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バトルオブフラワーズ⑫〜紫の帳を切り裂け!

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #ドラゴンテイマー

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「後は彼ら次第。私の役目は「持ち帰る」のみ」
 システム・フラワーズ中枢から少し外れたエリア。
 目指すべきオブリビオン・フォーミュラから逸れた脇道に、紫の霧がたゆたっている。
 近づくにつれ、それは石の柱の上に静かに佇む男の形をとった。
「こちらに来るか。彼女を侮っているというべきか、余裕があるというべきか……」
 男は射抜くような瞳で猟兵たちを見つめると翼を広げ、地面へと降り立った。
「まあいい、お前たちの出方を見ておこう」



「まあ、俺が言うまでもなく、全員分かってるな。ここまでの敵の比じゃなく、ドラゴンテイマーは強い」
 ジロー・フォルスター(現実主義者の聖者・f02140)は予知の中で見た、彼の敵の姿を思い起こす。

 鳥の翼と蝙蝠の翼が入り混じった3対の翼。
 赤き剣となった右腕。
 名の通りに従える黒い竜。
 その全てを、紫の霧が覆い隠している。

「ド派手な姿が目につくが、この霧も厄介かもしれねえな。必ず対策は取っていってくれ。あとはだな……」
 ジローはサングラスにに隠した赤い瞳を鋭く光らせて、システム・フラワーズの見取り図を見つめる。
 ドラゴンテイマーは、システム・フラワーズ中枢への道を阻んでなどいない。猟兵が攻め入るのを、ただそこへ佇んで見ているだけだ。
「いわば、オブリビオン・フォーミュラを倒す道中の『寄り道』ってとこだ。だからこそ、こいつには何かあるんじゃねえかと思っちまう。俺もだぜ」
 にやりと笑って、ジローは見取り図から顔を上げた。
「気にかかるなら、やれることは全部やってみようぜ。普通の手が通じないなら、相手の予測の上を行け。自分のユーベルコードの長所を活かし、相手の弱点をとことん突いていけ。その先には必ず勝機が見えるはずだ」
 その表情は聖者というより、ただの喧嘩好きのように見える。
「俺にできるのは、お前たちをヤツの近くまで送ることと、勝利を祈ることくらいだ。全員の勝利を祈る。そして何より無事でな」
 黒い聖者はそうして手を組み合わせ、転移門を開く。


氷水 晶
 ドラゴンテイマーとの戦いをお届けします。
 文句なしの強敵です。ボスです。
 困難を乗り越える、力強いプレイングをお待ちしています……!

●ドラゴンテイマーについて
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

●紫の霧
 戦場全体を包み、ドラゴンテイマーに近づくにつれ濃くなります。
 はぐれたりなどしないよう、十分に気をつけてください。

●地形
 紫や青の花の足場が地面を埋め尽くしています。
 花畑の所々に石柱が突き出しています。
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第1章 ボス戦 『ドラゴンテイマー』

POW   :    クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ハルヨリ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゾーク・ディナイアル
☆戦術
SPD勝負
先制で生み出された大型竜を『クイックドロウ』で素早く放つ魔導銃の射撃と妖剣の『衝撃波』ですかさず倒す、合体させないのが第一。
もし倒し切れなかったら『野生の勘』で攻撃を『見切って』全力回避だ!
「これは使うしかないよねぇ、切り札を!」
そしてUC【ハルシオン起動】で魔導騎士に搭乗、スラスターで飛翔し巧みな『騎乗・操縦』技術で高機動『空中戦』をしながら敵の攻撃を『野生の勘』で『見切り』躱して、ハイ・ビームライフルの『クイックドロウ』 や『怪力』機構で振るうビームサーベルの『カウンター』で大型竜を素早く撃退しながら距離を詰め、ボスにビームサーベルを突き刺して『傷口を抉る』。
※アドリブ歓迎



