バトルオブフラワーズ⑫〜黒竜の支配者
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バトルオブフラワーズをついに大詰め――しかし、ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は厳しい表情で告げた。
「今回おぬしらに頼みたいのは他でもない……ドラゴンテイマーの討伐じゃ」
怪人軍団に占領技術を提供したという謎のオブリビオン、ドラゴンテイマーがいる。しかし、これは今回のバトルオブフラワーズの勝敗を決する敵ではない。ないのだが……。
「とはいえ、ただ放置してよい敵でもないじゃろう。じゃからこそ、あえておぬしらに頼みたいのじゃ」
ドラゴンテイマーは紫のガスに包まれた、六枚の翼と赤き剣の腕――リムゾンキャリバーを持つ謎のオブリビオンだ。戦闘方法は、『黒竜ダイウルゴス』を召喚する能力なのだが……。
「こやつは必ず先制攻撃を行ってくる、それに対する対処がなければ一方的にこちらがやられるだけじゃろう」
奇をてらうような能力はない――否、奇をてらう必要がないのだ。ドラゴンテイマーの戦闘能力は、今まで戦ってきたどの相手よりも高い。純粋な強敵なのだ。
戦略的な無視して構わない、そういう相手だ。しかし、だからこそ戦う意味がある場合もある。ガングランは、髭を撫でながら言う。
「今の自分達の力が、ドラゴンテイマーにどれほど通用するか計る――その上で、こやつも完全に滅ぼせるのならば、最良じゃ」
ドラゴンテイマーが何故、怪人軍団に手を貸したのか? その思惑はなんなのか? ドラゴンテイマーの口から素直に語られるとは思えない。
謎のオブリビオンとの戦い、そこに意味を見出すのは他でもない――キミ自身だ。
波多野志郎
ついにバトルオブフラワーズも大詰めになってまいりました! どうも、波多野志郎です。
今回はあえて、ドラゴンテイマー戦を行かせていただきます!
敵は必ず先制攻撃します。敵は、猟兵が使用するユーベルコードと同じ能力値(POW、SPD、WIZ)のユーベルコードを、猟兵より先に使用してきます。
この先制攻撃に対抗する方法をプレイングに書かず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、必ず先制攻撃で撃破され、ダメージを与えることもできません。
謎に満ちた恐るべき強敵といかに相対するか、皆様のプレイングをお待ちいたしております!
第1章 ボス戦
『ドラゴンテイマー』
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POW : クリムゾンキャリバー
【赤き剣の右腕】が命中した対象に対し、高威力高命中の【黒竜ダイウルゴスの群れ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : ギガンティックダイウルゴス
レベル×1体の、【逆鱗】に1と刻印された戦闘用【大型ダイウルゴス】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 文明侵略(フロンティア・ライン)
自身からレベルm半径内の無機物を【黒竜ダイウルゴスの群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ハルヨリ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆心情
屠竜の魔女を前にドラゴンテイマーを名乗るとは良い度胸です
うふふ、死力を尽くして滅殺して差し上げましょう
◆行動
【黒竜の騎士】で突貫します
ブラックタールである私にとって人の姿とは仮初めのもの
重要な内臓などの器官は体内でその位置をずらして
先制攻撃による致命的な一撃は避けて見せましょう
とは言え強敵相手に身体の半分でも残れば上等です
思考を加速し、痛覚を麻痺させ、肉体の限界を超える
文字通り劇毒にも等しい薬を体内で精製し続け
心身共に限界を超えてでも、加速し続け彼の怨敵を貫いて見せましょう
例え倒れ伏そうともこの執念がある限り魔槍は動き続けるのです
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブ歓迎
ニコラ・クローディア
基本戦術は肉を切らせて骨を断つ、よ
足を止めての超肉弾戦を挑ませてもらいましょう
龍闘術で自己強化…をする頃には剣の一撃と竜の群れが襲ってくるのでしょうね
オーラ防御、激痛耐性、拠点防御、見切り、カウンター
「殴られるのは大前提よ、ミスター?」
剣での一撃を当てにくる、のならば既に戦闘は至近距離
各種防御で耐え抜いてクロスカウンターをスカした髭面にプレゼントしてあげる
「…さぁ、あとはどちらが先に倒れるか、根比べね?」
先制攻撃を耐えられたら祖龍顕現を起動
攻撃を喰らう程増す戦闘力と再生能力…これが人の姿と意志を持った龍の本領よ
たかがトカゲを使う程度で龍の全てを御したとは思わないことね!
