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崩壊の余波が星無き夜を、溶かしても

#アックス&ウィザーズ #歪な魔法の流星群

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#アックス&ウィザーズ
#歪な魔法の流星群


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 村と街の境界線、その中間地点に存在するある丘での話。
 澄み渡る巨大な湖が側に広がっている、何の変哲もない辺境の一角。

 街や村などのように、その場に留まり暮らすものは変わり者だが……今日は別だ。
 数日掛けて街から街へ移動する人々が、そこに簡易の野営を組んで、夜を待つ。
 ――その日は願い星が空より、流星群となり永遠に降り注ぐ日であった。

 邪悪な魔法使いが捻くれた魔法、呪いを掛けた場所とされており、
 流星群は、多方向に飛んでいく。上から下へ、右から左へ。
 原理は分からないが、下から上に駆け上がる流星ですら見えるという。
 夕闇に染まる頃から、朝焼けに染まる頃まで、ずっと、途切れること無く。
 湖には鏡で反射された様に、同じ数が駆け抜けて光の花が咲くのだ。
 空も大地も星に溢れ、……この現象を知る地元の冒険者が、人々の護衛に付くほど人気がある。降り注ぐ、で正しいし。吹き上がる、で正しい星空を、眺められる丘だ。

 零れ落ちるほどの光の流れを、楽しみにしていたの理想は、
『鱗無きモノ共から、土地を奪え。まずは、そう手始めに』
 全てうぉおと雄叫びが上がった瞬間、勢いよく崩れていく。鱗在る亜人種族が、リザードマンがその場所を襲撃する。統率された目標の元、迷いのない剣が襲い掛かる。
『同胞よ。声の限り、吼え、勝利に凱旋し、そして……例え一夜の仮住まいであろうとも、安らかな時間を崩壊させるのだ』
 冒険者がリザードマンたちに迎え撃つが、機動力に一歩負けてしまう。
『乱舞する流星など、我の飛翔する世界に、在ることなど許さぬ!』
 大きな翼を広げて、ドラゴンは綺麗な景色を消し飛ばすための活動を開始した。


「星なき夜。君は、そういうのを想像したことがある?」
 僕は、星を眺めているのが好きだよ、とソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)はボサボサの前髪を掻きながら、語る。
「まぁ、それはどうでもいいことだね。今回の予知の話をしよう」
 集まった顔ぶれを眺めて、深呼吸。
「向かって欲しい場所は湖近くの丘。それも夕暮れ時のね。自然豊かなアックス&ウィザーズでの話だよ」
 そこには季節の変わり目に一度、年に四度ほどしか見られない歪な魔法が掛けられた場所がある。流星を強制的に呼び寄せる永続した魔法が掛けられた、万華鏡の中に身を投げたような煌めきが幻想的な場所だ。
「辺境の中でも、昔から愛される場所みたいだね。魔法が掛けられた由来は、……曖昧らしいけれど」
 辺境ということで、その場所を、『縄張り』とする他の生物も、いない訳ではない。
 強力なモンスターが、発生したらその場所を占拠される事も考えられる。
「そこにさ、運の悪いことに崩壊の力を振るうドラゴンが、現れるんだ」
 全ての崩壊を臨む竜、崩竜・ヴァッフェントレーガー発生は半日ほど前になり、持てる力を振るって周辺の森を無作為に消し飛ばしたりしていた。『竜帝』を信仰する亜人種族……リザードマンたちの目に止まり、直ぐ様、彼の指揮下に下った。
「この地域のリザードマン達は人類が心底嫌っているみたいで、人類が景色を、娯楽を楽しもうとする……その時に襲撃し、人類を絶望に落とせるものなら、と一族総出でこの作戦に乗ったらしいね」
 人類に敵対し、鱗無き者たちの住まう地域をも簒奪を考える事もある。
 辺境を点在し、巨大な力を持つ竜に付き従って、色々な物を崩壊、消失に導く。
「平和な星見をしたいだけの人類を巻き込むのは、やっぱり良くないし……放って置くのも危ないし?」
 地元のリザードマンとはいえ、共存するのを一切望んでいないので、討伐という目線で挑むのが良いだろう。彼らは人類を弱き者どもと決めつけているので、強者だと分からせれば、一気に撤退するかもしれないが。
「崩竜の目的? 綺麗なモノを全て消し飛ばすことかな。彼は常に、崩壊や消失、全てを無くすことしかできないからね。自分が手にできないものを、人類が享受しようとするのが許せないのさ?」
 ね、自分勝手でしょう? と目を伏せて。
「彼を放置するだけで、湖も、永続的な魔法が掛けられた流星群も、丘も全てがなくなるんだ。そういうの、――良くないよね?」
 綺麗な景色を、晴れやかな気持ちで見れるように……全ての崩壊を食い止めるべく、送り出すのであった。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 星在る夜も。星なき夜も。しっちゃかめっちゃかに飛び交う星も。
 肉眼で見れたら、きっと綺麗だろうなぁって。

 この依頼ではドラゴンもリザードマンも『喋ります』が。
 どちらも人類が嫌いです。きえてなくなれっ! て感じ(物理)

 簡単に言うと、突如発生した全てを崩壊させるドラゴンに共感したリザードマンが、人類への嫌がらせチャンス!! ってニュアンスで夜景をぶち壊そうとするって感じ。

 概要が、ニュアンスが、ちょっぴりでも伝わったら幸いですが。
 三章に、お呼ばれされたときはソウジ(f00212)がお話相手を努めます。
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第1章 集団戦 『リザードマン』

POW   :    シールドバッシュ
【手にした盾で攻撃を受け流して】から【生まれた隙に、盾による殴り付け攻撃】を放ち、【衝撃でふらつかせる事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    曲剣一閃
【変幻自在に振るわれる曲刀】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    テイルスイング
【太く逞しい尻尾による薙ぎ払い攻撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 リザードマンは斬撃の度、吐き捨てるように言葉を吐き散らす。
「もとより、この丘を中心に我々の縄張りなのだぞ人間!……今も昔も、な!」
 そこに、限定的な野営だろうが拠点を置き、過ごしやすいよう整えたのは人類だ。
 鱗無きモノ共は、そうやって意図も容易く、自然環境に手を出してしまう。
「上位竜種のボスは我々の望みより更に上を目指しているが……追い出せるなら、縄張りなど放棄してくれる!」
 竜が望む野望なら、鱗在る者の望みなら、率先して力になろう。
 ――それが、我々の。戦士の在り方、なれば。
「定期的に訪れられては、迷惑なのだ。共存も望むものではない……!」
 人類が季節置きに訪れる度、いっその事、消えて欲しいと願っていた。
 もう来ないで欲しいと。それを、全てを無くしてしまう崩竜が、叶えてくれるかもしれないと言うのだから。
「飛ぶ鳥跡を濁さずに帰れぬのならば、我々の怒りは収まらぬものと知れ!」
 ――我々は、この身など捨て駒にでもしてやろう。
 武器防具をつけただけの、戦士の在り方も示せぬ人類など。
 敬意を払う、だけの価値すら、ないのだから。
ビディリー・フィズン
■口調
「…」を多用

■行動
凄まじく美しく戦場に降り立つ
美しすぎて鳥は歌い草木は華やぎリザードマンも尾を叩いて喜ぶ、そんな気がする
「……土地を愛する、良いことだと思います」

美しさを振りまき戦場をゆったり歩く
怒声や攻撃も美しさが「オーラ防御」となって阻む
主張は理解出来るけどあまりにも蛮族的で辟易する
「……あの、うるさいですね」

生物はやはり愚かだ、争いをもって解決しようとは
この美しさをもって過ちを理解させよう
戦士の在り方とは暴力を振るうことではないだろう、と
その美声は【UC】となり、彼らの心を「串し刺し」にするだろう
「……そもそも、従属を望むなら最も美しい者…ボクに従うべきでは?」

アドリブ共闘歓迎



●きらきら

 まだ夕暮れ時。しかし、目を凝らせば、空に光の流れが見えたかも知れない。
 しかし、それらすら霞ませる存在がその場に現れる。
「……おや、ボクのように美しい光景ですね……」
 海色の長髪を風に流し、髪に手を添えて。どこかキラキラとした煌めきが、可視化して輝いているようだ。ビディリー・フィズン(虚栄の王冠・f20090)は吐息を零すと、彼のあまりの美しさに鳥たちが歌うように囀り始めた。
 ピピピ、チチチと不思議の国に迷い込んだように夕刻とは思えぬほど鳥たちは、歌い空を埋めんばかりに羽ばたき飛び交う。不思議と木々も時間帯や季節感すらを忘れたように、枝先に花を咲かせた。彼のあまりに美しい奇跡は、視線をひたすらに集めていく。足元の草花まで、夕刻なのに満開の様相だ。
「……土地を愛する、良いことだと思います」
 リザードマン達は、あまりの美しさを持つ存在に、唖然としている。
「なんという面妖な……」
「敵対する我らが戦士に手向けの花を、とでも言うつもりか!」
「あぁいう御尊顔の人類が存在ものなのか、……俺は今日が命日でもいいぞ」
 美しすぎる事は、彼らの生態系からすれば特に意に介するものではない可能性があるが大半のリザードマンに侮辱の思いを抱かせてしまったようだ。
 言葉以上に尾が素直な感情を示しており、彼らの尾は地面をべちべちと叩き、イライラと怒りは最高潮に達しそうな様相へ。ごく少数は、美貌に魅了されたように戦意を喪失したようだ。
 凄まじい美形、恐るべし。
 彼らの動向を気にはするものの、キラキラとしたオーラのようなモノを身に纏いながらビディリーはゆったりと戦場を歩く。
「手向けの花というのは、摩訶不思議と咲き誇るこの地の花々か? それとも……あの人類か?」
「そんなの、どっちもだ忌々しい!」
 最も怒るリザードマンは同族に、剣を振るうな、彼の美貌に傷をつけようとするのをやめろと何故か説得が始まる始末。
「あああわかった。では剣戟でなければいいか、面妖な姿に心奪われるな! 戦士の誓いを思い出せ!」
 同族の説得に心動かされたのか、からんからんと、剣もバックラーも投げ捨てて。
「爪と牙、持てるものでなら良いだろう!? ソレ以上の譲歩等、持ち合わせてはおらぬわ!」
 怒り狂う程に尾を振って、同族の心を奪った者と、ビディリーに敵対するように殺意を持って睨んだ。
 ――彼らの主張は、理解できるけど。あまりに、蛮族的で。
「……あの、うるさいですね」
 ビディリーは、辟易していた。自分の美しさに共感できる心はあるのだと、安心はしたものだが。
 敵対心が凄い個体は景色を、ビディリーを、価値在るものと楽しもうという気は無いらしい。
「煩くて結構! 我々の願いはこの場から、人間が排除できればそれでよいのだ!」
 ぶんぶん、と尾を振りながら単騎で突進するように、リザードマンは身軽な動作で飛び上がる。
 見た目よりも固く、柔軟で逞しい尾は地面を砕きながら、同族も、人間も、無差別に嫌悪示す鞭のように振るわれた。
 ――生物はやはり愚かだ。争いをもって解決しようとは。
「……それは、美しさをもって理解するべき過ちだね……」
 あまりの美しさでテイルスイングの被弾は緩和され、軽く鳥の抜け落ちた羽根が触れたような緩やかさに変わる。
 全ての共感は得られない。これでは、あまりに悲しい。
「……戦士の在り方とは、『暴力を振るうこと』ではないだろう? と、……思いますが」
 大げさな動作で、指を指し、指摘する。
「……ボク、王子様なんで……言ってる意味、わかりますよね……?」
 軽くウィンクすると、ビディリーに殺意を向けていたリザードマン達の目の色が徐々に変わっていく。
 殺意も、怒りも、人類への敵対も、美しさの前には無力だというのか。
「あぁ、なんだかその言葉が妙に胸に響くぞ……?『美しい』は我々の考え方をも変えるのか?」
「ありがたい言葉を受けた今日を、やはり我々は命日にでもするべきは」
「……そもそも、従属を望むのなら最も美しい者……ボクに従うべきでは?」
 生きるも死ぬも、考えるも。
 戦士の在り方も、力ではなく、訴えかける塗りつぶすような美しさに敗北した。
「美しい者に従属したら……我々は力ではなく、美しさで、縄張りを……」
「それは本当に、守れる力だろうか?」
 リザードマンの中に、疑問が生じる。


