●安寧のフォーヴ
それは、檻。荒れ狂う心を閉じ込めて、幸せに導く、檻――鳥籠。
悲しい幻影から逃げたければ、お逃げなさい。この鳥籠の中で優しい夢で守ってあげる。
金糸雀の翼の少女は微笑んだ。彼女は、己がどうしてここに導かれたのかは――まだよく分かっていない。
けれど確かなのは目の前で弱り切った人間が助かりたいと、こんな世界からおさらばして幸せになりたいと願っている事。
なら、その心を、命をこの鳥籠の中に。
それが少女が、するべきと定めた事だ。鳥籠の中に、おいでなさいと導いて。
ここで眠るといいのよとうっすらと微笑む。
そして、さぁこれからどうしようと思っていると――しゃらん。
自分と同じく鳥籠をもった少女が現れた。
けれどその少女は、すでに誰かの『僕』たる。
金糸雀の翼の少女を、鳥籠の少女が導く。さぁこっち、さぁこっちと。
こっちにくれば、幸福をもたらすものと出会える。
悲しみ、幸せ、幻影、鳥籠、楽園、夢、知性。
それらひとつずつはバラバラだけれども、少しのつながりをもって繋がっていく。
これらはきっと一緒にしては――いけないもの。
●予知
UDCアース、と妖狐の少年である終夜・凛是(無二・f10319)は紡いだ。
そこでひとつ、事件が起きると。
「場所は、人のめったに来ない廃墟……そこで、命を絶とうとしてたやつがいる」
そいつは、もう死んでると――凛是は瞳を伏せた。
そしてその命をもって、偶然ある邪神が復活してしまったのだと。
「邪神が復活して……その邪神に惹かれてか、どうかはわかんない、けど。別の邪神がまた、現れる」
それを、倒してきてほしいと凛是は紡ぐ。
それらは何のつながりも――本来は無いはずだ。けれど何か、細い縁が絡み合ってか繋がってしまった。
どうして、何故というところはきっと誰にもわからない。けれど、邪神が邪神を引き寄せることになるのだと言う。
「放っておいたら、もっとひとがしぬ」
それは幸せな、夢を見ながらかもしれないけれど――甘んじて、受け入れていいものではないと凛是は言い切った。
「邪神は、心に入り込んでくる、けど」
どんな想いを向けられても断ち切れるって、信じてると凛是はほんのわずかに口端をあげた。
「戦い続きになる、けど。俺は任せるしかできない」
だから、お願いと言って――凛是はその手の内のグリモアを輝かせたのだった。
志羽
お目通しありがとうございます、志羽です。
プレイング締め切りなどのタイミングはお手数ですがマスターページの【簡易連絡】をご確認ください。
場合によってはプレイングをお返しする場合もあります。ご理解の上、ご参加ください。
●シナリオについて
第一章:ボス戦『金糸雀』
第二章:集団戦『楽園の『僕』』
第三章:ボス戦『黒の王』
以上の流れとなっております。
どの敵においてもですが、皆さまのかけたP/S/Wに対応した攻撃を返してきます。
ですので、何かしらの幻影を見せる、といったものをもつユーベルコードに対応するものを選ばない限り、そういった描写はしません。
例えば一章の敵に『SPDのユーベルコードで攻撃をしかける。悲しい幻影はこういう感じ』とプレイングにあっても『鳥籠から影の鳥や蝶を放って周囲を攻撃』という描写になります。WIZのユーベルコードの指定であった場合、幻影などが描写として反映されます。
グループ参加などの場合は、ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。(続けて二章、三章参加の場合、IDについては必要ありません)
プレイング受付についてはマスターページの【簡易連絡】にて案内いたします。
受付期間外に送って頂いたプレイングについては流れてしまう可能性もありますのでご協力よろしくお願いします。再送については問題ありません。
以上です。
ご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『金糸雀』
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POW : かんたいのはなかご
全身を【背にある金糸雀の翼】で覆い、自身が敵から受けた【敵意】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : よろこびのとりかご
【鳥籠から影の鳥や蝶】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : まどろみのゆりかご
小さな【鳥が運ぶ、悲しい幻影を見せる鳥籠】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【優しい夢を見せる空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
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廃墟にて――金糸雀の少女はすぅと瞳細めた。
まるで、現れた者達を、猟兵達を見定めるように。
「あなたたちも……悲しいことあるの? 優しい夢をみたいの?」
見たいなら、見せてあげるけれど――それとも、見るのは、いや?
そう言って、首をこてんと傾げてみせる。
敵意を向ければ、金糸雀の翼でその身を守るように隠す。
「その感情は、嫌い……」
だから、こっちに来ないでと鳥籠をキィと、音たてて明ける。
そこより飛び立つ影の鳥や蝶が彼女を守るように羽ばたいて、周囲を荒らす。
その中に――小さな、鳥籠持つ鳥が紛れていた。
その鳥籠は悲しい幻影を見せるもの。拒まなければ優しい夢を見せる空間へと誘っていく。
金糸雀の少女が見せるものは――何なのか。それは彼女の前に立たなければ、わからない。
アルノルト・ブルーメ
敵意なんてものを好きと言う者は居ない
居るのなら、それは箍が外れている事の方が多い……
だから、君の反応は至極真っ当なのだろうね
それでも対峙すべき存在である以上
僕も引く訳にはいかない
血統覚醒使用
Viperを放って先制攻撃
そのまま手首を返して2回攻撃
フェイントと見切りで距離を詰めたら
VictoriaとLienhardで身体を覆う翼に攻撃
他の同行者の攻撃が通り易いよう立ち回り
君の血を喰らうLienhardと
僕の血を喰らう君と……
どちらが生命力が尽きるのが早いか
考えたくもないけれどね
でも、忘れてないかい?
僕は1人でここに居るわけではないんだよ
まやかしの、優しい夢はおしまいだ
骸の海にお還り……金糸雀の乙女
アルノルト・ブルーメ(暁闇の華・f05229)は目の前の金糸雀の少女へと、その瞳細めて一歩、進む。
「敵意なんてものを好きと言う者は居ない」
その言葉に金糸雀は、あなたも好きじゃないのねと紡ぐ。
敵意。そんなものを好むものが居るのなら、とアルノルトは紡ぐ。
「居るのなら、それは箍が外れている事の方が多い……」
だから、君の反応は至極真っ当なのだろうねと男は紡ぎ、緑の瞳で金糸雀を見詰めるのだ。
見た目は可愛らしい少女だ。けれど――相手は邪神である。
「それでも対峙すべき存在である以上、僕も引く訳にはいかない」
その緑の瞳を赤へと染める。
アルノルトは踏み込むとともに『毒蛇』の異名を持つ、先端にフックのついた頑丈かつ軽量なワイヤーを放った。
攻撃の意思、それだけでもう金糸雀の少女にとっては『敵意』だ。
「いや……」
その羽根を広げ、その身を守る。
ワイヤーの軌跡が其の羽根を絡め、距離が詰まるとともに、アルノルトはナイフ形状の戦闘用処刑道具と、異端の血を啜る呪われた黒刃の黒剣をその翼へと突き立てた。
「君の血を喰らうLienhardと、僕の血を喰らう君と……」
どちらが生命力が尽きるのが早いか考えたくもないけれどねと笑って。
アルノルトはその刃を引き抜く。
金糸雀の少女はその羽根の傷を見て、やだと呟く。
痛いのはいや、血が流れるのもいやと、ぎゅうと鳥籠を抱きしめた。
「わたしの前から……消えて」
その言葉と共に攻撃をかける。アルノルトは己の身から何かが奪われ、吸われていくのを感じていた。
そして、金糸雀の少女の傷はみるみるうちに治っていく。
「忘れてないかい? 僕は1人でここに居るわけではないんだよ」
まやかしの、優しい夢はおしまいだとアルノルトは紡ぐ。
「骸の海にお還り……金糸雀の乙女」
紡いだ言葉に、どうしてかえらないといけないのと金糸雀の少女は言う。
だってここにある悲しみに引かれてきたのにと。
大成功
🔵🔵🔵
村井・樹
悪いが、俺は夢なんてモノは見ない主義だ
夢なんて見たって、現実は一切変わりやしねぇ
だからお前は、その鳥をちゃんと籠に仕舞え。飼い主なんだろう?
