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ラフェクレールの華心

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索

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 これは、とある街から旅立った、一人の勇者の物語。
 人とフェアリーが住まう街、ルミアリア。
 人間の青年が愛したのは、小さなフェアリーの少女。
 だが、帝竜との戦いに、戦う力を持たぬ少女を連れて行くわけにはいかない――そう思った青年は、旅立ちの日、少女にとある花を贈ったと言われている。
 青年の想いと花を受け取ったフェアリーの少女は、青年が帰ってくることを信じてずっと待ち続けていた。
 けれど――。

●ラフェクレールの華心
「というわけでね、勇者様の伝説について調べてきてほしいの!」
 グリモア猟兵のキトリ・フローエはいつものように、拡声器を用いて猟兵たちへ呼びかける。
 舞台はアックス&ウィザーズ。
 帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったと言われている、未だ所在の掴めない群竜大陸。
 その発見のため、かつて大陸に渡り帝竜ヴァルギリオスとの決戦に臨んだ“勇者の一行”の痕跡を探しに出掛けたことがある者も、少なくはないだろう。
 今回の依頼も、そのひとつだ。
 とある街に伝わる勇者にまつわる物語を辿り、勇者と縁の深い場所に向かってほしいのだとキトリは言った。
 世界各地に散らばる勇者の伝説。それを一つ一つ解き明かしてゆけば、将来的に群竜大陸に対する予知に繋がる可能性がある――ということらしい。
「街の名前は、ルミアリアっていうの。人間とフェアリーが一緒に暮らしている街でね、今ちょうど、お祭りが開かれているのよ!」
 祭りと言っても、内容はごくシンプルなもの。
「街を流れる大きな川にお花を流すお祭りで、勇者様がいた頃からずっと続いているらしいの」
 それだけでも伝説に近づけたような気分にならない? と、キトリは悪戯っぽく微笑んでみせる。
 普段は澄んだ水を湛える川は、年に一度のその日、色とりどりの花で満たされる。
 多くの人で賑わう川沿いの露店には、この日のために育てられたたくさんの花が並び、街中の至る所にも、花を積んだワゴンやバスケットにいっぱいの花を咲かせる花売り娘の姿が見受けられる。
 他にも花をモチーフとした雑貨や装飾品などを売る店や、歩き疲れた喉を潤してくれる花のシロップを溶かしたジュースなども売られているそうだ。
「花にね、想いとか、願いとか、そういうのを乗せて流すんですって。もちろん、ただ流すだけでも大丈夫!」
 例えば、大切な誰かに。遠い空の下、もう逢えないあの人に。
 もちろん自分自身への想いだって構わないし、極端な話、実際に託す想いは何でもいい――のだそうだ。
 幸いを願う気持ちも、手放してしまいたい想いも、どうしても伝えられないものだって、花は受け止めて、連れて行ってくれるから。
「本人に直接伝えたい想いとかは、そのまま伝えればいいじゃないって言われてしまいそうだし、あたしもそういうのは秘密にする必要はないと思うけど。……でも、例えばどんなに大切な相手でも、言葉にできない想いもきっと、あるでしょう?」
 とは言え、必ずしも祭りに参加することが求められているわけでもない。川沿いのカフェのテラス席で花咲くケーキに舌鼓を打ちながら、川を流れていく花を眺めるだけでもきっと楽しめるだろう。
 その日、花たちで彩られた川はそれだけで壮観だろうし、日々猟兵として戦いに明け暮れている中での束の間の休息と思って過ごすのもいい。
 勇者が生きていた“いつか”に想いを馳せながら、街でのひとときを楽しんでほしいとキトリは締めくくり、手の中にグリモアの光を灯す。
「良ければ後で、どんな物語に出逢えたか教えてちょうだいね。――それじゃあ、いってらっしゃい!」


小鳥遊彩羽
 ご覧くださいましてありがとうございます、小鳥遊彩羽です。
 今回はアックス&ウィザーズでのシナリオをお届け致します。

●シナリオの流れと補足など
 第1章:『花祭りの日』(日常)
 第2章:『夜空の下で探索を』(冒険)
 第3章:『???』(集団戦)
 となっております。

 第1章及び第2章において、【POW】【SPD】【WIZ】の判定はあくまでも一例です。
 特に気にせずやりたいことに対してプレイングを掛けて頂いて大丈夫です。

●第1章について
 街でのひとときをお楽しみ頂けます。
 時間帯は午前中。空は晴れて過ごしやすい気候です。
 花祭りに参加したり、買い物、食べ歩き、カフェで休憩…など、お好きなようにお過ごし頂ければ幸いです。
 露店で売られているものやカフェのメニューなどに関しては、全てご自由に設定して下さって構いません。花についても一般的な花があると考えて下さって大丈夫です(種類の指定は必須ではなく、また架空の花でも可です)。
 プレイングはあれもこれもと詰め込むよりも、ワンシーンに絞って掛けて頂くことを推奨します。
 なお、次章に移行した時点である程度の情報を入手しているという扱いになりますので、勇者の伝説に関する情報収集は必要ありません。

 ご一緒される方がいらっしゃる場合は【お相手の名前(ニックネーム可)とID】もしくは【グループ名】をご記載下さい。
 なるべく多くの方を描写できるよう頑張りますが、人数によってはプレイングに問題がなくともお返しする可能性があります。
 シナリオの進行状況、及びプレイングの受付などにつきましては、マスターページにて随時ご案内させて頂きますので、ご確認頂ければ幸いです。

 以上となります。どうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 日常 『花祭りの日』

POW   :    全力で楽しみ尽くす

SPD   :    色々な屋台や催しをハシゴする

WIZ   :    少しの工夫で祭りをもっと楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 心地よい風が吹く晴れ渡った空の下を、色とりどりの花たちが流れていく。
 早く弟か妹に逢えますように――と、花を手放した後、父と身重の母に倣ってぎゅっと両手を組み、目を閉じて祈る幼い子どもたちは、やがて顔を上げると満面の笑みを浮かべながら母の膨らんだお腹にそうっと手を伸ばし。
 川沿いのカフェのテラス席で流れていく花を静かに見送る初老の紳士の眼差しは、どこか懐かしむように和らげられていて。
 手を取り合って一輪の花を託す恋人たちの姿もあれば、川に架かる橋の上から束ねた花を投げ入れる者もいた。
 人々は自らの手で花を選び、想いを込めて、そして流れる水面に花を浮かべる。
 叶えるためのものではない、いくつもの想いや願い。それらの全てを抱いて、送り出された花たちは――遠く、果てのない世界へ旅立ってゆく。
クラリス・ポー
ミューさん(f03315)と
赤爪草にカンパニュラと勿忘草
六月に咲く野花のブーケ携えて
彩られた街はとてもいい香り
席についてからも流れる花々に
時々本能が揺れてしまうけれど
注文したのはミルクたっぷりのアイスティー
透明な青の興味に気付けば
猫舌なんですにゃ…とはにかんで答えた

人の数だけの花、想いの数だけの花
どれも綺麗なのに
花の川は壮観なだけでなく、懐かしくも思えた
共連れの君が胸の花を流す時は
私もブーケを浮かべよう

手放すのはどんな時も少し寂しい
でも私がそうであったように
私たちの花も誰かを慰め
力づけるかもしれないから

『お友達になりたいな』

託した私の想いが
何処かに辿り着く頃には
きっと願いが叶っていると信じて


ミュー・オルビス
クラリスさん(f10090)と

胸には白と薄青の生花を
藍色のリボンで結えたブートニア
檸檬の輪切りを浮かべた
エルダーフラワーティーを頂きながら
川沿いのカフェでひと時の休息を
クラリスさんは何を注文されたのかなと
向い席に座る彼女の軽食をそっと覗き見

幾千の花が水面を埋め尽くす光景は壮観で
人の数だけ流れ往く花があるのだと思えば
より美しいものに感じられたから
青空が黄昏色に染まる頃には
この胸に咲かせた花も水に
浮かべてしまおうと心に決める

一日を共にした花を見送るのは
少しだけ物寂しい心地もしたけれど

『あなたの事がもっと知りたい』

ブートニアに託した僕の想いが
世界をゆるり巡り終える頃には
きっと願いは叶っていると信じて



 たくさんの想いと花で彩られた街に溢れる香りは、どこか瑞々しくも優しくて。
 川の流れが臨めるカフェのテラス席、その一角にて。
 傍らを流れてゆく花々に時折揺れて浮足立つ本能をそっと封じ込めながら、ケットシーの少女――クラリス・ポーはアイスティーにたっぷりのミルクを注ぐ。
 かき混ぜればからん、と氷が触れ合って涼やかな音を立てた。
 ふと感じた視線は、向かいに座るミュー・オルビスのもの。輪切りのレモンを浮かべたエルダーフラワーティーのカップを手元に引き寄せる少女の透明な青に宿る興味の差し色に、クラリスは金の瞳を瞬かせ、
「猫舌なんですにゃ……」
「……そうなんですか?」
 はにかんで告げれば、瞬きの後にふわり綻ぶ仄かな笑み。
 クラリスの手元には、赤爪草にカンパニュラと勿忘草――六月に咲く野花を織り交ぜたブーケが一束。
 そしてミューの胸元には、ブートニア――藍色のリボンで結んだ白と薄青の生花が凛と慎ましやかに咲いていた。
 耳を傾ければ、川のせせらぎに混ざって耳に届く、人々の賑やかな声。
 人の数だけ、想いの数だけ流れ往く花。
 その彩りは途切れる気配を見せることなく、どこまでもどこまでも続いている。
「……綺麗、ですね」
「ええ、綺麗です。とっても!」
 ぽつり、ミューがそう零せば、クラリスは声を弾ませて何度も頷き。
 幾千の花たちが水面を埋め尽くす様は壮観で、けれどそこに誰かの想いが宿っているのだと思えば、より美しくも懐かしくも感じられて。
 見上げた先の鮮やかな空色が黄昏に染まる頃には、この胸に咲く花も水面に託そう。そう心に決めたミューが自らの手で選んだ花にそっと指先を触れさせれば、クラリスも小さな猫の手で、ブーケをきゅっと握り締めた。
 一日を共にし、想いを寄せた花たちを手放すのは、少しだけ物寂しい心地もするけれど。
 指先伝うその名残惜しい気持ちさえもきっと、花たちは何も言わずに受け止めてくれるだろうから。
(「……でも、私がそうであったように」)
 二人で見送った花たちも、誰かの心に寄り添って。小さな、けれど確かな光を与えてくれるかもしれないと、クラリスは思わずにいられなかった。
 花に託す想いは秘めたまま。
 けれど視線を重ねれば、自然と綻ぶ笑みに幾許かの面映さが混ざる。

 ――“お友達になりたいな”
 ――“あなたの事がもっと知りたい”

 託した想いが世界をゆるりと巡り、いつかどこかに、誰かの元に辿り着く頃には。
 きっと願いは叶っていると、そう信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
ぶらぶら散歩。

こういう祭りもいいもんだな。
普段しってる祭りっていや、サムライエンパイアのお囃子が聞こえてくるタイプの物ばっかりだったし。あと盆とか正月とか。

…大切な人、か。
ちょっと前なら主の顔が浮かんできたもんだけどなぁ。
いつの間にあの子の姿が浮かぶようになったんだろ?
今はまだ、正しくは意味は分からないけれど大切にしたい人なのはきっと確か。

なんとなく見かけた花のブローチ、一つ購入。

いつか渡せたらと思ったんだと思う。



 祭りの喧騒で賑わう街を、黒鵺・瑞樹は興味津々な青の眼差しを巡らせながらぶらりと歩き回っていた。
(「……こういう祭りもいいもんだな」)
 華やかでありながらも騒々しいものではない、たくさんの花に彩られた街並みと流れゆく水面。
 ナイフのヤドリガミである瑞樹にとって馴染みのある“祭り”は、やはりサムライエンパイアのもの。
 祭囃子が響く中、神輿を担ぐ人々が練り歩き、あるいは輪になって踊る――その光景もそれはそれでいいものだけれど、違う世界の祭りというだけでどこか新鮮な心地になる。
「……大切な人、か」
 ぽつりと言葉にすれば、脳裏に浮かぶ“あの子”の姿。
 少し前までならば、自らを武器として振るっていた主の顔が浮かんできていたはずだろうに、いつの間にか変わっていることを自覚したのは、つい最近のこと。
 今はまだ、それが何を意味するのか瑞樹にはわからない。けれど――。
 大切にしたい――そう思えるひとなのは、きっと確かだ。
 やがて瑞樹は散策の途中で、何となく見かけた花のブローチを購入した。
 いつか渡せたら。そう思ったのも何となくではあるけれど、ふと浮かんだ想いも確かなものであることに、違いはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

街中が花で溢れていて、心まで華やぐわね
浮き立つ気分のまま、川沿いの店にも心惹かれながら歩き

うん?花、流してみる?
誘われるまま並ぶ花を覗きこむ
んん……どれも綺麗ネ
好きと言われるとよく分からないケド、コレなら知ってるから
と選んだのはボリジ
食用花で使った事あンのよ、となんとも色気のない理由だけれど

相方が何を想い託すのか分からないケド
食用らしくその花のスパイスになればいい、と彼の流す花と共に送り出す

そうそうあの花、ワインに浮かべると色が変わるの
どこかのお店にあるかも知れないから、探してみましょうか
他のお花も食べれるカフェなんてあったらいいンだけど


火狸・さつま
コノf03130と

流れゆく色とりどりのお花に興味津々
きれい、だ、ね……
素直な尻尾がそわそわふわふわ揺れ揺れ
ん……ちょと、やて、みたい…かも。
コノも、一緒に、やろう…?と首傾げ
沢山の花々を見て回る

コノ、は…どんな花、好き?
明るい色も、落ち着いた色も、イ、よね
可愛いのも、華やかなのも……
食用…!コノ、お花も、使う、の?
今度、作て?

ふと、流れてた花々を思い出せば
俺、この花、すき。
きっと、どの花にもあうから…これに、する
選んだのはカスミソウ

一緒に流れゆく花との調和を思い描いて
あと、…共に過ごす、コノへ。カスミソウの花言葉でもある感謝の想いを密かにこめて。
ふわっと川へ送り出す


え!見たい…!行こう行こうっ



「きれい、だ、ね……」
「花がいっぱいで、何だか心まで華やぐわね」
 流れゆく色とりどりの花たちに、火狸・さつまは興味津々。そわそわふわふわ、ゆらゆらと、素直に揺れるふさふさの狐尾に、同じくどこか浮き立つ気分のまま、川沿いの露店にも心惹かれながら隣を歩くコノハ・ライゼも楽しげに目を細めて。
「ん……ちょと、やて、みたい……かも」
「うん? 花、流してみる?」
 さつまの口から溢れた音にコノハが確かめるように首を傾げれば、こくりと返る頷き。
「コノも、一緒に、やろう……?」
 無論、断る理由などなく、誘われるまま二人で並ぶ花を見て回る。
 この日のために咲いた花たちはどれも凛と誇らしげに見えて、どれを連れてゆけば良いのかすぐには決められそうにない。
 すると、さつまがこてん、と首を傾げた。
「コノ、は……どんな花、好き? 明るい色も、落ち着いた色も、イ、よね」
 可愛いのも、華やかなのも、どれも素敵で好きだと言うようにひとつひとつ指差しながらへらりと笑うさつまに緩く目を細めながらも、花へと戻るコノハの視線は途端に真剣なものになる。
「んん……どれも綺麗ネ。好きと言われるとよく分からないケド、コレなら知ってるから」
 そうしてコノハが手に取ったのはスカイブルーの星が咲いたようなボリジの花。おほしさま、と青い瞳を輝かせるさつまに、コノハは小さく肩を竦めて。
「食用花で使った事あンのよ」
 何とも色気のない理由だとコノハは思う。けれどさつまはやっぱりきらきらと瞳を輝かせたまま。
「食用……! コノ、お花も、使う、の? 今度、作て?」
「ん、今度ネ」
 期待に満ちた眼差しに、応えぬはずはない。
「たぬちゃんはお花、どうするの?」
 次は彼の番とばかりに首を傾げるコノハに、さつまは小さく頷いてほんの少し、視線を彷徨わせる。
 流れてきた花を思い出せば、ふと目に留まる可憐な白い花。
「俺、この花、すき。きっと、どの花にもあうから……これに、する」
 それは他の花たちを引き立てるように慎ましやかに咲きながらも、自身もそこにあるのだと教えてくれる白い花――カスミソウ。
 一緒に流れゆく花との調和を思い描きながら、さつまはちらりと隣のコノハに目をやった。
 ――密かに花に込めるのは、共に過ごす彼への、カスミソウの花言葉でもある感謝の想い。
 ふわっと送り出されたカスミソウに寄り添うように、コノハもボリジの花を手放した。
 相方たるさつまが何を想い託すのかまではコノハにはわからなかったけれど、食用らしくさりげない隠し味を添えるような、そんなスパイスになればいいと思いながら。
 見送ってぐっと伸びをしてから、コノハはさつまに笑いかける。
「そうそうあの花、ワインに浮かべると色が変わるの。どこかのお店にあるかも知れないから、探してみましょうか」
「え! 見たい……! 行こう行こうっ」
 途端にぱあっと満面の笑みを浮かべながら、さつまはぶん、と尻尾を大きく振って、今にも駆け出しそうな勢いでコノハの手を引き歩き出す。
「他のお花も食べれるカフェなんてあったらいいンだけど……」
 数え切れないほどの花で溢れる今日ならば、きっと見つけられるだろう。
 そうしてコノハの目の前で、食べられる花にまた瞳を輝かせるさつまの姿が見られるのは、そう遠くない先の話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
私が物心ついた時にはもう極寒の国の石塔に居た
フェアリーの生態研究の為と言いながら対象は私1人
研究者の人間達も嫌いではなかったけど同族と暮らす事に憧れてた
「人間とフェアリーがこんな風に…」
国を出た私を拾ってくれた子が治める旅館暮らしの今だって幸せなのに
それでも他種族は“違う”から
時々とても遠くて

それに此処はきっと冒険でも生活でもフェアリーが導き手で在れる事が普通の街
私の拾い主は強くて導きなんて不要で
恩返しの為誰よりも彼女に必要としてほしかったのに
「…馬鹿よね」
それでも彼女と居る
…それでも導き手としてパートナーを探してる

未だ終わらぬ迷いと憂いと淋しさの花を放して彷徨う



 物心ついた時にはもう、極寒の国の石塔に居た。
“フェアリーの生態研究の為”――そう言われてきたけれど、その対象であるフェアリーは己一人だけ。
 己という種族について日々研究に勤しむ研究者たちのことも決して嫌いではなかったけれど、同族と暮らすことに、ずっと憧れていた。
(「人間とフェアリーがこんな風に……」)
 人間の肩に、あるいは頭にちょこんと座ったり、周囲を飛び交うフェアリーの姿。花屋の店先でも、鮮やかな翅を震わせながら客を呼び込む同族の姿が見える。
 当たり前のように人間とフェアリーが共に在る日常の光景は、氷雫森・レインにとっては想像以上のものだった。
 いつしか国を出た自分を拾ってくれた少女が主人を務めるあの舘で過ごす今も、幸せではあるけれど。
 それでも他の種族はどれも、レインにとっては“違う”ものだから。
 時々、ひどく遠いと思うこともある。
(「……それに、」)
 この街のフェアリーたちは皆、日々の生活においても冒険においても、当たり前のように誰かの“導き手”として在れるのだろう。
 レインを拾ってくれた少女は、小さなフェアリーの導きなど必要としない強さを供えている。
 けれど、拾ってくれたことへの、助けてくれたことへの恩返しに、誰よりも彼女に必要としてほしかったのだと、レインは改めて実感する。
「……馬鹿よね」
 それでも彼女と共に在り続ける自分に。
 それでも、導き手としてパートナーを探している自分に。
 呟いて、レインは薄く氷を張ったような透明な翅を震わせながら飛び立った。
 未だ出口の見えぬ迷いと、終わらぬ憂いと――そして埋まらぬ淋しさを、手放した花に閉じ込めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
花祭りに参加


お花で溢れかえる日…
とても素敵なお祭りでございますね
勇者と思しき一人がフェアリーの少女に贈ったお花は
一体何のお花だったのでしょう
帰還を約束するものか、それとも…
勇者たちの物語、色々と考えは巡りますね
同じお花ではないかもですけれど
わたくしたちも願いを託して川に流しましょう

鮮やかな青紫のカキツバタを購入
川に流す時には祈りをこめて
カキツバタの花言葉は「幸運」
狭霧さまに、この先も限りない幸運が訪れますように

流れていく色鮮やかな花々を見送りながら
狭霧さまの笑顔につられてつい顔がほころび
さ、狭霧さま、いかがされたのです?

このような楽しい日々が
いつまでも続きますように…


朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)と
花祭りに参加

川に流す花に思いをこめる
なかなかロマンチックなお祭りですね
古の勇者さんたちも
ここで花を流したんでしょうか


花はそうね、ヒマワリがいいわ
いつも暖かな笑顔の貴方だから
これが一番に思いついたの
こめる思いはベイメリアへの感謝

そっと水面へヒマワリの花を流します
でも、思わず笑顔になってしまうかもしれません
だってこの時間を一緒に過ごせる
今がたのしいんですもの

ベイメリアに微笑みをかえされると
なんだか少し恥ずかしくなって照れ隠しに
ベイメリアの脇腹をくすぐっちゃいます
こちょこちょこちょこちょ~



「とても素敵なお祭りでございますね」
 花で溢れ返る街の姿に、ベイメリア・ミハイロフは感嘆の息ひとつ。
「なかなかロマンチックなお祭りですね。……古の勇者さんたちも、ここで花を流したんでしょうか」
 露店に飾られた花たちを眺めやりながら、朝沼・狭霧は何とはなしにぽつりと。
「そうですね、……勇者と思しき一人がフェアリーの少女に贈ったお花は、一体何のお花だったのでしょう?」
 帰還を約束するものか、それとも――。
 狭霧の呟きに小さく頷きながら、自身もまた浮かぶ疑問を零すベイメリア。すると、二人の会話が聞こえていたのか、店番らしい女性がそれはね、と切り出した。
「この街から少し離れた所にある、野原に咲いてる花だよ。……でも、それはうんと昔の話さ。今は荒れ果てちまって、花が咲いているかどうかもわからない」
 魔物がいるからね、と付け加えられた言葉に、二人は顔を見合わせ、なるほどといった風に頷く。
「では、同じ花ではありませんけれど、ね、狭霧さま、わたくしたちも願いを託して川に流しましょう」
 勇者の物語に、巡る想いは尽きることはなく。
 やがて鮮やかな青紫のカキツバタを手に取ったベイメリアの傍らで、狭霧は鮮やかな大輪のヒマワリに手を伸ばす。
 二人、選んだ花を手に、川のほとりへ足を運ぶと、そこにはたくさんの人々が、それぞれの想いと共に花を流す姿があった。
(「狭霧さまに、この先も限りない幸運が訪れますように」)
 幸運の花言葉を持つカキツバタに、ベイメリアは狭霧への想いを託す。
(「いつも暖かな笑顔の貴方だから、これが一番に思いついたのよ」)
 狭霧はベイメリアへの感謝を込めて、ヒマワリをそっと川の流れに乗せた。
 流れていく色鮮やかな花々を見送りながら、ベイメリアがふと傍らを見やれば、思わずといった風に破顔する狭霧と目が合う。
(「だってこうして、一緒に同じ時間を過ごせる今が楽しいんですもの」)
 狭霧の笑顔につられるように、ベイメリアも笑みを綻ばせる。すると狭霧の手がベイメリアへと伸び――かけて、ふるりと震えながら引っ込められた。
「……さ、狭霧さま、いかがされたのです?」
「何でもないわ。ふふ、……何だか照れくさいだけ」
「そう、なのですか?」
 それなら良かったです、とベイメリアは安堵の息ひとつ。
 ――このような楽しい日々が、いつまでも続きますように。
 遠く流れていった花に、もう一つ想いを重ねるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コルチェ・ウーパニャン
すごーい、お花って本当にきれいだなあ、すごいなあ…コルチェ、こういうのもっと見たい…
あっそうだ、コルチェ、お買いものに来たんだった!
メゾンあじさいでおるすばんのロップちゃんのためにアジサイの鉢植えを買いに来たのです!

おねーさんおねーさん、世界で一番きれいなお友達のために、世界で一番きれいなアジサイの花、くださいな!
青からピンクのグラデーションがかわいいのがコルチェの好みです!

買えたらえいえいって鉢植えを抱えて、そのままお祭りを探索だ!
世界を渡ってメゾンに来てもらうアジサイさんだから、この世界へ、コルチェからのご挨拶もかねて!
お祭りのあいだに、世界のすてきなこと、いっぱい教えてね、アジサイさん!



「すごーい、お花って本当にきれいだなあ、すごいなあ……」
 魔法光ファイバー製の髪をプリズムのようにぴかぴかと光らせながら、コルチェ・ウーパニャンは硝子玉のような瞳にたくさんの花の色を映す。
 赤い花、黄色い花、ピンクや白やオレンジの花に、紫の花。全てが違う表情を見せてくれる花たちは、どれだけ見ても飽きなくて。もっと見たい、とコルチェは宛てのない散策に繰り出そうとして――はっと我に返った。
「――そうだ、コルチェ、お買いものに来たんだった!」
 いけないいけないと呟いて、コルチェは今しがた思い出した今日の目的を頭の中でもう一度なぞる。
 今頃一人寂しく部屋でお留守番をしているだろう“同居人”へのお土産に、遠路はるばるアジサイの鉢植えを買いにやって来たのだ。
 そうと決まれば目的地までまっしぐら。大きな花屋の店先で足を止め、コルチェはすっと息を吸い込んだ。
「おねーさんおねーさん、世界で一番きれいなお友達のために、世界で一番きれいなアジサイの花、くださいな! 青からピンクのグラデーションがかわいいのがコルチェの好みです!」
 元気よく告げれば、店主の女性も任せてと満面の笑み。やがて奥から持ってきてくれた、咲き始めたばかりの紫陽花が宿す色は、コルチェの希望通りのものだった。
 移りゆく色に自然と綻ぶ笑み。これを見た“ロップちゃん”はどんな顔をするだろうとわくわくする気持ちを巡らせながら、紫陽花をお買い上げ。
 一人で持って帰れる? なんて心配の声にも大丈夫です! と笑顔で応え、えいえいと鉢植えを抱えながらコルチェはそのまま花祭りへと繰り出した。
 世界を渡って二人の家へ来てもらう紫陽花だから、この剣と魔法と竜の世界――アックス&ウィザーズへの挨拶も兼ねて。
 満面の笑みを咲かせながら、コルチェは腕の中の紫陽花に呼びかける。
「お祭りのあいだに、この世界のすてきなこと、――いっぱい教えてね、アジサイさん!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーラ・フリュー
うららさん(f00650)と
わあ、お花が沢山でとても綺麗です…!美味しそうな物も沢山あって、目移りしてしまいますね…。

私も川にお花を流して…。
(…何処かにいるあの人へ。あの時はごめんなさい…そして、進む道に幸あらんことを…)
…流した内容ですか?他の方が幸せになれますように…というお願いです…。…やっぱり、知り合った方には幸せになってもらいたいので…。
…あ、ええと。うららさんはどんなお願い事を?…なるほど、強敵。うららさんらしいですね…!

さて、後はのんびり食べ歩きと行きましょうか。私も楽しみです…!
あ、その前に…スマホでこの川の写真だけ撮らせて下さい。綺麗だったので、残しておきたかったんです…。


五曜・うらら
シーラさん(f00863)と一緒です!

ほほう、花を流すお祭り……
えんぱいあにも船や人形を流すお祭りがありましたっ!
妖精の住む町で、なんだか見た目にも素敵ですよね!
私たちも流してみましょうっ!

あら、シーラさん、何か思う事がおありで?
お悩みがあれば聞きますよ!あ、言えない事を流すのでしたかっ!

ふふ、私は幸せですよ!猟兵としての生活も、出会いもっ!
シーラさんと出会えたこともその一つです!
あ、そうでしたっ!私はですね、強敵との出会いを願いました!

あ、すまほ……
ううむ、私もからくりが苦手と言わず持った方がよいでしょうか。
光画をお手軽に、ってすごいですよね!

それにしても花の蜜を使ったお菓子、楽しみですね!



「わあ、とても綺麗です……!」
 街を彩るたくさんの花と、美味しそうな食べ物の数々に目移りしながら、シーラ・フリューは淡い緑の瞳をいつになく輝かせて。
「えんぱいあにも、船や人形を流すお祭りがありましたっ! 妖精の住む町で花を流すお祭りとは、なんだか見た目にも素敵ですよね!」
 五曜・うららは朗らかに笑って、私たちも流してみましょうとシーラを誘う。
 見繕った花を手に川沿いへ足を運ぶと、既にそこには多くの人々が集まって、それぞれに花を流していた。
 人間だけではない、自分の顔くらいの大きさの花を抱えて飛翔するフェアリーの姿も見える。
 この世界ではありふれた光景ではあるけれど、自身の故郷であるサムライエンパイアでは決して見られないだろう日常に、うららはどこか微笑ましく感じながらも手にした花を水面に浮かべた。
 そして、シーラも。
(「……何処かにいるあの人へ。あの時はごめんなさい……そして、進む道に幸あらんことを……」)
 そう願い、花を流したシーラの横顔に何かを感じたか、うららはぱちぱちと目を瞬かせ、
「あら、シーラさん、何か思う事がおありで? お悩みがあれば聞きますよ! あ、言えない事を流すのでしたかっ!」
 つい軽い調子で聞きながら、うららはぱたぱたと慌てたように。
 一方シーラは大丈夫です、と緩く首を横に振り、視線をちらりと川へ移した。
「他の方が幸せになれますように……と、お願いしました。……やっぱり、知り合った方には幸せになってもらいたいので……」
「――私は幸せですよ! 猟兵としての生活も、出会いもっ! シーラさんと出会えたこともその一つです!」
 すかさずうららが何の迷いもなく、満面の笑みでそう告げるものだから、シーラは一瞬、驚いたように動きを止めて。そうして、
「……あ、ありがとうございます……ええと、うららさんはどんなお願い事を?」
「あ、そうでしたっ! 私はですね、強敵との出会いを願いました!」
「……なるほど、強敵。うららさんらしいですね……!」
 一子相伝の秘剣を受け継ぎ、年若いながらも既にいくつもの剣術を修めた剣の申し子。日々研鑽を積み、新たな剣術を生み出し続けているうららの剣の腕はシーラもよく知るところだ。
 そんな彼女が強敵を求めるのも、自然と納得がいった。
「さて、後はのんびり食べ歩きと行きましょうか。あ、その前に……スマホでこの川の写真だけ撮らせて下さい」
 川の流れに乗ってゆったりと流れていく、想い乗せた花々。美しいその景色を記憶だけでなく記録にも残しておきたくて、シーラはスマホの小さな画面に、二度と巡り会うことの出来ない一瞬を収めていく。
 その様子を見ながら、うららはむむ、と小さく唸り、
「あ、すまほ……ううむ、私もからくりが苦手と言わず持った方がよいでしょうか。光画をお手軽に、ってすごいですよね!」
「……そう、ですね……後から見返して、どんな事があったかを……思い出せるのは、良いと思います……お待たせしました、行きましょう」
「はい、行きましょう! 花の蜜を使ったお菓子、楽しみですね!」
「私も楽しみです……!」
 街でのひとときを心ゆくまで堪能すべく、二人は踵を返し歩き出す。
 未だ見ぬ花蜜菓子を思えば、足取りは自然と軽やかに。乙女二人が語らうならば、たくさんの話の種に――いくつもの綺麗な花が咲く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

忍冬・氷鷺
綾華(f01194)と

アレは、お前と過ごすのには不要と思ったんでな
(世界との隔たり。己と他との境界。壁を担う"鬼の面")
(友を前にし、其れを被る必要は何処にもない)

…それに、確りと留めておきたいだろう?
美しい景というものは
花であれど、――人であれど
零す言葉の向かい先、その真意は己の裡に

…口説く時に、か。
良く覚えておくとしよう


奇遇だな
俺も綾華にと考えていた
願いを一つ。花に託そうと
まぁ、口にしてもいいんだが
お互いに何を流すのか
想像するのも一興だろう

悪戯めいた微笑みを向け
凛と咲いた深緋の花をそっと手に

綾華
(美しき我が友よ。どうか君が、悔い無く時を歩める様に。そして願わくば、)

君に多くの幸在らんことを


浮世・綾華
氷鷺(f09328)と

おや、どんな心境の変化?
きれーな顔、見せびらかしちゃってまあ
一瞬瞬くも、知らぬ顔
(調子、狂うんだよなぁ)
氷鷺、ひとついーこと教えてやるよ
そーゆー言葉は女を口説く時に使うんだぜ?と揶揄うように

ま、折角だし、花流そ
(なぁんて言ったものの
大切な人への想いは一度捧げれば十分)

(彼岸のあの人への
最初で最後の花はもう贈ったから)

――氷鷺は誰に贈んの?
俺はねえ…と指差すは目の前の男
ま、色々と込めて流すよ
内容はないしょ
お前の思考とか、かなり未知だわ

流すは紫水晶の淑やかな花

(お前の持つ強さを
純朴で優しい真っ直ぐさを少しでも持てたら
近づけたらと今は少しだけ想う
強くなりたい、理由があるから)



「おや、どんな心境の変化? きれーな顔、見せびらかしちゃってまあ」
 顔を合わせるなり浮世・綾華は一瞬瞬くも、知らぬ顔で開口一番に疑問符をつけた。
「アレは、お前と過ごすのには不要と思ったんでな」
 いつも被っている“鬼の面”。それは世界との隔たりであり、己と他との境界であり、決して超えさせることのない壁だ。
 けれど友を前にして、それを被る必要はどこにもない。
 ゆえに外してきた――忍冬・氷鷺にとっては、それだけのことだったのだけれど。
(「……調子、狂うんだよなぁ」)
 いつも以上に胸の内を悟られてしまいそうな心地が面映い。
 そんな綾華の胸中を知ってか知らずか、氷鷺は事もなげに。
「……それに、確りと留めておきたいだろう? 美しい景というものは、花であれど、――人であれど」
 真意は己の裡に秘めたまま、零す言葉の先には友の姿。
 そんな氷鷺の眼差しと言葉を受け取った綾華はというと。
「氷鷺、ひとついーこと教えてやるよ。そーゆー言葉は女を口説く時に使うんだぜ?」
 思わず吹き出しそうになりながらも揶揄うような“忠告”を一つ。
「……口説く時に、か。良く覚えておくとしよう」
 けれどやはり氷鷺は取り澄ましたような表情で返してくるから、綾華はやはり、いつにも増して調子が狂ってしまうのを実感する。
「ま、折角だし、花流そ」
 なんて本題はこちらとばかりに言ってはみたものの、大切な人への想いは綾華にしてみれば一度捧げればそれで十分で。
 彼岸のあの人への、最初で最後の花はもう贈ったから。
 だから、今は――。
「――氷鷺は誰に贈んの? 俺はねえ……」
 そうして目の前の男を指で示せば、ゆるりと瞬く白銀の瞳。
「奇遇だな。俺も綾華にと考えていた。願いを一つ。花に託そうと」
「へえ、お前も? ま、色々と込めて流すよ。中身はないしょ」
「まぁ、俺は口にしてもいいんだが、お互いに何を流すのか想像するのも一興だろう」
 悪戯めいた微笑みを向けながら、氷鷺は傍らの青年の瞳の色に似た、凛と咲く深緋の花をそっと水面へと。
「お前の思考とか、かなり未知だわ」
 気安くそう告げながら、綾華は紫水晶の淑やかな花を流れに浮かべた。

 並んで送り出された花は、あっという間に他の花たちと混ざり合い、溶け合って、彼方へと過ぎてゆく。
 刹那の邂逅と、永遠の別れ。託された想いの行方は、誰も知らないまま。
 それでも、人は、何かの想いを託す。そういう祭りなのだと聞いた。
(「――綾華、」)
 美しき我が友よ。どうか君が、悔い無く時を歩める様に。
 そして願わくば、――君に多くの幸在らんことを。
 願う氷鷺の横顔をちらりと見やりながら、綾華も願った。
(「お前の持つ強さを、純朴で優しい真っ直ぐさを少しでも持てたら」)
 そうしてその背に一歩でも近づけたらと、今は、少しだけ想う。
 ――強くなりたい。
 そう願うだけの理由が、出来たから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼切・雪火
マコ(f13813)とさゆり(f0077)と行動
アドリブ大歓迎!

