【四方山事】百年桜
境・花世 2020年2月3日
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世にも珍しい五つの桜を、献上せよ。
その昔、花狂いの殿様が御触れを出した。
それを献上出来たなら報酬は惜しまぬときて、
ひとびとは狂騒のもとに探し歩いたと云う。
結局は誰も探し出せずに、今はもう忘れられた話。
されど御触れはまだ取り下げられてはいないし、
存在し得ぬと証明されたわけでもなかった。
――五つ目の桜は、百年に一度だけ絢爛に舞う桜。
それは、人の身には辿り着けぬ神域に咲くのだと云う。
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境・花世(f11024)
テイア・ティアル(f05368)
上記2名の1:1RPスレッド。
20レス程度できりのいいところまで、
或いは3月末で終了。
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境・花世 2020年2月4日
(世界の果てまでも花で埋め尽くされている。鳥居をくぐる毎に薄紅が溢れて、前後左右さえわからなくなりそうだった。進んでも進んでも、ふたたび神との境界線が現れるばかり)
境・花世 2020年2月4日
…、……人の身には辿り着けない神域、なるほど。
テイア・ティアル 2020年2月9日
……ははあ。今ので潜った鳥居は何基だったかな。(恐らく両手じゃ飽き足らず、足の指まで使っても足りない程だ) 一度引き返してみるかい、カヨ。こう云うのは大体最初に仕掛けがあったりなんかするんだよなあ。
境・花世 2020年2月9日
ん、もどってみる。(幼子のようにこくんと素直にうなずいて踵を返す。振り向いてもやっぱりおんなじ景色が続いていた。花と鳥居、薄紅と赤) ごめんね、テイアだけだったらちゃんと辿り着けるかもしれないのに。わたし、やっぱりひと扱いなのかなあ。
テイア・ティアル 2020年2月9日
まあ、まあ、そうだな。曲がりなりにも神とつく者の端くれだ、行けない事も無さそうではあるが。もしカヨがひと扱いだとしたら、其れは其れで恐ろしいものだよ。(『美しいひとのこを、かみさまは欲しがるからなあ、』なんて呟いて、ひらひら舞う薄紅に怖や怖や、と肩を竦めて見せる)
境・花世 2020年2月9日
あは、わたしでも生贄になれるならいっそ光栄だ。(踏みしめる地は薄紅の花に埋もれてふかりと柔い。どこまでも沈んでしまいそうなほどに) ……テイアも、ひとのこは、すき? どんなこなら美しいって、ほしくなる?
テイア・ティアル 2020年2月14日
生贄どころか、神域に閉じ込めて永遠に歳を取らぬ様にして、其の美貌を保たせよう、なぁんて身勝手な事をするのも亦、かみさまさ。(前後すら不覚になる程の光景に、気が如何にかなってしまいそうな想いだ) ひとのこは好きだよ、ティティは月と太陽の母だもの。ひとらしい感情を持つ子が、好きかな。
境・花世 2020年2月14日
そういえばきみはときどき、自分のことを年経た女の名で呼ぶね。お母さん。 (進んでいるのか戻っているのか、それすらもよくわからぬままにただ歩く。薄紅に霞んだうつくしい世界が、牢獄めいた昏さを孕んで見えるのは気のせいだったろうか) ……ひとらしい感情? 怒ったり泣いたり我儘を言ったり、そういうのでもいいのかな。
テイア・ティアル 2020年2月20日
鳴呼、「ばばあ」ってやつかい? ふふ、今のわたしの持ち主にね、そう呼ばれていて。二百歳位だからなあ、まあ確かに? なぁんて。悪い気はしないって云うか、ちょっとツボに入っちゃって。(少しでも脚を止めたら、薄紅に囚われて動けなくなってしまいそうで末恐ろしい。金に狂ったひとびとが、何人此処で迷って姿を消したのやら) ……うん、そう。嫌悪、恐怖、優越。なんでも良い。手が掛かる仔程、可愛いって云うものじゃないか。
境・花世 2020年2月23日
(愉快な持ち主さんだとくすくす笑う声すら、花びらに吸われて跡形も残らない。鳥居は今、いったい幾つ越えたところだったっけ?) ああ、きみは正しく神さまなんだね。神は時に残酷で、悔しいくらい慈悲深い。手のひらの上で可愛いって転がされるばっかりで――焦がれても願っても、ひとの身では届かない気がするほどに。
テイア・ティアル 2020年2月29日
(はて、と首を傾げて傍のお嬢さんを見遣る) カヨは、かみさまになりたいのかい? ……否、かみさまが、嫌いかい。何だか、そんな感じに聞いて取れたのだけれど、ばばあの思い違いだったら過ぎた事を言ったのを赦しておくれ。(そうして、また一個、鳥居を潜って――亦、目の前に現れた鳥居に指を折るのを、諦めた) ところで君、良いニュースと悪いニュース、何方から聴きたいかな?
