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群青に揺蕩う

#スペースシップワールド #戦後

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#戦後


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 設計上の連続稼動可能時間はとうに超えてしまっている筈だった。
 何故自分達は飛び続けることができているのか? ……彼らがそんな疑問を持つことはない。翅が動くのならば、与えられた仕事を遂行すればいい。
 暗黒物質の間を行き交うかすかな信号を頼りに、その青い群れは一つの大きな船を見つけた。
 くるくると回っている警光灯と、船室の窓から漏れるいくつもの暖かな光。群れは誘い寄せられるように一斉に船体に貼り付いて――。

 青い群れは自分達が追われていたことにも気付かなかった。
 星と見紛う巨大な影が、ぽっかりと口を開ける。船が灯す明かりも、群れの青もすべてを覆って闇に閉ざした。

●大海へ
 グリモアベースは、星々の浮かぶ広大な海を映し出している。
「スペースシップワールドの残敵狩りを手伝ってほしいんだ」
 アリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)は明々と燃えるグリモアを指先に浮かべて、猟兵達へと呼びかけた。

「今回見つけたオブリビオンは、『電幻の蝶』……それと、『災厄』。メルビレイっていうものすごく大きな宇宙ドラゴンなんだけど……ただの伝説じゃなかったんだねぇ……」
 自分が視たものが起こりうる未来であるとは、どうも受け入れがたいという表情で首をかしげる。
 宇宙船乗りに語り継がれる、ある種の自然災害のような存在。逃げ場のない星の海で対峙することを想像すると手足の先が冷たくなるようだと、スペースノイドの彼女は身を縮こまらせた。
「でね、それがどうも電幻の蝶の群れを追っかけてるみたい」
 電幻の蝶はかつて帝国で生み出され、宇宙船を襲うようにプログラムされている機械兵器だ。災厄がその習性を知ってか、あるいは只の獲物として見ているだけなのか定かではないが。放置しておけばまるで巨大な海獣が、海中の小魚やプランクトンをまとめて一呑みにするように、蝶達が襲う宇宙船ごとメルビレイの腹の中に収まってしまう――そんな未来が予見されている。

「それでね、群れのいる近くの宙域に今は使われてないコロニー跡があるから、そこを戦場にするのがいいと思うんだ。皆にはそこで、例えば強い光とか、電波とか、何か電幻の蝶が反応しそうなものを使ってあいつらをおびき寄せてくれないかな? そうすれば群れを追いかけてるメルビレイも、つられてコロニー跡にやってくるはず」
 コロニー跡は放棄されて久しくコアマシンなども取り去られてしまっているが、縦横に伸びる回廊都市の残骸はオブリビオン達との戦闘に役立つかもしれない。

 そこまで説明を終えると、神妙だった少女の表情がぱっと笑顔に変わる。
「そうそう、コロニー跡に向かうまでのワープはね、あの『ジ・アクアリウム』に乗せて貰えることになったんだよ~! 知ってる? 水族館船! すごいよね~!」
 戦いまでの間にしっかり英気を養っておいてね! と彼女は猟兵達へ向けて、元気よくエールを送るのだった。


呂色
 またまたご無沙汰しております。
 お陰様で多くのシナリオで「電幻の蝶」のフラグメントを使っていただき有難い限りです。この場を借りてお礼申し上げます。
 折角なので自分もひとつ書いてみたいなあ、ということで宇宙の海の冒険にお付き合いいただけたら嬉しいです。
 宜しくお願いいたします。

●第1章:「巨大水族館船ジ・アクアリウム」でのひととき
 巨大水槽を眺めて回るもよし、地球でもおなじみの生き物や、スペワ由来の不思議な海の生き物達と一緒に泳いでみるもよし、あるいは新鮮な海の幸に舌鼓を打つもよしです。
 能力値の指定は不要です。ご自由にお過ごしください。

 お一人参加の方で共同オッケーな方は、プレイング内に「相席可」と記載してください。
 ただし今回は内容的にできることが多くてバラけそうなので、結果ソロになっても悪しからずということで……。
 団体様や1章だけのご参加もお気軽に。

●第2章:集団戦「電幻の蝶」 / 第3章:ボス戦「『彷徨する災厄』メルビレイ」
 放棄されたコロニー跡での連戦となります。詳しい状況は各章の導入にて。
 戦闘章は概ね勝手に共同にすることが多いので、1章とは逆にソロ希望の方は明記をお願いします。

●各章の導入で、プレイング受付期間を提示する予定です。
 お手数ですがご確認をお願いいたします。
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第1章 日常 『宇宙の大水族館』

POW   :    巨大海獣と触れ合えるのは楽しいだろうなあ、力比べもできるかなあ。

SPD   :    本物のイルカやクジラといっしょに泳ぐのは気持ちがいいだろうなあ。

WIZ   :    ほう、これがトロ・スシ。この一カンがいったい幾らするんだい? イクラじゃなくて。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 巨大水族館船『ジ・アクアリウム』。
 船内各所には形も大きさも様々な水槽群といくつもの研究室が置かれ、学術調査のために多くの海洋生物の飼育保存がなされている。
 仄暗いフロアに浮かび上がるウルトラマリンの巨大水槽には、他世界出身の猟兵にも馴染み深い海洋生物達だけでなく、宇宙世界由来の生物――鉱石の体を持つクリスタル・フィッシュが煌めきながら泳いでいたり、長い4本足を持つ巨大なヤドカリのような甲殻類が海底を模した水槽の底をのしのしと歩き回ったりしてゆったりと暮らしている。

 それらの一部は以前より一般にも公開されていたが、最近はワープドライブの普及により他船との交流も増え、非常に盛況となっているようだ。
 観光客のための展示や土産物の販売はもちろんのこと、潜水スーツを着て水槽に潜り、生物たちと一緒に泳ぐことのできるフロアや、白い帽子をかぶった巨体のウォーマシンが繊細な手付きで握る『スシ』なる惑星時代の伝統料理など、食用に養殖された海鮮を使った料理が味わえるコーナーもあるという。

 猟兵達が臨む戦闘の手伝いはできないが、送迎中の時間をどうぞゆっくりお寛ぎくださいと、ジ・アクアリウムの船員が猟兵達をにこやかに迎え入れる。

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 第1章のプレイングは、6/6(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
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コルチェ・ウーパニャン
これがおサカナ…!!これが、イルカ!
そしてこれが、『泳ぐ』……!!
ふしぎ。おサカナってお水の中で、息が苦しくないのかな…?
キレイだけどコルチェ、心配になっちゃう
色々見て回ったけど、コルチェ、カメさんが一番好きかも!

ウミガメさんとリクガメさんの水槽を行ったり来たり、ずーっと眺めてたいな

カメさんって何を考えてるんだろう?
甲羅は重たくないのかなあ。
…おサカナと違って息継ぎしなくちゃいけないのに、水の中で暮らすって決めたのはなんでだろう?
ふしぎだな。どうしてカメさんたちって、生きてく場所をここって決めて、
こうやって甲羅を背負って生きていくって決めたんだろう。
ふしぎ。コルチェ、いろんなことを知りたいな…



 巨大水槽のガラスに、ぴったりと貼り付いているミレナリィドールの少女が一人。
 コルチェ・ウーパニャン(ミレナリィドールのブラスターガンナー・f00698)の透き通る髪は、驚きのシアンに、好奇心のイエローにと、くるくるぴかぴかと色を変えながら輝いていた。その光に水槽内の魚達が誘われやたらと集まってきている。
「これが、おサカナ……!!」
 感動冷めやらない内に、魚達の向こうで大きな影が動いた。むむ! とコルチェがその方に目を向ければ、一頭のイルカがしなやかに身体を波打たせ、気ままに水の中を駆けて行く。
「これが、イルカ! ……そしてこれが……!」
 水槽から一歩離れ、コルチェは無数の生物たちがひしめく海の世界を見渡した。
 ――これが、『泳ぐ』……!!

 初めて見る広大な水の中の世界、コルチェは興味惹かれるままにあちらこちらへ彷徨った。
「ふしぎ。おサカナってお水の中で、息が苦しくないのかな……?」
 首を傾げながら覗き込むと、イソギンチャクの中にひゅっと姿を隠すクマノミ。
「もしかして、その中にヒミツが……!?」
 イソギンチャクの中をどうにかガラス越しに覗き込もうとしてみるも、その謎はふわふわ揺れる触手に包まれているばかりだ。
 こうしていくつもの水槽を巡って来たコルチェが、ややあって戻ってきたのはカメ達の居るフロア。
 水中を優雅に泳いでいるウミガメ達の水槽と、水の張っていない岩場のようなリクガメ達のケージを交互に行ったり来たり見比べる。同族で同じようなフォルムでも、何故こうも生き方に違いがあるものなのか。通りすがりのジ・アクアリウムの乗船研究員が、その様子を微笑ましげに見ていた。
 すると一匹のアオウミガメが水面まで上がり、首を伸ばして息継ぎをしているらしい場面に遭遇する。
「……おサカナと違って息継ぎしなくちゃいけないのに、水の中で暮らすって決めたのはなんでだろう?」
 考えてみれば、疑問は尽きない。あの重たそうな甲羅をわざわざ背負って、水の中、あるいは陸の上で。そうして生きていくと決めたのはどうしてだろうと。
「不思議ですねぇ。大昔には甲羅のないカメや、腹の方に甲羅があるカメなんかも居たようですよ」
「……!」
 傍に来ていた研究員が水槽を眺めながら語りかけてくる。
「外敵や環境の変化から、身を守る必要があったのかも知れませんねえ」
「じゃあ……コルチェたちも必要になったら、甲羅を背負って生きていく未来が来るかも……?」
 どうでしょう、なんて笑いながら研究員が答えて、コルチェは再び視線を水槽へ。
「ふしぎ。コルチェ、いろんなことを知りたいな……」
 もっともっといろんなことを。それはいつか、自分達を知ることに繋がっていくのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィン・クランケット
(相席可)
わぁ~…きれーいっ!
すごいですねぇ、私、スペースシップワールドの水族館は初めてです!
スシ…も気になりますが、こほん、先日ザギンで食べましたので、我慢我慢っ
ゆーったり水槽を見て回りますよぉ

ほへーって水槽と同じ群青の目をキラキラさせて張り付いて見学します
特に、クリスタル・フィッシュなんかの他で見られない生き物は、ついついじーっと見入っちゃいますね!
んー…私は港町で長期間滞在したりしたことはあっても、海ってあんまり身近じゃなくて
でも、こうして眺めてると、妙に落ち着くといいますか
いつまでもここに沈んでいたいと思うなんて、ふしぎですねぇ

とと、いけない
到着する前に、お土産確保しておかなくちゃっ!


御形・菘
スペースシップワールドの生き物はどれも個性的で面白いのう
水槽の中で一緒に泳いで、楽しくて綺麗な動画を撮らせてもらうとしよう!

泳ぎは得意なのでな、ボンベは背負うが補助用品は最低限で十分であるぞ
うーむ、小さな魚には逃げられてしまうか
妾はキマフュっ子なので、生で丸呑みだとか狩猟はできんのだがな

それはともかく、メインはダイナミックに巨大海獣とのランデブー!
スペースクジラの親子と仲良く泳ぐぞ
他にも、名前が分からんが不思議なビジュアルの生き物がたくさんおるのう
そしてスペースウミヘビ! 尻尾がイケてて最高!
見た目は正統派ではないが、宇宙にはこのような濃いナイスガイ(ヘビ)がいるのだな!



 深海を模した仄暗いフロアの一角。クリスタル・チョウチンアンコウの頭部の水晶イリシウムが水流に乗ってゆらゆらと揺れれば、それを追いかけるフィン・クランケット(蜜柑エルフ・f00295)の蜜柑色のアホ毛もぴょこぴょこ揺れる。
 水槽の深い群青色を写し取ったような瞳を輝かせ見上げると、ドーム状につくられた回廊は天井まで、見渡す限り海の世界。深海の生き物たちがそれぞれに淡く光を放っている様は、宇宙空間に漂う星々のようにも見えた。
「わぁ~……きれーいっ!」
 旅商人として、また猟兵としても様々な世界の土地を巡ってきたフィンだが、スペースシップワールドの水族館は初めてだと、ガラス面に貼り付いて未知なる世界に没入する。
 海といえば、旅商で訪れた港町のことを思い出す。潮風と眩しく日差しを跳ね返す波の音、市場の喧騒……同じ海でも、此処はとても静かだった。目を閉じると、こぽこぽと空気の泡が生まれて消えていく音だけが聞こえてくる。
「(いつまでもここに沈んでいたいと思うなんて、ふしぎですねぇ……)」
 街育ちで特段海が身近だというわけでもないのに、この妙に落ち着く感じは何だろうと。最初の生き物は海から生まれたと言われているのは、どの世界のことだっただろう。それはこの宇宙世界でも、魔法と竜の世界でも同じなのだろうか。
 フィンは身を委ねるように、暫しの間群青の世界に溶け込んでいた。

 レストランコーナーへ続く道をちらりと横目に、フィンは次なるフロアに進む。
 『スシ』が気にならないでもないが、実は先日UDCアースのザギンで頂いてきたばかりだ。えんがわにアジにふわふわ玉子、至福のときを思い出しつつ……はっと我に返ると、我慢我慢と自分に言い聞かせるようこほんと咳払いをする。
「こちらの水槽にはどんな生き物がいらっしゃるんでしょう……か……??」
 視界に飛び込んできたのは大蛇のしっぽだ。その太さはなんと、ヒトの胴ほどもある。深海や宇宙の何処かになら、こんな巨大なウミヘビが居てもおかしくはない……自分くらいのヒトなら丸呑みにされてしまうのではと鼓動を高ぶらせながら、長いウロコの肌を辿った先にはヒトの上半身がついていた。
「あらまっ!?」
 思わず頬に手を当て裏返った声を上げる。巨大なウミヘビの正体は、簡素なボンベを背負って水中カメラを構えたキマイラの御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)だった。
 菘は水槽の外に居るフィンに気がつくと、ニヒヒと笑みを浮かべて手を振ってから親指を立てる。配信されたら『いいね』よろしく頼むぞ! 的なアレのようだ。

 こちらは菘視点でお送りする水槽内の様子。
「スペースシップワールドの生き物はどれも個性的で面白いのう!」
 二対の翼と角を持ち、水中カメラを構えながらも魚達にぶつからないよう、蛇の尾を生かしてスイスイと自在に水の中を泳ぐ彼女に対して魚達も近しい感想を抱いているかもしれない。
 群れが虹のようにグラデーションを描くカラフルな小魚達を動画に収めようと近づいたが、その圧に押されたのか、わーっと散り散りになってしまった。
「はっはっは、蛇神の威光に恐れをなしたか! ……生で丸呑みだとか、狩猟はできんのだがな」
 こう見えて生粋のキマイラっ子だ。まぁ中々良い画は撮れたと、次はいよいよお目当ての巨大海獣達の元へと向かう。

 菘のレンズが捉えたのはスペースクジラの一種、大きさなどはザトウクジラに近いが、背びれと尾びれがベールのように薄く美しく広がっている。そこからは微量の超能力エネルギーが放出されており、推進力の補助に使っているのではとされている。
 性格も穏やかで、菘は親子連れのスペースクジラの傍に並んでゆったりと泳ぐことができた。親子が会話しているのか、はたまた客人の菘に話しかけようとしているのか、時折くぅくぅと水中に響く鳴き声が心地よい。
「お、あれは……ウミヘビだな! スペースウミヘビ!」
 菘にとっては近縁種(?)となるのだろうか。このスペースウミヘビは菘ほどでなくともそれなりに大型で、鮮やかな銀色と青緑色のストライプ。尾の先がフランベルジュの刃先のように平たく波打っているが、アンテナ兼異性へのアピールポイントのようなもので危険性はないらしい。その形状が気に入って菘は念入りにカメラを回す。ついでに自撮りモードにしてのツーショットもバッチリだ。
「見た目は正統派ではないが、宇宙にはこのような濃いナイスガイがいるのだな!」
 菘のグイグイくるアピールに、スペースウミヘビもたじたじである。

 菘のそんな様子を水槽の外から撮った動画も、かなりの再生数が見込めるのではなかろうか。
 そんなことを考えているフィンの長い耳がぴくりと、船内に流れるアナウンスをキャッチした。気づけば現地まであとわずかのようだ。
「とと、いけない、到着する前にお土産確保しておかなくちゃっ!」
 お土産は何が良いだろう、宇宙由来生物の面白かわいいグッズか、それとも美味しい珍味を買って仲間たちにお裾分けしようか。
 魚たちに見守られながらぴこぴこと蜜柑色が弾む。楽しい思い出を持ち帰る想像に、売店を目指す足取りも自然軽やかだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮舟・航
【星鯨】の皆さんと

スマホのカメラを起動させつつ、宇宙の水族館を歩きます
見たことのないかたちの生き物だ
やっぱり環境って大きく作用するんでしょうね

目についた種は、すかさずスマホのカメラに収め
良い資料になりそう
ああ、僕は絵を描くのが好きで。そのためです
魚研究も悪くないですけどね

本物の星鯨が?…でも、確かに
こんな世界だったら、いてもおかしくないですよね

あ、確かにあのクラゲすごく大きいですね
エチゼンクラゲより大きそうだなあ……
光を反射してるんでしょうね。星空みたいで、きれいだ
僕は、あの長くて優雅なやつがいいな、リュウグウノツカイみたいで

宇宙鰯トルネード?
なんだかすごくかっこいいですね、是非みてみましょう


杠葉・はつね
【星鯨】のみんなとお出かけ

パンフレットをぎゅ、と握り水族館の中に
わぁ、すごく綺麗だわ。お魚がこういう風に飾られているのって不思議だわ
みんな好きなお魚はバラバラなのね。わたしはマンタが好きかしら
宇宙のお舟みたいでどこにでもいけそうなの

星の鯨、御伽噺だけれど、こんなに素敵なところなのだものいるかもしれないわよ?
探しにいく賢太郎のあとを追いかけながら

宇宙鰯トルネード!ふふ、きっとすごいのでしょうね
わたしも見たいわぜひ、いきましょう?
ぱたぱたと見入ってしまいそうなものばかりだけれど
みんなといるのだから、離れてしまわないようにしたいわね
でも、どれも夢中になってしまいそうだわ


オブシダン・ソード
【星鯨】
図書館の皆と
水族館を堪能するよ
ケビが行方不明になりそうだから肩に乗せていこう。どっち行きたい?
はいはい、お任せください館長殿
水槽の背景が宇宙空間になってるとこもあるね
これが本当の宇宙遊泳…

なるほど、星の鯨。やっぱり大きいのかな。普通の鯨でも十分大きい気はするんだけど

僕はあのばかでかくてゆらゆらしてるクラゲみたいなやつが気に入ったよ
ところどころ宝石みたいにキラキラしててとても良い
あとああやって力抜いて浮かんでいたい…
皆はどうかな?

なるほど和風な名前だしかっこいいねじんべー。あの帯みたいなやつも雲か霞みたいで素敵だね…身体長いなぁ

宇宙鰯とるねーど…言葉の力が強すぎる。是非みたいね


セツナ・クラルス
【星鯨】の皆と共に魚たちに会いに来たよ
この後に戦闘が控えてるのは把握しているが
折角の機会だし、堪能しておきたいね
私は小魚たちが群れを成して泳いでいるところを見てみたいな
…ほう、トルネードというのか、興味深いね
ふふ、時間が許す限り気になるものは全て見てしまおうか

我関せずといった風情でふよふよ漂うクラゲに癒され、
悠然と泳ぐ鯨に目を奪われる

珍しいものを見つけるとつい足を止めかけるも、
はぐれないよう着いて行くよ
さすがにこの歳で迷子は恥ずかしいからね

じんべえというのは中々に渋い名前だが
やはりスマートな魚なのだろうか
…!?
想定以上の大きさに足が止まる
凄い、凄いぞジンベイさん…!
…あっ、待ってくれたまえ…!


雅楽代・真珠
【星鯨】の皆と
人形の如月に抱えられて水族館を見て回るよ
宙を游ぐと捕らえられてしまうかもしれないしね

珍しい魚がいるね
あれ、魚なのかな
航、何の資料にするの?
魚研究家だったりするの?
そう、絵描きなの
すまほを覗き込んで成程と頷くよ

本物の星鯨ってどういうの?
大きすぎて居ないかもしれないけれど、見つけたら教えてね
僕はじんべーって言う鮫が好き
館内案内のぱんふれっとを如月の腕の中でペラペラ
あ、宇宙鰯とるねーどって言うの見たい
そうだね、沢山見て回ろう
他にはね…とオブシダンに近寄って
ケビにぱんふれっとを開いて見せよう

書物の海に浮かぶ僕らも
今日は水族に囲まれ水の中
書物よりも鮮烈で楽しいひと時を過ごそう


狼谷・賢太郎
【星鯨】のみんなと
魚図鑑を片手に、色んな水槽を忙しなく見て回る
目標は全制覇!
なあなあ、早く行こーぜ!
水族館なんて来るの初めてだし、目一杯楽しまねーと!

クラゲもいいけどオレはあのホホジロザメってのが好きだなー
ちょっとこえーけど、なんかかっけーし!
後このシャチって魚?もいるかなー
後で探しに行ってみよっと

写真かー
あ、オレでっけー水槽の前でみんな揃って記念撮影とかしてみてーな!
いい思い出になりそーだし!

いわしとるねーど?
魚がぐるぐる回ってんのかな
なんか目回りそーだけど……

星の鯨の話には目を輝かせて、図鑑で調べながら飛びつくぜ
この本には載ってなかったけど、そんな鯨もいんのか!?
オレ、ちょっと探してくる!