『美しさ』とは――なんだ?

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫丿宮・馨子
【箱庭】
お怒りはごもっとも
ここまで来てしまっているのならば
最早和解の道はないのでしょう
お怒りをもっと早く知ることができたならば…というのも詮無きこと
わたくしはこの地に留まれぬ身
無責任なことは申せません
しかし気持ちだけは伝えておきたく
クロウ様
しばしわたくしに時間を

せめて謝罪の意を
お力になれず申し訳ございません

わたくしどもは
あなたがたの仰るヒトを守りに参りました
ですから全力でお相手をするのが
あなたがたの矜持に報いることになりましょう

UCで攻撃
扇に衝撃波,破魔,催眠術,範囲攻撃を乗せて
敵の動きを良く観察して
一つ一つを動かす
クロウ様たちの援護を

クロウ様
わたくしの我が儘にお付き合いありがとうございます


杜鬼・クロウ
【箱庭】

所詮オブリビオン
心底侮蔑する人類の言葉が届くとは考えづれェが…
お前がしたいようにヤってみろ
悔い無きように

剣を抜き地面に突き刺し馨子の言葉を黙って聞く
途中遮る様なら戦闘開始

堂々めぐりだ(溜息
傍若無人なのはどっちだよ
何をするにも憚る俺らがただ目障りなだけなンだろ(少し歪んだ羨望もあるか
捌け口になる気は更々ねェよ
端から俺はヤる気だったンでなァ!

情け不要
一気に間合い詰め先制攻撃
敵の攻撃は剣と外套で凌ぎ尻尾切り落とす(武器受け・カウンター
馨子が狙われたらかばう

【煉獄の魂呼び】使用
禍鬼は棍棒で敵を蹴散らす
霆で支援攻撃

属性攻撃・2回攻撃で烈火の如く剣降り回す
極力敵を減らす

…悪ィな
俺はお優しくねェンだ



●Miniature garden

 ――所詮、オブリビオン、か。
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は他の猟兵の美しさに感化されたリザードマンを見ていた。群れを率いる強大なボスが立てば、意図も容易く牙を剣を向けてくる彼らだが全ての同胞を無条件で率いるコトなんて、到底ムリだろう。
 統一されていない意思は、確かにあるようでは在るが。
「面妖な術に惑わされるな! 我々は誇り高き戦士なれば! 迷いなど、不要だ……そうだろう!」
 剣を握り、咆哮するように同族へ鼓舞を贈るリザードマンがあるのだ。
「お怒りは、ごもっとも」
 飾り扇で口元を隠しつつ、紫丿宮・馨子(仄かにくゆる姫君・f00347)は感情の移り変わりの激しいリザードマンを眺めている。
 ――ここまできてしまっているのならば。最早和解の道はないのでしょう。
 言葉で語る事を彼らは、恐らく望んでいない。考える知恵を持ち合わせては居るものの、彼らにとっては縄張り争いと同列の、切った張ったの大立ち回りで雌雄を決する事を望んでいることだろう。
「お怒りをもっと早く知ることが出来たならば……というのも、詮無きこと」
「我々の怒りを理解できた所で、この場での戦いは回避できなかったであろうがな! 人類は全て、遅すぎるのだ!」
 戦士としての自信を胸に彼らは力の限り戦う。
 ……その過程で幾人が命を落とそうが、関係ないのだ。
 鱗無き人類が負ける事、敗北する事を信じて彼は突き進む。
「わたくしはこの地に留まれまぬ身。無責任なことは申せません……ですが」
 ちらり、とクロウに視線を送りながら、馨子は意思を固めて言葉を紡ぐ。
「この気持ちだけは、伝えておきたく。クロウ様、しばしわたくしに時間を」
「心底侮蔑する人類の言葉が届くとは考えづれェが……お前がしたいようにヤってみろ」
 ちらり、と馨子に視線を受けながら、もうひと押しの言葉を添えて応える。
「悔い、無きように」
 クロウは剣を抜き、地面に突き刺して馨子の言葉が終わるまでは手を出さない姿勢を見せた。十二単の袖をふわりと風に遊ばせて、馨子はクロウの隣に並び立つ。
「では、……」
「なんだ今更真正面からの説得なんて無意味なことだぞ、人類」
「いいえ。せめて、謝罪の意を伝えさせて頂きたく。お力になれず、申し訳ございません」
 馨子が軽く頭を下げて告げた言葉は、リザードマン群をザワつかせた。
「……それは詫びではなく、我らへの宣戦布告、と取るが?」
「わたくしどもは、あなたがたの仰るヒトを、守りに参りました」
「余所者のお前らは我々に敵対の刃をとる、と。ほう、ほうほう……」
 剣を握り、リザードマンが馨子に向かってその刃を向け走る。
 敵対者には容赦のない攻撃を。彼ら戦士の掟は此処に成されたのだ。
 ――ですから、全力でお相手をするのがあなたがたの矜持に報いる事となりましょう。
「さぁ、舞い踊りませ。鋭さを帯びし扇からは逃ぐること能わず……」
 馨子の扇が複製され、宙を埋め……差し向けられた刃に向かって、鋭い切れ味を付与された扇は飛んでいく。一つ一つが扇と思えぬ威力を付与されており、馨子が観察仕切る事で、リザードマンの攻撃は命中しない。刃の競り合いのような音が響き、突っ込んできたリザードマンは一気に仰け反った。
「言葉じゃ堂々巡りだ」
 溜息混じりの言葉をひとつ、零す。
 そして、攻撃姿勢へと変わった蛮族の群れを見る。
「傍若無人なのは、どっちだよ。何をするにも憚る俺らが目障りなだけだンだろ?」
「人類に加担するのなら、誰もが我らの敵である!……しかして、強き者であったようだ。侮った事だけは詫びさせて貰おう」
「詫びはどーも。でもまぁ捌け口になる気は更々ねェよ」
 地面に突き刺した剣、玄夜叉を、抜き、クロウも攻撃に転じる。
「端から俺はヤる気だったンでなァ!」
 一気に間合いを詰めるクロウを援護するように、馨子の扇が剣戟を弾く。
 急激な接近に驚いたリザードマンは自分の剣での反撃を諦め、自慢の尾を鞭のように振るい敵対者に痛手を追わせようとした。
 ……が。尾が当たる感触は、上質な布の感触であった。
「無差別は、突き詰めれば防ぐ手段がいくらでも存在するんだぜ?」
 宵闇の歌、マントへの感触を頼りに目くらましとマントを翻し、タイミングをはかり、一息に玄夜叉で尾をバッサリと切り落とす。そこに慈悲など、ない。
「あぁあああああああ!?」
 太い尾は無残にも、失われ、痛みに叫ぶリザードマンはもう戦う頭数には入らないだろう。
「発言力のありそうな奴は潰れたようだが?」
「煩い! 一人の戦士がやられたところで、我々は敗北したわけではない……ぐっ……!?」
 叫ぶ声には扇が腹へ刺さった模様。
「杜鬼クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ! 贖罪の呪器……混淆解放(リベルタ・オムニス)──血肉となりて我に応えろ!」
 リザードマンの地獄は此処に、始まった。
 クロウの召喚により、禍鬼が問答無用にリザードマンを蹴散らしていくのだ。
 剣の冴えるリザードマンを、赤錆色の棍棒が上回り、殴り倒される。切り合えば、クロウの剣がトドメを攫っていく。真っ向から隙を突く戦い方である。
「……悪ィな。俺はお優しくねェんだ」
「クロウ様。わたくしの我が儘にお付き合いありがとうございます」
 霆の支援が劈く中で、馨子が『優しさ』に感謝を述べたが剣戟と咆哮とか重なりあっていて、クロウに届いていたかはわからない。

 ただ、言葉に応えなかったクロウが満足そうに笑ったのは、――確かである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エドヴァルド・ゼロ
ふむ、見事な肉体よな。
戦士としての生き様も敵ながら見上げたものだ。

