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バトルオブフラワーズ⑬〜完全/敢然たる決戦

#キマイラフューチャー #戦争 #バトルオブフラワーズ #オブリビオン・フォーミュラ #ドン・フリーダム

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「惑星に住む次世代人類の皆様、そして猟兵の皆様、はじめましてですわ」

 キマイラフューチャー全土に響く声。
 惑星全域同時放送システムがシステム・フラワーズの最奥から『ドン・フリーダム』の演説を届ける。
 彼女の言葉は、甘い誘惑。
 曰く、現在の『コンコンコン』は完全な『コンコンコン』ではないということ。
 本当の『コンコンコン』であれば、望むものすべてが『コンコンコン』できるということ。
 そして、『コンコンコン』の完成は近いということ。
 我慢しなくていい。欲望は止めなくていい。
 あやすような彼女の物言いに、この世界の住人、そして、猟兵たちは何を思うか。

「オール・フォー・フリーダム! 自由こそが、この世の全てなのです!」


「さっきの放送はみんなにも聞こえたね? あの声の主が『ドン・フリーダム』だ」
 グリモアベースの一角で京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)がグリモアを輝かせる。投影された光には、デフォルメされたスマイルのマスクを逆さまに被った女性が映し出されていた。
 システム・フラワーズを修理しているダケと嘯く彼女こそがオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』、キマイラフューチャーに侵攻したオブリビオンたちの首魁である。

「彼女を倒せばシステム・フラワーズを巡る戦争にも決着が着く。幹部怪人たちと同じように、復活の限界になるまで彼女を撃破して追い詰めるんだ」
 たとえ撃破しても彼女は何度でも骸の海から蘇ってくる。だが、それも無限に続けられるわけではない。伏籠が語るように諦めず敵を叩いて行けば、いつかは必ず限界を迎えるはずだ。

「言うまでもなく彼女は幹部怪人以上の強敵だよ。無策でどうこうできる相手じゃない。まずはしっかりと作戦を練って挑んでほしい」
 指を立て強く注意を促す伏籠。常ならぬ彼の語気に、猟兵たちも真剣に耳を傾ける。
 彼の語る、ドン・フリーダムの能力は次のようなものだった。

●重要:ドン・フリーダムの能力について
 敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
 加えて、ドン・フリーダムは使用する能力値別に違う対処が必要です。これらに対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。

 POW:絶対無敵バリアを展開します。エモいものを見せれば無効化できます(エモいの基準はラビットバニーと同じ)。
 SPD:風で足場を崩してきます。
 WIZ:猟兵のユーベルコードの弱点を見抜き、確実に反撃するマシンを作り出してきます。 その反撃マシンに反撃する方法を考えなければいけません。

 これらの能力はそれぞれ「ラビットバニー」「ウインドゼファー」「エイプモンキー」と同じですが、ドン・フリーダムは彼ら以上の実力者です。

「そう、彼女は三幹部の特殊能力を自在に行使してくるんだ」
 自分がどういった攻撃を仕掛けるのか。それに対して、敵はどの能力で先制してくるのか。これらを十分に考慮して戦術を練らなければならない。
 幸い、幹部怪人たちとの戦闘データは集積されている。猟兵たちの経験に耳を澄ませば戦い方のヒントを探すこともできるだろう。

「ただし、ドン・フリーダムの実力そのものが一線を画しているのも間違いないからね。特殊能力を突破しても有効打を与えられない可能性だってある。……作戦を練ったなら、あとは覚悟を決めて、だ」
 伏籠は言葉を切り、集まった猟兵たちの顔を見渡す。
 真剣に頷く者、不安げに頭を捻る者、豪胆に武器を取り出す者。
 反応はそれぞれ。しかし、彼らは皆、来るべき決戦に向けて戦意を高めていた。
 その様子にひとつ頷き、伏籠は転送の準備を開始する。

「自由や欲望。思うところは人それぞれだろうけど、今はアイツを倒して無事に戻ってくることに集中してほしい。……気を付けてくれ、イェーガー!」


灰色梟
 こんにちは、灰色梟です。
 システム・フラワーズを巡る争乱もいよいよ大詰め、大ボス『ドン・フリーダム』との決戦シナリオとなります。
 敵は今まで以上の実力者です。OP中に記載されている敵の能力を必ず確認してください。
 実力と、工夫と、最後に多少の運があればきっと活路は拓けるはずです。
 皆さんのプレイングをお待ちしています。最後の一戦、一緒に頑張りましょう。
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第1章 ボス戦 『ドン・フリーダム』

POW   :    赤べこキャノン
【絶対無敵バリア展開後、赤べこキャノン】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    レボリューション・ストーム
【花の足場をバラバラにする暴風】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    マニアックマシン
対象のユーベルコードに対し【敵の死角から反撃するマシン】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:由依あきら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

デナイル・ヒステリカル
相手は明確に格上、オブリビオン・フォーミュラ
この強大な敵との力量差を覆す可能性が残るとするならば、やはりユーベルコードによる一撃でしょう

しかし今回の敵はこれまでの幹部同様先制攻撃を仕掛けてきます
WIZUC以外

WIZUCのみ、相殺としての役割を持つため、こちらのUCの発動の後に行動を起こているのではないしょうか?

死角から反撃をする強力なUC
ですが僕が狙うべきはその発動の一瞬です

UC:打ち消しを起動して相手のUCに事前介入
【敵の死角から反撃するマシン】という大前提は変えないまま、攻撃開始の位置をズラします
死角は死角でも障害物の向こう側!ドンの背後から僕に向かって攻撃が発射されるように改変します!



 花の小径が虚空に浮かぶ。
 三つの関門を突破した猟兵たちを導く花弁の回廊。その最奥に彼女は佇んでいた。
 花を模した赤銅の台座の上で、白い肢体を晒す長髪の女。張り付いた『笑顔』は仮面。その奥に潜む表情は窺い知れない。
 ちらちらと周囲を舞う花びら型の光体は、彼女が今もシステム・フラワーズに干渉している証だろうか。

「やはり、わたくしの邪魔をするのですわね。ふふ、残念ですわ」

 言葉とは裏腹に毛ほども残念そうな気配を見せず、ドン・フリーダムが笑う。
 オブリビオン・フォーミュラ。怪人たちの首魁が猟兵たちを視界に捉える。螺旋を描く花の幻燈が臨戦態勢を整え、速度を増して明滅し始めた。

