【四方山事】血染桜
境・花世 2020年2月3日
✾
世にも珍しい五つの桜を、献上せよ。
その昔、花狂いの殿様が御触れを出した。
それを献上出来たなら報酬は惜しまぬときて、
ひとびとは狂騒のもとに探し歩いたと云う。
結局は誰も探し出せずに、今はもう忘れられた話。
されど御触れはまだ取り下げられてはいないし、
存在し得ぬと証明されたわけでもなかった。
――三つ目の桜は、悲願に身を捧ぐ者の血を啜る鮮紅の桜。
それは、罪人を流すと或る小島に咲くのだと云う。
✾
蘭・七結(f00421)
可惜夜・藤次郎(f16494)
上記2名の1:1RPスレッド。
20レス程度できりのいいところまで、
或いは3月末で終了。
✾
1
蘭・七結 2020年2月3日
(何時ぞやのひとが渇望した五つの桜。その一柱は、鮮紅に染まると云う) 罪人を喰らう、あかいサクラ。まるで、死をもたらす処刑人のようね (揺らぐ小舟のなか、彼の桜樹に思いを馳せるように双眸を向けた)
可惜夜・藤次郎 2020年2月3日
やぁ、それは……随分と賑やかそうな場所を提供されたなァ。(櫂を手に、未だ何も見えぬ水面の向こうを望む。その先、噺が本当ならば数多の命が訪れた地)(瞳の月は愉しげに笑い)その桜も退屈しなかっただろう。実際に罪人を喰うたかどうかは兎も角、花を咲かすなら命在る場所が良い。それともお嬢さん、(向けられる、紫の視線に返す。笑みの形は変わらぬまま)罪喰らう花は、恐ろしいかい。
蘭・七結 2020年2月4日
退屈はココロを殺めると聞いたことがあるの。サクラも、退屈はお嫌いなのかしら、ね。(静謐に満ちた空間に咲く、気高き花に魅せられた。彼の言うとおり、命満ちる場所にて笑む花も美しいのだろう) ……いいえ、ちっとも。どんな景色をみせてくださるのか、心が踊るようだわ。(藤月の彩と交差し、まろい笑みを転がす。耳を打つ波の音が心地よい)
可惜夜・藤次郎 2020年2月11日
人より余程、飽きとは無縁なものではあるがね。花を咲かす限りは賑やかな方が良いさ。……ま、やって来る人間のほうは愉快では無かっただろうが。全く勿体無いことだ。(大きく溜息。動作は冗談めかしたもので、次の瞬間にはにかりと笑顔を見せた)それは重畳。おれも嬉しいねェ。どうせ花見なら、同行者の顔も綻んでいるのが良い。(さてさてと櫂を操れば、跳ねる水の音。どれ、そろそろ島の陰でも見えるだろうか)
蘭・七結 2020年2月12日
ならば過去に代わって、幾度となく“きれい”と告げてみせましょう。……嗚呼。あなたと共にするのなら、贅沢なお花見の会となりそうね。二彩の共演なんて、そう見られるものではないわ。(そよりと揺らぐ藤の和衣を見映したのち、紫の眸は針路へと寄せられる。ひとより長けた視界にて、その輪郭をとらう) ――みえた。トウジロウさん。(彼方よ、と指さして)
可惜夜・藤次郎 2020年2月23日
そうさな、立場も時代も違う人間だ。慰めとせず、新たな風として愛でてやれたら良い。……はは、有り難いことだが、おれの神としての権威は藤咲く夜。正確には花では無いんだ。ただまァ、藤を使うのも事実、(ややこしいことだなぁ、笑いを零して波に負けぬようよいせと漕ぐ)(やがてゆるりと着岸し、息を吐く)……ふう、案外疲れるな。櫂は友に頼めば良かったぜ。(一足先に陸に上がれば振り返り)さ、お嬢さん。(手を差し出した)
蘭・七結 2020年2月25日
