大事な君の夢を見る
●あなたの大事なものは何?
「お前も、もう一人前だからな」
そう言って、父さんは珍しく微笑みを浮かべた。いつも厳めしい、仏頂面を浮かべていた父の笑顔は、どこか満足気に見えた。
「これをお前に渡しておく。俺も親父から……お前の爺さんからもらったものだ」
きっと代々、そうして渡されてきたのだろう。そうして差し出されたのは、ほとんど刀身の残っていない短いナイフだった。磨いて、研いで、この家の男達はこれを長い時を共に過ごしてきたのだろう、そんな歴史を感じさせる品。
「刃物としてはそろそろ使い物にならんが……、お守りみたいなものだ、持っておけ」
そうしてほころんだ父の表情を見て、どこか誇らしい気持ちになる。
わかったよ、父さん。大事にするから。
「なるほどーっ!!!」
は?
どこからともなく響き渡ったのは、甲高い少女の声だった。
「なるほどのう。良い、とてもよいぞお主。その小刀はこのベルちゃん様のコレクションに加えてやるのじゃ。光栄に思うがよいー!」
懐から何かが消える感覚。
「何を――!?」
眼を、開いた。野営の場所に選んだ廃城を照らす虹色の光。金色の髪の少女の姿。頭の悪そうな高笑い。そして――。
――そして、朝日の照らす中でその冒険者は目を覚ました。嫌な予感がして懐を探ると、やはり、そこに仕舞っていたはずの守り刀がなくなっていた。
●廃城の一夜
「そういうわけで、街道そばのあの廃城を、オブリビオンがねぐらにしているみたいなんだ」
小高い丘からその小さな城を見下ろして、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)が猟兵達にそう告げる。
予知によると、現れたオブリビオンの名は『ベルベット』、強い魔力を持つ少女で、骸の海に至る前は、とある魔法の国のお姫様だったらしい。珍しい物、貴重な物が大好きで、我侭の限りを尽くした末にその国を滅亡させてしまったという、厄介な存在だ。
「オブリビオンになっても性格は変わっていないようでね……今は、訪れる者の『一番大事な物』を奪い取って、コレクションに加えるという行動を繰り返しているらしいよ」
今の所、被害に遭っているのはそこを野営地に選んだ旅人や、雨宿りに使った行商人達くらいのものだ。ただ悪い噂が広がり始め、最近この街道は避けられ始めている。このまま獲物が減れば、件のオブリビオンは人の多い方へと手を伸ばす可能性が高い。
「そうなると、近隣の村が危ないからねぇ、今の内に解決しておきたいってわけさ」
街道の先の村々に一度視線を遣って、オブシダンは一つ肩を竦めた。
「このオブリビオン、普段は姿を見せないみたいだけどね、あの廃城で野営すれば話は別だ」
どうやらベルベットは対象を眠らせ、夢に引き込むタイプのオブリビオンを多数従えているらしい。夢という形で、『その者の持ち物で何が一番大事か』、『どのような思い出があるか』を語らせ、それを覗いて狙いを定めているようだ。
オブリビオンの眠りに至らせる力は強い。この夢見は避けられず、自分では朝まで目覚められないとのことだが。
「ここでベルベットが『欲しい』と結論を出せば、話は別だよ。魔法を使ってベルベットはその『大事な物』を盗んでしまうわけだけど、この瞬間なら夢は終わっている」
そう、このタイミングならば、目覚める事ができるのだ。
当然、目を覚ませばオブリビオン達がそこに居る状況だ、戦って倒すことも可能なはず。
「そう、鍵になるのは『君の宝物』さ。一時的にそれは盗られてしまうけれど、オブリビオンを倒せば取り返すことが出来る。
まあまあ厄介な状況なのは認めるけれど――頼めるかな?」
口元の笑みを崩さぬままそう言って、オブシダンは猟兵達の方を窺う。
「あ、それからね。今回の件は近隣の村や、行商してる人達にも通達してあるんだけどさ――」
付近の村や町から、今回の件が上手くいった後に、小さなパーティを催したいという申し出が来ているらしい。
この街道が避けられることで、付近の村や町の訪問者も減ってしまっている。事態の解決をアピールすることで、そんな街道の利用者を呼び戻したいのだろう。
「形式は舞踏会になると聞いているよ。どうだろう、そのためにも、ひとつ力を貸して欲しい」
……今からあの廃城に向かえば、夕暮れ時には到着するだろう。
そんな猟兵達の反応を見ながら、よろしく頼んだよ、とグリモア猟兵は微笑んだ。
つじ
宝物の話をしましょう。
舞台はアックス&ウィザーズ、オブリビオンの巣食う廃城になります。
●第一章『虹色雲の獏羊』
『あなたの大事な物』、『それに纏わるエピソード』を教えてください。
夢としてそれを見ることになります。それを覗いていたベルベットが『それはとても大事だろう』と納得して欲しがれば、夢が終わって目覚めることが出来ます。
目覚めれば周りにオブリビオンである『虹色雲の獏羊』が大量にいますので、それを倒してください。
他の眠っている人を起こすことはできませんが、『虹色雲の獏羊』が全滅すれば、全員自然に目を覚ますでしょう。
●第二章『我侭王女のベルベット』
『虹色雲の獏羊』を全滅させれば主犯であるベルベットが現れます。非常に高い魔力を持った強敵です。
第一章で夢に見た『大事な物』を魔法で盗み取っている場合があります(二章の序文あたりで明記します)。倒せば無傷で取り返すことができるでしょう。
また、今回の舞台となる廃城は、活動に都合が良いという理由で選ばれた場所です。彼女の本来の国や城とは関係ありません。
●第三章
廃城にて小さな舞踏会が催されます。
もちろんパーティを開くには準備が必要になるので、その間に猟兵の皆さんも身支度を整えたり、お友達を招待したりしてください。
ささやかながら良い料理とお酒が振舞われます。一般客を楽しませたり、あるいは、気になる誰かをダンスに誘ってもいいかもしれません。
グリモア猟兵のオブシダン・ソードもこちらを訪れる予定です。リプレイには、お声がけがあった場合のみ登場します。
以上です。皆さんのご参加お待ちしています。
第1章 集団戦
『虹色雲の獏羊』
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POW : 夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
イラスト:ロクイチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
彩花・涼
大事なものを盗むか…
一時的とはいえ盗られるのは嫌ではあるが
取り返せばいいだけのことだな…
大事なもの……弟に渡した片翼、黒蝶のピアス
まだ故郷があった頃に、戦いに赴く私を恋しく思った弟に
私のピアスを片方預けた……私の代わりにと
今はもう故郷とともに弟も死んでしまったが…
残った片翼のピアスは大事な弟との唯一の繋がりだ
目覚めたならば、さっさと周りの羊を倒そう
取り返せるとはいえ…あまり手元から離したくない
UCで周囲の羊をまとめて攻撃する、
残ったものを黒爪で【スナイパー】
黒華・改で斬り伏せる
攻撃は【見切り】と【武器受け】で回避
●黒蝶の片翼
「大事なものを盗む、か……」
廃城の一角に居場所を定め、壁にもたれかかるようにして彩花・涼(黒蝶・f01922)は腰を下ろす。狙われる物の予想は既についており、これから見るであろう光景と、その後の展開に思いを馳せれば自然と苦い感情も沸き上がる。
一時的とはいえ、それを手放すなどと。避けえないであろう状況に歯噛みしながらも、彼女は突如襲ってきた微睡みの中に飛び込んでいった。
ねえさん。そんな声を聞いた気がして涼は後ろを振り向いた。
「……ああ」
戸惑いのような、感嘆のような声が漏れる。そこにあるのは、ダークセイヴァーになった、失われた故郷の風景だった。正面に立っているのは、大事な弟。
この日、戦地に赴くことになっていた涼は、弟へと黒蝶のピアス……その片方を渡した。
それは不在の寂しさを紛らわせるためのもの。もう一度会うことが出来れば、それで役目が終わるはずだったもの。しかし、最終的に失われたのは戦に出向いた涼ではなく、弟と故郷の側だった。
持っているはずの意味が反対になってしまい、今では残った片翼だけが、弟との繋がる唯一の品。
「期せずして形見になってしまったというわけじゃの。それはそれは、切ない事じゃ」
ころころと、軽い笑い声が涼の背後から響く。振り向いた彼女が目にしたのは、愉快気に彼女の故郷を見遣るベルベットの姿だった。
「思い入れも強かろう。片翼というデザインも悲壮感があってよい。ベルちゃん様のコレクション化決定じゃー!」
涼の胸の内の感情も、滲み出た表情も一切を気にせずベルベットは笑う。
――やるべきは、あそこでベルベットを撃つことではない。
「舞え……!」
右耳の軽さを思う。
決意を形に、最速で目を開いた涼は囲まれている状況を察し、即座に周囲に黒蝶を舞わせる。オブリビオンの七色に輝く毛並み、そして夢見る者の生命力を奪う光の中に黒い染みが広がり、弾ける。蝶の群れは漆黒の弾丸へと姿を変え、四方八方、周囲の全方向に向かって飛び出した。
「……!」
毛皮の上からその身を穿たれ、獏羊達が空中で揺れる。じわじわと動く者、そして逃げ出すように空中へ駆け出す者、そんな一体の上に、機先を制して涼が着地する。
「さっさと終わらせよう」
あれを、あまり手元から離していたくないから。柄に蝶の羽をあしらった小剣が閃き、距離を取ろうとしていたオブリビオン達を刺し貫いた。
力を失って落下するその個体をクッション代わりに着地して、涼はさらに残った個体へと銃撃を開始した。黒爪は弾丸で以って敵を引き裂き、敵の数を減らしていく。
大成功
🔵🔵🔵
斬断・彩萌
宝物:『Devastator』
…これはホワイトデーのお返しなの。武器をくれるなんて、師しょッピ(師匠の意)らしいわよね
最初は上手く扱えなくて、泣きながら練習したっけ。それも良い思い出よ
でもね、絶対使いこなしたかったから頑張ったわ!
少しでも師しょッピに近づけるように。足手まといにならないように――
だから今でも練習を欠かしてないわ
大事な宝物だからこそ使い倒してあげるのがこの子の……武器としての本望だとも思うしね
●SPD
『BoostRoar』で強化した技能で敵を狙い撃つ!
生憎と私、Devastator以外にも二挺拳銃も持ってるの
眠ってなんかいられない、私の宝物返してもらうわよ!
