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残酷ジェノサイド・サイド(作者 甘党
18


「また飛び降りだって?」
 おかしい。こんなのおかしい。

「今月に入ってもう九人目だよ」
「ふうん、まぁ仕方ないよな、そういうこともあるって」
 クラスメートはいつもどおり談笑している。

 友達だったはずだった。親友だったはずだった。
 背中を預けられる相手だった。
 もしあいつがなにか失敗した、俺は絶対に助けるだろうし。
 俺が何か困ってたら、あいつは絶対助けてくれる。
 そう信じてた。

「おい、どうしたんだよ」
 だけど、違う。
 今俺の目の前にいるこいつは――――違う。

「最近、変だぞ? ×××××」
 姿形は似てるけど、絶対に俺の友達じゃない。
 だってお前は。

「仕方ないな――――今度、良い所に連れて行ってやろうか」
 そんな風に、笑ったりしなかった。

 ●

「学校生活って楽しい?」
 グリモア猟兵、煌希・舞楽(ヴィクトリカチャイルド・f08029)は、自身が召喚した猟兵達にそう問いかけた。

「マイラは学校に行ったことないけど、同年代の子供達が集まって、勉強とか遊んだりするのよね? 興味があるの」
 けれど、そんな興味は主題ではなく。
 グリモアベースにいるからには、何かが起こるということだ。

「事件が起こる場所はUDCアースね。北海道、私立『秋縁学園(シュウエンガクエン)』、周囲は自然が豊かで住宅とかは無いの。中高一貫、共学、全寮制。生徒が帰省するのはお盆と年末年始だけ……っていう、生贄を大規模に調達する事も、内密に儀式を行う事にも適した環境なの」
 以前も、鎌倉にあった似たような環境の学園で、同じ様な事件が起きていた。
 恐らく、邪神の手先はそういった場所を狙って儀式場にしているのだろう、と舞楽は補足した。

「この学園で、邪神の復活儀式が進行しているの、見過ごせないの、阻止してほしいの、おーけー?」
 おーけーね、と確認を取ってから、舞楽は話を続けた。

「今、学園の中にいるのはほとんどが邪神の偽物なの。っていうのも、復活儀式を行っているオブリビオンは――相手の“偽物”を作る力を持っているのね」
 邪神の手先は、生徒を拉致した後、代わりに本物そっくりな偽物を学園の中に配置する。
 そうすることで、表向きは学園生活に変化はなく、外部に気取られる事無く儀式を進行できる、というわけだ。
 既にほとんどの生徒は“入れ替え”られており、残っている普通の生徒はほんの僅かだろう。
 実際、この段階になるまで、儀式の兆候が予知に引っかかることはなかった。

「だけど、拉致された生徒達も、まだどこかで生きているはずなの。儀式では、生贄を一斉に捧げないといけないから。逆に、一度始まってしまったら、誰も助けられないの。……マイラの予知だと、手を打たなければ、今から二十四時間後には、学園の全生徒――五百人ぐらいが、儀式の為の生贄にされてしまうの」
 五百人。
 学園に存在する、全ての人間。
 とんでもない規模の虐殺。万が一、それだけの生贄が捧げられれば――まず間違いなく、強力な邪神が顕現するだろう。

「皆に最初にしてほしいのは、大きく分けて二つ、まだ成り代わられていない“無事な生徒”の救出」
 邪神の偽物は彼らは通常の生徒達と同じ様に振る舞うため、一目見ただけでは区別がつかない。
 ユーベルコードや、それに類する手段を使い、どうにかして判別する必要がある。

「次に、“成り代わられた生徒”の救出」
 拉致された生徒は、学園のどこかに監禁されている可能性が高い。
 彼らを探し出し、助け出す必要がある。
 また、本物を見つければ、必然的に偽物が誰であるかわかる為、無事な生徒を助ける手がかりになるかも知れない。

「ただ、どっちを選ぶにしても、大規模に猟兵が動いてる、ってバレたら、向こうが何をするかわからないの。基本的に、そーっと助けてあげてほしいの」
 派手な音を立てたり、変わった行動が邪神の手先の眼に止まれば、