 黒竜、ダイウルゴスの最初の牙をまともに受けなかったのは、ゾーク・ディナイアル(強化エルフ兵の出来損ない・f11288)の野生の勘が働いたおかげだった。

 周辺に漂う紫の霧はゾークが歩くたびに濃くなり、方向感覚を失わせた。さっきまで薄く見えていた空はもう見えない。体に纏わりつくような紫色に、最初に外から目星をつけた場所にまっすぐ進んでいるのかさえも定かではなくなる。霧に足を踏み入れた時には見えていた自分の足が、朧な影としか捉えられなくなってきたあたり、ドラゴンテイマー本体に近付いているのは確かだろう。
 こんな色をしているというのに、今のところ体には害が無さそうなのが救いだろうか。
 その霧の奥から、白い牙が閃いた。

 左腕を牙に貫かれながら、ゾークは妖剣『ガディス』で反撃を試みる。切っ先に鱗を何枚か削り取られ、逆鱗に『3』と刻まれたダイウルゴスは牙を抜いて紫の霧の中へ引きさがった。
 見れば、妖剣の衝撃波が多少なりとも周辺の霧を吹き飛ばしている。足元が見えるうちに、ゾークは周囲よりも明るく霧が薄いであろう方向へと退避する。
 ドラゴンテイマーはまだその姿すら見せていない。
「何とかなると思ったけどこの霧、思ったよりずっと厄介だねぇ」
 ゾークはユーベルコードを発動させて魔導騎士『ハルシオン』の胸部に乗り込んだ。上昇して霧の中から抜け出すと、空中からの偵察を試みる。
 カメラがディスプレイに映し出す映像の向こう、渦巻くように流れる霧の塊の中に、ダイウルゴスの影が浮いては沈む。
 タイミングを合わせて狙い撃ったビームライフルのエネルギーは、霧に吸収されて減衰しながらも黒竜の背に当たった。多少のダメージはあったか、竜は体をぐらつかせるが倒すまでには至らない。黒竜は再び濃い紫の中に沈んだ。
 ハルシオンが持つもう一つの武器、ビームサーベルも無力とまではいかないが、この霧の中では散乱して不利な戦いを強いられるだろう。
 ここまでが、ゾークが今やれる事の限界だ。
 ドラゴンテイマーと戦うためには、まずこの紫の霧をどうにかしなくてはならない。
 左腕の痛みと悔しい想いを噛みしめ、ゾークは猟兵仲間に今得た情報を伝えるべく、転送場所へと戻る。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

モッチ・モチ
「とんでもなく強そうデスネ。侮れまセン!」
霧が濃いので、まずはこの霧をなんとかしましょうか。

「精霊さんおねがいしマス!」
所持品の風のお守りに念じて、風の精霊さんに風を起こしてもらいマスヨ。これで、ひげのおじさんの位置が分かればいいのデスガ。

赤い剣の右腕による攻撃が来たら、初撃を【無抵抗な小さき巨人】で回避。
さらに風に乗って、姿をくらまし、おじさんが見失ったところで、ユーベルコードを解除。大型ナイフによる不意打ちの斬撃を喰らわせマス!
「これならどうデス!」



