バトルオブフラワーズ⑫〜竜を統べる観測者
「よく集まってくれたな、諸君ッ!!」
会議室に集った猟兵たちに、グリモアを浮かべた鏑木・良馬(マリオネットブレイド・f12123)がハイテンションに口を開いた。
「決戦の最中に、別口で集まってもらったのは他でもない。 少し気になるモノを見つけてしまってな」
曰く、正体不明のオブリビオン【ドラゴンテイマー】。
戦略上、重要な存在ではない。 だが探知してしまったのだ、このグリモア猟兵は。
「かの存在が気になる理由―――それはごく単純なもの。 即ち! 俺の勘だッ!!」
………冷たい空気が場に流れたかも知れない。
それはさておき。
「ま、重要ではないとは言え………相手はオブリビオン、放置しておく理由もないと思ってな。 後顧の憂いを断つ意味もある」
そこに存在するオブリビオンである以上、いずれは討つべき相手であろう。
ただ、今この瞬間に討つべき必然性は、無い。
「―――………嫌な予感がするのだよな、何となくだが」
良馬は言葉を続ける。
ただの嫌な予感であればそれでいい。
しかして―――今この瞬間にその姿を捕捉したのには、何か意味があるのではないだろうか?
「……本来、今討つべき敵は、別にいる。 だからこれは、言わば寄り道に近い話であろうな」
加えて、このオブリビオンは極めて強大。
無敵バリアやユーベルコードカウンターを持っているわけではなく―――ただただ純粋に、強い。
数多の龍を召喚し操る―――それだけを予知できた、ドラゴンテイマーの真の力のほどは、全く計り知れない。
分かっている範囲でだけでも対策を取らねば、瞬く間にやられるのはこちらになるであろう。
無論、余計な手出しをしないという選択肢も当然にしてある。
藪蛇というやつだ。
―――だが。
「俺は俺の、この嫌な予感を信じる。 それに同調してくれる者は―――是非、向かってみて欲しい。 武運を祈るぞ!」
野良山羊
やぎです。やぎはいます。
今回は攻略上関係なさそうなドラゴンテイマーとの決戦です。
特別なルールはありませんが、これまで発生した戦いの、どの敵よりも強力な相手となるでしょう。
以下注意点になります。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
以上です。
難易度は極めて高いです。
入念に対策を施し挑んだ上でも失敗する可能性はございます。
それでも我こそはという皆様、挑戦をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
そこは咲き乱れる花々の中。
システム・フラワーズの傍らに、その男は浮かんでいた。
通称【ドラゴンテイマー】、文明を侵略する竜を従えた、観測者。
あまりにも禍々しい翼を背にこの花の中を漂う彼は、この戦いに直接的に関与する者ではない。
ただ静かに、戦況を見守っているだけ―――の、はずだった。
《………来たか》
小さく呟くと、赤き剣を呼び出し右手に取る。
仮にもグリモアを所持する者達。
こちらを探知し向かってくる可能性は、充分にあった。
それが現実となった―――ただ、それだけだ。
現実となったならば、どうするか。
降りかかる火の粉は払う―――ただ、それだけだ。
天御鏡・百々
【WIZ】
幻鏡相殺にて鏡映しにダイウルゴスを生み出して
相殺を狙うとしようか
幻鏡相殺が敵の初撃に間に合わぬのであれば
ダイウルゴスの群れの攻撃に対して
「第六感10」を頼りに神通力(武器)による障壁(オーラ防御53)で防御する
首尾良くダイウルゴスへと対処できたならば
真朱神楽(武器:薙刀)にてドラゴンテイマーの防御の隙間を狙ってなぎ払ってやろう
(なぎ払い20、鎧無視攻撃5)
●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、連携歓迎
アウル・トールフォレスト
無関係な寄り道、でもイヤな予感がするの?
それじゃあ、手伝ってあげないと
モヤモヤするのが残っちゃうのは、わたしもイヤだもの
先制攻撃には…わたしじゃ、どうしようも出来ないかも
最初は苔やオーラで防御出来ても、その後のドラゴンさんがやって来ちゃう…
だから、最初を防いだ後はすぐに花の足場から飛び降りるよ!
時間稼ぎ…ドラゴンさんが到着する前に、ユーベルコードを完全に発動できるように…
【深緑、底知れぬ恐怖を育め】
こうなったわたしは、とぉーっても!強いよ!
巨大だった竜も、小鳥と変わらない
群れた所でもう関係ない
大きく振りかぶって、全身を使って、敵の居る場所全部を腕で思い切り薙ぎ払う!
