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バトルオブフラワーズ⑫〜竜の役目

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ドラゴンテイマー

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●欲望は止められない
「センセ、センセ、もう聞いたっスよね! 大ボス戦っスよ!」
 コーンとぽっくり下駄を響かせて、小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)は猟兵達へと向き直り。
「と、いっても今回集まってもらったセンセ達に対応してもらうのは、ドン・フリーダムの言っていた『ドラゴンテイマー』の方っス!」
 システム・フラワーズの中枢より少し離れた場所。
 謎のオブリビオン、ドラゴンテイマーはそこに佇んでいる。
 ――いずれ私が、グリモアを再び手にする時の為に。
 『予兆』にて、彼の言葉を見聞きした猟兵達も多いだろう。
「黒竜ダイウルゴスと呼ばれるすーごい強い召喚竜を呼んで戦うらしいっス。彼自身もはちゃめちゃに強いっスし。……――戦略的には正直放置しても全く問題無いンスよ、無いンスけれど……」
 こんなに怪しい奴を放置して後々どうなるかも分からない、と。
 尾をゆっくりと揺らしてから、いすゞは目を細めて笑い。
「ドラゴンテイマーは、同時に一体しか存在しないっス。でも何度でも骸の海から蘇るっス! 短期間に奴の許容値を超える回数ぶっ倒してやれば、復活は不可能になる……、ハズっス」
 多分、と少しだけ煮えきらぬ口調のいすゞ。
 どうにも謎が多すぎる相手の為断定し辛いと、眉を寄せつつもペコリと頭を下げた。
「ま、ま、ま、センセ達なら大丈夫っスよ! ささ、今回もバッチリ世界を救っちゃうっスよォ!」
 狐のように笑ういすゞの掌の中には、輝くグリモア。
 世界は頼んだっスよ、なんて。


絲上ゆいこ
 こんにちは、いつもお世話になっております。
 絲上ゆいこ(しじょう・-)です。
 戦争も大詰め。よろしくおねがい致します!

●ルール
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 それ以外に戦闘に特別なルールはございませんが、ドラゴンテイマーは、これまでの誰よりも強敵です。

 それでは皆様の熱いプレイング、お待ちしております!
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第1章 ボス戦 『ドラゴンテイマー』

POW   :    クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ハルヨリ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

御形・菘
黒幕っぽい雰囲気、実にカッコ良いのう
だが妾との外見キャラ被りは見逃せん!
上下関係をはっきりさせてやろう!

腹を括り剣の一撃は防御するぞ
左腕と邪神オーラを使い、とにかく頭、首、心臓など急所は確実にガード
即座に妾も攻撃よ
右手を高く掲げ指を鳴らし、さあ降り注げ流星よ!

竜の数減らしをすると思ったか?
狙うのは、命中率重視でお主のみ!
黒竜の攻撃は、妾にほぼ確実に当てに来るのであろう?
つまり逆に、竜を盾に使う防御は無い!

突撃は妾の身一つ凌ぎきる!
負傷状態で戦うのは元より覚悟の上
妾は全身が武器、すべて叩き落してくれよう!

星を降らすのは継続させる!
接近してくるなら、妾は着弾に自分を巻き込むのも全然構わんよ?



「はーっはっはっは!」
 地を埋め尽くす花を舐める、黒い蛇の尾。
 花弁散るステージに、高笑いが響き渡る。
「黒幕っぽい雰囲気、実にカッコ良いのう!」
 右腕の刻印より立ち上る黒霧――邪神オーラが陽炎のように揺らめき。
 二対の背より伸びた翼を張りだして降り立った御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)は、蛇のように敵を睨めつけた。
 瞬間。
 既に敵――ドラゴンテイマーは菘の目前へと迫っている。
 巨大な爬虫類の左腕へと黒霧が這い。
 ガードに上げた左腕へと叩き込まれる、ドラゴンテイマーの右腕の刃。
 叩き込まれた斬撃に、花弁を散らしながら滑った体が巨大な轍を産む。
「だが妾との外見キャラ被りは見逃せん! 上下関係をはっきりさせてやろう!」
 黒き蠢きが刃を喰らい、ぱっと爬虫類の鱗と朱が散った。
 掲げた腕より頬へと溢れ落ちる、温かい鉄の匂い。
 命の匂い。
 紅い紅い蛇の舌でその頬を拭い、菘は尚も笑みを深めた。
「下らん」
 ドラゴンテイマーは吐き捨てるように、叩き込んだ刃を返し。
 同時に、生まれた咆哮。
 空間を割いて黒い竜が幾匹も這い出し――、鋭い牙が立ち並ぶ口を大きく開いた。
「下らぬ事では無い! 妾の名は菘。御形菘よ!」
 掲げた菘の右腕に、滾る魔力。
 ぱちんと指を弾くと、空が煌めいた。
「神たる妾と外見キャラ被り等という不遜。赦す事が出来ようか!」
 降り注ぐ竜の群れを前に、菘は未だ笑う。
 ――さあ、降り注げ流星よ!
 その身に喰らいつく黒竜へと、叩き込む爬虫類の拳。
 蛇尾が別の竜を擦り払い。
 撥条のように跳ねた菘は、黒霧を蠢かせながらバックステップ。
 天より振り落ちた流星は、ダイウルゴスの群れへと降り落ちる事は無い。
 狙いは最初から一つ、ドラゴンテイマー自身のみだ。
「神か」
 嘲笑に似た音を漏らして、彼は口元を歪める。
 召喚された黒竜が、幾匹も彼を護らんと流星へとその身を自ら晒し。
 漏れ溢れた星を赤き刃で砕いて、ドラゴンテイマーは瞳を細めた。
「ああ、あらゆる世界は妾の物なのだ」
 襲い来る黒竜を捻じ伏せ、喰らわれながら。
 笑みを崩す事無く菘は大きく頷いて、黒竜の喉笛へと喰らいつき。
「妾の統べる世界での狼藉、その意気は汲んでやろう」
 黒竜の片を吐き捨て、菘は吠える。
「しかし、言ったであろう『あらゆる世界は妾の物なのだ』!」
 竜の群れと流星を伴い、更に踏み込んできたドラゴンテイマーへと。その身が傷つく事すら恐れず、巨大な左拳を叩き込んだ菘はまた高笑いを上げた。
「従わぬ者は、叩きのめすッッ!」
 ドラゴンテイマーを、黒竜を。そして彼女までも巻き込み、未だ流星は空より溢れ落ちる。
 掴みあげられる、菘の手首。
 叩き込まれた拳をやすやすと受け止めて、彼女の手首を捻ったドラゴンテイマーは暗い瞳で彼女を覗き込んだ。
「良い捨て身だ。しかし、それではまだ届きはしない」
「……ぐっ!」
 更に降り落ちる流星と黒竜。
 菘は身を捩り、蛇尾を振るってその腕を引き剥がし。
 重ねて逆袈裟に振るわれたドラゴンテイマーの刃が、その身を刻む。
「いいや、届かせてみせよう!」
 ぎり、と奥歯を噛み締めて。その場に体を繋ぎ止めた菘は、更に流星を呼び――。
「ほう」
 ドラゴンテイマーが、空へと瞳を眇め。
 頭上に広がるのは、避けきれぬ程の量の流星が空よりこぼれ落ちる様だ。
「……ブッ倒れるまで願い事の唱え放題であるぞ……ッ!」
 菘は笑みを深めて、凶悪に笑った。

 彼女の意識が途絶えるまで、星は降り注ぎ続ける。
 彼女自身と、敵を傷つけながら。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

玖・珂
何を計っておるのかは知らぬが
オブリビオンに与する存在には違いない
お主が何体目であろうと、刺し違える覚悟で闘おう

赤き剣は避けず黒爪で受け止めるぞ
早業、怪力を以てそのまま剣、腕を抑え込み
近接維持に努める

敵を盾に出来れば簡単なのだがな
そんなに甘くない事は対峙した時から判っておる
向かってくるダイウルゴスの攻撃が少なければ良い方か
第六感にも頼り致命傷だけは負わぬよう体を捻り、負傷箇所をずらすなど試みる
一太刀浴びせる前に膝を突く心算はない