それが出来ないなら、飼い主共々骸の海に還してやるだけだ
俺自身が前に出て『フェイント』をかけ、『存在感、挑発、誘惑』でターゲットを俺に絞らせ、他のものの存在を意識させない
その攻撃は『盾受け、オーラ防御』で被害を低減
せいぜい、そうやって俺を狙ってな
その間に、本命の偽メメを、アレの視界の『目立たない』所に差し向けて『カウンター』代わりに警告:収容違反を発動
偽メメが吐いた糸で、アレを小鳥共々とっ捕まえてやるよ
※プレ外の言動、アドリブ等大歓迎
シメノゥ・メノウメノウ
なんだかきれいな声が聞こえます。少し甲高いけど心地いいような、寂しいような……。
っと、聞き入っている時間はありません。優しい夢を見たいことはあります。でも、それを理由に命を奪うことなど赦されませんっ!
「おいで、トントン!」
相棒の緑トドのトントンに乗り、一直線でオブリビオンに飛び込みます。溢れ出た蝶や鳥は、櫂で薙ぎ払います。
「夢は終わるもの、夢は破れるもの、そこに籠ることなんてできません。人を犠牲にするそんな夢は、私が終わらせますっ!」
終わってみれば、彼女が何者だったのか、本当に悪意があったのかはわかりません。でも、誰かを助けられたのだと思います。次に行きましょう。猟兵って、難しいお仕事です。
フェルト・ユメノアール
辛くて、苦しくて、キミにすがりたい人もいるかもしれない
それでも、悲しいものでも、幸せなものでも夢は醒めるものだと思うから……
だからこれ以上人が傷つく前に、ボクたちが夢を終わらせると決意を固める
『クイックドロウ』で手札を揃えて戦闘開始
ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!
カモン!【SPタンブルタイガー】!
『動物使い』とのコンボで能力をアップさせ、騎乗
そのままこちらに攻撃してくる鳥と蝶を『トリックスターの投擲』で迎撃しつつ金糸雀に接近
使い魔も含め、敵をある程度引き付けた所で『ワンダースモーク』を使い
敵を攪乱、煙の中で騎乗を解除し金糸雀の左右から【SPタンブルタイガー】と同時に攻撃を仕掛けるよ!
どうして、幸せな夢をと――囀るような。
「なんだかきれいな声が聞こえます。少し甲高いけど心地いいような、寂しいような……」
そう、呟いて。シメノゥ・メノウメノウ(奔放な瑪瑙姫◆和名は七五三乃(しめの)・f18398)はそうでないと、聞き入っている時間はないと首を振る。
「あなたも……幸せになって?」
「優しい夢を見たいことはあります。でも、それを理由に命を奪うことなど赦されませんっ!」
金糸雀の少女の言葉にシメノゥは首をふり、その瞳を向ける。
「おいで、トントン!」
シメノゥが呼べば緑色のトドが現れる。その上にシメノゥが飛び乗れば、トントンは一直線に金糸雀の少女の元へ。
「夢は終わるもの、夢は破れるもの、そこに籠ることなんてできません。人を犠牲にするそんな夢は、私が終わらせますっ!」
「終わらないわ、破れないわ……あなたは、幸せな夢がいらないの?」
いらないなら――こっちにこないでと。
金糸雀の少女の元から蝶の群れがシメノゥへと襲い掛かる。
しゅっとそれを薙ぎ払って、シメノゥは少女へと一撃を加えた。
シメノゥの一撃にいたい、と金糸雀の少女は零す。
続けて――もう一人。
悪いが、俺は夢なんてモノは見ない主義だ、と村井・樹(Iのために・f07125)は紡いで。
「夢なんて見たって、現実は一切変わりやしねぇ」
吐き捨てるような樹の言葉。
金糸雀の少女はこてんと、首を傾げてそれは、と紡ぐ。
「それは、素敵な幸せな夢を見た事ないからじゃない?」
見せてあげるわよと、紡ぐ。
けれどそれは――樹の望むものではないのだ。
それは要らない、違うと樹は首を振る。
「だからお前は、その鳥をちゃんと籠に仕舞え。飼い主なんだろう? それが出来ないなら」
「できないなら?」
「飼い主共々骸の海に還してやるだけだ」
とんと地面を蹴って、樹は前にでる。
右へ左へ、どちらに出るのか惑わせて己の身をもって敵の意思を引き付ける。
「せいぜい、そうやって俺を狙ってな」
その間に偽メメ君を樹は差し向ける。
金糸雀の少女の視界に入らぬ場所に。
UDCを模した絡繰人形が動き、そして。
「そいつは、ここにあってはいけない。だから、ここで終了処分(オシマイ)だ」
小鳥共々とっ捕まえてやるよと樹は紡ぐ。
偽メメ君は反応して鋼糸を吐き出していた。
その糸に絡め取られながらも、金糸雀の少女は鳥籠を開け、影の鳥や蝶を解き放った。 ごうと嵐のように、誰もかれも選ばず、ひとしく蝶と影の鳥は金糸雀の少女の目に見える範囲を飛び回る。
その中を――フェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)は一歩、前へと進んで。
「辛くて、苦しくて、キミにすがりたい人もいるかもしれない」
それでも、とフェルトは紡ぐ。
「それでも、悲しいものでも、幸せなものでも夢は醒めるものだと思うから……」
だからこれ以上人が傷つく前に、ボクたちが夢を終わらせると、元気と笑顔が取り柄の道化師少女は笑みを浮かべた。
誰かを笑顔にする為でなく、誰かの笑顔を守る為に。
素早く手札とフェルトはそろえる。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待! カモン!【SPタンブルタイガー】!」
その声にこたえて――赤いマフラーを巻いた白虎がくるりと空で回って、フェルトの傍らに着地する。
その背中にとって、動きは任せて。
フェルトはこちらに向かってくる鳥と蝶へと視線向ける。
「ボクの技をご覧あれ!」
それはまるでサーカスで芸を披露するように。派手な装飾が施された投擲用のダガーを放って撃ち落とす。
金糸雀の少女へと距離を詰め――フェルトは球状のものをなげた。それは彼女を守ろうとした鳥にあたって――煙をもわんと生み出した。
「な、に……?」
けほけほと金糸雀の少女は咽ている。その間にフェルトはタンブルタイガーより降りて、左右から同時に、更に攻撃を仕掛けた。
爪と、そしてステッキ振っての打撃。
それに攻撃の機とみてシメノゥもトントンと共に再び突撃を。
シメノゥは、思うのだ。
彼女が何者であるのか、本当に悪意があるのか――それは問うてもきっと明確にはわからない。
そしてオブリビオンは正直にそういったことに答えるかといえば、わからぬところ。
(「彼女を倒せば……でも、誰かを」)
誰かを助けられるのはきっと、まちがいない――そう思うからこそ、シメノゥは金糸雀の少女と向き合っていた。
そしてまた、樹も。
「小鳥じゃなくて、金糸雀だ」
金糸雀の少女、その翼を偽メメ君が再び放った鋼糸が捉えて動きを制する。
金糸雀の少女は向けられる攻撃にきゅっと、眉寄せて不機嫌そうな表情だ。
「乱暴……乱暴はいや。こんなのじゃ……幸せになれない。ああ、そうか、わかったわ」
幸せを、知らないからこんなことができるのね――そう、小さく金糸雀の少女は呟いて。
「いいわ、みんなみんな――幸せに、してあげる」
これをあげると小さな鳥が、金糸雀の少女の元から羽ばたいた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
憂世・長閑
オレね、とっても幸せなんだ
だから哀しいことがあっても平気
それより、君は大丈夫?