『………っ!!?』
揃って転送されてきた天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)と、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)が、まず最初に感じた物―――
それは恐ろしいほどの寒気だ。
辺りは暖かく、柔らかく、花々咲き誇る天国のような空間―――気温、湿度共に快適でとても過ごしやすいはずの空間。
そこにあって身も凍るような寒気の原因。
それはすぐに察知することができた。
即ち、ただ観測するだけでありながら、存在そのものが脅威となる観測者―――【ドラゴンテイマー】。
その視線が、来訪者である猟兵二人を、冷たい視線で射抜いていた
向けられるだけで恐怖を駆り立てる視線―――それを真っ向から受けて、百々とアウルは互いに顔を見合い、頷く。
グリモアベース内で打ち合わせたとおりに動く―――
恐るべき竜を駆る相手を、いかに出し抜き攻めるか。
作戦は既に決まっている。 後は実行するだけだ。
《猟兵……二人同時に来る、か。 いいだろう》
「我が名は天御鏡・百々―――お相手願おうか、ドラゴンテイマーよ」
堂々と名乗り、優雅な所作で薙刀【真朱神楽】を構える百々。
その切っ先をかの者に突きたてんと、静かに闘志を燃やす傍ら、
一方でアウルは―――逃げた。
ドラゴンテイマーはその後姿を冷たい瞳で見つめ―――やがて眼前の百々へを移す。
《……お前一人か、いいだろう》
自身に向けられる圧倒的な威圧感を全身で感じながら、百々は作戦を思い浮かべる。
――――。
―――少し前。
「先制攻撃には……わたしじゃ、どうしようも出来ないかも」
ドラゴンテイマーを相手にどう戦うか―――各々が頭を悩ませていたところで、アウルがそう結論を呟いた。
「最初の時間稼ぎさえできれば、後はドラゴンさんにだって負けないんだけど」
最初さえなんとかなれば―――その後には自信を覗かせるアウル。
だが、その最初の対応こそが今回もっとも大事なのだ。
うーんうーんと、頭を捻らせるアウルに、後ろから声をかけたのが百々だ。
「時間を稼げばよいのだな?」
「え? う、うん……」
きょとん、とその声に頷くアウル。
であれば―――と、百々は言葉を続ける。
「その役目は我が担おう。 アウル殿はその後の策に専念するとよい」
「! わ、わかった!」
ここに二人、即興のチームが誕生する。
――――。
―――。
花の足場をぴょんぴょんと駆け抜け、二人から距離を取ったアウル。
そうして充分離れたところで、意識を集中し始める。
(私は森、大いなる【森】―――)
数多の動物たちを育み、自然の恵みに溢れる、森。
この花の世界にも負けぬ美しさに満ちたそれは、しかし人々の憩いの場たりえない。
―――何故なら、アウル・トールフォレストという【森】は、恐るべき怪物にも等しいものなのだから。
【森】が真に目覚めるまでの時間を稼がなければならない。
決意を元に相対する百々に、ドラゴンテイマーが動いた。
《……侵せ。 喰らい尽くせ―――》
周囲に浮かぶ無数の足場。 その一つ一つから、無数のダイウルゴスが飛翔する。
―――【文明侵略】
あまりにも大規模に展開されたそれは恐るべき物量をダイウルゴスに与えていた。
四方を、いや八方を―――あらゆる方向から迫る黒き牙に、百々もまた応える。
「幻なれど鏡は鏡、映りしは鏡像なれど同じ力―――」
それが生み出すのは大いなる幻鏡。
「―――相殺できぬ道理はあるまい」
鏡像を以て打ち消さんとする百々のユーベルコード【幻鏡相殺】だ。
《………ほぉ?》
幻鏡が映し出し、生み出したダイウルゴスの群れを前に、ドラゴンテイマーが少しの驚きを秘めた声を漏らした。
向かい合うダイウルゴスvsダイウルゴス。
その光景はもはや怪獣大決戦のようだ。
《面白い手段を使う。 だが―――質はどうかな》
ドラゴンテイマーが合図を出せば、巨大な質量同士のぶつかり合いが始まった。
交差する爪と爪。
ぶつかり合う翼。
それらが生み出す圧倒的な衝撃を間近で感じながら―――百々は考える。
(これでいい―――ユーベルコード同士のぶつかり合いになれば、その間の時間は稼げる)
―――だが、誤算があった。
鏡に映したユーベルコードを以て相殺する【幻鏡相殺】。
その力は確かにダイウルゴスの群れを相殺していた。 していたのだ。
(時間は―――あとどれくらい、かかる……?)
荒れ狂うダイウルゴスvsダイウルゴス、その余波に晒されながら、吹き飛ばされないように身を屈めた百々が、ふと『それ』に気づいた。
―――『ドラゴンテイマーが、いない』。
「……しまった……!」
激突するダイウルゴスの合間をかいくぐり、百々が駆け抜けていく―――間に合うか、どうか。
《ここに来た以上、逃げた方にも―――いや、逃げた方にこそ意味がある》
そう考えたドラゴンテイマーは、アウルを追って花の空間を飛翔する。
そしてそれよりも先に、アウルを襲うものがある。
―――誤算が、あった。
あまりにも圧倒的な規模で展開された【文明侵略】は、百々が相殺したより遥かに広く。
その牙はアウルにも襲いかかっていた。
「くっ……!」
ダイウルゴスの爪が、アウルを引き裂かんと幾度も襲いかかる。
身を護る苔で、張り巡らせたオーラでギリギリまで凌いでいたが、もう限界だ。
このままでは先に倒れてしまう―――やむを得ない。
【深緑、底知れぬ恐怖を育め】―――
ユーベルコードを解き放ち、アウルは巨大な【森】へと変質した。
しかしその規模は、本来の予定よりもずっと、小さい。
『このっ―――!』
襲ってくるダイウルゴスを、その腕で一匹ずつ薙ぎ倒していく。
力を増したアウルだった【森】の前にはこの黒き竜『だけ』ならば問題はない。
―――しかし。
『ああッ……ぅ………!!』
死を告げる黒き疾風の如く―――肉薄したドラゴンテイマーが、その手にした赤い刃で【森】を斬り裂いた。
その隙を見るや、【森】へ群がる竜の群れ!
「アウル殿ッ!!」
後を追ってきた百々が再び展開した幻鏡で、ダイウルゴスを相殺していく。
その隙を縫って、ドラゴンテイマーに斬りかかるも、手にした赤い刃で弾かれた。
そのまま二度、三度斬り結ぶ―――そうして間近にいるだけで、萎縮してしまいそうになるほどの圧倒的な存在感よ!