アドリブ・連携歓迎
ラッセル・ベイ
これ程の力を持つ者が操る竜……
素晴らしい素材なのは間違いあるまい
奪わせて貰うよ
●戦闘(WIZ)
単純に強い……私は小細工される方が面倒なので戦い易いか?
まずはどうにかしてUCを使う時間を稼ぐ
最初に奴から距離を取る
「リフレクション・ルーン」を起動、攻撃を防ぐオーラ障壁を展開
無機物が竜に変換される瞬間「ジャミング・ルーン」を起動。黒竜の群れの動きを小時間で構わないので静止させる
上記二つを突破されたら「地盾グラウンド」で受け止める
余裕が無いのでな、一気に行くぞ
我が友……「全武器」を【ウェポンブレイク】
自分の周囲を覆うように花弁を展開し、黒竜を寄せ付けない防壁を創る
後は真っ直ぐ奴に向けて走り、突進攻撃だ
雛河・燐
さーてーっと。
はぁ!?思ってたより数倍は多いんですけど!?
群れを見た瞬間脱兎で逃げ出す。
もう笑うしかねぇみたいに笑い声を上げながら
【地形の利用・敵を盾にする・ロープワーク・クライミング・時間稼ぎ・逃げ足】で全力で逃げる。
とにかく逃げ回る。大きな笑い声を上げて敵の意識を、まるで周囲を飛ぶ羽虫のごとくイラッと来るような存在感で逃げ回る。
ま、そうなったらこっちの術中。
俺に少しでも意識を向けているなら仕込みは十全。
この場に存在するテキトーに目星つけた一人を、敵の五感の死角に
ご招待さ。それが【幽世歩き】
こっちはホント真面目に死に物狂いですけどねぇ!?
コロッサス・ロードス
我らに立ち塞がりもせぬとはまるで観客だな
だが貴様の席は此処ではない……奈落にあると知れ
●戦術
他の攻撃を喰らう『覚悟』で【赤き剣の右腕】を注視
その剣筋の『見切り』に全力を傾ける
初撃を受けたら大盾[不退転]を構えて守りを固め『武器受け、盾受け、オーラ防御』を駆使して致命傷を防ぐ
その後は機を見て鍔迫り合いに持ち込み肉薄
密着した事で死角となる下半身――相手の足を装甲靴[堅甲不落]で強く『踏みつけ』、相手の体勢が僅かでも崩れた瞬間に重心を低くして懐に潜り込む
その際に剣を手放し、右手で相手の服や体を掴んで後退を阻止、左手で【黎明の剣】を放つ
今は滅する事叶わずとも、この一撃は我ら猟兵が貴様を倒す為の礎となる
上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
POW
「死なば諸共、ってところだな」
――恐れず、迷わず、侮らず
呼吸を整え、無駄な力を抜き、度胸【勇気+激痛耐性】を以て敵UCは敢えて受ける【覚悟】を決める。
防御を固め初撃に合わせてカウンター、と見せかけ真正面から受けることで虚を衝き【フェイント+だまし討ち】二撃目までのタイムラグを利用し胴体に組み付く。
呼吸法による硬功【グラップル+戦闘知識】で肉体強度とホールドを強化し、組み付いたまま二撃目の竜の群れを耐える。
受ける際、位置取りを調整し、できる限り敵にダメージが行くようにする。
受け切ったところでUC発動によるスープレックス【捨て身の一撃+グラップル+鎧無視攻撃】を叩き込む。
雪華・グレイシア
ドラゴン退治だなんて、怪盗じゃなくて勇者辺りのロールだと思うんだけどね、まったく!