錠は秘め鳥籠に手を
懐かしい部屋
柔らかい膝の上身を委ねれば優しい掌が髪に触れる
長閑、私の可愛い子、愛しい子
あなたたちのおかげで私は幸せよ
うんうん、あのね――
オレも、だいすき
だいすきだったよ
薄暗い部屋に差すひとすじの秉燭を見上げる彼女は
いとおしげに目を細める
だいすき
だいすきだけれど――
だって、これはまぼろし
あなたはいとおしい幻影
ありがとう
優しくしてくれて
無邪気に笑ってぎゅっと抱き締めた
病的な程華奢な身体だった
さようなら
君も閉じて(守って)あげたいんだ
大丈夫、一瞬だよ
複製させた錠を操り、捕縛
白錠盾からダメージを放出する
小鳥が羽ばたく。
憂世・長閑(誉れの曇天・f01437)はそっと、金糸雀の少女へと近づいた。
金糸雀の少女は警戒する。でも長閑は柔らかな笑みを浮かべた。
「オレね、とっても幸せなんだ。だから哀しいことがあっても平気」
金糸雀の少女は、あなたみたいな人もいるのねと小さく零す。
長閑はうん、と頷いて。そして少女に微笑みを向けた。
「それより、君は大丈夫?」
錠は秘め、鳥籠に手を――すると、長閑の身はその中へ。
ぱちくりと瞬いて、ぼんやりと広がり始めた光景に懐かしいと零す。
手招きをされる。おいでなさいと。誰から――彼女から。
長閑は歩みより、そして傍に座る。柔らかい膝の上、その身を委ねれば掌が髪に触れる。
ふわりと、それは優しい手だ。やわらかにゆるやかに、長閑の髪で遊ぶように触れていく。
『長閑、私の可愛い子、愛しい子』
ふふ、と長閑はくすぐったそうに笑う。
『あなたたちのおかげで私は幸せよ』
瞳閉じたくなるまどろみからゆるりと抜けて、長閑はそっと、見つめる。
うんうん、あのね――
オレも、だいすき。
だいすきだったよ。
言葉にはせず、紡ぐ。
心の内でしか告げぬのは彼女が長閑をみていないからだ。
薄暗い部屋だ。けれどひとすじ差し込む秉燭を見上げて、いとおしげに瞳を細めている。
ああ、と吐息は零れなかった。
だいすき。だいすきだけれど――これは。
だって、これはまぼろし。
長閑はそれを知ってしまっている。まどろみ続けることは決して、できない場所。
ふふ、と長閑は彼女を見上げて笑う。
「ありがとう」
優しくしてくれて。
無邪気に笑って、その膝から頬を離す。そしてぎゅっと、抱きしめた。
細い。病的なほどに華奢な身体だった。
「さようなら」
君も閉じて――守って――あげたいんだと長閑は穏やかに紡ぐ。
「大丈夫、一瞬だよ」
長閑は錠を複製する。その錠をもって目の前の彼女を捕縛してしまう。
そして長閑はその手に白錠盾を持つ。錠型の盾の持つ輝き。その鍵穴からダメージを放出すれば彼女の姿は掻き消える。
そしてそこには――何もない。
長閑は優しい夢にさようならを告げてその夢より脱した。
大成功
🔵🔵🔵
ジナ・ラクスパー
あなたは知らなくていいことよ
ジナは下がっていなさい
そんな危険なこと、あなたにさせられない
降らせる花爪と引き換えに浮かんだまぼろしは
はじめて無力さと寂しさを感じたあの日の言葉と
その後ろに流れるだれかの血
…私のかなしみは
命を終わらせてしまいたいと思うほどには強くなかったから
私には分からないと言われてしまうかも
でも
幸せな『まやかし』で終わりを与えるくらいなら
たとえほんのひとかけらでも
本当の幸せで、優しさで
引き留めようとすることだってできた筈
たとえそのひとの選ぶ結果は同じだとしても
終わりに幸せなんて望まない
私は生きて幸せでいたいし
生きて幸せになってほしいから
託してくれた人に応えます
あなたにも、さよなら
金糸雀の少女は小鳥たちを己の元から解き放つ。
それに囚われるも、囚われぬも――それは心の在り様次第なのだろう。
「深き藍に眠れる爪よ、めざめて踊れ――!」
その、小鳥たちの鳥籠に触れる。ジナ・ラクスパー(空色・f13458)の手より藍水晶の花を戴く白銀が姿を変える。
小鳥の蹴爪に似る、藍鮮やかな千鳥草の花びらが小鳥たちを、そしてその鳥籠を捕らえて――そして、映し出す。
その攻撃の合間にジナの瞳に映るは幻影だった。
『あなたは知らなくていいことよ』
『ジナは下がっていなさい』
『そんな危険なこと、あなたにさせられない』
向けられる言葉。その表情と――その姿。
降らせる花爪の中に色は無く、浮かんだまぼろし。
けれどその中で鮮烈な色がひとつ、浮かぶ。それは赤。誰かの――血の色。
その色が一層鮮やかになりゆけば。向けられた言葉に感じた無力さと寂しさが胸中にじわりと広がっていく。
「……私のかなしみは」
ジナはぽつりと零す。心に抱いた悲しみは、命を終わらせてしまいたいと思うほどには強くなかった。
私には分からないと言われてしまうかもと、思う。
「でも」
きゅっと、口の端をジナは結ぶ。
「でも、幸せな『まやかし』で終わりを与えるくらいなら、たとえほんのひとかけらでも」
本当の幸せで、優しさで――引き留めようとすることだってできた筈。
たとえそのひとの選ぶ結果は同じだとしても、とジナは紡ぐ。
幻影は苦い悲しみ。けれどそれが悲しみであると知る前は、幸せだったのかもしれない。
裏と表のような、そんな記憶をジナは払いのける。
「終わりに幸せなんて望みません。私は生きて幸せでいたいし」
生きて幸せになってほしいからとジナの金の瞳は強い意志を宿す。
そしてふと閉じたその、瞼の裏に思い浮かべる姿は――託してくれた人。
その人の想いに、行いに――応えなければ。そのためにもここで立ち止まるわけにはいかない。
「あなたにも、さよなら」
幻影が掻き消える。ジナは決して惑わされず、そして優しいものにも阿らなかった。
だから千鳥草は金糸雀の少女に届く。その身を嵐のように包み込み、その身を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
きっとあった、でも全部忘れてしまったンだ
悲しい気持ちごと、全部
握った掌の内より【黒影】を呼び嗾ける
ねぇそんなオレにも優しい夢を見せてくれる?
失った記憶への僅かな期待と、その先の微かな望み
一面の血の海
大きな暖かい手が冷えていく記憶
ソレが全ての始まりで忘れてしまった「悲しい」コト
最後も笑っていた大切なあの人の顔は霞がかって見えやしない
それでも共に在る未来は
もっと沢山の事を教えてと願う未来は、あったのだろうか
ありがとう、と落ちた「柘榴」を拾う
優しい夢は夢であると、自分自身が一番知っている
優しさの数だけ黒影を放ち
塗り潰すよう喰らいつく影追い柘榴で『傷口をえぐる』
もう一度、オレに殺されても笑ってくれる?