「抗うのは皆様の自由。ですが、わたくしの望みもまた自由。……『ちょうてんさい』の欲望、あなたに受け止められるでしょうか?」



 ドン・フリーダムと対峙するデナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)の目つきは険しい。
 敵は間違いなく格上。歴然とした力の差を覆す手段はどこにあるのか。
 狙うべきは、一瞬のタイミング。弾き出した『解』を胸に、彼は脳裏にプログラムを構築していく。
 額を汗が伝う。彼女に向けた視線は逸らさない。……逸らせない。目を離したら、有無を言わせず飲み込まれてしまいそうな威圧感を彼は肌に感じていた。

「ふふ、必死ですわね。わたくしの瞳には、あなたの弱点がちゃーんと映っていますわよ? ユーベルコードを使おうとも、わたくしに届くことはありませんわ」
「……それはどうでしょう。試してみますか?」
 デナイルとは対照的に、ドン・フリーダムは気負いもなくころころと笑う。
 対抗するかのようにデナイルも笑みを浮かべて彼女を挑発してみせる、が、それは半分強がりだ。……しかし、ハッタリではない。
 デナイルの態度に仮面の奥の真意は見せず、ドン・フリーダムはゆっくりと自身の指を彼に指し向けた。

「だってそうでしょう。わたくしの指はあなたよりも……、『はやい』」
 何の気なしに怪人が指を鳴らした。
 乾いた音。瞬間、デナイルの足元で花が爆ぜる。

「くっ!?」
 連続する爆発音。規模は小さい、が、途切れずに続く衝撃がデナイルの下半身を削り取っていく。
 足の下の死角。花の足場の花弁の下。爆風に煽られ、花びらが散る。
 思わずぎょっとするデナイル。視界が開けた彼の足元には小型の爆弾が犇めいていた。

「敵の攻撃にハッキングするユーベルコード。その弱点は『はやさ』と『数』ですわ。干渉する間もなく爆発する爆弾、さらに、ひとつ制御を奪おうと焼け石に水となるほどの数。……さて、どうやって対処いたしましょう?」
「ツっぅ!」
 嘲笑うかのように嘯いてみせるドン・フリーダム。
 絶え間ない爆発に、デナイルは堪らず足場を駆けて爆弾から距離を取ろうとする。
 だが、走る彼を追いかけるように新たな爆弾が花弁の影に生成され続ける。いくら走ろうとも、彼はドン・フリーダムの攻撃圏内から逃れることができない。

(ですが、だからこそ、狙えるものがあります!)
 デナイルの脳裏でロジックが組みあがった。
 眼鏡の奥で緑の瞳が輝く。痛みに歯を食いしばり、彼は大きく横に飛ぶ。
 当然、彼を追いかけて次の爆弾が死角に生み出される。……が。

「ハッキングできるのは、機械だけじゃありません!」
 介入するのはドン・フリーダムのユーベルコードそのもの。狙いは爆弾の生成位置。
 『死角から敵を狙う』という土台を変えることなく、『優先される死角』に細工を施す。
 書き換えたのは僅かなコード。その甲斐あってか、介入も一瞬の内に完了する。

「今、この瞬間! 『そこ』も僕の死角です!」
 デナイルの見つめる場所。ドン・フリーダムの背後。
 彼女の肢体が彼の視線を遮ったその先で、音もなく新たな爆弾がまとめて生成された。
 そこはドン・フリーダムにとっても死角。不意を突いたこの攻撃なら、彼女も防ぎきれないはず。デナイルはユーベルコードの干渉を維持し、続けざまに爆弾を送り込む。

「……あらあら。なかなかに器用ですわね」
 だが、自身のユーベルコードに干渉されたのを感じ取ったのか、ドン・フリーダムを取り巻く花形の光体が激しくうねった。
 刹那の間もなく、デナイルはユーベルコードへのハッキングが遮断されたことを悟る。彼が横っ飛びから着地した瞬間、周囲を埋め尽くすかのように大量の爆弾が生成された。
 回避は、間に合わない。

「――っ!」
 爆発は同時。
 ひときわ大きい爆炎に飲み込まれるデナイルが目にしたのは、数多の爆発に背中を焦がしつつも動揺すら見せない怪人の姿だった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

樫倉・巽
生まれた世界だ
育ててもらった恩がある
道は違えどな
なら、報いることにしようか
命を賭けてな

風を避けるには風上に立つことだ
それができないなら風を受け流すことだ
四隅に重りを付けた帆を持っていき
相手の攻撃のタイミングを仕草や気配から見切ろうとする
相手が攻撃を仕掛けてきたと感じたら覚悟をもって帆を投げつけて風よけに使う
一瞬でも、少しでも風が逸れれば、相手へと届く風の隙間ができれば
その隙を見つけたなら一気に近づき【無風刃】を使い首を狙った一撃を撃つ

チャンスは一瞬、刹那
呼吸を合わせ意識を無にし
刃に必殺の気を乗せ
傷つくこと躊躇わず

ただの一振りに命を賭ける

「ただの蜥蜴だ、名乗るほどのものでも無い」



「わからないものですわね。皆様、もっと欲望に素直になればいいのに」
 ……あなたは、どう思うのです?
 気だるげに呟くドン・フリーダムが、小径に現れた猟兵に水を向ける。
 着流しを纏った緑鱗のキマイラ、樫倉・巽(雪下の志・f04347)は警戒を緩めることなく彼女に問い返す。

「その果てに、世界が滅ぶとしても、か?」
「ふふふ、結果なんて些末事。大事なのは今この時、胸を焦がす欲望に従うことですわ」
 悪びれもせず小さく笑う怪人。巽はかぶりを振って愛刀の鞘を握る左手に力を篭める。
 やはり、彼奴ら――オブリビオンの思想とは相容れない。

「生まれた世界だ。育ててもらった恩がある」
 壊れるさまを、どうして座視できようか。
 目測で彼我の距離を測る巽。約100m。一足で跳び込むには、やや遠い。
 断片的な敵の情報はグリモア猟兵から得ている。袖口に潜ませた『仕込み』の重みを感じながら、彼はドン・フリーダムににじり寄っていく。
 その様は、怪人にとってはひどく退屈に見えたらしい。彼女は気のない様子で、左手で自身の眼前を雑に薙いだ。

「そうですわねぇ……。あなた、鳥になりたいと思ったことは?」
 ごう、と風が嘶いた。
 ドン・フリーダムを取り巻くように円形の暴風域が形成される。横殴りの風は花の足場さえ容易く吹き飛ばし、巽との間に奈落の谷を作り出す。豪風は上下左右、出鱈目に吹き荒れて、さながら彼女に近づくすべてを拒絶しているようだった。

