バトルオブフラワーズ⑫~竜の波濤
●
広大な空間が、上下を塞がれた位置にあった。空間を構成する要素は一つ。花弁だ。
咲き乱れる花々は宙のいたるところで舞っており、それだけでは足りないと言わんばかりに、下方ではそれらが敷き詰められ、足場となっていた。
舞い散る花弁と花の床。それが、システム・フラワーズの内部の様子だった。
そんな星の中枢の中でも少し離れた位置に、一人の影があった。
「…………」
紫のガスに包まれ、六枚の翼と赤き剣の腕を持った男だった。
「……来るか」
男がそう呟いた直後、背後に巨大な黒竜が召喚される。
「――!!」
竜の大咆哮が無数の花弁を震わせた。
●
猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、謎のオブリビオン、ドラゴンテイマーの位置を予知できましたわっ」
ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界はキマイラフューチャー。その“内部”、システム・フラワーズ……の中枢からは少し離れた位置ですわ! 今まで怪人軍団の幹部を倒してきたルートからは離れている、ということですわね。
猟兵の皆さんには、当該オブリビオンを撃破してもらいたいんですの」
身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「現場の現状を説明しますわ。システム・フラワーズ内部は花が舞い、敷き詰められた花弁が足場となった空間ですの」
そして、と言葉は続く。
「ドラゴンテイマーの能力について説明しますわ。ドラゴンテイマーは、“黒竜ダイウルゴス”を召喚する能力で戦うようですの。先の幹部戦と違い、特殊なルールはありませんけれど、これまでの誰よりも強敵と、そう思われますわ」
フォルティナは眉を立て猟兵を見回す。
「彼のユーベルコードは遠近共に隙がなく、大型ダイウルゴスを用いれば範囲攻撃も可能ですわ」
そして、
「彼も例に漏れず、絶対先制攻撃ですの……。」
手から、光を生み出す。
オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、テレポートし、皆さんを召喚しますわ」
猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先は危険が――」
否、
「……先ほども申し上げましたけれど、“相手はこれまでの誰よりも強敵”と、そういう意識でお願いしますの」
そう言って真剣な顔で全員の顔を見渡すと、一転、フォルティナは目じりを下げ、口角を上げた。
「でもまー、皆さんならできますの! 私はそう信じていますわー!」
シミレ
シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
今OPで13作目です。戦争時の敵幹部戦は二回目です。
不慣れなところもあると思いますが、よろしくお願いいたします。
●目的
オブリビオン、『ドラゴンテイマー』の撃破。
●説明
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
●他
皆さんの活発な相談やプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください)
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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転移が済んだ猟兵達は、花弁を踏みしめて進んでいく。
進むのは、怪人軍団の大首領、ドンフリーダムがへと繋がる主道ではなく、その主道から枝のように派生する道だ。
他の猟兵達がドンフリーダムへ向かうのを視界の端で確認しながら、自分たちはそれから外れ、枝道を進んでいく。
そうして、辿りついた先に、いた。
「――来たか」
敵だ。ドラゴンテイマーと、そう呼ばれる存在が道の終点にいた。
舞う花に六枚翼を浸し、こちらを見る視線は冷ややかだ。
「私の役目は“持ち帰る”のみ。……だが、貴様らの出方も見ておきたいと、そうも思う」
右腕と一体になった赤剣をこちらへ向け、敵が言葉を放ってくる。
「いずれ私が、グリモアを再び手にする時の為に……」
純・ハイト
フェアリーが乗れるように性能を上げて魔改造されたレオパルト5で現れながらドラゴンテイマーと戦うが、戦車が破壊される又は「文明侵略」の攻撃で戦車が完全に壊れる前に脱出しながら自身の全力高速詠唱の爆破魔法で派手に爆破して黒煙で迷彩・目立たない・忍び足で隠れながら脱出するようにする。
脱出した後は隠れながらユーベルコードを発動して応戦、できるだけ大きなダメージを与えられるように死霊騎士を5千を自身の守備に回して、残りをドラゴンテイマーに向かわせて戦わせる。
厳しい戦いになるだろうがこの戦いに負けるわけにはいかない!