ふらりふらりと、金糸雀の少女の足元は揺れる。
その姿をコノハ・ライゼ(空々・f03130)は薄氷の瞳に留めていた。
彼女は、悲しい幻影を見せ、そして鳥籠の中で優しい夢を見せると言う。
(「きっとあった、でも全部忘れてしまったンだ」)
何を、忘れてしまったのか――悲しい気持ちごと、全部。
忘れたものがコノハにはあるのだ。
ぎゅっと――掌を握る。その掌に存在感じて、指開く。
「くーちゃん」
往け、とコノハは紡いで黒き管狐を金糸雀の少女へと嗾けた。
「ねぇ」
と、コノハは呼びかける。
「ねぇそんなオレにも優しい夢を見せてくれる?」
何もかも、全部忘れてしまったオレにも。
失った記憶への僅かな期待が思考の端をちらつく。そしてその先の微かな望み。
金糸雀の少女にはコノハが何を感じ、思っていのかわからない。
優しい夢を見たいのか。見たいのならばこの鳥籠に触れなさいと紡いで。
そうでないなら小鳥が――悲しい幻影を運びゆく。
ざぁ、と視界が一瞬ざらついて、突然赤い色がコノハを捕らえた。
赤。
一面の血の海――そして気付けば。誰かの手が己に触れていた。
大きな温かい手。それが冷えて、生気を失っていく。
意識が冷えるような感覚があった。
コレだ。
全ての始まりで忘れてしまった『悲しい』コト――けれど。
けれど、それは感情の記憶。
最後に笑っていた、大切なあの人。その顔は靄がかかって見えやしない。
コノハの記憶は掠れていて、完全ではない。
けれど心疼くものがあったのは事実だ。
もう、その人はいない。
けれど――それでも共に在る未来は。
もっと沢山の事を教えてと願う未来は、あったのだろうかと――心の中で何かが息づく。
意識はぐちゃぐちゃになりかける。
けれど、かしゃんと。
何かが落ちて、音たてる。そちらへとコノハの視線は向いて――その色を捉えた。
「! ――ありがとう」
落ちたのは『柘榴』だ。
刃は万象映し色を変え、刻まれた溝は真紅に濡れる――磨かれた鉱石の貌のナイフ。
コノハはそれを拾い上げ、瞳伏せた。そして再びその眼を開けば薄氷の瞳は冴えている。
優しい夢は夢であると、自分自身が一番知っているのだ。
向けられるやさしさの数だけ黒影を放つ。塗り潰していくような、その光景。その後をコノハも追って向けた輝きが――抉る。
「もう一度、オレに殺されても笑ってくれる?」
囁くように紡いで、泣いているのか、笑っているのか。
コノハもその幻を超えて金糸雀の少女へと刃届かせた。
大成功
🔵🔵🔵
アンジュ・グリィ
夢は見ない。
起きれなくなってしまうから。
夢は見ない。
眠ってもきっと逢えないから。
夢は見ない。
お喋りな舌はいらないのだと、だから私は夢を見ない。
お前を倒すだけだよ。いいかい?
ブレイズフレイム。
舌を切り、活力の炎を生み出す。
優しく囁くように息を吹き掛けたなら
君を包み込み攻撃をする炎になるだろう?
この翼は枯れている、だから籠の鳥ではいれないんだ。
お前に捕らわれたままになってしまうだろう。
だから私は夢を見ない。
ほんの少しだけ見えた幻想もそっと炎でかきけして、見ないふりの見えないふり。
それじゃ、バイバイ
金糸雀の少女は深く長い吐息を吐いた。
痛い痛い。
届いた攻撃が痛い。そして悲しい幻影よりも幸せな、優しい夢を見続けないことが理解できないて心も――痛い。
とん、と軽やかに降り立つ。
アンジュ・グリィ(したきり・f19074)はその姿を黒き瞳に映す。
その視線を金糸雀の少女が受け止めて――優しい夢をみる? と、問いかける。
アンジュはゆるりと首をふる。
「夢は見ない」
起きれなくなってしまうから、とあんじゅはつむぐ。
「どうしても?」
再度の問いかけに頷いて、同じ言葉を返す。
「夢は見ない」
眠ってもきっと逢えないから。
夢は見ない。
お喋りな舌はいらないのだと、だから私は夢を見ない。
アンジュは夢を見るを望まない。かわりにすべきことを、紡ぐ。
「お前を倒すだけだよ。いいかい?」
その問いの答えをアンジュは待たない。
ぴっと、舌先に走る痛み。そこより活力の炎が息づく。
ふぅ、と。
優しく囁くように息を吹きかけると緩やかに。
けれど金糸雀の少女に辿りつく瞬間にごうと燃え上がり包み込む。
「きゃあああ!!!」
炎燻る舌先で、アンジュは紡ぐ。
「この翼は枯れている、だから籠の鳥ではいれないんだ」
それに触れたら、お前に捕らわれたままになってしまうだろうとその鳥籠を指さす。
それ故、触れることはない。
「だから私は夢を見ない」
そっと見えかけた、幻影――それをふぅと息吐いて。その炎でかき消した。
幻影は、見ないふりの見えないふり。
「それじゃ、バイバイ」
アンジュは炎に抱かれ消えていく金糸雀の少女に言葉向ける。
その手から、鳥籠が落ちた。
かしゃんと。落ちて無機質な音たてる。その持主は――もういない。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『楽園の『僕』』
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POW : かあさまのいうとおり
【手にした鳥籠の中にある『かあさま』の口】から【楽園の素晴らしさを説く言葉】を放ち、【それを聞いた対象を洗脳する事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : とおさまがしたように
【相手の首を狙って振るったナイフ】が命中した対象を切断する。
WIZ : 僕をおいていかないで
【『楽園』に消えた両親を探し求める声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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悲しい幻影と。そして幸せな、優しい夢を運ぶ金糸雀の少女は消えた。
そしてその場に鳥籠が落ちたのだが、それをひろうものがいた。
どこから現れたのか――それは幼い少女。
その少女もまた鳥籠を持っていたのだがぴちゃり、と。
赤い色がしたたり落ちた。その中には人の、女の首がある。その表情は髪で隠れて見えぬのだが微かに唇が動いた気がした。
「……お友達を、迎えに来たの」
「けれどいないね」
「いないわ……」
そして――同じような幼い少女が、少年がひとり、ふたりと増える。
折角迎えにきたのに――いない。
何故、どうしてと少年少女たちは紡いで、そして猟兵達に気付いた。
その視線が猟兵達へすべて、向けられる。
「『かあさま』どうしたらいい?」
少女の問いかけにふふふと小さな笑い声が響く。
その声はどこからかといえば彼女らが持っている鳥籠の、中から。
その首が、『かあさま』が紡ぐ。
素晴らしい楽園に誘ってあげなさい。その首にナイフを突き刺し切り裂いて――そして導いて差し上げなさいと。
「ええ」
「うん」
「わかったわ、『かあさま』」
彼女たちは猟兵達へと向かってくる。
片手にもった鳥籠の『かあさま』と共に。もう片方の手には、血まみれのナイフを手に持って。
アンジュ・グリィ
籠の首はお喋りよな。
かあさま。そうか、お前が母か。
物騒な母親だ。
その舌を切って喋れなくしたらお前たちは泣きわめくのだろうか。
興味はある。
同じお喋りの舌を抜こう。
呪詛。
そうだ、これは呪いだ。
喋れぬよう呪いをかけてしまおう。
まずは一人。
一番近くて、一番倒れそうな子に試しに呪詛を使う。
あまり使わないものだ。
効果が知りたくてね。
味方との連携は忘れない。
私一人ではなにも出来ないからね。
そこのお前、そちらから来ているよ。
お喋りの唇を開いたならこれまた覗くお喋りな舌の炎
激しく息吹き、激しい炎を。
お前は良く燃えるのだなあ