2人と、どでかいケーキを食べよーう!
食べても食べても尽きなそうで、果物も沢山入ってて
花の香りもする
なんだ、ここは天国か

くちいっぱいにケーキをほおばって。
あまい。
くだものは、ちょっとすっぱい。
2人の顔を見て、これが「美味しい」で良いんだと確認して
美味しいな!楽しいな!
2人と食べると何でも美味しいよ!

マコ、遠慮してないか?
もっと食っておっきくなってくれよ。
俺からも苺を添えてやる、とっておきだぞ。

確かに口の中は「あまい」ばっかりだ
俺もマコのご飯がいい!
さゆり、今日は肉かなー、しょっぱいのがいいな!


四・さゆり
明日知・理(f13813)鬼切・雪火(f04419)と一緒。
アレンジ大歓迎よ。

ーーー

どこを見てもお花がいっぱい、

それに。
今日は、いつもの良い男とかわいい雪火も一緒なの
すてきでしょ?

ふたりの袖を引いて

折角だから、みんなで出来ることが良いわね
…挑戦、よ

わたしの半分くらいはありそな、三段ケーキ

ふふ、雪火、おいしいわね

ほっぺのクリームを取ってあげる、
かわいい
ちょっとのお行儀は許してあげましょ

あら。マコ
食べてないじゃない、男見せてみなさい
いちごをお皿に添えてあげましょ

甘いもので満たされたお腹。
幸せいっぱい、ね。

けれど、
ちょっと甘すぎたかしら。

マコのごはんが食べたいの。
雪火と何を食べたいか、相談しましょ。


明日知・理
さゆり(f00775)、雪火(f04419)と
アドリブ歓迎

-
ケーキを食うことになった
とりあえずさゆりと雪火に好きなだけ食わせ、キツそうだったら俺が何とかする
一番手前をフォークでつつく
優しい甘さと香りが旨い

さゆりが雪火のお姉さんであるかのような光景が微笑ましくて
何より
さゆりと雪火の、二人の幸せそうな顔が、嬉しくて

──
(同時に、今はもういない弟妹たちとの光景を思い出す
俺には彼らの為に花を流す資格もなく
…ただ、それでも

そんな感情は、ひた隠しにして)
──

「…時間はまだあるから、ゆっくり考えておけ」
そう言って、貰った苺を頬張る
…ケーキの甘さに舌を焼かれていたからだろうか
やけに、
酸味が強く感じられた



 右を見ても左を見ても、どこを見てもお花がいっぱいの世界。
「折角だから、みんなで出来ることが良いわね。……挑戦、よ」
 四・さゆりはぽつりと呟き、いつもの良い男――明日知・理と、もう一人の可愛い連れ――鬼切・雪火の袖を引いた。
 ――というわけで。
 どん、と。
 三人の目の前に、さゆりの半分くらいはありそうな三段重ねのケーキが置かれることとなった。
 たっぷりの生クリームで包み込まれたスポンジの上に色鮮やかなフルーツがふんだんに散りばめられた、とても大きなケーキだ。
「ほんとにどでかいケーキだなー!」
 雪火の瞳が宝石のようなフルーツたちに負けないくらいきらきらと輝いて、まあ、とさゆりも初めて見る大きさのケーキに興味津々だ。
「まあ、取り敢えず。二人で好きなだけ、食え」
 一先ず様子を見るつもりの理が二人を促せば、こくりと――とても真剣に――さゆりが頷き返す。
「もちろん。食べるわよ、雪火」
「おう、食べよーう!」
 瞳がきらり。フォークを構えて、――いざ。

 食べても食べても尽きることがなさそうで、大好きな果物もたくさん入っているし、ふわりと柔らかな花の香りもする。
「なんだ、ここは天国か?」
 思わずといった風に零しながら、雪火は口いっぱいにケーキを頬張る。
(「あまい。……くだものは、ちょっとすっぱい」)
 でも、美味しい?
 これが“美味しい”でいいのかと、二人の顔を見れば、さゆりが微笑んで小さく頷いた。
「ふふ、雪火、おいしいわね」
「ああ、美味しいな! 楽しいな! 二人と食べると何でも美味しいよ!」
「……ほら、クリームをつけちゃってかわいいんだから。ちょっとのお行儀は許してあげましょ」
 満面の笑みを浮かべながらはしゃぐ雪火の頬にそっと指を伸ばし、さゆりはクリームを拭ってやる。
 そんな二人の様子を見守りながら、理も一番手前の層をフォークでつついていた。
 優しい甘さと香りが美味しくて、それから、さゆりが雪火の“お姉さん”であるかのような光景が微笑ましくて。
 ――何より、さゆりと雪火の。二人の幸せそうな顔が、嬉しい。
「……、」
 そして、同時に、理は今はもういない弟妹たちとの光景を思い出していた。
 もしかしたら、こんな風に。一緒にテーブルを囲んで大きなケーキを食べる日も、あったかもしれない。
 けれど、どんなにあたたかで穏やかな光景を願ったところで、夢は夢でしかない。
 彼らのために、花を流す資格もない。
(「……ただ、それでも、」)
「あら。マコ。食べてないじゃない、男見せてみなさい」
「マコ、遠慮してないか? もっと食っておっきくなってくれよ」
 さゆりと雪火の声が、理の意識を“今”へと連れ戻す。
 はっと我に返った時には、目の前の皿に真っ赤なイチゴが二粒、寄り添うように慎ましく座っていて。
 ひた隠しにした感情は、どうやら悟られた気配はなさそうだった。

「幸せいっぱい、ね。けれど、ちょっと甘すぎたかしら」
「確かに口の中は“あまい”ばっかりだ」
 甘いもので満たされたお腹に、さゆりは満足そうではあるけれど。口の中だけでなくお腹の中まで甘くなってしまったようで、雪火もいっぱいになったお腹をさすりつつ、うんうんと同意するように頷いていた。
 さゆりはそのまま、理へと視線を移し。
「ねえ、マコのごはんが食べたいわ。雪火は何がいい?」
 次いで雪火を見やれば、大きなケーキを心ゆくまで堪能したはずの瞳に再びきらきらとした輝きが戻ったようだった。
「俺もマコのご飯がいい! さゆり、今日は肉かなー、しょっぱいのがいいな!」
「……時間はまだあるから、ゆっくり考えておけ」
 期待に満ちた眼差しに素っ気なく――いつもの調子で返し、理は二人に貰ったイチゴを一粒ずつ頬張る。
 真剣に顔を突き合わせて相談する二人の声を聞きながら噛み締めれば。
 ケーキの甘さに舌を焼かれていたからだろうか、――やけに、酸味が強く感じられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

花の流れる綺麗な川
1人で游いでいってはダメよ?

膨らむ人魚の頬を笑ってつつき
花を選ぶ
いつも桜では芸がないわ
リィのような花に願いを託すの
月下美人はリィのようだけど
この戀を儚く終わらせたくない
だから鈴蘭を
可愛い人魚のような花に込める願い

リルがいつだって幸せに笑っていられますように

辛い過去を生きてきて
今も苦しんでるのは知ってる

流す寸前で鈴蘭にあたしの角に咲く桜を添え
どこまでも一緒でいられるように
おまじない

リィは桜?大きいわね
初めて見た
何を願ったの?秘密?
狡いわ

笑い合う笑顔が咲いて
ほら、こんなにも幸せ
願わくばずっと
この世が終わっても
こうして2人笑いあって生きていきたいわ


リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アレンジ歓迎

わ、見て、櫻!
川に花が咲いてるよ!

花祭りは鮮やかで願いと幸せの歌に満ちていて湖面の瞳もきらきら煌めく
お、泳がないよ!

少し膨れてみれば笑顔でつつかれる
また僕をからかったな?
いいよ、許す
花を選ぼう
櫻宵を驚かせられるように、ひっそり選んだのは――龍桜!
掌サイズの大きい桜!
初めて見る?僕もだ
ご機嫌に尾鰭をひらり

さぁいっておいで
叶えておくれ
僕の、願いは――

櫻宵が幸せでいてくれますように
過去の呪縛から解かれて
笑っていて欲しいから

君には内緒
なら、僕は僕の鱗を添える
僕は鈴蘭?可愛くていい
君はいつだって僕の幸せを願ってくれるんだ

君は僕に笑顔を幸せをくれる
嗚呼ずっと
この手を離さない



「見て、櫻! 川に花が咲いてるよ!」
 鮮やかな花綻ぶ水面の光景があまりにも綺麗だったから、リル・ルリは凪いだ湖面のような薄花桜の瞳をきらきらと煌めかせて――。
「――リィ、ひとりで游いでいってはダメよ?」
「お、泳がないよ!」
 悪戯めいた声で告げる誘名・櫻宵に、リルは跳ねる尾鰭を無理やり沈めながら小さく頬を膨らませた。
 その膨らんだ頬を白い指先でつつきながら、櫻宵は楽しげに笑う。
「また僕をからかったな? でも、いいよ。今日の僕は機嫌がいいから、許す」
「うふふ、ありがと、リィ。さ、花を選びに行きましょう?」
 込める想いは決まっているけれど、問題は花だ。
 自らの名にも込められた桜は、櫻宵の竜角にも綻ぶ花。そしていつもならばやはり桜を選んでいただろうけれど、いつもと同じでは芸がない。
 せっかくならばリルのような花に願いを託したいと、櫻宵は思う。
 例えば、夜の空の下で一夜限りの美しく白い花を咲かせる月下美人。
 けれどこの戀を儚く終わらせたくないから、櫻宵が選んだのは可憐な鈴蘭の花。
 一方、リルは櫻宵を驚かせようと、彼に隠してひっそりと龍桜を選んでいた。
「じゃん、どうだい、櫻」
「リィは桜にしたの? 随分と大きいわね、初めて見た……」
「初めて見る? 僕もだ。……僕は鈴蘭? 可愛くていいね」
 リルの掌の上で咲く、大きな桜の花。驚いたようにしげしげと覗き込む櫻宵に、リルはご機嫌な様子で尾鰭をひらりと揺らす。

 耳を澄ませば、願いと幸せの歌が聴こえてくる。
 知らず小さく歌を口遊みそうになりながら、リルは掌の桜に願いを込める。
(「櫻宵が、幸せでいてくれますように」)
 彼を今もなお縛り付け、苦しめる過去。
 その呪縛から解き放たれた世界で、笑っていて欲しいから。
 可愛い人魚のような鈴蘭に、櫻宵も未来永劫変わることのない願いを込める。
(「――リルがいつだって、幸せに笑っていられますように」)
 彼が辛い過去を生きてきて、今も苦しんでいることを櫻宵は知っている。
 その苦しみを少しでも和らげられる存在でありたいと、櫻宵は傍らへ視線をやって。
「リィは何を願ったの?」
「ふふ、君には内緒」
「あら、秘密? 狡いわ」
 でも、言葉にして伝えなくとも、互いに伝わっているような気がした。
 そして、水面に浮かべる直前に、櫻宵は鈴蘭に自らの角に咲く桜を添える。
「どこまでも一緒でいられるように、おまじないよ」
「それなら、僕も――」
 リルもおまじないだと、自らの鱗を乗せた。
「さぁ、いっておいで。叶えておくれ。――僕たちの、願いを」
 揺らぐ水面に二人の手で咲かせた花。
 その色が遠く流れてゆくのを見送ってから、櫻宵とリルは互いに顔を見合わせ、笑みを咲かせる。
(「ほら、こんなにも幸せ」)
 願わくばずっと、例えこの世が終わっても、こうして二人、笑い合って生きていきたいと櫻宵は願い、その願いを分かち合おうと、リルはそっと手を伸べた。
(「君はいつだってこんな風に、僕に笑顔を幸せをくれるんだ」)
 だから、これから先もずっと。
 ――この手を決して離さない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と
カガリとこうして祭に赴くのは久しぶりだ
俺の住む遺跡の砦に植える花を探そう

この季節、紫陽花や菖蒲などの青や紫の花に目が行く
種や苗が売っていればいいが、なければ今日は見るだけ
紅茶用や衣類を香付けにラベンダーがあればそれも

お前は何か気になる花はあるか?
あればそれも植えよう

彼がいつもしている赤いリボンに菫を買って糸で括り付ける
付き合わせた礼だ
可憐だがコンクリート割れ目からも咲く逞しい花だ
城門に添わせるのもいいだろう
ついでに食えるぞ

花の命は短い 俺がそうであるように
花を飾ったお前の姿を目に焼き付けておこう

お前も俺を花で飾ってくれるのだな
少しだけでも微笑めているだろうか


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

戦い以外でまると出かけるのは久しぶりだ

まるの砦は、遺跡の一室に辛うじて寝泊りしているようなところで…
やはり、まるは生きているのだから、生きたものが欲しいな
育ちやすく、手入れがしやすく、できれば年々増えていくような
まるは大食らいなので、食えるものなら尚いいが…
花売りに聞いてみよう、みよう

何だろう。菫…?
カガリは、食える花でなくてもいいのだが(くすくす)
野の花は強いな
(儚い命と聞いて)…ならば、まるにはこれだ(芍薬の花を胸に挿し込み)
牡丹と違って、冬には朽ちてしまうが。根は生き続ける。
季節になれば何度でも、花を咲かせるぞ。生きているからな。
あと、薬にもなるらしいぞ。



 こうして二人で祭りに――戦場以外の場所に赴くのは、随分と久しく。
 多くの花の彩に溢れるルミアリアへと訪れたマレーク・グランシャールの目的は、自身が塒とする遺跡の砦に植える花だ。
 湖の畔にある、打ち捨てられた城砦。
 その一室に、辛うじて寝泊まりをしているような場所。
 出水宮・カガリも良く知る所だからこそ、花を求めるマレークの気持ちも理解できた。
「やはり、まるは生きているのだから、生きたものが欲しいな」
 カガリが思い浮かべるのは、育ちやすく、手入れがしやすく、できれば年々増えていくような――ついでに言うなら、大食らいのマレークが食べられるような花であれば尚良いと、道行く花売りに心当たりはないか尋ねてみたりもして。
 そんなカガリをよそに、マレークの目を引きつけるのは、この季節ならではの紫陽花や菖蒲などだ。目にも涼しい青や紫、種や苗木が売っていればと探してみると、案外あっさりと見つけることが出来た。
 花屋の店先で店番らしいフェアリーの少女の案内を受けながら良さそうな種や苗木を見繕いつつ、マレークはついでにラベンダーも所望した。こちらはそのままハーブティーとして飲んだり、衣類に香りをつけるためのものとして。
「お前は何か気になる花はあるか? あればそれも植えよう」
 マレークの呼ぶ声に、カガリは思案顔。やがて――。
「何だろう。菫……?」
「そうか、ならば付き合わせた礼だ」
 マレークは早速花売りの少女から菫を一輪買い受けると、カガリが身につけている赤いリボンに糸で結びつける。
「可憐だがコンクリート割れ目からも咲く逞しい花だ。城門に添わせるのもいいだろう。……ついでに食えるぞ」
 付け加えられた言葉に、カガリは思わずくすりと笑みを零して。
「カガリは、食える花でなくてもいいのだが。そうか、野の花は強いな」
「ああ、強い。だが花の命は短い。俺がそうであるように、花を飾ったお前の姿を目に焼き付けておこう」
 強いのに、儚い。そう聞いたカガリは一つ瞬いて、ならば、と店番の少女に向き直る。
「――まるにはこれだ」
 マレークの胸元に差し込まれる芍薬の花。
「牡丹と違って、冬には朽ちてしまうが。根は生き続ける。季節になれば何度でも、花を咲かせるぞ。生きているからな」
 あと、薬にもなるらしいぞ――付け加えられた言葉はどこか悪戯めいた響きを帯びていて。
 満足げなカガリの顔と、自身の胸元に飾られた芍薬とを交互に見やってから、マレークは口元を微かに動かした。
「お前も、俺を花で飾ってくれるのだな」
 ――少しだけでも、微笑むことが出来ているだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風切・櫻
友人の東雲殿(f00865)と共に

祭りの良さは時も場所も、世界も選ばぬな
賑わい、笑顔に溢れている
とても良き人の営みだ

隣歩く東雲殿が笑みを零したのに気付き、目を向ける
いや、不思議ではないとも
其方にも、きっとこの祭が好い物に映っているのだろう

ふと東雲殿が足を止めたのは
色も形も様々な帽子の店

どれが似合うと尋ねられれば、ふむ、と思案し
明るい色の鍔広帽子を手に取って桜銀の髪へそっと乗せる
これなどは如何だろう?

時に東雲殿は、花は流さぬのだろうか?
そう問えば、今の幸せに満足だと
花綻ぶように笑むその姿は、確かにそうなのだろう

なればと、花売りより一輪の花を買い、東雲殿へと
白く可憐な秋桜の花
東雲殿によく似合う、と


東雲・咲夜
友人の櫻さん(f01441)と

甘く馨しい此の街は
視線を撫でる先々
大小七彩の華々に溢れとって
香りを乗せた風の神霊達も楽しそうに
クスクス囁き合うんが聴こえます
…つい頬が緩んでしもて、櫻さんに変に思われたかしら

露天の一角
人々の織り成す活気の窓から垣間見えたるワゴンは
御伽噺に出てきはるような美しい帽子屋さん

櫻さん櫻さん
うちにはどれが似合います?
淑女が被らはるような帽子のチョイスに
照れつつも楽しくて

花を流しに行かへんのかと聞かれれば
…うちは今の幸せに満足しとりますさかい
皆さんが笑顔やったらそれで充分なんです

髪に寄り添う秋桜
うちの色よりくっきりしとって
其れは清純の証のよう
なんや照れてまうの

おおきに、櫻さん



 風に乗る、甘く馨しい花の香り。
 祭りの良さは時も場所も、そして世界も選ばない。
 華やぎ、賑わい、人々の笑顔で溢れている。
(「とても良き人の営みだ」)
 胸中でそう独り言ちながら、風切・櫻は口元に微かな笑みを浮かべて。
 視線を撫でるように向ければ、溢れる大小七彩の華々。
 花の香を纏う風の神霊たちも楽しげに囁き交わす声が聴こえるものだから、東雲・咲夜はつい頬が緩むのを覚えて――そして端と瞬き、傍らの友を見やった。
「如何された、東雲殿?」
「……変に思われたかしらて、思て」
「いや、不思議ではないとも。其方にも、きっとこの祭が好い物に映っているのだろう」
 交わる視線の先には、常と変わらぬ笑み。
 そうして他愛ない言葉を交わしながら歩いていた二人だったが、ふと咲夜が足を止めるのに気づき、櫻も立ち止まる。
 華やかに彩られた露天の一角。
 人々の織り成す活気の窓から垣間見えるワゴンは、まるでお伽噺に出てくるような美しい帽子屋だった。
 咲夜はほう、と息をつき、飾られている帽子の一つに手を伸ばす。
 色も形も様々な帽子たちが、誰かとの縁を求め待っている。
 その縁を引き寄せようと、一つ被っては鏡を覗き込み、そうして、
「櫻さん櫻さん。うちにはどれが似合います?」
 尋ねれば櫻はふむ、と暫しの思案顔。
 そうしてたくさんの帽子の中から拾い上げた明るい色の鍔広帽子を、そっと桜銀の美しい髪へ乗せた。
「これなどは如何だろう? ああ、よく似合っている」
 まるで淑女が被るような帽子のチョイスが面映ゆくも楽しくて、咲夜ははにかむように微笑んでみせた。

「時に東雲殿は、花は流さぬのだろうか?」
 やがて再び川沿いの露天を眺め歩きながら、櫻はふと咲夜に問うた。
「……うちは今の幸せに満足しとりますさかい。皆さんが笑顔やったらそれで充分なんです」
「……そうか」
 咲夜の答えに櫻は何も言わず、ただゆるりと歩みを再開する。
 花綻ぶように笑むその姿は、確かにそうなのだろう。そんなことを思いながら。

 ――なれば、と。
 櫻は幼いフェアリーの少年と共に花を売る少女から一輪の花を買い、咲夜へと贈る。
 白く可憐な秋桜の花。それを髪に飾っては満足げに頷き一つ。
「ああ、やはり。この白は東雲殿によく似合う」
 咲夜の持つ色よりも際立ちながらも、それでいて何色にも穢されることのない、白。
 清純の証のように思えて咲夜は少し照れながらも、ふわりと、微笑んで告げた。
「おおきに、櫻さん」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

深海・揺瑚
【灰】で花探しを

シロツメクサにしても、エンジはそういう花の方が好み?
確かに花束にはなりそうねと黄色い花に目をやって

常盤はいい趣味してるわね、案外と情熱の人?
当然のように手を差し出して薔薇を受け取ろうと

私はこれね、似合うでしょう?
甘くて強い芳香を漂わせた、八重咲きの色とりどりの百合の花束

そういえばシロツメクサの花言葉ってなんだったかしら

リンリンリンと、音を立てながら流れる花もあるかもね
リリヤの花を勝手に一輪取って、白の百合をお返しに

綾にもひらりと咲いた青百合を一輪差し出して
夜明けに混ぜてもらっても?

手放す時はあっさりと
願いも想いも、自分で持って歩くから


エンジ・カラカ
【灰】

花探し、花探し
色んな花があるンだなァ……。
この花の名前知ってる?黄色くて小さくて…… 。
アァ……暖かい季節に咲いていたような

コレはシロツメクサがほしいほしい。
シロツメクサも花だろう?
たーくさん集めたら綺麗な花束になるンだ。
花言葉は知らないなァ。
ミンナは気に入りの花を見つけたカ?

ときわは薔薇?真っ赤ですごいなァ……アリガトアリガト。
リリヤはカンパニュラ、あやは青と紫、ミミは匂いの強いそうカ百合というのカ
それにしても色んな花があるンだなァ……。

花言葉の交換、ロマンチックだネェ
願いは無い。だからミンナの願いが叶うように願おうカ。


都槻・綾
【灰】

籠や店の軒先で
何れも見事に咲き誇る花々

――えぇ、本当に彩り豊か
選ぶのは至難の課題ですねぇ

白詰草の花束は雪洞のようで愛らしいに違いないです、と
まろい形を手で示しつつ
エンジさんへ首肯

常盤さんの申し出に瞬くも
直ぐさま破願し、有難く頂戴
食べたら焦がれそうでは無いですか、色男さん

ミミさんの百合は豪奢
八重咲のものは初めて見ました、と興味津々に眺め

リリヤさんは何を選びましたか?
微笑んで覗き込む

誠、其々によく似合い
花言葉は皆で考えればいいのです、と朗らかに嘯いて

私が手にしたのは
桔梗に矢車菊、都忘れ等々、濃淡様々な青紫の彩り
夜明けを想う花束

宵を越えて陽の光を臨むよう
祭に願う人々の想いが
やがて叶いますように


神埜・常盤
【灰】

鮮やかな彩に目が眩みつつ花探し
エンジ君が見つけた其れ、見覚えがある
向日葵じゃなくてエェト……何だったかな

シロツメクサは、星のような花だっけ
花束にしたら愛らしいのだろうねェ

華やかな百合はミミ君にぴったりだ
然し珍しい形だなァ、此れが八重咲きかね

綾君は見事に青尽し、何の花を重ねたのだろう
夜明けの海のように優しい彩だねェ

僕は赤々とした薔薇が良い、美味しそうだし
――あァ、情熱で喉が焼けては困る、食べないさ
君達にも花束から一本ずつ差し上げよう

おや、交換してくれるのかね、リリヤ君
有難う、揺れる釣鐘から今にも鈴音が聴こえそうだ

挨拶のように行き交う、花と言葉は願いにも似て
……皆に良いこと沢山有ると良いねェ


リリヤ・ベル
【灰】

きいろは、タンポポでしょうか。ミモザでしょうか。
はぐれないよう気をつけて、お花を探しにまいります。

わたくしは、カンパニュラを束にして。
振ったら音が鳴るかもしれません。

真っ赤なバラも、甘やかなユリも、たいへん華やか。
うつろう青色は、纏う空気のよう。
持つひとにどこか近しい花々。ふしぎです。

! こうかんをいたしましょう。
バラの代わりに、白い釣鐘を。
混ざる花は、言葉を交わしているみたいです、ね。
ふわりと混ざったユリの花にも、こんにちはとご挨拶。

花言葉を考えるのは、素敵です。
きっと長く伝えられた想いの欠片。
エンジさまは、シロツメクサになにを託すのでしょう。

籠める想いは。
ご縁に、日々に、感謝の花を。



 目も眩むような鮮やかな彩。
 ワゴンに積まれた花籠や並ぶ花屋の店先で、綻ぶ花はどれも誇らしげに揺れている。
「花探し、花探し。色んな花があるンだなァ……」
「――本当に彩り豊か。選ぶのは至難の課題ですねぇ」
 きょろきょろと金月の瞳を彷徨わせながら呟くエンジ・カラカに都槻・綾は青磁の双眸を柔く細めて笑み零し。
「この花の名前知ってる? アァ……暖かい季節に咲いていたような」
 ふと足を止めた花屋の軒先、エンジは鈴なりに咲く小ぶりの黄色い花を示して皆に問う。
「其れ、見覚えがある。エェト……何だったかな」
 暖かい季節に咲く黄色い花と言えば神埜・常盤はまず向日葵が思い浮かんだけれど、記憶の中にある向日葵はもっと大きい気がした。
「このきいろいお花は、ミモザでしょうか」
 そっと覗き込むように小さく背伸びをして、リリヤ・ベルが首を傾げる。
 すると、正解、と店番のフェアリーの少年が、答え合わせの結果を教えてくれた。

 そんな一幕も挟みつつ、一行は花探しへ。
「コレはシロツメクサがほしいほしい。シロツメクサも花だろう? たーくさん集めたら綺麗な花束になるンだ」
「シロツメクサにしても、エンジはそういう花の方が好み?」
 確かに花束にはなりそうねと深海・揺瑚はエンジの手の中で揺れる黄色いミモザに目をやって。
「シロツメクサは、星のような花だっけ。花束にしたら愛らしいのだろうねェ」
「白詰草の花束は雪洞のようで、愛らしいに違いないですね」
 常盤がふむと頷く傍らで、丸い形を手で示しながら綾もエンジへと首肯してみせる。
「わたくしは、こちらのカンパニュラを」
「リリヤはそれが、気に入りの花カ」
 エンジの声にはいと頷いたリリヤは、白と淡い紫のカンパニュラを花束に。釣り鐘のような花たちは、まるで振ったら涼やかな音を奏でてくれそうで。
「リンリンリンと、音を立てながら流れる花もあるかもね。私はこれね、似合うでしょう?」
 リリヤの花に楽しげに笑みを重ねた揺瑚は、甘くて強い芳香を漂わせる色とりどりの八重咲きの百合を花束に。
「華やかな百合はミミ君にぴったりだ。然し珍しい形だなァ、此れが八重咲きかね」
「何と豪奢な百合でしょうか。八重咲のものは初めて見ました」
 常盤と綾が興味津々といった眼差しを向ける中、エンジはふむと頷いて。
「ミミは匂いの強い……そうカ百合というのカ」
 綾は桔梗に矢車菊、都忘れと、濃淡様々な青紫の彩りを花束に。
「綾君は見事に青尽しだ。夜明けの海のように優しい彩だねェ」
 目を細めて青の彩りを覗き込む常盤に、綾はそのつもりですと微笑んだ。
「僕はこの、美味しそうな薔薇を」
 常盤の手には、艶やかな深紅の薔薇の花。
 甘やかな百合も真っ赤な薔薇も華やかで、うつろう青色は、青年が纏う空気のよう。
「ふしぎですね。どの花も、みなさまにどこか近しい雰囲気をかんじます」
 素直な想いを零し、ふわりと微笑むリリヤ。
「常盤はいい趣味してるわね、案外と情熱の人?」
 揺瑚が紅玉色の瞳を細めて問えば、常盤は軽く肩を竦めてみせる。
「――あァ、情熱で喉が焼けては困る、食べないさ。折角だから、君達にも差し上げよう」
 そういうと、常盤は花束から一本ずつ薔薇を抜き取り、皆へ差し出す。
「ときわの薔薇は真っ赤ですごいなァ……アリガトアリガト」
 受け取った薔薇をまじまじと眺めやってから、エンジは軽く鼻を寄せ。揺瑚は当然のように手を差し出して薔薇を受け取った。
「食べたら焦がれそうでは無いですか、色男さん」
 申し出に瞬くもすぐさま破顔し、綾も有り難く常盤の薔薇を受け取る。
「! こうかんをいたしましょう……!」
 リリヤはぱあっと笑み綻ばせながら薔薇を受け取って、代わりに白のカンパニュラを。
「おや、交換してくれるのかね、リリヤ君。有難う、揺れる釣鐘から今にも鈴音が聴こえそうだ」
 深紅の薔薇に囲まれながらも凛と咲くカンパニュラ。常盤は本当に音が聴こえたりはしないかと確かめるように花束を揺らす。
「リンリンリンと、音を立てながら流れる花もあるかもね」
 揺瑚はリリヤの花を勝手に一輪抜き取って、代わりに白の百合を差し込んだ。
「夜明けに混ぜてもらっても?」
 それから、綾にもひらりと咲いた青百合を一輪差し出して。
「ええ、勿論です」
 綾からもお返しに、夜明けの青い一輪が。
「こうして混ざると、花たちも言葉を交わしているみたいです、ね」
 リリヤは楽しげに、ふわりと混ざったユリの花にもこんにちはとご挨拶。
「それにしても色んな花があるンだなァ……」
 感心したようにエンジがぽつり。
「そういえば、シロツメクサの花言葉ってなんだったかしら」
 ふと思い出したように首を傾げる揺瑚に、エンジは知らないなァと視線を空に泳がせた。
「花言葉は、皆で考えればいいのですよ」
 それぞれに似合う花に微笑んで、朗らかに嘯く綾に、リリヤが素敵ですと笑みを深める。
「きっと長く伝えられた想いの欠片。エンジさまは、シロツメクサになにを託すのでしょう」
 リリヤの期待の眼差しに、ほんの少しの思案顔。花と言葉が交わされる様はロマンチックではあるけれど、結局願いはないとエンジは肩竦め、
「だからミンナの願いが叶うように願おうカ」
「……皆に良いこと沢山有ると良いねェ」
 挨拶のように行き交う花と言葉は願いにも似て。だから常盤も願うように想いを口にする。
 それならばと、リリヤはこの縁に、日々に、感謝を籠めて。
 宵を越えて陽の光を臨むように、祭に願う人々の想いがいつか叶うようにと綾も願いを添える。
 願いも想いも、自分で持って歩くから。
 だから揺瑚はそれらを重ねることなく、流れに花を手放した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
【狼兎】

花流し、か…
花は自分で出せるけど
それじゃあ風情が無いからね

なに願おう…
え、自分のため?
うーん……

『これまで助けて来た人々の笑顔が、幸せが
ずっとずっと続きますように』

心の中だけで呟きながらそっと花を流す
猟兵になってから助けた人達
彼らが幸せでいてくれるなら
僕も生きていて良かったって思えるから

確認するすべは無くても
信じる事は無駄じゃない
僕のための願いで、想い

紫崎君も願いなんてあったんだね
ふふ、僕もナイショー
…ほんとは両親宛に…とも思ったけどね
ネガティブになりそうな願いはやめたよ
自分のために

紫崎君の気遣いに微笑み
ねっ、折角だしもっとお店見ようよ!
雑貨も気になるし
時間の許す限りは、ゆっくりしよ?


紫崎・宗田
【狼兎】

澪用に買った花シロップジュースを片手に
花売りから花を買う

「…おいチビ
どうせ願うなら自分のために願えよ
テメェは他人の事ばっか考え過ぎなんだ
こういう時くらい自分勝手になれ」

澪が花を流し祈り終えるまで待ち
俺もまた片手で花を流す

『これから先
もしも澪が自分の記憶の真実を知る日が来ても
コイツの笑顔は壊させねぇ
俺が…俺らが、必ず守る』

チビを拾った時から決めていた
これは神頼みじゃねぇ
誓いだ

「願いなんて程のもんでもねぇよ
そういうテメェはどうなんだ」

不意に悲しげな微笑を見せる澪の頭に片手を置き

「…ジュース、早く飲まねぇと温くなんぞ」

こいつが笑顔になるなら
荷物持ちくらいしてやるさ



「花流し、か……」
 髪に花咲くオラトリオである栗花落・澪ならば、自らの手で花を咲かせることが出来る。
 けれどそれを流すのは風情がないこともわかっているから、紫崎・宗田が花売りから花を買い求める様子を何とはなしに眺めやり。
「……ほら、」
 澪の元へ戻った宗田の手には、花と、花のシロップ入りのジュース。差し出されたそれらをありがと、と明るく笑って受け取ってから、澪は改めて手元の花に視線を落とした。
「なに願おう……」
 くるり、手の中で花を回しながら独り言のように呟いた澪に、宗田は軽く眉を寄せた。
「……おいチビ。どうせ願うなら自分のために願えよ」
「え、自分のため?」
 まるでそんなことは最初から考えていなかったとばかりに小さく首を傾げる澪へ、宗田はああ、と大きく頷いてみせる。
「テメェは他人の事ばっか考え過ぎなんだ。こういう時くらい自分勝手になれ」
「うーん……」
 少し考えて、澪はとん、と跳ねるような足取りで川辺へ。そうしてそっとしゃがみ込むと、色とりどりの花の流れに手にした花をそっと乗せる。
(「これまで助けて来た人々の笑顔が、幸せが、ずっとずっと続きますように」)
 それは心の中でだけ呟いた願い。自分が猟兵となってから助けた多くの人たち――彼らが幸せでいてくれるなら、澪自身、生きていて良かったと思えるから。
 無論、それを確かめる術はない。だが、信じることは決して、無駄にはならない。
(「……僕のための願いで、想い」)
 澪が想いを託した花が見えなくなるまで見届けてから、宗田も花を流す。
(「これから先、もしも澪が自分の記憶の真実を知る日が来ても、コイツの笑顔は壊させねぇ。俺が……俺らが、必ず守る」)
 かつて澪を拾った時から心に決めていた、想い。
 神に頼るのではない、これは宗田が己自身に課した、誓いだ。
「紫崎君も願いなんてあったんだね?」
 楽しげな微笑みを覗かせる澪に、宗田はふん、と鼻を鳴らして。
「願いなんて程のもんでもねぇよ。そういうテメェはどうなんだ」
「ふふ、僕もナイショー」
 ――でも、本当は。
 記憶の中のどこにもいない、自分を産んでくれた父と母への想いを込めようかと――思わなかったわけではない。
 けれど、顔も名前も、声もわからない二人を思えば、それだけで胸が苦しくなってしまいそうだから。
 だから、澪は、彼らのことを花に願いはしなかった。それを宗田の前で口にすることも。
 それでもその横顔に悲しげな微笑を見た宗田は、ぽん、と、いつもよりは優しく澪の頭に手を置いて。
「……ジュース、早く飲まねぇと温くなんぞ」
「……そうだね」
 そして、澪は知っている。それが彼の優しさであることも。
「――ねっ、折角だしもっとお店見ようよ! 雑貨も気になるし、時間の許す限りは、ゆっくりしよ?」
 宗田へ振り向いた澪の微笑む顔からは、もう悲しげな色は消えていた。そのことに少しだけ安堵しながら、宗田も笑う。
「ああ、行くか。荷物持ちくらいはしてやるから、好きなのを探せよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
ジナさん(f13458)と

私のですか?
ジナさんのほうを向いたら、髪にお花を挿されて
ふふ、ありがとうございます
じゃあジナさんにはこちらを
そう言って胸元にカモミールを

桜色の花を手に
私のお願いはひとつだけ
魔法がもっともっと、上手くなりたいです!