激痛耐性で持ち堪え、血が充分に流れたのなら整った
夥しい花弁で生命力吸収のせた一つの刃を練り上げ
狙い違わず、その身刺し貫いてみせよう

過ぎた望みはいづれ……身を滅ぼすぞ



 割れたステージに、散った花弁。
 柔らかに流れる乳白の髪を、風に靡かせた玖・珂(モノトーン・f07438)は瞳を眇めて。黒鐵の装甲に覆われた拳を上げた。
「お主が何を計っておるのかは知らぬが、……オブリビオンに与する存在には違い無いのだろう?」
 珂の姿を認めた瞬間。
 矢の如く目前へと迫った、ドラゴンテイマーが振り下ろした紅刃の右腕。
 鞭の如く腕を撓らせて。珂は黒爪で、その初撃をいなし弾き。
「その通りだ」
 肯定を口にする彼の背より、黒き竜ダイウルゴスが群れを成して咆哮を鈍く響かせる。
 ドラゴンテイマーが刃を翳して更に踏み込み、珂はその刃を掴まんと黒爪をカチ合わせた。
 黒曜石の角は、彼女が羅刹たる証。
 華奢な体とは言え、珂のその膂力は恐るべき物である。
「甘い」
 しかし。
 その彼女の力を持ってして単純なる力負けを期し、脇腹へとねじり込まれる刃。
「……!」
 珂は鋭く吐息を履き体を捩り避けるが、花のごとく散る紅色。
 そこに重ねて、ダイウルゴスの群れは一斉に彼女へと喰らいついた。
 珂は黒爪をガードに上げながら、黒竜の首を横へと引き裂き。
 悶え暴れる竜を今度こそ捻じ伏せた珂は、次々と突撃してくる黒竜の群れへと、引っ掴んだ黒竜を盾代わりに押し込み。
 しかし本体たるドラゴンテイマーは、其の盾すら悠々と飛び越えて間合いを狭め。まるで弄ぶかのように軽く刃を振り下ろせれば、黒竜の骸ごと珂を一閃する。
「ぐ……ッ!」
 耐えるように踏み込めば、地へと喰らいつく白きブーツ。
 圧が地へと亀裂を生み、真っ二つに割れた竜の間より黒爪で刃を受け止める珂の姿が見えた。
 白装束は自らのものとも、黒竜のものとも分からぬ紅に濡れ。
 奥歯が割れんばかりに食いしばった珂は、腕を大きく振るって刃を叩き落としながらドラゴンテイマーを睨めつけた。
「――どれ程の猛攻であろうとも、一太刀浴びせる前に膝を突く心算はない」
 ちらちらと舞い踊る花弁。
 そう。
 彼女より溢れる紅は、花弁そのものであった。
 口の中に広がる鉄の味。
 痛みを気力だけで押さえ込んだ珂は、掌を広げたまま。
 目前に迫りくるドラゴンテイマーへと、一気に踏み込み。
 突き出す掌。
 風に逆らい、渦巻いた紅の花嵐は揺れ纏まり。彼女の掌の中で、一つの刃と成る。
 血で練り上げられた花弁の刃は、先程まで爪で戦っていた彼女のリーチが突如伸びたようなものだ。
「……ぐっ」
 突如のリーチの変化へと機敏に反応したドラゴンテイマーは、バックステップを踏もうとするが、遅い。
 彼の肩を貫いた花弁の刃は、その血を喰らい吸い上げ――。
 交わされる、漆黒の瞳と、瞳。
「過ぎた望みはいづれ――、身を滅ぼすぞ」
 珂の言葉。
「忠告痛み居る」
 顎をしゃくってドラゴンテイマーが真一文字に刃の腕を振るい。
 瞬間。
 半歩躱すも避けきれず、刃をねじり込まれた珂の体が宙に舞った。
 ぱっと花弁の刃が散る。
 受け身を取って転がった彼女に、ステージの花弁が散り降り注ぎ。
「忠告の礼代わりに、死ね」
 珂を刃で指し示すように、腕を突き出したドラゴンテイマー。
 それを合図に黒竜の群れは再び、彼女へと殺到をはじめ。
「……いいや、私は一人でこの身を亡くす積りは無い」
 けほ、と血を吐きながら。
 珂は更に黒爪を掲げて、口端を笑みに持ち上げて見せた。
「お主が何体目であろうと、刺し違えてでも滅ぼしてみせよう」
 漆黒の瞳に揺れる、意志の色。
 ――それは、腹を括った覚悟の色だ。
 珂は痛みに喘ぐ体を鞭打ち、竜共の着地点よりステップを踏んで。
 スカされた黒竜が勢い余ってステージの花弁を喰らう。
「征くぞ」
 地を踏み込んだ血塗れの珂が、大きく腕を振るい――。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

尭海・有珠
ドラゴンを自在に操るっぽいってだけで
私には見過ごせない存在なんだよな

グリモアを手にする者は多いが
これとお前が望むものと同一かは知らんが…いずれにせよやれるものではない

まずは黒竜の群れを潜り抜けねば。
操作する者がいる以上攻撃には一定のパターンや癖が混ざるだろうし
急襲し易いだろう位置・機会等、敵の思考を読みながら回避に繋げる
武器の2回攻撃の要領で、敵の攻撃を回数多く受け流し
外套で捌き視界を制限させ、致命傷を回避