「さあ一緒に。素敵な場所よ、お腹がすくことも傷つくことも何もない。楽園は、素敵で幸せな場所」
鳥籠の中よし響く声。その声にアンジュはすぅと瞳細めた。
その、かあさまとやらの表情はよく見て取れないが、その声色だけは嫌に耳につく。
ざわざわと逆なでするような、変な、歪な心地良さがある。
だからといってそれに浸るわけでは、ないのだけれど。
「籠の首はお喋りよな」
アンジュはかあさま、と紡ぐ。なぁに、と薄く返事を返した鳥籠の首。
「そうか、お前が母か」
ええ、かあさまよと返す――その声に、物騒な母親だとアンジュは言い放つ。
そしてふと、薄く笑って。
「その舌を切って喋れなくしたらお前たちは泣きわめくのだろうか」
興味はあると黒い瞳はひやりと、光を纏っている。
そしてその唇が開かれ――同じお喋りの舌を抜こう、とアンジュは言う。
その一手に含むのは呪詛。
かあさまの紡ぐ言葉は力のある言葉なのだろう。だから己も。
「そうだ、これは呪いだ」
喋れぬよう呪いをかけてしまおうと、アンジュは視線を巡らせる。
まずは、一人。
一番近くて、一番倒れそうな子に試しに呪詛を。
呪詛というものは、あまり使わないものだった。だからこそ効果が知りたくもある。
そしてアンジュは知っているのだ。自分ひとりでは――何も出来ないのだと。
「そこのお前、そちらから来ているよ」
近くで戦う猟兵に声掛け、アンジュは吐息ひとつ。
するとちらちらと炎が踊る。
お喋りな唇。それを開いたなら、お喋りな舌の炎が踊る。
すぅ、と息吸いこんで、激しく息吹く。
激しい激しい、炎が立ち上り少女のその手の、鳥籠のかあさまが炎に抱かれた。
「お前は良く燃えるのだなあ」
ふっと息を吐けば炎が踊る。舌先の炎は声を発さずとも、揺らめくのだ。
大成功
🔵🔵🔵
ジナ・ラクスパー
あなただけはと目隠しする手はどこにもなくて
力を貸して、一緒に戦ってと声が呼ぶ
自分が傷つくことよりも
何もできず、知らずに失うことのほうがずっと怖いから
はい、と声上げ駆け出したくなる
今だってそうだけど
力が足りないから求められなかっただけ
弱いから守られていただけ
――全部全部、当然のことだった
気づいた事実が悔しかったから、飛び出していける力を身につけた
何もせず、知らずに欲しがるだけはもう嫌
ただ与えられる楽園なんて、私には要らない
甘い声を雨花で引き裂いて、少女に押し迫る
ごめんなさい
あなたの寂しさは誰の命でも埋めさせません
…一瞬、迷った心に苦しくなる
戦場から遠ざけられないように
私はもっと強くならなきゃ…
炎の吐息の娘の言葉に、ジナは身を翻してその一撃を避けた。
「どうして逃げるの? ねぇ、かあさま――」
「ええ、楽園に一緒に行きましょう。とても素敵な場所。誰もが幸せ、誰もがみんな。守られて、何もしなくていい。幸せな幸せな」
そんな声を、ジナはいいえと首を緩く横にふって否定する。
それは違うと。
あなただけはと目隠しする手はどこにもなくて、力を貸して、一緒に戦ってと声が呼ぶ。
目の前の、少女が鳥籠の中に抱くかあさまの言う幸せは、ジナが思うそれとは違うのだ。
「自分が傷つくことよりも」
何もできず、知らずに失うことのほうがずっと怖いから――一歩、踏み出さずにはいられないのだ。
その最初の一歩は小さくても、少しずつその歩幅は大きく、していけるのだから。
はい、と声上げ駆けだしたくなる。
「今だってそうだけど」
きゅ、と口の端を結んでジナは金の瞳を少女へ、かあさまへと向ける。
「そんなこと気にしなくていいのよ。もっと楽しく、幸せに……楽園へ」
「その場所は、私にとって幸せではないのです」
だから行きません、と言って藍水晶の花を戴く白銀の柄をジナは握り締めた。
力が足りないから求められなかっただけ。
弱いから守られていただけ――全部全部、当然のことだった。
ふ、と浮かべる笑みは何も知らなかった頃の、幸せな自分を思い返して。
けれど、ジナは気付くことができたのだ。
気付いて、その事実が悔しかったから。飛び出していける力を身につけた。
だから、今ここにいる。
「何もせず、知らずに欲しがるだけはもう嫌。ただ与えられる楽園なんて、私には要らない」
否定の言葉。甘く優しい、痺れるような言葉に惑わされることはなかった。
ジナは向けられる甘い言葉を否定して、水弾を放つ。
ぱしゃんと少女にぶつかれば、それは跳ねて。眠りに誘う青い花の雨となるのだ。
「ごめんなさい。あなたの寂しさは誰の命でも埋めさせません」
花の雨にかあさまの声が止まる。かしゃんと鳥籠が落ち、転がった。
そして少女もまたその場に蹲るように沈む。
本当にこれでいいのかと――一瞬。きゅうと胸を締め付けるように心が迷う。
「戦場から遠ざけられないように、私はもっと強くならなきゃ……」
少し、悲し気に伏せられた瞳。けれどもう一度、瞼開いて光を得た時にはそこに強い意志の力が見られた。
大成功
🔵🔵🔵
アルノルト・ブルーメ
何を素晴らしいとするかは……
君や君の『かあさま』が決めることではないよ
だから、誘われても困るし、導いて貰うつもりは毛頭ない
君もまた、一時のまやかしを語るか……
咎力封じ使用
Viperを放ち先制攻撃
手首を返す事で先端のフック部分で範囲攻撃のなぎ払い
出来るだけナイフを狙って行きたい処だけど、どうかな
ナイフでの攻撃は基本、見切りで回避
距離は余裕があるようならばViperで叩き落とす
距離が近くViperを振るえる距離がない場合は
VictoriaとLienhardで受け流して射線をずらして回避と反撃
フェイントも使用しながら手枷・猿轡・拘束ロープを放つ
僕の『楽園』は僕自身が決める
だから君も……骸の海にお還り
「えいっ!」
ひゅっと、振るわれたナイフから血が飛ぶ。
首を狙った攻撃をアルノルトはかわして、鳥籠揺らす少女へと静かに視線を向けていた。
「何を素晴らしいとするかは……君や君の『かあさま』が決めることではないよ」
だから、誘われても困るし、導いて貰うつもりは毛頭ないとアルノルトは紡ぐ。
少女はかあさま、あんなこと言ってるのよと問うのだがそのかあさまはただころしなさいころしなさいみちびきなさいと紡いでいるだけだ。
「うん、導くのね」
「君もまた、一時のまやかしを語るか……」
ため息交じりにだろうか。アルノルトは紡いで己のもつワイヤーを放った。
その手を絡めとるように投げられたワイヤー。それと同時に手枷なども放たれた。
それは少女を戒めて、その動きを鈍らせる。
「やだ、うごけない……かあさま、たすけて!」
かしゃんとその手から鳥籠が落ちる。そう、少女は叫ぶもののかあさまが助けることはない。
ただ繰り返し同じ言葉を紡いでいるだけだ。
「僕の『楽園』は僕自身が決める。だから君も……骸の海にお還り」
終わりにしようと黒刃の黒剣と戦闘用処刑道具を向けてアルノルトは少女の首元に滑らせる。
「お友達なのに……」
「ゆるさない……」
そして――他にもいるこどもたちが、アルノルトへとまた向かう。
簡単には終わらないようだと、アルノルトは向かってくる少女達へとまた同じように、その手の得物を向けた。
大成功
🔵🔵🔵
フェルト・ユメノアール
ボクにとっての楽園はこの世界
悪いけど、キミたちについて行く気はないよ!
ボクの次の一手はこれだ!ショウマストゴーオン!
稀代の奇術師よ!その技巧にて想いを集め、闇を打ち払う光に変えよ!
カモン!【SPソウルジャグラー】!
相手の武器がナイフならボクが囮になって隙を作る!
『トリックスターを投擲』して敵を牽制
ナイフで攻撃するタイミングで『ハートロッド』を鳩に変化させ
敵の視界を塞いでソウルジャグラーの『カウンター』に繋げるよ!
そして、ソウルジャグラーの効果発動!
敵ユニットを撃破した時、その魂を吸収して戦闘力がアップする!
ソウルエナジーチャージ!