勝てるか心配だが戦ってみなければ分からないな。
●
ハイトは思う。正直なところ、勝てるかどうか未知数だ、と。
しかし、
「やってみなければ分からない……!」
そうして、システム・フラワーズの大気を響かせながらやって来たのは自分だ。全長50メートル、全幅17メートル、全高15メートル。無機質と無骨が組み重なったようなその姿は、戦車だ。
フェアリーでも乗れるように改造されたレオパルトに身を包み、己は突き進む。
向かう先にいるのはオブリビオン、ドラゴンテイマーだ。
「行くぞ、オブリビオン……!」
それを視認した己は、車室から戦車砲の照準を合わせ、
「死ね……!」
撃った。砲口から火炎を吹き、その直後、射出された砲弾に付随するエネルギーが周囲の大気を等しく打撃し、花弁を吹き飛ばしていく。
人体に対しては巨大すぎる砲弾が、ドラゴンテイマーの直撃しようとした。
そのとき、
「――“文明侵略”」
敵の声と共に、暴風が巻き起こった。
「――!!」
大気をつんざくような咆哮は竜だ。それも複数。ドラゴンテイマーの周囲にあった花弁の尽くが黒竜へと姿を変え、
「……!」
砲弾と主の間に己を投げ込んだのだ。
「ちっ……!」
着弾の衝撃による、爆炎と煙で現場は確認できないが、
これで死んでるはずがない……!
「次弾装填!」
確信にも似た思いを胸に、次なる行動を機体に与えようとしたそのとき、
「――――」
それらを途中で取り止め、自分は機体から脱出していた。
「……!」
急ぎ振り返る先、無数という数の黒竜たちが戦車に突撃を仕掛けて来ていた。
「――!」
戦車が波に呑まれ、その打撃や重量の負荷に耐えきれずにその姿を歪め、やがて爆発するが、
「……!?」
「爆破魔法ありったけだ……!」
戦車一台を核に、加圧された爆発は大量の噴煙を派手に撒き散らす。
今だ……!
己はその黒煙に身を隠し、ユーベルコードを発動する。
「……!」
雄叫びの声を上げながら煙の中から飛び出していくのは、死霊の軍団だ。
騎士と竜。合わせて六師団程の数は、五千の死霊騎士を残し、一斉という勢いで敵へと向かっていく。
しかし、
「――軍団も、黒煙も、何もかもを食い破れ。ダイウルゴス」
無数の竜で出来た波が、こちらの軍団と正面からぶち当たった。
力と力の衝突は竜を花弁へと戻し、死霊を無へと帰させていく。
「くっ……。煙が……!」
戦闘の余波は大気のうねりを生み、煙幕と化していた黒煙を吹き飛ばしていったのだ。
「だが、待機させておいてよかった……!」
こちらを補足し、突撃を仕掛ける黒竜達へ、側に控えさせていた死霊騎士を相対させ、己は難を逃れる。
「はぁっ!」
己も武器を振い、騎士たち共に戦いながら、それを見た。
「至ったか……!」
視線の先、ドラゴンテイマーの元へ己の軍団が到達したのだ。
「ちっ……。煩わせてくれる……」
敵は迫りくる竜や騎士を、自分の黒竜や赤剣を用いて迎撃するが、次第にその身に傷を増やしていく。
「厳しい戦いになるだろうが、この戦いに負けるわけにはいかない……!」
周囲に展開し、黒竜たちと戦闘を繰り広げている死霊の軍団へ、自分は手に持った杖を振り上げ、鼓舞した。
成功
🔵🔵🔴
アシェラ・ヘリオース
「奈落を見てきた目をしているな、竜の御仁」
黒の外套を靡かせ両手の間に力を篭める。
空間が軋むと錯覚するほどの超圧縮のUCだ。
赤の一閃に対し【戦闘知識、衝撃波、オーラ防御】で対応。薄く広げたオーラの膜で感知し、自身を衝撃波で弾いて回避する。
完全な回避は望めないので追撃にも対処する。
【黒刃】を卍状の手裏剣に変じ、【念動力、範囲攻撃】で操作して【黒竜の大群】を薙ぎ払い、収束の【時間稼ぎ】だ。
収束後、改めて【黒刃】へ力を注入。
より巨大に、より激しく、より壮絶に。
黒の嵐の如き【黒刃】を放つ。
これは威力凄まじいが回避されやすい。
「猟兵を侮るなよ」
故に、戻りの二撃目で確実に仕留めるのだ。