―――これが引き際か。
勢いよく振り下ろされた赤い刃をギリギリで受け止め、弾き飛ばされた百々は【森】の側に着地した。
「一度引こう、アウル殿。 このまま続けるのは、分が悪い」
「っ……。 ……そうだね、立て直そう」
大いなる腕で追撃する竜を払い、鏡写しの竜で相殺しながら、二人は撤退していく。
その姿をドラゴンテイマーは追うことなく……静かに、見送っていた。
苦戦
🔵🔵🔴🔴🔴🔴
ジュリア・ホワイト
――これは危険な相手だ
見ただけでそう判るよ
【先制攻撃対策】
迂闊に近寄らず、最大限の警戒を持って『逃げ回る』
反撃しようなどと思ってはいけない
足を止めれば、いや、攻撃を狙うなんて余分なことに意識を回した時点で斬られる
とにかく全神経を集中し初撃に当たらない事を最優先にするよ
うっかり当たってしまった場合はしょうがない
あえて竜の群れの中に飛び込んで同士討ちを誘うしか無い
そして逃げ回って時間を稼いでいる間に
【圧力上げろ!機関出力、最大開放!】を準備だ
発動さえできれば上がった身体能力で反撃に転じられるだろう
「こちらにも意地があるんだ!せめて一太刀くらいは貰っていって貰うよ!」
【アドリブ歓迎】
これは―――この男は、危険だ。
見ただけで、聞いただけで、同じ空間に存在するだけで―――ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)がその異様さを認識するには充分すぎた。
《……新たな猟兵か。》
ただ喋っているだけだというのに、地獄から響き渡ってくるかのように感じる威圧感。
《特に歓迎するつもりは、ないのだがな》
この戦場にたった瞬間、この男をここで討たなければ行けない―――そう確信するには充分だったのだ。
ならばどうするか。
――――カリッ……
「それは悪かった―――でも、こっちはアンタに用事があるんだよね」
左手で石炭をかじりながら、右手で無骨なチェーンソードを構え、油断なく見据えるジュリア。
嫌な汗が背を伝うのを感じながらその出方を伺っていると―――男が、消えた。
「―――速い!」
目論見自体は合っていた―――近づくにも危険な男に、あえて近接武器を構えて見せたのは、先手を打たせるためだ。
それはただのパフォーマンス。 圧倒的な戦力差を持つ相手に、正面から勝負を挑んだところで勝機はない。
初めからジュリアは、付け入る一瞬の隙を見逃さないように。
ただひたすら、その赤き刃を空振りさせる事だけを狙っていた。
《………ほぉ》
感心したように、僅かに呻くドラゴンテイマー。
彼とて実力差を過信していたわけではないが、よもや受けるのではなく避けられるとは思ってもみなかったろう。
だが、観測者は冷静だ。
初撃のみを躱したところで、勝敗が決するわけではない。
続く横薙ぎの斬撃が衝撃波を生み出し、あっけなくジュリアを吹き飛ばしていく!
「ぐっ………!」
直撃はしていない。 直撃はしていないが圧倒的な衝撃。
花の世界に浮かぶ足場の一つに叩きつけられ、ジュリアは呻く。
―――カリッ……
まだ勝負は決していない―――まだドラゴンテイマーは、様子見しかしていない。
痛みを堪え、視線を上げれば、ジュリアの目には彼の能力によって呼び出された、無数のダイウルゴスの姿が映る。
《征け―――奴を、侵略せよ》
ドラゴンテイマーの命令に従い、ダイウルゴスが四方から迫る。
「まだだ―――まだ、倒れる訳にはいかない!」
ジュリアが吼え、なんとあえてダイウルゴスの群れに突撃していく!
しかしその狙いは攻撃ではない。
かいくぐり、合間を縫って時間を稼ぐ―――こちらは一人、敵は無数。
あえて群れの中に身をおけば、迂闊な攻撃はダイウルゴスの同士討ちを誘発する。
―――カリッ……
《………二匹ずつ行け。 確実に奴を捉えよ》
攻めあぐねるダイウルゴスたちに、ほんの僅かに苛立ちを見せたか―――
ドラゴンテイマーが新たな指示を口にする。
二匹ずつ攻め、その二匹から離れれば更に別の二匹が襲いかかる。
そのプランを口にした瞬間に。
―――カリッ……
石炭をかじっていたジュリアが、残っていた一欠片を投げ捨てた。
コンッ……
足場を石炭が跳ねて、軽い音を立てる―――その瞬間。
―――【圧力上げろ!機関出力、最大開放!】
充分な燃料を得て灼熱は全身を指の先まで満たし、駆け巡り、その身に力を宿していく。
包囲が緩み、ドラゴンテイマーが苛立ちという、ごくごく僅かな隙を見せたその一瞬。
その一瞬を駆け抜けるために、ジュリアのボイラーが最大級の熱量を生み出す!
そうしてジュリアは、唸る【残虐動輪剣】と共に爆ぜた―――この強大で傲慢な傍観者を斬り捨てる為に!
「こちらにも意地があるんだ! せめて一太刀くらいは貰っていって貰うよ!」
《むっ……!?》
ザンッ―――!!
