろに下がる始末。
「もしかして……この匂いの元って……マジかよ……」
少女達の頭部に置かれた缶詰のラベルに、ノアの視線が注がれる。
ああ、あれは北欧原産の、世界一臭い発酵ニシンの缶詰だ。その臭気が、邪神の力によって名伏し難きレベルにまで強化された物体となれば、もはや普通にBC兵器!
「うえぇ……臭いから近付かないでよぉ……!」
斉賀・悠(魔法少年 エクレール・f17889)に至っては、もはや完全に戦意喪失の一歩手前! 頼むから、こっちに来ないでくれと懇願するが……そんな彼の姿は、むしろ少女達の大好物だった。
「……尊い……泣き虫なショタは……尊い……」
何故か、主に悠へと狙いを定め、腐った少女達は一斉にこちらへ向かって来た。一歩、また一歩と近づかれる度に、周囲の空気が汚染されて行く。こんな連中に密着されたら最後、一万回風呂に入っても臭いが取れそうにないので、やってられない。
「……うん、無理だよね……! 知ってた……!」
敵と意思疎通が図れないことを察し、悠は涙を浮かべつつ覚悟を決める。
こんな連中、早々に退治して早く帰ろう。臭いは酷いが、幸いにして見た目だけなら、先程の変態魔法少女なオッサンに比べ、数百倍はマシだろうから。
●激臭、大爆散!!
鼻がひん曲がるような悪臭を全身から放ち、こちらを徐々に包囲して行く少女達。何かに憑かれたようにして、ただ「尊い……」と呟きながら迫り来る様は、さながらゾンビそのものだ。
「さっきよりは数百倍マシ、さっきよりは数百倍マシ……」
必死に自己暗示をかけながら、悠は雷の矢で少女達を迎撃する。が、敵は痛覚がないのか、それとも獲物を目の前にして興奮しているのか、全く怯む素振りがない。
「……尊い……必死なショタ、尊……ヴォェェェッ!!」
突然、少女の一人が口から謎の白濁液を発射して来た。それが足元の瓦礫に命中した瞬間、瓦礫は凄まじい煙を上げながら、跡形もなく溶け落ちた。
「ひぃっ! こ、こんなの浴びたら、死んじゃうよぉ!!」
恐るべき強酸液の威力に、思わず悠が後退った。
こいつはヤバい。ゲロインとかいうレベルじゃない。おまけに、飛散した白濁液の上に立つ少女達は、なぜか力が増しているような気が。
「まず、この匂いを何とかしないと、まともに攻撃出来ないよ! 何処かに防げるものは……」
口元を抑えながら、ノアが辺りを見回すものの、役に立ちそうな物は何もない。強いて言えば、先程の変態が脱ぎ捨てた魔法少女服の残骸や、褌の切れ端が転がっていたが……さすがに、あれで口元を覆うくらいなら、死んだ方がマシである。
「そ、それにしても、数が……。とりあえず、どこか一ヶ所に集めないと……」
敵を一網打尽にしようと考えるノアだったが、しかし下手にユーベルコードを発動させれば、味方まで巻き込んでしまい兼ねない。ならば、敵を怒らせて引き付けようかと思ったが、そもそも目の前の少女達は、何をすれば怒るのか分からない。
具体的な案を以て挑まねば、戦場では有効に立ち回ることなどできないのだ。そうこうしている間にも、敵の包囲網は更に猟兵達を追い込んで行く。
このままでは、確実に負けてしまう。そう気付いて、ついにアマミが悪臭に顔を顰めつつも動いた。
「妾の絡繰は破壊も創造も如意自在! さりとてその本旨とは目の前の敵、貴様をこの世から跡形もなく殲滅せしめることと知れ! 死ねーッッ!!」
巨大なパワーローダーを纏った真の姿に覚醒し、アマミは鉄杭を叩き込む。狙うは、少女達の持っている藁人形。
呪い? 封印? そんな細かいことは、どうでもいい。ビジュアル的に、とりあえずやっておかねばならない気がしたから、ブチ込んだまでだ。
「……っ!?」
手にした藁人形を鉄杭で貫かれ、少女達の動きが一瞬だけ止まった。が、バラバラに飛散する藁人形から溢れ出した納豆は、少女達の指先の動きに合わせ、一斉にアマミへと殺到した。
「……臭ッ!? な、なにをするだぁぁぁっ!!(注:誤記ではありません)」
思わぬ反撃を食らい、叫ぶアマミ。はっきり言って、これはない。ただでさえ耐え難い悪臭の中にあるというのに、その上で納豆を身体にぶっかけられるなど酷過ぎる。
「待ってて! 今、助けるよ!」
慌ててノアが少女の一人にダガーナイフの刃を突き立てたが、この状況では一人倒した程度では焼け石に水。ならば、と今度は悠が全力で雷の矢を叩き込むが、少女達も負けてはいない。
彼女達の頭に乗っていた、禁断の缶詰。金属の軋む不気味な音と共に、それがゆっくりと開かれる。
「く、臭っ!!」
「もう嫌だよぉ……。それ以上、近づかないでぇっ!!」
周囲に放たれる凄まじい臭気に、ノアや悠は早くもKO寸前だ。先程の納豆や溶解液も臭かったが、こいつは臭さのレベルが違う! こいつの臭いを上回れるのは、スカンクの尻から出るガスくらいだろう。
「な、なんという臭い連中じゃ! 風呂に入るって、まず人として最低限のマナーじゃろ!」
鼻腔を刺激する大悪臭に、アマミもとうとうブチ切れた。が、少女達は既に人ではなく、邪神の眷属と化していたので、マナーもへったくれもあったものではなかった。
「えぇい、させぬ! その缶詰、力づくで封印してくれるわ!」
これ以上、悪臭を撒き散らされては敵わないと、アマミはトーチで缶詰の蓋を溶接し、強引に臭いを封じる策に出た。
「フハハハ! 汚物は纏めて消毒してやるのじゃ!」
圧倒的な温度を誇るトーチの火力を前にしては、少女達の武器である缶詰も意味を成さない。一つ、また一つと封印され、少女達は切り札を失って行くのだが……しかし、アマミは大切なことを忘れていた。
「ふぅ……もう少しじゃな。残りの缶も、蓋を開けられる前に溶接し……って、なんじゃ!? 何か、大きくなっておるぞ!?」
封印したはずの缶詰が、内からボコボコに殴られたような形に変形している。おまけに、蓋もパンパンに膨れ上がり、今にも破裂寸前だ!