ジャグリングのように複数の光弾を操り敵に『投擲』
一気に殲滅するよ
楽園へ――連れて行ってあげると、少女たちが言う。
けれどフェルトもまた、その言葉に頷くことはない。
「ボクにとっての楽園はこの世界。悪いけど、キミたちについて行く気はないよ!」
「こないの?」
「素敵な所なのに……」
少女たちは口々に言う。けれどそれが本当だとはどうしても、思えないのだ。
「ボクの次の一手はこれだ! ショウマストゴーオン!」
フェルトは腕に装着したソリッドディスクへとカードを一枚手にしセットする。
「稀代の奇術師よ! その技巧にて想いを集め、闇を打ち払う光に変えよ! カモン! 【SPソウルジャグラー】!」
フェルトの呼びかけに答えて、現れるものソウルジャグラー。
「こっちだよ!」
フェルトは囮になって隙を作る。
こっち、と投擲用ダガーを放ち少女たちの意識を惹きつつ牽制する。
フェルトへ向かって走ってくる少女。振り上げられたナイフに煌めきに向かってフェルトはハートロッドを向けた。
そのロッドはぽふんと音たてて鳩へと変わる。
視界は一瞬塞がれて、その隙にソウルジャグラーが少女に攻撃かけてかき消した。
「ソウルジャグラーの効果発動! 敵ユニットを撃破した時、その魂を吸収して戦闘力がアップする!」
そしてソウルエナジーチャージ! と、高らかとフェルトは紡いだ。
ソウルジャグラーは複数の光弾をその手で操って遊ばせて、そして少女達へと投擲する。
少女たちは悲鳴をあげて逃げ纏うのだが、その光に包まれて一人ずつ倒されていく。
大成功
🔵🔵🔵
コノハ・ライゼ
手にした「柘榴」を指先で撫でる
記憶同様いつからか分からない、ケドずっと共に在ったモノ
生きていく、生きている証
また頼むヨ、と肌を斬り【紅牙】で牙へと変化させる
見た目にも言葉にも惑う事無く、一体ずつ確実に仕留めに行く
刃で切り裂き、『2回攻撃』でその『傷口をえぐる』よう牙を捻じ込み『生命力吸収』
ああ、こうじゃなかったっけ?楽園への誘い方
鳥籠からの声を聞き入れる気はないケド
動けず攻撃を受けても『激痛耐性』で凌ぎ、痛みを引き金に感覚を取り戻す
残念、てぇか楽園なんて信じてねぇの
煩い口は閉じようか、と動き『見切り』『スナイパー』で籠の中身狙い牙を刺しこむ
導きなんていらない、アンタらが行くのは骸の海なんだから
少女達の姿を視界の端に、コノハは手にした『柘榴』をその指先で撫でた。
記憶同様わからないのだ。いつからこの手にあるのか。
けれど――ずっと共に在ったモノ。
(「生きていく、生きている証」)
そう、見つめているとかしゃんと鳥籠の音が響いて。
「一緒に行く?」
「ドコに?」
「かあさまが言っている、楽園よ」
その言葉にふと笑って、コノハは行かないと笑う。
「また頼むヨ」
コノハは自身の肌の上にそれを滑らせる。
その血をもって柘榴は目覚めた。牙へと変化しコノハの手へと収まる。
「やだ、乱暴する気……? かあさま、かあさまたすけて」
その言葉に――鳥籠の中の『かあさま』が口開く。
コノハに向ける言葉は耳に嫌に響く甘い言葉。
少女の抱えた鳥籠の中からの声は意識を揺らすが、けれど迷うことはなかった。
傷をおった痛みもあるがそれより、この手の中にある牙の存在がコノハの心を反らさない。
その少女の見た目にも、かあさまの言葉にも惑う事無く、コノハは踏みみ牙の色残して少女の首元掠めていく。
「え?」
ひゅっと、風切る音だ。その刃は過ぎて、そして戻る。
傷口をなぞるように、抉りこむように。コノハは牙をねじ込んだ。
「ぎゃあああ、いた、い゛!!」
「ああ、こうじゃなかったっけ? 楽園への誘い方」
違ったっけ? とコノハは紡ぐ。
ひゅーと喉奥から聞こえる音。いくら少女がその首抑えても、血は止まらないし傷もふさがらない。
はくはくと動く唇。それは声を発さず――けれど、がしゃりと地に置いた鳥籠からは。
「どうしたの? 楽園は良いところ。素晴らしいところ。何の憂いも無く過ごし幸せな時のみ過ごせる場所」
恐くないわ、さぁ一緒に行きましょうと柔らかな声が響く。
その声は何かを麻痺させようとする。先程までよりも意思が強く含まれた言葉だ。
けれどコノハはその言葉に誘われることはない。
動き辛さはある。その隙に他の少女達から攻撃を受けるが逆にそれが良かった。
痛みに対しての耐性で凌ぎつつ感覚が戻ってくる。
「残念、てぇか楽園なんて信じてねぇの」
ぺろりと舌出しコノハは一歩、近寄った。
「煩い口は閉じようか」
牙で切り込に、ねじ込む。狙いはその鳥籠の中のかあさまだ。鳥籠ごと貫けば引き攣れたような、潰れた叫び声が響く。
「……導きなんていらない、アンタらが行くのは骸の海なんだから」
次は、どの子? とコノハは問いかける。誰からでもいいよと、笑って。
大成功
🔵🔵🔵
村井・樹
お前のお友達は、先に帰っちまったぞ
残念だったな?
いい子はさっさと帰れ
お家でも楽園でもなく、骸の海にな
『紳士』、お前が案内してやれ
エスコートしてやるのはお前の仕事だろう?
修羅双樹を発動
『紳士』の『誘惑、催眠術、存在感、言いくるめ』で僕の気を引かせる
父親か何かのように、あの僕達の話を聞いてやれ
だが、くれぐれも『盾受け、オーラ防御』で身を固めるのを忘れるな
ガキのくせして、えらく物騒なナイフなんて持ってやがるんだからな
舌先三寸で相手を虜にするのは『紳士』の、敵がガキだろうと何だろうと、手を下すのはこの『不良』の仕事だ
引きつけられている間に俺が、連中を『暗殺』してやる
※プレ外の言動等大歓迎
樹は鳥籠と、そしてナイフを持つ少女にふと口端を上げて笑みを向けた。
それは心よりのものではなく、どこか思うところのあるような笑み。
周囲にいる少女達は大事そうに鳥籠を抱えて樹の周囲に集っていた。
「お前のお友達は、先に帰っちまったぞ、残念だったな?」
迎えに来たというあの金糸雀の少女はもういない。ここにいる意味などないのだ。
いい子はさっさと帰れと紡ぐ声色に滲む気持ちは何か。それは樹にもよくわからない。
どこに、とこてんと首傾げて少女は問い返す。おうち? と紡いで。
けれど樹はゆるりと首を振る。違う、と。
「お家でも楽園でもなく、骸の海にな。迷わないように、してやるよ」
そう言って、『紳士』、お前が案内してやれと樹は己の身の内へと、語り掛ける。
「エスコートしてやるのはお前の仕事だろう?」
傍らに――その姿現す。
樹の中にいる『紳士』と『不良』というふたり。そのうちのひとりが姿を取ってこの場に現れる。
そしてもう一人は身の内で目覚めるのだ。
「話を聞かせてくれるかな?」
穏やかに。父親か何かのように『紳士』は僕達の話を聞く。警戒されないように柔らかな笑みを纏って、視線を合わせて。
けれど、油断はするな。くれぐれも守りを固めるのを忘れるなと樹は小さく、『紳士』にだけ聞こえる声で紡ぐ。
「ガキのくせして、えらく物騒なナイフなんて持ってやがるんだからな」
穏やかに話を聞いてけれどどこか緊張感はある。
言葉巧みに宥める。舌先三寸でその心をつかんだ『紳士』は、けれどちらりと自分へと視線向ける。
その身、その意志を今持っているのは『不良』だ。
(「敵がガキだろうと何だろうと、手を下すのはこの『不良』の仕事だ」)
僕の、少年少女達の意識を『紳士』が引き付けている間に運命の糸をその首に。
それは命を、終わらせるための一糸。指引けば、首がゆるりと絞められ――一瞬のうちで肉裂いて息の根止める。
彼らは手の内にある鳥籠を地へと落とし母様たちが声をあげるのだ。
「少し、嫌な気分ですね」
「でもやらなきゃならないだろ」
手を組み共に戦うのは、本来の己を取り戻すため。
そうですねと『紳士』は零し、『不良』は転がる鳥籠へと――ただ視線を向けた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『黒の王』
|
POW : 生成
【対象の複製、または対象の理想の姿】の霊を召喚する。これは【対象の持つ武器と技能】や【対象の持つユーベルコード】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 母性
【羽ばたきから生み出された、幸福な幻覚】が命中した対象を爆破し、更に互いを【敵意を鎮める親愛の絆】で繋ぐ。
WIZ : 圧政
【羽ばたきから、心を挫く病と傷の苦痛の幻覚】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
楽園の『僕』たちの姿が消え――しんと、静まる。
けれど、そこに鳥籠が残っていた。かあさまと呼ばれていたその首もだ。
それがどろりと溶けて鳥籠から零れ落ちる。
大きな赤黒いものとなって全てが一つになりその中から――ばさりと。
黒い羽搏きをもって何かが生まれ出でる。
その首は、ない。赤き輝きを頭の代わりに。
その腕も、ない。白き輝きは何をも抱けぬものだ。
背より出でる黒き翼はぬるりとした輝きを持ち、美しいと思う瞬もあるというのに何か、苦しくなるものがある。
ひび割れたその身は一体何の果てなのか。
挫かれた神性は声なき声を、感覚的に放つのだ。
理想の姿を見せましょうか。それとも幸福な幻覚を羽搏いて与えましょうか。
それをいらぬというのなら、他に与えられるものは――苦痛の幻覚。
苦痛はいやでしょう。理想と幸福の中に沈みましょうと歪んだ誘いを紡ぐ。
アルノルト・ブルーメ
随分と、悪趣味な者が産まれ落ちたね
理想も幸福も、自分の手で描かなければ意味がない
苦痛に関して言うなら
好き嫌いなく、僕には必要な事だから
血統覚醒使用
自身の複製、か
自分と戦うのは中々に面倒だけれど……
どちらかが倒れるまで付き合って貰うよ
VictoriaとLienhardで先制攻撃からのなぎ払い
傷口をえぐる事で2回攻撃
時折、フェイントを入れてViperで攻撃
敵の攻撃は見切りと残像で回避
ダメージは生命力吸収で補う
あぁ、そうだ……知っているかい?