捨て身で斬り込んだ電光石火の刃が、その胸元に確かな傷を刻んでいく―――次の瞬間、ジュリアは再び別な足場へと叩き落とされた。
「がッッ……あ………っ!」
ドラゴンテイマーの真紅の刃がジュリアを打ち据えたのだ。
ぎしり、先の急加速もあり限界を訴える四肢に動力機関、そこへ群れていくダイウルゴスの群れ―――
勝敗は決しただろう。 既にドラゴンテイマーは彼女に視線を向けていなかった。
《………》
胸の傷を見下ろすドラゴンテイマー。
大したダメージではない……だが、様子見で受けるダメージとしては、想定外に大きい。
《……名前くらいは、聞いておいてもよかったか》
傷が疼く。 自らの油断が生み、一瞬に賭けた猟兵が刻み込んでいった傷が疼く。
その傷を負わせた猟兵の存在は、確かにドラゴンテイマーの記憶の片隅に残ることとなった。
成功
🔵🔵🔴
オル・クブナス
ほう、彼が事件の裏で暗躍していたのですね…ええ、直接の関係は無くとも、ここで何もせず見過ごす訳にはいきませんとも。
はじめましてドラゴンテイマーよ。余裕があれば貴方の目的についても聞きたい所ではありますが…時間もそんなにありません。
いざ、勝負でございます。
相手の攻撃に対しては、ぶつかった部位を【目立たない】ように自切して相手に押し付けましょう。
相手の出した技ですので対処はされるでしょうが…多少の隙はできるはずでございます。
その隙に洗練された【礼儀作法】からなる動きによって高めた攻撃力での連撃を叩き込むことに致しましょう。
リダン・ムグルエギ
男の子って好きよね、恐竜
でもインスタ映えは間違いないわね
よし、撮りましょ
新作の改造衣装を作り着ていくわ
1番の旗を持って眠る黒竜が描かれたシャツがポイントな羽があっても着れる衣装よ
見た人の距離感を狂わせたり眠気を誘う錯視催眠模様が仕込まれている上、強靭な糸を使ってるの
敵の爪は脅威だけどⅠの相手なら回避しつつ凌げると信じるわ
初手を凌げばコードと衣装の柄の併用で「1」の数字と眠りを流行させるの
これで合体を防ぎつつ彼に肉薄するわ
ねぇ、アナタも着てみない、この衣装?
この服は貴方をイメージしてデザインしたのよ
着てくれたら一緒に写真も撮って拡散しなきゃね
攻撃?
精神ダメージやなんやかんやが入るんじゃないかしら
(ほう、彼が事件の裏で暗躍していたのですね…ええ、直接の関係は無くとも、ここで何もせず見過ごす訳にはいきませんとも)
グリモア猟兵の語る【嫌な予感】に同調した、次なる猟兵がやってくる。
一人はオル・クブナス(殴られ屋・f00691)。
ブラックタールの身をスーツで包んだ彼は、どの様な驚異に立ち向う時であろうとも紳士的であった。
花の世界にあってその立ち姿は、お嬢様に付き従う執事のようにも映る。
優秀な執事が礼をもって出迎えたのは、お嬢様―――ではなく、もう一人の猟兵。
リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が気だるげな様子で転送されてきた。
「男の子って好きよね、恐竜……でもインスタ映えは間違いないわね」
よし、撮りましょ―――早速携帯端末でダイウルゴスを撮影し始めたリダンを、ドラゴンテイマーはただ冷たく見つめている
《…………》
その視線を察してか、オルが間に割って入った……こほん、と一つ咳払い。
「はじめましてドラゴンテイマーよ。 余裕があれば貴方の目的についても聞きたい所ではありますが……時間もそんなにありません」
《ようこそ、次なる猟兵よ。 私もそちらと特に話すつもりはない》
「ならばよろしい。 それではいざ、勝負でございます」
およそこれから戦うようには見えない、優雅な一礼をドラゴンテイマーに向けるオル。
その構えもまた、戦うようには見えない紳士然としたものだ。
戦うように見えない構えといえばリダンもそうだ。
のんびりした様子で写真を取る彼女は、一体何故ここにきたのか?
―――無論、この強大な敵を前にして、勝算があるからだ。
彼女の手にあるのは、一見すれば武器ではない。 服だ。
ファッションデザイナーたる彼女にとって、それこそが最大の武器なのだ。
そしてその武器は彼女が身に纏う防具でもある。
1の数字の旗を持つ黒竜が描かれたデザインのシャツ―――それはこの相手のために、彼女が用意したものだ。
距離感を狂わせ、また眠りを誘う錯視催眠模様のそれは、実に強靭な糸を用いている。
一撃、二撃程度であれば受け流すことも可能であろう。
「はい、あなたも」
シャツを手渡されたオルは、それを己のステッキに通して、即興のムレータと成す。
「ありがとうございます。 それでは、参りましょうか」
準備はできた。
いざ、命がけの闘牛……もとい闘竜が始まる。
「はっ!!」
優雅な所作から一転、素早くオルは駆け抜けた。
既に呼ばれていたダイウルゴスたちが反応し、一斉に群がっていく!