「天を舞う翼さえ、望めば手に入るのですわよ? ふふ、おうちに帰ってよーく考えてみてはいかがでしょう?」
「……戯言を」
 言葉を弄ぶドン・フリーダムを一蹴し、巽は谷間の先を睨む。
 荒れ狂う風の壁、迂闊に飛び込めば無事では済まないだろう。だが、彼は『恩義』に報いると心に決めたのだ。
 心機定れば、命を賭して。
 右手を柄に添え、居合の構えのまま巽は力強く足場を蹴った。

「オオゥ!」
 雄叫びが風に吹き消される。
 弾丸のように飛び出した蜥蜴の剣豪。その踏み込みは弛まぬ修練の賜物。しかし、常であれば怪人に肉薄したであろう跳躍も、暴風に勢いを呑まれてしまってはその真価を発揮できない。
 距離にして、あと10歩。向かい風に強く打ち付けられ、巽は宙に磔られてしまう。

「ヌゥ!」
「自縄自縛。息苦しい生き方ですわね。とても真似できないことですの」
 絶え間なく襲い来る颱風が巽の鱗を削り取る。裂傷から血を流し、それでも彼は刀を離さずドン・フリーダムに気勢をぶつけている。
 だがそれも所詮は悪あがき。怪人はもはや興味を失った様子で、無感動に左腕で空を薙ぎ払った。

(……ここだ!)

 刹那、巽が動く。
 袖口に仕込んだ『帆』をドン・フリーダムが腕を振るった方向に合わせて投擲。四隅に重石を括り付けた帆が、僅かに遅れてやってきた暴風を受け止める。
 風を受けた帆が大きく膨らむと同時に、風を遮られた巽の身体が自由を取り戻す。
 手にした間隙。だが、長くは保たない。風の流れはすぐに変わる。
 躊躇する暇は、ない!

「ただ一振り。命を賭ける!」
 膨らんだ帆をトランポリンの要領で蹴り飛ばし、巽が空を駆ける。
 一瞬で詰まる彼我の距離。巽の愛刀・砂塵渡りの鯉口が切られる。
 ドン・フリーダムの台座を除き、周囲の足場は完全に崩れている。傷つくことも、戻れぬことも躊躇わず、剣豪は必殺の意思を刃に込める。
 狙うは、敵の首筋。

「シィッ!」

 居合術・無風刃。
 守勢を捨て、ただ素早く斬ることに専心した抜刀の一閃が、ドン・フリーダムを襲う。
 渾身の一撃。巽が刀を振り切ったとき、戦場に響いたのは……、『金属のぶつかり合う音』だった。

「……名前くらいは聞いてあげようかしら」
 砂塵渡りの刃は、僅かに身体を動かしたドン・フリーダムの首周りの装飾品に食い込んでいた。金細工は歪み、彼女の胸郭を強く打ち付けているが、それが故に『斬撃』は彼女に一歩届かなかった。
 再び吹き抜けた風が巽の身体を殴りつけ、怪人から引き剥がしていく。その姿を目だけで追い、ドン・フリーダムがほんの少し感情の色を乗せて彼に名を問う。

「ただの蜥蜴だ、名乗るほどのものでも無い」
 最後まで頑なに。巽はそれだけ言い捨てると、遥か下方に落ちていった。彼は見えなくなるほど遠くで、別の足場に墜落する。
 残されたドン・フリーダムは、ことさら詰まらなそうに天を仰いだ。

「本当に、不自由で窮屈な生き方ですわね……」

苦戦 🔵​🔴​🔴​

緋薙・冬香
「欲望に自由であれ、ね」
その考え嫌いじゃないけど、でもね?
「他人の迷惑を考えない自由は『わがまま』って言うのよ?」
そのわがままボディごと貴女の欲望、蹴り倒してあげる!

スカイステッパーで空中戦へ
先制攻撃の暴風対策は早業+見切りで素早く暴風圏外に離脱
ジャンプを続けつつ血統覚醒
赤べこキャノンは見切りを入れつつジャンプの移動でかわすわ

今度はこっちの番!
敵まで一気に間合いを詰めたら
懐へ入り込んだら攻撃!
…と見せかけて
間近くで投げキッス(誘惑でバリアを割る

ふふ
見る者を虜にするのがモデルのお仕事
オブリビオンを倒すのが猟兵のお仕事
私、どっちも手を抜かない主義なの
宣言通り蹴り倒してあげる!(至近距離から回し蹴り



 『レボリューション・ストーム』で破壊された足場に再び花が集まり、回廊が修復されていく。それはシステム・フラワーズの自浄作用か、それともドン・フリーダムの戯れか。
 いずれにせよ、オブリビオン・フォーミュラに続く道は再び開かれたのである。

「欲望に自由であれ、ね」
 花咲く小径をヒールで踏みしめ、緋薙・冬香(針入り水晶・f05538)がドン・フリーダムと対峙する。
 表稼業はモデルにしてグラビア・アイドル。ドン・フリーダムに負けず劣らずのプロポーションをタイトスカートに包み込んだ彼女も『欲望に素直になる』という思想自体は嫌いではない。
 しかし、『人の闇を狩る者』として、彼女の愛する自由は決して無秩序を指すものではないのだ。

「他人の迷惑を考えない自由は『わがまま』って言うのよ?」
「あらあら、せっかく気が合いそうでしたのに。他人を慮って、どうして本当の自由が手に入るでしょう? 迷惑を『かけるのも』『かけられるのも』気にすることなんてないのですわよ」
 舌鋒鋭く論を張る冬香を、蕩けるような声色でドン・フリーダムが窘める。
 怪人の言葉には不思議な魔力があった。まるで母親のような柔らかさ。事実、システム・フラワーズを作成した彼女は、キマイラフューチャーの次世代人類にとっては庇護者としての属性を持っているのかもしれない。
 だが、それも今日までの話。世界を滅ぼす思想の持ち主は、世界の庇護者になりえない。
 眼鏡の下で狩人の瞳を輝かせ、冬香は自信に満ちた表情で怪人に指を突き付けた。

「そのわがままボディごと貴女の欲望、蹴り倒してあげる!」

「わがままボディ。ふふ、とても素敵な表現ですわ」
 冬香の宣言をケロっと聞き流し、ドン・フリーダムの腕が虚空に軌跡を描く。
 彼女の意に従い、暴風が巻き上がり花の足場を一気に飲み込んだ。嵐の顎が蛇のようにうねり、瞬く間に冬香へと迫る。

「あなたのボディも『自由』にしてみてはいかが?」
「お生憎さま。貴女みたいに安売りするつもりはないの」
 突き立てられた風の牙を躱し、冬香が素早く天に駆ける。足場とその上に立つ猟兵を狙ったレボリューション・ストームは、上空方向への指向性が比較的弱い。勿論、ドン・フリーダムが意識を向ければその限りではないが、少なくとも初撃を往なすのには理にかなっている。