「とんでもなく強そうデスネ。侮れまセン!」
 モッチ・モチ(ボス専門バスター・f09023)はこの中のどこかにいるであろうドラゴンテイマーを見通すように額に手を当てる。
 目の前には紫の霧が渦を巻いて留まっている。小高い丘のように塊となったそれは、気体にしては重さを感じさせる動きで緩慢に流れていた。
「(まずはこの霧を何とかしまショウカ)」
 服を探ると、身に着けていたお守りを取り出す。それを掲げてモッチは呼びかけた。
「精霊さん、お願いしマス!」
 そよ風が頬を撫でたかと思えば、つむじ風が服の裾をはためかせる。お守りに宿った風の精霊が彼女の声に応えたのだ。
 モッチは強風になびく自分の髪を押さえて目を凝らす。
 大きな空気の流れに乗って、紫の霧が空に巻き上げられていく。紫がかった薄い層が晴れ、ここに来るまでに見たシステム・フラワーズの風景が色を取り戻した。
 強風の中にあって、そこだけ風に流されず色の濃いままの箇所が一点ある。風の精霊に念じて中に切り込ませれば、綿菓子を少しずつ千切るように欠け始めた。
 その時、皮膚に微弱な電流が流れたかのような違和感を感じた。
 紫一色の中に生じた真紅。モッチの第六感が危険を告げる中、紫の薄墨を裂くように姿を現したドラゴンテイマーは、真紅の剣と化した右腕を真っ直ぐ前に突き出した。
 狙うは肋骨の間。目の前の猟兵の心臓に向かい赤い斬撃が最短距離を走る。
「……なに」
 手ごたえがない。切っ先が食い込む直前までそこにいた猟兵の姿が消えている。何か猟兵自身が動きを見せたのならば、自分の目に見切れぬはずはない。
 霧の大半を空中に霧散させた上昇気流が髪をなぶる。その流れを目で追って、ドラゴンテイマーは咄嗟に手近な左腕と翼を頭の前に掲げた。
 煌めいた光の正体を見極める前に、ドラゴンテイマーの左腕が深く斬り裂かれる。赤黒い羽が風に舞う。
 足元の青い花に血色の斑点が散った。

 ユーベルコードで豆粒ほどの大きさとなったモッチは、自身の操る風にあえて舞い上げられた。敵が自分の姿を見失うと同時に上空でユーベルコードを解除する。元の大きさに戻ると、そのまま身の丈ほどもある『大型銀製ナイフ』に自重を乗せてドラゴンテイマーの頭部に向かって斬り下げた。
「これならどうデスカ! おじさん!」
 青い花に着地したモッチは、すぐさま巨大なナイフを胸元に引き戻す。
 金属同士がかち合い火花が散る。左腕の傷も厭わずに斬り込んだドラゴンテイマーの一撃はモッチのナイフによって食い止められた。初撃よりも鋭さを失っているのは、左腕の深い傷のせいだろう。
 刀身でモッチを押しやる反動と共に後ろに地を蹴ったドラゴンテイマーは、翼で空気を前に送るようにしてそのまま距離を取る。
 再び湧き上がる紫の霧が、ドラゴンテイマーの体と振り返る視線を飲み込んで隠した。



 深手を負った左腕は気休めの盾くらいにしか使い道がないだろう。
 ユーベルコードによる身体の縮小を伴った防御能力。装備を用いた霧の除去。それに相手の加齢状況を見極めての精神攻撃。
 やはり猟兵は油断ならぬ敵だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・バントライン
先制攻撃を免れないのならばその攻撃を利用させて頂きたいところ。

辺りに大きめの爆弾入り造花を設置しながら進む。
この花は無機物だ。
ドラゴンテイマーの付近でおそらく竜に変わって攻撃して来る。
周囲の花が変化するのを合図にUC発動。
作るのは私の変わり身です。これこそ真の空蝉。
中にはもちろん爆弾を入れておきますね。
爆風が一瞬でもこの霧を払ってくれる事を祈ります。
敵の位置は第六感で目星を。
目標をこの目で捕らえたら剣を抜き攻撃。
当然、相手の致命傷を狙っていきますが無理そうならあの翼だけでも叩き落とします。
貴方が翼を持っているのは気に入らない。