気体は過熱することで、一気の膨張して体積を増す。それは、この凄まじい臭気の原因である、名伏し難い悪臭とて同じこと。トーチで熱したことにより、缶詰内の温度もまた上昇し、悪臭ガスが体積を増してしまったのだ。
「あぁ……尊い……尊い……尊……っ!?」
そこまで呟いた瞬間、少女の頭に乗っていた缶詰が、盛大な爆発音を放ちながら四散した。空き缶をも潰す大気圧の力。それが、缶の中から外へと押せば、どうなるか。
「「「うぎゃぁぁぁっ
!!」」」
響き渡る悲鳴。降り注ぐ謎の肉片と、耐え難き臭いを発する汁。吹っ飛んだ缶詰の中身が戦場に撒き散らされ、もはや色々な意味で地獄絵図。
ちなみに、爆発のショックで少女の内の数人は頭が吹っ飛んでいたが、それを気にしている場合ではなかった。ただでさえ、バイオハザードならぬスメルハザードが発生している中、ついでにグロまでオマケとは、もう完全にやってられない。
「うぅ……やっぱ臭いよぉ……。は、早く帰りたい……」
悪臭に耐えながら戦う悠だったが、このままでは遠からず限界だ。缶詰の破裂によって敵を一網打尽にできたものの、代わりに味方が被った代償も、決して少なくないものだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
中條・竜矢
これは発酵ではなくただの腐女子だろう……!?その手の本が証拠じゃないか。その新しいネタを見つけたような視線を向けるな……
臭いが付くのは嫌だな。速攻で終わらせたい。
「ドラゴンヘッド」で右手を竜の頭に変形させてかみ砕く。苦みもあるかもしれないが……【勇気】で耐える……
溶解液もとにかく回避したいな。溶けることも嫌だが、それ以上にあの臭いが体に付くことの方が嫌だ。
足場が侵食されたら空中に飛び上がって空から攻める。
しかしこんな邪神もいるとはな!先のやつとは別の意味で外に逃すわけにはいかない。ここで倒す!
(アドリブ、絡み歓迎)
ファインライト・サークルヒル
むぅ…尊い…ですか?手に持ってる本を見るに男性同士の熱い友情みたいなものでしょうか。確かにそれは尊いですね!
…しかしすごい臭いですね…なんなんですかあれ…あんなの直撃したら落ちなくなっちゃいますよ…
とにかく【オーラ防御】で魔力障壁を展開してカットします!
そして【高速詠唱】からのUC【ライトニングレイン】で纏めて叩きます!
魔法少女的に臭いのはNGですので!速攻です!
●やられる前に殲滅せよ!
缶詰の破裂により大幅に数を減らした少女達。だが、その代わりに戦場は破裂した缶詰の中身や砕け散った少女の肉片が散乱した、悪臭とグロのオンパレードと化していた。
それは、言うなればキモさとグロさの二重奏!
嗅覚だけでも辛いのに、その上で視覚にまで訴えてくるとか、色々な意味で酷過ぎる!
「これは発酵ではなくただの腐女子だろう……!? その手の本が証拠じゃないか」
そんな戦場に、少女達への突っ込みを入れつつも降り立つ中條・竜矢(変化する竜騎士・f03331)。同じく、悪臭地獄と化した戦場へ舞い降りたファインライト・サークルヒル(魔光少女ファインライト・f19027)は、何やら勘違いをしているようだったが。
「むぅ……尊い……ですか? 手に持ってる本を見るに、男性同士の熱い友情みたいなものでしょうか? 確かにそれは尊いですね!」
妙に納得しているファンライトだったが、少女達の持っている本の中身を見たら、果たして何というだろう。
発酵少女達が抱えているのは、紛れもないウ=ス異本……ではなく、どこからどう見てもBL本。しかも、イケメン男子が開始3ページ目にして全裸で絡み合うという、実にハードな内容の禁書である。
「……しかしすごい臭いですね……なんなんですかあれ……。あんなの直撃したら、落ちなくなっちゃいますよ……」
本の内容を知らないのを良いことに、ファンライトは鼻を摘まみつつも、オーラで魔力障壁を展開した。とりあえず、これで窒息の心配はなくなったが、それでも微かに臭う気が……。
「先のやつとは別の意味で、外に逃すわけにはいかんな。……ここで倒す!」
覚悟を決めて、飛び出す竜也。その勇気ある行動に、少女達の何人かは、布団の向こう側に賞賛を送るが。
「その新しいネタを見つけたような視線を向けるな……。ドラゴンの牙よ! 噛み砕け!」
あまりに酷い臭気と危険な視線に耐え切れず、竜矢は拳をドラゴンの頭部へと変身させると、そのまま勢いに任せて発酵少女の頭を噛み砕かせた。
「……っ!?」
瞬間、舌が痺れ、喉の奥が焼けるような痛みが、ドラゴンの頭を通して竜矢に伝わった。そこを逃さず、溶解液で攻撃して来る少女達だったが、それらが命中するよりも先に、竜矢は上空へと逃げ出した。
「あ、危ないところだった。あんな攻撃、食らって堪るか……」
冷や汗をかきつつも、竜矢は辛うじて直撃を避けられたようだ。しかし、敵の少女達は諦めることなく、少しでも自らを強化せんと、溶解液で溶けた地面へと殺到している。
「魔法少女的に、臭いのはNGです!」
これ以上は、関わっているだけで臭いが移りそうだ。そう判断し、ファンライトは速攻で片付けるべく、戦場へ光の矢を降り注がせる。戦場を埋め尽くす光の槍に、一人、また一人と少女達は貫かれ、そのまま在るべき場所へと還って行く。
「尊……い……」
「……あぁ……と、尊……」
身体を貫かれ、次々と口走りながら消えて行く少女達。数分の後、戦場には空の缶詰や謎のBL本が、ズタボロに焼け焦げた状態で転がっているだけだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『『原初の触手神』ウホ・サセロ』
|
POW : フハハハ!我が真の姿を見るがいい!