ケビ・ピオシュ
【星鯨】
普段は図書館に集う者達と今日は水族館へ

ありがとう
流石うちの備品は気遣いが違うね
ソード殿の肩へ腰掛け

やはりキマイラフューチャーの図鑑には乗っていない水族達も沢山いるものだね
この水槽の魚達にならば、一口で食べられてしまいそうだ

あれは鉱石だろうか
クリスタニアンのようなものかな

本当に、星のようだ

ここならば、本当の星の鯨だって見る事が出来るかも知れないよ

私も本当に見た事は無いのさ
ただのお伽噺かもしれない
けれど、星程大きいと言う話だよ
ああ、ああ、見つけたらね

狼谷殿、走って転ばないように気をつけておくれ


ふむ、宇宙鰯のトルネード…
興味深い響きだ

他には何か乗っているかい?
実物を見るのも良いものだね



「館長殿が行方不明になっては事だからね」
「ありがとう、流石うちの備品は気遣いが違うね」
 オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)がしゃがみ込んで促せば、うむ、と顔に表示されたカイゼル髭をちょいちょいと撫でつけながら、ケビ・ピオシュ(テレビウムのUDCメカニック・f00041)はその黒フードを目深に被った青年の肩にちょこんと座る。
 その傍らには、執事然とした人形の「如月」に自らを抱えさせている雅楽代・真珠(水中花・f12752)の姿がある。彼のびいどろの煌めきをもつ尾鰭で宙を蹴り游ぐこともできようが、スペースシップワールドの水族館といえど人魚族の居る水槽はなさそうだ。研究対象として捕まってしまっては困る、とは彼の言。
「人魚さんは居なさそうだけど……たくさん水槽があるのね。どこから見て回ろうかしら?」
 ぎゅっと大事そうに握りしめていたためか、少しくしゃっとなっているパンフレットを杠葉・はつね(晨光の祈り・f04009)が広げて眺める。
「勿論、端から端まで全部! なあなあ、早く行こーぜ!」
 分厚い魚図鑑を抱えて、今にも走り出したそうにうずうずしているのは狼谷・賢太郎(イマチュアエレメントマスター・f09066)だ。
「水族館なんて来るの初めてだし、目一杯楽しまねーと!」
「ああ、折角の機会だし、堪能しておきたいね」
 目を輝かせる賢太郎に微笑ましげに、落ち着いた様子でセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)が答える。
 浮舟・航(未だ神域に至らず・f04260)はスマホのカメラの調整を終えると、試運転がてらと、そんな彼らへ向けてパシャリとシャッターを切った。
「ふむ、では銀河水槽なるフロアから、順繰りに巡っていくとしよう。あちらだ、行こうかソード殿」
「はいはい、お任せください館長殿」
 個性豊かなこの一行は『星くじら図書館』に集う愛書家達の集いである。普段は書物に囲まれ文字の海に溺れているような彼らだが、今日は深い水の世界と水族に囲まれたひとときを過ごすようだ。

 まず一行が踏み入れたフロアの水槽は、船の外壁面にも透明な素材が使われているため、水槽越しに外の宇宙空間が見えるようになっていた。鮮やかな青い宇宙の中に星々と魚たちが一緒に浮かぶという、奇妙で幻想的な世界が彼らを出迎える。
「わぁ、すごく綺麗だわ。お魚がこういう風に飾られているのって不思議だわ」
「成る程、これが本当の宇宙遊泳……」
 はつねが金色の瞳をきらりと輝かせて大きな水槽を見上げ、オブシダンがふっと口角を上げる。 
 水槽内には宇宙世界由来だろうか、珍しい姿の魚たちも見える。背びれと尾びれがベールのように薄く美しいスペースクジラ、鉱石のウロコを纏うクリスタル・フィッシュ達、体の半分が目玉なのではと思われるほど、異様に巨大な一つ目玉を持つカメラアイ・フィッシュなど。
「あれ、魚なのかな……」
 真珠が訝しげに水槽を眺める横で、航は奇妙な生き物たちを、良い資料になりそうだ、と目につくごとにすかさずカメラに収めていく。
「見たことないかたちの生き物だ……やっぱり環境って大きく作用するんでしょうね」
「そんなに撮って何の資料にするの? 魚研究家だったりするの?」
「ああ、僕は絵を描くのが好きで。そのためです」
 既に沢山の写真が収められたカメラロールをくるくると捲る手元を覗き込んで、成る程と頷く真珠に、魚研究も良いですけどね、なんて航は返す。
「僕はあのばかでかくてゆらゆらしてるクラゲみたいなやつが気に入ったよ」
 オブシダンが示す先には、人間一人まるっと包み込めそうなくらいの巨大な傘を持つクリスタル・ジェリーの姿。螺鈿のようなつやつやのゼラチン質に、所々文字通りに宝石が散りばめられて、光を反射してキラキラと瞬いている。
「確かにあのクラゲすごく大きいですね。エチゼンクラゲより大きそうだなあ……」
「どこかの国の王様がかぶってる帽子みてーだ!」
「本当だ、価値の高そうな姿だけど当人は我関せずといった風なのが良いね」
「身体に鉱石を持つ者達はクリスタリアンのようなものかな」
 キマイラフューチャーの図鑑には載っていない水族達も沢山いるものだと、ケビは興味深げに髭を擦る。
「ああやって力抜いて浮かんでいたい……」
「……こんど水槽に浮かびに来る?」
 オブシダンがふと零した思いに真珠が尋ねる。黒曜石の彼も人間形態なら浮かぶことは……たぶんできるはず。
「クラゲもいいけど、オレはあのホホジロザメってのが好きだなー」
 賢太郎の一推しホホジロザメは、凶暴な生体とは裏腹に繊細で、飼育がとても難しいとされている。安定して観察ができるのはスペースシップワールドならではのことかもしれない。
「ちょっとこえーけど、なんかかっけーし!」
「あの大きな口を見てくれ、一口で食べられてしまいそうだ」
 ケビの言葉に本当だねぇと言いながら、オブシダンが身体を乗り出してホホジロザメの水槽に肩元の彼を近づけた。眼の前に迫ってくる凶悪な牙にわたわたするケビと、ケビが食べられてしまうわ……! とはつねが慌てる一幕があったりなどしつつ。
「僕は、あの長くて優雅なやつがいいな、リュウグウノツカイみたいで」
 航が見上げた先、立派なたてがみのような背びれと長い身体をゆらゆらさせて泳ぐそれは、よく見ると尾鰭の先がくるんと丸まっている。タツノオトシゴにも近い種なのかも知れない。
「うふふ、みんな好きなお魚はバラバラなのね。わたしはマンタが好きかしら。宇宙のお舟みたいでどこにでもいけそうなの」
「あのマンタも強そうでかっけーよな!」
 スペースマンタは身体がぷっくりと分厚く流線型、愛らしいフォルムながらも戦艦のように頑丈そうだ。大きな背に乗って、波を切ってどこまでも旅する想像に、はつねは心を躍らせる。

「……私は小魚たちが群れを成して泳いでいるところを見てみたいな」
 そんなセツナの呟きに、真珠が如月の腕の中から乗り出しパンフレットを広げて皆に見せる。
「あ、それってこの宇宙鰯とるねーどってののこと? 僕も見たい」
「……ほう、トルネードというのか」
「宇宙鰯トルネード!」
「宇宙鰯とるねーど……」
「いわしとるねーど?」
 口々に呪文のように唱えられる。何となく口に出して言いたくなるぱわーのあるワード、宇宙鰯トルネード。
「なんだかすごくかっこいいですね、是非みてみましょう」
 航の言葉に異を唱えるものは居なかった。パンフレットの案内に沿って目的の水槽前に着いてみると、どうやらそれはこの水族館の中でも名物イベントであるらしく、フロア内は期待にざわめいている。
 宇宙鰯は美しく透き通る青色と銀色のツートンカラーに、マイワシで言う所の「ななつぼし」に当たる体表のスポット模様部分が、彼らの場合はまさに星のようにキラキラと光を放っていた。ちなみに栄養価が高く美味らしい。
 およそ1万匹ほどが群れをなしているさまは既に圧巻だが、本番はここからだ。フロアスタッフがなにか合図を送ると、水槽の中に逆さにのぼる白い煙のようなものが落とされる。それは鰯達の好物のプランクトンなのだが――途端、一つの大きな塊に波紋が広がるように、宇宙鰯達が一斉に動き出したかと思うと、滝のように水槽の壁面を覆って流れ落ち、次に下から渦を巻いて、白い煙を飲み込み上昇していった。
 宇宙鰯達の「ななつぼし」が、動きに沿って流星群のように光の尾を引いている。フロア内にわぁっと歓声が上がった。
「すっげー! 魚がぐるぐる……目回りそー」
「素晴らしい迫力だ。やはりこうして間近で実物を見るのも良いものだね」
「すごかったですね……でも、群れの近くに居たマンボウが巻き込まれて迷惑そうな顔をしてました」
 航がスマホで撮影していた動画を皆に見せると愉快げな笑いが起こる。
 同じ水槽内には、宇宙鰯達と同じプランクトンを食べるジンベイザメなども一緒に暮らしている。
「あ、いた、じんべー」
 真珠が気づいて皆が注目する。20mはあるだろう巨大な平たい身体に、着物のような粋な柄を持つ姿は悠然と。コバンザメ達がぴたりくっついて泳いでいるさまは、棟梁とか大将とでも呼ぶべき風格だ。
「なるほど、あれがじんべーか。和風な名前に似合ってかっこいいねじんべー」
「……!?」
 渋い名前から、その姿はどんなものかと想像していたセツナが、実際の堂々たる姿に衝撃を受け足を止める。
 グループの中では賢太郎の次に若い年齢でありつつ、ここまでは保護者のような落ち着きのあるポジションでいたセツナだったがしかし。
「凄い、凄いぞジンベイさん……! ……あっ、待ってくれたまえ……!」
「……ん? ま、待つんだクラルス殿! はぐれてしまうよ……!」
 まさに心奪われたように、ジンベイザメを追っかけて人混みの中をふらふら歩いていってしまったセツナを、一行も慌てて追いかけるのだった。

「ここならば、本当の星のくじらだって見る事が出来るかも知れないよ」
 いくつもの水槽を皆で見て回ったのち、フロアの一角のソファスペースで休憩を取っているときのこと。そこでケビはふと語り出す。
「本物の星くじらが?」
「本物の星くじらってどういうの?」
「私も本当に見た事は無いのさ。ただのお伽噺かもしれないけれど」
 彼らの図書館に名付けられた『星くじら』。旧文明が遺していったその名前にまつわる逸話はあれど、実在した記録は残っていないようで。
「なるほど、星のくじら。やっぱり大きいのかな。普通の鯨でも十分大きい気はするんだけど」
「ジンベイさんよりも大きいだろうか」
「星程大きいと言う話だよ」
「この本には載ってなかったけど、そんなくじらもいんのか!?」
 ロマン求める少年達の目は輝きに満ちる。
「大きすぎて居ないかもしれないけれど、見つけたら教えてね」
「ああ、ああ、見つけたらね」
「うふふ、こんなに素敵なところなのだもの。いるかもしれないわよ?」
「……確かにこんな世界だったら、いてもおかしくないですよね」
「オレ、ちょっと探してくる! あとシャチっていうのも探してくる!」
 図鑑を捲っていた賢太郎が、辛抱堪らず駆け出した。わたしも探すわ! とその後をはつねが楽しげに追う。
「狼谷殿、走って転ばないように気をつけておくれ」
 元気な二人の背を見送りながら一同は顔を綻ばせ、さあ自分達も水と星の世界の旅を再開しようかと立ち上がる。知りたいという尽きない衝動のままに、時間の許す限り探求を続けよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■クロウ/f04599
アドリブ歓迎

わ!見てクロウ!
宇宙の水族館
透明な石の魚にあの大きいのは何だろう
好奇心に瞳を煌めかせ
尾鰭は嬉しげに揺れる

せっかくだ游いでみよう
僕は人魚だから游ぐのは得意
また水槽に入る事になるなんて
けどクロウと泳ぐんだからこれは楽しい水槽

万華鏡みたいな水晶の魚と戯れて
ほらみて!
大きい蟹
ピカピカ光るヒトデも綺麗
イルカもいるといいな
他にはどんな魚がいるだろう?
あんこう、えい!見に行こう!

やっぱり水の中は心地いい
鼻歌混じりにパシャリと泳ぐ

並んで泳げば笑顔が弾け
クロウは泳ぐのも上手いね
こうして君と泳ぎたかったん

尾鰭飾りに触れられれば笑顔を返す
キラキラしてて素敵だろ?
君がくれた僕の宝物さ


杜鬼・クロウ
リル◆f10762
アドリブ◎
スペースシップワールドは戦争以外で来た事が無く新鮮

船自体が水族館たァ驚きだぜ(目輝かせ
不思議な魚も沢山いるみたいだしよ
リルはそいつらと話せたり…は流石に難しいか
イイぜ
夏を先駆けしようや

嬉しげなリルの顔見てつられて微笑
見守りつつリルの後を追って水槽へ
悠々と綺麗なフォームで泳ぐ
水中で間近に魚眺める
水晶の魚は神器の鏡としては惹かれる

このヒトデ光るのか、綺麗だな
あっちにイルカやアンコウ、エイもいるぜ

リルの鼻歌に併せ色鮮やかな小魚達が踊ってる
まるで水中のオペレッタ
特等席で眺める

俺もちぃっとはしゃいじまってるのかもしれないなァ(揺れる尾鰭と尾鰭飾り見て軽く触れ
隣にお前がいるから



「船自体が水族館たァ驚きだぜ」
「わ! 見てクロウ!」
 宇宙に浮かぶ水族館船の広大さに、興味深く目を見張っている杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)の腕を、リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)がちょいちょいと引っ張って、ひとつ水槽を指し示す。
 そこには見たこともない造形の生き物たちがひしめいていて、半月闘魚由来のヴェールのようなリルの尾鰭が、水槽内の魚たちに同調するように楽しげにゆらゆらと揺れていた。
「透明な石の魚に、あの大きいのは何だろう」
「リルはそいつらと話せたり……は流石に難しいか」
 試してみようか、なんて言って笑いながら。二人は直接水槽へ潜り彼らと触れ合うことにしたようだ。サムライエンパイアではまだ初夏の頃。夏を先駆けするのも悪くないと。

 ざぶんと青の中に呑み込まれたリルは、懐かしい感覚とそれに付随して呼び起こされる記憶に、わずか目を細める。水没した都市の、豪奢な匣のなかで游ぎ歌い続けた記憶。
 ――また水槽に入る事になるなんて。
 だがそれもつかの間、後から飛び込んできた黒い影の、夕赤と青浅葱と目が合った。
「どうした?」
 尋ねる彼に、なんでもないと首を振る。クロウと一緒に泳ぐのだから、これは楽しい水槽。そう思えば彼の表情は綻んで、クロウもそれにつられて微笑んだ。
 まずは水槽の外にいたときから気になっていた、透明な石の魚達と共に泳いでみる。水晶のような材質でできているらしいその身体は、水の青と周囲の色を透過させ、また角度によってはきらりと跳ね返し、万華鏡のような複雑な模様を纏いながら揺蕩っている。美しくも強固なこの姿もやはり、自らの生命を外敵から守るためにたどり着いたものだろうか。
 群れの間をそっとくぐりぬける二人にも、水晶魚達が落とす光が色とりどりの木漏れ日のように降り注ぐ。特に神器の鏡のヤドリガミであるクロウは、中々面白い映し方をするじゃねえかと水晶越しに見える海の世界を楽しんだ。
 少し暗くなっている水底へ深く潜ってついと進めば、イルミネーションの飾りのようにその輪郭を光らせるヒトデ達に出会う。綺麗だなと眺めていると、長い足を持つ巨大な蟹が、ヒトデ達を踏まないように器用に歩き進んでいるのも見えた。
「他にはどんな魚がいるだろう?」
「あっちにイルカやアンコウ、エイもいるぜ」
「あんこう、えい! 見に行こう!」
 声を弾ませながら尾鰭でびゅんと水を蹴って進むリルに、置いてきぼりを喰らわないようにと、クロウも身体のしなやかなバネを使ってそれを追う。
「クロウは泳ぐのも上手いね」
 追いついてきて隣に並んだ彼に、リルは驚き嬉しそうな笑顔を咲かせた。こうして君と泳ぎたかったと泡に浮かべれば、クロウも得意げなような、はにかんだような笑みを見せた。

 上機嫌で鼻歌を泳ぎ進むリルの周りには、いつの間にか鮮やかな色の小魚たちが小さな群れをつくって囲んでいた。揺れる珊瑚の角を追いかけて、彼の歌にあわせて舞うように泳いでいる。
 やっぱり話せてるのかもな、等と思いながらクロウはそのステージを一番近くの特等席で眺める。ふいに眼の前を月光のヴェールがふわりと覆って、儚げなそれにそっと手を伸ばした。視界のピントが合って、触れた指の先にしゃらりと、銀と翅桜が夕陽の雫で絆された尾鰭飾りが光る。
「キラキラしてて素敵だろ? 君がくれた僕の宝物さ」
 自慢気な、悪戯っぽい笑顔をふふっと向けられれば、柄にもなくはしゃいじまってるのかもしれないなァ、とクロウは独り言つ。水の世界すべてを魅了してしまいそうな、彼が隣に居るのではそれも仕方のないことだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

絢辻・幽子
【空】で

巨大水槽に心をときめかせたら
ゆっくりスシタイム。お寿司とはまた違うのかしら

あらあら、まあまあ
ウォーマシンの大将はじめてみたわぁ……!
ふふ。白い帽子がチャーミングねぇ

コノちゃんと、常盤さんは何食べます?
……サメとか食べられるんですかね
あ、私、大きなお魚のスシが食べたいわぁ
自分より大きな生き物を食べるって浪漫……
フカヒレの言葉にはきっと期待が止まらないでしょうね
大将頑張って。

こう、水槽観てるとこの子食べられる?
とか……思っちゃうのよね
エイとかフグとかふよふよぷくぷくして可愛かったですし
あのキラキラした子も食べられるのかしら……
なぁんて。

……あ、カニのお味噌汁飲みたい。


神埜・常盤
【空】

水族館でスシを味わえるとは
ーー実を言うと水槽を眺めているうちに
どうも腹が減って来たので助かったよ

僕もウォーマシンの板前は初めて見たなァ
器用に握れるものだねェ、感心だ
僕は取り敢えずマグロ、後は大将にお任せで
あァ、強そうな肴って浪漫が有るよねェ
何だかさっき見たサメを食べたくなって来た
ねェ大将、フカヒレのスシとか有るかね?

フグ可愛かったよねェ、想像以上にふくふくしていた
僕はクマノミに夢中になって仕舞ったよ、隠れん坊しているみたいで面白くて……
あァ、クリスタルな魚も綺麗だった
ふふ、一緒の水槽で飼うとキラキラふわふわで和みそうだ
でも彼等は硬さ的に甲殻類の味がしそうだなァ
あ、蟹の味噌汁僕も飲みたい


コノハ・ライゼ
【空】で

巨大水槽をぐるっと見て回って、いろんなお魚を目で楽しんで
その後は口と胃袋で楽しむスシタイム!

ホント繊細に握るモンだねぇ、と珍しさも手伝って興味津々
あ、大きくて強そうな魚!イイねぇ、オレも食べたい
後はやっぱココでしか味わえない変わり種とか
定番っぽいマグロもイイしフカヒレ……と気が付けば当然のように全制覇の勢い
ケドよく見りゃこの面子、食いしん坊ばっかじゃナイ

ふふ、水槽見てオイシソウ~ってのはあるあるだよねぇ
どう調理したら美味しいかまで考えちゃう
ああ、でもアレは不思議でキレイだったなぁ、クリスタルフィッシュってヤツ
クマノミと泳がせたら賑やかで可愛いと思わない?
あ、蟹?蟹行くならオレも!



 水槽のあるフロアから外れてこちらはレストランコーナー。『スシ』なる料理が振る舞われているその一角は木を模した壁紙や、ホログラムの観葉植物が設置され、落ち着いた雰囲気を醸し出している。
 壁の一面は大きな水槽になっていて、食事をしながら生き物たちの様子を眺めることもできる。ちなみに回っていない方のスシだ。
『三名サマご案内でーす』
『ラッシャイラッシャイ!』
 一通り水槽を見終えて、腹ごしらえに訪れた三名を陽気なクリスタリアンの店員が出迎えると、続いてぐるり囲まれたカウンターの中央に立つ異様な存在感を放つスシ職人のウォーマシンが、やたら威勢のよい掛け声で歓迎してくれる。寸胴タイプの重量級ボディに、細い腕と五本指のアームが一見コミカルだが、手元の動きはネタの鮮度を落とさないよう素早くも緻密である。
 絢辻・幽子(幽々・f04449)はその様子に、あらあらまあまあ、と目を細めて灰色の尻尾を揺らす。
「ウォーマシンの大将はじめてみたわぁ……! ふふ。白い帽子がチャーミングねぇ」
「器用に握れるものだねェ、感心だ」
『コリャードウモ、沢山食べてってクダサイネェ!』
 神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)も感嘆し、コノハ・ライゼ(空々・f03130)もうんうんと同意しながら目を輝かせてその手付きに見惚れていると、かのウォーマシンも愛想のよい声色で答えてまた場を沸かせてくれた。

「まさか、水族館でスシを味わえるとは」
 カウンター席に着くと、常盤が『おしながき』のホロパネルを起動させて早速ネタを吟味する。
「『スシ』はお寿司とはまた違うのかしら」
 幽子もパネルを覗き込むが、マグロ、イカ、サーモン……などと現地語で並ぶ名前と、目の前のウォーマシンが忙しなく握っているものはどう見ても、UDCアース等で見かける寿司そのもののように見える。強いて言えば、ネタの中には宇宙世界由来の未知の生き物たちが混じっているというのが異なる点だろうか。
「コノちゃんと、常盤さんは何食べます?」
「僕は取り敢えずマグロ、後は大将にお任せで」
「マグロは定番だよね、オレもそれとー……」
『今が旬の宇宙鰯と、スペースレッドアーチン(※雲丹の一種のようだ)がオイシイデスヨ』
 職人ウォーマシンが早速マグロを握り始めながらオススメを教えてくれる。宇宙船の上でも旬とかあるのかしらと、大将の冗談なのかよくわからないそれに三人は顔を見合わせつつも乗っかってみることにした。
「折角だから、ココでしか味わえない変わり種は試しときたいよねぇ。宇宙鰯って、さっき見たヤツだよね、ブワーって泳いでた」
「ああ、光っていて綺麗だったね。……実を言うとあの辺りの水槽を眺めているうちに、どうも腹が減って仕方がなかった」
「ふふ、水槽見てオイシソウ~ってのはあるあるだよねぇ」
 無国籍バルを営むコノハには特に、魚介達が食材の見本市のように見えていたようだ。一癖も二癖もありそうな素材達をどう活かすか、調理のし甲斐がありそうだとわくわくしてしまう。
「……サメとか食べられるんですかね?」
 二人の会話に、ふと先程見た水槽を思い出して幽子がぽつりと尋ねる。
「私、大きなお魚のスシが食べたいわぁ。自分より大きな生き物を食べるって浪漫……」
「あァ、強そうな肴って浪漫が有るよねェ」
「大きくて強そうな魚! イイねぇ、オレも食べたい」
 うっとりと語る幽子に二人も同調する。それははたして弱肉強食のヒエラルキーへの挑戦心か、あるいは純粋な好奇心と食欲によるものか。
「大将、フカヒレのスシとか有るかね?」
『フカヒレのスシィ~!? オキャクサン達、通ですネエ~』
 オーバーリアクションで返してくれたが、此処では意外とリーズナブルな価格帯で提供しているらしい。彼らの望み通り、水槽でも見かけた大きなスペース・メジロザメのヒレをスシにしてくれるようだ。

 注文の品が続々と、三人の目の前に並んでいく。つやつやと新鮮なマグロときらきら輝く宇宙鰯の握り、赤みの濃い雲丹の軍艦に、魚醤ベースで煮付けたフカヒレの握りはしゃきっとした歯ごたえが楽しい。計算尽くされた力加減で握られたシャリも、口の中に入れるとほろりとほどけてしまう。
「これは中々、少し変わった癖もあるが美味しいねェ」
「ええ、とっても良いお味。他のネタにも期待しちゃいますねぇ」
 宇宙のスシは、バルに通う食通達をも唸らせる味だったようだ。お酒も欲しくなるわネェ、なんて零しつつ、コノハは再びおしながきを開く。
 そうしてお腹が満たされていけば会話も自然弾むもので、再び見てきた魚達の話で盛り上がる。
「エイとかフグとか、ふよふよぷくぷくして可愛かったですし」
「フグ可愛かったよねェ、想像以上にふくふくしていた。僕はクマノミに夢中になって仕舞ったよ、隠れん坊しているみたいで面白くて……」
 ふふ、と愛らしい魚たちの姿を思い出して笑いをこぼす三人。
「ああ、でもアレは不思議でキレイだったなぁ、クリスタルフィッシュってヤツ」
 クマノミと一緒に飼ったらきっと綺麗で賑やかで、部屋を楽しくしてくれそうだと想像をふくらませる。
「あのキラキラした子も食べられるのかしら……」
「硬さ的に甲殻類の味がしそうだなァ……」
『アレはオキャクサン達のようなヒューマノイドの方々だと、消化が難しいかもシレマセンネェ』
 大将の言葉にそっかぁと残念がる三人だったが、そこはただでは起きない。甲殻類という単語に連想されて、壁のホログラムに表示されたメニューに見つけた文字があった。
「……あ、カニのお味噌汁飲みたい」
「あ、蟹の味噌汁僕も飲みたい」
「あ、蟹? 蟹行くならオレも!」
 最終的にはやはり食。それぞれに気ままに泳ぐ魚達のごとくふんわりマイペースな三人だが、ひとたび食のことになれば息もピッタリ、揺るぎない食いしん坊達であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
【天窓事務所】(アドリブ絡み歓迎)
呼び方:名前前半+さま

事務所の皆さまとスシを食べに!

宇宙船が水族館だなんて吃驚。だけど今日はスシを補給しに
テーブル席が良いでしょうか?お願いします。水槽が隣接しているのですね


スシは初めて食べるのでとても楽しみ。このエンガワというのは?日本家屋のあの縁側?え、違う?
では、エンガワと、玉子、矢張りトロ・スシは食べて見なければ。あとはよく解らないのでお任せで

おおお、スゴイ速さと正確な動きでスシが次々と!流石のスシ・ショクニンですね(キラキラとした眼差し)

矢張り誰かと摂る食事は良いですね
ウィルマさま、ウィルマさま。この宇宙みたいな色のもお土産に握って貰いましょう!


穂結・神楽耶
【天窓事務所】
呼び方:苗字+様

気分としては慰安旅行でございますね。
問題がありそうなら研修旅行と題しておきましょう。
何はともあれおスシ食べ放題です! …え、違う?
お財布に余裕があるので実質そうですから。

確かに、SSWでおスシというのも珍しいですね。
けれどこれは文句なく美味しいです!
良いのは素材でしょうか。はたまたウォーマシン様の腕でしょうか…
…ん?
スシを握るロボットって「ウォーマシン」でいいんですかね? スシマシン?

