バトルオブフラワーズ⑫〜『グリモア』の探究者
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すべてを無効化する技術。すべてを防ぐ障壁。超常的な風の力。
強力なオブリビオン達に幾度となく行く手を防がれても、猟兵達はその戦術で、能力で、熱意で。彼らを打ち砕き、その復活を阻止してきた。
彼らの活躍により、花の足場はオブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』へと繋がった。
彼女を打ち砕けば、キマイラフューチャーの真の平和へと繋がるだろう。だが――その裏で暗躍する、もうひとりのオブリビオンがいた。
壮年の男性。背に様々な種族の翼を背負ったその姿は、この地に住まう種族『キマイラ』に通じるものがある。だがその鋭い瞳は。あまりにも禍々しいこの雰囲気は。
「私の役目は『持ち帰る』事のみ。だが……」
ドン・フリーダムの思想の為に、男は彼らに『侵略樹アヴェスタ』を与えた。後は彼ら次第、自分の出る幕ではない。それでもひとつ、気にかかる事がある。
奴らはどう動くのか。オブリビオンに牙を剥く、猟兵と名乗る者達。グリモアを操り、グリモアに集う者達。
「いずれ私が再びグリモアを手にする時の為に、出方を窺っておくべきか……」
男――『ドラゴンテイマー』は、暫しこの地に留まり、猟兵達を迎え撃つ事にした。
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「キマイラフューチャーでのお仕事、お疲れ様です。皆さまのお陰で、あともう少しでこの地を救う事が出来ますわ。ですが……」
人形を手にしたグリモア猟兵、無供華・リア(夢のヤドリギ・f00380)はどこか浮かない表情だった。
「オブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』や彼らの配下たちに、世界を侵略するほどの力を与えたオブリビオンの存在が確認されております。その名も、『ドラゴンテイマー』」
ドラゴンを操る者。手なずける者。そんな意味だろうか。
「複数の翼をもつ、男性の姿をしたオブリビオンです。その名の通りドラゴンを喚び操る強力なユーベルコードを使用します。その実力は図り知れません。ですが、ひとつ救いが御座います。彼を斃さずとも、システム・フラワーズをオブリビオン達の手から救う事は可能です。ドン・フリーダムの討伐さえ出来ればいいのですから」
ならばわざわざ戦力を分散させる必要は無いのではないか。猟兵の質問にも、リアはそうだと良いのですが、と曖昧な言葉を返す。
「ひとつだけ、気になっている事があるのです。予知の中で彼は、『いずれ自分がグリモアを手にする』と、そう言っておりました」
「グリモアを?」
「グリモアに関しては皆さまもご存知の通り、わからない事ばかりです。彼が何を企んでいるのかも、残念ながら予知の及ばぬ範囲でございました。ですがわたくし達の力の根源たるグリモアを狙う存在がいるというのは、どうにも気にかかって仕方が無いのです」
速やかな任務遂行の為、彼への接触は避けるか。
何かを掴むべく、ドラゴンテイマーと邂逅するか。
すべてはお任せしますと、リアは告げた。
ion
お世話になっております。ionです。
ゾ……ドラゴンテイマーさんのシナリオを、お届けします。
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
ドラゴンテイマーのユーベルコードに関しては敵のデータをご参照ください。
再三ではございますが、強敵です。
万全の準備をし、先制攻撃への対策を練り込んだ良いプレイングを書いても、必ずしも良い結果に結び付けられるとは限りません。
シナリオが失敗する可能性も、少なくありません。
それでも彼のもとへと赴きたい勇者たちに、勝利の女神が微笑みますよう、ionも祈っております。
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラザロ・マリーノ
数は力って訳か。
もっとも、いちいち戦ってやるつもりはねえけどな。
相手の攻撃を回避しながら、テイマーと全てのダイウルゴスを俺に視線が通る位置に誘導(フェイント/おびき寄せ/地形の利用)。
「旭光の剣」の閃光で目を眩ませるぜ(存在感/目つぶし/範囲攻撃/時間稼ぎ)。
俺は視覚が効かなくても行動に支障はねえ。静かに素早く距離を詰めて、ハルバードをテイマーに叩き込んでやるぜ(聞き耳/暗視/第六感/ダッシュ/忍び足/怪力/串刺し)!
お前みたいなシリアス一辺倒の野郎は、この世界じゃあお呼びじゃねえんだ。
おとなしく骸の海に帰るんだな!