「うまく避けるものですわね。ですが、いつまでも逃げられないですわよ?」
 ドン・フリーダムの腕が冬香を追うように空をなぞる。
 怪人の言葉通り、冬香の空中移動術――スカイステッパーは無限に使えるわけではない。今の彼女の実力で言えば、跳躍の限界は26回まで。……それまでに、決着をつけなくては。

「そういう言葉は、私を撃ち落してから言うことね!」
 強く言い放った冬香の瞳が深紅に染まる。ダンピールに眠るヴァンパイアの血脈が覚醒し、彼女の身体能力を爆発的に引き上げた。
 空中の跳躍は、より速く、長く、そして鋭く変貌する。風圧に身を軋ませながらも、彼女は一気にドン・フリーダムの頭上を取る。

「では、お望み通り。すぐに撃ち落してさしあげますわ」
 だが、敵も然るもの。覚醒した冬香に反応してドン・フリーダムも次の一手を打つ。
 怪人はレボリューション・ストームを自身を守るように狭く収束させ、新たに虚空から『赤べこキャノン』を取り出した。ラビット・バニーの装備を手にしたドン・フリーダムに『絶対無敵バリア』が展開される。
 十分に守りを固めた怪人は、悠々と赤べこキャノンで『射的』に興じ始めた。

(20、21、22……、大丈夫、見切れるわ)
 冬香は努めて冷静に、殺意と共に飛んでくる砲弾を躱し続ける。暴風の守りを抜けて砲撃を届かせるためか、威力を重視したキャノンの攻撃は散発的なものになっている。
 スカイステッパーの残り回数もギリギリ。攻めるには、今しかない。

「行くわよ。今度はこっちの番!」
 ドン・フリーダムに届くよう果敢に言い切り、冬香が攻撃に転じる。
 23回。赤べこキャノンを極限まで引き付け、寸でのところで鋭角に回避する。
 24回。稲妻のように空を蹴り、斜め方向からドン・フリーダムの眼前に肉薄する。怪人を守る風の壁が容赦なく冬香を打ち据える。激しい痛み。ヴァンパイアの頑健さを頼りに、強引に乗り切る。
 25回。懐に潜り込んでの急停止。すぐさま一撃を見舞ってやる。
 ……と、見せかけて。

「ちゅっ」
「……クール、ですわ」
 暴風に殴られ続ける中、全身の痛みをモデルの矜持で抑え込み、ウィンクしつつの投げキッス。
 激しい戦闘のさなか、唐突に披露された冬香の誘惑に、ドン・フリーダムも思わず感嘆を漏らす。怪人の仮面の奥は窺い知れず。だが、戦場に響いたガラスが割れるような音は、間違いなく『絶対無敵バリア』の崩壊を意味していた。
 その音を耳に、冬香は26回目のスカイステッパーを空に刻む。

「ふふ、見る者を虜にするのがモデルのお仕事。オブリビオンを倒すのが猟兵のお仕事」
 私、どっちも手を抜かない主義なの。
 最後の跳躍は、強く、捻りを加えるように。タイトスカートから覗く冬香の脚線美が、怪人の仮面の高さまで持ち上がる。
 彼女の紅い瞳と、怪人の視線とが絡まったような気がした。が、それも一瞬。足先に遠心力をたっぷり蓄え、冬香は裂帛の一撃を放つ。

「宣言通り蹴り倒してあげる!」
 独楽のように勢いをつけた冬香の回し蹴りが、ドン・フリーダムの仮面を穿つ。
 めり込むように突き刺さったヒールが、確かな痛撃の感触を冬香に伝えていた。
 吹き荒れていた風が止み、冬香を襲っていた圧力が途切れる。
 僅かな静寂。それを破ったのは、ドン・フリーダムだった。

「なかなか、やるものですわね」
 ぴくり、と怪人の腕が動き、冬香の脚を掴まんとする。
 冬香はすぐさま突き刺さった足で怪人を蹴り飛ばして、敵の懐から離脱した。
 思い出したかのように襲ってきた全身の痛みに顔を顰めつつ、壊れた足場から落下していく猟兵。彼女もまた、遠く離れた別の足場に着地するのだろう。
 その行く末を茫と見つつ、ドン・フリーダムは歪んだ仮面を指でなぞるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

オブシダン・ソード
【剣狐】
いすゞ、見て。あいつ全裸だよ

●合わせUCでエモ攻撃
器物はいすゞに預ける

破魔の紋様、とか何かくすぐったいけれど
贈られたものに応えよう
君は僕が護るから

先制攻撃相手には炎の障壁…オーラ防御で時間を稼いで、必要ならこの仮初の体を盾に
手を尽くしていすゞに着弾するまでにユーベルコードを使用
無敵化した刀身で受けてもらおう

どうにか凌げたら反撃を
コンコンコンが便利なのは認めるけどね、どうせろくなことにならないんでしょ?
それに、そう。君の願いは、僕が叶えてあげる

さぁ行こうか、相棒

引き続き剣兼盾として
敵の動きから警句を飛ばしたりアドバイスしたり
鼓舞は得意

大丈夫、君ならやれるよ
一緒にあいつをぶった斬ってやろう


小日向・いすゞ
【剣狐】
ほぼ裸っスね

器物状態のセンセの刃で指先に血を滲ませ
破魔の力を籠めて戦化粧を施し

さあ行くっス相棒

合わせUCで相棒とか
カッコイイ戦化粧とかえもに違いないっス

バリアを破る事に成功すれば
無敵のセンセで武器受け…赤べこを受けるっス
あっしの相棒が、あっしを護りきれないなんて事ある訳無いっス
ねえ相棒

それに
あっしが相棒を使って敵を倒せない訳も無いンスよ!

常に大吉の出る御神籤なんて
射幸心を煽られないコンコンコンなんて、コンコンコンじゃないっスよ

我慢しなくていいと言うならば
我慢せずアンタを止めさせてもらうっス
アンタの作った世界でも、今は今生きている者のモノっスから!

逃げて
駆けて
斬る

嚮導は任せたっスよ相棒!