とはいえ、同じ舞台に立った以上は一曲付き合ってもらおうか、ジェントル
数が多い上に大きいっていうなら、動きにくさや隙だってあるはずさ
【ワイヤーガン】を使って、【ロープワーク】に【ジャンプ】でダイウルゴスへと取りついて、【敵を盾にする】ことで逃げ回るよ
【予告状】の【投擲】で【目潰し】もないよりはマシだろう
これでも【逃げ足】には自信があるんだ
逃げている内に合体やらなにやらで隙を見せたら、【マスカレイドビークル】をロボに変形!
隙を付いた勢いのまま全力で攻撃!
【アドリブ、他の方との絡みは歓迎】
レクス・マグヌス
【心情】
ゾフィラーガ、プラネットブレイカー……
あいつを見ていると、なにかが頭に浮かんでくる
アレはかつてない強敵だ
でも、いずれ脅威になる相手なら、ここで止めてやる
【戦術】
「オーラ防御」を張り、ダイウルゴスを「敵を盾にする」にすることで攻撃を防ぐ
圧倒的な攻撃である以上、反撃の中で「生命力吸収」を行い、少しでも自身の体力の損耗を防ぐ
文明侵略の攻撃で出来た影から「高速詠唱」でユーベルコードを使用
自分の防御に隙を作らないようにして、素早く攻撃を展開する
召喚できる質も量も劣っていても、速さでだったら一矢穿てるはずだ
ドラゴンテイマー、お前が何を考えているかは分からない
だけど、必ずその翼を打ち砕いて見せる!
月宮・ユイ
連携アドリブ◎
傍観・観察者染みた態度の今でさえ、圧倒される様な存在感
帝国戦争同様、おそらくこの世界外部からの干渉者…嫌な気配です
王たる一にして群。これ程の群さえ前哨戦ですか。
[ステラ+ケイオス]槍剣:復元増殖
”催眠術”戦闘意識に変換:思考研ぎ澄ませ痛みを只の信号に
”第六感”含め知覚強化
常時”情報収集、学習力基に早業”で行動最適化
”念動力”纏い”オーラ防御”強化と行動補助
[コスモス+コメット]飛行付与外套+バイク
機動力強化。味方運搬も
<静寂雪原>
同種の能力…妨害と併せ倒した黒竜分此方の物と出来れば増強にも
”呪詛”宿し吸収強化、敵喰らう極寒の、味方癒し強化する暖かな氷雪操る
今持てる全力で刃届かせる
●ドラゴンテイマー
風が吹き、淡い色の花びらが舞う――その幻想的な光景の中で、その男は振り返った。
「来たか、猟兵」
「我らに立ち塞がりもせぬとはまるで観客だな。だが、貴様の席は此処ではない……奈落にあると知れ」
男、ドラゴンテイマーは、コロッサス・ロードス(金剛神将・f03956)の視線と言葉を受けて無感動に笑みをこぼす。
「ふっ、奈落……か」
(「ゾフィラーガ、プラネットブレイカー……あいつを見ていると、なにかが頭に浮かんでくる」)
レクス・マグヌス(嵐をもたらすもの・f07818)は、無意識に自身の右目に触れて内申で呟く。しかし、今はそのささいな『何か』さえ命取りになりかねない状況だ。
「アレはかつてない強敵だ。でも、いずれ脅威になる相手なら、ここで止めてやる」
「傍観・観察者染みた態度の今でさえ、圧倒される様な存在感。帝国戦争同様、おそらくこの世界外部からの干渉者……嫌な気配です」
月宮・ユイ(捕喰∞連星・f02933)は、ただ立つドラゴンテイマーからの圧にそう言った。確かに、無造作に立つ姿でさえ底が見えない恐ろしさがある。
「これ程の力を持つ者が操る竜……素晴らしい素材なのは間違いあるまい。奪わせて貰うよ」
だが、だからこそ滾る者もいる――ラッセル・ベイ(ドワーフのルーン鍛冶師・f12407)からすれば、目の前の男は宝の山に他ならない。
その真っ直ぐな挑戦に、ドラゴンテイマーは目を細める。