※アドリブ・絡み歓迎
●破壊する者
彼女はその日を夢に見る。重くて大きいばかりのそれを手に、何個目だか分からない空き缶へと向き合った、その日。
放った銃弾は的である空き缶を射抜く。だがそれが中心ではないことを悟って、斬断・彩萌(殺界パラディーゾ・f03307)の眉間に一度、皺が寄った。使い慣れた二挺拳銃とは全くもって勝手が違うそれは、彼女をてこずらせる物でしかなかった。
少なくとも、その時は。
けれどそれが彼……師匠から贈られたものだから、そう。彼女はそれを『モノにした』。
ホワイトデーのお返しとしては全く映えないものだけど、それが師匠なりに気を遣った結果なのは分かっていた。
「――師しょッピらしいか」
あの時も、たしかそう笑ったはずだ。絶対に使いこなすと彩萌は決めて、完遂した。
少しでも師匠に近づけるように。足手まといにならないように。練習を重ねて、認めてもらって。炎の弾丸なんかも貰ったっけ。
実戦に使える自信がついてから、今だって練習を欠かしていない。まだ付き合いが浅いとはいえ、この『Devastator』と名付けられた銃には、既に思い出が詰まっている。
「ほほう、そんな大事なもの、仕舞っておかなくて良いのかのう?」
「逆でしょ? 大事な宝物だからこそ使い倒してあげるのがこの子の……武器としての本望だとも思うしね」
思い出の光景の中に割り込んできた少女の姿に、彩萌は伊達眼鏡の奥から視線を向ける。オブリビオン、ベルベット。先程の『夢』とは違う淀みない動きで、彩萌の銃口が敵を捉える。
引き金にかけた指は、そのまま。この夢の中で撃ったところで意味がないのは、彼女自身も分かっていた。
「それも一理あるのう。まあ、安心するがよい。今日からはこのベルちゃん様が大事に使ってやるからのう」
「……言ってなさいよ」
ぐらり、と景色が揺らぐ。夢の終わりを悟って、彩萌は目を開いた。
そこは眠りにつく前と同じ、廃城の光景だった。ただ眠りにつく前と違い、日は既に落ちて、七色の毛並みの獏羊が、そこら中を漂っている。
「――持っていかれたってわけね」
ふ、と溜息を吐いて彩萌は素早く身を起こす。予想はしていたが眠る時に持っていたアサルトライフルがどこかに消えていた。
その分身体は軽いが、それは失いたくなかった重みでもある。
「私の宝物、返してもらうわよ!」
BoostRoar。太股に挟んでいた二挺拳銃を引き抜いて、彩萌は別々の敵に向かって引き金を引いた。もはや手足と変わらず馴染んだそれは、素早く、そして確実に。処刑人と叛逆者が敵の眉間を貫いていく。
大成功
🔵🔵🔵
セツナ・クラルス
救世主たるもの
この世に未練を残すのはよろしくないだろうし
持たないように心がけているのだが
そんな私でも大切に思うのは
やはりきみだね
…ねえ?
ゼロを呼び出しにっこり笑顔
ふふ、そんな嫌そうな顔をしないでくれたまえよ
猟兵活動を始めてからというもの
離れがたいものや
何度も取り出しては眺めていたいような
印象的な出来事をたくさん体験したね
その景色にはいつもきみがいる
私はそれが堪らなく嬉しいんだ
…だから嫌そうな顔をしないでくれ
とはいえ
ゼロは宝物であるが
どうやって奪うのだろう
私の魂から引き剥がす、とか?
…ふ、そんなことはさせない
さあ、私達の絆の強さを見せつけてやろう
…そこまで嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか…
●片割れ
夢の中で、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は彼と対面する。
何も珍しい事ではない。彼はもう一つの人格であるゼロを、ユーベルコードで何度も実体化してきている。金色の眼をした、自分と同じ姿の彼に、セツナはにっこりと微笑みかけた。
「……何だよ、気持ち悪ぃな」
「ふふ、そんな嫌そうな顔をしないでくれたまえよ」
対照的に、金色の眼の彼――ゼロの表情は苦々しいものだったが。
「いや、一度きちんと言っておこうと思ってね」
そんなものは気にしないとばかりに、セツナは柔らかな微笑みを崩さない。
「猟兵活動を始めてからというもの、離れがたいものや、何度も取り出しては眺めていたいような、印象的な出来事をたくさん体験したね」
共に世界を渡ってきた。共に迷宮を駆け、敵の城を攻略し、共に印象的なオブリビオンや強力な敵とも戦ってきた。そして共に色んなものを食べて、遊んで、色んな人々と言葉を交わしてきた。
そんな思い出を、二人は共有している。
「その景色にはいつもきみがいる。私はそれが堪らなく嬉しいんだ」
慈しみの眼に、またゼロが渋面を作る。それは兄弟の、または親子の擦れ違いに似ていたかも知れない。
「……だから嫌そうな顔をしないでくれ」
そんな二人の様子に、甲高い少女の声が割り込む。
「なるほどのう、日々を共に過ごす者ということか。何かスピリチュアルなものが出てきてどうしようかと思ったが、それをコレクション加えるのも面白そうじゃな」
姿を見せた金髪の少女――ベルベットは、訳知り顔でそう頷いた。
「ふふ、これは可愛らしいお嬢さんだ」
「……うわ、ほんとに現れやがった」
夢の中、二人は目的と状況を自覚する。彼女が姿を現した、ということは。
「そんな顔をするものではないよ、ゼロ。君を如何に大事に思っているか伝わったということだからね。
……ああ、でもゼロをどうやって奪うんだろうね。私の魂から引き剥がす、とか?」
そう、セツナが最も大事なものとして提示したのは物品ではなく、人格だ。普通の物品を奪うのとは話が違う。……少なくとも、彼にはそう思えた。
「……ふ、そんなことはさせない。さあ、私達の絆の強さを見せつけてやろう」
柔らかく微笑むセツナの言葉に、もう一つの人格であるゼロが「うげ」と呻き声を上げた。ただ、先程から表立って否定はしないのは、つまりそう言う事なのだけど。
――ああ、そこまで嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか、さすがに私も傷付くよ。
また、セツナがいつものような嘆きの声を上げようとしたところで。
「ふむ、別れの言葉はそんなもんで良いかのう?」
ぱちん、とベルベットが一つ指を鳴らした。
夢が終わり、セツナは廃城の床から身を起こした。
周りには虹色の毛並みのオブリビオンが多数浮かび、先に目覚めた猟兵達が、戦いを繰り広げている。
「……おいで、私の愛し仔」
共に歩もう。そんな、いつもの言葉を口にする。結果など、目覚めた時点で分かっていたというのに。
眠りを終わらせるための条件を、セツナはきちんと満たしたのだから。
「……ゼロ?」
呼んだところで、彼が応える事はない。
成功
🔵🔵🔴
アメリア・イアハッター
大事なものかぁ
私の持ち物は全部全部、私がヤドリガミとして目覚めた時に一緒にいた子達
全てに想いが籠った、大切な子達
でもやっぱり一番というなら、この赤い帽子
それはこれが私の本体だから、というだけではなく
この帽子が一番、思い出せない誰かの想いを沢山、沢山継いでいるから
私の「空」への想いも、この帽子から継いだものだから
もしかしたら夢に見るかも知れない
金の髪の女の子、蒼の髪の女の子、黒の髪のおに…おじさん
そして赤の髪の、私の人間体に良く似た女の子
覚えてないけど、わかるよ
皆私を大事にしてくれて、そして空を夢見てた…
おはよう
ダメなんだ、それはあげられない
だから返してもらうよ
不思議と思い出したこの魔法で……!
●赤い帽子
ぐるぐると、夢が回る。君は大事なものが多すぎるから。
身に付けているのはどれもこれも、思い出も、思い入れも、想いだって籠った、大切なものばかり。
風景は次々と入れ替わり、追憶は混ざり合う。けれど最後に映し出されたのは、一番奥の光景だ。
金色の髪の少女が居た。
蒼色の髪の少女が居た。
黒色の髪は、おに……いやおじさんか?
髪の毛の事が印象に残っているのは、ずっとそれに触れていたから。アメリア・イアハッター(想空流・f01896)は、帽子のヤドリガミだ。彼等が被った赤い帽子、それが彼女の器物に当たる。
アメリア自身は覚えてないけれど、ただ実感として理解する。懐かしさを覚える。きっとこれは、まだヤドリガミとして目覚める前の光景。
自分を大事に扱ってくれた彼等の、彼女等の頭の上で、共に空を見上げていた。
ああ、それから。赤い髪の少女とも。
記憶にはない夢を見て、アメリアは答えの一端を得たような気持になる。自分が今、『空』を志すのも、かつて一緒に空を見上げた彼等の想いが、胸の裡に息づいているからなのだろう。
それがきっと『アメリア・イアハッター』の根源なのだと。
「――年代物の帽子、というわけか。お主らのような者の本体となると、それだけでも価値があるからのう」
しかも人々の間を渡り歩いてきたものなら、なおさら貴重だ。夢の光景に踏み入ったベルベットは、アメリアに向かってそう謳う。
「ねえ、やっぱりそれ、持っていかれると困るんだけど」
「つれない事を言うのう。さっきの光景にこのベルちゃん様も加えてくれて良いのじゃぞ?」
ダメですけど? そんな答えを返す前に、ベルベットは夢からするりと抜け出ていった。
「……おはよう」
さて、廃城で目を覚ましたアメリアは、大事なそれを失った頭を軽く振る。
作戦とはいえ、一大事だ。盗られたそれは、大事な宝物であると同時に、アメリアの器物でもあるのだから。
「返してもらわないとね……!」
さらなる光でこちらを眠らせようとしてくるオブリビオンに、対抗するべく意識を向ける。
――先ほど見た夢のせいだろうか、身体は自然と、その魔法を紡ぎ出した。
「釘付けにしてあげる」
放たれるは不可視の冷気。彼女を中心に急激に気温が低下し、巻き込まれた獏羊達が氷漬けになり、落下していく。
着実に目覚めていく猟兵達は、次々と敵の数を減らしていった。
大成功
🔵🔵🔵
小日向・いすゞ
管に収まった白狐
…管狐はあっしが初めて契約した式神なんスよ
コレは小日向家に伝わる由緒正しき式神っス
あっしは決して出来の良い陰陽師じゃ無かったっス
隠れ里での修行は苦しいもので
ずっと逃げ出したかったっス
あの両親の剣幕、師匠の顔
逃げたり消えたりする相弟子達
思い出すだけでほぼ悪夢っスよ
けれど
管狐を見る度に逃げ出せないとも思ったっス
ただ大切とか、可愛いのでは無く
契約を破れば管狐に財を食いつぶされて死ぬしか無くなるのもあるっスけれど
こいつはあっしが小日向の娘であるという誇りでもあるンス
さて
認められたら戦闘っスね
返して貰うっスよ
あっしの誇りっスからね
珍しくガンガン行かせて貰うっスよォ!
杖で殴るし燃やすっス!
●可愛い狐のようなもの
目元を覆う琥珀色の髪の隙間から、小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)はそれを見つめる。細くて長い、白狐。散々てこずらされてしまったが、その細長い身体の先は、今よりも幼いいすゞの握った筒へと繋がっていた。
「や、やった……?」
式神、管狐。小日向の家に代々伝わる由緒正しき式神を、いすゞが初めて従えた瞬間だった。
白く美しい毛並み、どこか愛嬌のある顔をしたそれが、彼女に傅くようにじっとしている。
師匠は当然だと言うように厳格に頷いて、この話を聞いた両親は「まだその程度か」とさらに先を要求するばかりだったけれど、先の見えない苦しい修行という悪夢の中に居たいすゞには、それらが報われたように感じられた。
契約を破れば、管狐はその者の財を食いつぶすだろう。これはきっと、これからも続く陰陽師としての道から、『何もかも捨てて逃げる』という選択肢を失った瞬間でもあるのだけど。
この管狐を見るたびに思い出す。心構えを新たにする。自分もまた、小日向の末席に座る者なのだと。
……その後、微妙に捻くれながらも強く成長した彼女は、結構式神使いの荒い陰陽師になるわけだが。
「なるほどのう、苦労して勝ち取った使い魔……といったとこじゃろうか。しかも可愛い。ベルちゃん様も欲しいのう」
いかにも不遜な態度で夢の中に割り込んだベルベットが、筒から伸びていた式神をしげしげと見つめる。
「可愛いっちゃ可愛いっスよね。でも、それだけじゃないンスよ」
「大丈夫じゃよ、このベルちゃん様はしっかりと面倒をみれるゆえ!」
「うわあ全然信用できねっス……」
ふんぞり返ったベルベットの姿を見たのを最後に、いすゞの隠れ里の夢は終わる。
クダギツネを収めていた筒がない。予想通りの帰結を確認し、いすゞがその場に跳び起きる。
「契約結びなおしとかになったら、実家から大目玉っスねぇ……」
もちろん、そんな展開にするつもりは毛頭ない。いすゞは狐を模した笛を振りかぶって、こちらの夢と生命力をもぐもぐしていた七色の獏羊を思いっ切りぶん殴った。普段からふわふわと浮かんでいるオブリミオンはさしたる抵抗もなく吹っ飛んでいく。
では次、と細められたいすゞの視線が向けられて、別の個体がびくりと震える。
「今回はガンガン行かせて貰うっスよォ」
慌ててぴょんぴょんと飛び上がっていくオブリビオン達に、いすゞはユーベルコードで追い打ちをかける。
――何が何でも、管狐は取り返さなくてはならない。
そう、あれは小日向の家の証明であり同時に、彼女の誇りでもあるのだから。
援護の札とは違う、攻撃的な炎が舞って、獏羊達に次々と襲い掛かった。
虹色の毛皮が、焦げて黒く染まっていく。
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
大事なもん、かあ……
金持ちだろーが貧乏人だろーが持ってるのが「宝物」だもんな
【宝物】
かたたたたきけん
アタシが面倒みてるチビ達がさ
誕生日祝にってくれたやつなんだ
何処で聞いたのか「肩たたき券」てのを
普通は小さい子供が親に贈るらしい
「じゃあ自分達の親は透だよね」ってさ
はは、ただの紙切れに炭で書いただけ
しかも「た」が一つ多いだろ
でもアタシがあいつらから親に認められた証なんだ
【WIZ】
夢から覚めたら
エレメンタル・ディザスターを使用
「火」の「竜巻」をおこすぜ
どんだけジャンプしようが逃しゃしない!