「UDCの協力もあるから、学園に潜入するのは簡単なの、転校生としてでも、教師としてでも中に入れるし、隠密行動に自信があるならそーっと入っちゃってもいいの。やり方は任せるの」
 でもバレないようにね、と舞楽は念を押した。

「計算では、全体の五分の一……百人ぐらい助けられたら、生贄が足りなくなるの。だからある程度救助が進んだら、向こうはなんとしてでも成功させようとして、強引に儀式を行おうとするはず。学園の裏で動いていた邪神の手先が姿を現すはずだから、囲んでぼっこぼこにしてやるの!」
 ただし、相手の能力は“偽物”を作ること。
 恐らく、追い込まれた邪神の手先は、猟兵達にも同じ能力を使ってくるだろう。
 すなわち。

「――――戦う事になるのは、あなた達自身の鏡像なの。自分の偽物を倒せば、邪神の手先にもダメージが行くはず。皆が自分に打ち勝てば、能力を使った本体を倒すことが出来るの」
 説明は以上、という言葉と共に、地面をとんと杖の石突で叩くと、尖端にはめ込まれた、花のグリモアが輝き出す。

「……皆、どうか助けてあげて。虐殺を止めて。誰も死なせないでほしいの」
 ペコリと頭を下げて、舞楽は猟兵達を送り出した。





第3章 ボス戦 『ユァミー』

POW ●かつてわたしだったひとたち
【自分が成り代わって消滅させた人達】の霊を召喚する。これは【忘れ去られてしまった嘆きの声】や【忘れ去られてしまった嘆きの声】で攻撃する能力を持つ。
SPD ●あなたたちにはもうあきちゃった
戦闘力のない【自分が成り代わって消滅させた人達の霊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【鏡を通じて邪神に喰わせる事】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ ●つぎはあなたになりたいな
対象の攻撃を軽減する【鏡に映した相手の姿】に変身しつつ、【相手の存在を邪神に喰わせ抹消する事】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔴🔴

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミコトメモリ・メイクメモリアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


◆プレイング受付期間
4/22(水) 13:00から
4/30(木) 8:30 まで

導入は個々人で違いますので2章のリプレイを、
vsユァミーに関しては、ボスのデータをそれぞれ参考にしてください。

執筆は受付期間終了後に行うので、プレイングは一度お返しします。

受付期間中ならプレイングの内容変更は可能です。

内容上、三章からの参加はできません、ご了承ください。
フェルト・フィルファーデン

爺やを困らせない
婆やを悲しませない
騎士だって守れるわたしになる
民の希望となって
何一つ亡くしたりしない
わたしが望んだ理想のワタシ


……そうね。ええ、アナタの言葉、全て肯定するわ。

わたしは無力よ。何一つ救えず、何一つ取り戻せない。

全てはもう、終わったのよ。


――アナタはいいわよね。わたしの亡くした全てを手にして。

まさに完璧な理想郷!……わたしの“知らない”アナタの国よ。

そう、アナタは現実からかけ離れすぎた。もうアナタは、わたしではない。

虚構諸共消えなさい。……言ったでしょう?わたしの国は、滅びたの。





残るのは叶わぬ願いと
数えきれない未練だけ
もしも本当に、こんな世界があるのなら
理想のワタシよ、幸せにね。


///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三
【 PART 1 】
      ▽ Princess couldn't even be a doll. ▽
             《  フェルト・フィルファーデン  》
///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三

 自信をたっぷり蓄えた表情は、己の覇道に疑問を抱いたことのないものだけに許された特権に違いない。
 だって、彼女は正しいのだから、そうなるのは当然だ。

 きっと彼女は爺やを困らせないだろう。
 きっと彼女は婆やを悲しませないだろう。
 騎士達は最後に彼女を頼るだろう。
 民は彼女がいてくれることに希望と期待を抱くだろう。
 何もかも失わず、何もかも喪わず、何もかも亡くさなかったのだろう。

