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【リプレイ差替】シューティング・ダッチマン

六連・栄 2019年10月28日

●リプレイ本文
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=15476

●差し替え箇所
2重コピーしてしまった2度目の「エレガントに」の部分

●魔剣争奪戦?(AM第3ゲーム:殲滅戦にて)
 まずは、彼女――アリスティアー・ツーハンドソード(王子気取りの両手剣・f19551)の話をしよう。この「シューティング・ダッチマン」の参加者であり、その中でも群を抜いて特別な立場にいる魔剣の話を。
 このゲームにおいて彼女が果たす役割は、手っ取り早くいってしまえば「強化アイテム」である。身体強化UCの性能底上げ、各種武器性能の向上、そしてこのルールにおいて最も重要なのは「装備中のヒット1回無効」だろうか。
 サバイバルゲームにおいては、攻撃の威力に関係なくそれが身体に当たればヒット扱いで退場。実戦であれば被弾覚悟の相討ちや肉を切らせて骨を断つといった捨て身戦術が罷り通るものの、この場においてそれらは一方的な自爆にしかならない可能性が非常に高い。
 が、それを根底からひっくり返すのが強化アイテムであるアリスティアーなのだ。
 故に、その配置場所が判れば争奪戦は必然!

 ……の、筈だったのだが。
「ねぇ、榛名。そろそろ僕を釣り餌じゃなく使ってくれないものかな?」
「ボクたち海賊クルーとしては、下手に自己強化に使うよりも釣り餌にしたほうが効率的なんだ。それに、キミはとっても役に立ってるから許してよ」
 近づけばアリスティアーの居場所が判るよう、戦場をてこてこと歩き回らせている小人を通じての会話がこれである。
 そう、アリスティアーにとって少し想定外だったのは己の重要さを理解した上で、それを戦術的ではなく戦略的に扱う茅場・榛名(白夜の火狐・f12464)の存在であった。今現在、榛名はアリスティアーの突き立った場所が良く見える物陰に隠れ、アリスティアーを取りに来たものを狙い撃つという待ち伏せ戦法を取っている。ちなみに、アリスティアーを見つけて喜び勇んで突入を仕掛けた参三が既にその戦法の犠牲者となっている。
「キミの設置場所が主甲板中央っていうのも幸いだったよ。何せ、待ち伏せするにはちょうど良い障害物の配置だからね」
 加えて、榛名の装備はサプレッサー付きのアサルトライフル――ヴァルキリーライフルだ。狙撃手のように派手な狙撃戦を繰り広げるでもなく、消音された銃撃で確実に待ち伏せを遂行するのにはもってこいだ。
「くっ、しかし使ってもらえなければ僕はただの飾り……そちらがそうするのなら、僕の方にも考えがある!」
「へぇ、どうするんだい?」
 直後、アリスティアーが取った行動は単純であった。
『この近くに伏兵がいるぞぉー!』
「なっ……!?」
 どたばた、わーわー。アリスティアーの召喚していた小人が、これまで以上に騒がしく動き回るのと同時に榛名の存在をアピールし始めたのだ。
「さぁ、どうする榛名。僕を使うか……それとも伏せる場所を変えるか。ちなみに、栄からこういう行動の許可は貰ってるからね、ルール違反ではないよ」
「確かに、キミもこのゲームの参加者だものね……!」
 敵を引き寄せるという意味では、アリスティアーが騒ぐのも問題はない。しかし、どこに伏せているのかを告げることだってアリスティアーには可能だ。あまり油断しすぎると居場所のバレた榛名の元へと敵チームが殺到する可能性だってゼロではない。
「ほら、早速気付いた奴がいるみたいだよ」
 ――一瞬の逡巡が、しかし付け入る隙となった。
「参三が急にやられて、もしやと思っていたけれど――ハロー、キツネちゃん。鬼のエントリーだ」
「っ!!」