【二回攻撃、誘導弾】
●
アシェラは、オブリビオン、ドラゴンテイマーと対峙していた。
「奈落を見て来た目をしているな、竜の御仁」
「…………」
敵は、こちらの問いには答えず、ただ右腕と一体となった赤剣を向けるのみだ。
「言葉は不要か……」
そう言葉を零し、こちらも黒の外套を棚引かせ、両手の間に力を込めようとした瞬間、
「――――」
来た。
攻撃を届かせるための突撃だ。
大気を打つような音の正体は、正しく敵の背にある六枚翼によるもので、彼我の距離は一瞬という間に詰められていく。
「――死ね、猟兵」
呟きの声を乗せ、赤の一閃がへやって来た。対象の身体を断つ軌道は正確に振り下ろされ、己の身体を、
「――――」
吹き飛ばした。
「――何?」
斬撃ではなく、衝撃の音が響いたシステムフラワーズの中、ドラゴンテイマーが疑問の声を小さく漏らした。
細めた瞳で剣先を見つめながら、ドラゴンテイマーが言う。
「……オーラによる一瞬の感知と自身の経験を頼りに、己を衝撃波で吹き飛ばしたか」
「が、はっ……!」
花弁の足場の上を衝撃で吹き飛びながらも、己は構えた両手は解かず、慌てて体勢を立て直そうとするが、
「――来い、ダイウルゴス」
敵が剣先をこちらに向け直し、唱えた瞬間、周囲の空間からそれが来た。
「――!」
フラワーズ全体を震わす咆哮は複数だ。黒竜ダイウルゴスが群れとなってこちらへ飛翔してくるのだ。
その狙いは、
「接触した私のオーラ膜か……!」
あの突進力の前ではもはや自身と同義だ。
「くっ……!」
しかし、こちらも完全な回避が出来るとは考えていない。追撃への対処として、放つのは黒の刃だ。
「行け……!」
力を篭められた両手の間は、もはや力の超圧縮が始まっており、その空間が軋んでいるかのようだ。
しかし、
まだ足りない……!
だから、“黒刃”を投ずるために両手は解かず、利用する力は自身のフォースナイトとしての力だ。
「おお……!」
フォースによって放たれた“黒刃”がその形は卍状の手裏剣へと変化させていく。
「薙ぎ払え……!」
“黒刃”が、ダイウルゴスの群れへと抉り込むような軌道でぶつかっていった。
だが、
「――軽いな」
「なっ……!?」
こちらの狙いは叶わなかった。
“黒刃”は幾体かのダイウルゴスを斬撃し、吹き飛ばしたが、しかしそれだけだ。
「――!!」
失った同胞すらも押し退け、ダイウルゴスの群れが波となってこちらへ突貫してくる。
「ぐぁぁああっ……!」
牙と爪、そして体躯。それらが混然一体となった波濤が身体の至るところを噛み千切り、切り裂き、抉ってくる。
「くっ……! 戻れ!」
それに対し、こちらは慌てた動きで“黒刃”を呼び戻し、
「収束が心許ないが、仕方ない……!」
両手に蓄えた超圧縮のフォースの全てを、“黒刃”へ送った。
「黒気収束……。加減はなしだ!」
直後、フォースを吸収して戻って来た“黒刃”がサイズや威力を始め、先ほどまでとは比べ物にならない程の勢いとなる。
「はぁああああ……!!」
己は、もはや手で掴むことなど不可能な大きさとなったそれをフォースで捉え、持てる力の限りで投擲した。
「――!」
大気を裂き破るほどの一撃は、ダイウルゴスを蹴散らし、ドラゴンテイマーの元へ爆発的なスピードで駆けていく。
「ちっ……!」
ドラゴンテイマーの翼が動き、回避を選択するが、
「……!?」
「猟兵を侮るなよ……!」
誘導を命じた己の一撃は、敵を逃さず、と追随していく。
「小賢しい真似を……!」
黒の刃が、ドラゴンテイマーの身体を直撃した。
苦戦
🔵🔴🔴
ンァルマ・カーンジャール
裏ボスさんの登場でしょうか・・・。
身に纏う空気感が明らかに違いますね・・・。
ドン・フリーダムさんがまだ残っているとは言え、出し惜しみはしません。
これだけ強大な敵を無傷で済まそうという甘い考えも捨てます。
私の持てる全力で参ります・・・!