「範囲攻撃」「2回攻撃」を活かして皆をサポート
盗られたもん、みんな纏めて返してもらうぜ?
●かたたたた
肩たたき券? なにそれ?
知らねーの? そりゃ肩を叩いてもらえる券だよ。
肩を叩かれると良いことあるの?
えっ、そりゃあ……なぁ?
わかんないけど、小さな子供が親に贈るものらしいよ。
へー。
肩凝りとはまだまだ無縁の子供等の、そんな無邪気なやり取りを、九之矢・透(赤鼠・f02203)は背中で聞いていた。最近は日中は汗ばむくらいになってきたものだが、夜はまだまだ冷える。そんな夜を身を寄せて過ごす子供達に、「はやく寝ろよ」と彼女はそれだけ告げた。
透も含めて、ここの子供達には身寄りが居ない。当然、両親だって。だから、言えることはそれくらいで――。
「「誕生日おめでとう!」」
だから、そうして形になった時も、最初は呆気に取られてしまった。
皆で決めて作ったのだというプレゼントを差し出して、「だって、僕達の親は透だから」と、透の『家族』達はそう言った。
それはただの紙切れで、大事に仕舞っていてもくしゃくしゃになってしまうくらい粗末で、炭で書いたその文字もへったくそで、何だったら『かたたたたきけん』とか一文字多い事になっている。
けれど。
「なぁに、そういう宝物が存在することも、このベルちゃん様はちゃーんと認識しておるからな」
「アンタがベルベットか……」
すい、とその紙切れを摘まみ取っていった彼女の姿を見て、透は夢の中で状況を自覚する。
「その感じ、仲良くできなさそうだな」
透が鋭く目を細めるのは、それを奪っていったからというだけではない。生前の『わがまま姫』という立場がそうさせるのか、ベルベットの眼には、そして言葉には、持てる者特有の傲慢さが滲みていた。
「安心せよ、代わりにこのベルちゃん様が存分にかたたたたかれておいてやるからのう」
「アンタ、ほんとは意味わかってないな……?」
そうして、彼女の夢は終わりを迎えた。
釈然としない思いを抱えながらも、透はいそいそと立ち上がる。奪われたものはただの紙切れ、そういう見方もあるだろう。しかし、あのチケットを使わないまま、「失くした」と分かれば、あの子達は悲しむだろう。きっと、顔には出さないようにするだろうけど、それでも。
「……取られるのが前提で考えちゃダメだよな」
思い直すように、透は両手を広げる、見上げたそこには、虹色光による眠りが途切れたと見て、浮かび上がっていく獏羊達の姿がある。
――必ず取り返す。必ずだ。だってあれは、自分がチビ達に『親』として認められた証なのだから。
上に向かって吹きかけた吐息に応えて、そこに炎の竜巻が巻き起こる。それは熱波と共に巻き上がり、獏羊達を呑み込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
わたしとシュネーは隣同士
別々のガラスケースに入って
わたしの記憶がはじまったときからそこにいた
ひとりで上手に踊れるからくり人形
同じ部屋には他にもともだちがたくさん
毎日おとうさんがやってきて
わたしたちのお手入れをしてくれる
わたしもみんなもしゃべることはできないけど
やさしいおとうさんがだいすき
おとうさんがこなくなって
わたしが動けるようになって
荒れたバラを見ておうちをたずねてきたひとは
わたしたちを売るといった
どうしたらいいのかわからないわたしの背を
シュネーが押す
たまたまかもしれない
でも、わたしはシュネーを連れておうちを出た
ずっといっしょにいてくれた
わたしのともだち
シュネー!
全力で攻撃
攻撃は【武器受け】
●隣同士
囚われの身。籠の鳥。それが、オズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の記憶にある最古の光景だった。
人形は自分以外にもたくさん居る。だがそれでいて、ガラスのケースが透明の壁となって、各々が交わることはない。その状態で、オズの隣のガラスケースに仕舞われていたのが、シュネーだった。
彼女はきっとからくり人形としても特別で、ひとりで上手に踊る事が出来る機能を内蔵していた。
その時は、互いに声を掛け合う事すらなかった。何しろ、人形である彼にそんな事はできなかったわけだが。
そんな状態で、オズも含めて人形たちに触れるのは、お手入れをしてくれる『おとうさん』だけだった。彼については語る必要もない。言葉を交わすことはもちろんなかったが、それでも彼の心根の優しさは皆理解していた。
けれどその『おとうさん』は、ある日を境にぱったりと足が途絶えてしまった。
そしてそのまま、どれくらいの時が過ぎたのか――。
「わたしが動けるようになったのは、この頃だね」
そう、オズは回想する。ガラスケースを脱する力を得たけれど、どうしたらいいか分からなくて……その内、手入れが途絶えて荒れたバラを見て、『おとうさん』とは違う男が彼の前に現れた。
ひとしきり『みんな』を眺めたその人は、人形たちを売って金にすると宣言した。
そう、事態はオズが落ち付くことなど待ってはくれない。ガラスケースを破り、ともだちが順に取り上げられていく。結局オズは、自分の番が迫ってもなお、どうしたらいいか決められないでいた。
その背を押したのが、押してくれたのが、シュネーだった。
もしかしたら、偶然だったのかもしれない。倒れた時に、その手が背中に当たっただけとか。
でも、きっとそれが彼女の意思なのだと、そう信じてオズはシュネーの手を取り、そこを出た。
「それからは、そう、ずっと一緒だよ」
離れることなき、最も古い友人。
「最初の友達、といったところかの? よいぞ、ベルちゃん様は人形遊びにも造詣が深いのじゃよ! 知っておるかな!?」
愉快気な声が、夢の中にこだまする。
オブリビオンの気配を察知し、オズが身構えるが――抱いていた彼女の重さが、消える。
「シュネー!」
眼を覚ますと同時に、オズは彼女の名を呼んだ。けれど応えは、返らない。
「……!」
シュネーの代わりとして、取り出した斧型のガジェットを構える。あの雪のような白い髪と、桜のようなピンクの瞳、それを取り戻すためには、周りに浮かぶ獏羊達を自分も倒していかなければならない。
斧の一端に付けられた蒸気機関が煙を噴いて、刃が敵を一閃する。
大成功
🔵🔵🔵
ファルネーゼ・アトラス
ファルの、大切なもの…
そうですね…それはきっとエチカの事だと思います
家族を喪って、様々な方の元を転々として
絶望に打ちひしがれるファルに希望を与えてくれた
可愛くて好奇心旺盛で、大切なファルの相棒です
ふふ、初めて出会ったのはいつの事でしょう
確か…杖として宝物庫に保管されていた所を見つけたのが初めてですね
初対面だった筈なのにとても人懐っこくて
いつも寂しがっているファルを元気付けてくれて
ああ、全てが懐かしいです
夢から起きたらエチカは居ないのでしょうか
…少し寂しいですけれど、絶対にファルが助けてあげます
皆様もきっと同じ気持ちの筈です
【シンフォニック・キュア】で猟兵の皆様を癒し、羊様の討伐を急ぎましょう!
●エチカ
目を瞑り、至った夢の中は、廃城よりもなお暗い。
ここがどこか、ファルネーゼ・アトラス(星謡・f06256)は自問し、見回すうちに、「あの時の宝物庫だ」と思い至る。
あの日、彼女はここに逃げ込んだ。何から、と問われれば答えに困る。強いて言うなら世界とか運命とか、そんなどうしようもない言葉になってしまうのだろうか。戦乱の中で家族を亡くし、モノ同然に各地を、持ち主を転々とせざるを得ない状況は、ファルネーゼを絶望させるには十分なものだったから。
暗闇と静寂、打ちひしがれ項垂れていた彼女は、やがて宝物庫に小さく光が差し込んでいるのを見つける。壁か天井に僅かな隙間でもあるのだろう、漏れ入った光が、宝物庫のある一点を照らしていた。
光の中、静かに佇んでいた杖。それこそが、ファルネーゼの『大事なもの』だった。
「――エチカ」
指先で触れると、あの時の様に、杖はふわふわの小さな竜へと姿を変えた。
初対面だったこの時から人懐っこくて好奇心旺盛で、ファルネーゼの寂しさをいつだって癒やしてくれた。
「ああ、懐かしいですね」
抱きしめたドラゴンを撫でながら、ファルネーゼはこれまでの歩みを思い返す。
あれからずっと一緒の相棒、かけがえのない存在。そんなエチカに、オブリビオンが手を伸ばした。
「可愛らしい上に賢いときたか、ベルちゃん様もそういうペットが欲しいものじゃ」
いつの間にか後ろに立っていた少女の姿に、ファルネーゼが警戒を露に一歩下がる。そんな事をしても結果は変わらないと、彼女自身も分かっている。だが、エチカをペットと呼ぶこのオブリビオンは、「欲しい欲しい」と言いながら、事の表面しか見ていないのは明らかだ。渡したくない、そんな彼女の思いに関わらず、ベルベットは軽く指を鳴らした。
「このベルちゃん様に使われて、そやつもきっと本望じゃろう」
宝物庫の風景が歪んで、崩れる。
「……絶対に、ファルが助けてあげます」
夢の終わりに、ファルネーゼは決意を胸に、そう口にした。言葉はやがて、歌声に。奪われた者を取り戻すべく、決然とした歌声を紡ぎ出す。
●取り戻すために
ああ、きっと、みんな気持ちは同じはず。
シンフォニック・キュア。ファルネーゼは歌い上げる。大事なものを、宝物を、かけがえのないものを、必ず取り戻すのだと。
「ま、当然よね!」
「ああ、一刻も早く取り返したいところだ」
彩萌と涼の銃弾が敵を穿ち、アメリアの氷が、いすゞの狐火が夜空を二色に染める。
「そうだね、渡すわけにはいかない」
「あっしの誇り、持ち逃げは許さないっスよ」
「シュネー……」
この声は、君に届いているのかな。斧を振るうオズの呼び声に返事は無いが、同じように『もう一人』を失ったセツナも、意思を新たにする。
「さあ、出て来な親玉サン。盗られたもん、みんな纏めて返してもらうぜ?」
透の紡いだ炎が辺りを一際眩く照らし、最後の一体を焼き払った。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『我侭王女『ベルベット』』
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POW : ベルちゃん様コレクション
いま戦っている対象に有効な【非常に珍しいマジックアイテム】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD : ベルちゃん様は魔法も凄い!