こうした実力が拮抗している勝負で勝敗を分けるのは
覚悟だそうだよ
勝つという、覚悟
喚ばれた君に、その覚悟はあるかい?
無いのであれば、骸の海に還ると良いオブリビオン
声を発するわけでもなく――それはその存在を紡ぐ。
「随分と、悪趣味な者が産まれ落ちたね」
アルノルトは言って瞳細める。
理想も幸福も、自分の手で描かなければ意味がない。
苦痛に関して言うなら好き嫌いなく、僕には必要な事だから、と。
だからとアルノルトの瞳は赤に染まる。
そして構えたアルノルトの前に――アルノルトの複製が現れた。
「自分と戦うのは中々に面倒だけれど……どちらかが倒れるまで付き合って貰うよ」
それは同じように、その瞳の色を赤に変えてアルノルトの方へと走りこむ。
それへと、アルノルトは二つの武器でもって仕掛けた。薙ぎ払うように戦闘用処刑道具と黒刃の黒剣をもって。
その刃が己と同じ姿をしていた者を斬る。傷口に、もう一度刃向けてアルノルトは滑らせた。
けれど同じように、それもまた返してくる。アルノルトの身を斬り、その傷口に刃を刺して抉っていくのだ。
その痛みを受けながら、アルノルトは紡ぐ。
「あぁ、そうだ……知っているかい? こうした実力が拮抗している勝負で勝敗を分けるのは」
覚悟だそうだよ、と。
「勝つという、覚悟。喚ばれた君に、その覚悟はあるかい?」
無いのであれば、骸の海に還ると良いオブリビオンとアルノルトは言って、その刃を振るう。
その刃は己の姿したものの喉元捉えて、その姿をかき消した。
己の生み出したものを消される。
それは現れた、黒の王の身を切るということでもあったのだろう。
僅かに、その身が揺らいでいた。
大成功
🔵🔵🔵
村井・樹
俺の気持ちは、最初と何も変わらない
幸せな夢なら要らない
それよりも、現実のアンタをぶっ潰す方が先だ
『紳士』だって、そう言うだろうよ
アンタが『僕』を侵す気で居るなら、答えは既に決まってる
目にはメメを。UDCのメメと一緒に、アイツを倒すぞ
敵からの苦痛は甘んじて受ける
だが、その後は覚悟しとけ?
ドキツい『カウンター』を返してやる
お前が、俺を、村井樹を苦しめようと言うなら、俺がその分アンタを壊してやる
『僕』が嘗て見た悪夢
死に絶えた狂信者達
血の海に沈む父母
そこで呆然と座る少年の樹の姿を夢に見ようとも
……抱えて歩くと決めた過去だ
少年一人で持ちきれないなら、大人である俺達が抱えるまでだ
※プレ外の言動など大歓迎
コノハ・ライゼ
幸福な幻はもう十分
理想の自分では生きていけないのも分かってる
好んで痛みを受ける趣味もねぇケド
――やれると思うならやってみなよ
「柘榴」を肌に滑らすと同時、『高速詠唱』で【霹靂】唱え刃に雷纏わす
『スナイパー』で翼を狙い斬りつけてこうか
ソレで動きが鈍れば儲けモノ、ってね
反撃は『オーラ防御』展開し躱すケド、当たった所で気に留めない
思い出せない悲しみもありえない未来の痛みも挫くには程遠い
この刃が、痛みが、自分を自分たらしめると知っているから
反撃を『見切り』隙を見出して
『カウンター』で刻まれた『傷口をえぐる』ようまた刃を捻じ込んだら
『生命力吸収』し命を吸い上げよう
ああザンネン
楽園へは、一人でドウゾ?
ジナ・ラクスパー
口ばかりの理想も幸福も、もう充分味わいました
身を委ねれば楽だったかも、なんて
諦めは欠片も心にないから、もう迷わない
あなたを倒します
圧政でも苦痛でもさあ、どうぞ
胸を貫く一閃を花爪に変え、与えられた痛みをそのまま返す
自分が通れなかった『理想』の過去
見せられたものはまだ胸裏にあって
守りたい、戦いたい、強くなりたい自分を
最初から理想に躓いているくせに?と笑って離さないけれど
ー負けない
甘く見ないで、痛みなら耐えきってみせます
苦しむ声なんて零さないし
体を抱えて痛がりもしない
私は、自分で乗り越えて見る景色が好きだもの
幸せな闇を教えてくれるというなら、お生憎様です
私にはまだこんなに、世界は輝いて見えるから
黒の王は声なく紡ぐ。
幸福が要らぬのならば――与えられるのは、もう心を挫く病。傷の苦痛の幻覚のみなのだと。そして、羽ばたく。
一度、二度、三度と黒き翼よりはらはらとその羽根を溢しながら幻覚を振りまく。
頭が揺れる。そんな感覚を樹は受けていた。けれど――心は強く惑わされることはない。
「俺の気持ちは、最初と何も変わらない。幸せな夢なら要らない」
それよりも、現実のアンタをぶっ潰す方が先だと、その姿を鋭い視線で射抜く。
『紳士』だって、そう言うだろうよ、と己の中にいる者のことを思うのだ。
「アンタが『僕』を侵す気で居るなら、答えは既に決まってる」
目にはメメを。UDCのメメと一緒に、アイツを倒すぞと紡げば紫色のオーラが樹の身を包む。
しかし――羽ばたきの後より身の中で蹲る苦痛がある。
その痛みを樹は耐えて、甘んじて受け入れていた。
「覚悟、しとけ?」
ドキツいカウンターを返してやると、樹は口の端引き上げて笑う。
その視界にちらつく影がある。
それは姿を取り始め、色を得た。
死に絶えた狂信者達。それらはピクリとも動かない。
血の海に沈む父母。赤い色だけがやけに鮮やかだ。
そして、そこで呆然と座る少年――それは。
「それは……村井樹、か」
小さく紡ぎ落された。
それは幻覚。樹は八ッ、と吐き捨てる。
「お前が、俺を、村井樹を苦しめようと言うなら、俺がその分アンタを壊してやる」
それは嘗て、『僕』が見た悪夢だ。
(「……抱えて歩くと決めた過去だ」)
だから、樹は立ち上がれる。少年一人で持ちきれないなら、大人である俺達が抱えるまでだと。
紫色のオーラを纏い、樹は踏み込む。攻撃されているということは負の感情を向けられているということだ。
樹が仕掛けた攻撃に、黒の王の羽ばたきが一瞬、緩む。
その隙に、合わせたのか、あったのか。
「よぉく、みて」
柘榴を肌に滑らせると同時にコノハは紡いでいた。
その翼を狙って、雷纏った刃の一撃が羽根の一枚を持っていく。
幸福な幻はもう十分。理想の自分では生きていけないのも分かってるのだ。
「好んで痛みを受ける趣味もねぇケド――やれると思うならやってみなよ」
削ぎ落した羽根が影となって消えていく。
一枚、それを失って黒の王のバランスは崩れたようだ。
動きが鈍れば儲けモノとコノハは思って仕掛ける。
すると黒の王はその身をコノハの方へ向け、羽ばたいた。
それは歪な羽ばたきだった。
不意に身体が重くなる。オーラを展開し躱すが全て防げるわけではないようだ。
けれどコノハはそれを気に留めない。
思い出せない悲しみも、ありえない未来の痛みも挫くには程遠いのだ。
ぽたり、と落ちる己の赤い色。その色を糧とするこの手の牙。
この刃が、痛みが、自分を自分たらしめると知っているから――コノハは前へと踏み出した。
幻覚も、痛みもある。けれどそれに挫ける心は無く、一歩踏み込む。
大きな羽ばたきだ。それが生んだ隙を見だして、先程己が斬りつけた傷跡へと再度、刃をまたねじ込んだ。
そしてその生命を、吸い上げる。
「ああザンネン。楽園へは、一人でドウゾ?」