風の精霊さんにお願いし周囲に防御用の風を展開です!
土の精霊さんを盾にして物理攻撃に備えますよ!
正面から受けては押し切られます!いなすように動きますっ!
緊急時は電脳魔術で自身の存在確立を下げて避けます。
攻撃を凌いだらこちらもUCで応戦です・・・!
周囲に舞う数多の花弁を無数の槍に変えます。
相手の防御を透過し直接本体を穿ちますっ!
●
裏ボスさんの登場でしょうか……。
ンァルマは転移が終了し、最初に思った感想はそれだ。
前方、そこに敵がいる。
「身に纏う空気感が明らかに違いますね……!」
そう言葉を零した直後、来た。
黒の塊が高速でこちらに向かってくる。もはや一塊となっているが、その内実は複数の竜だ。
「――!」
前面から、黒竜たちの咆哮が圧となってこちらに押し寄せて来るが、自分は怯まない。
これだけ強大な敵を、無傷で済まそうという甘い考えも捨てます……。
ならばどうするか。
「私の持てる全力で参ります……!」
言葉に続く自身の見動きは、高速だ。
「お願い……!」
両手を振い、願う先は自身の友だ。
「――――」
刹那、己の前方に暴風が、手に盾が生じる。
友である精霊たちの能力だ。
ドン・フリーダムさんがまだ残っているとは言え、出し惜しみはしません……!
盾を両手で構え、自分はそれらの力を全開にし、前方を見る。
「……!」
敵との距離は縮まり、衝突は至近だ。
正面から受けては押し切られますね……!
莫大な質量が高速でやって来るのだ。このまま防御を構えているだけでは、こちらが吹き飛ぶ。
「ならば、いなすように……!」
自身を半身にし、敵集団に対し斜めの姿勢で相対するころには、衝突が始まった。
「――!?」
竜たちがまず味わったのは暴風だ。突如前方に生じた暴風に、竜たちはその軌道を乱し、こちらへの突撃の勢いが弱まる。
「あぁぁっ……!」
そこを狙い、己は竜の波に盾を押し当て、押し寄せる勢いをサイドに逸らしていく。
しかし、
「くっ……!」
やはり数が数だ。その圧倒的な物量は暴風による牽制を持ってしても、こちらを呑みこんでくる。
「このままじゃまずいですね……!」
今は耐えることが出来ているが、これから後続に押された連中が、こちらに圧縮されて来る。
「ならば……!」
盾を構えたまま、己は高速で言葉を紡ぐ。すると、次第に自身の表面が、否、内部も含めて一様に半透明となっていき、
「――!?」
竜が、そこを抜けた。
この空間における己の存在確率を引き下げたのだ。
「――――」
竜が通過する突風が、前から後ろへ流れていくことによって生じる轟音を聞きながら、己は前に駆けた。
「――複合接続! 量子力学制御!」
風の精霊によって巻き上がった花弁を掴むように、手を振り上げ、叫ぶ。
「――諸法無我の現世なれば、涅槃寂静への理を布かん!」
言葉を宣言したそのとき、周囲が一変した。
「自分だけでなく、世界を書き換えたか……」
周囲にある花弁の尽くが、黒の仏槍と変わったのだ。
「……!」
背後に抜けた黒竜たちが慌てた動きでこちらに戻って来ようとするが、
「こちらの方が速いです……!」
一振りを掴んで投げれば、他の仏槍も追随し、大気を突っ走っていく。
「ちっ……!」
ドラゴンテイマーがその赤剣で弾き落とそうとするが、
「なに……!?」
「防げませんよ……!」