縄張りを荒らされるのは辛かろう、心中お察しする。
しかし――なぁ、リザードマンらよ。
この世界は隅から隅まで「今を生きる者」の在るべきであり、
オブリビオン、則ち「過去を生きた者」の在るべきは本来何処にもないのだ。
貴殿らの憤り、葛藤は計り知れぬだろうが。
すまない、それが俺の生きる世界の道理なのでな。

柔な人間相手では貴殿らも物足りぬだろう。
金色の獅子によって、身も闘志も燃やし尽くしてくれよ。
そして俺は獅子の上から、貴殿らの有様を目に焼き付けよう。
なに、多少の攻撃を受けることは厭わぬさ。
戦士の信念を見届けることができるのならな。



●Regard

「ふむ、見事な肉体よな」
 遠巻きに様子を観察していたエドヴァルド・ゼロ(残夢消ゆ・f16086)は素直にそう、称賛を述べた。強靭な体を最大限に生かし、跳ね回り、立ち回る姿は自分の使い方を良く知る歴戦の猛者である証。
「戦士としての生き様も、敵ながら見上げたものだ」
 風に遊ばれて額にふわりと被った前髪を払って、身振り手振りを加えてエドヴァルドが親しげに言う。優雅な動作も相まって、敵意ではない純粋な言葉であると、リザードマンも理解する。
「戦い。争い。そして一族共々生き残るため。我々はそのために……!」
 剣を握る手に力を込めて、悔しがる様に牙を剥き出し、未来を”今”を、睨んだ。
 侵略者として、彼らの目には人類が、楽しげに流星を待つ者共がただ、ただ、忌々しい。
「縄張りを荒らされるのは辛かろう、心中お察しする」
 どこを見ているのかはエドヴァルドにも想像は容易い。
 会話をやめれば、即座に進撃を再開するだろう。
 本当に、刹那の足止めだ。
「しかし――なぁ、リザードマンらよ」
「我らに敬意払いし者の話とならば、聞こう」
 群れの分隊長たるリザードマンが手を上げて群れへと指示をだせば、戦士たちは剣を一端に下ろす。戦士として、群れのリーダーに従う素直な者たちなのだろう。
 丘から追い出したい人類から目をそらし、エドヴァルドに視線を向けた。
「この世界は隅から隅まで『今を生きる者』の在るべきであり、オブリビオン、即ち……」
 言葉を一度切る。
 この先を言うべきかは、多少なりとも、迷ったが。敵である事と同時に彼らは戦士。言葉一つで和解など出来はしないと、言葉を選び、続ける。
「『過去を生きた者』の在るべきは本来何処にもないのだ。貴殿らの憤り、葛藤は計り知れぬだろうが……」
「『過去を生き、今に現れ生きる者』であれば再びの死が訪れる以上、生き方は同じようなものであろう?」
 彼らは躯の海から来たオブリビオンである事は認めていた。
 ただ人類、鱗無き者共を断罪糾弾し、追い立てる事は必然であると考えていた。
 縄張りを、……生前此処に生きた者として、生存に足掻き、この場所は譲れない場所で、意地の問題だ。
「すまない、それは否定しよう。それの返答は、俺の生きる世界の道理なのでな」
 戦いは不可避である、という主張のぶつかり合いだけは合意に至る。
 各々別の思惑が在ろうと、向ける剣撃、敵意と殺意に違いは、ありはしないのだ。
 ――柔な人間相手では、貴殿らも物足りぬだろう。身も闘志も燃やし尽くす戦闘を行うには……。
 丘に響き渡るフィンガースナップをひとつ鳴らせば、エドヴァルドの二倍丈の金色の獅子が咆哮をあげて大地に降り立った。グルルルルルゥと余韻で喉を鳴らす獅子に騎乗して、やや身長がリザードマンより高くなった視点から言葉を紡ぐ。
「俺はこの通り、貴殿らの目的を阻む者だ。獅子の上から、貴殿らの有様を目に焼き付けよう」
「視点を上げ、我々の頭を見下げたところで我々の士気は変わらぬぞ!」
「……しかし、敵対者の立場を崩さぬヒトに、敬意を尽くそう」
 剣を、曲刀を強く握り込み、体格の良い黄金の獅子へ勝負を挑む速さは、敬意の現れか。
 集団で得物を狩る為の連携でもあるのだろう。在るものは死角へ回り込み、在るものは地面を強く蹴り、身を捩り回転する様に獅子を穿たんと剣を突き出した。
「それらが、貴殿らの憤りと。決意の形、か」
 獅子の身を穿つ剣は獅子が強靭な前脚で踏みつけ阻み、突進速度を殺しきれないまま獅子の牙の餌食となる。
「獅子ばかりが戦うのであれば、ヒト。お前はただの的であるぞ!」
「的を俺に絞る事が出来るだけで、意味は『在る』ものさ」
 エドヴァルドを狙った剣撃を身を屈めて避けたが、頬に一筋の鮮血が走った。
 曲刀の刀圧の風に寄って切り裂かれただけで、命中したわけではない。
 軽く流れる血を拭い、集団を軽く見据て獣奏器で心を通わす音を鳴らし、獅子へ合図をおくれば、獅子は頭を軽く下げて走り出す。
 黄金の風を引き連れて、リザードマンの集団を蹴散らし征くはまるで王者の証。
 誰も、獅子の征く先を阻むことはできない。
「戦士の信念。確かに見届けた。見事なものだな」

 吹き飛ばされたリザードマンは立ち上がらず、力尽きて消えていく。
 大地を疾走る獅子のように、蹂躙を繰り返したのは。
 遠き過去の、記憶であるから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加

且つては自分達が住んでいた所が人間に入られて怒っていると。言いたいことは分からないでもないが、皆殺しにしてまで居場所を取り戻すやり方は止めなきゃね。こちらも多くの者を護らなきゃいけないし。

敵の集団に無闇に飛び込むと蜂の巣にされそうだから、【目立たない】【忍び足】で敵の正面からの視線から逃れつつ、【残像】も使いながら、敵の集団の背後に回り込み、【先制攻撃】【二回攻撃】で竜牙を【範囲攻撃】で撃つ。正面からの攻撃の対応には長けてるみたいだが、背後からの攻撃は対応できるかな?試してみようかね。近距離攻撃は【武器受け】【カウンター】で対応しようかね。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

リザードマンの皆さんの言い分もあるんでしょうが、こちらも譲れない信念があります。無差別に人間を殺戮する道を選ぶなら立ち塞がらせていただきます!!


響母さんが後ろから攻撃するので、敵を引きつける為に正面から敵集団に飛び込みます。トリニティエンハンスで防御力を高め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【拠点防御】で敵からの攻撃の被害を減らし、【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】を【範囲攻撃】で使って敵集団を搔き回していきましょう。いざという時は【シールドバッシュ】で敵を押し込みます。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

まあ、昔の自分達の縄張りを色々いじられると怒るのは分かるんですが、無軌道な破壊と殺戮を厭わないやり方は止めないとですね・・・僕達にも護るべきものがありますし。

正面から敵集団に飛び込む奏の負担が大きいので、【高速詠唱】【全力魔法】で氷晶の矢を【範囲攻撃】で撃ちます。【二回攻撃】も使って敵の数を減らして行きます。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【武器落とし】【部位破壊】も乗せましょうか。余裕があれば、奏の攻撃に【援護射撃】します。母さんと奏の周りに敵が群がって大変な場合は【吹き飛ばし】で敵を吹き飛ばして行きます。