『……どうして?』
 即ち、紛れもなく、それは理想の体現であり。

『どうしてあなたは、まだ生きていられるの?』
 理想とは、どこまでも現実と相反する存在なのだ。

『わからないわ、私にはわからない』
 妖精の姫は、眼前に立つ、理想に至れなかった己を見て嘆く。

 ――――国という支えを失い。
 ――――民という宝を失い。
 ――――何もかも守れなかったお姫様は。
 ――――どうして自刃を選ばなかったのか。

『恥ずかしくはないの? 情けなくはないの? 責務を果たせなかった己が生きている事を、どうして許せるの?』

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

「あは」
 憎悪でも、悔恨でも、憤怒でもなく。
 フェルト・フィルファーデン(糸遣いの煌燿戦姫・f01031)の口の端からこぼれたのは、小さな笑みだった。

『…………何がおかしいの?』
「アナタは正しいな、と思ったのよ」
 それは、すぐにくすくすと継続した笑みになる。
 嫌味でも演技でもなく、自然にこぼれ出たものだった。面白くて仕方がなかった。
 目の前の、“理想の虚構”が。

恥ずかしいわ。情けないわ。後悔しない日など無いわ」
 ――――滑稽に見えて、仕方なかった。

「…………自分を許したことなんて、一度だって無いわ」
『なら、なぜ自分を裁こうとしないの?』








「――――――だって、私は世界を救うんだもの」



『………………え?』
 理想の己は、おかしなものを見るような目でフェルトを見た。
 国を救えなかったモノが、一体何をのたまうのかと。

 ぱちりと、指を鳴らす。横一列に、人形の騎士達が並んだ。
 それは姫に付き従う騎士であり、今はもう生きていない者たちであり。
 それでもなお、姫の為に戦う従者達の姿だった。

「ええ、アナタの言葉、全て肯定するわ」
「なにも救えなかったわたし、何も守れなかったわたし」
「ええ、だから望んでいいわよね、“次こそは”って」
 指繰れば、剣が、杖が掲げられる。

「アナタの救った国を、誇ればいいわ。だけどわたしは、そんな国は知らない」
 だって。
 フェルトの知っている爺やは、お小言がうるさくて、口うるさくて。
 フェルトの知っている婆やは、心配性で、優しくて。
 フェルトの知っている騎士は、皆、頼もしく強くあって。
 フェルトの大好きだった全ては。
  、、、、、、、、、、、、、、       モ ノ
 フェルトがフェルトでなくては、存在し得ない人々だったから。

 完璧なお姫様が、完璧に振る舞い、完璧に守りきった世界は。

「アナタとわたしのあり方は、かけ離れすぎた。もうアナタは、わたしではない」
 ――――フェルトの想像も及ばない、未知だった。
 だから、比べられたってわからない。比較のしようがない。
 ただ、今のフェルトのあり方を否定する、異なる己と対峙する以外。
 できることなど、あるはずもない。

『次? 笑わせないで。アナタに次なんてない。誰もアナタを許さない。役割を果たせなかった王族を、誰が認めるというの!』
「認めてくれたのよ」
 叫ぶように放たれた否定は、きっと理想のフェルトが己に課してきた枷そのものだ。
 役割を果たせなければ。
 守れなければ。
 救えなければ。
 自らの存在を保てない、薄氷のような存在。

「わたしより年下なのに、わたしを救ってくれるって、言ってくれた子がいたの」
 きっと、その言葉だけで十分だった。
 差し伸べられた手があったという、それだけの事実で。
 フェルト・フィルファーデンは、もうとっくに、救われたのだ。

 死に損なった己が、もう二度と死を選ばなくて良いように。
 フェルトを救うと言ってくれた、親愛なる騎士が、笑って帰れるように。
 世界のすべての悲劇を救って、笑顔に変えるのだ。

 今度こそ。
 失わないために――――フェルトはとっくに立ち上がっているのだから。

「虚構諸共消えなさい。……言ったでしょう? わたしの国は、滅びたの」
 それを受け入れて、もはやお姫様ですら無い少女は、手をかざした。

『――――――ありえない!』
 光の剣と、槍がぶつかり合って、空間がひび割れる。
 虚構ごと、世界を切り伏せる。
 真に勝る虚は無く。
 理想という虚構を、断絶する一撃が。