黒の仏槍は赤剣と接触することすらなく、ドラゴンテイマーの身体へ突き進んでいき、
「おのれ……!」
その身に、突き立っていった。
成功
🔵🔵🔴
レイ・アイオライト
竜を操るオブリビオン……なんて殺気なのよ。
文明侵略、なんてとんでもない数の黒竜が襲ってくるんでしょうね。
先制攻撃は『闇ノ足音』で空中へと超高速に駆け抜けて逃避行よ。(空中戦・見切り)
あたしを追尾して襲いかかってくる黒竜……そいつら全部あたしの下僕にしてやりましょう。
【黒死幻蝶】を天空の全域に拡散するように展開、ドラゴンテイマーには見えなくてもいいわ、目的は竜たちがそれを視認すること。
幻覚に陥った竜たちは、ドラゴンテイマーを『あたし』と認識して襲いかかる。
きっとテイマーがUCを解くわ。
その隙を見逃さない。
流星に似た急降下からの『魔刀・篠突ク雨』の『だまし討ち・暗殺』よ。
●
レイは、竜の咆哮を合図に戦闘が始まったことを知った。
「――行け」
「――!」
ドラゴンテイマーが自身の周囲にある花弁、システムフラワーズの構成要素である超常のそれや、周囲に漂う大気を材料に黒竜ダイウルゴスの複数召喚を実行したのだ。
「……!」
黒竜達が向かってくる中、己は背中から滴る影を頼りに足を運ぶ。そうすれば、影は足下で確かな存在として感触をこちらに返してきた。影の足場だ。それを踏みしめ、己は身を空中に運んで行く。
「――!」
行った。超高速と、そう言える速度でだ。
「――!!」
背後、黒竜たちが雄叫びをあげながらこちらを追いすがって来る。
自身を先頭に、システムフラワーズの上空に黒い川のような流れが生まれる中、気付く。
「速い……!」
敵だ。こちらもそれなりの速度を出しているが、相手も離れない。
「だけどここまで近づいたなら……!」
己は両腕を振り、力を解放した。
「――――」
自身の影から続々と生じるのは、黒の蝶だ。
それら蝶の群れは、システムフラワーズの上空、全域に展開していく。
黒の川に、更なる流れが加わった。
「――!?」
蝶の群れを視認した竜たちが、疑念の叫びを上げる。
それを聞きながら自分は、振り返って告げた。
「黒い蝶たちは不死の予兆……」
そして、
「――死の予兆よ」
直後、蝶たちが影の色を一度濃くした。
「――!?」
それを見ていた竜たちの叫びが疑念から、驚愕の色に変わる。瞳はこちらを注視しておらず、虚ろだ。
「さぁ、行くのよ。貴方達の“敵”の元へ……」
こちらの囁くような声に雄叫びで応じ、竜が航空を再開する。
「――!」
竜が広げた翼ごと身体を傾けて速度を確かにしていく。そのような動きで出来あがるのは、一つ。
空中での旋回だ。それは前方にいるこちらを無視した動きで、それが意味することは何か。
「竜たちが目指す先は私じゃなく、アンタよ……!」
黒の流れが翻り、一斉に地上へと向かっていった。
「――!」
顎を開き、自身に向かってきている存在を見ていたドラゴンテイマーが口を開く。
「私の竜に、幻覚を見せたか……!」
もはや、竜と使役者の接触は間近だ。
「くっ……!」
敵が、制御を仕切れなくなった竜の召喚を中止を選択するのにそう時間はかからなかった。
「――――」
そして、システムフラワーズの空域全体から竜が消え失せた。
それが意味することは何か。
敵への道が開けたということよ……!