お土産、そういえば何人分必要でしたっけ。
愉快系はそちらにおまかせしてわたくしはまっとうにおスシの詰め合わせ頼んでおきますので。
ええと。涙巻きというのを入れて頂いても?
ふふ、冗談です。


ウィルマ・シャーオゥ
【天窓事務所】で待ち合わせ。おスシたべるよ!

他の世界だと別にめずらしいものでもないんだけど、スペースシップワールドでお寿司って組み合わせがなんかこう、不思議な感じしちゃうよネ。トロもいいけど吾輩エビがたべたいかなー。あとイクラでしょ、赤身にハマチでしょ。お茶もいい味。うん、おいしいネ!

そういやお土産も頼まれてたっけ? 吾輩シメサバしか覚えてないんだけど他はなにがいいって言ってたっけ。せっかくのスペース・スシだしなんか面白いネタの握りとかないかな!
ほら、お土産物はその土地特有のものが喜ばれるってよく言うしさ。UDCアースじゃお目にかかれないようなものも包んでもらったらきっと楽しいと思うなー吾輩!


カイム・クローバー
【天窓事務所】で行動
スシを食べに来た。これに尽きる。新鮮な魚を米の上に乗っけて食う料理だよな?おっと、食う前に携帯で写メ取るぜ。いざ、実・食!!
………っ…(ワサビに悶える)……ああ、でも、旨い(涙目)
旨かったので調子に乗ってドンドン行こう。鯛、トロ、エビ、イクラ、ウニ、ホタテ…腹に入るだけ入れて、最後は茶を飲むんだったな。
ああ、それと、シメサバのお土産には一個だけ、ワサビ、大量にいれといてくれ。分からないように頼むぜ?(ボソッ)
さて、会計を……(財布の中身がかなり足りない)
…………ツケとか。え?ダメ?でも中身が無くて…いや、予想より高くて油断したっつーか…誰かヘールプっ!!


清川・シャル
【天窓事務所】
お寿司…サムエン出身なので多少は嗜んで……
食べます!美味しそう!
えとね、えんがわ…ひらめ…はまち…たい……甘エビ…
わさび抜きで。(真顔で
白身が好きなんです。
よければお魚の捌き方とか見れるでしょうか…?もうちょっとお勉強したいなぁって。
みなさん、わさび平気?
万が一わさびで死にそうな人が居たら大変ですし、緩和出来るお寿司屋さんのお茶、お配りしますね。
美味しいから普通に配りますけど。
お茶美味しいよね。
あまり量は食べられないので、ゆっくり味わいますね。
お土産は計画的に…纏めて事務所に持って帰りましょうね。
私もおうちに持って帰りたいな!


壱季・深青
【天窓事務所】の皆と
呼び方:ファーストネーム呼捨て

スシ…子供のころは…もどきなら食べたことある
でも…安い物しか食べられなかった
だから今日は…思いっきり食べたい…高級なネタを

ウニ…イクラ…中トロ…大トロ…カニ
マグロは文句なく…美味しい(無表情でもぐもぐ)
ワサビも…全く平気…うん、うまうま
この魚たち…水族館の現地調達じゃ…ないよね?

こうして皆で食べると…もっとおいしく感じる
次は…16人で来たいね

ウォーマシン…機械が作るの?
神楽耶先輩…物知り…俺、初めて聞いた
お土産は…10人分?
多いね…俺も、手伝うよ

あ、カイムが何か…よからぬことをしている気が
それ、自分への…フラグ?(でも期待)

(「…」は適当で可)



 ジ・アクアリウム名物の『スシ』をお目当てに、UDCアースのとある「事務所」に集う面々も店に訪れていた。
 こちらはテーブル席、壁が一面水槽になっているすぐ横で、のんびりと泳ぐ魚達を眺めながらスシをいただくことができる。ヨシュカ・グナイゼナウ(渡鳥・f10678)が案内してくれたスタッフに丁寧に会釈をして礼を告げると、その一面の水槽を見渡しながら。
「水槽が隣接しているのですね。素敵な眺めです……では、水槽側に座りたい方!」
「「はーい!」」
「ふふ、これはジャンケン勝負でございますね」
 そんなやり取りをしつつ席につくと、それぞれホロパネルの「おしながき」を開いていく。ウォーマシンのスシ職人はカウンターの中央でひたすらスシを握っているが、テーブル席へは陽気なクリスタリアン女性のスタッフが注文を取りに来てくれるようだ。
「気分としては慰安旅行でございますね」
 穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)がおっとりと、卓の面々を見回して言う。普段は共に街の厄を祓うため尽くしている仕事仲間達と、こうして異邦の地で食事の席を囲むのは新鮮で楽しいものだ。……問題がありそうなら研修旅行と題しておきましょう、と小声で付け足しつつ。
「何はともあれおスシ食べ放題です!」
「『え!?』」
 卓の面々は目を輝かせて、スタッフとウォーマシンの大将はだいぶ驚いた感じで彼女に視線を集める。
「……え、違う?」
「それはつまり事務所の経費で落ちるってことか!?」
「多分落ちないと思いますよ?」
 カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)ががたっと身を乗り出すのを、隣に座る清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)が冷静に宥めた。耳をちょっとしゅんと伏せておとなしく座るカイム。
『伝説の解放軍の皆サマにはお支払いを気にせずに……と言いたい所なのですけども!』
 スタッフが口惜しげに言いつつ、サービスでデザートをお一人一品ずつお付けしますよ、とウィンクしたのでわっと卓が湧く。
「大丈夫ですよ。お財布に余裕があるので、実質食べ放題ですから!」
 神楽耶が力強く言って、いざスシ・パーティー開戦である。

「他の世界だと別にめずらしいものでもないんだけど、スペースシップワールドでお寿司って組み合わせがなんかこう、不思議な感じしちゃうよネ」
 地球文明のジャパンに近しい文化が、この世界でも惑星時代に生まれていたということかな? と、ウィルマ・シャーオゥ(古書のヤドリガミ・f00154)が興味深げにおしながきを捲る。
「確かに、スペースシップワールドでおスシというのも珍しいですね」
「新鮮な魚を米の上に乗っけて食う料理だよな?」
 カイムの言う通り、UDCアースの寿司もここのスシも料理法としては全く同じものだと言える。ただしネタの品揃えは、所々宇宙世界ならではの未知の珍味が混ざっているようだ。
「スシは初めてです。色々なネタがあるのですね。……このエンガワというのは? 日本家屋のあの縁側?」
「そのものではないですけれど」
 ヨシュカの問いに、神楽耶とシャルがふふっと笑いを零す。事実日本家屋のあの縁側に見た目が似ていることに因んでつけられた名前だと言う。ちなみに宇宙世界の言語では、宇宙船の部品に因んでスポイラー・スシと呼ばれているとか、いないとか。
「スシ……子供のころは……もどきなら食べたことある」
 静かにおしながきを眺めていた壱季・深青(無気力な道化モノ・f01300)がぽつりぽつりと、昔を思い出すようにしながら呟く。
「でも……安い物しか食べられなかった……だから今日は……思いっきり食べたい……高級なネタを」
「壱季様……! ええ、是非食べましょう! 存分に!!」
 神楽耶が感極まって深青の肩を掴みぐわんぐわん揺らす。変わらない眠たげな表情のまま揺らされつつ深青はこくりと頷いた。
 そうしていよいよテーブルに、スシの第一弾が運ばれてくる。名物トロ・スシをはじめ、赤身にエンガワ、イクラにウニにひらめにはまち、定番のネタの数々が並ぶ。
「美味しそう……!」
 サムライエンパイア出身のシャルは多少なり、本場の寿司を嗜んでいるのでそうがっつく程のことは……という面持ちでいたが、いざ目の前につやつやと輝くスシ達が出されれば蒼い目を見開き年相応に輝かせた。白身が食べたい。だがわさびは抜きで。そこは譲れない。
「いざ、実・食!!」
 カイムは携帯で豪華な卓上をしっかりと写真に収めてから、まずは赤身から、ぱくりと勢いよく口に放り込んだ。
「…………!? ……っ……!!」
 どうやら初ワサビが効いたらしい。声にならない声を上げて悶える横から、シャルが甲斐甲斐しく温かいお茶を差し出した。
「カイム、ほらお茶どうぞ。みなさんも、わさび平気?」
「マグロは文句なく……美味しい。ワサビも……全く平気……」
「うん、おいしいネ! トロもいいけど、吾輩エビがたべたいかなー」
 深青が無表情でトロにウニやイクラにと、もくもくと高級なネタ達を食べ進める横で、ウィルマが早速追加の注文を入れていく。ワサビから復活したカイムも、涙目になりつつも旨い旨いと次のネタに手を伸ばす。
「この魚達……水族館の現地調達じゃ……ないよね?」
 ふと深青が零した疑問に、オーダーを取りに来たスタッフが朗らかに答える。
『ハイ、モチロン本船の水槽で悠々と育った魚介達を捌いております! つい先程まで水槽で泳いでいた、鮮度抜群なものばかりです♪』
「そ……そうなんだ……」
 食用魚介の研究も、ジ・アクアリウムの立派な役目の一つとなっている。此処に来るまでに見てきた水槽群は、巨大な「生け簀」だったと言っても過言ではないかもしれない。
「どれも美味しいですね! 良いのは素材でしょうか。はたまたウォーマシン様の腕でしょうか……」
 そこまで言って、ん? と首をかしげる神楽耶。
「スシを握るロボットって『ウォーマシン』でいいんですかね? スシマシン?」
『ハハハ! イイネーミングですねスシマシン! ワタシは食の追求という戦いに身を投じるウォーマシンにして、スシマシンです!』
 カウンターの方から急に威勢のよい声が降り掛かってきて、ぎょっとする卓の一同。サービス精神旺盛なウォーマシンの大将は、アームをしゅぴぴんと素早く動かして、精密にプログラムされた目にも留まらぬ速さで一貫を握りあげると、なんかやたら高いところから岩塩を振りまいた。
「おおお、スゴイ速さと正確な動きでスシが次々と! 流石のスシ・ショクニン……いえ、スシ・マシンですね!」
「お魚の捌き方とか見れるでしょうか……? もうちょっとお勉強したいなぁって」
 ヨシュカがその手捌きに金色の目を輝かせて、ぱちぱちと拍手を送る。シャルも身を乗り出して、大将のパフォーマンスに釘付けになっていた。

「こうして皆で食べると……もっとおいしく感じる」
「ええ、矢張り誰かと摂る食事は良いですね」
 賑やかな食事の卓はいつしか空の皿が増えて、サービスのプリンが配られている。シャルが入れてくれたお茶も美味しいねと、まったりとした空気が流れていた。
「次は……事務所の全員で来たいね」
「あ、そういやお土産も頼まれてたっけ? 吾輩シメサバしか覚えてないんだけど」
 折角のスペース・スシだ。お土産にできそうな面白いスシネタはないかとウィルマがスタッフに尋ねれば、スシ・オリですね! とノリよく専用メニューを見せてくれた。
「ウィルマさま、ウィルマさま。この宇宙みたいな色のもお土産に握って貰いましょう!」
 ヨシュカが指したのは、一面濃い群青色に天の川のような光のラインが走っているスペース・コハダの握り。こんなネタが有ったのか、自分達が食べる分も握って貰おうかなんて画策する。
『お土産には、見た目が楽しいコチラが人気ですヨ』
 と言ってスタッフに勧められたのは、やたらとケミカルでサイケデリックな緑色の体表をしたタコの握りだった。
「こ、これは、毒とかはないんでしょうか……?」
『モチロン、ヒューマノイドの皆様にも安心してお召し上がりイタダケマス!』
 ウォーマシンの大将がにこやかに……かはよくわからないが、力強く答えた。
「確かにUDCアースじゃお目にかかれない代物に違いないけど……どちらかと言うとUDC寄りというか」
「怪異っぽさありますね……まあでも、折角ですから……」
 神妙な顔で汗をかいている二人を横目に、神楽耶はオーソドックスな詰め合わせを注文している。
「ええと。涙巻きというのを入れて頂いても?」
 と思いきや、のほほんとすごい爆弾を仕込もうとしていた。悪戯っぽくふふっと笑って冗談です、と告げればスタッフ達も和やかに笑う。
 だが次にスタッフに声をかけたのはカイム。
「シメサバのお土産には一個だけ、ワサビ、大量にいれといてくれ。……分からないように頼むぜ?」
 小声で話すこちらは本気の悪い顔をしていた。スタッフは……真剣な顔でゆっくりと頷いた。ノリが良かった。
「何か……よからぬことをしている気が」
 不穏な気配を感じ取りつつも、彼自身へのフラグを期待してそっと黙っている深青であった。
「私もお土産、おうちに持って帰りたいな!」
「おう、そうだな、家で食う分の二箱を追加で会計を……」
 しゃりーんとレジのディスプレイにはじき出された金額に、言葉をなくすカイム。そんなに手持ちがない。
「もう、どうして計画的にお財布にお金を入れて置かなかったんですか!」
「いや予想より高くて油断したっつーか……誰かヘールプっ!!」
 シャルに怒られている彼の様子に可笑しそうに笑ったり、やれやれと肩をすくめたり。終始賑やかだった彼らの横で、水槽の中の魚達は相変わらずのんびりと泳いでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

四・さゆり
【明日知・理(f13813)】と一緒よ。
アレンジ大好きよ。

ーーー

わたし、あまり海は行ったこと、ないの。
だから潜るのは、少しだけ。すこしだけよ、…やなの。

怖いだなんて言ってない。
けど。
でも、

これは、悪くないわね。

ぺたり。と手を水槽に。
おでこをこつんと押し付けたら、

海の中に、いるみたい。

…ね、マコ。


硝子の中の海ならば、ちっとも怖くないわ。
マコを引き連れてあちらこちら。

あのでっかい魚、何て呼ぶのかしら。
やだ、あの子死にそうよ。…あ、動いたわね、
あれは知ってるわ、くらげでしょ?

ね、マコ。
海って、綺麗なのね。


それから、お土産屋さんで、
あのでっかい魚のぬいぐるみを買うの。
ふたつ。
わたしと。誰かさんの。


明日知・理
【四・さゆり(f00775)】と
アドリブ歓迎


雨の日に出会う少女は、海に潜るのは嫌だという
彼女の心や過去を土足で踏み躙る行為は間違ってもしない。したくない
故に
そうか、とただ頷いて
けれど何も変わらず、常と同じくさゆりの速度に合わせて進む

さゆりが水槽に額を当てて
海の中にいるみたいね、なんて言うものだから
ああ、成る程。確かにと俺も納得して
常より幾分か柔らかくなった声音で
そうだな、と相槌を打った


水族館を楽しんでいるさゆりに密かに安堵しつつ二人で館内を巡る

海は綺麗ね、と彼女が零したから
「そうだな、
…綺麗だ」


土産屋さんで、
…さゆりが好きそうなぬいぐるみを、買った。
ふたつ。
彼女と、
彼女の、大事な人に。



「わたし、あまり海は行ったこと、ないの」
 どこまでも深い青が広がる巨大水槽の前。水槽のさらに向こう側は透明な宇宙船の外壁で、外が見える。宇宙空間に浮かぶ星星を背景に布いた海という、何とも不思議で贅沢な景色だ。
 四・さゆり(夜探し・f00775)は水槽から少し離れた場所で遠巻きにそれを見る。
「だから潜るのは、少しだけ。すこしだけよ、」
 ……やなの。
 少しばかり人の気配でざわついているこのフロアで、それを聞き取ることができたのは、今日も彼女のすぐ隣りにいた明日知・理(花影・f13813)だけだ。
「……そうか」
 雨の日に出会う、赤い傘の少女。しかし空から落ちるその水が、降り積もり流れ着いた先の海に潜ることは嫌だという。
 相変わらず無愛想に端的に返した一言の裏には、深く潜り知ることへの気持ちが全く、ないわけではない。だがそれ以上に、不用意に彼女の心に土足で踏み入って、傷つけることも、「嫌」と言われるようなことも。あってはならないという気持ちの方が強かった。
 さゆりが水槽へと踏み出すと、理もその後へ。溺れないように、彼女の速度で。
 すこし、いやなだけ。怖いなんて言ってない。さゆりはそっと、水槽のガラスに手をついた。群青の中に、光る珊瑚のイルミネーションが揺れている。それらを隠れ家とする小魚たちが、こちらの存在に気づいているのか居ないのか、ぼんやりとした顔で一様にひれを動かしていて、時折思い出したように、急に慌てて泳ぎ出す。
「でも、……これは、悪くないわね」
 もう少し近づいてみたくて、おでこもこつん、と押し付けた。ごぼごぼ、どこかで空気の泡が溢れる音と、半分の視界にいっぱいの青の世界。
「海の中に、いるみたい。……ね、マコ」
 呼びかけた先、一歩後ろにいた彼は水槽のガラスに反射して、さゆりの視界の中で青の中に沈んでいた。海の中でも、すぐ近くにいるみたいだ。
「ああ、そうだな」
 確かに、と納得しながら相槌を打つ。水槽にぴったり貼り付いている小柄な少女の姿が、なんだか無邪気で微笑ましくて、自然と声色がほどける。彼女と同じ世界を見るために、理ももう一歩、さゆりの隣へ踏み出した。

 何も問題はない、とわかってしまえばこちらのもの。随分軽くなった足取りで、少女は色男をあちらこちらの水槽へと連れ回した。
「あのでっかい魚、何て呼ぶのかしら」
「あれはジンベイザメだ」
「じんべい……」
 この宇宙の水族館において一二を争う大きさのそのサメは、羽織もののような柄をしてちょっと小洒落ている。でも、目は小さくてつぶらだ。それにあんなに大きな図体と口をして、小さなプランクトンが主食らしい。謙虚なのね、なんて少女が言う。
 次に彼女らが目に留めたその生き物は、ただただ水流に流されるままにぷっかりと漂っていた。ミズクラゲに近い透明なゼラチン質の傘がひっくり返ってしまっている。
「やだ、あの子死にそうよ。……あ、動いたわね」
 水槽に近づいてきた人影に反応したのか、傘のどこに収まっていたのかと言うほど長い触手をわーっと出して泳ぎ始めた。触手のうちの二本だけに、カニのはさみのようなものがついている。
「あれは知ってるわ、くらげでしょ?」
「くらげ……なのか……??」
 見たことのない謎の生態に理が目を瞬かせる。おそらく宇宙世界特有の種なのだろう。
 大きなものも奇妙なものも、同じ青色に染まって世界を作り出している。
「ね、マコ。海って、綺麗なのね」
 水槽を見る彼女は笑っている。ああ、良かったと理は胸を撫で下ろして。
「そうだな、……綺麗だ」

 一通りのフロアを巡った二人は、そののち土産売り場に居た。
 さっき見た巨大なジンベイザメの巨大なぬいぐるみを、同じものをひとつずつ抱えている。
「本当にでかいな……」
 抱きまくらにするには申し分なさそうだが、小柄なさゆりが持っていると、どちらが抱えられているのかわからないな、と思った。
 そんな理をさゆりが見上げて目が合う。さゆりは抱えているジンベイをえい、と彼の顔めがけて突撃させた。
「がぶっ」
「むぐっ……」
 大きな口に喰われた視界が明るくなったときには、彼女はやっぱり楽しげに、ふふふっと笑っているのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
イサカさん/f04949
海棲生物には魚屋さんでしか会ったことがありません。
水族館にも行ったことがないです。生きてくのに必要ないから。イワシトルネードって何。

水中が好きそうなのはわかります。クラゲっぽいですよ。
ふわふわしてるとことか。何食べて生きてるのかよくわからないところとか。

目当て、クリスタルフィッシュですね。ガーネットの魚がいるといい。
鉱石も星と数えるなら、やっぱり縁があるんでしょうね。星にも、あの石にも。

…今日だって、たくさん見てきた夜のうちの一つでしかありません。
だけど後々『特別』になるんじゃないでしょうか。まだ知らないものばかりだから。
――そうですね。終わったら褒めてあげます。


黒江・イサカ
夕立/f14904と

…えっ、水族館の経験もないのかい?
そりゃちょっと損してるな…
もしかして生きてる魚を見たことがないとか?
結構勉強になるよ イワシトルネードもね

ぼかあ、水ってやつが結構好きでさ
あんなに気持ちよさそうに泳がれると、僕も入りたくなる
確かに髪も長いから、沈めばちょっとしたクラゲかもな

そう、そう、クリスタルフィッシュ 初めて見る
…流れ星みたいだね、これも
君と何処かに出かけると、よく星を見ている気がする
気に入ったのかい?ガーネット

ま、僕も君も夜の男だなあ
その癖、ひとつとして同じ星空はないってんだから憎い話だよ

…で、この次は蝶々と鯨だっけ
綺麗だな、きっと
鯨、殺すの初めて
――楽しみだね、夕立



「海棲生物には魚屋さんでしか会ったことがありません」
 ジ・アクアリウムの一般公開領域のゲート前。歩きながら、矢来・夕立(影・f14904)は特に何でもないことのように言った。
「……えっ、水族館の経験もないのかい?」
「ないです」
「そりゃちょっと損してるな……」
 傍らの帽子の男、黒江・イサカ(鼻歌と・f04949)は夕立の言葉の真偽を探らない。
「もしかして生きてる魚を見たことがないとか?」
「……生きてくのに必要ないから」
「わからないよ。いつか活魚を捌くときが来るかも」
「板前志望ではないです」
 姿勢良く歩く詰襟の彼に、イサカは周囲の施設や忙しなく動くスタッフ達、訪れている客の顔など、あちらこちらにふらふらと目を向けながらついていく。
「まあ結構、勉強になるよ。イワシトルネードなんかもね」
「イワシトルネードって何」
 抗えない引力を持つパワーワードは此処でも猟兵を惑わせる。そうしてゲートを潜ると、闇の中に浮かび上がるような青が二人を出迎えた。

 並ぶ二人の輪郭が青を黒く切り取っている。
 眼の前の水槽には、クラゲ達がシャンデリアのような繊細な触手を揺らしながら、まるで秩序無く、思い思いに水流に身を任せて漂っていた。
「ぼかあ、水ってやつが結構好きでさ。あんなに気持ちよさそうに泳がれると、僕も入りたくなる」
 イサカは子守唄でも聴いているかのような面持ちで、つい、とガラスに手を触れてクラゲ達の軌道をなぞる。
 案内のホログラムによれば、この水槽のクラゲ達の美しい触手が持つ刺胞毒はかなり強いものだという。やめておいた方がいいですね。なんて夕立が返しつつ。
「水中が好きそうなのはわかります。クラゲっぽいですよふわふわしてるとことか。……何食べて生きてるのかよくわからないところとか」
「確かに髪も長いから、沈めばちょっとしたクラゲかもな」
 振り向いて、傘代わりの帽子を目深に被ってみせる。羽織がふわりと翻った。
「似てますよ、ホントに」

「あ、居ました、クリスタルフィッシュ」
「へえ、これが。初めて見る」
 彼らの一番の目当てだった、鉱石でできた体を持つ宇宙世界由来の奇妙な魚達。純度の高い原石がウロコのように覆っていて、結晶が角のように生えていたりする。その性質上非常に寿命が長く、代替わりのサイクルもとても緩やかだという。
 外壁側が透明になっていて奥に船の外の景色が見えるこの水槽は、魚達がまるで宇宙空間を泳いでいるかのように演出する。
 夕立がいくらか視線を巡らせてから、じっと一点を見上げた。青の中にあっても存在感を放つ、黒を帯びた赤のクリスタル・フィッシュ。ぼんやりと発光して見えるのは、微量の超能力エネルギーを放出しているためだろうか。
「……ガーネット」
「気に入ったのかい?」
 鮮烈な、同じ色の瞳が揺れる。
「……流れ星みたいだね、これも。君と何処かに出かけると、よく星を見ている気がする」
「鉱石も星と数えるなら、やっぱり縁があるんでしょうね。星にも、あの石にも」
 なにかイベントでもやっているのだろうか、遠くから歓声が聴こえてきては、通り過ぎて消えていく。
「ま、僕も君も夜の男だなあ。その癖、ひとつとして同じ星空はないってんだから憎い話だよ」
 ちょっと言い方がいかがわしい。今のもダメ? 冗談です。なんて軽口を挟みつつ。
「……今日だって、たくさん見てきた夜のうちの一つでしかありません。……だけど後々『特別』になるんじゃないでしょうか」
 あてどなく拡がる知らないもの達を、いつか来るその日まで積み上げては、ときに崩して。
 最後の時に思い出すのは、どの星空だろうか。

 つかの間の緩やかな時間は終わり、現地到着のアナウンスが流れて猟兵達が入口ゲートへと招集される。ここからは招かれざる過去と対峙する時間だ。
 イサカは水族館に入る前よりも今、これから出会うであろう「綺麗な景色」に期待を膨らませ。
「鯨、殺すの初めて。――楽しみだね、夕立」
「――そうですね。終わったら褒めてあげます」
 群青に棲む無数の眼が、彼らを見送っていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『電幻の蝶』

POW   :    オプティカル・カモフラージュ
自身と自身の装備、【電幻の蝶が群れで覆っている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    サブリミナル・パーセプション
【翅の光を激しく点滅させること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【幻覚を見せる催眠】で攻撃する。
WIZ   :    バタフライ・エフェクト
見えない【クラッキングウイルスの鱗粉】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●暗晦に灯す
 ジ・アクアリウムがコロニー跡の港へと寄せる。
 ハッチには船に残る一部の猟兵達、船の窓には研究員や観光客らがこぞってはりついて、戦いに赴く彼らへ手や旗を振っていた。外に面した水槽から魚達の様子も見えたが、こちらを気にした風もなく変わらず穏やかに漂っている。
 メルビレイが来る前に、ジ・アクアリウムは此処を早急に去らなければならない。
 完了のシグナルが届き次第必ずお迎えに上がります。ご武運を、と告げる激励の声を背に、猟兵達はコロニー跡ヘと降り立つ。

 此処は銀河帝国がのさばる時代に占領され、駆逐され、やがて戦線の移動と共に放棄された場所と見られている。
 当時の傷跡も残る荒れ果てた場所だが、巨大な回廊都市の残骸は足場としての役目を十分果たすだろう。
 青い蝶達の姿は、今は見えない。
 猟兵達はここである種の誘蛾灯、あるいは漁火となって、彼らとその奥の『災厄』へと、その存在を示すことになる。

======
 第2章では、コロニー跡で電幻の蝶を誘き寄せて戦うことになります。
 1. 電幻の蝶を光や電波などで誘き寄せる
 2. 通常通り戦闘に集中する
 3. 1と2の両方をやる
 上記の内、どれでも問題ありませんので得意な所を攻めてください。
 多少偏っても大丈夫です。おそらく。
 宇宙服はいつものやつです。自由に戦ってください。

 第2章のプレイングは、6/13(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
======
 
御形・菘
蝶が幻想的に舞う光景とは、途轍もなくエモい映像になりそうであるな!
それではこの感動を、皆とリアルタイムで共有するとしよう!