UCを解除して御覧なさい。
空から降る花火が貴方の死を彩るでしょう。



 紫の霧の中を黒い衣に身を包んでシン・バントライン(逆光の愛・f04752)は進む。
 足を止めて屈みこむと、両手をかざして造花を作り出した。中が空洞になった、ユーベルコード製のハリボテのような物だ。足場となった周囲の花と外見に差異はない。色も形も遜色なく出来上がっている。
 予知内容では、無機物の物体を黒竜の群れへと変える技があった。それを逆手に取れば、敵の接近に気付けるかもしれない。
 立ち上がるシンに突然、第六感が違和感を伝える。
 その正体に気付いて、シンは飛び退いた。鮮血が飛ぶ。シンの上腕を捉えた黒竜の牙が黒衣の布を切り裂いて肉を削ぐ。肉を食い千切る際、逸らした首に見えた逆鱗に『2』と数字が見える。
 第六感も用いて敵の気配を探っていなければ、代わりに頭を持っていかれていただろう。
 シンは上腕を押さえ、花の上を転がるようにして距離を取り地に伏せる。焼けるような痛みに嫌な汗が止まらない。気配を消し、必死にうめき声をかみ殺す。

 主の元に戻るとダイウルゴスは頭を垂れた。おそらく猟兵の物であろう、血に濡れた黒い布の切れ端を牙に引っかけている。ドラゴンテイマーは動かぬ左腕の代わりに、翼でダイウルゴスの額に触れた。近くにいた5体の黒竜をそいつに融合させる。
 より強大な体躯となった黒竜に、人影のある方向を切っ先で指し示す。この霧は自分の物。完全とはいかぬまでも見通すことができる。
 そうして正面からの攻撃を配下に任せ、自分は挟撃すべく横に回り込む。
 この霧の中で進む方向を見失ったか、敵の接近にも気付かず黒い装束を纏った猟兵は立ち尽くしていた。
 黒竜の顎が開かれ、口を横向けるようにして胴を噛み砕く。ぱきん、と音がした。妙に軽い音だ。
 足を止めたドラゴンテイマーの前で、黒竜は苦し気に咀嚼しかけた物を吐き出した。表面を黒く塗装された白い欠片に粉……少なくとも生物由来の物ではない。
「偽物か……!」
 そう言葉にした瞬間、その場に残されていた偽物の足が爆ぜる。瞼を閉ざし、翼で破片を防ぐ。
 爆発物か何かが仕込まれていたのだろう。幸い、纏った霧を吹き飛ばされこそしても、怪我を負うほどの威力では無い。ダイウルゴスも驚いているが無事のようだ。
「もし、動かぬ人影や怪しい物を見たら尾で破壊しろ」
 そう指示を出して黒竜を送り出し、自身も上から状況を確認するべく翼を広げる。
 ドラゴンテイマーの意識が空に向いた一瞬のことだった。
 最も下方の一対。左の蝙蝠の翼に鋭い痛みが走る。皮膜の一部を斬り裂いた黒衣の猟兵がそこにいた。

「命を捨てて機動力を削ぎにきたというわけか」
 振り向きざまの剣の一閃は、シンの腹を切り裂いて地面に転がした。黒い布を更にどす黒く染め、赤い血が青い花の上に染み出していく。
「……貴方が翼を持っているのが、気に入らなかっただけです」
 シンの様子を何の感情もなく睥睨し、ドラゴンテイマーは真紅の剣を水平に構える。動けぬ猟兵の首を刈り取らんと歩む。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ディスターブ・オフィディアン
心情
「奴が世界崩壊を目指すとあっては捨て置けんな。
 オレはまだこの世界の全てを知ってはいない」

◆霧対策&先制対策
まずは高速詠唱で属性攻撃を発動、突風によってこの紫の霧を祓おう
先制対策だが、フロンティアラインを使用すれば足場の石柱が減り、奴も花びらの足場に降り立つはずだ、そこを狙う
ダイウルゴスやドラゴンテイマーの攻撃は、見切りや残像で敵を盾にして同士討ちを起こして時間を稼ぎ、反撃のエレメンタルミサイルを発動
属性は花だ。花びらの矢を足場の花に紛れさせてドラゴンテイマーに打ち込んでやる、騙し討ちだ