自分の力で、と言うジナさんが眩しくて羨ましいけど
やっぱり私は祈りたいんです
大切な人達を支えられる力が、少しでも早く欲しいから
ちょっぴり無理をしちゃう人の近くにも居られるように
…ていうのは、まだまだ未熟な私が言うのは恥ずかしいので
内緒にして下さいね?
ジナさんのお願いも叶うよう、お祈りします!

お散歩、折角だからお買い物しませんか?
お花のジュース!気になります…!


ジナ・ラクスパー
溢れる花は光が咲いたみたいで、思わずにっこり
あ、あのお星様みたいなお花、ラナ様(f06644)の杖飾りに似ていませんか?
ラナ様の髪にさしたら
ふふ、とってもお似合いなのです!
贈られたカモミールのいい香りに目を細める

改めての願いごと…ちょっと悩んでしまいますね
強くなる…のは自分で叶えたいから
その日が少しでも早くなりますように
ラナ様は…その気持ち、とてもわかります…!
私も早く危なっかしいなんて言われないようになりたいから
空色の花に、お願いしますねと強く強く祈りを込める
服に残った一輪見つけ
もっと笑ってくれますように、と何気なく

ラナ様、川沿いをもう少しお散歩しませんか?
お花のジュースも気になります…!



 街中に溢れる花はまるで光が咲いたようで、ジナ・ラクスパーは心弾ませながら思わずにっこりと。
「あ、このお星様みたいなお花、ラナ様の杖飾りに似ていませんか?」
「……私のですか?」
 呼ぶ声に振り向いたラナ・スピラエアの淡い桜色の髪に、空に瞬く星が降る。
「とってもお似合いなのです!」
 楽しげに両手を合わせ、金の瞳を輝かせるジナ。彼女の藍色の髪にも星のような青い花が咲いているから、ラナはお揃いですねと微笑んで。
「ふふ、ありがとうございます。じゃあ、ジナさんにはこちらを」
 お返しに、ラナからは白いカモミールの花が胸元に。
 風に混ざる爽やかな香りにふと目を細めれば、重なる視線に自然と互いの顔に笑みが綻んだ。

「強くなる……のは、自分の力で叶えたいのです」
 花に託す想いを改めて思うと、その難しさにジナは少し頭を悩ませる。
 強くなりたい。大切な皆を、弱き人々を守れるように。
 その想いはいつだってジナの中に真っ直ぐな一本の芯を通していて、戦うための、前に進む力を与えてくれている。
 けれど、それは何かに願って叶えてもらうものではない。自分の手で掴み、あるいは足で至るもの。
「ですので、その日が少しでも早くなりますようにと」
 自分の力で。そう口にするジナの姿は、ラナにはとても眩しくて。同時に迷わず道を切り開いていける彼女が、羨ましい。
 それでも――花に祈りを託したいと、ラナは思う。大切な人達を支えられる力が、少しでも早く欲しいから。
「私のお願いはひとつだけ。魔法がもっともっと、上手くなりたいです!」
 自身の髪と同じ桜色の花に、重ねる願い。続いた言葉は、自然と口をついて出た。
「ちょっぴり無理をしちゃう人の近くにも、居られるように。……というのは、まだまだ未熟な私が言うのは恥ずかしいので」
 内緒にして下さいね? そう人差し指をそっと口元に添えてラナが微笑んだなら、ジナは勿論ですと頷いて、更に力強い頷きをもう一つ。
「ラナ様のその気持ち、とてもわかります……! 私も、早く危なっかしいなんて言われないようになりたくて」
 お願いしますね、とジナも空色の花に強く強く祈りを込める。
「ふふ、でも、そうやって気にかけてくれる人がいるなら大丈夫ですよ! ジナさんのお願いも叶うよう、お祈りします!」
 水面に託した花はすぐにたくさんの、色とりどりの花たちと混ざり合い、彼方へと流れていく。
 二人の想いを乗せた二つの色を、それ以上にたくさんの色を見送って、後に残るのは晴れやかな笑み。
「ラナ様、川沿いをもう少しお散歩しませんか? 私、お花のジュースが気になります……!」
「いいですね! 折角だからお散歩しながら、お買い物もしませんか? お花のジュースも気になりますし、きっと可愛らしい小物とかもたくさんありますよ!」
 そうして立ち上がったジナはふと、服に残った一輪を見つけて瞬いた。
(「……もっと、笑ってくれますように」)
 何気なく心に灯った想いの行く先は、まだはっきりとは見えないけれど。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リオ・フェンブロー
贈った、ですか
約束をしたという訳ではないのだと、そう思ってしまうのは
私が意地が悪いからでしょうね

…待ち続ける思いだけは
少しだけ覚えがありますから

さて、散策と行きましょうか
勇者のいた頃から流れる川、近くで見ることができれば

…あぁ、花売りのレディ、私にも花を頂けますか
そうですね束ねた花を。赤い花で

川の水は触れるだろうか
指先で触れれば、その感覚に小さく息を飲む

こんな美しい世界で、川に流すのは初めてです
赤は戦場にあって私たちに危機を知らせてきましたが
あぁ、こんなにも美しい

この地を知ることができたことに感謝をしながら
花を流しましょう
今は亡き相棒へ、仲間へ
終わりの先が、良き道であるようにーー願って



(「……贈った、ですか」)
 約束をしたという訳ではないのだと、そう思ってしまうのは。
 私が意地が悪いからでしょうね――そう、リオ・フェンブローは自嘲する。
 沈む青に刹那、過ぎる影。一瞬伏せられた瞳が再び世界を映す頃には、いつも通りの、それ。
「……待ち続ける思いだけは、少しだけ覚えがありますから」
 そう、ほんの少しだけだ。そしてお伽噺の少女と勇者と、己とでは、何もかもが違うこともわかっている。
 それでも少しだけ、想いを馳せて。リオはひとり、散策へと繰り出した。
 目的地は、勇者がいた頃から流れている川。それを、近くで見ることが出来ればと。
「……あぁ、花売りのレディ、私にも花を頂けますか。そうですね、束ねた花を。赤い花で」
 その道すがら、籠いっぱいの花を携えた少女に、リオは穏やかな笑みと共に声を掛ける。
 注文に快く応じて、選りすぐりの赤い花を束ねてゆく花売りの少女。その側で、フェアリーの少年があれもこれもと花を勝手に抜き取り、少女が作る花束に混ぜ込もうと画策していた。
「どうか、貴方の想いが届きますように」
 それは祭りの常套句なのか、少女の心からの想いだったのかは、わからなかったけれど。
 そうして受け取った様々な赤が覗く花束を手に、リオは川のほとりへ歩み寄ると、その場にしゃがみ込んでそっと手を伸ばした。
 指先に触れた水の冷たさ――その感覚に、思わず小さく息を呑む。
 既に多くの人々が想いを乗せて託した色とりどりの花が、緩やかに流れていくのが見えた。
 こんなにも美しい世界で、川に流すというのは、リオにとっては初めてのことで。
 赤は、戦場にあって自分や仲間たちに危機を知らせてきた、そんな色だったけれど――。
(「……あぁ、こんなにも美しい」)
 この地を知ることが出来た――そのことに感謝をしながら、リオは赤い花を川に流す。
 手放してしまえば、あっという間に。花たちは流れに身を任せて、何処とも知れぬ遠い世界へと旅立っていく。
 そう、だから、いつか世界を超えて“彼ら”の元にも届くかもしれない。
 今は亡き相棒へ、そして仲間たちへ。
 終わりの先に続く道が、良き道であるよう――リオは静かに、願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

祭じゃよー、やはり賑やかじゃな!
さて、どう楽しむか。茶をしながら甘味、というのも惹かれるんじゃがここはやはり、祭に参加せねばならんじゃろ

二人で花売り娘の元へ
む、これをただ流すよりも…かわいらしくしてやったほうがよいのでは?
ふふ、わしは花冠がつくれるんじゃぞ。嬢ちゃん、これとそれと……
それからー…(もりもり作っていく)
おう、ええよ。ここをこうして…器用じゃな、せーちゃん

できた! お、これせーちゃん、似合いそうじゃな
ちょいと頭に……似合う似合う!
いけめんじゃの!
わしにもくれるんか? ありがとな!

さて、想いを込めて流しに参ろうか
わしのいちばんの、友への感謝を込めて


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

祭りは心躍るな
それが美しい花の祭りであれば尚の事

らんらん、何処から参ろうか?
そうだな、カフェで甘味も捨てがたいが、それは後にでも
まずは街の人に倣い、花を流してみようか

花を買うべく、花売り娘に声を
そして、折角の祭りだからな、と
娘の髪にも一輪、花を飾ってあげようか
確かに、美しい花を流すだけでは勿体無いな
ほう、花冠か…らんらんは器用だな
俺にも作り方を教えてくれ(微笑み
…なかなか楽しいな(器用に黙々編んでいく

俺も完成したがどうだろうか?
では、これはらんらんに(頭に乗せ
らんらんも、とても良く似合っている(微笑み

想い、か
一番の友と、これからもずっと、楽しい時間を共有できれば…と



「祭じゃよー、やはり賑やかじゃな!」
「ああ、祭りは心躍るな」
 それが、美しい花の祭りであれば尚のこと。
 機嫌よく灰青の狐尾を揺らす終夜・嵐吾に、隣を歩く筧・清史郎も楽しげな笑みを浮かべて。
「らんらん、何処から参ろうか?」
「さて、どう楽しむか。茶をしながら甘味、というのも惹かれるんじゃがここはやはり、祭に参加せねばならんじゃろ」
 賑わうメインストリートには、多くのカフェが軒を連ねている。花をあしらった可愛らしい甘味が描かれたボードが二人を手招いていたりもするけれど、やはり勇者の時代から続く祭りの真っ最中であるならば――。
「そうだな、カフェで甘味も捨てがたいが、それは後にでも。まずは街の人に倣い、花を流してみようか」
 そうと決まれば、早速とばかりに大勢の人で賑わう川辺を目指して歩き出した二人は、その道すがら、花売り娘へ声を掛けた。
 籠いっぱいの花をしげしげと見やり、嵐吾はふと、何かを閃いたように目を瞬かせる。
「む、これをただ流すよりも……かわいらしくしてやったほうがよいのでは?」
「確かに、美しい花を流すだけでは勿体無いな」
 ふむ、と頷く清史郎の隣で、嵐吾はにやり、と、悪戯めいた笑みを覗かせて、
「ふふ、わしは花冠がつくれるんじゃぞ。嬢ちゃん、これとそれと……それからー……」
 と、青い花をベースに白や紫、桜のような淡いピンクの花を織り交ぜた花冠を、慣れた手つきでもりもりと編み上げていく。
「ほう、花冠か……らんらんは器用だな。俺にも作り方を教えてくれ」
 嵐吾の手で瞬く間と呼べるほどにあっと言う間に出来上がっていく花冠に清史郎はほう、と感嘆の息を零しながら、自分も作ってみたいと微笑む。
「おう、ええよ。ここをこうして……」
 そうして嵐吾の手ほどきを受けながら、清史郎はどちらかと言えば華やかな、春を思わせる色合いの花を、黙々と編み込んで。
「……なかなか楽しいな」
「器用じゃな、せーちゃん」
 それはもう、嵐吾も感心するほどで。いつの間にやら二人の花冠作りをどこからか飛んできたフェアリーたちが楽しげに見学していたが、それはまた別の話だ。

「できた!」
 じゃん、と出来上がった花冠を嵐吾は得意げに掲げてみせる。
「俺も完成したが……どうだろうか?」
 一方、清史郎の花冠も、初めて作ったとは思えないほど上手に出来ていた。
 嵐吾は出来上がった花冠と清史郎の顔を交互に見やり、再び何かを閃いたように笑って、
「お、これせーちゃん、似合いそうじゃな。ちょいと頭に……似合う似合う! いけめんじゃの!」
 青色の花冠を清史郎の頭に乗せ、満足げに頷いてみせる。サイズは特に考えずに作っていたが、不思議とぴったりだった。
「似合うだろうか。では、これはらんらんに」
「わしにもくれるんか? ありがとな!」
 お返しにと、清史郎も手ずから編み上げた春色の花冠を嵐吾の頭に乗せ、やはり同じように満足気に頷いたのだった。
「……らんらんも、とても良く似合っている」
 結局花売り娘が携えていたバスケットの中身をほぼお買い上げする形になり、色々な意味で感謝された――のは言うまでもなく。
「そうだ、折角の祭りだからな」
 そう言うと清史郎は雅な微笑みを浮かべ、娘の髪に一輪花を飾った。

「さて、想いを込めて流しに参ろうか」
 色とりどりの花に嵐吾が乗せる想い。それは、口にすることはないけれど、きっと伝わっているだろうとも思う。
(「……わしのいちばんの、友への感謝を込めて」)
「――想い、か」
 清史郎も、また。口にはせず、胸中に灯る想いを花に託した。
(「一番の友と、これからもずっと。――楽しい時間を共有できれば、」)
 顔を見合わせればどちらからともなく、自然と溢れる笑みがある。
 掛け替えのない友への想いを乗せて、花はゆるりと、旅路についた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エレステイル・テイル
うわああ、お花がいっぱいだよ、わたげ!
どこもふわふわで、いいにおいだね。
しあわせな空気。

はぐれないように、わたげをだっこしながら、お祭りを見て回るんだよ。
キレイなものがいっぱいあって、いろいろ見ちゃうね。
くろくんもきょうみしんしんだねー。

せっかくだから、ボクもお花をながすね。
このかわいいピンク色のお花、ペチュニアっていうんだって。
おねがいごとはねー。
うーん、むずかしいことはわからないけど。
これからもいっしょに、ぼうけんできますようにって。
たくさんキレイなもの、かわいいものに会えますように。

ながれてくお花、キレイだね!
あ、お花のシロップのジュースならふたりとものめるかな?
いっしょにのもー!



「うわああ、お花がいっぱいだよ、わたげ!」
 今にも駆け出しそうなくらいに胸も心も弾ませて、エレステイル・テイルは腕の中でひくひくと鼻を動かしていた大きなうさぎ――わたげに呼びかける。
「みゅい!」
 当のわたげはというと、初めて見る世界の風景に興味津々といった風に目をきらきらとさせていて。
 でもきっと、瞳が輝いている理由は――それだけではないだろう。
「どこもふわふわで、いいにおいだね。きっとこういうのが、しあわせな空気なんだろうなあ」
 えへへ、と小さく肩を揺らして笑いながら、エレステイルはわたげをぎゅっと抱きしめた。
 はぐれないようにそのまま、エレステイルはお祭りを見て回る。戦いの時には槍に変じる竜のくろくんも一緒だ。
「キレイなものがいっぱいあって、いろいろ見ちゃうね。くろくんもきょうみしんしんだねー」
 きらきら煌めくブレスレットやネックレスには、可愛い花が咲いていて。ぴかぴかに磨かれた丸い手鏡は、縁がピンクや赤のバラで囲まれている。
 花の香を封じ込めたサシェにも花の刺繍が施されているし、澄ました顔で座るお人形さんのドレスはもちろん花柄だ。
 そして何より、たくさんの、色とりどりの花たち。
 エレステイルはその中から可愛いピンク色の花を選ぶと、わたげとくろくんと共に川辺へと向かった。
「このかわいいピンク色のお花、ペチュニアっていうんだって。おねがいごとはねー」
 そして、うーん、と思案顔。まだ幼いエレステイルには、難しいことはわからない。
 だから、いつでも側にいてくれるわたげとくろくんに、にっこりと笑いかけて。
「これからもいっしょに、ぼうけんできますように! それから、……たくさんキレイなもの、かわいいものに会えますように」
「みゅみゅーい!」
 ぴんと耳をそばだててエレステイルの言葉に耳を傾けていたわたげが、もちろんとばかりに返す。くろくんは何も答えてくれないけれど、その尻尾がぱたたとご機嫌な様子で揺れていたのにエレステイルはちゃんと気づいていた。
「ながれてくお花、キレイだね!」
 ペチュニアのピンクはあっという間に見えなくなってしまったけれど、他にも色んな花がゆっくりと、まだ見ぬ世界へ漕ぎ出していく様は、その先にたくさんの冒険が待ち受けているだろうことを予感させてくれる。
「あ、お花のシロップのジュースならふたりとものめるかな? いっしょにのもー!」
 そうしてエレステイルは立ち上がると、わたげとくろくんと一緒にジュースを探して歩き出す。
 三人の冒険は、まだまだ終わらない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
エスチーカ(f00890)と


人とフェアリーが当たり前みたいに一緒に居るのは
いまいち、まだ見慣れない光景だ
つい、あちらこちらに視線が逸れてしまう
……ああ……わかったから
あんまり一人で先行くなよ
さすがに、ここじゃ見失ったら大変だ

想いや願いを乗せる、だっけ
何とはなしに手にした瑠璃唐草を眺めやり
僅かの逡巡の後、そっと流す

……随分乗せるものが多くないか、エスチーカ?
まあ一つじゃないとダメとは言ってなかったけどさ
え、まだやるの……じゃあ後でまた花取りにいかないとな

え、俺? 内緒で……ダメ?
わかった、わかったって

――、大事な人が、
幸せになれるように、だよ

誰かって?
……知ってるやつだったらどうする? なんてな


エスチーカ・アムグラド
匡お兄さん(f01612)と!

お祭り!お祭りですよ匡お兄さん!
わぁ……お花がいーっぱい!
それにフェアリーも人も!
こんな風に一つの街で暮らしてるのってチーカにも新鮮かも!
ささ、匡お兄さんっ!チーカたちもお花を流しに行きましょっ!早く早くーっ!

お花に乗せるお願いはー、素敵な剣士になれますようにっ!
あとあとっ、お宿のお兄さんお姉さんたちともーっと仲良くなれますようにと、それからそれからー……えへへっ、お花がもーっと要りそうですっ!

匡お兄さんはどんなことを乗せましたかっ?
……えーっ!チーカにも教えてくださいよう!内緒にしますからー!
……大事な人っ!!
誰でしょうっ、もしかしてお宿の人だったりとか――



 人とフェアリーが当たり前のように一緒にいる光景に、鳴宮・匡はつい、あちらこちらへと視線を動かしてしまう。
「わぁ……お花がいーっぱい! それにフェアリーも人も!」
 春の草原を思わせる色合いの翅を震わせながら、エスチーカ・アムグラドは紫水晶の瞳をきらきらと輝かせていて。
「こんな風に一つの街で暮らしてるのってチーカにも新鮮かも! 匡お兄さんはどうですか?」
「そうだな、いまいち……まだ見慣れない感じがする」
 フェアリーであるエスチーカと、人の身である匡。
 人とフェアリーが共に暮らすこの街では、住人のように溶け込んでいるようにも見えるけれど。
 それが当たり前という経験は、今までになかったから。
「ささ、匡お兄さんっ! チーカたちもお花を流しに行きましょっ! 早く早くーっ!」
 そんな匡の思考を容易くどこかに追いやってしまうような、エスチーカの朗らかな声。
「……ああ……わかったから。あんまり一人で先行くなよ」
 そう告げる間にも、エスチーカは先へ先へと飛んでいっている。小さなその背を追って、匡は少しだけ早足で歩き出した。
 ――さすがにここでは、見失ったら大変だ。

「想いや願いを乗せる、だっけ」
 匡は何となく手に取った瑠璃唐草を眺めやり、僅かの逡巡の後、そっと川に流した。
 一方、エスチーカはというと。
「お花に乗せるお願いはー、素敵な剣士になれますようにっ! あとあとっ、お宿のお兄さんお姉さんたちともーっと仲良くなれますようにと、それからそれからー……えへへっ、お花がもーっと要りそうですっ!」
「……随分乗せるものが多くないか、エスチーカ? まあ一つじゃないとダメとは言ってなかったけど……後でまた花取りにいかないとな」
 次から次へと泉のように湧き出てくるエスチーカの“お願い”に、匡はつい突っ込まずにはいられなかったとか。
「匡お兄さんはどんなことを乗せましたかっ?」
 不意に問われて、匡は言葉に詰まる。エスチーカのきらきらした瞳から、目を逸らすに逸らせなくて。
「え、俺? 内緒で……ダメ?」
「えーっ! チーカにも教えてくださいよう! 内緒にしますからー!」
「……わかった、わかったって」
 ぱたたたと翅を震わせながら勢いよく食い下がってくるエスチーカに、匡は観念したように息をつき、そして、
「――、大事な人が、幸せになれるように、だよ」
 その答えに、エスチーカは一瞬、きょとんと丸くした瞳を、あっと言う間に輝かせて。
「……大事な人っ!! 誰でしょうっ、もしかしてお宿の人だったりとか――」
 頭の中にいくつもの見知った顔を浮かべながら想像を巡らせるエスチーカに、匡は楽しげに、けれど少しばかり意味ありげに笑ってみせた。
「誰かって? ……知ってるやつだったらどうする? なんてな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
花か――花は良いぞ
愛で、慈しんだ芽が綻ぶ様は心洗われる
ふふん、果して此度は如何様な勇者と出会えるであろうな

たとえ川へ還すとして
私の想いを乗せる花ならば、美しい花が良い
花や人々の遣り取りを観察しつつ、世界知識を活用
多く売られる花や人気の花、此処以外で見られぬ珍しい花等
何でも良い、気になる事があれば花売り娘に聞くとしよう
興味深い花の中、最も鮮やかに咲く一輪を購入

彩で溢るる清流を眺める
流れる花は民が託した想いの結晶
…ああ、壮観よな
私の想いなぞ取るに足らんが
叶うならば、その末席に加えて頂きたい

花弁に口付け、手を離す
――、我が片割よ
君を見捨て、伸う伸うと生きる私を
君は…恨むだろうか

*従者、敵以外には敬語



 ――花は良い。
 愛で、慈しんだ芽が綻ぶ様は、正に心が洗われる。
「果して、此度は如何様な勇者と出会えるであろうな」
 アルバ・アルフライラは楽しげな笑みを湛え、多くの人で賑わう通りをゆく。
 たとえ川へ還すものだとして、己の想いを乗せるのであれば、やはり美しい花が良い。
 アルバは花屋の店先や、街中の花売り娘等に意識を向け、人々の花を介しての遣り取りを注意深く観察しつつ、例えば多く売られている人気の花や、見たこともないような珍しい花がないかを探し出そうとした。
「美しい花売りのお嬢さん、……こちらの花は?」
 そうして、一人の花売り娘に声を掛ける。見知った花も知らぬ花も多くある中でアルバが尋ねたのは、繊細な花びらを幾重にも重ねた、鮮やかに輝く白の一輪。
 売れているのだろうと推測できたのは、花売り娘が携えているバスケットの中でもそこそこの割合を占めていたからだ。
「これですか? これはユーリアといって、勇者セドリック様が、婚約者のユーリア様にお贈りになられた花を元に作られた花と言われているものです」
 勇者セドリックと、ユーリア。
 二つの名を口中でなぞりながら、アルバはふと首を傾げた。
「では、この花自体は、……勇者セドリックが贈ったとされる花そのものではないということですか?」
 アルバの疑問はもっともだろう。そして花売り娘も、その問いは想定していたようだった。
「本物のお花は、ここから少し遠い所にある平原の土でしか咲かないんだそうです。私も見たことはありません。魔物の住処になってしまっているので、無闇に足を踏み入れることも今は禁じられていて」
 こういった祭りが今もなお行われている以上、勇者に縁のある花を流したいと願う者がいるのは当然のことだろう。
 それで昔の人がどうにかならないかと、長い時間を掛けて良く似た花を作ったと言われていると、花売り娘は語ってくれた。
「なるほど、そうでしたか。とても興味深いお話を聞かせて下さってありがとうございます、お嬢さん。――では、私にもこちらのお花を頂けますか?」

 白い花を手に、アルバは様々な彩で溢るる清流を眺めやる。
「……ああ、壮観よな」
 目の前を流れてゆく花は、そのどれもが、人々が託した想いの結晶だ。それを思えば自然と目元が和らぐのを感じ、アルバは手元の花に視線を落とす。
(「私の想いなぞ取るに足らんが、叶うならば、その末席に加えて頂きたい」)
 アルバは白い花弁にそっと唇を寄せ、手を離した。
(「――、我が片割よ。君を見捨て、伸う伸うと生きる私を、君は……恨むだろうか」)
 水面に降りた花は緩やかに、他の花たちと共に流れていく。
 その行く先に何があるのかは、――誰も、知らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギド・スプートニク
シゥレカエレカ/f04551

そうだな、と彼女の話に耳を傾け
同時に内心では
この街がよく成り立っているものだ
とも思う
人間などいつ裏切らぬとも知れぬのに

私は果たしてどうするだろう
死地に赴く際
彼女を連れて行くだろうか?

…連れては行けぬ
事実その男は帰ってこなかったのだから
私は
彼女にどう思われようと彼女には生きていて欲しい

置いていかれるのは嫌という言葉に
「ああ」と返す

そうだな

彼女は決して足手まといではない
居てくれた方が生還できる可能性も高まるだろう

が、しかし
それでも―

きみが強かろうと
人間であろうと
私の答えは変わらない

ただ、きみを置いていかずに済むように
私は強く在りたい

この世界を、我々の居場所を守れるように


シゥレカエレカ・スプートニク
夫、ギド(f00088)と!



人間の青年と、フェアリーの少女の話
みんな、お伽噺みたいって思うのかしら
…わたしにはすごく、身近な話に思えるのに

此処はいい街ね、ギド
サイズ感がばらばらな感じってわたしたちのお家みたい、

……ねえ、ギド
置いていっちゃ、いやよ
……置いてっちゃだめ、よ!
戦う力のない妖精じゃないの、あなたの導き手は
強くなったし、これからも強くなる
わたし、最期まであなたの傍にいたいの


流すのに選んだのは、白詰草に似たお花のブーケ

…きっとあなたは共にあることは誓ってくれるけど、
わたしを置いていかない約束はしてくれないのでしょう
わかってるのよ
だからわたし、あなたに追いつける長い脚がほしかった

…内緒ね



 人間の青年と、フェアリーの少女の話。
(「みんな、お伽噺みたいって思うのかしら? ……わたしにはすごく、身近な話に思えるのに」)
 シゥレカエレカ・スプートニクはステンドグラスのような美しく透き通った翅を震わせて、傍らを歩む夫――ギド・スプートニクをそうっと見やる。
 二つの色の瞳が、少しばかり気難しそうな横顔を映した。いつもと変わらぬ二人の時間。変わらぬ心地よさにシゥレカエレカはふふ、と笑みを零して。
「此処はいい街ね、ギド。サイズ感がばらばらな感じってわたしたちのお家みたい」
「……そうだな」
 ルミアリア。人間とフェアリーが共に生きる街。なるほど確かに彼らは種を超えて共存している、そんな風景がそこかしこに溢れている。
 だが、シゥレカエレカの話に耳を傾けながらも、ギドは内心で疑いの心を燻らせていた。
(「この街がよく成り立っているものだ」)
 ――人間など、いつ裏切らぬとも知れぬのに。
 それでも、人々の、そしてフェアリーたちの笑顔を見れば、おそらくこの街ではそういうことはないのだろうとも少しは考えられるような気がした。
 勇者の青年は、愛する少女を置いて旅立った。
(「私は、果たしてどうするだろう」)
 ――死地に赴く際、彼女を連れて行くだろうか?
「……ねえ、ギド。置いていっちゃ、いやよ」
 胸裡に沈みかけていた意識を、彼女の――シゥレカエレカの声が引き上げる。
 きっとそんな時が来たら、彼女は何をしてもついてくるだろう。
 シゥレカエレカとはそういう女だ。それは、他の誰でもないギドが一番良く知っている。
 だが、連れては行けないとギドは思うのだ。事実、後に勇者と呼ばれることになった青年は、帰ってこなかったのだから。
(「私は、彼女にどう思われようと彼女には生きていて欲しい」)
 それがギドの願いであり、想い。けれど――。
「……置いてっちゃだめ、よ!」
 気づけば、傍らを翔んでいたはずのシゥレカエレカが真正面にいた。もう、と、形の良い眉を少しだけ釣り上げるようにして。
「戦う力のない妖精じゃないの、あなたの導き手は強くなったし、これからも強くなる。――わたし、最期まであなたの傍にいたいの」
「……ああ、そうだな」

(「……きっとあなたは、共にあることは誓ってくれるけど、」)
 置いていかないという約束はしてくれないのだろうとシゥレカエレカは感じていた。
(「だからわたし、あなたに追いつける長い足がほしかった」)
 追いかけて、隣に並んで、一緒に歩いていけるような、そんな足が。
 白詰草に似た花のブーケを水面へ託すシゥレカエレカの様子を見やり、彼女の視線の行く先を追うように、ギドもまた川を流れてゆく無数の花を瞳に映す。
 シゥレカエレカが決して足手まといになるような存在ではないことも、ギドは知っている。
 癒しの歌声を持つ彼女が居てくれたほうが、生還できる可能性も高まるだろう。
 だが、それでも。彼女がどれほど強かろうとも、例え、人間の身であろうとも。ギドの答えは変わらない。
(「ただ、きみを置いていかずに済むように――私は強く在りたい」)
 それは、花に託すではない、誓いだ。
 この世界を、ふたりの居場所を――守れるように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『夜空の下で探索を』

POW   :    夜目が利くので、己のポテンシャルを生かして探索

SPD   :    効率重視。思いついた策を試してみる。

WIZ   :    地形や痕跡などから、対象を探す

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――ユーリア、愛しいラフェクレール。
 黙って行ったら、きっと君はその小さな翅を震わせながら後を追いかけてくると思ったから、ちゃんと伝えてから行こうと思ったんだ。

 僕の心からの想いを込めて、君にこの花を贈ろう。
 遠く離れても、想いは共に。
 いつでも、どこにいても、君の傍にたくさんの笑顔と祝福が溢れるよう、心から祈っているよ。
 僕はこれから、とても遠い所に行かなければならない。
 君を連れて行くことは出来ないけれど、僕は僕に与えられた使命を果たして、必ず君の元に帰るから。

 ――でも。
 もしも僕が帰らなかったら、その時は――。


 街から少し離れた荒野にだけ咲くその花は、星の光を帯びて白く輝くと言われている。
 そして、その花はかつて求婚の証として、愛するひとに贈る習わしがあった。
 それは、このルミアリアの街から旅立った勇者セドリックが、まだ勇者と呼ばれていなかった頃の話だ。

 多くの魔物が闊歩するようになった現在ではその習わしもなくなり、荒野に無闇に足を踏み入れる者はそうはいない。
 希少な花を求めて訪れた野盗やならず者たちは、その尽くが魔物に食い尽くされたと言われている。
 凡そ戦う力を持たぬ人々が立ち入ることの出来なくなった場所ではあるけれど、猟兵たちほどの力があるならば、たとえ魔物と出くわしても恐れるに足らないだろう。
 空に瞬く無数の星たちを見ながら、のんびりと散策を楽しむのもいい。
 今も咲いているかどうかわからない、星の光を帯びて輝く花を探してみるのもいい。
 とは言え、花だけでなく、荒野の土そのものがそうであるらしく、地面はまるで無数の星を散りばめたかのように時折煌めいているため、花を探すことは容易ではないだろう。だが、冒険にはもってこいの夜だ。

 ――かつて勇者セドリックが訪れた、星降る荒野。
 永い時を経た今、猟兵たちがこの場所に訪れたこと、それ自体が来るべきいつかに繋がる確かな道となるのだから。
コルチェ・ウーパニャン
引き続きアジサイさんの鉢植えを抱っこしてお散歩!
と、思ってたけどやっぱりちょっと重いや…。
ごめんねアジサイさん、ちょっと座って休憩しよう!

…すごいね、コルチェたちが暮らす世界じゃ、こんなお星さまは見られないよ。
雨粒のかわりに星が落っこちてきて、それで地面までキラキラ光るのかなあ?
コルチェの髪も、気持ちを落ち着けて、ぴかぴかをちょっぴり控えめにしておこっと。

お花が光る以外はどんなかは伝わってないけど、
こんな荒野で、いっしょうけんめい咲くから特別なお花なんだと、コルチェ思うの。

だから今日は、わたしとあなた、二人で伝説のお花。
世界でいちばん、素敵なお花。
…ね! コルチェとアジサイさんの、ひみつだよ!