「――!?」
気付いたドラゴンテイマーが、こちらのいる上空を見上げるが、遅い。
「ぉおおお……!」
己が、上空から逆落としに駆けていく。
身体は地表を向いてるが、影で出来た足場は確かにこちらを支え、墜落を防ぐ。
只々、敵への最短コースを加速して突撃する己は、迫る花弁も、散る風も、何もかもを背後へと流して行く。
行った。
「――!!」
その身を流星と変えて。
「おのれ……!」
視界の先、ドラゴンテイマーが迎撃の召喚をしようとするが、
「遅い……!!」
花弁すらをも蹴り飛ばして最終加速を叩き込んだ己は、ドラゴンテイマーの直上から、“魔刀・篠突ク雨”を振った。
「ぐぉお……!」
身体を袈裟斬りに断った一撃が、周囲の花弁と、
「…………」
魔刀の刃を、紅く濡らした。
成功
🔵🔵🔴
才堂・紅葉
【肩赤】
「特別報酬対象よ。気張っていきましょ」
【蒸気王(アイテム)】に騎乗し不敵に笑む。
大型の黒竜が軽く50以上も召喚されては笑うしかない。
【存在感】を発揮しブースターで突貫。
黒竜達と砲撃及び白兵戦だ。
役割は粘り強い潰れ役。【見切り、野生の勘】
本命の霧枯を【庇い】、竜の男まで牽引する仕事だ。
「有難う、蒸気王……そして出番よ、霧枯!!」
【気合い、鼓舞】
大破の直前で蒸気バイクに分離し、後は黒竜達の【逆鱗】を狙い突撃銃と榴弾で【操縦、スナイピング、誘導弾、援護射撃】。
もし、霧枯の活躍で竜の男への射線が取れたなら。
赤い髪の靡く【真の姿】を開放し、すかさず【紋章板】に渾身の正拳を叩き込む。
「天衝っ!!」
霧枯・デスチーム
【肩赤】【2m半のガジェットブラザーに乗り込み行動。アドリブ歓迎】
「学校の先輩から紹介される高額報酬のお仕事ー!」
『危険な香りがしますね、ガージ?』
役割はアタッカー。男の見せ所だナ!
相手のUCは才堂さんの蒸気王に任せ、ブラッドショルダーを起動。
高速機動と【ダッシュ・操縦・第六感・盾受け・激痛耐性】で攻撃に耐えつつダメージを与え、注意を引く。
【範囲攻撃】で大型竜にも攻撃し、チャンスがあれば逆鱗を撃ち撃破を狙う。
与ダメージで破壊力を強化しながら機会を伺う。
隙が見えたら【グラップル・怪力】で拘束し、才堂さんと連携してありったけの生命力を注ぎ込んだ【鎧無視攻撃・零距離射撃・捨て身の一撃】を叩き込む。
●
霧枯は戦場にいた。
花弁が吹き乱れ、銃声も爆発音も何も無い場だが、戦場だ。
敵が目の前にいるもんナ……。
自分の前方、そこにある人影は一つ。
「…………」
ドラゴンテイマー。システムフラワーズの占領技術を怪人軍団に供与した存在が、そこにいる。
しかし、
「儲かる仕事って言うから何かと思えば……」
溜息交じりに言葉を漏らすと、隣に立つ巨人から声が返って来た。
「ほら、霧古。あいつよあいつ。特別報酬対象。気張っていきましょ」
女の声は既知だ。
「才堂さん才堂さん。あいつもしやめっちゃ強いんじゃね? オーラヤベーんだけど」
「“ウッホホーイ! 学校の先輩から紹介される高額報酬のお仕事ー!”とかいってついて来たの誰かしら」
『やっぱり危険な香りがしましたね、ガージ?』
「ウッホホーイは言ってねーナ?」
相棒と先輩の軽口にそう返し、しかし、続く言葉は誰からも発せられなかった。
「――!」