対象の攻撃を軽減する【名伏し難き触手生物の塊 】に変身しつつ、【冒涜的な行いをする触手】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : 出でよ!ヤオ=異本に封じられし眷族よ!
【爽やかな笑顔を湛えた人面イカ 】の霊を召喚する。これは【対象の背後に回り込むこと】や【耳元で冒涜的な愛を囁き精神力を削ること】で攻撃する能力を持つ。
WIZ : 出でよ!アン・ナ・コト写本に封じられし眷族よ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【筋骨隆々のガチムチ兄貴マン 】と【スキンヘッドの筋肉質なオネェ】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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●出現! アブナイ、原初の触手神!
変態騎士に続き、腐女子……もとい、邪神の眷属である発酵少女を退治した猟兵達。
正直、もう精神が色々な意味で限界だった。攻撃すればするだけ、不気味な姿になって襲って来る変態に散々な目に遭わされたかと思えば、続けて現れたのはBC兵器級の臭さを誇る。文字通り腐った少女達。
こんな連中、間違っても二度と再び戦いたくない。できれば、このまま帰りたい気持ちでいっぱいだったが、しかしそうは問屋が卸さない。
「……な、なんと! かの大変態魔法少女騎士が、まさか倒されてしまうとは!」
発酵少女達が倒された戦場に降臨したのは、古代エジプト風の衣装を纏ったイケメンだった。が、その左腕が不気味な触手と化している時点で、こいつが危険な邪神であることは明白だ。
「おのれ……その上、我が眷属であり、アシスタントである少女達までも骸の海に還すとは……。これでは、我が出版を予定していた新刊の魔導書、『大変態魔法少女騎士☆触手闇落ち』や『愛の美少年戦士×まじかる乙女ダンディ』の制作が、夏コミまでに間に合わんではないか!」
なにやら、凄まじく怪しげな薄い本のタイトルを叫びながら、ブチ切れまくる『原初の触手神』ウホ・サセロ。
おい、お前、もしかしてあのダンディーニをネタに、エロ同人を作るつもりだったのか? しかも、あの腐女子達をアシスタントに使って絵を描かせた挙句、それを夏コミで販売するだと!?
あまりに酷い邪神の計画に、猟兵達は開いた口が塞がらなかった。
本のタイトルからして、この邪神が作ろうとしてたのは、魔法少女姿のオッサンが触手にあんなことやこんなことされるような内容のエロ同人か、もしくはいたいけな少年(あるいは、男の娘かもしれない)が受け役で、変態魔法少女騎士が攻め役な、極めて危険かつニッチなBL本!
はっきり言って、どこに需要があるのか、まったく理解不能な本だった。仮に、そんなものが夏コミで配布されるとなれば、コミケ参加者のSAN値は急降下! 会場にて多数の発狂者を出すという、未曽有の大惨事になってしまう!
「仕方がない……。こうなれば、我が直々に貴様達の相手をし、その様を新たなる魔導書のネタにしてくれるわ!」
そういうわけで、紳士諸君、覚悟はいいか。ついでに淑女諸君は、失われたアシスタントとして、新たな発酵少女の素体にしてやろう。そう言って、なにやら危険な笑みを浮かべると……原初の触手神は自ら執筆した二冊の魔導書を武器に、猟兵達に襲い掛かって来た!
中條・竜矢
なんて危険な本を世に出そうとしてるんだこいつは……!好き勝手される前に倒してしまわないと
一気に攻める。【邪竜の呪い】で黒い鱗の邪竜に変身して爪と牙、炎で攻撃する。この姿になった以上、我を止められると思うな!
触手に絡みつかれても構わず攻撃する。本も何もかも燃え尽きろ!
(もし追い込まれたら)どこを触って……!?くうっやめろ……ううっ。こんな醜態をさらした上に寿命まで削られるのはさすがに……(ユーベルコードを解除したところに大量の触手が殺到し、蹂躙される)く、来るな!?うあ……あああ……
●最凶最後の邪神!