激痛耐性で意識が飛ぶのを防ぎ、統制が微かでも乱れた瞬間に攻撃へ
氷属性の剥片の戯で右腕を狙い、剣の威力又は内包する力でもあれば抑制したい

お前に渡すグリモア等ないさ
これからも、何万年経とうともな



 どこか眠たげな海色の瞳に移り揺れる、一面の花畑。
 地に走る亀裂。
 瓦礫と花弁の中に立ち尽くす、ドラゴンテイマー。
 尭海・有珠(殲蒼・f06286)がゆるゆると首を振るうと、長い長い黒髪が風に靡いた。
「……私からすると。お前がドラゴンを自在に操ると言うだけで、見過ごす事ができない存在なんだよな」
 ひどく冷えた声音でひとりごちるように、
 海の宝珠を抱く杖を、構えた有珠。
「奇遇だな。私もお前達の出方を、見過ごす事ができなくてな」
 ドラゴンテイマーの返事と同時に、瓦礫が鎌首を擡げた。
 それは無機物。
 生命力を有さぬ全てを、黒竜ダイウルゴスの群れへと変換する力。
 黒い鱗。翼を張り出した瓦礫は、産声代わりに吠え。
 仮初めの命を与えられた黒竜の群れが、有珠へと狙いを定めて翼を広げて一気に加速する。
「――グリモアを手にする者は多い」
 一気に詰められる間合い。
 有珠は細めた瞳に冷静な色を灯したまま。
 竜の動きとドラゴンテイマーの動きを確と睨めつけながら、瓦礫に手をついて跳ねる。
 その瞬間。
 手をついた先の瓦礫は、大口を開いた竜へと捻じ曲げるように形を変え。
 ソレをある程度予測していた彼女は、跳ね飛ぶ事でその視線をロングジャケットの裾で覆い。
「このグリモアがお前の望むものと同一かは知らんが」
 重ねて、宝珠を一発叩き込み、鼻先を蹴り上げ踏み込んだ。
 そして一気に踏み切れば、跳躍で距離を取らんと。
「――いずれにせよ、やれるものでは無い」
 彼女が跳躍する先を、予測していたように。
 一直線に突撃をしてきた黒竜に足先を取られ、跳ねる有珠の躰。
「……お前達はグリモアを良く操れている」
 口を開いたドラゴンテイマーが指揮をするかのように指先を振るえば、黒竜共が咆哮を上げた。
「だが、それがグリモアの全てでは無い」
 振るった指先の示す先。
 地へと落ちた有珠へと向かって、竜の群れが迫り――。
 一気に竜が彼女へと食らいついた!
 しかし。
 そこに残っていたのは夜色のジャケットだけだ。
「……ふうん。『グリモアの全て』が何を示しているかは知らんが」
 竜の躰が大きかった故に、死角を産むことも容易であった。
 響いた声音は、更に先。
 もっともっと、ドラゴンテイマーに近い場所。
 一気に自らを狙うと予測して離脱していた有珠は、杖を片手に地を踏みしめる。
 操っている者がいる以上、竜達はそれぞれで自らに注意を向けている訳では無い。
 それが徒花たる命を与えられ、操作されるモノである限り。操っている者の視点でしか、判断はできぬであろう。
「お前に渡すグリモア等ないさ、これからも、何万年経とうともな」
 膨れ上がった魔力に、場の空気がきんと冷える。
 道阻むモノがあれば、薙ぎ払うだけだ。
 其の数百もの氷の薄刃が、宙に生まれ。
 ドラゴンテイマーの赤き刃の右腕へと喰らいついた。
 氷の力を宿した刃は、右腕――剣へと貫き刺さり、霜を落とす。
「ぐ……ッ、小癪な真似を……!」
 痛みに眉を寄せたドラゴンテイマーは、更に無機物を竜へと変え。
 有珠へと向かい、龍が吼えた。
「少しばかり、甘く見ていたようだ、な」
「いいや、まだまだ甘くみているだろう」
 殺到する黒龍。
 今度こそ、幾度も重ねられる竜の爪に裂かれながら、ソレを捌きながら。腹を貫かれる痛みに眉を寄せた有珠は、血の交じる細い囁きを漏らす。
 お前は私達が倒すのだから、と。
「それは、楽しみだ」
 ドラゴンテイマーの誂うような返答に、痛みを無理やり気持ちだけで抑え込んで。
 再び膨れ上がる、有珠の魔力。
 ――奔れ!
 その薄刃はドラゴンテイマーへと向かう、魔力の奔流と化し。
 同時に。
 大口を開いた黒竜が、有珠へと向かいその牙を――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコリネ・ユーリカ
リダンさん(f03694)と!

▼先制対策
無機物を黒竜に変換するなら、無機物からやっつければ佳いかしら。
ここは花屋として空間がお花(有機物)だけになるように、
それ以外を炎属性の魔法で燃やしてから相対しましょ。
これで貴方が身に着けている物以外は全て有機物。この状態で黒竜に変えられるかしら?

▼反撃
リダンさんと小指を繋いだ儘、悪の懐に大接近!
声までは隠せないから、ダメージを受けた場合は気合いで吹き飛ばすの。
間近で見てもかなりタイプなイケオジだけど……
シャッター棒を肘から上腕、脇の方向に差し入れ、肩の逆関節を取って極めちゃう!
ドン・フリーダムに与するより、私達と組んでた方が良かったって後悔させてあげる。


リダン・ムグルエギ
ニコリネさん(f02123)と

なんというイケオジ
で、なんでドンちゃんに力貸したりしたの?

今回のデザインは無機物ゼロ作戦
無機物は一切持ち込まないわ

事前に二人の衣装を作るわ
無機物を一切使わぬ帯で留める民族衣装
服には見た人に「見るもの全部が有機物に見える」ような催眠模様を仕込むの
綿等も詰め込み防御力は十分に確保

戦場は有機物である花を使った足場
こうすれば相手の身に着けてる分くらいしか無機物は無いはず
周囲に機械があれば可能なら事前にハッキングし落としたいわ

転送時に布製の服の山を持ち込んで壁にして時間を稼ぎニコリネさんのコードに繋ぐの

消えたまま近寄り血を塗料にコード発動
イケてる顔を赤に染め…ぶん殴るわ!



 地を蹴上げ。
 放たれた矢の如く走り出た、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)の蜂蜜色の柔らかな髪が靡き。
 腕を伸ばして、『手をつなぐ』。
 ニコリネが血塗れの有珠の手を引くと、がちんと空を噛んだ黒竜の狂牙。
「変わりにこちらを、召し上がれ!」
 竜口へと叩き込まれる、徒花たる魂を燃やし尽くす魔力の炎。
 爆ぜる火花に煽られ、舞い踊る花弁。
 無機物とは、有機物以外のすべての物質である。
 全てを燃やしつくす事は難しくはあるが、竜と化した無機物を燃やす事は出来る。
 跋扈する黒竜共を燃やす、ニコリネの炎の魔力。

 燃えながらも、それでも尚喰らいついてきた、一体の黒竜を蹴り倒す蹄脚。
 あーあ、血がでちゃっている。大体こういう肉体労働は、アタシらしくもないのだけれど。
 包帯代わりに布を巻き付けて、ゆらゆら揺れる尾。
「でも。近くで見るのは二度目だけれどもやっぱりイケオジねぇ」
「そうねぇ、私は初めてだけれど。やっぱりイケオジよね」
 ニコリネとお揃いの民族衣装めいた衣装。
 壁代わりに持ち込んだ服の山の前で。
 星空めいた角の伸びた青い髪を掻き上げる、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が首を傾ぎ。傷ついた有珠をステージの端へと避難させ終えたニコリネはリダンの横に戻ると、コクコクと頷いた。
「――で、なんでドンちゃんに力貸したりしたの?」
「――ドン・フリーダムの思想は、明確に世界を破壊する思想だ」
 宇宙山羊の問いに、短く言葉を零すドラゴンテイマー。
 ドラゴンテイマー……、彼の視界では今。
 先の戦いによりステージが割れ壊れて生まれた瓦礫も、リダンの持ち込んだ服の山も全てが花に見えている。
 それはリダンの作った衣装に仕込まれた暗示が、模様として作用した結果だ。
 しかしそれはただ、感覚がそう理解しているだけだ。
 眉を少しだけ跳ねたまま試すかのようにドラゴンテイマーが腕を振るえば、花に見えていた瓦礫が黒竜として鎌首を擡げ、大きく翼を張り上げた。
「それは私が与する相応しいと、判断しただけだ」
「そう。――あーあ。やーね、すぐ対応できちゃうデキるオトコって」
「修羅の世界に生きるって大変なのねぇ」
 肩を竦めたリダンの小指に、優しく小指を絡めたニコリネは小さく首を揺すって。
 逆の手で指先を唇に当てる。
 これからは、しー、しましょう。
 リダンとニコリネへと、殺到する黒竜。
 勢いに舞い上がる、花弁の雨の中。小指と小指を繋いだ二人は、一気に駆け出した。
 その瞬間。
 舞う花弁の中より、二人の姿はかき消える。
 それは、リダンとニコリネの秘密の聖域。
「!」
 息を飲むドラゴンテイマー。
 二人の居た場所へと体当たりをブチかました黒竜達は、対象を見失った勢いそのまま花畑を滑り荒らし。
 更に舞い散る花弁は煙幕めいて。
 ドラゴンテイマーが操る黒竜には、自らで考える力は無い。
 彼が対象を見失えば、黒竜共も戸惑う他は無いのだ。

 とくとくと痛みを伝える傷口。
 ひゅう、と喉を鳴らしながら、有珠は唇を結ぶ。
「だから、……お前は私達を甘くみていると……言っただろう?」
 ステージの端で傷を抑えながら、戦いの行く末を見守る彼女は小さく呟いた。

 舞い散る花弁にその足取りを隠し。
 姿を透明に変えたまま、ドラゴンテイマーへと肉薄したリダンとニコリネ。
 二人を見失い。警戒しながら彼が背後に感じた気配に振り向くも、――もう遅い。
「えいっ!」
 シャッター棒をドラゴンテイマーの肘から脇へと差し込んで、ニコリネが肩の関節を逆に極め。
「ドン・フリーダムに与するより、私達と組んでた方が良かったって後悔させてあげる!」
「そのイケてる顔を、――ぶん殴るわッ!」
 黒竜に噛みちぎられた血をインク代わりに、リダンはドラコンテイマーの頬へと拳を叩き込んだ。
 ぐ、と喉を鳴らして呻くドラゴンテイマーに。
「――……でも、やっぱり間近で見ても、かなりタイプのイケオジね!」
 ニコリネはちょっと元気になりつつ言った。
 よかったねえ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

神埜・常盤
さて、黒竜から何とかしなきゃねェ
群れの攻撃を防御するのは骨が折れるし、回避に全力を注ごう!