 舞い散る花を背景に、台座の上で裸身の美女が佇む。時折吹く風は、散っていったアネモイの名残か。
 UDCアースの住人であれば既視感を覚えるかもしれない情景。しかし、主題となる女性はヴィーナスではなく、オブリビオン――世界の敵である。
 惜しげもなくその肢体を晒すドン・フリーダムを前にして、黒フードを目深に被ったオブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は思わず傍らの『相棒』に呼びかけた。

「いすゞ、見て。あいつ全裸だよ」
「……ほぼ裸っスね」
 彼の言葉に首肯する小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)。堂々とした怪人の振る舞いに感心するべきか、呆れるべきか、言葉に乗せられた感情はどうにも曖昧だ。
 花の足場に並び立った二人の猟兵。これから挑むのは世界の命運を賭けた一戦……、なのだが、やはりドン・フリーダムの見た目には両者とも思うところがあるのであった。

「もちろん、服飾だって自由にあるべきですわ。……ですけれど、あえて身一つになって解放感を楽しむのも、またわたくしの自由でしょう?」
 蹴り穿たれ、歪んだ仮面をそのままに、ドン・フリーダムが両手を広げて二人に語り掛けてくる。いろいろときわどい。
 悪びれもしない彼女の態度に、いすゞは頭痛を覚えてコメカミを抑えた。いくらなんでも自由すぎる。『ちょうてんさい』を自称するのは伊達ではないのか。

「これは付き合ってられないっスね。……行くっスよ、相棒」
「ああ、行こう、相棒。敵が何者であろうと、僕が君を護るよ」
 言葉と共にオブシダンの姿が人間型から変容する。以心伝心。視線を交わすこともなく、いすゞが傍らへと伸ばした手に器物となったオブシダン――黒曜石の長剣が収まった。柄を握ったいすゞの両の手に、馴染んだ重みがずっしりと響く。
 八相に構え、倒すべき怪人を見据える二人。だが、相対するドン・フリーダムは何を思ったのか唐突にカラカラと笑いだす。

「あらあら、ヤドリガミのあなたはわたくしの気持ちもわかるのでは?」
「ム、センセはそーいう趣味じゃないっスからね!」
 怪人の口をついた邪言にカチンと来るいすゞ。一方でオブシダンのほうは冷静そのもの。確かに今は服も何もない本来の姿を取っているが、それをドン・フリーダムが趣味と同列に語ってくるというのは安い挑発に過ぎないのだから。

「いすゞ、作戦通りに行こう」
「……了解っス、相棒」
 彼のいつも通りの口調と、掌に伝わる冷たい感触がいすゞの頭を冷やす。
 深呼吸をひとつ。気持ちを入れ替えた彼女は指先をオブシダンの刃に這わせ、つう、と刀身を軽く引いた。
 何をやっているのだと首を傾げるドン・フリーダムをしり目に、いすゞは血の滲んだ指に破魔の力を籠めて長剣の腹に紋様を描いていく。

「……くすぐったいよ」
「もうちょっとだから、我慢して欲しいっス」
 黒曜石の刀身をくるりと反転させて、逆側の腹にもいすゞの指が這う。力ある紋様は薄っすらと燐光を放ち、オブシダンの秘められた力を増幅させていく。
 数秒後、「これでよし」と紋様を刻み終えたいすゞが長剣を構え直したとき、オブシダンの黒い刀身には、刻まれた朱の破魔紋が力強く輝いていた。

「器物に化粧。二人揃わなければ真価を発揮できない能力。わたくしとしては不自由極まりないと思うだけですが……、ええ、ええ、それもまたあなたたちにとっては自由ですのね」
 どこか感心した口調でパチン、と指を鳴らすドン・フリーダム。彼女の右手に『赤べこキャノン』が召喚される。しかし、同時に発動するはずの『絶対無敵バリア』が展開される気配はない。
 『エモい感情』で心が乱れればバリアは展開できない――。確かにグリモア猟兵はそう語っていたが、オブシダンといすゞの化粧模様を見て心を動かしているあたり、どうやらドン・フリーダムもラビット・バニー並みに緩い基準で感情を揺らす性質のようだ。

「わたくし、心の在り方も自由であることがモットーですの。……ですが、それはそれとしてあなたがたに負ける心算はないのですわ」
 赤べこキャノンの砲口がいすゞたちを捉えた。
 刹那、砲弾の発射と同時にいすゞが地を蹴る。彼女は真っ直ぐに怪人に向けて突っ込んでいく。
 自然、瞬く間に巨大な砲弾が眼前に迫る。その脅威を前にして、いすゞは回避ではなく防御を選択した。急ブレーキを掛け、足を踏ん張り剣を掲げる。黒地の刀身と朱字の紋様が鈍く輝いた。

「贈られたものに応えよう。君は僕が護るから」
 固く静かな意思。オブシダンの意に応え、炎の障壁が激しく巻き上がり砲弾を僅かに食い止める。
 それでも明確な殺意を持って壁を突き抜け飛来する凶弾を、いすゞはかざした長剣で強引にブロックしてみせる。
 びりびりと信じがたい衝撃が腕を伝い、ともすれば握った剣ごと吹き飛ばされそうになりつつも、彼女は歯を食いしばって吠え猛る。

「あっしの相棒が、あっしを護りきれないなんて事ある訳……、無いっス!」
 呼気に気迫を乗せ、オブシダンを無理くり横に薙ぎ払う。砲弾の重みに負け、斜めに振るわれた剣が足場に刺さる。なんとか柄を握りつつも痺れる腕を震わせ、肩で息をするいすゞ。
 その足元でごとり、と砲弾が地面に転がる。きわどいところだった、が、二人は見事に攻撃を防いでみせたのだ。
 先制の一撃を捌かれ、不満げに口を尖らせた(ように感じられる)ドン・フリーダム。息を弾ませたいすゞは不敵な笑みを見せて、オブシダンを怪人の仮面に向けて突き付けた。

「常に大吉の出る御神籤なんて。射幸心を煽られないコンコンコンなんて、コンコンコンじゃないっスよ」
「コンコンコンが便利なのは認めるけどね、どうせろくなことにならないんでしょ?」
 大見得を切り、再び八相の構えを取る二人。敵の主武装はキャノン砲。遠距離戦に付き合うのは不利。接近戦に持ち込むべくいすゞは足裏に力を籠める。
 対するドン・フリーダムは赤べこの頭をコツンと叩き、常よりも温度の下がった声色で猟兵に殺意を向けてきた。

「生意気ですわ。潰れてしまいなさい」
「来るっスよ、相棒!」
 砲撃音がシステム・フラワーズに響く。いすゞはオブシダンを構え、もう一度砲弾を叩き落してやろうと息を巻く。
 だが、冷徹に戦場を見据えるオブシダンの思考に警鐘が響く。目算だが、先刻よりも砲弾が『速くて大きい』!