※アドリブ・連携・ギャグ・負傷描写歓迎
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「……来たか」
身に纏うコートの裾をはためかせ、八翼を背に携えた男、ドラゴンテイマーが振り返る。振り向きざまに赤き魔石宿る剣を振るい、喚んだのは無数の黒竜の群れ。
「数は力って訳か」
トカゲのような姿のドラゴニアン、ラザロ・マリーノ(竜派ドラゴニアンのバーバリアン・f10809)は愛用のドラゴンハルバードを構えダイウルゴスの群れを仰ぐ。数は無論の事、その戦闘力も見掛け倒しとは行かぬだろう。いちいち戦っていたら身が持たない。けれど勝機は、ある。
黒竜たちが一斉にラザロ目がけて襲い掛かる。灼熱のブレスが花々を焦がし、がばりと開いた黒顎が迫り、鋭い爪が空気を薙ぐ。
ラザロはそれらを時に防御し時に避ける。巨大なドラゴンにとってラザロはあまりに小さく、ゆえに狙いを絞り切れていないと見える。大振りの攻撃は比較的躱しやすかったが――それでも回避行動で隙が出来た所を他の竜に狙われればひとたまりもない。竜の尾に薙ぎ払われ、吹き飛ばされる。
「ぐ……っ」
全身が砕けるほどの衝撃。身体は地面に叩きつけられる。それでもラザロは意識を繋ぎ止め、素早く立ち上がる。ちらとドラゴンテイマーに目を遣ると、彼はラザロを、猟兵という存在を値踏みするように冷徹な瞳をこちらに向けていた。――いけすかない。
「お前みたいなシリアス一辺倒の野郎は、この世界じゃお呼びじゃねえんだ」
言葉を投げかける。反応は無い。代わりに竜が襲い掛かる。
それらを躱しながらラザロはテイマーの元へと距離を縮めていく。主人への攻撃は通させないと言わんばかりに、竜の攻撃が苛烈さを増す。そうだ、もう少し、後方のやつらももっと俺に近づいて来い。――今だ。
炎がラザロを包む。だがそれを避けもせずラザロはハルバードを掲げた。彼に宿る竜のオーラが旭光となり竜とその主人の目を眩ませる。
「オおオオオオオ……!?」
戸惑う黒竜の群れの中をラザロが駆ける。竜の目を灼くほどの光を間近で見ても、彼の行動には何の問題も無い。――感じる。あれだ。ドラゴンテイマー。禍々しい気配にハルバードを叩きこむ。直前に察したテイマーが魔剣で受け止めようとするが、それよりも速くラザロの攻撃が届いた。
「おとなしく骸の海に帰るんだな!」
「……ほう」
身を裂かれても、彼は怜悧な瞳で猟兵を見つめ返すのだった。
成功
🔵🔵🔴
レイ・キャスケット
赤き剣の右腕が命中した対象にって部分、つまりは何か別の対象を挟み込めば直撃は避けられるよね
初撃は魔法で氷壁を創り防ぎ、発生したダイウルゴスの群れに≪ヤドリギ・ジ・エンド≫を放ち巨大な蔓で拘束と防御を両立させるよ
ドラゴン相手に蔓程度で【生命力吸収】や拘束は無謀だって?
本当の狙いは発生した蔓で足場を作ること
迫りくる龍の群れにUCを次々放ち植物の成長を操作し【全力魔法】で極太の蔓の上を【ダッシュ】、【高速詠唱】で細くしなやかな蔓を使った【フェイント】と使い分けトリッキーな動きで翻弄
【挑発】してドラゴン同士の同士討ちを狙いつつ隙を見てドラゴンテイマーに炎【属性攻撃】の魔法刃の一撃を与えるよ
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(赤き剣の右腕が命中した対象に対し、攻撃する。そういう事だったね)
レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)はグリモア猟兵から聞いた説明を反芻する。初撃さえ防げば躱す事は容易であるとも言っていた。
彼女の魔力を投影した虹色の羽衣をふわり纏い、レイは魔術を紡ぐ。
瞬間、ドラゴンテイマーが迫っていた。禍々しい剣の腕による一撃を、レイの創る氷壁が受け止めるも。分厚い氷は一瞬にして切断され、勢いを削ぐことは出来たもののレイの肩に届き血しぶきを撒き散らす。
赤き魔剣から生み出された禍々しいオーラが無数の竜を模る。だが無論、その程度の事はレイも想定済みだった。
「ふわふわふわ、あなたに宿しておおきくなぁれ。キレイに育ててボクの華」
彼女の手の中に、ふわふわと白い綿毛が生まれる。風に運ばれるように飛んだそれが竜の一体に命中したと思うと、途端に綿毛は巨大な蔓になり竜を締め上げる。
「よしっ!」
綿毛は次々と生まれ、竜の群れを絡め取っていく。焼き切ってしまおうと炎のブレスを吐く竜もいたが、魔力で生み出された綿毛を破壊する事は敵わず。等しく蔓の餌食となる。