●Transient

「成程。且つては自分達の住んでいた所が人間に入られて、怒っていると」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は顎に手を当てて、この強襲の想いを思考する。
 だからこそ、彼らは人間を排除しようとしているのだろう、と。
「言いたいことは分からないでもないが、皆殺しにしてまで居場所を取り戻すやり方は止めなきゃね」
「……リザードマンの皆さんの言い分はわかりますが、こちらも譲れない信念があります」
 響の、母へ同意を示すように、真宮・奏(絢爛の星・f03210)は頷いて答える。
「まぁ……昔の自分達の縄張りを、色々弄られると怒るのは分かるんですが」
 自身の過去を、どこか望遠鏡のようなもので遠くから覗き込んだような気がして神城・瞬(清光の月・f06558)は一度言葉を切った。
 ――あの時とは違う。年齢も、立場も、……この光景も。
「無軌道な破壊と殺戮を厭わないやり方はやめないとですね……僕達にも護るべきものがありますし」
「無差別に人間を殺戮する道を選ぶのなら、私たちは立ち塞がります!」
 子どもたちの言葉を聞いて、満足げに、響は手で周囲を示して、リザードマンに宣言した。
「こちらも。多くの者を護らなきゃいけないし」
 ――だからこそ、恨みっこなしだよ。
 間宮家一行宣言すると同時に、リザードマンは力ある敵対者として猟兵たちに狙いを定める。剣を取り、盾を握る手を胸に。地面を尾で叩き、戦意を高めていく。
「真っ向勝負か! いいぞ、戦う者であるのなら、それが一番、手っ取り早い縄張り争いとなろう!」
 最初に動き出したのは、リザードマン達と奏。
 敵を引き付けてやろう、誰よりも早く真正面から敵陣に飛び込んだのだ。
 見かけによらず、考えるより先に体が動いたようである。
 ――魔力よ、巡れ。炎、水、風の魔力よ、駆け巡れ!
 物理的に蹴散らすより先に、精神を研ぎ澄ませ、魔力を高めて防御力を上げる奏。
 ――正面から敵集団に飛び込むとは、思っていました。なら、……。
「あなたがたの敵は、奏一人だけじゃありません。さて、これらを見切れますか?」
 瞬がリザードマンに声を掛けると同時に、詠唱を完了した氷属性の魔法の矢を放つ。大気を劈くように迷わず飛ぶ魔法の矢は、リザードマンの群れに冷気を連れて刺さる。雨のように、豪雨の装いだ。
「固まるな! 散開せよ! 我らは群でひとつ。決して単騎などではない!」
 群れに号令を掛けるリーダーの判断は早く、尻尾に寄る薙ぎ払いで同族への攻撃を庇った。ごく一部では在るが、高威力で打ち払われた魔法の矢はそのまま大気に混じって解けて消えていく。
 リーダーの尾を、体を、部分的に氷漬けにして。
「最小限の、犠牲で仲間を救う、ってところかい?」
 群れの後方に、誰にも気づかれる事無く移動していた響。目立たないように、足音も呼吸を忍ばせていた事もあるが、こどもたちの派手な攻撃は彼女の存在を隠すに一役を買った。
「いつの間に……?!」
「アタシとうちの子たちとの連携の方が上のようだね!」
 移動手段についての返事は笑って誤魔化す。企業秘密、というやつだ。そうして、響は残像を残しながら集団後方へ一気に近づいて、響は気合の一撃を大胆に放つ。
「この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいなぁ!」
 高まる気持ちを反映し、赤熱するようにランスが共鳴して、リザードマンの武器やシールド、時には躰を、尾を打ち据える。
 広範囲に及ぶ乱舞で、群れの中を走り被害を拡大させていく。
 衝撃に呆気をとられたリザードマンたちの武器は竜に噛み砕かれたように無秩序に砕け、体を殴られた個体はスッパリと時差を発生させながら切断され、消えた。
「舐めるなァ! 我々は……決して独りでは、ないのだ!」
 一体が盾で受け止め、受け流し。その個体に肩車させるように後方から一体が飛び乗る。二体目の無事な盾で、気迫で覆われた盾のオーラを衝撃波と共に放ってきたのだ。曲芸のような連携に響も動揺するが、衝撃波の軌道を読み切る事が出来ず足を取られ、動きを封じられた。
 ぴたりと止まった足以外も全く動かない。
「こりゃあ見事だね。でも……」
 ニッ、と響は笑って、敵集団前方からくる衝撃を見ていた。
「響母さん!」
 ブレイズセイバーでリザードマンたちを広範囲に衝撃波を放ち、尽くを打ち払い続けた娘が見えるのだ。炎の魔力を剣にまで絡ませて打ち据えて来たのだろうで、じんわりと、燻る煙が、見える。
「邪魔はさせません。母さんと奏の周りを囲む時点で、慈悲は、ありませんから」
 二撃目の氷の矢を放ったあとも、瞬は氷の矢を放ち続けていた。
 鎧を無視した貫通力、氷の矢に付属された要素は、奏の進撃を援護する弱体属性ばかりであったのだ。目が見えなくなった者、武器を落とし、握れなくなった者、いざとなれば攻撃手段の尾を切り落とす部分的負傷を多く作った影の功労者の瞬はどこまでも涼しい顔をしている。
「我は……何故だか知っている。これは我も知るはずのない言葉だ……」
「リーダー?……何を知ってるんっすか?」
「『前門の虎、後門の狼』だ。我々は此処から人類を追い出す為に来たが、初めから……『勝つことも、生き残ることもできない運命にあった』」
 災いの始まりは、昔の縄張りのある地域に躯の海から復活を果たしたこと。
 オブリビオンである限り、ずっと第二の生を謳歌できるはずがないのだ。
 途中で言葉が途絶え、衝撃波を纏った広範囲に凍れる矢がリザードマンの首に、体に降り注ぐ。矢から逃れても武器が当たった対象を切断する手腕から、逃れる術を持たなかった。因果が此処に巡りきてしまったのだ。


 災いは災いを呼び続ける。結末として、因果すら呼ぶ寄せるのだ。
 オブリビオンにとって、宿敵である猟兵と同様に――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『崩竜・ヴァッフェントレーガー』

POW   :    ネーベルヴェルファー
【自身の周囲に生じた魔法陣】から【何もかもを“崩壊させる”火球】を放ち、【超遠距離からの面制圧爆撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ヴィルベルヴィント
【顎】を向けた対象に、【消失や崩壊を与える速射のブレス】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ホルニッセ
【自身の“崩壊”すらも省みない状態】に変形し、自身の【射程距離】を代償に、自身の【巨体による攻撃力や機動力】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Purge

『やはり奪い返せなかったか』
 消え去っていく同胞に声を掛ける様は、至ってシンプルで、慈悲などあるものではなかった。
『我は出来ぬものと、思っていた。星の巡りもそう告げている』
 崩竜・ヴァッフェントレーガーは翼を広げ、笑う。彼をボスと慕った同胞たちの望みは知っていた。彼らは昔の、縄張りを取り返したかっただけだ。
 甦った以上は今を生きる者でであると、信じていた事も。
『我は行動の後押しをしたに過ぎない!……が、慕うべき【竜】を間違えたのだ、お前たちは』
 猟兵たちに蹴散らされ、消え去っていったリザードマンの耳に届かない事を確かめて呟く。
『吼え謳え。躯の海でまた煌めきの果てに凱旋し、降り注ぐようにこの地へ舞い戻るがいい』
 バサバサと翼を畳み、猟兵に牙を剥く。同胞殺し、と罵ることは無く。ただ、強大な力を持つ鱗在る物として。多くのリザードマンに担がれた竜として。
『我は全てに崩落を呼ぶ。いつか失われる物を、崩壊させるのだ』
 ヴァッフェントレーガーは、居るだけで崩壊を喚んでしまう。
 生物や非生物に関わらず、海も空も。湖も丘ですら物質を問わない。
『美しい物ほど、我は手に取り大切にすることが敵わぬ。同胞にも、結果として同じことを強いた……であれば』

 大きく息を吸い込んで。声の限り、大声で叫んだ。
 空気を震わせて、宣言するように。

『今宵は星が強制的に此処へ来る。それらを纏めて、崩落させてやるのだ!』
 それは人類が楽しみにする事を拒否するように。
 蛍を捕まえる少年の夏休みのような、気軽さで。
『崩竜の名に置いて、この世界を星無き夜へ塗りつぶしてやろう!』
 星降る夜は始まっている。猟兵の視界の端々で、煌めきが光る。
 ――これらが全て崩落し、崩竜の力で欠落したとしたら。
 強制的にこの場に集められた流星が存在自体、消え去っているかも知れない。
真宮・響
【真宮家】で参加。

・・・・ふざけるんじゃないよ。駄竜が。リザードマンのやり方は確かに歪んでいたが、自分達の住む場所を取り戻したい気持ちは本物だった。それに竜への敬慕は純粋なものだった。その気持ちを利用して使い潰したアンタを許せない。ここで倒す。

攻撃の性質から近づくのは危険そうだね・・・奏に防御を頼んで、【残像】を使って攻撃を回避しながら、【槍投げ】【串刺し】【先制攻撃】を当てることを狙う。追撃は無敵の相棒で呼び出したゴーレムにやって貰おうか。デカいのはデカいので対抗するよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

なんか、凄いムカつきます。ようするにリザードマンは貴方の勝手な恨みで死が分かっている戦に駆り出されたと。・・・それに仮にも絢爛の星としては星を粗末に扱う輩は気に入りません。少々私情が入ってますが、貴方はここで倒されるべき存在のようです。

強そうな竜の攻撃には完全防御態勢で挑みます。【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】の上に信念の盾で攻撃から仲間をすべて【かばう】つもりで。攻撃範囲によっては【拠点防御】も併用し、敵のブレスには【激痛耐性】【火炎耐性】も使います。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

姿こそ圧倒される大きさですが、心は自分の野望の為ならどんな事もする大変器の小さい輩のようで。こんな奴に利用されて死んでいったリザードマンが哀れでなりません。せめて貴方の無軌道な破壊を止めましょう。

僕は遠距離支援を担当。【高速詠唱】【全力魔法】で氷晶の槍を【二回攻撃】で撃ちます。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【武器落とし】【目潰し】【部位破壊】も乗せましょうか。余裕があれば響母さんと奏の攻撃に【援護射撃】します。