【無詠唱で何もない空間】から【膨大な魔力の込められた魔弾】を放ち、【与えたダメージ】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : みんなの魔力はベルちゃん様のもの♪
戦闘力のない【ベルベットに囚われた祖国の亡霊達】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【消耗した魔力を亡霊達から吸い上げること】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:リタ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ティエル・ティエリエル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●我侭王女
「あーーっ! 何てことするんじゃお主らはーッ!!」
怒りを露にして、黒猫を連れた少女が忽然と現れる。その見た目は、飽くまで黒猫を連れた少女のそれだ。しかし、夢の中に踏み入ってきた彼女の姿を、そして大事なものを悉く奪っていったその姿を、猟兵達は目撃している。
「よくもこのベルちゃん様の配下をいじめおったな! あやつら可愛い上にめっちゃ便利じゃと言うのに!!」
いかにも立腹な様子だが、さすがにそれは子供っぽいと自分でも思ったのか、ベルベットは一度、いや二、三度深呼吸して、ポーズを決めなおした。
「生意気な連中よ。だがその狼藉もここまで、このベルちゃん様の実力の前にひれ伏すが良いー!」
高らかに、そう宣言する。
どうにも締まらない相手だが、その魔力はすさまじいものであると、対峙する猟兵達は肌で感じ取っていた。
●奪われたもの
蝶のシルバーピアス、Devastator、ゼロ、Red Hatter、管狐、かたたたたきけん、シュネー、エチカ。
奪われたそれらは、魔力で作られた異空間、『ベルちゃん様コレクション』に仕舞われている。このオブリビオンを倒すことで、この空間に奪われたものは取り戻すことができるだろう。
また、奪われたものが装備品である場合、ベルベットがユーベルコードでそれを召喚してくるかも知れない。
「お主からいただいたもので、お主ら自身を攻撃してくれる! ふははははーッ!!」
彼女の言葉通り、それは強力な攻撃になるだろう。
まぁ、使い方を理解できれば。
彩花・涼
さて、奪還しようか…
少女の姿だろうと
オブリビオンで攻撃してくるなら容赦はしない
黒爪で【スナイパー】で撃ち
【クイックドロウ】で素早く連続攻撃する
怯んだことこを【ダッシュ】で近づき
黒華・改で【生命力吸収】の【2回攻撃】を行う
魔力にはあいにく無縁ゆえ、苦手ではあるが
逆に接近戦にはコチラに分があるだろうな
味方が攻撃されそうな場合は【援護射撃】で敵の気を逸らす
コチラへの攻撃は【見切り】で回避
敵のUCで召喚されたものによって
接近戦と遠距離戦を切り替える
敵の隙をつければ【ダッシュ】で近づき
UCでキツイ攻撃を放つ
返してもらうぞ、それは誰にもやらん…
霞・静香
あらあら、随分と手癖の悪いオブリビオンがいたものね。そんな泥棒猫には土の味がお似合いよ
私の心の中にある速さを求める気持ち――あなたに奪えるものなら、折れるものなら、やってみなさい
【ダッシュ】で助走を付け、敵の大掛かりな行動に合わせ【グラウンドテイスター】発動
極限まで摩擦抵抗を減らした【スライディング】で地面を低くした姿勢のまま滑り、敵の足元に潜り込む
その勢いのまま足を引っかけて転ばせ、あわよくば同時に突き出した足を敵の体に絡ませ、関節を極める
足癖が悪い? 何のことやら……
アドリブ絡み歓迎
斬断・彩萌
なーにがベルちゃん様よ!それ言ったら私だってあの――斬断家の彩萌様なんだからね!
(普段意識していない分、名乗りを上げるのはちょっと恥ずかしかった。無下にしていながらも頼り切っている実家の名をあげるのは)
私の宝物…返してもらうわ!!
●POW
あえてDevastatorの攻撃を受ける!いやいやまさか真っ当に当たったら死んじゃうけども。
彼女に…練習のひとつもしていない小娘に扱えるほど、この子は大人しくないわ!
そんな攻撃軽く見切れる。ええ、よく知ってるもの。
――銃ってのはねぇ、こう使うのよッ!
(二挺拳銃の照準を素早く合わせ、敵を狙撃)
※アドリブ・絡み歓迎
アメリア・イアハッター
うー、頭にあるべき重さが無いと、何か不安!
皆の大事なものも全部、取り戻さないとね!
というか私、あれ盗られて大丈夫なのかな
帽子が攻撃に使えるとは思えないけど、盾にでもされたら厄介で致命的
仲間の大事なものを傷つけないためにも、敵の動きを止めることに専念
UC発動
敵を中心に氷を張り周囲を回りながら接近
最優先は敵の目を惹きバランスを崩させること
その隙に味方の攻撃が届けばベスト
敵の攻撃は滑走・跳躍・沈み込みを駆使し、上下移動で狙いを定めにくくする
避け切れぬことも考慮し常にVanguardを突き出して盾に
氷を嫌がって飛んだら、そここそ私の真のフィールド
空中で掴みかかり、一緒にグルグル回って地上に投げつけよう
オズ・ケストナー
シュネー、まってて
斧をくるり回し駆けだす
斬りかかって
攻撃は【武器受け】
シュネーが攻撃してくるなら一旦距離を取り防戦
はじき返して距離を稼いだら
シュネーを抜けてベルベットに刃を
シュネーがのぞまないことはさせないで
にんぎょうあそびって思ってるなら
シュネーはきみに協力しないよ
他の人の宝物をつかってくるなら
壊さないよう注意
【ガジェットショータイム】
出たブーメランを投げ
正面からの攻撃を避ける
狙いが逸れるなら結んだ糸を引いて軌道を変え
これはいつもわたしとシュネーをつないでいる糸
すこし力をかしてね
彼女が誰かのたからものになる未来もあるかもしれない
でも今は、わたしにとってのたったひとりだから
おかえりって言わせて
セツナ・クラルス
序盤は防御に徹し
取るに足らないものだと誤認させたい
反撃は密やかに交代した別人格「つみとるもの」が担当し
戦況を動かせるような一撃を狙う
見た目の変化は少ないので、
早々に感化されないと信じたいが…さて
宝物を奪われるというのは
当人には耐え難いことだ
では、あなたは何を得た?
全てを手にした万能感?
誰かの拠り所を奪う優越感?
そんなものいったい何になるのかな
現状に満足できなくなれば
また誰かから宝物を奪い、仮初の充足感を得るのかな
代替品では飢えは満たせないよ
隙が見えたら間合いを詰め、鎌を一閃
ゼロに気付かれる等で騙し討ち不発時は
隙を作り出せるように
付かず離れず攻撃し続けよう
演技をしても相棒殿にはお見通しかな、ふふ
ファルネーゼ・アトラス
エチカ、ベルベット様に酷い事はされていませんか?
…直ぐに助けますから、待ってて下さいね!
ファルの役目は皆様の支援
【生まれながらの光】にて傷ついた方の回復に回ります
特に傷の深い方を優先に、数人いらっしゃるならば複数同時に
ふふ…己の責務を全うしなかったならば、エチカに顔向け出来ませんもの
大丈夫、ご安心下さいませ
どれ程疲労が重なれど、絶対に倒れは致しません
戦う術を持たぬファルですが
ベルベット様の召喚された亡霊様を如何にして対処するか…
叶うならばファルの持つ破魔にて皆様に安らかなる眠りを与えん事を
ベルベット様
貴女がどんなに強くとも
貴女がどんなに全てを欲しようと
我々は負けません
さあ、返してもらいますよ!
小日向・いすゞ
解る解るー
可愛くてめっちゃ便利なのが突然いなくなると困るっスよねェー
じゃ、あっしのものは、あっしに返して貰うっスよォ
狐火を杖に纏わせて、殴りかかるっス
だいたいのことは殴れば解決するっスからね
管狐自身は攻撃出来ない可愛い子っスよ
でも他人ときゃっきゃしてる所を見せられるなんてこれが寝取りって奴っスか…
ワッ
断然殴りたくなってきたっスよ!
管狐ごと殴ってやるっス!
他者が傷ついている時は癒式符で回復を
跳ねて、飛んで、殴り抜くっス!
防御は符にて
または黒猫ちゃんを杖笛の音で誘惑して盾にするっス
卑怯と言われようと、これがあっしの生き様っスよ
実際攻撃されたら
猫ちゃんが痛いのはだいぶ悲しいので自分で受けるっス
九之矢・透
アンタは確かに沢山の宝物を持ってる
けど、それは皆の宝物であってアンタのじゃない
アンタは奪ってばかりだけど、
自身で得たモンってあったのかな?
じゃないと何時までも大事って気持ちは分からないままだ
……って、言ってやるヤツが居たらよかったのにな
【戦闘】
POW
『鵲』を使い
コレクションが召喚された瞬間を狙ってアイテムを「盗む」
「スナイパー」で狙いを定め
出来るだけ「先制攻撃」でそれによる攻撃をされる前に
相手の攻撃を妨害するってのもあるけど…
皆の大事なモンが
奪ったヤツに使われるなんて、見ないに越した事ないもんな
無事取り返す事が出来たなら
「証」は大事に、大事に懐へ
……へへ、おかえりなさい、ってね
皆のも無事かな?