「無駄な事を……」
「オオオオオ……ン!!」
最初に捕縛されていた竜が吼えた。裂帛、ぶちぶちと音を立てて蔓が千切れる。
「植物如きで、ダイウルゴスを止められると思ったのか……む」
ドラゴンテイマーが視線を上げる。魔力の蔓は竜を束縛するものだけでなく、宙へと高く高く伸びあがっているものがあった。狙いを外したのか。否、それらが幾重にも撒きつき足場となる。その上をレイが駆けのぼっていく。
「そんなに大きくて強そうなのに、ボクひとりを仕留める事もできないの?」
あからさまな挑発。だが誇り高き竜達にとって、それは到底見過ごせるものではなかった。ちっぽけな人間へ一斉に攻撃を仕掛け――ひゅん、と唸る蔓の触手に牙を阻まれる。ブレスは弾き返され仲間に被弾する。
戦場は今や完全にレイのフィールドだった。竜達は完全に翻弄されている。蔓の階段は今度は地上へと、ドラゴンテイマーへの道筋を形成する。
「覚悟……っ!」
炎の刃がテイマーを斬り裂いた。攻撃を受けて尚、オブリビオンは表情を崩さず。
「……成程」
猟兵という存在を探るように、そう呟くのだった。
成功
🔵🔵🔴
アルトリンデ・エーデルシュタイン
こんな数の竜を操るとは……ですが、ここで引く事はできません。
どのような思惑であれ、貴方の力はここで殺がせてもらいます。
先制攻撃で放たれる黒竜の群れは、迎撃の準備が整うまでは防御に重きを置いて凌ぐ事を優先します。
無機物を変えるという事は、周囲の足場にも気を配らねばならぬという事。
聖剣と斧槍、それと聖鎧のオーラ防御で致命傷だけでも避けるように立ち回らないと。
攻撃を凌ぎながらも【聖天示すは慈悲なる標】の展開を急ぎます。柱は天の加護の現れ、無生物でなく無機物を変換する効果の外の筈。
味方を癒すに十分な柱を展開し鼓舞し、残りは破魔の力を乗せて敵へ放ちます。
我が祈りは此処に在り。貴方に『希望』は渡しません。
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視界を黒く埋め尽くす、竜の群れ。
足場を形成する花々が舞う此処は、システム・フラワーズの内部。故に彼が魔竜に転換できる無機物は至る所に存在する。
(覚悟はしていましたが、ここまでとは)
相手取る敵の強大さに、アルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)は身を震わせる。怖い? 否。
闇とは無縁だった筈のこの世界にも、今は翳りが生じている。もやもやと楽園を侵していく闇を己の光で祓うべく、彼女はここまで来たのだ。
人々を導く光は何よりも彼女自身の道標ともなる。それが神を見失った聖騎士の戦い方。
竜が来た。その爪を聖剣と斧槍が受け止める。身体がばらばらになりそうな衝撃を、聖なる武装に纏わせたオーラで緩衝させる。
そのまま薙ぎ払えば巨体は倒れ伏す。けれど竜は次々と彼女に襲い掛かる。何度目かの攻撃を受け止めたところで、彼女の足元がぐらりと揺れた。
「っ……!」
咄嗟の跳躍がアルトリンデの命を繋いだ。それもまた竜となり、彼女へ飛びかかった黒顎が皮一枚で躱される。
花咲き乱れる楽園に見えても、ここはシステムの内部。ありとあらゆるものが敵の配下となり、彼女へ牙を剥く恐れがある。
けれどそれも覚悟の上。後は活路を見出すこの術さえ発動すれば。攻撃を凌ぎながらも彼女は祈り続ける。
――誰に? 今の彼女には神など見えぬ。けれど祈りを捧げるに値するものがあるとすれば、それは。
ドラゴンテイマーが空を仰ぐ。其処に在ったのは無数の御柱。人々を導き闇を払う、白き澪の標。
「我が祈りは此処に在り。貴方に『希望』は渡しません」
「……希望?」
低く響くような声。テイマーが再度フロンティア・ラインの力を放つ。だが天の加護によって具現化した柱を竜化する事は敵わず、代わりに周囲から数頭の竜がむくりと現れ首をもたげる。
「……お前は、グリモアを操るのか……。ならば『猟兵』は、グリモアについて何も識らぬのだな……」
「希望は何よりも人々を導くものです。私はその手助けをしているだけ」
竜が牙を剥く。闇を具現化した黒竜たちはアルトリンデの破魔の標に押しつぶされ消えてゆく。清浄な力はそれと同時に、テイマーと戦い抜いてきた猟兵達の傷をも癒す。