●Anger
 
 猟兵達は、崩竜の声を聞いていた。
「……ふざけるんじゃないよ、駄竜が!」
 真宮家の母、真宮・響は崩竜の心の在り方に決定的な欠落、もしくは歪みを感じ、叫ぶ。この場に手頃な壁があったのならば、拳で思い切り叩き、砕かんばかりの勢いであっただろう。
「リザードマンのやり方は確かに歪んでいたが、自分達の住む場所を取り戻したい気持ちは本物だった! それに、竜への敬慕も、とても純粋なもので……!」
『だからこそ、我は【己の意思で行動し、達成してみろ】と後押しした。それの何が悪いことか』
 崩竜をも無条件で慕っていたが、始めから失われていた者たちだ。戦士の集団に決して戦うなという方が酷であった、と言わんばかりの静かな姿勢を貫く竜。
「なんか凄い、ムカつきます」
 言葉では上位種として相応の事を言っているのだろうが、納得できない真宮・奏は矢継ぎ早に問いかける。
「ようするに、リザードマンは貴方の勝手な恨みで、……死が分かっている戦に駆り出されたと!」
「慕う気持ちを何だと思ってるんだ、アンタ。使い潰していいもんじゃないんだよ、アンタは許せないね!」
『戦士は死を恐れない。意思の無い手駒としてではなく、万が一にでも望みを叶える綺羅星になれと、告げたようなもの。人類には柔軟な考えが足りないようだ』
 あぁ言えばこう言う、と母と娘が業火のように怒りを露わにすれば、やや落ち着いた神城・瞬が言葉を継ぐ。
「あなたの姿こそ圧倒される大きさですが、心は自分の野望の為ならどんな事もする大変器の小さい輩のようで」
 紳士的に柔らかめに包まれては居るが些か挑発的に、崩竜へ言葉を投げかけた。
 真宮家にとっては、相容れないタイプの言動を吐く者なのだろう。
「こんな奴に利用されて死んでいったリザードマンが哀れでなりません」
 バサッ、と翼を大きく広げて二度三度羽ばたき、崩竜は体躯を空へと浮かべて怒号とも取れる声色で叫んだ。
『我を一切の心の無き者と一方的に断じるは何故か! 同胞の声を、人類の声を傾聴しているにも関わらず……我が率先して群れを率いらずに悪知恵を働かせたと見るか鱗無き者共よ!』
 ビリビリと、衝撃派のように風を起こして捲し立てるように吼える。
『見当違いだ! 我が率いれば我を慕う同胞は、あるべき死とは別の死の運命に囚われる! 崩壊を司るは伊達ではない、想いかけようがそれらは崩れ去ってしまう!』
 気持ちを大事にしようとしても、手元に残り続けることはないので、応援することしかできなかった彼は憤る。出来ることなら、率先して同胞と風を感じる事を望む猛き蛮勇の竜なのだ、彼は。しかし、持つ能力がそれを許さない。
「……『戦士を戦士として』殉職できるように、していた?」
「それは、それです響母さん。……星を消す、といいましたか? 仮にも絢爛の星を名乗る者としては、星を粗末に扱う輩は気に入りません」
 ――少々、私情が入っていますが。命の灯火も、輝く星も、無作為に扱って欲しくはありません。
 奏の気持ちを汲んで、響と瞬は断言する。
「アンタはここで、倒されなきゃだめだ!」
「せめて、貴方の無軌道な破壊を止めましょう。母さん任せて下さい。僕が先手を!」
 飛翔する翼を貫かんと、瞬は高速で詠唱を開始する。
 ――逃しませんよ。貫いて見せます。
 杖を差し向けると、氷晶の槍が生成され霜を振りまきながら崩竜に向かって直線的に飛んだ。
「続けて、もう一つです! 既に詠唱は、終わっていますから!」
 両翼を潰さんと、氷晶の槍は時差で放たれ大気を凍らせては飛んでいく。
 多少なりとも触れれば、体躯に異変が起こるだろう異常属性を付与された槍。
『翼を潰せばそれで、狩ったつもりになれると? 甘い、我はそんなに、甘くはないぞ!』
 竜の巨大が軋むような音を生み出している。聞こえているが見た目への変化は特に無い。大きな腹に両手を当てているだけだ。
 ……では、それは何の音か。
『言った筈だ、全てに崩落を呼ぶと。自分にも例外などない!』
 体の中身を自身の力で徐々に消し飛ばし、大きな代償と共に軽くなった体で倍近く速さを増して、二度の槍をどちらも避けてみせた。
『弔いの火として、星を消し飛ばす! 思い描く理想ですら否定される言われは無いぞ!』
 急激に失った物の影響で軽く血を吐き零しながら崩竜は攻撃に転じる。
 翼と両手を起点に、大きな魔法陣が現れ、術者である崩竜の能力を色濃く写した火球が射程距離を短く放られた。
 吐き出す火炎ではない為、会話に支障起こらない。
『手始めに、卿らの命の灯火で我を侮辱した罪を贖え!』
 大気を砕き、飛ぶ火球は真宮家の三人目掛けて飛んでいく。
 ――強そうな竜の攻撃には、完全防御態勢を取る必要があるでしょう。
「目の前のものは、絶対護ってみせますよ! 二人共、私の後ろにはやく!」
 奏はその場を動けなくなる事と引き換えに、超防御で崩壊に対抗するべくエレメンタルシールドにもブレイズセイバーにも魔力を通してオーラを何重にも纏わせる。
 相手の属性は、特殊能力を足されていても炎。激痛にも、火炎にも耐えられるようにオーラに更に編み込んだ。体は動かなくても、完全に動けなくなる前に構えていたものだ、大丈夫。……きっと。
 火球は目論見通り、奏に直撃し、魔力のオーラを溶かしたが、盾や剣、奏を溶かすことはなかったようである。
「一時的に動けなくされても構いません! ここが私の、絶対防衛拠点となるのですから!」
 信念の盾は、揺るがなかった。彼女がそこにあるかぎり、無敵と言えるだろう。
 ――さぁ、アンタの力を借りるよ。共に戦おう。
 娘の背後から飛び出して響は手を広げ、どこか放浪の戦士を思わせる身の丈二倍はあるゴーレムを召喚する。ブレイズブルーを煌々と燃やすように輝かせて、槍投げのような豪快さで懐を貫こうとすれば避けられた。
『小さな攻撃に、当たる我では……!?』
 響の動きを写した動作で、ゴーレムが追従し同じ動きをなぞり、巨大版の槍は崩竜の懐を抉って貫いた。してやった、と響はニッと笑って言い返す。
「アタシじゃダメかもしれないけど、デカいのはデカいので対抗するに限るよ」
 懐に刺さった槍が抜けないまま。逃れようと暴れもがくが既に遅く。

 響の動きを写したゴーレムの手によって崩竜は地面へと――叩き伏せられた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

紫丿宮・馨子
【箱庭】
…矛盾と、自棄を感じます
美しい物や大切な物を自身の意志に関わらず崩壊させてしまうと悲しむならば
なぜ自ら崩壊の業をふやすのですか
崩壊があなたに課せられた役目
けれどもそれに悲しさや寂しさを抱いたのならば
なぜ…

強敵とお見受けしました
懐剣で自分の左腕の内側を縦に斬りつけ
UCの代償の血を
出し惜しみしない
風月の封印を解き
クロウ様と自分の武器を強化
代償は立っていられる限界まで払いましょう

敵の攻撃には扇から範囲攻撃の衝撃波を放ち
相殺できずとも軽減を試みる
クロウ様の動きに注視して
邪魔にならぬよう、援護となるよう

符に呪詛/破魔/催眠術/誘惑/精神攻撃を乗せて放ち
動きを鈍らせることを狙う


杜鬼・クロウ
【箱庭】
アドリブ◎

随分と悲しい性を背負った竜だなァ
同情の余地はねェが
俺はテメェとは生憎正反対にいるモンでな
この景色を、世界を護る為に今ココに立っている(威厳・存在感

総てを崩壊させるなら
その総てを阻止するまでだ
(俺は馨子と星見するのを楽しみにしてンだよ)

丘か湖を目指すようなら足止めも兼ね対峙
手袋を代償に【無彩録の奔流】使用
螺旋剣で攻撃
近づきすぎず
敵の火球は属性攻撃で水流纏わせた剣で真っ二つにし回避(見切り・第六感
タイミング見て敵の急所を討つ時に超近距離で二度抉る(部位破壊・2回攻撃