「威力重視に切り替えたね。いすゞ、足を使おう」
「! 任せるっス!」
 オブシダンの嚮導を耳に、弾かれたようにいすゞの体躯が地面を滑る。球形の砲弾の斜め下を掠めるようにして、彼女はドン・フリーダムに駆けていく。構えを下段に切り替え、低姿勢で獣の如く猛進する妖狐。
 オブシダンの読み通り、威力重視の攻撃を放った赤べこキャノンは次弾の発射が遅くなっている。舌打ちするドン・フリーダムが二発目のトリガーを引く前に、いすゞは一気に彼我の距離を詰める。

「次、撃ちおろす角度だ。地上は危ない。けど、大丈夫、君ならやれるよ」
「合点!」
 躊躇いもなく、いすゞが跳ねる。直後、寸前まで彼女がいた場所に砲弾が撃ち込まれた。砲撃が突き刺さった衝撃で足場が千々に割れる。
 眼下に空いた穴を飛び越し、ドン・フリーダムを間合いに捉えたいすゞ。
 猟兵を見上げる怪人。キャノンの砲口はまだ明後日を向いている。ようやく訪れた千載一遇の機会に、いすゞは大上段にオブシダンを構えた。

「アンタの作った世界でも、今は今生きている者のモノっスから!」
 敵は強大。好機は一度。初太刀に全てを賭けていすゞはオブシダンを振り下ろした。
 音さえ置き去りに、雲耀の一閃がドン・フリーダムの肩口に吸い込まれる。破魔の力を纏った黒曜石の刀身が斜めに胸郭を抉り、怪人の腰まで一息に切り裂いた。
 ……手応えあり! 渾身の一撃を放ったいすゞはバランスを崩しつつも、ドン・フリーダムが立つ台座の縁に着地した。
 切り裂かれた怪人は仮面の奥で血(あるいはそれに類するもの)を吐き、怨嗟の声をあげていすゞを睨む。

「カハッ……! やってくれるものですわ、ねぇ!」
「な!? キャア!」
「いすゞ!」
 意識の空白が穿たれる。接続を断たれ、だらりと垂れ下がった腕が鞭のようにいすゞの胸を打った。宙に浮いた彼女の身体が、先の攻防で空いた穴に落ちる。
 咄嗟に人間体に戻ったオブシダンがいすゞの身体を抱え、庇うように一緒になって落ちていく。塞がっていく花の足場の向こう側を見据える彼の瞳には、傷口から煙を上げつつも、こちらを睨み返しているのであろう怪人の姿が最後まで映っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
【POW】
技能全活用

どうしてキマイラフューチャーの強い女怪人さんってスタイル抜群なの!?
特にそのウエストの細さとかマジで羨ましいんだけどっ!?
褒めて攻撃に待ったを掛ける

勾玉の力で蛇神様を呼び出す(武器としてでUCに非ず)
蛇神様、よろしくねっ!
レモンの示すエモさ、それは蛇神様の生脱皮!
一見、グロテスクにも見えるけど、頭から尻尾へかけてつる~んと皮が剥けてゆく光景は見飽きないし、皮が脱げるときに聞こえる独特の『ぺりぺりぺり』というASMRも合わさってエモさ増大、エロチシズムさえ感じないかなっ?

無事にバリアを解除出来たら、不可視の鎖で敵を引っ叩く
キャノンに鎖を巻き付け、砲口を敵へ向けて自滅させるよっ



「……いけないですわね。少しばかり遊びすぎたですの」
 痛撃を受けた肩口を抑え、ドン・フリーダムが嘆息と共にぼやく。
 本来、時間は彼女の味方だったはずだ。彼女の目的はシステム・フラワーズの修復。猟兵たちを迎え撃つのは目的のための手段にすぎない。
 彼らが手を拱いていればそれでよし。相手取るにしてものらりくらりとあしらってやればいい。先刻まではそんな考えもあったのだが……。

「もういいですわよね? わたくし、結構忙しいのですわ」
 誰ともなしに独り言ち、ドン・フリーダムは足元に取り落としていた赤べこキャノンを拾い上げた。細腕に反し片手で軽々と大砲を持ち上げた彼女は、空いた手を顎に当てて暫し思案してから、赤べこの額の辺りを小突く。
 設定変更・命中重視モード。ベコの瞳が細くなり鋭さを増す。それを見届けたドン・フリーダムは満足げに頷き、微塵の迷いも見せず、回廊のはるか遠方へ向けて引き金を引き絞った。

「……わわ! いきなり狙ってきた!?」
 彼方から飛来した砲弾を蛇塚・レモン(叛逆する蛇神の器の娘・f05152)が慌てて回避する。サイドステップしたレモンの横を猛烈な勢いで砲弾が通過していった。
 砲弾の軌跡から視線を前方に戻すレモン。彼女の視界に映るドン・フリーダムはまだ米粒ほどの大きさだ。敵は明らかに今まで以上に先んじて攻撃を仕掛け始めている。

「作戦は考えてきた。けど、そのためにも近づかないとっ!」
 あれこれ考える時間も惜しい。力強く足場を蹴ってレモンは駆け出した。
 遥か前方、ドン・フリーダムの手元から二発目の砲弾が放たれる。さっきとは逆方向に鋭くステップ。風を切る轟音が耳元を掠めていき、風圧に金糸のポニーテールが揺れる。
 止まったら危ない。幾度となく方向転換を交え、レモンはジグザグに走りながら敵との距離を詰めていく。

「……もう少しっ!」
 だが、彼我の距離が近くなるほど着弾までの時間は短くなり、砲撃の回避は困難になる。それがわかっているのか、ドン・フリーダムも焦らず丁寧に引き金を引き続けている。
 危うい均衡が崩れたのは、互いの表情が見えるほどの距離まで(レモンからは怪人の仮面しか見えないが)レモンが駆け込んできたタイミングであった。

「! うわぁっ!」
 横方向に跳んだレモンの片足が砲弾に引っかかる。高速で飛来した金属弾に跳ね飛ばされ、彼女は空中で錐揉みにスピンしてそのまま地面に叩きつけられた。
 全身を思い切り足場に打ち付けられ、痛みに息が詰まる。明滅する視界。それでも咄嗟の受け身が功を奏したか、意識はなんとか保っている。
 倒れていたらまずい。レモンは四肢に力を込め立ち上がろうとする、が。

「痛ぅ」
「残念。そこまでですわね」
 左足が上手く動かない。砲弾が直撃した片足には深刻なダメージが残っていた。
 鈍く広がる痛みに顔を顰めるレモンを見下ろし、ドン・フリーダムは冷たく赤べこキャノンの砲口を向ける。
 怪人は相変わらず台座の上から動いていない。状況は悪い。しかし、まだどん詰まりというわけではないはず。
 この距離なら『作戦』に移れる。やるっきゃない。
 レモンは左足を庇う姿勢で地面に倒れたまま、見上げるようにドン・フリーダムの仮面を睨みつけ……、視線をついと下にずらして叫んだ。

「どうしてキマイラフューチャーの強い女怪人さんってスタイル抜群なの!?」
「……は?」
 頬を膨らませたレモンが指差すのは、怪人の豊満なバストにくびれたウエスト。
 コイツは何を言っているのだ、とばかりにドン・フリーダムは気の抜けた声を漏らす。確かに幹部怪人のラビット・バニーあたりもグラマラスな肉体の持ち主だったが、何故この状況でそんな言葉が口をつく?