動物と話す技で彼らの声に耳傾けたり
第六感活用する事で攻撃の軌道を予測し回避
敵の動きを観察し見切りも狙う
あとはマヒの術を掛けた護符をばら撒き、竜へ範囲攻撃したり
催眠術で同士討ちを嗾けて本体への道も開きたいなァ

敵本体へは天鼠の輪舞曲で捨て身の一撃を
動物使いの技で天鼠達を上手く操り
鎧無視攻撃の傍ら吸血させて貰おうか
君の命は美酒にも劣らないだろうねェ

物理的な攻撃にはオーラ防御で対処、傷は激痛耐性で堪えるよ
僕の愛する此の愉快な世界を散々掻き回してくれたんだ
礼の1つくらいさせてくれ給えよ
紡ぐ軽口に呪詛を潜ませて



「小癪な!」
 関節を極めたニコリネをその膂力だけで振りほどき、バックステップを踏んだドラゴンテイマー。
 呼応するかのように、咆哮を上げる黒竜ダイウルゴスの群れ。
 血を、炎を、仮初めの命を撒き散らして、黒竜は駆ける。
「――嗚呼、危ないねェ」
 滅茶苦茶な動きとは言え、操っている者が居る以上何処かに癖はあるものだ。
 探偵たる倫理的思考による、軌道予測。
 後必要なモノは、勘と運だ。
 インバネスコートのケープをはためかせてバックステップを踏んだ神埜・常盤(宵色ガイヤルド・f04783)は、突っ込んできた黒竜をすんでの所で避け。
 爆ぜるように飛んできた砂礫へと突き出した護符より、破魔の防御壁が生まれ礫を弾く。
 それは強い防御壁では無いが、砂礫を弾く程度であれば困りはしない。
「然し、こんなに敵を生み出して疲れはしないのかねェ」
 どこか飄然とした嘯き。
 しかしその道化めいた仮面の下で、常盤は冷静に判断をしている。
 たった今対峙している敵は、格上だ。
 だからこそ常盤は回避に全力を注ぎ、隙を見計らう。
 真上から滑空して、風を斬って振り落ちるてくる黒竜を飛び避け。横から大口を開いてつっこんできた竜の首の下を屈んで、下を潜り抜ける。
 慌ててねじり込まれた爪が服ごと腕を裂くが、抉れてはいない。
 その口の中に麻痺の術を仕込んだ符を放り込んでやってから、更にサイドステップを刻み。
 鱗が、牙が、爪が、どれほど自らを傷つけようとも。
 致命傷とは至らぬように、常盤は避け続ける。
 両手に構えた符を同時に二匹の竜へと貼り付けると、隙間を塗って高く跳ねた。
 血濡れと成りながらも、常盤は観察を続ける。
 それが、何よりも敵への近道だと信じ。
「チョロチョロと目障りな」
「あァ、情けないことに。僕は相手に勝算も無いまま、無謀に突っ込む事が出来無くてねェ」
「ならば何故、戦場に現れたのだ?」
「そりゃァ……、」
 落ちる影。
 ドラゴンテイマーと言葉を交わす常盤の頭上に、突如叩き落とされた黒竜の尾。
 紡ぐ言葉半ばに、途切れた声音。
 そして、地に叩き込まれた形のままの黒竜の尾の下より。
 ぞわと溢れ出す。蝙蝠、蝙蝠、蝙蝠!
「君は僕の愛する此の愉快な世界を散々掻き回してくれたんだ」
 常盤の中に流れる『吸血鬼』の血。
 半端な血とは言え眷属を操る事位できたって、不思議では無いだろう。
 蝙蝠の群れが竜を、そしてドラゴンテイマーへと一斉に襲いかかり。
 其れを好機と常盤は一気に跳ねて、ドラゴンテイマーへと間合いを詰めた。
「礼の1つくらいさせてくれ給えよ」
 一気に背後を取ると、軽口と共にドラゴンテイマーの首筋へと喰らいつく常盤。
「――君の血は僕の口に合わないかも知れないが、君の命は美酒にも劣らないンだろうねェ」
「それはご馳走出来なくて、済まない限りだ」
 円の動きで常盤を振りほどく様に、右腕の紅剣を振るうドラゴンテイマー。
 常盤はそれを後退しながらしゃがみ避け。
 踵で踏みとどまりながら、ドラゴンテイマーへと眷属たる蝙蝠を殺到させ――。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

甲斐・ツカサ
おじさん、ドラゴンを使うんだね
もしかして、帝竜ヴァルギリオスとか知ってる?
あっ、知ってても話さなくて良いよ!
全部教えて貰ったら冒険の楽しみが無くなっちゃうし!

右腕を喰らうわけにはいかないけど、近付かないと攻撃できない…とにかく右腕の攻撃をかいくぐらないと始まらないね!
リーチの差をしっかり把握して飛び込む…と見せかけて、脱いだマントで視界を遮りつつ、右腕に対する盾にしよう
勿論それだけで誤魔化せるとは限らないから、マントの後ろには残像だけを残して一瞬後退
多重に仕掛けたフェイントで少しでも注意を惹いている間に衝撃波の勢いも利用して一気に近付く!

あとは、その一瞬を活かす為に捨て身の一撃をぶちかますぞ!



 正義のスターライダーの象徴たるマフラーを靡かせて。
 瓦礫に手をついて跳ねた、甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は首を傾いだ。
「おじさん、ドラゴンを使うんだね」
 それは、アックス&ウィザーズの噂。
 かつて勇者達に滅ぼされたという『帝竜』が、千の竜が住まう忌まわしき群竜大陸と共に蘇ったという噂。
「……もしかして、帝竜ヴァルギリオスとか知ってる?」
「――」
 言葉を紡ぎながら一気に飛び出して間合いを詰めたツカサへと、瞳を細めるドラゴンテイマー。
 そこにはたと気がついた様子で、ツカサは更に言葉を重ねる。
「あっ! 知ってても話さなくて良いよ! 全部教えて貰ったら冒険の楽しみが無くなっちゃうし!」
 ツカサは『冒険家』だ。
 未知の世界に憧れ、冒険に憧れ、猟兵として駆け出した少年だ。
 だからこそ何も語らなくて良いと、緋色の外套を靡かせてドラゴンテイマーの視界を覆い。
 すぐさま振り上げられた紅剣の一撃を、残像が残る程の疾さで重心を落として、剣下へと潜って躱す。
 返す手で更に突きこまれる腕刃のリーチは、槍のようにひどく長い。
 地を爆ぜさせんばかりの勢いで地面を蹴ったツカサは、散る花弁をだけを残して。
 そのままバックステップで後退する。
 下手に近寄ってあの刃が当たった瞬間に、自らに黒竜の群れが殺到するであろう。
 それは予知の内容からも、他の猟兵達の戦いからも理解出来ていた。
 そしてこの刃を交わしただけでも、敵は竜をこちらに差し向かわせる事が分かっている。
 だからこそツカサは獲物を手に、避ける事に集中していた。
 狙うは一撃。
 地面を蹴って、跳ねて。
 ツカサだって、重ねるフェイントが徐々に合わせはじめられている事は自覚していた。
 たとえ腕力勝負であったとしても、そしてこのまま避け続ける持久力勝負であろうとも。
 このまま時間をかければ掛けるほど、分が悪くなって行く事は自覚していた。
 流れる汗を拭う事が出来ぬほど、ツカサは集中する。
 それは全て、一太刀を浴びせる一瞬の為だけに。
「そろそろ、児戯にも飽いただろう」
 ドラゴンテイマーが腕を引き絞り。
 このまま飛び込めばツカサは真っ直ぐに貫かれるであろう。
 ――だからこそ。
 地に亀裂を生むほどの衝撃を、靴裏に籠めての跳躍。
 紅い紅い外套を脱ぎ捨てて、ドラゴンテイマーへと投げつける。
 だからこそ。
 ツカサはあえて、その間合いへと飛び込む事を選んだのだ。
 今のタイミングならば、攻めては来ないだろうと相手も酌んでいるだろうと。
「――終わりだ」
 ツカサの掌の中に収まる獲物、それだ圧縮された蒼き光を纏う黒き短剣だ。
 逆手に構えた青の中に黒を照り返す刃を、腕を軋むほどに引き絞り。
「う、おおおおおおっ!」
 全ては、この一瞬の為に。
 ツカサはその腕を一気に振り上げて、逆袈裟に斬り上げる!