竜化の術を解かれ、ヒビだらけの足場に戻った花の上を、アルトリンデが駆ける。御柱を防ぐ為に闇の障壁を展開しているテイマーの死角から聖剣『エクスシア』が振り翳され、彼の剣腕がそれを受け止める。
「あなたは何を企んでいるのです。人々の希望ではないというのなら、あなたはグリモアについて何を識っているのですか?」
「答える必要はない」
返答はにべもなく。でしょうね、とアルトリンデは聖剣を薙ぎ払う。体勢を崩したテイマーへと、彼女の紡いだ希望の澪標が襲い掛かった。
成功
🔵🔵🔴
ラハブ・イルルヤンカシュ
餌が向こうから来るのなら
「ん、全部食べる」
[見切り][野生の勘][第六感]で竜の攻撃を回避
又は硬くした腕の鱗で[武器受け][盾受け]し、
[カウンター]で【全て喰らう竜の顎】の[生命力吸収][吸血][大食い]な[捨て身の一撃][鎧無視攻撃]
思い切り噛みつき、食い千切る
「ん、共食い。いただきます」
有毒なものは[毒耐性]で無視
二種のドライバーで以て食った分だけ[力溜め]
勘を働かせて[殺気]も読んで
有利な位置でとにかく喰らう
十分食べたら溜め込んだ力を解放
生やした竜の頭から
[毒使い][マヒ攻撃][属性攻撃]の[一斉発射][範囲攻撃]
で本体を中心に周囲を一掃
「……ん、お腹すいた」
そしてまた食べて回る作業へ
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ラハブ・イルルヤンカシュ(悪魔でドラゴン・f04872)はいつも腹ペコだ。喰らえるものは大体喰らう。
故に黒麟に数字を刻んだ無数の竜の群れを見ても彼女は狼狽えず、いつもの茫洋とした瞳でそれを一瞥して。
「ん、全部食べる」
竜達にしてみれば、それは宣戦布告以外の何物でもなかっただろう。だが彼女にその意図はない。ただ己の飢えと渇きを満たすために、ここに来た。
どうせ底なしの腹は何を収めても底なしなのだ、ならば災いは積極的に喰らうに限る。彼女にとってはその程度の事。
竜の尾がラハブを薙ぎ払わんとする。それを部分的に硬化させた鰐の腕で受け止める。衝撃に腕が軋むが、この程度ならば問題無い。その腕がダイウルゴスをも凌駕する巨大な竜の頭へと変化し、がばり、と顎を開く。
「ん、いただきます」
糧となる生命への感謝は忘れずに。強靭な鱗の鎧も砕く牙が黒竜の尾に噛みつき、食い千切る。
「グギャァァァアアア――……」
耳を劈く黒竜の悲鳴が、途中で途切れる。彼女の持つ烙印が竜の魂を喰らい、悪魔竜の胃袋がそれを糧とする。ばき。べきべき。ごきゅごきゅ。……ごっくん。食い千切られた個所から肉体も魂も呑み込まれ、強大な筈の黒竜が一瞬で消失した。
「ん、共食い……」
呟かれたそれは、ラハブなりの冗談だったのか。
ちいさな少女に仲間が喰われたのを見とめ、竜達は狼狽する。
「うろたえるな。相手が捕食能力を有するのならば、それを許さぬまで強大になれば良い」
テイマーの冷徹な言葉に我に返った竜達が合体を開始した。
「ん、させない」
竜一頭喰らった程度ではラハブの腹は満ち足りず。統合を済ませていない、あるいは済ませてもまだ数の少ない個体を見つけては喰らいつく。妨害する爪やブレスを野生の勘で躱しながら。時にそれはラハブに届き身を裂く事もあったが、強大な力を喰らう彼女はすぐさまそれを回復させる。
地響きを立て、彼女の前にひときわ強大な黒竜が立ちはだかった。その額には「16」の文字。そして群がる今だ無傷の黒竜たち。
だがラハブもただ空腹を満たす為に喰らい続けていたわけではない。竜の力を蓄え続けた彼女にとって、喰らえぬものなど何もない。
カッ、とラハブの竜頭が光り輝いた。喰らいつくした力の逆流。闇竜の力は麻痺毒を伴う光となりて群れを灼き尽くす。
動きを止められた巨竜の腹に、その牙が深々と食い込んだ。
「……ん、力を使ったら、お腹すいた」
巨竜を仕留めてもラハブは驕る事もなく。淡々と残った竜達の捕食を開始する。
少女の食欲に、流石のテイマーも暫し言葉を失い。
「……これが、猟兵」
絞り出すようにそう、呟くのがやっとだった。
成功
🔵🔵🔴
ラティナ・ドラッケンリット
【北千住・ちくわちゃん(愛よりもいいねが欲しい・f17794)と同行】
三幹部まではグリモア猟兵を務めてきたが
ここからは猟兵として戦わせてもらおう
ダッシュで接近しつつ赤き剣の右腕を見切る為に全力で集中する
断山戦斧『しゅとれん』、穿竜槍『たると』、屠竜刀『まかろん』、守護者の盾を使って
受け止め、受け流し切れずに弾かれようが攻撃の間合いまで踏み込む!