「いいだろう、来るがいい。ここはシステム・フラワーズ――欲望を果てなく肯定する場所だ」
ドラゴンテイマーが、一歩踏み出す。その動作こそが、文字通り侵略の結果を生み出した。
曰く、文明侵略(フロンティア・ライン)――花園から、大量の黒竜が溢れ出したのだ。
『グル、ガア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「はぁ!? 思ってたより数倍は多いんですけど!?」
思わず雛河・燐(笑って嗤って後悔を・f05039)がそう叫ぶほどの、軍勢の召喚。それが戦いの始まりとなった。
●黒竜ダイウルゴス
群がる、群がる、群がる――竜が、牙を剥く。
「殴られるのは大前提よ、ミスター?」
ニコラ・クローディア(龍師範・f00091)は、オーラ防御を全身に巡らせてその牙を受け止める。だが、受けきれるものではない。オーラを越えて牙は届き、ニコラの肌を貫き、肉を――。
「――セット」
ゴゥン! と黒竜ダイウルゴスが打ち砕かれ、花びらへ戻る。クラウディウス式龍闘術(ドラゴアーツ)――高く上げたニコラの右の爪先蹴りが黒竜ダイウルゴスを打ち砕いたのだ。だが、まだ他にもいる――ニコラはそれを裏拳からの肘打ち、更には左の後ろ回し蹴りでことどとく打ち砕いていく。
「ドラゴン退治だなんて、怪盗じゃなくて勇者辺りのロールだと思うんだけどね、まったく! とはいえ、同じ舞台に立った以上は一曲付き合ってもらおうか、ジェントル」
そして、雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)が笑い声と共にワイヤーガンを射出。一体のダイウルゴスの背へと飛び乗った。それを追って、三体のダイウルゴスがその尾や牙を振るい――雪華は、身をひるがえした。
『ぐ、が!?』
味方の攻撃を受けたダイウルゴスが、花びらとなって四散する。雪華はその中を、優雅に舞ってのけた。
「災厄を呼べ! その名は争い!」
無数のダイウルゴスが生み出す影の中から、レクスが剣の軍勢(インベル・アウクシリア)によって嵐の騎士と妖剣の下僕を召喚する。嵐の騎士が妖剣を掴み振り払うと、ドン! と数体のダイウルゴスが嵐の中に飲み込まれ、散っていった。
「屠竜の魔女を前にドラゴンテイマーを名乗るとは良い度胸です。うふふ、死力を尽くして滅殺して差し上げましょう」
黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)は、向けられる竜の牙を歯牙にもかけない。ミコはダイウルゴスに体の一部を食いちぎられても、止まらない――ブラックタールであるミコにとって人の姿とは仮初めのもの。重要な器官など、ズラしてしまえばいいだけ。その上で、ミコは叫ぶ。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第捌の竜よ!」
全身を禍々しい黒竜騎士の甲冑で覆い、ミコは突撃。それをダイウルゴス達は体を張って、盾となる。
「『リフレクション・ルーン』、起動」
強力なルーンが刻まれた黄金のメダルを手に、ラッセルは魔法反射障壁が展開。その上を、燐が笑って飛び越えていく。
「あーははははははははははははははははははははははは!!」
余裕がある、という響きではない。もう笑うしかねぇ、そういいたげな響きだ。燐を追いかけていたダイウルゴス達は、ラッセルの魔法反射障壁に食い止められた。
「さぁ、来い」
そして、同じく不撓不屈の覚悟が籠められた大盾、不退転を構えコロッサスが黒竜の群れを受け止めた。ラッセルとコロッサスが、体中を軋ませながら竜の突進を受け止める――質量差は、100倍では効かない。しかし、確かに勢いを殺したのを見てドラゴンテイマーが目を細める。