 ぱた、ぱた、溢れる紅い紅い血。
 溢れる血、血の混じった吐息。
「……は、……ッ」
 猟兵皆が重ねた剣戟はドラゴンテイマーの体力を確実に削り、追い詰めていたのだ。
 ツカサの放った刃は、ドラゴンテイマーの脇腹から胸を確実に刳り。
「け、ほっ……」
 同時に交わされた赤き刃は、ツカサの脇腹を貫いていた。
 そして召喚されし黒竜は空間を飲み込み、彼へと――!

成功 🔵​🔵​🔴​

セツナ・クラルス
殺気を隠さず接敵し、
毒を纏わせた鎌を薙ぐ
風の力も利用し効率的に
ダイウルゴス達に毒を摂取させよう
仕留める程の殺傷力を練る時間はないだろうし
無力化や足止めになれば上等

攻撃は可能な限り見切り、
受けた攻撃は無駄にせずパターンを学び回避精度を上げる材料にする
これだけの数を相手にするのは無駄だしね
私が欲しいのは…ドラゴンテイマーさん?
あなたの首一つだけだよ

使役竜達の注意を私に引き付けることができたら
目立たぬようゼロを召喚

いいかい、ゼロ
私になにがあろうとも
ドラゴンテイマーに一撃をくれてやることだけを考えてほしい
ふふ、問題ないよ
きみが一撃を与えたら敵に隙も見えるだろう
そうしたら包囲網から退避してみせるから


ヴォルフガング・エアレーザー
この禍々しい殺気……今までの敵とは違う。
だが相手が何者だろうと、世界を滅ぼす意思があるならば立ち向かうのみ。
誇り高き狼の牙は、決して折れることはない!

先制攻撃は「野生の勘」で「見切り」、咄嗟に狼の姿に変身し体高を低くして狙いを外し「ダッシュ」で回避。
避けきれない場合は急所への直撃を避けるよう立ち回り「激痛耐性」「覚悟」で耐える。

初撃を凌いだら【獄狼の軍団】を召喚。
ダイウルゴスの群れが残っていれば召喚した狼犬をけしかけ足止めさせる。
ドラゴンテイマーが単独になったところを「2回攻撃」で【獄狼の軍団】の増援を召喚し一斉攻撃。「勇気」を振り絞り「力溜め」で「怪力」を乗せた「鎧砕き」の牙を突き立てる。



 殺到する黒竜の中心へと。
 鎧を身に着けた獣が咲き乱れる花の弁を散らしながら、随分と破壊されたステージの上を駆けて行く。
 それは咄嗟に自らを狼の姿へと変えたヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)の姿だ。
 四肢を獣の筋力で撓らせると、一気に飛び込んで。
 ツカサの首筋を咥えた彼は、更に地を蹴った。
 ツカサへと殺到する黒竜の狙いを、彼を咥えて逃げる事でスカしたヴォルフガングは、ステージの端にツカサを避難させ。
「この禍々しい殺気……今までの敵とは違うようだな」
 人の姿へとその躰を変えて、手負いのドラゴンテイマーを睨めつける。
「ああ、そのようだね」
 ドラゴンテイマーより放たれた、数字の記された大型のダイウルゴスへと大鎌を振るいながら。
 こっくりと頷いたセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は風に毒を載せて。
「お前たちは、どんどん増えるのだな」
 傷を負いながらも、その顔色は変える事も無く。
 どこか興味深げに呟いたドラゴンテイマーが、竜の背を蹴りあげる事によって跳躍をする。
 そのまま一気にヴォルフガングの目前へと間合いを詰めて飛び込んできたドラゴンテイマーは、再び右腕の刃を返して掬い上げる形で斬り上げんと。
「それは貴様の竜もであろう!」
 ドラゴンテイマーとヴォルフガングの間を割るように、召喚されたのは地獄の炎を纏った狼犬の群れだ。
 火花を散らして、駆ける狼犬は召喚された黒竜へと食らいつき。
 更に突きこまれた刃を咄嗟に鉄塊剣で迎え撃ち。
 斬り払ったヴォルフガングはドラゴンテイマーと刃と刃を一瞬交わして、刃を滑らせて爪先で一気に踏み込むと後退した。
 ヴォルフガングは、力の弱い方では無い。
 どちらかと言えば、猟兵の達の中でも力は強い方であると言えよう。
 そして、戦いの経験もそれなりに熟して来ている方である。
 しかし、その経験があるからこそ。
 だからこそ。刃を交わしたあの一瞬で、ヴォルフガングは理解をしてしまったのだ。
 一度鍔迫り合いとなれば、敵が手負いである今でさえ自らが力負けするであろう事を。
 ――それでも、それでも。たとえ相手が何者であろうとも。
「世界を滅ぼす意思があるのならば、俺は立ち向かうだけだ!」

 溢れる殺気を隠すことも無く、セツナは笑う。
「そうだよ、こんなに竜を呼んで無駄な事をして」
 黒竜の群れの中で。鎌を振るうセツナが漏らす軽口。
「……私が欲しいのはドラゴンテイマーさん、あなたの首一つだけだよ?」
 既に、策は始まっているのだから。
 もっと、もっと場を掻き乱して視線を集めなければ。
 足元へと絡みついた、狼犬を尾で薙ぎ払ったダイウルゴスがそのまま踵を返し。
 一気に加速した黒竜は、殺気を撒き散らすセツナへと向かう。
「!」
 セツナは飛びかかってきた竜へと鎌の柄を押し込むと、鎌を滑らせて棒高跳びの要領で高く跳ねて、その一撃を避ける。
 が、次の瞬間。
 セツナは上から叩き込まれた、大型のダイウルゴスの腕によって地へと叩き落とされ。
 強かに身体を打ち据えられて、まるでボールのように彼の身体は跳ねた。
「……ッ!」
 息を飲む音。
 たとえ離れていても、聞こえぬ筈のそれが解る。
 彼と自分はふたりでひとつなのだから。
 それでも、それでも。
 だめだよ、と制するように唇に指を当てたセツナは、折れた腕と逆の手で鎌を構え直して竜達を睨めつけた。
 全ては、自らに視線を集めるが為に。
「ふふふ、問題ないよ。……私はまだ倒れちゃあ、いないもの」
 おいで、と笑った彼に殺到する黒竜達。
 セツナが敵達の目をひきつけている間に――。

 その隙を逃す事無く、ヴォルフガングとユーベルコードで呼び出されていたセツナの別人格、ゼロが駆けた。
 どれだけ恐ろしい殺気を放つ相手であろうとも。
 どれだけ相手との力の差を感じようとも。
「――誇り高き狼の牙は、決して折れることはない!」
 ヴォルフガングの声音に呼応するが如く、狼犬達が黒竜に喰らいつき。
「仕方ねェな、……クソッ!」
 獣の靭やかさで踏み切り、引き切れそうな程引き絞った腕、上半身の筋肉。
 この一太刀に全てを籠めて。
 跳ねる撥条のように飛び込んだヴォルフガングと、逆側より杖を手に迫るのはゼロだ。
「うおおおッ!」「喰らえッッ!」
 二人は同時に、竜の上に立つドラゴンテイマーへと獲物を叩き込んだ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クリストフ・ポー
連携希望

これまでの愉快な連中と違って
随分とおどろおどろしい
かつ、妙に懐かしいことを言い出す亡霊だねぇ…
余程未練を残したかな?
ドラゴンウォーリアーに返り討ちになったって?