              、、、、、、、
『だって、だってそんなの! 死ぬより苦しいはずじゃない――――――!』



 その言葉を最後に。
 理想の自分の姿が消えていく。
 ああ、どこまでも彼女は、完璧だ。
 自らが見たくなかったであろう、出来損ないの自分が選んだ道が。
 どれほど辛いのかを理解して、否定しようとしたのだから。
 彼女は、名君だったのだろう。
 誰からも愛される、真の統治者になれたのだろう。
 ただそれは、フェルトではなかった。
 それだけの話で、それでおしまいだ。

「――――もしも、本当にそんな世界があったなら」
 理想のワタシよ、幸せにね。
成功 🔵🔵🔴

六六六・たかし


俺の視界に俺がいるっていうのは何度見ても気分が悪い
俺はたかしでデビルズナンバーたかしは俺1人なのだからな

俺自身をコピーし全てを真似したつもりだろう。
同じ能力なら殺戮衝動に満ち溢れた自分が勝つだろう。
そう思っていることは雰囲気から明らかだ、猿でもわかる

だがその思考はまるきり無意味だ、なぜなら俺は1人じゃないんだからな
デビルスロットドライバー起動──

──── 大……転……身……!!!!!

1+1+1+1=4だとでも思ったか
覚えておけ!俺は1じゃない!666のたかしだ!!

消えろ偽物!スーパーデビルたかしストラッシュ!!!!!


///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三
【 PART 2 】
      ▽ 確かにたかしの物語 ▽
               《  六六六・たかし  》
///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三///三

 デビルズナンバー。
 それぞれ、零零壱から六六六までの“ナンバー”を有する、殺人オブジェクト群の総称だ。
 ナンバーの数字が高ければ高いほど、より強く、位階が高い傾向にある。
 つまり、六六六・たかしという存在は、デビルズナンバーというくくりにおいては“最弱”であるはずだ。
 しかして、その性質は――――――。

「ちっ!」
『――――――』
 たかしと“鏡像のたかし”が切り結ぶ。
 それぞれ手にした“たかしブレード”同士の威力はほぼ互角。
 ならば優劣を決定するのは――――。

「『デビルメダルチェンジ!』」
 同時に叫び、手をかざす。手の内に出現するメダルの数字は“六零零”、即ち。

「『モード:ざしきわらし!』」
 デビルスロットドライバーがその数字を読み取って、変化が始まる。
 瞬き一回分の時間を経て、蒼の鎧武者に転じた二人が、即座に青いオーラを纏う刃をぶつけ合った。

「く――――――」
(たかし! 正面からは不利だよ!)
 同一化したことにより、頭に響くざしきわらしの声。
 その警告を証明するかのように、鍔迫合う刃越しに、徐々に体を押され始める。

『お前が俺に勝てることは、ない』
 同じ姿をしながら、膂力で勝ることを証明しながら、“鏡像のたかし”は無表情に告げる。

『お前の使役するデビルズナンバーは、自己の役割を放棄した“失敗作”に過ぎない。殺人オブジェクトとしての役割を果たせない不良品だ』
(っ)
 言い返す前に、息を呑んだのは、ざしきわらしの方だった。

『俺が支配する“これ”は違う。殺すために最適化された、殺すためのオブジェクトだ。だからお前は俺に勝てない』
          た か し
 なぜなら、俺は“殺人オブジェクト”だからだ。

  デビルタカシストラッシュ
 《六六六悪魔の斬撃》

 一閃が振り抜かれて、鎧が砕け散る。
 吹き飛び、転がれば、口の中に血がにじむ味がする。
 ぺ、と吐き出して起き上がる頃には、カチン、と音を立ててメダルがベルトから排出され、転がった。
 
「ち…………!」
『見せてやろう。“殺人オブジェクト”として完成された俺の力を』
(――――――たかし! 気をつけて!)
 消耗し、苦しそうな声を滲ませるざしきわらしの警告。
 その合間を縫うように、“鏡像のたかし”はメダルを取り出し、己のドライバーにセットした。