フジの花が咲く、夜の神さま……まあ、それは。夢とまぼろしの遥か先へと、引き寄せられてしまいそうね ( からりら笑みを転がし、此方へと向かう手を取った。持ち上げた踵の音が高鳴る ) 心地のよい船旅を、どうもありがとう。……さあ。あかいサクラは、何処かしらね ( 口許に指さき添わせ、紫彩が移ろう。決して広大ではない孤島のさき。いっとう好む彩の影を、とらえた気がした ) 少し、あちらを歩んでみましょうか
可惜夜・藤次郎 2020年3月8日
ほう、感性豊かな感想だな。良いことだ。(ただそう頷いて、そうしてあちらと指す方向に歩みを向ける)赤い桜……寒桜の類だろうかね。桜も色々種類があるが、お嬢さんは好みの桜とかあるかい?(足の運びは至極ゆったり、悠々と言葉を紡ぐ)
蘭・七結 2020年3月13日
光栄だわ ( ほんの僅かにあなたの前を歩みゆく。孤島には生物の気配がない。ふたつの声と、寄せては引いてゆく波の音。ただそれだけ ) あいにく、サクラの種類には詳しくはなくて。けれど、そうね。薄紅を咲かす枝垂れたサクラがすきよ ( 持ち上げた踵が砂に沈む。歩を進めてゆくと朽ちた小屋が見えて、かつての島にはひとびとの営みがあったのだと物語る ) ……嗚呼、本当に誰ひとりもいないのね
可惜夜・藤次郎 2020年3月31日
(静かな光景。雑踏に塗れた現代世界の住人となった今では、酷く懐かしい)なに、詳しくなくとも惹かれる美しさはあるさ。定番の春先に咲くもの、鞠のように丸く纏まって咲くもの。そして、枝垂れて咲くもの。枝垂れ桜は良いな。ゆらゆら風に揺れてより豪奢に見える。(かつては、こんな風化した光景も珍しくは無かった。取り残されたのは離島故か、自分が触れる機会を失っただけなのか)まァ、この土地じゃあ生きるには不便だろうな。とは言え、動物の一匹もいないともなれば、流石に虚しいものもあるが。
蘭・七結 2020年4月1日
ええ、まさしく。儚くも力強くて、うつくしい。翼のように拡がりをみせるその瞬間が、いっとうすきなの。……嗚呼。あかいサクラは、寂しい思いをしているかしら。わたしとあなた、ふたりで見届けましょう。きっと、とてもうつくしい姿をしているわ ( かつての面影を見送りつつ、歩みを止めることはしない。この歩を進める先に、あかい彩を見映すはずだから。もとめた鮮紅まで、あと―― )
可惜夜・藤次郎 2020年4月20日
(視界に入ってきたその色は、真夜中に日が射したような錯覚を齎した)(寂れた色彩に浮かぶ赤は、眩むほど鮮やかに、艶やかに)(歩みの先に見たのは、そんな、夢に雫を垂らしたような光景)── やァ、これはこれは。お嬢さんの言う通り、美しい姿だ。(盛りの花を見上げ、目を細める)寂しい思いをしているかと思ったが、存外と強い子のようだな。これなら……、此処に残して、残る思念を守ってもらったほうが良いだろうかね。(とうに求めた者は居なくとも、孤独に花散らすようならば迎えようかと思っていたが、)実に力強い、良い姿だ。
蘭・七結 2020年4月20日
( 軈て顕となるその姿。うすいろの輪郭に紅を引いて、いっとう艶やかに咲うよう。これは夢か、まぼろしか。幾度となく瞬いてみせて ) ――嗚呼。ほんとうに。なんてうつくしいのでしょう ( 隣立つ藤月の彩へと視線を送り、もう一度あかい花姿を見映した ) この島に残った願いたちが、あかいサクラに添っていたのね。このいのちを掠めてしまうのも、だれかに奪われてしまうのも、心が痛んでしまうわ。……わたしと、あなた。ふたりだけのヒミツとしましょう ( 双眸の奥へとあかを刻み込んで、踵を返す。五つの桜。伝承のみっつめ、鮮紅に染まる桜。ふたつの記憶を糧として、永久に咲き誇るだろう )