右腕を高く上げ指を鳴らし、スクリーン! カモン!
はーっはっはっは! 今日も元気かな皆の衆!
実は蝶は光に寄ってくるそうなので、スクリーンたちを利用させてもらうぞ
クラッキング対策で天地には超遠方から撮影させるから、映像が普段と少し違うかもしれんのを了解してくれ!

さあ、ド真ん中に飛び込んでいけば、さぞや素敵であろうな
尻尾と左腕でガンガン潰していってやるとしよう!

ちなみにスクリーン召喚は妾の気合の為せる技よ(要は自分でも原理不明)
鱗粉程度で散らせるものなら、やってみるがよい!


コルチェ・ウーパニャン
1.
小さなコルチェの光でも、気づいてちょうちょさんたちは来てくれるかな…?
宇宙って広いから不安だけど、それはちょうちょさん達も同じ…だと、思う……

優しい気持ちで、おいでおいでって祈りながら、
コルチェいっしょうけんめい光ります。
髪はぴかぴか、白の色。
一生懸命、穏やかの色。

こっちにおいで。
コルチェたちが、連れて帰ってあげる。
骸の海へ。
過去の楽しい、水族館へ。

兵器としてのプログラムはもう、忘れていいんだもん。
冷たい宇宙の海もフワフワして楽しいけど
コルチェは水族館が大好きになったよ。
ちょうちょさん達にも好きになってほしいな。

ちょうちょさんたちのプログラムの奥の奥のその奥まで、この光が届きますように!



 かつてコロニーの発着場として、多くの宇宙船が往来していたであろう平坦な広場にコルチェは立っていた。
 遠くの宙の暗闇を見上げ、未だ見えない蝶の姿を追う。果てのないその闇は、一度落ちれば二度と戻っては来られない底なしの沼のようで、凍えるように睫毛の先を震わせる。
「不安なのは、きっとちょうちょさん達も同じ……」
 コルチェの髪が、ふわりと光を放つ。役目を失ってもなお彷徨い続けている彼らを、あるべき場所へと導くための、彼女の心を映す穏やかで、優しい白い光だ。
「小さなコルチェの光でも、気づいてちょうちょさんたちは来てくれるかな……?」
「はーっはっはっは! 心配には及ばん!!」
「!!」
 祈る彼女の傍らに、快活な声と共に現れたのは菘だった。
「宇宙空間に蝶が舞うというエモい映像を撮りに来たが……中々どうして、此方側も負けておらんな!」
 高く右腕を突き上げる。
「スクリーン! カモン! 『天地』、ゴー!」
 パチン! と指を鳴らすのと同時、彼女達の周囲の空間に突如いくつもの巨大なディスプレイが現れた!
 ディスプレイには菘の動画の常連視聴者達、そしてシグナルを通じ菘達の戦いを見守る者達――『ジ・アクアリウム』の船員や客達の、リアルタイムの姿が映っていた。
「あ、スタッフさん!」
 コルチェに声を掛けた船内スタッフの彼の姿も見える。
「此方の映像もストリーミングで届けるぞ。無論、蝶たちにもだ」
 稼動可能領域ギリギリから、菘の撮影用ドローン『天地通眼』が二人を捉えてズームアップ。ディスプレイの一つに、聖なる光を湛えるコルチェの姿を映し出した。
「わわ、コルチェも映ってる!」
「さあ、呼び続けろ!」
「……! うん!!」
 コルチェが胸の前で手を組み、目を閉じる。揺れるファイバーの髪が一層まばゆく光に包まれる。ディスプレイに大写しとなってそれはさらに増幅され、菘の姿に強く逆光の影を落とすほどに輝いた。人々の声援が聴こえる。
 ――こっちにおいで。コルチェたちが、連れて帰ってあげる!

「――! 来たぞ!」
 菘が声を張り上げる。はっと目を開けて凝らした先には、ひらひらと点滅する青の群れが静かにこちらへと飛来する姿。
 彼らは蝶の姿の機械兵器にしてオブリビオンだ。猟兵の存在を認めたなら、それが最優先の排除対象となる。急速に二人へと接近すると、一斉にその羽ばたきを一層強くした。ミクロレベルサイズの粒子がさらさらと溢れ拡散する。
「クラッキングの鱗粉か? その程度で妾のスクリーンを散らせるものなら、やってみるがよい!」
「大丈夫だよ! コルチェが、させない……!」
 蝶たちの落とす鱗粉が、菘の空中ディスプレイ達や発着場に横たわる宇宙船の残骸に取り憑こうとする。だがコルチェが放つ強い光は、それらを飛来する傍から浄化するように消し飛ばしてしまった。
「兵器としてのプログラムは、もう、忘れていいんだよ」
 光を放ち続けて消耗しているのか、声は途切れ途切れ、だが力強く。
 敵の初撃を抑え好機とみて菘は、巨大な蛇の尾をバネのように使って飛び出し、蝶たちの群れの中へと突っ込んだ。鋭い爪を持つ異形の左腕が、一薙ぎに何体もの蝶を粉々に砕く。その勇姿も当然『天地』がバッチリと動画に収めていた。
 ――骸の海へ帰ろう。
 散らされていく蝶たちに、コルチェは祈る。
 宇宙の海の仲間達が待つ、過去の楽しい水族館へ行こう。海の底は暗いけど、皆一緒だから泳ぐのは恐くない。ちょうちょさん達も好きになってくれるはず。
 砕けて漂う蝶の青い翅が、スクリーンに映る人々の姿をきらりと反射して、そして光の灰となって消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神埜・常盤
【空】

幼い頃は蝶を見境なく捕まえて、母に叱られたものだが
今日は追い放題、捕まえ放題か、腕がなるなァ
幽君の灯もコノ君の焔も綺麗だねェ
合わせてイカ釣り漁のよう……なんて言葉は呑み込んで

僕が召喚するのはマヌカンのご婦人
さァ、僕たちの為に踊れ
見えない鱗粉は彼女の軀で防ぎ、其の能力を暫し拝借
遠く舞う蝶を捕まえ此方に引き寄せよう

ほぅら、捕まえた
コノ君、幽君、存分に味わってくれ給え
――本当に食べなくても良いからね?
機械仕掛けの其れを前にして尚
食欲滲ませる2人に思わず素が漏れつつ

2人が不意打ち食らいそうな時は
蝶達へ護符を投擲してマヒ+範囲攻撃
近くに寄ってきた個体には
ハッキングからの催眠術で同士討ちを唆そう


コノハ・ライゼ
【空】

二人共追い掛けたり捕まえたり上手そうだよねぇ
こわーぁい、と笑い二人に続く

オレは捕まえるのは苦手だからネ
目一杯光らせてたっくさん誘き寄せよう

【月焔】の焔を最大数でばら撒き漂わせるヨ
イカ釣り漁船との言葉に噴き出しつつ
焔の幾つかは幽ちゃんのロープやジンノのお人形サンへ、燃やさぬ様添わせるネ
二人が蝶を捕らえたら摘まみ食いしてイイ?
「柘榴」で斬りつけ『2回攻撃』、『傷口をえぐる』よう焔を捻じ込み『生命力吸収』
クリスタルフィッシュはダメそうだったケド、キミ達はどうかなぁ?

鱗粉飛ばす気配があったら、焔ばら撒き鱗粉を燃やすヨ
二人ともちょいと伏せてちょーだいな
これだけ派手に燃やせば、誘い漏れもナイでしょ?


絢辻・幽子
【空】

狩猟本能が本気を出すときね、なあんて。
捕まえるのはほどほどに、追いかけるのは好きよ
袋小路に追い詰めたりとか、とっても好き。

『ロープワーク』で張った糸に小さなライトと
光を反射するガラスをぶら下げて
……イカ釣り漁船みたい
ときちゃんの式神って便利そうよねぇ
そんな事を思ってみたり
童心にかえっても許されちゃうわねえ
『おびき寄せ』つつ捕まえに行っちゃいますか

蝶が釣れたらきゃっきゃと
コノちゃんつまみ食いしてお腹壊さないといいけど
でも、あれよねえ…どんな味がするかは気になるかも
繭絲で『傷口をえぐる』と『生命力吸収』を
美味しいのかしら?

伏せての声には素直にひょいと
尻尾が焦げちゃったら大変。ふふ、怖あい。



 宇宙の『スシ』を思う存分堪能した三人は、朽ちたガレージが並ぶ港街にて蝶たちを待ち侘びていた。
「幼い頃は蝶を見境なく捕まえて、母に叱られたものだが……今日は追い放題、捕まえ放題か」
 腕がなるなァ、と言って常盤は白手袋の裾をくいと引っ張って整える。
「ときちゃん、意外とわんぱくな少年時代だったのねぇ」
「ふふ、まあねェ。でも幾つになってもこういうのは楽しいものだ」
 彼の鷹揚とした言葉を聞きながら、幽子は崩れたガレージの無数の傷跡に赤い糸を滴らせ張り巡らせる。糸の所々にはガラスの破片や小型のランプライトが吊り下げられており、ショッピングモールのイルミネーションのようにキラキラと瞬いていた。
「捕まえるのはほどほどに、追いかけるのは好きよ。――袋小路に追い詰めたりとか」
「やだーこわぁーい」
 彼女が想像の中で追い詰めているのは本当に蝶だろうか? 困り眉でにっこりと目を細めたまま、心底楽しそうにそんなことを言う幽子に対し、身を縮こまらせる素振りをしながらくすくすと笑うコノハ。
「コノちゃんは、狩猟本能が燃えてきたりしない?」
「オレは捕まえるのは苦手だからネェ。ケドその分、こっちを目一杯燃やしちゃおうかな」
 コノハがひらりと掌を返すと、白光を放ちながら燃える狐火が現れる。それはコノハの掌から吹いて数十に、三人を取り巻くように浮かぶが不思議なことに熱はない。
 いくつかを幽子が張り巡らせた糸に添わせれば、イルミネーションはさらに豪華にまばゆく。
「あァ、綺麗だねェ」
 暗闇に揺れる、獲物を誘う目の眩みそうな光。状況も相俟ってイカ釣り漁のようだ、と思ったが少々情緒に欠けるか……と常盤は喉元に出掛かった言葉を飲み込む。
「……イカ釣り漁船みたい」
 幽子は思ったことをそのまま言った。若干二名が噴き出す。
 言わなかったのに……と笑う常盤に首を傾げる幽子、そんな最中でコノハは視界の端に、青く光るものを見留めた。
「ね、二人共、見て」
 釣りの仕掛けは上々、まんまと誘われた獲物たちはしかし大人しくはしていてくれないようで、三人を逆に喰らい尽くさんと翅を震わせた。
 
 インバネスの紳士がコートの裾をひらり翻す。その影から現れたのは、鹿鳴の豪奢なドレスに身を包む無貌の淑女。
「さァ、僕たちの為に踊れ」
 常盤が彼女に添えていた手をそっと、離す。マヌカンの婦人は優雅にステップを踏んで、蝶たちの前に文字通り躍り出た。月白の焔が寄り添って、舞台照明のごとく彼女を照らす。
 くるくるり、ひとりワルツを踊る彼女の軀には、蝶たちが零す電子の鱗粉が降りかかる。だが遠き世界の技術たる『式神』の原理は、彼らのプログラムで解析するには少々不可解なものであったのだろうか。
 ウイルスが侵食するより先に、婦人はドレスの大きな裾を払って集めた鱗粉を蝶たちへとつき返した。きし、きし、と翅が動揺するように軋む。鱗粉を浴びた蝶たちは自らのウイルスによって侵されて、命令を上書きされたかのようにふらふらと猟兵達のもとへと飛んでいってしまった。
 常盤は手近に来た無防備な一体をぱっと手で掴む。他の蝶たちは幽子の張ったクモの巣のような赤糸にかかって、じたばたと暴れた。
「ほぅら、捕まえた」
「お見事、ジンノ! ……ちょっと摘まみ食いしてイイ?」
「ああ、存分に味わってくれ給え。……本当に食べなくても良いからね?」
 コノハの手元で、鏡のように磨かれたナイフが閃く。常盤が手を離して再び飛んだその蝶に、切っ先を向け。薄く脆い機械の翅は一瞬でぱりんぱりんと割れ落ちて、かろうじてボディが残る。そこへと捩じ込まれる、精気を奪う妖狐の焔。
「クリスタルフィッシュはダメそうだったケド、キミ達はどうかなぁ?」
「コノちゃん、お腹壊さないでね」
 皮肉なことに(?)彼らがスシ屋で食べるのを断念したクリスタルフィッシュの一種の体表鉱石と、電幻の蝶の一部の精密部品に使われているレアメタルが同じであったりする。微量のサイキックエネルギーを持ち、だがしかし魂を持たない機械の彼らの『生命』の『味』はなんとも無味であった。
「味がナーイ!?」
「あらぁ、そうなの?」
 捕まえた蝶を糸に絡めて手元で遊んでいた幽子が、どれどれ自分も味見をと、首を絞めるようにきゅっと手の力を込める。ぴし、と青いガラス質にヒビが入って――残念ながらやはり良質なタンパク源にはなりそうもない味がした。
「こんな機械相手でも、君達の食欲には恐れ入るよ……っと!」
 新手の気配を察して、常盤は懐から取り出した闇色の護符を投げれば、蝶たちが金縛りにあったようにその場で動きを止める。気がつけば光に誘われた第二波が多数飛来していた。
「あらあら、大漁ね」
「腹の足しにならないなら全部、燃やしちゃおうねェ。二人ともちょいと伏せてちょーだいな!」
 コノハが焔達を集めて纏う。幽子は尻尾の先が焦げては大変と引っ込めながら、常盤はマヌカンの婦人をエスコートしながら伏せると。コノハは一斉に、爆発させるように月焔を解放した。四方八方へ飛び知った焔は鱗粉ごと蝶たちを燃やして塵にしていく。
「ふふ、怖あい」
「頼もしいねえ」
 敵中においても彼らは彼らのペースを崩さない。それは絶対的な捕食者側としての余裕か――いや、只々純粋にひたすらにマイペースなだけ、なのかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ケビ・ピオシュ
【星鯨】
できるだけ顔のモニタの明るさは上げておこう
敵は機械兵器だ
ならば、この杖型のリモコンが効くやも知れないね
私の杖も、ケーブルも大体万能なのさ
皆の魔法も頼もしく、私達自身が誘蛾灯のようなものだろう

上手に寄ってきてくれれば、ユーベルジャック
遠距離での操作合戦で、負けてはいられないからね
鱗粉と杖の電波の、力比べさ
同士討ちを頼んだよ
集まりすぎたならば、ハッキングだって試みてみようか
相手は機械、テレビウムとして思う所がない訳でもないさ

皆が狙われるようならば、Palmを広げて庇おう
皆が傷つく所は見たくは無いからね
この大きな掌は武器にだってなる
さあ、もうひと頑張りしようか


杠葉・はつね
【星鯨】のみんなと
ユーベルコード:狐の足跡を使って灯にしておびき寄せる
光というより火になっちゃうから集まるか不安なのだけど……

宇宙は相変わらず不思議よね、無重力……

狐火は2個出して、1つは位置を固定して1つは固定させてる火に集めるように浮かばせておくわね
賢太郎が水魔法で包んでくれたらカッコよくてちょっとわくわくしちゃうかも

集まりすぎないように気にはかけておかないとかしら
ある程度集まったら浮かばせてる方で遠くのものから燃やしていくわね
集まりすぎて危険になったら燃やして回る方にシフトするわね

オブシダンと賢太郎が魔法を使っているのって、物語のワンシーンみたいに絵になりそうと思うのは不謹慎かしら


オブシダン・ソード
【星鯨】
暗闇の中、光に惹かれる気持ちは少しわかるよ
この機械の蝶がそんなこと考えてるかわかんないけどね

炎の魔法を使用、左手で灯火を浮かべる
魔法の火なら空気が無くても、と思ったけど、揺れない炎って妙な感じだね
いくつも灯火を浮かべて、蝶の動き具合から火力を調整
順番に、戦いやすい感じで誘導しよう
はつねの狐火や賢太郎の魔法と連携できそうなら合わせて操作を

懐に誘い込めたらこちらも剣で攻撃に回る
狙うのは羽の間のボディかな
数が多いようなら炎での範囲攻撃も視野に入れよう
その際は皆に声を掛けて、まとめて多く薙ぎ払えるように
さあ、一網打尽ってやつだよ


狼谷・賢太郎
【星鯨】
折角だから普段やらねー事にチャレンジだ!

強化した魔法で青色の炎をめいっぱ――いより少なめに作るぜ
すっげー熱いやつ!
で、それとオブシダンとはつねの炎を水魔法の泡で包みこんで……即席の"ゆーがとう"の完成だ!
水に反射させた炎の輝きで誘き寄せて、寄ってきた蝶を泡で捕まえて焼くんだ
ライトみたいで綺麗だろー!

こーいうの、飛んで火に入る夏の虫って言うんだっけ?
なんか可哀想だけど、ほっとく訳にもいかねーしな

もし集まりすぎたら、浮かべた炎を一気に炸裂させて一網打尽にしてやる!
守りはケビに任せたぜ!

ちょっとだけふらふらすっけど、少しは抑えたし大丈夫だろ
まだ宇宙ドラゴンとの戦いもあるし倒れてらんねーよな!


セツナ・クラルス
【星鯨】
おびき寄せの為の光源は足りている様子
ならば私は隠密に回ることにしよう
ふふ、先ほどの水族館で可愛い子を見つけたのだよ
チョウチンアンコウ型の観測者を出現
ほらほら、おでこの角?が光るんだよ

敵に見つかったとしても敵視されない程のユーモラスな外見だが、
ここぞというときには逃げることができるくらいの素早さは持っている良い子だよ
宇宙空間をよろよろと泳ぎ、
(仲間から見て)死角の多そうな位置に配置させる
周辺に変化があれば仲間に連絡・情報共有

戦闘になれば
観測者と私、広がった視野を有効活用し
フォローに回るとしよう
オブシダンさん、賢太郎さん範囲魔法の照準をもう少し左手に…
…ああいい感じだね
よく燃えてる



 コロニーの巨大な回廊と中枢を繋ぐ幾つもの橋。車輪のスポークのようなその場所に、愛書家達は陣取っていた。
「では皆、始めよう」
「うわ眩しっ」
 図書館長の号令と同時、彼の顔のモニタがぶぉん、と明るさを増した。ブライトネス、コントラスト比、最大。……に設定すると、愛らしい表情や自慢の髭まで白飛びしてしまうのでちょっとだけ調整する。
 他の猟兵達もそれぞれに蝶を出迎えるべく準備を始める。オブシダンは左手を掲げ、その上に魔法の火を灯す。はつねは二十の狐火を喚び出して、中心のひとつに他の火を纏わせる。
「揺れない炎って妙な感じだね」
「宇宙は相変わらず不思議よね、無重力……」
 酸素のない宇宙空間でも、猟兵達の埒外の力が起こす炎が消えることはない。ただし意識して揺らそうとしていなければ、炎は無重力下では太陽のようにぷかりと球の形を取った。
 普段見ているものとは少し違う形だが、煌々と燃える火の中心を見ていると、はつねには思い出してしまう悪夢がある。仲間と共に敵を打ち倒すためなら、この力を使うことにためらいなど無いが――金の瞳が揺れる。
 その視線の先の狐火の球を、突如水流が襲って呑み込んだ。
「……!? わ、綺麗っ……」
 賢太郎が喚び出したらしい魔法の水で狐火がふんわりと包まれて、その輝きは水の膜に反射して強く、そして幾分柔らかくなっているように見えた。
「即席の"ゆーがとう"の完成だ! ライトみたいで綺麗だろー! 」
 にししと笑う賢太郎の傍らにも、青く燃える火を包み込んだ水の泡が浮かんでいる。オブシダンの魔法の炎も同様に水のランプとなって、この宇宙にちょっと不思議な恒星達が新たに誕生した瞬間だった。
「良い誘蛾灯ができたね、光量は十分ではないかな」
「ならば私は隠密に回るとしようか」
 可愛い子を見つけたのだよ、と言いながらセツナがその手の中に創り出したのは、先程水槽で見た深海の生き物の姿だ。ずんぐりむっくりなフォルムになんだか憎めない顔、そして頭部から生えた突起に擬餌状体がついている。
「あ、これさっき見た、チョウチンアンコウだ!」
「如何にも。ほらほら、おでこの角が光るんだよ」
 水族館見学の続きのように和やかに、だがこのチョウチンアンコウは広く戦場を見渡すための立派な目となる。
「準備万端、と言った所で早速お目当てのお客さんが来てくれたようだね」
 ケビがくるんくるんと杖を回してから、ぱしっと向けた宙の先。星々の間に、賑やかな光に誘われてちかちかと瞬く青い群れがあった。

「暗闇の中、光に惹かれる気持ちは少しわかるよ」
 その暗闇の中で、静かに眠れるのならまだ良いけれど。生きる目的を与えてくれるはずの主の生死すらわからずに、闇の中を彷徨い続けるのは辛いだろうとオブシダンは一層、泡のランプの中の火を強く燃やす。
「……まぁ、あの機械の蝶がそんなこと考えてるかわかんないけどね」
「兵器として生み出され、戦いに負けて過去となってしまったことは気の毒だ」
「せめてお話ができればと思うけれど……それは逆に残酷なことかしら」
 テレビウムであるケビも、ミレナリィドールであるはつねも青い蝶達へぽつりと零す。『彼ら』の運命を決めるのはいつも、創り手の想いと匙加減ひとつだ。
「オブシダン! はつね! そろそろ射程距離に入るぜ、いけるか!?」
「問題ないよ」
「勿論、いけますとも!」
 賢太郎の呼び掛けに、二人の炎はさらに強く、球形を破って再び『炎』の形を取り戻す。
 三人が息を合わせてランプを泳がせ、近づいてきた蝶達を次々飲み込んでいけば、水の泡に囚われた蝶は中の火で炙られて灰になって消えていった。
「こーいうの、飛んで火に入る夏の虫って言うんだっけ?」
 ちょっと可哀想だけど……と燃える蝶を眺める賢太郎に、終わらせてあげるのも彼らの為だと、オブシダンがぽんと肩を叩いた。