テメェが最期に目にするのは無数の星々が輝く夜だ
崩落の下に生まれた哀れなお前へせめてもの手向けだ
しかと目に焼き付けろや



●sky garden

 猟兵に地面に叩き伏せられ、崩竜は強制的に視界いっぱいの空を仰ぎ見た。
 キラキラと無秩序に煌めき、無作為に飛んで行っては消えていく。
 ……何度も、何度も。

『あれらを全て消しされたのなら、人類は絶望に溢れるだろう? 生きて空を飛翔していた頃も、同じ時期にこの現象は存在した。実に、不愉快な眺めだ』
 崩竜が肢体をぐるりと転がして、起き上がると、猟兵が姿が目に入った。
 彼が転がった地面は、じわじわと他の猟兵が咲き誇らせた草花も枯れ果て、剥き出しの土へ。構成された物質として脆くなり、いずれ土よりもっと細かく崩壊していくだろうが、視界の悪さが原因で失われた事に誰も気が付かない。
「……矛盾と、自棄を感じます」
 紫丿宮・馨子は崩竜の有り様をそう表現した。
「美しい物や大切な物を、自身の意志に関わらず崩壊させてしまうと悲しむならば――なぜ自ら崩壊の業をふやすのですか」
 それが馨子の視る、矛盾と自棄。
 望まぬとも、吐き出す吐息ですら、全てを崩壊させていく程の強大な力を持っているはずなのに。
『そう在れ、と。この翼を生やし生まれ出たことより定められた事。我に拒否を選ぶ権利などない』
 出来る事は、触れず。干渉せず。
 眷属の戦士に【お前たちなら出来る】と応援する事だけだった。
 関われば突然の別れに悲しみが湧くだけ。後に、鑑賞して、感傷するだけだ。
「随分と悲しい性を背負った竜だなァ、……まァ、同情の余地はねェが」
 杜鬼・クロウはさらりと、躯の海より戻ってきた竜の在り方そう断言する。
「【崩落】があなたに課せられた役目。けれども、それに悲しさや寂しさを抱いたのなら、なぜ……」
『崩竜が、永遠の孤独に飽きてはおかしいだろうか。我が同胞と共に在れないのなら、全て同一に消えるのが自然だろう?』
 語尾が消え入りそうな呟きにも、崩竜は答えを返す。
 同時に消えれば全ては同じ場所で、再び声を交わす夢を視ることも在るだろう。
 人類が多く集まる場所があるというなら、冥府の世へ道連れだ、と言わんばかりの自然さで竜は語る。
「俺はテメェとは生憎、正反対にいるモンでな。この形式を、世界を護る為に今此処に立っている」
『!』
 クロウの堂々とした宣言に、おもわず崩竜は息を飲む。
 過去に彼の首を討ち取った強い冒険者の眼差しと、よく似ていたからだ。
 のらりくらりと、躱していればいずれ、甦ったこの首すら持っていかれてしまうだろう、と考えが過る。
『護る、……護るか。では共闘する仲間もこの風景の全ても! 全てを護ってみせるが良い!!』
 再びの消滅の未来を振り払うように。頭を大きく振って。
 翼を大きく広げて仮にも王を名乗る竜としての威厳を、大きな声で怒鳴り威圧を吐き出して猟兵へと牙を爪を、向ける。
「総てを崩壊させるなら、その総てを阻止するまでだ」
 戦力を少しでも削ぐように、黒方符【後朝】に異常を齎す呪を施し、馨子は放つ。
 そんな頼もしい姿を横目に、宣言するクロウ。符は、迷いなく飛んでいくが放つ動作も軌道も目視されている為に上手くは当たらない。
 脚や体に張り付いていたら、形成は一気に猟兵側へ崩れていくだろう。
 ――俺は馨子と星見するのを楽しみにしてンだよ。
 歴戦の猟兵なクロウが強気に口角を上げれば、何でも可能にしそうな雰囲気を崩竜は感じていた。
 ――まるで王者の風貌、……いや、そんな馬鹿な。
 生唾を飲み、幾つもの否定された未来が崩竜の思考を鈍らせた。あれも、これも、……行動に移しても眼前の人類に阻止されてしまうのではないか、という。
『総てというなら、我は最大被害を及ぼしてくれよう!――止めきれなければ、後悔するぞ!』
 威圧のための翼を大きく広げ、ばさりばさりと風を大きく巻き起こして飛翔する。
 暴風のように風を乱舞させて目指す先は、星がよく見えるベストポジションの丘だ。
「待て待て。そんなに慌ててどうするよ?」
 ――神羅万象の根源たる玄冬に集う呪いよ。秘められし力を分け与え給え。
 声を掛ければ律儀に応える竜だ、声を掛ければ傾聴の姿勢になる。
 羽ばたきながら、クロウの話を聞こうとしているのか攻め滅ぼしにいかない。
 ――律儀というか、此処まで来ると寂しがり屋か?
 詠唱を、言葉を返さない事で足止めしている間に済ませ、一気に開放する。
「術式開放(オプティカル・オムニス)──我が剣の礎となれ!」
 クロウは手袋を代償に、玄夜叉は姿を変えていく。
 魔剣は代償の影響を大きく受けて、黒く螺旋を描く剣へと。
 刺し貫く事に特化した、心の臓を狙うに適した剣とも言えるだろう。
『それで我を穿ち、必ず殺すと? 言いたい事はそれだけか?』
 果てしない空に魔法陣を展開し、他の猟兵の活躍で射程距離の短くなった火球は的確に相手を滅ぼすように放たれる。
 ……そう、馨子に狙いを定めて。
『当たれば死するぞ?』
 ニィ、と崩竜は笑った。
 何もかもを崩落させる火球を、滅ぼせる存在があるわけがないと、力を誇った笑いである。
「当たれば、な」
 螺旋剣に水流を纏わせ、馨子の前に真っ直ぐに飛んできた火球から庇うように軌道線上に割って入り、真っ二つに切り捨てるクロウ。
 ジュウウウと音が周囲に響き、火球は切り捨てられ、火球自体を消す力しか発揮できないまま消えてしまう。刀身は勿論当たっておらず、纏わせた水流が霧散し消えただけで、蒸発して消えたようにしか見えなかった。
「ほらいいから、降りてこいよ。俺が一番、凶悪な滅ぼすべき敵だろ?」
『そう、だな……景色より、最大の敵を排除が先のようだ』
 向かう先を変えて、思案するように状況を見据えていた馨子へと矛先を変える。
 牙を剥き、最大限の強き者であるという証を、ひとつでも残さんと。
「クロウ様から逃げるのでございましょうか。真っ向勝負からも、逃げるのでございますね?」
 扇を振るうと、普段よりも大きな強靭な衝撃波をが発生した。
 彼の刃が届くようにと援護の想いがそうさせた。思いは衝撃波に乗り、空の竜を的確に撃ち落とす。
 飛行能力を忘れたのかバランスを失って背中から真っ逆さまに。大きな巨体はこうして……二度目の落下を果たした。
 ふんわりと、華やかな香りが漂った事で気を取られ強襲からの不意打ちに完全に失敗に終わったのである。
 馨子の放った符は、静かに効果を発揮していたのだ。誘惑の香りが、ずっとその場に漂っていた事に、気づけないくらいに。
「……強敵と、お見受けしました」
 ――であれば。出し惜しみしない。
 何度も地を舐める竜を横目に見ながら十二単の袖を振るって、懐刀の宵暁で左腕の内側を縦に斬りつける馨子。
「我が血と精神力(こころ)を捧ぐ……」
 柔らかい所からぽたり、ぽたりとどんどんと溢れていく滴り落ちる血を代償に。
 風月の封印が解かれ、全盛期のような姿に活性化され古さを全く感じさせない。
 七弦のを爪弾くようにすると、対応する色が世界を彩るように音を奏でる。
「力導きて、彼の者に授けよ」
 不可視のオーラが、音共にクロウの武器に届くと螺旋剣は形状は変わらないものの、剣の大きさが二倍にまで膨れ上がった。殺傷能力が増していた所に更に魔力が足されたことで、剣が在るべき姿で応えたのだろう。
 体積が増えても重さを感じてないように、景気よく振るうと竜を地面に縫い付けんと腹を、素早く二度穿つ。
『ぐっ!?』
「テメェが最期に目にするのは無数の星々が輝く夜だ」
 血反吐を吐き、まだ終わらないと悪あがきをする竜は、地表から空を飛ぶ事すら忘れ去って。地表に魔法陣を展開する。心は尽きぬども、魔力はもう、限界で火球はただ一つしか生み出されなかった。
 標的を見定めれば、狙われた場所は消し飛ばされてしまうだろう。
『星、星などに価値などっ!!』
「ですから、あなたが星になってみるのは如何でございましょう?」
 馨子の唐突な提案に、竜は言葉を失った。
 消すのではなく、そのものになってみる。
『は、ハハハ……なんだそれは』
「しかと目に焼き付けろや」
 浮遊する火球を、超強化が施された上にもう一度水流を纏った玄夜叉が弾く。
 斬るではなく、放った者へと打ち返した。
 強度としても申し分なく、今度は絶妙なバランスで。水も炎も消えること無く。
「崩落の下に生まれた哀れなお前へせめてもの手向けだ」
 火球は崩竜の顔面に向けて飛んでいった。

 避ける気力はなく、真っ向からそれを受け、竜はふと気がついた。
『煌々と燃える王者の星は、我が独り占めに出来るな……?』
 顔面にぶつかった熱い熱量に思うことは特になく。痛いという感情はない。
『崩壊し失われていく崩壊の能力にも、この……【感情】だけは』
 自分が発生させたものであれ、これは自分だけの、贈り物のようなものになりえないか?決して失われないもの。感情に、ようやく気がついたのだ。
 これから体を崩壊させて、【星に成る片道チケット】享受する事を考える。
 どことなく、……ロマンチックな気分になった。
『欲しかった【失われないモノ】をようやく手に入れた……』



 崩竜は自分の崩壊の力を受けて徐々に崩壊していく。
 自壊とは違うのに、顔面から徐々に肢体も朽ち果てて。
 星が燃え尽きるように。『初めて手に入れた自分だけのもの』と共に。
 ――躯の海へと帰還していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『星降る夜の物語』

POW   :    ご馳走を食べる

SPD   :    音楽に合わせてダンスを踊る

WIZ   :    星空を見上げて過ごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


★星降る夜も

 崩竜が光なって溶け消えて、星無き夜は回避された。
 戦いに身を置いた猟兵や観光を目的とした人々が光の流れ踊る空を、ようやく静かに見上げる事ができる。視界いっぱいの夜空と、忙しく縦横無尽に疾走る星。
 ――闇に染まったキャンバスに、光を散らし、自動でその先を描くように。
 ――誰かの願いを探すように、願いを聞き届け叶えようと働くように。
 この周期的な一夜のことを、『願いの星降る夜』と誰かが言ってた。
 沢山の星に浴びるような願いを込め続けたら……。
 ……叶わない願いはない、という由来だろうか?

 星降る夜に合わせて訪れた伝統の衣装を着た商人が、野外の簡易レストランのような屋台や飲み物を売る屋台を組んでいる。手元が見える程度の明かりを灯して、商売を営むものがあるようで、大きなワイン樽があったり、柑橘類の匂いもあるようだ。
 探せば不思議な屋台も在るかも知れないが、飲み物屋台の方が、雰囲気重視で多いようである。敷物代わりと毛皮を配布する狩猟の冒険者とかもいるようで、丘の上は大盛況だ。

 屋台の側では静かな音楽を、リュート音楽隊が星降が終わるまで奏でているらしい。彼らの音楽の届かない静かな場所まで移動することも勿論出来る。
 それくらいの丘で、祭りの夜のようにそれぞれの夜を過ごせるのだ。

 星振る夜の、オブリビオンの願いは墜落し、誰の元へも降り注がなかったが……。
 猟兵たちならば、どんな願いを星に託すだろう。
 静かに眺めるだけでも、星が願いといつかどこかで叶えてしまうかも知れないが。
 ――稀な夜を、どう過ごすかは、猟兵次第である。
真宮・響
【真宮家】で参加。

崩落の宿命を負った竜か。アタシは竜が助けを求めているような感じがしてね。やっと安らぎを得られたんだね。アイツも。アタシは大丈夫だよ。確かに楽な人生ではなかったが・・・奏と瞬がいるからねえ。

瞬、飲み物ありがとう。さあ、家族3人で星を見ようか。綺麗だねえ。死んだ命は星になるという。死んだ夫も、瞬の故郷の人も、無数の星となって瞬いているのだろうか。勿論、崩落の竜も。苦しみ続けた、あいつが、同胞と共に、せめて星となって安らぎを得ていることを願うよ。アタシの願いか。が「子供達がこれからも健やかに育ちますように」だね。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

私達家族が思っているより、竜の事情は深刻でした。確かに、深く関わって、大事にしたくても、すべてを崩落させてしまうなら、自棄になりますよね…せめて、崩落の運命から逃れて今頃休んでいるのでしょうか。私達家族が一緒にいられることは、凄く幸せなんですね。

さあ、星を見ましょうか。これは見事ですね・・・一晩きりなのが勿体無いぐらいです。私の願いですか?「崩落の竜とリザードマンさんが仲良くいつまでも星として瞬いていられますように」いれますように」と「家族3人がずっと一緒にいれますように」です!!


神城・瞬
【真宮家】で参加。

情を掛けるとしようとすると、すべてを崩落させてしまう身だと、全てを壊してしまいたくなる気持ちは分かるような気がしますね。僕には竜の嘆きの裏に、助けてくれ、と言ってるように思えました。やっと、崩落させなくて済むんですね。

見事な星空ですね。あの星の中に、故郷の皆もいるのでしょうか。僕の願いですか?「彼の崩落の竜の眠りが安らかなものでありますように」と、「いつまでもこうして家族3人と笑顔で過ごせますように」ですかね。


杜鬼・クロウ
【箱庭】
アドリブ◎

先の戦闘で払った怪我、見せてみろ
俺達ヤドリガミは本体さえ無事なら平気なトコあっけど
俺が゛したかった゛ンだよ(七つ道具から包帯取り出し手当て
あンがとな、色々助かったわ(目合わせず

…イイぜ
元々、お前と星見する為に来たンだし

屋台で二人分の飲み物買い片方を渡す
毛布貰い丘に敷く
酒飲みながら音楽聴いて星眺める

さっきの竜もこの空に輝く星々に混ざり俺達を見ていたりしてなァ(くす
馨子は誰かとこうして星見たコトあるか?
俺は人の姿を得たガキの頃に主達と見たぜ

ン、そうか
寒いか?毛布もう少し貰…!