「ごめんねアジサイさん、ちょっと座って休憩しよう!」
 花祭りで賑わうルミアリアの街で運命の出逢いを果たした紫陽花――の鉢植えと共に、コルチェ・ウーパニャンは星降る荒野へ足を運んでいたけれど。
 やはりずっと抱えて歩くには、コルチェの細い身体には少しばかり重かった。
 荒野の一角、程よく座れそうな岩に腰を下ろし、足元にアジサイさんを置いて、コルチェは満天の星空を仰ぐ。
 ――吸い込まれそうな空だった。
 地面を撫でていく風は、昼間に比べたら少し冷たい。
 風の音と、虫の声と、それ以外には何も聴こえない、静寂に包まれた世界。
「……すごいね、コルチェたちが暮らす世界じゃ、こんなお星さまは見られないよ」
 夜色のキャンバスに散りばめられた無限の星。時折すっと尾を引いて流れていく光に、コルチェの魔法光ファイバーの髪がぱっと色を変える。
 けれど、コルチェははっと瞬いて深呼吸。そうすれば心が落ち着いて、髪のぴかぴかはいつもよりちょっぴり控えめな明るさになった。
「雨粒のかわりに星が落っこちてきて、それで地面までキラキラ光るのかなあ?」
 だって本当にそう思えてしまうくらい、ひとつ、ふたつと瞬く間に星が流れていくのだ。
 そう言えば、ここに咲く花が光ること以外にどんな逸話があるのかは聞いていない。でも――、
「こんな荒野でいっしょうけんめい咲くから、特別なお花なんだってコルチェ思うの」
 コルチェはそう、紫陽花に語りかけるように呟いて、にっこりと笑ってみせる。
「だから今日は、わたしとあなた、二人で伝説のお花。世界でいちばん、素敵なお花」
 この、星降る荒野の片隅で、限りあるいのちを輝かせて咲く、ふたつの花。
「……ね! コルチェとアジサイさんの、ひみつだよ!」
 内緒話のように顔を寄せて告げれば、紫陽花の花が応えるように――コルチェの髪の淡い魔法光を映して煌めいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・オルビス
クラリスさん(f10090)と

【WIZ】
頬を紅潮させる彼女を
可愛らしいなと横目に見遣り
…僕にはまだ恋愛の機微は分かりませんが
道は別たれても想いは共にあるのだと
よすがを求めた気持ちは分かるんです

光る花を見つけて駆け寄るも
ただ白いだけの野花だったり
星の光を弾いた枯草だったり
やはりなかなか見つかりませんね…

道に迷った仔猫の様な
心細げな視線にふと気付き
遠慮がちに掌を差し伸べる
手を繋ぎましょうか、クラリスさん
星の海に溺れて逸れてしまわないように

血の通わぬ白磁の指が
あなたの温かな手を包み込めば
それだけで得難い宝を得た心地になる
あなたとこうして歩く時間もまた
稀少な花に勝るとも劣らない
特別なものだと思うから


クラリス・ポー
ミューさん(f03315)と
【POW】
きっとセドリックさんは
愛しいラフェクレールのもとへ還り
星彩の花を贈って
永遠を誓うのだろう
ロマンティックですニャン…
空想に熱くなる頬を
両手で覆いたくなる衝動と戦いながら
夜目を凝らします

時折煌めく土は
空に瞬く星が降り積もったのかも
夜は空と大地の境を曖昧にするから
私たちは星海に沈んだみたい
夢中になる程
見失ってしまいそうで
ほんの少し不安であなたをみた

溺れぬようにと差伸べられた手は
白く綺麗で
温度は無くとも優しいと信じられた
咲いている星彩の花も
きっとそういう花なのだろうと
私の毛だらけの手があなたの手を握る

花は風にそよぐ
宝物を手に
揺れ動く星を探し求めて
私達は荒野を歩いた



 ――きっとセドリックは愛しいラフェクレールのもとへ還り、もう一度星彩の花を贈って今度こそ永遠を誓うのだろう。
 そして、物語はめでたしめでたしで結ばれる。
「ロマンティックですニャン……」
 思い描いたハッピーエンドにぽっと熱が灯る頬を両手で覆いたくなる衝動と戦いつつ、クラリス・ポーは夜目を凝らして世界を見つめ。
 そんな彼女を可愛らしいなと横目に見やり、ミュー・オルビスは淡く微笑んだ。
「……僕にはまだ恋愛の機微は分かりませんが。道は別たれても想いは共にあるのだと、よすがを求めた気持ちは分かるんです」
 見上げた空に瞬く無数の星を、ミューは硝子の瞳に映す。
 自分を創り、心をくれたひとたちはもう何処にも居ない。けれど、彼らが遺した汽車と共に宛もなく旅を続ける自分自身と、愛するひとに花を残した勇者セドリックの想いは、どこか重なるような気がして。
「……あっ」
 ふと巡らせた視線の先に揺らめく白い煌めきを見つけ、ミューは駆け寄った。
 だが、その先には光を持たぬ、ただ白いだけの野花が一輪。
 他にも星の光を弾いた枯草だったり、猫のような兎のような小さな獣だったりと、探している花とはちっとも巡り逢えなくて。
「やはりなかなか見つかりませんね……」
「ええ、でも、……とっても不思議です。まるで、空に瞬く星が降り積もったみたい」
 時折煌めく土を指差しながら、クラリスは楽しげに微笑む。
 まるで星海に沈んだみたいな心地になるのは、空と大地の境界が曖昧になった夜だからこそ。
 けれど、輝く花を探すのに夢中になればなるほど大切なものを見失ってしまいそうで――クラリスは、ほんの少しばかり不安げにミューを見やった。
 それはまるで道に迷った仔猫のような、心細げなもの。向けられた視線に気づいたミューは、遠慮がちに手を差し伸べる。
「手を繋ぎましょうか、クラリスさん。……星の海に、溺れて逸れてしまわないように」
 血の通わぬ白磁の指先が、どこかぎこちなく揺れる。白く美しいその手にぬくもりはなくとも、籠められた想いが優しいものであることを、クラリスは素直に信じられた。
 この荒野のどこかに咲いているであろう星彩の花も、きっとそういう花なのだろう。
 白磁の人形の手にそっと重ねた毛だらけの猫の手。
 種が違えども、心を通わせることは出来る。
 いにしえの時を生きた人間の青年と妖精の少女が、そうであったように。
 伝うぬくもりにそれだけで得難い宝を得た心地になって、ミューは心まであたたかくなったような気がした。
「あなたとこうして歩く時間もまた、稀少な花に勝るとも劣らない……特別なものだと思います」
「――私もです」
 そよぐ風に、花が揺れる。
 一つ得た掛け替えのない宝物を手に、ふたりは揺れ動く星を探し求めて荒野を辿る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五曜・うらら
シーラさん(f00863)と一緒です!

ふむふむ、求婚の証となる花……なんだか素敵ですねっ!
と、すると。きっとあのお祭りで花を流すのは
勇者さんの無事を祈る事がが始まりだったのでしょうか!
遠く、群竜大陸へと旅立った勇者さんへのっ!

結末を想うとちょっと悲しい気もしますが、昔の事です!
せっかくですし、私たちもそのお花、探してみましょうかっ!
あ、別にシーラさんに求婚するわけではないですよ!

こうして星の煌きを見ていると修行の旅の事を思い出します!
水面に映った月を斬ったり、色々しましたっ!

星の光を受けてその輝きを増す花……
想像するだけで期待が膨らんでしまいますっ!
一体どのような姿をしているのでしょうね!


シーラ・フリュー
うららさん(f00650)と
綺麗な夜空とお話。とっても素敵だと思います…。
こういうお話からお祭り等で文化が残っていくのって何だか良いですよね…。

そうですね、せっかくですし花を探しながら行きましょうか。
…きっと綺麗な花なんでしょうね…私も気になります…。
周りを見渡したり、怪しい場所を調べてみたり…時折夜空も眺めてみたりしながら、のんびりと。

…求婚…?ええと、大丈夫です。ちゃんと分かってますよ。私もうららさんに求婚されても困ってしまいます…。

私は今まで引きこもっていたので、あまり夜空を見る事はなかったですけれど…最近はこういうのも良いな、と思えるようになりました。
外の世界は良い物ばかりですねぇ…。



「ふむふむ、求婚の証となる花……なんだか素敵ですねっ!」
 そうだとすると、祭りで花を流すのは、遠く群竜大陸へと旅立った勇者セドリックの無事を祈ることが始まりだったのだろうか――。
 いつかの始まりに想いを馳せながら、五曜・うららは胸をときめかせるばかりだ。
「こういうお話からお祭り等で文化が残っていくのって、何だか良いですよね……」
 綺麗な夜空と物語。遠い遠い昔から紡がれてきた想いと、その時からずっと変わらぬ空の景色。
 シーラ・フリューもこくこくと頷きながら、無数の輝きが散りばめられた空を見る。
 遠い、昔の話だ。帝竜ヴァルギリオスを討ち滅ぼすべく旅立った勇者はその殆どが沈みゆく群竜大陸と運命を共にしたと伝えられている。
 ルミアリアの街から旅立ったセドリックも、生きて帰ることはなかった。
 果たせなかった約束。その結末を想うと少し悲しい気もするけれど、今となっては昔の話だ。
「せっかくですし、私たちもそのお花、探してみましょうかっ! ……あ、別にシーラさんに求婚するわけではないですよ!」
「……求婚……?」
 ぶんぶんと勢いよく首を振るうららにシーラは一瞬目を丸く、僅かな間を挟んで。
「ええと、大丈夫です。ちゃんと分かってますよ。私もうららさんに求婚されても困ってしまいます……」
「ですよね!」
 ぎこちなく目を逸らしながら答えたシーラに、うららは何度も力強く頷いた。
 それはさておき、花を探してみたい気持ちがシーラにあるのも本当だ。
「せっかくですし花を探しながら行きましょうか。……きっと綺麗な花なんでしょうね……私も気になります……」
 早速とばかりにシーラは辺りを見渡し、怪しげな場所がないか探し始める。
「星の光を受けてその輝きを増す花……想像するだけで期待が膨らんでしまいますっ!」
 一体どのような姿をしているのだろう。それさえも想像が尽きることはない。
「こうして星の煌きを見ていると、修行の旅の事を思い出します!」
 水面に映った月や小さな星を斬ったり、色々したのだと語るうららに、一つ一つ相槌を挟みながら、シーラもまた、ぽつぽつと思うことを唇に乗せる。
「私は今まで引きこもっていたので、あまり夜空を見る事はなかったですけれど……最近はこういうのも良いな、と思えるようになりました」
 外の世界は良い物ばかりだと実感できるようになったのも、きっと、自身にとって良い変化の兆しだ。
 そんなシーラの声に、うららも笑顔で耳を傾ける。
 時折夜空を見上げながら、他愛ない話に花を咲かせつつ、散策はのんびりと。
 降る星の行く先に灯る光を二人が見つけられたかは、さて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朝沼・狭霧
ベイメリア(f01781)と

いやー伝説の花なんてそんな簡単に見つかるわけないない
はしゃぐベイメリアを愛でつつ
テキトーに遊んじゃいます

お星様綺麗ですね
星は昔の船旅において
自分たちの位置を知るためにとても重要だったんですよ
あれが南十字星、空の南方向を指し示す星です
ベイメリアと星空を楽しみます

魔物ですか?
ベイメリアほら、タヌキさんがいますよ
むくむくですよ、かわいいですね
案外、これが魔物の正体かもしれません
タヌキは人を化かすと言いますからね
ゆっくりと近づきます
なでさせてくれるかしら?そーっと手を伸ばしますが
タヌキさんはどこかへ、残念

あれ?いまちらっと凄い綺麗な白い花があったような
気のせいですよね、多分


ベイメリア・ミハイロフ
狭霧さま(f03862)と
お花探しを


まあ、まあっ、なんと美しい光景なのでしょう…!
見上げましても見下ろしましても、星空が広がっているだなんて!
狭霧さまは、色々とご存知でいらっしゃるのですね
なんだかわたくし、更にわくっとしてまいりましたよ

お花を求めて訪れた野盗などは、魔物に倒されてしまったとか…
ならば、そのお花の近くには、魔物がいるのでしょうね
用心して参りましょう、と申し上げつつも
この美しい景色に、まるで酔ってしまったかのように
心なしか、はしゃいでしまっております

まあ、魔物でなく、動物が…
戦闘になっては大変でございます、お逃げになって正解なのでは
このようなかわいらしい魔物でしたら大歓迎ですのにね



「まあ、まあっ、なんと美しい光景なのでしょう……!」
 見上げても見下ろしても視界に広がる星空に、ベイメリア・ミハイロフは瞳を輝かせながら見入る。
「お星様、綺麗ですね。星は昔の船旅において、自分たちの位置を知るためにとても重要だったんですよ」
 一応は“先生”らしく。あれが南十字星と朝沼・狭霧は南の空を指し示す。
 感心したように聞き入るベイメリアは、狭霧が示す通りに一際明るく輝く星を辿って。
「狭霧さまは、色々とご存知でいらっしゃるのですね。なんだかわたくし、更にわくわくして参りましたよ」
 未だ見ぬ星の煌めき帯びた花はどのように咲いているのだろう――ベイメリアの想いは募るばかりだ。
「お花を求めて訪れた野盗などは、魔物に倒されてしまったとか……ならば、そのお花の近くには、魔物がいるのでしょうね」
 用心して参りましょう、そう真剣な顔でベイメリアは狭霧に告げるものの、まるで目の前に広がる美しい景色に酔ってしまったかのように心が弾んでいるのを感じていた。
(「いやー、伝説の花なんてそんな簡単に見つかるわけないない」)
 一方、ベイメリアがはしゃぐ姿を微笑ましげに見やる狭霧の思考はとても現実的だ。けれど花探しに張り切っている彼女の姿が愛らしいことに変わりはないから、適度に散策しつつ一緒に花を探してみるのも悪くはないとも思っていた。
 ふと、視界に現れた小さな影に狭霧は瞬いて。
「ベイメリア、ほら、タヌキさんがいますよ。むくむくですよ、かわいいですね」
「まあ、魔物でなく、動物が……」
 暗闇の中、目を光らせるそれは魔物ではなく、野生の獣。ベイメリアはほっと安堵の息を零しつつ、狸へゆっくりと近づいていく狭霧を見守る。
「案外、これが魔物の正体かもしれません。タヌキは人を化かすと言いますからね。……撫でさせてくれるかしら?」
 一歩、また一歩、狭霧は狸との距離を詰めながらそっと手を伸ばした。
 撫でようとしたその手はするりとすり抜けて、追いかける間もなく狸はどこかへ走り去ってしまっていた。
「あら、残念」
「ですが、戦闘になっては大変でございます、お逃げになって正解なのでは? ……あのようなかわいらしい魔物でしたら大歓迎ですのにね」
 小さく肩を竦める狭霧に、ベイメリアも残念そうに息を吐く。夜闇に紛れてしまった狸の姿はもう見つけられないだろう。けれど、代わりに――。
(「あれ? いまちらっと凄い綺麗な白い花があったような。……気のせいですよね、多分」)
 狭霧は瞬かせた目を凝らし、暗闇のその先をじっと見つめる。
 けれど、瞬いて消えた光をもう一度見つけることは、どうやら出来そうになかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風切・櫻
友人の東雲殿(f00865)と

星空を映したかのように煌めく大地
幻想に満ちたこの世界ならではか、夢幻のようだ
――はは、砂糖菓子か。確かにそのようにも見えるな
東雲殿は存外、花より団子なのだろうか?

ああ。おれは刀だ
持ち主は……幾人か転々と。今は不在だ
なに、感覚としては常人が手足を振るうのと変わり無い
しかし、おれの話など聞いても楽しいだろうか?

星の瞬きを楽し気になぞり歩む桜姫
己の事を知るのが楽しい――と言われれば、不思議な感慨が湧いて来る

どうしてもと言うのであれば
寝物語代わりにでも語って聞かせよう
長く聞きたければ、頑張って睡魔に抗うが良い

さ、東雲殿。今は花を探さねばならぬよ
大地の星空に紛れた一番星をな


東雲・咲夜
友人の櫻さん(f01441)と

燦めきの粒子を宿す荒野
星の海宛ら
此の眸にはお砂糖の大地にも見えとりまして
まるでクリスタルシュガー…
なんて、趣味のお菓子作りにも
年季が入っとるやろか

そういえば、櫻さんは刀でしたね
その腰のものが本体…やろか
美しい桜の鍔
持ち主さんはどないしはっとるん?

…成程
あんさんがあんさんをつこてるみたいで
なんや不思議やなぁ思っとりました

地に瞬く星彩だけを踏み歩めば
軽快なステップを奏で躍る爪先
櫻さんの事を知られるんが楽しいんです
是非もっと聴かせてくれはる?

ほんなら今度お泊り会でも開きまひょか
せやけどうち、寝つきはええ方やさかい
聴き終わらへんうちに夢の中にいってしもたら
どないしましょ…



 星空を映したかのように煌めく大地。
「……まるで、夢幻のようだな」
 幻想に満ちたこの世界ならではのものだろう景色に、風切・櫻は思わず感嘆の息をつく。
 東雲・咲夜の藍の瞳には、星の海さながらの煌めき宿す荒野も、まるでお砂糖の大地のように見えて。
「クリスタルシュガー……」
 咲夜が落とした声を拾い上げた櫻が、柔らかく目を細める。
「――はは、砂糖菓子か。確かにそのようにも見えるな。東雲殿は存外、花より団子なのだろうか?」
「もう、櫻さん、からかわんといて」
 咲夜は小さく頬を膨らませるけれど――思わずそんな風に感じてしまうのは、趣味のお菓子作りにも年季が入っている証拠だろうか。

「そういえば、櫻さんは刀でしたね。その腰のものが本体……やろか」
 星煌めく道を辿りながら咲夜がつと見やるのは、櫻が腰に差している、美しい桜の鍔を持つ刀。小さく首を傾げる咲夜に、櫻はああ、と頷いて。
「持ち主さんは……どないしはっとるん?」
「持ち主は……幾人か転々と。今は不在だ。だからこうして、おれ自身が振るっているという訳だ」
 櫻の刀は彼の手によく馴染んでいると何とはなしに思っていた。その理由に、咲夜は成る程と頷いて、櫻と彼の刀を交互に見やる。
「……なんや不思議やなぁ思っとりました。あんさんがあんさんをつこてはったんですね」
「なに、感覚としては常人が手足を振るうのと変わり無い。……しかし、おれの話など聞いても楽しいだろうか?」
 櫻にしてみれば、それは純粋な疑問。咲夜は楽しげに笑み零し、とん、と軽やかに踏み出した。
 地に瞬く星彩の瞬きを辿って歩めば、爪先が軽快なステップを奏でて楽しげに躍る。そのまま、咲夜はくるりと振り返って。
「櫻さんの事を知られるんが楽しいんです。――是非もっと聴かせてくれはる?」
 ふわりと、笑み綻ばせる咲夜の言葉に、櫻の胸裡に言葉にし難い不思議な感慨が仄かに灯る。
「……どうしてもと言うのであれば、いずれ寝物語の代わりにでも語って聞かせようか」
 などと告げてみたのは戯れに。けれど咲夜はというと――。
「ほんなら今度お泊り会でも開きまひょか。せやけどうち、寝つきはええ方やさかい、聴き終わらへんうちに夢の中にいってしもたらどないしましょ……」
 素直にそう答えながらふと真剣に考え始める咲夜を見て、櫻はくつ、と喉奥で笑った。
 桜姫の愛らしい寝顔を見るも、また一興ではあるけれど。
「長く聞きたければ、頑張って睡魔に抗うが良い。――さ、東雲殿。今は花を探さねばならぬよ」
 何処かに咲いているであろう、大地の星空に紛れた一番星を。
 往こう、と促すように。再び星の彩をなぞって踏み出した咲夜の背を追って、櫻もゆるりと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫崎・宗田
【狼兎】

…探したいとか言う割に
空ばっか見てんじゃねぇか
花は空にゃ浮いてねぇぞ

澪の様子をチラリと横目で見つつ
興味無さげな風を装いながら【暗視+視力】で花探し
だがその後の澪のある意味告白とも取れるような言葉に
思わず額を押さえ

…おいチビ
いつも言ってるだろうが
相手が俺だからまだいいが…
お前マジでいつか誤解されんぞ

忠告はしても伝わってなさそうで溜息
あんま油断してっと魔物に襲われんぞ

…バーカ
テメェがチビで鈍臭ェから仕方なくだ

ちょ、おい!だから1人でウロチョロすんなっつの!

澪の後を追いながら
子龍形態のクオンに周囲の見張りを任せ軽く舌打ち

仕方ねぇだろ
コイツだけは、護りたくなっちまったんだから


栗花落・澪
【狼兎】

見つかるかどうかわからなくても
どうせなら探してみたいよね
その綺麗な花

そう言葉にはするが
視線を巡らせるでも空から探すでもなく
後ろで手を組み星を眺めながらのんびりと

花も気になるけど
今はこの時間が大事だからね
行き着く先にあればそれでいいの

え、なにが?(天然)

凄いねぇこの土
まるで宇宙にいるみたい

時折片足を軸にくるんと回り

ふふ、大丈夫だよ
護ってくれるんでしょ?
前は散々面倒がってたのに
紫崎君も変わったよねぇ

あー、失礼なー
折角褒めてあげたのに!
もうしーらないっ

わざと舌を出して駆け出せば
追いかけてくれる事を知ってる
僕の為に花を探してくれてる事も
だから僕は敢えて探さない

今この瞬間は
彼との思い出の為だけに



「見つかるかどうかわからなくても、その綺麗な花。……どうせなら探してみたいよね」
 そう、言葉にはするものの、栗花落・澪は視線を巡らせるでもなければ翼を広げて空から探すでもなく、後ろで手を組みながらのんびりと星を眺め歩いていた。
「……探したいとか言う割に、空ばっか見てんじゃねぇか」
 花は空にゃ浮いてねぇぞと紫崎・宗田が吐き捨てるのにも、澪は心ここにあらず。
「凄いねぇこの土。まるで宇宙にいるみたい」
 時折片足を軸にくるんと回りながらも、やはりその眼差しは星彩の瞬きが散りばめられた空へと向けられたまま。そんな澪の様子をちらりと横目で見つつ、宗田は相棒の黒龍に周囲の見張りを任せ、興味がない風を装いながらも夜目を凝らして荒野を見つめる。
 その時、ふと、澪は何気なく零した。
「花も気になるけど、今はこの時間が大事だからね。行き着く先にあればそれでいいの」
「……っ!」
 それはある意味、告白とも取れるような言葉に聴こえて。思わず額を抑えながら、宗田は吐き出しかけた溜め息を強引に飲み込む。
「……おいチビ、いつも言ってるだろうが。相手が俺だからまだいいが、……お前マジでいつか誤解されんぞ」
「え、なにが?」
 澪はわざとではく、意識せずそういう反応を返してくるのだ。
「……あんま油断してっと魔物に襲われんぞ」
「? うん、わかった」
 忠告も、どうやら全く伝わっていない様子。ゆえに宗田は今度こそ盛大に溜息を吐いて、負け惜しみのように続けるのが精一杯だった。
「ふふ、大丈夫だよ。護ってくれるんでしょ?」
 けれど、宗田へと向けられた澪の表情は、何を恐れる必要があるのかとばかりの屈託のない微笑みで。
「前は散々面倒がってたのに、紫崎君も変わったよねぇ」
 ――己に向けられるその微笑みを、宗田は信頼だと知っている。けれど、澪に対して素直な言葉が吐けない自分がいることも知っていた。
「……バーカ。テメェがチビで鈍臭ェから仕方なくだ」
「あー、失礼なー! 折角褒めてあげたのに! もうしーらないっ」
「ちょ、おい! だから一人でウロチョロすんなっつの!」
 小さく舌を出して駆け出した澪を追って、宗田も走り出す。

 宗田が追いかけてきてくれることを、澪は知っている。
 自分のために、花を探してくれていることも。
(「……だから、僕は」)
 あえて自分で花を探すことはせずに。今この瞬間は、彼との想い出の為だけにここにいるのだ。

 そして、宗田もまた、わかっているのだ。
 澪がそうすることで自分に花を探させようとしていたことも、身体が弱いのに走って、追いかけさせようとしていることも。
 それでも、胸の内に綻ぶ想いは、もうどうしようもなかった。
(「仕方ねぇだろ。――コイツだけは、護りたくなっちまったんだから」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

光る花
櫻の言葉に瞳をきらり
そんな素敵な花なら見つけたい
見つけてと祈る愛ならば、知らんぷりはできないよ
見つけよう櫻宵!

君と穹を游ぐのは楽しくて
嗚呼、君は星空に咲く桜だ
舞い散る桜の花弁は流れ星のよう
ふふ
歌いたくなる
楽しいなぁ
あの光は花かな?あれは?
なんて指差し游ぐ星の海

あ!きゅうこん、の花!

笑顔の櫻におずおずと
……きゅうこん、って何?

櫻に教えて貰えばぽっと顔を桜に染め
なら、僕は
僕からお姫様へ渡したい

この、白の求婚の花
だってだって
ずぅっと
だいすきなんだから

照れる櫻に微笑んでいたら、肩に乗ってたヨルがきゅっ!と飛び出して
花をとってかけて行く

待ってヨル!
それは、僕の……!


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

白い花が咲いているのですって
求婚の花が星の光で煌めくなんて素敵ね
荒野の中自分を見つけてほしいと祈っているようで
リィ
一緒に探してみましょ

穹游ぐリルの隣桜舞わせて穹を舞う
低い位置を寄り添い飛びながら白の花を探すの
あなたとなら、見つかる気がするのよ

第六感働かせあちこち飛んで
土も光るなんて綺麗ねぇ
靡くリルの髪が夜空にとける天の川のよう
なんて綺麗な人魚


ぽつんと咲く一輪を見つければ

あなたは求婚されたい?それともしたい?
あたしはされたい

え?

まずはそこから?
いいわ
教えてあげる
求婚っていうのは―

リルの言葉にときめいていたら
なんて事!
ヨルが花をとって逃げていったわ!
捕まえなきゃ!



「白い花が咲いているのですって」
 内緒話のように声を潜めて、誘名・櫻宵は傍らを游ぐリル・ルリに告げる。
「求婚の花が星の光で煌めくなんて素敵ね。まるで、この荒野のどこかで自分を見つけてほしいと祈っているよう」
 櫻宵の言葉にリルは薄花桜の瞳を輝かせ、ふるりと月光ヴェールの尾鰭を震わせた。
「そんな素敵な花なら見つけたい。――見つけてと祈る愛ならば、知らんぷりはできないよ」
 この広い、広い荒野のどこかでひとり、待ち続けることしかできないのは、きっとすごく苦しくて、切なくて、寂しいだろうから。
 櫻宵はそんなリルの願いと想いを受け止めて、にっこりと笑みを深める。
「ね、リィ。一緒に探してみましょ」
「うん、見つけよう櫻宵!」

 穹を游ぐリルの隣に寄り添うように、櫻宵も桜花をはらりと舞わせて穹を舞う。
「――嗚呼、君は星空に咲く桜だ」
 舞い散る桜は、まるで流れ星のように煌めいているように見えた。
「あなたとなら、見つかる気がするのよ」
 ひとりでは見つけられなかっただろう。でも、ふたりなら、きっと。
 己の胸を満たす確信に似た予感を信じて、櫻宵は僅かな手がかりも見逃すまいと花霞の瞳を凝らす。
 二人、共に穹を游ぐのは楽しくて、リルは知らず笑みを零す。
 だって、歌いたくなるほどに楽しいのだ。
 この星穹の舞台で、たったひとりの君のためだけに歌えたら、どんなにか素敵な時間になるだろう。
「あの光は花かな? あれは?」
 なんて瞬く光を指差しながら、星の海をふたりで游ぐ。
「土も光るなんて綺麗ねぇ。うふふ、リィもとっても綺麗よ」
 風に靡く二つの青を重ねた髪は、夜空にとける天の川のよう。
 なんて綺麗な人魚、思わず感嘆の息を零してしまうほどに、彼の人魚姫はうつくしい。

 ――やがて岩陰に見つけた、ぽつんと咲く一輪。
「あ! きゅうこん、の花!」
 ぱっと大きな笑みを咲かせると同時、リルは尾鰭を翻して花の元へ。
 まるで命を燃やすように、白く輝く八重咲きの小さな花は、話に聞いた通りのものだった。
「無事に見つけられてよかったわ! とっても綺麗ね。……ねぇリィ。あなたは求婚されたい? それともしたい? ……あたしはされたい」
 ぽつりと、ねだるように添えられた言葉。その先に待つ屈託のない笑顔に、リルはひとつふたつと目を瞬かせてから、おずおずと切り出した。
「あのね、櫻。……きゅうこん、って何?」
「え? まずはそこから? いいわ、教えてあげる。求婚っていうのはね――」
 教えてもらったその意味に、リルはぱっと顔を桜色に染め上げて。
「なら、僕は、……僕からお姫様へ渡したい」
 ――だって、ずぅっとだいすきなんだから。
 リルの言葉にまぁ、と櫻宵は胸をときめかせる。心なしか照れているようなその表情をリルは微笑ましく見つめていたけれど、次の瞬間。
「きゅっ!」
 リルの肩に乗っていた小さなペンギンの雛――式神のヨルが飛び出して、花をくわえてあっという間に駆けていってしまった。
「えっ、あっ、待ってヨル! それは、僕の……!」
「なんてこと! ヨルが花をとって逃げていったわ! 捕まえなきゃ!」
 そうして、小さなペンギンを追って穹を地を駆けていくふたりを、天地に煌めく星たちが、どこか楽しげに見守っていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

ああ、このような夜の散歩は、贅沢なものじゃの
迷子? この地平で一人迷子になるのは嫌じゃけど、二人迷子なら楽しいんじゃなかろうか

花か。咲いておればええな、わしも見てみたい
お、競争か? ええぞ!
ふふ、わしのほうが早く見つけてみせよう
どんな花かの、虚もきっと喜ぶじゃろ
星の光を帯びて白く輝く…すぐ見つかりそうな気もするがさて、隠れておるのかもしれんな

流れ星!
わし見逃した…また流れるかの?
ちょっと流れ星探してみよ、負けぬからな!
うん、願い?
そうさなぁ……小さな友人たちの幸せと…
もひとつは、ひみつじゃ
せーちゃん、色んな所に一緒に行こうな

――傍らの友の幸せは内緒で願ってこそじゃろ


筧・清史郎
らんらん(f05366)と

夜の探索というのも、また心躍るな
それにしても、美しく幻想的な景色だ
煌めく星々に夢中になりすぎて、迷子にならぬようにせねばだな(くすりと
確かに、二人だと迷子もまた楽しそうだ

花は見つかるだろうか、一目見てみたいものだが
らんらん、どちらが早く花を見つけるか、競争でもするか?(微笑み
もし輝く花を見つけられたならば、そっと眺めるだけに

らんらん、流れ星が
らんらんは流れ星に何を祈る?
これだけの星だ、またきっと流れるだろう
では今度は、どちらが先に流れ星を見つけるか競争か?(微笑み
流れ星を追いかけた先には、何が待っているのか

これからも、どんなことでも
沢山の事を、一番の友と共有できればと



「それにしても、美しく幻想的な景色だ。夜の探索というのも、また心躍るな」
「ああ、このような夜の散歩は、贅沢なものじゃの」
 落ち着いた佇まいながら僅かに声を弾ませる筧・清史郎に、終夜・嵐吾も灰青の狐尾を機嫌よく揺らしながら頷いてみせる。
 夜の静寂に瞬く星たち。果てしなく続く荒野に、二人――どこまでも歩いて行けそうな心地さえするけれど、
「煌めく星々に夢中になりすぎて、迷子にならぬようにせねばだな」
 と、清史郎がくすりと笑み零せば、嵐吾ははて、と首を傾げ。
「迷子? この地平で一人迷子になるのは嫌じゃけど、二人迷子なら楽しいんじゃなかろうか」
 一人ではきっと考えつかなかっただろう嵐吾の言葉に、清史郎は目を瞬かせてから、ふ、と笑みを深めた。
「……確かに、二人だと迷子もまた楽しそうだ」
 そうして迷子になりながら、輝く花を探すのもまた一興だろう。叶うならば一目見てみたいと思うのは、清史郎も嵐吾も同じ。
「らんらん、どちらが早く花を見つけるか、競争でもするか?」
「お、競争か? ええぞ! ふふ、わしのほうが早く見つけてみせよう」
 互いに幼さ覗く少年のような遣り取りは凡そいつものこと。
 星の光を帯びて白く輝く花。すぐに見つかりそうな気もしないでもないが、大地の煌めきに隠れてしまうほどに慎ましやかに咲いているのかもしれない。
「どんな花かの、虚もきっと喜ぶじゃろ」
 華の香に微睡む右眼の主は、かの花を見たら何と思うだろう。そんな風に花を探して歩いていた、その時――。
「――らんらん、流れ星が」
「流れ星!」
 不意に響いた清史郎の声に、嵐吾はばっと顔を上げる。
 けれどその先に広がる満天の星空に尾を引いて流れていく星は既に見えず、しゅん、と耳と尾が下がった。
「わし見逃した……また流れるかの?」
「これだけの星だ、またきっと流れるだろう」
 いつしか、探索の行方は地上から空へ。夜の暗さにすっかり慣れた瞳には、想像以上の星が眩しくも感じられて。
「じゃあわし、ちょっと流れ星探してみよ、負けぬからな!」
「では今度は、どちらが先に流れ星を見つけるか競争か?」
 ――何故か勢いを増す競争心もそのままに、いつしか二人はその場に座り込んで空を見上げていた。
 ともすれば、そのまま雨や雪のように降り落ちてきそうな、無限の星の瞬き。
 果たして、流れ星を追いかけた先には何が待っているのだろう。
 そう思った時、ふと清史郎は嵐吾へ問いかけていた。
「らんらんは流れ星に何を祈る?」
「……うん、願い? そうさなぁ……」
 瞬く星に向ける思案顔。真っ先に思い浮かぶ顔に知らず目を細めながら、嵐吾は浮かぶ願いをひとつ口にする。
「小さな友人たちの幸せと。……もひとつは、ひみつじゃ」
「そうか、秘密か」
 清史郎はそれ以上問うことなく柔らかに微笑むと、再びゆるり、空を見上げて。
(「――傍らの友の幸せは、内緒で願ってこそじゃろ」)
 そんな友の横顔に笑み深め、嵐吾は、願うような響きを唇に乗せた。
「せーちゃん、これからも色んな所に一緒に行こうな」
「ん? ああ、勿論だとも、らんらん」
 そうして清史郎もまた、願いを星に一つ。
(「これからも、どんなことでも。沢山の事を、一番の友と共有できれば……」)
 緩く目を伏せた、次の瞬間だった。
「――あっ、せーちゃん! 流れ星じゃ!」
 はしゃぐ子どものように弾む声。ぱちり、と瞬いた瞳に、一際大きな星が輝いて流れていくのが見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エレステイル・テイル
勇者さまのお話って、かなしいものが多いけど。
今日のお空はとってもきれい。
ほら、わたげ。上も下もキラキラしてるよ!

え、あしもと?あぶない?
はわわ(咄嗟に尻尾を振ってバランスをとりつつ)

わたげを抱えつつ、くろくんと歩くよ。
光るお花、みつけたいよねぇ?
くろくんにマモノのけいかいを任せて、わたげのきゅうかくに期待してるよ。
ボクはカンに任せてお花さがすよっ。

ちょっとした岩場のカゲとか、のぞいてみたり。
見つかっても見つからなくっても、ふたりと歩くのが楽しいんだよ。
まわりが真っ暗で、すこしこわいけど。
もしもの時は、しるしがぴかぴかひかるから、だいじょうぶ!
たぶん!
わたげをぎゅっとしつつ。
あ、あれなにかなー?