「己が踏みにじるものに目もくれず、ただ上ばかり見ている。だからそうして足元をすくわれるのだ」


シール・スカッドウィル
ドンフリーダムは逝ったか……しかし、お前を逃がすわけにはいかん。
可能な限り、ここで削る。

アトモス起動。
A/Bによる<武器改造>で弾薬装填、イグニッション。
風<属性攻撃>の応用で、風圧の防壁を生成。
耐えながらさらに弾薬を炸裂させていき、高純度のスフィアを精製。
タイミングを見て取り出し、<全力魔法>を乗せてこれを群れの内部に投擲。
局所的な暴嵐を起こして飲み込み、蹴散らす。

すべてを散らせるとは思わんが、【転写】を使う時間は稼ごう。
先んじて弾薬を取り出す手段は確保してある。
後はこれを使って、
「ダイウルゴスの共食いといこう」

もちろん、お前も逃がさない。
黒竜を伴い、その心臓、正確に<スナイプ>させて貰う。



 腕一本で体を支える猟兵の姿を、突風が霧を運んで覆い隠した。
「柱の上にはもう立てんようだな」
 振り向きざまに放たれた黒竜の群れを見切って躱し、ディスターブ・オフィディアン(真実を 暴く/葬る モノ・f00053)はドラゴンテイマーに言い放つ。ローブに全身を包み、フードを目深にかぶった猟兵はどこか得体の知れない空気を纏っていた。
 風を操り視界を確保しながらやってきたディスターブの予想通り、突き出していた石柱のひとつが消え失せている。周辺にあって、最も明確に無機物と言い切れる構造物だ。
 ターンして戻ってきた黒竜の群れを大きく一歩引いて躱し、それを盾にしてドラゴンテイマーの剣の範囲から逃れる。
 下がり際にちらと後ろを見遣れば、ディスターブが霧に隠した猟兵は血の跡を残して姿を消していた。あれだけの傷を負い血を失っているのであれば、それが今取れる最善手であろう。
 残像を残して黒竜の群れを惑わせ、ディスターブは更に一歩、もう一歩と下がっていく。下がりながら、口を開く。
「お前が世界崩壊を目指すとあっては捨て置けんな。オレはまだ、この世界の全てを知ってはいない」
「世界の全てときたか。どちらの陣営も欲の深いことだ」
 ドラゴンテイマーの口調は、ディスターブが求めるものにさしたる興味もない様子だ。言葉を交わしながら、剣のリーチに捉えようとドラゴンテイマーは距離を詰める。
 背中にひやりとした気配を感じ、ディスターブは足を止めた。すぐ後ろをダイウルゴスの群れに阻まれ、ローブの裾がぼろぼろに裂かれる。
 その好機を逃すドラゴンテイマーではない。右手の剣に猟兵の体を捉えようと、大きく一歩前に踏み出す。
 ディスターブは静かに告げた。
「ああ。そうやって己が踏みにじるものに眼もくれず、ただ上ばかり見ている」
 頭の中で引き絞った弓の弦から手を離す。
 今しがたドラゴンテイマーが踏みしだいた紫の花弁。ディスターブが反撃もままならぬ様子を『装って』下がり続けて導いた場所。
「……ぐっ……」
 真紅の剣をこれから薙ぎ払う形に止めて、ドラゴンテイマーは顔をしかめた。
 花弁の矢がドラゴンテイマーの足の甲を貫き通し、胸に突き立っている。ディスターブが魔法の矢を束ねて花弁に隠した、ユーベルコードの一矢だ。
「だから、そうして足元をすくわれる」