「ケビ、反対側からも何体か来ている。途中で分かれて挟み撃ちにしようとしたのかも知れない」
 観測者のチョウチンアンコウが、ひそやかに敵の分隊を発見していた。上下の概念もない宇宙空間、細い足場上では360度+360度の全方向からの襲撃の危険があるが、そこは先んじてセツナが死角をカバーしていた。
「よく見つけてくれたね、クラルス君。そちらは私に任せて貰おう」
 ケビは杖にしゅるりとケーブルを繋いで自らと接続。彼の『Cane』は杖であると同時に、あらゆる機械を操る万能リモコンでもある。
 視覚では検知できないが、敵の鱗粉は既にこちらへ届いているらしい。ちり、と画面にノイズが走るのをケビは感じたが、彼は彼自身が意志あるメカニックだ。その辺の機械と一緒にして貰っては困ると、自らを守る防壁を張り巡らせてウイルスの進行を抑える。
「鱗粉と杖の電波の、力比べといこう」
 取得したクラッキングウイルスを杖が発する電波に載せ、撃ち返す!
 蝶たちはびり、と電撃を受けたように痙攣した。プログラムが破壊され、上書きされていく。混乱したように翅を明滅させる者、味方機のばらまいたウイルスにかかって機能不全を起こし、羽ばたきをやめてぷかりと宙に浮かんでしまう者。侵食されるように一体また一体と、光の粒になっていった。

「少し数を集めすぎてしまったかしら……」
 炎魔法で迎撃する三人、特にいくつもの水の泡と青い炎を同時に操る賢太郎にはやや疲労の色が見え始める。
「他にも猟兵がいるし、これ以上は増えねーよな!? もう一気に吹っ飛ばそーぜ!」
「いいね、一網打尽と行こう」
 幾つものランプが整然と、蝶たちの間に並べられていく。その意図を蝶たちが気づくことはできないが黙って見ているというわけでもなく、ちかちかと翅の青を点滅させ始めた。
 それに目を奪われる瞬間、三人の横合いから突如巨大な異形の手が現れて彼らの視界を覆う。
「……!」
「間一髪、危なかった」
 ケビがその身体に宿すUDCが、幻覚催眠に取り込まれる前に遮断したのだった。
「ケビ! 助かったぜー!」
「こちらは片付いたよ、派手にやってしまうといい」
「ええ、燃やしてしまいましょう!」
「オブシダンさん、賢太郎さん、あの位置のランプをもう少し奥側に配置できるだろうか」
「ふむ……これで良いかな?」
 夜祭を飾るランタンの間を青い蝶が飛び交うような、そんな幻想的な景色をどこか名残惜しく思いながら、魔法使いたちの指が弾かれる。
 暗闇に火花が走る。色を混ぜてひときわ強く、鮮烈な白い炎が辺り一帯を眩しく燃やし尽くした。

「オブシダンと賢太郎が魔法を使っている姿、絵になるわね」
 物語のワンシーンみたいだったわ、とはつねは楽しげに言う。
「杠葉君だって、巫女らしく立派に様になっていたよ」
「僕の本領は近接戦なんだけどね。何しろ剣だから」
 オブシダンは言いながら、爆破の直撃を免れつつもふらふらと落ちてきた蝶の一体を、瞬時踏み込んで本体たる黒曜を抜き払い、そのボディを一閃する。
「これでやっと、おしまいかな」
「クラルス君はパーティの役職のように言うとサモナーといった風だろうか。私はさしずめ……」
「マスコット枠かな?」
 つぶやいたオブシダンの脛あたりを、ケビは杖でぺしぺしした。
 そんな様子に賢太郎は笑いながらも大きく息をついて、気が抜けたのか、ふらりと足元がよろけたところを近くに居たセツナが咄嗟に支えた。
「おっと、……大丈夫かい賢太郎?」
「わ、悪い……! 普段あんまりやらねー事いっぱいやったからな……ちょっと疲れただけだ!」
 頭痛を抑えるように額に手を当てながら、支えられて立ち直る。
「まだ宇宙ドラゴンとの戦いもあるし……倒れてらんねーよな!」
 いざとなったらポーションもあるし大丈夫! 心配する皆に少年は笑顔を向け声を張る。
 くれぐれも無理はしないようにとケビは言って、改めて仲間たちを見渡した。
「ここからが正念場だ。もうひと頑張りしようか」
 いよいよ『それ』は近づいてきている。空気のない宇宙空間でも確かに感じられる巨大な圧力を猟兵達は肌で捉えて、再び暗闇の向こうへ目を凝らした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

黒江・イサカ
夕立/f14904と
※共通方針参照

ひかりに寄ってくる蝶々なんだ
まあ、確かに気軽に出せるのあるけどさあ、

………まあいいか
たくさんいるから、今日は君にも分けてあげよう 特別だよ
こんな日はもうないよ よかったね
あ~ ラッキーな男だな~ ゆうちゃんは~

というわけで、UCを使って蝶々をおびき寄せるんだけど
…これ、ちょっと疲れるんだよね
夕立には内緒にしとこ

僕のひかりは彼らにとってはちょっと物珍しいものかもしれないね
興味津々で近付いてきてくれればいいよ
あんまり痛くしないで欲しいけど、されてもされたで治っちゃうし…

これはこれでちょっと綺麗だな
宇宙で蝶々なんて初めて見るし

まあ、ただただ集られてるだけなんだけどね


矢来・夕立
イサカさん/f04949
※共通方針
イサカさんが囮役
【奇跡】のひかり+【紙技・冬幸守】の音波で蝶を誘導
一塊になったところで奇襲


光や電波に反応
ひかり(二度見)…誘惑が得意なひかり、いました。ここに。
じゃ、表に出ててください。
死なないって聞きましたし、死んでも死ぬ前に助けますから。

…という手筈ですので《忍び足》で潜伏してます。
センサーが生きてるなら音にも反応すると思うんですよね。
「エコーロケーション」でしたっけ?コウモリの超音波、誘導に使えません?
数量で許されるなら物理的に追い立てるのでも、そのまま殺すのでも構いませんけど。

やっぱり誘蛾灯に見えますね、あのひと。
近づくものはああやって死んじゃうし。



 コロニー居住区の外壁部。帝国軍に占領された際、手酷く襲撃を受けた場所のようで、分厚い壁はひしゃげて無数の穴が穿たれている。
「さて、まずは蝶、どうしますか。光や電波に反応……」
 陰にありて戦う夕立には、態々自身を目立たせるような術は生憎持ち合わせていない。何か周囲に使えそうなものはないか。視線を巡らせる。千切れかけてコード一本だけでくっついているような、メンテナンス用のアーム。蓋が剥がれて液晶が割れている何かの操作盤。目に映るものはどれもこれも、こわれたがらくたとガレキばかりだった。
「ひかり。ひかりね。まあ、確かに気軽に出せるのあるけどさあ、……」
「そう、ひかり……」
 視界を通り過ぎた彼、思案するイサカの横顔に早戻しで戻ってくる。灯台下暗しとはこのことかもしれない。
「……誘惑が得意なひかり、いました。ここに」
「え~」
「じゃ、表に出ててください」
「ゆうちゃんも欲しい?」
「ください」
「……」
 淡々と答えながら、夕立は外壁に空いた穴から元居住区内の様子を伺う。先程の水族館船と同じように外壁の一部が透明で、この居住区からは外の宇宙空間が見えるようになっていたのだろう。それも無残に割れてクモの巣のような罅が入ってしまっているが。
「……まあいいか、たくさんいるらしいからね。今日は君にも分けてあげよう。特別だよ」
 奇跡を分けてあげよう。なんてどっかのカミサマみたいなことを言う。
「こんな日はもうないよーよかったねぇ」
「はい、はい、ありがとうございます」
「あ~ラッキーな男だな~~ゆうちゃんは~」
「わかりましたから早よひかってください」
 外壁にイサカが、居住区の天井に夕立が立つ。ひかりとかげ。水面に映る逆さの像のような、妙な囮と潜伏者の構図。何の道具もなく楽に天井に立つなどという芸当ができるのは宇宙空間ならではかも知れない、と夕立は思った。
 足元を覗き込むと、罅割れた壁の向こう側でイサカが篝火を焚いていた。炎と呼ぶにはやや控えめな、霞の中に浮かぶ太陽のようなひかりだ。「見上げて」いるらしく、表情は見えない。
 それはイサカにとっては好都合かも知れなかった。奇跡を起こすにはそれなりの代償が必要だ。足の下にいる彼に、このひかりが自身の疲労を伴うものであることをあまり知られたくはなかった。

 暗闇の中に太陽の光を求め、機械の青い蝶たちは静かに飛来する。
 オブリビオンである蝶たちは、光源のもとにいる男を猟兵という重要な排除対象であると認識した。しかし彼の放つひかりはデータベースにはないものだ。脅威となり得るものか? 様子を窺うように、じりじりと近寄ってくる。
「そんなに遠巻きにしてないで、もっと近づいてきてくれてもいいよ」
 無数の星々の中に、ひらひらと青い蝶たちが舞っている。初めて見るその光景をこれはこれで綺麗だとイサカは暫し眺めた。ややあって折り畳みナイフを一本取り出し、パチリと開く。それが合図。
 ――すると外壁に空いた穴の中から、無数の蝙蝠が飛び出して来た。
 密かにエコーロケーションによる誘導を試みていたが、音の波は真空を伝わらない。プランBでも殺せるなら問題ないと、夕立の操る式神であるその群れは闇に融けながら、蝶を追い立てる。
 逃げ惑う先で、銀が閃いた。かしゃん、ぱりん、という硬質で脆い手応えと共に、イサカは届く範囲に寄ってきた蝶たちを片端から砕いていく。
「――やっぱり誘蛾灯に見えますね、あのひと」
 式を繰りながら夕立は独り言つ。縋りたくなるような光を湛えているのに、近づき過ぎてしまったものは皆ああやって死んでしまうのだ。
 しかし蝶たちも、先程までただ様子を窺っていただけではないようだった。
 一帯に降り撒かれていた不可視のウイルスが芽吹き出す。壊れたメンテナンスアームが一時的に息を吹き返して意志あるように宙を動き、欠けて鋭く尖る先端が、一直線にイサカを狙った。
 振り向いた男の視界には黒い影があった。咄嗟に飛び出して、脇差でアームを払い飛ばした、夕立の背中。
「……怪我しても治っちゃうのに」
「死んだら治りませんよ。……まぁ、死なないって聞きましたけど」
 蝙蝠の群れが一層激しく蝶の群れへ取り憑いた。捕まってばりばりと噛み砕かれて、粉々の塵になり、光の粒子になって消えていく。
 ふっと笑みを浮かべたまま、眩しさを遮るようにイサカは帽子の鍔を少し深く被って、手中に浮かぶひかりを消した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

穂結・神楽耶
【天窓事務所】アドリブ歓迎
呼び方:苗字+様

そういえば宇宙は初上陸です。
へぇ…こんな感じなんですね。
なんだかちょっと癖になりそうです。
とはいえここからは仕事ですからね。
気負わず、焦らず、いつも通りに。

というわけでわたくしが果たす役割は誘蛾灯。
我が身を燃やして灯台と成し、以て蝶を惹きつけます。
ここまで『存在感』のある明かりもなかなかないかと。
女性陣で力を合わせて蝶を集めましょう。

とはいえ駆除を男性陣にばかり任せるのもいけませんね…
光るものに向かってくるなら、そのまま通してくださいな。
飛んで火にいる夏の虫。
宇宙でまでそんな光景を見ることになるとは思いませんでした。


ヨシュカ・グナイゼナウ
【天窓事務所】(アドリブ連携歓迎) 2
穂結先輩 壱季先輩
名前の前半+さま

ジ・アクアリウムに手を振って。道中お気をつけてお帰りくださいね
さて、ここからはお仕事の時間です
宇宙に来るのは戦争以来ですが、随分と荒れ果てて。ですがこれだけ足場があれば充分に働けるはず


女性陣が各々の技巧で放つ光に誘き寄せられ、群青の機械蝶がやって来るでしょう
幻覚に当てられないように、見ると言うよりは聞いて【見切り】。【地形の利用】もして光に誘われる蝶達の死角から
開闢で両断。ひとつづつ確実に。女性陣の元へ到達する前に

戦争が終わって尚、この蝶達は何を思って稼働しているのでしょうか。もう、止まってもいいんじゃないかな


ウィルマ・シャーオゥ
【天窓事務所】で作戦継続。
おいしいおスシもご馳走になったし、もうちょっとお付き合いと参りましょう!

光や電波で誘き寄せ……それなら吾輩は『レプリカクラフト』で何か使えそうなものを作ってみるねー。
発光するケーブルを体積容量ぎりぎりまで、優先すべきはとにもかくにも『光ること』!
それ以外の造形や精密さはとりあえず度外視かな。
でも誘引の罠として使うものだし、もしかしたら精密に作れちゃったりするかもね?

目視すると幻覚の催眠かー……催眠術の知識でどうにか軽減できないかな?
まぁ、相手を見ないようにするのがいちばん確実だよネ。仲間との連絡は宇宙服があれば大丈夫として、羽ばたきの音とかによく注意しておきたいかな。


壱季・深青
電幻の蝶…これはこれで綺麗だけど…
本物には敵わない、ね
女の子たちが…光でおびき寄せてくれるから
…俺は攻撃に専念する

残骸を盾にしたり…足場にしながら…立ち回る
狙いを…定めて……あれっ?消え…た?
そう…それなら俺は…目を閉じ…耳を澄ませ
…精神を研ぎ澄ませる
音は…消せていない…はず
(【野生の勘】【第六感】【聞き耳】を…使う)

「我が身纏いし烏羽は、黒曜の導にて彩を放つ…」
黒曜の導【猩々緋】で…攻撃力を上げる
身近に聞こえた羽音…それを渾身の力で…叩く!

催眠とかで…敵に攻撃されそうになっている
…仲間がいたら…優先で庇う
仲間たちに…手出しさせない、よ

(「…」「、」は適当で可)(アドリブ可)


カイム・クローバー
【天窓事務所】にて行動

宇宙の蝶ってのがどんなモノかと思ってたが、思ったより蝶の外見してるじゃねぇか。
数が多いのと幻覚や催眠っつー絡め手を使われるのは少々厄介なトコだな。
女性陣が引き付けはやってくれるそうだ。さっきのスシでは金が足りなくて情けない所を見せたが、ここらで一つ、挽回しとくか。

【SPD】
二丁銃をメインで戦う。【二回攻撃】【属性攻撃】【なぎ払い】【一斉発射】を併用しながらUC。
集団に効果を持ってるから、範囲の敵を一斉に排除出来る。銃っていう武器の性質上、後衛になる。
前衛の仲間に【援護射撃】入れながら、数を減らしていくぜ。
攻撃には【残像】【見切り】【第六感】で対処だ。


清川・シャル
【天窓事務所】の皆さんと

光でおびき寄せですね
閃光弾で如何でしょう?
ぐーちゃん零は12連式なので、1発放って消えかけるまで待ち、また発射を繰り返します
途中当たっちゃったらまぁラッキーくらいで。
範囲攻撃で光源広く取れないかな
あっ皆さん光に目をやられないで下さいね?
12連で足りなければクイックドロウでもう一度

もう充分なら、援護射撃に入ります
少し距離をおいてUC
ちゃんと敵だけに当たるように念動力で操りますね
敵のUC対策かぁ…
味方が攻撃してる対象のみ攻撃する、とかでなんとかならないかな?

あとは第六感と野生の勘でいい感じになんとか!
敵の攻撃には見切りカウンターで対応です



 港を離れ、小さく遠くなっていくジ・アクアリウムにヨシュカはお気をつけてと、大きく手を振り返す。
「さて、ここからはお仕事の時間です」
「おいしいおスシもご馳走になったし、もうちょっとお付き合いと参りましょう!」
 ウィルマが満足気にお腹を押さえつつ、腹ごなしとばかり気合を入れる。
「宇宙に来るのは戦争以来ですが……」
 周囲をよく見てみれば、発着場の広場には幾つもの亀裂が走り、何か大きなものがぶつかった跡のようなクレーターができていたり。瓦礫だらけの景色は、かつて此処で熾烈な戦い――或いは帝国軍の一方的な蹂躙だったかもしれない――が起こったということをありありと伝えている。
「この場所では、相当な悲劇があったみたいだね」
「ええ、ウィルマさま……荒れ果ててしまっていますが、今日わたし達が戦うには、此処にこのコロニーがあってくれたことは幸運だったでしょうか……」
 ヨシュカが視線を巡らせた先。見慣れた紅の着物の女性がひとり、ぴょーんと飛び上がって……弱めに設定した宇宙服の疑似重力機能で、ふわ~と降りてくるのを繰り返していた。
「……穂結先輩、何してるんですか?」
「はっ! ええ、その、わたくし宇宙は『初上陸』なのです」
 不思議な感覚ですねぇ、と言いながら再びぴょん、とジャンプしてみる。いつも通りに戦うために、身体を慣らしておくことは重要だ。しかし、この感覚がちょっと癖になってしまっているのも事実だったりした。
「うっかり宇宙の彼方まで跳んで行っちゃわないよう気をつけてね」
「だ、大丈夫です……っ! こほん、では早速、蝶を呼び寄せましょうか」
 神楽耶は本体たる太刀を抱くようにして精神を集中させると、その身に神霊を降ろす。彼女の姿が陽炎のようにゆらぎ、暗い朱の炎が立ち上って彼女を覆った。
「とにもかくにも、光らせれば良いんだね」
 言ってウィルマが手の中に作り出したのは、ケミカルライトのような人工的な光を発するケーブルのレプリカだ。それはしゅるしゅるとどこまでも伸びて、伸びて……
「ウィルマが……すごいことに……なってる」
「結構たくさん作れるものだね」
大量のケーブルがぐるぐるとウィルマの周りを取り囲んで、何かが召喚されそうな円陣を作っていた。ちょっとかっこいいかもしれない。光量も申し分ないようだ。
 続いてシャルが、『ぐーちゃん零』ことド派手なピンクの12連装式グレネードランチャーを構える。
「この閃光弾は如何でしょう?」
 ほぼ天頂へと向けて先ず一発、撃ち上げる。どこまでも飛んで行ってしまわないように念動力を使って、ある程度で減速させる。
「花火みてーだな! たーまやー!」
 カイムは楽しげに見上げつつ、二丁の愛銃に弾を込める。ヨシュカは短刀、深青は漆黒の刀とそれぞれの獲物に手を添えて、臨戦態勢を取った。
 こうして事務所の面々は女性陣が誘引役、男性陣が迎撃役ときれいに分かれて蝶たちと対峙する。

「――! 来ました……!」
 ヨシュカの声の方へ猟兵達が目を凝らすと、宙の闇の中に混ざる青色。一直線に猟兵達が放つ光の元へ向かってくる。
「宇宙の蝶ってのがどんなモノかと思ってたが、思ったより蝶の外見してるじゃねぇか」
「これはこれで綺麗だけど……」
 銀河帝国には、中々繊細な仕事をする技術者が居たらしい。機械でありながら蝶と違わないフォルムと、羽ばたき方も少しゆっくりだがよく真似ている。しかしその動きはやはり機械らしく、ゆらぎがなく常に一定だ。
「本物には……敵わない、ね」
 足場の近くまで近づいてきた所で深青と、ヨシュカが駆け出す。深青は割れて隆起している瓦礫を使って駆け上り、跳躍して蝶たちへ肉薄する。刀の鯉口を切り――
「……あれっ? 消え……た?」
 途端に蝶の姿が点滅したかと思えば、狙い定めた個体が見えなくなった。気配を探ろうと目を閉じて、気付く。
 空気のある場所でなら、蝶の中枢部が発する稼働音と、かしゃかしゃと小さな羽ばたきの音が聞こえたかもしれない。
 猟兵同士の会話は宇宙服と共に支給された無線機で、支障なく行うことができている。だが敵との間は真空で、音の伝わるものはなく。その点もこの敵の厄介な所であった。
 それでも深青は重ねた戦闘経験と、静かに研ぎ澄ませた精神で以て――機械達が発する僅かな熱。光学迷彩でも完全には消し去ることはできない羽ばたきの軌跡。閉じた瞼の裏に、見えないその姿を見る。
「――我が身纏いし烏羽は、黒曜の導にて彩を放つ……」
 猩々緋色の羽が舞う。宇宙の闇より昏い漆黒の刀を閃かせたそこには、中央のボディ部分をきれいに両断された姿の蝶が浮かんでいた。
「お見事です、壱季先輩! しかし音に頼る作戦は、難しそうですね」
 ヨシュカは瓦礫の影に隠れ蝶の様子を伺う。チカチカと翅を点滅させて、どうやら催眠攻撃をしてきているらしい。
「さっきは情けない所を見せたが……ここらで一つ、挽回しとくか! 弾代はツケとくぜ!」
 カイムの双魔銃、オルトロスが咆哮を上げた! 目にも留まらぬ速さの連射で、蝶たちが催眠幻覚を施す間もなくパリンパリンと次々撃ち抜いていく。蝶たちの緩慢な動きでは到底避けることはできない、端からまとめて薙ぐような銃弾の嵐。
 弾を全て撃ち尽くしたときには、羽ばたいている機はもう殆ど残っていなかった。
「ヨシュカ!」
「――はい!」
 瓦礫の影から軽快に飛び出して、隊列も何もなくなった蝶の生き残りへ、逆手に構えた『開闢』を振るう。死角からの一撃をまともに喰らって青い翅が砕け散った。
 戦争が終わっても尚、あてなく飛び続ける蝶たちは何を思うのか。
「もう、止まってもいいんじゃないかな」
 彼らの旅の終着点を此処へと定める覚悟と共に、淀み無く刃は閃く。

 蝶を斬り裂いたヨシュカの視界の向こうに、各々に光を纏う女性陣の姿と、回り込んでいた別働隊と見られる一群が迫っているのが見えた。同時にカイムの見上げる空にも第二波と思しき群れが現れる。
「穂結先輩! そちらにも来ています!」
「チッ……数が多いな」
「……! こちらは何とかします、男性陣の皆様は本隊に集中してくださいな」
 任せるばかりではいけないと、神楽耶は纏った炎を新手の蝶へ向けて撃ち出した。蝶はウイルスの鱗粉を飛ばす隙も与えられず、炎に包まれて灰になる。
 飛んで火に入る夏の虫――そう言えばサムライエンパイアもそろそろそんな時期ですねと、神楽耶は何か感慨深げにその様子を眺めた。
「全く問題ありません、というか私の分も少しは残しておいてください」
「おっと、これは近くにいると危険だね? 退避退避」
 ウィルマは長いケーブルを背負ってずるずると引きずりながら、格納庫の軒下へと避難する。蝶たちの催眠に掛からないためにも、近くで見ないことが一番確実だ。
 閃光弾を撃ちながらウズウズした様子だったシャルの全武装が展開され、一斉に点火する。召喚したスピーカーとアンプからは迸る熱光線。シャル本人はアサルトライフルを30発撃ち切って、念動力まで用いて見えている蝶たちに着実に弾を当てたかと思えば、高下駄のジェットで飛び上がって桜色の金棒『そーちゃん』をチェーンソーモードで振り回す。
 怒涛の制圧力を持つ攻撃の波に、姿を消していた蝶たちも巻き込まれて粉々にされていった。
「オイオイ派手にやるなあ、シャル!」
 カイムは戦鬼と化した婚約者へヒュゥと口笛を鳴らして、自身も銃のリロードを終えた。
 再びの攻勢。深青が前に出て、蝶たちの視界を遮りつつ集団を撹乱し、その影からヨシュカが躍り出て斬り込む。逃れたものがいれば、すかさずカイムの銃弾がそれを仕留める。
 怪異退治の専門家達の鮮やかなチームワークに、機械の蝶たちは為す術なくその数を減らしていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

明日知・理
さゆり(f00775)と。
アドリブ歓迎

-
生憎俺には蝶を誘き寄せる手段がない故、
常と同じく討伐に集中する。
俺は俺の出来る事を、全身全霊で取り組むだけだ。

戦闘時にはさゆりを最優先に庇いながら刀を振るう。
攻撃は…得物で受け流せればそれが一番いいが、難しい様なら受ける。致命傷以外はどうってことない。
催眠に関しては、僅かでも抗えるのならわざと自身を傷付けて自我を取り戻す。