「ほう?」
そこへ、上野・修介(元フリーター、今は猟兵・f13887)が加わる。先頭のダイウルゴスの胴体を掴むと、その巨体を盾に変えた。
「死なば諸共、ってところだな」
――恐れず、迷わず、侮らず。呼吸を整えて無駄な力を抜き、修介は両足にすべての力を込めて――受け止めた。
確かに、三人が黒竜の群れを止める。ほんの数秒、僅かな均衡――その瞬間を、ユイは見逃さない。
「(共鳴・保管庫接続正常、知覚・処理能力強化。無限連環増幅術式起動……共有同調、対象・効果指定……領域形成)世界よ止まれ……」
無音のまま、ユイの足元から周囲の花園が存在・力を喰らい味方の力とする氷雪へと変わって黒竜ダイウルゴスの群れを飲み込み、破壊していった。すべてが花びらに戻る、戦闘開始前の状態へ戻ったのだ。
――その花びらの嵐の中、ドラゴンテイマーは赤き剣の右腕を地面に突き立てた。
「次は、こうしてみようか?」
ゴッ! とドラゴンテイマーの背後に姿を現したのはただ一体の巨大なダイウルゴスだ。ギガンティックダイウルゴスで召喚されるべきすべてを、この一体へとまとめたのだ。ドラゴンテイマーは、言ってのける。
「これは、どうくぐり抜ける?」
「いやいやいや! 冗談きついぜ!」
燐の言葉を、否定する者はいなかった。まさに冗談ではすまない、悪夢のような光景だ。しかし、これが現実だと告げるようにギガンティックダイウルゴスは、猟兵達へ襲いかかった。
●ただ、一瞬にすべてを懸けて――!
――轟音を立てて、ダイウルゴスの巨体が地面に転がった。倒した、そう思った瞬間、ドラゴンテイマーは無感動に告げる。
「終わりか。ならば、次だ」
それは絶望の宣言だった。ギガンティックダイウルゴスと文明侵略(フロンティア・ライン)の併用、それだけで猟兵側はギリギリまで追い詰められていたのだ。
最初から、立ち位置が変わっていない。ドラゴンテイマーにとって、間合いを詰めるどころか動く意味さえないのだ――だからこそ、必要なのは一手。
この無限とも言える距離を詰める、起死回生の一手がいる。そして、ドラゴンテイマーは決してその一手を許さない――はず、だった。
「召喚できる質も量も劣っていても、速さでだったら一矢穿てるはずだ」
レクスが、そう声を張り上げる。その瞳には、絶望の色はない。諦めさえ踏破し、その闘志のまま言い放った。
「ドラゴンテイマー、お前が何を考えているかは分からない。だけど、必ずその翼を打ち砕いて見せる!」
「……やれるものなら、やってみるがいい」
レクスの意志を受けて、嵐の騎士が妖剣を一閃する。ゴゥ! と視界を埋め尽くす嵐を、ドラゴンテイマーは右腕の剣で薙ぎ払った。
「――なん、だと?」
その瞬間、ドラゴンテイマーはこの戦いで初めて驚きの表情を見せた。そこにいたのは、嵐を切り裂かれ斬撃波を受けたレクスのみ――残りの全員が、そこから消えていたのだ!
「言っただろう? 一矢穿つと――」
レクスの笑みに、ドラゴンテイマーはハっと上を見上げる。その視線の先、唐突に姿を現したのはユイのバトルバイク『コメット』だった。
「――敵の五感の死角にご招待さ。それが【幽世歩き】」
コメットの上に乗って、燐がニヤリと笑ってみせる。こっちはホント真面目に死に物狂いですけどねぇ!? という言葉は、必死に喉元で飲み込む事に成功した。
幽世歩き(カクリヨアルキ)――ユイのバトルバイク『コメット』へと使ったそのユーベルコードによって、次々と頭上の死角へ潜り込んで相乗りした仲間達が飛び降りていく!