入れ替わり立ち替わり現れる、一癖も二癖もある色々な意味で名伏し難き者達。その最後を飾る存在に、中條・竜矢(変化する竜騎士・f03331)は思わず恐怖した。
「なんて危険な本を世に出そうとしてるんだ、こいつは……! 好き勝手される前に倒してしまわないと……」
変態魔法少女や物理的に腐った女子も大概だったが、こいつはその更に上を行く。見た目こそ、一見まともに見えるが、しかしその内面は今までに戦ったどの敵よりも恐ろしい。
美少年やイケメン青年は元より、ガチムチの変態親父からオネェまで対象とする凄まじい守備範囲の広さ。しかも、それらをネタに、あらゆる要素をカオスにかけ合わせた魔導書……もとい、BL本を世に広めようとは、まさしく正気の沙汰ではない。
仮に、こんなやつの信者が誕生し、祀るようになってしまったら最悪だ。ネットを介してBL本は瞬く間に全世界へと広まり、国籍関係なく人々を冒涜的な愛の世界へと誘ってしまう。
「一気に攻める……。なにもかも……その危険な魔導書と共に、焼き尽くしてくれる!」
その身に宿した竜の力に武具の呪いを重ね合わせ、竜矢は漆黒の邪竜へと転身した。この姿になった以上、もはや一切の容赦はなし。全てを食らい、全てを焼き尽くすべく、竜矢は目の前の邪神へと仕掛けて行く。
「今の我は人にあらず、敵を滅ぼす黒き邪竜なり。その命を我に差し出せ!」
「フハハハ、面白い! ならば……我も貴様に、真の姿を見せてやろう!」
だが、咆哮を上げて突っ込んで来る竜矢に怯むこともなく、ガチホモ邪神ウホ・サセロは、余裕の笑みを浮かべて自らの肉体を解き放った。
「……ッ!?」
次の瞬間、人間の姿が歪に崩れ、ウホ神の身体がおぞましい触手の塊に変化した。それは奇妙に身体を蠢かせながらも、邪竜に変化した竜矢の身体を受け止めて、お返しとばかりに絡み付いて来た。
「えぇい、離れろ! 気色悪い触手め!!」
懸命に振り解こうとする竜矢だったが、しかし触手は彼の身体に絡み付いたまま離れない。邪竜になり、戦闘力が増しているので即死はしないが、しかし真の姿を解放したウホ神も相手の攻撃を軽減するため、強化された竜矢の攻撃は相殺されてプラマイゼロだ。
「フフフ……安心するがいい。我は青年だけでなく、獣の雄も守備範囲だ! 無論、竜とて例外ではない! 今から貴様にも、我が愛をその身に注ぎ込んでくれよう!!」
頭だけ人間の姿に戻し、ウホ神は竜矢の耳元で囁いた。
はっきり言って、これは酷い。全身を触手で襲われた挙句、首だけ人間の形になったガチホモに耳元で囁かれるとか、もはや軽くホラーである。
「くぅっ、や、やめろ! どこを触って……うぅっ!!」
触手の攻撃が主に下半身に集中し始めたことで、竜矢は思わず苦悶の表情を浮かべて悶えた。が、それを見たウホ神はいやらしい笑みを浮かべると、今度は竜矢の穴という穴に狙いを定め、一斉に触手を突撃させて来た。
(「くっ……! こんな醜態をさらした上に、寿命まで削られるのはさすがに……」)
このままでは、竜の姿のまま犯された挙句、新しいBL本のネタにされてしまう。いや、それ以前に、この冒涜的な触手神に、色々と大切なものを奪われてしまう! 寿命を削ってまで戦った結果がこれでは、あまりに酷過ぎてやってられない!
「……ほぅ? 元の姿に戻ることで、我の触手から逃れたか。だが……」
ギリギリのところでユーベルコードを解除し、その隙に触手から逃れた竜矢だったが、しかしウホ神は何ら動じていなかった。ともすれば、これでより襲い易くなったとばかりに、再び全身を触手に変えて襲い掛かって来た。
「ひっ……! く、来るな!? うあ……あああ……」
哀れ、殺到する触手の群れに蹂躙され、竜矢は抵抗虚しく蠢く触手の塊の中へと飲み込まれて行く。やがて、悲鳴も聞こえなくなったところで、ようやく触手の塊から解放されたが……既に色々と酷い目に遭わされた後だったのか、竜矢はげっそりとやつれた表情のまま、瓦礫の上に倒れ伏して動かなくなった。
苦戦
🔵🔴🔴
紅狼・ノア
アドリブ・絡み歓迎
うぇ服に匂いが移ってるし…てか全然役に立ってなかった!(しくしく)
ん?…うわぁ(まだなんか出たよ、しかもとんでもない事言ってるし‼)
はぁもう疲れた…さっさと終わらせで風呂入って寝たい…
ん?なんか食えそうな「イカ」が出てきたなぁ(腹ぐうぅー&ジュルリ)
愛の囁き?【恥ずかしさ耐性】で効かない。
てか背後に立つとは…食われたいの?
あの「イカ」見た目は、キモいけど食える気がする。
あの「触手」…美味しいかな…食えばわかるよね(獲物を狩る目)
【部位破壊】し、空腹の限界でその場で食い始める。
【第六感】を駆使し【オーラ防御】しながら、触手腐男に攻撃
コード【シーブズ・ギャンビネット】も発動だよ
●妖神グルメ? ただし、味はありません
猟兵達の前に姿を現した、恐るべし原初の触手神。圧倒的な守備範囲と、邪神の名に違わぬ攻撃力を持つウホ・サセロの前に、猟兵達は戦慄した。
こいつはヤバい。今まで戦って来たどんな敵よりも、ある意味では危険な存在だ。
「フハハハ! さあ、次は誰が我の魔導書作成に協力してくれるのだ?」
勝ち誇った表情で笑う触手神は、いつしか人の姿に戻っていた。が、戻ったら戻ったで、やたら饒舌に冒涜的な愛について語って来るので、これはこれでウザかった。
「うぇ、服に匂いが移ってるし……。てか、全然役に立ってなかった!」
そんな中、紅狼・ノア(捨て子だった人狼・f18562)は先程の戦いで浴びてしまった発酵鰊の肉片と汁が付いた服に顔を顰めつつ、自分の行動を呪っていた。
こんなことなら、もっと悪臭に対して対策をしていればよかった。恐るべしは、名伏し難き臭気を放つ危険な缶詰。あれのせいで、辛うじて保てていた戦いへの気力を、ゴッソリと削り落とされてしまった気が……。
「ん? ……うわぁ、まだなんか出たよ……。しかも、とんでもない事言ってるし!!」
既に約一名、触手にやられて倒されているにも関わらず、ノアの気力は戻らなかった。己に迫る危機よりも、なんやかんやで精神を削られまくったことによる、疲労感の方が大きかった。
「はぁ、もう疲れた……さっさと終わらせて、風呂入って寝たい……」
ぶっちゃけ、これが彼女の本音である。まあ、先程から斜め上な存在と戦わされ続け、その度に酷い目に遭って来たのだから、彼女の溜息にも同情できるわけでして。
「フッ……貴様は、もしや我のアシスタントを希望する者か? その気があるならば、新たなアシスタントとして採用してやらんこともないぞ。……時給、300円でだがなぁっ!!」
(「や、安っ!?」)
こちらの都合など全く無視して語るウホ神に、ノアは思わず噴き出した。
いや、なんなの、そのブラック企業も真っ青な、労働基準法をブッチギリで違反した給与設定! しかも、そんな時給でコミケの締切に間に合わせるべく徹夜で労働させる気満々とか、開いた口が塞がらない。
もう、色々と相手にするだけ面倒だったので、ノアは早々に目の前のガチホモ邪神を始末することにした。が、自分に殺意を向けられても何ら意に介さず、ウホ神は自ら執筆した魔導書を取り出して。
「さあ、今から貴様に、我がとっておきの面接官を送ってやろう! 出でよ! ヤオ=異本に封じられし眷族よ!」
宙に浮かぶ魔導書のページがめくられ、その中から飛び出して来たのは、妙に爽やかなスマイルを湛えた人面イカの霊。もっとも、その姿があまりにキモ過ぎるため、甘いマスクも完全に逆効果にしかなっていない。
「ん? なんか食えそうな『イカ』が出てきたなぁ……」
だが、そんな気色悪いイカを前にして、なんとノアは妙な食欲を覚えていた。
もしや、色々と斜め上な存在を見過ぎたせいで、精神がブッ飛んでしまったのか!? あのイカを見て食欲が湧くとか、それはそれで凄まじいマニアックぶりだぞ!