襲い来る強靭な爪、容赦のない暴力の嵐を、オルは鮮やかに受け流し捌き、次第にドラゴンテイマーとの距離を詰めていく。
彼の身のこなしは勿論、錯覚を生むシャツのムレータもまた自らの役割と存分に果たしていた。
(………本当に効果あったんですね、これ……ええ、ファッションデザイナーとは素晴らしいものです)
不思議な模様が果たして黒竜に通じるのか―――若干の不安は覚えていたが。
ドラゴンテイマー自身はともかく、かの竜には充分に効果を発揮しているようだ。
《どうした? ダイウルゴス……ならば、》
一見すれば武器らしい武器を持たない紳士を相手に攻めあぐねるダイウルゴス。
そこにドラゴンテイマーは新たな指示を出す。 即ち―――【合体せよ】
伝搬する指令に従い、ダイウルゴスたちが動く……が。
おかしい。
ある竜は合体しようと近づくも通り過ぎていく。
またある竜は、勢いがつきすぎて激突していく。
これまたある竜は、合体そのものに困惑するように動きを止めてしまっていた。
《―――……!?》
これにはさしものドラゴンテイマーも驚きを隠せない。
ダイウルゴスがこのような挙動を見せたことなど、かつて無い。
「【トレンドコンダクターGOATia(ハヤリハヤギノテノナカ)】―――これが私の勝算(デザイン)なの」
あくまでマイペースに、リダンがネタバラシ。
シャツに描かれた1の旗を持つ竜の絵は、それ自体が【竜が1を好む】ように意識を書き換え伝搬していたのだ。
狼狽えたドラゴンテイマーに、オルが肉薄する!
「ドラゴンテイマー―――ご覚悟を!!」
洗練された礼儀作法は、ひとたび攻撃に転じれば鋭い刃となる!
《ぐっ……!》
煌めくステッキが繰り出すのは光の如き刺突!
ドラゴンテイマーの肩を貫くと、すぐさま蹴撃を放ち蹴り飛ばす!
この相手に、必要以上の時間接近しているのは危険極まりない。
《……面白い手を使うな》
足場の一つに着地し、負傷した肩を気にしながらも尚、口ぶりには余裕を見せるドラゴンテイマー。
しかしその身には確かなダメージが刻まれた。
「真っ向勝負だけが戦いではないのですよ。 それに私共は、常に一人で戦うのではありません」
あくまでも紳士的に応えるオル。
そのあり方こそが彼の最大の武器なのだ。
「竜を鮮やかにいなす紳士―――これもインスタ映えしそうね」
一方、戦う前に仕事を終えていたリダンは、あくまでマイペースに。
黒き紳士が戦場を舞う勇姿を写真に収めていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
藤塚・枢
やあ、はじめまして
早速だけれど、くたばってくれないか?
召喚された群れに追い詰められる雰囲気で移動しながら、オブリビオンの死角をとれる地形を探す
鋼糸を使い、捕縛罠や手榴弾の起爆罠も仕掛けて回る
合体しようと集まりだしたら、合体する前に手榴弾と遠隔起爆のPE4を投擲
見計らって爆破
同時に煙幕手榴弾で視界を切り、目星をつけておいた地形を利用してオブリビオンの死角へ全力移動
まず人形を突撃させ、暗器の機銃で掃射
意識を向けさせるのと同時に、鋼糸の罠の方へ誘導して罠を起動する
その間に私は更に死角を取り、猛毒を塗った短剣を突き立ててやろう
悪いね、私はか弱いんだ
だまし討ちの暗殺くらいしか、見せてやれる芸がないんだよ
奇鳥・カイト
文明侵略に対し、同じ系統の攻撃で対抗する
「昏き血の刃」、同じように無機物をぶつけていく。同量を、穿つように
それが間に合わないようなら、糸を広げて簡易防御兼罠を貼る
【カウンター】をかける形で、突っ込んでくる相手へトラップを仕掛ける
また攻撃のぶつかり合いの中で糸を仕込んでおく。鋼の糸をこっそりと
罠、と言えば聞こえがいいが隙を狙う卑怯な手だ
【騙し討ち】 する形にはなるが…ま、悪く思うなよ
縛り上げて、締め上げる
味方のことは面倒そうにするが結構気にかけます、素直じゃありません
遠ざけようとするのは怪我するのを心配している為だとか
連携・アドリブ歓迎
「やあ、はじめまして―――早速だけれど、くたばってくれないか?」
花の世界に凛とした声が響く。
転送を終えた藤塚・枢(スノウドロップ・f09096)が、まっすぐにドラゴンテイマーを見つめていた。
《倒れてほしくば倒せば良い。 出来るならな》
負傷こそ重なってきているものの、未だドラゴンテイマーは健在。
それに彼の戦闘力の多くを占めるダイウルゴスは、彼の負傷度合いには依存しないのだ。
「まぁそうだよね。 それじゃあ遠慮なくさせてもらおうかな」
飄々と、一歩前に出る―――その様子からは特に武装している様子は伺えない。
だがその手の内には数多の暗器を携えていた。
(真っ向から相手取っても不利だ。 搦め手で行くしか無い)
遠くにいて尚威圧感を放つ相手を前に、不敵な笑みを浮かべる枢の頬を汗が伝う。
(でもね……元よりそれが私のやり方なのさ)
ああ、問題ない。 いつも通りだ、いつも通り。
いつも通りに仕事をこなす―――そのために枢は駆け出した。
油断なく、死角を探しながら枢は足場から足場へと飛んでいく。
質と量を兼ね備えたダイウルゴスの群れ、捕捉されれば終わりだ。
しかし枢の取った動きは、死角を探しながら―――【あえて誘い込む】ものだ。
まとめ、誘い込み、そして同時に、罠を張り巡らせていく。
―――まだまだ、それは足りない。
《……逃げの一手か?》