「余裕が無いのでな、一気に行くぞ」
『ああ、もう無茶苦茶ですわ!』
ラッセルの宣言とポイゼの叫びと同時、ラッセルの全武装が武器と同じ色と属性の花びらへと変わってドラゴンテイマーに降り注いだ。ドラゴンテイマーが、ウェポンブレイクに飲み込まれていく――そこへ続いたのは、マスカレイドビークルへ乗り換えていた雪華だ。
「さぁ、勝利を奪い取ろうか?」
マスカレイドビークルが、巨大ロボへと変形する。その手が、ドラゴンテイマーを握りしめた。だが、それも一瞬だ。ドラゴンテイマーを中心に、ダイウルゴスが溢れ出してロボの手を破壊する!
「逃がすものか!」
「させない!」
そこへラッセルの色取り取りの花びらとユイの静寂雪原:生命力吸収・吸血(コキュートス)による氷雪が叩き込まれ、ダイウルゴスを薙ぎ払う!
「『道』は出来た、行きたまえ!」
雪華の声に、修介がロボの腕に着地。低い体勢で一気に腕を駆け抜け、ドラゴンテイマーの胴へと抱きついた。
「――!?」
反射的に、ドラゴンテイマーがクリムゾンキャリバーを振り下ろす! だが、その刃が修介へ届く直前に、ニコラの拳がドラゴンテイマーの顔面を捉えた。
「……さぁ、あとはどちらが先に倒れるか、根比べね?」」
「ほざくな」
ドラゴンテイマーの目標が、即座にニコラへ変わる。ニコラがその刃を受けると、再び召喚されたダイウルゴスの群れが襲いかかった。
「今ここに真の姿を許す――ゆけ、アンフィスバエナ!」
同時、ダイウルゴスの群れが真の姿となった双子竜アンフィスバエナのブレスが迎撃する! 竜と竜の吐息――貪り喰らう合う竜の激突が、花園を揺るがした。
「今は滅する事叶わずとも、この一撃は我ら猟兵が貴様を倒す為の礎となる」
その激突の瞬間を、コロッサスは見逃さない。
「我、神魂気魄の閃撃を以て獣心を断つ」
顕現させた、紅き神火と払暁の輝きを宿す神剣の一閃――コロッサスの黎明の剣(レイメイノツルギ)による横薙ぎが、ドラゴンテイマーを深く切り裂いた。ドラゴンテイマーの体から、刹那力が抜ける。そのタイミングを読んで、修介が動いた。
「俺の間合いだ」
まさに、明日へと架ける橋――修介の見事なジャーマンスープレックスが、ドラゴンテイマーを地面へと叩きつけた。まさに捨て身、まさに渾身。ここまで繋げられた思いのすべてを背負った一撃だった。
「ま、だた……」
しかし、届かない。ゆらり、とドラゴンテイマーが立ち上がる。その身の最後の力を振りしぼろうと、その瞬間だ。
「はーははははははははははははははは!」
燐が、腹を抱えて笑い転げた。何事か、とドラゴンテイマーが燐へ視線を剥ける。燐は、向かって右側へ指先を向けた。
「――――」
ドラゴンテイマーがそちらへ視線を向けたその刹那――背後に、衝撃が走った。
「あ、ごめん。逆だったわ」
左に指先を向け直したが、もうドラゴンテイマーにその声は届いていない。ここまで温存していた、先程ユイのコメットから降りて即座に燐の幽世歩きで死角へと姿を隠した――ミコの、三千世界の竜を屠ると言う執念を込めた全速力の体当たりだ。
「ぐ、が、あ――」
それでも、なおドラゴンテイマーは耐える。耐えきって、クリムゾンキャリバーを放とうとする相手に、ミコは囁く。
「例え倒れ伏そうとも、この執念がある限り魔槍は動き続けるのです……!」
もはや、文字通り劇毒にも等しい薬を体内で精製し続け心身共に限界を超えている。それでもミコを突き動かす妄執が、ついにドラゴンテイマーを貫いた。
ドォ! とシステム・フラワーズの上空で、爆発が巻き起こる。その轟音こそが、この場で行われた激闘の終わりを告げる合図であった……。
成功
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