赤き剣の右腕を受けないことで黒竜ダイウルゴスの群れを発動させない
「いくぞ。ちくわちゃん!」
ちくわちゃんを掴み長柄の武器(ポールウェポン)として
グラウンドクラッシャーを繰り出す
ちくわちゃん、気絶してダーク・ヴェンジャンスを解かないでくれよ
これが二人の力だ!
北千住・ちくわちゃん
ラティナさん(f04425)と参加
ちくわちゃんはキマフューの味方だよ。
安定したいいね供給源を脅かそうとするなんて許せない。ラティナさんとコンビネーション大作戦でカチコミじゃオラー!
WIZ先制攻撃をこちらだけに引きつけるように【パフォーマンス】で挑発からの【ダークヴェンジャンス】
食らった先制ダメージも攻撃力に換えて、黒竜の群れを殴りつけながらなるべくドラゴンテイマーに近接していくよ
敢えてウレタンが破れて金属フレームが露出するようにダメージコントロール
戦えなくなるほどボロボロになったらラティナさんに合図
「ちくわちゃんを武器にして!」
ラティナさん用の超重武器としてドラゴンテイマーに叩き込まれるよ
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猟兵達の活躍により、目に見えて【ドラゴンテイマー】の傷は増えている。刀傷。裂傷。細かい物を挙げればキリが無いほどに。
だが彼は逃走はせず、あくまでこの地に留まり猟兵を見据えていた。
何故か。『持ち帰る』といった、その力の為か。
或いはそれほど彼にとってグリモアが、そしてそれを操る猟兵の動向を見定める事が重要なのか。
彼は語らぬ。今はまだ、その時ではない。
己に向かってくる気配を感じ、ドラゴンテイマーは右腕の魔剣を振り翳す。それを受け止めたのは巨大なバトルアックス。
「――ふぅ」
防ぎ切った安堵に、ラティナ・ドラッケンリット(ビキニアーマー道の冒険者・f04425)は息を吐く。竜の鱗さえも容易く砕くその業物には、実は甘いものに目が無いラティナによって『しゅとれん』という可愛らしい名前がつけられている。だがそれをテイマーは知る由もなく。
「グリモア猟兵、か」
じろり。昏い瞳がラティナを見据える。
「グリモアを操り、我らより未来を奪う者達。――浅ましい」
「浅ましいのも、人々から未来を奪うのも、お前たちの方だろう。何を企んでいる」
「愚かな……」
追撃。ラティナの穿竜槍『たると』と屠竜刀『まかろん』がそれを受け止める。直撃は免れたものの一撃は重く、ラティナは大きく体制を崩す。
「竜殺しを名乗る者よ。その竜の爪で果てるがいい」
空気がざわめく。一面の花々が揺らぎ、地面が盛り上がり、無数の竜が現れる。
「そーはさせるかオラーーーーー!!」
飛来したのは一本のちくわ。……ちくわ?
妙に巨大なそのちくわは見た目はちくわだが立派なウォーマシンの猟兵である。その名も北千住・ちくわちゃん(愛よりもいいねが欲しい・f17794)という。
やはりちくわだった。
「ちくわちゃんはキマフューの味方なんだよ。ちくわちゃんの大事ないいねパワーを安定して供給してくれるこの世界を脅かそうなんて許せない!」
びしぃッ! 竜の群れに人差し指を翳して挑発ポーズ。かわいい。
「ラティナさんの邪魔はさせない。君たちの相手はこのちくわちゃんなんだよ! それとも無粋なドラゴンくんたちにはちくわちゃんの魅力がわからないかな?」
竜の群れが唸り声をあげてちくわちゃんへと飛びかかる。
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正面から振り下ろされた幾度目かの斬撃を、受け止める。
「――ぐっ」
フロンティア・ラインと同時に行使する事は出来ないのか、今の赤き魔剣には竜を喚ぶ力は乗っていないようだ。威力も速さも先の一撃に比べれば落ちているように思える。それらをラティナは精神を研ぎ澄ませ、あるいは受け止めあるいは躱し続けている。
(防戦一方というのは、私らしくないな)
ラティナは歯噛みする。彼女自身もまだ一度も攻撃はもらっていない。だが反撃に移る隙もまた、無い。拮抗している。否。
(完全に、遊ばれているな。……くそっ)
刃の奥の冷徹な瞳。感情の伺えぬそれがレンズのようにラティナを映している。
ちらと相棒の方を見れば、所々ちくわ型のウレタンが破れて金属フォームを露出させながらも懸命に戦っていた。あちらはまだ大丈夫かと安堵したラティナの耳に。