フェイントも敵を盾にするのも何でもありさ
持てる技能を総活用した
捨て身のダンスで群れの前へ躍り出て
僕とアンジェリカで攻撃を引き受けよう


何度だって蘇るというなら
何度だって眠らせてやろう
どちらかが飽きるまで、根比べだ

でもね
僕は優しいから一つの事実として君に告げておこう
母親は亡者であれ子を育てるためなら何でもするのさ
この世でもあの世でも、過去も未来も隔てなくね
思想思索に耽る哲学者なんかより
生き残る力が強いのは
子を生み、命を繋げる女の方さ


玖・珂
愉しいな

私は弱い、だからこそ…益々闘争心が湧く
足が、腕が動くのなら、喰らいついてみせよう

――まだ、死んでおらぬぞ

大きく腕を振るい――赤き剣は弾く
情報収集し得た傾向や癖から狙いを予測して
攻撃は可能な限りいなし、回避に努めるぞ
…もう一度力勝負を挑むには、血を流し過ぎた

激痛耐性で緋色の花を繋ぎ止め
第六感、視力を研ぎ澄まし僅かでも隙が見えたなら
黒竜に黒爪を穿ち吸血し生命力を吸収

数が減じ路拓けたなら黒竜の屍を掴み投擲と同時
ダッシュで間合いを詰め陰よりドラゴンテイマーへ黒爪を揮おう
一手目は防がれても、2回攻撃で届けば重畳だ

私はグリモアを持たぬが、護り続ける限りお主は現れるのだろう
ならばその度、邪魔をしよう



「やぁ。これまでの愉快な連中と違って、随分とおどろおどろしい。……それに、妙に懐かしいことを言い出す亡霊だねぇ」
 マントを靡かせて銀糸を引き、クリストフ・ポー(美食家・f02167)はどこか揶揄うように。
 林檎色の瞳を好奇に似た色に揺らして、笑った。
「余程未練を残したかな」
 ――ドラゴンウォリアーに返り討ちになったって? なんて。
 首を傾いだクリストフは、花嫁の如き人形――アンジェリカを愛おしそうに引き寄せて。
 左手を貝のように彼女の右手と結び、右手を肩甲骨の下へと沿え、二人でダンスを始める前のようにホールドを張ってから。
 そして、視線を横へ向けると。クリストフは肩を竦めて一層笑みを深めた。
「おぉや、こちらにも亡霊が居るようだ」
「いいや――まだ、死んではおらぬぞ」
 傷塗れ、血塗れ。
 白い装束を紅に染め上げた玖・珂(モノトーン・f07438)は、幽鬼の如くゆっくりと立ち上がり。
 クリストフの言葉を遮る事も無く聞いていたドラゴンテイマーが、地を蹴った。
「愚かだな。……そのまま静かに寝ていれば、死ぬことも無かっただろうに」
 巨大なダイウルゴスを呼び出しながら、目前に迫るドラゴンテイマー。
 荒い息を整えるように、珂は深い深い深呼吸をする。
 対峙するドラゴンテイマーがここに居る誰よりも強いであろう事は、珂の身体に刻まれた傷が何よりも深く知っている。

 ――私は弱い。
 だが。
 だからこそ、上を臨む事が出来る。
 だからこそ、益々闘争心が湧いて来る。
 この脚も、腕も、心も。
 まだ、動いている。
 嗚呼、嗚呼。
 なんて、なんて。
 愉しいのだ。

「確かに愚かかも知れぬ。――しかし、喰らいついてみせよう」
「ほう」
 ドラゴンテイマーの感情の薄い相づち。
 珂は真一文字に腕を振るい、黒い爪がドラゴンテイマーの右腕その物の巨大な紅い刃を弾く。
 同時に。
 再びドラゴンテイマーの背後の空間が歪み、黒竜が鎌首を擡げるのが見えた。
 嗚呼。
 もう一度、力任せに勝負を挑むには些か血を流しすぎたが。
 ――黒竜をいなしながら、喰らいつく他あるまい。
 右瞳に咲く緋色の花を揺らして、珂が覚悟に息を呑む。

「その心意気、買ったよ☆」
 その背へと掛けられた、明るい声音。
 巨大なダイウルゴスを足場代わりに蹴り上げて。
 今まさに召喚されたダイウルゴスの群れの前へと、その身を躍らせるクリストフの声だ。
 ステップ、ターン。
「この竜達は僕とアンジェリカが引き受けようっ!」
 クリストフは竜の身に銀糸を滑らせて。人形と一緒に舞うような足取り、くうるりくるり。
 柔らかで清純な白と黒の外套が空気をはらんで、ふうわりふわり。
 それはまるで円舞曲のように。

 ドラゴンテイマー、君が何度だって蘇るというのならば。
 何度だって眠らせてやろう。

 爪を大きく振り下ろした黒竜の前へと、クリストフがあえて無防備に身を晒せば。踊りの振り付けのように、優雅に腕を振るったアンジェリカがその衝撃だけを竜へと叩き込む。
 勢いのついた巨大な尾を紙一重で跳ね避けて、逆方向から突っ込んできた竜の爪がクリストフのその身を裂こうとも。少しばかりの痛みなら、耐える事もできよう。
 いやぁー、めちゃめちゃ痛いけれどねっ!
「さあてどちらかが飽きるまで、根比べだよ」

「――恩に着る!」
 珂は礼を口に。
 気を抜けば力の抜けてしまいそうな身体に鞭を打ち据え。
 刃を叩き込んだ後に後退しようとしていたドラゴンテイマーを、追うように踏み込み駆けた。
 道すがら引っ掴んだ黒竜の屍の尾を引いて、その場で半円を描くように勢いをつけて身体を引き絞り。
「……は、あッ!」
 ドラゴンテイマーの進路を塞ぐ様に、竜の屍をブン投げた珂は一気に跳躍し――。

 巨大な黒竜を捌きながら、クリストフは楽しそうに笑い。 
 共に舞うアンジェリカが淑女のように、その服の裾を上品に揺らした。
「ねえ、ドラゴンテイマー君。僕は優しいから、一つの事実として君に告げておこう」
 林檎色の瞳を眇めて。
 クリストフは敵へと弾丸の如く飛び込んで行った珂の背を、視線だけで追う。
「母親は亡者であれ子を育てるためなら何でもするのさ。……この世でもあの世でも、過去も未来も隔てなくね」

 無理やり作り出した、黒竜の屍の行き止まり。
 珂が黒爪を振りかぶり、ドラゴンテイマーの紅刃はそれを防ぐ。

「思想思索に耽る哲学者なんかより、ずっとずっと。生き残る力が強いのは……」
 クリストフの言の葉は、舞うアンジェリカへと語りかけるように。
 布団に入ったの我が子に紡ぐ物語のように。
 目の前に迫る黒竜の一撃を銀糸で受け捌いて躱し、その腕を蹴り上げながら。
「――子を生み、命を繋げる女の方さ」
 クリストフは肩を竦めた。