「やあ、お嬢さん。君が新しいアシスタント候補だね」
無駄のない俊敏な動きでノアの背後に回り込むと、人面イカは妙に丁寧な物腰で、男と男による禁断の愛を語り始める。それも、時に凄まじくマニアックで、時に凄まじくアブノーマルな、誰が聞いても赤面物な内容を!
「……ふ~ん、で? てか、背後に立つとは……食われたいの?」
だが、羞恥に体勢を持つノアには全く効かず、反対に触手にナイフを突き立てられ、そのまま切断されてしまった。
「ふふふ……そうか、それが君の愛情表現なんだね。いやぁ、なかなか過激だなぁ」
触手の先を切断されたイカが何か言っていたが、徹底的に無視である。もう、これ以上の空腹には耐えられないとばかりに、切断した触手を口に含んだノアだったが……なんというか、食べられるには食べられたものの、何の味もしなかった。
「……まっず。なにこれ、味がするしない以前に、食べてもお腹いっぱいにならないんだけど」
まあ、そりゃそうである。イカはイカでも、相手は霊体。本物の肉体を持っているわけではないので、味もしなけりゃ腹も満たされないのは当然だ。
「なんか、もう色々と馬鹿馬鹿しくなってきたね。さっさと片付けて、お寿司でも食べに行こう」
戯れの時間は、これで終わりだ。獲物を狩る目から、ただ相手を殺すためだけの目へと変わり、ノアは一瞬にして間合いを詰めると、邪神の身体を斬り付けた。
「ほぅ……我の反応速度を越えるとは、なかなかやるではないか。貴様なら、優秀なアシスタントになれたはずなのだが……実に惜しいな」
身体を切り裂かれながらも、ウホ神は未だ余裕の笑みを浮かべていた。ここから先が本番だと言わんばかりに、彼は左腕を触手化させながら、次なる獲物を狙っていた。
成功
🔵🔵🔴
神羅・アマミ
え…?す、すまぬ、何て言ってた?
妾、おうちかえってすぐにでもお風呂入りたいんじゃけど…。
それとも、コミケだかなんだか知らんが、女装オッサンやリアルに腐った女子と戦わせられた怒りを、素直に貴様にぶつけて良いということなのか?
とは言え、物理的な意味でも搦め手揃いで厄介な相手なのもまた確か。
ここはメカニカルスパイダー形態へと転じ、直接攻撃を通すよりも敢えてコード『出禁』で牽制する。
本人をアームや蜘蛛糸で拘束しビリビリ電撃を放てば「これはこれで気持ちいい!」とか新たな性癖に目覚める可能性もあるし、万一召喚霊に阻まれたとしても「これは次のネタになるぞ!」と食いつくやもしれぬ。
やってみる価値はありますぜ!
●新作のタイトルが決定したぞ!
あらゆる雄を守備範囲とし、冒涜的な内容を書いた魔導書のネタにせんとする男色邪神。その、あまりに節操のない行動にドン引きなのは、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)も同じだった。
「え……? す、すまぬ、何て言ってた? 妾、おうちかえってすぐにでもお風呂入りたいんじゃけど……」
全身から漂う腐った汁の臭い。これが身体や髪の毛に染みつく前に帰りたいアマミだったが、それを許すウホ神ではない。
「ほぅ、貴様もアシスタント志望か。今度の夏コミに新刊を出すには、まだまだ人が足りんからな。志さえあれば、雇ってやっても構わないぞ」
いや、何をどう考えれば、そんな展開になるんだよ。思わず突っ込みたくなったが、そもそもこいつら、見た目や思考はアレだが腐ってもUDCアースの邪神。もともと、人間とは思考回路が全く異なる、意思疎通不可能な存在なのだから、仕方ないですね。
「この妾に向かって、言うに事欠いてアシスタントじゃと? コミケだかなんだか知らんが、女装オッサンやリアルに腐った女子と戦わせられた怒りを、素直に貴様にぶつけて良いということなのか?」
あまりに斜め上な展開へ強引に持って行こうとするウホ神に、アマミも怒りを隠し切れない。しかし、そんなアマミの気持ちなど関係ないとばかりに、ウホ神は新たな魔導書を開き。
「さあ、貴様への面接官は、こいつらだ! 出でよ! アン・ナ・コト写本に封じられし眷族よ!」
詠唱と共に、魔導書から二つの影が飛び出して来る。果たして、どんな眷族が現れるのかと身構えるアマミだったが……目の前に出現した存在を見た瞬間、しばし唖然として立ち尽くす他になかった。
「うふふ……ようやく、アタシ達の出番ってわけねぇ~ん♪」
「ハーッハッハッハァッ! あまりに待たされて、色々と滾って来てしまったぞ!」
現れたのは、筋肉質でスキンヘッドなオネェと、筋骨隆々のガチムチ兄貴マン。しかも、どちらもブーメランパンツ一丁という、なんとも節操のない格好だ。
こいつらも、あの魔導書から出て来たということは……できれば、魔導書の中に記されていることは、考えない方がよさそうだった。
「アナタが、アタシ達の相手かしらぁん? 女の子だからって、容赦しないわよぉん♪」
「二人の愛は無敵なり! 我等の筋肉プレイを受けてみろぉぉぉっ!!」
正面から突っ込んで来る、二体の変態……もとい、邪神の眷族達。だが、ここで怯むわけにはいかない。こんな連中でも、一応はユーベルコードによって呼び出された存在のため、油断していると敗北も在り得る。
「こんな連中に好き放題されたら、末代までの恥じゃな。ならば……」
あまり関わり合いになりたくなかったが、それでもアマミも覚悟を決めた。触りたくないのは変わらなかったが、それならば直接触れなければ良い。
「この赫々たる三重奏、果たして貴様に躱しきれるかな!? 虚無の安寧が訪れるまでの刹那、己の罪過を省みるがよい! 死ねーッッ!!」
巨大な機械蜘蛛のような姿に変身し、アマミはロボットアームや蜘蛛糸、そして麻痺電撃を発射した。それらは全てウホ神を狙って放たれていたのだが……しかし、二体の眷族が、アマミの攻撃の行く手を阻む!