 榛名の直上。身体強化UCにより圧倒的な機動力を得たヴァシリッサが、マストとセイルを繋ぐ綱を足場に強襲を仕掛けたのだ。物陰に隠れている榛名を、その障害物ごとぶち抜かんとする意図をもって放たれるのは9mm口径フルオート自動拳銃「Neuntöte」とリボルバーショットガン「Sköll」を左右それぞれの手に構えての一斉射。UCによる強化を受けて空中からの射撃とは思えないほどの精確さで降り注ぐ弾丸の雨に、榛名は動くどころか物陰から出ての応射すら難しい状況へと追い込まれる。
 そうこうしている間にヴァシリッサが甲板上へと着地。リボルバー内部の弾丸を吐き尽くしたSköllを目くらましついでに榛名へと投げつけ、その間に抜き放つのはバックアップウェポンとして持ち込んだ近接武器――刃渡り10インチに及ぶそのトレンチナイフの銘はクルースニク。
「弾幕射撃が途切れたのなら、ボクにだって……!」
 素早く、かつ正確なサイティング。障害物でしっかりと安全を確保しつつ、ヴァシリッサが装備を持ち帰る一瞬のうちに応射をこなす榛名の腕前は猟兵全体で見てもかなり上位にくるだろう。
 だが。
「銃口が見えてンだよ!」
 対するヴァシリッサの強化された身体能力も伊達ではない。銃口の向きから狙いを見切り、射線上にクルースニクを構えて切り払う――ルール上、近接武器による防御はヒット扱いにならない。反撃で放つSköllの弾丸こそ障害物に阻まれて榛名へと届かなかったが、現状は攻め続けるヴァシリッサに少なくない有利がある。
「アリスティアーを頂くついでに、ヒットも貰っていくよォ!」 
「そう簡単に、ボクをヒットできると思わないでよ……!」
 クルースニクを盾に吶喊してくるヴァシリッサに、榛名も作戦を変更。近接武器による防御が間に合わないような位置から銃弾を叩き込むべく障害物から飛び出して前へ駆ける。
 片や身体能力にモノを言わせてゴリ押すヴァシリッサ、片や少ない障害物を巧みに使った射線切りで回避を継続する榛名。互いに退かぬ覚悟は、ゲームでありながら実戦さながらだ。
 そして――ついに、障害物を挟むことなく2人が対峙した。
「ちょこまかとすばしっこいけど、もう隠れる場所はないよ、キツネちゃん!」
「榛名だよ、鬼さん――!」
 火線が交差。前へ、前へと詰めたヴァシリッサと榛名の距離は既に数mしかない。ヴァシリッサの強化された身体能力であればその距離でも回避が叶うが、榛名の方は。己の放った弾丸が目前の相手へと吸い込まれていくのを、ヴァシリッサはいつも以上に深いニヤニヤ顔で見送り……
「代理ヒットだ。それじゃあ、頑張ってくれよな2人とも」
「なっ!?」
 響いたヒットコールは、アリスティアーの声。勝利を確信していたが故に、その声はヴァシリッサを動揺させるに十分であった。
「ボクばかり見ていたからさ――目が良すぎるのも、仇になるね!」
 甲板に突き立ったアリスティアーを挟んでの攻防、それの決め手となったのは――やはり、強力なアイテム。つまりは、魔剣アリスティアーであった。
 榛名が取ったのは、障害物に隠れながらヴァシリッサに気付かれぬようアリスティアーを引き抜き、隠し持つ作戦。1回限りとはいえヒット無効化の権利を得ていたからこそ、榛名は強気に攻めることができたのだ。
 そして作戦は成功。一瞬の動揺も、素早いサイティングのできる榛名にとっては十分な時間。近接武器での防御が遅れやすい足元を狙っての掃射は、見事にヴァシリッサの虚を突いた。
「あ~、クソ、惜しかったなぁ……ヒットだ。退場するよ」
 次は負けないからね。そう言い残し、ヴァシリッサはゲートをくぐってセーフエリアへと退場する。
 榛名1人で2キル――今回の勝敗は、Bチームこと海賊チームに大きく傾いたのであった。




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