彼女の行動に驚くがその儘に

縮まる距離(見えない壁が薄く
思いの外安らかな鼓動
心地好い

今願うは、

流星が降る


紫丿宮・馨子
【箱庭】
応急手当、にございますか?
肉体を再構築すれば…と言いかけて
精神力も代償に差し出したため
再構築のための精神力が足りないと気づき
気遣いに甘える

クロウ様
宵から暁まで、共に在っていただけますか?

敷物の上に共に横になり
飛び交う星を眺め

美しゅうて不思議なものにございますねぇ

星見経験
器物の頃は主の姫様方がこっそり覗き見た夜空を見ただけ
人の身を得てからは
星を見上げる時は
いつもひとりにございましたね
淋しげに告げ

ではこれは
誰かと星を見る初体験にございますね
揶揄するように

星を見上げるとよぎる千年の孤独
血を失いすぎたせいだろうか
とても寒い

クロウ様
少し触れても?
横になったまま
彼の腕を抱きしめるように温もりを貪る


エドヴァルド・ゼロ
――平和なことよな。
賑わいを見てそう漏らさずにはいられなかった。
いや、実に結構。ワインが進むのも仕方あるまい。
色々と試し飲みするのも今宵くらいは許されよう。

ワインを片手に空を仰ぐ。
リュートの音色は耳に心地よいな。

星に何を祈るか考えてはみたが、特に思いつかん。
幼少のころより自分の力でどうにかするのが好みなのでな。
故に――……そうだな。
俺が迷ったときには背を蹴ってみてはくれないか、空の眩しい子らよ。
そこから俺の背までは少々距離もあろうが、なぁ、頼んだぞ。

どこかのタイミングでブレィブスを見かけたならば労いの言葉を。
長く拘束する気はないが酒の一杯くらいは奢ってやるさ。
彼が守ろうとした美しい夜だからな。



★Parent and child star

 ――崩落の宿命を負った竜、か……。
 崩竜は既に消え去ってしまったが、真宮・響は思い耽る。
「アタシはあの竜が助けを求めてる感じがしてね。……やっと、安らぎを得られたんだね、アイツも」
「……私達家族が思っているより、竜の事情は深刻でした」
 真宮・奏も母の言葉に頷いて肯定を示す。
 敵対し、攻撃のために直ぐ側まで接近して、態度と言動と行動を観察して。竜の欲する『安らぎ』すら無秩序に崩落させていた事に嘆いているように、二人の瞳には映っていた。
 心の内では、自分すら巻き込むどうしようもない力の制御に叫んでいた筈だ、と。
「深く関わって大事にしたくても、全てを崩落、消失させてしまう事を繰り返したら……自棄にもなりますよね」
「情をかけようとすると、自然と死の運命を与える事と同じになるを、何度も経験していたのでしょう」
 二人の言葉を聞いて神城・瞬も、かの竜の在り方を語る。
 その両手には器用に三つの木製のカップを持っており、ふんわりと芳醇な葡萄の香りが鼻をくすぐった。祭りの夜を護った冒険者ならと、気前よく商人が無償で提供してくれたものである。
「手を出せば壊れるなら、いっそ全て壊してしまえ、という気持ちは分かるような気もします」
「今はもう崩落の運命から逃れて休んで居るのでしょうか」
 ――竜の事情と比べれば、私達家族が一緒にいられることは、凄く幸せなんですね。
 強い絆で結ばれた親子と対峙していた事を考えれば、あの竜は、とても複雑な気持ちであったことだろう。
「僕には……嘆きの裏側に、助けてくれ、叫んでいるように思えました」
 素直に語る言葉を、『王』と二つ名に冠した事で、容易に告げられなくなったのかも知れない。いつの頃からか不平等で理不尽な世界を恨み、常に誰かとあろうとする人類を一方的に恨んで。慕う者から自身を遠ざけ、『孤高』であるように努め、持ち得る力と同様の王者であろうとしたのだ。
 全てを恨むには恨みきれない、憐憫な瞳をしていたように瞬は思う。
「でも、これでやっと崩落させなくて済むんですね……って、母さん?」
 瞬がかの竜を想う事をやめようとした時。
 母がふと立ち止まっていたようで足を止める。
「あぁ……少しだけ感傷に浸ってね。アタシは大丈夫だよ、確かにあの竜のようにここまで困難が何度もあって楽な人生ではなかったが……」
 うるっ、ときていた目元をぶっきらぼうに軽く拭って。
 子どもたちに悟られぬようにもう一度歩き出す。
「……奏と瞬が、いるからねぇ!」
 母の言葉に、二人の子どもたちは笑う。
 放物線を描くように、空を分割するような星がいくつも飛んでいく――。

 間宮家はホンの少し、リュート音楽隊の奏でる音楽がかすかに届くくらいの場所に移動し腰を落ち着ける。
「瞬、飲み物ありがとう。さぁ、三人で星を見ようか」
 木製のカップを受け取って、毛皮の毛布を敷いて。
 間宮家で静かな時間を過ごすと同時に、空を仰いだ。
 遠い空の向こうで星同士がぶつかるんじゃないか、という速度もあればゆるく落っこちてくるんじゃないかという星もある。プラネタリウムよりも騒がしい空模様は何時間と眺めていても飽きるものではないだろう。
「これは見事ですね……一晩きりなのが勿体ないくらいです」
 法則性もなければ、一貫性もない。
 無秩序で、どこまでも降り注ぎ、吹き上がるが正しい夜空である。
「あの星の中には、故郷の皆もいるのでしょうか」
「きっと、今の瞬を見て安心しているよ。元気で居てくれた、ってね」
 瞬が夜に吸い込まれるような小声で呟いても、母は星に負けない、同様の明るい言葉で返した。
「死んだ命は星になるという伝承は、この地にもあるそうだよ。死んだ夫も、瞬の故郷の人だって、騒々しい滝のように流れる星に紛れて静かに瞬いていることだろうさ」
 飛んでいく星々が落下した、という記録はこの地に季節ごとに通う商人が言うにはあまり起きることではないらしい。何度も軌道を変えて、何度も何度も、誰かの声を、誰かを見守る何かとして、飛び交っているのだろう。
「勿論、崩落の竜も星となって還ったはずさ。苦しみ続けたあいつが、同胞と共に、せめて星でいられる間は安らぎを得ている事を願うよ」
 ね、二人は? と響は二人に話題を振る。
 奏も、瞬も、星空を見ていて考えていた事を呟いた。
「私の願いですか?『崩竜の竜とリザードマンさんが、仲良くいつまでも星として傍にいられますように』と、……『家族3人がずっと一緒にいれますように』ですね」
「僕の願いですか?『彼の崩落の竜の眠りが安らかなものでありますように』と『いつまでもこうして家族3人と笑顔で過ごせますように』ですかね」
 殆ど同一の願いを呟いた時、駆け上がる流星が、飛んでいった。
 それに少し遅れて、いくつか小さな星が後を追う。
 ……ボスを追う、群れのような規律の在る星の流れだ。
「母さんの願いはそれだけですか?」
 指先で、星の軌道をなぞるようにしていた瞬が問う。
 竜に対しての思いだけ、死んだ夫のことだけ、ではないですよね? と、分かっていてそれを問う。
「アタシの願い、か……」
 子どもたちが考え答えた事を、母である響が答えないわけがないと、奏も笑ってその答えを待った。
「『子供達がこれからも健やかに育ちますように』、だね!」
 奏と瞬の肩を引き寄せて、豪快に母は笑った。
 子どもたちもつられて、笑う。
 ひときわ大きな星が、ゆっくりと湖を横切るように飛んでいく。
 間宮家の星は願いを聞き届けるように、視界の隅まで放物線を描いて。
 ――消えたのだった。



★Dream star
 
 風景の消失を起こそうとする彼らを躯の海に還した後の丘は。
 ――平和なことよな。
 星降りがピークに起こっていることで、とても野外と思えぬほど賑わっておりエドヴァルド・ゼロは思わず微笑みを零した。商業を行う者達が作り出した簡易商業通りは、何処を見てもワイン樽を運び込んでいる。
 荷を運ぶ馬などが難儀しそうな丘なので、人件費なども相当掛かっていそうであった。なにせ、丘に、大きなワイン樽だ。慎重に扱わなければ、損害も大きい。場所の固定などや、不慮の事故なども考えれば、相当難易度の高いことをしている。
「いや、実に結構。ワインが進むのも仕方があるまい」
 星々を眺めるのに、何も手元に無いというのは勿体なく。連れが居ない旅人なら、余計口寂しいものだろうとエドヴァルドにも独り軽く頷いて納得する。
「色々と試し飲みするのも、今宵くらいは許されよう」
 芳醇な香りのする方へ足を向けて、一杯、と店主に頼めば望みの一杯を提供された。鼻をくすぐる香りは、味わいを厳選したものであるとすぐ分かる。
 支払いを済ませて。
 人混みを避け、空がよく見えるところまで歩いた。
 誰もが浮かれ、空を見て。流れ征く星々に、思い思いの感想を乗せて。
 誰かは星々に、叶うかもわからない沢山の願いを申し付けて叫びながら。
 エドヴァルドも、空を仰ぎ、耳を澄ますとリュートの音色が星を操るようにしているわけでもないのに、軌道を読むような不思議な音楽を奏でていた。
「リュートの音色は耳に心地よいな」
 彼らに曲の感想を申し添えるのもいいだろうが、と思いながらワインを一口飲んで思考する。色んな人が、願いを口に出していたのを見た。
 掛ける想いは様々だ。
「……では、俺は星に何を祈るだろう」
 真面目に、エドヴァルドは考えていたが特に思いつかなかった。
「幼少のころより、自分の力でどうにかするのが好みなのでな」
 願うなら、自力で叶える事を好んだ。
 そういう家だったような気がしないでもない。
 そのように過ごしてきた男には、不思議と思いつかないもので。
「故に――……そうだな」
 視界いっぱいの星に、願いのようなものを想う。
 ――俺が迷ったときには、背中を蹴ってみてはくれないか。星の眩しい子らよ。
 エドヴァルドの想いに応えるかのように、キラリと輝いて、スゥ、と消える。
「そこから俺の背までは少々距離もあろうが、なぁ、頼んだぞ」
 湖の隅っこから湧き上がるように飛び出して三つ、四つと星々が流れるように視界を横切っていく。湖の終わりまで飛んでいき、重力に反してUターン。
 今描いた軌道をなぞり、段々と自由な軌道で泳ぐ魚のような気もしてくる。
 魚というなら、統率もなく、無秩序なのも納得だ。
 空の海であるならば。魔法の力で魚も在るかも知れない。
「あそこからここ、もしくは何処か別の場所へかぁ。アレが願い星ならグリモア使えないと大変そうだねぇ」
 空を眺めて居たエドヴァルドに声を掛ける誰か。
 呼ばれていないのにそこに居たように現れた声。
 風のように飾り羽を揺らし、二つの尾を揺らして。
 光に照らされたそれは、依頼を予知した猟兵だ。
「ブレィブスの守ろうとした美しい夜は、守りきれたか?」
「うん。ありがとう、どんなに理不尽な魔法を掛けられていても。星空は、こうでなくちゃね」
 星空を、目を細めて眺める猟兵に、酒を奢ろうと声をかけたら彼は首を振る。
「その葡萄酒はとても美味しそうだけれど」
 言葉を区切って、ふふふ、とミステリアスに笑った。
「僕への報酬は、皆がこの景色を護ってくれた事だけで十分だよ。最後に皆を送り届ける仕事もあるからね」
 手を軽く前に持ってきて、挨拶の動作を取って頭を下げる。
「――この星空は、いいよねぇ。どこまでも自由で、誰にも囚われることのないものだからさ。感謝で胸いっぱいだよ」
 ポツリと言葉を零して、彼はその場を後にした。
 まるで空を飛び交う星のように、一箇所に落ち着かない猟兵のようだ。
 そして、彼の姿から少し想像できないが、あれは執事の作法であった。
 エドヴァルドの持つ雰囲気に、その礼が正しいと思われたのかも知れない。
「――自由、か」
 それもそうだな、とエドヴァルドは思い直し、不規則に飛ぶ星々を気が済むまで眺めていることにした。
 ワインは、――もう少し楽しんでいられそうである。
 一つとして同じ輝きのない空の海が、宝石のように燦めいている限りは。