「よそ見をしている場合か?」
テイマーの声が、厭に鮮明に響いた。そして。
「か、は」
ラティナの腹部を、凶刃がばっさりと斬り裂いていた。
「ラティナさんっ!!」
それはちくわちゃんの目にも止まっていた。駆けつけようとする彼女を竜が阻む。
「邪魔したいならすればいいんだよ! ちくわちゃんは絶対に倒れないんだから!」
竜のブレスがちくわちゃんを灼く。ちくわちゃんが本当にちくわならば美味しくなったかも知れない。だがちくわちゃんは誇り高きウォーマシンなのでそうはならなかった。
代わりにウレタンが溶け、内部の金属フォームが大幅に露出する。ちくわちゃんは満身創痍だ。だが彼女の周囲を纏う漆黒の粘液は、負傷すればするほど強くなるちくわちゃんの秘策。
「そこどけーーーーー!!」
今や金属の塊となったちくわちゃんのフルスイングが、征く手を阻む竜の腹を打ち砕き、跳ね飛ばす。
まさに今、ラティナに屠ろうと刃を振り下ろすテイマーの元に、吹っ飛んだ竜の骸が割り入った。ラティナを押しつぶさないように、緻密な計算の上繰り出された豪快な一撃。
「ラティナさん、大丈夫!?」
「何とかな。ちくわちゃんこそ」
ボロボロじゃないか、と手を貸してくれた相棒に微笑みながらも、ラティナは立ち上がる。
「うん。だからラティナさん、ちくわちゃんを武器にして!」
「わかった。合体攻撃と行こう」
金属の身体をがっしりと握りしめ、ラティナは駆ける。
その先には、ダイウルゴスの骸の直撃を免れはしたものの大きく体制を崩したドラゴンテイマーが居た。
「ちくわちゃん、気絶してダーク・ヴェンジャンスを解かないでくれよ」
「ふふっ、ラティナさんこそ外さないでね」
「ああ。――これが、二人の力だ!」
彼の頭目がけて、重い重い一撃が振り落とされる。
「ぐ……っ、な、ぜ」
まさか竜の統治者も、ちくわに致命傷を与えられるとは、思ってもいなかった事だろう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シール・スカッドウィル
ゾフィ――んっ、あちらも何か探りを入れている感があるな。
では、こちらも少し。
「形態、解放」
武装形態を解除、精霊態を十。
アクセラレート起動、思考加速。
サルヴェイジ、自我補強。加速増幅しつつ観測開始。
全対象の挙動を<見切り>、構造解析、精霊態に<学習>。
【融解】、運用開始。
十の精霊態で迫るダイウルゴスを融かしながら観測学習続行。
抜けられる〝穴〟を観測次第、十精霊を肉体に還元、自己強化。
一歩一歩が<ジャンプ>染みた移動で、敵と花を<吹き飛ばし>ながらテイマーの元へ。
思考・行動加速と【融解】で敵の手を潰しながら、肉体の一部を抉り取る。
解析に掛けられれば何かわかるかもしれんが、
「そも、うまくいくか」
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「ゾフィ……いや、ドラゴンテイマーと言うんだったか」
長く伸びた前髪の下、蒼の瞳がオブリビオンを見つめていた。八枚の翼持つ異形を目にしたシール・スカッドウィル(ディバイダー・f11249)が思わず違う名を呟きかけたのは、見知った者に似ていたからか。それとも彼の空間に干渉する能力ゆえ、目にしてきた世界があったのか。それは彼のみが識るところでもある。
目の前のオブリビオンは度重なる激闘の末、既に満身創痍と言っても差し支えの無い姿だった。荘厳たる翼は破れ折れ、黒衣の至る所が血で染まっている。それでも闇を思わせる昏い瞳は未だ健在、真意の伺い知れぬそれがじっとシールを見つめ返してきた。
「俺達の何を探っているんだ?」
シール自身もさして答えも期待せず投げかけた問いに、テイマーはやはり答えず。右腕の剣を軸に立ち上がった彼が、周辺の足場へと干渉する。ぼこり、ぼこり。足場が歪み、盛り上がり、それは無数の竜の群れへと姿を変えた。
「――形態、解放。武装形態を解除、精霊態を十……」
迎え撃つシールは、宿した精霊たちの姿を解放する。
「サルヴェイジ、自我補強。加速増幅しつつ観測開始――」
敵の、初撃は右から。
牙剥いた黒顎を、冷静に見切って躱した。それと同時に彼はその攻撃パターンを解析し、精霊態に学習させている。否、行動パターンだけではない。
テイマーのそれが周辺の無機物へ働きかける術なら、シールのそれは空間そのものに干渉する技。彼はその力でもって全ダイウルゴス達の挙動を、構造を、解析し続けている。