 ドラゴンテイマーは黒竜の群れを引き戻すと、ディスターブの背中側から襲わせる。
 ディスターブは、本来はドラゴンテイマー用に隠しておいた矢を迎撃に裂いて、一匹ずつ撃ち落としていった。射撃は正確だったが、いかんせん敵の群れの数が多い。
 黒竜の質量をもって猟兵を足止めして矢を消費させ、ドラゴンテイマーは傷ついた足で少しずつ距離を詰めていく。
 奴の右手の剣のリーチは長い。ディスターブが退路を探り始めた時、 背中から風が巻き起こった。
 漂う霧を巻き上げ、ドラゴンの翼を巻き込んで群れを押し返す風圧の防壁。ばらばらになったドラゴンは、それぞれに翼を撃ち抜かれて地に落ちる。
 ディスターブが射線の先を見あげれば、少し離れた場所に立つ柱の上に、シール・スカッドウィル(ディバイダー・f11249)の姿があった。
 シールは手際よく弾薬を装填し魔力と共に撃ちだす。竜が密集した中に穴が穿たれる。
 援護射撃を受けて、ディスターブは剣のリーチから逃れた。

『ドン・フリーダムは逝ったようだ』
 いまだ確認中の情報とはいえ、仲間からもたらされた勝利の知らせはこちらの戦場にも影響を及ぼしつつある。
「ならば、余計にお前を逃がすわけにはいかん」
 可能ならばここで討つ。
 風で霧を払いながら戦場に向かうシールの視界に、空に舞い上がっては地面に突撃する黒竜の群れが目に入った。

 視界を塞ぐ黒髪のひと房を、シールはかきあげた。
 目標を変えて自分に向かってくるドラゴンの群れの一部を、シールは暴風で舞い上げる。
「汝を以て汝を排す……ダイウルゴスの共食いといこう」
 現れたのはダイウルゴスによく似たドラゴンの群れ。真っ黒な体に、色素の薄い青の瞳。
 ユーベルコードで『転写』したドラゴンたちは、どことなくシール自身にも似通っている。
 黒竜の群れはぶつかりあうと、相手の急所を狙って噛みつき合いを始める。竜の力と数はほぼ同等だが、青い瞳の方にはシールの援護射撃がある。膠着は一瞬のこと。すぐに勝負をつけてディスターブの援護に回す。



 もう一射。ディスターブの矢がドラゴンテイマーの背に突き立った。
 続くシールの射撃は、蝙蝠の翼を支える骨を撃ち抜いて砕く。
 魔法の矢羽根を胸に生やしたまま、ドラゴンテイマーは翼を広げて宙に体を逃がす。1枚は皮膜を裂かれ、1枚は骨を砕かれた翼だ。辛うじて体を浮かせることはできるものの、左右のバランスは崩れてしまった。長距離を飛行したり、空中で姿勢を保ち続けるのは不可能と言っていいだろう。
 魔法の矢と銃弾の追撃を真紅の剣で撃ち落とし、残された翼で後退する。もはや2人の猟兵が支配するフィールドに、奴は踏み込んでこない。
 矢と銃弾を剣で跳ね返しながら、ドラゴンテイマーは再び霧の中へ身を隠した。
「追うか?」
 柱から降り、近くにやってきたシールの問いにディスターブは頭を振る。
「いや、こちらが先だ」
 2人の猟兵は踵を返すと、花弁に残された仲間の血の跡を辿った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シャノン・ヴァールハイト
何処で出会うか解らん以上、最初からナックルガードを両手に装備だな。

攻撃は当方怪力でも壊れぬナックルガードの頑丈さを生かして防御するつもりだが、可能な限り攻撃を反らす為、インパクトの瞬間に腕を回していなしていく

竜との戦闘は、右手で剣を用いた防御と徒手空拳による攻防を行う予定だ。

ドラゴンテイマーとの近接戦闘になったら、一歩前に出るのでは無く、一歩踏み込んで攻撃を防ぎながら左腕で、右腕の刀身の上を掴み怪力で攻撃を封じる。可能なら胴体か足に剣を突き刺す事で意識を反らさせ、威力を逃がせないように斜め下に向かってUCを使用して攻撃を行う

(連携やアドリブ歓迎なので気にせずドンドお願いします)