つまらない―――そう言いたげにドラゴンテイマーが左手を振ると、1の文字を逆鱗に刻印されたダイウルゴスが更に数を増す。
周囲の文明を侵略し生まれるそれは、未だ数を増やし続けている。
(竜の壁が阻む以上、それを何とかしないと接近すらままならない)
かといって、この竜を倒すとすれば―――それは1の間でなければ厳しいだろう。
1ですら驚異的な火力と強靭な鱗を持つ竜が相手なのだ。
強化などされてはたまったものではない。
であれば、どうするか―――。
「くっ―――!」
間一髪、飛び退いた足場を打ち砕く竜の爪。
今ひとつ、手が足りない―――罠の構築は、おおよそ済んでいる。
それでも尚足りないのは【合体を誘うための手】だ。
合体されてはならない、だがこの竜の壁を打ち崩すには、合体させなければならない―――それが枢の結論だ。
次第に息が上がってくる。
枢の身に蓄積された疲労は、確実にその動きを鈍らせている。
《近寄れば何とかなると思ったか―――だが、その有様ではそれも叶うまい》
再びドラゴンテイマーが手を振り上げるれば、周囲を蝕む文明侵略。
生み出された無数の新たなダイウルゴスが咆哮を上げる―――その一瞬前に。
その喉元に、赤く黒い刃が突き立てられた。
《むッ―――!?》
ドラゴンテイマーの驚嘆をよそに響き渡るのは、多くのダイウルゴスの苦悶の叫び。
耳を裂くような悲鳴に、塞ぎたくなるのをぐっと堪える枢の後ろから、その刃の主が姿を見せた。
「―――そっちも無機物を利用するようだけどな、こっちだってそれはできるんだぜ」
ひっそりと、闇を縫うように。 枢と同時に転送されながら、その姿を悟られぬように。
奇鳥・カイト(燻る血潮・f03912)が文明侵略を崩す、その一瞬を貫いた。
目深に被った帽子の奥に光る赤い瞳が、ドラゴンテイマーを見据えている。
《もう一人いたか。 不意を突いたつもりだろうが―――しかし》
ドラゴンテイマーの文明侵略の範囲は、カイトの【昏き血の刃】より圧倒的に広い。
(分かってるさ……これだけじゃ無理だろう、けどな)
「血の誓いよ―――悉くを、討ち滅ぼせ!!」
再び【昏き血の刃】を起動し、無数の黒い刃を生み出し走らせる。
その狙いは文明侵略を封じることではない。
1の竜ではこちらを倒しきれぬと、知らしめることだ。
同じく罠や糸を使った騙し討ちを得意とするカイトはに、枢の罠が見えていた。
なればこそ―――その完成度に、賭ける。
痺れを切らしたドラゴンテイマーが、
《なかなかやるな―――であれば、これならばどうか》
逆鱗に数字を持つ竜たちに、
《合体せよ》
―――の、指示を出すその瞬間に。
枢はにこりと微笑んで―――その手から伸びた鋼糸を弾き、罠を起動した!
ギシィッ―――!!
指示に従い合体せんと集まりだしたダイウルゴスが、その身を融合させようとするその直前。
鈍い音を立てながら鋼の糸に縛り上げ、捕らわれていく!
(今だ―――!)
疲労を訴える身体に鞭を打ち、枢は駆ける―――今この瞬間に超えずして、いつ限界を超えるのか!
身動きの取れなくなった手近なダイウルゴスの群れの合間に爆薬を配置し、次の足場へと飛んでいく。
カチッ―――ズドォォンッ!!
この竜を打ち砕くために用意した特製の爆薬が、2になれなかったダイウルゴスの群れを粉砕する。
……物量に勝るダイウルゴスの、1の群れには一つ弱点があった。
一つの戦場内に展開できる数には、どうしても空間の限界があることだ。
1のまま集まった、2より脆い竜の群れ―――それをまとめて粉砕することができれば、その瞬間ドラゴンテイマーを守る壁はなくなる!
《それがお前の切り札か。 だが―――まだアレがいるぞ》
少し遠くのエリアを見据えてドラゴンテイマーは余裕を見せる。
罠で集めた範囲の外の外では、まだダイウルゴスが残っているのだ。
それらもまたドラゴンテイマーの指示に従い、合体しようと集まり始めている!
「だろうね、キミの文明侵略の範囲は広い」
―――それでも、枢の笑みは崩れない。
ダイウルゴスを気にかける素振りを一切見せないままに、ドラゴンテイマーの近くの足場へと渡っていく。
「でもあんなに遠くにだったら……予め爆薬を仕込んでおいても、私達は巻き込まれないよね?」
《何?》
ドラゴンテイマーが浮かべた疑問符。
それに答えるのは枢ではない―――カイトだ。
「ドラゴンテイマー……お前、俺が今の今まで何してたと思ってるんだ?」
呟き、カイトもまた鋼糸を弾く―――刹那、周囲が一斉に爆発を起こす!
《ダイウルゴスが―――!》
枢と同時に転送され、しかし姿を見せないままであったカイト。
彼は初めから文明侵略の範囲を理解し、枢の罠を観察し、彼女がドラゴンテイマーに切り込めるように。
恐らくはその障害になるであろう、広域のダイウルゴスを爆破するための罠を別行動で仕込んでいたのだ。
驚嘆するドラゴンテイマーに、仕事の仕上げかかるとばかりに枢が手榴弾を放る―――着弾前に炸裂するそれは、煙幕弾だ。
《くッ―――この程度の、小細工が!》
「そ、小細工―――それが私【達】の戦い方だからね」
煙幕弾が作り出す隙は一瞬―――その一瞬の隙に次の策を残しドラゴンテイマーの死角へと回り込む。
その場に残された次なる策。 その名も【からくりぬいぐるみ『フォリーくん』】。
人形遣いたる彼女の相棒にして、頼れる暗器使いだ。
彼女の無言の合図を受け、フォリーくんが機銃を取り出し、弾丸をばらまく!