「特にそのウエストの細さとかマジで羨ましいんだけどっ!?」
「それ、褒めてるつもりですの?」
 呆れたような口調のドン・フリーダムだが満更でもないのか、知らず、レモンのペースに巻き込まれて攻撃の手を休めてしまっている。無論、砲口そのものはレモンにピタリと向いたままではあるが。
 レモンの目的は時間稼ぎだ。やいのやいの言い合いつつ、後ろ手に握ったオロチヒメの勾玉にそっと力を込める。

(蛇神様、よろしくねっ!)

「あなたのウエストも十分細いでしょうに。……あと、ウィンドゼファーには謝っておきなさいですわ」
「あたいだって、もっとこう、ボン・キュ・ボンってなりたいのよっ!」
 姦しい言い合いの影で、レモンの勾玉からするりと白蛇が姿を現す。レモンの呼び出した白き蛇神は足場に咲く花の下を潜ってするすると移動を始めた。
 目指すは猟兵と怪人の中間地点。敵意や殺意を持たずに行動する白蛇にドン・フリーダムはまだ気づいていない。目的地に辿り着いた白蛇はおもむろに頭を地面にこすり付ける。
 うねうねと頭を支点に白蛇は身体をくねらせ……やがて、ペリ、と音がした。
 
「そもそもあなた、今の状況がわかって……、あら?」
 何の音ですの。とドン・フリーダムが辺りを見回す。ふと、彼女が視線を下に向ければ、音の発生源――白蛇のボディがその目に飛び込んでくる。
 ぺりぺり、と再び音が鳴る。よくよく見れば、蛇の頭部はどういうわけか皮が浮いているようで、体をうねらすたびにつるりと『本体』が『外皮』から抜け出していく。

「脱皮……、ですわね」
 もちろん、鉄火場の戦場に唐突に蛇が現れるのは異常事態だ。恐らくは猟兵の仕業だろうとドン・フリーダムはアタリを付ける。
 だが、それにしてはこの蛇からはまるで害意を感じないではないか。この無防備っぷりは、もしかしたら何かしらの反撃型ユーベル・コードなのかもしれない。それに、敵が何か仕掛けてくるにしても、こちらは今一番近くにいる猟兵――レモンには赤べこキャノンを突き付け続けている。
 ……まずは様子を見よう。滅多に観察できない光景に目を奪われた怪人は、何かと理屈をつけてそう判断した。してしまった。

 ぺりぺり。独特の乾いた音だけが響く。いつの間にかレモンもドン・フリーダムも黙って白蛇に注目している。
 ひとつながりになった古い皮は、途切れることなく最後まで形を保っている。その『袋』を白蛇が脱ぎ捨てていく。ぺりぺり。抜け出してくる蛇の鱗は、もっとも新しく美しい状態だ。艶やかで、独特の色気さえ感じられる。
 ぺりぺり。尻尾が、古皮の頭部を抜けていく。つるん、と尻尾の先が皮から抜け出した後には、頭部から尻尾まで綺麗に剥けた蛇皮が残されていた。

「ほぅ……」
 ドン・フリーダムがうっとりとため息をつく。ちょっとだけ様子を見る。そのつもりが、結局最後まで見守ってしまった。やがて、古い皮を脱ぎ捨てた白蛇と怪人の目が合う。セクシーな白蛇は、つぶらな瞳で怪人を見つめていた。
 パリン。今度は脱皮の音ではない。乾いた音を立てて『絶対無敵バリア』が解除されたのだ。

「チャンス!」
 その隙を見逃さず、レモンが右腕から超霊力オーラで生成された鎖を放つ。左足はまだ動かない。彼女は左手で上体だけ起こし、どうにかバランスを取っている。
 レモンが狙ったのは、ドン・フリーダムが持つ赤べこキャノン。自身に向けられた砲身に見えざる鎖が一瞬で巻き付く。

「ええいっ!」
「くっ、なんですの!?」
 鎖を操り、強引に砲口の向きを変えるレモン。ぐるりと揺れたキャノン砲が、ドン・フリーダムに向けて反転する。
 だが、それだけでは攻撃にはならない。大砲で攻撃するには引き金を引く必要がある。ドン・フリーダムもすぐに不可視の鎖に気づいてコントロールを取り戻すだろう。

 故に、この戦場でもっとも素早く動けるものが、レモンの意を汲んで動いたのだった。

「蛇神さま!」
 花の陰から白蛇が飛び出す。一直線に跳躍した蛇神はそのまま大砲のトリガーに張り付き巻き付いてしまう。……あとは、思い切り締め上げるだけだ。ドン・フリーダムの指さえ巻き込んで、白蛇のボディがぎちりと収縮する。
 かちん、と引き金が引かれる音がやけに大きく聞こえた気がした。

「ガハッ!」
 轟音。至近距離から発射された砲弾がドン・フリーダムの腹部を強打した。
 体をくの字に折り、苦し気に悶えるオブリビオン。
 怪人から逃れるように距離を取った白蛇は、伏したままのレモンの腕に絡みつく。
 僅かに腕を掲げ、顔を近づけて見つめ合う二人。作戦成功、やっぱり脱皮はエモい、と彼女らは小気味いい笑顔を浮かべるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アイン・ローレンス
【POW】

自由…なんて素晴らしい響きでしょう
私も大好きですよ?
だからこそ、自由を理由に好き勝手するあなたが許せません

赤べこキャノンは【第六感、見切り】で避けまくる
【属性攻撃、吹き飛ばし】炎を纏わせた「生命の鞭」も使い舞うように見せつける

エルフは運動能力が高いんです
更にお見せしましょう…美しい舞を
「友の現身」でメープルを背中合わせに召喚
【ロープワーク】で鞭を新体操のリボンの様に扱う
風を纏わせ足場の花を舞い上がらせより美しく
舞うように移動しメープルと敵を挟み込む

バリアが溶けたら流れるように鞭で拘束
雷を流し敵の注意が鞭に行ったら
【全力魔法、2回攻撃、範囲攻撃】
「生命の杖」で氷付けに
本命はこっちです!