●ベルちゃん様はすごい
「あー、可愛くてめっちゃ便利なのが突然いなくなると困るっスよねェー」
わかるー、みたいなゆるいノリで、いすゞがベルベットの訴えに同意する。オブリビオンの配下と比べるべきではないのだろうが、式神である管狐を奪われた身としては言わずにはいられない。
「そうじゃろうそうじゃろう、というわけでこのベルちゃん様の怒りをその身で受けるが良い!」
ただ、皮肉が通じる相手ではなさそうなのが難点か。
「なーにがベルちゃん様よ! それ言ったら私だってあの――斬断家の彩萌様なんだからね!」
「ははーんこのベルちゃん様と張り合うか斬断家のアヤメとやら! 生憎斬断家がどれほどのものか知らぬが、見せてみるが良い!!」
んん、と彩萌の眉根が寄せられる。ただでさえ色々と頼り切っている割に無下に扱ってきた実家である、名前を挙げた時点で「どうかなー」みたいな気持ちになったのに、その代表みたいな扱いをされると……。
「家の名前とか背負うと色々面倒っスよねえ」
身に覚えでもあるのか、後ろでしみじみと『小日向の家の娘』が呟くのが聞こえる。ともかく。
「やってやるわよ! 手始めに私の宝物……返してもらうわ!!」
その辺りを振り切るようにそう宣言し、彩萌は二丁拳銃を敵へと向ける。ベルベットの眉間と心臓をポイントし、銃撃。しかし銃弾は彼女の手前で蜘蛛の巣にかかったように縫い留められる。
「障壁の類か」
こちらも続けざまに放った銃弾が空中で捕らえられ、涼が赤い瞳を細める。
「ふふん、無駄よ無駄。このベルちゃん様にそんな攻撃は届かんのじゃよ」
にゃあ、とベルベットの後ろで黒猫が鳴くのに合わせて、銃弾が軽い音を立てて床に落下した。
「それなら――!」
TraitorとExecutioner、そして黒爪が散発的に銃弾を放つ中、オズが斧を手に前に出る。身体の後ろでくるりと旋回した刃は、弧を描いてベルベットに食らいつく。
それを受け止めたのは、小さな掌。恐らくはこれもまた魔力の障壁だろう、ベルベットの掌からわずかに離れた場所で、刃がぴたりと停止する。
「ふふーん、ちょっと驚いたが大した事ないのう!」
押し込み切れない、と判断したオズが刃を引き、縦から横へ、振りを変えてもう一撃。迫る刃の豪風に、ベルベットは地を蹴り、後方へとその身を舞わせる。
置き土産とでも言うように放たれた不可視の魔力弾が降り注ぎ、オズを牽制すると同時に追撃を狙っていたセツナを襲う。
「おっと、読まれていたかな……?」
手にした得物を盾代わりに、第一波を防いだ二人へ、ステップを踏んで着地したベルベットが両手を掲げる。
「見るが良い! ベルちゃん様のすっごい魔法を!」
詠唱は無い。その辺りの利点を今の掛け声で自ら帳消しにしているが、瞬時に練り上げられた魔力の弾丸は、扇を描くように猟兵達へと牙を剥いた。
濃縮された魔力が弾け、打ち据えられた者達の足を止める。
「なんじゃなんじゃ、これでは鬼ごっこの相手にもならんぞ」
余裕の笑みを浮かべる敵に、猟兵達は攻めあぐねる……というほどの事もなかった。
「それじゃ、こういうのはどうかなあ?」
アメリアの指先が地面を一撫で、それに合わせて、生じた冷気がそこを中心に氷の膜を張り巡らせていく。それにより、廃城の床にあった細かな凹凸が平らにされて、鏡面のような輝きを湛える。
「ベルちゃん、スケートとか得意?」
「はあ? 誰に申しておる、当然ベルちゃん様はその程度おおおおぉ!?」
一歩踏み出したベルベットが、凍った床の上でよたよたしはじめる。そこを待っていましたと言わんばかりに、霞・静香(すばやいおばさん・f18699)が滑り込んだ。
グラウンドテイスター、ユーベルコードで自らの摩擦抵抗を極限まで減らし、一切スピードを落とさぬままにスライディング。
「随分と手癖の悪いオブリビオンみたいね。そんな泥棒猫には土の味がお似合いよ」
勢いそのまま足を引っかけ、静香はベルベットを転ばせる。
「のわーっ!?」
「私の心の中にある速さを求める気持ち――あなたに奪えるものなら、折れるものなら、やってみなさい!」
「知らぬわ! そんなもの別に欲しくなぎゃーっ、痛い痛い痛い!」
敵を転ばせるが早いか、静香は引っかけた足をそのまま絡ませ、関節技に持ち込む。足癖の悪さを披露した彼女だが、折るにも固め続けるにも至る前に、その反撃を受けることになる。
先程同様に、詠唱もなく魔力の弾丸が生じ、ドのつく至近距離で爆ぜたそれは、静香を床へと叩き付けた。
「――ッ!」
氷の面が陥没し、バウンドして跳ね上がった身体からベルベットが拘束を脱する。
「だーっ、もう! 何じゃこんなもの! 飛べば良いんじゃろ、飛べば!」
空中で体勢を立て直したベルベットは、またも魔力を展開し、爪先が床に着く前に体を止める。浮遊魔法、卓越した彼女の魔術を以てすればこの程度は容易いらしいが。
「いらっしゃーい」
そこは彼女の領域でもある。風を足場に空中を駆け、跳んできたアメリアが上から襟首を掴み取った。
「狙い通りね!」
「は?」
ぐん、と身体を引っ張られ、足元が抜けるような感覚をベルベットは味わう。平衡を保つべく抵抗を試みるが、ぐるりと回った視界の中で、どっちが上だかすぐに分からなくなってしまう。
――こと空中戦に置いて、アメリアに勝てる者はそうはいない。
「あーっ!?」
ぐるぐると回転する動きに敵を巻き込んで、地に叩き付けるように放ってやる。防御の間に合わないまま地面にぶつかったベルベットは、再度戻された氷の上を滑っていく。
「はい、おーらいおーらい、いくっスよー」
氷面端っこでは、いすゞが狐火を纏わせ、松明みたいになった狐笛を振りかぶっていた。笛でも杖でもなく、鈍器としてフルスイングされたそれがそれが、盛大に狐火の花火を上げて、打ち返されたベルベットがまた氷の上を滑っていった。
うつ伏せのまま滑っていったベルベットは、氷の反対端でようやく止まる。
「お、おのれ……!」
若干涙目になりながら、彼女はもう一度立ち上がった。
●ベルちゃん様フル装備
「もーーーー許さんからなお主ら!」
空間に魔力の亀裂が生まれ、ベルベットが異空との道を繋ぐ。そこから彼女が取り出したのは、そう、ベルちゃん様コレクションと名付けられたマジックアイテムの数々だ。
ひゅお、と輝く錫杖が音を立てて振られ、赤い帽子が金の髪の上に収まる。魔法の糸によるものだろう、雪糸の髪、真っ白な衣装の人形が彼女を守るように降り立ち、筒から現れた管狐が纏わりつくようにベルベットの傍に現れた。
「エチカ……」
錫杖を見据え、ファルネーゼが痛まし気に表情を曇らせる。懸念していたような酷い事はされていないようだが、この場面で出てきたということは、その意図は明白。
あの子が敵に回るなんて。動揺を押し殺して、彼女は強い意志の元、目を開く。
「直ぐに助けますから、待ってて下さいね……!」
駆け出したい思いを堪えて、ファルネーゼは傷付いた仲間達のために祈りを捧げた。彼女の体力と引き換えに、溢れ出した光は仲間の傷を癒やしていく。
――まずは役目を果たさなくては、エチカに顔向けが出来ないから。
そんな思いを抱くファルネーゼと同様に、オズもまた『大事なもう一人』と対峙していた。前衛を買って出ていた彼は、襲い来る人形、シュネーの蹴撃を斧の柄の部分で受ける。硬い金属音の後、ふわりと後方に舞う姉の姿を、追い切れないままオズは歯噛みする。
「シュネーがのぞまないことはさせないで! にんぎょうあそびって思ってるなら、シュネーはきみに協力しないよ」
「ベルちゃん様はこの愛らしい人形がとても気に入っておる。この子もベルちゃん様と遊ぶのを楽しんでくれていると思うがのう?」
天真爛漫な、そして何より身勝手な理屈で笑みを浮かべ、ベルベットは傍らに浮かぶ管狐に同意を求めるように首を傾げた。
「お前もそう思わんか? んー?」
にこにこと尋ねるその姿に、元の持ち主であるいすゞの目が一層細められ、口の端が歪み、上がる。
……自分の式神が、あの管狐が、他人というか敵ときゃっきゃしている。
「なるほど、これが寝取りって奴っスか……」
一見笑みが深まったようにしか見えないが、さて。なるほどなるほど、と怪しげな言葉を口にしている彼女の横で、アメリアは気まずげな笑みを浮かべていた。
「略奪……この場合本体取られてる私はどういう扱いになるのかなぁ……?」
「えっ、そ、それって大丈夫なのか?」
傍らで聞いていた透が思わず問い掛ける。当の本人は『頭にあるべき重さが無いと不安』、程度の反応だが、言うまでもない、文字通りの死活問題である。
「んー……できれば帽子は攻撃しないで置いてくれると嬉しいかな?」
「命がかかってるわけか、仕方がない」
言い難そうに頬を掻くアメリアに、ならば一層負けられないな、と涼が表情を引き締めながら応じる。幸い狙撃とする彼女なら、それも十分可能だろう。
こちらも拳銃の調子を確認しながら、彩萌が狙うべき場所を吟味する。拳銃二丁使いでの連射の際にも、照準をおろそかにできないという事になるが……。
「あの細長い狐もそんな感じよね。攻撃にちょっと気を遣わないと」
「あれは殴っても良いっス」
「え?」
「殴っても良いっス。殴れば大体解決するっスよ、センセ」
持ち主のいすゞがそう言っているから良いのだろうか、前髪で隠れた片目からは、その真意は読み取りにくい。
「さあさあさあ、とっくにこれらはベルちゃん様のものじゃが、お主らにとっても大事なのじゃろ? 攻撃できるかな?」
対するベルベットはご満悦なようで、杖の先から魔力の弾丸を撒き散らし、シュネーを『弟』であるオズへと襲い掛からせる。地を這うような低軌道で前進したシュネーが、スカートの裾を靡かせながら鋭い回し蹴りを放つ。連続して迫るそれらを斧で受け流しながら、オズは反撃の機会を窺う。
シュネーをいたずらに傷付けたくはない、それに、他の皆の宝も。しかし、だからと言って、手をこまねいているわけにはいかない!
契機としたのは、涼の援護射撃。舞い踊る人形の足元を狙ったそれを厄介と見たか、ベルベットの注意がそちらに逸れる。シュネーはそれに従って涼へと襲いかかり、それを見切った彼女と束の間のダンスを踊る。
その間に、オズは斧を手放し、代わりにそれを手に取った。
「返してもらうよ……っ!」
ぐるりと身体ごと旋回し、それ――ガジェットショータイムにより生み出されたブーメランを投げる。大きく弧を、円を描く軌道で、前衛に立つシュネーを迂回してガジェットは飛ぶ。
「なんじゃぁっ!?」
ほとんど真後ろから飛んできたそれに、ベルベットの反応が遅れる。だが彼女の代わりに反応した黒猫が一声鳴いて、魔力障壁でブーメランを弾き飛ばした。
「あっぶないのう、なんて真似を――」」
冷や汗をかいた、というようにベルベットが笑う。けれど、ここまではオズにとっても織り込み済みだった。
「すこし、力を貸してね」
ぐい、とその手が引いたのは、いつもならばシュネーと繋がっている細い糸だ。強靭なそれは、今あのブーメランと繋がっている。弾かれたように見えたガジェットは空中でその軌道を操作され、もう一度――今度はベルベットの足元へと飛翔した。
「ぎゃーっ、しつこいのう!」
魔術による浮遊、咄嗟にそれを躱した敵に、今度はいすゞが、そして持ち前の速度を最大限に活かした静香が襲い掛かる。
「対応が遅いわよ!」
「契約した相手を放って何やってんスか浮気者ォ!」
こーん、と下駄を鳴らして跳躍。いすゞの杖は容赦なく管狐ごとベルベットに振り下ろされた。きゃー、みたいな感じで管狐が悲鳴を上げる。殴打と共にその長い身体を杖で絡め捕り、いすゞは自分の式神をベルベットから引き剥がした。
「大事なもんなんじゃろ? もうちょっと丁寧に扱ったらどうじゃ!?」
「あっしと管狐の問題に口挟まないで欲しいっス」
「あら、その子の筒ってこれかしら?」