《おのれッ……!》
フォリーくんの射撃はドラゴンテイマーを捉えること叶わず、空を裂いていく。
フォリーくんの射撃はドラゴンテイマーを捉える必要はなく、彼を誘い追い込んでいく!
ぐらり、禍々しい翼で飛ぶドラゴンテイマーが、不意に不自然に動きを止めた。
《これは―――!?》
それは、糸だ―――鋼糸で編まれた枢の作品。 宙に浮かんだ鋼糸の檻。
それをカイトの鋼糸が更に補強し、ドラゴンテイマーを捕らえたのだ!
動けなくなったドラゴンテイマーに、それでも油断なく死角から仕掛ける二人の暗器使い。
【黒き雪となりて】―――勢いと鋭さを増した枢の毒刃が、その脇腹に突き立てられる!
《ぐ―――ぉ、》
呻くドラゴンテイマーを更に、カイトの【昏き血の刃】が襲いかかる!
無数の刃に貫かれたドラゴンテイマーの腹部で、枢がナイフを一度ぐりっとひねってから引き抜く。
そして置き土産とばかりにコートの中に残っていた最後の爆弾を残し、ドラゴンテイマーを蹴飛ばすように跳躍。
枢が足場を確保し着地した瞬間―――枢の置き土産の炸薬が、爆発した!
(キミもなかなかやるじゃん)
爆風にあおられながら、内心で枢が呟くそれは……カイトには届かないことだろう。
一方のカイトは、枢を軽く一瞥するに留まり興味を向ける素振りも見せない……が。
(結構無茶するな……ま、上手く行ってよかったけど)
内心で気にかけていたそれは、枢には届かないことだろう。
話し合いも、打ち合わせも、一切ない。
二人のトラッパーは淡々と、それぞれに己の仕事を真っ当するだけだ。
撒き散らされる爆風が収まり、ドラゴンテイマーが姿を見せる―――。
その身体は全身を貫いた刃、至近距離で炸裂した爆風、そして内から蝕む毒の影響で、確実に弱っていた。
大成功
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非在・究子
【SPD】※アドリブ歓迎
こ、こういうのは、出来れば、取り逃がしたく、無いのが、サガだよ、な。
せ、先制攻撃で、竜を呼ばれて、集中攻撃、されそうだ、けど、な。
こ、ここは、『システムフラワーズ』への【ハッキング】で、
は、花の足場を崩して、タイミングを崩す、ぞ。
だ、ダメそうなら、アイテムの『ボム』の、無敵時間でやり過ごす。
な、何とか、しのげたら、『あのコマンド』を、
使って、しゅ、シューティングゲームの、時間だ。
て、展開された、オプションと、本体の私、から、
レーザーと、ミサイルで、攻撃だ。
こ、高速飛行で、召喚された、竜を撃墜、しつつ、
うまく、位置取りして、本体へ、攻撃を集中する、ぞ。
レッグ・ワート
手ぶらで還ってくれるとめためたに有難いけどなあ。
先ずはバイクで逃げ足運転に集中する。敵の攻撃や癖や位置やら見切る為の戦場情報収集用のドローンはバイクに固定。対ボスの位置把握や演算も要る時にそれでやる。頃合いまでは適当に喋るしバイクで普通に音たてるぜ。
竜に集られるか合体したのが大振りになったタイミングで、竜連中避けながらまきあげた花弁の中で迷彩、忍び足で消音。一瞬でも竜戸惑わせてボスが殺ったと思ってくれれば上等だ。ゴッドスピードライド使って、防盾をドリル状に変換して突撃と行こう。もし軌道からボスが外れても後手に絡めるよう糸で仕掛けるよ。勢いと怪力活かしてせめて相手の余裕を崩せないか試しはするさ。
「こ、こういうのは、出来れば、取り逃がしたく、無いのが、サガだよ、な」
確かな消耗を見せるドラゴンテイマーの前に、非在・究子(非実在少女Q・f14901)が転送されてきた。
携帯ゲーム機を持つその姿は当然というか、戦うための姿には見えない。
しかしその見た目が当てにならないのは、己に付けられた無数の傷が物語っている。
……ドラゴンテイマーに油断はなかった。
《ならばどうする》
蓄積したダメージは、確かにドラゴンテイマーの動きを鈍らせている。
だが、それがどうした。
ダイウルゴスを生み出すこの手はまだ動く―――彼には、それで充分なのだ。
「決まっている―――ここで確実に仕留める」
がしゃんっと音を立てて、転送されてきたのはレッグ・ワート(脚・f02517)。
実に全長250cmを超える、大柄なウォーマシンだ。
究子の身長は125cmを下回っている。 実に二倍の身長差。
並べばとてもアンバランス。
しかし、この二人だからこそ―――見出だせる勝算が、あるのだ。
究子が手早く携帯ゲーム機を操作すると、眼前にステータス画面が表示された。
そこに表示されているのは究子とレッグの可視化された能力値、だけではない。
「準備はいいか?」
宇宙バイクを駆るレッグ。 そのバイクには、情報収集用のドローンが固定されていた。
「い、いつでも、いいんだ、な」
応え頷く究子の声を聞き、レッグは宣言する。
「では征くぞ、ドラゴンテイマー―――お前をここで、終わらせる」
《大きく出たな……ならば、やってみるが良い!》
宇宙バイクを駆るレッグはしかし、攻撃に転じる素振りは見せなかった。
ダイウルゴスの追跡をことごとく躱し、ただ鮮やかに戦場を駆け抜けていく!