「ふんっ! 我等の主を……」
「やらせはしないわぁん♪」
その身を以て、ウホ神を守らんと肉壁になる変態が二人。だが、いかに強力な存在とはいえ、ユーベルコードの直撃を食らっては無事では済まず。
「ぬぅっ!? こ、これは……なんと強烈な縛りプレイ……」
「いやぁん♪ ハートまでビリビリ痺れちゃぅぅぅん♪」
蜘蛛糸で縛られるガチムチ男と、電撃で痺れる筋肉オネェ。もっとも、ガチムチ男は何故か股間を強調したポーズを取り、オネェに至っては野太い声を発しながら身体をくねらせて悶えるので、気持ち悪い事この上ない。
「えぇい、気色悪い連中め! ならば、これでどうじゃぁっ!」
これ以上は目が腐りそうだったので、アマミは悶絶している変態どもをロボットアームで掴み取ると、そのままウホ神目掛けて投げ付けた。
「ぬぉっ!? し、しまった!!」
攻撃を食らったことで、ウホ神の術も解除され、ガチムチ兄貴マンと筋肉オネェの肉体が消滅して行く。その隙に、アマミはアームをウホ神に向けると、そのまま捕縛し最大出力の電撃をお見舞いした。
「おぉぉぉぉうっ! こ、これはぁぁぁぁっ!!」
これだけ食らわせれば、完全に技を封じられずとも、大きなダメージを与えることができるはず。勝利を確信したアマミだったが、しかしそこへ飛び込んで来たのは、もはや消滅間近で息も絶え絶えな二人の変態!
「ぬぅ……ウホ様を……やらせはしない!」
「あぁ、ずるいわ! ダーリンにだけ、いい恰好はさせないんだからぁん♪」
消滅寸前の肉体で、ウホ神の代わりに攻撃を受け続ける眷族ども。それを見たウホ神が、慌てて二人を止めるが、もう遅い。
「もう止めろ、お前達! 強烈な電撃によるオーバキルで、消滅するまでもなく肉体が吹っ飛ぶだけだぞ! もういい……もういいんだ!!」
さすがに、目の前で眷族がグチャグチャの肉塊になるのは望まなかったのか、ウホ神も懸命に二人を止める。だが、彼らの抵抗も虚しく、ウホ神がダメージを受けたことで、二人の変態は完全に消滅してしまい。
「ふふふ……どうじゃ? これはこれで、次のネタになるかもしれんのぉ」
完全消滅した眷族どもを横目に、アマミがウホ神にドヤ顔で告げる。最初は電撃に耐えるだけで精一杯だったウホ神だったが……しかし、次のネタと聞いて、思わず両目を輝かせた。
「つ、次のネタ……だと?」
「そうじゃ。夏コミとやらの締切が、駄目になるかどうかの瀬戸際なんじゃろう? やってみる価値はありますぜ!」
そのためには、自分が実験台になってみるのも一興だろう。そういうわけで、ロボットアームで拘束された上で、高圧電流を食らってみろと。
「ぬがぁぁぁぁっ! は……ははははっ! 見える、見えるぞ! 私に、新たな愛の世界が見えるぅぅぅっ!」
全身を痙攣させながら、ウホ神は完全に焦点の合わない瞳で、口から泡を吐きながら何かを叫んでいた。が、それでも頭部以外の肉体を触手に変えて強引に耐えると、触手の先から滴り落ちる粘液で、懸命に何かをネタ帳に書き込み始めた。
「ふ……ふふふ……これだ! これだぁっ! 決まったぞ! 次の夏コミのタイトルは『探検! まじかる☆ダンディのエロトラップダンジョン』に変更だぁっ!!」
電撃による大ダメージを受けながらも、ウホ神はその最中、新たな禁書のネタに覚醒し、危機とした表情でメモを取り続けた。アマネの攻撃によって肉体の一部が黒焦げになろうとも、ネタ帳だけはしっかり魔法で保護しつつ、最後まで狂った笑いを浮かべながら、電撃の狭間に見たアブナイ世界のことを記し続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
斉賀・悠
※引き続き魔法少年姿で
「…職員さんに人の少ない銭湯の場所を聞いて、寄ってから帰らなきゃ…母さんと信に迷惑かけちゃう…」(めそめそ
…え、ボス? …うん…がんばる………
「アシスタント?」
アレに何かを書かせてたの?
臭いとか…大丈夫だったのかな…?(問題はそこじゃない)
【POW】
「………なに あれ…」
言葉にできない気持ち悪さに顔をしかめて
「……!」
オブリビオンの反応に身を竦めたら、UC:スーパージャスティス で捕まえられない様に高速で逃げ回りながら、UC:雷の矢 を発動して不可視の矢を飛ばして、【高速詠唱】と【全力魔法】で威力を更に上げながら攻撃します!