 ――“勇者さま”のお話は、かなしいものが多いけれど。
 今日の空はとても綺麗だと、エレステイル・テイルは感じていた。
「ほら、わたげ。上も下もキラキラしてるよ!」
「みゅっ!」
 キラキラを追いかける大きなうさぎ――わたげのつぶらな瞳も、なんだかキラキラしているように見える。
 たのしいねえとほんわか笑顔で足取りも軽く星降る荒野を辿っていたエレステイルだったけれど――。
「みゅみゅー!」
 不意に、腕の中のわたげがはっとしたように声を上げた。
「え、あしもと? あぶない? はわわっ」
 転がる石に躓きそうになったエレステイルは咄嗟に竜尾を振ってバランスを取りつつ、その場に立ち止まる。
 すると、先を歩いていた黒い仔竜のくろくんが、何してるんだとばかりに振り返るのが見えた。
「だいじょうぶだよ、くろくん。わたげ、ありがと!」
「みゅみゅっ!」
 そうして再び始まる、三人の冒険。
「光るお花、みつけたいよねぇ?」
 くろくんに魔物の警戒をさせつつ、ひくひくと鼻と髭を動かすわたげの嗅覚に期待を寄せて。
 当のエレステイルはというと――第六感という名の直感に任せての花探しだ。
 ちょっとした岩場の影を覗いてみたり、地面にしゃがみ込んでじーっと目を凝らしてみたり。
 なかなか見つからないけれど、それはエレステイルにとって大きな問題ではなく。
 ふたりと一緒に歩くのが、何よりも楽しいのだ。
 周りは真っ暗で、少しだけ怖い。けれど、わたげもくろくんも側にいてくれる。
 それに、もしもの時は生まれた時から手のひらにある“しるし”が、ぴかぴか光って教えてくれるから、きっと大丈夫だとエレステイルは思っていた。
 そうして、歩くこと暫し。視界の隅に、エレステイルはこれまでに見てきた地面の煌めきとは違う淡い光を捉えた。
「あ、あれなにかなー?」
 わたげをぎゅっとしつつ、エレステイルはくろくんを連れてゆっくりとその光に近づいていく。
「……わあっ!」
 ――そこには、幾重にも花弁を重ねた白い花が、星の光を帯びて煌めきながらたおやかに綻んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エスチーカ・アムグラド
匡お兄さん(f01612)と!

星降る荒野で、星のように輝くお花探し……これってすーっごく大変なのでは……!
でもでもっ、チーカもそのお花を見てみたいですし、何より痕跡の為に辿り着かないとっ!

……ふふふー、本当に縁もゆかりもないんですかー?
だって匡お兄さんも大切な人、居るんですよね?
今チーカたちが追いかけている伝説の勇者さんみたいに!

【WIZ】
お花ならきっと一か所に固まって咲いていると思うんです
だからチーカは空から辺り一帯をぐるーっと見渡して、一際輝きの多いところが無いか調べますっ!

あ、そうだっ
夜は寒いかもしれないからこのマント【桜風】を着ていこうっ
えへへ、どうでしょうっ? 似合ってますかっ?


鳴宮・匡
エスチーカ(f00890)と


地面まで輝いてるってのはまた、……不思議だよな
いい案……はないから足で稼ごうぜ
疲れたら言いなよ、甘いもの買ってきてあるからさ

自分にはまるで縁もゆかりもないだろう伝承を追ってるってのも
いまいち、変な話ではあるけど
まあ、それが先に繋がるっていうならやるしかないか

え? 俺?
大切って、そういう意味じゃ、
……ない、と思うんだけど

【POW】
目はいいほうだ
周囲の景色を眺めながら探索するよ
土自体も光るらしいけど
より明るく光る方を目指せば、見つからないかな
目ぼしい箇所を見つけたらエスチーカに伝えるよ

ああ、それ使ってるんだ
変ではないと思うぜ、やっぱり髪の色と合う色にしてよかった



「星降る荒野で、星のように輝くお花探し……これってすーっごく大変なのでは……!」
 それは小さなフェアリーには尚更、途方も無い話であっただろう。
 エスチーカ・アムグラドは春色の翅をふるりと震わせながらも、ぐっと両の拳を握り。
「でもでもっ、チーカもそのお花を見てみたいですし、何より痕跡の為に辿り着かないとっ!」
 気合を新たにする様子を、鳴宮・匡は感心したように見つめていた。
 それから、満天の星空と煌めく地面を順番に辿る。
「地面まで輝いてるってのはまた、……不思議だよな」
 空の星と同じように、まるで呼吸をするように地面もきらきらと煌めいている。
 見渡す限りの荒野に咲く、小さな花。確かに骨が折れそうだと匡は肩を竦めるけれど、立ち止まったままでは何も始まらないのも事実。ならば――。
「いい案……はないから足で稼ごうぜ。疲れたら言いなよ、甘いもの買ってきてあるからさ」
「甘いものっ! よーし、チーカ頑張ります!」
 髪の色に似た淡い桜色のマントを翻し、きらりと瞬く星の尾を引いて飛んでゆくエスチーカを追って、匡もゆっくりと歩き出す。

「自分にはまるで縁もゆかりもないだろう伝承を追ってるってのも、いまいち、変な話だけど」
 それが先に、いつかに繋がるのであれば、やるしかないと。何気なく落とされた匡の言葉に、エスチーカが不敵な笑みを浮かべながら振り返る。
「……ふふふー、本当に縁もゆかりもないんですかー? だって匡お兄さんも大切な人、居るんですよね? 今チーカたちが追いかけている伝説の勇者さんみたいに!」
「え? 俺? 大切って、そういう意味じゃ、……ない、と思うんだけど」
「えー、本当ですかー?」
 大事な人を想って流した瑠璃唐草。昼間の話を引き合いに出されて匡は一瞬戸惑いを見せるものの、エスチーカは揶揄うように言うだけで、それが誰であるかを深く追求することなく飛んで行ってしまった。
(「……まあ、いいか。……いいのか?」)
 内心ほっとしたた次の瞬間には首を傾げたりもしつつ、花探しに張り切るエスチーカにあまり遠くに行くなよと呼びかけ、匡は周囲の景色に目をやった。
 花は一箇所に纏まって咲いているのではないだろうか――そう考えたエスチーカは、空から辺り一帯をぐるっと見渡して、ひときわ輝きを放つ場所がないかを探し。
 一方の匡は、やはり己の足で。煌めきを辿りながら、より明るく光っている場所がないかを探して歩く。
 ――やがて。
「チーカ、」
「匡お兄さんっ!」
 二人は同時に声を上げ、同じ場所へと向かう。
 はたして、そこには――星の光に呼応するようにきらきらと輝きを放つ白い八重咲きの小さな花が、静かに身を寄せ合いながら夜風に揺れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

カガリと共に花を探しなから夜道を歩むその途中
歩き疲れて地に寝転んでみれば英雄の星座が瞬く

彼は英雄が嫌いと言うが俺はあの双子座が好きだ
一人は王の子、一人は神の子である双子の英雄は
王の子が死ぬと神の子も不死を捨て星座になった
生も死も寄り添い合うもの達を半身と呼ぶのなら
俺もそんな半身であれたならどんなによかったか
英雄にはなりたくはないが双子座には憧れるのだ

星の煌めきを纏って輝く花を見つけたら彼へ贈る
半身を得られなかった俺から伴侶を見つけた彼へ
持ち帰ってお前の好きな女へ渡してやれと言って

俺はいつでもお前の側にいる
地にある時も、天にある時も
お前の心が安寧であるように


出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

散策しながら、件の花を土産に探してみよう
星に煌めくような花なら、きっと彼女も喜ぶだろうから
時々、休憩に寝転んでみたりして

…なぁ、まる
カガリはな、英雄とか勇者とかが、大嫌いなのだ
英雄とて、元はただのひとだ
戦いの前線などに出なくていい、怖い思いをしなくてよかったはずの
悲しい別れも、過ぎた英雄譚も、ひとが負うには重すぎるのに
この世界の、こと勇者を持て囃す風潮は…城門のカガリには、受け容れがたいものもある

まるの、双子座の話を聞いて
死ぬ時は、共に死ねるようなものがいい、ということだろうか
…まるを、独りで死なせはしないよ
天の星にも、まるを取り上げさせないからな



 星に煌めくような花ならば、きっと“彼女”も喜ぶだろう。
 その顔を想像しては口元に笑み綻ばせ、出水宮・カガリは数多の煌めきを瞳に映す。
 とは言え、果てのない荒野を歩き通すのはさすがに骨が折れる。傍らに寝転がるマレーク・グランシャールに倣って、カガリもまた同じように地面に転がった。
 遮るもののない宵色の空を彩る、数えきれないほどの星たち。
 そこには、神話や伝説に名を残す英雄をなぞったものも輝いている。
「……なぁ、まる。カガリはな、英雄とか勇者とかが、大嫌いなのだ」
 不意にぽつりとカガリが吐露するのは、胸中に巡る想い。虚空へと伸ばした手で星を掴もうとするのを、マレークは彼の言葉に耳を傾けながら横目に見やる。
 後世に伝えられる英雄とて、元はただのひとにすぎない。
 戦いの前線に出る必要などなければ、怖い思いをする必要だって、なかったはずだ。
 悲しい別れも、過ぎた英雄譚も、ひとが負うには重すぎるのだ。
 だのに、ひとはひとを英雄に仕立て上げ、その死に様がうつくしいものであったと飾り立てる。
「この世界の、こと勇者を持て囃す風潮は……城門のカガリには、受け容れがたいものもある」
「そうか、だが……俺はあの双子座が好きだ」
 一人は王の子、一人は神の子である双子の英雄は、王の子が死ぬと神の子も不死を捨て星座になった。
 生も死も、それすらを越えた先でも寄り添い合うもの達を半身と呼ぶのなら――。
「俺も、そんな半身であれたならどんなによかったかと思うのだ」
 英雄になりたいわけでは決してない。だが、双子座の彼らのように誰かの半身であれたらと、それはマレークの中に深く息づく憧憬だった。
 マレークが紡いだ物語と彼の心を満たす想いを、カガリは胸中で反芻する。そして、
「死ぬ時は、共に死ねるようなものがいい、ということだろうか」
 マレークは答えない。だが、きっとそういうことなのだろうと理解したカガリは、続く言葉を口にした。
「……まるを、独りで死なせはしないよ。天の星にも、まるを取り上げさせないからな」
 カガリの言葉に偽りはない。それが心から自身を想って紡がれたものであることも、マレークは知っている。
 だから、星の煌めきを纏って輝く花を見つけることが出来たなら、他の誰でもないカガリへ贈ろうとマレークは決めていた。
 半身を得られなかった己から、共に寄り添い歩む伴侶を見つけた彼へ――、
「俺は、いつでもお前の側にいる」
 地にある時も天にある時も、その心が安寧であるよう願いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
【灰】

星の降る荒野
アァ……きれいきれい。
いつかの誰かが探した花をコレも探そうか

ミンナは輝く花を信じるカ?見たコトあるカ?
とーってもロマンチックな花のよう。
とーっても貴重な花のよう。
こんなにもきらきらと輝いているのだから
花の一つ、探すのも簡単じゃあ無いンだなァ……。

それにしても、地面が光っているって不思議不思議。
伸ばした指で地に触れてみたけれど
取り込まれるコトも無い、安全な場所で
くつくつと笑いが漏れた。

冒険者、かァ……。今日は冒険者になりきろう。
アッチの荒野は?コッチの荒野は?
ミンナミーンナ、ロマンチックだなァ

たーのしいや


神埜・常盤
【灰】

空にも星、地上にも星
見渡す限りキラキラ、キラキラ……
あァ、万華鏡の中にいるみたいだ

煌めく花、きっと美しいのだろうねェ
僕も見た事無いけれど、存在は信じているとも!
こういう宝物は探す過程が愉しいものさ
だから人は冒険譚に惹かれるのかも知れないねェ

此の景色はミミ君が独り占めするのかね
それじゃあ僕は煌めく土へ求婚してみようか
件の花が零れ落ちた星ならば
此の大地は星屑で出来ているのかなァ

皆に倣い地面に触れ、硬い砂を僅かに掬えば
吐息でふわり遠くへ流し戯れて
――はは、細やかな流れ星のようだ
なァんて、少し大袈裟かね

夜風と星々の煌めきが導く儘
微かに漂う花の香りに酔いながら
行方知れぬ宝物をふらりふらりと探そうか


深海・揺瑚
引き続き、【灰】で一緒に

思わず零れるのは感嘆の溜息
ああ、まだまだ世界は広い
ここだけでこんなに美しいのに、光る花なんて
でも、あると思えばあるものよ、きっとどこかには

エンジにつられるように地面に触れて
熱いわけでもない、本当に不思議
花を見つけて求婚するなら私はこの景色にね
私だけのもの、なんて素敵じゃない

私はいつでも冒険者のつもりよ、今日限りではなくて
知らないものがあるなんて勿体ない
目に焼き付けるように見逃しのないように
きらめく世界に目を凝らして


都槻・綾
【灰】

求婚の証とは
私には随分と縁遠い言葉だけれど
さて皆さんは――、

問い掛けるも
訊ねるのは野暮だろう、と思い直し
ふくふく肩を揺らして口を噤む

星に輝く花は見たことが無いですねぇ
ですが、信じておりますよ

何処かの世界の宝探しの海賊も、虹を目指す少女も
「誠にある」と信じたからこその心躍る旅路故に
天地に星満つ荒野を往く我々もまた
いつか遠い未来の
見知らぬ誰かに読まれる冒険譚を
紡いで居るのかもしれない、冒険者

なんて
浪漫溢れる花の伝承に更なる浪漫を重ねて微笑む

耀う地面に片膝ついて見渡せば
より広く遠くまで星の海に揺蕩える

夜風に乗る香りに知らぬ気配を第六感で覚えることが出来たなら
導かれるまま逍遥気分で辿ってみようか


リリヤ・ベル
【灰】

きらきら。きらきらです。
空を見るのにも、地面を見るのにも忙しい。
くるくると踊るような足取りは、元気よく。

わたくしも、ひかるお花を見たことはありません。
……でも、お空からこぼれたお星さまが、
ひとやすみしていたっておかしくはないのです。

あるとおもえばある。すてきです。
信じて進むのが、冒険者なのですね。
こうして話していることも物語になって、
星のようにきらめくのでしょうか。

大地に満ちるきらきらは、
いつかのだれかの、物語のかけらなのかもしれません。
さらさらと触れる地面には、足跡など残ってはいないけれど。
だれかが居たことは、きっと。

冒険には、ろまんがつきものなのですよ。
どこまでも歩いてゆきましょう。



「アァ……きれいきれい」
 エンジ・カラカは楽しげに笑む金の瞳に、星降る荒野の風景を映す。
 空にも星、地上にも星。見渡す限りきらきらと煌めいて。
「――あァ、万華鏡の中にいるみたいだ」
 一歩歩を進める度に移り変わる風景に、神埜・常盤は緩やかに目を細めて。
「きらきら。きらきらです」
 翠の眸に星映し、リリヤ・ベルは視線を空へ地面へ忙しなく動かして。
 くるくると踊るように弾む足取りに、ミルクティ色の髪がふわりと揺れる。
 空と大地を彩る無数の星の瞬きに、深海・揺瑚は思わず感嘆の溜め息を零していた。
 眼前に広がる風景だけでもこんなにも美しいのに、更にはこの果てのない荒野のどこかに、光る花が咲いているのかもしれないという。
 ――ああ、まだまだ世界は広い。
 求婚の証――とは。自身には随分と縁の遠い言葉であるけれど、はたして皆はどうだろうか。
 都槻・綾は皆に問いかけようとして、けれどすぐに口を噤んだ。
 訊ねるのは野暮というものだろう。代わりにそっと肩を揺らして微笑んだ。
 探すのは、いつかの誰かが探した花。
「ミンナは輝く花を信じるカ? 見たコトあるカ?」
 皆へ問うエンジの声にはどこか悪戯めいた響きが混ざる。
 それはとてもロマンチックな花で、とても貴重な花のよう。
 暗闇の中で輝いているならば、自分から見つけてほしいと言っているようなものだろうけれど。
 こんなにもきらきらと輝く世界にあっては、小さな花の一輪だって探すのも簡単な話ではない。
 そもそも、遠い遠い昔に語られていた花が、今もなお生きているとも限らない。
「星に輝く花は見たことが無いですねぇ。ですが、信じておりますよ」
 様々な世界に今も息づく冒険譚の数々。どこかにある宝物の存在を本当に信じていたからこその心躍る旅路、ゆえに――。
「天地に星満つ荒野を往く我々もまた、いつか遠い未来の見知らぬ誰かに読まれる冒険譚を紡いで居るのかもしれない、冒険者……なんて」
 浪漫溢れる花の伝承に更なる浪漫を重ねて綾はゆるりと微笑んでみせる。
「煌めく花、きっと美しいのだろうねェ。僕も見た事無いけれど、存在は信じているとも!」
 こういう宝物は探す過程こそが愉しいもの。ゆえに、人は冒険譚に惹かれるのかもしれないと常盤も思う。
「わたくしも、ひかるお花を見たことはありません。……でも、お空からこぼれたお星さまが、ひとやすみしていたっておかしくはないのです」
 あると思えばあるのだと、そう思えることはとても素敵だとリリヤは思う。
 己を信じて進むのが冒険者――そうして紡がれてきた、たくさんの物語。
「こうして話していることも物語になって、星のようにきらめくのでしょうか」
「でも、あると思えばあるものよ、きっとどこかには」
 揺らがぬ自信を瞳に宿し、揺瑚は笑う。
 奇跡は、己自身の手で叶えてこそ。
 ――それにしても。
 地面が光っているのは不思議なものだと、エンジは何気なく伸ばした指先で地に触れる。
 けれど取り込まれることもなければ、攫われてしまうこともない。硬い土の感触がそこにあって、何だかきらきらしている。ただそれだけ。
 思わず、くつくつと笑いが漏れる。少なくとも“此処”は、安全な場所だ。
 エンジにつられるように、揺瑚も地面に手を伸ばす。
 熱を帯びているわけでもない。それどころか吹き抜ける風によって冷まされているようにすら感じられる。
「花を見つけて求婚するなら私はこの景色にね。――私だけのもの、なんて素敵じゃない」
 紅玉色の瞳に唯一無二の煌めきを灯しながら、揺瑚は悠然と笑う。
「おや、此の景色はミミ君が独り占めするのかね? それじゃあ僕は煌めく土へ求婚してみようか」
 件の花が零れ落ちた星ならば、この大地は星屑で出来ているのかもしれない。
 常盤も皆に倣って地面へ触れ、硬い砂を僅かに掬って戯れのように吐息を吹きかける。ふわり、風に乗って瞬く間に彼方へ流れていく煌めきはまるで、
「――はは、細やかな流れ星のようだ。……なァんて、少し大袈裟かね」
 綾は耀う地面に片膝をつく。見渡せばより広く遥か遠くまで星の海に揺蕩えるような心地に、知らず胸が躍るよう。
 大地に満ちる煌めきもまた、いつかの誰かの、物語の欠片なのかもしれない。
 さらさらとリリヤの小さな手が触れる地面には、誰の足跡も残ってはいないけれど。
 いつか誰かがここを辿ったのは、きっと、本当のことだから。
「冒険者、かァ……じゃあ、今日は冒険者になりきろうか」
 あっちの荒野も、こっちの荒野も。荒野を越えた先にある、更なる広い世界も。
「あら、私は今日限りではなく、いつだって冒険者のつもりよ」
 エンジの声に、揺瑚は不敵に笑んだ。
 世界にはまだまだ知らないものが満ちている。それを知らずに生きているなんて勿体無い。
 揺瑚はあらゆるものを見逃すことのないように、今ここにある、煌めく世界を目に焼き付けるに見つめ。
「冒険には、ろまんがつきものなのですよ」
 リリヤもふわりと微笑んで、歩き出す。
 道が続く限り、どこまでも。
 ふと夜風に乗る香りに綾は瞳を細めた。知らぬ気配を感じられたなら、導かれるまま逍遥気分で辿ってみるのも悪くはないだろう。
 未だ見ぬ世界に、どれほどの浪漫が溢れているだろう。
 夜風と星々の煌めきが導くまま。微かに漂う花の香りに酔いながら、行方知れぬ宝物をふらりふらりと探そうか。
「ふふ、愉しいねェ」
 常盤が笑い、エンジも笑う。まだまだ、夜は長そうだ。夢か現かわからぬような星の海を心ゆくまで彷徨うのもきっと――。
「……アァ、たーのしいや」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
氷鷺(f09328)と

星降る荒野
照らされ光る花の想いを口にする彼に微笑

何にしても、花が綺麗な分だけ
愛しさは増すばかりだったんじゃねえかなあと思うよ、俺は
(傍にいられないなら、さあ)

一歩先をゆく彼の背に言葉を託しその後を追う

満天の星空を背景する男の髪が揺れる
視線が何処か、彷徨っているのが分かりふと思考を巡らせた

(――花を、探しているんだろうか)
想い人でもいるのかと考えて
そういえば俺はまだこの男のことをよく知らずにいるのだと気づく

指す先に煌きを見たならば
瞬き、追い越して翻し、くしゃりと笑う

――氷鷺
静寂に落とす名

余計なお世話だっての!

(いつかお前にそんな人が出来たなら
今度は俺がと、心に秘めて)


忍冬・氷鷺
綾華(f01194)と

――幸い、祈り、願い
純然たる想いを託す其れは
宛らもう一人の自分のようだな

花の姿を借り、愛する者の傍らに在り続ける
身に宿した優しき想いが
何時迄も心を照らす灯りになる様に

―そうは思わないか?
返る言葉も待たず
輝く大地へ歩を進め

"白"に慣れた瞳を右へ左へ
労を厭わず眼を凝らすのは
今も何処かで咲く白花へ導く為
他ならぬ我が友を
(―彼を。綾華を照らす光が、既に在る様な気がしたから)
(そしてそれは、かの白花を手にする意味になると)

何か言いたげな友に緩り笑み向け
ほら、彼処だ
指差した先には、きっと―


―嗚呼、違いない
笑顔の花咲かす彼に、同じ花を返し、笑う
(親愛なる友へ贈る、俺からの輝く花として)



 ――幸い、祈り、願い。純然たる想いを託すそれは、
「宛ら、もう一人の自分のようだな」
 花の姿を借りて、愛する者の傍らに在り続ける。
 身に宿した優しき想いで、いつまでも彼女の心を照らす灯りになれるように。
「――そうは思わないか?」
 忍冬・氷鷺が口にしたのは、星に照らされ輝く花の想い。
 そうして返る言葉も待たずに輝く大地へと踏み出した彼へ、浮世・綾華は穏やかに微笑んだ。
「何にしても、花が綺麗な分だけ、愛しさは増すばかりだったんじゃねえかなあと思うよ、俺は」
 それは、きっとお互いにそうだったのだろう、なんて。離れ離れになった二人の心に寄り添いながら、一歩先をゆく氷鷺の背に言葉を託し、綾華も緩やかにその後を追って歩き出す。
(「……傍にいられないなら、さあ」)
 取り留めもなく泳がせる思考の先を綴ろうとして、綾華はふと気づいた。
 満天の星空を背景に歩む氷鷺の髪が揺れている。
 吹く風がそうしているのではなく、その視線が明らかに何かを探すように彷徨っていることに。
(「――花を、探しているんだろうか」)
 遠い昔には永遠を願い、あるいは誓う言葉と共に愛する人へ贈られていた花。果てのないこの荒野に今もなお息づいているとも知れぬ、星の輝きを宿す花を。
 そんな花を託したくなるような相手が、氷鷺にはいるのだろうか。わざわざ花を探す理由などそれくらいしか浮かばず、そういえばまだ、互いに友と認識する彼のことをよく知らずにいるのだと思い至る。
 いずれ、それを知ることも叶うのだろうか。
 叶えばいいと、綾華は願う。

“白”に慣れた瞳を、氷鷺は右へ左へと巡らせる。
 労を厭わず眼を凝らすのは、今も何処かで咲いているはずの白花へ、己ではなく“彼”を導くために他ならない。
 綾華を、彼の道行きを照らすあたたかくも優しい光が、既に在る様な気がしたのだ。
 そして、それは、彼がかの白花を手にする意味になるはずだと。
 やがて視界の隅に捉えた姿に目を瞬かせた氷鷺は、ずっと何か言いたげな気配を覗かせていた友にゆるりと笑みを向けた。
「――ほら、彼処だ」
 指差した先には、風に揺れる仄かな煌めき。
 何枚もの花弁を重ねて綻ぶ白い花。それこそが――。

 友の指先が示した煌めきに瞬いた瞬間、大きく踏み出した綾華は彼を追い越して翻し、くしゃりと破顔して。
「――氷鷺、」
 静寂に落とす名。思わずそのまま笑い出したくなる衝動を堪えながら、これだけはと瞬時に浮かんだ言葉を投げつける。
「余計なお世話だっての!」
「……嗚呼、違いない」
 笑顔の花咲かす友に同じ花を返し、氷鷺もまた笑う。
 けれど、どうしようもなく――今、彼に贈りたいと思ったのだ。
(「親愛なる友へ贈る、俺からの輝く花として」)
 そこに重ねられているのは紛れもなく、大切な友の幸いを祈り願う、純然たる想い。
 そして、その想いを綾華はしかと受け取った。
(「――いつかお前にそんな人が出来たなら、今度は、俺が、」)
 同じように輝く花を贈ろうと、今はまだ、心に秘めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鬼切・雪火
さゆり(f00775)とマコ(f13813)と共に。

さあ冒険の始まりだぜー!
鈴がりんりん、灯火はゆらゆら
2人が足元を取られないように
星明かりを邪魔しない程度に鬼火で照らして

夜の冒険なんて、何だかドキドキする
さゆり、手繋ぐか?大丈夫か?

おっ、なんだ、わんこか!
こっちにおいでと声を掛けるが凛々しい顔にお仕事中かと悟る
俺は仕事は邪魔しないぜ、良く主人を守れよ

輝く花かあ
愛する人なら此処にもいるぜ
そう、想いは共に
だからきっと俺たちの冒険は成功に決まってるさ、そうだろ!


四・さゆり
理(f13813)と、雪火(f04419)と一緒。
アレンジ大歓迎よ

ーーー

あら、夜にお散歩だなんて、
レディのひとり歩きは褒められたものでないけれど。

今日は良い、の。
騎士がふたり、…いえ、3人ね。一緒だもの。
ね、シス。
…楽しいことがあれば教えてちょうだい。

無粋な輩には、わたしの傘がお相手するわ。
ゆらゆら、漫ろ雨。数本浮かせておきましょ。

ね、だからシス。遊んでも良いのよ。
…あら、雪火、フラれちゃったの。

ふふ、しょうがないわね、
エスコートをお願いしましょうか。

雪火の手を取って、
ぼんやり浮かないマコの、袖を引いて。

わたしはまんなか。

…空も、土も、きらきら光って、
夜空のパレードみたい、

ね。お花あるかしら。


明日知・理
さゆり(f00775)と雪火(f04419)と共に
アドリブ歓迎


二人が迷子にならぬ様
彼らを気にかけつつ散歩へ
気が向いたのか知らんが、シス──闇色の毛並みに緋色の眼を持つ、犬の姿をした俺のUDCも傍らを歩いていた。魔物が現れてもシスならいち早く気がつく
シスは声を掛けられても無愛想

習わしに興味はないが、さゆりと雪火が件の花を見て喜ぶのなら探してみようか
…ああ、でも
俺にはきっと見つけられないだろう
それに、その花が姿を見せるのは
愛する誰かがいる人の前だろうな、と
ぼんやり思う

花が見つからなくても
彼らと、シスとの冒険の思い出さえあればそれでいい
…楽しむさゆりや雪火、シスを見て
ふと笑みを密かにこぼした



「さあ、冒険の始まりだぜー!」
 からころと服に結ばれた大きな鈴を鳴らし、ゆらめく灯火を掲げながら、鬼切・雪火は共に歩く二人、否、三人が夜闇の中足元を取られぬよう、そして星明かりを邪魔しない程度に周囲を鬼火で仄かに照らす。
 レディのひとり歩きは褒められたものではないけれど、今宵のお散歩はひとりではないから、大丈夫。
 三人の騎士を護衛に連れた四・さゆりは、いつになく上機嫌な様子で浮かぶ鬼火や煌めく星を交互に見やる。
 周囲にゆらりと浮かぶ数本の赤い傘は、万が一、“無粋な輩”が現れた時のため。
「ね、シス。……楽しいことがあれば教えてちょうだい」
 そうして呼びかける先には、明日知・理の身に宿る闇色の獣――三人目の同行者たるシスの姿が。犬の姿を取るシスはさゆりと雪火、二人にちらりと緋色の眼を向けるものの、これと言った反応を返すことなく、警戒するように前を向いた。
「わんこ、こっちに……いや、仕事中か。良く主人を守れよ!」
 シスの凛々しい眼差しと顔つきに、仕事中だと悟った雪火は、頼もしげにその横顔を見つめ。
「……あら、雪火、フラれちゃったの。シス。遊んでも良いのに、真面目なんだから」
 くすくすと、鈴を転がすようにさゆりは笑い、とん、と軽やかな足取りで地に瞬く星を辿る。
 これだけ距離が近ければ、そう簡単にはぐれることもないだろうけれど。
 それでもここは見知らぬ土地で、今は夜だ。街灯の代わりに星が輝いているし、雪火の鬼火もあるけれど。ふとした弾みに見失ってしまわぬよう、二人が迷子にならぬよう気に掛けながら、理は二人に歩幅を合わせるように歩いていた。
 シスがこうして平時に姿を見せるのは少し珍しい気がした。何となく気が向いただけなのか、それとも他に理由があるからなのかは理にはわからないが、魔物の気配にはいち早く気がついてくれるだろうし、そうなればきっとさゆりと雪火を守るために動いてくれるだろうことも知っている。無論、自分もそのつもりだ。
 愛する人に花を贈ったという過去の風習――それ自体には、理は興味がない。
 だが、さゆりと雪火が件の花を見て喜ぶのであれば、それだけで探してみる価値はあるだろう。
(「……ああ、でも、」)
 きっと、自分には花を見つけることは出来ないだろうと理は思う。
 それに――その花が姿を見せるのは、愛する誰かがいる人の前だろうなと、ぼんやり思ったりもして。
 そうして物思いに耽っていれば、すぐ側から聴こえる二人の楽しげな声が耳を打つ。
「夜の冒険ってドキドキするな。さゆり、手繋ぐか? 大丈夫か?」
 雪火が差し出した手にぱちりと目を瞬かせてから、さゆりは微笑んだ。
「ふふ、しょうがないわね、それならエスコートをお願いしましょうか。……ほら、マコも」
 小さな紳士の申し出を断る理由など、レディのさゆりにあるはずがない。雪火の手を取り、それからどこかぼんやりと浮かない表情の理の袖を引いて、さゆり自身は真ん中に。
 見慣れた都会の景色からは想像もつかない、何も遮るもののない天上の空。
 雲ひとつない夜色のキャンバスを染める綺羅星が時折、大きく瞬いてそのまま零れ落ちてくる。
 空も土もきらきらと光って、まるで夜空のパレードのよう。なのに、BGMは風のささやきと、自分たちの話し声だけ。
 例えばここにだいすきな観覧車やメリーゴーランドがあったなら、どんなにか楽しい夜が過ごせただろう――ふとそう思って、さゆりはくすりと笑んだ。
 観覧車やメリーゴーランドがなくたって、理と雪火と、そしてシスと――こうしている時間はとても心地よくて、楽しい。
「……ね。お花あるかしら」
 ふとさゆりが零した言葉に、雪火は満面の笑みで大きく頷いてみせる。
「輝く花、見つかるといいな! 冒険の最後には、やっぱりお宝が見つからなくちゃな!」
 雪火の大好きな二人がここにいるのだ。それは理や、さゆりにとってもそうに違いないから。
 ――そう、これは“冒険”だ。
 例え花が見つからなくとも、さゆりと雪火、二人と、そしてシスとの冒険の想い出さえあれば、それでいい。
 期待に胸を膨らませながら花を探すさゆりと雪火、それからどことなく当人なりに楽しんでいるような気配を覗かせているシスを見て、理は密かに笑みを零すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

星の光で輝く花かぁ
プロポーズはともかく
今この時までずっと続く物があるなんて浪漫じゃナイ
ドッチが先に見付けるか競争する?

言いつつも取り立て熱心に探すでなく
散りばめたような星の合間を跳ねて歩いてのんびり行く

ね、アンタはプロポーズ秘話とかナイの?
イイ人いたんでしょ

ふぅん、色々あるのねぇ
ナンて聞いてたら笑顔向けられて
こうやって癒えていく想いもあるンだ、とは胸の内
……そう、素敵ネ。と笑い返す

アタシ?
あるわよー、された事
こぉんなちっちゃい男の子にね、お嫁さんになって毎日ご飯作って下さいって
カワイイでしょ?

あっは、そうね
花を見つけたら、明日の飯位は作ったげるヨ


火狸・さつま
コノf03130と

わぁあ!綺麗、だ、ね!
競争?わかった!
コノの隣を嬉しさいっぱいに
ぴょんぴょこ


ぅえ?!
突然の質問に思わず変な声


えと、生まれた時からの番、だから
一生…共に、する…唯一の、伴侶


――の、はずだった
捨てられるよに遠ざけられ
直後亡くなって
当時は悲しみで全てが曇ってしまって
けど、最近…やっと
ちら、と隣のコノを見れば
ふにゃっと笑って


求婚、て、言うか…
出逢った瞬間目が合って
お互いにわかった
『あなただね!これからよしなに』って同時に…
正式なのは…まだ




コノは?何かない、の?(そわっ
え…なに、それ
イ、な!俺も、毎日コノのごはん、たべたい!
なんて屈託なく笑う



花を見つけ
二人で眺めれたら
今は、それで幸せ!



「わぁあ! 綺麗、だ、ね!」
 雲ひとつない夜空を埋め尽くさんばかりの、宝石のような無数の星々。火狸・さつまはぱあっと満面の笑みを咲かせ、傍らを歩むコノハ・ライゼへと振り返る。
「星の光で輝く花かぁ。プロポーズはともかく、今この時までずっと続く物があるなんて浪漫じゃナイ」
 始まりは遠い昔。今はもうどこにもいない人々が、繋いできた想いと物語。
 花そのものは今も咲いているかはわからないけれど、見渡す限りの広大な大地だ。きっと、人知れず密やかに、命を繋いで輝いているかもしれない。
「……ドッチが先に見付けるか競争する?」
「競争? わかった!」
 薄氷の瞳に悪戯めいた光を湛えるコノハにさつまは大きく頷くと、嬉しさいっぱいにぴょんぴょこ跳ねながらぱっと飛び出していった。
 その背を楽しげに見送ったコノハはというと、焚き付けておきながら取り立てて熱心に探すでなく、地面に散りばめられた星の合間を跳ねるように歩きながら、のんびりとさつまの後を辿って。
 そうして、ふと、思いついたように口を開いた。
「ね、アンタはプロポーズ秘話とかナイの? イイ人いたんでしょ」
「――ぅえ?!」
 不意に投げかけられた問いに、さつまの口から思わず変な声が飛び出した。
 いいひと、と口の中で反芻し、心の奥底に眠る記憶をひとつひとつ辿るようにさつまは視線を空へ泳がせる。
「えと、生まれた時からの番、だから、一生……共に、する……唯一の、伴侶」
 ――その、はずだった。
 けれど、ある時突然捨てられるように遠ざけられて、その直後に手の届かぬところへ行ってしまった。
 悲しみで全てが曇って、世界の色さえ見えなくなってしまったあの時のことは、思い返すだけでも胸がちくりと痛む。
「ふぅん、色々あるのねぇ」
「けど、最近……やっと、」
 ちらりとコノハに視線を向け、さつまはふにゃりと笑う。
「求婚、て、言うか……」
 出逢った瞬間に目が合って、お互いすぐにわかったのだという。
 それは、まるでずっと開かなかった鍵が開いたみたいに。欠けていたパズルの最後のピースが、見つかったみたいに。
「あなただね! これからよしなに。って同時に……正式なのは……まだ」
 世界に再び色が満ちて、やわらかな光が差したような。
(「――こうやって、癒えていく想いもあるンだ」)
 コノハは胸の内でそう呟きながら、さつまの満面の笑みに笑い返す。
「……そう、素敵ネ」
「コノは? 何かない、の?」
 途端にそわっと、尻尾までそわそわさせそうな勢いで首を傾げるさつまに、コノハはふ、と目を細めた。
「アタシ? あるわよー、された事。こぉんなちっちゃい男の子にね、お嫁さんになって毎日ご飯作って下さいって。カワイイでしょ?」
 掌の高さが示すのは本当に小さな子どもの背丈。それを追いかけたさつまの眼差しが、ぱっとコノハへ向けられる。
「え……なに、それ。イ、な! 俺も、毎日コノのごはん、たべたい!」
 屈託なく笑うさつまに、コノハは小さく肩を揺らす。
「あっは、そうね。花を見つけたら、明日の飯位は作ったげるヨ」
「なら、花! 見つけなきゃ!」
 そうして、再びさつまは花を探しに駆けていく。
 遠い遠い昔から、誰かが想いを託してきた光の花。
 それを見つけて、二人で眺めることが出来たなら。――今は、それで十分すぎるほどに、幸せなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジナ・ラクスパー
ラナ様(f06644)と

求婚の証のお花…わあ、ロマンチックです!
空にも地上にも星
きっと夜空の中を歩くよう
もちろんです!ラナ様
一緒に探しに行きましょう

ラナ様は大好きな方がたくさんいるのですね
真似っこで浮かべる顔を数えたら…ふふ、私もたくさんでした
光が残るうちに持ち帰りたいですね
…あっ
ラナ様、あそこ!光っていませんか!?