 珂は一撃を弾かれようとも喰らいつく勢いで、紅色の刃を無理やり制し。
 ドラゴンテイマーと目線を躱すと、低く呟いた。
「――私はグリモアを持たぬが、護り続ける限りお主は現れるのだろう」
 そのまま、敵の右腕の刀身を足場に。
 彼の肩に片手を付いて馬跳びの様に跳ねた珂は、背後に落ちるように滑り込み。腕を引いて、上半身を引き絞り――。
「ならば私はその度、お主の邪魔をしよう!」
 腕を鞭のように撓らせて黒爪を袈裟斬りに叩き込むと、ドラゴンテイマーの背を引き裂いた!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

奇鳥・カイト
クリムゾンキャリバーに対し、からくり人形を使って対処する
あの右腕からの初撃が当たる対象を人形にすれば、ある程度のダメージは回避出来るはずだ
……ちと心苦しいがな

要は当たる対象が俺だと錯覚させればいい
人形に黒い服か布なんかを着せるか、俺が上着を脱いで白いシャツだけになっておくなどしておく

【騙し討ち】する形にはなるが……ま、仕返しだ
悪く思うなよ
あと──あんま近くに寄るんじゃねぇぞ
巻き込んじまうからな


味方のことは面倒そうにするが結構気にかけます、素直じゃありません
遠ざけようとするのは怪我するのを心配している為だとか

連携・アドリブ歓迎


ヴィクトル・サリヴァン
キマイラと言われればそう見えなくもないけど何か根本的に違うような?
完全にファンタジーな世界から来たようにも見えるけども、まーあとで考えよう。
ほっといたらそれこそ怖い、今のうちにね。

他の猟兵と連携。
高速詠唱で広範囲に風の魔法を展開、周囲の物体を吹き飛ばしつつ、変化した竜を足止め。
その直後に、もしくは竜化の兆候あれば銛を属性攻撃の氷で覆いテイマーへと狙い澄まし投擲。
肝心な所で武器を竜にして奇襲してくるかもだし。
少しでも向かってくる竜を減らしたら野性の勘活かして足場から足場へ移動しUC準備、
準備できたら氷と竜巻を合成、氷の嵐で黒竜を巻き込みつつテイマーに叩きつけ動きを封じよう。

※アドリブ絡み等お任せ



 吹き荒れる風は嵐の如く、黒竜の羽ばたきを阻害する強い風。
 砂を、物を巻き上げる風は、ステージに花弁を吹雪かせて。
 詰襟の裾を風に煽られながら嵐の中を駆け込んで来た少女の姿を認めると、幾対もの翼を血に濡らしながらドラゴンテイマーは一瞬で深く踏み込んだ。
「!」
 帽子を目深に被りこんだ少女は、ぎこちなく付き添う少年姿の人形に繋がる繰糸を擡げ。
 その鍔の奥で敵を睨めつけてから、迫る紅色の刃へ両腕を交わしてガードに上げた
「……」
 猟兵達の重ねた攻撃によって手負いとは言え、敵のその膂力は侮れず恐ろしいもの。
 鋭い一閃に詰襟の袖は千切れ、少女の腕は深く斬り裂かれ。
 露出した腕から――、血が流れる事は無い。
 その少女の後ろに佇んでいた白いシャツの人形――、否。奇鳥・カイト(燻る血潮・f03912)は指先より伸びた操り糸を、きゅっと握り込んでから。
 少女――少女人形に目深に被せていた帽子の鍔を掴んで、自らで被り直した。
 同時にドラゴンテイマーの背後より、荒れ狂う咆哮が響く。
「人形か」
 敵の確認するかのような呟き。
「ああ」
 ……ああ、それでも。
 人形とは言え、彼女が傷つく事は心地よい物では無い。
 かしゃん、とその四肢のバランスを一度崩した少女人形は、引き絞られた糸に繰られ。
 たった今自らを斬ったドラゴンテイマーへと、負傷した筈の腕を振りかぶる。
「騙し討ちする形にはなったが……」
 光ある限り、影からは逃れられぬ。重ねて、少女人形より伝う影。
 それは殺到する竜の群れよりも早く、ドラゴンテイマーへと至り――。影より爆ぜた黒血の刃が、敵を脚を刺し貫く。
「……ま、そいつの仕返しだ。悪く思うなよ」
 呟いたカイトは、一度目線を落としてから。
 ドラゴンテイマーの背後より迫る、竜の群れへと向き直り――。
「あの人……キマイラと言われればそう見えなくもないけど。なにか根本的に違うような気がするなあ」
 カイトを喰らわんと大口を開いた、竜の口を刺し貫く銛を見た。
 それはいつの間にか横へと立っていた、少しでも竜の数を減らすべく周囲の物体を吹き飛ばす風を維持しているヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)の得物だ。
「完全にファンタジーな世界から来たようにも見えるよね」
「……あんま近くに寄るんじゃねェよ」
 巻き込んじまうだろう、という言葉を飲み込んで。
 迷惑そうな表情を作って、眉を寄せたカイト。
 返事を余り気にしていないのか。頷くだけ頷いたヴィクトルは、マイペースに更に魔力を爆ぜさせて。
「まー、その辺りは後で考えよう。……今は、ほっといたら怖いだろう?」
 向かいくる竜の群れ。
 そして再び刹那を駆けて踏み込んできた、ドラゴンテイマーの狂刃が振りかざされ――。
 黒竜が骸と化して地へと崩れ堕ちる前に、三又銛を引き抜いたヴィクトルは。返す手でドラゴンテイマーのその一太刀を、銛の柄で受け止める。
 衝撃。
 それと同時に、吹き荒れていた風がぴたりと止んだ。
 それはヴィクトルより、風を維持する程の余裕が失われたという事だ。
 噛み締めた奥歯。
 防御に魔力を廻し、重心を落とし受け止める体勢を取ったというのに。
 その勢いにヴィクトルの大きな体躯は引きずられ、彼の踵の形に地に轍が生まれる。
 それは攻撃を受け止めただけで、全身が痛む程の圧。背に走る悪寒がぞわぞわと『怖さ』を本能へと伝える。
 だからといって、逃げる訳もないのだけれど。
「……仕方ねぇな、合わせろよ」
「助かるよ」
 腹を括ったかのように呟いたカイトは、人形の繰糸を再び引き絞って再び影を駆けさせた。
 相手は格上。
 それは――けして口には出さぬが、仲間が傷つく事を厭う事も出来ぬほどに。
 風が収まった事により、横より喰らいついてきた黒竜の鼻先へと跳ねてその牙を躱す。
 更に襲いかかる竜爪を人形がいなし。逆方向から叩き込まれた尾は、カイトの身体を傷つける。
「行くよ!」
「ああ」
 自らに喰らいついて来る敵を躱す余裕も、今は無い。
 銛の柄に刃を滑らせて、バックステップを踏みながらヴィクトルは魔力を練り上げる。
 喰らわれながらも爆ぜ交じる属性は、氷と竜巻。
 それは黒竜を、ドラゴンテイマーを裂いて足止めするが為。
 ヴィクトルが今発動のできる、全力の魔力を注ぎ込んだ魔法だ。
 生成された氷の刃は、荒れ狂い吹き乱れ。
 眉を眇めるドラゴンテイマー。
「……ッ!」
 同時に放たれたカイトの血刃が、ドラゴンテイマーの左腕を跳ね飛ばした。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジェイクス・ライアー
【紳士と剣】
ダンディズムを感じると言いたいところだが、私の美学には反するな

●対先制
遠距離射撃で数減らしを試みるが、それよりも良い方法があるというなら乗る
剣の身でどれ程か訝しみこそすれ、信頼はある
黒塊の剣を取り振ることに躊躇なし
回避困難な間合いまで引きつけ剣を振る
ほう、こいつは便利だな

●反撃
接近戦
[見切り・残像]で攻撃を回避しつつ、残存竜等、死角からの攻撃は剣の目に従い対処
接近戦の真意は、[早業]で鋼糸を関節の要所に括り付ける事。敵の動きを阻害せず、違和感を与えさせず

防戦一方と刷り込まれる頃には準備が整う
待ったぞ、この時を
鋼糸を引き絞れば、お前は自由を失う

天を蹴る
この剣に斬り伏せられぬものはない


オブシダン・ソード
【紳士と剣】
ねえジェイクス。あいつのヒゲどう思う?