《何のつもりだ……!》
先に交戦した猟兵を思い出す……奴らは、罠を巡らせていた。
だがこの男はどうだ。
その手はバイクのハンドルを握ったまま、何をする素振りも見せない。
ただただ見事なバイクさばきで、時に足場を走り抜け、時に足場から足場へ跳躍し、ダイウルゴスの追撃を回避していく。
「勿論、仕事だ。 俺に与えられた、な」
《ふざけた事を……!》
ドラゴンテイマーが血に濡れた左手を振り上げると、1の番号を振られたダイウルゴスが更に数を増していく。
「いいぞ、複数の竜を引き連れたドライブなんてなかなか体験できることじゃないし」
《……奴を潰せ、ダイウルゴス!》
「そうはいかないな!」
エンジンを唸らせ、全力で走るレッグ。
足場のふち、ギリギリまで跳躍することなく駆け抜け―――そのまま落ちること無く走り続ける!
「こ、こっちがいいんだ、な」
遠方でゲーム機を操作する究子がシステムフラワーズをハッキングし、新たに足場を作っていく。
「なるほど、こっちへ行った方が景色がいい。 なんなら花見でも楽しむか、ドラゴンテイマー」
《こいつは……!》
狙いを計りかねるドラゴンテイマーだが、理解したことはある。
こいつは何かを誘っている―――だが、何を企んでいる?
一方、レッグのドライブをサポートする究子。
その傍ら、表示したステータス画面を眺めている。
「な、なるほど、なんだな」
レッグのバイクに取り付けられた情報収集用ドローン。
そのデータは全て、究子の手元のステータス画面に転送されていた。
ドラゴンテイマーの動作の癖。 探知の範囲。
ダイウルゴスの反応速度。 合体した場合の推定戦力値―――。
必要な情報は、徐々に揃っていく。
《何をする気かは分からんが、いずれにしろこのままでは追いきれぬ―――ならば》
手をかざし、ドラゴンテイマーが合体を指示する。
1が、2が、4に―――合体し、強大化したダイウルゴスが、速度を増してレッグを追う!
「きたな……!」
更に速度を上げて、随時ハッキングによって生み出される足場を駆け抜けるレッグ。
一瞬の油断が命取りになる、デッドレースだ。
右へ、左へ、コースを駆け抜けるレッグだったが、ダイウルゴスのほうが速い!
(もう少し、もう少しだ……!)
ギリギリまで駆け抜けなければならない。
そうしてダイウルゴスの爪がレッグを捉えようとした、その瞬間!
「うおおおおおっ!!」
《何っ!?》
その瞬間、走るべき足場は生まれなかった。
勢いよく飛び出し、花畑へと突っ込んでいくレッグ。
そして彼が落下してから僅かに遅れ、再びコースを描いていく足場―――。
大量の花びらを舞わせ、花の海に沈んで行った彼の姿を、ドラゴンテイマーは捉えることができずに居た。
《自滅? 事故? いや……》
足場の生成が遅れた―――そのように見えたが、先程までの勢いからして、そんな事があるだろうか?
―――ドラゴンテイマーの困惑は、途中で遮られることとなった。
「い、いまこそ、【あのコマンド】なんだ、な」
究子が鮮やかな手付きで携帯ゲーム機にコマンドを叩き込む。
己自身をゲームキャラクターとし、電子の海より生み出しだ武装を纏い、随伴するオプション機と共に。
飛行形態となった究子が飛翔する!
《! そっちか!》
反転したダイウルゴスが向かってくるのを、究子は笑いながら飛び回り、すり抜けていく。
「ぱ、パターンは、わ、わかって、るんだ、な」
レッグが決死の覚悟で送り続けたダイウルゴスのデータは、全て究子の手元へと蓄積されている。
ハードなゲームを好む彼女の手元に、攻略に対して充分なデータが揃っているのだ。
スピードで勝っているはずの強化ダイウルゴスは、彼女の動きを捕らえきれずにいた。
《速い―――いや、見切られいる……!》
強化ダイウルゴスが一体だけでは捉えきれない。
ならば、更なる数を生み出すのみ―――!
「―――させないぜ!!」
《ぐああぁっ!?》
【ゴッドスピードライド】―――宇宙バイクを変形させ、前面をドリルしたレッグが、花畑の中から突撃!
ドリルでえぐり、超加速のまま突き抜けるように、ドラゴンテイマーを轢いていく!
―――ダイウルゴスに追われていたレッグが、まさにその爪の餌食となろうとしたその直前。
彼は情報収集用ドローンが究子に送るデータに、僅かなノイズを混ぜたのだ。
それこそが合図―――あえて花畑に飛び込み、身を潜める、合図。
舞う花びらの中で迷彩、消音機能を発揮し、じっと身を潜めていたのだ。
ドラゴンテイマーが究子に気を取られ、ダイウルゴスを生み出さんとする―――その直前の隙を突くために!
レッグの攻撃は、ドリルで貫くに留まらない。
そのまま機体後方からワイヤーを繰り出し、ドラゴンテイマーを捕らえていく。
それに狙いをつけるのは究子だ。
飛んでくるタイミング、捕らえる位置。
ウォーマシンであるレッグの行動は的確だった。
全て計算通り―――計算し導き出した、このハードモードに対する攻略手段!
「こ、これで、ゲームクリア……だな」
究子の纏う武装が、追従するオプションが、その全火力を集中させて。
ドラゴンテイマーを撃ち抜き、破砕していく!
《猟、兵……が―――……》
文明を侵略する竜を駆る者、ドラゴンテイマー。
最期は圧倒的な火力と閃光の中に、散っていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