コノハは笑って、その刃を引き抜き距離をとる。
黒の王は生命の一端奪われ、その力を確実に落としていた。
けれどまだ、その羽ばたきは止まない。
羽ばたきを受けて、ジナはきゅっと眉顰めていた。もう、充分なのだと。
「口ばかりの理想も幸福も、もう充分味わいました」
身を委ねれば楽だったかも、なんて――目にした光景を思い出す。
けれど、諦めは欠片も心にないから、もう迷わないとジナは立ち向かうのだ。
あなたを倒しますと、きゅっと唇を引き結んで。
「圧政でも苦痛でもさあ、どうぞ」
それで己がもう揺らぐ事がないとジナは知っている。
けれど痛みは、確かにあるのだ。胸を貫くものはある。けれどその痛みを、ジナはそのまま返すだけ。
小鳥の蹴爪に似る、藍鮮やかな千鳥草の花弁が羽ばたきの中を負けず踊る。
身体を圧そうとする病。そして苦痛の幻覚はジナの何を映すのか。
「……それは」
自分が通れなかった『理想』の過去――見せられたものはまだ胸裏にあって、ある想いを抱かせる。
守りたい、戦いたい、強くなりたいと思い願う。
『そんな自分を、最初から理想に躓いているくせに?』と笑って。
離さないけれど――でも。 負けない、と。甘く見ないでと口端を噛んでジナは耐えるのだ。
決して、苦しむ声なんて零さない。体を抱えて痛がりもしないと地を踏みしめる。
その身の内に、得も言われぬ何か苦しい痛みが生まれていたとしても。
「私は、自分で乗り越えて見る景色が好きだもの」
ジナに指先が、黒の王の輪郭なぞるように動く。好きにはさせない、されないというように。
その指先に操られ、千鳥草の花弁がその身を撃つ。
「幸せな闇を教えてくれるというなら、お生憎様です」
ジナはふと柔らかに笑って、言い放つ。
私にはまだこんなに、世界は輝いて見えるから――だからここで、倒れることはないのだと。
そして花弁の嵐が羽ばたきを阻み、病と幻覚が消え去った。
無差別に振るわれたその攻撃は止まり、力なく黒の王は羽ばたく。
羽ばたいて、地にその身をつけた。
すでに己の力で飛ぶ力は失われた様子。けれど、また存在する力は残っていた。
大成功
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アンジュ・グリィ
理想と幸福の優しい夢に溺れるのなら。溺れるくらいなら。
私は喜んで苦痛を受け入れよう。
何も怖くはないさ。苦痛は隣人なのだから。
いつでも隣に居座っているよ。
だからお前にも苦痛を与えよう。
どんな苦痛よりもいっそう愛しい隣人を。
ガチキマイラで腕を変化させる。
腕のライオンはお前が欲しいようだ。与えてやってはくれないか?
でないと私が食べられてしまうかもしれないからね。
与えることが出来るのなら、ライオンにも与えることは出来るだろう?
待ち受ける幸福な幻覚は目を閉じて見ないふり。
目を開けなければ見えもしないだろう。
代わりにこの腕で消してしまおう。
フェルト・ユメノアール
さあ、いよいよ最後だね
この夢を終わらせるために絶対キミを倒してみせる!
ボクは手札からスペルカード、【無人造の機兵を発動】!
ボクのレベルと同数の機兵トークンをバトルエリアに召喚する!
いくら精巧でも幻は幻、機械である機兵にその効果は無効になる!
召喚された沢山の機兵に攻撃を命じると共に『地形の利用』を行い
機兵の影に隠れて幻覚をかわしながら敵に接近
『カウンター』による一撃を翼に加えて幻覚攻撃を封じる
そして、この瞬間、機兵トークンの効果発動!
自身をリリースして、エリアにいる他の機兵トークン1体の能力をアップする!
残っている全ての機兵の力を1体に集めて黒の王に攻撃!
けれど、そこにまだいるという事は認めてはならないのだ。
最後にその羽ばたきは生み出したのは幸福な幻覚。
目の前に揺らぐそれをアンジュは振り払った。
理想と幸福の優しい夢に溺れるのなら。
溺れるくらいなら――私は喜んで苦痛を受け入れよう、と。
「何も怖くはないさ。苦痛は隣人なのだから」
いつでも隣に居座っているよと、笑みを浮かべ紡ぐ。
アンジュはすでに、それを受け容れているのだから。
けれど、知らぬのだろう。与えるばかりで、目の前のこの黒の王は。
「だからお前にも苦痛を与えよう」
どんな苦痛よりもいっそう愛しい隣人をと紡ぐ、アンジュのその腕が獣の、ライオンの頭へと変じる。
雄々しきその顔に、強き牙もつものに。
「腕のライオンはお前が欲しいようだ。与えてやってはくれないか?」
でないと私が食べられてしまうかもしれないからねとアンジュはその腕を前に。
大きく口を開けその牙を向ける。欠けるその身にアンジュのライオンは喰らいついた。
「与えることが出来るのなら、ライオンにも与えることは出来るだろう?」
そう言って、アンジュは瞳を閉じる。
このまま瞳を開いていれば――幸福が見えるのかもしれない。けれどそれは、目を閉じて見ないふり。
目を開けなければ見えもしないだろうと紡ぐとともに、力が入る。
代わりにこの腕で消してしまおうと思えば、ライオンの食む力が増す。
そしてその腕に伝わる感覚は、硬いその体が砕ける感触だった。
ぐらりとその体を傾げながらも羽ばたきは続く。
「さあ、いよいよ最後だね。この夢を終わらせるために絶対キミを倒してみせる!」
フェルトは手札をめくり、その一枚を掲げた。
「ボクは手札からスペルカード、無人造の機兵を発動! 自分のレベルと同数の機兵トークンをバトルエリアに召喚する!」
黒の王の羽ばたきは幸福な幻覚を紡ぎ、そして親愛の絆を繋ごうとしてくる。
けれど――それは心あるものに対して、だろう。
「いくら精巧でも幻は幻、機械である機兵にその効果は無効になる!」
召喚された機兵へと、フェルトは攻撃を命じる。
前へ、黒の王へと向かう30を超える機兵たち。羽ばたいても、幻覚はそれらには見えない。
その影に隠れながら、フェルトは黒の王へと近づいて、攻撃を翼へと向けてしかけた。
そしてその一撃を与えた事でフェルトは高らかと声にする。
「そして、この瞬間、機兵トークンの効果発動!」
その言葉に、機兵たちの動きが止まる。
「自身をリリースして、エリアにいる他の機兵トークン1体の能力をアップする!」
黒の王へと一番近い場所にいた機兵以外が消えてその力全てが集約されるのだ。
胸部の数字は一つずつ駆け上がり、そして33を刻む。
「残っている全ての機兵の力を1体に集めて黒の王に攻撃!」
ひとつに集えばその力は底上げされる。
黒の王の、その胸部を貫く一撃。そこから、その身はひび割れて砕けていく。
半身が、身体の上から落ちて砕けていく。その中でか細い声が、音無く響いていた。
理想も幸福も受け入れず、苦痛を選ぶ。それのなんと――こと、と。
かすれた声は消え入る様に、響かない。黒の王が最後に何を紡いだかはわからないままに。
細い糸でつながって、存在してはならぬ者たちの姿はこの場から全て消え去ったのだった。
大成功
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