●対応
人間の姿で戦闘開始
敵のUCが発動した直後にこちらも炎属性魔法で範囲攻撃
牽制も兼ねて、一番弱い1がたくさん居る内に削っておく

●反撃
さて、相棒。腕が鳴るんじゃないかな?
UCを発動して彼の手元へ
持ち手の意を汲んで、斬撃に合わせて遠間を薙ぎ払おう
露払いとかに上手く使って

戦闘中は軽口で発破をかけて鼓舞
竜も多数居る事だし、相棒が立ち回りやすいよう死角を補ってあげる
4時の方向、『5』、みたいな
僕の視界の中だからね、相棒は見ないままでも刃は飛ばせるはずさ

緊急時は仮初の身体を出してオーラ防御

やられっぱなしは性に合わないもんねぇ
行こう、僕がぶった斬ってあげる



「寄って集って攻撃するのは、少しだけ気が引ける気もするね」
「相手もそうであろう。それに――それが策であれば、兵は従うだけだ」
「そうだね、それが相棒の望みなら」
 僕は、武器だからね。
 フードを目深に被ったオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)がぱちんと指先を弾くと、幾つもの炎が爆ぜ。
 一目で上質な生地と解る上着に身を包んだジェイクス・ライアー(驟雨・f00584)が黒傘型の散弾銃を、巨大な黒竜の群れへと打ち放つ。

 1と記された竜達が炎に巻かれ、雨の如く振る散弾に身を貫かれる。
 片腕を失ったドラゴンテイマーが二人へと放った巨大なダイウルゴス達には、数字が記されていた。
 奴らが合体するとその数字が増え、竜は更に力を増すという。
 その前に数を減らしたい所ではあるのだが――。
 間合いを詰めんと跳ねる竜の翼を撃ち落とし。
 飛びついてきた竜の口へと炎を叩き込む。
 数値の上がった竜はそれでも倒れず、身体をぶるると震わせて悶え。
 ジェイクスの指輪より伸びた鋼糸が引き絞られれば、竜の素っ首が血へと転がった。
「……しかし、全く。キリが無いな」
「ふふふ、倒しているのに不思議と減っている気がしないね」
 ならば、そろそろ僕が君の剣になろう。
 肩を竦めたジェイクスに、オブシダンが手を伸ばすと同時に彼の姿が解け。
 次の瞬間には、原始的な一振りの黒曜石の剣がジェイクスの掌の中に結ばれていた。
「さて、相棒。腕が鳴るんじゃないかな?」
「さてね」
 片眉を跳ねたジェイクスは、その手に馴染む柄をしかと握りしめ。
 試すかのように鋭く半円を描けば、目前まで迫っていた巨大なダイウルゴスが斬撃にすぱんと爆ぜた。
「……ほう、こいつは便利だな」
「そうでしょ? 君なら僕を上手く扱ってくれると思ってね」
「そうか」
 く、と。
 掌の中より自らのプライドを擽るような言葉を吐くオブシダンに、唇を笑みに歪めたジェイクスは残る竜を片付けるながら、一気にドラゴンテイマーへと駆ける。
 鋭い放物線を描いて高角度より迫り来る竜の迎撃に対し、血を蹴って一気に加速したジェイクスはその巨体の下に潜り込んでその身を裂き。
「相棒、5時の方向!」
 指輪に歯を軽く立てたジェイクスは、後ろを振り向くことも無く斬撃を繰り出した。
 背後で地に崩れ落ちた敵の音だけを聞く。
「さっすがぁ、相棒。お上手~。さあ、がんばれ、がんばれ」
 オブシダンの雑な鼓舞に瞳を細めて、一気にジェイクスは踏み込んだ。

 身を低く構えるジェイクスは、掬い上げる形でドラゴンテイマーの右腕の刃を払い上げ。
 瞬時に対応したドラゴンテイマーと切り結び、更に踏み込み刃を交わす。
 鋭く吐息を零したジェイクスは、跳躍し。重ねて上段より黒曜の刃を叩き込む!
「……っ」
 片腕を失っている敵は一瞬だけ崩したバランスを大きく翼に風をはらむ事で、その場に喰らいつき。
 瞬時に距離を取るべく、後方へと跳ねるジェイクス。
 反撃に振り下ろされた刃の反動を、刃を握らぬ掌で地を付くことで制御しながら。地に着いた掌を握りしめて姿勢を正し、オブシダンを構え直した。
「――死ね」
 低い低いドラゴンテイマーの声。
 とった筈の距離を一瞬で詰め、切り込まれる剣撃は恐ろしく早い。
「……!」
 避けきれぬと眉を寄せ、ガードに腕を上げたジェイクスの掌の中より質量が失われ。
 ぱっと彼の前へと立ち現れたフード姿の男。
 それは、オブシダンの人としての姿。
 オブシダンの仮初めの身体。
「相棒を守るのは、武器の仕事だからね」
 いつものように笑うと自らの器物を構えて、紅色の斬撃を受け止める。
 仮初めの身体とは言え、斬られれば痛い。ダメージだって蓄積する。
 軋んで滑る刃がオブシダンの肩を切り裂き、弾き飛ばされてしまいそうな圧に崩れるバランス。
 オブシダンが跳ね飛ばされそうになったその瞬間。
 その背を受け止めたのは、相棒たるジェイクスの腕であった。
「ふふふ、ありがとう。やっぱり僕は使われる方が得意だな」
 同時に再び解けたオブシダンが、刃と化して彼の掌の中に収まり。
「助かった。――待ったぞ、この時を」
「そうだね、やられっぱなしは性に合わないもんねぇ」
 きゅ、とジェイクスは逆の手に握りしめていた、細い細い鋼糸を引き絞った。

「……!」
 ぐ、と身をその場に繋ぎ止められ、奥歯を噛むドラゴンテイマー。
 勿論。
 ドラゴンテイマーだって、その鋼糸に気づいていない訳では無かった。
 しかしここに至るまで猟兵達に重ねられた疲労と傷は、対策を取る事を許しはしなかったのだ。
 ジェイクスが戦いながら結んだ鋼糸が、格上たるドラゴンテイマーの身体を繋ぎ止められたのは、猟兵達皆の功績と言えるであろう。
「行こうか、相棒」
「ああ」
 オブシダンの言葉に相槌を打ったジェイクスが力を開放すれば、脳の中で結ぶ『一つ』だけが強く感じられる。
 それは理性を喰らい、身体能力を高める力。
 ころせ。
 闘争に理性を焦がし、ジェイクスは天を蹴る。

 地へと繋ぎ止めたドラゴンテイマーへと向かって、神風の如く速度で地を蹴ると黒曜の刃を掲げ。
 踏み込みからの袈裟斬り、更に地を蹴って旋転から逆水平斬り。
「相棒と僕に」「――斬り伏せられぬものはない!」
 仕上げ、と大上段に構えて掲げたオブシダンでドラゴンテイマーの頭を、――叩き斬った!
 ドラゴンテイマーの身体が、地に沈んだ。
 それと同時に彼に召喚された黒竜、そして彼に仮初めの命を与えられた黒竜が風に煽られた砂のように溶け始め。

「……そういえば、ねえジェイクス。あいつのヒゲどう思った?」
「ダンディズムを感じたと言いたいところだが、――私の美学には反していたな」
 相棒と武器は、軽口を一つ。
 無数に咲いていた花より散る片は、猟兵達の勝利を祝福するかのように風に舞い踊っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月28日


挿絵イラスト