 霧の中でシャノン・ヴァールハイト(死者の声を聞き、招く者・f10610)はナックルの具合を確かめるように拳を握って開く。
 どこか遠くから爆発音が響く。
 既にドラゴンテイマーと接触した他の猟兵が戦っているのだろう。いつ戦闘になっても構わないよう、シャノンは普段は隠しているナックルガードを早めに装備しておいた。
 白いロングコートを翻し、音が響いてくる方向へと足を向ける。
 不意に静寂が訪れる。霧の濃度がさっきから安定しない。紫は揺らめき、薄らぎ、再び濃くなる。
 ぽつ、と雨粒が落ちてシャノンの頭に落ちた。無意識に髪に触れ、手の平を見る。
 髪と同じ色。鉄の匂いがする雫。手の平を赤く染める雨。
 気配に振りむいた時、その動きに狙いを外した剣がシャノンの左脇腹を貫いていた。
 ぼろぼろの翼を背に血の味の混じる息を吐き、力の入らぬ左腕が体の横で揺れている。踏み込む足から血を流し――満身創痍のドラゴンテイマーの瞳から戦意は失せていない。

 幸運だったのはドラゴンテイマーが既に手負いであったこと、シャノンが防刃繊維の装備を着こんでいたこと、そしてシャノン自身が斬られる覚悟で攻撃を組み立てていたことだ。
「ここでやられて……たまるか!」
 血を失って霞みはじめた視界に、ドラゴンテイマーを守ろうとダイウルゴスの群れが現れる。
 このくらいの逆境は幾度目だろうか。
 命を危機に晒し続けた過去は、この状況でもなお冷静さをシャノンに残していた。
 とはいえ、痛みに耐性があるほうではない。脇腹を貫く灼熱感に腕の力が鈍る。同時にシャノンは、鈍っても余りあるほどの怪力の持ち主だった。
 黒竜たちを盾にドラゴンテイマーは剣を引こうとする。その剣をシャノンは左腕だけで刀身を掴んで押しとどめた。真っ白なロングコートに赤く流れ落ちる血の筋が、また一本増える。
 傷つき穴が穿たれたドラゴンテイマーの足に対し、自分の両足はまだ踏ん張れている。ごく僅かな希望を手繰り寄せるように、シャノンは右肩を引いた。
 黒竜の群れが殺到する。
 おそらく残す全力はあと1発。それで十分だ。
 血を失ってぼうっとしはじめる意識を引き戻す。痛みに奥歯を噛みしめ、緩みかけた拳を握る。
 食い込む剣から手を離して踏み込んだ。
「コレは――ただの暴力だ!」
 ユーベルコード、『全力全壊の一撃』がダイウルゴスの群れを殴り飛ばし、その先にいるドラゴンテイマーを衝撃波で吹き飛ばす。
 鮮血の線を宙に描いて真紅の剣が離れていく。
 それを見届け、溢れる血を押しとどめようと片膝をついた所でシャノンの意識は途切れた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
何してるのかは知らないけど、まあ、敵なら倒すだけだねえ。

紫の霧って何か特別なものなのかな?
あたしの左目は熱で物を見れるから、普通の霧ぐらいなら見通せて相手の視界が悪くなるだけなんだけど。
見通すのが無理なら、敵の動きに聞き耳を立てて回避しようか。
相手が竜を召喚したら、全力で走って接近するよ。
大型の相手なら、懐に入った方が回避が楽だからね。
囲まれてもサイズの都合で同時に襲い掛かるのは難しいし、敵を盾にした同士討ちも狙えるし。

同士討ちを嫌って合体したら、その隙に【鋭敏感覚】を発動。
攻撃を回避しつつ強化された感覚で霧を見通して、近くにあった石柱を怪力で引っこ抜いてドラゴンテイマーに向かって投擲するよ。