「【融解】、運用開始」
シールが静かに宣言すると同時に、彼を取り囲んでいた黒竜の何頭かが突如、どろり、と〝融けた〟。干渉され概念ごとメルトダウンさせられたそれらは、まるで泥人形のように崩れ落ちていく。
「ダイウルゴスの観測完了、及び〝穴〟を発見。これより――」
す、と瞳が細められる。地を蹴ったシールの疾走は一歩一歩が跳躍の如き高さと力強さを伴い、周りの花も竜をも蹴散らしていく。解析に使用していた十精霊すべてを肉体に還元させ、大幅な自己強化を可能としているのだ。
「――攻撃に転ずる」
テイマーへの守りが最も手薄な部分を解析しての跳躍はどの竜にも止められず。【融解】の手がテイマーへと届く……。
「――っ、く」
視界が、揺れる。最初にシールが感じたのは、腹部への強烈な熱。一寸遅れて、思い出したように熱が疼痛を帯びる。魔剣がシールを斬り伏せていた。それでも。
テイマーがはたと気づいたように魔剣を見遣る。禍々しい赤の刀身が、シールの血が付着したそこから、どろり、と融け落ちていた。
「何……!?」
虚のようだったその貌に、はっきりと驚愕の色が浮かぶ。
「俺を斬って、油断したか……生憎、タダでやられてやる趣味はないんでな」
その雫をシールが掬い取り、解析の術をかけるが。
「何も得られないか。そも巧く行くかも判らなかったのだから、上出来と言うべきかも知れんが、な……」
そうだろう? 攻撃手段のひとつを潰してやったのだから。
成功
🔵🔵🔴
チャド・アランデル
【心情】
こいつを逃したら、後々不味い気がするよねー。
今回の異変も元凶はこの人みたいだし、痛い目見てもらわないとねー。
【戦闘】
【チャドの薬瓶】を薬として使用、口に含み振り掛けながら【生命力吸収】
【チャドの結界石】を範囲を自分に指定して発動【身代わりの木】でダメージを【かばう】という防御策。
ダイウルゴスの攻撃を【野生の勘】で【見切り】【激痛耐性】で耐えながら【逃げ足】を生かし時には【武器受け】したり【敵を盾にする】事により回避に専念。
機を見てマーキングしたダガーをドラゴンテイマー付近へ【クイックドロウ】で【槍投げ】の要領で【投擲】、ドラゴンテイマーへ選択UCと【毒使い】による【暗殺】を仕掛ける。
●
チャド・アランデル(キマイラのシーフ・f12935)は、この戦場を駆け抜けてきた。
「こいつを逃したら、後々不味い気がするよねー」
オブリビオンは幾度も復活する。チャドは既にこの男とも交戦した。一度は彼の最期を見届けた。
それでもチャドはこの地へ帰ってきた。平和の為に。
黒竜の後足が、赤髪のキマイラを圧し潰した。竜が吼える。主人の首を狙う羽虫のひとつを潰してやったのだと。
「――いや、未だだ。気を抜くな」
冷徹な声に、竜は振り下ろしたばかりの脚を上げる。そこに在ったのはキマイラの死骸ではなく、へし折れた身代わりの枝。
「ガ……!?」
謀られた。竜は辺りを見渡す。見つけた。逃げもせずに突っ立っている。余裕のつもりか。
「グォオオオオオオオオ……!」
裂帛。力任せに尾で薙ぎ払う。相手は慌てて逃げようとするが間に合わず、真っ向から尾の一撃を喰らった、筈だった。
だが何かがおかしい。標的は竜よりもはるかに小さい筈なのに、攻撃の反動がやけに重い。そして相手も吹っ飛ばされる事はなく、その場でぐら、と揺れて。
斃れる。その姿はキマイラの青年ではなく、仲間であるダイウルゴスの一頭であった。チャドが認識障害を誘発させる結界を張っていたのだ。
同時にチャドはダガーを投擲する。狙いすました一閃はテイマーに難なく避けられてしまうが。
(欺くのは得意だけど、直接攻撃は大したコトない……そう油断したかな?)
目的は攻撃ではない。対象へのマーキング。奴の近くにさえ命中すればそれでいい。そのポイントへと、チャドは何よりも疾く移動する事が出来る。
勝負は一瞬。チャドはテイマーの背面に瞬間移動する。その無防備な首に、致死量の毒を込めた毒針を突き刺そうと。
「!」
テイマーが振り返る。チャドに背面を取られたのを、一瞬で察したのか。気付いた後の動きはあまりにも速く。
毒針が叩き落される。そして。
テイマーと、チャドの、視線が交錯する。虚のようだと思ったその黒い眼が、執念を以てチャドを睨みつけ。
(――ああ、この人、は)
生きようとしている。何度骸の海に還されようと蘇り、立ちはだかる。何の為に?