 決着が近い。
 ドン・フリーダムに向って走るアイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)は、敵に近づくにつれてその予感を強くする。
 燻る背中、砕けた装飾、仮面は蹴り穿たれて歪み、肩口から裂傷が走る。腹部に残る砲弾の痕を抑えて大砲を構えるドン・フリーダムは見るからに満身創痍だ。
 敵はオブリビオン・フォーミュラ。決して油断できる相手ではない。
 だが、仲間たちが作ったこのチャンスを活かさない手はない。勝負をつけるべくアインが花の回廊を疾走する。

「しつこいですわよ、猟兵……!」
 怒気を孕んだ声をあげ、ドン・フリーダムが赤べこキャノンの引き金に指を掛ける。
 砲口が自身に向いた瞬間、アインは己の直感に従って身体を深く沈めた。両足にバネを蓄え、敵の指先の動きに意識を集中する。

「あなたの欲望、見切ってみせます」
 トリガーが引かれる。撃鉄が落ちるまでのごく僅かな間で、アインは砲口の向きから射線を読む。
 ステップは軽やかに。轟音と共に砲弾が発射されたとき、アインは既に動いていた。トン、と横に跳んだ彼女の横を砲弾が通り抜けていく。
 空中で独楽のように回転するアイン。彼女の手には、いつの間にか腰のベルトから取り外した『生命の鞭』が握られていた。アインがそっと指で鞭をなぞれば、精霊たちが鞭に炎を纏わせる。
 ひゅっと風切り音が鳴る。遠心力を鞭に付加しての一閃。回避行動から流れるように彼女は攻撃に移る。

「無駄ですのよ! わたくしの自由は、誰にも止められないのですわ!」
 鮮やかに紅い軌跡を残した鞭の一撃は、しかし、敵の寸前で弾かれる。『絶対無敵バリア』だ。攻撃を無効化された鞭を睨みつつ、ドン・フリーダムは猛り再びキャノンの引き金を引く。
 だがそれも、ラビット・バニーと交戦経験のあるアインにとっては既知の障壁。動揺することもなく、彼女は舞うように砲弾を回避する。

「自由……、なんて素晴らしい響きでしょう」
 ぽつりと呟いた言葉が静かに響く。柔らかい言い回しだが、アインの言葉には底冷えするような怒りが潜んでいる。
 何度目かのターン。エルフの身体能力を活かし、回避を続けるアイン。くるくると回転する彼女の視界の端でドン・フリーダムがキャノンの尻を掴むのが見えた。
 リロード。砲弾の雨が一瞬止んだ刹那、アインは攻撃に転じる。

「私も大好きですよ? ……だからこそ、自由を理由に好き勝手するあなたが許せません」
 力強く、アクセルジャンプ。回転するアインの背中合わせに黒いシルエットが浮かぶ。
 身の丈3m。現れたのはアインの倍近い体躯を誇るツキノワグマだった。
 一心同体。同時に着地した一人と一匹は優雅に一礼してみせる。友が揃ったここからが本番だ!

「お見せしましょう……、美しい舞を」
 弧を描いてアインが跳ぶ。旋回する鞭が彼女の身を包む。攻撃ではない。流れる鞭はただ美しく軌跡を残すだけ。
 彼女の着地点に待つのはツキノワグマの『メープル』。彼女(女の子である)は両手を組んでクッションを作り、落ちてくるアインの足場となる。
 ストン、とメープルの作った足場に収まるアイン。アイコンタクトと共に頷きひとつ。阿吽の呼吸でアインが足場を蹴ると同時に、メープルが彼女を天高く放り上げた。

「なにを……!?」
 意図が読めず困惑するドン・フリーダムの頭上さえ飛び越えて、ムーンサルトの姿勢でアインが舞う。手にした鞭はまるで新体操のリボンのようにアインの周囲を踊っていた。
 跳躍の瞬間に巻き上がった風が、彼女を追うように花びらを運ぶ。天を泳ぐアインの軌跡に沿って、色とりどりのがグラデーションが咲く。
 やがて、ドン・フリーダムをメープルとで挟むような位置に着地するアイン。着地の瞬間まで、美しく、ゆったりと。足を揃え、恭しく一礼する彼女の背後に、追いかけてきた花が鮮やかなカーテンを作った。

「……それも作戦なのでしょう、わかっているのですわ。ですが、駄目ですわね」
 わたくしの心は自由なのですから。
 淡い音と共に、バリアが溶けた。刹那、アインの手元で鞭が閃く。放たれた鞭が風を切って怪人の腕に絡みつく。
 この隙は逃せない。アインの意に従い、精霊たちが鞭に高圧電流を流し込んだ。

「捉えました。いきますわよ!」
「ぐ、うぅ! ですが!」
 ばちばちと発光する鞭に繋がれ、ドン・フリーダムが呻く。だが、ここで終わる彼女ではない。痺れる腕を強引に振るい、拘束から抜け出そうと藻掻く。
 思い切り腕を引くドン・フリーダム。すると、拍子抜けするほどあっさりと鞭の持ち手たるアインは手を放してしまう。
 虚を突かれる怪人。そのときには既に、アインは新たに『生命の杖』を構え全力の魔力を杖に篭めていた。
 ドン・フリーダムが気づいたときにはもう遅い。最後の魔法を行使すべく、アインは叫び、杖の石突を足場に叩きつけた。

「本命はこっちです!」
 杖から流れた氷の魔力が足場を伝う。ドン・フリーダムの立つ台座に辿り着いた冷気が形を成し、一瞬で台座ごと怪人の全身を魔力の氷に封じ込めた。
 身じろぎできない怪人から生命力が一気に奪い取られる。流れ込んだ生命力が伝播し、『怪人ごと』氷に罅が入った。

(……ええ、この場の負けは認めるですの。ですが、わたくしは必ず戻るですわよ)
 そんな声が聞こえた気がした。それが単なる事実なのか、それとも強がりか、真意は最後まで仮面に隠されて知ることができない。
 バキンと氷が割れる。結晶となって崩れ落ちる魔氷と共に、ドン・フリーダムも粒子となって消えていった。

「これで終わり、なのでしょうか」
 粒子の行方を目で追いつつ、アインが呟く。やがて、飛ばされた鞭を拾ったメープルが彼女に駆け寄ってくる。
 鞭を受け取り、友の頭を撫でるアイン。今ここに残っているのは、静寂と花に満ちたシステム・フラワーズの光景だった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年05月27日


挿絵イラスト