「取るなーッ! ベルちゃん様のものなのに!」
静香がそれを奪い取り、至近距離でごたごたとしている内に――。
「シュネー、大丈夫だった?」
操作を忘れられ、力なく倒れようとしたシュネーの身体を、オズが抱き留める。よかった、と、彼は一度、心からの安堵に身を任せた。
「ええい、うるさい! とっと離れんかお主らぁ!」
一方、ベルベットが周囲を囲む猟兵を引き離すべく魔弾を展開する。それに対し、いすゞの撒き散らした符が壁を形成、生み出された結界と魔弾がぶつかり合い、不可視の衝撃が廃城を揺るがす。
近寄りがたい多数の魔力爆発、しかしその間を縫うように、透がそこを指し示す。
その指先に、意思に従い、鋭い一陣の風が吹く。弾丸のように疾走したそれは、ぱん、とベルベットの頭部で軽い音を鳴らす。
「――!」
意図的に抑えているため、威力はほとんどない。逆にそれが警戒の隙間を抜けることにもなったのだろう。ベルベットの金の髪が風に踊り、赤いリボンが揺れる。そして、赤い帽子は風に乗って、僅かに浮き上がっていた。
そこを逃すアメリアではない。スカイステッパーで空を駆けていた彼女は、フリーになった自分の本体を捕まえる。
「ありがとーっ」
透に向かって親指を立てつつ空中で一回転、頭に深く帽子をかぶって、真下のベルベットへと手を伸ばす。
「ぐ、ぐるぐるはもう嫌じゃー!」
先程の空中投げが頭を過ったのだろう、振り払う様に魔力を弾けさせるベルベットから、さらなる一歩で空に逃れる。
「そう、残念ねぇ」
見せかけだった、と気付いた頃には、シュネーによってその手から杖が抜き取られていた。
「え、ええっ!?」
「ほらね、やっぱり君の遊びはよくないってさ」
今度こそ、シュネーへと糸を繋いだオズが笑う。
引かれる糸に合わせて急速に後退するシュネーの手の内で、エレメンタルロッドはふかふかの竜へと姿を変える。待っていられないとばかりに飛び上がったそれは、主であるファルネーゼの腕へと飛び込んだ。
「エチカ! よかった、怪我はありませんか?」
抱きとめた大事な相棒を、ファルネーゼが撫でる。度重なるユーベルコードの発動による疲労も、この一時だけで報われるようだ。
互いに労いあうファルネーゼとエチカを、にわかに安堵の空気が覆った廃城の広間を。
「――出でよ、我が下僕達」
亡霊が満たした。
●亡国の王女
近接戦闘でならこちらに分がある、その涼の見立ては間違っていなかった。召喚した『コレクション』を悉く奪い返されたベルベットに接敵し、ショートソードでの攻撃を仕掛ける。掌を中心とする障壁も、涼の剣速には追い付けない、そう確信した矢先だった。
地面を叩くようにして魔力を爆ぜさせ、逃れたそこでベルベットは唱えた。
「――出でよ、我が下僕達」
それはベルベットの得意とする召喚術の一端。この空間を満たす亡霊たちには、兵士、侍女、小間使いから貴族らしきものの姿まであった。彼等はみなベルベットの祖国の亡霊達であり、死してなお彼女に囚われ、使われる者達だ。
怨嗟の声を、嘆きの声を、戸惑いの眼で見回すファルネーゼと対照的に、ベルベットは機嫌を直したように微笑んだ。
「ようし、よく来たベルちゃん様応援団! さあまとめて魔力を寄越すが良い!」
その役目は、簡単に言うなら外付け電池だ。搾り取られた者達の苦鳴の合唱が、一段と大きくなる。
消耗した分を回復し、再度の大技で押し込もうと、恐らくはそういう腹だろう。そこに滑り込むように、黒い影が接近する。
魔力の経路を断つように、刈り取る様に走るのは、大鎌の閃き。それは、これまで息を潜めていたセツナの姿だった。
「奪われるというのは――特にそれが宝物ならば、当人には耐え難いことだ」
尻もちをついたベルベットに旋回する刃を向けて、彼は口を開く。その様は死神のそれに近い。
「では、あなたは何を得た? 全てを手にした万能感? 誰かの拠り所を奪う優越感? そんなものいったい何になるのかな。
現状に満足できなくなれば、また誰かから宝物を奪い、仮初の充足感を得るのかな。代替品では飢えは満たせないよ」
諭すような文句に、やはりと言うべきか、ベルベットは反発する。
「あーーーーやかましい! このベルちゃん様にお説教とか何様じゃ! 大体『耐え難い』とか言いながらお主は平然としとるじゃろうが!」
「――ああ、そこから演じるべきだったかな」
その笑顔は実の所いつもとは違う。両者とも初見のベルベットには分かり様もないだろうが、それは、セツナでもゼロでもない第三の人格だ。
「いいや、私のことより今は君だね。その罪を――持って行ってあげよう」
「余計なお世話じゃ!」
召喚術。ベルベットの掲げた手に虚空から彼女のコレクションが舞い降りる。武骨ながら機能美を感じさせるアサルトライフル、それは先程彩萌から奪ったDevastatorだ。
躊躇なく引き金が引かれ、弾丸が跳び退った『彼』の影を掠めて過ぎる。とにもかくにも距離を取ったベルベットは、アサルトライフルを手に立ち上がった。
ようやく出てきた自分の得物を目にして、彩萌が声を上げる。
「ちょっと、大事に扱いなさいよ!?」
「分かっておるわ、行くぞ斬断の娘! お主の宝もこのベルちゃん様の手にかかれば重ーッ! 何じゃこれ重い!!」
「あー、まあそうなるわよね当然」
自分だって通った道だ。銃に慣れているとも思えないベルベットにはなおのこと辛いだろう。あえて真っ直ぐに、彩萌はそんな彼女へと歩み寄る。
「な、なんじゃお主、これが怖くないのか!?」
「ええ、そうね。その子が怖いのはよく知ってるけど――」
つかつかと歩を進める彼女に、銃口が向けられる。一つ、二つ、銃声が響くが、それらが彩萌に当たる事は無い。
「――練習のひとつもしていない小娘に扱えるほど、この子は大人しくないわ!」
お返しとばかりに銃口を上げて、二丁拳銃を同時に連射する。またも猫の鳴き声と、ベルベットの障壁で銃弾が止まるが、それらは全てベルベットを貫く軌道を通っていた。
ひ、と少女らしい悲鳴が漏れる。
「あーもう! そっちのちっこいのを貰っておけばよかった!」
「どっちでも一緒よ! こら投げるなーッ!」
放り投げられたアサルトライフルを、彩萌が慌てて受け止める。速やかに拳銃から持ち替え、それを構えるが――。
「……え?」
後方で発せられた眩い光に、思わずそちらを振り向いた。
その時、仲間の回復を一段落させたファルネーゼは、その光をまた別の目的で用いていた。捧げる祈りは、苦悶を歌う彼等亡霊のために。
「叶うならば、皆様に安らかなる眠りを――」
魔を祓う清浄な光が辺りに広がり、召喚された亡霊達を眠りへと付かせていく。
「何を、しておる!!」
その様子に気付いたベルベットが魔力弾を放つが、そこに飛び込んだアメリアの巨腕――Vanguardが、地面に突き立てられ、盾となってファルネーゼを守る。
「こっちは任せてね!」
灯台のように聳える縛霊手の後ろで、光が、輝きを増す。
「べ、ベルちゃん様応援団が――!?」
「ベルベット様」
穏やかに目を瞑っていく彼等の様子を見届けてから、ファルネーゼはベルベットへと向き直る。
「貴女がどんなに強くとも、貴女がどんなに全てを欲しようと、我々は負けません」
はっきりとした宣言に、ベルベットが歯噛みする。生意気な、と声を上げようとしたところで……。
「はいはいこっちっスよー、いい子っスねー」
動物に効果的な笛の音で、いすゞが黒猫を連れて行くのを発見する。意外と効果的だったらしく、既に黒猫はいすゞの指先にじゃれついている。
「お、おい……どういうことじゃ……」
「おやおや、先程のあっしの気持ち、分かってきたっスか?」
下僕を、使い魔を引き剥がされ、それでもベルベットは地団駄を踏んで魔力を巡らせる。
「えーーい使えん者どもめ! 構わん、このような場面、苦戦の内にも入らぬわ! このベルちゃん様一人で切り抜けてみせる!」
来たれ、コレクション。今日何度目かのそれに、十分目の慣れた彼女が動く。
「――届けてくれ」
透の指先。風がまた空を切る。その場に残るのは、静かな羽音。その正体は『鵲』、透の放つ、不可視の鳥だ。
空を駆ける透明な翼は、蝶の耳飾りを、手書きのチケットを、ベルベットの手に収まる直前で掻っ攫う。
「なあ、アンタは確かに沢山の宝物を持ってるけどさ、それって皆の宝物であって、アンタのじゃないんだよ」
ピアスを涼の手元に落とし、鵲は透の元へ、その紙切れを運んできた。
「アンタは奪ってばかりだけど、自身で得たモンってあったのかな? じゃないと何時までも大事って気持ちは分からないままだ」
言いながら、彼女は表情を曇らせる。そうだ、これは先程セツナが言ったものとほとんど同じもので――。
「……って、言ってやるヤツが居たらよかったのにな」
全ては、もう遅い。今更間違いを指摘しても、彼女がその我侭で祖国を滅ぼして、オブリビオンになるに至った事実は何一つ変わらない。
「知った風な口を利くでないわ!」
魔力の爆発、怒りと共に溢れ出た奔流が竜巻を形作る。けれどそれに一歩も退かぬまま、透はそれを掲げて見せる。
「だって、アンタさ。ホントはこれの意味も分かってないんだろ? 他の『宝物』だって、きっと――」
「うるさい!!」
ああ、癇癪を起こした。そんな事を彩萌は思う。もしかしたら泣いているのだろうか、この状態では涙もすぐに散ってしまうだろう。だから、確かめられないけれど。
ストックを肩に預け、頬を寄せる。視線は銃身をなぞり、真っ直ぐ先へ。
「――銃ってのはねぇ、こう使うのよ」
銃声が一つ鳴って、魔力の渦が解ける。
崩れ落ちるのを堪えるベルベットに、涼が強く地を蹴り、迫る。
相手が少女の姿であろうと、ここで手を抜くことは出来ない。ともすれば奪われ、失ってしまただろうそれを、左手で強く握る。
「この一撃で終わりにする」
右手には、柄に蝶の止まったショートソード。
黒蝶の詠嘆曲。ほどけていく嵐の中を黒蝶の群れが舞い、ベルベットへ最後の一撃を加えた。
●夢の終わり
風が行き過ぎて、廃城に静寂が戻る。胸に手をやったセツナは、自分の中に『もう一人』が戻ってきていることを感じた。
同じように、涼は右耳にピアスを戻し、透はその『証』を懐に仕舞う。
取り返したかった大事なものは、彼等の元に、無事戻ってきた。
「……へへ、おかえりなさい、ってね」
夜は、やがて明けるだろう。
大成功
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第3章 日常
『ようこそ、ちいさな舞踏会へ』
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POW : 体力に任せて踊ったり、食事をいっぱい楽しむ
SPD : 楽器の演奏や華麗な舞踏により、会場を盛り上げる
WIZ : 軽妙なトークや武勇伝により、人々を楽しませる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●舞踏会
治める者の居なくなった城に、密やかに明かりが灯される。
事態の解決の報告を受けて、舞踏会は予定通り催されることになった。
開場まではまだ時間がある。移動はグリモア猟兵に任せておけばいい。しっかりと準備をして、心置きなく楽しむのが良いだろう。
斬断・彩萌
舞踏会ね。お一人様だし食事の方を堪能させてもらいましょーか。
地域の特産品とか、そういうものがあったらいただくわ。
(もぐもぐ……)
ん、おいしい。旬なのかしらね?このよく分かんないフルーツも爽やかな酸味がクセになりそう。
適当に小腹が満たされたら、少し休んでから踊りに出ようかしら。
壁の花になってるのもつまらないしね。
適当に顔の良い人をひっつかまえて、と。
「そこの貴方、よろしければ一曲如何?」とお誘いをかけて。
さぁさ一夜限りの楽しいひとときを過ごしましょ!