『間違えろ――――視界錯乱、“さくし”』
 “鏡像のたかし”のかけた眼鏡が鈍く光る。その輝きを目にした瞬間、相手の姿が突如として四人へと分裂した。

「幻を見せる能力――――ならばまなざし!」
『イエス、マスター!』
 瞬時にその性質を判断したたかしの指示によって、己の眼鏡――“まなざし”のメダルを装填。
 変身すると同時に、“まなざし”の機能を拡張したゴーグルが偽りの“錯視”を看破し、本物を暴き出す。

『次だ。飾れ――――呪髪装飾、“かんざし”』
 “鏡像のたかし”は、続けて取り出したメダルを装填。短いはずの毛髪が恐ろしい速度で伸び始め、意思を持った生物のように襲いかかる。

「かかし、メダルチェンジ!」
(たかし、気をつけるべ!)
 その髪の毛が体中にまとわりつく寸前で、変身が文字通り、間一髪完了した。

(ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!)
 体を締め付け、引き裂こうとすると髪の毛を、“かかし”の膂力でもって力づくで引き剥がし、そのまま掴んで手繰り寄せる。

「このままこっちに――――――」
『穿け―――一貫通一閃、“くしざし”』
 そのベクトルに合わせて、“鏡像のたかし”はあえてたかしに向かって跳躍した。
 かかしが引っ張った勢いと己の脚力、二つの加速を乗せて右手を突き出せば、尖った槍状の武装が腕に纏い、文字通り“串刺し”にしようと迫ってくる。

「――――“おみとおし”だ!」
 槍が顔面を貫く直前に、たかしの背後から二枚のチャクラム――“鳥避け”が、空に複雑な軌道を描きながら、“鏡像のたかし”へと襲いかった。
 “かかしフォーム”の膂力で槍を受け止め、なんとか停止させた頃には、“鏡像のたかし”もまた大きく飛び退いて、お互いの位置関係がもとに戻る。

『ならこれはどうだ? 返れ――――天地反転、“どんでんがえし”』
 ぐるり、と視界が反転した。いや、反転したのは自分の体そのものだ。
 重力が狂い、周辺の空間に存在する上下という概念が入れ替わる。

「次から次へと――――――」
『それが“俺(たかし)”だ。お前とは違う。支配している数が違う。たった三つのオブジェクトしか有していないお前とは』
 “天井に向かって落下する”たかし。
 己一人だけ、地に足をつける“鏡像のたかし”は、更にもう一枚のメダルを取り出した。

『終わりだ、欠陥品。圧縮圧殺――――“おしつぶし”』
 重力に従って落下し、“激突”する前のタイミング。
 即ち、宙に放り出されて身動きの出来ないタイミングで、床と天井が同時に凄まじい速度でせり出して。

「きさ――――――」
 間にあるモノを“押し潰し”た。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

 ぐしゃり、という音はなかなかどうして悪くない。
 殺めた、という感覚を自覚するのは良いことだ。殺人オブジェクトとしての自己認識を確立できる。
 欠陥品がなくなり、“たかし”という存在は一人になった。
 ならば、ここにいる俺こそが真のたかしであり。
 これから世界という世界に存在する数多の人間を殺人する、最悪のオブジェクトの完成を意味する。






「――――――ご自慢の大道芸は、それで終わりか」
 はずだった。


 振り返る。そこには“たかし”が居た。
 頭から血を流し、腕は折れているように見える。
 まったくもって完全ではない、不完全なる存在。
 だが生きている。存在している。立っている。

『……何故生きている』
「愚問だな」
 勝ち誇るべきは己の方であるはずなのに。
 傷だらけの欠陥品は、堂々と言い放った。

「なぜなら、俺はたかしだからだ」
『――――たかしは、俺だ!』
 じゃらじゃらじゃら、と。
 無数のメダルが展開し、次々にドライバーへ装填されていく。

『お前が生きていられるはずがない、完成品は俺だ、なぜなら、俺がたかしだからだ!』
 “きりかえし”、“おんがえし”、“いくじなし”、“あんらくし”、“いたんし”、“いちばんぼし”
 “うでっぷし”、“さとうがし”、“さるまわし”、“でなおし”、“とうぎゅうし”、“まんざいし”、“しんぶんし”――――――。