境・花世 2020年3月1日
(月光と陽光の、あたたかくつめたい、相反する二つの彩。途方に暮れた迷い子のように見つめかえす) …、……きらいなわけ、ないよ。逆だもん。(何やら拗ねた口ぶりで、ゆびさきがちょんと神の袖を摘まんだ) 良いニュースだけききたい。っていうのはだめ?
テイア・ティアル 2020年3月1日
――……そうかい。(裾を摘まれたら、薄紅の絨毯の上で傅き仰ぎ見る。そうして、恭しくもう片方の掌を差し出して、) 良いニュースならね、多分だけれど、此の地獄の様な有様から抜け出して件の桜を手に入れられる、かも知れない。ばばあの手を取ってくれるかな?
境・花世 2020年3月3日
わあ、それはまごうかたなき良いニュースだね?(尖っていたくちびるが綻んで、迷いなく手のひらが重ねられる。永い時を経た神と異形の人間と――決定的に隔たれて、されどその温みも形もよく似たふたつ) きみを信じるよ、テイア。
テイア・ティアル 2020年3月12日
(重ねられた掌の温もりに安堵して、握り返すと『行こう』と言った。其れは、恐らくではあるが最初に歩いていた方向だ) ……今ね、カヨは大凡半分位、神様みたいなもの。わたしの気……みたいな、まあ所謂神様パワーを共有してるとでも云えば良いか。決して離さないでおくれ、此処の意地悪な何かに囚われてしまったらお終いだからね。せーの、で鳥居を潜ろう?
境・花世 2020年3月21日
(繋いだ手からじんわりと静謐な何かが伝って、どこか躰が透きとおったような心地がした。遠く遠く届かないと思えた場所に、今、触れることが叶うのならば) うん、……うん、テイア。神さまにだけ許された清らかなその花を、わたしも見たいよ。連れていって。
境・花世 2020年3月21日
――せーの、(揃って踏み出した瞬間、轟と吹き荒れる薄紅の花雨が視界を埋め尽くした)
境・花世 2020年5月1日
――ああ、
境・花世 2020年5月1日
(人たる身は、その桜の美しさを表す言葉を持たない。神々しく慈悲深い、遍くいのちを抱いて咲かせたような絢爛の花。瞼に灼きついて離れないような永遠が、そこにはあった)(届かなくて、遠くて、違い過ぎて、けれどこの心が美しいと叫ぶから。一瞬たりとも目を逸らさずにいたくて)
境・花世 2020年5月1日
(神と、人と、寄り添って、いつまでもそうしていた)
境・花世 2020年5月1日
――世にも珍しい五つの桜を、献上せよ。
その昔、花狂いの殿様が出した御触れは今もまだ叶えられないままだ。
されどそれは、誰もその桜を見つけられなかったからではなく。
見つけた者たちが、その美しさを壊されぬよう守ったからなのかもしれなかった。
真実は誰も知らないまま、今もその御伽噺は伝えられている。
世界のどこかで咲いた、五つの桜のまぼろしと共に。