「捕まって…たまるかぁぁぁぁぁ
!!!!!」
●イカれた世界へようこそ♪
全身を感電させながら、それでも必死にネタ帳を死守し、不敵な笑みを浮かべるウホ・サセロ。
身体からは煙が上がっていたが、この程度であれば問題ない。そんなことよりも、新刊が大事。夏コミにて自らの作成した薄い本を販売することの方が、彼にとっては大事だった。
「ふっふっふ……これで、新たなネタは手に入れた。だが、まだだ! これだけでは、まだ完璧な魔導書の作成には程遠い!」
あらゆる思考の人間に、等しく変態世界を届けるために! ある意味では、どんな邪神よりも危険な思想を叫ぶウホ神の横では、なにやら斉賀・悠(魔法少年 エクレール・f17889)が早くも泣きそうな顔になっていた。
「……職員さんに人の少ない銭湯の場所を聞いて、寄ってから帰らなきゃ……。母さんと信に迷惑かけちゃう……」
全身に付着した刺激臭。全ては、あの腐った少女達が悪いのだ。そして、今の自分がこんな目に遭っている元凶は、他でもない目の前で笑っている狂った神だ。
「おや? どうやら、まだ猟兵がいたようだな。我のアシスタントを倒してくれた代償、貴様にも払ってもらおうか?」
「アシスタント? アレに何かを書かせてたの?」
ウホ神の言葉に、思わず悠は首を傾げた。
あんな腐敗した少女達を狭い部屋に押し込んで徹夜させたら、部屋に臭いが籠って凄まじいことになるのではないか。ふと、そんな不安が悠の頭を過ったが、大切なのは、そこではない。
「さあ、貴様にも我の真の姿を見せてやろう! そして、体感するがよい! この世界における、最高で最強のエクスタシーを!!」
そう言うが早いか、ウホ神は全身を触手の塊に変身させると、悠目掛けて一気に襲い掛かって来た。
「………なに あれ…」
思わず言葉に詰まる悠だったが、次の瞬間には身体が自然に反応していた。
こいつはヤバい。そして、あの触手に捕まったが最後、自分には絶望的な未来しか残されていない。
「う、うわぁぁぁぁっ!」
迫り来る無数の触手を前にして、悠は一目散に逃げ出した。
冗談じゃない。こんな化け物、絶対に相手にしたくない。それでも戦えというのであれば、せめて相手の射程外から攻撃するしかない。
「捕まって……たまるかぁぁぁぁぁ
!!!!!」
全身全霊の力を込めて、悠はウホ神に雷の矢を叩き込んだ。それこそ、持てる全ての矢を叩き込み、盛大な爆発が起こるのもお構いなしに。
「はぁ……はぁ……」
これだけ攻撃を叩き込めば、敵も無事では済まないはず。しかし、そんな彼を嘲笑うようにして……いつの間にか、彼の背後には人面イカの霊が回り込んでいた。
「やあ、君もボクと一緒に……やらなイカ?」
「う、うひぃぃぃっ!」
イカの触手で頬を撫でられ、悠は思わず飛び退いた。
こいつはヤバい。こんな物に捕まったが最後、何をされるか分からない。
「ふふふ……どうした、少年? 我が眷属は、まだまだ呼び出すことが可能だぞ?」
そう、ウホ神が告げると同時に、その場に現れたのはガチムチ兄貴と筋肉質のスキンヘッドオネェ!
「ふんっ! ふんっ! ア~イム、スットゥロォォォング!!」
「あらぁん、カワイイ子ねぇん♪ お姉さんが、食べちゃおうかしらぁん?」
ドサクサに紛れ、とんでもないことを言い出す筋肉とオネェ。それを見た悠は、背筋に冷たいものを感じながら、一目散に上昇し。
「く、来るなぁぁぁっ!!」
全身全霊を込めた雷の矢の一斉射撃で、不気味な人面イカや謎のガチムチ軍団を、余すところなく吹き飛ばした。
成功
🔵🔵🔴
メルフローレ・カノン
こ、この状況は……
「汚物は消毒だー!」的な感じで臨めばいいでしょうか?
[属性武器]で得物に炎をを纏わせます。
これなら、触手やなんかに巻きつかれても焼けますね。
では、[勇気]と[呪詛耐性]をもって、
全力で行きますよ!
というわけで、私の得物はメインがメイス、サブが剣で、
イカや触手は切り裂き、変態は殴り倒すと使い分けます。
[怪力][力溜め]の上で、[2回攻撃][傷口をえぐる]で攻撃です。
また、イロイロ召喚してくるようなので[なぎ払い][気絶攻撃]で
蹴散らすことで対抗します。
また、遠距離から【神の見えざる手】で
念動力により触手を引き裂きましょう。
「神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
●汚物は撲殺だ!
「こ、この状況は……『汚物は消毒だー!』的な感じで臨めばいいでしょうか?」
変態魔法少女に腐った少女。それらの別の意味で強敵な連中を倒した先に現れた存在を前にして、メルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)は我が目を疑った。
人面イカの霊が宙を舞い、ガチムチ兄貴マンとスキンヘッドの筋肉オネェが気色悪いポーズで絡み合っている。その中央でドヤ顔を決めながら魔導書……という名の薄い本を開いているイケメンは、何故か身体の半分が触手と化している。
いったい、これは何の冗談なのだろう。はっきりいって、カオス以外の何物でもない。まさかとは思うが、既にこの一帯は、邪神の力による汚染が完了してしまったとでも言うのだろか?