さゆりと息を併せ、ユーベルコード『華仙』を発動。
暗殺技術による死角からの一撃、更に範囲攻撃を試みる。

「──眠れ」

我が不可視の刃にて、少しでも多くの蝶の命を、断つ。


四・さゆり
【明日知・理(f13813)】と一緒よ。
アレンジ大好き。

ーーー

お魚の次は、ちょうちょ。
随分と豪華な宙の旅じゃない。

ええ、遊んだ分は働きましょう。
マコ。

ちか、ちか。誘導は任せましょう。
わたし、潰す方が得意なの。

赤い傘が届く先は、
青い翅を、散らしてあげる。

レディを守る、その意欲は褒めてあげる。
けど。
マコ、戦いの時はすこしおバカなのよね
無茶ばかり

そうね、…嫌いじゃないわ。

けれど、
わざわざ傷をつくる必要もないでしょ
あんたが戻ってこれないのなら、
わたしが連れ戻してあげる、から

良い男を傷物にしないでちょうだい
その翅、

ええ、毟ってあげる

青が散って、きれい

ね、きれいなものを壊すのって、
どうして、
楽しいのかしら



 コロニー跡のあちらこちらに分散した猟兵達が思い思いの手段で光を灯し、あるいは電波を飛ばして蝶たちを誘う。それらにしっかりと惹かれて来た蝶の群れは、猟兵達の存在を認識すると隊を分け、それぞれの標的へ向けて攻撃を開始した。
 外壁を歩き警戒を行っていた理とさゆりにも、群れの一団が迫っていた。
「来たわね、ちょうちょ」
「誘い込むのは皆が上手くやってくれたらしいな」
 永遠の夜の闇の中、硬質な青がはらはらと舞っている。お魚の次はちょうちょも見られるなんて、随分と豪華な旅ね、とさゆりは赤い傘をくるん、と腕で回す。
「俺達は俺達の出来る事を、全身全霊取り組むだけだ。……やるか」
「ええ、遊んだ分は働きましょう。マコ。それに」
 ――わたし、潰すほうが得意なの。
 少女の赤い傘が挑発的に空へと突きつけられる。

 二人は一旦、外壁に空いた穴から侵入してコロニー内部へと蝶たちを誘い込む。近接主体の二人が遠距離攻撃主体の蝶たちへ肉薄する隙を作るためだ。
 宇宙服の疑似重力を調整すればくるりと180度ひっくり返って、コロニー内部の天井が今度は二人にとっての地面となる。見上げれば、此処はコロニーのメイン都市部だった場所だろうか、立ち並ぶ摩天楼の廃墟を空撮しているかのような光景が広がっていた。
「不思議な景色ね」
「此処もゆっくり観光してみたい所だが、――来るぞ」
 理がさゆりを後ろに守るようにして、今入ってきた穴の前で刀の柄に手を掛ける。猟兵の気配を追ってきた蝶たちが一斉に、穴から噴き出してきた。
 一閃、理が抜き払った刀で何体もの蝶を同時に斬り砕く。続いてさゆりが踏み込んで、乱暴に振り回される赤い傘がまた青い翅を砕き散らした。
 指揮系統を乱された蝶の群れは、かろうじて二人から距離を置こうと飛びながら隊列を組み直す。一部の蝶は周囲の景色の色を纏って透過し、一部は敵を撹乱するべく青い翅を激しく明滅させはじめた。
「――!」
 咄嗟にさゆりを背に庇って遮ったが、自身はそれを直視してしまった。理の視界がぐにゃりと歪んで、青く、染まる。
 ――、
 ――海の底?
 何故か頭上には夜の星空が見えていて。敵の姿も、さゆりの姿もない。わかっている。これは敵のシグナルが創り出した幻覚だ。だが、急いで復帰しなければ。刀の刃を、腕に添わせる。青い景色の中に、ぴりっとした痛みと朱が散って――。 
「――マコ。……マコ! 」
 刀を持つ手を、誰かが掴んで止めていた。
「……さゆり」
「戻ってきたのね? ……レディを守る、その意欲は褒めてあげる、けど」
 また生傷を作ったわね。態々自分で。となじる。幸い腕の傷はごく浅く済んでいて、大きめの絆創膏でも貼っておけばすぐに治る程度だろう。
「おバカ」
 嫌いじゃないけれど。
「すまん……奴らは?」
「消えたわ。でも、近くにいるはずよ」
 オブリビオンは、猟兵という目的を前にまず逃げることはない。おそらく光学迷彩は蝶たちが隊列を整えるための時間稼ぎで、あまり長時間使えるものではないはずだ。
 目を凝らす。景色の中の一点が、一瞬、不自然に揺らいだ箇所があった。
「……囲まれてるな」
 自然、背中を合わせた。一呼吸ののち、二人は地面を蹴る。直感に従い、赤い傘を刺突した先には確かな手応えがあった。
「――眠れ」
 闇色の刀が横薙ぎに振るわれて、見えない斬撃が飛び見えない敵を斬る。
 砕かれた破片が見えるようになるのと同時、攻撃の外れた蝶たちのステルスにもノイズが走った。それを見逃さず、さゆりはもう一度傘を叩きつける。ばりん、と翅を毟るだけでは飽き足らず。青が粉々に砕けて消えるまで、叩いた。
「良い男を、傷物に、しないでちょうだい」
 何度も。きらきらと青が散る。
 幾ばくかの後、辺り一帯には青い残骸が無数に散らばって漂っていた。蝶たちは漸く、役目を終えた。
 きれいに散ったから、許してあげましょう。
「ね、きれいなものを壊すのって、どうして楽しいのかしら」
 艶っぽく微笑むさゆりの横顔を、理はふうと大きく息を吐いて眺める。
 それはきっと、決して元に戻すことができないからだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リル・ルリ
■クロウ/f04599
アドリブ歓迎

嗚呼、楽しかった!
水槽の中を自由に游ぐのも楽しいんだね
クロウのおかげだね

綺麗な、蝶
だけれどこれはここにいてはいけないんだ
クロウの表情に気を引き締めて
ゆうらり泳ぐ君の横
前は君に任せるよ
僕はクロウの背中を守るから
ふふ、僕だって頼りにしてるよ

守られる分守らねば
クロウは鏡、篝火のような炎も、きらり綺麗に煌めくからいっぱい寄ってきてしまいそうだ
まとわりつく翅とめる『魅惑の歌』を響かせて
催眠に幻覚が惑わすならば虚構を破る歌を――『癒しの歌』で清めよう
そんな夢はいらないでしょう?
現実はこっちだよ

歌唱には鼓舞をのせて、クロウへ届く攻撃は尾鰭飾りからの水泡(オーラ防御)で防ぐよ


杜鬼・クロウ
リル◆f10762
アドリブ◎

船の水族館も大分満喫したしこっからは本腰入れるぞ、リル
前は任せな
俺もお前の歌、頼りにしてっからよ
上手く蝶を誘き寄せられるか分からねェがヤってみるか
あんま俺から離れンなよ

過去の遺恨残る都市眺め気引き締める
足元注意
コロニー跡の奥へ
玄夜叉へ照明の様な優しい炎を灯す(炎で蝶を誘惑
物陰から蝶の音や気配察知後はリルを後退させる(第六感・聞き耳

魔の紅焔に変化させ先制攻撃・属性攻撃
剣で蝶を真一文字で斬る

【煉獄の魂呼び】使用
禍鬼は棍棒で敵を蹴散らす
霆で援護
遠距離攻撃する敵の動向見てリルへの被害は阻止(武器受け・かばう
2回攻撃で灼熱の如き炎で極力蝶を減らす

幻覚と催眠は厄介だなァ、クソ…



「嗚呼、楽しかった!」
 リルは大きく伸びをして、大きな水槽の中で出会った魚達を思い出しながら、ふわりと広げた両手の先を眺める。水槽の中でも、どこへでも好きなところへ自由に游ぐことができるのは楽しいものだった、と。
「クロウのおかげだね」
 尾羽の飾りを揺らしながら振り向いて微笑む彼に、クロウもまた微笑みを返す。だがすぐさま、きりと表情を引き締めた。
「さあ、こっからは本腰入れるぞ、リル。……あんま俺から離れンなよ」
 リルも力強く頷き返す。水と生き物たちの豊かな世界を存分に堪能した二人は、今度は過酷な宇宙の世界へと泳ぎ出した。
 他の猟兵達と分担する形で、港からコロニー跡の奥、居住区のあった区画の方へ。クロウが先導して、足場を確認したり漂う瓦礫を除去しながら進んで行く。建物が風化することも、草木が生い茂るようなこともない宇宙の廃墟は、過去の凄惨な出来事の記憶をただそのままに遺している。
「寂しい場所、だね」
 かつては此処も、大勢の人々が暮らし栄えた都市だったのだろう。ガラスのような、罅の入った透明な外壁に、リルはそっと手を添わせる。
「何もかんも、こんな宇宙の片隅に置き去りとはな……」
 広すぎる星の海のこと、仕方のないことだがとクロウも帰る者の居ないからっぽの街並みを、気の毒にと眺めた。
「せめて今一度、明かりを灯してやるとするか」
 戦いに支障なさそうな広場に出た所で、クロウは背丈以上もある巨大な魔剣『玄夜叉』を真っ直ぐに掲げ、炎の精霊を纏わせる。黒い刀身を駆け上がる炎は強く、しかし優しい煌めきを放ちながら辺りを照らした。
 それを見届けると、剣を持つその背中を守るようにリルが背を合わせ並んで、すうと深呼吸する。
「僕も、せめて歌うね」
「お前の歌、頼りにしてっからな」
「ふふ、僕だって頼りにしてるよ」
 やがて、温かな光に引き寄せられたようにふらふらと、青い蝶の群れが割れた天井の向こうから、ゆっくりと降りてきた。

「リル、少し下がれ」
 音もなく現れる敵の姿を見留めたクロウは、剣を構え直して纏わせた炎の姿を一変させる。先程までとは全く異なる紅く、禍々しい炎だ。
 蝶たちは二人へ近づきながら、羽ばたきを強めたように見えた。目視できないが、どうやらウイルスの鱗粉を降り撒いている。させるかとクロウは跳躍して、大きく剣を横に薙いだ。
 熱を帯びて、斬撃が蝶たちを一閃のもとに断ち砕く。
「……綺麗な、蝶」
 リルは宙を泳ぐ青い蝶の群れを見てぽつりと呟く。すると広場の隅の方で、何者かが動く気配がした。蝶たちが翅から零す鱗粉が、動かなくなっていた戦闘用ドローンの腕だけを動かしたのだ。
「――リル!」
 腕の先から放たれたレーザーを、間一髪滑り込んで来たクロウが刀身で受ける。
「クロウ! 大丈夫!?」
「ああ、問題ねぇよ。連中の遠隔操作か、厄介だなァ、クソッ……」
 ――やっぱり、あれはここにいてはいけないんだ。
 リルは決意を込めて唇を開く。

 ―― ゆらり 蕩ける めざめの朝 ――
 
 宇宙に、人魚の歌声が真空を超えて響き渡る。

 ―― 泡沫に消える痛み、ありのまま すべて包みこんで抱きしめてあげる
 愛を灯す歌、君に 癒しの灯火を ――

「……君達の世界は、既に終わってしまったんだ。もう静かに眠っていいんだよ」
 仮初の命を持ったドローンの腕が、がたがたと震えて、再び動かなくなる。虚構を打ち払い浄化するリルの癒しの歌により、撒かれた鱗粉はその効果を失っていった。
 現象を理解できず蝶たちの動きが動揺するようなものになったのを見て、クロウは今だと、魔剣を突き立てる。
「――杜鬼クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ!」
 彼の頭上で、稲妻を迸らせながら空間が渦を巻く。
「贖罪の呪器……混淆解放(リベルタ・オムニス)――血肉となりて我に応えろ!」
 逆巻く煉獄の門から、赤錆色の棍棒を伴って巨大な禍鬼が現れる。
 怒りの衝動のまま、目につく者すべて薙ぎ倒さんとする勢いで棍棒が振るわれると、蝶たちは逃げ惑う間もなく塵と砕かれる。鬼の手を逃れた蝶にも、雷霆が降り注いで回路を焦がした。
 再びクロウが魔剣を構える。柔らかな歌声が背に届く。呼吸の波長を合わせれば、灼熱の炎はさらに煌々と燃え上がって。彼の剣が捉えるものは炎に包まれ、欠片も残さずに燃え尽きていった。


 忘れられた都市に、再び生命の炎が灯った。
 その炎は暗闇に道を示す篝火となり、やがて彼らと、彼らが立ち向かうべきものとを引き合わせる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『彷徨する災厄』メルビレイ』

POW   :    星覆う巨躯
【満たされる事のない飢餓感】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【宇宙船や星をも飲み込む超弩級の巨体】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    星砕く巨躯
【満たされる事のない飢餓感の暴走】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【防御ごと粉砕する超弩級のヒレ】で攻撃する。
WIZ   :    星呑む巨躯
【超弩級の存在への戦慄】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【星をも飲み込む巨大な口】から、高命中力の【宇宙船をも捉える巨大な舌】を飛ばす。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●すべてを喰らうもの
 蝶の群れと戦っている最中にも、猟兵達は近づいてくるその存在に否応なしに気付かされていた。

 ――オオォォオォォォォ…………!!

 風も音もない空虚な世界で、確かに肌を、魂を直接びりびりと震わせるような、圧力とでも言うべきものだろうか。
 『災厄』メルビレイ。
 クジラだ、と誰かが言った。
 宇宙ドラゴンに類されるがその姿は、肥大化した頭部に歯を持つ巨大な口、海を掻き泳ぐようなヒレ。ジ・アクアリウムにも近縁種らしきものが泳いでいた、マッコウクジラによく似ていた。
 だがその大きさは比ぶべくもない。マッコウクジラもジンベイザメも軽く一呑みにされてしまうだろう、それは絶対的な捕食者の姿だ。

 追いかけていた獲物を奪われたことに対する怒りか、新たな獲物を見つけたことへの喜びか。
 咆哮を震わせ、『災厄』はコロニーの残骸ごと猟兵達を喰らい尽くすため、貪欲に大きく口を開き迫った。

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 第3章のプレイングは、6/20(木)午前8:30以降から受付させていただきます。
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御形・菘
なんとも見ごたえのある巨体だな! しかーし、妾が臆すると思ったか?
あらゆる悪は平等にボコる、図体の大きさは関係ない! 妾こそが真の災厄よ!

遠くからチクチク叩くなど面白くない、妾がするのは真っ向勝負よ
象と蟻ならぬ、蛇が鯨に噛み付くお話になるな
お主にとっては塵芥であろう、だがあえて目立つこの位置に陣取った妾の攻撃が、どれほどのものかをその身で存分に理解せい!
どこでも狙い放題のデカい頭に、全力で左腕をラッシュを叩き込む!
牙をブチ折るのも楽しそうだな!

呑み込まれても焦りはせんよ
デカブツとバトるシチュでの定番、腹の中からブチ破るのに挑戦できるなど最高であろう!
宇宙船の瓦礫をぶつけていくのも面白そうだ!


コルチェ・ウーパニャン
これも、クジラさん! ……世界にはもーっとおおきなクジラさんもいるんだな…
…おっきすぎない!?

すごーいって思うけど、畏怖とかのムズかしい感情はコルチェまだよく分からない!
……けど、心を動かさないとかも、ちょっとムリ……!
相手の動きをよーく見て、
ブラスターからの光線発射の反動で移動&回避!
ブラスターの光に釣られてくれないかなあ!?

なんとかクジラさんへ近づいて、コルチェとっておきの出血大サービス、特売シールをペターン!
シールから飛び出す氷の津波でガオーーン!!!!
クジラさんおっきいから、シールもはがれにくいんじゃないかな!
貼れたらコルチェもちょっと離れなくちゃ…!!
食べられちゃうのはイヤだよう…!


コノハ・ライゼ
【空】

あっは、晩餐会とか浪漫に浪漫を重ねたカンジ?
早々に希望が叶うなんてラッキーだコト
先ずは美味しく調理してあげよう

鯨に「柘榴」を刺しこみ『料理』の如くその身を削いで
『2回攻撃』で【月焔】喚んだら『傷口をえぐる』ようしっかり焼くネ
焼き加減はどうかなナンてついでにちょっと齧って『生命力吸収』

うーん炙りも刺身も美味そうで目移りしそう
お味の程は?と刃と焔を振るう合間に聞いてみたり

おっと踊り食い注意、だっけ
その大きな口を前にしてもわくわくと期待に高揚するだけ
美人をいたぶるなんて良くないなあ、と自ら口に突っ込む勢いで
一つにまとめ威力増した焔を舌に撃ちこもう
鯨のタンも、美味しいと思う?


神埜・常盤
【空】

さっき幽君が言っていたなァ
――自分より大きいものを食べるのは浪漫って
僕も同じ気持ちだとも
巨大鯨をメインディッシュに、綺羅星に囲まれた晩餐会を始めようじゃないか

夜王より給わす喝采を発動
氷の夜光虫をメルビレイの周囲に発生させよう
さァ、凍り付いて仕舞え
お前は身も厚いし、良い刺身になるだろう

戦慄? 極上の獲物を前にとんでもない!
僕はただ湧き上がる食慾に胸躍らせるだけさ
踊り食いされる趣味も無いので
舌にはマヒの霊符を投擲し動きを封じるよ
美人を虐める悪い子に仕置を呉れてやろう

鯨のタン良いねェ、喰い甲斐が有りそうだ
暗殺技能活かし隙見て敵に接近
吸血でガブリと味見させて貰おう
ふふ、新鮮な血でとても美味いとも


絢辻・幽子
【空】
えぇ、浪漫。おっきな浪漫。
星をも飲み込む鯨なんてめったにありつけないわ

ときちゃんすごーい、冷え冷えできらきらねえ
美味しく保存できそ
さあさあ、炙って炙って赤い糸で飾ってあげましょう
コノちゃんはさすがよねぇ……お料理の腕見習いたいわ
『ロープワーク』『傷口をえぐる』を使いつつ暴れたって逃がしませんよ
ねぇ、あなたは美味しい鯨かしら?『生命力吸収』で味見を

防御はお人形さんを盾にしましょうか
あぁ、痛い痛い、悪い鯨さんねぇ?
……あら、おふたりも美人さんよ?なぁんて。

くじタン……珍味っぽそうね?
食べる趣味はあっても食べられる趣味はないわ
踊り食いなんてごめんよねぇ。

※真の姿は尻尾が4本と、狐耳が出現



 『災厄』は大きな口を開け――手始めに味見でもするように、コロニー跡の発着場へと喰らいついた。突き出た滑走路がいくつも纏めて齧り取られて、メルビレイの口の中でばりばりと咀嚼される。
「わああ、あ、危なーい!!」
「はーっはっは! 大迫力の映像が撮れたな!? センセーショナル過ぎて配信停止にならないか心配な程だ!」
 飲み込まれたかのように見えた撮影用ドローンの『天地』が、菘の元へと戻ってくる。
 滑走路の先端辺りで戦っていたコルチェと菘はギリギリまでメルビレイを引き寄せたのち、何とか最初の一口から逃れて、ぐわんぐわんと揺れる発着場を駆けていた。
「これも、クジラさん……!? いくらなんでも……おっきすぎない!?」
 振り返りながらコルチェは叫ぶ。水族館見学で随分と大きな海の世界とその生き物たちに出会ってきたが、その水槽で見かけたクジラの、さらに何倍何十倍にもなるだろうか。世界にはこれほどまでに大きなクジラさんもいるのかと、驚きに彼女の髪はみたびピカピカと光る。
「全く、なんとも見ごたえのある巨体だな! しかーし、妾が臆すると思ったか!?」
 菘が立ち止まり、メルビレイの真正面に仁王立ちとなって向かい合う。しゅるりと紅い蛇の舌を伸ばし、威嚇するように笑う。
「遠くからチクチク叩くなど面白くない……妾がするのは真っ向勝負よ!」
「ええっ、もういきなり!?」
「無理に一緒に来ることはないぞ、援護を頼む!」
「す、菘ちゃーん!」
 菘は勢いよく飛び上がると、メルビレイが齧りついた衝撃でばらばらに浮き上がったスクラップ達を足場としながら、その巨大な頭部へと接近していく。コルチェは慌てて愛用のブラスターガンを構えた。

「さっき幽君が言っていたなァ――自分より大きいものを食べるのは浪漫って」
 コルチェの後ろから声がした。振り返るとそこには、港の倉庫街方面からメルビレイを見付け、急ぎ移動してきた三人の猟兵の姿。
「えぇ、浪漫。おっきな浪漫」
 常盤の言葉にくすくすと笑いながら、幽子の姿はざわりと変化を遂げている途中で――頭部にはひょこりと狐の耳。尻尾はゆらり増えて4本に。薄く開いた物憂げな瞳は獲物を狙うように妖しく光を放っていた。
「星をも飲み込む鯨なんて。めったにありつけないわ」
「巨大鯨をメインディッシュに、綺羅星に囲まれた晩餐会を始めようじゃないか」
「あっは、晩餐会とか浪漫に浪漫を重ねたカンジ?」
 宙の色を映すナイフをくるりと手元で遊ばせて、これだけ大きければ、どんな部位も食べ放題、好きなだけ調理し放題だとコノハはぺろり舌舐めずりをする。
「た……食べるの!?」
 メルビレイの意識をできるだけ菘から逸らすべく、目元へ掠らせるようにブラスターを撃つコルチェが今度は三人へと驚きの目を向ける。敵を倒すことの比喩表現として『喰らう』などの言葉を使う者もいるだろう。だがこの三人においては、ほぼ大体言葉通りの意味で使っているのだ。
「ふふ、良かったらご一緒します?」
 楽しげに言いながら、三人も菘の後に続くように瓦礫を渡りメルビレイへと肉薄していく。
「これが、食べるか、食べられるかの、世界……!! ……コルチェも行こう……!」
 晩餐を共にするかどうかは、さておき。意を決したように、コルチェもブラスターを後方へぎゅぴーんと撃ち出して推進力とし、彼らを追いかけた。

 ―― グォオオオオォオォォ……!!!!
「ぬ、おおおォォ!!!」
 ――ドカァン!!
 一口目の咀嚼を終えたメルビレイの咆哮の中に、真正面飛び込んだ菘の左腕が叩きつけられる!
 それは一撃だけにとどまらず、二発、三発、間髪入れず、メルビレイの鼻先に無数にラッシュを叩き込む。
「あらゆる悪は平等にボコる、図体の大きさは関係ない! ――妾こそが真の災厄よ!」
 後方からブラスターの光線が飛んできて、メルビレイの意識は散らされている。しかしそれでもたったひとり、真正面からこの超巨大な敵へ立ち向かうという無謀とも言える菘の行動原理は、『映え』――自身の配信動画を如何に盛り上げられるか! そのブレない志が、彼女の腕に尋常でないパワーを宿しているのだ。
 何度も頭を滅多打ちにされ、メルビレイが身を捩る。
「お主、その程度か!? 象と蟻ならぬ、蛇が鯨に噛み付くお話になるな!」
「どうせ噛み付くなら、美味しくいただけるように手を加えるのはどう?」
 軽やかに瓦礫を蹴って。暴れるメルビレイの頭に取り付いたコノハは『柘榴』を素早く表皮に刺し込む。ドラゴンというだけあって非常に分厚く強靭だが、鱗のない表皮はやはりクジラの方に近いかもしれない。料理人の勘が筋を捉えて、両手の刃が大きく深くえぐる。顕になった赤身に、白い焔が飛び込んで焼いた。
「焼き加減はどうかナ?」
 炙った身をナイフで削いで、ぱくり。柔らかくて濃厚な味わい。これはいける。ベーコンとかにしたら美味しいかもしれない。
「お主、これを食っているのか!? 『食べてみた』系動画配信者か……!」
 宇宙船の残骸をメルビレイに投げつけてぶつけながら、菘はコノハの行いに目を丸くする。
「――忌まわしき我が権能の一端、とくとご覧あれ」
 同時、常盤はひらり、優雅に手を掲げて夜光虫を喚び出していた。美しく青く光る群れが、ひとつの生き物のように宇宙空間を泳いでメルビレイを襲う。その体表に貼り付いた途端、夜光虫達はぴしりと弾けたように凍りついた。
「ときちゃんすごーい、冷え冷えできらきらねえ」
「コルチェもとっておき、出血大サービス!」
 ブラスターで飛んできて追いついたコルチェが、そのままの勢いで『特売』と書かれた超大判シールをぺったん! とメルビレイに貼り付ける。するとシールから氷の津波がガオーン! と噴き出して周囲を凍結させていく。二人の氷はメルビレイの鼻頭から口の一部を固めて、一時的に口を閉じられなくしてしまった。
「しっかり冷凍できたし、鮮度もバッチリだネ」
「身も厚いし良い刺身になるだろう。でもまさか、特売品になってしまうとはなァ」
 およそ戦場と思えない愉快げな笑いが起こる。メルビレイも宙を掻き、猟兵達を捕まえるべく舌を伸ばそうとするが、標的を絞ることができないでいた。この猟兵達はこの巨体を前にしても、粒ほども恐怖の感情を抱いていない、どころか、動画撮影やらダイナミック・スペースジビエやらを大いに楽しんでいるのだ。
 ほぼ消去法のような形で、メルビレイから急ぎ離脱しようとするコルチェへと、半開きの口から巨大な舌が伸ばされた。
「た、食べられちゃうのはイヤだよう……!」
 慌ててブラスターで回避を試みるコルチェの目前へ、割り込んだのは幽子の球体関節人形『壱の子』。
「踊り食いなんてごめんよねぇ。……あぁ、痛い痛い、悪い鯨さんねぇ?」
 人形を捉えて締め付ける舌が引っ込む前に、灰色の狐火がぶつかって爆ぜた。そこからさらにしゅるりと赤い糸が拡がって、舌を縛って引き留める。
「お、鯨のタンか。良いねェ、喰い甲斐が有りそうだ」
 護符を貼ってさらに動きを封じると、常磐はギラリと目の色を変え牙を剥いて――豪快にがぶりとその舌へ噛み付いた。赤が噴いて、宙に散っていく。
「くじタン……珍味っぽそうね?」
「ふふ、新鮮な血でとても美味いとも」
「美味しい? オレもタン味見したーい」
 メルビレイの頭上から降ってきたコノハが飛び込みざま、月焔で火を入れる。コノちゃんはさすがお料理上手ねぇなんて言いながら、幽子もしっかり味見していたり。ちなみに鯨の舌はさえずりと言い、上質な脂がのっていて非常に美味であるという。
「皆、お腹壊さないのかな……?」
「身体を張ったパフォーマンスだ、妾も負けておれんな!」
 首をかしげるコルチェと、再び撮影ドローンと共に意気揚々正面へ飛び込んでいく菘。
 ――彼女の動画は後にジ・アクアリウムで人気を博し、資料用アーカイブとして保存されることとなり……また同船ではクジラ系生物の料理の研究に若干力を入れるようになったとか、ならないとか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨシュカ・グナイゼナウ
【天窓事務所】名前前半+さま 穂結先輩 壱季先輩

お お き い !
こんなに大きな鯨初めて見ました!というか鯨を初めて見ました!魚?動物?
竜田揚げにすると美味しいときいて…雑食だと美味しくないのですか?それは残念です

穂結先輩が囮になっている隙に、成る可く近くまで近づいてUC【針霜】を発動
1089m範囲があれば足りるでしょう。鋼糸で【串刺し】そのまま糸を網のように絡めて
【地形の利用】し足場に固定。【破壊工作】で切り刻むとまでは行きませんが、多少動きは大人しくなる筈です
イメージは鯨漁?