「それがお前の、過ちだ」
 それら全てのメダルが。

「――――止まれ」
 その言葉を以て、一斉に力を失って、落下し、砕け散っていった。

『な――――――』
「ふん、果たして実在するデビルズナンバーなのか、それとも出来損ないの未登録ナンバーか。そんなことはどうでもいい」
 あの男は、敗者のはずだ。
 であるのに、何故“俺”は一歩下がった。
 理解できないまま、距離が詰められていく。気がつけば、もう、眼前に“たかし”が居た。

「お前は、履き違えた」
『なんだと?』
「お前は完璧なデビルズナンバーなのだろう。殺人オブジェクトとして完成した」
『その通りだ、故に――――』
     、、、
「だから失敗作なんだ」
『――――――』

 デビルズナンバーたかしは、たった一人、“デビルズナンバーを支配し、操る能力を持ったデビルズナンバー”だ。
 何故そうなったのかはわからない。誰が設計したのかもわからない。
 ただ唯一確かなのは、最高にして最下位のナンバーを持つ彼こそが、異端にして例外であるという事実。
                    、、、、、、
 “殺人オブジェクト”として、完成してはいけなかった。

「デビルズナンバーとしては完璧であっても、“俺(たかし)”としては未完成だ、それがお前が敗北する理由にほかならない」
『――――――ほざけ!』
 再び“ざしきわらし”のメダルを装填し、蒼き鎧武者となって、両断する。
 そのはずだったのに、刃は、もはやたかしを傷つけることはなかった。
 頭部にふれるその直前で、ピタリと止まって、動かない。
 体が、動かない。

『何故、俺の体が、動かない――――――!?』
「そんなことは、決まっている」
 こともなげに、無表情のまま、しかし得意げに。



「“俺(たかし)”が“お前(たかし)”を支配することなど――造作もない。なぜなら、俺“が”たかしだからだ」



 そう言い放ち、宣言した。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

「デビルスロットドライバー起動!」
(たかし! 無茶して!)
(すまねえ、不覚をとったべ!)
(ですが、もう大丈夫ですわ、参りましょう!)
 三つのメダル、三人の仲間。
 それら全てを、同時にドライバーに装填、起動する。

『な――――――――』
「俺達を足し算で数えようとした、それがそもそも間違いだ。たった三つ? 1+1+1+1=4だとでも思ったか。違うな」
 目まぐるしく入れ替わる数字。やがてそれは三桁の“六”を刻む。

「――――――大……転……身……!!!!!」
 六六六たかし。
 デビルズナンバーの最終番号にして最高番号にして最低番号たる存在。
 けれど孤独はそこになく。
 信ずる仲間が確かにいる。

 だから、彼は殺人オブジェクトに成り下がらなかった。

「消えろ偽物! スーパーデビルたかしストラッシュ!!!!!」
 逆手に構えたたかしブレードの発光は、もはや野太い熱量の塊となった。
 振り抜かれる先にあるもの、全てを焼き払い、消し飛ばす必殺の一撃。
 ありえないスペック、考えられない機構、存在しないはずのシステム。

『ふざ、けるな――――だったら!』
 体を消し飛ばされながら、“鏡像のたかし”が手を伸ばし、叫ぶ。

『殺人オブジェクトにならないのだとしたら! お前は何になるというんだ! 何に至る! どう完成する!?』
「それすら、わからないのか」
 答えは最初から決まっている。
 そう、生まれ落ちて、自我を得て、言葉を発したその瞬間に。

「――――俺はたかしだ。最初から、最後までな」
 ブレードを振り抜いた時。
 もう、立っているものは居なかった。
 ぱりん、とどこかで鏡が砕け散る音がして、後は静寂だけが残った。

「…………ふん」
 いつの間にか元の姿へと戻ったたかしのそばに、近づいてくる者がいる。

『たかしぃ~! もう、大丈夫!?』
『とりあえず安全なところにいくべ! 腕折れてんべよ!』
『マスター! マスター! お目々は見えます!?』

「……大丈夫だ、なぜなら俺は、たかしだからな」
(理由になってな~~~~~~~いっ!)
 相棒の声を聞きながら、たかしはふん、ともう一度鼻を鳴らした。
成功 🔵🔵🔴