花の語る勇者様の想いが幸せで
その分とても寂しかったはず
私なら我慢できずに追いかけてしまいそう
でも、信じて待ち続けられるのも、とても素敵なことだと思うのですよ

ラナ様はもう思い浮かべる方が…?
私にもいつか
ずっと一緒にいてくださいと、お花を捧げる方ができるのかな
今はまだ、想像もできずに


ラナ・スピラエア
ジナさん(f13458)と

星の光を抱いて輝く花…
どんなお花か気になるので、探したいです!
輝く星空も、地面もすごく綺麗
星の海を歩いているみたいですね!

見つけたらジナさんは、どうしたいですか?
私は…見せたい人がいっぱいいます!
ふふ、ジナさんも大切な人がいっぱいですね
輝きの言葉に反応して、思わず駆け寄って

置いていかれちゃった女の子は、どんな気持ちだったんでしょう…
とても寂しかったと思うんです
私なら…どうするかな
ただ、大切な人の無事を祈る事しか出来なさそう
追い駆ける、ジナさんの強さが羨ましいです

え、思い浮かべる人…?
そんな、全然です!まだまだ、そんな…
ふふ、お互いそんな素敵な人に
出会えると良いですね



「求婚の証のお花……とってもロマンチックです!」
 ルミアリアの祝祭と縁の深い、“花”にまつわる一つの話。それを聞いた時から、ジナ・ラクスパーは膨らむ期待に心をときめかせていた。
「星の光を抱いて輝く花……どんなお花か気になるので、探したいです!」
 ラナ・スピラエアもまた、純粋な興味から胸を躍らせていて。
「もちろんです! ラナ様。一緒に探しに行きましょう!」
 一歩足を踏み入れれば、星空を映したような地面に、まるで星の海を歩いているような心地になる。
 ラナが持つ杖の先端から行く道を照らす優しい光が溢れているけれど、夜目に慣れてしまえばそれすらも必要なさそうな煌めきが、二人を未だ見ぬ世界へ導こうとしていた。
「もしお花を見つけられたら、ジナさんはどうしたいですか? 私は……見せたい人がいっぱいいます!」
 忽ちの内にラナの脳裏にはいくつもの顔が浮かぶ。その中にはもちろん、傍らの少女の笑顔も。
「ラナ様は、大好きな方がたくさんいるのですね。私は……、ふふ、私もたくさんです」
 同じようにジナも、花を見せたいひとたちの顔を思い浮かべた。まず一番は、やはり隣の少女だ。
「ジナさんも、大切な人がいっぱいですね」
 二人顔を見合わせれば、自然と零れる笑みに、幸せを一つ見つけたような心地になる。
 けれど、ふと、ラナの笑顔が微かに曇った。
「置いていかれちゃった女の子は、どんな気持ちだったんでしょう……私は、とても寂しかったと思うんです」
 自分が同じ立場だったら、はたしてどうしていただろう。ラナは想いを巡らせるように星舞う空を見上げ、それから小さく息をつく。
「……私は、ただ、大切な人の無事を祈ることしか出来なさそうです」
 戦う力がなければ、足手まといになるだけ。猟兵として戦い始めた今でさえ、まだ自分は守られてばかりだと実感するくらいなのだ。
 肝心な時に役に立てないのであれば、いっそ傍に居ないほうがいい――そう、ラナは思わずにいられなくて。
「私なら、……我慢できずに追いかけてしまいそう」
 心に決めたことひとつ、着の身着のまま生まれ育った森を飛び出したあの日のように。ジナの背を押すのは、彼女の生来の性分でもあるけれど。
 花に籠められた確かな想い。その幸福を抱き締めてもなお埋められない寂しさを、少女は感じていたことだろう。
 例え己に戦う力がなくとも、手の届かないところで大切な人が傷つくのは――きっと心が耐え切れないと、ジナは思うのだ。
「――追いかける、ジナさんの強さが羨ましいです」
 自分にはない強さを持つジナを、ラナは眩しげに見やる。けれど、それはジナにとっても同じこと。
「ラナ様のように信じて待ち続けられる強さも、とても素敵だと思うのです。……ところで」
 金色の瞳が、きらりと好奇の色に煌めく。
「ラナ様にはその、もう……そのように思い浮かべる方が……?」
「えっ? ……思い浮かべる人……?」
 何を言われたのか本気でわからなかったらしいラナはぱちぱちと瞬きを繰り返してから、ようやくその意図に気づいたらしく慌てて首を振り。
「そんな、全然です! まだまだ、そんな……そっ、そういうジナさんこそ、その、いらっしゃるんですか……?」
「いえ、生憎と私にも。でも、いつか……ずっと一緒にいてくださいと、お花を捧げる方ができるのかな……」
 今はまだ、ジナにも想像がつかない。誰かの隣に並んで立って、共に未来へ歩いていく、など――。
「ふふ、いつかお互い、そんな素敵な人に出逢えると良いですね」
 今ではない、いつか。大切な人を紹介し合う、そんな未来もあるだろうか。
 けれども今はまだ、そんないつかに想いを馳せるだけ。
「せっかくですから、光が残っているうちに持ち帰りたいですね。……あっ、ラナ様、あそこ! 光っていませんか!?」
「えっ、……あ、本当、光ってますね! 行ってみましょう!」
 ジナが指差した先。二人で駆け寄って覗き込めば、そこには――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リオ・フェンブロー
魔物に出会うことがあれば魔法で払いましょう
念の為地面の足跡には気をつけますが……本音は、輝く花を見てみたい

地上から眺める星が、地面をも染める
見知った光景のようでいてあまりに違う

不思議、ですね
満点の星空も、星の囁く荒野も
瞬きのように揺らぎが見れれば、歩き出したいのに立ち止まっていたい気さえする

……少し、浮かれているのかもしれませんね
口元を押さえて息をつき
土産話のつもりが、自分まで楽しんでしまっている気がする

いえ、でも…心踊らぬわけがない

白く輝く花は愛するひとに贈る習わしがあったとか
その花を……彼も贈ったのでしょうか

贈り先はないですが、探してみましょう
出会えた時は、その姿だけ目に焼き付けましょう



 この地を塒にしている魔物たちと、いつ出会すとも限らない。
 ゆえに地面に新しい足跡や痕跡めいたものがないか気を配りつつ、リオ・フェンブローは星降る荒野を辿っていた。
 オブリビオンが潜んでいるのならば、その排除は当然の仕事。
 だが、本音を言うのであれば――輝く花を一目、見てみたいと思うのだ。
 遥か遠い空一面に散りばめられた無数の星。
 地上からでは決して手の届かぬそれらが、この荒野にあっては地面をも染めている。
 見知った光景のようでいてあまりにも違う世界が、リオの目の前に広がっていた。
「……不思議、ですね」
 時折星が零れ落ちてくる満天の星空も、星のささやき満ちる荒野も。
 瞬きのような揺らぎが見えれば、歩き出したいのに立ち止まって――移ろいゆく姿を見届けたくなるような心地さえする。
(「……少し、浮かれているのかもしれませんね」)
 緩む口元を押さえて息をつく。
 土産話を持ち帰るつもりで、すっかりこの状況を楽しんでしまっているような気がして。
 けれど、心が踊らぬわけがないと、リオは思うのだ。
 今は荒野となったこの地でのみ咲くという、白く輝く花。
 愛する人に贈る習わしがあったというそれを、彼も――後に勇者と呼ばれることになる青年も、心からの想いを込めて、一人の少女に贈った。
 どのような気持ちで、いたのだろう。彼も、そして彼女も。
 遺される痛みを知るリオは、遺していく痛みに想いを馳せる。
 少女の元に帰れないと知った時、青年は、果たして何を思ったのだろう――。
 贈る宛てこそないけれど、リオは花を探しにゆるりと歩き出す。
 もしも出逢うことが叶ったならば。その姿を目に焼き付けて帰ろうと、心に思いながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギド・スプートニク
シゥレカエレカ/f04551

花を探すとのたまいながら
私の目はいつまでもきみの姿ばかりを追っている

星の光を帯びて白く輝く、その翅

ルミアリアの勇者よ
貴様はどんな思いで彼女を残し旅立った
どんな思いで死んでいった

なぁ
シゥレカエレカ

もし私が
きみを置いて何処かへ行ってしまったとして
幾年が過ぎようと戻ることが無かったとしたら
きみはどうする?


花を探すのは不得手だとしても
きみの輝きを見過ごすことはあるまいよ

それにきみの方こそ失念しているな
きみが萎れてしまうよりも早く、私の方が干からびているだろうさ

おいで

彼女に向かって手を差し出し
指先で彼女を撫ぜるとその額に口付けを

ラフェクレール、愛しききみ
どうかいつまでも、傍に


シゥレカエレカ・スプートニク
夫、ギド(f00088)と



きゅ、きゅ、きゅ、求婚の証!?
な、なにそれ!ろ、ロマンチック!
星降る荒野でそんな、そんな、そんなことになっちゃったりしたら…!
きゃーっ!


……
なーんて
わたしのかわいいひとは街からずうっと難しいかお
わかってるのよ、何を考えてるかなんて
この荒野のきらめきくらい、きれいなひとだから

ねえ、ギド
そんなかおじゃあお花もきっと見つからないわ


あなたが帰ってこなかったら、

―――…ギド不足で死んじゃうまで、待ってるわ
知ってた?わたし、あなたが足りないと死んじゃうのよ
今までずっと一緒にいたから、どれくらいかはわからないけど
へなへなの、しょぼしょぼになっちゃうかも

それでも、見つけてくれる?



(「――きゅ、きゅ、きゅ、求婚の証!?」)
 両手で頬をきゅっと押さえながら、シゥレカエレカ・スプートニクはこれでもかというほどに胸も心も、そして星の光を透かして煌めく翅までも躍らせていた。
 見上げれば満天の星。見下ろせば地面に流れる星の煌めき。
 そんな、星の降る荒野で煌めく花を手に“そんなこと”になってしまったりしたら――。
(「きゃーっ!」)
 ――と、声に出さずに心の中で、そのもしもの光景を思い浮かべてときめいていたのには理由がある。
 シゥレカエレカは振り返り、小さく眉を下げた。
(「ねえ、ずうっと難しいかおをしてるわたしのかわいいひと」)
 この荒野の煌めきに負けないくらい綺麗なその顔が、こちらを見つめながら何を考えているか――シゥレカエレカにはわかっている。
「ねえ、ギド、そんなかおじゃあお花もきっと見つからないわ」

 己へと向けられた柔らかな声に、ギド・スプートニクははたと瞬く。
 花を探すと言いながら、蒼の瞳はずっと唯一人だけを追い掛けていた。
 星の光を帯びて白く輝く、透明な青の翅。それを持つ可憐な、ギドにとっての唯一を。
(「ルミアリアの勇者よ。貴様はどんな思いで彼女を残し旅立った?」)
 ――どんな想いで、死んでいった?
 心の裡に燻る問いかけに、答える者はどこにもいない。それでもなお、訊かずにはいられない。
「なぁ、シゥレカエレカ」
「なあに、ギド?」
「もし私がきみを置いて何処かへ行ってしまったとして、幾年が過ぎようと戻ることが無かったとしたら。――きみはどうする?」
 ――その時、ざあっと、風が吹き抜けた。
 陽光に晒された大地の熱を掬い上げて駆けてゆく風は心地よさすら覚えるものだったけれど、それが一瞬、ほんの一瞬だけ、ひどく冷たくなったように感じられた。
 煽られた髪をそっと抑えながら、シゥレカエレカはぽつりと告げる。
「あなたが帰ってこなかったら、――……ギド不足で死んじゃうまで、待ってるわ」
 蒼と紫、二つの色が、ギドの姿を映して揺れる。ギドがそうであるように、シゥレカエレカの瞳も、ずっと唯一人だけを映し、追い掛けているのだ。
 それが失くなってしまったら。世界のあらゆるものが色褪せて、全ての意味を失ってしまうだろう。
「知ってた? わたし、あなたが足りないと死んじゃうのよ」
 乾いた花が萎れて枯れてしまうように、へなへなの、しょぼしょぼになってしまうかもしれない。今までずっと一緒に居たから、どれくらい変わってしまうか想像もつかないけれど。
「……それでも、見つけてくれる?」
 いくつになっても乙女の心を持つ彼女は、そうして瞳を揺らすのだ。寂しさと、悲しさと、そして不安な気持ちを綯い交ぜにしたような、そんな色を灯した瞳を。
「花を探すのは不得手だとしても、きみの輝きを見過ごすことはあるまいよ」
 どれほどの時を、共に過ごしてきたというのだ。ずっと傍らにある唯一のひかりは、今までも、今も、そしてこれからも、変わらない輝きを放っているというのに。
「それにきみの方こそ失念しているな。きみが萎れてしまうよりも早く、私の方が干からびているだろうさ」
「まあ、それは大変!」
 そうして、ようやく笑ってくれたシゥレカエレカへ、ギドは手を差し伸べる。
「おいで」
 ふわり、傍らへ翔んできた彼女を指先で撫ぜると、男はその額にそっと唇を寄せた。
「ラフェクレール、……愛しききみ」
 ――どうかいつまでも、傍に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
星光纏う一輪に興味は尽きず
出不精とはいえ冒険は嫌いではない
それが斯様に美しい夜であるならば尚更の事
さあ、宝探しと洒落込もう

――出て来るが良い、ジャバウォック
召喚した【夢より這い出し混沌】の背に騎乗
夜風に身を委ね、上空より花の輝きを探し当てるとしよう
ふふん、土の煌めきに踊らさせるもまた一興
美しい物は等しく愛でねば罰が当たるというものだろう
己の第六感を頼りに、空の旅を楽しみつつ
幸運にも花を見つけた際は、散らさぬよう少し離れた場所に着陸を試みる
手折らず、触れず、ただ在るが侭の姿に魅入る
ふふ、この花は愛おしい人に対する、勇者の想いだ
なればこそ、それを摘もうなぞ私には畏れ多いさ

――ああ、誠に
美しい花よな



 アルバ・アルフライラはどちらかと言えば出不精である。
 だが、冒険は嫌いではない。
 それがこのように美しい夜であるならば、尚更のこと。
 星降る荒野という舞台も、申し分ないと言えるだろう。
「さあ、宝探しと洒落込もうか。――出て来るが良い、ジャバウォック」
 常と変わらぬ得意げな笑みを湛えながら、アルバは災厄の名を持つ黒き翼竜を喚び出し、その背に乗った。
 高く舞い上がれば、澄んだ夜風は一層の心地よさをアルバへと齎し、天と地とに散りばめられた無数の星の光に包まれるような心地さえ覚える。
 土の煌めきに踊らされるもまた一興。それでも敢えて上空より花の輝きを探し当てようと思い至ったのは――。
「美しい物は、等しく愛でねば罰が当たるというものだろう」
 空にも大地にも満ちる無限の煌めきと輝く命――遍くそのすべてを。

「……おや、」
 直感の赴くままに竜を飛ばしつつ空の旅を楽しんでいたアルバは、不意に視界の片隅に、星の煌めきよりも淡い輝きを捉えたような気がして目を凝らす。
 どれ、降りてみるか、と――見つけた輝きを散らさぬよう少し離れた場所に着陸し、アルバはゆるりと目指す場所へ歩を進めた。
 スターサファイアの瞳に、柔らかな光が映る。
 岩陰に寄り添うように、たおやかに綻ぶ一輪。星の輝きを纏う、八重咲きの白い花。
 それは昼間街で見つけ、そして想いを重ねて流した花にとても良く似ていた。陽の光の元で並んで咲いていたら、同じ花だと見紛うほどに。
 永い時をかけて同じ姿の花を咲かせた街の人々の想いの、原動力となった花。
 アルバは見つけた花を手折ることなく、指先を伸ばすことさえせずに、ただ在るが侭の姿に魅入る。
 魔物が跋扈するような場所でなければ、この花と星を肴に――そう思いかけて、それすらも野暮かと緩く首を横に振る。
 この花は、愛おしい人に対する勇者の想い。
 なればこそ、それを摘もうなど――畏れ多いものだから。
 けれど少しの間だけ、花を愛でるくらいは許されるだろうか。
「――ああ、誠に。美しい花よな」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ナーガクーガ』

POW   :    飛びかかる影
【不意打ちの飛びかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【輝く牙による食い千切り攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    激昂
【怒りの咆哮を上げて威嚇する】事で【興奮状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    集団防衛
【強敵の出現を知らせる警戒の咆哮】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:傘魚

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ユーリア。小さなラフェクレール。
 私のことをそう呼ぶ貴方は、私に誓いの花を捧げながらこう言った。

「もしも僕が帰らなかったら、その時は――どうか、僕を忘れて」

 ――そして、貴方は帰らなかった。
 忘れてほしかったのなら、想いも花も残さずそのまま行けば良かったのにと、言う人もいるでしょう。
 貴方のことを、身勝手だと怒る人もいるでしょう。
 でも、貴方は弱いひとだから。想いを残していくことで、戦うための勇気を胸に、最期まで戦ったのでしょう。
 それから、私にも。貴方が最期までずっと私を想いながら戦ってくれたのだと、信じる勇気を与えてくれたわ。

 ねえ、セドリック。私と同じくらい、いいえ、私よりも寂しがり屋で泣き虫な貴方。
 ラフェクレールなんて洒落た渾名で私を呼んで、貴方よりもずうっと小さな私を愛してくれた人。
 貴方は知っていたのでしょう? 私の幸せが、貴方なしでは決して得られないものだって。
 もちろん、貴方の幸せも。

 だから私は、忘れない。
 貴方が私に想いと花を贈ってくれたように、私も、貴方をずっと、想っている。

 この川を超えた先、果てのない、広い世界のどこかで。
 いつか貴方がこの花を見つけてくれることを願って花を流すわ。
 貴方が心からの想いを籠めて花を贈ってくれたように、私も心からの想いを籠めて、貴方に花を贈りたい。
 この身が朽ちて土に還っても、貴方をずっと、忘れないと。愛していると。
 貴方の帰る場所は、ここにあると――。


 猟兵たちが訪れたことで、滅多にない人の気配に獣たちが騒ぎ出す。
 思い思いに星降る荒野の散策を楽しんでいた彼らの前に現れたのは、艶消しの鱗に覆われた体を持ち、頭から角を生やした――ナーガクーガと呼ばれる獣だ。
 宝石のようにも見える瞳と爪が、獲物を捉えてようと暗闇の中でぎらりと光っている。
 それらは全て、躯の海より現れた獣――ならば、倒さぬ理由はどこにもないだろう。
 星煌めく舞台に一時の静寂を取り戻すべく、猟兵たちはそれぞれの得物を構えるのだった。
火狸・さつま
コノf03130と

愛する人へ想いを残し託していった勇者さんと…
何も残すまいと壊すようにして逝ってしまった俺の亡き番
どちらが…
…いや、相手を想ってのことならば
きっと、どちらも、まちがってない…ただしい…

あとは…残された者の感じ方、捉え方次第…
俺、は……わかってたのに…わかってるのに…
未だ想いとらわれて、間違ってるのだろうか
出来ず終いになった正式な求婚を番へとしてたなら何か違っただろうか
いや、今更…そんな事


ん。大丈夫
ありがと
此の地を踏み荒らされる訳に行かない
考えるのはお終いにして<彩霞>構え
『早業』敵中心へ跳び込み切り裂く風纏わせ『属性攻撃』
続けて『2回攻撃』【燐火】の『範囲攻撃』で敵のみを燃やす


コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)と

これまた沢山居るコト
肩竦め隣見れば、分かり易く萎れる耳に尻尾
ああこりゃ迂闊な事聞いて余計なコト思い出させたか
勇者の恋物語とやらに何か重ね見ちまったか

溜息ひとつ、隣の頭にごつんと拳骨当て
気持ちに正しいも間違いもねぇし、過去は変えられん
アンタは今、ナニが幸せだと言った?
当てた拳を開いて、くしゃり乱暴に頭撫で

『高速詠唱』で【月焔】喚び敵の群れへと撃ち込み
『2回攻撃』で相方の背を守るようまた焔をばら撒こう
敵の動き『見切り』相方へ飛び掛かるのから『かばう』ヨ
力が増していようが『激痛耐性』で凌ぎ『カウンター』
全弾合わせた焔を叩き返したげる

さあ、浪漫に不釣り合いな輩とはサヨナラだ



 星たちが眠る大地に不釣り合いな獣の唸り声。
「……これまた沢山居るコト」
 コノハ・ライゼは微かに口の端を釣り上げながら肩竦め、それから、ちらりと隣へ視線を向けた。
(「……ああ、」)
 見れば火狸・さつまの――いつもはぴんと元気よくあちらこちらを向いている耳と尻尾が分かりやすく萎れていて。これは迂闊なことを聞いて余計なことを思い出させてしまったかと、コノハは胸中で苦く笑う。
 あるいは、勇者の恋物語とやらに、何かを重ねてしまったのか。

 ――愛する人へ想いを残し、託して逝った勇者の青年と、何も遺さず壊すようにして逝ってしまった、己の番い。
 はたして、どちらが正しかったのだろうと思考を巡らせながら、さつまは小さく首を横に振る。
「俺、は……わかってたのに……わかってるのに………」
 どちらが正しいかなんて、誰にもわからない。勿論、さつま自身にだって、わかりようがない。
 想いを残して逝くのも、何も残さずに逝くのも、それが相手を想ってのことならば、きっと、どちらも間違っていない――はずなのだ。
 後は、残された者の感じ方や、捉え方次第なのだと。そうすることでしか先に進めないのも、わかっている。
 ――わかっていた、はずなのだ。
 それなのに、さつまの中に生じた小さな迷いは、次第に大きな渦になってぐるぐると回っていた。
 伝えられなかった想いを伝えて、全てを欲しいと求めていたら。
 結局出来ないまま終わってしまった正式な求婚をしていたなら、何かが違っていただろうか。
 そうしていたら、今とは違う未来に、辿り着くことが出来ていただろうか。――否、きっと出来ていた、はずだ。
 ならば、こうして今ここにいる自分は、やはり間違っていたのだろうか。
(「いや、今更……そんな、こと」)
 想いに囚われて、踏み出すことさえ出来ないのは間違っているとわかっているはずなのに。
 二度と戻れない、変えることの叶わない過去を取り戻せたらなんて、思ってしまうのは――。
「……っ」
 その時、隣から聞こえたわざとらしい溜め息と、ごつんと頭に当てられたげんこつの衝撃に、さつまははっと我に返った。
「コノ……」
「気持ちに正しいも間違いもねぇし、過去は変えられん。アンタは今、ナニが幸せだと言った?」
「う……」
 当てた拳を開いて、コノハはさつまの頭をくしゃりと乱暴に撫でる。
 それだけで、さつまは心の中の大きなぐるぐるが、すっと消えていくのを感じた。
“今”を思い出すには、それだけで十分だった。
「……ん、大丈夫。コノ、ありがと」
 ――そうだ。
 自分は、何を迷う必要があったのだろう。
 今は二人でこうして、一緒の思い出を重ねられることが、幸せなのだ。
 だから、考えるのはおしまい。しっかりと前を向いたさつまにコノハは笑って、もう一度、ぽん、とさつまの頭に手を置いてから、眼前の獣たちへと振り返った。
「さあ、浪漫に不釣り合いな輩とはサヨナラだ」
 コノハが放つのは冷たき月白の焔の群れ。それらが獣たちを撫ぜるように包み込み、忽ちの内に燃え上がると同時、さつまも彩霞の一振りに斬り裂く風を纏わせながら群れの只中へ飛び込んでいく。
 愛らしい仔狐の形を成した青い狐火がさつまの指先から踊れば、それに照らされた獣たちの瞳が、爪が、角が、ぎらりと光るけれど。
 それは最早、二人共に在るならば怖れるに足らない。悪意に満ちた咆哮さえも、二人の心を揺さぶりはしない。
 ――この地を踏み荒らされる訳にはいかない。だからもう、迷いはない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎

やっと、つかまえた
ヨルを捕まえて受け取った白い花

きっと物語がある
叶わなかった、戀の
伝えたかった、想いの
そんな気がする
だからだからきっと
穢させてはいけない
いつだって
想いが美しく咲いていられるように

だからね、櫻
この場を荒らされたくない
いこう!
宝石の瞳なんて
天の星にも地の花にも及ばない

歌唱に込める鼓舞は剣舞まう君のためもの
綺麗な舞をみせてくれ
僕を庇う櫻宵ごと水泡のオーラ防御で防いで、彼の剣戟に合わせて歌うのは【春の歌】
星空瞬く宵に、桜を
踏み躙る過去を躯へかえそう

花は、帰ってから改めて渡す
流した花も
求婚の花も
幸せの花に繋がってる
優しく瞬く想いがこの地に満ちているんだから


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎

やっとつかまえた、ヨルったらもう……
受け取った白い花はリィへ
よかったわ
ヨルはあとでお説教ね!
……とその前に
お邪魔物を退治しなきゃかしら

……リィは優しい子ね
そうね、星には願いをかけるもの
夜空は、淡い願いの海なのね
守りましょう、優しいあなた
この地に咲く、想いも全て

王子様の願いとあれば
穢すもの全て斬り捨ててあげるわ!
リルを守るように前へ出る
歌が背中を押し勇気をくれるわ
どんな硬かろうが斬り砕き
衝撃波で牽制して、薙ぎ払う
グラップルで殴ってもいいわね
見切りで躱して咄嗟の一撃
咲かすは絶華
さぁ!首を頂戴

楽しみにしてるわね、リィ
あら
あたしの幸せは、あなたという形をしているのよ?



「……やっと、つかまえた」
 桜飾りを揺らしながらぴゃーっと駆け回っていたちいさなペンギンをつかまえて、リル・ルリはようやく安堵の息をつく。
「ヨルったらもう、悪戯っ子さんなんだから!」
 誰に似たのかしらねぇなんて零しつつ、誘名・櫻宵はヨルから受け取った白い花を改めてリルへと差し出した。
「本当によかったわ。ヨルはあとでお説教ね! ……と、その前にお邪魔物を退治しなきゃかしら」
 紅を引いた櫻宵の目元が艶やかな笑みの形を作る。
 二人の目の前には、躯の海より現れた獣たちの群れ。

 ――きっと、この花にはたくさんの物語がある。
 叶わなかった、戀の。
 伝えたかった、想いの。
「そんな気がするんだ。だからだから、きっと、穢させてはいけない」
 いつだって、想いが美しく咲いていられるように。
「だからね、櫻。僕はこの場を荒らされたくない」
 訴えかけるようなリルの眼差しと声に、櫻宵は柔らかに微笑んで頷く。
「……リィは優しい子ね」
 星には願いをかけるもの。その星が散りばめられた夜空は、たくさんの願いが揺蕩う海。
 そして、この大地にあっては地上もまた、願いの海と言えるだろう。
 星の煌めき満ちる荒野に、星の輝きを抱いて綻ぶ花。
 名も知らぬ、けれど誰かの想いを抱いて咲くこの花もまた、――願いのかたち。
「守りましょう、優しいあなた。この地に咲く、想いも全て」
「うん、いこう!」
 たとえ宝石のような瞳を持っていようとも、オブリビオンのその光は天の星にも地の花にも遠く及ばない。
「櫻、どうか綺麗な舞をみせてくれ」
 星空瞬く宵に、桜を。誰かの想いを踏み躙る過去を躯へかえそう。
 籠める想いは剣と共に舞い踊る“君”のためのもの。
 心に咲く薄紅を、風に委ねて散らせよう。
 麗らかな春風と巡り躍り、幾度でも花咲く夢見草―揺蕩い惑うも花咲く僕を。
 ――どうか君よ、忘れないで。
 柔く優しく暖かく、抱くように蕩ける銀細工の歌声が、虚空の水面に泡を浮かばせ、桜の花吹雪とと共に獣たちを覆う。人魚の泡が齎すのは心地よい恍惚と魅了。心乱された獣たちへ、リルを守るように前へ躍り出た櫻宵が紅い血桜の太刀を手に踏み込んでいく。
「王子様の願いとあれば、穢すもの全て斬り捨ててあげるわ!」
 響く歌声が背中を押して、勇気を与えてくれるから、何も怖れるものはない。
 見せて、魅せる――“あなた”のための舞。
 しなやかに、けれど苛烈に。振り抜かれた太刀の煌めき帯びる軌跡が衝撃波となってナーガクーガを牽制し、返す刃で硬い皮膚を斬り砕く。
「それともこちらのほうがお好み?」
 刀持たぬほうの背後から飛びかかってきた一体へ、躊躇うことなく拳を叩きつけながら、櫻宵は優艶と微笑んでみせる。
 ただ獲物を屠ることしか考えていない野生の獣ならば、その牙を躱すのも容易いこと。
「さぁ! 首を頂戴――」
 桜のように潔く散れと、空間ごと断ち斬る不可視の剣戟で首を絶つ。
 咲く花のように噴き出す血色も“過去”のものならば、何も残らず躯の海に還るだけ。

「花は、帰ってからちゃんと渡すね」
「えぇ、リィ。楽しみにしてるわね」
 微笑む櫻宵の角に咲く桜もひときわ華やかに笑っているよう。元より、今日一日中ずっとそうだったけれど、改めてそれを見てはリルも楽しげに笑みを深めて。
「……流した花も、求婚の花も。みんな幸せの花に繋がってるんだね」
 だからこそ、この地には優しく瞬くたくさんの想いが満ちているのだろう。
 手の中の花を、優しく見つめるリルに、櫻宵はあら、と瞬いて笑みを深めた。
「あたしの幸せはね、リィ。あなたという形をしているのよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミュー・オルビス
クラリスさん(f10090)と

――!
何かいます、クラリスさん

荒野に煌く青い瞳は素直に美しいけれど
宵闇を切り裂くその齒牙は些か無粋ですね
骸の海から放たれた獣と対峙するのは
初めてですが不思議と恐怖はなく
―きっと傍らに彼女がいるから

学習力で敵の行動パターンを分析
助言出来る事があれば彼女に伝えます
ガジェットショータイムで生成したのは
鋼鉄製の機械弓(クロスボウ)
メカニックを活かし有効活用が出来れば

獅子に跨り荒野を駆ける彼女の
勇姿(と愛らしさ)に思わず見惚れ
合図を頼りに炎噴く鏃を獣の瞳に向ける

祈望の花を浮かべ星の荒野を流離い
名も知れぬ花をふたり探した
きらきらと輝く今日の記憶を
あなたの爪で台無しにはさせない


クラリス・ポー
ミューさん(f03315)と

気配に髭が立った
呼吸はしているのに生きていない
美しいのに敵だと確信させる不吉な影
オブリビオン!
叫ぶと同時に聖獣器を構えた
ミューさんを護らなきゃ…!

経験と冷静な彼女の助言で
野生の勘と勇気を奮わせ
召喚したライオンさんに跨って戦います
武器受けと拠点防御で広範囲のガードを
この地で咲いているかもしれない花を
散らしたくありません
好機を悟れば
――ミューさん、今です!

火噴く鏃が私には流星にみえた

花を流し、星の荒野を彷徨い
もし花がみつからなくても
きっと咲いていると信じることが出来ます
それはあなたと一緒だから
あなたが手を差し伸べてくれたから
どんな星より、きらきらと輝く
かけがえのないもの



「――! 何かいます、クラリスさん」
 ミュー・オルビスがそう、囁くように告げると同時、クラリス・ポーもざわめく気配にぴんと髭を張り詰めさせていた。
 呼吸はしているのに、“生きて”はいない。
 美しい姿かたちをしているのに、敵だと確信させる不吉な、影。
「……オブリビオン!」
 叫ぶと同時、クラリスは先端に魔法の青金石と金色のベルが誂えられた杖状の聖獣器を構える。
(「ミューさんを護らなきゃ……!」)
 その頼もしい横顔に、ミューは心が和らぐのを感じた。
 ナーガクーガ。宝石のような輝きを帯びた瞳を持つ、青き獣。
 荒野に煌めく青い瞳は素直に美しいものだと思えるけれど、
「宵闇を切り裂くその齒牙は、些か無粋ですね」
 ぽつりと、ミューは声を落とす。
 骸の海から放たれた獣と対峙するのは初めてだけれど、不思議と怖くないのは。きっと、――傍らに彼女が、クラリスがいてくれるからだ。
「気をつけて下さい、来ます!」
 獣たちの怒りに満ちた咆哮が、二人の鼓膜を震わせる。竦み上がってしまいそうな心に勇気を灯して、クラリスは召喚した黄金のライオンに跨がり駆け出した。
 獅子に跨り荒野を駆けるクラリスの勇姿と愛らしさにミューは思わず見惚れるけれど、まだ戦いは始まったばかり。すぐに気持ちを引き締めて、ガジェットのクロスボウを喚び出した。
 この星降る荒野のどこかで咲いているかもしれない花を、散らしたくない。その一心でクラリスは自らを盾とするように、獣たちの間を駆け巡る。
 からん、とベルが澄んだ音を奏でながら獣の牙を弾き返し、その隙に獅子が獣へ喰らいつく。手負いの獣へ、ミューは真っ直ぐにクロスボウを向ける。
(「……大丈夫、」)
 放たれた鋼鉄製の矢は的確にナーガクーガの硬い鱗の皮膚を貫いた。それでもまだ倒れぬ気配に、クラリスの獅子が再び牙を剥く。
 理性を失くした獣の、獲物を喰らわんとする瞳。それはとても恐ろしいものだったけれど、守るべき者が、世界がここにある。
 だから、クラリスは決して目を逸らさず前を向き、そうして――。
「――ミューさん、今です!」
「……はいっ」
 凛と響いたクラリスの声にしっかりと頷き、ミューは獣の瞳へ狙いを定めてトリガーを引いた。
 祈望の花を浮かべ星の荒野を流離い、名も知れぬ花をふたり探した――星よりもきらきらと輝く今日の記憶を、
(「あなたたちの爪で、台無しにはさせない――」)
 刹那、火を噴く鏃が宝石めいた瞳へ突き刺さる。クラリスの瞳に鮮やかに映ったその火は、まるで流星のようで。
 そして、鮮やかに燃え上がった焔の星が、躯の海から蘇った獣たちを再び躯の海へと還していく。

 もしも花が見つからなくとも、きっとどこかに咲いていると信じることが出来る。
 ――それは、“あなた”と一緒だから。
 あなたが手を差し伸べてくれたから、この地上に空に煌めくどんな星よりもきらきらと輝く、かけがえのない宝物が――この胸に、満ちている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コルチェ・ウーパニャン
すごい、これは…とらさん!!…とらさん!?
コルチェこういうのも初めて見た!!
でも、このとらさんたちがいたら伝説の二人が帰って来れても、のんびりデートできないよね!