トドメは頼もしい同僚たちにお願いをして


清川・シャル
【天窓事務所】の皆さんと

みんな貴方を食べたいんですって。
捕鯨ですって。いいです?
聞いてもNOですよね〜知ってた。
いきます。

氷の足場を作って、地形の利用で頭までジャンプで飛んで行けないかな…
頭に乗れたらラッキー的な。

そーちゃん(なぎ払い、範囲攻撃、衝撃波、鎧無視攻撃)でぶん殴り!
UCいっけー!
ヒットしたらチェーンソーモードに切り替えてめり込ませますね

眉間って急所って言いません?
野生の勘、第六感で見極めてSoul VANISHを撃ち込みましょうか

敵の攻撃には見切り、カウンター、咄嗟の一撃、で対応です

お土産に持ち帰るなら…シャル、斬りますよ。
妖刀ですけどいいですか?


穂結・神楽耶
【天窓事務所】
呼び方:苗字+様

わぁ大きい。
宇宙はスケールが違いますねぇ…。
あの様子だと雑食でしょうし、食べてもあまりおいしくないかと?

わたくしの武器では正面からだと効果が薄いでしょう。
囮を兼ねた『援護射撃』に徹します。
見目が似ているなら感覚器の類も鯨のそれと同一でしょうか?
掠めさせて確かめてみるのも一興ですが。

もっと狙いやすいところがありましたね。
口の中。それから、目。
生物に共通の急所であれば多少は通りもよいでしょう。
とはいえ倒すまでは至らないでしょうから。
止めはお任せしましたよ?


壱季・深青
【天窓事務所】の仲間たちと
「神楽耶先輩」以外はファーストネーム呼び捨て

鯨…食べたことはあっても…見るのは俺も初めて
デカい…あっ、竜田揚げは俺も…好き
ベーコンとか…えっ…美味しくない?
(ヨシュカと一緒に残念そう)

やっぱり…男子は食べ物の話に…なるね
仕方ない…食べ盛り…だし

とりあえず…倒さないと、ね。
漆黒の…俺の刀…闇の刃で…戦う、よ

漆黒の刀…そこに敵の姿を…映す
黒くても…ミラーのように…映せる
見切られやすいけど…仲間が…援護してくれる
ユーベルコード【黒曜奇譚】

そして…敵の動きを見切るために…「第六感」「野生の勘」
空中で…戦うなら…「空中浮遊」も使う
周囲の状況は…常に確認

(「…」「、」は適当で可)


カイム・クローバー
【天窓事務所】で行動

あれだけデカけりゃ肉は多少筋張ってるかも知れねぇが…それでも挑戦してみるのが男ってもんだろ!
竜田揚げ、タタキ、単純に焼き料理ってのも捨てがたいな

【SPD】
思う存分、叩き斬っていいよな?
俺は近距離戦で剣を使う。【二回攻撃】【属性攻撃】【衝撃波】を使用して叩き込む。
隙を見つけて、飛び乗る。あの図体じゃ純粋な攻撃は効果が薄いかもしれねぇが…頭部はどうだ?
頭部に乗れば【串刺し】【範囲攻撃】も含めてUC。
深々と突き刺せばあの体も地に落ちるだろ。【属性攻撃】で頭部から脳内に黒銀の炎を流し込んで体内を焼き尽くすぜ。
骸の海に消えないならヒレの部分でも土産に持って帰るか



 纏わりつく猟兵達を振り払うように、メルビレイは尾鰭を大きくしならせて宇宙を泳ぐ。一掻きでコロニー跡を飛び越えてしまいそうなその『災厄』が、次にその目に捉えたのは『事務所』の面々であった。
「お お き い !」
「わぁ大きい」
 ヨシュカと神楽耶が巨大な影を見上げて、ぽかんと呆気にとられた表情になる。
「こんなに大きな鯨初めて見ました! というか鯨を初めて見ました!」
「鯨……食べたことはあっても……見るのは俺も初めて」
「壱季先輩、鯨を食べたことがあるのですか! 竜田揚げにすると美味しいと聞きましたが」
「うん、竜田揚げ……美味しい……あとベーコンとか……」
 ジ・アクアリウムでスシを味わった面々は、アレだけ食べていてももうお腹が減ってしまったのか。やはりどうしても、思考が食欲の方に向いてしまうらしい。実はメルビレイの負っている傷の中に不自然に綺麗に肉がえぐり取られたような箇所があり、それは誰かが既につまみ食いをした跡だったりするのだがそれはまた別の話。
「あの様子だと雑食でしょうし、食べてもあまりおいしくないかと……?」
「えっ……」
「美味しくないのですか……?」
 神楽耶の冷静な意見にロコツにしゅんとする深青とヨシュカ。だが、カイムは拳と掌でばしん! と打ってニヤリと笑む。
「あれだけデカけりゃ肉は多少筋張ってるかも知れねぇが……それでも挑戦してみるのが男ってもんだろ!」
 完全に食べる気満々だった。
「た、食べるんですか……」
「仕方ないね……食べ盛り……だし」
 何事も挑戦だ、と頷く深青。神楽耶と顔を向き合わせてやれやれ、と言うように肩を竦めたシャルは、メルビレイへと向き直る。
「みんな貴方を食べたいんですって。捕鯨ですって。いいです?」
 ―――― グォォオオォォォ!!!
 互いに聞こえていないはずなのだが、メルビレイの口から明らかに怒りを帯びた感じの咆哮が放たれてコロニーを揺らした。問いかけたシャルは、ですよね~。と言いながら鬼の金棒をぶん回して構える。『災厄』がどう思っていようとも、初めからこの戦いは喰うか喰われるかだ。
 事務所で待つメンバーへのお土産第二弾獲得へ向けて、猟兵達は再び駆け出す。

「まずは、足場を作りましょう」
 シャルが金棒を、発着港の地面にドカァン!! と豪快に叩きつけた。衝撃で砕けた瓦礫がばらばらと浮き上がって、猟兵とメルビレイとの間に浮島をつくり出すと、そこへシャルとカイム、深青が次々に飛び乗ってメルビレイの頭部を目指す。
「――偽りなれど、彼の色は真となりて」
 神楽耶はすらりと刀を抜き指し向ける。複製された彼女自身――『結ノ太刀』が銀の刃を煌めかせ、浮島の間を擦り抜けながらメルビレイへと迫った。
 小手始めに、妖しく紫に光るメルビレイの目元へとそれを飛ばしてやると、メルビレイはのっそりと頭を振り払うような仕草をして、その動きだけで浮島に一つぶつかって砕いた。背びれの辺りまで飛ばしてみても、どうやら近しい反応をする。
「視覚はありそうですが、あまり目は良くはないのでしょうか……海の鯨のように、レーダーのような別の索敵能力があるかもしれません」
 お気をつけて、と無線越しに、メルビレイへ近づいていく仲間達へ呼びかける。刀へ気を取られている内に彼らはメルビレイの頭部へ取り付き、さらにヨシュカが砕けた足場の影を渡りながら別の滑走路へ降りて、メルビレイの腹近くまで潜り込んでいた。
「――穿て」
 片膝を付き地に這わせた手の十指から、静かに糸が伝う。数瞬ののち、メルビレイの腹の真下から糸が鋭く伸びて、その巨体に突き刺さった。分厚い肉を割いて通り抜けた細い糸はさらにぐるりと何重にも絡んで、滑走路へ縫い止める。この『災厄』に痛覚というようなものがあるか定かではないが、明らかに自身の危機を感じたようにメルビレイは藻掻いた。
「少し、大人しくしていて、くださいっ……」
 釣り人がヒットさせた獲物と駆け引きをするかのように、ヨシュカは歯を食いしばりながら限界ぎりぎりまで糸を伸ばしては絡めて、藻掻く巨体を抑え込んでいく。
「いっけー!!」
「オラァァ!!」
 足場から飛び込んだシャルは再び金棒を振り上げ、今度はその肥大化した頭へと打ち込んだ。インパクトを終えると金棒はガチャリと、チェーンソーの刃を顕にした姿へと変えて、分厚い皮をそのままぎゃりぎゃりと抉る。
 同時にカイムが黒銀の大剣を、飛び込んだ勢いで深々と突き刺した。災厄の血らしき赤が噴き上がって、二人の周囲に散っていく。
「このまま芯まで焼き尽くしてやるぜ! ……いや、タタキで食うなら焼き尽くすのはダメか!?」
「フカヒレならぬ、鯨ヒレだけ残しましょう」
「それだ!」
 カイムは突き刺した剣の刃から炎を迸らせ、巨体の内側から火炙る。じゅうと皮下の厚い脂らしきものが焼けて溶け出した。
「やっぱり……ちょっと食べてみたい……かも」
 深青が二人に続き跳躍して飛び込むまでの間、漆黒の刃がメルビレイの禍々しく、どこか虚ろな目を映し出していた。後方からは再び神楽耶の刀が飛んできて、今度は容赦なくメルビレイの眼球を切り裂いた。びくりと巨体が跳ねた直後に続いて黒曜の剣が振るわれて、メルビレイの頭部にざっくりと大きな裂傷を生み出した。

 ―― オォオオォォ……!!

 苦しみ叫ぶような咆哮があってから、ぐわ、とメルビレイの身体が迫ってきたように見えて、深青は弾き飛ばされないよう体表へ取り付き剣を突き刺す。
「様子が……おかしい」
「身体が膨らんでる……?」
 銛を打ち込むように、シャルが着物の袖の下からパイルバンカーを撃ち、メルビレイの眉間を穿ち捉える。炎を燃やし続けていたカイムも、周囲を警戒しつつ大剣へしがみつく。
「これ以上、さらに大きくなるんですか!? ……穂結先輩、こちらへ!」
「ええ! 本当に、スケールが違いますねぇ……!」
 ヨシュカの張っていた糸が突然めりめりと引っ張られ、ついに何本かがぶつりと切れた。神楽耶がぐらつく足元をとんと蹴って跳躍、ヨシュカの居る方の滑走路へと急ぎ降りる。練習の成果が現れている。
 思うように獲物にありつけず空腹に耐えかねたのか、この状況を脱するべくメルビレイはその巨体をさらに肥大化させようとしているらしい。身体をうねらせ藻掻きながら、その頭部は猟兵達が元々立っていた発着場の倉庫跡へ近づいていく。
「このままだとコロニーの廃墟に……突っ込む……かも」
「一旦、退避しましょう」
「待て! せめてヒレの部分だけでも確保だ!」
「……妖刀で良いですか?」
「俺も……手伝うね……」
 三人はそれぞれメルビレイの身体に突き刺していた獲物を抜き去ると、拡がっていく頭部を一気に駆け降りた。迫ってくるメルビレイの胸鰭へ跳び、三者三様に斬撃を繰り出す。胸鰭が大きく切り取られる。
 それでわずかに左右のバランスを崩したらしく、メルビレイがのたうちながら廃墟へと突っ込んで、がらがらと砕き瓦礫を呑み込みながら潜り込んでいく。
「……! 皆様、無事ですか!」
「おう、ヒレ剥ぎ取ってやったぜ!」
 揺れる足場を走りながら呼びかけるヨシュカの声に、快活に応えてカイム達三人が瓦礫の合間を降りてくる。大剣に旗のように戦果物が突き刺さっていた。神楽耶は安堵しながらその様子にふふふ、と笑って。
「皆様の食への執念……感服致します」
 文字通り敵の命を削り取って、猟兵達は大いに優勢だ。さらなる追撃を掛けるべく、彼らは陣を立て直して瓦礫を超え、『災厄』の背を追った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

杜鬼・クロウ
リル◆f10762
アドリブ◎

海獣のお出ましだなァ(予想以上のデカさに多少驚くも不敵の笑み
リル、コイツでラストだ
予兆は俺達猟兵が塗り替える
もうちぃっと俺に付き合ってくれや(玄夜叉構え呼吸整え
お前の歌を響かせる舞台は俺が作る(リルから貰った瑠璃色のブレスレットに触れ

前衛
服のチェーン引き千切り【無彩録の奔流】使用
段平の様な刀が鞭みたいに撓る(刃の長さが変形自在
敵の体を拘束し締め付けた後、地へ叩き墜とす(部位破壊
敵の攻撃は剣で武器受けか外套で見切り回避
リルが攻撃を食らいそうになったらかばう
リルが作った隙を最大限に活かし、
属性攻撃・2回攻撃で二章同様剣に炎宿し荒々しく十字斬り

災厄はさっさとお帰り願うわ


リル・ルリ
■クロウ/f04599
アドリブ歓迎

わぁ、大きい……鯨だ……
ぺろりと食べられてしまいそう、だけど
食べられるわけにも壊されるわけにもいかないんだ
そうだね
いこう、クロウ
僕らならきっとできる。予兆を、塗り替えよう

前へ出るクロウへ微笑んで
歌唱にのせるのは君を支える鼓舞
僕を守ってくれるの?ならば僕は、君を
オーラ防御の水泡で君を包んで守るよ
巨体に負けたりなんてしない
僕は僕の歌は負けない!
声を張り力を込めて歌うのは、『星縛の歌』
どんな攻撃も、星瞬くように打ち消していくよ
僕が隙をつくれば
クロウの刃が星の果てまでも届くから
どう?なかなかいい、こんびねーしょ、だと思うんだけど

そう
君が游ぐべき海はここじゃない
躯の海だ



 発着場を喰い砕きながら、居住区へ至る『災厄』。瓦礫の中から傷だらけの巨大な頭が現れた。
「わぁ、大きい……鯨だ……」
「海獣のお出ましだなァ」
 大きく揺れるコロニーの廃都市を、瓦礫の破片を避けながら二人は駆ける。見上げた先の巨大な口が、頑丈な筈の分厚い外壁をたやすく砕いて呑み込んでいる。現実味のないそのスケールには流石に驚いたが、これだけ叩き斬り甲斐のある敵もなかなか居ないだろう。クロウは目を細めにやりと笑みを浮かべる。
「ぺろりと食べられてしまいそう、だけど……」
 二人の今日の思い出も、明日からの未来も守らなければならない。失われた都市と共に奴の腹に収まってやるつもりなど、二人には微塵もなかった。此処でこの災厄は終わらせなければ。
「リル、コイツでラストだ。もうちぃっと俺に付き合ってくれや」
「そうだね。いこう、クロウ」
 凶兆を現実のものにさせるわけにはいかない。『災厄』を目前にして、リルが微笑むことができるのはひとりではないからだ。
 必ず守ると誓うように、自らの手首にある瑠璃色のブレスレットにそっと触れながら。微笑みに目で応えたクロウは再び黒の魔剣を構えて前へと歩み出る。

 リルは彼へ向けて、ふうと息を込めるように水泡を創り出す。淡い光が青年を纏った。
「神羅万象の根源たる玄冬に集う呪いよ。秘められし力を分け与え給え――」
 クロウは服についたチェーンを、躊躇なく引き千切る。
「術式解放(オプティカル・オムニス)――我が剣の礎となれ!」
 手の中で細い鎖は見る間に姿を変えて、幅広のしなやかな刃を持つ黒刀が現れた。両の手に二振りを携えて、クロウは瓦礫を駆け上がる。
 刀を一度大きく後方へ振り払い、返す勢いでメルビレイへと突きつけると、刃は鎖の性質を保っているのかぐんと長く遠く伸びて、災厄の巨体へ取り付き、やがて巻きついた。
 ぐいと引き上げて締め上げて――そして強く叩きつける。廃墟の尖塔に突き刺さった顎から血飛沫が上がった。
「君はどんな水槽にも、きっと入れないね……」
 だが果たして、かの災厄は自由だろうかと問われれば……リルにはそうは思えない。常に飢餓感に追い立てられ、眼の前にあるものが何であっても構わず口に入れていくだけ。
 縛られてのたうちながらも、メルビレイは咀嚼するものがなくなった口から、リルへとその舌を伸ばそうとする。だが、クロウの刃がさらに伸びて、それを許さず弾く。
「君が游ぐべき海はここじゃない――躯の海だ」

 ――綺羅星の瞬き 泡沫の如く揺蕩いて――

 紡ぐのは、浄土へと誘う迦陵頻伽の歌声。メルビレイが巨体を震わせて、何かを吼えた。明らかに戸惑ったような挙動を見せる。

  ――耀弔う星歌に溺れ 熒惑を蕩かし躯へ還す―― ♪

「――黙って僕の歌を聴いてろよ」
 リルが睨みつけると、どうしたことかメルビレイは伸ばそうとした舌を、思うように動かせなくなっていた。肥大化していた身体も少し萎んでいるように見える。
「最期の晩餐は、もう十分楽しんだだろ?」
 極上の歌声がBGMとは、最期に相応しい贅沢だっただろうと笑みを浮かべて。怯んだ瞬間をクロウは逃さず、二振りに炎を纏ってその頭部へと十字の斬撃を叩き込んだ。
「行儀の悪い災厄には、さっさとお帰り願いたいもんだ」
「なかなかいい、こんびねーしょ、だったね」
 跳躍ののち、傍へと降りてきたクロウへ拳をを向けるリル。拳がこつんと突き合わされる。
 歌声に麻痺した巨体は命の危機すらも何も、もはや感じられないのか、メルビレイは喉の奥で呻く声を震わせながらだらりと血に濡れるばかりだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

明日知・理
【さゆり(f00775)】と
アドリブ歓迎


星の海を泳ぐ鯨、か。
綺麗だ、と場違いにも思う。
だが、
さゆりに牙を剥くというのなら、
─悪いが、眠ってもらおう。

▼戦闘
…お前が宇宙の彼方に吹っ飛ばされねえように。
さゆりを最優先に庇う

攻撃は刀で受け流すか、出来るなら反撃を
的がデカい分、此方からの攻撃も当てやすい
俺には致命傷以外は全てかすり傷だ

対して此方が発動するユーベルコードは『buddy』
UDC ――シスが俺の体を覆って一つになり、其れは──この鯨には及ばないが──巨躯の黒き怪犬の姿と成る。
闇を纏いて、自身の保身を全て捨て反撃に徹し
この大きな牙を葬送の一助とする


四・さゆり
【明日知・理(f13813)】と一緒。
アレンジ大好きよ。

ーーー

あら、泳ぎ足りないのかしら。

なら、足掻いてみなさい。

くうるり、宙返り、いつもは頭上に浮かぶ傘も。
今日はわたしと同じ高さ。
わたしも浮かんで、紛れて、赤い傘の軍列にきいろがひとつ。

ふふ、帰り道はマコが手繰るでしょう。

わたしは好き勝手に、右へ左へ、上へ、下へ?
傘に混じって自ら刺しに行きましょ。

降るように、注ぎましょう。
傘の雨。
その皮を穿つように、

クジラでしょ?乾いたら可哀想だもの、ね?
あんたの赤で潤してあげる。

遠慮しないでちょうだい。
ほら、
最後には取っておきを残しておいたの。

マコ、シス。
きちんと砕きなさい、
海へ帰れるよに。



 コロニー全体がぐらぐらと揺れている。
 外壁側へと戻った二人は、廃墟都市を喰い破った巨大な頭が、水面から飛び上がってきたかのような光景を目の当たりにしていた。
 硬質ガラス片が波飛沫のように砕けて、四方八方へ散らばった。満天の星の夜を背景に、巨大な鯨が白波を切って泳ぐ姿に、思わず綺麗だ、と理は思う。
 だが即座に我に返って、眼の前に飛んできた鋭い破片を咄嗟に抜いた刀で弾き飛ばした。
「……ッ、大丈夫か?」
「平気よ、……泳ぎ足りないのかしらね」
 巨大な頭部に受けたいくつもの傷跡から流れる赤が、破片とともに宙へ散っていくのも見える。それでも尚、この危険な天敵の巣食っているコロニー跡をすべて自らの腹に収めるまで、かの災厄が咆哮を止めることはないらしい。
「いいわ。なら、足掻いてみなさい」
「! さゆり……!?」
 宇宙服の擬似重力を調節してから、とん、と跳ねるように少女は駆ける。くるりと小さな体が宙返りするとその周囲には、彼女が手にした赤い傘と全く同じ傘が幾つも現れて、彼女を取り囲んだ。宙に浮かぶ瓦礫を使って、黄色い眼を持つ鮮やかな大魚が泳ぐようにメルビレイの元へと向かう。
 理も慌てて少女を追う。傘達が彼女を飛び交う破片から守っているようだが、ふわふわと漂うように進む彼女がどうにも危なげに見えてしまって平静にはなれない。
「――さあ、よいこたち。暴れてらっしゃい」
 目前に迫った『災厄』へ向けて、さゆりが号令を掛ける。一斉に撃ち出される赤いミサイルのような凶悪な刺突が、雨となって巨体へ降り注ぐ。同時に、さゆりも飛んだ。
「クジラでしょ? 乾いたら可哀想だもの、ね?」
 抉るように、分厚い皮膚を深く刺す。黄色のレインコートに跳ねた血が、染みずに赤いシャボン玉になっていくつも宙に浮かんでいった。

 ―― ギ、ィイイィイイイ……!!