「ほぅ、また新たなアシスタント候補が現れたか。……いいだろう。貴様が我のアシスタントに相応しいか、まずは面接試験をしてやろう」
メルフローネの姿を見たウホ神が、なにやら勝手なことをほざいている。
冗談じゃない。こんな邪神に捕まった挙句、全身から腐臭を放つゾンビ少女に変えられては堪らない。
「断固、拒否します! さあ、全力で行きますよ!!」
自慢のメイスに炎を纏わせつつ、メルフローネは迫り来る人面イカどもをバッサバッサと斬り捨てて行く。さすがに、邪神本体ほどの力はないのか、普通に攻撃して倒せるのは幸いだったが。
「ハーッハッハッハァッ! ここから先へは、行かせぬぞぉ!」
「ウホ様と戦いたかったら、まずは私達を倒しみるがいいわ、小娘!」
立ちはだかったのは、ガチムチ兄貴マンと筋肉オネェ。その見た目からして、こいつらは人面イカなどよりも、数段強力な敵だろう。
「こ、こっちに来ないでください!」
互いに抱き合ったまま突っ込んで来るマッチョどものキモさに、メルフローレは思わずメイスを正面から叩きつけた。
戦略? そんなもの、いちいち考えてなどいられるか! そう、これは本能の成せる業! 絶体絶命の危機に、身体が自然に反応してしまったに他ならない!
「るぶわっ
……!!」
渾身の一撃で脳天をカチ割られ、まずはガチムチ兄貴マンが瓦礫の中に沈んだ。全身は余すところなくムキムキだったが、さすがに脳天までは鍛えられていなかったようだ。
「あぁ、なんてこと! 私のダーリンが……ゆ、許さないんだから!」
「…………」
残されたオネェが何か叫んでいたが、徹底的に無視である。白昼堂々、ガチホモとオカマによる筋肉同士の絡み合いなど、誰が見たいと思うものか!
「さっさと、魔導書の中に帰って下さい! 不潔です!」
「はべぇっ!?」
怒り狂うオネェを、メルフローネはメイスで横薙ぎに殴り飛ばした。哀れ、そのまま吹っ飛んで行ったオネェは隣の家のブロック塀に突き刺さり、そのまま力尽きで動かなくなった。
「ほぅ、なかなかやるではないか。それならば……貴様が我のアシスタントを務められるかどうか、直々にテストをしてやろう!」
眷族を倒されたウホ神が、ついにメルフローネへと直接迫る! イケメンの肉体は瞬く間にして崩壊し、紫色のおぞましい触手塊へと変化した。
「さあ、貴様も我の冒涜的なる愛を知り、そして腐った世界へと目覚めるがよい!!」
迫り来る無数の触手。炎を纏った剣で斬り捨てようとするメルフローネだったが、触手状態となったウホ神は、攻撃のダメージを軽減してしまう。
「フハハハッ! 効かぬ! 効かぬわぁっ!!」
斬撃も熱も、なんのその。普通の攻撃では、この姿になったウホ神に致命傷を与えることは難しい。
「くっ……う、迂闊でした……」
気が付けば、メルフローネは完全に触手によって捕まってしまい、このままではウホ神に好き放題されてしまう!
「安心しろ、娘。我は淑女の痴態には興味がない。だが……その代わり、貴様の脳みそを少しばかりいじくって、腐った妄想抜きには生活できない身体にしてやるがなぁっ!!」
いや、それって全然安心できないよ! というか、むしろ破廉恥な目に遭うよりも、考えようによってはもっと酷い事態ですよね!?
このままでは、貞操どころか精神が危ない。正に、キャラ崩壊への一歩手前! なんとか触手から抜け出さなければ、その先に待つのは邪神のアシスタントとして腐った少女にされる未来だけ!
「……神よ、その奇跡の御手を、暫しお貸しください……」
勇気を振るって平常心を保ちつつ、メルフローネは神に祈った。困った時の、神頼み? いや、違う。これは神に祈ることで、その力を不可視の存在として自由に操るユーベルコード。
「む……な、なんだ、これは!?」
突然、触手のコントロールが効かなくなり、今度はウホ神が慌てる番だった。
両手が使えないのであれば、新たな両手を呼び出せばよい。それも、今までになく強力で、凄まじいパワーを持った不可視の腕を。
「ぐぁっ! な、なんという力だ!!」
強引にメルフローネを引き剥がされ、ウホ神の触手が弾け跳んだ。いかに強化された真の姿とはいえ、ユーベルコードの直撃を受けては一溜まりもなく。
「いいかげん、骸の海に帰って下さい。……潰しますよ?」
見えない手で触手を丸め、握り潰し、果てはズタズタに引き裂いて行く。最後は団子のようになった触手の塊を、強烈な平手の一撃で押し潰れて。
「……うぎゅっ!?」
なにやら気色悪い汁を撒き散らしながら、原初の触手神ウホ・サセロは、ぐちゃぐちゃに潰れて弾け跳んだ。同時に、彼の操っていた魔導書も瓦礫の上に落下して、再び浮かび上がる気配も見せなかった。
●変態の残したもの
「終わりましたか……。それにしても、凄まじい敵でした……」
辛うじて傷を負うことなく勝利できたメルフローネだったが、しかし周囲を見回せば、そこは凄惨たる光景が広がっていた。
事件現場となった家屋は変態魔法少女騎士との戦いで完全に崩壊し、腐った女子どもの放った臭気が未だ周辺に漂っている。おまけに、謎の白濁液を思わせるエクトプラズムと化した人面イカの残滓が様々なところに付着し、挙句の果てには色々と禁断な愛の描かれた魔導書が、二冊も転がっている始末である。
正直、事件は解決できたものの、色々と残されたものが酷過ぎた。そして、それは周辺区域だけでなく、実際に戦った猟兵達も同じだった。
変態に追われたおぞましい記憶や、触手に狙われた忘れたい記憶。果ては、未だに残る名伏し難き缶詰の汁の臭気など、もはやこの戦場に存在する全てが黒歴史!
遠くの方で、カラスが鳴いている声がする。見れば、日は既に傾いて、西の空が赤く染まっている。
「帰ろう……」
「ああ、そうだな……」
誰ともなく、そんなことを呟いたところで、猟兵達は吹っ飛んだ家屋の残骸を背にん歩き出す。
全員、げっそりとやつれていた。中には完全に目が死んでおり、半ばゾンビ状態になっている者もいた。
こんな邪神とは、もう二度と戦いたくなどない。願わくは、再び彼らがこの世界に召喚されぬことを祈りながら、猟兵達は変態軍団との戦場を後にした。
大成功
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