自分が搭乗する“ブラザー”と、紅葉の“蒸気王”が弾けるように動き出したからだ。
それは、何故か。
「来たわよ、霧枯……!」
「アイアイマム!」
『敵、黒竜ダイウルゴスを召喚しました!』
その数、
『五十……否、それ以上です!』
「――!」
幾数にも重なった咆哮が、戦闘の開始を告げた
●
紅葉は“蒸気王”の肩の上で、花々に囲まれたこの地に一つの事象が起こっていることを知覚した。
「暴風ね……!」
前方から来る突風風の色は黒で、巻き上がるピンクの花弁が全体をまだらに彩っている。
『ミス・紅葉! 敵の動きに変化が出ました!』
「……!」
“ブラザー”が、こちらへそう警告を送った瞬間、
「――包囲し、殲滅せよ。ダイウルゴス」
「……!?」
ドラゴンテイマーの一声で敵集団が分化し、こちらのことを包み込むように迫って来るのだ。
それを見た己は、
「――!」
背部ブースターの出力を全開にし、前進の速度を一気に得る。
関節の各所から蒸気を吹き出しながら、敵中に飛び込んだ。
「霧枯! 私の後ろにいなさい!」
「後ろつっても、全部の方向に敵がいるナ!?」
「――なら、敵を消すわよ!」
言葉共に“蒸気王”の手に持った砲を放てば、幾体かを巻き込みながら一体の竜が吹き飛び、その直後、砲弾が爆裂した。
「――!?」
布陣の一部が爆炎に包まれ、黒竜たちが蹈鞴を踏んだ。
「アイアイマム!」
『ブラッドショルダーモード、起動』
その隙をついて、霧枯がユーベルコード“ブラッドショルダー”を使用する。
直後、
「行くぞブラザー!」
『了解!』
爆発的な加速力を得た“ブラザー”が戦場を駆けていく最中、その右腕に構えたガトリングを持ち上げ、
「おら、食らってきナ……!」
脚部のローラーをフル稼働させてスピン一発。周囲の竜たちの逆鱗に目がけて掃射を放った。
「――!」
苦悶と激高の叫びを上げた黒竜たちが、霧枯たちを追おうとするが、
「あんたたちの相手はこっちよ!」
己がお互いの間に阻むように立ち、攻撃を引きつける。
「――!」
霧枯の掃射を掻い潜って来た数体が、肩上のこちらを食らおうと牙を剥いて突貫してきた。
“蒸気王”に乗ったこちらからしても、敵は大きいと、そう思うサイズだ。
しかし、
「構わないわよ……! 砕きなさい、“蒸気王”!!」
こちらが腕を振えば、愛機もまた同じだ。
「……!?」
大型竜の首を片手でクラッチすると、
「おぉ……!」
力任せに振り回す。その軌道で他の竜たちの首も腕部で捉え、やはりスイングしていく。
やがて、腕の動きを巻き上げるような軌道に変化させ、
「――!」
轟音と共に花弁の足場へ叩きつけた。
しかし、
「ちっ……!」
“蒸気王”の各所から蒸気が噴き出し、その動作がやがて緩慢になっていく。
機体の限界が来たのだ。
「……!!」
動きが鈍くなったこちらの様子を逃さず、敵が全方位から突撃してくる。
それを見ながら、己は急ぎ分離作業を行っていく。
「有難う、蒸気王……」
そうして、コア部から分離された蒸気バイクに跨り、己は迅速な離脱を行う。
直後、
「――!!」
“蒸気王”が大破し、周囲に水蒸気と鉄片の嵐を巻き起こす。
そんな爆圧を浴びた竜の群れは一度散るが、しかし再度集結していく。
だけどここまで来ればもう十分よ……!