 引き攣るように震わせる咆哮。ゴム質のような体表に取り付いていたさゆりの身体が一度跳ねて、投げ出された。
「シス!」
 ぐわ、と巨体がうねる。ほとんど無意識に、理は相棒の名を呼んだ。瞬時に黒を纏って強く足場を蹴る。間に合えと、祈っている間すらない。メルビレイが巨大な胸鰭を広げて、投げ出された少女に迫っていたからだ。
 さゆりは宙でくるりと振り返って、当然そこにあるもの、とでも言うように彼の方を見た。迫る大きな黒犬の姿に、手を伸ばして、しがみついた。
 黒犬が少女をかっ攫って通り過ぎたその場所を、間一髪、巨大なヒレがすべて、圧し潰していた。瓦礫とともに巻き込まれた赤い傘達が拉げて消える。
「ふ、……ふふふ。……危なかったわね、今の」
 黒い毛皮に顔をうずめた少女が、くぐもった声で笑っていた。こちらは大分肝を冷やしたのにと、理は思わず力が抜けそうになる。同時にふつふつと湧き上がるもの。彼女にあれが直撃していたらと思うと。
「わたしのかわいい子達、やられちゃったわね。マコ、シス、仇を討ってちょうだい」
 そうして、現世に打ち上がった哀れなクジラを海へ返してあげましょう。さゆりは黒犬の背をぽんと撫でた。
 瓦礫の影に少女を降ろして、魔犬は低い唸り声とともに再びメルビレイへと飛び込んだ。胸鰭の根本に獰猛に牙を突き立てる。血が噴き出して視界を染めるのも、メルビレイが暴れるのも構わず、捉えて離さないその怪物の牙はついに、その巨大な鰭を千切り取ってしまった。
 片方の胸鰭を失い、もう片方は不自然に欠いている。尾鰭だけで必死に掻いて、災厄はのたうちながら星の底へと堕ちていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒江・イサカ
夕立/f14904と
※共通方針参照


凄いなあ、鯨なんてこんな間近で見たの初めてだ
やっぱり綺麗だね 神秘的だよ、デカいってのはさ
でも、生きてる
殺せるってことだ

生き物にはみんな、踏み越えたら死ぬ境界ってやつがある
僕にはそれが見えるんだ
こんなおっきくても見えるのか不安だったんだけど、杞憂だったみたいだね

愛で避けろ、なんて言われちゃえば避けるしかないんだけど
僕の運動神経を過信してるよね、彼
まあ、やるけど
使い捨てのワイヤー付きナイフで残骸を移動しつつ接近
でも、こんなに足場があると隠れやすくっていいな
だから、ほら、死角があるだろ?
僕の【慈愛】もお食べよ、腹ペコさん

この広すぎる宇宙の海を導いてあげよう


矢来・夕立
イサカさん/f04949
※共通方針
・【慈愛】を当てる為の隙を作る
・コロニーの残骸を砲丸として利用
→移動手段・足場・威嚇射撃・遮蔽

宇宙の竜が鯨って面白いですね。海だからでしょうか。
骸の方に行って貰うんですけど。

【紙技・彩宝】。紙箱爆弾を、作れるだけ。
爆風を利用して、コロニーの残骸を射出。
威嚇射撃でなく単純に当たっても痛いでしょうし、
加えて『単純な移動手段としても使える』のが、瓦礫とミサイルとの違いですね。
適当な残骸に捕まっといてください。メルビレイの近くまでブン投げ、…射出します。
続けて残りの残骸もありったけ撃ちますんで、イイ感じに足場や遮蔽物として使ってくださいね。

…。あ、えーと…愛で避けて。



 星空から、巨大な鯨が落ちてくる。幾らかの猟兵との交戦を経て、胸鰭を殆ど失い大きな傷をいくつも負っていても、『災厄』は今だ健在だった。
 ―― オォォォォ……!!
 遠吠えのような、苦しみ呻くような咆哮を吐きながら、ゆらりと崩れかけた居住区に立つ猟兵達を掠めるように泳ぐ。
「凄いなあ、鯨なんてこんな間近で見たの初めてだ」
 それも、これ程までの大きさの鯨だ。イサカは純粋に、目前を通り過ぎるもののスケールに感嘆し、同時に不思議だと思う。人間も、この巨大な『災厄』と呼ばれるものも、持っている命は等しくたったの一つだけだ。
「殺せるってことだ」
 イサカは無邪気にそれを眺めていただけではなく、くまなく観察して「生き物」としてのメカニズムを探っていた。通常の鯨と同じく、脳のある頭部の眼の上辺り、やや奥まった所。そして口の根本、喉の下。急所と言えるのはその辺りだろうか。いくつもの傷から流れ出している血液と呼ぶべき体液も、ある一定量を超えれば死に至らしめるだろう。
 ナイフで『災厄』の身体を透かし見て絵図を描けば、しっかり視えている。よかった、とイサカは安堵した。
「『逆鱗』に急所があるのはちゃんと、竜っぽい……と言っても、普通の鯨も心臓があるのはあの辺りかな」
「宇宙の竜が鯨って面白いですね。海だからでしょうか」
 まあ、骸の方に行って貰うんですけど、とにべもなく言いながら、夕立は手の中でこまごまと千代紙を折るように印を組み、箱を作り出しては宙に浮かべている。
「『逆鱗』狙いにしよう」
 とん、と跳ねて、漂う瓦礫に足を乗せる帽子の青年にいいですよ、と返し、紙箱を一つ手に取った。
「しっかり捕まっといてください。メルビレイの近くまでブン投げ、……射出します」
「乱暴だなあ」
 何も言ってないし聞こえなかったふりをして、夕立自身も跳んで距離を取る。金和紙を散りばめた鮮やかな赤い紙箱が、爆ぜた。

 爆発の衝撃で、イサカの乗った瓦礫は罅入りながら、等速の猛スピードでメルビレイへと接近する。
 続けて夕立は周辺を駆け回り、片端から紙箱を爆破させて瓦礫を撃ち出していった。宇宙船に激突でもしようものなら、甚大な被害は免れないほどの巨大なスペース・デブリの砲弾。だが今は目の前の『災厄』が、すべて身を以て受け止めてくれる、そのように撃ち出している。
「……あ、」
「え?」
「……えーと……愛で避けて」
 最初の瓦礫に、今撃ち出したものがちょうどぶつかる軌道と速度になったらしい。乱暴だなあ。それでもそんな風に言われたのでは、そのようにする以外の道は塞がれてしまう。
 イサカは使い捨てのナイフからワイヤーを射出し、別の瓦礫の飛び出た骨へ引っ掛けると巻き取って、飛び移る。
「忍者でもやっていけますね」
「そう?」
 ぶつかって砕ける瓦礫のすぐ傍らで、矢鱈嬉しそうな声色で言ってまた次の足場へと移る。
 メルビレイに届いた瓦礫の雨が横腹を、眼を、傷跡を撃った。巨体が咆哮を上げ身を捩る。尾鰭で薙ぎ払うつもりか、だがイサカは飛び込むように足場を蹴った。ヒレの軌道から外れて腹の下へ潜り込む。メルビレイには視覚以外にレーダーのように周囲を感知する力があるようだが、それも無数に撃たれる瓦礫に依って十分に阻害されていた。
 ワイヤー付きのナイフを直接、メルビレイの身体に撃ち込んで目標地点へ近づく。夕立も可能な限り瓦礫の破片を伝って災厄へ近づいて、彼の行いの始終を見届けた。
「僕の慈愛もお食べよ、腹ペコさん」
 宇宙の竜の『逆鱗』へ、刃を突き立てる。分厚い表皮を裂いて赤が顕になると、更に本命のもう一撃。寸分狂わず同じ場所へ、身体ごと刳り込むように。
 その切っ先は太い動脈に達したか。赤が爆ぜて、イサカの視界を染めた。全く熱を感じられないのは、宇宙に棲む者の性質故か、はたまた此れが偽りの生命であるからか。
 何れにしろ、それは導きに従い、じきにこの場所で旅を終えることとなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラピタ・カンパネルラ
(目がほとんど見えません)



ああ、……凄い。
何か。大きな、何かがいるね。
皮膚が痺れるような、圧倒的な……
あれが、メルビレイ?
あの大きさなら、僕にもまるで『視える』ようだ

君が燃えたら、それはさぞかし眩しいだろう。綺麗だろう。
太陽の、ようだろうな。

メルビレイを灯したい。
その為なら、こんな醜い身体は何一つ惜しくはない。
大口に喰われるがまま大人しく胃の底へ。あとはーー燃やす。燃やす、燃やす。【オウガ・ゴースト】で代償を払い、内より燃やす、燃やす、燃やす。代償が足りない?幾らでも持っていけ、死ぬならば燃えて死ぬと決めている。

焼ける臓腑を掻き分けて外に出たら
メルビレイの太陽を見上げる
眩しいのは、綺麗だな



 他の猟兵達に遅れる形で宇宙世界へと転送されてきたひとりの少女は、朧な視界の中を彷徨うように、その唯一とてつもなく大きな存在へ向かって歩いていた。
 その大きな何かが吼えている。本来その咆哮は、人々の魂に畏怖を与えるものである筈だったのだろうが……今はどこか悲痛な響きを伴って、ラピタ・カンパネルラ(メクラヨタカ・f19451)の肌を震わせた。
「あれが……メルビレイ?」
 不意に足元が揺れて、かくんと膝をついて見上げる。この宙域にもいくつもの恒星が浮いていて、至極ささやかにコロニーを照らしていたが、その巨体は彼女の視界も、昏い影に覆った。
 傷だらけのメルビレイは彼女の存在に気付いたのか否か――どちらにしても口に入るものなら何でも良いと言わんばかり、只、食事をするために口を開けたのだ。近くで水がはねた。かの災厄が無数の傷跡から流した、冷たい血が頬を伝って、世界が真の闇に閉ざされる。

 闇の中に、青白い炎がぽつりと浮かんだ。
 何か大きな力がラピタの身体を闇の底へと引っ張っている。あちこちぶつかって、痛い。でもそれでいい。この星を呑む災厄とともに、眩く灯る星になる。彼女が自らの身体を燃料として捧げると炎は強く燃え上がって、メルビレイの体内を照らした。
 ラピタは手近な瓦礫に這い上がって、コースターに乗るように流されるまま、巨大な腑の内側を焼きながら駆け抜けた。
 ――もっと、燃えろ、燃えろ。
 僕にも見せてくれ。君の命が強く燃える様を。
 どぷん、と何か液体の溜まりの中に落ちる。ここが宇宙空間でなく、身を護る服がなければ耐え難い強烈な臭気に晒されることになっていただろうか。
 浮かぶ瓦礫にぶつかりながら泳ぎ進むと、柔らかな壁に手をついた。
 青い炎は消えていない。一層強く燃やして、壁を焦がし、崩して道を作る。ぐらりと視界が揺れて、手が震える。どれだけ歩いたのかもわからなくなった頃、踏み出した足が地面を捉えず、奈落へ投げ出された。

「…………綺麗だな……」
 ラピタの紅い義眼は、煌々と白く燃える太陽を視ていた。腑に空いた穴からか、フレアが噴きあがっている。大きく、強く、だが直に燈滅するであろう蝋燭の最後の光を、彼女はいつまでも眺めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

オブシダン・ソード
【星鯨】
ははあ、星くじら
まさか『そういうもの』が出てくるとは思わなかったけど…オブリビオンだってのが、唯一残念なところだね

でかすぎて外からだとダメージが与えづらそうだし
賢太郎と共に敵の体内へ
はつねの助けを借りれるタイミングで、オーラ防御で球状の障壁を張りつつ呑み込んでもらおう
歯やら一緒に呑まれたデブリやらに注意
即死はしたくないなぁ

体内では明かりも兼ねて火炎魔法を使用
内側からの範囲攻撃で火傷とこちらの視界確保を
ある程度暴れたら仲間に器物を預ける

UCを発動
ねぇこれ意外と熱くない?
僕がパーライトになったら畑でも作ってね…
冗談はともかく
じゃあぶった斬ろうか、相棒

悪いものを食べてしまったね、ということで


ケビ・ピオシュ
【星鯨】
あれが宇宙ドラゴン
まるで星を呑む鯨
いつか読んだ童話のようだ
君達が敵に飲み込まれて戦おうという事もね

私は回復に回ろう
それこそ、この小さな躰では決定打を与える事は難しそうだからね
頼んだよ、皆
君達が上手に喰らってもらえるように、私はせいぜい誘蛾灯代わりに光っているさ

はつね殿が狙われた場合は、背の掌を使って積極的に庇うよ
今回の作戦は彼女の動きが肝要だからね

クラルス殿がUCの為に攻撃を受けるのならば、庇いはしないが回復は急ごう
チャンスがあればプログラムド・ジェノサイドを使う事も良いだろう

すまないが、移動は投げて貰えるかい
きっとそれが一番早いからね

皆が無事に出てこれたならば
回復を重ね
おかえり


セツナ・クラルス
【星鯨】
…こんなに大きな鯨がいるとは
ああ、そんな悲しい声で泣かないでおくれ
あなたをあるべき場所へ送る決心が鈍るじゃないか

敵の内部侵入作戦を成功させる為
私は殺気を放って注意を引き挑発
先程、鰯トルネードというものを見たのだが
さしずめ我々は鯨に喰われる鰯といったところかな
でも、あなたは今から鰯に喰われるのだよ
ふふ、痛快だねえ

自身の前に属性魔法で氷の障壁を展開
攻撃の威力と速度を殺し回避を試みる
多少のダメージには目を瞑る
身体が動くなら、反撃は可能だよ

受けた攻撃を元に「メルビレイ」の人格を形成
彼の技をそのままお返ししよう
攻撃のタイミングは仲間が敵の拘束をした直後
拘束と打撃で敵が怯んでる隙に脱出のフォローを


狼谷・賢太郎
【星鯨】
うわ、でっけー……
まさか星の鯨がオブリビオンだとは思わなかったけど……やるしかねーか!

外からじゃ有効打は与えられねーかもだし
覚悟を決めて飲み込まれる!
野生の勘をフル活用
潰されないよう動きを見切って飛び回る
外にみんながいる限り
口の中ばっか構ってらんねーだろ!

敵の意識が逸れたらUCで体内を焼き尽くした後
大暴れ出来ないよう骸の海から伸びる因果律の鎖で縛るんだ
仕上げに魔杖の炎をオブシダンに纏わせて燃える魔剣の完成!
振り降ろしたオブシダンで道を斬り拓いたら、そのまま脱出だ!

折角蘇ったところわりーけど、今を生きるみんなの為に在るべき場所へと還ってもらうぜ!
過去に縛られた魂ごと、その体をぶった斬る!


杠葉・はつね
【星鯨】のみんなと
本当にいたのね、ふふ、会えて嬉しい
けれど、ごめんなさいね
わたしたちはあなたを壊さないといけないの

ユーベルコード:咎人封じでなるべく動きを封じるようにするわ
うまく賢太郎やオブシダンが入るタイミングで動きを封じれたらいいのだけど
大体封じたいタイミングは、賢太郎やオブシダンが中に入る時。大きな動きをしようとした時。誰かを攻撃しようとした時。という感じかしら
わたし自身は防御の技を持たないからなるべく近寄らないように、ってところね
中から仲間が出てきたら急いで回収に向かうわね



 発着場、そして居住区跡を蹂躙し、自らも体中に傷を負いながら、『災厄』は回廊の方へと深く沈むように泳ぐ。その巨体がコロニー跡にぶつかり揺らす度、根本から折れそうになる回廊の上にしがみつくようにしながら、猟兵達はその姿を見、固唾を呑んだ。
「うわ、でっけー……」
「……こんなに大きな鯨がいるとは」
 ジ・アクアリウムで見た大型のサメやクジラ達の、果たして何倍あるのだろうか。
「あれが宇宙ドラゴン……まるで、星を呑む鯨だ」
 童話の中で描かれていた、星程もある巨大なくじら。他の猟兵達もそれぞれに、つい先程ジ・アクアリウムでケビが皆に話していたことを思い出していた。
「本当にいたのね、ふふ、会えて嬉しい」
 はつねはその話が現実となったような光景に目を輝かせる。
「ははあ、まさにあれは星くじらだね。まさか『そういうもの』が出てくるとは思わなかったけど……」
 オブシダンは顎を擦り、声色は興味と驚き半分、だがもう半分は。

 ―― オオォオオォォォ……!

 幾らか力のなくなった咆哮を吐きながらも、それは未だ「喰らう」ことを完全に止めてはいない。
「……オブリビオンだってのが、唯一残念なところだね」
「ああ、そんな悲しい声で泣かないでおくれ」
 咆哮の震えを肌に感じたセツナも、わずか目を伏せる。
「折角星の鯨に会えたのにな……けど、やるしかねーか!」
 世界にとってかの災厄は招かれざる客で、こと猟兵達とは決して相容れない存在だ。賢太郎が無念を振り払うように、杖をぶんと振り上げ構えて叫んだ。
「確実に有効打を与えるには……体内に飛び込む!」
「ふむ、いいだろう。僕を使うといい、賢太郎」
 オブシダンが賢太郎に並び、回廊の縁に進み出る。その様子にケビは感慨深げに目を細めて。
「……ふふ、飲み込まれて戦おうとは、それもまた童話をなぞるようだね」
「えっ! 本物の星くじらともそうやって戦ってたのか……!」
「また物語のワンシーンになっちゃうわね。……でも気をつけて、二人とも」
 二人が本当に腹の底へ呑み込まれてしまわないようにと、はつねとセツナも外から援護する準備を始める。
「頼んだよ、皆」
 ケビは再び、モニタの光量を限界まで上げた。メルビレイを引き寄せ、また戦士達が無事に帰ってくるための灯台となるために。

 猟兵達の存在に気がついた『災厄』が大きく口を開き、彼らの足元から迫った。通常の鯨には無いような長い異形の舌を、猟兵達へ向けて射出する。はつねの瞳が、それを映して――大きな青の掌が横合いから割り込んで、鋭い爪先で伸びてきた舌を引き裂いた。UDCを制御しながらケビが叫ぶ。
「はつね殿、今だ!」
「はい!」
 はつねの手から伸びるロープが、メルビレイの牙と、頭部の角のような器官をそれぞれ捉え動きを抑える。更に念押しにと創り出した大きな轡を、支え棒のように口に噛ませた。ごめんなさいね、とはつねは小さく呟く。
「……行くぜ、オブシダン! ……せーの!」
 オーラでコーティングした突入組の二人がすかさずメルビレイの口へ、喉の奥を目掛けて自ら飛び込んだ。残る三人は、闇に吸い込まれて小さくなっていくその姿を確りと見送る。
「先程、鰯トルネードというものを見たのだが……さしずめ我々は鯨に喰われる鰯といったところかな」
 セツナが、纏う色を変え『災厄』へ語りかけた。
「でも、あなたは今から鰯に喰われるのだよ。……ふふ、痛快だねえ」
 見下ろす表情は挑発的に笑み、生物の本能へ威嚇する。メルビレイは一度引っ込めた傷だらけの舌を、そうして身を乗り出しているセツナへと向け撃ち出した。セツナは即座に手を翳し、厚い氷の障壁を拡げる。鞭のようにしなる舌が、びき、と障壁に罅を入れた。衝撃に歯を食いしばりじわりと汗が滲むが、堪えた。
「あなたの能力を、利用させて貰うよ」
 顕現するのは、セツナが人格を映しとって創り出したミラーの『メルビレイ』。お返しにと、舌を伸ばして打ち据える。
「じっとしていておくれ。……あなたをあるべき場所へ、送るためだ」

 メルビレイの体内へと飛び込んだ二人は、共に飲み込まれた瓦礫を掻き分け、ときにぶつかりながら喉の底へと降りていく。
 オブシダンが手元で炎を灯して明かりにすると近くに賢太郎の姿、そして腑の内側が、すでにいくらか爛れた状態であることに気がついた。他の猟兵達の中にも、近いことを考えていた者がいたらしい。
「多分、あとひと押しだ」
「ああ」
 賢太郎は瓦礫の上で足を踏ん張って、魔杖を構え詠唱を始める。彼の声に応じて集った精霊達が、強く焔を燃やす。
「とっておきだ、いくぜ!」
 杖を振るうとごうと燃える神殺しの火と、オブシダンの放つ炎撃とが渦を巻いて、周囲の壁を焼き、さらに延焼して体内を明るく照らし出した。脈動するような揺れはあるが、メルビレイが大きく暴れる様子はない。外の仲間達が食い止めてくれているのだろう。
 内側からも、賢太郎の炎が因果律を縛る鎖となり、メルビレイの身体と魂を、骸の海へ繋ぎ止める。メルビレイの命が燃えている証拠か、焼け落ちて空いた壁の穴から夥しい量の血が噴き出してくる。
 頃合いだね、と告げたオブシダンが本来の姿に変え賢太郎の手にするりと収まった。炎が黒曜の剣を包み明々と煌く。
『……ねぇこれ意外と熱くない?』
「えっ!? 黒曜石って熱に強いんだよな!?」
『1000℃くらいまでだからねえ。僕がパーライトになったら、畑でも作ってね……』
「ちょ、ちょっとだけ我慢してくれよ!」
 焦る賢太郎に、オブシダンは冗談だよとくつくつ笑った。
『――じゃあ、ぶった斬ろうか。相棒』
 呼吸を、意識を合わせる。ゆっくりと振りかぶり、手に力を込める。
「……折角蘇ったところわりーけど、今を生きるみんなの為に」
 在るべき場所へ。
 渾身、振り下ろされた剣先から斬撃が迸り、爛れた壁を一閃する。瞬間、破裂するように、巨大な腑の中身がまとめて宇宙へと放り出された。

「あ、あれ……見て! あそこ!」
 はつねが指差した先に、燃える魔剣を抱える賢太郎の姿。同時にメルビレイがその腹から、口や噴出孔からも炎を噴き上がらせる。
 声にならない咆哮を上げて、最後に大きく尾鰭で宙を蹴った。コロニーの中枢の柱に激突して、ついにそれがぼきりと折れる。瞬く間に尾鰭の先まで炎が包むと、『災厄』の身体は崩れ落ち、骨格だけが残って――その骨もまた、さらさらと灰を零しながら消えていく。
「いいんですね!? い、行きますよ……! えーい!!」
 崩壊する回廊の上。賢太郎達へ向けて、はつねがケビの身体を両手に持ち上げ、思い切ってぽーい! と投げた。続いてはつねも、セツナも足場を離れ仲間の元へ跳ぶ。
 再び人間の姿に変化したオブシダンが、危うく頭上を通り過ぎようとしたところでケビを受け止めた。賢太郎ははつねとセツナと、満面の笑みでハイタッチを交わす。
「おかえり、二人共。皆、無事で本当に良かった」
 ケビのモニタから注ぐ柔らかな光は、あちこち擦り傷だらけで消化液を浴びた二人の身体を優しく癒やした。
 そうして猟兵達は漂いながら、宇宙の塵となっていくメルビレイの姿を見送る。
「さよなら、星くじら」
 遠くなっていく災厄の残滓へ、はつねがぽつりと零す。
「星くじらがオブリビオンだったなんてな……でもそういえばさ、確か図書館に刺さってるのって白い鯨だったよな! メルビレイとは別の星くじらも居るんじゃねーか?」
「ああ、そうだね……オブリビオンとして存在しているということは、今もどこかで生きている星くじらだって居る可能性も、高まったと言えるかもしれない」
 ケビははつねと賢太郎に向けて、モニタに映した表情でウインクしてみせる。
「まだまだ、世界には私達の見たことのない生き物達が居る。……きっと、星くじらも」
 セツナの言葉に、オブシダンも頷いた。
「探求の旅を続けるには、しっかりと休息を取らなければね」
 帰ろうか。とケビは杖を振る。いつもの場所と、帰りを待つ仲間の元へ。

 やがて、遠くの宙域でシグナルをキャッチしたジ・アクアリウムが、猟兵達を迎えに戻ってくる。

 ――――

 元々廃墟となっていたコロニー跡は、メルビレイと猟兵達が暴れたことで、さらに原型を留めない瓦礫の集合と化した。だが、この宙域を彷徨い、人々を脅かすもの達はもうどこにもいない。
 今回の件でコロニーの都市跡にはレアメタルや、資材となり得るものが多く残っていることがスペースシップワールドの人々の知るところとなった。帰る者のいないこの都市はいずれ解体され、それぞれ必要な場所へと持ち帰られて姿を消していくだろう。

 ジ・アクアリウムは本日も満員御礼。水槽の中では個性豊かな生物達が、群青と無数の星の中を悠々と泳ぎ生きている。
 彼らがいつか本物の海を泳ぐその日が、来るかどうかは誰にもわからないが。
 闇の中を彷徨い続けることも、飢餓に悩まされることもないこの星の海の旅は、きっとそんなに悪くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月26日


挿絵イラスト