※アドリブ・絡み歓迎
●パーティのはじまり
夜の帳が辺りを包み、ぽつんと建ったこの城だけが、柔らかな光に包まれる。ランプの灯による明かりが、急遽敷かれた絨毯の上で揺れる。持ち込まれた楽器によるゆったりとした音色。磨かれたテーブルの上には、様々な料理が並んでいた。
そのうちの一つ、小さなフルーツを指でつまんで、彩萌がそれを口に運ぶ。
「……ん、おいしい」
アックス&ウィザーズ産であろうその果物の名称を、彼女は知らなかったけれど、彩萌の出身である世界にも、似たような味のものはある。
旬なのかしらね、などと考えながら、別の果物もいくつか拾い上げる。ブドウに似た果実の飲み物を口にして、やっぱり最初のが一番気に入ったかな、とそちらの皿に、眼鏡の奥の瞳を向けた。
「お気に召されましたか?」
パーティの参加者だろうか、着飾った男性に声を掛けられて、彩萌がせっかくだからと場に合わせた笑みを返す。
「そうね、爽やかな酸味があって、クセになりそう」
「それは何よりです、我々の商隊が運んできたものなのですが、この辺りでは人気の品で――」
彼の話に耳を傾け、相槌を打ちながら、そっと辺りを窺う。
舞踏会は始まったばかり、遠慮でもあるのだろうか、音楽は流れども踊る者は少ない。
ふ、と息を吐くように小さく笑って彩萌はその先陣を引き受けることにした。まあ、そうしなくとも、彼女が放っておかれることはそうそうなかっただろうが。
「それよりも、せっかくの舞踏会でしょう、よろしければ一曲如何?」
――幸いと言うべきか、少し自慢話が鼻につくが、目の前の男の顔はそこそこ見れる。
壁の前よりも、花は部屋の真ん中で咲くのが似合う。差し出された手にその手を預けて、彼女はホールの中央へと進み出た。
二人に合わせて、少しだけ楽器の音色が高まりを見せる。
それでは、是非、一夜限りの楽しいひとときを。
大成功
🔵🔵🔵
ダイナ・アルフォンシーナ
【RSD】
アメリアくんに誘われてきてみたが
ふむ、大切なものか
きっと彼彼女達の人生や想い、そして夢が詰まったものなのだろうな
叶うならば是非近くで拝見したいものだ
それはそうと抱えるのやめてくれないかい?
抱えられてる状況を諦め挨拶回り
こんな格好で失礼する…
行商人や民に流行の音楽等を聞けば目は鋭く
ほう、今はそういうジャンルにニーズが…この世界での活動も考えたいところだな
UCを使い彼女の拘束から抜ければ、ワインを片手にゆっくりとあたりを見渡し
皆が大切なものと触れ合う場面を見れば、これ以上ない笑みが浮かぶことだろう
む、あの子アイドルに向いてるんじゃ…
いや待ちたまえ、踊りはともかくその高さは流石に…
にゃー
アメリア・イアハッター
【RSD】
舞踏会って初めてかも!
赤いイブニングドレスも準備できたし、社長も引っ張ってこれたしバッチリだね
この帽子にドレスは似合わないかもしれないけど…今日くらいは、ずっと被ってましょ
社長を抱えながら挨拶してまわる
特に行商人がいるって聞いたから、色々話を聞いてみたいな
今流行ってるものとか、旅の途中で見た素敵なものとか!
…社長? 商売の目になってるよ
後はダンスは勿論欠かさずに
手の空いている猟兵さんやダンダンがいたら最優先で男女関係なくこっちからお誘いに行っちゃおう!
元気な子とは少し激しく、静かな子とは優しく踊り
適当な人とは適当に楽しんじゃお!
最後は社長と空中ダンス
ほら、ちゃんと支えるから大丈夫!
●夢の話を
「――なるほど、なかなか大変な戦いだったようだね」
「そうなの。さすが社長は話がわかるわね」
うんうんと相槌を打つダイナ・アルフォンシーナ(社長兼プロデューサー兼アイドル兼ネコ・f18710)に、赤いイブニングドレス姿のアメリアが満足気に返す。
「大切なもの、か。きっと皆の人生や想い、そして夢が詰まったものなのだろうな……」
叶うならば是非近くで見たいものだと、ダイナは感じ入ったようにそう頷いた。夢を見る者が居るのなら、応援したくなるもの。そして彼自身もまた夢の途上にあるのだ、思うところは色々とある。
37年、ケットシーの大人として生きてきた彼のその表情は、社長という肩書に相応しく厳かなものだった。
「そうそう、せっかくだからパーティの主催の方々にも挨拶してきましょ」
「うむ、それは重要だな。ところで抱えるのやめてくれないかい、アメリアくん?」
「行商人さんも来てるって言ってたから、そっちにもね!」
「聞いていないね……?」
こんな格好で失礼するよ、という一言を頭につけながら、ダイナはアメリアと共に会場を回っていった。顔と名前を売る意味でも、それは有意義なものだったが、もっとも大きな収穫は、生の音楽事情に触れられた事だろうか。
「ふむ、音楽としては上流階級向けと大衆向けで隔絶されている面があるようだね。両者の需要を満たすか、あるいは混ぜ合わせることができれば――」
「社長? 商売の目になってるよ」
流行りとか、旅の途中で見た素敵なものとか、そういうつもりで聞いたんじゃないんだけどなあ、とアメリアが嘆息する。
「私にも私の楽しみ方があるんだ、アメリアくん。君も楽しんでくると良い」
そう言うと、壮年のケットシーはするりと彼女の腕から抜ける。振舞われていたワインを手に、ダイナはゆったりと構えた。
彼女の頭にはあの帽子が、彼の手には姉弟と慕う人形が、そして楽器を演奏する少女は傍らの竜と共に居る。その光景は、きっと自然で、何より得難いもののはず。ダイナの口元が、満足気に……。
「む、あの子アイドルに向いてるんじゃ……」
いや、すぐに『社長』の顔に戻ったか。
連れには腕の中から逃げられてしまったが、特に気にした様子はなく、アメリアはホールに視線を巡らせる。目についたのは、黒ずくめの。
「ダンダン、一緒に踊らない?」
手が空いている、というより暇だろうと当たりを付けて、そう声を掛けた。
「へえ、馬子にも衣裳だね」
「凍らされたいの?」
飽くまで笑ったままそんな言葉を交わして。
「良いけど、僕この服しか持ってきてないよ?」
「いいの、私だってドレスにこれだし」
暗幕みたいなフード付きマントを主張するオブシダンに、アメリアは頭上の赤い帽子を指し示してみせる。ドレスにはきっと不釣り合いかも知れないけれど、せっかく取り返した『大事なもの』だ。
「そう、それじゃよろしくね」
差し出された手を取って、ホールへと歩む。
「ところでダンダン、踊ったことある?」
「あると思う?」
「そうよねえ」
簡単なレクチャーから始まり、よたよたと、たどたどしいステップが踏まれていく。
そんな様子を微笑ましく見ていたダイナだが。
「社長、この後は私と空中ダンスね!」
「いや……それはちょっとやめておいた方が良いと思うな」
早々に退散を試みるダイナだが、結局はアメリアに捕まり空中散歩へと招待された。
悲鳴だか歓声だか分からないそれが、空から降ってくる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
小日向・いすゞ
友人/f14669と
おめかしします
適当な食事を友人へ、お箸で
はい、あーん
美味しいっスか?
知らない味って不思議な表現っスねェ…
はい、どうも
確かにこれは知らない味っスね…
落ち着いたっス?
どうやら舞踏会は踊る場所らしいっスよ、友人
そりゃあ、友人っスよ
―それとも其れ以上がお好みで?
喉を鳴らして笑って
上手に踊る事が出来れば考えておくっスよ
さあさ、えすこーとの一つや二つお願いするっスよォ
そんなに踊るのが上手そうなンスから
あっしもこんな踊り初めてっスけれどどうにかなるっスよ
賢いなら次は強かさっスよォ
それではお手をどうぞ、名前も知らぬ王子様
せいぜい足は踏まないようにするっスからね
おや、そういうものっスか?
遙々・ハルカ
》友だちて言ってくるお客さん・f09058と
テキトーにタキシード借りて
ハイハイ、あーん…
高ェ店で飯食うとこんな味なんかな~てカンジ?
知らん味だわ、知らん味
食べた方が早ェ~よ、ほい
お返し
いやァ~ここで落ち着けって無理じゃね?
まー舞踏会て言うくらいだから…
…
オレのコト何だと思ってっか先に聞いてイイ?
…そーいうことじゃねェ~んだよなァ~
アッハ、彼氏にでもしてくれる?
ま、いいけどさァ
おだてよーとしてもオレ踊ったことねェよ、フツーに
ざっと視線巡らせ踊れている者を観察してから
どうにかするかァ
あいあい、足は踏まねーでよ
オレは賢い代わりにか弱いかンね、狐ちゃん
手を取ってから
エスコートされてェなら逆でしょコレ
●二人の関係性
舞踏会ともなれば男女連れ立っての参加者も多い。テーブル近くに陣取った遙々・ハルカ(DeaDmansDancE・f14669)といすゞもその内一組だ。
「はい、あーん」
「ハイハイ、あーん……」
いすゞの手からハルカの口へ、箸でつまんだ手ごろな料理が運ばれる。
「美味しいっスか?」
一見甲斐甲斐しい仕草で、目を細めて問ういすゞ。そちらに視線を向けたまま、ハルカはそれを咀嚼する。
「……高ェ店で飯食うとこんな味なんかな~てカンジ? 知らん味だわ、知らん味」
「知らない味って不思議な表現っスねェ……」
「食べた方が早ェ~よ、ほい」
お返しに、差し出されたそれを口に収めて、いすゞも考え込むように顎に手を遣る。
「確かにこれは知らない味っスね……」
二人共、文字通り住む世界がこことは違うためだろう、馴染みのない味に首を傾げる。けれども、初めての味に共に興じるのはそう悪い事でもない。
いくつかの料理を食べて、食べさせあって、しばし。いすゞがタイミングを見計らっていたように問いかける。
「落ち着いたっス?」
「いやァ~ここで落ち着けって無理じゃね?」
なじみがないのは料理の味だけでもないようで、タキシードの首元に触れながらハルカが言う。
「ところで友人、どうやら舞踏会は踊る場所らしいっスよ」
「まー舞踏会て言うくらいだから……」
そりゃ踊る場所でしょうよ。と、歯切れの悪い問答を続けていても仕方がない。疑問点ははっきりさせておくべきだろう。
「オレのコト何だと思ってっか先に聞いてイイ?」
「そりゃあ、友人っスよ」
「……そーいうことじゃねェ~んだよなァ~」
この手の場所に誘うということは、などと予測はできるが、この『お客さん』の意図は、どうにも読めない。
「おや――其れ以上がお好みで?」
「アッハ、彼氏にでもしてくれる?」
「上手に踊る事が出来れば考えておくっスよ」
くつくつ喉を鳴らして笑って、いすゞはハルカの傍らからするりと抜ける。二人揃って笑顔だけれど、腹の底は見えないまま。
「さあさ、えすこーとの一つや二つお願いするっスよォ、そんなに踊るのが上手そうなンスから」
手招く彼女を追って、ハルカもまた腰を上げた。
「ま、いいけどさァ……おだてよーとしてもオレ踊ったことねェよ、フツーに」
「あっしもこんな踊り初めてっスけれどどうにかなるっスよ」
どうにか。ハルカはそっと周りに視線を遣って、ステップを踏む二人組の動きを追う。空中で踊っている二人組は、上手いが参考にはならないとして――。
「それではお手をどうぞ、名前も知らぬ王子様」
いすゞの差し出したその手を、ハルカが取る。
「エスコートされてェなら逆でしょコレ」
「おや、そういうものっスか?」
結局また、名前も聞かないまま、二人の『友人』は共に時を過ごす。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
シュネー、舞踏会だって
うやうやしく礼をして
わたしといっしょにおどろうっ
小さな手を指先ですくって
懐かしい夢
シュネーがいなかったら
いてくれなかったら
とちゅうであきらめてたかもしれない
ううん、みんなとバラバラになって
だれかのところにもらわれて
シュネーと
こんなふうにたのしく踊っていられなかった
ともだちと、出会うこともなかった
その未来をしらないから
そっちのわたしだってしあわせだったかもしれないけど
わたしは、今がたのしいよ
ありがとう、シュネー
だいすき
オブシダンだっ
いつもおくりだしてくれてありがとう
ふふ、ゆっくりおはなしする機会なかったものね
もうおどった?