背後、もはや眼前となった敵の存在を気配で感じる。
しかし、己は視線を向けずにバイクのスロットルとライフルをそれぞれの手で握って、集結して来る黒竜の波に正対する。
「――出番よ、霧枯!!」
ライフルにマウントされた榴弾を迫りくる波に放ちながら、今まで守って来た存在の名を叫んだ
「おお……!」
直後、ガジェットフレームが己の横を高速で通り過ぎて行った。
●
霧枯は、ドラゴンテイマーと相対をしていた。
「オイオイオイオイ……! 随分速いナ……!?」
『ガージ! 左です……!』
“ブラザー”の言葉に従い、己は機体を右に振り回す。
「……!」
すると、先ほどまで機体があった場所を赤剣が刺し貫いていた。
『ガージ! あの赤剣は絶対に喰らわないでください!』
「分かってる!」
お互いの距離はもはや至近で、銃よりも剣がものを言う。そんな距離だ。
「そんなんやってられっかって感じだナ……!」
近接武器の手段が無いこちらは、先ほどから引き撃ち上等で、脚部ローラーを全開に一定の距離を保とうとしているが、
「おいブラザー! あのオッサン顔に似合わずメルヘンだナ……!」
敵が、速い。
その背にある翼で、こちらとの距離を一気に詰めて来るのだ。
「……!」
背後に叩きつけた大気に押されるように、ドラゴンテイマーがこちらへ飛翔してくる。
「それに六枚だぜ! 普通より三倍メルヘンだ!」
牽制の射撃を送ろうとするが、
「遅い……!」
敵は羽ばたきを追加することでその位置を一気に変え、こちらの射線から逃れた。
『枚数が多いのは趣味だけではないようですよ……!』
「くっ……!」
再度、左側からの敵の一撃を、機体を滑らせてすんでのところで回避する。
そうだナ……。
己にも、“ブラザー”の言うその意味は分かる。
翼の枚数が多いということは、羽ばたきの出力が増し、強大な速度を得られるのだ。また、それら翼は時には姿勢制御といったバランサーとしても利用が可能で、そうすると安定性も増される。
先ほどから何度も翻弄されているこちらとしては、熟知のことだ。
「だけど、その分弱点も解ってきたぜ……!」
言って、己は敵に武器を向ける。
『空中では貴方を捉えることは至難です』
「――だけど離着陸のタイミングならどーだろーナ?」
敵は今、剣を構え直し、足場を蹴って再度の飛翔を狙っている最中だ。
「……!」
ドラゴンテイマーがこちらの意図に気付き、急ぎの離脱を図るが、
「こっちの方が速いぜ」
『大口径のガトリングじゃありませんからね』
「何……!?」
放たれた武器は12.7ミリではなく、左腕に搭載されたアンカーガンだ。
鋼糸に括りつけられた矛が一直線にドラゴンテイマーの元へ突き進み、
「ぐぅ……!!」
その翼を貫いて、縫い止めた。
「たかが鋼糸如き……!」
敵が自分を捕縛する存在を断とうと剣を振うが、
「こっちこっちー」
それよりも先に、己は巻き取り機構で敵を引き寄せた。
「――!?」
相手を赤剣ごと抱き止め、グラップ。
『出力全開で行きます……!』
身体の各所から蒸気を吹き出しながら、相手を全ての力で締めあげる。
「離せ!」
こちらの腕や装甲を断とうと、敵が右腕を振ろうとしたそのときm
「――遅いわよ」
蒸気機関の唸りとともに、ドラゴンテイマーの背後から声が投げかけられた。
「何……!?」
黒竜の死体を踏み台に、上空へ跳び上がった蒸気バイクからさらに跳躍する姿は、赤髪を靡かせた女だ。
紅葉だ。
「――合わせなさい霧枯!」
「おうよ!」
こちらが声で応じるのと、紅葉が鋼板を放り投げるのは同時だ。
紅葉の側から、声が聞こえた。
『コードハイペリア承認。疑似高重力場放出用デバイス確認……。デバイスへの入力をお願いいたします』
紅葉は音声に対して間髪いれず、正拳を叩き込んだ。
「――天衝っ!!」
直後、打撃された鋼板から巨大な青白いオーラが生じた。
入力あれでいいのかナー……。
いや、“入力”だけども……。とそんなことも思いながら、しかしもはや視界の中は莫大な大きさのそれで埋め尽くされている。
上空から迫りくるように、ドラゴンテイマーへ、否、彼を押さえつけるこちらへ振って来るのだ。
「貴様、諸共死ぬ気か!?」
「あんたを倒すなら、これくらいしないとナァ――?」
『ガージ、私たちも今まで“与えた”分、フルパワーで行きましょう。それに、貴方のバイタルも心配ですので早期解決を』
「ていうか、アレ食らったらおいら生きててもデスるんじゃねーかナ……?」
そう言いながらも“ブラザー”の言葉に従い、ガトリングガンを懐の敵に押し当て、
「うぉぉおおおおお……!!」
引き金を引き絞った。
12.7ミリは正しく敵の身体を切り裂いてき、貫通したそれらはこちらの装甲を無慈悲に削り取っていく。
そして、
「おのれ……! 猟兵め……!!」
光が、全てを呑みこんでいった。
大成功
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