伝説の二人は、ここへ。
とらさんたちは、骸の海へ。
みんな、いたいところに帰れたらいいのに。
とらさんたちだけは、コルチェたちみんなで、お手伝いしてあげられるね!

アジサイさんは隠しておいて…キュルルルーン!!
ピカリブラスターのクイックドロウで、とらさん達のおうちへ光の道を作る…つもり!!

この光線はねー…曲がります!!
狙ったところへ一直線、いちばーん速く届く道で進むんだよ!
 
みんなおうちへ帰ろ!コルチェとピカリブラスターが案内するよ!



「すごい、これは……とらさん!! ……とらさん!?」
 コルチェ・ウーパニャンの前に現れたのは、夜の闇を溶かしたような色彩を纏う獣たち。
 ぎらりと光る宝石のような瞳と、鋭い角や爪。鱗に覆われた皮膚はひんやりごつごつしていそうで、けれど見た目は虎のような獣は、コルチェにはこれまた未知のものだ。
「でも、このとらさんたちがいたら伝説の二人が帰って来れても、のんびりデートできないよね!」
 獣の目に見えないようにアジサイさんを岩陰に隠し、コルチェはすっと立ち上がると、愛用の、丸みを帯びたフォルムが特徴的なスーパーガンことピカリブラスターを構えた。
 伝説の二人は、ここへ。
 そしてとらさんたちは、骸の海へ。
(「みんな、いたいところに帰れたらいいのに」)
 ――でも、
「とらさんたちだけは、コルチェたちみんなで、お手伝いしてあげられるね!」
 躯の海から現れた、この世界には不釣り合いな獣を再び躯の海へ。
「いっくよー! キュルルルーン!!」
 ピカリブラスターの引き金を引けば、飛び出した熱が光を帯びて駆け抜ける。
 それは、とらさんたちのお家へと続く、光の道。けれど、真っ直ぐに伸びるだけではなく――。
「この光線はねー……なんと! 曲がります!!」
 狙ったところへ一直線、フェルマーの原理に従って、常に所要時間最短経路で狙いへ進むスーパーガン――それがピカリブラスターなのだ。
「みんなおうちへ帰ろ! コルチェとピカリブラスターが案内するよ!」
 一番速く届く道を進みながら、光線は的確に獣たちを貫いて、在るべき場所へと還してゆく。
 その先にはきらきらとお星様が煌めく、遥か遠い、――遠い空。

 やがて再び戻った静寂の中、コルチェはピカリブラスターを下ろして息をついた。
「お待たせ、アジサイさん! でも、少し疲れちゃったから、もう少し休憩してもいいかなあ」
 そう言うと、コルチェはアジサイさんの隣に腰を下ろして空を見上げる。
「二人がどこかで、逢えるといいなあ……」
 その時――。
「……あっ! 見て、アジサイさん!」
 声弾ませてコルチェが指差した先。きらりと大きく瞬いた白い星が、はっきりと見える線を描いて流れてゆくのが見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鬼切・雪火
【理(f13813)】と【さゆり(f00775)】
大好きな友達二人と参加。
アレンジ・アドリブは大歓迎だぜ

おや、戦だ、戦の匂いだ
俺の出番だな!
あ、待てよマコ!危ないだろー!

柏手をひとつ
ほら、鬼印の護符をお前らにはくれてやろう
どうだー!マコー!殴りやすくなったか!
さゆりも良い手助けをくれてるな、やっぱり最高の友達だぜ

さあて、俺も一発入れてやろう
鞘に入れたまま本体で全力でぶん殴ってやるぜ
俺は結構堅いぞ!

闇の中にかえってゆけ
もうおわりなんだ

ん、騎士?お庭番みたいなもの?ちょっと違う?
だいじょうぶ、俺、さゆりもマコもまもるよ


明日知・理
【さゆり(f00775)と雪火(f04419)】と共に戦線を。
アドリブ歓迎。


お前たちが、さゆりと雪火に牙を剥くというのなら容赦はしない。

▼戦闘
前衛を務める。
さゆりと雪火の行動を阻害しない様立ち回りつつ、二人を庇う盾役として動く。
敵からの攻撃は刀で出来る限り受け流すかカウンターを。

二人の開いてくれた活路を一瞬たりとも見逃すことなく、又躊躇いなどあるはずもなく。
シスと、意識せずとも自然と息を合わせ同時に踏み込み、各個撃破に持ち込む。
黒き怪犬はその魔の牙を剥き。
真白な闇の刃は、未熟な剣筋なれど寸分違わず。

──眠れ、海の底で。


四・さゆり
【理(f13813)】と【雪火(f04419)】と一緒よ
アレンジ大好き

ーーー

あら、わたしたちのパレードを…いえ、冒険、ね。

邪魔するの?
わくわくするわ、ええ。

良いでしょう。
そのきらきら潰してあげる、ちょうだい。

マコはどうせ先に行くのよ、しょうがない子。
守らせてあげるわ、いつも通り。

元気に駆ける雪火を、転ばぬようにみててあげましょ。

わたしの騎士たちが、奮う、なら。
わたしは、その、刃が届くよう、獣の足を鈍らせましょう。

わたしの傘たち、ゆうらり、
逃れるのなら、その足に降らせましょう。
立ち向かうのなら、その鼻先を潰しましょう。

刃の道筋を、導いてあげる。

幸福と思いなさい。
わたしの騎士たち、すてきでしょ?



 風に紛れて届いたのは低い唸り声。
 それから、感じた“戦の匂い”に、鬼切・雪火はにっと口の端を釣り上げた。
「――戦なら俺の出番だな!」
 闇から生まれるように現れたナーガクーガたちを、明日知・理は鋭く睨みつける。
 獣たちもまた、宝石のように輝く瞳に獲物である三人の姿を確りと捉えながら、低い唸り声を上げていた。
「あら、わたしたちのパレードを……いえ、冒険、ね」
 四・さゆりはくすくすと笑って、獲物を前にぎらりと光る獣たちの瞳を悠然と見つめ返す。
「邪魔するの? わくわくするわ、ええ。――良いでしょう。そのきらきら潰してあげる、ちょうだい」
 さゆりの鈴を転がすような声が落ちると同時。
「お前たちが、さゆりと雪火に牙を剥くというのなら容赦はしない」
 獣たちの攻撃を全て受け止める心積もりで、理は地を蹴っていた。
「あ、待てよマコ! 危ないだろー!」
 雪火も己の身の丈程の太刀を手に、後を追うように掛けていく。
 己を省みず真っ先に飛び出した理の背を見つめ、さゆりはしょうがない子と声落とし。
「守らせてあげるわ、いつも通り。だからちゃんと守りなさい」
 自分を、否、今宵は自分たちを守るために、理が前に出るのはいつものことだから。
 その間に、理は躍りかかってきた獣たちを、闇色纏う刀で素早く斬り伏せていた。
 全身を覆う鱗の皮膚はやはり硬く、返る手応えは鈍い。だが、決して斬れないわけではない。
 ならば斬るだけと、理はナーガクーガの輝く牙を受け流し、すぐさま急所を狙って切っ先を繰り出した。
 理にさり気なく死角を守られながらも元気に駆け回る雪火が転ばぬように見守りつつ、さゆりはゆうらり、真っ赤な傘を空にいくつも浮かばせる。
 ――わたしの騎士たちが、奮う、なら。
 わたしは、その、刃が届くよう、獣の足を鈍らせましょう――。
「さあ、よいこたち。暴れてらっしゃい」
 逃れるのならば、その足を。
 歯向かうのなら、その鼻先を。
 赤い、あかい傘の雨で潰しましょう。
(「やっぱり、さゆりは最高の友達だぜ」)
 的確な援護に満面の笑みを浮かべる雪火の眼差しに、あたりまえでしょうとばかりにさゆりは小さく微笑む。
 夜色の獣を翻弄する赤い傘の雨に、雪火は負けてはいられないとばかりに柏手をひとつ、高らかに響かせた。
「ほら、鬼印の護符をお前らにはくれてやろう」
 ばら撒かれた護符がナーガクーガの口を塞ぐと、してやったりとばかりに雪火は笑う。
「どうだー! マコー! 殴りやすくなったか!」
 二人によって導かれた刃の道筋。その好機を逃すはずなどない。
 二人の開いてくれた活路を理は更に確かなものへと変えるべく、傍らの獣を呼んだ。
「しくじるなよ、シス」
 闇色の獣へ呼びかければ、誰に向かって言っている――そんな答えが聞こえたような気がした。
 シスの緋色の瞳がナーガクーガを捉えると同時、理とシス――ふたりは自然と息を合わせて踏み込んでいた。
 黒き怪犬は魔の牙を剥き。
 真白な闇の刃は、未熟な剣筋なれど寸分違わず。
 守るべき二人のために振るう力に、迷いも躊躇いもあるはずはない。
「さあて、俺も一発入れてやろう。俺は結構堅いぞ!」
 雪火は軽やかに跳躍し、空中から渾身の力を籠めて朱塗りの鞘に収まった太刀を振り下ろす。
 ごぉん、と、夜空に響いた形容し難い音は、硬いもの同士がぶつかった時のそれだ。
「――痛っ!」
 雪火の手に返る衝撃もそれなりのもの。思わず勢いつけて後方へと下がった雪火は、ぶんぶんと刀を持っていた手を振るって痺れを払う。
「まあ、石頭」
 痛そうな音にさゆりは思わず声を落とした。
 とは言え、叩き割ることは叶わなかったものの、ナーガクーガが受けた衝撃もかなりのものだったよう。
 ぐるぐると目を回すようにその場に倒れた獣の喉元に、理の刀が突き刺さった。

 三人を囲んでいた獣たちの姿が、少しずつ減っていく。
「闇の中にかえってゆけ。もう、おわりなんだ」
 躯の海から現れた獣の行く先は、躯の海だけ。少しだけ寂しげな声で雪火が呟くと、
「幸福と思いなさい。わたしの騎士たち、すてきでしょ?」
 最後に残った一体へ、さゆりがふうわり、微笑んで告げる。
 もっとも、獣たちには何が“すてき”かなんて、永遠にわかりはしないけれど。
「──眠れ、海の底で」
 そうして理が最後の一体を斬り捨て、在るべき場所へと還していく――。

 やがて、今ひとたびの静寂が取り戻された地にて。
「……ん、騎士? お庭番みたいなもの? ちょっと違う?」
 先程のさゆりの言葉に首を傾げながらも、雪火はすぐに屈託なく笑って、
「だいじょうぶ、俺、さゆりもマコもまもるよ」
「ふふ、たのもしいこと」
 満足気に微笑むさゆりと、雪火と、二人を見やって、理は告げる。
「……帰るぞ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

出水宮・カガリ
【壁槍】まる(f09171)と

ああ、やはり
英雄というものは嫌だな
弱いものが、微かな勇気を振り絞ってまで戦うなど
還らぬものを待つのは、ただ、悲しいだけだ
カガリの守るものは、誰一人として英雄になどさせるものか

守るものを、壁の内に閉じて
(まると自分の周囲に【不落の傷跡】で強化した【籠絡の鉄柵】を高い鉄柵として展開、【駕砲城壁】を発動)
壁の外の脅威を寄せ付けず、壁の内を侵させない
カガリの壁の内では、悲しい英雄の存在を許さない
壁が堅固であれば、ひとが英雄になる必要など無いのだから

髪一筋ほどの傷さえ、許すものか


マレーク・グランシャール
【壁槍】カガリ(f04556)と

敵の牙や爪の攻撃は強力だが一つ欠点がある
それは接近戦しか出来ないと言うこと

カガリが飛び掛かってくる敵をUCの光弾で反撃したその瞬間が狙い目
敵にダメージを負わせて手鼻を挫いたところで、追撃か来る前に俺が【魔槍雷帝】で串刺し
これを初撃として【流星蒼槍】を発動し、召喚した双頭竜の追撃する

UC発動中で身動きが取れないカガリの背後に迫る敵は、接近される前に【碧血竜槍】を槍投げしてこれを初撃とする
カガリを決して傷つけさせるものか

俺は妖精を残したまま帰らなかったセドリックの気持ちが分かる気がする
俺もまたいずれ帰らぬ人となるだろう
想いを花に託して捧げられる相手はいないけれど



 ――ああ、やはり。
 英雄というものは嫌だと、出水宮・カガリは浮かぶ想いをより確かなものにする。
(「弱いものが、微かな勇気を振り絞ってまで戦うなど」)
 眼前に現れたるは躯の海より蘇りし獣の群れ。それは、弱いものを英雄へと容易く駆り立てる存在に他ならない。
 還らぬ者を待つのは、ただ悲しいだけ。
 ゆえに、カガリは今一度、城門として聳え立つ。
「カガリの守るものは、誰一人として英雄になどさせるものか……!」
 盾に、鉄柵に、そして体に刻まれた傷を守りの力とし、己の一部である鉄柵をより高い鉄柵として展開させ、カガリは自らの全身を城壁へと変えた。
「これなるは我が砲門。我が外に敵がある限り、砲弾が尽きる事はなし。反撃せよ。砲を撃て。我が外の脅威を駆逐せよ――!」
 守るべきものを壁の内に閉じて、壁の外の脅威を寄せ付けず、壁の内を侵させない。
 閉じ、隔て、守るもの。それが城門であるカガリをヤドリガミたらしめた意義であり信念だ。
 そこに在り続けるだけで、カガリはいかなる驚異も通さない。
 事実、獣たちの牙も爪も、そして角持つ頭の頭突きによる衝撃さえも、光弾となって跳ね返る。
 敵の牙や爪の攻撃は強力なものだ。だが一つ欠点がある。
 それは、接近戦しか出来ないこと。そのことを、マレーク・グランシャールは即座に見抜いていた。
 カガリの力が、敵の攻撃を光弾によって跳ね返す。その隙を逃さず、マレークは蒼い稲妻を纏った魔槍を手にナーガクーガとの距離を詰める。
 繰り出した穂先が硬い鱗の皮膚を裂き、出鼻を挫いた所ですかさず串刺しにする。これをトリガーとして、マレークは続く言葉を即座に響かせた。
「星を穿て、蒼き稲妻を纏いし碧眼の双頭竜――」
 声に応えて現れたのは、蒼い稲妻を纏った碧眼の双頭竜。竜は空を裂くような咆哮を上げながら、ナーガクーガたちへ猛追撃を仕掛けていく。
 ――その時、城門となり動けぬカガリの背後に迫る獣の影に、マレークは素早く碧玉煌めく優美な長槍を投げつけた。
「そう易々とカガリに触れられると思うなよ」
 碧き竜槍は硬い鱗の皮膚を貫き、その先に守られていた心の臓までもを一息に穿つと、そのまま獣を躯の海へと送り返した。
「まる、助かった」
 カガリが息をつく。マレークは気にするなとばかりに一瞥し、すぐにまだ残るナーガクーガたちへと向き直った。
 愛した少女を遺したまま英雄として死した勇者の気持ちが、マレークにはわかるような気がするのだ
(「俺もまた、いずれ帰らぬ人となるだろう」)
 想いを花に託して捧げられるような相手は、いないけれど。
 けれど、それを口にすれば、カガリはきっと胸を痛めるのだろう。
 ゆえにマレークは何も言わず、ただ敵を屠る槍となる。
「カガリの壁の内では、悲しい英雄の存在を許さない。髪一筋ほどの傷さえ、許すものか……!」
 壁が堅固であれば、ひとが英雄になる必要など無いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
せーちゃん(f00502)と

や、わしらの気配に何か現れおったな
楽しくすごしとったのに!
邪魔するものは、倒してしまお
きっと今日のこの夜は想いを馳せる為の夜じゃろ
他の者達にまでその牙を届かせてはならん

夜色の、友より貰った扇を広げ、右目の下におるものに、おいでと
せーちゃんからもらった扇に、虚を招くのはなんぞ変な感じじゃの
わしの右眼より気に入った、なんて言わんでくれたらええんじゃけど

その力を借りて、敵のその身を絡めとろう
虚の持つ黒き茨はなかなか意地悪で、やすやすと抜け出せるものではないからの
ではせーちゃんあとは任せた

いつ見ても綺麗じゃの
季節外れの、白き花ではないが誓っておこう
この花に、変わらぬ友情をと


筧・清史郎
らんらん(f05366)と参ろう

やはり、只の楽しい夜の散策とはいかないか
ああ、らんらん
野暮な獣は早々に退治してやろう
美しい星の降る夜に、そのような不躾なぎらついた輝きは不要だ

友と揃って扇を広げ、舞う様に花弁を舞わせよう
花に想いを託した、勇者や小さなフェアリーの少女のように
俺たちも、花咲く扇で、皆が今宵馳せた様々な想いを守ろう
警戒の咆哮をあげても無駄吠えだ
友の黒き茨からは逃れられん
動きを止めた敵を範囲内に入れつつ
扇を翻し舞う様に、より多くの敵を巻き込んで【空華乱墜】を放つ
この桜吹雪で、在るべき場所に還るがいい

星の煌めく静かな夜を、かけがえのない友と過ごす
このような時間を、これからも大切にしたい



 穏やかな静寂を乱す気配と、低い唸り声。闇の中から現れた夜色の獣たちを見て、終夜・嵐吾はむ、と微かに眉を寄せる。
「現れおったな。せっかく楽しくすごしとったのに!」
「やはり、只の楽しい夜の散策とはいかないか」
 筧・清史郎がぽつりと零す言葉に嵐吾は頷き、のう、と呼びかける。
「せーちゃん。邪魔するものは、とっとと倒してしまお」
 きっと今日のこの夜は、静かに想いを馳せる為の夜。
 誰かにその牙を届かせるわけにはいかないから。
 友の言葉に、清史郎も静かに頷いてみせた。
「ああ、らんらん。野暮な獣は早々に退治してやろう」
 美しい星の降る夜に、あのような不躾な輝きは不要なものだから――。

 鋭い爪を光らせながら躍りかかってくるナーガクーガたち。
 その攻撃を難なく見切りながら嵐吾はすっと目を細め、傍らの友より贈られた、夜色に桜の嵐吹く扇を広げた。
(「……せーちゃんからもらった扇に、虚を招くのはなんぞ変な感じじゃの」)
 微睡む虚の主が、ここよりも気に入ったなどと言い出さなければいいが――そんなことを思いながら、嵐吾は右眼の戒めを解き、おいで、と呼びかける。
 ――刹那、静夜に解き放たれた花の香に乗り、地を這う影の黒茨がナーガクーガの元へと迫った。
 足元から染み出した“影”の気配に獣たちが気づいた時には、既に遅く。
 虚の主の黒き茨は、決して逃さぬとばかりに四肢を絡め取り、深く絡みつき、大地に縫い止めるように獣の体を引き寄せる。
「ではせーちゃん、あとは任せた」
「ああ、任された」
 ふ、と口の端に笑み浮かべ、清史郎も扇を開く。
 夜風にふわり、舞う桜。花に想いを託した勇者や、小さなフェアリーの少女のように。
「俺たちも、この花咲く扇で、皆が今宵馳せた様々な想いを守ろう」
 清史郎がそう告げれば、嵐吾は緩く頷いて。
「……無論、そのつもりじゃよ」
 警戒の咆哮が重なり響き渡る。だが、それは既に意味を成さない。
 どれほど戦闘力を強化したところで、虚の黒茨は一度捕えた獣を逃しはしない。
 動きを止めた獣たちは既にこちらの手の内にある。後は、為すべきことを為すだけだ。
 清史郎は扇を翻し、舞うような足取りで一歩、そうしてもう一度扇を返せば、緩やかに綻んだ夜色が忽ちの内に乱れ舞い散る桜の花びらへと姿を変え、吹き抜ける夜風にのって舞い上がった。
「この桜吹雪で、在るべき場所に還るがいい」

 過ぎ去った春を追い掛けるように、獣たちを連れて彼方へと去ってゆく桜花の欠片たち。
(「……いつ見ても綺麗じゃの」)
 淡く儚く、けれど確かな強さに満ちた花。
 それはきっと、友が咲かせた花でもあるからだろう。何とはなしにそんなことを思いながら、嵐吾は心の内に誓いを灯す。
 ――この花に、変わらぬ友情をと。
 そうして全てが終わった時、辺りを満たす穏やかな静寂に清史郎もまた、想うのだ。
 星の煌めく静かな夜を、かけがえのない友と過ごす――このような時間を、これからも大切にしていきたいと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
氷鷺(f09328)と

(その人の弱さを受け入れてまで
想い合って、信じてたって?
そんなのもう、弱くなんかねーじゃん)

想いは胸に留め未だ弱い心に自嘲
何にしろ、花に罪はねぇ
今はただ荒野に秘めやかに咲く白き花が散らぬよう、力を尽くす

囲われても背を預け
言葉にせずとも、自然と重なる影が
何よりの信頼の証

紡がれた音に苦笑
全くお前ってやつは――

紅溢し複製した鳥籠を浮かべ
刃物を降らせ敵の動きを鈍らせる

(あの花が綺麗だと思ったのは、伝説の事もあるが
きっとお前が、見つけたから)

視野は広く、黒鍵刀を構え衣をひらり誘惑
フェイントを駆使し攻撃を除けつつ
氷鷺の攻撃の助けとなるように

っばか、庇うなよ
お前は攻撃に専念しろっての


忍冬・氷鷺
綾華(f01194)と

例え姿形を変えたとしても
何度でも巡り会えるのだろう
想う気持ちが永久に在り続ける限り

そうであったら幸せだな。と
並ぶ綾華を見遣り、件の伝説を思い返し

――故に、お前達も在るべき場所へ還らねば
(骸の眠る海でも其処で帰りを待つ者は、在るのだと)

背に掛かる重みに瞠目し
けれど振り返る事はせず
思いは確かに届いているから

(全く、お前らしい)

だから俺はあえて口にしよう
花に託す事なく、己の言葉で伝えよう

――綾華、背は任せたぞ

対峙する黒鱗の鎧を砕く様、黒爪を翳し
傷口をえぐる様に氷刃を見舞う
危険が迫っていれば身を挺して友をかばう

傷つけさせはしない
この荒野に咲く花も、込められた想いも、―お前も、な



 例え姿形を変えたとしても、何度でも巡り会えるのだろう。
 想う気持ちが、永久に在り続ける限り。
「……そうであったら幸せだな」
 隣に並んで立つ浮世・綾華を見遣り、忍冬・氷鷺が思い返すのは勇者と少女の物語。
「……、そーだな、」
 ――その人の弱さを受け入れてまで、想い合って、信じてたって?
(「……そんなのもう、弱くなんかねーじゃん」)
 泡のように浮かんでは、大きな波紋を広げる想い。それを胸に留めながら、綾華は未だ弱い己の心に自嘲する。
 本当に、何度でも。巡り会うことが叶うのならば、それは、――。
 ――何にせよ、この地に綻ぶ花たちに罪はない。
 ゆえに今はただ、荒野に秘めやかに咲く白き花が散らぬよう力を尽くすだけと、綾華は手にした鳥籠を揺らす。
 深い夜の色彩を持つ、躯の海より現れし異形の獣。
 低く唸りながら獲物と見做した二人を囲むナーガクーガたちへ、氷鷺は静かに告げる。
「――故に、お前達も在るべき場所へ還らねば」
 例え、骸の眠る海でも。其処で帰りを待つ者は、在るのだから。
 暗闇に光る宝石の双眸。一つ、二つ、三つ――数えたところで、意味はない。
 自分たち以外の“獣”は、全て在るべき場所へと還すだけだ。
 預けた背の先に感じる確かな気配に、綾華は笑む。
 言葉にせずとも自然と重なる影こそが、何よりの信頼の証。

 ふと、背に掛かる重みに氷鷺は瞠目した。
 こうして背を預けて戦うことは初めてではない。ゆえに、預けられた背から伝う想いも、氷鷺には確かに届いている。
(「……全く、お前らしい」)
 だから振り返ることはせず、けれど敢えて氷鷺は口にした。
 花に託さず、己の言葉で。
「――綾華、背は任せたぞ」
 そうして紡がれた音と籠められた想いに、綾華もまた瞠目し、それから苦く笑った。
「全く、お前ってやつは――」
 込み上げる幾許かの面映さは今は胸裡に押し込めて。手にした鳥籠に紅ひとしずく、忽ちの内に編み上げられた複製品の鳥籠たちが無数の刃に姿を変えて星降る夜空に舞い踊る。
 はらり、白い花弁を溢しながら降り注ぐ刃がその動きを鈍らせれば、すかさず氷鷺が獣たちの体を覆う黒鱗の鎧を砕かんと、雪華の先に伸びる黒爪を翳した。
「――切り裂け」
 刹那、大気中の水分が無数の氷刃となって、氷毒滴る黒爪と共にナーガクーガへ襲いかかる。
(「あの花が綺麗だと思ったのは――」)
 伝説に記された通りの花だったからだというのもあるだろう。けれど、それ以上に――。
 綾華はちらりと氷鷺の背を見やり、知らず穏やかな笑みを浮かべる。
(「……きっとお前が、見つけたから」)
 天と地の境目すら曖昧な世界。見渡す限りの大地に蔓延る獣たちを一瞥し、綾華は黒き鍵刀を振るう。
 ひらりと、紅の衣を翻せば獣たちの宝石のような眸が一斉に綾華へと向けられた。
 振るう刃は斬るふりをしながら獣の爪を弾き、その隙を逃さず氷鷺の黒爪が畳み掛ける。
「……っ!」
 ――その時、闇に紛れて死角から躍りかかってきたナーガクーガの姿に、綾華は一瞬反応が遅れた。
 咄嗟に鍵刀で受け流そうとしたが間に合わず、鋭い爪に裂かれるかと思った次の瞬間。
「――綾華、」
 綾華の視界を、氷鷺の背が覆っていた。

 自然と身体が動いていた。ただ、それだけのこと。
 身を裂く痛みに氷鷺は思わず眉を寄せるが、耐えられぬものではない。
 抉るように氷爪を繰り出せば、貫かれた獣は呆気なく躯の海へと還る。
「っばか、庇うなよ。お前は攻撃に専念しろっての」
 綾華の声に混ざる案じるような色に、意識せず目元が緩む。
「気にするな」
「気にするって。きれーな顔に傷つけるワケにもいかないでしょ」
「安心しろ、顔は無事だ」
「そーだけどさぁ!」
 そんな軽口を叩き合いながら、二人は、再び獣たちと相対する。

 ――誰にも、何にも、傷つけさせはしない。
 この荒野に咲く花も、込められた想いも、――それから、
(「……お前も、な」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エレステイル・テイル
リオくん(f14030)と
さっきはわたげが飛びついちゃってごめんねー
キレイな人を見て、ふんすふんすしてる……

みちしるべ……そっか、大切な道なのかな。
だったら、キレイなここ、きちんと守らなきゃ!
くろくん、いくよ!
リオくんがうちやすいように、ボクらががんばらないとねっ

ガジェットは星型。キラキラさせて、おびきよせるよ。
近づいたらぷしゅーってケムリ出して、ばくはつするんだよ!
ボクもちょこちょこ槍をもって攻撃するよ。
加速しても、カンでよけるよ!
ひとまとめにできたら、楽だよね?
あとは、リオくんよろしくね!

きらきら星の世界で、ゆっくりおやすみなさい。
……ところで、わたげがずっとリオくんしか見てない気がするよ


リオ・フェンブロー
レディ・エレステイル(f14363)と。

少し驚きましたが……なるほど、わたげというのですね。
花を探した先で、心強いレディと可愛らしい仲間たちに出会えました

私も頑張りましょう
あの花は、若しかしたら道標なのかもしれないですね
勇者の…

さて、レディのエスコートであれば万全に行いましょう

アンサラー を起動。私は援護射撃をまずは主体に
敵の動きは良くみて、声をかけましょう

あちらの攻撃は砲撃で迎え撃ちましょうか
防御か、多少、体制は崩せましょう

えぇ、ありがとうございます。レディ
その姿の微笑ましさに癒されながら

骸の獣を穿て、アンサラー 。
良き眠りのあらんことを。


しかし、バーニィからの視線を感じますね……



「みゅみゅっ! みゅいー!」
 ――それは、星降る荒野での、ささやかな邂逅のひととき。
「さっきはわたげが飛びついちゃってごめんねー」
「少し驚きましたが……なるほど、そちらの可愛らしいバーニィはわたげというのですね」
 ちょうどよい岩場に腰を落ち着けたリオ・フェンブローが穏やかに笑って見つめる先。
「みゅい! みゅみゅい!!」
 エレステイル・テイルの腕の中、わたげはぴん! と立てた耳をリオへ向けながら、今にも飛び出しそうな勢いでふんすふんすと鼻を鳴らしていた。
 心なしかわたげの瞳がきらきらと輝いているようにも見えるのは、空に地面にと瞬く星の光が映り込んでいるせい――だけではないような気がしたが、それはさておき。
 花を探して巡り逢った二人と二匹の元にも、獣たちの気配は忍び寄っていた。
 グルル、と響く唸り声。艶消しの鱗に覆われた体に、宝石のような目や牙、そして角を持つ異形の獣――ナーガクーガ。
「あっ! こわーいまものさん! リオくん、たたかわなくっちゃ!」
「ええ、レディの前で無様な……格好悪い所を見せる訳には行きませんからね。私も頑張りましょう」
 リオは穏やかに微笑んでから立ち上がり、ふと空を見上げる。
 煌めく星たちを青の瞳に映しながら、ぽつりと。
「あの花は、若しかしたら道標なのかもしれないですね。勇者の――……」
「みちしるべ……そっか、大切な道なのかな。だったら、キレイなここ、きちんと守らなきゃ!」
 リオの言葉を反芻し、エレステイルはきりりと眉を吊り上げた。
「くろくん、いくよ! わたげは、あぶないからじっとしてて!」
「みゅ!」
 手にしたオニキスの短槍は、戦う意志をしっかりとエレステイルに伝え。わたげも言いつけ通り身を伏せて、じっと獣たちを見つめていた。
「リオくんがうちやすいように、がんばるねっ」
 竜の少女と可愛らしくも勇ましい小さな仲間たちを、リオは頼もしげに見やる。
「いくよー! きらきらー!」
 高く掲げられたエレステイルの手から、いくつもの星が飛び出して辺りに散る。
 きらきら輝くガジェットの星に、ナーガクーガたちの視線が引き寄せられているのがわかった。
 そうしてガジェットの星に飛び掛かったナーガクーガが突如噴き出した煙に驚いて飛び退るよりも早く、星が大きく爆ぜる。
「さて、レディのエスコートであれば万全に行いましょう」
 ぽつりと声を落とし、リオは古き伝承にその名の祖を持つ漆黒のアームドフォート――アンサラーを起動させると、敵の動きをつぶさに追いながら、跳び掛かってきたナーガクーガを砲撃で迎え撃つ。
 なるべくエレステイルに、そしてわたげに獣の牙や爪が及ばぬよう、彼女らから遠ざけるように角や目を狙い、守りや体勢を崩して。
 その間にも、竜槍を振るって戦うエレステイルの星たちは、きらきら輝いて空中を飛び回りながら、ナーガクーガたちを一箇所に集めていた。
 一箇所に集めれば、リオも狙いを定めやすいだろう――そうして機は熟したとばかりに弾む声で呼び掛ける。
「あとは、リオくんよろしくね!」
「えぇ、ありがとうございます。レディ」
 懸命に戦うその姿の微笑ましさに癒されながら、リオはリミッターを解除し、全武装の一斉発射を放った。
「骸の獣を穿て、アンサラー。――良き眠りのあらんことを」
 砲塔が熱を帯び、瞬く間に膨れ上がった光がナーガクーガの群れを吹き飛ばす。
 轟音と共に弾けた眩い光にエレステイルは思わず目を瞑り――少しの間。そろそろと開いた時には、全てが終わっていた。
 躯の海より現れし獣たちは、再び、躯の海へ。星眠る荒野に静寂が戻ったのを確かめてから、リオは静かに武装を解いた。
「きらきら星の世界で、ゆっくりおやすみなさい。……リオくん、やったね!」
「ええ、レディたちの力添えがあってこその勝利です」

 そして、二人はふと、気づいてしまった。
(「……ところで、わたげがずっとリオくんしか見てない気がするよ」)
(「しかし、それにしてもバーニィからの視線を感じますね……?」)
「みゅいー……♪」
 岩陰に身を潜めていたわたげの瞳が、これでもかとばかりにきらきらしながらリオを熱く見つめていたことに――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
櫻さん(f01441)と

愛しいひとが帰ってきぃひん
此の命尽きるまで
其の後の生涯を耐え忍ぶように
…うちやったら、どないなってしまうんやろ
経験したことあらへんけど
想像しただけで胸が、痛い…

俊敏さを阻害するように
桜吹雪を彼の獣の視界へ纏わりつかせ
《花漣》が形成する氷矢で
一点集中、石眼を狙います

堅牢なる鱗を崩す為
聲無き謡を奏でましょう
月神の輝は宵の毒
遮るものなどあらへん此の地
光と勘づく隙すら与えず生気を奪い
――今です、櫻さん

等しく幽世へ向かう魂には安寧を祈り
此の身を案じてくれはる其の人に向き直れば、微笑んで
櫻さんにも、いつか大切に想えるひとが出来たらええですね
だってあんさんはこないに優しい御人やもの


風切・櫻
東雲殿(f00865)と共に

想いを愛しい者に預け、己は死地へと赴くか
実を言うとな、東雲殿
おれはそうした感情に疎い
どこまで行っても人斬り刀である故に

年若い乙女たるお主なら、判るだろうか?