ごっ、と鈍い音がした。先の戦いで右腕の魔剣は刃を融かされていたが、その重みを力任せにチャドに叩きつけたのだ。
頭蓋を打たれ、チャドは地面に倒れ伏す。だがその口元には、微かに笑みが浮かんでいる。
「……なん、だ」
代わりにチャドを討ちとった筈のテイマーの顔に焦りの色が浮かぶ。その左腕がぶるぶると震えている。
「やっぱり、ね。手ごたえはあったんだ」
チャドの笑みが深くなる。それは勝利への確信。
「僕の毒針。直撃は出来なかった、けど、少しだけ、掠った……これだけでも、暫くは動けなくなる、筈だ」
テイマーは再度魔剣を振り上げようとする。だがその腕は硬直したようにぴくりとも動かない。
「もう、君は、終わり、だ。他の、猟兵が、――君を」
その言葉は途中で途切れ、チャドの意識は闇へ沈んだ。
成功
🔵🔵🔴
コトト・スターチス
ドラゴンテイマー…なんだかとっても背筋がこおるかんじに怖いです…
…でも、ぼくは猟兵です
震えますけど、逃げたりは、しません…!
ダイウルゴスは操られてるようなので、動きのクセやパターンなどを【見切り】、避けたりメイスで受け流しながら【情報収集】します!
全方位から攻撃を受けるとあぶないので、一定の方向から攻撃が集中するように逃げていきますね
ぼくが避けきれなくなってきたころには、集めた情報から攻撃できるチャンスが見えてくるはず!
しろにゃんさんの防壁を展開してダイウルゴスから身をまもり、くろにゃんさんの【属性攻撃】の魔弾を敵の死角から一気に放ちます!
「グリモアは…あなたにはぜったいに渡しませんっ!」
●
コトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)がシステム・フラワーズに降り立ち最初に見たものは、傷を負った猟兵達の姿だった。
気を失っている者。動けなくなっている者。今すぐ回復してあげたい。けれど。
ちら、と敵を見遣る。ドラゴンテイマーもまた、猟兵達との戦いの中で負傷していた。夥しい量の血を流しながらも未だ膝は付かず、その瞳の鋭さも衰えず、コトトを見据えてくる。けれどその両の手は小刻みに震えており、すぐさま攻撃を仕掛けてこない事を鑑みるに、どうやらその身体は麻痺毒に侵されているらしい。
(まずは、あの人をたおさなきゃ)
おそらく麻痺の効果時間はあまり長くない。猟兵達を回復させて周っているうちに彼は復活してしまうだろう。今、彼を仕留めた方が、最終的に犠牲はずっと少なくなる。バーチャルの世界でずっと癒し手を務めてきたコトトだからこそ、今は攻撃に転じるべきだと判断を下した。
「『今の』私はもう永くない、か……ならば全てを次に託そう。猟兵達を、道連れに」
動けぬテイマーがそれでも竜を喚ぶ。花の足場を竜の群れに。鮮やかな花々が散り、漆黒の竜の群れに転じ。
竜がブレスを吐いた。闇色の炎を跳んで避けた所を、薙ぎ払うように爪が襲い掛かる。コトトはとっさにメイスを振るいそれを受け止めた。可愛らしいエフェクトと共に斬撃はいなしたが、衝撃に身体は吹っ飛ばされる。地面に叩きつけられごろごろと転がる勢いを敢えて殺さず竜の群れから距離を取り、コトトは立ち上がる。
(――こわい)
メイスを持つ手が震える。どんなにゲーム上で実績を積んでも、どんなに猟兵としての経験が豊富でも、コトトはたった6歳の女の子だった。怖くない筈なんてない。
けれど怯え震えながらもコトトは気丈に竜の使い手を見据える。ここで自分が逃げたら、力尽きた仲間たちはどうなる。この世界は、どうなる。
「ぼくは、猟兵です。逃げたりなんて、しません……!」
メイスが光り輝く。立ち向かうための力を携えて。
「くろにゃんさん、しろにゃんさん、お願いします……っ!」
ダイウルゴスの炎のブレスを、ぽわんと白いものが受け止めた。それは白猫型のドローン。そして。
「にゃああああああん!」
もう一匹、召喚された黒猫型のドローンが魔弾を放つ。一斉に放たれたそれは竜達の死角を縫って進み、動けぬテイマーに直撃した。
「――及ばず、か」
敵はとうとう膝をつき、その輪郭がぼやけていく。
「グリモアは…あなたにはぜったいに渡しません」
「今は、そう思っておくが良い。いずれ私は……」
言葉は最後まで紡がれず。テイマーの姿は靄のように消えた。
竜の群れが消え、元の花の足場に戻っていく。
傷ついた花々に、猟兵達に、コトトは癒しの力を振るった。
「みんな、よくがんばりましたね。いいこいいこっ」
幼い彼女が聖母のように微笑み。
戦いは終わった。システム・フラワーズも、彼女たちの愛するこの世界も、護られたのだ。
成功
🔵🔵🔴