★Your, star
 
 稀な夜の平和を守り抜いた杜鬼・クロウは、気になっていた事を口にする。
「先の戦闘で払った怪我、見せてみろ」
 何時も通りの口調で。決して怒っている風ではない。
 ただ、激しい痛みがでる斬り方であった気がしたのだ。
「俺達ヤドリガミは本体さえ無事なら平気なトコあっけど」
「応急手当、にございますか? 肉体を再構成すれば……」
 紫丿宮・馨子は言葉を紡ぐのをやめる。
 先の戦いで馨子は強化の代償に、懐刀で深手を左腕に負ったのだ。
 ――体を再構成する為の精神力が足りない。
「俺が゛したかった゛ンだよ」
 止まった言葉の先を待たずに、クロウはウエストポーチからするりと包帯と止血道具を取り出した。何でも収まった七つ道具を使いこなし、手早く処置を施していく。
「あンがとな、色々助かったわ」
 きつくはないが止血は出来るほどの硬さでしっかりと。
 固定する最中に、ポツリ、と礼の言葉を混ぜる。
 馨子はそんな彼の気遣い、甘えながら耳に届いていた言葉を受け取った。
 腕を試しに軽く振るってみる。……大丈夫そうだ。
 会話は出来ているが、不思議と視線は合わない。
 返す言葉はこれ以上あるだろうか、と悩むほど、真面目に馨子は考える。
「クロウ様。ありがとうございます」
 まずはと、止血の返礼を。そして、伝えたいと思っていたことを。
「この後、宵から暁まで、わたくしと共に在っていただけますか?」
 一瞬ぽかんと呆気に取られそうになったが、クロウは自然に応える。
「……イイぜ。元々、お前と星見する為に来たンだし」
 クロウ越しに見えた空は一面の星々が煌めき零れそうなほど、夜空を染めていた。

 暁の時間帯まで寛ぐとしたら、屋台に寄って。
 あれらが必要だな、とクロウは素早く思考を巡らせて。
 目的の場所を、率先して探すと、そう時間の掛からぬうちに、見つかった。
「お、あれがよさそうだ。それ、二つだ」
 あの、と声をかけようとする馨子の声を遮って。
 クロウは風情のある屋台で声を掛ける。店主らしき男に大きな樽を指差し、注文すると恰幅のいい男は気前が良さそうに笑って応えた。
「それは俺の自慢の、一から育てた葡萄で。自慢の葡萄酒なんだ。一杯銀貨一枚くらいだが……」
「大丈夫だ。連れの分も俺が払うから、心配はないぜ?」
 自慢、自慢と繰り返す店主は木製のカップにたっぷりと芳醇な香りを添えて、飲み物を渡す。受け取ると同時に店主にクロウが払った金銭は、銅貨が多少多く含まれていた。それを静かに握らせておく。彼なりの評価に対する、お布施のようなものだ。
 視線で店主に口外は無用、と合図をすれば、彼は頷いて応える。
 そういう輩と時折目配せする印だ、彼は信用出来る商人であろう。
「この時期だ、風邪なんて引くような寒さにはならないだろうがついでだ、この毛布を持っていくと良いさ」
 店用に事前に配布されていたものらしいが、せめてもの礼というやつだろう、とクロウは察して笑って好意を受け取った。
 ――良い商売を、してやがるな。不正がないなら、それでいいが。

 その場を後にして、風が流れるようなリュートメインの音楽が聞こえ、見晴らしの良い丘の斜面に毛布を敷く。
 空だけ見るならそれこそ視界いっぱい。
 少し視線をズラせば、湖に反射して鏡合わせの二重軌道の光が伸びて疾走る。
「ほら、どーぞ?」
 一仕事終えた一杯に早々に口をつけて、葡萄酒の味を確かめながら、馨子を招いて共に空を仰ぐために横になった。
 右に、左に。上に、下に。
 花火以上に予測不能な軌道を描き、光の粒は飛んでいく。
 ほうき星のように長い尾を引いて飛ぶものすらある。
 通常の流れ星とは異なり、一夜に強制的に縛り付けるの魔法の影響なのだろう。
 飛び交う方角すら見失い、星々は、意味すら忘れて飛び続けるのだ。
「これは……美しゅうて、不思議なものにございますねぇ」
 馨子が零した感想は、美しいと不思議が入り混じり、感動が勝っていた。
「さっきの竜も、この空に煌々と輝く星々に混ざって俺達を見ていたりしてなァ」
 綺麗なものに混ざって、躯の海に還りに星に成った竜ですら飛び交っていたとしたら想像するだけ愉快な夜となるだろう。しかし、そうだったらもう孤独の王ではないな、とクロウは空想を思い描いてクスリと笑う。
「馨子は誰かとこうして星見たことあるか? 俺は人の姿を得たガキの頃に、主達と見たぜ」
 ふと、興味が湧いて。
「星見経験」
 返答は少し短く。
 視界を飛ぶ星々がいくつも通っていく間の時間、二人の間から音が消えた。
「器物の頃は、主の姫様方がこっそり覗き見た夜空を見ただけ」
 ヒューーと花火が打ち上がるような音を出す星まで現れたが、落ちる事なく軌道がねじ曲がり、飛んできた方向に逆戻りしていて、クルクルと回る。
 自己主張の激しい星まで在るときた。
 この場に現れた星は、この夜に囚われた歪なモノもあるのだろう。
「人の身を得てからは……星を見上げる時は」
 思考する時間と、紡がれる言葉。
 ゆっくりだけど、確実に返答に応える馨子。
「いつもひとりに、ございましたね」
 寂しげな声色で告げて。しかし、長い年月を見てきたヤドリガミはひとつ、真実として記憶しているものがあった。
「ではこれは。こうして横になり、誰かと星を見る初体験にございますね」
 何かを揶揄するように、そう言葉にすると、そこまで言葉を聞いていたクロウは口を開き……。
「ン、そうか」
 そこまでの話を聞いていたのか、という返事で短く返した。
 ――星を見上げると、過ぎる千年の孤独。
 大空に、沢山の星々がこの見渡す空に集められて飛び交っているのに。
 ぬくもり在る輝きの、海が空に湖に映って美しいのに。
 ――血を、失いすぎたせいだろうか。とても、寒い……。
 夏場で、寒いなんてはずはないのにとは思う馨子だったが、体を少し擦る程度では何も変わらなかった。
「あの。クロウ様、少し触れても?」
「寒いか? 毛布もう少し貰……!」
 クロウの返答より早く、横になったまま。
 馨子はクロウの腕を抱きしめるように、温もりを感じるようにした。
 顔を埋めて、温もりがいち早く感じたかった、と言わんばかりに。彼は彼女の行動に確かに驚いたが、振り払う事もなければその儘、好きなようにさせた。
 他の誰も見ていないが、死者の魂が空の星々と成って、とかであるなら大変視線があることになる。死者と成れば言葉を交して文句を言うことすらできないので、それは大変むず痒く思うクロウである。

 思えばふとした拍子に、縮まる距離。
 腕越しに感じる思いの外、安らかな鼓動。
 ――心地好い。
 何も思わないわけがなかった。
 暁が訪れるまでまだまだ時間はあるが。

 今願うは、――。
 鳳仙花の花が弾けるように、扇のように星々が一気に吹き上がる。
 そのまま、流星となって、――降ればいい。




 猟兵や、星々に掛けた願いを乗に混ざって。
 『この場の願いが、いつか未来で叶いますように』と。
 大雑把に大きな願いがあった。

 それが誰の願いかは、誰も知ることは出来ない。

 この願いは――遥か昔に邪悪な魔法使いが捻くれた魔法を掛けた理由である。
 大量の星を集めて、願い続ければ、いつか必ず叶うと信じて。
 前向きで、真面目な全力の祈りが、掛けられているのだ。

 ここでの願いが、誰かの指標となるか。
 直ぐ様叶うかは、わからないが。星もまた気まぐれだ。
 『いつか必ず叶う』事も魔法に含まれていいたのなら。
 きっと、――叶うのだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月19日


挿絵イラスト