さ、無粋な獣が現れたようだ
片付けねばなるまい

現れた獣から東雲殿を守るように前へ出る
羽織を広げ獣を挑発するように

飛び掛かりを残像、早業。影の如く躱し
東雲殿が穿った隙を狙い刃を振るう

躱したか?
否、これなるは【櫻火一片】
刃より零れ舞う桜花/火が獣を焼き尽くす
荒らさず、足掻かず、灰となれ

野は、花は焼かぬよ
星々の大地を、そして想いの花星を消す訳にはいかぬ

――はは、買い被り過ぎだ、東雲殿
だが……そう言って貰えて、嬉しくも思う



「想いを愛しい者に預け、己は死地へと赴く――か」
 風切・櫻は独りごちるように呟いて、深く、息を吐き出した。
「実を言うとな、東雲殿。おれはそうした感情に疎い。どこまで行っても人斬り刀である故に。……年若い乙女たるお主なら、判るだろうか?」
 櫻の問う声に、東雲・咲夜は悲しげに目を伏せる。
 ――愛しい人が、帰ってこない。
 この命尽きるまで、その後の生涯を耐え忍ぶように生きる。
(「……うちやったら、どないなってしまうんやろ」)
 今生の別れなど、咲夜には経験のないものだ。
 けれど、想像しただけで――胸がちくりと、否、それ以上に痛くなる。
 咲夜の憂いを帯びた表情に、櫻は察せられるものがあったのだろう。深く尋ねることはせず、静かに刀を――己が依代たる風切の刃を抜き放った。
「さ、無粋な獣が現れたようだ。片付けねばなるまい」
 艶消しの鱗に、星の光を弾く黒曜の角と爪。そして、宝石のような輝きを映して光る双眸。
 現れたナーガクーガの群れから咲夜を守るように、櫻は前へ出る。
 桜舞う白き羽織を広げれば、それを挑発と取ったらしい獣たちが櫻へと狙いを定めた。
 咆哮を上げながら飛び掛かってきたナーガクーガの爪が引き裂いたのは櫻の残像。掻き消えた獲物に戸惑う獣の、一瞬の隙をついて繰り出された刀の切っ先が、貼り合わされた鱗の隙間からその額を穿つ。
 獣たちの素早い動きを阻むべく、咲夜は桜吹雪で視界を覆った。
 花漣、と名を呼び念じれば、花と戯れる風と水の神霊が、ナーガクーガの宝石めいた瞳目掛けて氷の矢を放つ。
 目を潰された獣の悲鳴が響く。その隙を逃さず、櫻は刀で斬り捨てる。

 三貴神 我らが月 常世の闇より慈しみ揺蕩いませ 恐み恐みも白す――。

 堅牢なる鱗を崩すため、咲夜が奏でるは現世と幽世の門を開く聲無き謡。
 すると、柔らかく溢れた月の光に照らされたナーガクーガたちが、途端に苦しみ始めた。
 それは、宵の毒たる月神の輝き。呼吸を乱し、視界を塞ぐ毒が籠められた淡い月光。
「――今です、櫻さん」
 声に応えて踏み出した櫻は、振るう刀に桜色の炎を躍らせた。
「舞い散る花弁は散華の証。そら、燃えるが良い」
 刀より毀れ舞う桜の花弁が、獣たちへ葬送の火を灯す。
「荒らさず、足掻かず、灰となれ」
 響き渡る咆哮さえも飲み込んで、桜花の炎は獣たちだけを飲み込んで、焼き尽くす――。

「大事はないか、東雲殿」
 星々の大地に、今ひとたびの静寂が戻る。
 等しく幽世へ向かう魂に安寧を祈り、咲夜はこちらを案じる櫻へ向き直ると、淡く微笑んだ。
「……櫻さんにも、いつか大切に想えるひとが出来たらええですね。だってあんさんは、こないに優しい御人やもの」
 ひとを斬る刀でありながらひとを想う心を持つ彼が、想いを預けられるような相手に、いつか出逢えればいい、と。
「――はは、買い被り過ぎだ、東雲殿。だが……そう言って貰えて、嬉しくも思う」
 咲夜が口にした願いに櫻は穏やかに微笑み返し、星の瞬く空をゆるりと見上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
エスチーカ(f00890)と


どっちかっていうとあれギラギラしてない?
……まあ、手早く片付けようか
この景色をエスチーカが守りたいっていうなら
それは、悪いことじゃないと思うしさ

戦場全体の敵数、敵動作をざっと把握
咆哮を上げようとしている敵から順次狙撃
但し、エスチーカが被弾しそうだったら
そちらの援護を最優先

狙えるなら眉間、或いは喉、関節部や腹の部分など
構造的に脆く、的確に動きを阻害出来る箇所を狙い
【抑止の楔】による敵行動阻害・攻撃力減殺
叶うなら敵ユーベルコードの無力化を狙う

間に合わず強化が成された相手へも同様に
攻撃力の減少を狙い【抑止の楔】を
隙を見せた相手からエスチーカが倒してくれるだろう
信用してるぜ


エスチーカ・アムグラド
匡お兄さん(f01612)と!

もうっ! 折角綺麗な景色なのに……!
きらきらしてるのはお花やここの土だけで間に合っていますから!

まずは匡お兄さんが射撃に集中できるように、チーカがあちこち飛び回って敵を引きつけますっ!【空中戦+おびき寄せ】
ひゃー……! あっちもこっちも怒ったり吠えたりでおっかない……!
だけど躱すのに集中すればチーカにだってできるはず!【勇気+鼓舞】
匡お兄さんの攻撃で動きを止めた敵を見つけたら、【一閃】をお見舞いして確実に数を減らしていきますよ!

動きだけで引き付けきれなかった敵にも【一閃】でこちらに注意を引きます!
よそ見しちゃだめですよっ! あなたたちの相手はチーカなんですからっ!



「もうっ! 折角綺麗な景色なのに……! きらきらしてるのはお花やここの土だけで間に合っていますから!」
「どっちかっていうとあれギラギラしてない?」
 大きく頬を膨らませるエスチーカ・アムグラドの傍らで、鳴宮・匡はどこか冷静にそう零しながら、目の前に現れた獣たちを見つめていた。
 艶消しの鱗に覆われた体躯に、鋭い爪と角を生やした夜色の獣、ナーガクーガ。宝石めいた瞳を持つ、躯の海より現れしもの。
「……まあ、手早く片付けようか」
 どこか寂しくも美しい、空と大地に星が煌めくこの景色を、勇敢なフェアリーの少女が守りたいと願うのなら。
 それは、きっと悪いことではないと、そう思うから。
 そうしている間にも早速翅を震わせて飛び出していったエスチーカの背をちらりと見送り、匡はすぐさま戦場全体へと視線を走らせる。
 敵の数は決して少なくはない、が、颯爽と飛び回るエスチーカの翅の、降る星のような煌めきに気を取られている様子ではあった。
 ふと、匡の瞳が捉えたのは、咆哮を上げるような仕草。吸い込まれた息が声に変わるより先に、匡はアサルトライフルで薙ぎ払っていく。
 地上に散る火花に空中のエスチーカはぴゃっと大きく飛び上がって、それから恐る恐るこちらへ向けられる――敵意に満ちた瞳にふるりと身体を震わせた。
「ひゃー……! あっちもこっちも怒ったり吠えたりでおっかない……!」
 ひとの身で考えれば豹や虎、あるいは獅子のような獣でも、フェアリーであるエスチーカには像のようなものだ。捕まって飲み込まれてしまえば、それで終わりだろう。
「でも、チーカにだってできるはず!」
 けれど、エスチーカは勇気を振り絞り、己の心を奮い立たせて、匡が射撃に集中できるように――一体でも多く引きつけようと懸命に飛び回っていた。
「動かないでくれると楽なんだけどな」
 匡はナーガクーガの眉間や喉、関節部や腹の部分、それから頭の角などを狙って的確に射撃を繰り返し、その動きを封じていく。
「匡お兄さんっ、」
 その時、離れた距離からの匡の射撃の軌道を辿るように、ナーガクーガが頭を擡げるのがエスチーカの目に映った。
 だが、匡はそれに気づいた気配がない。本当に気づいていないのか、否、彼ならば気づかぬはずはないとエスチーカは思う。
 気づいていて、その上で――自分を信じ、託してくれているのだ。
 ならばその期待に応えぬ訳にはいかないだろう。エスチーカはすかさずアムグラド家に代々伝わる剣を振るい、秘められた剣気を開放する。
「よそ見しちゃだめですよっ! あなたたちの相手はチーカなんですからっ!」
 すると、距離と物理抵抗を無視した一閃が、まるで刀身が伸びたかのように遠くにいたナーガクーガを斬った。
 二人は息を合わせ、着実にナーガクーガたちを躯の海へ還していく。
 そして、全てが終わったなら。二人は再び静寂に包まれた世界で目にすることだろう。
 満天の星、地上の星。遍く散りばめられた星たちの、美しい想いの煌めきを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神埜・常盤
【灰】

今宵ゆるりと積み上げてきた僕等の軌跡を
此処で邪魔される訳には行かないよねェ
狩も冒険の醍醐味だ、愉しもうじゃないか

足止め大変助かるよ、エンジ君
君の賢い友人も頼もしい限りだ
それじゃあ君達がくれた機会を存分に活かすとしよう

夜王の権能で炎を纏った流星群を喚び
全力魔法で広範囲に落して仕舞おう
綾君が招く鳳凰の赤き羽搏きと合わせたならば
花の如き此の焔の煌めきは
ーーあァ、獣達の瞳にも見劣りせぬ美しさ

仲間へ向かってくる獣は怪力で捕まえ
禍の舌にて吸血して仕舞おう

ミミ君が掬った星の砂が花の剣に転じれば
お見事と拍手喝采!
此の地にぴったりで浪漫があるなァ
耳と心を癒す唄声はリリヤ君のものかね
お陰で皆無事に帰れそうだ


エンジ・カラカ
【灰】

おやおやおやー?
静かな場所に獣が紛れ込んだのカ。
毎日が冒険ってのも案外イイもんだなァ……。
踏み込んだのは確かにコチラだ。
でもなァ……まーだまだ冒険はしたい。

ミンナ行けるカ?
これだけ数がいればたーいへんだ。
コレは支援に徹する。誘き寄せ、敵の足止めは任せてくれ

ハロゥハロゥ
ご機嫌いかがー?コレはきらきらが見れてとーっても元気元気。
だからあーそびましょ。

賢い君、賢い君、足止めはできるよなァ……。
相棒の拷問器具と共に敵の誘き寄せを行う
ほらほら、敵サンがきたきた。
動きを止めている間にやってくれ。
ミンナならできるサ


都槻・綾
【灰】

命ある限りは冒険者――
存分に生を楽しんでこそ、だと思うから

第六感で敵挙動を見切り
皆へ声を掛け
連携の助けに

エンジさんの頼もしき支援へ
礼の笑み浮かべ
掲げる符で中空に描く五芒星
破魔の祈りを籠め属性攻撃力を高めるしるし

常盤さんが降らせた流星群と共に宝石獣目掛けて疾駆するのは
高速詠唱にて紡いだ焔纏いし羽搏きの、鳥葬
朗々詠いを響かせた範囲攻撃
二回攻撃で息つく間も与えず畳み掛ける

星々と鳳凰と
煌々耀う炎の共演の美しさ
揺らめくひかりは、ちりり火の粉が舞う様は、
絢爛に咲き誇る華のようにも見えるだろうか

ミミさんの花剣も
リリヤさんの癒しの歌も
煌めき美しい

再び骸海へ航り逝くもの達への餞に
皆で昏き航路を照らし出そう


深海・揺瑚
最後も【灰】で一緒に

冒険には危険がつきものだもの
ああ、でもせっかくこの素敵な場所を楽しんでいたのに
身勝手なのはお互いさま
もう少し楽しみたいしね、私もいくわ

筋骨隆々とは見えないけど、どうも随分と頼もしい面々のようで
リリヤのおかげで回復も充分そうね
一歩引いたところから、ゆったりと全体を見て
もったいないもの、あぶれた分と残った分を拾っていくわ
この場限りのとっておき
きらきら光る地面を掬って宙へと放って
光る花のような剣になるかもね

ちょっとあの獣、一匹ぐらい捕まえておけば売れたかしら


リリヤ・ベル
【灰】

お供いたします、ね。
お邪魔にはならないよう、努めましょう。
ちいさくとも、ちゃんとできるのです。

わたくしは、皆さまの傷を癒やすよう、うたを紡ぎましょう。

にぎやかしい町並。
いろとりどりの花。
ほしふるよるの光。
きらきらとみちる、物語。
皆で見たもの、冒険したこと。

星より燦めくひかりが眩しい。
皆様が獣と対する姿は、いつかに読んだ物語のよう。
違うのは、これが過去ではないということ。

いまもまだ、冒険の最中なのです。
遠く遠くの未来で語られるより先に、
うたに束ねて、力に変えて。

きっと勇者さまもそうだったように、
帰る場所があるのです。
わたくしたちも、――けものたちも。
ちゃんと、帰るべき場所へ、帰りましょう。



 果てのない、浪漫に満ちた冒険の道行き。
 行く手に現れたのは、夜を纏う骸の海の獣たち。
「おやおやおやー? 静かな場所に獣が紛れ込んだのカ」
 毎日が冒険というのも案外良いものだ――そう思いかけていた所に現れた招かれざる獣たちに、エンジ・カラカはきょとんと目を瞬かせてから、微かに口の端を釣り上げた。
「踏み込んだのは確かにコチラだ。でもなァ……まーだまだ冒険はしたい」
「今宵ゆるりと積み上げてきた僕等の軌跡を、此処で邪魔される訳には行かないよねェ」
 狩りも冒険の醍醐味と、神埜・常盤は獣たちを前に愉しげに笑う。
 ――冒険には危険がつきもの。
「ああ、でもせっかくこの素敵な場所を楽しんでいたのに」
 身勝手なのはお互いさまよと深海・揺瑚は獣たちの敵意に満ちた瞳を射るように見返して。
「せっかくの冒険なんだもの。もう少し楽しみたいし、私もいくわ」
「ミンナ行けるカ? これだけ数がいればたーいへんだ」
 ゆえに己は支援に徹すると、エンジは一歩前に出て。
「お供いたします、ね。ちいさくとも、ちゃんとできるのです」
 エンジの声に、リリヤ・ベルはそっと頷き、前で戦う皆の邪魔にならぬよう後方へ。
「ハロゥハロゥ。ご機嫌いかがー? コレはきらきらが見れてとーっても元気元気。――だからあーそびましょ」
 上機嫌な声で、エンジは告げる。その手には賢い君と呼ぶ相棒の拷問具。
「賢い君、賢い君、足止めはできるよなァ……」
 賢い君は黙したまま。けれどエンジの声に応えるように毒帯びた宝石をばら撒き、赤い糸を獣たちへ伸ばした。
 まるで誘われるようにやって来た獣たちが、毒を吸い込んで噎せ返る。
「ほらほら、敵サンがきたきた。動きを止めている間にやってくれ。ミンナならできるサ」
 エンジの的確な足止めに常盤は助かるよと笑って、
「君の賢い友人も頼もしい限りだ。それじゃあ君達がくれた機会を存分に活かすとしよう」
 ――忌まわしき我が権能の一端、とくとご覧あれ。
 常盤の声が高らかに響いた刹那、炎を纏った流星群が獣たちの頭上から降り注いだ。
 ――命ある限りは冒険者。存分に生を楽しんでこそだと思うから。
 決して前に出るではなく、けれど的確に敵を誘き寄せるように立ち回るエンジに笑み向けて、都槻・綾は掲げる符で中空に五芒星を描き出す。
 それは己の力を高めるもの。獣の咆哮が響くより先に、常盤が空より招いた星たちの姿を捉えれば、吟ずるように言の葉を唇に乗せて。
「時の歪みに彷徨いし御魂へ、航り逝く路を標さむ、」
 羽搏くは焔の彩り纏いし鳳凰の群れ。
 煌々と輝くふたつの炎の競演。
 揺らめくひかりは、ちりり火の粉が舞う様は、絢爛に咲き誇る華のようにも見えるだろうか。
 綾が招いた鳳凰の赤き羽搏きと合わさって、艶やかな華の如き焔の煌めきに獣たちが次々に沈んでいく。
 獣たちの宝石めいた瞳にも見劣りせぬ美しさに、常盤は知らず感嘆の息を落とした。
 筋骨隆々には見えないけど、男たちは随分と頼もしい面々のようで。
 幼さ以上に儚い印象を受けるリリヤも、皆を支える歌声は頼もしい限りだと揺瑚は思う。
 満足げな笑みひとつ、一歩引いたところからゆったりと全体を見て、揺瑚が狙うのは“残り物”。
 仕留めきれずにあぶれた分と、猛攻から辛くも逃れて残った分と。それだけでも獲物には困らない。
「――この場限りの、とっておきよ」
 そう言うと、揺瑚はその場に身を屈め、きらきら煌めく地面の砂を掬い上げて空へと放った。
 海水を纏う水に星砂の煌めきが混ざり合い、珠玉の剣へと姿を変えて、常盤と綾、二人が織りなす炎から逃れた手負いの獣を刺し穿つ。
 それはさながら星降る荒野に咲く花のよう。
 まるでこの大地に相応しいその姿に浪漫を覚えながら、常盤はお見事、と拍手喝采を。
(「わたくしは、皆さまの傷を癒やすよう、うたを紡ぎましょう」)
 リリヤの澄んだ歌声が、夜風に乗って戦場へと響き渡る。
 にぎやかしい町並。いろとりどりの花。
 ほしふるよるの光。きらきらとみちる、物語。
 ――皆で見たもの、冒険したこと。
 リリヤが歌い紡ぐのは、皆で辿った旅路の軌跡。
「悪いけど、お触りは禁止なんだよねェ」
 その時不意にリリヤへ踊りかかった獣を常盤の腕が掴み取る。
 まるで花を摘むように音もなく、されど怪力乗せた手は的確に喉元を捉え離さない。
 そのまま唇を寄せ、禍の朱い舌が血を啜れば――大きく跳ねた獣の体からふっと力が抜け落ちた。
「っ、ありがとう、ございます、トキワさま」
「気にすることはない。愛らしいお嬢さんに怪我をさせる訳にはいかないからね」
 リリヤに笑み返し、常盤は未だ残る獣たちへと向き直ると、ふと胸中でひとりごちた。
(「……お陰で皆、無事に帰れそうだ」)
 再び響き始めたリリヤの歌声が、傷も心も癒してくれるから。
 骸の海へ航り逝くものへの餞に、皆で昏き航路を照らし出そう。
 揺瑚の花剣もリリヤの癒しの歌も、各々に煌めいて美しいと綾も笑み深めては朗々と詠いを響かせながら、息つく間も与えず畳み掛けてゆく。
 星より燦めくひかりが眩しい。
 皆が獣と相対する姿は、いつか読んだ物語のようにリリヤの翠の眸に映る。
 物語と違うのは、これが過去ではないということ。
 この先に続く、未来へ繋がるものだということ。
 ――そう、今もまだ、冒険の最中なのだ。
 遠く遠い未来で、何処かの誰かに語られるよりも先に、リリヤは歌に束ねて、力に変えて、“今”を紡ぐ――。
(「……きっと、勇者さまもそうだったように、帰る場所があるのです」)
 己にも、皆にも、そして、獣たちにも。
 だから、リリヤは紡ぐ歌に一つ、願いを込める。
 帰るべき場所へ、誰もが帰れるように。

(「……ちょっとあの獣、一匹ぐらい捕まえておけば売れるかしら」)
 なんて揺瑚は思うけれど、全ては骸の海より生まれしもの。
 骸の海に還ってしまえば、後には何も残らない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シゥレカエレカ・スプートニク
夫、ギド(f00088)と



…ユーリア
妖精のあなたも、きっと強いひとだったのでしょう

さっきはああ言ったけど、
本当に待っていられるかなんて……自信がないの
わたしはあなたみたいに強くいられる?
あなたみたいに、寂しさだけに暮れずに―――…

わたし、強くなりたいの
ユーリア、あなたに逢ってみたかったな


――…ねえギド
わたし、あのお花を流してあげたい
そうすることが彼女にとっての生きた証なら…
お手伝いを、してくれる?

呼び出すは水の精霊、演目は直射の星光
空気中の水分を操って、煌めきを直接彼らにお届けするわ
この目くらましはあなたにしか届かない
ひとの恋路を邪魔する子は、わたしが邪魔をしちゃうんだから!


ギド・スプートニク
シゥレカエレカ/f04551

私が強く在りたいと願うのは
単に我々の居場所を守りたいという理由もあるが

本を正せば、ひとえにきみに相応しい存在でありたいと志すが故

腕っぷしだけが強さではない
見ず知らずの者にも躊躇うことなくその手を差し伸べる――きみのそんな優しさに触れたからこそ、私はいま此処に居る

祭りのやり直しか
構わぬ、好きにするといい

シゥレカエレカの目眩ましに乗じ、敵を血鎖にて拘束

この地を血で汚させはすまい

拘束した敵を鉄の処女にて収監し、圧殺
血は零さぬよう、鉄の処女ごと火にくべる

敵を葬り彼女の元へと戻ろうとした際、
足元に光る何かを見つけられたなら

私はそれをそっと手に取り、彼女への贈り物としよう



(「……ユーリア。妖精のあなたも、きっと強いひとだったのでしょう」)
 シゥレカエレカ・スプートニクは二色の瞳を悲しげに揺らし、遥かな過去へと想いを馳せる。
 さっきは待っているなんて言ったけれど、本当に待っていられるか、シゥレカエレカには自信がなくて。
 ひとりぼっちになってしまったら寂しくて悲しくて、きっと毎日泣いてしまうだろう。それこそ、へなへなのしょぼしょぼになってしまうくらいに。
 それでも、ユーリアは待ち続けた。彼女にはそれだけの強さと覚悟が、あったのだ。
 だから――。
(「わたしも、あなたみたいに強くいられる? あなたみたいに、寂しさだけに暮れずに――…」)
 ほんの少しの間だけ、願うように目を伏せて。シゥレカエレカは傍らに立つ人の名を呼んだ。
「ギド、……わたし、強くなりたいの」
 ぽつりと毀れた願いの音に、ギド・スプートニクの眼差しが向けられる。
「……私が強く在りたいと願うのは、単に我々の居場所を守りたいという理由もあるが」
 言いながらギドはそっと指先を伸ばし、シゥレカエレカの頬を撫でる。
「本を正せば、ひとえにきみに相応しい存在でありたいと志すが故」
「ギド……」
「腕っぷしだけが強さではない。見ず知らずの者にも躊躇うことなくその手を差し伸べる――きみのそんな優しさに触れたからこそ、私はいま此処に居る」
 シゥレカエレカの持つ優しさもまた、強さだとギドは言う。
 それを知らなければ、ギドは、誰かのために剣を取ることを知らぬままだっただろう。
 シゥレカエレカの強さが、ギドを変えたのだ。優しき強さを持つ彼女のために、己もまた、強く在りたいと。
「――…ねえギド、わたし、あのお花を流してあげたい。お手伝いを、してくれる?」
 そうすることが、彼女にとっての生きた証なら。彼女の想いに寄り添いたいと、思ったのだ。
「祭りのやり直しか。構わぬ、好きにするといい」
 シゥレカエレカの願いに、ギドは当然のように頷く。
(「……ユーリア、あなたに逢ってみたかったな」)
 ――暗闇に紛れて届いた気配に、二人が向き直るのは同時だった。
 その先には荒野の静寂を乱す招かれざるもの――夜の色彩を持つ獣たち。
 音もなく羽ばたいたシゥレカエレカは、綺羅星の軌跡を描いて舞いながらタクトを振るう。
「ひとの恋路を邪魔する子は、わたしが邪魔をしちゃうんだから!」
 呼び出すは水の精霊、演目は直射の星光。
 タクトの導きに従って歌いながら舞い踊る精霊たちが空気中の水分と星の光を集め、反射して、眩いばかりの輝きを獣たちへと注ぎ込む。
 光に目を灼かれた獣たちは声を上げようと口を開くけれど、それよりも先にギドが伸ばした血鎖がその身を絡め取っていた。
「この地を血で汚させはすまい」
 拘束された獣は鉄の処女に囚えられ、声を上げる間もなく圧し潰される。
 鉄の処女はそのまま業火の中に消え、大地には血の一滴すら溢れることはなかった。

 ――やがて、今ひとたびの静寂が、星降る荒野に舞い戻る。
「……?」
 深く息を吐き出し、シゥレカエレカの元へ戻ろうとしたギドの視界に、ふわり、灯る光が過ぎる。
「どうしたの、ギド?」
 自分とは反対の方に向かい、突き出た岩の前で膝を折って屈み込んだ夫の背に、何かあったのかとシゥレカエレカは星の尾を引いて飛んでゆく。
「シゥレカエレカ、これを、きみに」
「まあ!」
 振り返ったギドの手には、星の光を帯びて淡く輝く白い花。
 誰よりも愛するきみに、――心からの想いを、愛を籠めて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
全く…斯様にも美しい夜というに
オブリビオンとは熟、無粋な連中よな

往くぞジャバウォック
見事彼奴等を討ち滅ぼしてみせよ
【夢より這い出し混沌】にて空中戦を仕掛ける
決して勇者の想いを蹂躙させぬよう気を配りつつ
然し獣共には一切容赦せず噛み砕く
私の使い魔たる貴様ならば
範囲攻撃にて彼奴等を一掃するなぞ容易であろう?
安心せよ、支援くらいはしてやる
興奮状態にある獣を中心に麻痺魔術にて動きを封じよう
然すれば多少は戦い易くなるだろうて
死角より狙われぬよう聞き耳を用いる等して
周囲の状況に常に気を配り
危機を我が第六感が告げたならば
即座に対応出来るよう警戒は怠らぬ

全てを駆逐したならば再び花の元へ
――貴殿の心、守れたろうか



「全く……斯様にも美しい夜というに。オブリビオンとは熟、無粋な連中よな」
 星宿す瞳に灯る敵意の色を隠さずに、アルバ・アルフライラは居並ぶ獣たちを睥睨する。
 硬い鱗に覆われた体に、宝石めいた眸を持つの異形の獣。
 それがどのような存在であれ、骸の海から現れたものならば還すだけ。
「往くぞ、ジャバウォック。見事彼奴等を討ち滅ぼしてみせよ」
 そう言うと、アルバは再び黒の翼竜――ジャバウォックを駆り、空へと舞い上がった。
 遥かな高みより見下ろす獣たちは、ひどく矮小な存在に見える。もっとも、アルバにとってのオブリビオンはみな等しくそうではあるけれど。
 空へと向けられたナーガクーガの宝石のような瞳が、艶消しの鱗が弾いた星の光を浴びて煌めく。
 それを見たアルバは、己が胸裡に彼の獣たちを必ずや駆逐し尽くしてやろうという――揺るがぬ想いが滾るのを感じた。
 今宵この場に於いては、空に大地に散りばめられた星の輝きに、そして何より輝き綻ぶ想いの花に勝る光はなく。
 そしてその輝きも光も、骸の海の獣如きが抱いていいものではないのだから。
「私の使い魔たる貴様ならば、彼奴等を一掃するなぞ容易であろう?」
 不敵な笑みを浮かべながら告げるアルバの声に、空中を旋回していたジャバウォックは一直線に獣たち目掛け飛び込んでいく。
 それは、宛ら黒き彗星のように。されど、災厄の竜は勇者の想いを蹂躙することは決してなく。
 ジャバウォックは地上に群がるナーガクーガを鋭い牙で噛み砕き、長い尾を振り回して一息に薙ぎ払う。
 忽ちの内に激昂した獣たちは次々に怒りの咆哮を上げながら興奮した様子で躍りかかってくるが、アルバは無論、臆することなく流麗なる杖を振り翳した。
「安心せよ、支援くらいはしてやる」
 星追いの剣から迸る光が、獣たちの動きを封じ込める。アルバが招いた好機を逃さず、ジャバウォックが畳み掛ける。
 その時、アルバは死角から拾った足音に、反射的に声を上げていた。
「――翔けよ!」
 すぐさまジャバウォックへと命じれば、翼を大きく羽ばたかせて舞い上がると同時、襲い掛かってきたナーガクーガの爪が空を切った。
 ジャバウォックはそのままくるりと旋回して再び地上へと。残る獣たちを残らず屠ってゆく――。

 やがて、辺りに静寂が戻ったのを確かめると、アルバは再度、そよぐ風に揺れる花の元へ足を運んだ。
(「――貴殿の心、守れたろうか」)
 傍らに片膝をつき、アルバは静かに問いかける。
 想い灯し輝く花は応えるように、きらきらと瞬く星彩の光を放っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジナ・ラクスパー
自分のことみたいに淋しい顔がせつなくて
ラナ様(f06644)、これは想像のお話なのですけれど

心通い合わせたお二人だから
忘れたりできないことは、勇者様も分かっていたと思うのです
望みと逆を伝えるしかなくて
頷くしかなくても、きっと
相手の想いを信じて生ききった
そんな気がしませんか?

私なら追いかけるなんて言っていたのに
それは素敵だと思えた自分に瞬いて

ラナ様には触れさせません
花雨で眠りの淵へ
優しい願いの花が輝く場所に、血の花は咲かせません

願いが流れて届く日も、きっとこれで近づきますね
ラナ様は否定していたけれど
幸せ願う横顔は、もう誰かを浮かべているみたい
願いがその人に届きますようにと
隣でひとつ、願いを増やす


ラナ・スピラエア
ジナさん(f13458)と

忘れて、なんて…
そんな寂しいこと、言わないで欲しいです
私には、ユーリアさんの気持ちが分かる気がして
何だか、他人事では無いんです
だって、私だったら忘れられないですから

相手の想い…
その真っ直ぐな考えが本当に眩しくて
ジナさんは、すごいですね…
私も、そんな風に考えられるようになりたいです

前で頑張るジナさんを支えられるように
後ろからウィザード・ミサイルで燃やします
怪我をしたら癒雨ノ雫で癒しますね

再びここに、人が訪れるようになれば
光る花がまた、人々の祈りを乗せて川を流れるようになると思うんです
そうしたら…想いはきっと、届きますよね

自分よりも幸せを願える
そんな人に、私も出逢えたらな



「忘れて、なんて……そんな寂しいこと、言わないで欲しいです」
 勇者セドリックが託した願いに、ラナ・スピラエアは悲しげに苺色の瞳を揺らす。
 けれども、想い通わせた愛しき人を、二度と戻ることのなかったその人を、忘れてほしいと願われてもなお忘れずに、ユーリアは想い続けた。
 忘れないと言った彼女の気持ちが、ラナにはわかるような気がした。
「……何だか、他人事では無いんです。だって、私だったら忘れられないですから」
 まるで自分のことのように寂しげな顔が切なくて、ジナ・ラクスパーもまた、小さく眉を下げる。
 それでも、ジナは胸裡に浮かんだ想いをそのまま、ラナへの言葉に変えた。
「ラナ様、これは想像のお話なのですけれど。……心通い合わせたお二人だから、忘れたりできないことは、セドリック様も分かっていたと思うのです」
 忘れないでほしいと願っても、帰ることが出来なかったら。その願いで、ユーリアを縛り付けてしまうことになる。
 だからこそ、セドリックは望みとは逆の願いを伝えるしかなく、そしてその願いにユーリアが頷くしかなかったとしても、きっと――。
「ユーリア様は、セドリック様の想いを信じて最期まで生きた……そんな気がしませんか?」
 自分だったら我慢できずに追いかけるなんて言っていたのに、ふとそれは素敵だと思えたことに、ジナはぱちりと瞬いた。
(「私は……」)
「……ジナさんは、すごいですね。私も、そんな風に考えられるようになりたいです」
 ジナの真っ直ぐな考えは、ラナには本当に眩しく思えて。その時、ラナの心にも、ふわりと生まれかけた想いがあったのだけれど――。
 暗闇から現れた招かれざるものの気配に、二人が気づかぬはずはなかった。
 鋭い爪と角、そして艶消しの鱗を持つ夜色の獣、ナーガクーガ。宝石のような双眸が新たに見つけた獲物を前にぎらりと光っているのがわかる。
 小さく息を呑んだラナを守るように、ジナが一歩前に出る。藍水晶の花を戴く白銀の柄、そこに水の精霊の力を宿せば鉱石の花が忽ちの内に杖へと変じて。
「ラナ様には触れさせません。――優しい願いの花が輝く場所に、血の花は咲かせません」
 ナーガクーガたちへ放たれた水弾は、揺らがぬ想いの形。寸分違わず命中し霧散した水は青い花の雨となって降り注ぎ、獣たちをひとときの眠りの淵へと誘っていく。
 それは、優しい夢を見せるものでは決してないけれど。
 前で戦うジナの背を見つめ、ラナもきゅっと表情を引き締めると、掲げた杖の先から炎の矢を放った。
 水と炎、二つの力が混ざり合い、夜色の獣たちを翻弄する。
「再びここに、人が訪れるようになれば、光る花がまた、人々の祈りを乗せて川を流れるようになると思うんです」
 それは叶ったとしても、今よりも遠い未来の出来事だろう。それでも、星煌めく花が想いを抱いて川を流れてゆく光景は、想像するよりもきっと、ずっと美しいものであるはずだ。
 そんないつかに想いを馳せて、ラナは願うように紡ぐ。
「そうしたら……想いはきっと、届きますよね」
「ええ、きっと。――きっと、届きます」
 ラナの言葉にジナは力強く頷き、そして杖から剣へ、形を変えた鉱石の花の一振りを獣たちへ振るう。

「――いたいのいたいの、とんでゆけ」
「ありがとうございます、ラナ様」
 ラナが齎す癒雨ノ雫――優しく傷を癒す雨雫に、ジナはほっと心が安らぐのを感じる。
 二人の前に現れた獣たちは再び骸の海へと還り、辺りには先程までと変わらぬ静寂が戻っていた。
「願いが流れて届く日も、きっとこれで近づきますね」
 ジナの晴れやかな笑みに、ラナも微笑んで。そうして、未だ眩い星が歌うように煌めいている空をそっと見上げる。
(「……自分よりも幸せを願える、そんな人に、私も出逢えたらな」)
 それは、ラナの心に淡く芽吹いた想い。今はまだ、綻ぶ時を知らないもの。
 優しいその横顔に、ジナはひとつ目を瞬かせてから微笑んだ。
 彼女は否定していたけれど、その眼差しの先にはもう“誰か”の姿があるような気がして。だから、ジナも隣で一つ、星に願いをかけていた。
(「……どうか、ラナ様の願いが届きますように」)

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●ラフェクレールの華心
 ――最初に花を流したのはユーリアだった。
 帝竜ヴァルギリオスが滅ぼされ、多くの勇者が帰らぬ英雄となったことを風の噂に聞いた後も、ユーリアはセドリックを待ちながら花を流し続けた。
 その内に、街の人々も彼女の心と想いに寄り添うように、花を流すようになった。
 やがてユーリアがその生涯を終えた時、花を流す理由を失くした人々は、それでも花を流し続けることを決めた。
 勇者セドリックとユーリアに敬愛の想いを込めて、二人がいつかどこかで再び巡り会えるようにと祈りを込めて。
 それが、時を経て少しずつ形を変えながらも、ラフェクレールの華祭として今もなお続けられている――ルミアリアの花祭りだ。

 ――“想い”を乗せて、花を流す。
 その想いの行く末を、辿るものではない。
 花に願いを託せば、それが叶うと決まっているわけでもない。
 それでも人は様々な想いを花に乗せて流し、今日も祈り続ける。

 これは一人の勇者の青年と、彼が愛したフェアリーの少女と、そして、彼らの想いに寄り添った街の人々の――時を経た今もなお語り継がれる、ひとつの物語。

最終結果:成功

完成日:2019年06月27日


挿絵イラスト