剣舞でも
ひとの姿でもきっと映えると思うから
見たいなあ
●踊るひととき
ダンスのために用意された広間で、オズは小さな『姉』と向かい合う。そしてパートナーにそうするように、恭しく一礼。
「さ、シュネー、わたしといっしょにおどろうっ」
その小さな手を指先ですくって、オズは彼女と踊り出す。揺らめく灯火が照らす中を、二人くるりと回って。
こうしていると思い出されるのは、やはり先日の戦いで見た『夢』の、あの日の事。
あの時シュネーがいなかったら、居てくれなかったら、途中で諦めていたかも知れない。
いや、きっと皆とバラバラになって、誰かの所にもらわれて、今日この瞬間に辿り着くことはなかっただろう。
その場合の未来は、予想することもできない。それはそれで幸せだったのだろうか。きっとその時のオズは、逆に『今この時』を想像もできないだろうから。
それは、考えても答えの出ない事。けれど、確かな事として――。
「ねえ、シュネー。わたしは、今がたのしいよ」
君と踊れるこの瞬間が、彼等と出会い、友情を育んだ今この時が、楽しい。
だから。
「ありがとう、シュネー」
だいすきだと、飾らない気持ちを呟いて、二人はこの瞬間を遊ぶ。
柔らかな音楽と、煌びやかな明かり。最後にもう一度頭を下げて、オズはシュネーを肩へと乗せた。ああ、楽しかったとダンスホールを横切ったそこで、一休み、といった風情の男と顔を合わせた。
「オブシダンだっ」
「ああ、オズ。今回も手を貸してくれてありがとう」
黒ずくめの男は笑顔を浮かべて、マント裾から出した右手をひらひらと。
「ううん、オブシダンも、いつもおくりだしてくれてありがとう」
「どういたしまして。……そうか、こうして話すのは初めてだったかな?」
「ふふ、ゆっくりおはなしする機会なかったものね」
僕はいつでも歓迎なんだけど、と肩を竦めオブシダンに、オズが問う。
「オブシダンは、もうおどった?」
「ああ、もちろん」
フードの下で目が逸らされた、とその辺りを知ってか知らずか、オズは微笑みを浮かべた。
「剣の姿でもひとの姿でも、きっと映えるよね……見たいなあ」
「いやいや、格好悪いものだったよ。映えるって意味じゃあ君達二人の足元にも及ばないさ」
見事なダンスだった、と小さく拍手するオブシダンに、くすぐったげな笑みを返して。
オズとシュネー、そしてオブシダンは、共にテーブルの方へと歩いていった。
大成功
🔵🔵🔵
セツナ・クラルス
催しには積極的に参加せず壁の花
楽しみたいのはやまやまなのだが
先ほどの戦闘で少々疲れてしまってね
甘いものでも食べれば少しは目が覚めるかな、うん
…あれ?
おいおい、何やってんだよ
頷いた拍子に夢の中に落ちたみたいだ
今はオレがいるからダイジョーブだけど
一人だったらどーするつもりだったんだよ
…つみとるものって言ったっけ
アイツを起こすと
セツナにそれなりの負担がかかるらしい
無理に目覚めさせなくてもどうにかなっただろうに
オレがいないからって、焦っちゃったのかよ
ふは、ほんっとオレがいないとてんでダメだな!
甘いモンってどこにあんの?
アイツが起きて、何もなかったらがっかりしそうだし
お土産に持って帰れそうなのあるかな
●おつかれさま
ダンスも、そして音楽も、中心となるのはやはりこの広間なのだが、セツナはそこからあえて距離を置いていた。
普段なら、この手のイベントごとには積極的に参加していくタイプなのだが、先日の戦いの疲れが残っているのか、その目は何処かぼんやりしている。
「ああ、そうだ。甘いものでも……」
そうすれば少しは眼が覚めるか、そう思ったところで頭が一度かくんと落ちた。
「――おいおい」
どうした、と、顔が上げられたその時には、眼に金色の輝きが宿っていた。
「またかよ……そんな疲れるなら無理に『アイツ』を目覚めさせることなかっただろうに」
先日戦った三つ目の人格、それを呼び覚ますことはセツナの負担に繋がるらしい。戦闘直後にも似たような事になっていたが、日を置いた今もまだ、それが癒え切ってはいないらしい。
「オレがいないからって、焦っちゃったのかよ。ふは、ほんっとオレがいないとてんでダメだな!」
呆れるような、それでもどこか嬉しそうな色を含んだ声でそう言ったゼロは、立ち上がって料理の皿の方へと歩いていった。
そう、こうして自分が居るならば、一人ではできないことだって実現できる。
「なあ、甘いモンってどこにあんの?」
『セツナ』が目覚めたときに、がっかりしないように、彼は持ち帰りに相応しい品を物色し始めた。
大成功
🔵🔵🔵
九之矢・透
おおー……なんかキラキラ?してるな!
……ぶ、ブトウカイ?って、何したら良いんだ!?
【POW】
ホラ、踊りはさ、アタシこの服しか持ってないし
絶対だれかの足を踏む気がするし…
ウン、準備とか掃除手伝っていい?
本番はゴハンを目一杯食べようかな!
踊ってる人や演奏してる人が居たらそれを眺めつつ
テーブルの端っこに陣取ろう
……おおお、あんま見た事ないごちそうが沢山ある!!
オブシダンサンや仲間がテーブルに居たら誘ってみようかな
ホラ見て、こんなに肉が分厚いぞ!魚もでかい!うまい!
アタシでも作れそうな料理があったら教えてもらおうかなあ
戻っていつか、チビ達に作れるかもしれないし
今回の仕事はアイツらのお陰でもあるしさ
●料理の乗ったテーブル
「こ、これがブトウカイ……!」
先日は戦場となり、氷が張ったり魔法弾が飛び交ったりとひどいことになっていた廃城が、すっかり別の顔を見せている。一言で言うとキラキラしているその光景に、透は感嘆の声を上げた。
そして、同時に。
「アタシ……準備とか掃除に回った方が良い?」
居心地の悪さを悟ったゆえのそんな言葉も、さすがに運営側からストップが入った。何しろ透は、ここでの戦いをこなし、平和を取り戻した者の一人なのだから。
「君も踊るかい?」
「いや、この服しか持ってないし、絶対誰かの足を踏む気がするし……」
「そう? 残念だなぁ」
堂々と歩いていく黒ずくめに続いて会場に入り、広間で踊っている人や演奏している人を横目に、透はテーブルの端に陣取る事にした。
普段、『チビ達』と暮らしている場所からは、きっと遠い光景をしばし眺めて――。
「……おおお、あんま見た事ないごちそうが沢山ある!!」
テーブルの上に広がる異世界にも驚きの声を上げた。
よし、目一杯食べていこう。そう決めて、彼女は料理の群れに挑みかかっていった。
「透……大漁だったようだね」
慣れないダンスを終えて戻ってきて、思わず声を漏らしたオブシダンに、目の前の皿をいっぱいにした透が手を振る。
「ん、オブシダンサンも一緒に食べてく?」
「そうだねえ、僕もお腹空いたし」
腰に下げていた剣を降ろして、オブシダンは隣の透のさらに視線を向けた。どんな料理があるの? そんな言外の問いは察して貰えたようで。
「ホラ見て、こんなに肉が分厚いぞ! 魚もでかい! うまい!」
「ふふふ、ほんとだね。これは楽しみだ」
猟兵として戦う姿とはまた別の様子に、彼は笑みを浮かべて応じた。
「おすすめは?」
「このサカナ!」
「なるほど、ありがとう」
じゃあそいつからだ、と自分の分を確保しにかかったオブシダンを見送って、透も自分の料理へと意識を戻す。
ナイフとフォークで切り分けて、口に運んだそれから程良く味の混ざった肉汁が溢れる。下を楽しませるそれを堪能しながらも、彼女の思考はこう続く。
美味しい。――アタシでも作れそうな料理があったら教えてもらおうかなあ。戻っていつか、チビ達に作れるかもしれないし。
胸のポケットに仕舞ったそれに思いを馳せる。かたたたたきけん、彼等『チビ達』の、親としての証。今回の勝利はああしてそのチケットをくれた家族達のおかげでもある。
「そうだねえ、じゃあ食べ終わったら、一緒に料理人を探してみようか」
それで話を聞いてみよう、とオブシダンは言う。
「ああ、手に入りやすい食材だと良いんだけど」
この味を、チビ達に提供できる日を夢見て、透は表情を綻ばせた。
大成功
🔵🔵🔵
ファルネーゼ・アトラス
無事にこの腕へ帰ってきた相棒を撫でる
本当に…無事で良かった
さあエチカ、折角の舞踏会ですよ!
今日は存分に楽しみましょうっ
エチカと共に踊ったり
時に音楽に合わせて歌声を披露したり
人々に元気を与えられるようファルなりに出来る事をしたいです
う、うーん…少し緊張しますね
…はっ、大丈夫です!
リズムを取るのは得意なんです!
暫くして、会場を見渡して
会場はどんな様子かしら
皆様、楽しんでおられますでしょうか?
皆様、笑っておられますでしょうか?
皆様の笑顔が見られるだけで、ファルは嬉しいのです
…でも、やっぱり一番嬉しいのはエチカが傍にいる事
ファルの隣で笑っていてくれる事
――エチカ、おかえりなさい
もう絶対に離れませんから
●舞踏会の夜に
「さあエチカ、折角の舞踏会ですよ! 今日は存分に楽しみましょうっ」
戦いを終えて、腕の中へと帰ってきた相棒を撫でて、ファルネーゼは気合十分な様子で会場へと入っていった。
始まりからしばしの時が過ぎて、大分賑やかになったそこで、彼女はエチカと共に踊る。ダンスのパートナーはステップを踏む必要もない相手だから、彼女は音楽に合わせて自由に広間を舞う。
くるくる回る部屋の光景が興味深いのか、一見すると振り回される風の小さなドラゴンも、落ち着いた、楽し気な様子を見せていた。
その視線が、広間で演奏される楽器へと向けられているのを察して、ファルネーゼはステップを緩める。
「気になりますか?」
そんな風に問いながら、演奏を担う人々の方へと歩み寄る。音を繋いで音楽にしていくその様子を見つめるエチカの様子に、何か思いついたようで、ファルネーゼはこほんと喉を鳴らした。
「う、うーん……少し緊張しますね」
頬が少し赤らむのを感じながら、頃合いを図る。大丈夫、リズムを取るのは得意なはず。そう自分に言い聞かせて、ファルネーゼは音楽に乗せるようにして、歌い始めた。
「む、あの子、是非アイドルとして――」
「社長はちょっと静かにしててね?」
聞こえたそんなやり取りに微笑みながら、彼女は優しい音階を紡ぎ出す。
できるなら、もっと、人々に元気を与えられるように――。
そんな、徐々に高まっていく歌声が、しばし廃城の夜を彩っていた。
――歌唱を終えたところを拍手で迎えられ、ひとしきり声を掛けられた相手にお礼を言って、ファルネーゼは会場の端に移動した。
ふう、と一息吐いて、ファルネーゼは会場の様子に意識を向ける。
時にそつなく、時にぎこちなく踊る人々、音楽に耳を傾ける人に、料理に舌鼓を打つ人達。大なり小なり、彼等はみんな笑っていて、その笑顔こそが今回の戦いの一番の報酬なのかも知れない。
皆の笑顔を見られることが嬉しい。だけど、とファルネーゼは傍らのエチカへと視線を向けた。
だけど、何よりも嬉しい事は。
「――エチカ、おかえりなさい」
こちらを窺うようにしている子竜を抱き上げた。
「もう絶対に離れませんから」
何よりも嬉しい事は、大事な君が、隣で笑っていることだから。
ささやかながら、賑やかな舞踏会はなおも続く。
たとえ眠って夢を見ても、今度は乱入者などは現れまい。
まるい月が照らす中、平和になった、廃城の夜が更けていく。
大成功
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