 霧の中にあって、誰よりも正確にドラゴンテイマーの位置を把握している者がいた。
 ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)。呼びにくかったらペトで、とは本人の言だ。
「(この霧って何か特別なものなのかな?)」
 戦場においてものんびりとした自分のペースは崩さない。逆に言えば、浮足立ってしまいがちな戦場でも自分を保てている。
 瞳をすがめて、ペトは周囲の様子を見回した。
 青いガラス玉のような左目の中に、針の瞳孔が浮かぶ。キマイラである彼女の左目は蛇のものだ。闇の中だろうが視界が悪かろうが、温度を直接『視る』ことのできる目だ。
 個人の識別がしにくい温度認識だが、その中でも翼を生やし右手を長剣に変えたドラゴンテイマーを他の猟兵と見間違えることはない。段々と動きが鈍ってきているとはいえ、この霧の中でも広範囲を動き回って猟兵を迎撃している。どんな力かは定かでないが、ペトと同じように霧の中を見通せる何かを持っているのだろう。
 そのシルエットを追いかけて、霧の中を走る。
 右目には紫一色の霧の向こうにドラゴンテイマーがいる。吹き飛ばされた後、冷たい石柱を背にしてふらつきながら立ち上がる。頭がこちらを向く。右手の剣をペトに向けて掲げる。
「(やっぱ、見えてるんだね)」
 巨大な熱源がドラゴンテイマーへの道を阻むように出現する。ペトは構わず加速した。相手が大きいなら、懐に入り込んでしまったほうが相手の攻撃できる範囲は狭くなる。
 目の前に迫った鋭い牙をステップを踏んで躱しながら戦斧を振りぬく。顎を裂かれて頭蓋へ切り上げられた黒竜は、長い首を揺らめかせて地面に崩れ落ちた。そこに突撃してくる新たな黒竜は、倒れた竜の亡骸を盾にして避ける。戦斧の重さを生かして刃を振り上げ、竜の腹に叩きつける。
 瞬く間に10の刻印を持つ2体を倒されて、残ったダイウルゴスたちはお互いの体を寄り合わせた。
「疲れるからあんまりやりたくないんだけどねえ」
 それをも蛇の目で見通したペトは、ユーベルコードで五感を強化し体内時間を加速させる。世界が速度を減じる中、見あげる程の体躯となった黒竜は鞭のように尾をしならせた。ぎりぎりまで尾を引き付け、ペトは跳躍する。
 一回転して戻ってくる頭に戦斧を振り下ろす。 逆鱗に30の文字をもった最後のダイウルゴスは、地響きをたてて倒れ伏した。

「……複数生物の能力に技を組み合わせたか。……個々の能力までは読み切れぬな」
「のんびり情報収集――かは知らないけど、敵なら倒すだけだねえ」
 妙に間延びした調子でキマイラの女は答える。
 もはや身を挺して身を守る黒竜も居なければ、羽ばたく翼も逃げる足も失っている。
 それでもこの猟兵を退ければ、もう少々時間を稼げるだろう。右手の剣の切っ先を、敵の首に真っ直ぐ掲げる。
 どうやら相手も何かしらの方法でこの霧を見通しているようだが、ドラゴンテイマーは自分の身を改めて濃い霧に包んだ。視覚的に優位に立ち相手の先制を許さない、普段通りの儀式のようなものだ。
 石柱の後ろに回り込んだキマイラの女の姿を、目で追って構える。
 次の瞬間、小さな腕で抱きしめるようにして石柱が抱え上げられた。
「……それを武器にするか」
 怪力に驚嘆し、一縷の望みをかけて踏み込む。
 血を流し尽くした足首が、その動きを支え切れずにぐにゃりと傾いだ。
「足元をすくわれた、か」

 ペトが巨大な石柱で押しつぶしたドラゴンテイマーは、致死量を軽く超える分はあるだろうという血を花弁に残し、消え失せていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年05月28日


挿絵イラスト